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特許7397968撮影支援装置、その作動方法、及び作動プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-05
(45)【発行日】2023-12-13
(54)【発明の名称】撮影支援装置、その作動方法、及び作動プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/00 20060101AFI20231206BHJP
【FI】
A61B6/00 320M
A61B6/00 320Z
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022511748
(86)(22)【出願日】2021-03-10
(86)【国際出願番号】 JP2021009669
(87)【国際公開番号】W WO2021200000
(87)【国際公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-09-27
(31)【優先権主張番号】P 2020061593
(32)【優先日】2020-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菅原 將高
【審査官】井上 香緒梨
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-199163(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109730704(CN,A)
【文献】韓国公開特許第10-2020-0023968(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0183439(US,A1)
【文献】国際公開第2019/208006(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00-6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線源と、前記放射線源から照射され被写体を透過した放射線に基づいて被写体の放射線画像を検出する放射線画像検出器とを有する放射線撮影装置に用いられる撮影支援装置であって、
前記放射線源から前記被写体に照射される前記放射線の照射野を含む領域を光学的に撮影することにより光学画像を出力する光学カメラと、
少なくとも1つのプロセッサとを備え、
前記プロセッサは、
放射線撮影時に撮影された前記光学画像と、前記放射線撮影時に撮影された前記放射線画像の再撮影の要否との関係を学習した学習済みモデルを用いて、放射線撮影の開始前に、前記光学カメラにより取得される光学画像に基づき、放射線撮影を行った場合における再撮影の可能性の有無を判定する判定処理と、
放射線撮影時に撮影された前記光学画像と、前記放射線撮影時に撮影された前記放射線画像の再撮影が行われたか否かを表す結果情報とを関連付ける関連付け処理と、
を実行する撮影支援装置。
【請求項2】
前記プロセッサは、
前記判定処理において再撮影の可能性があると判定した場合に、警告を報知する警告報知処理
を実行する請求項1に記載の撮影支援装置。
【請求項3】
前記プロセッサは、
前記判定処理において再撮影の可能性があると判定した場合に、前記放射線源からの照射を禁止する禁止処理
を実行する請求項1又は請求項2に記載の撮影支援装置。
【請求項4】
前記プロセッサは、
被写体の位置又は向きを是正するための是正策を提示する提示処理
を実行する請求項1から請求項3のうちいずれか1項に記載の撮影支援装置。
【請求項5】
前記プロセッサは、
前記提示処理において、前記是正策に加えて、再撮影の可能性があると判定した理由を提示する、
請求項4に記載の撮影支援装置。
【請求項6】
前記プロセッサは、
前記提示処理において、前記是正策及び前記理由のうちの少なくともいずれか一方を表示部に表示させる、
請求項5に記載の撮影支援装置。
【請求項7】
放射線源と、前記放射線源から照射され被写体を透過した放射線に基づいて被写体の放射線画像を検出する放射線画像検出器とを有する放射線撮影装置に用いられ、前記放射線源から前記被写体に照射される前記放射線の照射野を含む領域を光学的に撮影することにより光学画像を出力する光学カメラを備える撮影支援装置の作動方法であって、
放射線撮影時に撮影された前記光学画像と、前記放射線撮影時に撮影された前記放射線画像の再撮影の要否との関係を学習した学習済みモデルを用いて、放射線撮影の開始前に、前記光学カメラにより取得される光学画像に基づき、放射線撮影を行った場合における再撮影の可能性の有無を判定することと、
放射線撮影時に撮影された前記光学画像と、前記放射線撮影時に撮影された前記放射線画像の再撮影が行われたか否かを表す結果情報とを関連付けること、
を含む撮影支援装置の作動方法。
【請求項8】
放射線源と、前記放射線源から照射され被写体を透過した放射線に基づいて被写体の放射線画像を検出する放射線画像検出器とを有する放射線撮影装置に用いられ、前記放射線源から前記被写体に照射される前記放射線の照射野を含む領域を光学的に撮影することにより光学画像を出力する光学カメラと、少なくとも1つのプロセッサとを備える撮影支援装置を作動させる作動プログラムであって、
放射線撮影時に撮影された前記光学画像と、前記放射線撮影時に撮影された前記放射線画像の再撮影の要否との関係を学習した学習済みモデルを用いて、放射線撮影の開始前に、前記光学カメラにより取得される光学画像に基づき、放射線撮影を行った場合における再撮影の可能性の有無を判定する判定処理と、
放射線撮影時に撮影された前記光学画像と、前記放射線撮影時に撮影された前記放射線画像の再撮影が行われたか否かを表す結果情報とを関連付ける関連付け処理と、
を前記プロセッサに実行させる作動プログラム。
【請求項9】
放射線源と、前記放射線源から照射され被写体を透過した放射線に基づいて被写体の放射線画像を検出する放射線画像検出器とを有する放射線撮影装置に用いられる撮影支援装置であって、
前記放射線源から前記被写体に照射される前記放射線の照射野を含む領域を光学的に撮影することにより光学画像を出力する光学カメラと、
少なくとも1つのプロセッサとを備え、
前記プロセッサは、
放射線撮影時に撮影された前記光学画像と、前記放射線撮影時に撮影された前記放射線画像の再撮影の要否との関係を学習した学習済みモデルを用いて、放射線撮影の開始前に、前記光学カメラにより取得される光学画像に基づき、放射線撮影を行った場合における再撮影の可能性の有無を判定する判定処理と、
前記判定処理において再撮影の可能性があると判定した場合に、前記放射線源からの照射を禁止する禁止処理と、
を実行する撮影支援装置。
【請求項10】
放射線源と、前記放射線源から照射され被写体を透過した放射線に基づいて被写体の放射線画像を検出する放射線画像検出器とを有する放射線撮影装置に用いられ、前記放射線源から前記被写体に照射される前記放射線の照射野を含む領域を光学的に撮影することにより光学画像を出力する光学カメラを備える撮影支援装置の作動方法であって、
放射線撮影時に撮影された前記光学画像と、前記放射線撮影時に撮影された前記放射線画像の再撮影の要否との関係を学習した学習済みモデルを用いて、放射線撮影の開始前に、前記光学カメラにより取得される光学画像に基づき、放射線撮影を行った場合における再撮影の可能性の有無を判定することと、
再撮影の可能性があると判定した場合に、前記放射線源からの照射を禁止すること、
を含む撮影支援装置の作動方法。
【請求項11】
放射線源と、前記放射線源から照射され被写体を透過した放射線に基づいて被写体の放射線画像を検出する放射線画像検出器とを有する放射線撮影装置に用いられ、前記放射線源から前記被写体に照射される前記放射線の照射野を含む領域を光学的に撮影することにより光学画像を出力する光学カメラと、少なくとも1つのプロセッサとを備える撮影支援装置を作動させる作動プログラムであって、
放射線撮影時に撮影された前記光学画像と、前記放射線撮影時に撮影された前記放射線画像の再撮影の要否との関係を学習した学習済みモデルを用いて、放射線撮影の開始前に、前記光学カメラにより取得される光学画像に基づき、放射線撮影を行った場合における再撮影の可能性の有無を判定する判定処理と、
前記判定処理において再撮影の可能性があると判定した場合に、前記放射線源からの照射を禁止する禁止処理と、
を前記プロセッサに実行させる作動プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の技術は、撮影支援装置、その作動方法、及び作動プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
医療分野で用いられる放射線撮影システムでは、撮影準備として、放射線技師又は医師(以下、技師等という。)により被写体の撮影部位の位置決めが行われた後、技師等の指示に基づき放射線撮影が行われる。しかし、放射線の照射野に対する撮影部位の位置決め後、放射線撮影が行われる前に被写体が動くことにより撮影部位に位置ずれが生じることがある。また、関節側面などの位置決めが難しい部位については、技師等が正しく位置決めできたと思った場合であっても、実際にはわずかに位置ずれが生じていることがある。
【0003】
このように、撮影部位に位置ずれが発生すると、所望する放射線画像が得られないことがある。放射線撮影により所望の放射線画像が得られなかったこと、すなわち放射線撮影に失敗したことは「写損」と称される。写損が生じた場合は再撮影が行われる。再撮影は時間も手間も掛るため少ない方がよい。
【0004】
このような放射線による被写体の再撮影を低減するために、被写体の光学画像を撮影する光学カメラを設け、撮影準備段階において、被写体の光学画像に基づいて被写体の位置ずれ量を検出することが知られている(特開2019-033830号公報参照)。特開2019-033830号公報に記載の放射線撮影システムでは、放射線検出器に対する被写体の理想的な位置である設定位置を示す位置決め指標画像を予め登録しておき、位置決め指標画像と光学画像とに基づいて、被写体の位置ずれ量が検出される。そして、特開2019-033830号公報に記載の放射線撮影システムでは、位置ずれ量が閾値よりも大きい場合には、そのまま放射線撮影を行ってしまうと、写損が生じて再撮影が必要となる恐れがあるため、被写体の位置決めのやり直しを促す警告が報知される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特開2019-033830号公報に記載の技術によれば、放射線撮影前の撮影準備時に、再撮影の可能性の有無を把握することができる。しかしながら、特開2019-033830号公報に記載の技術では、種々の被写体に対応するためには、被写体の特徴に応じて様々な位置決め指標画像を登録しておく必要がある。例えば、撮影部位が膝である場合には、膝の幅等は、被写体である患者の体格に応じて異なるため、種々の体格に応じた様々な位置決め指標画像を登録しておく必要がある。
【0006】
したがって、特開2019-033830号公報に記載の技術では、種々の位置決め指標画像を予め登録しておく必要性に加えて、被写体に適した位置決め指標画像を選択する必要があり、手間がかかる。このように、特開2019-033830号公報に記載の技術では、撮影準備時に再撮影の可能性を容易に把握することはできない。
【0007】
本開示の技術は、放射線撮影前の撮影準備時に再撮影の可能性の有無を容易に把握することを可能とする撮影支援装置、その作動方法、及び作動プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本開示の撮影支援装置は、放射線源と、放射線源から照射され被写体を透過した放射線に基づいて被写体の放射線画像を検出する放射線画像検出器とを有する放射線撮影装置に用いられる撮影支援装置であって、放射線源から被写体に照射される放射線の照射野を含む領域を光学的に撮影することにより光学画像を出力する光学カメラと、少なくとも1つのプロセッサとを備え、プロセッサは、放射線撮影時に撮影された光学画像と、放射線撮影時に撮影された放射線画像の再撮影の要否との関係を学習した学習済みモデルを用いて、放射線撮影の開始前に、光学カメラにより取得される光学画像に基づき、放射線撮影を行った場合における再撮影の可能性の有無を判定する判定処理を実行する。
【0009】
プロセッサは、判定処理において再撮影の可能性があると判定した場合に、警告を報知する警告報知処理を実行することが好ましい。
【0010】
プロセッサは、判定処理において再撮影の可能性があると判定した場合に、放射線源からの照射を禁止する禁止処理を実行することが好ましい。
【0011】
プロセッサは、被写体の位置又は向きを是正するための是正策を提示する提示処理を実行することが好ましい。
【0012】
プロセッサは、提示処理において、是正策に加えて、再撮影の可能性があると判定した理由を提示することが好ましい。
【0013】
プロセッサは、提示処理において、是正策及び理由のうちの少なくともいずれか一方を表示部に表示させることが好ましい。
【0014】
プロセッサは、放射線撮影時に撮影された光学画像と、放射線撮影時に撮影された放射線画像の再撮影が行われたか否かを表す結果情報とを関連付ける関連付け処理を実行することが好ましい。
【0015】
本開示の撮影支援装置の作動方法は、放射線源と、放射線源から照射され被写体を透過した放射線に基づいて被写体の放射線画像を検出する放射線画像検出器とを有する放射線撮影装置に用いられ、放射線源から被写体に照射される放射線の照射野を含む領域を光学的に撮影することにより光学画像を出力する光学カメラを備える撮影支援装置の作動方法であって、放射線撮影時に撮影された光学画像と、放射線撮影時に撮影された放射線画像の再撮影の要否との関係を学習した学習済みモデルを用いて、放射線撮影の開始前に、光学カメラにより取得される光学画像に基づき、放射線撮影を行った場合における再撮影の可能性の有無を判定する。
【0016】
本開示の作動プログラムは、放射線源と、放射線源から照射され被写体を透過した放射線に基づいて被写体の放射線画像を検出する放射線画像検出器とを有する放射線撮影装置に用いられ、放射線源から被写体に照射される放射線の照射野を含む領域を光学的に撮影することにより光学画像を出力する光学カメラと、少なくとも1つのプロセッサとを備える撮影支援装置を作動させる作動プログラムであって、放射線撮影時に撮影された光学画像と、放射線撮影時に撮影された放射線画像の再撮影の要否との関係を学習した学習済みモデルを用いて、放射線撮影の開始前に、光学カメラにより取得される光学画像に基づき、放射線撮影を行った場合における再撮影の可能性の有無を判定する判定処理をプロセッサに実行させる。
【発明の効果】
【0017】
本開示の技術によれば、放射線撮影前の撮影準備時に再撮影の可能性の有無を容易に把握することを可能とする撮影支援装置、その作動方法、及び作動プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】X線撮影システムの構成を示す図である。
図2】電子カセッテの外観斜視図である。
図3】コンソールの構成を示すブロック図である。
図4】撮影オーダを例示する図である。
図5】条件テーブルを例示する図である。
図6】画像ファイルの一例を示す図である。
図7】CPUに構成された各機能部を示すブロック図である。
図8】撮影準備時におけるコンソール画面の表示例を示す図である。
図9】X線撮影後におけるコンソール画面の表示例を示す図である。
図10】学習済みモデルの生成処理について説明する図である。
図11】CPUの処理手順の前半部分を説明するフローチャートである。
図12】CPUの処理手順の後半部分を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、放射線としてX線を用いるX線撮影システム10の構成を示す。放射線としてX線を用いるX線撮影システム10は、X線源11と、線源制御装置12と、電子カセッテ13と、コンソール14と、光学カメラ15とを備える。本実施形態では、コンソール14及び光学カメラ15により撮影支援装置が構成される。X線源11は、放射線源の一例である。電子カセッテ13は、放射線画像検出器の一例である。
【0020】
X線撮影システム10では、電子カセッテ13をX線源11と対向する位置に配置する。被写体HをX線源11と電子カセッテ13との間に配置することで、被写体Hの撮影部位(図1では膝)をX線撮影することができる。X線源11と電子カセッテ13とはX線撮影装置を構成している。このX線撮影装置は、本開示の技術に係る放射線撮影装置の一例である。
【0021】
電子カセッテ13は、立位撮影台又は臥位撮影台に配置されてもよい。本実施形態では、放射線技師(以下、単に技師という。)RGにより被写体Hの位置決めが行われた後、技師RGによりX線撮影操作が行われるとする。
【0022】
X線源11は、X線を発生するX線管11Aと、X線が照射される領域である照射野RFを限定する照射野限定器11Bとを備える。X線源11は、電子カセッテ13のX線入射面13A上における照射野RFを示す照射野表示光を発する照射野表示光源(図示せず)を内蔵していてもよい。
【0023】
X線管11Aは、熱電子を放出するフィラメントと、フィラメントから放出された熱電子が衝突してX線を放射するターゲットとを有している。照射野限定器11Bは、例えば、X線を遮蔽する4枚の鉛板を四角形の各辺上に配置することにより、X線を透過させる四角形の照射開口が中央に形成されたものである。この場合、照射野限定器11Bは、鉛板の位置を移動することで照射開口の大きさを変化させ、照射野RFを設定する。
【0024】
線源制御装置12は、タッチパネル12A、電圧発生部12B、及び制御部12Cを有している。タッチパネル12Aは、X線の照射条件と、照射野限定器11Bの照射開口の大きさとを設定する際に技師RGにより操作される。X線の照射条件には、X線源11に印加する管電圧、管電流、及びX線の照射時間が含まれる。
【0025】
電圧発生部12Bは、X線管11Aに印加する管電圧を発生する。制御部12Cは、電圧発生部12Bの動作を制御することにより、管電圧、管電流、及びX線の照射時間を、タッチパネル12Aにより設定された値とする。制御部12Cは、X線管11AからX線が発生された際に計時を開始するタイマーを有する。制御部12Cは、例えば、タイマーで計時した時間が照射条件で規定された照射時間に達したときに、X線管11Aの動作を停止させる。また、制御部12Cは、照射野限定器11Bを動作させて、その照射開口の大きさを、タッチパネル12Aで設定された大きさとする。
【0026】
また、制御部12Cには、照射スイッチ16がケーブル等を介して接続されている。照射スイッチ16は、X線の照射を開始する際に技師RGによって操作される。照射スイッチ16が操作されると、線源制御装置12は、X線管11AにX線を発生させる。これにより、照射野RFに向けてX線が照射される。
【0027】
電子カセッテ13は、X線源11から出射されて被写体Hの撮影部位を透過したX線に基づくX線画像XPを検出する。電子カセッテ13は、無線通信部及びバッテリを有し、ワイヤレスで動作を行う。電子カセッテ13は、検出したX線画像XPをコンソール14に無線送信する。X線画像XPは、放射線画像の一例である。
【0028】
また、X線源11は、撮影室の天井2から垂直下方に吊り下げられている。X線源11は、懸垂保持機構17により保持されている。懸垂保持機構17は、水平移動機構18を介して天井2に取り付けられている。懸垂保持機構17は、X線源11を垂直方向(±Z方向)に昇降自在に保持している。水平移動機構18は、X線源11のX照射軸方向(±X方向)及びX照射軸方向に直交する方向(±Y方向)に懸垂保持機構17を移動自在に保持している。
【0029】
懸垂保持機構17及び水平移動機構18にはそれぞれモータ(図示せず)が設けられており、各方向に手動又は電動でX線源11を移動させることが可能である。懸垂保持機構17及び水平移動機構18の動作は、制御部12Cにより制御される。X線源11を手動と電動とのいずれで移動させるかは、タッチパネル12Aにより選択することができる。X線源11を移動させることにより、照射野RFの位置調整を行うことができる。
【0030】
光学カメラ15は、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)型イメージセンサ又はCCD(Charge Coupled Device)型イメージセンサなどを含んで構成された光学式のデジタルカメラであって、一例として可視光に基づく撮影を行う。光学カメラ15は、静止画撮影及び動画撮影を可能とする。光学カメラ15は、本開示の技術に係る動画撮影装置の一例である。
【0031】
光学カメラ15の光軸は、照射野RFの中心を通るX線の照射軸と平行である。光学カメラ15は、照射野RFを含む領域を光学的に撮影することにより光学画像を生成する。光学画像は、照射野RF内に位置する被写体Hの撮影部位を示す画像である。光学画像は、例えばカラーの静止画又は動画である。
【0032】
光学カメラ15は、X線源11の外周部に取り付けられている。なお、光学カメラ15は、X線源11の外周部に取り付けられていなくてもよく、X線源11に内蔵されていてもよい。また、光学カメラ15は、対物レンズと撮像素子とが別体で構成されていてもよい。この場合には、X線源11の外周部に対物レンズが配され、かつX線源11以外の部分(例えばX線源11を支持するアーム)に撮像素子が内蔵された構成であってもよい。
【0033】
光学カメラ15は、有線又は無線によりコンソール14に接続されている。コンソール14は、撮影制御装置として機能することにより、光学カメラ15の撮影動作を制御する。コンソール14は、X線撮影に連動して光学カメラ15に静止画撮影を行わせることのほか、X線撮影開始前の撮影準備期間に動画撮影を行わせる。例えば、コンソール14は、X線源11が設置された撮影室に隣接する操作室に設置されている。
【0034】
コンソール14は、照射スイッチ16が操作された際に、静止画撮影指示信号を光学カメラ15に送信する。光学カメラ15は、コンソール14から入力された静止画撮影指示信号に応じて、照射野RFを含む領域を静止画撮影する。この静止画撮影により得られた光学画像(以下、静止画SPという。)は、コンソール14に送信される。
【0035】
コンソール14は、技師RGにより撮影準備を開始する操作が行われた際に動画撮影開始信号を光学カメラ15に送信する。光学カメラ15は、コンソール14から入力された動画撮影開始信号に応じて、照射野RFを含む領域の動画撮影を開始する。この動画撮影により得られる光学画像(以下、動画MPという。)は、動画撮影時にリアルタイムに、いわゆるライブビュー画像としてコンソール14に送信される。
【0036】
コンソール14には、ネットワークNを介して、X線撮影システム10に設けられたRIS(Radiology Information System)及びPACS(Picture Archiving and Communication System)に接続されている。また、コンソール14には、ネットワークNを介して写損管理システムに接続される場合がある。写損管理システムは、写損とラベリングされたX線画像XPを収集して、写損率及び写損原因等の解析を行う。
【0037】
コンソール14は、RISから取得した撮影オーダ及び各種情報等に基づいて、技師RGの操作によりX線撮影を行う機能を有している。また、コンソール14は、X線撮影後に電子カセッテ13から受信するX線画像XPをPACSに出力する機能を有する。コンソール14は、X線撮影時にX線画像XPと同時に取得された動画MPを、当該X線画像XPに関連付けて出力する。
【0038】
コンソール14は、例えば、X線源11が設置された撮影室に隣接する操作室に設置されている。コンソール14が電子カセッテ13から受信するX線画像XPは、コンソール14に設けられたディスプレイ30(図3参照)に表示される。技師RGは、ディスプレイ30に表示されたX線画像XPに基づき、X線画像XPが診断に適した画像であるか否かを判断することができる。
【0039】
また、コンソール14には、ネットワークNを介して、学習済みモデル提供サーバ40に接続されている。学習済みモデル提供サーバ40には、X線撮影時に撮影された静止画SPと、X線撮影時に撮影されたX線画像XPの再撮影の要否との関係を学習した学習済みモデルLMが格納されている。コンソール14は、学習済みモデル提供サーバ40から提供される学習済みモデルLMを用いて、動画撮影時に得られる各フレームに基づき、各フレームに表される被写体Hの状態でX線撮影を行った場合に、再撮影が必要となる可能性があるか否かを判定する。すなわち、コンソール14は、X線撮影開始前の撮影準備期間における動画撮影時に1つのフレームを取得するたびに、そのフレームの取得時にX線撮影を行った場合に、再撮影が必要となる可能性があるか否かを判定する。
【0040】
学習済みモデル提供サーバ40には、複数の学習した学習済みモデルLMが格納されている。例えば、複数の学習済みモデルLMは、それぞれ撮影手技に対応付けられている。撮影手技は、被写体Hの撮影部位と、当該撮影部位の姿勢及び向きに関する情報である。例えば、学習済みモデルLMは、PACSに格納された、同一の撮影手技で撮影されたX線画像XPに関連付けて記憶された静止画SPを用いて機械学習を行うことにより生成されたモデルである。学習済みモデルLMを生成するための機械学習は、例えば、学習済みモデル提供サーバ40で行われる。
【0041】
図2において、電子カセッテ13は、センサパネル20と、回路部21と、これらを収容する直方体形状をした持ち運び可能な筐体22とで構成される。筐体22は、例えば、フイルムカセッテやIP(Imaging Plate)カセッテ、CR(Computed Radiography)カセッテと略同様の、国際規格ISO(International Organization for Standardization)4090:2001に準拠した大きさである。
【0042】
電子カセッテ13は、筐体22の上面であるX線入射面13AがX線源11と対向する姿勢で位置決めされ、X線入射面13AにX線が照射される。なお、図示は省略するが、筐体22には、この他にも、主電源のオン/オフを切り替えるスイッチや、バッテリの残り使用時間、撮影準備完了状態といった電子カセッテ13の動作状態を報せるインジケータが設けられている。
【0043】
センサパネル20は、シンチレータ20Aと光検出基板20Bとで構成される。シンチレータ20Aと光検出基板20Bは、X線入射面13A側からみてシンチレータ20A、光検出基板20Bの順に積層されている。シンチレータ20Aは、CsI:Tl(タリウム賦活ヨウ化セシウム)やGOS(GdS:Tb、テルビウム賦活ガドリニウムオキシサルファイド)等の蛍光体を有し、X線入射面13Aを介して入射したX線を可視光に変換して放出する。なお、X線入射面13A側から見て光検出基板20B、シンチレータ20Aの順に積層したセンサパネルを用いてもよい。また、アモルファスセレン等の光導電膜によりX線を直接信号電荷に変換する直接変換型のセンサパネルを用いてもよい。
【0044】
光検出基板20Bは、シンチレータ20Aから放出された可視光を検出して電荷に変換する。回路部21は、光検出基板20Bの駆動を制御するとともに、光検出基板20Bから出力された電荷に基づきX線画像XPを生成する。
【0045】
光検出基板20Bには、複数の画素が二次元マトリックス状に配列されている。各画素は、シンチレータ20Aが発した可視光を光電変換して電荷を生成し、蓄積する。この各画素に蓄積された電荷を、回路部21でデジタル信号に変換することで、X線画像XPが生成される。
【0046】
また、電子カセッテ13は、例えば、X線の照射開始を検出する機能を有する。この照射開始検出機能は、例えば、光検出基板20Bに設けられた照射開始検出センサにより構成される。照射開始検出センサは、例えば二次元マトリックス状に配列された複数の画素の一部により構成されている。照射開始検出センサから周期的に出力される線量信号が閾値を超えた場合に、X線の照射が開始されたと判定される。
【0047】
また、電子カセッテ13は、線源制御装置12と同様に、X線の照射開始を検出したときに計時を開始するタイマーを有する。電子カセッテ13は、タイマーで計時した時間がコンソール14で設定された照射条件に含まれる照射時間となったとき、X線の照射が終了したと判定する。これにより、電子カセッテ13は、照射条件に含まれる照射時間に対応した期間だけX線検出動作を行うことにより照射されたX線に基づくX線画像XPを検出することができる。
【0048】
また、電子カセッテ13は、画像メモリ及び無線通信回路を有する。電子カセッテ13は、回路部21により生成されたX線画像XPを画像メモリに記憶させ、無線通信回路により画像メモリに記憶されたX線画像XPをコンソール14に送信する。
【0049】
図3において、コンソール14は、ディスプレイ30と、入力デバイス31と、CPU(Central Processing Unit)32と、ストレージデバイス34と、メモリ33と、通信部35とを備えている。これらはデータバス36を介して相互に接続されている。
【0050】
ディスプレイ30は、GUI(Graphical User Interface)による操作機能が備えられた各種操作画面、X線画像XP、及び光学画像(静止画SP及び動画MP)を表示する表示部である。入力デバイス31は、タッチパネル又はキーボード等を含む入力操作部である。
【0051】
ストレージデバイス34は、例えばHDD(Hard Disk Drive)アレイであり、コンソール14に内蔵されるか、あるいは、コンソール14に外部接続されている。外部接続は、ケーブルあるいはネットワークを通じて接続される。ストレージデバイス34には、オペレーティングシステム等の制御プログラム、各種アプリケーションプログラム、及びこれらのプログラムに付随する各種データ等が記憶されている。
【0052】
また、ストレージデバイス34には、コンソール14及び光学カメラ15を撮影支援装置として動作させるための作動プログラムPと、学習済みモデル提供サーバ40から提供された複数の学習済みモデルLMとが記憶されている。また、ストレージデバイス34には、後述する条件テーブル38、及び電子カセッテ13から受信したX線画像XP及び静止画SPを含む画像ファイル39(図6参照)が記憶される。
【0053】
メモリ33は、CPU32が処理を実行するためのワークメモリである。CPU32は、ストレージデバイス34に記憶されたプログラムをメモリ33へロードし、プログラムにしたがって処理を実行することにより、コンソール14の各部を統括的に制御する。通信部35は、電子カセッテ13及び光学カメラ15との間で、X線画像XP及び光学画像(静止画SP及び動画MP)等の各種データの送受信を行う。また、通信部35は、線源制御装置12の制御部12Cと通信を行う。さらに、通信部35は、RIS、PACS、及び学習済みモデル提供サーバ40と、ネットワークNを介して通信を行う。
【0054】
コンソール14は、図4に示す撮影オーダ37の入力を受け付ける。撮影オーダ37は、例えば診療科の撮影依頼者から、技師RGにX線撮影を指示するための情報である。撮影オーダ37は、例えば、RISからコンソール14に配信される。
【0055】
撮影オーダ37は、オーダID(Identification Data)、被写体ID、及び撮影手技等の項目を有する。オーダIDは、個々の撮影オーダ37を識別する記号や番号であり、RISにより自動的に付される。被写体IDの項目には撮影対象の被写体Hの被写体IDが記される。被写体IDは個々の被写体Hを識別する記号や番号である。
【0056】
撮影手技は、被写体Hの撮影部位と、当該撮影部位の姿勢及び向きに関する情報である。撮影部位は、図1で例示した膝に加えて、頭部、頸椎、胸部、腹部、手、指、又は肘等がある。姿勢とは、立位、臥位、又は座位等の被写体Hの姿勢である。向きとは、正面、側面、又は背面等のX線源11に対する被写体Hの向きである。撮影オーダ37には、これらの項目の他に、被写体Hの氏名、性別、年齢、身長、及び体重等の被写体情報の項目が含まれる。
【0057】
コンソール14のストレージデバイス34には、図5に示す条件テーブル38が記憶されている。条件テーブル38には、撮影手技ごとに対応する照射条件が関連付けて登録されている。
【0058】
コンソール14は、技師RGの操作により、図4に示す撮影オーダ37の内容をリスト化した撮影オーダリストをディスプレイ30に表示する。技師RGは、撮影オーダリストを閲覧して撮影オーダ37の内容を確認することができる。また、コンソール14は、図5に示す条件テーブル38の内容をディスプレイ30に表示する。技師RGは、撮影オーダ37で指定された撮影手技と一致する照射条件を選択して設定することができる。
【0059】
コンソール14は、技師RGにより設定された照射条件、オーダID、コンソールの識別情報としてのコンソールID等の各種情報を含む条件設定信号を電子カセッテ13に無線送信する。
【0060】
コンソール14は、電子カセッテ13から受信したX線画像XPを、当該X線画像XPと同時に撮影された静止画SPを関連付けて、例えばDICOM(Digital Imaging and Communication in Medicine)規格に準拠した形式の画像ファイルとして、記憶部としてのストレージデバイス34に保存する。画像ファイルには、付帯情報が含まれる。付帯情報には、オーダID、被写体ID、撮影手技、照射条件、写損フラグ、及び写損理由等が含まれる。
【0061】
図6は、ストレージデバイス34に保存される画像ファイルの一例を示す。図6に示すように、画像ファイル39には、X線画像XP、静止画SP、及び付帯情報SIが含まれる。静止画SPには、同時に撮影されたX線画像XPの画像ID(X線画像ID)に対応付けられた画像ID(光学画像ID)が付されている。一回のX線撮影時に得られたX線画像XPと静止画SPとは、X線画像IDと光学画像IDとが対応付けられて1つの画像ファイル39に格納される。
【0062】
付帯情報SIに含まれる写損フラグは、ディスプレイ30に表示されたX線画像XPに基づいて、技師RGが写損と判断したか否かの判断結果を表す。技師RGは、入力デバイス31を用いて判断結果を入力することができる。例えば、写損フラグが「1」であることは、技師RGがX線画像XPを写損画像と判断したことを表す。一方、写損フラグが「0」であることは、技師RGがX線画像XPを正常画像と判断したことを表す。
【0063】
写損フラグが「1」の場合にはX線の再撮影が行われ、写損フラグが「0」の場合にはX線の再撮影は行われない。このため、写損フラグは、X線画像の再撮影が行われたか否かを表す。写損フラグは、本開示の技術に係る結果情報の一例である。
【0064】
写損理由は、技師RGが写損と判断した理由であり、入力デバイス31を用いて技師RGにより入力される。
【0065】
撮影手技が「膝/屈曲位/側面」である場合には、医師は、X線画像XPに基づき、膝の関節腔JCについて診断を行う。このため、X線画像XPには、関節腔JCが鮮明に描写されている必要がある。例えば、技師RGは、関節腔JCが鮮明に描写されているか否かに基づいて、写損であるか否かを判断し、写損が生じた理由(写損理由)を推測する。
【0066】
図7は、CPU32に構成される各種機能を示す。ストレージデバイス34には、作動プログラムPが記憶されている。なお、図示は省略するが、図4に示した条件テーブル38もストレージデバイス34に記憶されている。CPU32には、作動プログラムPの実行により複数の機能部が構成される。
【0067】
作動プログラムPは、CPU32を、静止画撮影指示部51、静止画取得部52、関連付け部53、動画撮影指示部54、動画取得部55、及び表示制御部56として機能させる。また、作動プログラムPは、CPU32を、モデル選択部60、判定部61、警告部62、提示部63、及び照射禁止指示部64として機能させる。
【0068】
静止画撮影指示部51は、照射スイッチ16が押下されたことに応じて、線源制御装置12の制御部12Cにより生成され、電圧発生部12Bに供給されるX線照射開始信号ESを受信する。静止画撮影指示部51は、X線照射開始信号ESを受信すると、光学カメラ15に対して静止画撮影の実行を指示する。
【0069】
静止画取得部52は、光学カメラ15が静止画撮影を行うことにより生成された静止画SPを取得する。静止画取得部52が取得した静止画SPは、関連付け部53に入力される。また、関連付け部53には、照射スイッチ16が押下されたことに応じて、X線源11から照射されたX線に基づいて電子カセッテ13により検出されたX線画像XPが通信部35(図3参照)を介して入力される。
【0070】
関連付け部53は、静止画取得部52に入力された静止画SPと、電子カセッテ13から入力されたX線画像XPとを関連付けることにより作成した画像ファイル39をストレージデバイス34に保存する。なお、画像ファイル39には、上述の付帯情報SIが含まれる。
【0071】
動画撮影指示部54は、入力デバイス31から撮影準備開始信号RSが入力されることに応じて、光学カメラ15に対して動画撮影の開始を指示する動画撮影開始信号を送信する。技師RGは、被写体HのX線撮影を行う前の準備段階として被写体Hを位置決めする際に、入力デバイス31を操作することにより、撮影支援装置をX線撮影の準備モードに移行させることができる。
【0072】
動画取得部55は、光学カメラ15が動画撮影を行うことにより生成される動画MPをフレームごとにリアルタイムに取得する。動画取得部55は、光学画像を1フレームごとに取得し、取得した複数のフレームで構成される動画MPを出力する。動画取得部55から出力される動画MPは、フレームごとに表示制御部56及び判定部61に入力される。
【0073】
表示制御部56は、撮影準備時に動画取得部55から入力される動画MPをフレームごとにディスプレイ30に表示(すなわち、リアルタイム表示)させる。また、表示制御部56は、X線撮影により取得されたX線画像XPをディスプレイ30に表示させる。
【0074】
光学カメラ15による動画撮影は、前述の静止画撮影指示部51から静止画撮影の実行指示を受けたことに応じて終了する。静止画取得部52は、動画MPの1つのフレームを静止画SPとして取得してもよい。
【0075】
技師RGは、ディスプレイ30に表示されたX線画像XPを確認し、写損であると判断した場合には、入力デバイス31を操作して、当該X線画像XPを写損とラベリング(すなわち、写損フラグを「1」とする)ことができる。
【0076】
モデル選択部60は、入力デバイス31を用いて技師RGにより選択された撮影オーダ37に含まれる撮影手技に対応する学習済みモデルLMを、ストレージデバイス34に記憶された複数の学習済みモデルLMから選択する。モデル選択部60は、選択した学習済みモデルLMを判定部61に供給する。
【0077】
判定部61は、モデル選択部60から供給された学習済みモデルLMを用いて、動画取得部55から入力される動画MPの各フレームに対して判定処理を行う。判定部61は、各フレームで表される被写体Hの状態でX線撮影を行った場合に、再撮影が必要となる可能性があるか否か(すなわち、再撮影の可能性の有無)を判定する。
【0078】
学習済みモデルLMは、ニューラルネットワークを用いて構成さている。学習済みモデルLMは、例えば、深層学習(Deep Learning)の対象となる多層ニューラルネットワークである深層ニューラルネットワーク(DNN:Deep Neural Network)を用いて構成されている。DNNとして、例えば、画像を対象とする畳み込みニューラルネットワーク(CNN:Convolutional Neural Network)を用いる。
【0079】
判定部61は、判定処理を行った後、再撮影が必要となる可能性の有無を表す「判定結果」を警告部62に供給する。また、判定部61は、再撮影が必要となる可能性があると判定した場合に、判定した「理由」を提示部63に供給する。以下、再撮影が必要となる可能性があると判定した理由を「再撮影理由」という。前述のように、膝を撮影部位とした場合には、「外旋」又は「内旋」が、再撮影理由となる。判定部61は、さらに詳細な再撮影理由を生成してもよい。
【0080】
警告部62は、判定部61から供給される判定結果に基づき、再撮影が必要となる可能性がある場合には、警告を表す情報を表示制御部56に供給することによりディスプレイ30に表示させる警告報知処理を行う。すなわち、警告部62は、現在の被写体Hの位置決め状態でX線撮影を行った場合には、写損が生じることにより再撮影が必要となる可能があることを、警告により報知する。
【0081】
なお、警告部62は、コンソール14のディスプレイ30に限られず、X線撮影システム10に接続されるモバイル端末等の装置に警告を表示してもよい。また、警告部62は、ディスプレイ30等への表示に限られず、音などにより警告を報知してもよい。警告の報知は、技師RG等の知覚を刺激する方法であればよい。
【0082】
提示部63は、判定部61から供給される再撮影理由を表す情報を、表示制御部56に供給することによりディスプレイ30に表示させる提示処理を行う。また、提示部63は、再撮影理由に基づいて、被写体Hの位置又は向きを是正するための是正策を導出し、導出した是正策を表す情報を表示制御部56に供給することにより、ディスプレイ30に表示させる。例えば、提示部63は、再撮影理由が「内旋」である場合には、「外旋させたほうがよい」との是正策を導出し、逆に、再撮影理由が「外旋」である場合には、「内旋させたほうがよい」との是正策を導出する。提示部63は、さらに詳細な是正策を導出してもよい。
【0083】
なお、提示部63は、是正策と再撮影理由とのうちの少なくともいずれか一方をディスプレイ30に表示させればよい。
【0084】
例えば、表示制御部56は、ディスプレイ30にリアルタイム表示された動画MP上に、警告、再撮影理由、及び是正策を表すメッセージを重畳表示させる。技師RGは、ディスプレイ30に表示されるメッセージに基づいて、被写体Hの位置又は向きを是正することにより、写損の発生を回避することができる。
【0085】
また、判定部61は、判定結果を照射禁止指示部64に供給する。照射禁止指示部64は、判定部61から供給される判定結果に基づき、再撮影が必要となる可能性がある場合には、照射禁止信号RPを線源制御装置12の制御部12Cに供給することにより、X線源11からのX線の照射を禁止させる禁止処理を行う。これにより、再撮影が必要となる可能性がある場合に、被写体HにX線が照射されることが禁止されるインターロック制御が行われる。
【0086】
図8は、表示制御部56によりディスプレイ30に表示されるコンソール画面の一例を示す。図8に示すように、コンソール画面70には、動画MP又はX線画像XP等の画像を表示するための画像表示領域70Aが設けられている。
【0087】
また、コンソール画面70には、撮影準備を開始するための第1操作ボタン71と、写損のラベリングを行うための第2操作ボタン72と、画像ファイル39をPACSに出力するための第3操作ボタン73が表示されている。第1操作ボタン71、第2操作ボタン72、及び第3操作ボタン73は、ディスプレイ30の画面に形成されたタッチパネルにより操作される。
【0088】
図8は、X線撮影前の撮影準備時におけるコンソール画面70の表示例を示す。撮影準備動作は、例えば、技師RGが第1操作ボタン71を押下することにより開始する。図8に示す例では、画像表示領域70Aに、光学カメラ15により得られた動画MPがリアルタイム表示される。また、画像表示領域70Aには、判定部61による判定結果等を示すメッセージボックス74が表示される。
【0089】
図8に示す例では、メッセージボックス74には、判定部61による判定結果が良好でなく、再撮影が必要となる可能性があることを表す警告マーク75が表示されている。警告マーク75は、警告部62から表示制御部56に供給される警告情報に基づいて表示される。また、メッセージボックス74には、提示部63から表示制御部56に供給される再撮影理由76及び是正策77が表示される。
【0090】
メッセージボックス74の表示内容は、判定部61により行われる動画MPの各フレームに対する判定結果に応じて逐次更新される。技師RGは、メッセージボックス74の表示内容に基づいて、被写体Hの位置又は向きを是正することができる。被写体Hが適切に位置決めされたことにより、判定部61による判定結果が良好となった場合には、例えば、メッセージボックス74が非表示となる。
【0091】
図9は、X線撮影後におけるコンソール画面70の表示例を示す。図9に示す例では、画像表示領域70Aに、X線撮影により得られたX線画像XPが表示されている。技師RGは、X線画像XPが診断に適した画像でなく、再撮影が必要(すなわち写損)であると判断した場合には、第2操作ボタン72を押下することにより、当該X線画像XPを写損画像とラベリングすることができる。これにより、当該X線画像XPの付帯情報SIに含まれる写損フラグは「1」に設定される。また、このとき、技師RGは、図示しないキーボード等により写損理由を入力することができる。
【0092】
技師RGが第3操作ボタン73を押下することにより、画像表示領域70Aに表示されたX線画像XPを含む前述の画像ファイル39がPACSに出力される。なお、写損フラグが「1」に設定されたX線画像XPを含む画像ファイル39は、ネットワークNを介してPACS又は写損管理システム(図示せず)に出力される。
【0093】
図10は、学習済みモデルLMの生成処理について説明する。学習済みモデルLMの生成は、例えば、学習済みモデル提供サーバ40で実行される。学習済みモデル提供サーバ40は、PACS及び写損管理システム等に出力された画像ファイル39を用いて機械学習を行う。
【0094】
図10に示すように、学習済みモデル提供サーバ40には、未学習の学習モデルMが格納されている。学習モデルMには、画像ファイル39に含まれる静止画SPが入力される。学習モデルMは、入力された静止画SPに対する判定結果及び再撮影理由を出力する。学習モデルMから出力された判定結果及び再撮影理由は、付帯情報SIに含まれる正解データとしての写損フラグ及び写損理由と対比される。そして、両者の差異が小さくなるように、学習モデルMのパラメータが修正される。複数の画像ファイル39を用いて学習モデルMのパラメータの修正(すなわち学習)を繰り返すことにより、学習済みモデルLMが得られる。
【0095】
学習済みモデルLMの生成は、例えば、同一の撮影手技で得られた画像ファイル39を用いて、撮影手技ごとに行われる。なお、学習済みモデルLMの生成は、学習済みモデル提供サーバ40等の外部サーバに限られず、コンソール14内で行われてもよい。また、画像ファイル39が生成されるたびに、生成された画像ファイル39を用いて学習を行うことにより、学習済みモデルLMを更新してもよい。さらに、コンソール14の負荷を低減するために、コンソール14以外の専用のコンピュータにより学習済みモデルLMの生成を行ってもよい。
【0096】
次に、上記構成の撮影支援装置の作用を、図11及び図12に示すフローチャートを参照しながら説明する。まず、技師RGは、撮影に先立って、ディスプレイ30で撮影オーダ37の内容を確認し、入力デバイス31及びタッチパネル12Aを用いて照射条件の設定を行う。
【0097】
次に、技師RGは、撮影オーダ37に含まれる撮影手技に応じて、X線源11、電子カセッテ13、及び被写体Hの位置決めを行う。ここでは、撮影手技は「膝/屈曲位/側面」とする。技師RGは、被写体Hの一方の足を屈曲させ、膝の側面が電子カセッテ13のX線入射面13Aに正対し、かつ膝が照射野RFの中央に位置するように被写体Hを位置決めする(図1参照)。技師RGは、被写体Hの位置決めを行う際に、コンソール画面70の第1操作ボタン71を押下することにより、撮影支援装置を動作させる。第1操作ボタン71が押下されると、撮影準備開始信号RSが入力デバイス31から動画撮影指示部54に入力される。
【0098】
動画撮影指示部54は、技師RGが第1操作ボタン71を押下することにより入力デバイス31から出力される撮影準備開始信号RSを受信したか否かの判定を行う(ステップS10)。動画撮影指示部54は、撮影準備開始信号RSを受信したと判定すると(ステップS10:YES)、光学カメラ15に対して動画撮影開始信号を送信する(ステップS11)。動画取得部55は、光学カメラ15が動画撮影を行うことにより生成される動画MPをフレームごとに取得する(ステップS12)。表示制御部56は、動画取得部55により取得された動画MPをフレームごとに、コンソール画面70の画像表示領域70Aに表示させる(ステップS13)。
【0099】
また、動画取得部55により取得された動画MPの各フレームは、判定部61に供給される。判定部61は、モデル選択部60により選択された学習済みモデルLMを用いて、動画MPの各フレームに対して判定処理を行う(ステップS14)。モデル選択部60は、撮影オーダ37に含まれる撮影手技に対応する学習済みモデルLMを選択している。
【0100】
判定部61は、各フレームで表される被写体Hの状態でX線撮影を行った場合に、再撮影が必要となる可能性があるか否かを判定し(ステップS15)。判定部61が、再撮影が必要となる可能性があると判定した場合には(ステップS15:YES)、処理がステップS16に移行される。
【0101】
ステップS16では、警告部62は、図8に示すように、画像表示領域70Aに警告マーク75を表示させることにより、再撮影が必要となる可能性があることを警告する。次のステップS17では、提示部63は、判定部61から供給される判定結果及び判定理由に基づき、再撮影理由76及び是正策77を生成して画像表示領域70Aに表示させる。次のステップS18では、照射禁止指示部64は、照射禁止信号RPを線源制御装置12の制御部12Cに供給することにより、X線源11からのX線の照射を禁止させる。ステップS18が終了した後、処理は、ステップS12に戻される。なお、ステップS16~S18の各処理は、並行して実行されてもよい。
【0102】
一方、判定部61が、再撮影が必要となる可能性がないと判定した場合には(ステップS15:NO)、処理がステップS19に移行される。すなわち、再撮影が必要となる可能性がない場合には、警告報知、再撮影理由及び是正策の提示、及びX線の照射禁止は行われない。ステップS19では、静止画撮影指示部51は、技師RGが照射スイッチ16を押下したことに応じて制御部12Cから発せられるX線照射開始信号ESを受信したか否かの判定を行う。
【0103】
静止画撮影指示部51が、X線照射開始信号ESを受信したと判定した場合には(ステップS19:YES)、処理がステップS20に移行される。一方、静止画撮影指示部51が、X線照射開始信号ESを受信しなかったと判定した場合には(ステップS19:NO)、処理がステップS12に戻される。
【0104】
ステップS20では、静止画撮影指示部51は、光学カメラ15に対して静止画撮影の実行を指示する。静止画取得部52は、光学カメラ15が静止画撮影を行うことにより生成された静止画SPを取得する(ステップS21)。また、コンソール14は、電子カセッテ13により検出されたX線画像XPを取得する(ステップS22)。
【0105】
次に、関連付け部53は、取得されたX線画像XPと静止画SPとを関連付け、付帯情報SIとともに画像ファイル39としてストレージデバイス34に保存する(ステップS23)。そして、表示制御部56は、ストレージデバイス34に保存された画像ファイル39内のX線画像XPを、図9に示すように、コンソール画面70の画像表示領域70Aに表示させる(ステップS24)。
【0106】
次に、CPU32は、技師RGが第3操作ボタン73を押下することによる画像出力の指示があったか否かを判定する(ステップS25)。技師RGは、画像表示領域70Aに表示されたX線画像XPを確認し、再撮影は不要と判断した場合には、第3操作ボタン73を押下することにより画像出力の指示を行う。CPU32は、第3操作ボタン73が押下されたと判定した場合には(ステップS25:YES)、ストレージデバイス34に保存された画像ファイル39をPACSに出力し(ステップS29)、処理を終了する。
【0107】
一方、CPU32は、技師RGが第3操作ボタン73を押下することによる画像出力の指示がなされなかったと判定した場合には(ステップS25:NO)、技師RGが第2操作ボタン72を押下することにより、X線画像XPが写損とラベリングされたか否かを判定する(ステップS26)。このラベリングには、写損理由の入力等が含まれる。
【0108】
CPU32は、X線画像XPが写損とラベリングされたと判定した場合には(ステップS26:YES)、写損とラベリングされたX線画像XPを含む画像ファイル39をPACS又は写損管理システムに出力する(ステップS27)。一方、CPU32は、X線画像XPが写損とラベリングされなかったと判定した場合には(ステップS26:NO)、処理がステップS25に戻される。
【0109】
ステップS28では、ステップS10と同様に、動画撮影指示部54は、技師RGが第1操作ボタン71を押下することにより入力デバイス31から出力される撮影準備開始信号RSを受信したか否かの判定を行う。動画撮影指示部54が、撮影準備開始信号RSを受信したと判定すると(ステップS28:YES)、処理がステップS11に移行される。一方、動画撮影指示部54が、撮影準備開始信号RSを受信しなかったと判定すると(ステップS28:NO)、処理がステップS25に戻される。この後、CPU32が、第3操作ボタン73が押下されたと判定した場合に(ステップS25:YES)、画像ファイル39がPACSに出力され(ステップS29)、処理が終了する。
【0110】
以上のように、上記構成の撮影支援装置では、X線撮影前の撮影準備時に、学習済みモデルを用いて、再撮影の可能性の有無を判定する。このため、上記構成の撮影支援装置によれば、従来のように、種々の位置決め指標画像を予め登録しておく必要、及び被写体に適した位置決め指標画像を選択する必要がなく、技師等は、再撮影の可能性の有無を容易に把握することができる。
【0111】
なお、判定部61は、動画取得部55から入力される動画MPをフレームごとに判定しているが、処理の負荷を軽減するために、複数のフレームごとに判定を行ってもよい。
【0112】
撮影室に備え付けのX線撮影システムを例に挙げて上記各実施形態を説明したが、X線撮影システムは、いわゆる移動式の回診車を用いたものであってもよい。
【0113】
また、本開示の技術は、X線に限らず、γ線等の他の放射線を使用して被写体を撮影するシステムにも適用することができる。
【0114】
上記各実施形態において、例えば、静止画撮影指示部51、静止画取得部52、関連付け部53、動画撮影指示部54、動画取得部55、表示制御部56、モデル選択部60、判定部61、警告部62、提示部63、及び照射禁止指示部64といった各種の処理を実行する処理部(processing unit)のハードウェア的な構造は、次に示すような各種のプロセッサ(processor)である。
【0115】
各種のプロセッサには、CPU、プログラマブルロジックデバイス(Programmable Logic Device:PLD)、専用電気回路等が含まれる。CPUは、周知のとおりソフトウエア(プログラム)を実行して各種の処理部として機能する汎用的なプロセッサである。PLDは、FPGA(Field Programmable Gate Array) 等の、製造後に回路構成を変更可能なプロセッサである。専用電気回路は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである。
【0116】
1つの処理部は、これら各種のプロセッサのうちの1つで構成されてもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合せ(例えば、複数のFPGAや、CPUとFPGAの組み合わせ)で構成されてもよい。また、複数の処理部を1つのプロセッサで構成
してもよい。複数の処理部を1つのプロセッサで構成する例としては、第1に、1つ以上のCPUとソフトウエアの組み合わせで1つのプロセッサを構成し、このプロセッサが複数の処理部として機能する形態がある。第2に、システムオンチップ(System On Chip:SoC)等に代表されるように、複数の処理部を含むシステム全体の機能を1つのICチップで実現するプロセッサを使用する形態がある。このように、各種の処理部は、ハードウェア的な構造として、上記各種のプロセッサを1つ以上用いて構成される。
【0117】
さらに、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路(circuitry)である。
【0118】
本発明は、上記各実施形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない限り種々の構成を採用し得ることはもちろんである。さらに、本発明は、プログラムに加えて、プログラムを非一時的に記憶する、コンピュータで読み取り可能な記憶媒体にもおよぶ。
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