(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-05
(45)【発行日】2023-12-13
(54)【発明の名称】光学異方性膜、円偏光板、表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20231206BHJP
C08K 3/00 20180101ALI20231206BHJP
C08K 3/08 20060101ALI20231206BHJP
C08K 3/20 20060101ALI20231206BHJP
C08K 5/42 20060101ALI20231206BHJP
C08L 77/06 20060101ALI20231206BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20231206BHJP
H10K 50/86 20230101ALI20231206BHJP
H10K 59/10 20230101ALI20231206BHJP
【FI】
G02B5/30
C08K3/00
C08K3/08
C08K3/20
C08K5/42
C08L77/06
G09F9/00 313
H10K50/86
H10K59/10
(21)【出願番号】P 2022512564
(86)(22)【出願日】2021-03-30
(86)【国際出願番号】 JP2021013607
(87)【国際公開番号】W WO2021200989
(87)【国際公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-09-14
(31)【優先権主張番号】P 2020059960
(32)【優先日】2020-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】森嶌 慎一
(72)【発明者】
【氏名】平井 友樹
(72)【発明者】
【氏名】姫野 遼司
【審査官】小西 隆
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-500316(JP,A)
【文献】特開2015-200754(JP,A)
【文献】特表2012-507619(JP,A)
【文献】特表2013-543148(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
C08K 5/00
C08L 101/12
G09F 9/00
H05B 33/02
H10K 59/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非着色性の棒状化合物、および、非着色性の板状化合物を含むリオトロピック液晶性組成物を用いて形成された光学異方性膜であって、
前記光学異方性膜の法線方向から直線偏光を照射して紫外可視吸収スペクトルを得る測定を、前記直線偏光の方位を変えて行った際に、前記棒状化合物の波長230~400nmの範囲における極大吸収波長での吸光度が最も高い方向を第1方向とし、前記板状化合物の波長230~400nmの範囲における極大吸収波長での吸光度が最も高い方向を第2方向とした場合に、前記第1方向と前記第2方向とが直交しており、
前記棒状化合物の波長230~400nmの範囲における極大吸収波長が、前記板状化合物の波長230~400nmの範囲における極大吸収波長よりも小さく、
前記板状化合物の式(N)で表されるNz
Pが負であ
り、
前記Nz
P
が-0.25~-0.19である、光学異方性膜。
式(N) Nz
P=(nx
P-nz
P)/(nx
P-ny
P)
nx
Pは、前記組成物が塩を含まない場合には、前記非着色性の板状化合物10質量部と、水90質量部とを混合して得られた混合液P1を、前記組成物が塩を含む場合には、前記非着色性の板状化合物10質量部と、水90質量部と、前記組成物中の前記板状化合物に対する前記塩の含有量比と同じ含有量比となる量の前記塩とを混合して得られた混合液P2を用いて形成された光学異方性膜Pの面内の遅相軸方向の屈折率を表す。ny
Pは、前記光学異方性膜Pの面内の進相軸方向の屈折率を表す。nz
Pは、前記光学異方性膜Pの厚み方向の屈折率を表す。
【請求項2】
非着色性の棒状化合物、および、非着色性の板状化合物を含むリオトロピック液晶性組成物を用いて形成された光学異方性膜であって、
前記光学異方性膜の法線方向から直線偏光を照射して紫外可視吸収スペクトルを得る測定を、前記直線偏光の方位を変えて行った際に、前記棒状化合物の波長230~400nmの範囲における極大吸収波長での吸光度が最も高い方向を第1方向とし、前記板状化合物の波長230~400nmの範囲における極大吸収波長での吸光度が最も高い方向を第2方向とした場合に、前記第1方向と前記第2方向とが直交しており、
前記棒状化合物の波長230~400nmの範囲における極大吸収波長が、前記板状化合物の波長230~400nmの範囲における極大吸収波長よりも小さく、
前記板状化合物の式(N1)で表されるNz
P1が負であ
り、
前記Nz
P1
が-0.25~-0.19である、光学異方性膜。
式(N1) Nz
P1=(nx
P1-nz
P1)/(nx
P1-ny
P1)
nx
P1は、前記組成物が塩を含まない場合には、前記非着色性の板状化合物と水とを混合して得られ、20℃でリオトロピック液晶性を示す混合液P3を、前記組成物が塩を含む場合には、前記非着色性の板状化合物と水と、前記組成物中の前記板状化合物に対する前記塩の含有量比と同じ含有量比となる量の前記塩とを混合して得られ、20℃でリオトロピック液晶性を示す混合液P4を用いて形成された光学異方性膜P1の面内の遅相軸方向の屈折率を表す。ny
P1は、前記光学異方性膜P1の面内の進相軸方向の屈折率を表す。nz
P1は、前記光学異方性膜P1の厚み方向の屈折率を表す。
【請求項3】
前記棒状化合物および前記板状化合物が、いずれもリオトロピック液晶性化合物である、請求項1
または2に記載の光学異方性膜。
【請求項4】
前記棒状化合物および前記板状化合物が、親水性基を有する、請求項1~
3のいずれか1項に記載の光学異方性膜。
【請求項5】
前記棒状化合物が、式(X)で表される繰り返し単位を有する高分子である、請求項1~
4のいずれか1項に記載の光学異方性膜。
【化1】
R
x1は、親水性基を含む置換基を有する2価の芳香族環基、親水性基を含む置換基を有する2価の非芳香族環基、または、式(X1)で表される基を表す。
式(X1) *-R
x3-L
x3-R
x4-*
式(X1)中、*は、結合位置を表す。
R
x3およびR
x4は、それぞれ独立に、親水性基を含む置換基を有していてもよい2価の芳香族環基、または、親水性基を含む置換基を有していてもよい2価の非芳香族環基を表し、R
x3およびR
x4の少なくとも一方が親水性基を含む置換基を有する2価の芳香族環基、または、親水性基を含む置換基を有する2価の非芳香族環基を表す。
L
x3は、単結合、-O-、-S-、アルキレン基、アルケニレン基、または、アルキニレン基を表す。
R
x2は、2価の非芳香族環基、または、式(X2)で表される基を表す。
式(X2) *-Z
x1-Z
x2-*
Z
x1およびZ
x2は、それぞれ独立に、2価の非芳香族環基を表す。
L
1xおよびL
2xは、それぞれ独立に、-CONH-、-COO-、-O-、または、-S-を表す。
式(X1)中、*は、結合位置を表す。
式(X2)中、*は、結合位置を表す。
【請求項6】
前記板状化合物が、式(Y)で表される化合物である、請求項1~
5のいずれか1項に記載の光学異方性膜。
式(Y) R
y2-L
y3-L
y1-R
y1-L
y2-L
y4-R
y3
R
y1は、2価の単環基、または、2価の縮合多環基を表す。
R
y2およびR
y3は、それぞれ独立に、水素原子または親水性基を表し、R
y2およびR
y3の少なくとも一方は親水性基を表す。
L
y1およびL
y2は、それぞれ独立に、単結合、2価の芳香族環基、または、式(Y1)で表される基を表す。ただし、R
y1が2価の単環基である場合、L
y1およびL
y2は両方とも2価の芳香族環基、または、式(Y1)で表される基を表す。
式(Y1) *-R
y4-(R
y5)
n-*
R
y4およびR
y5は、それぞれ独立に、2価の芳香族環基を表す。
nは、1または2を表す。
L
y3およびL
y4は、それぞれ独立に、単結合、-O-、-S-、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、または、これらを組み合わせた基を表す。
式(Y1)中、*は結合位置を表す。
【請求項7】
請求項1~
6のいずれか1項に記載の光学異方性膜と、
偏光子と、を有する、円偏光板。
【請求項8】
前記光学異方性膜の面内の遅相軸と、前記偏光子の吸収軸とのなす角が、45±5°の範囲内である、請求項
7に記載の円偏光板。
【請求項9】
請求項
7または
8に記載の円偏光板と、
表示素子と、を有する表示装置。
【請求項10】
前記表示素子が、有機エレクトロルミネッセンス表示素子である、請求項
9に記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学異方性膜、円偏光板、および、表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
屈折率異方性を持つ位相差膜(光学異方性膜)は、表示装置の反射防止膜、および、液晶表示装置の光学補償フィルムなどの種々の用途に適用されている。
例えば、特許文献1においては、リオトロピック液晶性を示す組成物を用いて形成される二軸性の光学異方性膜が提案されている。ここで、二軸性とは、光学異方性膜の遅相軸方向の屈折率nx、進相軸方向の屈折率nyおよび厚み方向の屈折率nzがnx>nz>nyの関係を満たすことを意味する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方で、近年、光学異方性膜に対して、逆波長分散性を示すことが求められている。
本発明者は、特許文献1に記載の二軸性の光学異方性膜の特性を検討したところ、逆波長分散性は示しておらず、更なる改良が必要であった。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みて、逆波長分散性を示し、かつ、Nzファクターが約0.50(0.40~0.60)を示す光学異方性膜を提供することを課題とする。
また、本発明は、円偏光板、および、表示装置を提供することも課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、従来技術の問題点について鋭意検討した結果以下の構成により上記課題を解決できることを見出した。
【0007】
(1) 非着色性の棒状化合物、および、非着色性の板状化合物を含むリオトロピック液晶性組成物を用いて形成された光学異方性膜であって、
光学異方性膜の法線方向から直線偏光を照射して紫外可視吸収スペクトルを得る測定を、直線偏光の方位を変えて行った際に、棒状化合物の波長230~400nmの範囲における極大吸収波長での吸光度が最も高い方向を第1方向とし、板状化合物の波長230~400nmの範囲における極大吸収波長での吸光度が最も高い方向を第2方向とした場合に、第1方向と第2方向とが直交しており、
棒状化合物の波長230~400nmの範囲における極大吸収波長が、板状化合物の波長230~400nmの範囲における極大吸収波長よりも小さく、
板状化合物の後述する式(N)で表されるNzPが負である、光学異方性膜。
式(N) NzP=(nxP-nzP)/(nxP-nyP)
(2) NzPが-0.45~-0.10である、(1)に記載の光学異方性膜。
(3) NzPが-0.30~-0.15である、(1)または(2)に記載の光学異方性膜。
(4) 非着色性の棒状化合物、および、非着色性の板状化合物を含むリオトロピック液晶性組成物を用いて形成された光学異方性膜であって、
光学異方性膜の法線方向から直線偏光を照射して紫外可視吸収スペクトルを得る測定を、直線偏光の方位を変えて行った際に、棒状化合物の波長230~400nmの範囲における極大吸収波長での吸光度が最も高い方向を第1方向とし、板状化合物の波長230~400nmの範囲における極大吸収波長での吸光度が最も高い方向を第2方向とした場合に、第1方向と前記第2方向とが直交しており、
棒状化合物の波長230~400nmの範囲における極大吸収波長が、板状化合物の波長230~400nmの範囲における極大吸収波長よりも小さく、
板状化合物の後述する式(N1)で表されるNzP1が負である、光学異方性膜。
式(N1) NzP1=(nxP1-nzP1)/(nxP1-nyP1)
(5) NzP1が-0.45~-0.10である、(4)に記載の光学異方性膜。
(6) NzP1が-0.30~-0.15である、(4)または(5)に記載の光学異方性膜。
(7) 棒状化合物および板状化合物が、いずれもリオトロピック液晶性化合物である、(1)~(6)のいずれかに記載の光学異方性膜。
(8) 棒状化合物および板状化合物が、親水性基を有する、(1)~(7)のいずれかに記載の光学異方性膜。
(9) 棒状化合物が、後述する式(X)で表される繰り返し単位を有する高分子である、(1)~(8)のいずれかに記載の光学異方性膜。
(10) 板状化合物が、後述する式(Y)で表される化合物である、(1)~(9)のいずれかに記載の光学異方性膜。
(11) (1)~(10)のいずれかに記載の光学異方性膜と、
偏光子と、を有する、円偏光板。
(12) 光学異方性膜の面内の遅相軸と、偏光子の吸収軸とのなす角が、45±5°の範囲内である、(11)に記載の円偏光板。
(13) (11)または(12)に記載の円偏光板と、
表示素子と、を有する表示装置。
(14) 表示素子が、有機エレクトロルミネッセンス表示素子である、(13)に記載の表示装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、逆波長分散性を示し、かつ、Nzファクターが約0.50(0.40~0.60)を示す光学異方性膜を提供できる。
また、本発明によれば、円偏光板、および、表示装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の光学異方性膜の構造を説明するための模式図である。
【
図2】非着色性の棒状化合物および非着色性の板状化合物の光学特性を説明するための模式図である。
【
図3】本発明の光学異方性膜の光学特性を説明するための模式図である。
【
図4】逆波長分散性を示す本発明の光学異方性膜の異常光線屈折率neと常光線屈折率noとの波長分散の比較を示す図である。
【
図5】光学異方性膜の法線方向から直線偏光を照射して紫外可視吸収スペクトルを得る際の方法を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
なお、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
また、遅相軸および進相軸は、特別な断りがなければ、波長550nmにおける定義である。つまり、特別な断りがない限り、例えば、遅相軸方向という場合、波長550nmにおける遅相軸の方向を意味する。
【0011】
本発明において、Re(λ)およびRth(λ)は各々、波長λにおける面内のレタデーションおよび厚み方向のレタデーションを表す。特に記載がないときは、波長λは、550nmとする。
本発明において、Re(λ)およびRth(λ)はAxoScan OPMF-1(オプトサイエンス社製)において、波長λで測定した値である。AxoScanにて平均屈折率((nx+ny+nz)/3)と膜厚(d(μm))を入力することにより、
遅相軸方向(°)
Re(λ)=R0(λ)
Rth(λ)=((nx+ny)/2-nz)×d
が算出される。
なお、R0(λ)は、AxoScan OPMF-1で算出される数値として表示されるものであるが、Re(λ)を意味している。
【0012】
本明細書において、屈折率nx、ny、および、nzは、アッベ屈折計(NAR-4T、アタゴ(株)製)を使用し、光源にナトリウムランプ(λ=589nm)を用いて測定する。また、波長依存性を測定する場合は、多波長アッベ屈折計DR-M2(アタゴ(株)製)にて、干渉フィルタとの組み合わせで測定できる。
また、ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、および、各種光学フィルムのカタログの値を使用できる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する:セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、および、ポリスチレン(1.59)。
【0013】
また、本明細書において、Nzファクターとは、Nz=(nx-nz)/(nx-ny)で与えられる値である。
光学異方性膜のNzファクターを算出する際のnxは、光学異方性膜の面内の遅相軸方向の屈折率であり、光学異方性膜のNzファクターを算出する際のnyは光学異方性膜の面内の進相軸方向の屈折率であり、光学異方性膜のNzファクターを算出する際のnzは光学異方性膜の厚み方向の屈折率である。
なお、Nzファクターを算出する際のnx、ny、および、nzは、波長550nmにおける各屈折率である。
【0014】
なお、本明細書では、「可視光線」とは、波長400~700nmの光を意図する。また、「紫外線」とは、波長10nm以上400nm未満の光を意図する。
また、本明細書において、角度の関係(例えば、「直交」、「平行」等)については、本発明が属する技術分野において許容される誤差の範囲を含むものとする。例えば、厳密な角度±5°の範囲内であることなどを意味し、厳密な角度との誤差は、±3°の範囲内であることが好ましい。
【0015】
本明細書において表記される2価の基(例えば、-COO-)の結合方向は特に制限されず、例えば、X-L-Y中のLが-COO-である場合、X側に結合している位置を*1、Y側に結合している位置を*2とすると、Lは*1-O-CO-*2であってもよく、*1-CO-O-*2であってもよい。
【0016】
本発明の光学異方性膜においては、後述する棒状化合物および板状化合物を所定の光学特性を示すように配置している点が挙げられる。
光学異方性膜の形成に用いられる組成物はリオトロピック液晶性を示す組成物であり、光学異方性膜を形成する際に所定の剪断方向に沿って配向状態が形成される。具体的には、
図1に示すように、組成物を支持体10上に塗布して、x軸方向に沿って剪断を与えた際には、支持体10上においてホストとして機能する棒状化合物12はその分子軸(棒状化合物12が延びる方向)がx軸方向に沿うように配置される。また、板状化合物14は、その内部に環構造を有しており、全体として板状の構造を有している。そのため、
図1に示すように、複数の板状化合物14は、板状の構造の面同士が対向するように(言い換えれば、化合物内部の環構造同士が対向するように)配置される。そして、板状化合物14同士が会合して形成されるカラム状の会合体は、会合体の延在方向がホストである棒状化合物12の分子軸に沿って配置される。その際、板状化合物14は、
図1に示すように、板状化合物14が支持体10に対して立つように配置される。つまり、板状化合物14の長軸方向が支持体10の法線方向(z軸方向)に沿うように配置される。
後述するように、光学異方性膜の面内において、棒状化合物の波長230~400nmの範囲における極大吸収波長での吸光度が最も高い方向を第1方向とし、板状化合物の波長230~400nmの範囲における極大吸収波長での吸光度が最も高い方向を第2方向とした際に、第1方向と第2方向とが直交している。この光学特性は、
図1に示す、棒状化合物12および板状化合物14の配置を示している。より具体的には、光学異方性膜の面内において、
図1に示すように、棒状化合物12の最も吸光度の高い方向はx軸方向であり、板状化合物14の最も吸光度の高い方向はy軸方向である。よって、上記光学特性を示すことは、
図1に示すような、棒状化合物12および板状化合物14の配置関係に由来するものである。
また、後述する光学異方性膜PのNzファクターが負である。この光学特性は、
図1に示す、棒状化合物12が立ち上がったような配置をすることにより達成される。よって、上記光学特性を示すことは、
図1に示すような、棒状化合物12および板状化合物14の配置関係に由来するものである。
【0017】
図1に示すように、棒状化合物12がその分子軸をx軸方向に沿って配置されている場合、棒状化合物12のx軸方向の屈折率nx、y軸方向の屈折率ny、および、z軸方向の屈折率nzは、
図2のように表され、nxが最も大きい。また、
図1に示すように、板状化合物14が配置されている場合、板状化合物14のx軸方向の屈折率nx、y軸方向の屈折率ny、および、z軸方向の屈折率nzは、
図2のように表され、nzが最も大きい。光学異方性膜のx軸方向の屈折率nx、y軸方向の屈折率ny、および、z軸方向の屈折率nzは、光学異方性膜に含まれる各成分のx軸方向の屈折率nx、y軸方向の屈折率ny、および、z軸方向の屈折率nzに依存するため、
図1に示すように棒状化合物12および板状化合物14が配置される場合、光学異方性膜のx軸方向の屈折率nx、y軸方向の屈折率ny、および、z軸方向の屈折率nzは、
図3に示すようになり、
図1中のx軸方向が遅相軸となり、光学異方性膜の屈折率nx、屈折率ny、および、屈折率nzは、nx>nz>nyの関係を満たす。つまり、所定のNzファクターの要件(0.40~0.60)を満たしやすくなる。
【0018】
さらに、本発明においては、棒状化合物の波長230~400nmの範囲における極大吸収波長が、板状化合物の波長230~400nmの範囲における極大吸収波長よりも小さい。つまり、棒状化合物がより短波長側に極大吸収波長を有し、板状化合物がより長波長側に極大吸収波長を有する。
図1に示すように、棒状化合物12はx軸方向に沿ってその吸収軸が配列し、板状化合物14はy軸方向に沿ってその吸収軸が配列する。そのため、
図4に示すように、nxのほうがnyに比べて先に屈折率が減少するため、矢印で示す領域においてはnxのほうがnyよりも緩やかに屈折率が減少するため、逆波長分散性が達成される。
【0019】
図1においては、説明の簡略化のために、2つの棒状化合物12、および、4つの板状化合物14のみを示すが、光学異方性膜中における棒状化合物および板状化合物の数は
図1の態様に限定されない。
【0020】
本発明の光学異方性膜(以下、単に「光学異方性膜」ともいう。)は、非着色性の棒状化合物、および、非着色性の板状化合物を含むリオトロピック液晶性組成物(以下、単に「組成物」ともいう。)を用いて形成された光学異方性膜である。
以下では、まず、組成物に含まれる材料について詳述し、その後、組成物を用いて形成された光学異方性膜について詳述する。
【0021】
(棒状化合物)
組成物は、非着色性の棒状化合物(以下、単に「棒状化合物」ともいう。)を含む。上述したように、棒状化合物は所定の方向に配向しやすい。
非着色性とは、可視光線領域において吸収を示さないことを意味する。より具体的には、紫外線領域(230~400nm)における最大吸収波長の吸光度が1.0となるような濃度で棒状化合物を溶解させた溶液の紫外可視吸収スペクトルを測定した時に、可視光線領域(波長400~700nm)の範囲における吸光度が、0.1以下であることを意味する。
【0022】
棒状化合物は、リオトロピック液晶性を示すことが好ましい。つまり、棒状化合物は、非着色性のリオトロピック液晶性棒状化合物であることが好ましい。リオトロピック液晶性とは、溶媒に溶解させた溶液状態で、温度や濃度を変化させることにより、等方相-液晶相の相転移を起こす性質をいう。
棒状化合物は、液晶性発現の制御がしやすい点から水溶性であることが好ましい。水溶性の棒状化合物とは、水に対して1質量%以上溶解する棒状化合物のことを表し、水に対して5質量%以上溶解する棒状化合物が好ましい。
なお、棒状化合物とは、環構造(芳香族環および非芳香族環など)が、単結合または2価の連結基を介して、1次元的に繋がった構造を有する化合物のことを指し、溶媒中において、長軸が互いに平行に揃うように配向する性質を持った化合物群のことを示す。
【0023】
棒状化合物は、波長300nm以下の範囲に極大吸収波長を有することが好ましい。つまり、棒状化合物は、波長300nm以下の範囲の極大吸収ピークを有することが好ましい。
なお、上記棒状化合物の極大吸収波長とは、棒状化合物の吸収スペクトル(測定範囲:波長230~400nmの範囲)において、その吸光度が極大値を取るときの波長を意味する。棒状化合物の吸収スペクトルの吸光度において、複数の極大値がある場合、測定範囲中の最も長波長側の波長を選択する。
【0024】
なかでも、本発明の効果が優れる点で、棒状化合物は230~300nmの範囲に極大吸収波長を有することが好ましく、250~290nmの範囲に極大吸収波長を有することがより好ましい。
上記極大吸収波長の測定方法は以下の通りである。
棒状化合物(5~50mg)を純水(1000ml)に溶解させ、分光光度計(MPC-3100(SHIMADZU製))を用いて、得られた溶液の吸収スペクトルを測定する。
【0025】
本発明において、棒状化合物の波長230~400nmの範囲における極大吸収波長は、後述する板状化合物の波長230~400nmの範囲における極大吸収波長よりも小さい。
上記棒状化合物の極大吸収波長と、上記板状化合物の極大吸収波長との差は特に制限されないが、50nm以上が好ましく、70nm以上がより好ましい。
なお、上述したように、棒状化合物の極大吸収波長とは、棒状化合物の吸収スペクトル(測定範囲:波長230~400nmの範囲)において、その吸光度が極大値を取るときの波長を意味する。棒状化合物の吸収スペクトルの吸光度において、複数の極大値がある場合、測定範囲中の最も長波長側の波長を選択する。
また、後述するように、板状化合物の極大吸収波長とは、板状化合物の吸収スペクトル(測定範囲:波長230~400nmの範囲)において、その吸光度が極大値を取るときの波長を意味する。板状化合物の吸収スペクトルの吸光度において、複数の極大値がある場合、測定範囲中の最も長波長側の波長を選択する。
【0026】
棒状化合物の式(R)で表される波長分散性DRは、本発明の効果がより優れる点で、1.05以上1.20未満であることが好ましい。波長分散性DRは、後述するように棒状化合物の光学異方性膜の光学特性であり、この光学特性は光学異方性膜中における棒状化合物が示す光学特性に対応している。
式(R) 波長分散性DR=Re(450)R/Re(550)R
Re(450)Rは、棒状化合物10質量部と、水90質量部とを混合して得られた混合液Rを用いて形成された光学異方性膜Rの波長450nmにおける面内レタデーションを表す。Re(550)Rは、光学異方性膜Rの波長550nmにおける面内レタデーションを表す。
上記のように、棒状化合物の式(R)で表される波長分散性DRは、棒状化合物を用いて形成された光学異方性膜Rの面内レタデーションの関係を表す。
光学異方性膜Rの作製方法としては、ガラス基板上に上記混合液Rを4番手のワイヤーバー(移動速度:100cm/s)で塗布した後、室温(20℃)にて自然乾燥して、光学異方性膜R(膜厚約240nm)を作製する。
なお、混合液Rに含まれる棒状化合物の種類は、組成物中の棒状化合物と同じものが使用される。
【0027】
なお、上記波長分散性DRと後述する波長分散性DPとは、異なる値であることが好ましい。
【0028】
光学異方性膜RのNzファクター(NzR)は、通常、1である。
光学異方性膜RのNzファクターとは、NzR=(nxR-nzR)/(nxR-nyR)で与えられる値である。
nxRは、光学異方性膜Rの面内の遅相軸方向の屈折率であり、nyRは光学異方性膜Rの面内の進相軸方向の屈折率であり、nzRは光学異方性膜Rの厚み方向の屈折率である。nxR、nyR、および、nzRは、波長550nmにおける各屈折率である。
【0029】
棒状化合物は、本発明の効果がより優れる点で、親水性基を有することが好ましい。
棒状化合物は親水性基を1つだけ有していてもよいし、複数有していてもよい。
親水性基としては、酸基またはその塩、オニウム塩基、ヒドロキシ基、スルホンアミド基(H2N-SO2-)、および、ポリオキシアルキレン基が挙げられる。なかでも、酸基またはその塩が好ましい。
酸基またはその塩は、後段で詳述する。
オニウム塩基とは、オニウム塩由来の基であり、例えば、アンモニウム塩基(*-N+(RZ)4A-)、ホスホニウム塩基(*-P+(RZ)4A-)、および、スルホニウム塩基(*-S+(RZ)2A-)が挙げられる。RZは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、および、ヘテロアリール基を表す。A-は、アニオン(例えば、ハロゲンイオン)を表す。*は、結合位置を表す。
ポリオキシアルキレン基としては、RZ-(O-LZ)n-*で表される基が挙げられる。RZは、上述した通りである。LZは、アルキレン基を表す。*は、結合位置を表す。
【0030】
酸基またはその塩としては、例えば、スルホ基(-SO3H)またはその塩(-SO3
-M+。M+は、カチオンを表す。)、および、カルボキシル基(-COOH)またはその塩(-COO-M+。M+は、カチオンを表す。)が挙げられ、本発明の効果がより優れる点で、スルホ基またはその塩が好ましい。
なお、上記塩とは、酸の水素イオンが金属などの他のカチオンに置き換わったものをいう。つまり、酸基の塩とは、-SO3H基などの酸基の水素イオンが他のカチオンに置き換わったものをいう。
酸基の塩中のカチオン(例えば、スルホ基の塩中およびカルボキシル基の塩中のカチオン)としては、例えば、Na+、K+、Li+、Rb+、Cs+、Ba2+、Ca2+、Mg2+、Sr2+、Pb2+、Zn2+、La3+、Ce3+、Y3+、Yb3+、Gd3+、または、Zr4+が挙げられる。なかでも、本発明の効果がより優れる点で、アルカリ金属イオンが好ましく、Na+、または、Li+がより好ましく、Li+がさらに好ましい。
【0031】
棒状化合物としては、本発明の効果がより優れる点で、式(X)で表される繰り返し単位を有する高分子が好ましい。
【0032】
【0033】
Rx1は、親水性基を含む置換基を有する2価の芳香族環基、親水性基を含む置換基を有する2価の非芳香族環基、または、式(X1)で表される基を表す。式(X1)中、*は結合位置を表す。
式(X1) *-Rx3-Lx3-Rx4-*
Rx3およびRx4は、それぞれ独立に、親水性基を含む置換基を有していてもよい2価の芳香族環基、または、親水性基を含む置換基を有していてもよい2価の非芳香族環基を表し、Rx3およびRx4の少なくとも一方が親水性基を含む置換基を有する2価の芳香族環基、または、親水性基を含む置換基を有する2価の非芳香族環基を表す。
Lx3は、単結合、-O-、-S-、アルキレン基、アルケニレン基、または、アルキニレン基を表す。
【0034】
Rx1で表される2価の芳香族環基および2価の非芳香族環基は、親水性基を含む置換基を有する。
親水性基を含む置換基に含まれる親水性基としては、上述した基が挙げられ、酸基またはその塩が好ましい。
親水性基を含む置換基としては、式(H)で表される基が好ましい。式(H)中、*は結合位置を表す。
式(H) RH-LH-*
RHは、親水性基を表す。親水性基の定義は、上述した通りである。
LHは、単結合または2価の連結基を表す。2価の連結基は特に制限されず、例えば、2価の炭化水素基(例えば、炭素数1~10のアルキレン基、炭素数1~10のアルケニレン基、および、炭素数1~10のアルキニレン基などの2価の脂肪族炭化水素基、並びに、アリーレン基などの2価の芳香族炭化水素基)、2価の複素環基、-O-、-S-、-NH-、-CO-、または、これらを組み合わせた基(例えば、-CO-O-、-O-2価の炭化水素基-、-(O-2価の炭化水素基)m-O-(mは、1以上の整数を表す)、および、-2価の炭化水素基-O-CO-など)が挙げられる。
2価の芳香族環基が有する親水性基を含む置換基の数は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる点で、1~3が好ましく、1がより好ましい。
2価の非芳香族環基が有する親水性基を含む置換基の数は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる点で、1~3が好ましく、1がより好ましい。
【0035】
Rx1で表される親水性基を含む置換基を有する2価の芳香族環基を構成する芳香族環は、単環構造であっても、多環構造であってもよい。
上記2価の芳香族環基を構成する芳香族環としては、例えば、芳香族炭化水素環、または、芳香族複素環が挙げられる。つまり、Rx1としては、親水性基を含む置換基を有する2価の芳香族炭化水素環基、および、親水性基を含む置換基を有する2価の芳香族複素環基が挙げられる。
芳香族炭化水素環としては、例えば、ベンゼン環、および、ナフタレン環が挙げられる。
親水性基を含む置換基を有する2価の芳香族炭化水素環基の2価の芳香族炭化水素環基部分のみの構造としては、例えば、以下の基が挙げられる。*は、結合位置を表す。
【0036】
【0037】
芳香族複素環としては、例えば、ピリジン環、チオフェン環、ピリミジン環、チアゾール環、フラン環、ピロール環、イミダゾール環、および、インドール環が挙げられる。
親水性基を含む置換基を有する2価の芳香族複素環基の2価の芳香族複素環基部分のみの構造としては、例えば、以下の基が挙げられる。*は、結合位置を表す。
【0038】
【0039】
Rx1で表される親水性基を含む置換基を有する2価の非芳香族環基を構成する非芳香族環は、単環構造であっても、多環構造であってもよい。
上記2価の非芳香族環基を構成する非芳香族環としては、例えば、脂肪族環、および、非芳香族複素環が挙げられ、本発明の効果がより優れる点で、脂肪族環が好ましく、シクロアルカンがより好ましく、シクロヘキサンがさらに好ましい。つまり、Rx1としては、親水性基を含む置換基を有する2価の脂肪族環基、および、親水性基を含む置換基を有する2価の非芳香族複素環基が挙げられ、親水性基を含む置換基を有する2価のシクロアルキレン基が好ましい。
【0040】
脂肪族環は、飽和脂肪族環であっても、不飽和脂肪族環であってもよい。
親水性基を含む置換基を有する2価の脂肪族環基の2価の脂肪族環基部分のみの構造としては、例えば、以下の基が挙げられる。*は、結合位置を表す。
【0041】
【0042】
非芳香族複素環に含まれるヘテロ原子は特に制限されず、例えば、酸素原子、窒素原子、および、硫黄原子が挙げられる。
非芳香族複素環に含まれるヘテロ原子の数は特に制限されず、例えば、1~3が挙げられる。
親水性基を含む置換基を有する2価の非芳香族複素環基の2価の非芳香族複素環基部分のみの構造としては、例えば、以下の基が挙げられる。*は、結合位置を表す。
【0043】
【0044】
Rx1で表される親水性基を含む置換基を有する2価の芳香族環基、および、親水性基を含む置換基を有する2価の非芳香族環基は、親水性基を含む置換基以外の置換基を有していてもよい。
置換基は特に制限されず、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、芳香族ヘテロ環オキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、芳香族ヘテロ環チオ基、ウレイド基、ハロゲン原子、シアノ基、ヒドラジノ基、ヘテロ環基(例えば、ヘテロアリール基)、シリル基、および、これらを組み合わせた基などが挙げられる。なお、上記置換基は、さらに置換基で置換されていてもよい。
【0045】
Rx3およびRx4は、それぞれ独立に、親水性基を含む置換基を有していてもよい2価の芳香族環基、または、親水性基を含む置換基を有していてもよい2価の非芳香族環基を表し、Rx3およびRx4の少なくとも一方が親水性基を含む置換基を有する2価の芳香族環基、または、親水性基を含む置換基を有する2価の非芳香族環基を表す。
Rx3およびRx4で表される2価の芳香族環基が有していてもよい親水性基を含む置換基の定義は、上述した通りである。
また、Rx3およびRx4で表される親水性基を含む置換基を有していてもよい2価の芳香族環基を構成する芳香族環の定義は、上述した、Rx1で表される親水性基を含む置換基を有する2価の芳香族環基を構成する芳香族環の定義と同じである。
Rx3およびRx4で表される2価の非芳香族環基が有していてもよい親水性基を含む置換基の定義は、上述した通りである。
また、Rx3およびRx4で表される親水性基を含む置換基を有していてもよい2価の非芳香族環基を構成する非芳香族環の定義は、上述した、Rx1で表される親水性基を含む置換基を有する2価の非芳香族環基を構成する非芳香族環の定義と同じである。
【0046】
Rx3およびRx4の少なくとも一方は、親水性基を含む置換基を有する2価の芳香族環基、または、親水性基を含む置換基を有する2価の非芳香族環基を表し、Rx3およびRx4の両方が、親水性基を含む置換基を有する2価の芳香族環基、または、親水性基を含む置換基を有する2価の非芳香族環基を表してもよい。
Rx3およびRx4で表される親水性基を含む置換基を有する2価の芳香族環基の定義は、上述したRx1で表される親水性基を含む置換基を有する2価の芳香族環基の定義と同義である。
また、Rx3およびRx4で表される親水性基を含む置換基を有する2価の非芳香族環基の定義は、上述したRx1で表される親水性基を含む置換基を有する2価の非芳香族環基の定義と同義である。
【0047】
Lx3は、単結合、-O-、-S-、アルキレン基、アルケニレン基、または、アルキニレン基を表す。
アルキレン基の炭素数は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる点で、1~3が好ましく、1がより好ましい。
アルケニレン基、および、アルキニレン基の炭素数は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる点で、2~5が好ましく、2~4がより好ましい。
【0048】
Rx2は、2価の非芳香族環基、または、式(X2)で表される基を表す。式(X2)中、*は結合位置を表す。
式(X2) *-Zx1-Zx2-*
Zx1およびZx2は、それぞれ独立に、2価の非芳香族環基を表す。*は、結合位置を表す。
【0049】
Rx2で表される2価の非芳香族環基を構成する非芳香族環は、単環構造であっても、多環構造であってもよい。
上記2価の非芳香族環基を構成する非芳香族環としては、例えば、脂肪族環、および、非芳香族複素環が挙げられ、本発明の効果がより優れる点で、脂肪族環が好ましく、シクロアルカンがより好ましく、シクロヘキサンがさらに好ましい。つまり、Rx2としては、2価の脂肪族環基、および、2価の非芳香族複素環基が挙げられ、2価のシクロアルキレン基が好ましい。
【0050】
脂肪族環は、飽和脂肪族環であっても、不飽和脂肪族環であってもよい。
2価の脂肪族環基としては、例えば、以下の基が挙げられる。*は、結合位置を表す。
【0051】
【0052】
非芳香族複素環に含まれるヘテロ原子は特に制限されず、例えば、酸素原子、窒素原子、および、硫黄原子が挙げられる。
非芳香族複素環に含まれるヘテロ原子の数は特に制限されず、例えば、1~3が挙げられる。
2価の非芳香族複素環基としては、例えば、以下の基が挙げられる。*は、結合位置を表す。
【0053】
【0054】
2価の非芳香族環基は、置換基を有していてもよい。置換基の種類は特に制限されず、例えば、Rx1で表される親水性基を含む置換基を有する2価の芳香族環基、および、親水性基を含む置換基を有する2価の非芳香族環基が有していてもよい親水性基を含む置換基以外の置換基で例示した基が挙げられる。
【0055】
Zx1およびZx2は、それぞれ独立に、2価の非芳香族環基を表す。
Zx1およびZx2で表される2価の非芳香族環基の定義は、上述したRx2で表される2価の非芳香族環基の定義と同義である。
【0056】
L1xおよびL2xは、それぞれ独立に、-CONH-、-COO-、-O-、または、-S-を表す。なかでも、本発明の効果がより優れる点で、-CONH-が好ましい。
【0057】
式(X)で表される繰り返し単位としては、式(X4)で表される繰り返し単位が好ましい。
【0058】
【0059】
式(X4)中の各基の定義は、上述した通りである。
【0060】
式(X)で表される繰り返し単位を有する高分子に含まれる式(X)で表される繰り返し単位の含有量は特に制限されないが、高分子中の全繰り返し単位に対して、60モル%以上が好ましく、80モル%以上がより好ましい。上限としては100モル%が挙げられる。
【0061】
式(X)で表される繰り返し単位を有する高分子の分子量は特に制限されないが、高分子中における式(X)で表される繰り返し単位の数は2以上が好ましく、10~100000が好ましく、100~10000がより好ましい。
また、式(X)で表される繰り返し単位を有する高分子の数平均分子量は特に制限されないが、5,000~50,000が好ましく、10,000~30,000がより好ましい。
また、式(X)で表される繰り返し単位を有する高分子の分子量分布は特に制限されないが、1.0~12.0が好ましく、1.0~7.0がより好ましい。
ここで、本発明における数平均分子量および分子量分布は、ゲル浸透クロマトグラフ(GPC)法により測定された値である。
・溶媒(溶離液):20mMリン酸(pH7.0)/アセトニトリル=4/1
・装置名:TOSOH HLC-8220GPC
・カラム:東ソー製G6000PWxL、4500PWxL、G2500pWwLを3本接続して使用
・カラム温度:40℃
・試料濃度:2mg/mL
・流速:1mL/min
・校正曲線:ポリスチレンスルホン酸(PSS)Mp=891、4.2k、10.2k、29.5k、78.4k、152k、258k、462kまでの8サンプルによる校正曲線を使用
【0062】
(板状化合物)
組成物は、非着色性の板状化合物(以下、単に「板状化合物」ともいう。)を含む。
板状化合物は、非着色性を示す。
非着色性とは、可視光線領域において吸収を示さないことを意味する。より具体的には、紫外線領域(230~400nm)における最大吸収波長の吸光度が1.0となるような濃度で板状化合物を溶解させた溶液の紫外可視吸収スペクトルを測定した時に、可視光線領域(波長400~700nm)の範囲における吸光度が、0.1以下であることを意味する。
なお、「板状化合物」とは、芳香族環(芳香族炭化水素環および芳香族複素環など)が、単結合または適切な連結基を介して、2次元的に広がった構造を有する化合物のことを指し、溶媒中において、化合物中の平面同士が会合することでカラム状の会合体を形成する性質を持った化合物群のことを示す。
【0063】
板状化合物は、リオトロピック液晶性を示すことが好ましい。つまり、板状化合物は、非着色性のリオトロピック液晶性化合物(非着色性のリオトロピック液晶性板状化合物)であることが好ましい。
板状化合物は、液晶性発現の制御がしやすい点から、水溶性であることが好ましい。水溶性の板状化合物とは、水に対して1質量%以上溶解する板状化合物のことを表し、水に対して5質量%以上溶解する板状化合物が好ましい。
【0064】
板状化合物は、波長300nm超の範囲に極大吸収波長を有することが好ましい。つまり、板状化合物は、波長300nm超の範囲の極大吸収ピークを有することが好ましい。
なお、上記板状化合物の極大吸収波長とは、板状化合物の吸収スペクトル(測定範囲:波長230~400nmの範囲)において、その吸光度が極大値を取るときの波長を意味する。板状化合物の吸収スペクトルの吸光度において、複数の極大値がある場合、測定範囲中の最も長波長側の波長を選択する。
【0065】
なかでも、本発明の効果が優れる点で、板状化合物は320~400nmの範囲に極大吸収波長を有することが好ましく、330~360nmの範囲に極大吸収波長を有することがより好ましい。
上記極大吸収波長の測定方法は以下の通りである。
特定化合物(0.01~0.05mmol)を純水(1000ml)に溶解させ、分光光度計(MPC-3100(SHIMADZU製))を用いて、得られた溶液の吸収スペクトルを測定する。
【0066】
板状化合物の式(N)で表されるNzPが負である。なかでも、本発明の効果がより優れる点で、NzPは、-0.45~-0.10が好ましく、-0.30~-0.15がより好ましく、-0.25~-0.19がさらに好ましい。
NzPおよび後述する波長分散性DPは、後述するように板状化合物の光学異方性膜の光学特性であり、この光学特性は光学異方性膜中における板状化合物が示す光学特性に対応している。
【0067】
式(N) NzP=(nxP-nzP)/(nxP-nyP)
nxPは、組成物が塩を含まない場合には、非着色性の板状化合物10質量部と、水90質量部とを混合して得られた混合液P1を、組成物が塩を含む場合には、非着色性の板状化合物10質量部と、水90質量部と、組成物中の板状化合物に対する塩の含有量比と同じ含有量比となる量の塩とを混合して得られた混合液P2を用いて形成された光学異方性膜Pの面内の遅相軸方向の屈折率を表す。nyPは、光学異方性膜Pの面内の進相軸方向の屈折率を表す。nzPは、光学異方性膜Pの厚み方向の屈折率を表す。nxP、nyP、および、nzPは、波長550nmにおける各屈折率である。
つまり、光学異方性膜Pは、組成物が塩を含まない場合には、板状化合物10質量部と、水90質量部とを混合して得られる混合液P1を用いて形成された光学異方性膜であり、組成物が塩を含む場合には、板状化合物10質量部と、水90質量部と、組成物中の板状化合物に対する塩の含有量比と同じ含有量比となる量の塩とを混合して得られる混合液P2を用いて形成された光学異方性膜である。
【0068】
光学異方性膜Pの作製方法としては、ガラス基板上に上記混合液P1または混合液P2を4番手のワイヤーバー(移動速度:100cm/s)で塗布した後、室温(20℃)にて自然乾燥して、光学異方性膜P(膜厚約240nm)を作製する。
【0069】
なお、上記のように、組成物に塩が含まれる場合、混合液P2にも所定量の塩が含まれる。具体的には、組成物中の板状化合物に対する塩の含有量比と、同じ含有量比となる量の塩を、混合液P2に加えて、光学異方性膜Pを作製する。
つまり、組成物が板状化合物および塩を含む場合、混合液P2は、板状化合物10質量部と、水90質量部と、組成物中の板状化合物に対する塩の含有量比(塩の質量含有量/板状化合物の質量含有量)と同じ含有量比となる所定量の塩(質量部)を含む。より具体的には、組成物中における板状化合物に対する塩の含有量比(塩の質量含有量/板状化合物の質量含有量)が1/10である場合、混合液P2は板状化合物10質量部、水90質量部、塩1質量部を含む。
なお、混合液P1および混合液P2に含まれる板状化合物の種類は、組成物中の板状化合物と同じものが使用される。
なお、混合液P2に含まれる塩の種類は、組成物中の塩と同じものが使用される。
【0070】
光学異方性膜Pの波長分散性DPは、本発明の効果がより優れる点で、1.20~1.30であることが好ましい。
式(P) 波長分散性DP=Re(450)P/Re(550)P
Re(450)Pは、光学異方性膜Pの波長450nmにおける面内レタデーションを表す。Re(550)Pは、光学異方性膜Pの波長550nmにおける面内レタデーションを表す。
上記のように、上記波長分散性DPは、板状化合物を用いて形成された光学異方性膜Pの面内レタデーションの関係を表す。
【0071】
また、板状化合物の式(N1)で表されるNzP1が負である。なかでも、本発明の効果がより優れる点で、NzP1は、-0.45~-0.10が好ましく、-0.30~-0.15がより好ましく、-0.25~-0.19がさらに好ましい。
NzP1は、後述するように板状化合物の光学異方性膜の光学特性であり、この光学特性は光学異方性膜中における板状化合物が示す光学特性に対応している。
【0072】
式(N1) NzP1=(nxP1-nzP1)/(nxP1-nyP1)
nxPは、組成物が塩を含まない場合には、非着色性の板状化合物と水とを混合して得られ、20℃でリオトロピック液晶性を示す混合液P3を、組成物が塩を含む場合には、非着色性の板状化合物と水と、組成物中の板状化合物に対する塩の含有量比と同じ含有量比となる量の塩とを混合して得られ、20℃でリオトロピック液晶性を示す混合液P4を用いて形成された光学異方性膜P1の面内の遅相軸方向の屈折率を表す。nyP1は、光学異方性膜P1の面内の進相軸方向の屈折率を表す。nzP1は、光学異方性膜P1の厚み方向の屈折率を表す。nxP1、nyP1、および、nzP1は、波長550nmにおける各屈折率である。
つまり、光学異方性膜P1は、組成物が塩を含まない場合には、板状化合物と水とを混合して得られ、20℃でリオトロピック液晶性を示す混合液P3を用いて形成された光学異方性膜であり、組成物が塩を含む場合には、板状化合物と水と、組成物中の板状化合物に対する塩の含有量比と同じ含有量比となる量の塩とを混合して得られ、20℃でリオトロピック液晶性を示す混合液P4を用いて形成された光学異方性膜である。
【0073】
光学異方性膜P1の作製方法としては、ガラス基板上に上記混合液P1または混合液P2を4番手のワイヤーバー(移動速度:100cm/s)で塗布した後、室温(20℃)にて自然乾燥して、光学異方性膜P1(膜厚約240nm)を作製する。
【0074】
なお、上記のように、組成物に塩が含まれる場合、混合液P4にも所定量の塩が含まれる。具体的には、組成物中の板状化合物に対する塩の含有量比と、同じ含有量比となる量の塩を、混合液P4に加えて、光学異方性膜P1を作製する。
つまり、組成物が板状化合物および塩を含む場合、混合液P4は、板状化合物と水と、組成物中の板状化合物に対する塩の含有量比(塩の質量含有量/板状化合物の質量含有量)と同じ含有量比となる所定量の塩(質量部)を含む。より具体的には、組成物中における板状化合物に対する塩の含有量比(塩の質量含有量/板状化合物の質量含有量)が1/10であり、混合液P4中の板状化合物の使用量が10質量部である場合、塩1質量部を含む。
なお、混合液P3および混合液P4に含まれる板状化合物の種類は、組成物中の板状化合物と同じものが使用される。
なお、混合液P2に含まれる塩の種類は、組成物中の塩と同じものが使用される。
【0075】
混合液P3においては、20℃でリオトロピック液晶性を示せば、板状化合物と水との混合比は特に制限されない。上記混合比を変えた場合であっても、上記手順によって得られる光学異方性膜P1の光学特性(nxP1、nyP1、および、nzP1)は変わらない。
また、混合液P4においても、20℃でリオトロピック液晶性を示せば、板状化合物と水との混合比は特に制限されない。上記混合比を変えた場合であっても、上記手順によって得られる光学異方性膜P1の光学特性(nxP1、nyP1、および、nzP1)は変わらない。
【0076】
板状化合物は、本発明の効果がより優れる点で、親水性基を有することが好ましい。
親水性基の定義は、上述した通りである。
板状化合物は親水性基を1つだけ有していてもよいし、複数有していてもよい。板状化合物が親水性基を複数有する場合、その数は、2~4が好ましく、2がより好ましい。
【0077】
板状化合物としては、本発明の効果がより優れる点で、式(Y)で表される化合物が好ましい。
式(Y) Ry2-Ly3-Ly1-Ry1-Ly2-Ly4-Ry3
Ry1は、2価の単環基、または、2価の縮合多環基を表す。
2価の単環基に含まれる環としては、例えば、単環式炭化水素環、および、単環式複素環が挙げられる。単環式炭化水素環は、単環式芳香族炭化水素環であっても、単環式非芳香族炭化水素環であってもよい。単環式複素環は、単環式芳香族複素環であっても、単環式非芳香族複素環であってもよい。
2価の単環基としては、本発明の効果がより優れる点で、2価の単環式芳香族炭化水素環基、または、2価の単環式芳香族複素環基が好ましい。
【0078】
2価の縮合多環基に含まれる環構造の数は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる点で、3~10が好ましく、3~6がより好ましく、3~4がさらに好ましい。
2価の縮合多環基に含まれる環としては、例えば、炭化水素環、および、複素環が挙げられる。炭化水素環は、芳香族炭化水素環であっても、非芳香族炭化水素環であってもよい。複素環は、芳香族複素環であっても、非芳香族複素環であってもよい。
2価の縮合多環基は、本発明の効果がより優れる点で、芳香族炭化水素環と複素環とから構成されることが好ましい。2価の縮合多環基は、共役系の連結基であることが好ましい。つまり、共役系の2価の縮合多環基であることが好ましい。
【0079】
2価の縮合多環基を構成する環としては、例えば、ジベンゾチオフェン-S,S-ジオキシド(式(Y2)で表される環)、ジナフト[2,3-b:2’,3’-d]フラン(式(Y3)で表される環)、12H-ベンゾ「b」フェノキサジン(式(Y4)で表される環)、ジベンゾ[b,i]オキサントレン(式(Y5)で表される環)、ベンゾ[b]ナフト[2’,3’:5,6]ジオキシノ[2,3-i]オキサントレン(式(Y6)で表される環)、アセナフト[1,2-b]ベンゾ[g]キノキサリン(式(Y7)で表される環)、9H-アセナフト[1,2-b]イミダゾ[4,5-g]キノキサリン(式(Y8)で表される環)、ジベンゾ[b,def]クリセリン-7,14-ジオン(式(Y9)で表される環)、および、アセトナフトキノキサリン(式(Y10)で表される環)が挙げられる。
つまり、2価の縮合多環基としては、式(Y2)~(Y10)で表される環から2つの水素原子を除いて形成される2価の基が挙げられる。
【0080】
【0081】
【0082】
2価の単環基および2価の縮合多環基は、置換基を有していてもよい。置換基の種類は特に制限されず、例えば、Rx1で表される親水性基を含む置換基を有する2価の芳香族環基、および、親水性基を含む置換基を有する2価の非芳香族環基が有する親水性基を含む置換基以外の置換基で例示した基が挙げられる。
【0083】
Ry2およびRy3は、それぞれ独立に、水素原子または親水性基を表し、Ry2およびRy3の少なくとも一方は親水性基を表す。Ry2およびRy3の両方が親水性基を表すことが好ましい。
Ry2およびRy3で表される親水性基の定義は、上述した通りである。
【0084】
Ly1およびLy2は、それぞれ独立に、単結合、2価の芳香族環基、または、式(Y1)で表される基を表す。ただし、Ry1が2価の単環基である場合、Ly1およびLy2は両方とも2価の芳香族環基、または、式(Y1)で表される基を表す。式(Y1)中、*は結合位置を表す。
式(Y1) *-Ry4-(Ry5)n-*
Ry4およびRy5は、それぞれ独立に、2価の芳香族環基を表す。
nは、1または2を表す。
【0085】
Ly1およびLy2で表される2価の芳香族環基を構成する芳香族環は、単環構造であっても、多環構造であってもよい。
上記2価の芳香族環基を構成する芳香族環としては、例えば、芳香族炭化水素環、または、芳香族複素環が挙げられる。つまり、Ly1およびLy2で表される2価の芳香族環基としては、2価の芳香族炭化水素環基、および、2価の芳香族複素環基が挙げられる。
芳香族炭化水素環としては、例えば、ベンゼン環、および、ナフタレン環が挙げられる。
2価の芳香族炭化水素基としては、例えば、以下の基が挙げられる。*は、結合位置を表す。
【0086】
【0087】
芳香族複素環としては、例えば、ピリジン環、チオフェン環、ピリミジン環、チアゾール環、フラン環、ピロール環、イミダゾール環、および、インドール環が挙げられる。
2価の芳香族複素環基としては、例えば、以下の基が挙げられる。*は、結合位置を表す。
【0088】
【0089】
Ry4およびRy5で表される2価の芳香族環基の定義も、Ly1およびLy2で表される2価の芳香族環基と同じである。
【0090】
Ly3およびLy4は、それぞれ独立に、単結合、-O-、-S-、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、または、これらを組み合わせた基を表す。
上記これらを組み合わせた基としては、例えば、-O-アルキレン基、および、-S-アルキレン基が挙げられる。
アルキレン基の炭素数は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる点で、1~3が好ましく、1がより好ましい。
アルケニレン基、および、アルキニレン基の炭素数は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる点で、2~5が好ましく、2~4がより好ましい。
【0091】
<その他の成分>
組成物は、棒状化合物および板状化合物以外の他の成分を含んでいてもよい。
組成物は、塩(カチオンとアニオンとからなる塩)を含んでいてもよい。上述したように、板状化合物が酸基またはその塩を有する場合、組成物中に塩が含まれていると、板状化合物中の平面同士がより会合しやすくなり、カラム状の会合体が形成されやすい。
【0092】
塩は特に制限されず、無機塩でも、有機塩でもよく、本発明の効果がより優れる点で、無機塩が好ましい。無機塩としては、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、および、遷移金属塩が挙げられ、本発明の効果がより優れる点で、アルカリ金属塩が好ましい。
アルカリ金属塩とは、カチオンがアルカリ金属イオンである塩であり、アルカリ金属イオンとしては、リチウムイオン、または、ナトリウムイオンが好ましく、リチウムイオンがより好ましい。つまり、塩としては、リチウム塩、または、ナトリウム塩が好ましく、リチウム塩がより好ましい。
アルカリ金属塩としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、および、水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物;炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、および、炭酸カリウムなどのアルカリ金属の炭酸塩;炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、および、炭酸水素カリウムなどのアルカリ金属の炭酸水素塩;が挙げられる。
上記以外にも、アルカリ金属塩としては、例えば、リン酸塩、および、塩化物であってもよい。
【0093】
上記塩のアニオンとしては、例えば、水酸化物イオン、炭酸イオン、塩化物イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、リン酸イオン、ホウ酸イオン、テトラフルオロ硼酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、過塩素酸イオン、トルエンスルホン酸イオン、シュウ酸イオン、ギ酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、ビス(フルオロメタンスルホニル)イミドイオン、ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミドイオン、および、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドイオンが挙げられる。
【0094】
なお、板状化合物が酸基の塩を有する場合、酸基の塩中のカチオンと、上記使用される塩中のカチオンとは同じ種類であることが好ましい。
【0095】
組成物は、溶媒を含んでいてもよい。溶媒としては、水、アルコールおよびジメチルホルムアミドなどの極性溶媒、並びに、ヘキサンなどの非極性溶媒が挙げられる。なかでも、極性溶媒が好ましく、水およびアルコールがより好ましい。
【0096】
組成物に含まれていてもよい添加剤としては、上記以外にも、重合性化合物、重合開始剤、波長分散制御剤、光学特性調整剤、界面活性剤、密着改良剤、滑り剤、配向制御剤、および、紫外線吸収剤が挙げられる。
【0097】
<組成物の組成>
組成物は、棒状化合物および板状化合物を少なくとも含む。
組成物は、リオトロピック液晶性組成物に該当する。
ここで、リオトロピック液晶性組成物とは、溶液状態で、温度や濃度を変化させることにより、等方相-液晶相の相転移を起こす性質を有する組成物である。つまり、組成物は、棒状化合物、板状化合物、および、溶媒など各種成分を含む溶液状態において、各化合物の濃度などを調整することにより、リオトロピック液晶性を示すことができる組成物である。なお、組成物が過剰の溶媒を含み、その状態ではリオトロピック液晶性を示していなくとも、組成物の塗布後の乾燥工程でリオトロピック液晶性を示す場合など濃度が変化した際にリオトロピック液晶性を示す場合には、その組成物は上記リオトロピック液晶性組成物に該当する。
【0098】
組成物中における棒状化合物および板状化合物の含有量は特に制限されないが、組成物中の全固形分に対して、60~100質量%が好ましく、80~99質量%がより好ましい。
全固形分とは、溶媒を除く、光学異方性膜を形成し得る成分を意味する。なお、上記成分の性状が液体状であっても、固形分として計算する。
組成物は、1種の棒状化合物のみを含んでいてもよいし、2種以上の棒状化合物を含んでいてもよい。
組成物は、1種の板状化合物のみを含んでいてもよいし、2種以上の板状化合物を含んでいてもよい。
【0099】
組成物中における、棒状化合物および板状化合物の合計質量に対する、棒状化合物の含有量は特に制限されないが、本発明の効果が優れる点で、50質量%超が好ましく、55質量%以上がより好ましい。上限は特に制限されないが、90質量%以下が好ましく、80質量%がより好ましい。
【0100】
組成物に塩が含まれる場合、塩の含有量は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる点で、式(W)で求められる比Wは、0.25~1.75が好ましく、0.50~1.50がより好ましく、0.75~1.15がさらに好ましい。
【0101】
【0102】
式(W)中、C1は、棒状化合物が有する酸基の塩に含まれるカチオンのモル量を表す。なお、棒状化合物が酸基の塩を有さない場合、上記C1は0とする。
C2は、板状化合物が有する酸基の塩に含まれるカチオンのモル量を表す。なお、板状化合物が酸基の塩を有さない場合、上記C2は0とする。
C3は、塩に含まれるカチオンのモル量を表す。
A1は、棒状化合物が有する酸基またはその塩の合計モル量を表す。棒状化合物が酸基、および、酸基の塩の両方を含む場合、上記合計モル量は酸基のモル量および酸基の塩のモル量の合計を表す。棒状化合物が酸基および酸基の塩のいずれか一方のみを有する場合、含まれていない一方のモル量は0とする。
A2は、板状化合物が有する酸基またはその塩の合計モル量を表す。板状化合物が酸基、および、酸基の塩の両方を含む場合、上記合計モル量は酸基のモル量および酸基の塩のモル量の合計を表す。板状化合物が酸基および酸基の塩のいずれか一方のみを有する場合、含まれていない一方のモル量は0とする。
【0103】
例えば、SO3Li基を有する棒状化合物と、SO3Li基を有する板状化合物と、LiOHとを含む組成物において、棒状化合物が有するSO3Li基のモル量が5mmolであり、板状化合物が有するSO3Li基のモル量が8mmolであり、LiOHのモル量が8mmolである場合、棒状化合物が有する酸基の塩に含まれるカチオンのモル量は5mmol、板状化合物が有する酸基の塩に含まれるカチオンのモル量は8mmol、LiOHに含まれるカチオンのモル量は8mmolと計算され、比Wは{(5+8+8)-(5+8)}/8=1と計算される。
仮に、上記棒状化合物が、SO3H基を有する棒状化合物であり、棒状化合物が有するSO3H基のモル量が5mmolである場合、比Wは{(8+8)-(5+8)}/8=0.375と計算される。
【0104】
上記比Wは、板状化合物が有する酸基またはその塩に対して、組成物中の過剰な塩由来のカチオンの量を表す。つまり、比Wは、板状化合物が有する酸基またはその塩に対する、組成物中の棒状化合物および板状化合物が有する酸基と塩を形成していない過剰のカチオン量の比を表す。板状化合物が有する酸基またはその塩に対して、組成物が所定量のカチオンを含む場合、板状化合物が光学異方性膜中において所定の構造をとりやすくなり、所望の光学異方性膜が得られやすい。
【0105】
組成物に塩が含まれる場合、組成物中における板状化合物の含有量に対する塩の含有量の質量比は特に制限されないが、0.010~0.300が好ましく、0.010~0.200がより好ましく、0.025~0.150がさらに好ましい。
【0106】
組成物は、上述したように、溶媒を含んでいてもよい。
組成物の固形分濃度は特に制限されないが、本発明の効果が優れる点で、組成物全質量に対して、1~50質量%が好ましく、3~30質量%がより好ましい。
上述したように、組成物は、リオトロピック液晶性組成物である。よって、組成物は、所定量の溶媒を含み、リオトロピック液晶性を示している態様(リオトロピック液晶性が発現している状態)であってもよいし、溶媒を過剰に含んでおり、その状態ではリオトロピック液晶性を示さない(等方相を示す)組成物であっても、光学異方性膜を形成する際に溶媒が揮発して、塗膜の形成途中でリオトロピック液晶性を示す組成物であってもよい。
なお、後述するように、支持体上に配向膜を配置しておけば、組成物の塗布後の乾燥過程において、リオトロピック液晶性を発現することで、化合物の配向が誘起され、光学異方性膜を形成することが可能となる。
【0107】
<光学異方性膜の製造方法>
本発明の光学異方性膜の製造方法は、上述した組成物を用いていれば特に制限されない。例えば、組成物を塗布して、塗膜中の棒状化合物および板状化合物を配向させて、光学異方性膜を形成する方法が好ましい。
以下、上記方法の手順について詳述する。
【0108】
まず、組成物を塗布する。通常、組成物は支持体上に塗布される場合が多い。
使用される支持体は、組成物を塗布するための基材として機能を有する部材である。支持体は、いわゆる仮支持体であってもよい。
支持体(仮支持体)としては、プラスチック基板またはガラス基板が挙げられる。プラスチック基板を構成する材料としては、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、(メタ)アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、セルロース樹脂、シリコーン樹脂、および、ポリビニルアルコールが挙げられる。
支持体の厚みは、5~1000μm程度であればよく、10~250μmが好ましく、15~90μmがより好ましい。
【0109】
なお、必要に応じて、支持体上には、配向膜を配置してもよい。
配向膜は、一般的には、ポリマーを主成分とする。配向膜用ポリマーとしては、多数の文献に記載があり、多数の市販品を入手できる。配向膜用ポリマーとしては、ポリビニルアルコール、ポリイミド、または、その誘導体が好ましい。
なお、配向膜には、公知のラビング処理が施されることが好ましい。
また、配向膜としては、光配向膜を用いてもよい。
配向膜の厚みは、0.01~10μmが好ましく、0.01~1μmがより好ましい。
【0110】
塗布方法としては公知の方法が挙げられ、例えば、カーテンコーティング法、押出コーティング法、ロールコーティング法、ディップコーティング法、スピンコーティング法、印刷コーティング法、スプレーコーティング法、および、スライドコーティング法が挙げられる。
また、剪断を与える塗布方法を採用すると、化合物の配向と塗布との2つの処理を同時に行うことができる。
また、連続塗布によって、塗布と同時に、棒状化合物および板状化合物を連続配向させてもよい。連続塗布としては、カーテンコーティング法、押出コーティング法、ロールコーティング法、および、スライドコーティング法が挙げられる。具体的な塗布手段としては、ダイコーター、ブレードコーター、または、バーコーターを用いることが好ましい。
【0111】
塗膜中における棒状化合物および板状化合物を配向させる手段としては、上述したように、剪断を与える方法が挙げられる。
【0112】
支持体上に形成された塗膜に対しては、必要に応じて、加熱処理を施してもよい。
塗膜を加熱する場合の条件は特に制限されないが、加熱温度としては50~250℃が好ましく、加熱時間としては10秒間~10分間が好ましい。
また、塗膜を加熱した後、必要に応じて、塗膜を冷却してもよい。冷却温度としては20~200℃が好ましく、20~150℃がより好ましい。
【0113】
塗膜中における棒状化合物および板状化合物を配向させる別の手段としては、上述したように、配向膜を用いる方法が挙げられる。
配向膜に予め所定の方向への配向処理を行うことで、配向方向の制御が可能となる。特に、ロール状支持体を用いて連続塗布する際に、搬送方向に対して斜め方向に配向させる場合には、配向膜を用いる方法が好ましい。
配向膜を用いる方法において、使用される組成物中の溶媒の濃度は特に制限されず、組成物がリオトロピック液晶性を示すような溶媒の濃度であってもよいし、それ以下の濃度であってもよい。上述したように、組成物はリオトロピック液晶性組成物であるため、組成物中の溶媒の濃度が高い場合(組成物自体が等方相を示している場合)であっても、組成物を塗布後の乾燥過程において、リオトロピック液晶性を発現することで、配向膜上で化合物の配向が誘起され、光学異方性膜を形成することが可能となる。
【0114】
なお、光学異方性膜を形成した後、必要に応じて、棒状化合物および板状化合物の配向状態を固定する処理を実施してもよい。
棒状化合物および板状化合物の配向状態を固定する方法は特に制限されず、上記のように塗膜を加熱した後、冷却する方法が挙げられる。
また、棒状化合物および板状化合物の少なくとも一方が酸基またはその塩を有する場合、棒状化合物および板状化合物の配向状態を固定する方法としては、多価金属イオンを含む溶液と形成された塗膜とを接触させる方法が挙げられる。多価金属イオンを含む溶液と形成された塗膜とを接触させると、塗膜中に多価金属イオンが供給される。塗膜中に供給された多価金属イオンは、棒状化合物および/または板状化合物が有する酸基またはその塩同士の架橋点となり、塗膜中に架橋構造が形成され、棒状化合物および板状化合物の配向状態が固定化される。
使用される多価金属イオンの種類は特に制限されず、棒状化合物および板状化合物の配向状態が固定されやすい点で、アルカリ土類金属イオンが好ましく、カルシウムイオンがより好ましい。
【0115】
<光学異方性膜の特性>
光学異方性膜の法線方向から直線偏光を照射して紫外可視吸収スペクトルを得る測定を、直線偏光の方位を変えて行った際に、棒状化合物の波長230~400nmの範囲における極大吸収波長での吸光度が最も高い方向を第1方向とし、板状化合物の波長230~400nmの範囲における極大吸収波長での吸光度が最も高い方向を第2方向とした際に、第1方向と第2方向とが直交している。
上記測定の方法としては、例えば、
図5に示すように、直線状の実線で示される直線偏光を光学異方性膜20に照射して紫外可視吸収スペクトルを得た後、直線偏光の方位を変えて(反時計回りに直線偏光の方位を変えて)、直線状の破線で示される直線偏光を光学異方性膜20に照射して紫外可視吸収スペクトルを得る測定を、直線偏光の方位を変えながら実施する方法が挙げられる。
上記特性は、上述したように、
図1に示すような棒状化合物および板状化合物の配置を示す。
図1において、棒状化合物の波長230~400nmの範囲における極大吸収波長での吸光度が最も高い方向はx軸方向に該当し、板状化合物の波長230~400nmの範囲における極大吸収波長での吸光度が最も高い方向はy軸方向に該当する。
なお、上記直交とは、上述したように、90±5°の範囲内(85~95°)であることを意味し、90±3°の範囲内(87~93°)であることが好ましい。
上記第1方向と第2方向の測定方法は特に制限されず、公知の方法が採用される。
上述したように、第1方向および第2方向は、光学異方性膜の法線方向から直線偏光を照射して紫外可視吸収スペクトルを得る測定を、直線偏光の方位(直線偏光の偏光軸の方位)を変えて行うことにより得られる。上記直線偏光の方位を変える方法としては、光学異方性膜を回転させる方法が挙げられる。
【0116】
光学異方性膜のNzファクターは、式(1)の関係を満たす。
式(1) 0.40≦Nzファクター≦0.60
なかでも、0.42~0.58が好ましく、0.45~0.54がより好ましい。
【0117】
光学異方性膜は、逆波長分散性を示す。なお、逆波長分散性とは、可視光線領域の少なくとも一部の波長領域において、面内のレタデーション(Re)値を測定した際に、測定波長が大きくなるにつれてRe値が同等または高くなるものをいう。本発明において、光学異方性膜が逆波長分散性を示すとは、以下の式(2)および式(3)の関係を満たしていればよい。
式(2) Re(450)/Re(550)<1.00
Re(450)は波長450nmにおける光学異方性膜の面内レタデーションを表し、Re(550)は波長550nmにおける光学異方性膜の面内レタデーションを表す。
なかでも、Re(450)/Re(550)は、0.87以下が好ましく、0.85以下がより好ましい。また、上記Re(450)/Re(550)は、0.60以上が好ましく、0.72以上が好ましく、0.82以上がより好ましい。
式(3) Re(650)/Re(550)>1.00
Re(650)は波長650nmにおける光学異方性膜の面内レタデーションを表す。
なかでも、Re(650)/Re(550)は、1.02以上が好ましく、1.05以上がより好ましい。上限は特に制限されないが、1.25以下が好ましく、1.20以下がより好ましい。
【0118】
光学異方性膜のRe(550)は特に制限されないが、λ/4板として有用である点で、110~160nmが好ましく、120~150nmがより好ましい。
光学異方性膜のRth(550)は特に制限されないが、-50~40nmが好ましく、-40~30nmがより好ましい。
【0119】
光学異方性膜中における棒状化合物の配向度は0.60以上が好ましく、光学異方性膜中における板状化合物の配向度は0.60以上が好ましい。
棒状化合物の配向度および棒状化合物の配向度の上限は特に制限されないが、1.00が挙げられる。
棒状化合物の配向度とは、光学異方性膜中における棒状化合物の配向の程度を表し、後述する式で示すように、1.0が上限値である。棒状化合物の配向度が1.0に近づくほど、棒状化合物の分子軸(棒状化合物が延びる方向)が一方向に沿って配列する。
板状化合物の配向度とは、光学異方性膜中における板状化合物の配向の程度を表し、後述する式で示すように、1.0が上限値である。板状化合物の配向度が1.0に近づくほど、板状化合物の長軸が一方向に沿って配列する。
【0120】
棒状化合物の配向度および板状化合物の配向度は、それぞれの化合物由来の吸収が最も大きい方向(以下、単に「第1方向」ともいう。)における吸光度Axと、第1方向と直交する方向(以下、単に「第2方向」ともいう。)における吸光度Ayとを用いて、以下式より計算できる。
配向度=[(Ax/Ay)-1]/[(Ax/Ay)+2]
例えば、板状化合物の配向度を算出する場合、光学異方性膜の面内方向において、板状化合物由来の吸収が最も大きい方向における吸光度AxPと、上記方向に直交する方向における吸光度AyPとを算出して、上記式にそれぞれの値を代入して、板状化合物の配向度を算出する。
上記各化合物由来の吸収としては、各化合物の波長230~400nmの範囲の極大吸収波長のうち最も長波長側の極大吸収波長における吸収を用いることが好ましい。例えば、板状化合物の波長230~400nmの範囲の極大吸収波長のうち最も長波長側の吸収が345nmである場合、345nmにおける吸収が最も大きい方向が第1方向であり、第2方向はその第1方向に直交する方向に該当する。
また、後述するように、棒状化合物の極大吸収波長は、板状化合物の極大吸収波長よりも小さいことが好ましい。このような場合、光学異方性膜における棒状化合物の極大吸収波長における吸光度を測定する場合、得られた吸光度には板状化合物由来の吸収が一部含まれることになる。棒状化合物の極大吸収波長における吸光度を測定するためには、測定により得られた吸光度から、板状化合物由来の吸収による吸光度を引くことにより、求めることができる。板状化合物由来の吸収による吸光度は、板状化合物のその波長における吸光係数と、光学異方性膜中の濃度とから計算することができる。
なお、上記第1方向と第2方向の測定方法は特に制限されず、公知の方法が採用される。
例えば、光学異方性膜の法線方向から直線偏光を照射して紫外可視吸収スペクトルを得る測定を、直線偏光の方位(直線偏光の偏光軸の方位)を変えて行う方法が挙げられる。
【0121】
また、本発明の効果がより優れる点で、光学異方性膜の好適態様としては、表1に示す態様1~7が挙げられる。
態様1~7においては、各光学異方性膜中における、棒状化合物のNzR、棒状化合物のDR、棒状化合物の配向度、板状化合物のNzP、板状化合物のDP、板状化合物の配向度、並びに、板状化合物および棒状化合物の合計量に対する板状化合物の含有割合(質量%)をそれぞれ表す。例えば、態様1に示す光学異方性膜においては、棒状化合物のNzRが0.98~1.02、棒状化合物のDPが1.08~1.12(好ましくは、1.09~1.11)、棒状化合物の配向度が0.65~0.72、板状化合物のNzPが-0.25~-0.15(好ましくは、-0.25~-0.19)、板状化合物のDPが1.20~1.24、板状化合物の配向度が0.65~0.72、板状化合物および棒状化合物の合計量に対する板状化合物の含有割合が41~44質量%である。
【0122】
【0123】
光学異方性膜の厚みは特に制限されず、薄型化の点から、10μm以下が好ましく、0.5~8.0μmがより好ましく、0.5~6.0μmがさらに好ましい。
なお、本明細書において、光学異方性膜の厚みとは、光学異方性膜の平均厚みを意図する。上記平均厚みは、光学異方性膜の任意の5箇所以上の厚みを測定して、それらを算術平均して求める。
【0124】
<用途>
上述した光学異方性膜は、種々の用途に適用でき、例えば、光学異方性膜の面内レタデーションを調整して、いわゆるλ/4板またはλ/2板として用いることもできる。
なお、λ/4板とは、ある特定の波長の直線偏光を円偏光に(または、円偏光を直線偏光に)変換する機能を有する板である。より具体的には、所定の波長λnmにおける面内レタデーションReがλ/4(または、この奇数倍)を示す板である。
λ/4板の波長550nmでの面内レタデーション(Re(550))は、理想値(137.5nm)を中心として、25nm程度の誤差があってもよく、例えば、110~160nmであることが好ましく、120~150nmであることがより好ましい。
また、λ/2板とは、特定の波長λnmにおける面内レタデーションRe(λ)がRe(λ)≒λ/2を満たす光学異方性膜のことをいう。この式は、可視光線領域のいずれかの波長(例えば、550nm)において達成されていればよい。なかでも、波長550nmにおける面内レタデーションRe(550)が、以下の関係を満たすことが好ましい。
210nm≦Re(550)≦300nm
【0125】
<光学フィルム>
光学異方性膜は、他の層と組み合わせて、光学フィルムとして用いてもよい。つまり、本発明の光学フィルムは、上述した光学異方性膜と、他の層とを含む。
他の層としては、上述した配向膜、および、支持体が挙げられる。
なお、光学フィルム中における光学異方性膜の配置位置は特に制限されないが、例えば、支持体、配向膜、および、光学異方性膜をこの順で有する態様が挙げられる。
【0126】
<偏光板>
本発明の光学異方性膜は、偏光板に好適に適用できる。
つまり、本発明の偏光板(好ましくは、円偏光板)は、光学異方性膜または光学フィルムと、偏光子とを含む。なお、円偏光板とは、無偏光の光を円偏光に変換する光学素子である。
偏光子は、光を特定の直線偏光に変換する機能を有する部材(直線偏光子)であればよく、主に、吸収型偏光子を利用できる。
吸収型偏光子としては、ヨウ素系偏光子、二色性染料を利用した染料系偏光子、およびポリエン系偏光子が挙げられる。ヨウ素系偏光子および染料系偏光子には、塗布型偏光子と延伸型偏光子とがあり、いずれも適用できるが、ポリビニルアルコールにヨウ素または二色性染料を吸着させ、延伸して作製される偏光子が好ましい。
光学異方性膜の遅相軸と偏光子の吸収軸との関係は特に制限されないが、光学異方性膜がλ/4板であり、光学フィルムが円偏光フィルムとして用いられる場合は、光学異方性膜の面内の遅相軸と偏光子の吸収軸とのなす角は、45±10°の範囲が好ましい。つまり、光学異方性膜の面内の遅相軸と偏光子の吸収軸とのなす角は、35~55°の範囲が好ましい。
【0127】
<表示装置>
本発明の円偏光板は、表示装置に好適に適用できる。つまり、本発明の円偏光板は、いわゆる反射防止膜として好適に使用できる。
本発明の表示装置は、表示素子と、上述した円偏光板とを有する。円偏光板は視認側に配置され、円偏光板中、偏光子が視認側に配置される。
表示装置は特に制限されず、有機EL表示素子、および、液晶表示素子が挙げられ、有機EL表示素子が好ましい。
【実施例】
【0128】
以下に、実施例および比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、および、処理手順は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更できる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0129】
<合成>
公知の方法により、以下の板状化合物I-1~I-5、および、棒状化合物II-1~II-4を合成した。なお、板状化合物I-4は、2種の化合物の混合物に該当し、左側の化合物と右側の化合物との混合比(左側の化合物の質量/右側の化合物の質量)は1/1であった。また、棒状化合物II-1~II-4はそれぞれ高分子(nは2以上)であり、棒状化合物II-1の数平均分子量は24,000で、分子量分布は6.8であり、棒状化合物II-2の数平均分子量は30,000で、分子量分布は5.7であり、棒状化合物II-3の数平均分子量は25,000で、分子量分布は5.1であり、棒状化合物II-4の数平均分子量は16,000で、分子量分布は5.6であった。
なお、板状化合物I-1~I-5、および、棒状化合物II-1~II-4は、いずれもリオトロピック液晶性を示した。
また、板状化合物I-1~I-5、および、棒状化合物II-1~II-4は、いずれも上述した非着色性の要件を満たしていた。より具体的には、紫外線領域(230~400nm)における最大吸収波長の吸光度が1.0となるような濃度で上記化合物をそれぞれ溶解させた溶液の紫外可視吸収スペクトルを測定した時に、可視光線領域(波長400~700nm)の範囲における吸光度が、0.1以下であった。
【0130】
【0131】
【0132】
【0133】
【0134】
板状化合物I-1は、波長230~400nmの範囲において、345nmに極大吸収波長を有していた。
板状化合物I-2は、波長230~400nmの範囲において、350nmに極大吸収波長を有していた。
板状化合物I-3は、波長230~400nmの範囲において、345nmに極大吸収波長を有していた。
板状化合物I-4は、波長230~400nmの範囲において、320nmに極大吸収波長を有していた。
板状化合物I-5は、波長230~400nmの範囲において、345nmに極大吸収波長を有していた。
棒状化合物II-1は、波長230~400nmの範囲において、260nmに極大吸収波長を有していた。
棒状化合物II-2は、波長230~400nmの範囲において、260nmに極大吸収波長を有していた。
棒状化合物II-3は、波長230~400nmの範囲において、290nmに極大吸収波長を有していた。
棒状化合物II-4は、波長230~400nmの範囲において、260nmに極大吸収波長を有していた。
【0135】
<実施例1>
下記組成の光学異方性膜形成用組成物1を調製した。光学異方性膜形成用組成物1は、リオトロピック液晶性を示す組成物であった。
─────────────────────────────────
光学異方性膜形成用組成物1
─────────────────────────────────
板状化合物I-1 4.4質量部
棒状化合物II-1 5.6質量部
水酸化リチウム 0.26質量部
水 90質量部
─────────────────────────────────
【0136】
基材としてガラス基板上に、上記で調製した光学異方性膜形成用組成物1を、ワイヤーバー(移動速度:100cm/s)で塗布した後、室温(20℃)にて自然乾燥した。次に、得られた塗膜を1mol/Lの塩化カルシウム水溶液に5秒間浸漬した後、イオン交換水で洗浄し、送風乾燥して配向状態を固定化することにより、光学異方性膜1を作製した。
【0137】
<実施例2~10、比較例1~2>
棒状化合物または板状化合物を下記表2に示す化合物に変更し、使用する水酸化リチウムの量を下記表2に示すように調整した以外は、実施例1と同様の方法で、光学異方性膜2~10、C1~C2を作製した。
ただし、実施例10においては、水酸化リチウムの代わりに、水酸化セシウムを使用した。
【0138】
なお、上記実施例1~10、および、比較例1~2で製造した光学異方性膜のRe(550)はいずれも142nmであった。
また、実施例1での上述した比Wは0.67、実施例2での上述した比Wは0.48、実施例3での上述した比Wは0.61、実施例4での上述した比Wは0.80、実施例5での上述した比Wは0.38、実施例6での上述した比Wは0.96、実施例7での上述した比Wは0.48、実施例8での上述した比Wは1.34、実施例9での上述した比Wは0.32であった。
【0139】
<評価>
得られた光学異方性膜1~10、および、C1~C2に関して、各波長における面内レタデーションおよびNzファクターを測定した。
結果を表2にまとめて示す。
【0140】
表2中、「DR」欄は、上述した棒状化合物の式(R)で表される波長分散性DRを示す。波長分散性DRの測定方法は、上述した通りである。例えば、実施例1においては、棒状化合物II-1(10質量部)および水(90質量部)を混合して得られる混合液Rを用いて上述した方法により光学異方性膜Rを作製して、波長分散性DRを得た。
表2中、「λR」欄は、棒状化合物の極大吸収波長を表す。
表2中、「DP」欄は、上述した板状化合物の式(P)で表される波長分散性DPを示す。
表2中、「NzP」欄は、上述した板状化合物の式(N)で表されるNzPを示す。
表2中、「NzP1」欄は、上述した板状化合物の式(N1)で表されるNzP1を示す。
表2中、「λP」欄は、板状化合物の極大吸収波長を表す。
波長分散性DPおよびNzPの測定方法は、上述した通りである。例えば、実施例1においては、板状化合物I-1(10質量部)、水(90質量部)、および、水酸化リチウム(0.59質量部)を混合して得られる混合液P2を用いて上述した方法により光学異方性膜Pを作製して、波長分散性DPおよびNzPを得た。
NzP1の測定方法は、上述した通りである。例えば、実施例1においては、板状化合物I-1(10質量部)、水(90質量部)、および、水酸化リチウム(0.59質量部)を混合して得られる混合液P4において、20℃にてリオトロピック液晶性を示したため、この混合液P4を用いて上述した方法により光学異方性膜P1を作製して、NzP1を得た。なお、板状化合物I-1(5質量部)、水酸化リチウム(0.30質量部)および水(95質量部)を混合して得られる混合液P4-1、板状化合物I-1(15質量部)、水酸化リチウム(0.89質量部)および水(85質量部)を混合して得られる混合液P4-2、並びに、板状化合物I-1(20質量部)、水酸化リチウム(1.18質量部)および水(80質量部)を混合して得られる混合液P4-3のいずれにおいても、20℃にてリオトロピック液晶性を示した。さらに、これらの混合液P4-1~P4-3をそれぞれ用いて上述した方法により光学異方性膜P1を作製して、NzP1を測定したところ、いずれの値も混合液P4を用いて得られた値(-0.21)と同じであった。他の実施例においても、上記と同様に、板状化合物の濃度を変更しても、混合液がリオトロピック液晶性を示せば、得られるNzP1の値は同じであった。
表2中、「第1方向と第2方向との関係」欄は、上述した第1方向と第2とが直交している場合を「A」、直交していない場合を「B」とした。
【0141】
【0142】
表2に示すように、本発明の光学異方性膜は所定の効果を示した。
実施例1~10の比較より、NzP(またはNzP1)が-0.30~-0.15の範囲である場合(より好ましくは、-0.25~-0.19の範囲である場合)、逆波長分散性により優れ、かつ、Nzファクターが0.50により近い値を示した。
なお、逆波長分散性により優れるとは、Re(450)/Re(550)の値が0.82により近いこと、または、Re(650)/Re(550)が1.18により近いことを意味する。
【符号の説明】
【0143】
10 支持体
12 棒状化合物
14 特定化合物
20 光学異方性膜