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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-05
(45)【発行日】2023-12-13
(54)【発明の名称】無給電中継装置
(51)【国際特許分類】
   H04B 7/145 20060101AFI20231206BHJP
   E02D 29/14 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
H04B7/145
E02D29/14 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020134164
(22)【出願日】2020-08-06
(65)【公開番号】P2022030282
(43)【公開日】2022-02-18
【審査請求日】2022-08-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000226932
【氏名又は名称】日星電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100164471
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 大和
(74)【代理人】
【識別番号】100176728
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】竹内 陽祐
(72)【発明者】
【氏名】笠原 久稔
(72)【発明者】
【氏名】岡村 陽介
(72)【発明者】
【氏名】玉松 潤一郎
(72)【発明者】
【氏名】村上 友規
(72)【発明者】
【氏名】小川 智明
(72)【発明者】
【氏名】高村 祐
【審査官】後澤 瑞征
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-163773(JP,A)
【文献】国際公開第2021/157028(WO,A1)
【文献】特開2016-213545(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/145
E02D 29/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電波遮蔽構造物の内部と前記電波遮蔽構造物の外部との無線通信を中継する無給電中継装置であって、
前記内部と接続し、内部基板および前記内部基板上に設けられる指向性の導電パターンを含む内部アンテナと、
前記外部と接続し、外部基板および前記外部基板上に設けられる無指向性の導電パターンを含む外部アンテナと、
前記内部アンテナと前記外部アンテナとを接続する同軸ケーブルと、
前記同軸ケーブルに取り付けられ、前記内部アンテナと前記外部アンテナとを分離可能なコネクタと、
を備え
前記電波遮蔽構造物は、地中に埋設されたマンホールであり、
前記マンホールの鉄蓋には、当該無給電中継装置を収納可能な貫通孔が設けられ、
前記外部アンテナは、前記鉄蓋とインピーダンス整合する、無給電中継装置。
【請求項2】
前記内部基板は、方形状であり、
前記外部基板は、前記貫通孔と同心円の円形状であり、
前記無指向性の導電パターンの外周部は、前記貫通孔と同心円の円弧形状である、
請求項に記載の無給電中継装置。
【請求項3】
電波遮蔽構造物の内部と前記電波遮蔽構造物の外部との無線通信を中継する無給電中継装置であって、
前記内部と接続し、内部基板および前記内部基板上に設けられる指向性の導電パターンを含む内部アンテナと、
前記外部と接続し、外部基板および前記外部基板上に設けられる無指向性の導電パターンを含む外部アンテナと、
前記内部アンテナと前記外部アンテナとを接続する同軸ケーブルと、
前記同軸ケーブルに取り付けられ、前記内部アンテナと前記外部アンテナとを分離可能なコネクタと、
を備え、
前記内部基板および前記外部基板は、表面において中心導体と接続し、裏面において外部導体と接続し、
前記同軸ケーブルは、先端が段剥ぎされて、前記中心導体および前記外部導体と接続する、無給電中継装置。
【請求項4】
前記内部アンテナは、パッチアンテナであり、
前記外部アンテナは、ダイポールアンテナである、
請求項1から3のいずれか一項に記載の無給電中継装置。
【請求項5】
前記電波遮蔽構造物は、金属、および、コンクリート又はレジンコンクリートを含む材質で構成される、
請求項1からのいずれか一項に記載の無給電中継装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無給電中継装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地中に埋設された鉄筋コンクリートマンホールをはじめとする地下構造物の内部(電波
遮蔽空間)には、管路、計器などが設置されているが、地上からの点検が困難であるため
、作業者が定期的に内部に入孔し、設置設備又は地下構造物自体を点検する必要がある。
しかし、地下構造物の内部には、毒性ガス、滞留水などが存在することがあり、また、車
道内に地下構造物が存在する場合には、車道の使用許可を得る必要があるなど、入孔のた
めの準備が煩雑である。そこで、地下構造物の内部への入孔を不要とする、あるいは、入
孔頻度を低減するため、地下構造物の内部に、ひずみセンサ、水位センサ、カメラなどの
測定装置を設置し、これらから得られたデータを地下構造物の外部へ送信する方法が検討
されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
地下構造物の内部に測定装置を設置して地下構造物の外部へデータを送信する場合、地
下構造物を取り巻く土壌又は構造物材料が高周波の電波を通しにくいため、Wi-Fi(
登録商標)をはじめとする高周波の電波を用いたデータの送信が、ごく短距離に限られて
しまう。高周波の電波を長距離送信するために、中継装置を設置して信号強度を増幅させ
ると、測定装置および中継装置のそれぞれに電力が必要となるため、複数の電源を設置し
なければならない、あるいは、大容量単一電源からこれらの装置への配電設備を設置しな
ければならないなど、構成が複雑になってしまう。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】藤野他3名、「電波が届きにくい場所のIoT端末を確実にネットワーク収容する中継無線技術」、NTT技術ジャーナル、2018年7月号、pp. 15-18(2018)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
簡易な電波中継を行う方法として、中継装置を無電源とする方法が考えられる。しかし
ながら、中継装置を無電源とすると、中継時に電波を増幅できないため、遠距離への通信
には中継時の電力ロスを低減することが求められている。
【0006】
かかる事情に鑑みてなされた本発明の目的は、簡易な構成でありながら、電波遮蔽空間
と外部との長距離無線通信を、安定的且つ効率的に行うことが可能な無給電中継装置を提
供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態に係る無給電中継装置は、電波遮蔽構造物の内部と前記電波遮蔽構造物の外部との無線通信を中継する無給電中継装置であって、前記内部と接続し、内部基板および前記内部基板上に設けられる指向性の導電パターンを含む内部アンテナと、前記外部と接続し、外部基板および前記外部基板上に設けられる無指向性の導電パターンを含む外部アンテナと、前記内部アンテナと前記外部アンテナとを接続する同軸ケーブルと、前記同軸ケーブルに取り付けられ、前記内部アンテナと前記外部アンテナとを分離可能なコネクタと、を備え、前記電波遮蔽構造物は、地中に埋設されたマンホールであり、前記マンホールの鉄蓋には、当該無給電中継装置を収納可能な貫通孔が設けられ、前記外部アンテナは、前記鉄蓋とインピーダンス整合することを特徴とする。
また、一実施形態に係る無給電中継装置は、電波遮蔽構造物の内部と前記電波遮蔽構造物の外部との無線通信を中継する無給電中継装置であって、前記内部と接続し、内部基板および前記内部基板上に設けられる指向性の導電パターンを含む内部アンテナと、前記外部と接続し、外部基板および前記外部基板上に設けられる無指向性の導電パターンを含む外部アンテナと、前記内部アンテナと前記外部アンテナとを接続する同軸ケーブルと、前記同軸ケーブルに取り付けられ、前記内部アンテナと前記外部アンテナとを分離可能なコネクタと、を備え、前記内部基板および前記外部基板は、表面において中心導体と接続し、裏面において外部導体と接続し、前記同軸ケーブルは、先端が段剥ぎされて、前記中心導体および前記外部導体と接続することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、簡易な構成でありながら、電波遮蔽空間と外部との長距離無線通信を
、安定的且つ効率的に行うことが可能な無給電中継装置を提供することにある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る無給電中継装置の構成の一例を示す図である。
図2】本発明の一実施形態に係る無給電中継装置が組み込まれたマンホール鉄蓋の構成の一例を示す図である。
図3】本発明の一実施形態に係る外部アンテナの構成の一例を示す図である。
図4】マンホール鉄蓋が無い場合におけるVSWR(Voltage Standing Wave Ratio)の一例を示す図である。
図5】マンホール鉄蓋が有る場合におけるVSWRの一例を示す図である。
図6】変形例に係る外部アンテナの構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0011】
<無給電中継装置>
図1乃至図5を参照して、本発明の一実施形態に係る無給電中継装置100の構成の一
例について説明する。
【0012】
無給電中継装置100は、内部アンテナ10と、外部アンテナ20と、接続部30と、
を備える。接続部30は、同軸ケーブル31と、コネクタ32と、を備える。無給電中継
装置100は、電源系を不要とする装置であり、電波遮蔽構造物の内部に設けられる内部
装置1000と電波遮蔽構造物の外部に設けられる外部装置2000との無線通信を中継
する。
【0013】
内部装置1000は、例えば、電波遮蔽構造物の内部における所定箇所の測定を行うひ
ずみセンサ、水位センサ、カメラなどである。外部装置2000は、例えば、電波遮蔽構
造物の内部における各種の情報を管理するサーバなどである。内部装置1000と外部装
置2000とは、無給電中継装置100を介して、例えば、LTE(Long Term Evolutio
n)、LoRaWAN(Long Range Wide Area Network)などの広域ネットワークにより
接続される。
【0014】
電波遮蔽構造物は、電波を遮蔽する材質で構成される。電波を遮蔽する材質としては、
例えば、金属、コンクリート又はレジンコンクリートなどが挙げられる。電波遮蔽構造物
の内部は、電波が遮蔽された電波遮蔽空間となっている。電波遮蔽構造物の外部は、電波
が遮蔽されていない電波非遮蔽空間となっている。なお、本明細書における電波遮蔽空間
又は電波非遮蔽空間とは、電波が完全に遮蔽された又は完全に遮蔽されていない空間のみ
ならず、電波が略遮蔽された又は略遮蔽されていない空間も含むものとする。
【0015】
図1および図2に示すように、電波遮蔽構造物は、例えば、地中Aに埋設されたマンホ
ール200である。マンホール200の内部Sは、電波遮蔽空間となっている。マンホ
ール200の外部Sは、電波非遮蔽空間となっている。
【0016】
マンホール200は、首部210と、筐体220と、鉄蓋230と、を備える。首部2
10および筐体220は、例えば、鉄筋コンクリートで製造される。首部210は、略円
筒形状であり、内部が電波遮蔽空間となっている。筐体220は、略直方体形状であり、
内部が電波遮蔽空間となっている。鉄蓋230は、略円柱形状であり、貫通孔(水抜き穴
)Cが設けられ、マンホール200の出入口に配置されている。無給電中継装置100は
、貫通孔Cに収納可能な形状を有している。
【0017】
図2に示すように、鉄蓋230には、マンホール200の内部Sとマンホール200
の外部Sとを連通させる第1貫通孔Cおよび第2貫通孔Cが設けられている。作業
者が、第1貫通孔Cおよび第2貫通孔Cに接続部30を通し、第1貫通孔C付近で
、コネクタ32を介して同軸ケーブル31と外部アンテナ20とを接続し、第2貫通孔C
付近で、コネクタ32を介して同軸ケーブル31と内部アンテナ10とを接続すること
で、無給電中継装置100は、鉄蓋230に組み込まれる。無給電中継装置100が鉄蓋
230に組み込まれることで、無給電中継装置100は、マンホール200の内部S
内部装置1000から受信した電波を、マンホール200の外部Sの外部装置2000
へ送信することが可能になる。これにより、マンホール200の内部Sとマンホール2
00の外部Sとの長距離無線通信が可能となる。
【0018】
接続部30の長さKは、鉄蓋230の厚さT以上であることが好ましい。例えば、鉄蓋
230の厚さTが46mmである場合、接続部30の長さKは46mm以上、例えば、9
2mm程度であることが好ましい。
【0019】
貫通孔Cの大きさは、少なくとも、鉄蓋230に無給電中継装置100を組み込むこと
が可能な大きさを有していればよい。例えば、無給電中継装置100において、内部アン
テナ10の横幅Dが50mm、外部アンテナ20の横幅Dが40mm、接続部30の
長さKが92mm、接続部30の横幅Dが6mmである場合、第1貫通孔Cの高さL
は17mm程度、第1貫通孔Cの底面と外部アンテナ20との距離Lは13mm程
度、第2貫通孔Cの横幅Lは30mm程度であることが好ましい。
【0020】
内部アンテナ10は、マンホール200の内部Sと接続する。すなわち、内部アンテ
ナ10は、内部装置1000と電波を送受信する送受信アンテナである。内部アンテナ1
0は、鉄蓋230における貫通孔Cの一端側付近に設けられている。
【0021】
内部アンテナ10は、指向性アンテナであることが好ましく、内部基板および内部基板
上に設けられる指向性の導電パターンを含む。内部基板は、方形状であることが好ましい
。指向性アンテナとしては、例えば、パッチアンテナなどが挙げられる。パッチアンテナ
は、接続部30との接続点が、パッチ中心からずらした位置に設定されることが好ましい
。これにより、パッチアンテナの指向性を高めることができるため、指向性に優れた内部
アンテナ10を実現できる。
【0022】
パッチアンテナの詳細については、例えば、下記の文献を参照することができる。
三輪進、加来信之、共著、「アンテナおよび電波伝搬」、東京電機大学出版局、p.58、
1999年
【0023】
内部アンテナ10が指向性アンテナであることで、マンホール200の内部Sでの電
波干渉が低減されるため、無給電中継装置100は、マンホール200の内部Sで内部
装置1000が送信する電波を高効率に受信することができる。これにより、無給電中継
装置100は、マンホール200の内部Sで内部装置1000から受信した電波を、マ
ンホール200の外部Sの外部装置2000へ高効率で送信することが可能となる。し
たがって、マンホール200の内部Sに設けられる内部装置1000とマンホール20
0の外部Sに設けられる外部装置2000との無線通信において、電波の減衰を抑制す
ることができるため、高効率な長距離無線通信が可能な無給電中継装置100を実現でき
る。
【0024】
外部アンテナ20は、マンホール200の外部Sと接続する。すなわち、外部アンテ
ナ20は、外部装置2000と電波を送受信する送受信アンテナである。外部アンテナ2
0は、鉄蓋230における貫通孔Cの他端側付近に設けられている。
【0025】
外部アンテナ20は、無指向性アンテナであることが好ましく、外部基板21および外
部基板21上に設けられる無指向性の導電パターン22を含む。無指向性アンテナとして
は、例えば、ダイポールアンテナなどが挙げられる。ダイポールアンテナを用いることで
、外部装置2000がマンホール200の周辺におけるどの位置にあっても、安定的且つ
効率的な長距離無線通信が可能な無給電中継装置100を実現できる。
【0026】
ダイポールアンテナの詳細については、例えば、下記の文献を参照することができる。
小暮裕明、小暮芳江、共著、「小型アンテナの設計と運用」、誠文堂新光社、p.197、2
009年
根日屋英之、小川真紀、共著、「ユビキタス時代のアンテナ設計」、東京電機大学出版
局、p.72、2005年
【0027】
外部アンテナ20は、図3に示すように、外部基板21が、貫通孔Cと同心円の円形状
であることが好ましい。また、無指向性の導電パターン22において、主部22aがメア
ンダ形状であることが好ましく、外周部22bが貫通孔Cと同心円の円弧形状であること
が好ましい。また、無指向性の導電パターン22は、外周部22bの一方の先端部に、広
幅部Xを備えていることが好ましい。無指向性の導電パターン22において、主部22a
がメアンダ形状であることで、外部アンテナ20の小型化が可能となる。また、無指向性
の導電パターン22において、外周部22bが貫通孔Cと同心円の円弧形状であることで
、鉄蓋230との電磁気的結合を発生させ、外部アンテナ20は、鉄蓋230とインピー
ダンス整合することが可能となる。また、外部アンテナ20が、広幅部Xを備えることで
、インピーダンス調整を行うことが可能となるため、無給電中継装置100は、遠距離へ
の通信における中継時の電力ロスを低減させ、高い電力での通信を実現することが可能と
なる。
【0028】
無指向性の導電パターン22は、全体的に点対称構造であることが好ましい。無指向性
の導電パターン22における点対称構造については、例えば、下記の文献を参照すること
ができる。
特開2000-049525号公報の段落0012,0013
特開2000-013131号公報の段落0026,0027
【0029】
無指向性の導電パターン22において、外周部22bと貫通孔Cの輪郭辺との間の距離
Dは、外部アンテナ20が対応する周波数の略1/4波長に設定されることが好ましい。
例えば、外部アンテナ20の周波数が、2.4GHz(波長:130mm、1/4波長:
32.5mm)の場合、「略1/4波長」とは、無指向性の導電パターン22の形状にも
よるが、波長短縮効果の影響を受けることで概ね25mm~30mm程度を指す。外周部
22bと貫通孔Cの輪郭辺との間の距離Dが、外部アンテナ20が対応する周波数の略1
/4波長であることで、外部アンテナ20と鉄蓋230との電磁気的結合により、外部ア
ンテナ20の使用帯域における共振が促され、インピーダンス整合に寄与することが可能
となる。
【0030】
なお、外周部22bの全ての部分において、外周部22bと貫通孔Cの輪郭辺との間の
距離Dが、外部アンテナ20が対応する周波数の略1/4波長である必要はなく、部分的
に、外部アンテナ20が対応する周波数の略1/4波長からずれていてもよい。貫通孔C
は、図3に示すように、その形状が均一な円形ではなく、一部に、矩形の切欠部などを有
するため、このような形状を許容するためである。したがって、原則、外周部22bと貫
通孔Cの輪郭辺との間の距離Dは、外部アンテナ20が対応する周波数の略1/4波長と
することが好ましいが、貫通孔Cの形状によって、部分的に、外部アンテナ20が対応す
る周波数の略1/4波長からずれていてもよい。
【0031】
また、外部基板21上に無指向性の導電パターン22が設けられると、誘電体である外
部基板21の存在による波長短縮効果によって、無指向性の導電パターン22を流れる高
周波信号の波長は、実際の波長より短くなる。したがって、波長短縮効果を考慮して、外
周部22bと貫通孔Cの輪郭辺との間の距離Dを、1/4波長より短く調整してもよい。
このような調整によって設定された外周部22bと貫通孔Cの輪郭辺との間の距離Dも、
略1/4波長として扱われる。
【0032】
ここで、鉄蓋230が有る場合と鉄蓋230が無い場合におけるVSWR(Voltage St
anding Wave Ratio:電圧定在波比)について説明する。
【0033】
図4は、マンホール200の鉄蓋230が無い場合におけるVSWRの一例を示す図で
ある。図5は、マンホール200の鉄蓋230が有る場合におけるVSWRの一例を示す
図である。
【0034】
図4図5とを比較すると、鉄蓋230が無い場合と比較して、鉄蓋230が有る場合
の方が、VSWRのピークが低周波数側にシフトしていることがわかる。これは、外部ア
ンテナ20の周波数を2.4GHzと想定した場合、外部アンテナ20と鉄蓋230との
適切な電磁的結合が有効であることを示唆している。このインピーダンス整合は、無指向
性の導電パターン22における外周部22bが、鉄蓋230と電磁的結合したことによる
ものであり、このインピーダンス整合により必要十分な通信特性を得られることを示唆し
ている。
【0035】
接続部30は、内部アンテナ10と外部アンテナ20とを接続する。接続部30は、例
えば、一端において、内部アンテナ10と接続されている。接続部30は、例えば、他端
において、外部アンテナ20と接続されている。接続部30は、マンホール200の内部
に設けられる内部装置1000とマンホール200の外部Sに設けられる外部装置
2000との無線通信で用いられる電波の周波数帯に対応するものであることが好ましい
【0036】
接続部30は、鉄蓋230における貫通孔Cに設けられている。接続部30の長さは、
鉄蓋230の厚さ以上であることが好ましい(図2参照)。接続部30の長さが、少なく
とも鉄蓋230の厚さを有することで、無給電中継装置100は、マンホール200の内
部Sとマンホール200の外部Sとの間で、効率的に電波を中継することが可能とな
る。
【0037】
同軸ケーブル31は、一端において、コネクタ32を介して、内部アンテナ10と接続
され、他端において、コネクタ32を介して、外部アンテナ20と接続されている。同軸
ケーブル31には、コネクタ32が取り付けられている。コネクタ32は、内部アンテナ
10側と外部アンテナ20側とを分離する。同軸ケーブル31にコネクタ32が取り付け
られることで、鉄蓋230への無給電中継装置100の後付けが容易となる。
【0038】
なお、図1および図2では、コネクタ32が、外部アンテナ20に近い側に取り付けら
れている場合を、一例に挙げているが、コネクタ32は、内部アンテナ10に近い側に取
り付けられていてもよいし、同軸ケーブル31の中間に取り付けられていてもよいし、外
部アンテナ20に近い側および内部アンテナ10に近い側の両側に取り付けられていても
よい。
【0039】
本実施形態に係る無給電中継装置100は、内部と接続し、内部基板および内部基板上
に設けられる指向性の導電パターンを含む内部アンテナと、外部と接続し、外部基板およ
び外部基板上に設けられる無指向性の導電パターンを含む外部アンテナと、内部アンテナ
と外部アンテナとを接続する同軸ケーブルと、同軸ケーブルに取り付けられ、内部アンテ
ナと外部アンテナとを分離可能なコネクタと、を備える。当該構成によれば、電源系が不
要となるため、無給電中継装置100の構成を簡易化することができる。また、マンホー
ル200の鉄蓋230に、電波伝搬のための電力ロスの小さいバイパスを形成することが
できるため、電波遮蔽空間と外部との無線通信を電源不要の簡易な構成で安定かつ高効率
に行うことができる。また、同軸ケーブル31にコネクタ32が取り付けられることで、
内部アンテナ10と外部アンテナ20とを分離することができるため、鉄蓋230の貫通
孔Cに、無給電中継装置100を容易に設置することができ、鉄蓋230の貫通孔Cへの
後付け設置が容易となる。また、無指向性の導電パターン22における円弧形状の外周部
22bとマンホール200の鉄蓋230との間でインピーダンス整合が行われることで、
安定した発振による電力ロスの小さい中継を実現することができる。また、外部アンテナ
20が、外部基板上に無指向性の導電パターン22を平面状に展開した構造を有すること
で、インピーダンス整合を容易に行えるとともに、外部アンテナ20の構成全体を大型化
することなくアンテナ特性を調整することができる。
【0040】
したがって、本実施形態に係る無給電中継装置100を、電波遮蔽構造物の内部に設け
られる内部装置1000と電波遮蔽構造物の外部に設けられる外部装置2000との無線
通信に適用することで、簡易な構成でありながら、電波遮蔽空間と外部との長距離無線通
信を、安定的且つ効率的に行うことが可能となる。
【0041】
<変形例>
外部アンテナ20は、例えば、図6に示すように、外部基板21の表面に設けられる無
指向性の導電パターン22Sが中心導体23と接続し、外部基板21の裏面に設けられ
る無指向性の導電パターン(グランド)22Sが外部導体24と接続する構成であって
よい。この場合、同軸ケーブル31は、先端が段剥ぎされることが好ましい。同軸ケーブ
ル31は、外部基板21に設けられる穴に通されて、中心導体23および外部導体24と
接続する。これにより、基板表面からのエレメントの突出がない平面基板を実現できる。
【0042】
外部アンテナ20は、屋外に設置されるマンホール200に設けられるため、実使用時
には防水処理が施されるが、外部アンテナ20が当該構成を有することで、外部基板21
の表面に突出がないため、防水処理を容易に行うことができる。また、同軸ケーブル31
を、外部基板21の表面に突出させることなく、外部基板21に対して垂直に接続するこ
とができるため、外部基板21上に同軸ケーブル31を配策するためのスペースを設ける
必要がなくなるため、外部アンテナ20の小型化に寄与することができる。さらに、外部
アンテナ20を、マンホール200に設置する際に、同軸ケーブル31がマンホール20
0の内部でほぼ一直線状に垂下するため、同軸ケーブル31とマンホール200を構成す
る包囲物との間に空間が確保でき、安定したアンテナ共振に寄与することができる。
【0043】
なお、図6に示す構成は、外部アンテナ20のみならず、内部アンテナ10にも適用可
能である。
【0044】
<その他の変形例>
本実施形態では、電波遮蔽構造物として、マンホールを適用する場合を一例に挙げて説
明したが、電波遮蔽構造物は、マンホールに限定されるものではなく、例えば、ハンドホ
ール、シールドトンネル、汚泥貯留槽などであってもよい。
【0045】
本実施形態では、外周部22bと貫通孔Cの輪郭辺との間の距離Dとして、外部アンテ
ナ20が対応する周波数の略1/4波長を規定して説明しているが、略1/4波長とは、
必ずしも厳密な意味での1/4波長を指すものではなく、外部アンテナ20の使用環境に
応じて適宜変更可能である。すなわち、所望する通信特性を得るための誤差も含むものと
する。
【0046】
本実施形態では、無給電中継装置100を取り付ける対象構造物として、マンホール2
00の鉄蓋230を一例に挙げて説明しているが、対象構造物は、鉄蓋230に限定され
るものではなく、例えば、扉などであってもよい。
【0047】
本実施形態では、内部アンテナ10と外部アンテナ20とを接続する構成要素として、
同軸ケーブル31およびコネクタ32を一例に挙げて説明しているが、内部アンテナ10
と外部アンテナ20とを接続する構成要素は、これに限定されるものではない。
【0048】
本発明は上記の実施形態および変形例に限定されるものではない。例えば、上述の各種
の処理は、記載にしたがって時系列に実行されるのみならず、処理を実行する装置の処理
能力あるいは必要に応じて並列的にあるいは個別に実行されてもよい。その他、本発明の
趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
【0049】
上述の実施形態は代表的な例として説明したが、本開示の趣旨および範囲内で、多くの
変更および置換ができることは当業者に明らかである。したがって、本発明は、上述の実
施形態によって制限するものと解するべきではなく、特許請求の範囲から逸脱することな
く、種々の変形や変更が可能である。
【符号の説明】
【0050】
10 内部アンテナ
20 外部アンテナ
30 接続部
31 同軸ケーブル
32 コネクタ
100 無給電中継装置
200 マンホール(電波遮蔽構造物)
210 首部
220 筐体
230 鉄蓋

図1
図2
図3
図4
図5
図6