(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-05
(45)【発行日】2023-12-13
(54)【発明の名称】ガス分離膜エレメント、ガス分離膜モジュール、及びガス分離装置
(51)【国際特許分類】
B01D 63/12 20060101AFI20231206BHJP
B01D 53/22 20060101ALI20231206BHJP
B01D 69/02 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
B01D63/12
B01D53/22
B01D69/02
(21)【出願番号】P 2020014834
(22)【出願日】2020-01-31
【審査請求日】2022-12-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田▲崎▼ 努
(72)【発明者】
【氏名】北浦 武明
(72)【発明者】
【氏名】宮本 久照
【審査官】片山 真紀
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/168820(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/097994(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D53/22、61/00-71/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定のガスを含む原料ガスから前記特定のガスを分離するためのガス分離膜エレメントであって、
前記ガス分離膜エレメントは、
スパイラル型ガス分離膜エレメントであって、
第1多孔層、及び、前記第1多孔層上に設けられ、前記原料ガスに含まれる前記特定のガスを選択的に透過させる無孔質の樹脂組成物層を含むガス分離膜と、
前記原料ガスが流れる供給側流路部材を有し、かつ、前記ガス分離膜に前記原料ガスを供給するための供給側空間と、
前記ガス分離膜を透過した透過ガスが流れる透過側流路部材を有し、かつ、前
記透過ガスのための透過側空間と、
前記供給側空間の前記原料ガスと前記透過側空間の前記透過ガスとの混合を防止するための封止部と、
前記透過ガスを収集するための中心管と、
前記供給側流路部材、前記ガス分離膜、及び前記透過側流路部材を積層した積層体が、前記中心管の周囲に巻回された巻回体と、を含み、
前記供給側空間と前記透過側空間とは、前記ガス分離膜によって互いに隔てられ、
前記封止部は、
前記巻回体における軸方向両端側において巻回方向に沿って延在し、少なくとも前記ガス分離膜と前記供給側流路部材との間、又は、少なくとも前記ガス分離膜と前記透過側流路部材との間に存在するサイド封止部と、
前記軸方向両端側に設けられた前記サイド封止部の間において前記巻回体の軸方向に沿って延在し、少なくとも前記ガス分離膜と前記供給側流路部材との間、又は、少なくとも前記ガス分離膜と前記透過側流路部材との間に存在するエンド封止部とを含み、
前記エンド封止部における剥離強度は、0.15N/mm以上であり、
前記供給側空間の圧力を、P1[kPaG]からP2[kPaG]まで昇圧した後、P3[kPaG]に降圧したときの各圧力P1、P2及びP3における試験用ガスの透過度をそれぞれF1[mol/(m
2・s・kPa)]、F2[mol/(m
2・s・kPa)]及びF3[mol/(m
2・s・kPa)]とし、
前記P1及び前記P3を500kPaGとし、
前記P2がF2/F1=2となる圧力である場合に、下記式(I
’’)の関係を満たす、ガス分離膜エレメント。
1.0≦F3/F1≦1.5 (I’’)
【請求項2】
前記樹脂組成物層は、ゲル状である、請求項
1に記載のガス分離膜エレメント。
【請求項3】
前記樹脂組成物層は、親水性樹脂を含む、請求項1又は2に記載のガス分離膜エレメント。
【請求項4】
前記式(I’’)において、F3/F1は1.4以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載のガス分離膜エレメント。
【請求項5】
前記式(I’’)において、F3/F1は1.1以上である、請求項
1~4
のいずれか1項に記載のガス分離膜エレメント。
【請求項6】
前記エンド封止部における剥離強度は、
0.18N/mm以上である、請求項
1~5
のいずれか1項に記載のガス分離膜エレメント。
【請求項7】
前記特定のガスは、酸性ガスであり、
前記試験用ガスは、窒素、アルゴン、及びヘリウムからなる群より選ばれる1種以上である、請求項1~6のいずれか1項に記載のガス分離膜エレメント。
【請求項8】
前記樹脂組成物層は、前記特定のガスと可逆的に反応するキャリアを含む、請求項1~7のいずれか1項に記載のガス分離膜エレメント。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載のガス分離膜エレメントと、
前記ガス分離膜に前記原料ガスを供給するための原料ガス供給口と、
前記ガス分離膜を透過しない前記原料ガスを排出するための非透過ガス排出口と、
前記透過ガスを排出するための透過ガス排出口と、を備える、ガス分離膜モジュール。
【請求項10】
請求項9に記載のガス分離膜モジュールを少なくとも1つ備える、ガス分離装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス分離膜エレメント、ガス分離膜モジュール、及びガス分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体や気体等の原料流体から特定の流体成分を分離するために、膜分離プロセスが知られている。このような膜分離プロセスを行うために、特許文献1及び2には、封止部を設けた分離膜エレメントを用いることが記載されている。
【0003】
近年、省エネルギー化の観点から、水素や尿素等を製造するプラントで合成される合成ガス、合成ガスの残余排ガス、天然ガス、バイオガス、燃焼排ガス等から二酸化炭素等の酸性ガスを分離するプロセスとしてガス膜分離プロセスが注目されている。このようなガス膜分離プロセスでは、ガス分離膜エレメントに高圧なガスを供給することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平11-226366号公報
【文献】特開2000-342933公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
高圧なガスについてガス膜分離プロセスを行う場合、高圧なガスの供給によりガス分離膜エレメントの分離性能が低下することが見出された。
【0006】
本発明は、高圧なガスが供給された場合にも、優れた分離性能を有するガス分離膜エレメント、ガス分離膜モジュール、及びガス分離装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下に示すガス分離膜エレメント、ガス分離膜モジュール、及びガス分離装置を提供する。
〔1〕 特定のガスを含む原料ガスから前記特定のガスを分離するためのガス分離膜エレメントであって、
前記ガス分離膜エレメントは、
第1多孔層、及び、前記第1多孔層上に設けられ、前記原料ガスに含まれる前記特定のガスを選択的に透過させる無孔質の樹脂組成物層を含むガス分離膜と、
前記ガス分離膜に前記原料ガスを供給するための供給側空間と、
前記ガス分離膜を透過した透過ガスのための透過側空間と、
前記供給側空間の前記原料ガスと前記透過側空間の前記透過ガスとの混合を防止するための封止部と、を含み、
前記供給側空間の圧力を、P1[kPaG]からP2[kPaG]まで昇圧した後、P3[kPaG]に降圧したときの各圧力P1、P2及びP3における試験用ガスの透過度をそれぞれF1[mol/(m2・s・kPa)]、F2[mol/(m2・s・kPa)]及びF3[mol/(m2・s・kPa)]とし、
前記P1及び前記P3を500kPaGとし、
前記P2がF2/F1=2となる圧力である場合に、下記式(I)の関係を満たす、ガス分離膜エレメント。
F3/F1≦2.0 (I)
〔2〕 さらに、下記式(I’)の関係を満たす、〔1〕に記載のガス分離膜エレメント。
1.0≦F3/F1≦2.0 (I’)
〔3〕 樹脂組成物層は、ゲル状である、〔1〕又は〔2〕に記載のガス分離膜エレメント。
〔4〕 前記ガス分離膜エレメントは、スパイラル型ガス分離膜エレメントであり、
前記供給側空間は、前記原料ガスが流れる供給側流路部材を有し、
前記透過側空間は、前記透過ガスが流れる透過側流路部材を有し、
前記スパイラル型ガス分離膜エレメントは、さらに、
前記透過ガスを収集するための中心管と、
前記供給側流路部材、前記ガス分離膜、及び前記透過側流路部材を積層した積層体が、前記中心管の周囲に巻回された巻回体と、を含む、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載のガス分離膜エレメント。
〔5〕 前記封止部は、
前記巻回体における軸方向両端側において巻回方向に沿って延在し、少なくとも前記ガス分離膜と前記供給側流路部材との間、又は、少なくとも前記ガス分離膜と前記透過側流路部材との間に存在するサイド封止部と、
前記軸方向両端側に設けられた前記サイド封止部の間において前記巻回体の軸方向に沿って延在し、少なくとも前記ガス分離膜と前記供給側流路部材との間、又は、少なくとも前記ガス分離膜と前記透過側流路部材との間に存在するエンド封止部とを含む、〔4〕に記載のガス分離膜エレメント。
〔6〕 前記剥離強度は、0.15N/mm以上である、〔5〕に記載のガス分離膜エレメント。
〔7〕 前記特定のガスは、酸性ガスであり、
前記試験用ガスは、窒素、アルゴン、及びヘリウムからなる群より選ばれる1種以上である、〔1〕~〔6〕のいずれかに記載のガス分離膜エレメント。
〔8〕 前記樹脂組成物層は、前記特定のガスと可逆的に反応するキャリアを含む、〔1〕~〔7〕のいずれかに記載のガス分離膜エレメント。
〔9〕 〔1〕~〔8〕のいずれかに記載のガス分離膜エレメントと、
前記ガス分離膜に前記原料ガスを供給するための原料ガス供給口と、
前記ガス分離膜を透過しない前記原料ガスを排出するための非透過ガス排出口と、
前記透過ガスを排出するための透過ガス排出口と、を備える、ガス分離膜モジュール。
〔10〕 〔9〕に記載のガス分離膜モジュールを少なくとも1つ備える、ガス分離装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、高圧なガスが供給された場合にも優れた分離性能を有するガス分離膜エレメント、ガス分離膜モジュール、及びガス分離装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】スパイラル型ガス分離膜エレメントを展開し、一部切欠き部分を設けた概略の斜視図である。
【
図2】(a)は、スパイラル型ガス分離膜エレメントを示す、一部展開部分を設けた概略の斜視図であり、(b)は、テレスコープ防止板を設けたスパイラル型ガス分離膜エレメントを示す、一部展開部分を設けた概略の斜視図である。
【
図3】スパイラル型ガス分離膜エレメントに含まれる巻回体の一例を示し、(a)は巻回体を展開して示す概略断面図であり、(b)は巻回体の概略の模式図であり、(c)は外装材付き巻回体の概略の模式図である。
【
図4】スパイラル型ガス分離膜エレメントの製造工程の一例を示し、(a)は分離膜ユニットの概略断面図であり、(b)は分離膜ユニットに封止材料を設けた場合の概の断面図であり、(c)は(b)の概略平面図である。
【
図5】(a)及び(b)は、ガス分離膜の一例を模式的に示す概略断面図である。
【
図6】(a)及び(b)は、スパイラルガス分離膜エレメントの製造方法における押圧工程の一例を示す概略の模式図である。
【
図7】実施例で行った気密試験の試験装置を説明する概略の模式図である。
【
図8】実施例で用いたガス分離装置を模式的に示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(ガス分離膜エレメント)
ガス分離膜エレメントは、特定のガスを含む原料ガスから特定のガスを分離するためのものである。ガス分離膜エレメントは、例えば、特定のガスと特定ガス以外の1又は複数種のガスを含む原料ガスから、特定のガスを透過して分離するものであれば特に限定されない。原料ガスは、特定のガス以外のガスとして水蒸気を含んでいてもよい。特定のガスとしては例えば酸性ガスが挙げられる。酸性ガスとしては、二酸化炭素(CO2)、硫化水素(H2S)、硫黄酸化物(SOx)、窒素酸化物(NOx)等が挙げられる。
【0011】
ガス分離膜エレメントは、ガス分離膜と、ガス分離膜に原料ガスを供給するための供給側空間と、ガス分離膜を透過した透過ガスのための透過側空間と、供給側空間の原料ガスと透過側空間の透過ガスとの混合を防止するための封止部とを有する。ガス分離膜は、第1多孔層と、第1多孔層上に設けられ、原料ガスに含まれる特定のガスを選択的に透過させる無孔質の樹脂組成物層とを含む。供給側空間と透過側空間とは、ガス分離膜によって互いに隔てられている。
【0012】
供給側空間の圧力を、P1[kPaG](Gはゲージ圧を表す。)からP2[kPaG]まで昇圧した後、P3[kPaG]に降圧したときの各圧力P1、P2及びP3における試験用ガスの透過度をそれぞれF1[mol/(m2・s・kPa)]、F2[mol/(m2・s・kPa)]及びF3[mol/(m2・s・kPa)]とし、P1及びP3を500kPaGとし、P2がF2/F1=2となる圧力である場合に、ガス分離膜エレメントは下記式(I):
F3/F1≦2.0 (I)
の関係を満たす。
【0013】
ガス分離膜エレメントは、さらに、下記式(I’):
1.0≦F3/F1≦2.0 (I’)
の関係を満たすものであってもよい。
【0014】
試験用ガスは、ガス分離膜の無孔質の樹脂組成物層に含まれる成分に積極的に溶解したり反応したりすることのない、無孔質の樹脂組成物層に対して不活性なガスであれば特に限定されない。試験用ガスとしては、特定のガスが酸性ガスである場合、窒素、アルゴン、ヘリウムからなる群より選ばれる1種以上を用いることができる。
【0015】
式(I)の関係を満たすガス分離膜エレメントでは、ガス分離膜エレメントが高圧条件下に曝される前と曝された後とにおいて、試験用ガスの透過度の変化が小さいことを示す。このことは、ガス分離膜エレメントに高圧なガスが供給された場合にも、ガス分離膜エレメントに生じた損傷等が抑制されており、ガス分離膜エレメントを用いたガス膜分離を良好に行えることを示していると考えられる。そのため、式(I)の関係を満たすガス分離膜エレメントでは、高圧なガスが供給された場合にも優れた分離性能を発揮することができる。式(I)中のF3/F1は、1.8以下であってもよく、1.6以下であってもよく、1.5以下であってもよい。式(I’)中のF3/F1は、1.0超であってもよく、1.1以上であってもよい。
【0016】
圧力P2は、F2/F1=2となる圧力である。圧力P2は、圧力P1よりも高く(500kPaG超であり)、通常2000kPaG以下であり、1500kPaG以下であってもよく、1200kPaG以下であってもよく、1000kPaG以下であってもよい。
【0017】
F1は、例えば1×10-9mol/(m2・s・kPa)以上であり、2×10-9mol/(m2・s・kPa)以上であってもよく、5×10-9mol/(m2・s・kPa)以上であってもよく、また、例えば5×10-8mol/(m2・s・kPa)以下であり、2×10-8mol/(m2・s・kPa)以下であってもよく、1×10-8mol/(m2・s・kPa)以下であってもよい。
【0018】
F2は、通常F1よりも大きくなるため、F2/F1は通常1超である。F2は、例えば2×10-9mol/(m2・s・kPa)以上であり、4×10-9mol/(m2・s・kPa)以上であってもよく、1×10-8mol/(m2・s・kPa)以上であってもよく、また、例えば1×10-7mol/(m2・s・kPa)以下であり、4×10-8mol/(m2・s・kPa)以下であってもよく、2×10-8mol/(m2・s・kPa)以下であってもよい。
【0019】
F3は、例えば1×10-9mol/(m2・s・kPa)以上であり、2×10-9mol/(m2・s・kPa)以上であってもよく、5×10-9mol/(m2・s・kPa)以上であってもよく、また、例えば5×10-8mol/(m2・s・kPa)以下であり、2×10-8mol/(m2・s・kPa)以下であってもよく、1×10-8mol/(m2・s・kPa)以下であってもよい。
【0020】
ガス分離膜エレメントとしては、シート状分離膜型が好ましい。シート状分離膜型としては、例えばスパイラル型又はプリーツ型の形式を挙げることができるが、スパイラル型であることが好ましい。以下では、スパイラル型ガス分離膜エレメントについて説明する。
【0021】
図1は、スパイラル型ガス分離膜エレメント1を展開し、一部切欠き部分を設けた概略の斜視図である。
図2(a)は、スパイラル型ガス分離膜エレメント1,1a(以下、「ガス分離膜エレメント1」、「ガス分離膜エレメント1a」ということがある。)を示す、一部展開部分を設けた概略の斜視図であり、
図2(b)は、テレスコープ防止板を設けたスパイラル型ガス分離膜エレメントを示す、一部展開部分を設けた概略の斜視図である。
図3(a)は巻回体を展開して示す概略断面図であり、(b)は巻回体の概略模式図であり、(c)は外装材付き巻回体の概略の模式図である。
図4は、ガス分離膜エレメント1の製造工程の一例を示し、
図4(a)は分離膜ユニット9の概略の断面図であり、
図4(b)は分離膜ユニット9に封止材料8を設けた場合の概略断面図であり、
図4(c)は
図4(b)の概略平面図である。
【0022】
ガス分離膜エレメント1において、上記した供給側空間は、原料ガスが流れる供給側流路部材3を有し、上記した透過側空間は、透過ガスが流れる透過側流路部材4を有する。ガス分離膜エレメント1は、
図1に示すように、
供給側流路部材3を流れる原料ガスと透過側流路部材4を流れる透過ガスとの混合を防止するための封止部25と、
透過ガスを収集するための中心管5と、を有し、
供給側流路部材3、ガス分離膜10、及び透過側流路部材4を積層した積層体7が、中心管5の周囲に巻回された巻回体2(
図3(a)及び(b))を含む。巻回体2は、円筒状、角筒状等の任意の形状であってもよい。
【0023】
積層体7は、例えば
図3(a)に示すように、互いに対向するように配置されたガス分離膜10の間に供給側流路部材3を介在させた膜リーフ6と、透過側流路部材4とを積層した分離膜ユニット9(
図4(a))(以下、「第1の分離膜ユニット9」ということがある。)を1以上含むとともに、第1の分離膜ユニット9の少なくとも一方の表面に設けた封止材料8を含んでいてもよい(
図4(b)及び(c))。積層体7に含まれる封止材料8は、ガス分離膜エレメント1の封止部25を形成するためのものである。
【0024】
あるいは、積層体は、例えば、互いに対向するように配置されたガス分離膜10の間に透過側流路部材4を介在させた膜リーフと、供給側流路部材3とを積層した分離膜ユニット(以下、「第2の分離膜ユニット」ということがある。)を1以上含むとともに、第2の分離膜ユニットの少なくとも一方の表面に設けた封止材料を含んでいてもよい。積層体に含まれる封止材料は、ガス分離膜エレメント1の封止部25を形成するためのものである。
【0025】
ガス分離膜エレメント1における封止部25は、
図3(b)にドットで示す領域のように、サイド封止部2sとエンド封止部2eとを含むことができる。サイド封止部2sは、巻回体2における軸方向両端側において巻回方向に沿って延在し、少なくともガス分離膜10と透過側流路部材4との間に存在することができる。サイド封止部2sは、後述するように、第1サイド部9a及び第2サイド部9bに封止材料8を設けた第1の分離膜ユニット9を含む積層体7を巻回した後、封止材料8を硬化することによって形成することができる。そのため、サイド封止部2sは、通常、巻回体2の径方向において、供給側流路部材3等を介在して重なり合っている。サイド封止部2sは、軸方向両端の近傍に設けられていればよく、
図3(a)に示すように巻回体2の軸方向両端を含む範囲に設けられてもよく、軸方向両端を含まない範囲に設けられてもよい。
【0026】
サイド封止部2sは、封止材料8が、ガス分離膜10の第1多孔層11及び透過側流路部材4に浸透した状態で硬化することによって形成されていることが好ましい。つまり、サイド封止部2sは、封止材料8が第1多孔層11及び透過側流路部材4に浸透して硬化している領域を含むことが好ましい。
【0027】
あるいは、サイド封止部2sは、巻回体2における軸方向両端側において巻回方向に沿って延在し、少なくともガス分離膜10と供給側流路部材3との間に存在するものであってもよい。この場合、サイド封止部2sは、第1サイド部及び第2サイド部に封止材料を設けた第2の分離膜ユニットを含む積層体を巻回した後、封止材料を硬化することによって形成することができる。サイド封止部2sは、通常、巻回体2の径方向において、透過側流路部材4等を介在して重なり合っている。サイド封止部2sは、封止材料が、ガス分離膜10の第1多孔層11及び供給側流路部材3に浸透した状態で硬化することによって形成されていることが好ましい。つまり、サイド封止部2sは、封止材料が第1多孔層11及び供給側流路部材3に浸透して硬化している領域を含むことが好ましい。
【0028】
エンド封止部2eは、巻回体2の軸方向両端側に設けられた2つのサイド封止部2sの間において巻回体2の軸方向に沿って延在し、少なくともガス分離膜10と透過側流路部材4との間に存在することができる。エンド封止部2eは、
図3(b)に示すように、巻回体2の軸方向両端側に設けられた2つのサイド封止部2sに接し、この2つのサイド封止部2sを結ぶように延在していることが好ましい。エンド封止部2eは、後述するようにエンド部9cに封止材料8を設けた第1の分離膜ユニット9を含む積層体7を巻回した後、封止材料8を硬化することによって形成することができる。そのため、エンド封止部2eは、ガス分離膜エレメント1の巻回体2の巻回方向に互いに離間して、間欠的に設けられることが好ましい。
【0029】
エンド封止部2eは、封止材料8が、ガス分離膜10の第1多孔層11及び透過側流路部材4に浸透した状態で硬化することによって形成されていることが好ましい。つまり、エンド封止部2eは、封止材料8が第1多孔層11及び透過側流路部材4に浸透して硬化している領域を含むことが好ましい。
【0030】
あるいは、エンド封止部2eは、巻回体2の軸方向両端側に設けられた2つのサイド封止部2sの間において巻回体2の軸方向に沿って延在し、少なくともガス分離膜10と供給側流路部材3との間に存在するものであってもよい。エンド封止部2eは、巻回体2の軸方向両端側に設けられた2つのサイド封止部に接し、この2つのサイド封止部を結ぶように延在していることが好ましい。この場合、エンド封止部2eは、エンド部に封止材料を設けた第2の分離膜ユニットを含む積層体を巻回した後、封止材料を硬化することによって形成することができる。エンド封止部2eは、ガス分離膜エレメント1の巻回体2の巻回方向に互いに離間して、間欠的に設けられることが好ましい。エンド封止部2eは、封止材料が、ガス分離膜10の第1多孔層11及び供給側流路部材3に浸透した状態で硬化することによって形成されていることが好ましい。つまり、エンド封止部2eは、封止材料8が第1多孔層11及び供給側流路部材3に浸透して硬化している領域を含むことが好ましい。
【0031】
ガス分離膜エレメント1のエンド封止部2eにおける剥離強度は、0.15N/mm以上であることが好ましく、0.18N/mm以上であることがより好ましく、0.2N/mm以上であってもよく、0.21N/mm以上であってもよい。エンド封止部2eにおける剥離強度は、通常0.5N/mm以下であり、0.4N/mm以下であってもよい。エンド封止部2eの剥離強度が上記の範囲内であることにより、ガス分離膜エレメント1に高圧なガスが供給された場合にも、ガス分離膜エレメント1を用いたガス膜分離を良好に行うことができ、優れた分離性能を発揮できることが期待できる。エンド封止部2eにおける剥離強度とは、エンド封止部2eを含む領域において、ガス分離膜10と透過側流路部材4との間の剥離強度、又は、ガス分離膜10と供給側流路部材3との間の剥離強度であり、実施例に記載の方法によって決定することができる。
【0032】
ガス分離膜エレメント1は、巻回体2の巻戻しや巻崩れを防止するために、
図3(c)に示すように巻回体2をなす積層体7の外周に外周テープ等の外装材54を巻付けた外装材付き巻回体2aを含むガス分離膜エレメント1としてもよく、
図2(b)に示すように、外装材付き巻回体2aの軸方向両端側(巻回された積層体7の両端)にテレスコープ防止板55等の固定部材を設けたガス分離膜エレメント1aとしてもよい。さらに、ガス分離膜エレメント1にかかる内圧及び外圧による負荷に対する強度を確保するために、外装材54を巻付けた巻回体2aの最外周にアウターラップ(補強層)を有していてもよい。
【0033】
ガス分離膜エレメント1,1aでは、
図2(a)及び(b)に示す供給口51から原料ガスを供給することができる。ガス分離膜10を透過した透過ガスは、中心管5内部に収集され、第1排出口52及び/又は第1排出口52とは反対側の排出口から排出することができる。ガス分離膜10を透過しなかった原料ガスは、第2排出口53から排出することができる。
【0034】
(ガス分離膜)
ガス分離膜は、特定のガスを選択的に透過するものである。ガス分離膜の形状は、好ましくはシート状である。以下では、シート状のガス分離膜を例に挙げて説明する。
図5(a)及び(b)は、ガス分離膜10の一例を模式的に示す概略断面図である。
【0035】
ガス分離膜10は、
図5(a)に示すように、第1多孔層11と、第1多孔層11上に設けられた無孔質の樹脂組成物層15を有する。ガス分離膜10は、
図5(b)に示すように、樹脂組成物層15の第1多孔層11とは反対側に、第2多孔層12を有していてもよい。
【0036】
ガス分離膜10は、第1多孔層11や第2多孔層12に強度を付加的に付与すること等を目的として、第1多孔層11及び第2多孔層12の樹脂組成物層15と接しない面にさらに多孔体を積層してもよい。多孔体としては、第1多孔層11及び第2多孔層12として例示する、後述の樹脂材料及び無機材料、これらの材料のうちの1又は2以上を含む不織布又は織布等を好適に用いることができる。
【0037】
(無孔質の樹脂組成物層)
無孔質の樹脂組成物層15は、原料ガスに含まれる特定のガスを選択的に透過させるガス選択透過性を有する。樹脂組成物層15は、樹脂組成物を用いて形成された無孔質の層であり、ゲル状の樹脂組成物層であることが好ましい。本明細書において無孔質の樹脂組成物層とは、分子のサイズや形状の差異を利用して選択透過させる多孔質の層(分子ふるい膜)ではなく、分子の溶解性及び拡散性の差異を利用して選択透過させる層(溶解-拡散膜)をいう。無孔質の樹脂組成物層としては、例えばガス分子の溶解性又は/及び拡散性を促進する物質を含む促進輸送膜が挙げられる。
【0038】
樹脂組成物層15は、少なくとも樹脂、及び、特定のガスと可逆的に反応するキャリアを含むことが好ましく、必要に応じて、樹脂やキャリア以外の添加剤を含んでいてもよい。樹脂組成物層15に含まれる樹脂は、親水性樹脂であることが好ましい。
【0039】
親水性樹脂は、水酸基やイオン交換基等の親水性基を有する樹脂であり、親水性樹脂の分子鎖同士が架橋により網目構造を有することで高い保水性を示す架橋型親水性樹脂を含むことがより好ましい。
【0040】
親水性樹脂を形成する重合体は、例えば、アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステル、脂肪酸のビニルエステル、又はそれらの誘導体に由来する構造単位を有していることが好ましい。このような親水性を示す重合体としては、アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、メタクリル酸、酢酸ビニル等の単量体を重合してなる重合体が挙げられ、具体的には、イオン交換基としてカルボキシル基を有するポリアクリル酸系樹脂、ポリイタコン酸系樹脂、ポリクロトン酸系樹脂、ポリメタクリル酸系樹脂等、水酸基を有するポリビニルアルコール系樹脂等、それらの共重合体であるアクリル酸-ビニルアルコール共重合体系樹脂、アクリル酸-メタクリル酸共重合体系樹脂、アクリル酸-メタクリル酸メチル共重合体系樹脂、メタクリル酸-メタクリル酸メチル共重合体系樹脂等が挙げられる。この中でも、アクリル酸の重合体であるポリアクリル酸系樹脂、メタクリル酸の重合体であるポリメタクリル酸系樹脂、酢酸ビニルの重合体を加水分解したポリビニルアルコール系樹脂、アクリル酸メチルと酢酸ビニルとの共重合体を鹸化したアクリル酸塩-ビニルアルコール共重合体系樹脂、アクリル酸とメタクリル酸との共重合体であるアクリル酸-メタクリル酸共重合体系樹脂がより好ましく、ポリアクリル酸、アクリル酸塩-ビニルアルコール共重合体系樹脂がさらに好ましい。
【0041】
架橋型親水性樹脂は、親水性を示す重合体を架橋剤と反応させて調製してもよいし、親水性を示す重合体の原料となる単量体と架橋性単量体とを共重合させて調製してもよい。架橋剤又は架橋性単量体としては特に限定されず、従来公知の架橋剤又は架橋性単量体を使用することができる。
【0042】
架橋剤としては、例えば、エポキシ架橋剤、多価グリシジルエーテル、多価アルコール、多価イソシアネート、多価アジリジン、ハロエポキシ化合物、多価アルデヒド、多価アミン、有機金属系架橋剤、金属系架橋剤等の、従来公知の架橋剤が挙げられる。架橋性単量体としては、例えば、ジビニルベンゼン、N,N’-メチレンビスアクリルアミド、トリメチロールプロパントリアリルエーテル、ペンタエリスリトールテトラアリルエーテル等の、従来公知の架橋性単量体が挙げられる。架橋方法としては、例えば、熱架橋、紫外線架橋、電子線架橋、放射線架橋、光架橋等の方法や、特開2003-268009号公報、特開平7-88171号公報に記載されている方法等、従来公知の手法を使用することができる。
【0043】
特定のガスと可逆的に反応するキャリアは、樹脂組成物層15内に存在し、樹脂組成物層15内に存在する水に溶解した特定のガスと可逆的に反応することにより、特定のガスを選択的に透過させる。樹脂組成物層15に含まれるキャリアは、1種であってもよく2種以上であってもよい。
【0044】
特定のガスが酸性ガスである場合に用いられるキャリアの具体例としては、酸性ガスが二酸化炭素の場合、アルカリ金属炭酸塩やアルカリ金属重炭酸塩、アルカノールアミン(例えば、特公平7-102310号公報(特許第2086581号)等に記載)、及びアルカリ金属水酸化物(例えば、国際公開公報2016/024523号パンフレット等に記載)等が、酸性ガスが硫黄酸化物の場合、硫黄含有化合物や、アルカリ金属のクエン酸塩、及び遷移金属錯体(例えば、特許第2879057号公報等に記載)等が、酸性ガスが窒素酸化物の場合、アルカリ金属亜硝酸塩や、遷移金属錯体(例えば、特許第2879057号公報等に記載)等が、それぞれ挙げられる。
【0045】
樹脂組成物層15には、親水性樹脂等の樹脂及びキャリアの他に、例えば特定のガスとキャリアとの反応速度を向上させるための水和反応触媒や、界面活性剤等が添加剤として含まれていてもよい。
【0046】
特定のガスが酸性ガスである場合の水和反応触媒としては、オキソ酸化合物が挙げられる。オキソ酸化合物としては、14族元素、15族元素、及び16族元素からなる群より選択される少なくとも1つの元素のオキソ酸化合物であることが好ましく、亜テルル酸化合物、亜セレン酸化合物、亜ヒ酸化合物、及びオルトケイ酸化合物からなる群より選択される少なくとも1つであることがさらに好ましい。樹脂組成物層15は、オキソ酸化合物を1種又は2種以上含むことができる。
【0047】
界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤等の従来公知の界面活性剤を使用することができる。界面活性剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0048】
(第1多孔層及び第2多孔層)
第1多孔層11及び第2多孔層12は、樹脂組成物層15を支持するための支持層として、又は、樹脂組成物層15を保護するための保護層として用いることができる。第1多孔層11及び第2多孔層12のうちの一方は、樹脂組成物層15を形成するために樹脂組成物を含む塗布液が塗布される層であってもよい。第1多孔層11及び第2多孔層12は、ガス分離膜10において、樹脂組成物層15に供給された原料ガス、特に原料ガスに含まれるガス成分のうち樹脂組成物層15を選択的に透過する特定のガス成分の拡散抵抗とならないように、ガス透過性の高い多孔性を有する。第1多孔層11及び第2多孔層12は、1層構造でもよく2層以上の積層構造であってもよい。第1多孔層11及び第2多孔層12は、ガス分離膜10の適用が想定されるプロセス条件に応じた耐熱性を有することが好ましい。本明細書において「耐熱性」とは、第1多孔層11や第2多孔層12等の部材をプロセス条件以上の温度条件下に2時間保存した後においてもこの部材の保存前の形態が維持され、熱収縮或いは熱溶融による、目視で確認し得るカールが生じないことを意味する。
【0049】
第1多孔層11及び第2多孔層12はそれぞれ独立して、樹脂材料又は無機材料によって形成されていることが好ましい。第1多孔層11又は第2多孔層12を構成する樹脂材料としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂;ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等のフッ素含有樹脂;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル樹脂;ポリスチレン(PS)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリスルホン(PSF)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリアミド(PA)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、高分子量ポリエステル、耐熱性ポリアミド、アラミド、ポリカーボネート、これらの樹脂材料のうちの2種以上の混合物等が挙げられる。これらの中でも、撥水性及び耐熱性の点から、ポリオレフィン系樹脂又はフッ素含有樹脂であることが好ましい。第1多孔層11又は第2多孔層12を構成する無機材料としては、金属、ガラス、セラミックス等が挙げられる。第1多孔層11又は第2多孔層12は、樹脂材料と無機材料との両方を含んでいてもよい。
【0050】
第1多孔層11及び第2多孔層12の厚みは特に限定されない。第1多孔層11及び第2多孔層12の厚みは、それぞれ独立して、通常10μm~3000μmの範囲が好ましく、10μm~500μmの範囲がより好ましく、15μm~150μmの範囲がさらに好ましい。
【0051】
第1多孔層11及び第2多孔層12の平均孔径は、それぞれ独立して、0.01μm以上であり、0.03μm以上であることが好ましく、0.05μm以上であってもよく、また、0.5μm以下であり、0.3μm以下であってもよく、0.1μm以下であってもよい。平均孔径は、例えばキャピラリー・フロー・ポロメーター(Capillary Flow Porometer)からのモデルCFP1500AXLCを用いるASTM F316-03に準ずる測定方法に従って測定することができる。
【0052】
第1多孔層11及び第2多孔層は、疎水性であることが好ましく、温度25℃における水の接触角が90度以上であってもよく、95度以上であってもよく、100度以上であってもよい。水の接触角は、接触角計(例えば、協和界面科学(株)製;商品名:「DropMaster500」)で測定することができる。
【0053】
第1多孔層11には、上記した封止部25をなす封止材料8の浸透性を向上するために、封止材料8の塗布に先立って、封止材料8を浸透させる領域に親水化処理を施してもよい。親水化処理は、例えば、後述する塗工液に添加する界面活性剤と同様の界面活性剤を塗布する処理によって行うことができる。
【0054】
(ガス分離膜の製造方法)
ガス分離膜10の製造方法は、例えば、樹脂組成物層15を形成するための組成物(樹脂、キャリア、添加剤等)を含む塗布液を準備する工程(以下、「準備工程」ということがある。)と、第1多孔層11上に塗布液を塗布する工程(以下、「塗布工程」ということがある。)とを含むことができる。
【0055】
準備工程は、上記組成物を用いて第1多孔層11上に塗布される塗布液を準備する工程である。準備工程では、例えば、上記組成物と媒質とを混合して塗布液を準備することができる。媒質としては、例えば、水、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール等のアルコール等のプロトン性極性溶媒;トルエン、キシレン、ヘキサン等の無極性溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶媒;等が挙げられる。媒質は、1種類を単独で用いてもよく、相溶する範囲で2種類以上を併用してもよい。これらの中でも、水、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール等のアルコールからなる群から選択される少なくとも1つが含まれる媒質が好ましく、水が含まれる媒質がより好ましい。準備工程は、準備した塗布液に含まれる気泡を除去するための脱泡工程を含んでいてもよい。脱泡工程は、例えば、塗布液を撹拌する、濾過する等によりせん断を与える方法、塗布液を真空脱気又は減圧脱気する方法、塗布液を加温して脱気する方法等を挙げることができる。
【0056】
塗布工程は、準備工程で準備した塗布液を第1多孔層11上に塗布する工程である。塗布工程は、スロットダイ塗布、スピンコート法、バー塗布、ダイコート法、ブレード塗布、エアナイフ塗布、グラビアコート法、ロールコーティング塗布、スプレー塗布、ディップ塗布、コンマロール法、キスコート法、スクリーン印刷、インクジェット印刷等によって行うことができる。
【0057】
塗布工程は、第1多孔層11上に塗布液を塗布して形成された塗布液の膜から、媒質を除去する工程を含むことが好ましい。媒質を除去する工程は、加熱等により塗布液の膜から媒質を蒸発除去させる方法等を挙げることができる。
【0058】
ガス分離膜10の製造方法は、ガス分離膜10が第1多孔層11、樹脂組成物層15、及び第2多孔層12をこの順に含む場合、塗布液の膜の第1多孔層11とは反対側に、第2多孔層12を積層する工程を有していてもよい。第2多孔層12を積層した後に、塗布液の膜中の媒質をさらに除去する工程を行ってもよい。
【0059】
(封止部)
封止部25は、原料ガスと透過ガスとの混合を防止するために設けられる。スパイラル型ガス分離膜エレメント1,1aでは、例えば透過側流路部材4及びガス分離膜10、又は、供給側流路部材3及びガス分離膜10に、封止材料が浸透して硬化することにより形成することができる。封止部25は、一般に接着剤として用いられる材料を用いることができる。接着剤としては、熱硬化性接着剤、熱融着性接着剤、活性エネルギー線硬化性接着剤等が挙げられる。
【0060】
封止部25に用いられる封止材料8に含まれる樹脂としては、例えば、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂、塩化ビニル共重合体系樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体系樹脂、塩化ビニル-塩化ビニリデン共重合体系樹脂、塩化ビニル-アクリロニトリル共重合体系樹脂、ブタジエン-アクリロニトリル共重合体系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリビニルブチラール系樹脂、ポリエステル系樹脂、セルロース誘導体(ニトロセルロース等)系樹脂、スチレン-ブタジエン共重合体系樹脂、各種の合成ゴム系(エラストマー系)樹脂、フェノール系樹脂、尿素系樹脂、メラミン系樹脂、フェノキシ系樹脂、尿素ホルムアミド系樹脂等が挙げられる。これらの中でも、封止材料8は、エポキシ系樹脂(エポキシ系接着剤用樹脂)の接着剤であることが好ましい。
【0061】
(供給側流路部材及び透過側流路部材)
供給側流路部材3及び透過側流路部材4は、原料ガス及びガス分離膜10を透過した透過ガスの乱流(膜面の表面更新)を促進して、原料ガス中の透過ガスの膜透過速度を増加させる機能と、供給される原料ガス及びガス分離膜10を透過した透過ガスの圧力損失をできるだけ小さくする機能とを有していることが好ましい。供給側流路部材3及び透過側流路部材4は、原料ガス及び透過ガスの流路を形成するスペーサとしての機能と、原料ガス及び透過ガスに乱流を生じさせる機能とを備えていることが好ましいことから、網目状(ネット状、メッシュ状等)のものが好適に用いられる。網目の単位格子の形状は、網目の形状によりガスの流路が変わることから、目的に応じて、例えば、正方形、長方形、菱形、平行四辺形等の形状から選択されることが好ましい。供給側流路部材3及び透過側流路部材4の材質としては、特に限定されないが、ガス分離膜エレメント1,1aが設けられるガス分離装置の運転温度条件に耐え得る耐熱性を有する材料が好ましい。
【0062】
(中心管)
中心管5は、ガス分離膜10を透過した透過ガスを収集して、スパイラル型ガス分離膜エレメント1,1aから排出するための導管である。中心管5は、スパイラル型ガス分離膜エレメント1,1aが設けられるガス分離装置の使用温度条件に耐え得る耐熱性を有することが好ましい。中心管5は、その周囲に巻回される積層体の巻き付けに耐え得る機械的強度を有する材料であることが好ましい。中心管5は、
図2(a)及び(b)に示すように、その外周面に透過側流路部材4で形成される透過ガスの流路空間と中心管5内部の中空空間とを連通させる複数の孔50を有している。
【0063】
(スパイラル型ガス分離膜エレメントの製造方法)
ガス分離膜エレメント1の製造方法は特に限定されないが、例えば、膜リーフ6を製造する工程、積層体7を製造する工程、巻回体2を形成する工程、中心管5に巻回された部分の積層体7を押圧する工程を含むことができる。押圧する工程において押圧する、中心管5に巻回された部分の積層体7は、その全長が中心管5に巻回されていてもよい。ガス分離膜エレメント1の製造方法は、さらに、巻回体2の外周に外周テープ等の外装材54を巻付けて外装材付き巻回体2a(
図3(c))を得る工程、外装材付き巻回体2aの封止材料8を硬化させる工程を有することもできる。
【0064】
上記のガス分離膜エレメント1の製造方法では、押圧する工程において、中心管5に巻回された部分の積層体7に含まれる第1の分離膜ユニット9のエンド部9cに適切な押圧力を付与することにより、上記した式(I)の関係を満たすガス分離膜エレメント1を好適に製造することができる。
【0065】
膜リーフ6を製造する工程は、例えば
図4(a)の断面図に示すように、二つ折りにしたガス分離膜10の間に供給側流路部材3を挟み込むことによって行うことができる。ガス分離膜10は二つ折りにして用いてもよいが、互いに対向するように配置された2枚のガス分離膜10の間に供給側流路部材3を介在させて、2枚のガス分離膜10の一辺を互いに接着するようにしてもよい。
【0066】
積層体7を製造する工程は、例えば
図4(a)に示すように、膜リーフ6と透過側流路部材4とを積層して第1の分離膜ユニット9を製造する工程と、
図4(b)及び(c)に示すように、第1の分離膜ユニット9の少なくとも一方の表面に封止材料8を設ける工程と、を含むことができる。第1の分離膜ユニット9を製造する工程は、例えば
図4(a)に示すように、透過側流路部材4上に膜リーフ6を積層すればよい。
【0067】
封止材料8を設ける工程は、例えば
図4(b)及び(c)に示すように、第1の分離膜ユニット9の膜リーフ6側の表面の第1サイド部9a、第2サイド部9b、及びエンド部9cに封止材料8を設けて、いわゆるエンベロープ状とすることが好ましい。第1サイド部9a及び第2サイド部9bに設けられた封止材料8は、ガス分離膜エレメント1のサイド封止部2sを形成するために用いることができる。エンド部9cに設けられた封止材料8は、ガス分離膜エレメント1のエンド封止部2eを形成するために用いることができる。第1サイド部9a及び第2サイド部9bに設けられる封止材料8は、
図4(c)に示すように、膜リーフ6の軸方向両端の位置に設けられてもよいが、軸方向両端から軸方向内側の位置に巻回方向に沿って設けられてもよい。エンド部9cに設けられる封止材料8も同様に、
図4(c)に示すように、膜リーフ6の軸方向に延在する一端の位置に設けられてもよいが、当該一端から巻回方向(軸方向に直交する方向)内側の位置に軸方向に沿って設けられてもよい。
【0068】
封止材料8は、転写や塗布等によって第1の分離膜ユニット9に設けることができる。上記では、第1の分離膜ユニット9の膜リーフ6側の表面に封止材料8を設ける場合について説明したが、第1の分離膜ユニット9の透過側流路部材4側の表面に封止材料8を設けてもよく、第1の分離膜ユニット9の両面(膜リーフ6側の表面及び透過側流路部材4側の表面)に設けてもよい。膜リーフ6をなす部材への封止材料8の浸透を促進するためには、隣接する膜リーフ6の間に介在する透過側流路部材4の両面に封止材料8を設けることが好ましい。
【0069】
積層体7を製造する工程は、上記した工程のみであってもよいが、上記した一連の工程を繰り返して、
図3(a)に示すように、複数の第1の分離膜ユニット9を積層してもよい。あるいは、積層体7を製造する工程は次のように行ってもよい。まず、膜リーフ6上又は透過側流路部材4上に上記で説明したように封止材料8を設け、この封止材料8を介して膜リーフ6と透過側流路部材4とを積層した複合体をあらかじめ複数準備する。続いて、透過側流路部材4上に膜リーフ6を設けた第1の分離膜ユニット9(
図4(a))上に、上記で準備した複合体を、透過側流路部材4側が第1の分離膜ユニット9の膜リーフ6と対向するように積層して、複数の第1の分離膜ユニット9が積層された積層体7を形成してもよい。
【0070】
第1の分離膜ユニット9の積層数は、ガス分離膜エレメント1の分離性能等に応じて選定すればよく、例えば10層以上とすることができ、20層以上であってもよく、30層以上であってもよく、通常、70層以下である。複数の第1の分離膜ユニット9を有する積層体7では、
図3(a)に示すように、膜リーフ6の折り目部分が同じ側に位置し、かつ、この折り目部分の位置が、折り目部分と直交する方向にずれるように、第1の分離膜ユニット9を積層することが好ましい。
【0071】
次に、上記のようにして製造した積層体7を用いて、巻回体2を形成する工程を行う。巻回体2を形成する工程では、上記で得られた積層体7の最外層に位置する透過側流路部材4の一端を、中心管5の外周に固定し(
図3(a))、中心管5の周囲に積層体7を巻回する。中心管5は、積層体7を得る際に用いる透過側流路部材4にあらかじめ固定されていてもよく、この中心管5が固定された透過側流路部材4を用いて積層体7を得てもよい。中心管5は、
図3(a)に示すように、積層体7において膜リーフ6の折り目部分が位置する側の端部に設けることが好ましい。中心管5の周囲に積層体7を巻回する際には中心管5を回転させて、中心管5の周囲に積層体7を巻回することにより、
図3(b)に示す巻回体2を得ることができる。
【0072】
中心管5に巻回された部分の積層体7を押圧する工程(以下、「押圧工程」ということがある。)は、ガス分離膜エレメント1のサイド封止部2s及びエンド封止部2eを形成するために、第1の分離膜ユニット9の第1サイド部9a、第2サイド部9b、及びエンド部9cに設けられた封止材料8に押圧力を加える工程を含む。押圧工程は、例えば、中心管5に巻回された部分の積層体7に押圧部材を押し当てることによって行うことができる。押圧工程により、第1サイド部9a、第2サイド部9b、及びエンド部9cに設けられた封止材料8を、膜リーフ6の間の透過側流路部材4に浸透させたり、対向する膜リーフ6の間(透過側流路部材4が介在した状態であってもよい)で押し広げたりすることができる。このように封止材料8の浸透及び押し広げを行った後に、後述するように封止材料8を硬化させることにより、ガス分離膜エレメント1の巻回体2にサイド封止部2s及びエンド封止部2eを形成することができる。
【0073】
押圧工程は、中心管5を回転させながら、中心管5に巻回された部分の積層体7に押圧部材を押し当てることによって行うことができる。中心管5は、中心管5に回転駆動力を付与することによって回転してもよく、中心管5に巻回された部分の積層体7に対して回転駆動力を付与することによって回転してもよい。中心管5は、連続的に回転してもよく、間欠的に回転してもよい。押し当てる工程は、中心管5を回転させずに、中心管5に巻回された部分の積層体7に対して押圧部材を押し当ててもよい。
【0074】
押圧工程では、第1の分離膜ユニット9の第1サイド部9a、第2サイド部9b、及びエンド部9cに設けられた封止材料8に対して、それぞれ押圧力を付与してもよく、同時に押圧力を付与してもよい。
【0075】
押圧部材は、第1の分離膜ユニット9の第1サイド部9a、第2サイド部9b、及びエンド部9cに設けられた封止材料8に押圧力を付与できるものであれば特に限定されない。押圧部材としては、例えば、中心管5の軸方向に延在するロール、板状部材、棒状部材等が挙げられる。
【0076】
積層体7は、上記したように第1の分離膜ユニット9の第1サイド部9a、第2サイド部9b、及びエンド部9cに封止材料8が設けられている(
図4(b)及び(c))。そのため、中心管5の周囲に積層体7を巻回すると、巻回体2の軸方向両端部側では第1の分離膜ユニット9の第1サイド部9a及び第2サイド部9bに設けられた封止材料8が径方向に重なり合い、巻回体2の径方向の断面では、巻回体2の軸方向中央部に比較すると封止材料8が密に存在する状態となる。一方、巻回体2の軸方向中央部では、第1の分離膜ユニット9のエンド部9cに設けられた封止材料8が巻回体2の周方向に間欠的に存在し、径方向での封止材料8どうしの重なり合いが少ない。そのため、巻回体2の径方向の断面では、巻回体2の軸方向両端側に比較すると、封止材料8が粗に存在する状態となる。このような巻回体2は、軸方向両端部側が硬く、軸方向中央部が柔らかい傾向にある。
【0077】
そのため、中心管5に巻回された部分の積層体7に押し当てられる押圧部材の押圧面が、中心管5の軸方向に平行であると、第1サイド部9a及び第2サイド部9bに設けられた封止材料8には押圧力が付与されやすいが、エンド部9cに設けられた封止材料8には押圧力が付与されにくい。したがって、押圧工程において、第1サイド部9a、第2サイド部9b、及びエンド部9cに設けられた封止材料8の浸透及び押し広げを良好に行えるように、第1サイド部9a及び第2サイド部9bに付与される押圧力、及び、エンド部9cに付与される押圧力を適切に設定することが好ましい。押圧工程において、エンド部9cに付与される押圧力は、第1サイド部9a及び第2サイド部9bに付与される押圧力よりも大きいことが好ましい。
【0078】
第1サイド部9a及び第2サイド部9bと、エンド部9cとにそれぞれ適切な押圧力を付与する方法としては特に限定されないが、例えば以下に示す[i]~[iii]の方法が挙げられる。
[i]押圧部材として2種類のロールを用いる場合について説明する。
図6(a)及び(b)は、ガス分離膜エレメント1の製造方法における押圧工程の一例を示す概略の模式図である。
図6(a)に示すように、軸方向において径が一定である第1ロール81(押圧部材)を準備する。中心管5に巻回された部分の積層体7に第1ロール81を押し当てることにより、第1サイド部9a及び第2サイド部9bに押圧力を付与する。また、
図6(b)に示すように、第1サイド部9a及び第2サイド部9bと対向する部分の間(エンド部9cと対向する部分)の径が、第1サイド部9a及び第2サイド部9bと対向する部分の径よりも大きい第2ロール82(押圧部材)を準備する。中心管5に巻回された部分の積層体7に第2ロール82を押し当てることにより、エンド部9cに押圧力を付与する。第1ロール81及び第2ロール82を用いることにより、第1サイド部9a及び第2サイド部9bと、エンド部9cとにそれぞれ適切な押圧力を付与することができる。第1ロール81としては、例えば、ニップロール等に用いられる通常のロールを用いることができ、第2ロール82としては、第1ロール81のロール表面にコルクシートを巻き付けて径を大きくしたものを用いることができる。
【0079】
[ii]押圧部材として軸方向において径が異なるクラウンロールを用いる場合について説明する。クラウンロールとして、第1サイド部9a及び第2サイド部9bと対向する部分の径が相対的に小さく、第1サイド部9a及び第2サイド部9bと対向する部分の間(エンド部9cと対向する部分)の径が相対的に大きいものを用いる。このクラウンロールを用いて、中心管5に巻回された部分の積層体7に対して押圧力を付与することにより、第1サイド部9a及び第2サイド部9bと、エンド部9cとに、それぞれ適切な押圧力を付与することができる。
【0080】
[iii]押圧部材として板状又は棒状のプレスバーを用いる場合について説明する。第1サイド部9a及び第2サイド部9bに押圧力を付与する工程では、中心管5に巻回された部分の積層体7に対して、その軸方向に対して平行な状態でプレスバーを押し当てる。エンド部9cに押圧力を付与する工程では、中心管5に巻回された部分の積層体7に対して凸となるようにプレスバーを湾曲させた状態で、プレスバーを押し当てる。このように、中心管5に巻回された部分の積層体7に対して押し当てるプレスバーの形状を変化させることにより、第1サイド部9a及び第2サイド部9bと、エンド部9cとに、それぞれ適切な押圧力を付与することができる。
【0081】
上記のようにして押圧工程を行った後、巻回体2の外周に外装材54を巻付けて外装材付き巻回体2a(
図3(c))を得る工程を有することができる。外装材54は、巻回体2における積層体7の軸方向の長さよりも小さい幅を有するテープであってもよく、巻回体2における積層体7の軸方向の長さと同幅を有するシートであってもよい。テープ状の外装材を用いる場合は、
図3(c)に示すように、巻回体2における積層体7の外表面に螺旋状にテープ状の外装材を巻付ければよく、シート状の外装材を用いる場合は、巻回体2の積層体7の外表面を覆うようにシート状の外装材を巻付ければよい。
【0082】
続いて、外装材付き巻回体2aの封止材料8を硬化させる工程を行う。封止材料8を硬化させることにより、ガス分離膜エレメント1の封止部25を形成することができる。上記した押圧工程により、巻回体2において、第1サイド部9a、第2サイド部9b、及びエンド部9cに設けられた封止材料8が押し広げられているとともに、透過側流路部材4や必要に応じて膜リーフ6の第1多孔層11等に浸透している。この状態で封止材料8を硬化することにより、信頼性の高いサイド封止部2s及びエンド封止部2eを形成することができる。
【0083】
封止材料8の硬化方法は、封止材料8の種類に応じて適宜選択すればよい。例えば、封止材料8として熱硬化性樹脂を用いている場合には、加熱等を行って熱硬化性樹脂を硬化させればよく、封止材料8が熱融着性接着剤である場合には、加熱等を行った後に冷却すればよい。封止材料8として活性エネルギー線硬化性樹脂を用いている場合は、活性エネルギー線照射により硬化を行えばよく、封止材料8が水や溶剤を含む材料である場合には、水や溶媒を除去するための乾燥を行えばよい。
【0084】
上記では、第1サイド部9a、第2サイド部9b、及びエンド部9cに封止材料8を設けた後に、押圧工程を行う場合について説明したが、これに限定されない。例えば、まず、第1サイド部9a及び第2サイド部9bに封止材料8を設け、中心管5に巻回された部分の積層体7の第1サイド部9a及び第2サイド部9bを押圧する工程を行う。続いて、積層体7に含まれる第1の分離膜ユニット9のエンド部9cに封止材料8を設けて、中心管5に巻回された部分の積層体7のエンド部9cを押圧する工程を行ってもよい。
【0085】
上記では、第1の分離膜ユニット9を含む積層体7を用いてガス分離膜エレメント1を製造する方法について説明したが、ガス分離膜エレメント1は、上記した第2の分離膜ユニットを含む積層体を用いて製造することもできる。第2の分離膜ユニットを含む積層体を用いる場合、上記で説明した第1の分離膜ユニット9を含む積層体7を用いてガス分離膜エレメント1を製造する方法において、供給側流路部材3に代えて透過側流路部材4を用い、透過側流路部材4に代えて供給側流路部材3を用いればよい。
【0086】
(分離膜モジュール)
ガス分離膜エレメントは、ガス分離膜モジュールに用いることができる。ガス分離膜モジュールは、ガス分離膜エレメントを1基以上有する。ガス分離膜モジュールは、ガス分離膜10に原料ガスを供給するための原料ガス供給口(
図2(a)及び(b)に示す供給口51と連通する部分)、ガス分離膜10を透過した透過ガスを排出するための透過ガス排出口(
図2(a)及び(b)に示す第1排出口52と連通する部分)、及びガス分離膜10を透過しなかった原料ガスを排出するための非透過ガス排出口(
図2(a)及び(b)に示す第2排出口53と連通する部分)を備えている。上記の原料ガス供給口、透過ガス排出口及び非透過ガス排出口は、ガス分離膜エレメントを収納する容器(以下、「ハウジング」ということがある。)に設けられてもよい。
【0087】
ハウジングは、ガス分離膜モジュール内を流通する原料ガスを封入するための空間を形成することができ、例えばステンレス等の筒状部材と、この筒状部材の軸方向両端を閉塞するための閉塞部材とを有していてもよい。ハウジングは、円筒状、角筒状等の任意の筒状形状であってもよいが、ガス分離膜エレメントは通常、円筒状であることから、円筒状であることが好ましい。また、ハウジングの内部には、供給口51に供給される原料ガスと、ガス分離膜エレメントに備えられたガス分離膜10を透過しなかった非透過ガスとの混合を防止するための仕切りを設けることができる。
【0088】
ハウジング内に2以上のガス分離膜エレメントを配置する場合、各ガス分離膜エレメントに供給される原料ガスは、並列に供給されてもよく、直列に供給されてもよい。ここで、原料ガスを並列に供給するとは、少なくとも原料ガスを分配して複数のガス分離膜エレメントに導入することをいい、原料ガスを直列に供給するとは、少なくとも前段のガス分離膜エレメントから排出された透過ガス及び/又は非透過ガスを、後段のガス分離膜エレメントに導入することをいう。
【0089】
(分離装置)
ガス分離装置は、ガス分離膜モジュールを少なくとも1つ備えることができる。ガス分離装置に備えられるガス分離膜モジュールの配列及び個数は、要求される処理量、特定のガス成分の回収率、ガス分離装置を設置する場所の大きさ等に応じて選択することができる。
【0090】
ガス分離装置は、ガス分離膜10によって互いに隔てられた供給側空間及び透過側空間と、特定のガスを少なくとも含む原料ガスを、供給部から供給側空間に供給するための供給側入口と、ガス分離膜10を透過した特定のガスを含む透過ガスを透過側空間から排出するための透過側出口と、ガス分離膜10を透過しなかった原料ガスを供給側空間から排出するための非透過側出口と、を備えていてもよい。
【0091】
(ガス分離方法)
ガス分離方法は、少なくとも特定のガスを含む原料ガスを、ガス分離膜エレメントのガス分離膜10に接触させて、ガス分離方法である。ガス分離方法は、上記したガス分離膜モジュールを備えるガス分離装置を用いて行うことができる。
【0092】
ガス分離方法は、ガス分離膜10の供給側に供給する原料ガスの圧力を圧縮機等で昇圧することにより、供給側のガス分圧を、透過側(ガス分離膜10の透過ガスが排出される側)のガス分圧よりも高める方法;ガス分離膜10の透過側を減圧状態とすることにより、供給側のガス分圧を透過側のガス分圧よりも高める方法(減圧法);ガス分離膜10の透過側に透過ガスと同伴して排出するためのスイープガスを供給することにより、透過ガス量を増やす方法(スイープ法);これらのうちの2以上を組み合わせた方法等によって行ってもよい。
【実施例】
【0093】
以下、実施例及び比較例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0094】
[ガス分離膜エレメントの気密試験]
図7に示すように、ガス分離膜エレメント1における供給側空間部分である供給口51側と中心管5の第1排出口52側とがガス分離膜10で隔てられるように、ガス分離膜エレメント1を、試験装置Nにおけるステンレス製のハウジング36内に固定した。中心管5の第1排出口52側はハウジング36の外部に導出し、他方側は閉栓した。ガス分離膜エレメント1における供給側空間部分の供給口51及び第2排出口は、ハウジング36内に開放した。すなわち、ハウジング36に供給したガスを、ガス分離膜エレメント1における供給側空間部分の両端(供給口51及び第2排出口)から、ガス分離膜エレメント1の内部に流入させた。
【0095】
ハウジング36内に、試験用ガスとしての窒素(N2)ガスを供給するボンベを、バルブ37を介して取り付けるとともに、ハウジング36内の圧力を測定する圧力計35を取り付けた。バルブ38を閉止しバルブ37を開放し、ハウジング36内に室温(20℃)のN2ガスを供給して、ガス分離膜エレメント1の供給口51側及び第2排出口側に、500kPaG(Gはゲージ圧を表す。)の圧力P1を加えた。当該圧力P1は圧力計35で確認した。一方、中心管5の第1排出口52側の圧力は大気圧に調節した。ハウジング36内が500kPaG(P1)に到達したら、バルブ37を閉止して、中心管5の第1排出口52側から透過ガスの流量を測定し、試験用ガスの透過度F1[mol/(m2・s・kPa)]であるN2パーミアンスを決定した。
【0096】
次に、バルブ37を開放してN2ガスの供給を再開し、ハウジング36内の供給側空間を昇圧し、中心管5の第1排出口52側から透過ガスの流量を測定し、試験用ガスの透過度F2[mol/(m2・s・kPa)]であるN2パーミアンスを決定した。上記で決定したF1及びF2の値から、比F2/F1が表1に示す値となる圧力P2まで昇圧し、バルブ37を閉止した。その後、バルブ38を開放してハウジング36内のN2ガスを排出し、500kPaGの圧力P3まで降圧した。ハウジング36内が500kPaG(P3)に到達したら、バルブ38を閉止して、中心管5の第1排出口52側から透過ガスの流量を測定し、試験用ガスの透過度F3[mol/(m2・s・kPa)]であるN2パーミアンスを決定した。得られたF1及びF3に基づいて、F3/F1を決定した。
【0097】
[ガス分離膜エレメントの性能評価]
図8に示す、ガス分離膜モジュール72を備えたガス分離装置を用いて、実施例及び比較例で作成したガス分離膜エレメント1のガス分離性能を評価した。ガス分離膜モジュール72は、ハウジング71の内部にガス分離膜エレメント1を備え、ガス分離膜エレメント1とハウジング71との間の隙間は、ハウジング71内に供給されたガスがガス分離膜エレメント1内に供給されるよう、シール材73(仕切り)によって封止されている。
【0098】
上記のガス分離装置を用いて、ガス分離膜モジュール72の原料ガス供給口から、温度23℃、相対湿度25%RHの窒素(N2)ガスを供給した。N2ガスの供給は、ガス分離膜モジュール72の非透過ガス排出口から排出されるN2ガスについて温度23℃における相対湿度を測定しながら、相対湿度が25%RH以上となるまで行った。
【0099】
次に、ガス分離膜モジュール72の外周面に設けられたスチーム管により、ガス分離膜モジュール72の供給側の空間を温度100℃まで昇温し、この温度で180分間維持した。その後、温度100℃、圧力1500kPaGの原料ガス(CO2:22.2%、H2:71.8%、H2O:6.0%)を、40Nm3/hの流量で、ガス分離膜モジュール72の原料ガス供給口に供給した。原料ガスの流量は、冷却トラップ75の上流側に設けられた背圧調整器74を用いて調整した。ガス分離膜モジュール72の供給側の圧力は、原料ガスの供給によって調整した。ガス分離膜モジュール72の透過側の圧力は、冷却トラップ77の上流側に設けられた背圧調整器76を用いて調整した。
【0100】
原料ガスの供給開始から3時間後に、ガス分離膜モジュール72の透過ガス排出口から排出された透過ガス中の水蒸気を冷却トラップ77で除去した後の透過ガスの流量をガスクロマトグラフ78の分析結果に基づいて定量することにより、透過ガスに含まれるCO2及びH2のパーミアンス[mol/(m2・s・kPa)]を算出し、分離係数(CO2のパーミアンス/H2のパーミアンス)を決定した。
【0101】
[エンド封止部における剥離強度の決定]
実施例及び比較例で作成したガス分離膜エレメントのエンド封止部における剥離強度を次の手順で決定した。ガス分離膜エレメントから、外装材(ポリイミドテープ)を取り外し、巻回体の巻回状態を解放し、巻回体に含まれる積層体から膜リーフを取り出した。膜リーフは、積層体に複数の膜リーフを含む場合は、全体の1割以上の膜リーフを取り出すこととし、後述の実施例及び比較例のガス分離膜エレメントでは、2枚(全20枚のうちの1割に相当)の膜リーフを取り出した。取り出した膜リーフそれぞれのエンド封止部を、巻回体の軸方向に等間隔に3分割し、この分割したそれぞれの領域において、膜リーフのエンド封止部側の端部から巻回体の軸方向に直交する方向(長さ方向)に100mmの長さ、巻回体の軸方向(幅方向)に30mmの長さを有するように切り出すことにより、6個の切出片を得た。
【0102】
6個の切出片それぞれについて、透過側流路部材の厚み方向の中間位置で2分割することにより、巻回体において相対的に内周側に位置するガス分離膜と上記で2分割した透過側流路部材とが積層された試験片、及び、巻回体において相対的に外周側に位置するガス分離膜と上記で2分割した透過側流路部材とが積層された試験片を得た(得られた試験片は合計12個)。試験片のそれぞれについて、ガス分離膜と2分割した透過側流路部材との間を剥離するために必要とされた最大の荷重[N]をT字剥離試験によって測定し、これを測定幅(試験片の幅方向の長さである30mm)で除して、試験片の剥離強度[N/mm](=T字剥離試験における最大の荷重[N]/測定幅[mm])とした。T字剥離試験は、テクスチャーアナライザー(英弘精機株式会社製「TA.XT/plus」)を用いて、温度25℃の条件下で行った。試験片の剥離時の最大の荷重は、試験片における膜リーフの端部とは反対側の端部(エンド封止部が存在しない領域)において、2分割した透過側流路部材をクリップに固定し、ガス分離膜を剥離速度10mm/minで剥離することによって決定した。12個の試験片について決定した剥離強度を平均してエンド封止部における剥離強度とした。
【0103】
〔実施例1〕
(ガス分離膜の作製)
媒質として水188質量部を、親水性樹脂としての架橋ポリアクリル酸(住友精化社製「アクペックHV-501」)4質量部及び非架橋ポリアクリル酸(住友精化社製「アクパーナAP-40F」、40%Na鹸化)0.8質量部を、中和剤として水酸化セシウム一水和物10.5質量部を仕込み、撹拌しながら中和反応を行った。その後、CO2と可逆的に反応するキャリアとして炭酸セシウム10質量部を、水和反応触媒として亜テルル酸カリウム1.5質量部を、添加剤として界面活性剤(AGCセイミケミカル社製「サーフロンS-242」)1.2質量部を加えて混合し、塗工液を得た。
【0104】
第1多孔層としての疎水性PTFE多孔膜(住友電工ファインポリマー社製「ポアフロンHP-010-50」、膜厚50μm、平均孔径0.1μm)と、多孔体としてのPPS製不織布(廣瀬製紙社製「PS0080」)とが積層された積層シートを用意した。この積層シートの疎水性PTFE多孔膜側に、上記で得た塗工液を塗布した後、その上に第2多孔層としての疎水性PTFE多孔膜(同上)を重ね、塗布後の疎水性PTFE多孔膜を温度120℃程度で5分間程度乾燥させて、多孔体/第1多孔層/樹脂組成物層/第2多孔層の層構造を備えるガス分離膜のシート原料を作製した。樹脂組成物層は、無孔質であり、ゲル状であった。
【0105】
上記で作製したシート原料を繰り出しながら、幅方向に1050mm、長さ方向に1575mmの大きさに切り出して、切出片を得た。得られた切出片に、多孔体以外の3層(第1多孔層、樹脂組成物層、及び第2多孔層)に対してハーフカット(切込み)を形成し、このハーフカットの外周を除去して、幅1050mm×長さ1575mmのサイズの多孔体上に、幅940mm×長さ1465mmのサイズの上記3層を有するハーフカット済み片を得た。
【0106】
界面活性剤(AGCセイミケミカル社製「サーフロン S-242」)と水とを1:10の割合で混合した界面活性剤水溶液をスポンジに含ませ、上記で得られたハーフカット済み片の第2多孔層の周縁に塗布し、1時間以上自然乾燥した。自然乾燥後、第2多孔層の周縁に、0.045g/mmの供給量で、二液混合型エポキシ系接着剤(粘度45000cP、アレムコ・プロダクツ社製)を塗布した。塗布された接着剤を介して、ハーフカット済み片と、幅1050mm×長さ1575mmのサイズの第2多孔層側の多孔体((廣瀬製紙社製「PS0080S」(PPS製不織布))とを貼合して、ガス分離膜を作製した。
【0107】
(中心管付きの積層体の作製)
上記で得たガス分離膜の第2多孔層側の多孔体側に、供給側流路部材(SUS製金網、50×50mesh、幅1050mm×長さ813mm)を置き、この供給側流路部材を間に挟み込むようにガス分離膜を2つ折りにして、膜リーフを得た。得られた膜リーフの一方の面に、折り目部分に位置する縁を除く3つの縁部分に、0.045g/mmの供給量で、封止材料としての二液混合型エポキシ系接着剤(粘度45000cP、アレムコ・プロダクツ社製)を塗布した。塗布された接着剤を介して、膜リーフと、幅1050mm×長さ813mmのサイズの透過側流路部材(SUS製金網、50×50mesh/100×100mesh/50×50meshの積層構造)とを貼合して複合体を得た。同様の操作を繰り返して、20枚の複合体を作製した。
【0108】
次に、積層体の最外層をなす透過側流路部材としてのリードスペーサ(SUS製金網、50×50mesh、幅1050mm×長さ1194mm)の長さ方向の一端に、幅方向に沿って、外周面に複数の孔を有する中心管(SUS製、径25.4mm、長さ1260mm)を、粘着テープにより固定した。続いて、リードスペーサ上に、複合体の透過側流路部材側が露出するように(リードスペーサと複合体の膜リーフとが対向するように)、リードスペーサ上に複合体を配置した。このとき、リードスペーサ上に、膜リーフの折り目部分が中心管側に位置し、かつ折り目部分の縁部が中心管の軸方向に平行となるように、複合体を配置した。続いて、リードスペーサ上の複合体上に、先に準備した複合体の透過側流路部材が露出するように積層する操作を繰り返して、複合体が20枚積層された中心管付きの積層体を得た。複合体の積層は、膜リーフの折り目部分の縁部の位置が、折り目部分と直交する方向であって、中心管から離れる方向にオフセットする(ずれる)ようにして行った。
【0109】
(ガス分離膜エレメントの作製)
上記で作製した中心管付きの積層体の中心管を、ガス分離膜エレメントの製造装置の支持部としての巻付け用チャックにセットした。上記の製造装置として、巻付け用チャックに回転駆動力を付与する回転駆動部としてのモータと、2種類の押圧部材とを用いた。2種類の押圧部材は、中心管に巻回された部分の積層体に押し当てられる押圧部材としての棒状の第1ロール(SUS製、径74.8mm、長さ1068mm)と、第1ロールにコルクシート(幅750mm、厚み2~5mm)を3~4回巻き付けた後、この巻き付けたコルクシートの中央部に、さらにコルクシート(幅300mm、厚み2~5mm)を3~4回巻き付けた第2ロールとした。
【0110】
次に、上記製造装置の巻付け用チャックをモータに接続して、回転速度10rpmで積層体の巻取りを行った。巻取り後に、中心管に巻回された部分の積層体に対して、シリンダのエア圧を140kPaGに調整して第1ロールを押圧し、続いて、シリンダのエア圧を140kPaGに調整して第2ロールを押圧した。
【0111】
次いで、巻回体の軸方向中央部に、幅100mmのポリイミドテープの端部を取り付け、巻回体を1回転させて、ポリイミドテープを巻回体に巻付けた。巻回体の回転を維持しながら、巻回体の軸方向の一方の端部に向けてらせん状にポリイミドテープが巻付けられるように、巻回体の軸方向にポリイミドテープを一定の速度で移動させ、巻回体の軸方向中央部から一方の端部までをポリイミドテープで外装した。続いて、ポリイミドテープの移動方向を切り替えて、巻回体の軸方向の他方の端部に向けてらせん状にポリイミドテープが巻付けられように、巻回体の軸方向にポリイミドテープを一定の速度で移動させ、巻回体の一方の端部から他方の端部までをポリイミドテープで外装した後、再び、ポリイミドテープの移動方向を切り替えて、巻回体の他方の端部から軸方向中央部までをポリイミドテープで外装して、外装材付き巻回体を得た。得られた外装材付き巻回体に含まれる接着剤(封止材料等)を硬化させて、ガス分離膜エレメントを得た。
【0112】
得られたガス分離膜エレメントについて、表1に示すF2/F1の値となるように圧力P2を調整して、ガス分離膜エレメントの気密試験を行った。また、得られたガス分離膜エレメントについて、性能評価を行い、エンド封止部における剥離強度を決定した。結果を表1に示す。
【0113】
〔比較例1〕
中心管に巻回された部分の積層体に対して、第2ロールを押圧する工程を行わなかったこと以外は、上記実施例1と同様にしてガス分離膜エレメントを得た。得られたガス分離膜エレメントについて、表1に示すF2/F1の値となるように圧力P2を調整して、ガス分離膜エレメントの気密試験を行った。また、得られたガス分離膜エレメントについて、性能評価を行い、エンド封止部における剥離強度を決定した。結果を表1に示す。
【0114】
【符号の説明】
【0115】
1,1a スパイラル型ガス分離膜エレメント、2 巻回体、2a 外装材付き巻回体、2e エンド封止部、2s サイド封止部、3 供給側流路部材、4 透過側流路部材、5 中心管、6 膜リーフ、7 積層体、8 封止材料、9 分離膜ユニット(第1の分離膜ユニット)、9a 第1サイド部、9b 第2サイド部、9c エンド部、10 ガス分離膜、11 第1多孔層、12 第2多孔層、15 無孔質の樹脂組成物層、25 封止部、35 圧力計、36 ハウジング、37,38 バルブ、50 孔、51 供給口、52 第1排出口、53 第2排出口、54 外装材、55 テレスコープ防止板、71 ハウジング、72 ガス分離膜モジュール、73 シール材、74 背圧調整器、75 冷却トラップ、76 背圧調整器、77 冷却トラップ、78 ガスクロマトグラフ、81 第1ロール、82 第2ロール。