(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-05
(45)【発行日】2023-12-13
(54)【発明の名称】漏液ガイド装置、ポンプ、および漏液ガイド装置を取り付ける方法
(51)【国際特許分類】
F04D 29/70 20060101AFI20231206BHJP
F04D 29/12 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
F04D29/70 F
F04D29/12 A
(21)【出願番号】P 2019211129
(22)【出願日】2019-11-22
【審査請求日】2022-05-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100091498
【氏名又は名称】渡邉 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100174089
【氏名又は名称】郷戸 学
(74)【代理人】
【識別番号】100186749
【氏名又は名称】金沢 充博
(72)【発明者】
【氏名】チンチャン マリナト
(72)【発明者】
【氏名】松山 哲也
(72)【発明者】
【氏名】小谷田 寿雄
(72)【発明者】
【氏名】近藤 雅則
【審査官】大瀬 円
(56)【参考文献】
【文献】実開昭57-168799(JP,U)
【文献】実開昭58-118360(JP,U)
【文献】実開昭53-115262(JP,U)
【文献】実開昭54-018558(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/70
F04D 29/12
F16J 15/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グランドパッキンの外周面に沿って漏洩した液体を案内するための漏液ガイド装置であって、
前記グランドパッキンが収容されるパッキンハウジングの外周面に沿った形状の内周面を有するガイド部材を備えており、
前記ガイド部材の一部は分断されており、
前記漏液ガイド装置は、前記ガイド部材の分断された端部同士を互いに締結する締結機構をさらに備えている、漏液ガイド装置。
【請求項2】
前記ガイド部材は、外輪と、前記外輪の内周面に配置された内輪を備えており、
前記締結機構は、前記外輪の分断された端部同士を互いに締結するように構成され、
前記内輪は弾性材料から構成されている、請求項1に記載の漏液ガイド装置。
【請求項3】
グランドパッキンの外周面に沿って漏洩した液体を案内するための漏液ガイド装置であって、
前記グランドパッキンが収容されるパッキンハウジングの外周面に沿った形状の内周面を有するガイド部材を備えており、
前記ガイド部材は、複数の分割体に分割されており、
前記漏液ガイド装置は、前記複数の分割体を互いに締結する複数の締結機構をさらに備えている、漏液ガイド装置。
【請求項4】
グランドパッキンの外周面に沿って漏洩した液体を案内するための漏液ガイド装置であって、
前記グランドパッキンが収容されるパッキンハウジングの外周面に沿った形状の内周面を有するガイド部材を備えており、
前記ガイド部材は、外輪と、前記外輪の内周面に配置された内輪を備えており、
前記外輪は、複数の分割体に分割されており、
前記内輪の少なくとも一部は分断されており、
前記漏液ガイド装置は、前記複数の分割体を互いに締結する複数の締結機構をさらに備えており、
前記内輪は弾性材料から構成されている、漏液ガイド装置。
【請求項5】
前記漏液ガイド装置は、前記パッキンハウジングに取り付けられた前記ガイド部材の下端に固定された液受け部材をさらに備えている、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の漏液ガイド装置。
【請求項6】
前記液受け部材は、前記ガイド部材の中心軸線に対して傾いている、請求項5に記載の漏液ガイド装置。
【請求項7】
前記液受け部材は、その上面に液体流路を有している、請求項5または6に記載の漏液ガイド装置。
【請求項8】
ポンプケーシングと、
前記ポンプケーシング内に配置された羽根車と、
前記羽根車が固定された回転軸と、
前記回転軸と前記ポンプケーシングとの隙間を封止するグランドパッキンと、
前記回転軸を回転可能に支持する軸受を保持する軸受ハウジングと、
前記グランドパッキンの外周面に沿って漏洩した液体を案内するための漏液ガイド装置を備え、
前記ポンプケーシングは、前記グランドパッキンが収容された円筒状の前記パッキンハウジングを有しており、
前記漏液ガイド装置は、前記パッキンハウジングの外周面に嵌合した内周面を有するガイド部材を備え、
前記パッキンハウジングに取り付けられた前記ガイド部材を含む前記漏液ガイド装置の最下端は、前記ポンプケーシングと前記軸受ハウジングとの接合面よりも前記ポンプケーシングから遠い位置
であって、かつ前記軸受ハウジングの
底壁に形成されたドレイン孔の
直上に位置して
おり、
前記ガイド部材は、リング形状を有し、前記パッキンハウジングの前記外周面に隙間なく固定され、前記ガイド部材の外周面で前記漏洩した液体を堰き止めるように構成されている、ポンプ。
【請求項9】
ポンプのグランドパッキンの外周面に沿って漏洩した液体を案内するための漏液ガイド装置を取り付ける方法であって、
前記ポンプは、羽根車が内部に配置されたポンプケーシングと、前記羽根車が固定された回転軸を回転可能に支持する軸受を保持する軸受ハウジングを備え、
漏液ガイド装置は、前記グランドパッキンが収容されるパッキンハウジングの外周面に沿うことができる内周面を有するガイド部材を備えており、
前記ガイド部材を前記パッキンハウジングの外周面に取り付ける取り付けステップと、
前記パッキンハウジングの外周面に取り付けられた前記ガイド部材の取り付け位置を調整する調整ステップを含み、
前記漏液ガイド装置の最下端が、前記ポンプケーシングと前記軸受ハウジングとの接合面よりも前記ポンプケーシングから遠い位置に配置され、かつ前記ガイド部材が、前記軸受ハウジングの底部に形成されたドレイン孔の上方に位置するように前記漏液ガイド装置が取り付けられる、方法。
【請求項10】
前記ガイド部材は、その一部が欠落した切り欠きを有しており、
前記調整ステップは、前記切り欠きが前記グランドパッキンの最下部とは異なる位置に配置されるよう前記切り欠きの位置を調整するステップである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
ポンプのグランドパッキンの外周面に沿って漏洩した液体を案内するための漏液ガイド装置を取り付ける方法であって、
漏液ガイド装置は、前記グランドパッキンが収容されるパッキンハウジングの外周面に沿うことができる内周面を有するガイド部材を備えており、
前記ガイド部材を前記パッキンハウジングの外周面に取り付ける取り付けステップと、
前記パッキンハウジングの外周面に取り付けられた前記ガイド部材の取り付け位置を調整する調整ステップを含み、
前記ガイド部材の一部は分断されており、
前記漏液ガイド装置は、前記ガイド部材の分断された端部同士を互いに締結する締結機構をさらに備えており、
前記調整ステップは、前記締結機構が前記グランドパッキンの最下部とは異なる位置に配置されるよう前記締結機構の位置を調整するステップである、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプのグランドパッキンの外周を伝って漏れた液体の流れを堰き止め、液体をドレイン孔に導くための漏液ガイド装置に関する。また、本発明は、そのような漏液ガイド装置を備えたポンプに関する。さらに、本発明は、漏液ガイド装置をポンプに取り付ける方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポンプの一例として、回転軸に固定された羽根車を回転させて液体を昇圧するタイプのポンプがある。羽根車はポンプケーシングに収容されており、液体はポンプケーシング内で昇圧される。ポンプケーシングと回転軸との間の隙間から液体が漏洩することを防止するために、軸封装置としてのグランドパッキンがポンプケーシングに保持される。
【0003】
図27は、グランドパッキンがポンプケーシングに保持された従来の構造を示す断面図である。グランドパッキン200は、全体として円筒形状を有している。グランドパッキン200は、ポンプケーシング203の円筒状のパッキンハウジング205に収容されている。グランドパッキン200の内周面は回転軸206の外周面に接触し、グランドパッキン200の外周面はパッキンハウジング205の内周面に接触している。パッキン押さえ207は、グランドパッキン200の外端面に接触しており、ボルト209によりポンプケーシング203に連結されている。
【0004】
ボルト209を締め付けると、パッキン押さえ207は、グランドパッキン200を回転軸206に沿ってポンプケーシング203の内側に向かって押し、結果として、グランドパッキン200はその径方向内側に変形する。このグランドパッキン200の変形により、グランドパッキン200の回転軸206に対する接触圧が変わる。したがって、ボルト209の締め付けにより、グランドパッキン200の回転軸206に対する接触圧を調節することができる。
【0005】
ポンプの運転中は、回転軸206の外周面はグランドパッキン200の内周面に摺接する。グランドパッキン200の回転軸206に対する接触圧が低すぎると、ポンプケーシング203内の液体が漏洩してしまう。一方、上記接触圧が高すぎると、回転軸206の外周面とグランドパッキン200の内周面との間に液体の流れはほとんどなく、グランドパッキン200が焼き付くおそれがある。このような観点から、ある程度の流量の液体がグランドパッキン200の内周面に沿って漏洩することが許容されるように、ボルト209の締め付けが調節される。
【0006】
グランドパッキン200の内周面に沿って漏洩した液体は、
図27の実線矢印で示すように、パッキン押さえ207上を流れ、パッキン押さえ207から下方に落下する。パッキン押さえ207の下方にはドレイン孔210が設けられている。このドレイン孔210は、ポンプケーシング203に連結された軸受ハウジング212の底部に形成されている。パッキン押さえ207から落下した液体は、軸受ハウジング212の底部に受けられ、ドレイン孔210を通ってポンプの外部に流出する。このように、ある程度の液体漏れは、グランドパッキン200の焼き付きを防止するために許容されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】実開昭57-168799号公報
【文献】実開平2-87998号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
これに対し、グランドパッキン200の外周面に沿った液体の漏洩は、ポンプ性能の低下を防ぐ観点から許容されるべきではない。ボルト209を締め付けたとき、グランドパッキン200の外周面はパッキンハウジング205の内周面に強く押し付けられるので、グランドパッキン200の外周面とパッキンハウジング205の内周面との間には隙間は実質的に形成されない。しかしながら、グランドパッキン200は、繊維状の材料から構成されているため、グランドパッキン200の外周面に沿った液体の漏洩を完全に防ぐことはできない。
【0009】
図27の点線矢印で示すように、グランドパッキン200の外周面に沿って漏洩した液体は、パッキンハウジング205の外周面の下部を伝って流れ、ポンプケーシング203の底部に達する。液体は、さらに、ポンプケーシング203と軸受ハウジング212との接合面215に達し、この接合面215の間の微小な隙間を通ってポンプの外に漏洩してしまう。漏洩した液体は、ポンプの脚部や、床などを腐食させるおそれがある。
【0010】
そこで、本発明は、グランドパッキンの外周面に沿って漏洩した液体を、ドレイン孔などの適切な場所に導くことができる漏液ガイド装置を提供する。また、本発明は、そのような漏液ガイド装置を備えたポンプを提供する。さらに、本発明は、漏液ガイド装置をポンプに取り付ける方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一参考例では、羽根車が内部に配置されたポンプケーシングと、前記羽根車が固定された回転軸を回転可能に支持する軸受を保持する軸受ハウジングを備えたポンプにおいて、グランドパッキンの外周面に沿って漏洩した液体を案内するための漏液ガイド装置であって、前記グランドパッキンが収容されるパッキンハウジングの外周面に嵌合した内周面を有するガイド部材を備え、前記パッキンハウジングに取り付けられた前記ガイド部材を含む前記漏液ガイド装置の最下端は、前記ポンプケーシングと前記軸受ハウジングとの接合面よりも前記ポンプケーシングから遠い位置に配置されており、前記ガイド部材は、前記軸受ハウジングの底部に形成されたドレイン孔の上方に位置している、漏液ガイド装置が提供される。
【0012】
一参考例では、前記ガイド部材は、その上部が欠落した切り欠きを有している。
一態様では、グランドパッキンの外周面に沿って漏洩した液体を案内するための漏液ガイド装置であって、前記グランドパッキンが収容されるパッキンハウジングの外周面に沿った形状の内周面を有するガイド部材を備えており、前記ガイド部材の一部は分断されており、前記漏液ガイド装置は、前記ガイド部材の分断された端部同士を互いに締結する締結機構をさらに備えている、漏液ガイド装置が提供される。
一態様では、前記ガイド部材は、外輪と、前記外輪の内周面に配置された内輪を備えており、前記締結機構は、前記外輪の分断された端部同士を互いに締結するように構成され、前記内輪は弾性材料から構成されている。
一態様では、グランドパッキンの外周面に沿って漏洩した液体を案内するための漏液ガイド装置であって、前記グランドパッキンが収容されるパッキンハウジングの外周面に沿った形状の内周面を有するガイド部材を備えており、前記ガイド部材は、複数の分割体に分割されており、前記漏液ガイド装置は、前記複数の分割体を互いに締結する複数の締結機構をさらに備えている、漏液ガイド装置が提供される。
一態様では、グランドパッキンの外周面に沿って漏洩した液体を案内するための漏液ガイド装置であって、前記グランドパッキンが収容されるパッキンハウジングの外周面に沿った形状の内周面を有するガイド部材を備えており、前記ガイド部材は、外輪と、前記外輪の内周面に配置された内輪を備えており、前記外輪は、複数の分割体に分割されており、前記内輪の少なくとも一部は分断されており、前記漏液ガイド装置は、前記複数の分割体を互いに締結する複数の締結機構をさらに備えており、前記内輪は弾性材料から構成されている、漏液ガイド装置が提供される。
一態様では、前記漏液ガイド装置は、前記パッキンハウジングに取り付けられた前記ガイド部材の下端に固定された液受け部材をさらに備えている。
一態様では、前記液受け部材は、前記ガイド部材の中心軸線に対して傾いている。
一態様では、前記液受け部材は、その上面に液体流路を有している。
【0013】
一態様では、ポンプケーシングと、前記ポンプケーシング内に配置された羽根車と、前記羽根車が固定された回転軸と、前記回転軸と前記ポンプケーシングとの隙間を封止するグランドパッキンと、前記回転軸を回転可能に支持する軸受を保持する軸受ハウジングと、前記グランドパッキンの外周面に沿って漏洩した液体を案内するための漏液ガイド装置を備え、前記ポンプケーシングは、前記グランドパッキンが収容された円筒状の前記パッキンハウジングを有しており、前記漏液ガイド装置は、前記パッキンハウジングの外周面に嵌合した内周面を有するガイド部材を備え、前記パッキンハウジングに取り付けられた前記ガイド部材を含む前記漏液ガイド装置の最下端は、前記ポンプケーシングと前記軸受ハウジングとの接合面よりも前記ポンプケーシングから遠い位置であって、かつ前記軸受ハウジングの底壁に形成されたドレイン孔の直上に位置しており、前記ガイド部材は、リング形状を有し、前記パッキンハウジングの前記外周面に隙間なく固定され、前記ガイド部材の外周面で前記漏洩した液体を堰き止めるように構成されている、ポンプが提供される。
【0014】
一態様では、ポンプのグランドパッキンの外周面に沿って漏洩した液体を案内するための漏液ガイド装置を取り付ける方法であって、前記ポンプは、羽根車が内部に配置されたポンプケーシングと、前記羽根車が固定された回転軸を回転可能に支持する軸受を保持する軸受ハウジングを備え、漏液ガイド装置は、前記グランドパッキンが収容されるパッキンハウジングの外周面に沿うことができる内周面を有するガイド部材を備えており、前記ガイド部材を前記パッキンハウジングの外周面に取り付ける取り付けステップと、前記パッキンハウジングの外周面に取り付けられた前記ガイド部材の取り付け位置を調整する調整ステップを含み、前記漏液ガイド装置の最下端が、前記ポンプケーシングと前記軸受ハウジングとの接合面よりも前記ポンプケーシングから遠い位置に配置され、かつ前記ガイド部材が、前記軸受ハウジングの底部に形成されたドレイン孔の上方に位置するように前記漏液ガイド装置が取り付けられる、方法が提供される。
【0015】
一態様では、前記ガイド部材は、その一部が欠落した切り欠きを有しており、前記調整ステップは、前記切り欠きが前記グランドパッキンの最下部とは異なる位置に配置されるよう前記切り欠きの位置を調整するステップである。
一態様では、ポンプのグランドパッキンの外周面に沿って漏洩した液体を案内するための漏液ガイド装置を取り付ける方法であって、漏液ガイド装置は、前記グランドパッキンが収容されるパッキンハウジングの外周面に沿うことができる内周面を有するガイド部材を備えており、前記ガイド部材を前記パッキンハウジングの外周面に取り付ける取り付けステップと、前記パッキンハウジングの外周面に取り付けられた前記ガイド部材の取り付け位置を調整する調整ステップを含み、前記ガイド部材の一部は分断されており、前記漏液ガイド装置は、前記ガイド部材の分断された端部同士を互いに締結する締結機構をさらに備えており、前記調整ステップは、前記締結機構が前記グランドパッキンの最下部とは異なる位置に配置されるよう前記締結機構の位置を調整するステップである、方法が提供される。
【発明の効果】
【0016】
グランドパッキンの外周面に沿って漏洩した液体は、パッキンハウジングの外周面を伝って流れ、漏液ガイド装置のガイド部材によってその流れ方向が変えられる。すなわち、液体は、ガイド部材を乗り越えることができないので、ガイド部材によって一旦堰き止められ、その後液体は、ガイド部材から下方に流れる。液体はドレイン孔などの適切な場所に導かれ、結果として、ガイド部材は液体がポンプケーシングに到達することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図3】
図3(a)は漏液ガイド装置を回転軸の軸方向から見た図であり、
図3(b)は
図3(a)のB-B線断面図である。
【
図4】
図1に示すポンプの一部を示す拡大断面図である。
【
図5】
図5(a)および
図5(b)は、上部に切り欠きを有するガイド部材の例を示す図である。
【
図6】
図6(a)は、漏液ガイド装置の他の実施形態を示す図であり、
図6(b)は
図6(a)に示すC-C線断面図である。
【
図7】漏液ガイド装置のさらに他の実施形態を示す図である。
【
図8】ボルトおよびナットを取り外した状態の漏液ガイド装置を示す斜視図である。
【
図9】
図9(a)および
図9(b)は、パチン錠を締結機構として使用した一実施形態を示す図である。
【
図10】漏液ガイド装置のさらに他の実施形態を示す図である。
【
図11】漏液ガイド装置のさらに他の実施形態を示す図である。
【
図12】漏液ガイド装置のさらに他の実施形態を示す図である。
【
図13】漏液ガイド装置のさらに他の実施形態を示す斜視図である。
【
図17】漏液ガイド装置のさらに他の実施形態を示す斜視図である。
【
図20】漏液ガイド装置が分割された状態を示す図である。
【
図21】
図17に示す漏液ガイド装置がパッキンハウジングの外周面に取り付けられた状態を示す図である。
【
図22】上面にガイド流路を有するブロック体を備えた漏液ガイド装置の一例を示す図である。
【
図23】上面にガイド流路を有するブロック体を備えた漏液ガイド装置の他の例を示す図である。
【
図24】漏液ガイド装置のさらに他の実施形態を示す斜視図である。
【
図25】漏液ガイド装置をパッキンハウジングに取り付ける方法を説明するフローチャートである。
【
図26】両吸込型ポンプの一実施形態を示す断面図である。
【
図27】グランドパッキンがポンプケーシングに保持された従来の構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、ポンプの一実施形態を示す断面図である。
図1に示すポンプは、1つの液体入口を有する羽根車を備えた片吸込型のポンプである。ポンプは、液体の吸込み口3aおよび吐出し口3bを有するポンプケーシング3と、ポンプケーシング3内に配置された羽根車7と、羽根車7が固定された回転軸8を備えている。ポンプケーシング3は、ボリュート室3cが形成された羽根車ケーシング3Aと、羽根車ケーシング3Aの開口を塞ぐケーシングカバー3Bを有している。羽根車7は、ボリュート室3c内に配置されている。
【0019】
羽根車7は、回転軸8の一端に固定されている。回転軸8の他端は、図示しない電動機の駆動軸に軸継手を介して連結される。羽根車7は、遠心式羽根車である。吸込み口3aおよび吐出し口3bはボリュート室3cに連通している。ポンプケーシング3の下部には脚部10が固定されている。
【0020】
ポンプは、回転軸8とポンプケーシング3との隙間を封止するグランドパッキン14と、回転軸8を回転可能に支持する軸受15を保持する軸受ハウジング17と、グランドパッキン14の外周面に沿って漏洩した液体を案内する漏液ガイド装置20をさらに備えている。グランドパッキン14は、ポンプケーシング3を構成するケーシングカバー3Bのパッキンハウジング22内に収容されている。このパッキンハウジング22は、円筒形状を有している。グランドパッキン14の全体も、同様に、円筒形状を有している。グランドパッキン14の内周面は回転軸8の外周面に接触しており、グランドパッキン14の外周面は、パッキンハウジング22の内周面に接触している。
【0021】
ポンプは、グランドパッキン14の外端面を回転軸8の軸方向に押すパッキン押さえ25と、パッキン押さえ25をポンプケーシング3に連結させるボルト26をさらに備えている。パッキン押さえ25の一端は、グランドパッキン14の外端面に接触しており、パッキン押さえ25の他端は、ボルト26が挿入された貫通孔(図示せず)を有している。ボルト26の先端は、ポンプケーシング3のケーシングカバー3Bに形成された雌ねじ27にねじ込まれている。
【0022】
ボルト26を締め付けると、パッキン押さえ25は、グランドパッキン14を回転軸8に沿ってポンプケーシング3の内側に向かって押し、結果として、グランドパッキン14はその径方向内側に変形する。このグランドパッキン14の変形により、グランドパッキン14の回転軸8に対する接触圧が変わる。したがって、ボルト26の締め付けにより、グランドパッキン14の回転軸8に対する接触圧を調節することができる。
【0023】
軸受ハウジング17は、ボルト30によってポンプケーシング3のケーシングカバー3Bに固定されている。軸受ハウジング17は、その底部に形成されたドレイン孔33を有している。軸受ハウジング17には、支柱34が固定されている。支柱34および脚部10は、図示しないベースに固定される。
【0024】
ポンプの運転中は、回転軸8の外周面はグランドパッキン14の内周面に摺接する。グランドパッキン14が焼き付くことを防ぐために、ある程度の流量の液体がグランドパッキン14の内周面に沿って漏洩することが許容されている。
【0025】
グランドパッキン14の内周面に沿って漏洩した液体は、パッキン押さえ25上を流れ、パッキン押さえ25から下方に落下する。パッキン押さえ25から落下した液体は、軸受ハウジング17の底部に受けられ、ドレイン孔33を通ってポンプの外部に流出する。ドレイン孔33を通って流出した液体は、図示しない液体回収手段によって回収される。このように、ある程度の液体漏れは、グランドパッキン14の焼き付きを防止するために許容されている。
【0026】
これに対し、グランドパッキン14の外周面に沿った液体の漏洩は、ポンプ性能の低下を防ぐ観点から許容されるべきではない。ボルト26を締め付けたとき、グランドパッキン14の外周面はパッキンハウジング22の内周面に強く押し付けられるので、グランドパッキン14の外周面とパッキンハウジング22の内周面との間には隙間は実質的に形成されない。しかしながら、グランドパッキン14は、繊維状の材料から構成されているため、グランドパッキン14の外周面に沿った液体の漏洩を完全に防ぐことはできない。
【0027】
そこで、本実施形態のポンプは、グランドパッキン14の外周面に沿って漏洩した液体をドレイン孔33に導くための漏液ガイド装置20を備えている。この漏液ガイド装置20は、パッキンハウジング22の外周面22aに固定されている。漏液ガイド装置20は、回転軸8の軸方向において、ポンプケーシング3と軸受ハウジング17との接合面35よりも、ポンプケーシング3から遠い位置にある。このような位置に配置する理由は、漏洩した液体を漏液ガイド装置20で堰き止め、ドレイン孔33内またはその近傍に落下させることで、液体が上記接合面35に接触することを防止するためである。
【0028】
図2は
図1のA-A線断面図であり、
図3(a)は漏液ガイド装置20を回転軸8の軸方向から見た図であり、
図3(b)は
図3(a)のB-B線断面図である。漏液ガイド装置20は、環状のガイド部材40を有している。一実施形態では、ガイド部材40の上部に切り欠きがあってもよい。ガイド部材40は、耐腐食性のあるステンレス鋼などの金属から構成されている。
図3(b)に示すように、ガイド部材40は円形の断面を有している。
【0029】
ガイド部材40は、パッキンハウジング22の外周面22aに沿った形状の内周面40aを有する。ガイド部材40の内周面40aは、パッキンハウジング22の外周面22aと同じ曲率を有しており、ガイド部材40の内周面40aはパッキンハウジング22の外周面22aに嵌合する。したがって、ガイド部材40は、パッキンハウジング22の外周面22aに隙間なく固定することができる。一実施形態では、ガイド部材40は、溶接によりパッキンハウジング22の外周面22aに固定される。ガイド部材40の内周面40aとパッキンハウジング22の外周面22aとの隙間を完全に埋めるために、ガイド部材40とパッキンハウジング22との環状の接触面をコーキング材で覆ってもよい。本実施形態ではガイド部材40は環状(あるいはリング状)であるが、パッキンハウジング22の外周面22aに沿った形状の内周面40aを有していれば、ガイド部材40は他の形状を有してもよい。
【0030】
図4は、
図1に示すポンプの一部を示す拡大断面図である。
図4の矢印で示すように、グランドパッキン14の外周面に沿って漏洩した液体は、パッキン押さえ25とパッキンハウジング22との間の隙間を通過し、さらにパッキンハウジング22の外周面22a上を流れて漏液ガイド装置20のガイド部材40に到達する。液体の流れはガイド部材40によって一旦堰き止められ、そしてガイド部材40の最下端から落下する。ガイド部材40、特にガイド部材40の最下端は、ポンプケーシング3と軸受ハウジング17との接合面35よりも軸方向において外側にある(ポンプケーシング3よりも遠い位置にある)ので、ガイド部材40から落下した液体は接合面35には流れず、ドレイン孔33を通じてポンプの外に排出される。ドレイン孔33から排出された液体は、図示しない液体回収手段によって回収される。
【0031】
このように、本実施形態によれば、グランドパッキン14の外周面に沿って漏洩した液体は、ガイド部材40によって堰き止められるので、ポンプケーシング3には達しない。よって、液体はポンプケーシング3と軸受ハウジング17との接合面35に流れず、接合面35からの意図しない漏洩が防止される。
【0032】
図4から分かるように、グランドパッキン14の外周面に沿って漏洩した液体は、ガイド部材40の下部によって堰き止められる。したがって、液体を堰き止めることができる限りにおいて、ガイド部材40の上部に切り欠きがあってもよい。例えば、
図5(a)および
図5(b)に示すように、ガイド部材40は、その上部に切り欠き40bを有してもよい。
図5(a)に示す例では、切り欠き40bを形成するガイド部材40の両端とガイド部材40の中心Oとを結ぶ2直線間の角度θは、約90度である。
図5(b)に示す例では、角度θは約170度である。
【0033】
切り欠き40bの大きさを、
図5(a)および
図5(b)に示す角度θで表すと、切り欠き40bの大きさは180度未満であることが望ましい。切り欠き40bの大きさが180°未満であれば、ガイド部材40がパッキンハウジング22の外周面22aから落下するおそれがない。一方、切り欠き40bの大きさが180°を超えると、ガイド部材40が落下するおそれや、液体を十分に堰き止めることができないおそれがある。
【0034】
図3および
図5に示すガイド部材40は、円形の断面を有しているが、
図6(a)および
図6(b)に示すように、ガイド部材40は三角形の断面を有してもよい。
図6(a)は、漏液ガイド装置20の他の実施形態を示す図であり、
図6(b)は
図6(a)に示すC-C線断面図である。
図6(b)に示すように、ガイド部材40の内側の縁は、ガイド部材40の断面を構成する三角形の3つの角のうちの1つから構成されている。
【0035】
図7は、漏液ガイド装置20のさらに他の実施形態を示す図である。特に説明しない本実施形態の構成は、
図3および
図4を参照して説明した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。
図7に示すように、リング形状を有するガイド部材40の一部は分断されている。漏液ガイド装置20は、ガイド部材40の分断された端部41同士を互いに締結する締結機構としてのボルト43とナット44の組み合わせを備えている。
【0036】
図8は、ボルト43およびナット44を取り外した状態の漏液ガイド装置20を示す斜視図である。ガイド部材40の分断された端部41は、それぞれ通孔41aを有している。これら通孔41aは、端部41同士を接触させたときに一直線上に並ぶ。ボルト43は2つの端部41のそれぞれの通孔41aに挿入され、ナット44はボルト43に螺合される。
【0037】
図7に示すように、ボルト43およびナット44を締め付けることで、ガイド部材40はパッキンハウジング22の外周面22a(
図4参照)に強固に固定される。したがって、ガイド部材40とパッキンハウジング22の外周面22aとの隙間をなくすことができる。また、本実施形態では、ガイド部材40をパッキンハウジング22の外周面22aに溶接する必要がなく、漏液ガイド装置20をパッキンハウジング22に簡単に取り付けおよび取り外しすることができる。
【0038】
ボルト43とナット44との組み合わせに代えて、パチン錠を締結機構として使用してもよい。
図9(a)および
図9(b)は、パチン錠を締結機構として使用した一実施形態を示す図である。パチン錠50は、ガイド部材40の2つの端部41のうちの一方に固定されたパチン錠本体50Aと、他方の端部41に取り付けられた突起50Bを備える。
図9(a)はパチン錠50によって2つの端部41が互いに締結されている状態を示し、
図9(b)はパチン錠50が開かれた状態を示している。
図9(a)および
図9(b)に示す実施形態によれば、漏液ガイド装置20をパッキンハウジング22により簡単に取り付けおよび取り外しすることができる。
【0039】
図10は、漏液ガイド装置20のさらに他の実施形態を示す図である。特に説明しない本実施形態の構成は、
図7および
図8を参照して説明した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。ガイド部材40は、複数の分割体55に分割されている。漏液ガイド装置20は、これら分割体55を互いに締結する複数の締結機構としての2組のボルト43およびナット44を備えている。各分割体55の周方向の長さは、ガイド部材40の全周長さの半分以下である。
【0040】
図10に示す実施形態では、ガイド部材40は2つの分割体55に分割され、各分割体55は半円弧形状を有している。漏液ガイド装置20は、これら2つの分割体55を互いに締結する2つの締結機構としての2組のボルト43およびナット44を備えている。ただし、本発明は本実施形態に限定されず、ガイド部材40は3つ以上の分割体55に分割され、漏液ガイド装置20は、これら3つ以上の分割体55を互いに締結する3組以上のボルト43およびナット44を備えてもよい。一実施形態では、締結機構は、
図9(a)および
図9(b)に示すパチン錠50であってもよい。
【0041】
本実施形態によれば、既に組み立てられたポンプに漏液ガイド装置20を取り付けることができる。すなわち、分割体55をパッキンハウジング22の外周面22a(
図4参照)に配置し、ボルト43およびナット44によりこれら分割体55を互いに締結することで、環状のガイド部材40を形成すると同時に、ガイド部材40をパッキンハウジング22の外周面22aに固定することができる。また、本実施形態によれば、ポンプを分解することなく、漏液ガイド装置20をパッキンハウジング22から容易に取り外すことができる。
【0042】
図7乃至
図10に示すガイド部材40は、
図3(b)を参照して説明した実施形態と同じように、円形の断面を有しているが、一実施形態では、
図7乃至
図10に示すガイド部材40は、
図6(b)を参照して説明した三角形の断面を有してもよい。
【0043】
図11は、漏液ガイド装置20のさらに他の実施形態を示す図である。特に説明しない本実施形態の構成は、
図7および
図8を参照して説明した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。ガイド部材40は、外輪57と、外輪57の内周面に配置された内輪58を備えている。外輪57はステンレス鋼などの耐腐食性を持つ金属から構成されており、内輪58はゴムなどの液密性を持つ弾性材料から構成されている。
【0044】
外輪57の一部は分断されており、外輪57の分断された端部41同士は、締結機構の一例であるボルト43およびナット44によって締結されている。すなわち、外輪57の分断された端部41には、それぞれ通孔(図示せず)が形成されている。ボルトは2つの端部41のそれぞれの通孔に挿入され、ナット44はボルト43に螺合される。内輪58の一部も同様に分断されている。より具体的には、内輪58の頂部には切り欠き58aが形成されている。本実施形態においては、外輪57および内輪58は、矩形状の断面を有しているが、他の形状の断面を有してもよい。例えば、弾性材料から構成される内輪58は、円形または三角形の断面を有してもよい。
【0045】
ボルト43およびナット44を締め付けると、ガイド部材40の内周面40aを構成する内輪58は、パッキンハウジング22の外周面22a(
図4参照)に強く押し付けられる。結果として、ガイド部材40の内周面40aとパッキンハウジング22の外周面22aとの隙間をなくすことができる。弾性材料から構成される内輪58はシールとして機能し、ガイド部材40とパッキンハウジング22との間の隙間を液体が通過することを確実に防止することができる。
【0046】
図12は、漏液ガイド装置20のさらに他の実施形態を示す図である。特に説明しない本実施形態の構成は、
図11を参照して説明した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。外輪57は複数の分割体59に分割されており、これら分割体59は、複数の締結機構を構成する複数組のボルト43およびナット44によって互いに締結されている。内輪58の一部も分断されている。より具体的には、内輪58の頂部には切り欠き58aが形成されている。
【0047】
外輪57を構成する各分割体59の周方向の長さは、ガイド部材40の全周長さの半分以下である。外輪57は2つの分割体59に分割され、各分割体59は半円弧形状を有している。漏液ガイド装置20は、これら2つの分割体59を互いに締結する2つの締結機構としての2組のボルト43およびナット44を備えている。ただし、本発明は本実施形態に限定されず、外輪57は3つ以上の分割体59に分割され、漏液ガイド装置20は、これら3つ以上の分割体59を互いに締結する3組以上のボルト43およびナット44を備えてもよい。
【0048】
ボルト43およびナット44を締め付けると、ガイド部材40の内周面40aを構成する内輪58は、パッキンハウジング22の外周面22a(
図4参照)に強く押し付けられる。結果として、ガイド部材40の内周面40aとパッキンハウジング22の外周面22aとの隙間をなくすことができる。弾性材料から構成される内輪58はシールとして機能し、ガイド部材40とパッキンハウジング22との間の隙間を液体が通過することを確実に防止することができる。
【0049】
内輪58は複数の切り欠き58aを有してもよいが、液体の通過を防止する観点からは、切り欠き58aの数は少ない方が好ましい。
図11および
図12に示す締結機構は、ボルト43およびナット44の組み合わせから構成されているが、締結機構は、
図9(a)および
図9(b)に示すパチン錠50であってもよい。
【0050】
図13は、漏液ガイド装置20のさらに他の実施形態を示す斜視図であり、
図14は、
図13に示す漏液ガイド装置20の側面図である。特に説明しない本実施形態の構成は、
図3および
図4を参照して説明した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。本実施形態の漏液ガイド装置20は、ガイド部材40の下端に固定された液受け部材70を備えている。
図14に示すように、液受け部材70は、ガイド部材40の中心軸線CLに対して傾いている。
【0051】
ガイド部材40の下端は、液受け部材70の上面に溶接などの固定手段により固定されている。一実施形態では、ガイド部材40の下端は、液受け部材70の上面に着脱可能に固定されてもよい。例えば、
図15に示すように、ガイド部材40の下端は、液受け部材70の上面にねじ47により着脱可能に固定される。ねじ穴48はガイド部材40の下端に形成されており、下方に開口している。ねじ穴48を通じた液漏れを防ぐために、ねじ穴48はガイド部材40を貫通していない。ねじ47は、液受け部材70を貫通して延びており、ねじ47の先端がガイド部材40のねじ穴48に螺合される。
【0052】
液受け部材70は、その上面に液体流路73を有している。ガイド部材40の下端は、液体流路73内に位置している。液体流路73を含む液受け部材70の全体は、ガイド部材40の下端から下方に傾いている。液体流路73の下端は液受け部材70の下端に位置している。本実施形態では、液受け部材70は板状の部材であり、液体流路73は液受け部材70の上面に形成された溝から構成されている。ただし、液体を液受け部材70上を下方に流すことができるのであれば、液受け部材70の形状および液体流路73の形状は本実施形態に限定されない。一実施形態では、液体を下方に導く堤防を液受け部材70の上面に設けてもよい。
【0053】
図16は、
図13および
図14に示す漏液ガイド装置20を
図1に示すポンプに組み込んだ一例を示す図である。これまで説明した各実施形態と同様に、ガイド部材40は、パッキンハウジング22の外周面22aに固定される。液体流路73の下端および液受け部材70の最下端は、回転軸8の軸方向において、ポンプケーシング3と軸受ハウジング17との接合面35よりも、ポンプケーシング3から遠い位置にある。液受け部材70は、ドレイン孔33の直上にある。このような構成において、
図16の矢印で示すように、グランドパッキン14の外周面に沿って漏洩した液体は、ガイド部材40によって一旦堰き止められ、液受け部材70の液体流路73内に集められる。液体は、下方に傾斜した液体流路73内を流れ、液受け部材70の最下端から落下する。
【0054】
液受け部材70の最下端は、ポンプケーシング3と軸受ハウジング17との接合面35よりも軸方向において外側にある(ポンプケーシング3よりも遠い位置にある)ので、漏液ガイド装置20から落下した液体は接合面35には流れず、ドレイン孔33を通じてポンプの外に排出される。ドレイン孔33から排出された液体は、図示しない液体回収手段により回収される。本実施形態によれば、液受け部材70によって液体を集めて、ドレイン孔33内またはドレイン孔33の近傍に液体を落下させることができる。
【0055】
図5乃至
図12を参照して説明したガイド部材40の実施形態は、
図13乃至
図16に示す実施形態のガイド部材40に適用してもよい。
【0056】
図17は、漏液ガイド装置20のさらに他の実施形態を示す斜視図であり、
図18は、
図17に示す漏液ガイド装置20の側面図であり、
図19は、
図18のD-D線断面図である。特に説明しない本実施形態の構成は、
図13乃至
図16を参照して説明した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。
【0057】
ガイド部材40および液受け部材70を含む漏液ガイド装置20の全体は、2つの分割体に分割されている。すなわち、ガイド部材40は、左側円弧体40-1および右側円弧体40-2に分割されており、液受け部材70も左側液受け部70-1および右側液受け部70-2に分割されている。左側円弧体40-1および右側円弧体40-2のそれぞれ周方向の長さは、ガイド部材40の全周長さの半分以下である。本実施形態では、左側円弧体40-1および右側円弧体40-2は半円形状を有している。左側円弧体40-1の下端は左側液受け部70-1に固定され、右側円弧体40-2の下端は右側液受け部70-2に固定されている。
【0058】
漏液ガイド装置20は、2つの分割体を互いに締結するための複数の締結機構を備えている。具体的には、
図19に示すように、漏液ガイド装置20は、左側円弧体40-1および右側円弧体40-2の上端41同士を互いに締結するための第1締結装置としてのボルト43およびナット44の組み合わせと、左側液受け部70-1および右側液受け部70-2同士を互いに締結するための第2締結装置としてのボルト78およびナット79の組み合わせを備えている。
【0059】
左側円弧体40-1および右側円弧体40-2の上端41は、ボルト43が挿入される通孔(図示せず)をそれぞれ有している。ボルト43は2つの上端41のそれぞれの通孔に挿入され、ナット44はボルト43に螺合される。左側液受け部70-1および右側液受け部70-2は、ボルト78が挿入される通孔(図示せず)を有する突起部76を有している。2つの突起部76は、左側液受け部70-1および右側液受け部70-2の底部にそれぞれ設けられている。ボルト78は2つの突起部76のそれぞれの通孔に挿入され、ナット79はボルト78に螺合される。
【0060】
漏液ガイド装置20は、液受け部材70の内部に配置されたブロック体80をさらに備えている。ブロック体80は、液受け部材70内に形成された孔83内に配置されている。孔83は液受け部材70の下端で開口しており、ブロック体80は液受け部材70の孔83内に嵌入されるようになっている。このブロック体80は、左側液受け部70-1および右側液受け部70-2の合わせ面71(
図19参照)を横切るように配置されている。これら合わせ面71は、液体流路73内に位置している。ブロック体80は、合わせ面71の間の微小な隙間を通過した液体を受け、液体を液受け部材70の最下端に導くために設けられている。
【0061】
図20は、漏液ガイド装置20が分割された状態を示す図である。第1締結機構であるボルト43およびナット44を取り外し、第2締結機構であるボルト78およびナット79を取り外す。左側円弧体40-1と右側円弧体40-2は互いに分離し、同様に左側液受け部70-1と右側液受け部70-2も互いに分離する。結果として、漏液ガイド装置20は2つの分割体に分割される。
【0062】
本実施形態によれば、既に組み立てられたポンプに漏液ガイド装置20を取り付けることができる。すなわち、左側円弧体40-1と右側円弧体40-2をパッキンハウジング22の外周面22a(
図16参照)に配置し、第1締結機構としてのボルト43およびナット44により左側円弧体40-1と右側円弧体40-2を互いに締結し、さらに第2締結機構としてのボルト78およびナット79により左側液受け部70-1と右側液受け部70-2を互いに締結することで、環状のガイド部材40を形成すると同時に、ガイド部材40をパッキンハウジング22の外周面22aに固定することができる。
図21は、
図17に示す漏液ガイド装置20がパッキンハウジング22の外周面22aに取り付けられた状態を示す図である。また、本実施形態によれば、ポンプを分解することなく、漏液ガイド装置20をパッキンハウジング22から容易に取り外すことができる。
【0063】
一実施形態では、
図22に示すように、ブロック体80は、その上面にガイド流路81を有してもよい。このガイド流路81は、左側液受け部70-1および右側液受け部70-2の合わせ面71の真下に位置しており、これら合わせ面71に沿って延びている。ガイド流路81は、ブロック体80と同様に傾いており、ブロック体80の下端まで延びている。左側液受け部70-1および右側液受け部70-2の合わせ面71の間の微小な隙間を通過した液体は、ブロック体80のガイド流路81に受けられ、ガイド流路81を下方に流れる。液体は、液受け部材70の最下端に到達し、液受け部材70の最下端から落下する。
【0064】
ガイド流路81は、合わせ面71を通過した液体がブロック体80の側面を通ってブロック体80の下面に達することを防ぐために設けられている。液体を液受け部材70の最下端まで導くことができるのであれば、ガイド流路81の断面形状は、特に限定されない。例えば、
図23に示すように、ブロック体80の上面全体が下方に窪み、この窪んだ上面によりガイド流路81が構成されてもよい。
【0065】
図24は、漏液ガイド装置20のさらに他の実施形態を示す斜視図である。特に説明しない本実施形態の構成は、
図13乃至
図16を参照して説明した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。ガイド部材40は2つの分割体55に分割されており、一方で液受け部材70は分割されていない。2つの分割体55のうちの1つは液受け部材70に固定されている。各分割体55のそれぞれ周方向の長さは、ガイド部材40の全周長さの半分以下である。本実施形態では、各分割体55は半円形状を有している。
【0066】
漏液ガイド装置20は、2つの分割体55を互いに締結するための複数の締結機構を備えている。具体的には、漏液ガイド装置20は、締結装置としてのボルト43およびナット44の組み合わせを備えている。ガイド部材40の分割体55の端部41は、ボルト43が挿入される通孔(図示せず)をそれぞれ有している。ボルト43は2つの端部41のそれぞれの通孔に挿入され、ナット44はボルト43に螺合される。
【0067】
本実施形態によれば、既に組み立てられたポンプに漏液ガイド装置20を取り付けることができる。すなわち、2つの分割体55をパッキンハウジング22の外周面22a(
図16参照)に配置し、ボルト43およびナット44により分割体55を互いに締結することで、環状のガイド部材40を形成すると同時に、ガイド部材40をパッキンハウジング22の外周面22aに固定することができる。また、本実施形態によれば、ポンプを分解することなく、漏液ガイド装置20をパッキンハウジング22から容易に取り外すことができる。
【0068】
図24に示す実施形態では、ガイド部材40は2つの分割体55に分割され、各分割体55は半円弧形状を有している。ただし、本発明は本実施形態に限定されず、ガイド部材40は3つ以上の分割体55に分割され、漏液ガイド装置20は、これら3つ以上の分割体55を互いに締結する3つ以上の締結機構を備えてもよい。
【0069】
図13乃至
図24を参照して説明した各実施形態におけるガイド部材40は、
図3(b)を参照して説明した実施形態と同じように、円形の断面を有しているが、ガイド部材40は
図6(a)および
図6(b)に示すような三角形の断面を有してもよい。
図11に示すガイド部材40の実施形態は、
図14乃至
図24を参照して説明した各実施形態におけるガイド部材40にも適用できる。
図17乃至
図24を参照して説明した各実施形態において、締結機構は、ボルト43およびナット44の組み合わせに代えて、
図9(a)および
図9(b)に示すパチン錠50であってもよい。
【0070】
グランドパッキン14の外周面に沿って液体が漏洩したポンプに、先述した漏液ガイド装置20をパッキンハウジング22に取り付ける方法について、
図25を参照して説明する。
[ステップ1]ポンプ運転停止ステップ
ポンプが運転中ならば、ポンプの運転を停止させる。
【0071】
[ステップ2]ガイド部材20の装着ステップ
例えば、
図5(a)および
図5(b)に示すように、ガイド部材40がその上部に切り欠き40bを有している場合、ガイド部材40を切り欠き40bを通じてパッキンハウジング22に嵌め込むことで、ポンプを分解することなく漏液ガイド装置20を装着できる。
図7~
図12に示すように、ガイド部材40の一部が分断されており、漏液ガイド装置20がガイド部材40の分断された端部同士を互いに締結する締結機構(例えばボルト43とナット44との組み合わせ)を備えている場合は、ガイド部材40をパッキンハウジング22に装着し、締結機構でガイド部材40の分断された端部同士を締結することで、ポンプを分解することなく漏液ガイド装置20を装着できる。
図11および
図12に示すように、ガイド部材40が外輪57と内輪58を備えている場合は、内輪58をパッキンハウジング22に装着した後に、外輪57を取り付けてもよい。
【0072】
[ステップ3]ガイド部材40の調整ステップ
グランドパッキン14は継ぎ目(図示せず)を有しており、通常、最も外側の継ぎ目がグランドパッキン14の最下部に位置するように配置される。よって、グランドパッキン14の継ぎ目がある最下部で最も液体が漏洩しやすい。そのため、切り欠き40bまたは上記締結機構が、グランドパッキン14の最下部とは異なる位置に配置されるよう、ガイド部材40をポンプの軸心を中心に回転させて、切り欠き40bまたは上記締結機構の位置を調整する必要がある。これにより、切り欠き40bまたはガイド部材40の分断箇所から液体が漏洩するのを防ぐことができる。ガイド部材40はパッキンハウジング22の外周面22aに密着できる形状であれば上記各実施形態に限定されない。
【0073】
[ステップ4]液受け部材取り付けステップ
液受け部材70を有する漏液ガイド装置20であれば、液受け部材70がガイド部材40に取り付けられる。このとき、漏れた液がポンプのドレイン孔33に導かれるように、液受け部材70が取り付けられる。
[ステップ5]ポンプ運転開始ステップ
ポンプの運転を再開する。
【0074】
今まで説明してきた漏液ガイド装置20の各実施形態は、
図1に示す片吸込型のポンプのみならず、他のタイプのポンプにも適用することができる。例えば、上述した漏液ガイド装置20の各実施形態は、
図26に示す両吸込型ポンプに適用することができる。以下、
図26を参照して両吸込型ポンプについて説明する。
図26において、
図1と同一または相当する部材には、同一の符号を付して、その重複する説明を省略する。
【0075】
図26に示すように、このタイプのポンプは、液体の吸込み口および吐出し口を有するポンプケーシング3と、ポンプケーシング3内に配置された羽根車7と、羽根車7が固定された回転軸8と、回転軸8とポンプケーシング3との隙間を封止するグランドパッキン14と、回転軸8を回転可能に支持する軸受15を保持する軸受ハウジング17と、
図13に示す実施形態に係る漏液ガイド装置20を備えている。
【0076】
羽根車7は、2つの液体入口7aと、1つの液体出口7bを具備した両吸込型羽根車7である。2つの液体入口7aは羽根車7の両側にあり、反対方向を向いている。ポンプケーシング3内には、羽根車7の2つの液体入口7aに連通する吸込側流路91と、羽根車7の液体出口7bに連通する吐出側流路93とが形成されている。ポンプケーシング3は、吸込側流路91と吐出側流路93を隔てる隔壁95を備えている。吸込側流路91は隔壁95の外側に位置し、吐出側流路93は隔壁95の内側に位置している。
【0077】
グランドパッキン14は、ポンプケーシング3の両側に配置されている。2つの軸受15を保持する2つの軸受ハウジング17は、ポンプケーシング3の両側に連結されている。2つの漏液ガイド装置20は、ポンプケーシング3の2つのパッキンハウジング22の外周面に固定されている。今まで説明した実施形態と同様に、グランドパッキン14の外周面に沿って漏洩した液体は、パッキンハウジング22の外周面を伝って流れ、ガイド部材40によって一旦堰き止められ、液受け部材70の液体流路73(
図13参照)内に集められる。液体は、下方に傾斜した液体流路73内を流れ、液受け部材70の最下端から落下する。
【0078】
液受け部材70の最下端は、ポンプケーシング3と軸受ハウジング17との接合面35よりも軸方向において外側にある(ポンプケーシング3よりも遠い位置にある)ので、漏液ガイド装置20から落下した液体は接合面35には流れず、ドレイン孔33を通じてポンプの外に排出される。ドレイン孔33から排出された液体は、図示しない液体回収手段により回収される。本実施形態によれば、液受け部材70によって液体を集めて、ドレイン孔33内またはドレイン孔33の近傍に液体を落下させることができる。
【0079】
図26の実施形態では、
図13に示す漏液ガイド装置20が使用されているが、ドレイン孔33とパッキンハウジング22との位置関係によっては他の実施形態に係る漏液ガイド装置20が使用されてもよい。
【0080】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうる。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。
【符号の説明】
【0081】
3 ポンプケーシング
3a 吸込み口
3b 吐出し口
3c ボリュート室
3A 羽根車ケーシング
3B ケーシングカバー
7 羽根車
8 回転軸
10 脚部
14 グランドパッキン
15 軸受
17 軸受ハウジング
20 漏液ガイド装置
22 パッキンハウジング
25 パッキン押さえ
26 ボルト
27 雌ねじ
30 ボルト
33 ドレイン孔
34 支柱
35 接合面
40 ガイド部材
40a 内周面
40b 切り欠き
40-1 左側円弧体
40-2 右側円弧体
41 端部
43 ボルト
44 ナット
47 ねじ
48 ねじ穴
50 パチン錠
50A パチン錠本体
50B 突起
55 分割体
57 外輪
58 内輪
58a 切り欠き
59 分割体
70 液受け部材
70-1 左側液受け部
70-2 右側液受け部
71 合わせ面
73 液体流路
76 突起部
78 ボルト
79 ナット
80 ブロック体
81 ガイド流路
83 孔
91 吸込側流路
93 吐出側流路
95 隔壁