(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-05
(45)【発行日】2023-12-13
(54)【発明の名称】有機化合物とそれを含む有機光電素子、イメージセンサ、及び電子素子
(51)【国際特許分類】
H10K 30/60 20230101AFI20231206BHJP
H10K 39/32 20230101ALI20231206BHJP
H01L 27/146 20060101ALI20231206BHJP
C07F 5/02 20060101ALI20231206BHJP
H10K 85/60 20230101ALI20231206BHJP
【FI】
H10K30/60
H10K39/32
H01L27/146 E
H01L27/146 A
H01L27/146 D
C07F5/02 D CSP
H10K85/60
(21)【出願番号】P 2019196379
(22)【出願日】2019-10-29
【審査請求日】2022-10-14
(31)【優先権主張番号】10-2018-0132569
(32)【優先日】2018-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2019-0082231
(32)【優先日】2019-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】390019839
【氏名又は名称】三星電子株式会社
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】129,Samsung-ro,Yeongtong-gu,Suwon-si,Gyeonggi-do,Republic of Korea
(73)【特許権者】
【識別番号】000000387
【氏名又は名称】株式会社ADEKA
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】尾花 良哲
(72)【発明者】
【氏名】朴 惠允
(72)【発明者】
【氏名】權 穗珍
(72)【発明者】
【氏名】李 時▲よん▼
(72)【発明者】
【氏名】韓 ▲じゅん▼元
(72)【発明者】
【氏名】森田 博
(72)【発明者】
【氏名】濱田 理恵子
(72)【発明者】
【氏名】飯野 功治
【審査官】吉岡 一也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/119039(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第106810572(CN,A)
【文献】特開2013-168424(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104530105(CN,A)
【文献】特開2017-017325(JP,A)
【文献】国際公開第2016/072119(WO,A1)
【文献】特開2018-107443(JP,A)
【文献】特表2018-510127(JP,A)
【文献】ROUSSEAU, Theodulf et al.,A tailored hybrid BODIPY-oligothiophene donor for molecular bulk heterojunction solar cells with improved performances,Chemical Communications,2010年,Vol. 46,pp. 5082-5084
【文献】CORTIZO-LACALLE, Diego et al.,Solution processable diketopyrrolopyrrole (DPP) cored small molecules with BODIPY end groups as novel donors for organic solar cells,Beilstein Journal of Organic Chemistry,2014年,Vol. 10,pp. 2683-2695
【文献】HENDEL, Samuel J. et al.,Photophysical and Electrochemical Characterization of BODIPY-Containing Dyads Comparing the Influence of an A-D-A versus D-A Motif on Excited-State Photophysics,The Journal of Physical Chemistry A,2016年,Vol. 120,pp. 8794-8803
【文献】MALLAH, Ramnath R. et al.,Non-linear optical response of meso hybrid BODIPY: Synthesis, photophysical, DFT and Z scan study,Spectrochimica Acta Part A: Molecular and Biomolecular Spectroscopy,2018年10月23日,Vol. 209,pp. 126-140
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10K 30/00-39/38
H10K 85/60
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学式1:
【化30】
(化学式1において、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、及びR
6は、それぞれ独立して、水素原子、置換もしくは、非置換のC1-C4のアルキル基、置換もしくは、非置換のC1-C4のアルコキシ基、または置換もしくは、非置換のC1-C4のアルキルチオ基であり、
Aは、少なくとも1つの硫黄原子を含むヘテロアリール基を有する作用基である)
で表される有機化合物
であって、
Aは、次の置換基:
【化31】
(前記置換基において、「*」は、結合位置である。)
のうちから選択されるいずれか1つであることを特徴とす
る、有機化合物。
【請求項2】
互いに対面する第1電極及び第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極との間に介在された活性層と、
を含む有機光電素子であって、前記活性層は、化学式1:
【化32】
(化学式1において、 R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、及びR
6は、それぞれ独立して、水素原子、置換もしくは、非置換のC1-C4のアルキル基、置換もしくは、非置換のC1-C4のアルコキシ基、または置換もしくは、非置換のC1-C4のアルキルチオ基であり、
Aは、少なくとも1つの硫黄原子を含むヘテロアリール基を有する作用基である。)
で表される有機化合物を含む、有機光電素子
であって、
化学式1で表される有機化合物において、Aは、次の置換基:
【化33】
(前記置換基において、「*」は、結合位置である。)
のうちから選択されるいずれか1つの置換基を有することを特徴とす
る、有機光電素子。
【請求項3】
半導体基板と、
前記半導体基板上に配置された有機光電素子と、
を含むイメージセンサであって、
前記有機光電素子は、
互いに対面する第1電極及び第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極との間に介在され、化学式1:
【化34】
(化学式1において、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、及びR
6は、それぞれ独立して、水素原子、置換もしくは、非置換のC1-C4のアルキル基、置換もしくは、非置換のC1-C4のアルコキシ基、または置換もしくは、非置換のC1-C4のアルキルチオ基であり、
Aは、少なくとも1つの硫黄原子を含むヘテロアリール基を有する作用基である。)
で表される有機化合物を含む活性層と、
を含
み、
化学式1で表される有機化合物において、Aは、次の置換基:
【化35】
(前記置換基において、「*」は、結合位置である。)
のうちから選択されるいずれか1つの置換基を含むことを特徴とす
る、イメージセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機化合物とそれを含む有機光電素子、イメージセンサ、及び電子素子に係り、特に緑色波長領域の光を選択的に吸収することができる有機化合物及びそれを含む有機光電素子、イメージセンサ、及び電子素子に関する。
【背景技術】
【0002】
光電効果を用いて光を電気信号に変換させる光電素子のうち1つである光ダイオードを含むイメージセンサで感度を向上させるために、前記光ダイオードの構成物質としてシリコンの代わりに特定波長領域の光を選択的に吸収することができる有機物質を採用するための研究がなされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の技術的思想が解決しようとする技術的課題は、熱安定性及びキャリア移動度が優秀であり、緑色波長領域の光を選択的に吸収することができる有機化合物を提供することである。
【0004】
本発明の技術的思想が解決しようとする他の技術的課題は、熱安定性及びキャリア移動度が優秀であり、緑色波長領域の光を選択的に吸収する有機化合物を含むことにより、高い外部量子効率(external quantum efficiency、EQE)を示すことができる有機光電素子を提供することである。
【0005】
本発明の技術的思想が解決しようとするさらに他の技術的課題は、外部量子効率が改善された有機光電素子を含むイメージセンサ及びを提供することである。
【0006】
本発明の技術的思想が解決しようとするさらに他の技術的課題は、外部量子効率が改善された有機光電素子を含む電子素子を提供するのである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の技術的思想による一態様による有機化合物は、化学式(1)で表される。
【0008】
【化1】
化学式(1)において、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、及びR
6は、それぞれ独立して、水素原子、置換もしくは、非置換のC1-C4の直鎖状または分枝状アルキル基、置換もしくは、非置換のC1-C4の直鎖状または分枝状アルコキシ基、または置換もしくは、非置換のC1-C4の直鎖状または分枝状アルキルチオ基であり、Aは、少なくとも1つの硫黄原子を含むヘテロアリール基を有する作用基である。
【0009】
本発明の技術的思想による他の様態による有機化合物は、化学式(1)で表され、化学式(1)において、R1、R2、R3、R4、R5、及びR6は、それぞれ独立して、水素原子、C1-C4のアルキル基、C1-C4のアルコキシ基、または、C1-C4のアルキルチオ基であり、Aは、硫黄原子を含む少なくとも5員(5-member)のヘテロ環を含む作用基である。
【0010】
本発明の技術的思想による一態様による有機光電素子は、互いに対面する第1電極及び第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に介在された活性層を含み、前記活性層は、化学式(1)で表される有機化合物を含む。
【0011】
本発明の技術的思想による一態様によるイメージセンサは、前記有機光電素子を含む。
【0012】
本発明の技術的思想による他の様態によるイメージセンサは、半導体基板と、前記半導体基板上に配置された有機光電素子を含み、前記有機光電素子は、互いに対面する第1電極及び第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に介在され、化学式(1)で表される有機化合物を含む活性層を含む。
【0013】
本発明の技術的思想による一態様による電子素子は、前記イメージセンサのうち、少なくとも1つを含む。
【発明の効果】
【0014】
本発明の技術的思想による有機化合物は、緑色波長領域の光を選択的に吸収することができ、優秀な熱安定性及びキャリア移動度を提供することができる。本発明の技術的思想による有機光電素子は、本発明の技術的思想による有機化合物を含むことで、高い外部量子効率を示すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の技術的思想による実施例による有機光電素子を説明するための断面図である。
【
図2】本発明の技術的思想による他の実施例による有機光電素子を説明するための断面図である。
【
図3】本発明の技術的思想による実施例によるイメージセンサを説明するための図面である。
【
図4】本発明の技術的思想による実施例によるイメージセンサの断面図である。
【
図5】本発明の技術的思想による他の実施例によるイメージセンサの断面図である。
【
図6】本発明の技術的思想によるさらに他の実施例によるイメージセンサの断面図である。
【
図7】本発明の技術的思想によるさらに他の実施例によるイメージセンサを説明するための図面である。
【
図8】本発明の技術的思想による実施例による電子素子のブロック図である。
【
図9】本発明の技術的思想による他の実施例による電子素子のブロック図である。
【
図10A】本発明の技術的思想による他の実施例による化合物の吸光特性を評価した吸光曲線グラフである。
【
図10B】本発明の技術的思想による他の実施例による化合物の吸光特性を評価した吸光曲線グラフである。
【
図10C】本発明の技術的思想による他の実施例による化合物の吸光特性を評価した吸光曲線グラフである。
【
図10D】本発明の技術的思想による他の実施例による化合物の吸光特性を評価した吸光曲線グラフである。
【
図10E】本発明の技術的思想による他の実施例による化合物の吸光特性を評価した吸光曲線グラフである。
【
図10F】本発明の技術的思想による他の実施例による化合物の吸光特性を評価した吸光曲線グラフである。
【
図10G】本発明の技術的思想による他の実施例による化合物の吸光特性を評価した吸光曲線グラフである。
【
図10H】本発明の技術的思想による他の実施例による化合物の吸光特性を評価した吸光曲線グラフである。
【
図10I】対照例による化合物の吸光特性を評価した吸光曲線グラフである。
【
図10J】対照例による化合物の吸光特性を評価した吸光曲線グラフである。
【
図11】本発明の技術的思想による実施例による有機光電素子の製造例を説明するための断面図である。
【
図12A】本発明の技術的思想による実施例による有機光電素子の波長による外部量子効率(EQE)を評価した結果を示すグラフである。
【
図12B】本発明の技術的思想による実施例による有機光電素子の波長による外部量子効率(EQE)を評価した結果を示すグラフである。
【
図12C】本発明の技術的思想による実施例による有機光電素子の波長による外部量子効率(EQE)を評価した結果を示すグラフである。
【
図12D】本発明の技術的思想による実施例による有機光電素子の波長による外部量子効率(EQE)を評価した結果を示すグラフである。
【
図12E】本発明の技術的思想による実施例による有機光電素子の波長による外部量子効率(EQE)を評価した結果を示すグラフである。
【
図12F】本発明の技術的思想による実施例による有機光電素子の波長による外部量子効率(EQE)を評価した結果を示すグラフである。
【
図12G】対照例による有機光電素子の波長によるEQEを評価した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面に基づいて本発明の実施例を詳細に説明する。図面上の同じ構成要素については、同じ参照符号を付し、重複説明は省略する。
【0017】
本発明の技術的思想による実施例による有機化合物は、化学式(1)で表される。
【0018】
【化2】
化学式(1)において、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、及びR
6は、それぞれ独立して、水素原子、置換もしくは、非置換のC1-C4の直鎖状または分枝状アルキル基、置換もしくは、非置換のC1-C4の直鎖状または分枝状アルコキシ基、または置換もしくは、非置換のC1-C4の直鎖状または分枝状アルキルチオ基であり、Aは、少なくとも1つの硫黄原子を含むヘテロアリール基を有する作用基である。
【0019】
Aに含まれる前記少なくとも1つの硫黄原子を含むヘテロアリール基は、硫黄原子を含む少なくとも5員環を含むことができる。例示的な実施例において、前記少なくとも5員環は、チオフェン、チアゾール、チオジアゾール、ベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン、ジチオチオフェン、ベンゾジチオフェン、チエノチオフェン、またはジチエノピロールを含むことができるが、それらに限定されるものではない。
【0020】
例示的な実施例において、Aは、C5-C30の置換もしくは、非置換の縮合多環基(fused polycyclic group)を含むことができる。本明細書で使用される用語「縮合多環基」は、少なくとも1つの芳香族環、及び/または少なくとも1つの脂環式環が互いに融合されて少なくとも2個のリングを含む置換基を意味する。
【0021】
例示的な実施例において、Aは、少なくとも3個のリング構造を含むことができる。前記少なくとも3個のリング構造のうち、少なくとも1つは、チオフェン環を含むことができる。
【0022】
例示的な実施例において、Aは、チオフェン環が縮合された縮合多環基を含むことができる。
【0023】
例示的な実施例において、Aは、少なくとも1つのチオフェン環を含むモノサイクリックまたはポリサイクリックリング部分(moiety)を含むことができる。
【0024】
例示的な実施例において、化学式(1)の有機化合物に含まれたリングの個数は、5ないし8であるが、その限りではない。
【0025】
例示的な実施例において、Aは、化学式(2)で表される構造を有することができる。
【0026】
【化3】
化学式(2)において、A’は、少なくとも1つの硫黄原子を含むヘテロアリール基を有する作用基であり、「*」は、結合位置である。A’は、C5-C30の置換もしくは、非置換の縮合多環基を含むことができる。A’は、少なくとも1つのチオフェン環を含むモノサイクリックまたはポリサイクリックリング部分を含むことができる。
【0027】
他の例示的な実施例において、Aは、化学式(3)で表される構造を有することができる。
【0028】
【化4】
化学式(3)において、A”は、少なくとも1つの硫黄原子を含むヘテロアリール基を有する作用基であり、「*」は、結合位置である。A”は、少なくとも1つのチオフェン環を含むモノサイクリックまたはポリサイクリックリング部分を含むことができる。
【0029】
例示的な実施例において、Aは、次の置換基のうちから選択されるいずれか1つであってもよい。
【0030】
【化5】
前記置換基において、「*」は、結合位置である。前記置換基において、「*」で表された結合位置は、化学式(1)のBODIPY(boron-dipyrromethene、IUPAC名:4,4-difluoro-4-bora-3a、4a-diaza-s-indacene)コアのメソ(meso)位置に連結される。
【0031】
例示的な実施例において、化学式(1)において、R1、R3、R4、及びR6は、それぞれ独立して、C1-C3のアルキル基であり、R2及びR5は、それぞれ独立して、水素原子またはC1-C3のアルキル基である。R1、R2、R3、R4、R5、及びR6は、それぞれ環構造を含まない。
【0032】
化学式(1)の有機化合物は、緑色波長領域の光を選択的に吸収する化合物であって、薄膜状態で530nmないし560nmの最大吸収波長(λmax)を有し、薄膜状態で50nmないし100nmの半値幅(full width at halfmaximum、FWHM)を有する吸光曲線を示す。
【0033】
本発明の技術的思想による一部実施例による有機化合物は、ヘテロ原子、例えば、硫黄原子を有する縮合環チオフェン構造を含む。硫黄原子を含む環化合物である縮合環チオフェン類は、炭素よりも原子半径の大きい、極性の高い硫黄原子を含んでいる。したがって、縮合環チオフェン構造を含む本発明の技術的思想による一部実施例による有機化合物を薄膜状に加工したとき、前記薄膜内で互いに隣接している分子間に硫黄-硫黄結合が発生し、そのために分子が稠密に充填された薄膜構造を有することができる。また、硫黄原子を有する縮合環チオフェン構造では、原子半径の大きい硫黄原子のpオービタルの重畳によってキャリア移動度が向上する。
【0034】
また、縮合環チオフェン構造では、芳香族環上のpオービタルの電子が局所に限らず、平面性が拡張された縮合環上で広く分布される。したがって、pオービタル上に存在するキャリアの結合エネルギー(binding energy)が低くなり、キャリアの分子間移動が円滑になる。有機光電素子において、キャリア移動度が向上すれば、光吸収によって生成されたキャリアが、対向する電極に迅速に移動するので、量子効率が高くなる。
【0035】
また、本発明の技術的思想による実施例による有機化合物が縮合環チオフェン構造を含む場合、前記有機化合物の熱的安定性がさらに向上することができる。したがって、比較的高温工程を含む有機光電素子の製造工程に有利に適用される。本発明の技術的思想による実施例による有機化合物が縮合環チオフェン構造を含む場合、蒸着工程を用いてフィルムを形成する工程に有利に適用される。例示的な実施例において、本発明の技術的思想による実施例による化合物を固状でるつぼに充填した後、真空下で加熱することで、前記化合物を昇華させ、前記昇華された化合物を用いて、前記るつぼに対向して配置された基板上に薄膜を形成することができる。
【0036】
また、縮合された芳香族環は、縮合された環が類似している分子量である場合、複数の原子で相互結合されているので、単一結合で結合された芳香族環に比べて分解され難い傾向がある。また、縮合環環に含まれたヘテロ原子として硫黄原子を含んでいるので、HOMO(Highest Occupied Molecular Orbital)を安定化させて化合物の分解反応を抑制することができる。
【0037】
本発明の技術的思想による実施例による有機化合物は、フォトダイオード、フォトトランジスタのような有機光電素子に有利に適用される。本発明の技術的思想による実施例による有機化合物から得られた有機光電素子は、向上した光電変換効率を提供することができ、安定したEQE特性を保持することができる。本発明の技術的思想による実施例による有機化合物から得られた有機光電素子は、イメージセンサ、太陽電池、有機発光ダイオードのような素子に有利に適用される。
【0038】
また、本発明の技術的思想による実施例による有機化合物は、緑色波長領域の光を選択的に吸収し、優秀な熱安定性及びキャリア移動度を提供することができる。したがって、本発明の技術的思想による実施例による有機化合物を含む有機光電素子は、高い外部量子効率(external quantum efficiency、EQE)を示すことができる。また、本発明の技術的思想による実施例による有機化合物は、CMOSイメージセンサに採用される有機光電素子のp型半導体化合物として採用される。
【0039】
次いで、本発明の技術的思想による実施例による有機光電素子について具体例を挙げて詳細に説明する。
【0040】
図1は、本発明の技術的思想による実施例による有機光電素子を説明するための断面図である。
【0041】
図1を参照すれば、有機光電素子100は、第1電極110と、第1電極110上に形成された活性層120と、活性層120上に形成された第2電極130を含む。第1電極110及び第2電極130は、活性層120を介在して互いに対面している。
【0042】
第1電極110及び第2電極130のうちいずれか1つは、アノードであり、他の1つは、カソードである。例示的な実施例において、第1電極110及び第2電極130のうち、少なくとも1つは、透光電極である。前記透光電極は、ITO(indium tin oxide)、IZO(indium zinc oxide)のような透明導電体からなる。他の例示的な実施例において、第1電極110及び第2電極130のうち、少なくとも1つは、単一層または多重層の金属薄膜からなる。さらに他の例示的な実施例において、第1電極110及び第2電極130のうち1つは、不透光電極である。前記不透光電極は、アルミニウム(Al)からなってもよい。
【0043】
活性層120は、p型半導体化合物及びn型半導体化合物を含むことで、pn接合を形成する。活性層120は、外部から受光してエキシトン(exciton、励起子)を生成した後、生成されたエキシトンを正孔と電子とに分離することができる。
【0044】
活性層120は、本発明の技術的思想による実施例による有機化合物のうち、少なくとも1つを含むことができる。例えば、活性層120は、p型半導体化合物として化学式(1)の化合物を含むことができる。化学式(1)の化合物を含む活性層120は、約530nmないし約560nmの最大吸収波長(λmax)を有し、約50nmないし約100nmの半値幅(full width at half maximum、FWHM)を有する吸光曲線を示すことができる。
【0045】
活性層120は、約50nmないし約200nmの厚さを有することができる。
【0046】
活性層120は、単一層からなってもよく、複数層を含む多重層からなってもよい。例示的な実施例において、活性層120は、真性層(instrinsic layer:I層)からなる単一層、p型層及びI層を含む多重層、I層及びn型層を含む多重層、p型層、I層、及びn型層を含む多重層、またはp型層及びn型層を含む多重層からなるが、前記例示したところに限定されるものではない。一例において、活性層120は、化学式(1)の化合物を含むI層を含むことができる。他の例において、活性層120は、化学式(1)の化合物を含むp型層を含むことができる。
【0047】
例示的な実施例において、活性層120は、n型半導体化合物をさらに含むことができる。前記n型半導体化合物は、フラーレン化合物を含むことができる。例えば、前記n型半導体化合物は、フラーレン、フラーレン誘導体、または、それらの組合わせでもある。前記フラーレンは、C60である。前記フラーレン誘導体は、前記フラーレンに置換基を有する化合物を意味する。前記フラーレン誘導体は、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基などの置換基を含むことができる。前記フラーレン化合物は、非置換C60、または置換フラーレン誘導体を含むことができる。活性層120が化学式(1)の化合物とフラーレン化合物とを含む場合、活性層120で化学式(1)の化合物とフラーレン化合物の体積比は、約7:3ないし約3:7である。
【0048】
活性層120は、化学式(1)の化合物からなるp型半導体化合物と、n型半導体化合物を含むバルクヘテロジャンクション構造を有することができる。
【0049】
有機光電素子100において、第1電極110及び第2電極130のうち、少なくとも1つから光が入射されて活性層120が所定波長領域の光を吸収すれば、活性層120内でエキシトンが生成される。前記エキシトンは、活性層120で正孔と電子とに分離され、分離された正孔は、第1電極110と第2電極130の1つであるアノード側に移動し、分離された電子は、第1電極110と第2電極130の他の1つであるカソード側に移動して有機光電素子に電流が流れる。
【0050】
図2は、本発明の技術的思想による他の実施例による有機光電素子を説明するための断面図である。
【0051】
図2を参照すれば、有機光電素子200は、
図1を参照して説明した有機光電素子100とほぼ同じ構成を有する。但し、有機光電素子200は、第1電極110と活性層120との間に介在された第1電荷補助層240と、活性層120と第2電極130との間に介在された第2電荷補助層250をさらに含む。第1電荷補助層240及び第2電荷補助層250は、活性層120で分離された正孔と電子との移動を容易にして光電変換効率を高める役割をする。
【0052】
第1電荷補助層240及び第2電荷補助層250は、それぞれ正孔の注入を容易にする正孔注入層(hole injecting layer、HIL)、正孔の輸送を容易にする正孔輸送層(hole transporting layer、HTL)、電子の移動を減少させるか阻止する電子遮断層(electron blocking layer、EBL)、電子の注入を容易にする電子注入層(electron injecting layer、EIL)、電子の輸送を容易にする電子輸送層(electron transporting layer、ETL)、及び正孔の移動を減少させるか、阻止する正孔遮断層(hole blocking layer、HBL)のうちから選択される少なくとも1つを含むことができる。
【0053】
第1電荷補助層240及び第2電荷補助層250は、それぞれ有機物、無機物、または、それらの組合わせを含むことができる。前記有機物は、正孔または電子の注入及び/または伝達特性を有する有機化合物であってもよい。前記無機物は、金属酸化物であってもよい。前記金属酸化物は、例えば、モリブデン酸化物、タングステン酸化物、ニッケル酸化物、または、それらの組合わせである。例示的な実施例において、第1電荷補助層240及び第2電荷補助層250のうち1つは省略可能である。
【0054】
前記正孔輸送層(HTL)及び前記電子遮断層(EBL)は、それぞれポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン):ポリ(スチレンスルホネート)(poly(3,4-ethylenedioxythiophene):poly(styrenesulfonate), PEDOT:PSS)、ポリアリールアミン、ポリ(N-ビニルカルバゾール)(poly(N-vinylcarbazole)、ポリアニリン(polyaniline)、ポリピロール(polypyrrole)、N,N,N’,N’-テトラキス(4-メトキシフェニル)-ベンジジン(N,N,N’,N’-tetrakis(4-methoxyphenyl)-benzidine、TPD)、4,4’-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニル-アミノ]ビフェニル(4,4’-bis[N-(1-naphthyl)-N-phenyl-amino]biphenyl、α-NPD)、m-MTDATA、4,4’、4’-トリス(N-カルバゾリル)-トリフェニルアミン(4,4’、4’-tris(N-carbazolyl)-triphenylamine、TCTA)、または、それらの組合わせからなるが、前記例示したところに限定されるものではない。
【0055】
前記電子輸送層(ETL)及び前記正孔遮断層(HBL)は、それぞれ1,4,5,8-ナフタレン-テトラカルボン酸二無水物(1,4,5,8-naphthalene-tetracarboxylic dianhydride, NTCDA)、バソクプロイン(bathocuproine、BCP)、LiF、Alq3、Gaq3、Inq3、Znq2、Zn(BTZ)2、BeBq2、または、それらの組合わせからなるが、前記例示したところに限定されるものではない。
【0056】
図1及び
図2に例示した有機光電素子100、200は、太陽電池、イメージセンサ、光検出器、光センサ及び有機発光ダイオードなどに適用されるが、それらに限定されるものではない。
【0057】
図3は、本発明の技術的思想による実施例によるイメージセンサ300を説明するための図面である。
図3を参照すれば、イメージセンサ300は、ピクセルPX1を含むことができる。ピクセルPX1は、垂直方向に積層された第1層1F及び第2層2Fを含むX2構造または、光学スタック構造(optical stack structure)からなる。
【0058】
第1層1Fは、2個の赤(R)単位ピクセルと、2個の青(B)単位ピクセルを含むことができる。第2層2Fは、緑(G)単位ピクセルからなる。
【0059】
図4は、
図3に例示したイメージセンサ300を構成することができる例示的なイメージセンサ300Aの断面図である。
図4において、
図1と同じ参照符号は、同一部材を示し、ここでは、それらに係わる詳細な説明を略す。
【0060】
図4を参照すれば、イメージセンサ300Aは、有機CMOSイメージセンサである。イメージセンサ300Aは、光感知素子350B、350R、電荷ストレージ355、及び伝送トランジスタ(図示せず)が集積されている半導体基板310、下部絶縁膜360、カラーフィルター層370、上部絶縁膜380、及び有機光電素子100を含む。
【0061】
半導体基板310は、シリコン基板を含むことができる。光感知素子350B、350Rは、光ダイオードである。イメージセンサ300Aは、
図3に例示したピクセルPX1を構成してもよい。イメージセンサ300Aにおいて、1個のピクセルPX1は、光感知素子350B、350R、電荷ストレージ355、及び伝送トランジスタを含む。例示的な実施例において、光感知素子350Bは、青色波長領域の光を感知するように構成され、青(B)単位ピクセルを構成し、光感知素子350Rは、赤色波長領域の光を感知するように構成されて赤(R)単位ピクセルを構成し、電荷ストレージ355は、緑(G)単位ピクセルを構成する。
【0062】
光感知素子350B、350Rは、光をセンシングし、光感知素子350B、350Rでセンシングされた情報は、伝送トランジスタによって伝達される。電荷ストレージ355は、有機光電素子100と電気的に連結されるように構成される。電荷ストレージ355の情報は、伝送トランジスタによって伝達される。
【0063】
図4には、光感知素子350B、350Rが半導体基板310の主面(main surface)延長方向と平行な水平方向に並んで配列された構造を例示したが、本発明の技術的思想は、その限りではない。例えば、光感知素子350B及び光感知素子350Rは、半導体基板310の主面延長方向と直交する垂直方向に互いにオーバーラップされるようにも配置される。
【0064】
例示的な実施例において、イメージセンサ300Aは、半導体基板310を覆う金属配線(図示せず)及びパッド(図示せず)をさらに含むことができる。前記金属配線及び前記パッドは、信号遅延を抑制するために、比較的低い比抵抗を有する金属、例えば、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、銀(Ag)、または、それらの合金からなるが、それらに限定されるものではない。前記金属配線及び前記パッドは、光感知素子350B、350Rの上部または下部に位置することができる。
【0065】
半導体基板310上には、下部絶縁膜360が形成される。下部絶縁膜360は、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜、SiC、SiCOH、SiCO、SiOF、または、それらの組合わせからなってもよい。
【0066】
下部絶縁膜360上には、カラーフィルター層370が形成される。カラーフィルター層370は、青色波長領域の光を選択的に透過するように構成され、青(B)単位ピクセルを構成するブルーカラーフィルター370Bと、赤色波長領域の光を選択的に透過するように構成され、赤(R)単位ピクセルを構成するレッドカラーフィルター370Rを含んでもよい。例示的な実施例において、カラーフィルター層370は、緑色フィルターをさらに備えてもよい。他の例示的な実施例において、カラーフィルター層370は、省略可能である。例えば、光感知素子350B及び光感知素子350Rが垂直方向に互いにオーバーラップされるように配置された構造である場合、光感知素子350B及び光感知素子350R)は、積層深さによって当該波長領域の光を選択的に吸収可能なので、カラーフィルター層370を備えなくてもよい。カラーフィルター層370は、上部絶縁膜380で覆われてもよい。
【0067】
イメージセンサ300Aは、上部絶縁膜380及び下部絶縁膜360を貫通する貫通部385を含む。貫通部385によって、電荷ストレージ355と有機光電素子100の第1電極110とが互いに連結される。
【0068】
上部絶縁膜380上には、有機光電素子100が形成される。有機光電素子100は、
図1を参照して説明したように、第1電極110、活性層120、及び第2電極130を含む。有機光電素子100の緑色波長領域の光を選択的に吸収するように構成される。第1電極110及び第2電極130は、それぞれ透明電極である。活性層120は、緑色波長領域の光を選択的に吸収し、緑(G)単位ピクセルを構成するカラーフィルターを代替することができる。
【0069】
有機光電素子100の第2電極130側から入射された光は、活性層120で緑色波長領域の光が主に吸収されて光電変換され、残りの波長領域の光は、第1電極110を通過して光感知素子350B、350Rでセンシングされる。有機光電素子100の活性層120は、化学式(1)の化合物を含むことで緑色波長領域の光の選択的吸収性が優秀になる。したがって、イメージセンサ300Aに有用に使用される。
【0070】
イメージセンサ300Aは、緑色波長領域の光を選択的に吸収する有機光電素子100が積層された構造を有することで、イメージセンサ300Aの大きさを減少させることができる。したがって、小型化されたイメージセンサ300Aを具現することができる。
【0071】
図5は、
図3に例示したイメージセンサ300を構成可能な他の例示的なイメージセンサ(300B)の断面図である。
図5において、
図1、
図2、及び
図4のような参照符号は、同一部材を示し、ここでは、それらに係わる詳細な説明を省略する。
【0072】
図5を参照すれば、イメージセンサ300Bは、
図4を参照して説明したイメージセンサ300Aとほぼ同じ構成を有する。但し、イメージセンサ300Bは、
図1に例示した有機光電素子100の代わりに、
図2に例示した有機光電素子200を含む。
【0073】
図6は、
図3に例示したイメージセンサ300を構成するさらに他の例示的なイメージセンサ300Cの断面図である。
図6において、
図1及び
図4と同じ参照符号は、同一部材を示し、ここでは、それらに係わる詳細な説明を省略する。
【0074】
図6を参照すれば、イメージセンサ300Cは、
図4を参照して説明したイメージセンサ300Aとほぼ同じ構成を有する。但し、イメージセンサ300Cにおいて光感知素子350B及び光感知素子350Rは、垂直方向に互いにオーバーラップされるように配置されている。イメージセンサ300Cは、
図4に例示したイメージセンサ300Aと異なってカラーフィルター層370を含まない。
【0075】
イメージセンサ300Cにおいて、光感知素子350B及び光感知素子350Rは、電荷ストレージ355と電気的に連結可能に構成され、電荷ストレージ355の情報は、伝送トランジスタ(図示せず)によって伝達される。光感知素子350B及び光感知素子350Rは、積層深さによって当該波長領域の光を選択的に吸収する。
【0076】
有機光電素子100の活性層120は、化学式(1)の化合物を含むことで、緑色波長領域の光の選択的吸収性が優秀になる。したがって、イメージセンサ300Cに有用に使用される。イメージセンサ300Cは、緑色波長領域の光を選択的に吸収する有機光電素子100が積層された構造を有することで、イメージセンサ300Cの大きさを減少させることができる。したがって、小型化されたイメージセンサ300Cを具現することができる。
【0077】
図6では、イメージセンサ300Cが
図1に例示した有機光電素子100を含む場合を例示したが、本発明の技術的思想は、その限りではない。例えば、イメージセンサ300Cで
図1に例示した有機光電素子100の代わりに、
図2に例示した有機光電素子200を含んでよい。
【0078】
図4ないし
図6に例示したイメージセンサ300A、300B、300Cに含まれた有機光電素子100、200は、緑色の選択的吸収性に優れるので、緑色以外の波長領域の光を不要に吸収して発生するクロストークが減少し、イメージセンサ300A、300B、300Cの感度を高めることができる。
【0079】
図7は、本発明の技術的思想による他の実施例によるイメージセンサ400を説明するための図面である。
【0080】
図7を参照すれば、イメージセンサ400は、ピクセルPX2を含む。ピクセルPX2は、垂直方向に積層された第1層1F、第2層2F、及び第3層3Fを含む。第1層1Fは、赤(R)単位ピクセルからなり、第2層2Fは、青(B)単位ピクセルからなり、第3層3Fは、緑(G)単位ピクセルからなる。赤(R)単位ピクセル、青(B)単位ピクセル、及び緑(G)単位ピクセルは、垂直方向に互いにオーバーラップされるように配置される。
【0081】
図7には、垂直方向に沿って赤(R)単位ピクセル、青(B)単位ピクセル、及び緑(G)単位ピクセルが順次に積層された構造を例示したが、本発明の技術的思想は、その限りではない。赤(R)単位ピクセル、青(B)単位ピクセル、及び緑(G)単位ピクセルの積層順序は、多様な変更が可能である。
【0082】
図7において、緑(G)単位ピクセルは、
図1に例示した有機光電素子100、または、
図2に例示した有機光電素子200を含む。青(B)単位ピクセルは、相互対面する一対の電極と、前記一対の電極間に介在され、青色波長領域の光を選択的に吸収する有機物質を含む活性層を含む。赤(R)単位ピクセルは、一対の電極と、前記一対の電極間に介在され、赤色波長領域の光を選択的に吸収する有機物質を含む活性層を含む。
【0083】
図7に例示したイメージセンサ400は、赤(R)単位ピクセル、青(B)単位ピクセル、及び緑(G)単位ピクセルが垂直方向に互いにオーバーラップされている構造を有するので、イメージセンサ400の大きさをさらに減らして小型化されたイメージセンサ400を具現することができる。
【0084】
図3ないし
図7を参照して説明したイメージセンサ300、300A、300B、300C、400は、イメージセンサ、モバイルフォン、デジタルカメラ、バイオセンサのような多様な電子素子に適用される。
【0085】
図8は、本発明の技術的思想による実施例による電子素子1000のブロック図である。電子素子1000は、イメージセンサモジュールを構成することができる。
【0086】
図8を参照すれば、電子素子1000は、制御部1100、光源1200、イメージセンサ1300、デュアルバンドパスフィルター1400、及び信号処理部1500を含む。
【0087】
制御部1100は、光源1200と、イメージセンサ1300に含まれた複数のピクセルそれぞれの動作を制御する。光源1200は、光源制御信号LCによって感知対象物1600にパルス光L_tr、すなわち、オン(ON)/オフ(OFF)タイミングが制御された光を照射する。感知対象物1600に周期的に照射されるパルス光L_trは、感知対象物1600で反射される。
【0088】
イメージセンサ1300は、複数のピクセルを含むピクセルアレイを含む。イメージセンサ1300は、
図3ないし
図7を参照して説明したイメージセンサ300、300A、300B、300C、400、または、それらから本発明の技術的思想の範囲内で多様に変形及び変更されたイメージセンサの構成を含むことができる。
【0089】
イメージセンサ1300は、感知対象物1600から反射された光L_rfをデュアルバンドパスフィルター1400を通じて受光する。デュアルバンドパスフィルター1400は、感知対象物1600から反射された光L_rfのうち、近赤外線領域で選択される第1波長の光及び第2波長の光を選択的に通過させる。一部実施例において、前記第1波長の光及び前記第2波長の光は、それぞれ約810nm及び約940nmのうちから選択される互いに異なる波長であってもよいが、その限りではない。
【0090】
制御部1100は、光源1200及びイメージセンサ1300の動作を制御する。例えば、制御部1100は、光源1200の光源制御信号LCと、イメージセンサ1300に含まれたピクセルアレイを制御するためのピクセルアレイ制御信号DCを生成し、光源1200及びイメージセンサ1300の動作を制御する。
【0091】
イメージセンサ1300は、感知対象物1600から反射された光L_rfのうち、選択された波長の光、例えば、約810nm波長の光及び約940nm波長の光をデュアルバンドパスフィルター1400を通じて受け入れて制御部1100から受信されたピクセルアレイ制御信号DCによって電荷信号Voutを出力する。
【0092】
信号処理部1500は、イメージセンサ1300から受信された電荷信号Voutに基づいて深さ情報DD及び虹彩情報IDを出力することができる。
【0093】
図9は、本発明の技術的思想による他の実施例による電子素子2000のブロック図である。例示的な実施例において、電子素子2000は、CMOSイメージセンサを含むイメージセンサパッケージで構成される。
【0094】
電子素子2000は、イメージセンサチップ2100、ロジックチップ2200、及びメモリチップ2300を含む。例示的な実施例において、イメージセンサチップ2100、ロジックチップ2200、及びメモリチップ2300は、パッケージ基板(図示せず)上で前記パッケージ基板の延長方向に垂直に互いにオーバーラップされるように実装される。
【0095】
イメージセンサチップ2100は、複数の単位ピクセルを含むピクセルアレイと配線構造を含む。イメージセンサチップ2100は、
図3ないし
図7を参照して説明したイメージセンサ300、300A、300B、300C、400、または、それらから本発明の技術的思想の範囲内で多様に変形及び変更されたイメージセンサの構成を含むことができる。
【0096】
ロジックチップ2200は、前記パッケージ基板上でイメージセンサチップ2100と垂直にオーバーラップされるように配置され、イメージセンサチップ2100から出力されたピクセル信号を処理するように構成される。メモリチップ2300は、前記パッケージ基板上でイメージセンサチップ2100及びロジックチップ2200と垂直にオーバーラップされるように配置され、ロジックチップ2200によって処理されたピクセル信号とイメージセンサチップ2100から出力されたピクセル信号のうち、少なくとも1つを保存するように構成される。メモリチップ2300は、少なくとも1つの再配線構造RDLを通じてロジックチップ2200に連結される。メモリチップ2300は、前記少なくとも1つの再配線構造RDLとロジックチップ2200を貫通するTSV(through silicon via)コンタクトを通じてイメージセンサチップ2100に連結されるように構成される。ロジックチップ2200は、メモリチップ2300とイメージセンサチップ2100との間に介在された状態でメモリチップ2300及びイメージセンサチップ2100と垂直にオーバーラップされる。
【0097】
イメージセンサチップ2100のピクセルアレイブロックから伝送される画像データは、ロジックチップ2200に含まれた複数のアナログ/デジタル変換器に伝送され、前記複数のアナログ/デジタル変換器からメモリチップ2300に伝送されたデータは、メモリチップ2300のメモリセルアレイに書き込まれる。
【0098】
ロジックチップ2200で処理されたイメージ信号は、イメージ処理装置2500に伝送される。イメージ処理装置2500は、少なくとも1つのイメージ信号プロセッサ(Image Signal Processor:ISP)2510と後処理部2520を含む。イメージ処理装置2500は、イメージセンサチップ2100で撮影された映像をディスプレイ(図示せず)を通じてプレビューとして出力することができ、ユーザなどによってキャプチャー命令が入力されれば、イメージセンサチップ2100で撮影された映像がメモリチップ2300に保存される。後処理部2520は、イメージセンサチップ2100で撮影された映像からデジタルイメージ信号を提供するための多様な動作を行うことができる。例えば、後処理部2520では、イメージ信号プロセッサ2510で行われないコントラスト改善、鮮明度改善、ノイズ除去などのための多様な後処理アルゴリズムが行われる。後処理部2520からの出力は、ビデオコーデック(codec)処理部(図示せず)に提供され、前記ビデオコーデック処理部を経た映像がディスプレイ(図示せず)に出力されるか、メモリチップ2300に保存される。
【0099】
次いで、本発明の技術的思想による実施例による有機化合物についてさらに詳細に説明する。後述する例示的な有機化合物及びそれらの合成方法は、単に説明の目的のためのものであり、本発明の範囲を制限するものではない。
【0100】
化学式(1a)の合成
【0101】
【化6】
(IUPAC名:10-(4-([2,2’-bithiophen]-5-yl)phenyl)-2,8-diethyl-5,5-difluoro-1,3,7,9-tetramethyl-5H-4λ
4,5λ
4-dipyrrolo[1,2-c:2’,1’-f][1,3,2]diazaborinine)
化学式(1a)の化合物を(反応式1)によって合成した。
【0102】
【化7】
原料化合物2,8-ジエチル-5,5-ジフルオロ-10-(4-ヨードフェニル)-1,3,7,9-テトラメチル-5H-4λ
4、5λ
4-ジピロロ[1,2-c:2’、1’-f][1,3,2]ジアザボリニン(2,8-diethyl-5,5-difluoro-10-(4-iodophenyl)-1,3,7,9-tetramethyl-5H-4λ
4,5λ
4-dipyrrolo[1,2-c:2’,1’-f][1,3,2]diazaborinine)は、文献(Journal of the American Chemical Society, 128(45), 14474-14475(2006))に記載の方法で合成した。
【0103】
100mlフラスコ内に前記原料化合物3.00g(5.9mmol)、5-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-2,2’-ビチオフェン(5-(4,4,5,5-tetramethyl-1,3,2-dioxaborolan-2-yl)-2,2’-bithiophene) 1.81 g (6.2 mmol)、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(bis(dibenzylideneacetone)palladium)0.173g(0.30mmol)、トリ-tert-ブチルホスホニウムテトラフルオロボラート(tri-tert-butylphosphonium tetrafluoroborate)0.174g(0.60mmol)、炭酸カリウム(potassium carbonate)2.44g(17.7mmol)、テトラヒドロフラン(tetrahydrofuran)40g、及び水10gを加え、6時間加熱還流撹拌した。次いで、その溶液を室温に冷却後、トルエン及び水で洗浄して、油層を減圧濃縮した後、昇華精製して、化学式(1a)1.50gを得た。
【0104】
1H-NMR(CDCl3,ppm):δ=0.99(t,J=7.6Hz,6H),1.38(s,6H),2.31(q,J=7.6Hz,4H),2.54(s,6H),7.04-7.07(m,1H),7.19(d,J=4Hz,1H),7.23-7.25(m,2H),7.30(d,J=7.6Hz,1H),7.34(d,J=3.6Hz,1H),7.73(d,J=10.4Hz,2H)
化学式(1b)の合成
【0105】
【化8】
(IUPAC名:10-(4-(benzo[b]thiophen-2-yl)phenyl)-2,8-diethyl-5,5-difluoro-1,3,7,9-tetramethyl-5H-4λ
4,5λ
4-dipyrrolo[1,2-c:2’,1’-f][1,3,2]diazaborinine)
化学式(1b)の化合物を(反応式2)によって合成した。
【0106】
【化9】
原料化合物2,8-ジエチル-5,5-ジフルオロ-10-(4-ヨードフェニル)-1,3,7,9-テトラメチル-5H-4λ
4、5λ
4-ジピロロ[1,2-c:2’、1’-f][1,3,2]ジアザボリニンは、化学式(1a)の化合物の合成時と同じ方法で合成した。
【0107】
100mlフラスコ内に前記原料化合物2g(3.9mmol)、ベンゾ[b]チオフェン-2-ボロン酸(benzo[b]thiophene-2-boronic acid) 0.7g(3.9mmol)、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム57mg(0.1mmol)、トリ-tert-ブチルホスホニウムテトラフルオロボラート0.06g(0.2mmol)、炭酸カリウム1.6g(11.8mmol)、テトラヒドロフラン40g、及び水10gを加え、6時間還流撹拌した。その溶液を室温に冷却後、水を加えて、反応混合物を濾過して得られた赤色固体を昇華精製して化学式(1b)0.6gを回収した。
【0108】
1H-NMRによって化合物を確認した。
【0109】
1H-NMR(CDCl3,ppm):δ=0.99(t,J=7.6Hz,6H),1.38(s,6H),2.31(q,J=7.6Hz,4H),2.54(s,6H),7.35(m,4H),7,67(s,1H),7.80-7.87(m,4H).
化学式(1c)の合成
【0110】
【化10】
(IUPAC名:10-(4-(dibenzo[b,d]thiophen-2-yl)phenyl)-2,8-diethyl-5,5-difluoro-1,3,7,9-tetramethyl-5H-4λ
4,5λ
4-dipyrrolo[1,2-c:2’,1’-f][1,3,2]diazaborinine)
化学式(1c)の化合物を(反応式3)によって合成した。
【0111】
【化11】
原料化合物2,8-ジエチル-5,5-ジフルオロ-10-(4-ヨードフェニル)-1,3,7,9-テトラメチル-5H-4λ
4、5λ
4-ジピロロ[1,2-c:2’、1’-f][1,3,2]ジアザボリニンは、化学式(1a)の化合物の合成時と同じ方法で合成した。
【0112】
100mlのフラスコ内に前記原料化合物2g(3.9mmol)、ジベンゾ[b,d]チエン-2-イルボロン酸(dibenzo[b,d]thien-2-ylboronic acid)0.9g(3.9mmol)、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム57mg(0.1mmol)、トリ-tert-ブチルホスホニウムテトラフルオロボラート0.06g(0.2mmol)、炭酸カリウム1.6g(11.8mmol)、テトラヒドロフラン40g、及び水10gを加え、6時間還流撹拌した。その溶液を室温に冷却後、水を加えて、反応混合物を濾過して得られた赤色固体を昇華精製して化学式(1c)0.51gを回収した。
【0113】
1H-NMRによって化合物を確認した。
1H-NMR(CDCl3,ppm):δ=1.02(t,J=7.6Hz,6H),1.40(s,6H),2.33(q,J=7.6 Hz,4H),2.56(s,6H),7.41-7.43(m,2H),7.50-7.53(m,2H),7.80(d,J=5Hz, 1H),7.85-7.91(m,3H),7.96(d,J=4.2Hz,1H),8.27(dd,J=4.4Hz,1H),8.45(s, 1H).
化学式(1d)の合成
【0114】
【化12】
(IUPAC名:10-(benzo[b]benzo[4,5]thieno[2,3-d]thiophen-2-yl)-2,8-diethyl-5,5-difluoro-1,3,7,9-tetramethyl-5H-4λ
4,5λ
4-dipyrrolo[1,2-c:2’,1’-f][1,3,2]diazaborinine)
化学式(1d)の化合物を(反応式4)によって合成した。
【0115】
【化13】
原料化合物10-クロロ-2,8-ジエチル-5,5-ジフルオロ-1,3,7,9-テトラメチル-5H-4λ
4、5λ
4-ジピロロ[1,2-c:2’、1’-f][1,3,2]ジアザボリニン(10-chloro-2,8-diethyl-5,5-difluoro-1,3,7,9-tetramethyl-5H-4λ
4,5λ
4-dipyrrolo[1,2-c:2’,1’-f][1,3,2]diazaborinine)は、文献(Chemistry.2014April22;20(17):5064-5074)に記載の方法で合成した。原料化合物2-(ベンゾ[b]ベンゾ[4,5]チエノ[2,3-d]チオフェン-2-イル)-4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン(2-(benzo[b]benzo[4,5]thieno[2,3-d]thiophen-2-yl)-4,4,5,5-tetramethyl-1,3,2-dioxaborolane)は、国際公開WO2012/121393に記載の方法で合成した。
【0116】
20mlフラスコ内に10-クロロ-2,8-ジエチル-5,5-ジフルオロ-1,3,7,9-テトラメチル-5H-4λ4、5λ4-ジピロロ[1,2-c:2’、1’-f][1,3,2]ジアザボリニン0.340g(1mmol)、2-(ベンゾ[b]ベンゾ[4,5]チエノ[2,3-d]チオフェン-2-イル)-4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン0.385g(1.05mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(tetrakis(triphenylphosphine)palladium(0))57.8mg(0.05mmol)、炭酸カリウム0.415g(3mmol)、テトラヒドロフラン4g、及び水1gを加え、6時間加熱還流撹拌した。その溶液を室温に冷却後、トルエン及び水で洗浄して、油層を減圧濃縮して赤色固体を得た。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィ(Toluene/Hexane=1/1)で精製後、昇華精製して化学式(1d)0.233gを回収した。
【0117】
1H-NMRによって化合物を確認した。
【0118】
1H-NMR(CDCl3,ppm):δ=0.98(t,J=7.6Hz,6H),1.28(s,6H),2.30(q,J=7.6Hz,4H),2.56(s,6H),7.39(d,J=8.4Hz,1H),7.52-7.45(m,2H),7.85(s,1H),7.92(d,J=7.6Hz,1H),7.97(d,J=8.0Hz,1H),8.01(d, J=8.4Hz,1H)
化学式(1e)の合成
【0119】
【化14】
(IUPAC名:10-(4-(benzo[b]benzo[4,5]thieno[2,3-d]thiophen-2-yl)phenyl)-2,8-diethyl-5,5-difluoro-1,3,7,9-tetramethyl-5H-4λ
4,5λ
4-dipyrrolo[1,2-c:2’,1’-f][1,3,2]diazaborinine)
化学式(1e)の化合物を(反応式5)によって合成した。
【0120】
【化15】
原料化合物2,8-ジエチル-5,5-ジフルオロ-10-(4-ヨードフェニル)-1,3,7,9-テトラメチル-5H-4λ
4、5λ
4-ジピロロ[1,2-c:2’、1’-f][1,3,2]ジアザボリニンは、化学式(1a)の化合物の合成時と同じ方法で合成した。原料化合物2-(ベンゾ[b]ベンゾ[4,5]チエノ[2,3-d]チオフェン-2-イル)-4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロールレインは、化学式(1d)の化合物の合成時と同じ方法で合成した。
【0121】
100mlフラスコ内に2,8-ジエチル-5,5-ジフルオロ-10-(4-ヨードフェニル)-1,3,7,9-テトラメチル-5H-4λ4、5λ4-ジピロロ[1,2-c:2’、1’-f][1,3,2]ジアザボリニン2.0g(3.9mmol)、2-(ベンゾ[b]ベンゾ[4,5]チエノ[2,3-d]チオフェン-2-イル)-4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン1.4g(3.9mmol)、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム57mg(0.1mmol)、トリ-tert-ブチルホスホニウムテトラフルオロボラート57mg(0.2mmol)、炭酸カリウム1.6g(11.8mmol)、1,2-ジメトキシエタン(1,2-dimethoxyethane)40g、及び水10gを加え、6時間加熱還流撹拌した。その溶液を室温に冷却後、水を加えて、反応混合物を濾過して得られた赤色固体を昇華精製して、化学式(1e)0.49gを回収した。
【0122】
1H-NMRによって化合物を確認した。
【0123】
1H-NMR(CDCl3,ppm):δ=1.00(t,J=7.6Hz,6H),1.39(s,6H),2.32(q,J=7.6Hz,4H),2.55(s,6H),7.40-7.52(m,4H),7.79-7.86(m,3H),7.91-8.00(m,3H),8.24(s,1H).
化学式(1f)の合成
【0124】
【化16】
(IUPAC名:10-(3-([2,2’-bithiophen]-5-yl)phenyl)-2,8-diethyl-5,5-difluoro-1,3,7,9-tetramethyl-5H-4λ
4,5λ
4-dipyrrolo[1,2-c:2’,1’-f][1,3,2]diazaborinine)
化学式(1f)の化合物を(反応式6)によって合成した。
【0125】
【化17】
原料化合物10-クロロ-2,8-ジエチル-5,5-ジフルオロ-1,3,7,9-テトラメチル-5H-4λ
4、5λ
4-ジピロロ[1,2-c:2’、1’-f][1,3,2]ジアザボリニンは、化学式(1d)の化合物の合成時と同じ方法で合成した。
【0126】
20mlフラスコ内に5-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-2,2’-ビチオフェン1.02g(3.5mmol)、1-クロロ-3-ヨードベンゼン(1-chloro-3-iodobenzene)0.835g(3.5mmol)、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム0.101g(0.175mmol)、トリ-tert-ブチルホスホニウムテトラフルオロボラート0.102g(0.35mmol)、炭酸カリウム1.45g(10.5mmol)、テトラヒドロフラン12g、及び水3gを加え、6時間加熱還流撹拌した。次いで、その溶液を室温に冷却後、トルエン及び水洗して、油層を減圧濃縮して、淡緑色固体0.698gを得た。次いで、20mlフラスコ内に得られた粗生成物(crude product)全量(2.52mmol)、4,4,4’,4’,5,5,5’,5’-オクタメチル-2,2’-ビ(1,3,2-ジオキサボロラン)(4,4,4’,4’,5,5,5’,5’-octamethyl-2,2’-bi(1,3,2-dioxaborolane)0.704g(2.77mmol)0.704g(2.77mmol)、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム14mg(0.0252mmol)、トリ-tert-ブチルホスホニウムテトラフルオロボラート14.6g(0.0504mmol)、炭酸カリウム1.04g(7.56mmol)、及びN,N-ジメチルホルムアミド(N,N-dimethylformamide)10gを加え、6時間、100℃で還流した。その溶液を室温に冷却後、トルエン及び水で洗浄し、油層を減圧濃縮して淡黄色固体0.464gを得た。次いで、20mlフラスコ内に得られた粗生成物全量(1.26mmol)、10-クロロ-2,8-ジエチル-5,5-ジフルオロ-1,3,7,9-テトラメチル-5H-4λ4、5λ4-ジピロロ[1,2-c:2’、1’-f][1,3,2]ジアザボリニン0.408g(1.2mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(O)69mg(0.06mmol)、炭酸カリウム0.498g(3.6mmol)、テトラヒドロフラン12g、及び水3gを加え、6時間加熱還流撹拌した。その溶液を室温に冷却後、トルエン及び水洗して、油層を減圧濃縮して赤色固体を得た。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(Toluene/Hexane=1/1)で精製後、昇華精製して化学式(1f)0.415gを回収した。
【0127】
1H-NMRによって化合物を確認した。
【0128】
1H-NMR(CDCl3,ppm):δ=0.99(t,J=7.6Hz,6H),1.38(s,6H),2.31(q,J=7.5Hz,4H),2.55(s,6H),7.04-7.00(m,1H),7.16(d,J=3.6,1H),7.20-7.28(m,4H),7.50(t,J=7.8Hz,1H),7.56(s,1H),7.71(d,J=4.4Hz,1H)
化学式(1g)の合成
【0129】
【化18】
(IUPAC名:10-(4-([2,2’-bithiophen]-5-yl)phenyl)-5,5-difluoro-1,3,7,9-tetramethyl-5H-4λ
4,5λ
4-dipyrrolo[1,2-c:2’,1’-f][1,3,2]diazaborinine)
化学式(1g)の化合物を(反応式7)によって合成した。
【0130】
【化19】
50mlフラスコ内に[1-[(3,5-ジメチル-1H-ピロール-2-イル)-(3,5-ジメチル-2H-ピロール-2-イリジエン)-メチル]-4-ヨードベンゼン](ジフルオロボロラン)([1-[(3,5-Dimethyl-1H-pyrrol-2-yl)-(3,5-dimethyl-2H-pyrrol-2-ylidene)-methyl]-4-iodobenzene](difluorobororane))0.900g(2.0mmol)、5-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-2,2’-ビチオフェン0.643g(2.2mmol)、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム57.5mg(0.1mmol)、トリ-tert-ブチルホスホニウムテトラフルオロボラート58.4mg(0.2mmol)、炭酸カリウム0.829g(6.0mmol)、テトラヒドロフラン12g、及び水3gを加え、8時間加熱還流撹拌した。その溶液を室温に冷却後、水を加えて、反応混合物を濾過して得られた赤色固体を昇華精製して、化学式(1g)0.395gを回収した。
【0131】
1H-NMRによって化合物を確認した。
【0132】
1H-NMR(CDCl3,ppm):δ=1.48(s,6H),2.56(s,6H),7.04-7.06(m,1H),7.19(d,J=4.0Hz,1H),7.23-7.26(m,2H),7.3(d,J=8.4Hz,2H),7.34(d,J=3.6Hz,1H),7.74(d,J=8.4Hz,2H)
化学式(1h)の合成
【0133】
【化20】
(IUPAC名:10-(4-([2,2’-bithiophen]-5-yl)naphthalen-1-yl)-2,8-diethyl-5,5-difluoro-1,3,7,9-tetramethyl-5H-4λ
4,5λ
4-dipyrrolo[1,2-c:2’,1’-f][1,3,2]diazaborinine)
化学式(1h)の化合物を(反応式8)によって合成した。
【0134】
【化21】
原料化合物10-クロロ-2,8-ジエチル-5,5-ジフルオロ-1,3,7,9-テトラメチル-5H-4λ
4、5λ
4-ジピロロ[1,2-c:2’、1’-f][1,3,2]ジアザボリニンは、化学式(1d)の化合物の合成時と同じ方法で合成した。
【0135】
20mlフラスコ内に5-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-2,2’-ビチオフェン0.845g(2.9mmol)、1-クロロ-4-ヨードナフタレン(1-chloro-4-iodonaphthalene)0.835g(2.9mmol)、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム0.101g(0.175mmol)、トリ-tert-ブチルホスホニウムテトラフルオロボラート0.102g(0.35mmol)、炭酸カリウム1.45g(10.5mmol)、テトラヒドロフラン12g、及び水3gを加え、6時間加熱還流撹拌した。その溶液を室温に冷却後、トルエン及び水で洗浄し、油層を減圧濃縮して、淡緑色固体0.698gを得た。次いで、20mlフラスコ内に得られた粗生成物全量(2.52mmol)、4,4,4’,4’,5,5,5’,5’-オクタメチル-2,2’-ビ(1,3,2-ジオキサボロラン )0.704g(2.77mmol)、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム14mg(0.0252mmol)、トリ-tert-ブチルホスホニウムテトラフルオロボラート14.6g(0.0504mmol)、炭酸カリウム1.04g(7.56mmol)、及びN,N-ジメチルホルムアミド10gを加え、6時間、100℃で還流した。その溶液を室温に冷却後、トルエン及び水洗し、油層を減圧濃縮して淡黄色固体0.464gを得た。次いで、20mlフラスコ内に得られた粗生成物全量(1.37mmol)、10-クロロ-2,8-ジエチル-5,5-ジフルオロ-1,3,7,9-テトラメチル-5H-4λ4、5λ4-ジピロロ[1,2-c:2’、1’-f][1,3,2]ジアザボリニン0.573g(1.37mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(O)69mg(0.06mmol)、炭酸カリウム0.498g(3.6mmol)、テトラヒドロフラン12g、及び水3gを加え、6時間加熱還流撹拌した。その溶液を室温に冷却後、トルエン及び水洗し、油層を減圧濃縮して赤色固体を得た。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(Toluene/Hexane=1/1)で精製後、昇華精製して化学式(1h)0.415gを回収した。
【0136】
1H-NMRによって化合物を確認した。
【0137】
1H-NMR(CDCl3,ppm):δ=0.99(t,J=7.6Hz,6H),1.05(s,6H),2.31(q,J=7.5Hz,4H),2.55(s,6H),7.06-7.08(m,1H),7.15-7.19(m,2H),7.23-7.25(m,1H),7.28-7.30(m,1H),7.42(d,J=3.6Hz,1H),7.45-7.49(m,1H),7.53-7.57(m,1H),7.69(d,J=4.4Hz,1H),7.90(d,J=4.4Hz,1H),8.40(d,J=4.4Hz,1H)
化学式(1i)の合成
【0138】
【化22】
(IUPAC名:10-(4-bromophenyl)-1,3,7,9-tetramethyl-5,5-bis(4-(2-phenylpropan-2-yl)phenoxy)-5H-4λ4、5λ4-dipyrrolo[1,2-c:2’、1’-f][1,3,2]diazaborinine)
化学式(1i)の化合物を(反応式9)によって合成した。
【0139】
【化23】
200mlフラスコ内に2,4-ジメチルピロール(2,4-dimethylpyrrole)4.8g(50mmol)、4-ブロモベンゾイルクロリド(4-bromobenzoylchloride)5.5g(25mmol)、及びジクロロメタン70gを加え、室温で6時間撹拌した後、その溶液を5℃に冷却し、トリエチルアミン10g(99mmol)を加えて1時間撹拌した。次いで、ボロントリフルオリド-エチルエーテル錯体(boron trifluoride-ethyl ether complex)を10g(70mmol)加え、室温で1時間撹拌した。以後、溶液を洗浄して油層を濃縮し、赤橙色固体7.5gを得た。次いで、100mlフラスコに、得られた赤橙色固体0.6g、塩化アルミニウム(aluminum chloride)0.3g(2.2mmol)、ジクロロメタン60g、及び4-α-クミルフェノール(4-α-cumylphenol)11.6g(55mmol)を加えて2時間撹拌した。次いで、その溶液に水を加え、油水分離を行い、油層を減圧濃縮し、赤橙色固体0.5gを得た。得られた赤橙色固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、化学式(1i)0.2gを回収した。
【0140】
1H-NMRによって化合物を確認した。
【0141】
1H-NMR(CDCl3,ppm):δ=1.50(s,6H),1.60(s,12H),2.55(s,6H),5.88(s,2H),6.46(d,J=4.2Hz,2H),6.86(d,J=4.2Hz,4H),6.98(d,J=8Hz,2H),7.11-7.25(m,10H),7.57(d,J=8Hz,2H).
化学式(1j)の合成
【0142】
【化24】
(IUPAC名:2,8-di([2,2’-bithiophen]-5-yl)-5,5-difluoro-1,3,7,9-tetramethyl-10-(4-(trifluoromethyl)phenyl)-5H-4λ
4,5λ
4-dipyrrolo[1,2-c:2’,1’-f][1,3,2]diazaborinine)
化学式(1j)の化合物を(反応式10)によって合成した。
【0143】
【化25】
200mlフラスコ内に2,4-ジメチルピロール4.8g(50mmol)、4-(トリフルオロメチル)ベンゾイルクロリド(4-(trifluoromethyl)benzoylchloride)5.3g(25mmol)、及びジクロロメタン70gを加え、室温で14時間撹拌した後、その溶液を5℃に冷却し、トリエチルアミン10g(99mmol)を加えて3時間撹拌した。次いで、ボロントリフルオリド-エチルエーテル錯体10g(70mmol)を加え、室温で1時間撹拌した。以後、溶液を洗浄して油層を減圧濃縮し、赤橙色固体2.4gを得た。次いで、100mlフラスコに、得られた赤橙色固体1.0g、ジクロロメタン20g、及びN-ヨードスクシンイミド(N-iodosuccinimide)5.6g(25mmol)を加えた後、室温で14時間撹拌した。次いで、その溶液に水を加え、油水分離を行い、油層を減圧濃縮して赤橙色固体0.5gを得た。30mlフラスコに、得られた赤橙色固体全量(0.78mmol)、5-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-2,2’-ビチオフェン0.57g(2.0mmol)、酢酸パラジウム20mg(0.089mmol)、トリフェニルホスフィン100mg(0.38mmol)、炭酸カリウム83mg(600mmol)、テトラヒドロフラン10g、および水2.5gを加え、70℃で17時間還流した。得られた赤橙色固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して化学式(1j)0.2gを回収した。
【0144】
1H-NMRによって化合物を確認した。
【0145】
1H-NMR(CDCl3,ppm):δ=1.40(s,6H),2.59(s,6H),6.76(d,J=3.6Hz,2H),6.97-7.00(m,2H),7.13-7.25(m,6H)7.52(d,J=8Hz,2H),7.81(d,J=8Hz,2H).
化学式(1k)の合成
【0146】
【化26】
(IUPAC名:2,5-bis(4-(2,8-diethyl-5,5-difluoro-1,3,7,9-tetramethyl-5H-4λ
4,5λ
4-dipyrrolo[1,2-c:2’,1’-f][1,3,2]diazaborinin-10-yl)phenyl)thiophene)
化学式(1k)の化合物を(反応式11)によって合成した。
【0147】
【化27】
原料化合物2,8-ジエチル-5,5-ジフルオロ-10-(4-ヨードフェニル)-1,3,7,9-テトラメチル-5H-4λ
4、5λ
4-ジピロロ[1,2-c:2’、1’-f][1,3,2]ジアザボリニンは、化学式(1a)の化合物の合成時と同じ方法で合成した。
【0148】
50mlフラスコ内に2,5-ジブロモチオフェン(2,5-dibromothiophene)1.45g(6.0mmol)、4,4,4’,4’,5,5,5’,5’-オクタメチル-2,2’-ビ(1,3,2-ジオキサボロラン )(4,4,4’,4’,5,5,5’,5’-octamethyl-2,2’-bi(1,3,2-dioxaborolane))3.35g(13.2mmol)、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム35mg(0.06mmol)、トリ-tert-ブチルホスホニウムテトラフルオロボラート34.8mg(0.12mmol)、炭酸カリウム4.98g(36mmol)、及びテトラヒドロフラン40gを加え、8時間加熱還流撹拌した。その溶液を室温に冷却後、トルエン及び水洗し、油層を減圧濃縮して茶色固体を得た。その茶色固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(toluene)で精製後、白色固体0.80gを得た。次いで、50mlフラスコ内に得られた白色固体0.504g(1.5mmol)、2,8-ジエチル-5,5-ジフルオロ-10-(4-ヨードフェニル)-1,3,7,9-テトラメチル-5H-4λ4、5λ4-ジピロロ[1,2-c:2’、1’-f][1,3,2]ジアザボリニン1.41g(3.06mmol)、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム86.3mg(0.15mmol)、トリ-tert-ブチルホスホニウムテトラフルオロボラート87mg(0.3mmol)、炭酸カリウム1.24g(9mmol)、テトラヒドロフラン12g、及び水3gを加えて、8時間加熱還流撹拌した。その溶液を室温に冷却後、THF(tetrahydrofuran)及び水で洗浄し、油層を減圧濃縮して茶色固体を得た。その茶色固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(toluene)で精製して化学式(1k)0.62gを回収した。
【0149】
1H-NMRによって化合物を確認した。
【0150】
1H-NMR(CDCl3,ppm):δ=0.97(t,J=7.4Hz,12H),1.39(s,12H),2.32(q,J=7.3Hz,8H),2.55(s,12H),7.33(d,J=7.6Hz,4H),7.45(s,2H),7.78(d,J=8.0Hz,4H)
化学式(1l)の合成
【0151】
【化28】
(IUPAC名:2,8-diethyl-5,5-difluoro-1,3,7,9-tetramethyl-10-phenyl-5H-4λ
4,5λ
4-dipyrrolo[1,2-c:2’,1’-f][1,3,2]diazaborinine)
化学式(1l)は、アルドリッチ社製品の試薬を使用した。昇華精製を行って化学式(1l)を回収した。
【0152】
1H-NMRによって化合物を確認した。
【0153】
1H-NMR(CDCl3,ppm):δ=7.40-7.37(m,3H),7.21-7.17(m,2H),2.45(s,6H),2.22(q,J=7.5Hz,4H),1.20(s,6H),0.90(t,J=7.5Hz,6H).
化学式(1m)の合成
【0154】
【化29】
(IUPAC名e:10-([1,1’:4’,1’’-terphenyl]-4-yl)-2,8-diethyl-5,5-difluoro-1,3,7,9-tetramethyl-5H-4λ
4,5λ
4-dipyrrolo[1,2-c:2’,1’-f][1,3,2]diazaborinine)
化学式(1m)の化合物は、化学式(1a)の化合物の合成時に使用された5-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-2,2’-ビチオフェンを、2-(4-ビフェニリル)-4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン(2-(4-biphenylyl)-4,4,5,5-tetramethyl-1,3,2-dioxaborolane)に代替し、化学式(1a)の化合物の合成時と同様のモル配合比で同一作業を行い、化学式(1m)1.60gを回収した。
【0155】
また、1H-NMRによって化合物を確認した。
【0156】
1H-NMR(CDCl3,ppm):δ=0.99(t,J=7.6Hz,6H),1.37(s,6H),2.31(q,J=7.3Hz,4H),2.55(s,6H),7.36-7.40(m,3H),7.50)t,J=7.6Hz,2H),7.67(d,J=7.6Hz,2H),7.73(d,J=8.4Hz,2H),7.78-7.61(m,4H)
以下、本発明の技術的思想による実施例による有機化合物の物理的特性について説明する。
【0157】
表1は、本発明の技術的思想による実施例による有機化合物の物理的特性を評価した結果を、対照例の結果と共に示したものである。
【0158】
【表1】
表1の評価のために、化合物1aないし1mの化合物の吸光特性を溶液状態及び薄膜状態で評価した。
【0159】
図10Aないし
図10Hは、例1ないし例8の化合物、すなわち、化学式(1a)ないし(1h)の化合物について紫外線-可視光線(UV-visible)範囲の光を吸収する吸光特性を評価した吸光曲線グラフであり、
図10I及び
図10Jは、対照例1及び対照例2の化合物、すなわち、化学式(1l)及び化学式(1m)の化合物に対して吸光特性を評価した吸光曲線グラフである。
【0160】
表1の結果において、化学式(1a)ないし(1h)の化合物は、それぞれ薄膜状態で522~545nmで最大吸収波長(λmax)を有し、半値幅(full width at half maximum: FWHM)は、44~74nmであった。特に、化学式(1a)ないし(1f)の化合物は、それぞれ薄膜状態で537~542nmで最大吸収波長(λmax)を有し、半値幅(FWHM)は、52~74nmであった。かような結果から、化学式(1a)ないし(1h)の化合物を含む薄膜は、緑色波長領域の光に対する選択的吸光性に優れるということが分かる。
【0161】
また、
図10Aないし
図10Hの結果から、化学式(1a)ないし(1h)の化合物の吸光曲線は、ガウス分布と類似しているということを確認した。
【0162】
また、表1には、化学式(1a)ないし1mの化合物の熱安定性を評価するために、化学式(1a)ないし(1m)の化合物それぞれの前が温度(transition temperature: Tm)、昇華温度(sublimation temperature: Ts)、及び熱分解温度(thermal degradation temperature: Td)を測定した結果が示されている。表1において、化学式(1a)ないし(1h)の化合物の転移温度(Tm)は、概して十分に高く、化学式(1a)ないし(1h)の化合物の熱分解温度(Td)は、昇華温度(Ts)に比べて十分に高かった。かような結果から、化学式(1a)ないし(1h)の化合物は、真空下で安定性が非常に高いということが分かる。
【0163】
一方、対照例1による化学式(1l)の化合物は、薄膜状態で半値幅(FWHM)が比較的広く、熱的特性が比較的良くないと示され、薄膜状態で比較的高い反射率を示す。また、対照例1による化学式(1l)の化合物は、緑色波長領域のみならず、青色波長領域及び赤色波長領域でも吸光特性を示す。これは、真空下で転移温度(Tm)が比較的低く、比較的大きい凝集体粒子として存在するからである。例11による化学式(1k)の化合物は、評価過程で分解されて真空下で蒸着が不可能であり、これにより、昇華温度(Ts)及び分解温度(Td)が非常に近似値として示された。
【0164】
素子製造例1(有機光電素子の製造)
図11は、本発明の技術的思想による実施例による有機光電素子の製造例を説明するための断面図である。
図11を参照すれば、ガラス基板502上にITOからなる第1電極層510を形成し、第1電極層510上に30nm厚さのモリブデン酸化物薄膜からなる電子遮断層520を形成した。その後、電子遮断層520上に化学式(1a)の化合物とC60(Frontier Carbon Company Ltd.)を3:2の体積比で共蒸着(co-depositing)して80nmの厚さを有する活性層530を形成した。その後、活性層530上にAlを真空蒸着して100nm厚さの第2電極540を形成して有機光電素子500を製造した。
【0165】
図12Aは、
図11を参照して説明した有機光電素子500の波長による外部量子効率(EQE)を評価した結果を示すグラフである。
【0166】
EQEは、IPCE(Incident Phototo Charge Carrier Efficiency)測定システム(CEP-2000M、Bunkoukeiki、Japan)を用いて測定した。
【0167】
素子製造例2-6(有機光電素子の製造)
化学式(1a)の化合物の代わりに、化学式(1b)、化学式(1d)、化学式(1f)、化学式(1g)、及び化学式(1h)の化合物を使用したことを除いて、素子製造例1と同じ方法で有機光電素子を製造した。
【0168】
図12Bないし
図12Fは、それぞれ化学式(1b)、化学式(1d)、化学式(1f)、化学式(1g)、及び化学式(1h)の化合物を含む活性層を有する有機光電素子の波長によるEQEを評価した結果を示すグラフである。
【0169】
対照例3(有機光電素子の製造)
化学式(1a)の化合物の代わりに、化学式(1m)を使用したことを除いて、素子製造例1と同じ方法で有機光電素子を製造した。
【0170】
図12Gは、化学式(1m)の化合物を含む活性層を有する有機光電素子の波長によるEQEを評価した結果を示すグラフである。
【0171】
図12Aないし
図12Gの結果から、本発明の技術的思想による実施例による化合物である化学式(1a)、化学式(1b)、化学式(1d)、化学式(1f)、化学式(1g)、及び化学式(1h)を含む活性層を有する有機光電素子は、約500~570nmの緑色波長領域でのEQEが比較的高く、約400~450nmの青色波長領域でのEQEと約600nm以上の赤色波長領域でのEQEは、緑色波長領域でのEQEに比べて低いことが分かる。
【0172】
一方、BODIPYコアのメソ(meso)位置で2個のフェニレン環と1つのフェニル環を有し、硫黄原子を含まない化学式(1m)の化合物を含む対照例3による有機光電素子の場合、表1の結果では、化学式(1a)、化学式(1b)、化学式(1d)、化学式(1f)、化学式(1g)、及び化学式(1h)の化合物と類似した物理的特性を示したにもかかわらず、化学式(1a)、化学式(1b)、化学式(1d)、化学式(1f)、化学式(1g)、及び化学式(1h)の化合物を含む活性層を有する有機光電素子に比べて緑色波長領域でのEQEが低かった。
【0173】
熱的安定性評価
化学式(1a)、化学式(1b)、化学式(1d)、化学式(1f)、化学式(1g)、及び化学式(1h)の化合物を含む活性層を有する有機光電素子は、n2ガス雰囲気下で130℃でアニーリングした後にも、有機光電素子の特性が劣化しないことを確認した。かような結果から、化学式(1a)、化学式(1b)、化学式(1d)、化学式(1f)、化学式(1g)、及び化学式(1h)の化合物は、熱的安定性が非常に優秀であるということが分かる。
【0174】
一方、化学式(1l)の化合物を含む活性層を有する有機光電素子は、n2ガス雰囲気下で130℃にアニーリングした後に有機光電素子の特性が劣化したことを確認した。これは、化学式(1l)の構造が薄膜形態で熱的安定性が低くなるからであると判断することができる。
【0175】
以上、本発明を望ましい実施例を挙げて詳細に説明したが、本発明は、前記実施例に限定されず、本発明の技術的思想及び範囲内で当分野で通常の知識を有する者によって様々な変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0176】
110 第1電極
120 活性層
130 第2電極
240 第1電荷補助層
250 第2電荷補助層