(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-06
(45)【発行日】2023-12-14
(54)【発明の名称】治療用血漿タンパク質投与計画を提供するための方法、およびマシンアクセス可能デバイス
(51)【国際特許分類】
G16H 20/17 20180101AFI20231207BHJP
A61K 35/16 20150101ALI20231207BHJP
A61P 7/04 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
G16H20/17
A61K35/16
A61P7/04
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022065039
(22)【出願日】2022-04-11
(62)【分割の表示】P 2020205945の分割
【原出願日】2014-06-20
【審査請求日】2022-05-02
(32)【優先日】2013-06-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2013-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2013-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000002934
【氏名又は名称】武田薬品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】レウ‐バゼリ, アレクサンドラ
(72)【発明者】
【氏名】スポッツ, ゲラルド ディッキー
(72)【発明者】
【氏名】オー, ミョンシン
【審査官】吉田 誠
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-124125(JP,A)
【文献】特表2013-512678(JP,A)
【文献】特表2008-516303(JP,A)
【文献】特表2009-517186(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00 - 80/00
A61K 35/16
A61P 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療用血漿タンパク質投与計画を提供するための方法であって、
プロセッサ
が、
薬物動態パラメータとサンプリングされた患者
群の
身体的属性との間の関係を決定する薬物動態プロファイルのベイズモデル
に患者の身体的属性を適用して、該患者の推定薬物動態プロファイルを決定するステップ
であって、該ベイズモデルが、前記治療用血漿タンパク質が代謝される時間に対応する第1のコンパートメントと前記患者内で前記治療用血漿タンパク質のある量を実現するための用量に対応する第2のコンパートメントとを有する2コンパートメントモデルを含む、該ステップと、
前記プロセッサ
が、前記推定薬物動態プロファイルに
、ユーザによって選択された第1の指定の投与間隔を適用して、前記患者の治療用血漿タンパク質レベルが所定の目標トラフ未満にならないように、(i)第1の投与量と(ii)前記患者中のある時間期間にわたる第1の治療用血漿タンパク質レベルとを含む第1の指定の投与間隔向けの第1の投与計画を決定するステップと、
前記プロセッサが、クライアントデバイス
に前記第1の投与計画を表示するステップと、
前記プロセッサ
が、前記患者の以前の処置
を前記患者の前記薬物動態プロファイルに含めることで、前記患者の前記推定薬物動態プロファイルを調整するステップと、
を含
む、
方法。
【請求項2】
前記プロセッサが、前記目標トラフより高い第1の指定の濃度レベルの選択を受信するステップと、
前記プロセッサが、前記目標トラフより高く且つ前記第1の指定の濃度レベルより低い第2の指定の濃度レベルの選択を受信するステップと、
前記プロセッサが、前記患者中の前記第1の治療用血漿タンパク質レベルが前記第1の指定の濃度レベルより高い第1の持続時間を決定するステップと、
前記プロセッサが、前記患者中の前記第1の治療用血漿タンパク質レベルが前記第2の指定の濃度レベルより低い第2の持続時間を決定するステップと、
前記プロセッサが、前記第1の投与計画の前記表示と連携して、前記第1の持続時間および前記第2の持続時間のグラフ表現を表示するステップと、
を更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
プロセッサ
が、最小濃度閾値、投与間隔、又は治療用血漿タンパク質の投与量のうちの少なくとも1つの変更を受信したことに応答して、
該変更された最小濃度閾値、該変更された投与間隔、又は該変更された治療用血漿タンパク質の投与量を前記推定薬物動態プロファイルに適用して、(i)第2の投与量と(ii)前記患者中の前記時間期間にわたる第2の治療用血漿タンパク質レベルとを含む第2の指定の投与間隔向けの第2の投与計画を決定するステッ
プを更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記患者中の前記第1の治療用血漿タンパク質レベルが、前記最小濃度閾値、前記第1の投与量、又は前記第1の指定の投与間隔のうちの少なくとも1つに基づき、
前記患者中の前記第2の治療用血漿タンパク質レベルが、前記最小濃度閾値、前記第2の投与量、又は前記第2の指定の投与間隔のうちの少なくとも1つに基づく、
請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記プロセッサが、前記第1の投与計画が前記第2の投与計画と
共に表示されるように前記第1の投与計画及び前記第2の投与計画をクライアントデバイス上に表示するステップをさらに含む請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記ユーザによって選択された前記第1の指定の投与間隔が48時間であり
、前記第2の指定の投与間隔が72時間である、
請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記患者中の前記第1の治療用血漿タンパク質レベルが、初期の最小治療用血漿タンパク質レベル、前記第1の投与量、又は前記第1の指定の投与間隔のうちの少なくとも1つに基づき、
前記患者中の前記第2の治療用血漿タンパク質レベルが、前記初期の最小治療用血漿タンパク質レベル、前記第1の投与量、又は前記第1の指定の投与間隔のうちの少なくとも1つの変更に基づく、
請求項3に記載の方法。
【請求項8】
前記
患者の身体的属性が、前記患者の年齢または体重のうちの少なくとも1つに基づく、
請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記目標トラフが20%未満である、
請求項1に記載の方法。
【請求項10】
記憶された命令を備える装置であって、
前記命令が、実行されたときに、請求項1~
9のいずれか一項に記載の方法によって投与計画を決定する処理を前記装置に実行させる、
装置。
【発明の詳細な説明】
【背景】
【0001】
[0001]凝固因子VIIIは、外傷や出血に応答して活性化される血液凝固タンパク質である。凝固因子VIIIのレベルが比較的低い人は、外傷及び/又は原因のない自然発生的な出血に由来して内部又は外部に発現する長引く出血を起こしやすい。皮膚出血が重篤ではない場合でも、関節、筋肉及び臓器の内出血によって恒久的な障害、外観損傷を生じる可能性、又は死亡に至る可能性さえある。
【0002】
[0002]血友病Aの患者は、凝固因子VIIIを低レベルとさせるような遺伝的な欠陥を有する。患者の凝固因子VIIIの量は、正常なレベルを基準とした百分率で表現される。凝固因子VIIIが5~40%である患者は軽度の血友病Aにあるとされる一方、凝固因子VIIIが1~5%である患者は中程度の血友病Aにあるとされている。凝固因子VIIIが1%未満である患者は重度の血友病Aにあるとされている。
【0003】
[0003]血友病Aの患者(又は、また別の低レベルの凝固因子VIIIを有する患者)に対する処置には、これらの患者に凝固因子濃縮剤(例えば、治療用血漿タンパク質)の定期的な注入を施すことが含まれる。凝固因子濃縮剤は、患者の天然の凝固因子VIIIに対する代替物又は補充物の役割をする。このような治療用血漿タンパク質の一例は、Baxter HealthcareのADVATE薬である。幾つかの事例において、患者は、制御不能な内出血を有することに応答して治療用血漿タンパク質を受ける。或いは、患者は、将来の出血のおそれを低減するために治療用血漿タンパク質の予防的処置投与計画の処方を受けることがある。この投与計画では、患者は処置を受けるために週3回以上ヘルスケア施術者を訪問すること及び/又は治療用血漿タンパク質を自己注入することが必要となる場合が多い。
【0004】
[0004]処置投与計画の目的は、治療用血漿タンパク質によって提供されるような凝固因子VIIIが、1パーセント(1%)など所定の閾値未満にならないように患者訪問をスケジュール設定することである。しかし、患者に必要な治療用血漿タンパク質の量はその患者の投与量及び代謝に依存する。さらに、集団内における治療用血漿タンパク質代謝の変動は大きいため、多くの患者が意図した目標トラフを維持するような適当な投与を受けていないことがあり得る。したがって、選択した時間間隔にわたって確実に適正な用量が注入されるように個々の患者の治療用血漿タンパク質代謝又は薬物動態プロファイルを決定することが必要である。
【0005】
[0005]処置投与計画を処方するために、目下のところヘルスケア施術者は、治療用血漿タンパク質の投与用量が処置時間にわたってどのように患者によって代謝されるかを判定し当該患者の薬物動態プロファイルを特定している。患者薬物動態プロファイルの決定には、治療用血漿タンパク質用量の最初の投与から様々な時点において、患者中の治療用血漿タンパク質のレベル又は濃度を決定する(例えば、治療用血漿タンパク質が時間経過に従ってどのように代謝されるのかを決定する)ための5回以上の採血が必要である。これらの複数回の採血には、患者がヘルスケア施設に数日間留まること、又はヘルスケア施設を複数回訪れることが必要である。これらの複数回の訪問及び/又は複数回の採血は、患者及びヘルスケア施設にストレスを掛けることになる。
【0006】
[0006]患者が所定の閾値未満に陥る可能性を回避するために、多くのヘルスケア施術者は、患者が治療用血漿タンパク質注入を要するのが毎日、2日ごと、3日ごと、又はこれ以上であるような処置投与計画を設計している。毎日又は2日ごとの投与計画は、患者がかなり頻繁に注入を必要とすることによって患者にストレスがかかる。毎日及び2日ごとの投与計画は、ある種の患者では不必要のこともあり得る。しかし、毎日及び2日ごと投与計画によれば、ヘルスケア施術者が患者中の治療用血漿タンパク質レベルを指定のピーク治療用血漿タンパク質レベルより上で高く維持することがより容易及びより実用的となる。
【発明の概要】
【0007】
[0007]患者に関する治療用血漿タンパク質投与計画を決定する例示のシステム、方法及び装置を開示する。この例示のシステム、方法及び装置は、以前にサンプリングした患者集団の薬物動態モデル及び/又は個々の患者情報から導出された患者の薬物動態プロファイルを用いて投与計画を決定する。患者の薬物動態プロファイルは、当該患者に対する以前の治療用血漿タンパク質処置及び/又は年齢、体重、他の血漿タンパク質レベル、身体活動レベル、性別、疾病状態、その他などの患者固有の特性に基づいて改良又は修正することができる。このシステム、方法及び装置には、ユーザが投与量、投与間隔及び患者中の治療用血漿タンパク質に関する受け容れ可能な最小濃度を調整して投与計画がどのように変化するかを参照できるようにする患者の薬物動態プロファイルのグラフィックインターフェースを設けている。このような構成によれば、ヘルスケア施術者は、凝固因子VIIIのレベルが低いことに起因して患者が出血するリスクを低下させる(又は、防止する)ような最適な投与計画を決定することが可能となる。
【0008】
[0008]例示の一実施形態では、方法は、サンプリングされた患者の薬物動態プロファイルのベイズモデルを用いて、患者の体重又は年齢の少なくとも一方に基づいた患者の推定薬物動態プロファイルを決定するステップを含む。本例示の方法は、推定薬物動態プロファイルに少なくとも基づいて(i)第1の投与量と(ii)ある時間期間にわたる患者中の第1の治療用血漿タンパク質レベルとを含んだ第1の指定の投与間隔向けの第1の投与計画を決定するステップと、推定薬物動態プロファイルに少なくとも基づいて(i)第2の投与量と(ii)当該時間期間にわたる患者中の第2の治療用血漿タンパク質レベルとを含んだ第2の指定の投与間隔向けの第2の投与計画を決定するステップと、をさらに含む。本方法は、第1の投与計画が第2の投与計画と連携して表示されるようにして第1の投与計画及び第2の投与計画をクライアントデバイス上に表示するステップをさらに含む。
【0009】
[0009]例示の別の実施形態では、装置は、サンプリングされた患者の薬物動態プロファイルに関するベイズモデルを生成するように構成されたモデル作成器を含み、ここで、ベイズモデルは、患者の年齢又は体重のうちの少なくとも一方に基づいて(i)治療用血漿タンパク質クリアランスと(ii)治療用血漿タンパク質の分布ボリューム関係とを含む。本例示の装置は、患者の概算薬物動態プロファイルを、ベイズモデルと患者の年齢又は患者の体重のうちの少なくとも一方とに基づいて決定すると共に、この患者の概算薬物動態プロファイルに基づいて投与量及びある時間期間にわたる治療用血漿タンパク質レベルを含んだ治療用血漿タンパク質投与計画を決定するように構成された薬物動態サーバをさらに含む。この薬物動態サーバは、患者へのその投与量の付与に関する投与間隔の受信に応答して治療用血漿タンパク質投与計画を修正すると共に、この修正済み治療用血漿タンパク質投与計画をクライアントデバイスに送信するようにさらに構成されている。
【0010】
[0010]さらに別の例示の実施形態では、マシンアクセス可能デバイスは、実行したときにマシンに対して少なくとも、患者の体重又は年齢のうちの少なくとも一方を入力するようにユーザにプロンプトを出すステップと、サンプリングされた患者の薬物動態プロファイルに関する、入力された患者の体重又は年齢のうちの少なくとも一方に基づいて(i)治療用血漿タンパク質クリアランスと(ii)治療用血漿タンパク質の分布ボリューム関係とを含んだベイズモデルを使用して、ベイズモデルと入力された患者の体重又は年齢のうちの少なくとも一方とに基づいて患者の概算薬物動態プロファイルを決定するステップと、を実行させるように構成された記憶した命令を有する。この例示の命令は、マシンに対してさらに、患者の概算薬物動態プロファイルに基づいてその患者向けの投与量及び投与間隔を含んだ投与計画を決定させている。この例示の命令は、マシンに対してさらに、患者へのその投与量の付与に関する別の投与間隔の受信に応答して投与計画を修正すると共に、投与計画とこの投与計画に基づき時変動する治療用血漿タンパク質レベルとをユーザに表示することを可能にさせている。
【0011】
[0011]本明細書に記載した主題の態様は単独でも有用であり、また本明細書に記載した1つ又は複数の他の態様と連携しても有用となり得る。上述の記載を限定することなく、本開示の第1の態様では、治療用血漿タンパク質投与計画を実現するための方法は、プロセッサを介して、サンプリングされた患者の薬物動態プロファイルのベイズモデルを用いて患者の体重又は年齢の少なくとも一方に基づいた当該患者の推定薬物動態プロファイルを決定するステップと、プロセッサを介して、この薬物動態プロファイルに少なくとも基づいて(i)第1の投与量と(ii)ある時間期間にわたる患者中の第1の治療用血漿タンパク質レベルとを含んだ第1の指定の投与間隔向けの第1の投与計画を決定するステップと、プロセッサを介して、薬物動態プロファイルに少なくとも基づいて(i)第2の投与量と(ii)当該時間期間にわたる患者中の第2の治療用血漿タンパク質レベルとを含んだ第2の指定の投与間隔向けの第2の投与計画を決定するステップと、第1の投与計画が第2の投与計画と連携して表示されるようにして第1の投与計画及び第2の投与計画をクライアントデバイス上に表示するステップと、を含む。
【0012】
[0012]第1の態様と連携して使用し得る本開示の第2の態様によれば、本方法は、プロセッサを介して、患者の以前の処置に基づいて患者の推定薬物動態プロファイルを調整するステップをさらに含む。
【0013】
[0013]上記の態様のうちの任意の1つ又は複数と連携して使用し得る本開示の第3の態様によれば、第2の指定の投与間隔が第1の指定の投与間隔より長い。
【0014】
[0014]上記の態様のうちの任意の1つ又は複数と連携して使用し得る本開示の第4の態様によれば、第1の指定の投与間隔が48時間であり且つ第2の指定の投与間隔が72時間である。
【0015】
[0015]上記の態様のうちの任意の1つ又は複数と連携して使用し得る本開示の第5の態様によれば、最小閾値レベルが20%未満である。
【0016】
[0016]上記の態様のうちの任意の1つ又は複数と連携して使用し得る本開示の第6の態様によれば、第1の投与量が、当該時間期間にわたる患者中の第1の治療用血漿タンパク質レベルが最小閾値レベル未満にならないように決定される。
【0017】
[0017]上記の態様のうちの任意の1つ又は複数と連携して使用し得る本開示の第7の態様によれば、患者中の第1の治療用血漿タンパク質レベルが最小閾値レベル、第1の投与量又は第1の指定の投与間隔のうちの少なくとも1つに基づいており、且つ患者中の第2の治療用血漿タンパク質レベルが最小閾値レベル、第2の投与量又は第2の指定の投与間隔のうちの少なくとも1つに基づいている。
【0018】
[0018]上記の態様のうちの任意の1つ又は複数と連携して使用し得る本開示の第8の態様によれば、ベイズモデルが、治療用血漿タンパク質が代謝される時間に対応する第1のコンパートメントと、患者内で治療用血漿タンパク質のある量を実現するための用量に対応する第2のコンパートメントと、を有する2コンパートメントモデルを含む。
【0019】
[0019]上記の態様のうちの任意の1つ又は複数と連携して使用し得る本開示の第9の態様によれば、治療用血漿タンパク質投与計画をクライアントデバイスに提供するための装置は、サンプリングされた患者の薬物動態プロファイルに関するベイズモデルを生成するように構成されたモデル作成器であって、該ベイズモデルが、患者の年齢又は体重のうちの少なくとも一方に基づいた(i)治療用血漿タンパク質クリアランスと(ii)治療用血漿タンパク質の分布ボリューム関係とを含む、該モデル作成器と、薬物動態サーバであって、患者の概算薬物動態プロファイルを、ベイズモデルと患者の年齢又は患者の体重のうちの少なくとも一方とに基づいて決定すること、患者の概算薬物動態プロファイルに基づいて投与量及びある時間期間にわたる治療用血漿タンパク質レベルを含んだ治療用血漿タンパク質投与計画を決定すること、患者へのその投与量の付与に関する投与間隔の受信に応答して治療用血漿タンパク質投与計画を修正すること、及びこの修正済み治療用血漿タンパク質投与計画をクライアントデバイスに送信すること、を実行するように構成された薬物動態サーバと、を含む。
【0020】
[0020]上記の態様のうちの任意の1つ又は複数と連携して使用し得る本開示の第10の態様によれば、投与間隔が2日型投与間隔であり、且つ薬物動態サーバが2日型投与間隔に代わって3日型投与間隔を受信したことに応答して治療用血漿タンパク質投与計画をさらに修正するように構成されている。
【0021】
[0021]上記の態様のうちの任意の1つ又は複数と連携して使用し得る本開示の第11の態様によれば、薬物動態サーバがクライアントデバイスに、治療用血漿タンパク質投与計画及び修正済み治療用血漿タンパク質投与計画を決定するように構成された薬剤投与ツールを送信するように構成されている。
【0022】
[0022]上記の態様のうちの任意の1つ又は複数と連携して使用し得る本開示の第12の態様によれば、薬物動態サーバが患者の日常活動に基づいて治療用血漿タンパク質投与計画を修正するようにさらに構成されている。
【0023】
[0023]上記の態様のうちの任意の1つ又は複数と連携して使用し得る本開示の第13の態様によれば、薬物動態サーバが修正済み治療用血漿タンパク質投与計画を、治療用血漿タンパク質を患者に投与するための注入ポンプに送信するようにさらに構成されている。
【0024】
[0024]上記の態様のうちの任意の1つ又は複数と連携して使用し得る本開示の第14の態様によれば、概算薬物動態プロファイルが患者の第1の治療用血漿タンパク質処置向けに決定された第1の概算薬物動態プロファイルであり、且つ薬物動態サーバが修正済み治療用血漿タンパク質投与計画に基づいて、患者の第2の治療用血漿タンパク質処置向けの患者の第2の概算薬物動態プロファイルを決定するようにさらに構成されている。
【0025】
[0025]上記の態様のうちの任意の1つ又は複数と連携して使用し得る本開示の第15の態様によれば、治療用血漿タンパク質に関する分布ボリューム関係が、凝固因子VIII及び修正型凝固因子VIIIの少なくとも一方に関する関係である。
【0026】
[0026]上記の態様のうちの任意の1つ又は複数と連携して使用し得る本開示の第16の態様によれば、マシンアクセス可能デバイスが、実行したときにマシンに対して少なくとも、患者の体重又は年齢のうちの少なくとも一方を入力するようにユーザにプロンプトを出すステップと、サンプリングされた患者の薬物動態プロファイルに関する、入力された患者の体重又は年齢のうちの少なくとも一方に基づいて(i)治療用血漿タンパク質クリアランスと(ii)治療用血漿タンパク質の分布ボリューム関係とを含んだベイズモデルを用いて、ベイズモデルと入力された患者の体重又は年齢のうちの少なくとも一方とに基づいて患者の概算薬物動態プロファイルを決定するステップと、患者の概算薬物動態プロファイルに基づいて患者向けの投与量及び投与間隔を含んだ投与計画を決定するステップと、患者へのその投与量の付与に関する別の投与間隔の受信に応答して投与計画を修正するステップと、投与計画とこの投与計画に基づき時変動する治療用血漿タンパク質レベルとをユーザに表示することを可能にするステップと、を実行させるように構成された記憶した命令を有する。
【0027】
[0027]上記の態様のうちの任意の1つ又は複数と連携して使用し得る本開示の第17の態様によれば、マシンアクセス可能デバイスが、実行したときにマシンに対して、2日型投与間隔向けの第1の投与計画を決定するステップと、3日型投与間隔向けの第2の投与計画を決定するステップと、及び第1の投与計画の第2の投与計画と連携した表示を可能にするステップと、を実行させるように構成された記憶した命令をさらに備える。
【0028】
[0028]上記の態様のうちの任意の1つ又は複数と連携して使用し得る本開示の第18の態様によれば、マシンアクセス可能デバイスが、実行したときにマシンに対して、患者に提供される治療用血漿タンパク質の用量に関する少なくとも1つの指示を含んだ、患者内の治療用血漿タンパク質の時変動する量に関するグラフ表現を表示させるように構成された記憶した命令をさらに備える。
【0029】
[0029]上記の態様のうちの任意の1つ又は複数と連携して使用し得る本開示の第19の態様によれば、マシンアクセス可能デバイスが、実行したときにマシンに対して、(i)最小濃度閾値、(ii)投与間隔、又は(iii)治療用血漿タンパク質の投与量のうちの少なくとも1つの変更をユーザに可能にするグラフ特徴を表示させるように構成された記憶した命令をさらに備える。
【0030】
[0030]上記の態様のうちの任意の1つ又は複数と連携して使用し得る本開示の第20の態様によれば、マシンアクセス可能デバイスが、実行したときにマシンに対して、項目(i)、(ii)又は(iii)のうちの任意の1つの変更の受信に応答して投与計画を修正させるように構成された記憶した命令をさらに備える。
【0031】
[0031]上記の態様のうちの任意の1つ又は複数と連携して使用し得る本開示の第21の態様によれば、マシンアクセス可能デバイスが、実行したときにマシンに対して、項目(i)、(ii)又は(iii)のうちの任意の1つの変更に基づいて、患者内の治療用血漿タンパク質の量の変化に関する時間経過に従ったグラフ表現を表示させるように構成された記憶した命令をさらに備える。
【0032】
[0032]上記の態様のうちの任意の1つ又は複数と連携して使用し得る本開示の第22の態様によれば、マシンアクセス可能デバイスが、実行したときにマシンに対して、最小濃度閾値を受信させると共に、治療用血漿タンパク質がこの最小濃度閾値未満にある時間量を表示させるように構成された記憶した命令をさらに備える。
【0033】
[0033]上記の態様のうちの任意の1つ又は複数と連携して使用し得る本開示の第23の態様によれば、マシンアクセス可能デバイスは、実行したときにマシンに対して、患者に治療用血漿タンパク質が投与された時点からある時間後における患者内の治療用血漿タンパク質の濃度を含んだ患者計測血液検査データを受信させると共に、この患者計測血液検査データに基づいて概算薬物動態プロファイルを修正させるように構成された記憶した命令をさらに備える。
【0034】
[0034]本開示の第24の態様によれば、
図1~31に関連して図示し説明した構造及び機能のいずれかが、
図1~31のうちの他のもののいずれかに関連して図示し説明した構造及び機能のいずれか及び上記の態様のうちの任意の1つ又は複数と組み合わせて使用されることがある。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】本開示の例示の一実施形態による、例示の薬物動態学的な薬剤投与環境の図である。
【
図2】本開示の例示の一実施形態による、血友病Aの幾人かの患者に関する患者サンプルデータの図である。
【
図3】本開示の例示の一実施形態による、ある具体的な患者に関する投与推奨値及び推定薬物動態プロファイルを決定するために
図1の薬剤投与ツールによって設けられた例示のユーザインターフェースを含む図である。
【
図4】本開示の例示の一実施形態による、ある具体的な患者に関する投与推奨値及び推定薬物動態プロファイルを決定するために
図1の薬剤投与ツールによって設けられた例示のユーザインターフェースを含む図である。
【
図5】本開示の例示の一実施形態による、ある具体的な患者に関する投与推奨値及び推定薬物動態プロファイルを決定するために
図1の薬剤投与ツールによって設けられた例示のユーザインターフェースを含む図である。
【
図6】本開示の例示の一実施形態による、ある具体的な患者に関する投与推奨値及び推定薬物動態プロファイルを決定するために
図1の薬剤投与ツールによって設けられた例示のユーザインターフェースを含む図である。
【
図7】本開示の例示の一実施形態による、ある具体的な患者に関する投与推奨値及び推定薬物動態プロファイルを決定するために
図1の薬剤投与ツールによって設けられた例示のユーザインターフェースを含む図である。
【
図8】本開示の例示の一実施形態による、ある具体的な患者に関する投与推奨値及び推定薬物動態プロファイルを決定するために
図1の薬剤投与ツールによって設けられた例示のユーザインターフェースを含む図である。
【
図9】本開示の例示の一実施形態による、ある具体的な患者に関する投与推奨値及び推定薬物動態プロファイルを決定するために
図1の薬剤投与ツールによって設けられた例示のユーザインターフェースを含む図である。
【
図10】本開示の例示の一実施形態による、ある具体的な患者に関する投与推奨値及び推定薬物動態プロファイルを決定するために
図1の薬剤投与ツールによって設けられた例示のユーザインターフェースを含む図である。
【
図11】本開示の例示の一実施形態による、ある具体的な患者に関する投与推奨値及び推定薬物動態プロファイルを決定するために
図1の薬剤投与ツールによって設けられた例示のユーザインターフェースを含む図である。
【
図12】本開示の例示の一実施形態による、ある具体的な患者に関する投与推奨値及び推定薬物動態プロファイルを決定するために
図1の薬剤投与ツールによって設けられた例示のユーザインターフェースを含む図である。
【
図13】本開示の例示の一実施形態による、ある具体的な患者に関する投与推奨値及び推定薬物動態プロファイルを決定するために
図1の薬剤投与ツールによって設けられた例示のユーザインターフェースを含む図である。
【
図14】本開示の例示の一実施形態による、マーケティングツール実施形態における
図1の薬剤投与ツールによって設けられたユーザインターフェースを含む図である。
【
図15】本開示の例示の一実施形態による、マーケティングツール実施形態における
図1の薬剤投与ツールによって設けられたユーザインターフェースを含む図である。
【
図16】本開示の例示の一実施形態による、マーケティングツール実施形態における
図1の薬剤投与ツールによって設けられたユーザインターフェースを含む図である。
【
図17】本開示の例示の一実施形態による、マーケティングツール実施形態における
図1の薬剤投与ツールによって設けられたユーザインターフェースを含む図である。
【
図18】本開示の例示の一実施形態による、マーケティングツール実施形態における
図1の薬剤投与ツールによって設けられたユーザインターフェースを含む図である。
【
図19】本開示の例示の一実施形態による、投与計画を決定するための例示の手順を表した流れ図を含む図である。
【
図20】本開示の例示の一実施形態による、投与計画を決定するための例示の手順を表した流れ図を含む図である。
【
図21】ある具体的な患者に関する薬物動態プロファイルが活動レベルに基づいて調整されている例示の一実施形態を含んだ図である。
【
図22】ある具体的な患者に関する薬物動態プロファイルが活動レベルに基づいて調整されている例示の一実施形態を含んだ図である。
【
図23】本開示の例示の一実施形態による、投与される治療用血漿タンパク質の濃度を異なる患者に関する出血リスクと相関させたグラフである。
【
図24】本開示の例示の一実施形態による、投与される治療用血漿タンパク質の濃度を異なる患者に関する出血リスクと相関させた表である。
【
図25】本開示の例示の一実施形態による、投与される治療用血漿タンパク質の濃度を異なる患者に関する出血リスクと相関させたグラフである。
【
図26】本開示の例示の一実施形態による、投与される治療用血漿タンパク質の濃度を異なる患者に関する出血リスクと相関させた表である。
【
図27】本開示の例示の一実施形態による、投与される治療用血漿タンパク質の濃度を異なる患者に関する出血リスクと相関させたグラフである。
【
図28】本開示の例示の一実施形態による、投与される治療用血漿タンパク質の濃度を異なる患者に関する出血リスクと相関させた表である。
【
図29】本開示の例示の一実施形態による、投与される治療用血漿タンパク質の濃度を異なる患者に関する出血リスクと相関させた表である。
【
図30】本開示の例示の一実施形態による、投与される治療用血漿タンパク質の濃度を異なる患者に関する出血リスクと相関させたグラフである。
【
図31】本開示の例示の一実施形態による、
図1の薬物動態学的な薬剤投与環境の例示のモデル作成器、サーバ及び/又はクライアントデバイスに関する詳細ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
[0043]本開示は一般に、薬剤投与計画を実現するため、また特にサンプリングされた患者の薬物動態プロファイルのモデルに基づいて薬物動態学的な薬剤投与計画を実現するための方法、システム及び装置に関する。本明細書に記載した薬物動態学的な薬剤投与計画は、個々の患者に適合させ得る治療用血漿タンパク質の費用対効果の高い使用を実現する。このために、本明細書に記載した例示の薬物動態学的な薬剤投与計画は、ヘルスケア施術者に対して血液検査(だけ)に基づいて、患者固有の薬物動態プロファイルの決定を要することなく比較的迅速且つ正確な患者投与推奨値を可能にするツールを提供する。本開示ではさらに、患者内の滞留平均時間を例えば水溶性タンパク質又はFC融合技術の使用を通じて天然のFVIIIの滞留平均時間を超えて延長するように修正された凝固因子FVIII製品、及び3日を超える投与スキーム/間隔が企図される。
【0037】
[0044]現在は、ヘルスケア施術者は、天然起源の凝固因子VIIIレベルが低い患者に対する処置投与計画を、患者固有の薬物動態プロファイルを決定し患者が治療用血漿タンパク質を時間経過に従ってどのように代謝するかを特定することによって策定している。患者の薬物動態プロファイルを決定するためにヘルスケア施術者は、患者が治療用血漿タンパク質の投与を受ける前に初期基準線採血を実行する。この基準線採血は、身体中の天然起源の凝固因子VIIIの量を決定するために使用される。ヘルスケア施術者は次いで、治療用血漿タンパク質を投与すると共に、48時間処置後期間にわたって3回以上の採血を実施する。患者は、この時間にわたって、治療用血漿タンパク質を代謝し、患者内の凝固因子VIIIの濃度は患者の固有の天然起源レベルまで戻る。ヘルスケア施術者は、患者の採血された血液を検査分析器を介して分析し、各採血時点の患者内の凝固因子VIIIの量を決定する。この分析された血液検査データによってヘルスケア施術者は、患者が治療用血漿タンパク質をどの程度迅速に代謝するかを決定することが可能となる。
【0038】
[0045]一般的な規則として、大部分のヘルスケア施術者は、患者内の凝固因子VIIIが1%未満にならないように目標閾値を設定する。凝固因子VIIIが1%未満の患者は、制御不能な又は自然発生的な出血を受けやすいとされている。この方針は時には機能するが、多くの患者では代謝及び/又は出血傾向が1日の中、週の中また月の中でもさえも変動しており、また無出血に維持するために必要となる凝固因子FVIIIレベルも異なることがある。これらの変動は多くの場合に、患者体重、年齢、関節健全性及び身体活動レベルに関係する。患者向けに決定される投与計画は通常これらの変動を勘案しておらず、凝固因子VIIIが一般に受け容れられた1%の天然基準線閾値未満に下がった場合、及び/又はリスク/身体活動が高い期間における出血の防止に要する値より低い場合に、患者は出血に曝されたままとなる可能性がある。
【0039】
[0046]本明細書に開示した例示の方法、システム及び装置は、その患者の独自の集約型薬物動態プロファイル設定に基づくだけではなく、代表的なサンプル患者に関する薬物動態プロファイル及び/又は限定数の患者血液サンプルデータ点を最小患者情報と連携して使用する(ベイズ)モデルにも基づいて個々の患者プロファイルを作成することによって患者薬物動態変動を考慮に入れている。本明細書に開示した例示の方法、システム及び装置によってヘルスケア施術者は、患者の以前の処置及び/又は患者の活動レベルに基づいてモデルを改良することが可能である。このような構成によってヘルスケア施術者は、処置を受けている患者と同様の特性を有するサンプリングされた患者の集団に関する知見に基づいて個別化された投与計画を作成し、これにより患者の個々の薬物動態変動の影響を低減すること、及び予防時に患者が出血を経験する回数を減らす(又は、無くす)ことが可能となる。
【0040】
[0047]例示の開示には、2つの主たる実施形態が含まれる。第1の主たる実施形態は、事前に収集した患者データを用いて1つ又は複数の薬物動態モデルを確立する薬剤投与ツールを含む。この例示の方法、システム及び装置はこのモデルを使用し、患者の身体的属性(例えば、年齢、体重、性別、活動レベル、内因性の凝固因子VIIIレベル、その他)と以前の投与処置とに基づいて、患者中で治療用血漿タンパク質が時間と共にどのように変化するかを決定する。ヘルスケア施術者は、このモデルを、患者に対する薬剤投与量及び投与間隔の決定のために使用することがある。
【0041】
[0048]第2の主たる実施形態は、モバイルコンピュータ(例えば、スマートフォン又はタブレットコンピュータ)上で動作するアプリケーション(「App」)などの薬剤投与ツールを含む。このアプリケーションは、異なる条件下である特定の治療用血漿タンパク質(例えば、BaxterのADVATEなどの凝固因子VIII)がどのようなパフォーマンスになるかを表示するグラフィックインターフェースをヘルスケア施術者に提供することをユーザ(例えば、薬剤販売員)に可能にさせるように構成されている。この第2の実施形態の例示の薬物動態薬剤ツールは、サンプリングされた患者に関する薬物動態モデルを使用してユーザに対して、例えば治療用血漿タンパク質について毎日投与スキームや毎2日型投与スキームではなく、毎3日型投与スキーム、毎4日型投与スキーム、毎5日型投与スキーム、その他を使用することの利点をハイライト提示することを可能にする。本薬剤ツールは、治療用血漿タンパク質濃度、治療用血漿タンパク質投与量レベル、治療用血漿タンパク質投与回数及び患者パラメータの間の関係を使用して、理論患者に関して治療用血漿タンパク質濃度が時間と共にどのように変化するかを計算する。
【0042】
[0049]本明細書で使用する場合、「凝固因子VIII」、「FVIII」又は「rAHF」という用語は、Bドメインインタクトの少なくとも一部分を有する任意のFVIII分子を意味している(天然のFVIIIに関連する生物学的活性を示す)。本開示の一実施形態では、そのFVIII分子が完全長FVIIIである。このFVIII分子は、FVIII:CをコードするDNAにハイブリダイズすることが可能なDNA配列によってコードされたタンパク質である。このようなタンパク質は、ドメインA1-A2-B-A3-C1-C2の間又はこれらの中の様々な箇所にアミノ酸欠損を包含することがある。このFVIII分子はまた、1つ又は複数のアミノ酸残基が箇所特異的突然変異誘発によって置換されている天然の凝固因子FVIIIの類似体とすることがある。
【0043】
[0050]「組換え因子VIII」(rFVIII)という用語は、組換えDNA技術を介して得られる異種の若しくは天然起源の任意のrFVIII、又はその生物学的に活性な誘導体を含むことがある。本明細書で使用する場合に、「内因性FVIII」は処置を受けるように意図した哺乳類に由来するFVIIIを含む。この用語はさらに、当該哺乳類に存在する導入された又は他の外来のDNAから転写されたFVIIIを含む。本明細書で使用する場合に、「外因性FVIII」又は治療用血漿タンパク質は、哺乳類に由来しない凝固因子FVIIIを含む。
【0044】
[0051]FVIII分子は天然に存在し、また単一の遺伝子産生物に由来する不均等分布のポリペプチドとして治療用調剤薬中に存在する。「凝固因子VIII」という用語は本明細書で使用する場合、血漿から導出されたものか又は組換えDNA技法の使用を通じて産生されたものかによらずこのようなすべてのポリペプチドを意味しており、且つFVIII模倣剤、fc-FVIIIコンジュゲート、水溶性ポリマーによる化学的修飾を受けたFVIII、及び別の形態のFVIII又はFVIIIの誘導体(ただし、これらに限らない)を含む。FVIIIを含有した治療用調剤薬の市場入手可能な例には、ADVATE、HEMOFIL M及びRECOMBINATEの商標名で販売されている調剤薬(Baxter Healthcare Corporation、米国、イリノイ州、Deerfieldから入手可能)が含まれる。他の調剤薬には主に、分子のBドメイン部分が欠けたFVIII分子の単一の部分集団を含む。
【0045】
[0052]本開示に有用なFVIII分子には、完全長タンパク質、タンパク質の前駆体、タンパク質の生物学的に活性である又は機能的であるサブユニット又はフラグメント、及び/又はこれらの機能誘導体、並びに本明細書の以下で記載するようなこれらの変異体が含まれる。凝固因子FVIIIに対する言及は、このようなタンパク質に関する可能なすべての形態を含むとの意味であり、またFVIIIの形態のそれぞれは、天然Bドメイン配列インタクトの少なくとも一部分又は全部を有する。
【0046】
[0053]本明細書で使用する場合に「投与間隔」とは、患者に与えられる複数回の投与の間に経過する時間量のことを意味する。凝固因子VIIIを含む治療用血漿タンパク質を投与するための投与間隔は少なくとも、ほぼ毎日、2日ごと、3日ごと、4日ごと、5日ごと、6日ごと、7日ごと、8日ごと、9日ごと、10日ごと、11日ごと、12日ごと、13日ごと、又は14日ごと以上の長い間隔とすることができる。投与間隔は、患者の変化する状態/特性、患者内の治療用血漿タンパク質の最小受け容れ可能(例えば、目標トラフ)濃度に対する変更及び/又は投与量に対する変更に基づいて変化することがある。
【0047】
薬物動態学的な薬剤投与環境
[0054]
図1は、上に記載した実施形態の一方又は両方のいずれかにおいて実装され得る例示の薬物動態学的な薬剤投与環境100の図を示している。環境100は、サンプリングされた患者データ104に基づいて1つ又は複数の患者薬物動態モデル106を作成するように構成されたモデル作成器102を含む。環境100はまた、1つ又は複数の薬物動態モデル106に基づいて患者、ヘルスケア施術者及び/又は販売員に対してグラフィック式の薬物動態学的薬剤投与ツール110を提供するように構成された薬物動態(「PK」)サーバ108を含む。図示した実施形態では、PKサーバ108はツール110をクライアントデバイス112にネットワーク114(例えば、インターネット)を介して送信する。他の実施形態では、PKサーバ108は、クライアントデバイス112によってアクセス可能なツール110のホストとなる。これらの他の実施形態では、PKサーバ108は単一のサーバを含むことがあり、又は別法として、クラウドコンピューティングのフレームワーク内に分散されることがある。
【0048】
[0055]例示のPKサーバ108及び/又はモデル作成器102は、患者薬物動態モデル106を記憶するように構成されたデータベース116に通信可能に結合させることがある。データベース116は、RAM、ROM、フラッシュメモリ、磁気若しくは光ディスク、光メモリ、又は他の記憶媒体を含む任意のタイプのコンピュータ可読媒体を含むことがある。例示のデータベース116はまた、ユーザによるツール110の使用に応答して作成される情報(例えば、患者情報、投与計画、その他)を記憶することがある。幾つかの事例では、データベース116はサードパーティ記憶提供者によって管理されることがある。
【0049】
[0056]幾つかの事例では、PKサーバ108及び/又はモデル作成器102は、同じサーバ及び/又はプロセッサによって提供されること、及び/又は同じエンティティによって動作させることがある。これらの事例では、モデル作成器102の機能はPKサーバ108の機能と連携して動作することがある。事例としてモデル作成器102は、PKサーバ108によってツール110を介して受信された治療用血漿タンパク質投与情報及び/又は患者情報を用いて薬物動態モデルを定期的に更新することがある。
【0050】
[0057]例示のクライアントデバイス112a、112b及び/又は112cは、ツール110を表示、さもなければ動作させることが可能な任意のデバイスを含むことがある。クライアントデバイス112の例には、スマートフォン、テーブルコンピュータ、ラップトップコンピュータ、デスクトップコンピュータ、ワークステーション、サーバ、プロセッサ、スマートアイウェア、スマートウォッチ、その他が含まれる。幾つかの事例では、ツール110は、クライアントデバイス112上にインストールされることがある。他の事例では、ツール110は、PKサーバ108に置くように構成された機能に対するインターフェース(例えば、ウェブブラウザ)を提供する。これらの事例では、PKサーバ108は、ツール110に対して所望のデータ及び/又は機能へのアクセスを可能にするように構成された1つ又は複数のアプリケーションプログラマブルインターフェース(「API」)を含むことがある。
【0051】
モデル作成器
[0058]本明細書に記載した実施形態では、正確な患者固有の薬物動態プロファイルを決定することがかなり複雑又は困難であるため、薬物動態モデルを使用して患者の薬物動態プロファイルが推定又は概算される。事例として、血友病Aに関して患者固有の薬物動態プロファイルを決定するための目下の方法は、複数の血液検査を実行することを含む。これらの血液検査には、患者の凝固因子VIII基準線を決定するための初期採血の実行が含まれる。次いで、治療用血漿タンパク質が投与された後に、注入後48時間の期間にわたって5回以上の採血が実行される。このような手順は、別々の多数回の採血のために患者、ヘルスケア施術者及びラボに対してとりわけ厄介なものとなることが理解できよう。したがって、例示のモデル作成器102は、様々な年齢、体重、性別及び活動レベルをもつ患者のサンプルに基づいて、比較的正確な薬物動態モデルを作成するように構成されている。次いで、これらのモデルを使用して、患者に採血及び後続の分析のすべてを受けさせることを要することなく、患者の薬物動態プロファイルが決定又は概算される。
【0052】
[0059]一実施形態では、薬物動態モデル106が、1組又は複数組の患者データから選択された患者サンプル104を使用して決定される。患者サンプル104は例えば、上述の採血手順を使用した治療投与計画に既に申し込んだ患者の中から選択されることがある。患者サンプル104はまた、モデル作成の目的で採血手順を受けるように具体的に選択された患者を含むことがある。患者サンプル104は、ある1つの病院や医用システムからの患者、及び/又は複数の病院、医用システム、地理的地域、その他から関連付けされる患者を含むことがある。
【0053】
[0060]患者サンプル104は、様々な年齢、体重(又は、体格指標(「BMI」)の患者に関するデータ、医学的状態、臨床検査データ、性別及び/又は活動レベルを含む。本明細書に記載した例において、サンプル患者年齢は2歳から100歳の間で様々である。幾つかの実施形態では、患者のデータを小児及び成人の年齢ブラケットに分け、これにより各ブラケットごとに別のモデルが作成されるようにすることがある。患者データは、追加として又は別法として、体重、性別及び/又は活動レベルに基づいて区切られることがある。
【0054】
[0061]言及したように、例示の患者サンプル104には、患者に治療用血漿タンパク質が注入される前の凝固因子VIIIの判定を含む。次いで、ある時間経過後に各患者から注入後血液サンプルが収集される。他の例では、血液サンプルが異なる時点で収集されることがあること、及び/又は収集される血液サンプルの数を少なくすることも又は多くすることもあることを理解されたい。事例として、小児からはより少ない血液サンプル数が収集されることがある。
【0055】
[0062]
図2は、血友病Aを有する152人の患者に関する患者サンプルデータ104を含むグラフ200を示している。サンプルデータ104は、1デシリットル(「dl」)あたりの国際ユニット(「IU」)を単位とした凝固因子VIIIのレベルとして示している。サンプルは、注入前(時刻0で示す)と、注入後の15分、30分、1時間、3時間、6時間、9時間、24時間、28時間、32時間及び48時間の間隔で収集したものである。患者中の治療用血漿タンパク質によってもたらされる凝固因子VIIIの量は、注入された治療用血漿タンパク質を患者が代謝するのに伴って減少することを理解されたい。
【0056】
[0063]例示のモデル作成器102は、治療用血漿タンパク質の注入後の時間の経過に従ったサンプリングされた患者中の凝固因子VIIIに関する以前の知見を使用するベイズ分析を実行することによって薬物動態患者モデルを作成する。幾つかの事例では、モデル作成器102は、薬物動態モデル106の構築にウォッシュアウトデータが不要となるように、サンプリングされた各患者の投与履歴を注入前凝固因子VIIIレベルと連携して分析するように構成されている。他の実施形態では、モデル作成器102は、注入後凝固因子VIIIレベルと連携して患者ウォッシュアウトデータを使用して1つ又は複数の薬物動態モデル106を作成することがある。患者ウォッシュアウトデータは、患者がその系統内に治療用血漿タンパク質を含まない場合の基準線に対応する。
【0057】
[0064]例示のモデル作成器102は1つ又は複数の薬物動態モデル106を、例えばグラフ200に示した患者サンプルデータを使用して作成する。モデル作成器102は、個々の患者サンプル104を1つ又は複数の集団プロファイル(例えば、年齢組、体重組、活動レベル組、内因性凝固因子VIIIレベル、その他)の形に統合し、次いでこれを対応する薬物動態モデル106に関する基準として使用することがある。事例として、モデル作成器102は、年齢、体重及び/又は活動レベルの異なる患者サンプル104を異なる組にグループ分けすることがある。モデル作成器102は次いで、各組のグループ分けした患者サンプル104に対して共変動(covariate)及び統計的モデル化を実行し、当該組に関する集団薬物動態モデル106を作成する(これについては、その全体を参照により本明細書に組み込むものとするBjorkmanらによる「Population pharmacokinetics of recombinant factor VIII - the relationships of pharmacokinetics to age and body weight」と題する白書に記載されている)。しかし、モデル作成器102は、サンプリングされたデータ104を他のベイズ分析技法(例えば、単純ベイズ分類器(naive Bayes classifier))を使用してモデル化することもあることを理解すべきである。
【0058】
[0065]図示した例では、モデル作成器102によって使用される共変動モデルは、薬物動態パラメータ(例えば、治療用血漿タンパク質がどの程度迅速に代謝されるか、内因性凝固因子VIIIレベル、その他)と患者特性(例えば、年齢、体重、臨床検査データ、性別、活動レベル、その他)との間の関係を決定する。モデル作成器102は、統計モデルを使用してサンプリングされた患者の間の薬物動態パラメータ変動、さらには患者間の生物学的ばらつき、計測誤差、及びサンプリングされたデータ104の薬物動態モデルに対する当て嵌め誤差に由来する残差分散を決定する。
【0059】
[0066]例示のモデル作成器102は、SAS(登録商標)ソフトウェア(NLMIXED手順)で実現されているような1次積分近似法による非線形混合効果モデル化を使用して共変動及び統計モデル化を実行するように構成されている。図示した例では、モデル作成器102は2コンパートメントモデルを使用している。他の例では、モデル作成器102は、単一コンパートメントモデル又は3コンパートメント以上のモデルを使用することがある。図示した2コンパートメントの例では、第1のコンパートメントはクリアランス(「CL」)及び分布ボリューム(V1)という薬物動態パラメータを含む。
【0060】
[0067]CLは、患者が治療用血漿タンパク質を代謝する時間量(1キログラム(「kg」)あたりの毎時ミリリットル(「mL」)を単位とする)を示している。換言すると、クリアランスとは、患者から治療用血漿タンパク質が除去又は排除される効率及び速度の尺度である。モデル作成器102は、例示の式(1)を使用してCLを決定する(ここで、BWは体重を意味し、iは指定のサンプリングされた患者を意味し、またηは患者間の統計的ばらつきを意味する)。
【数1】
【0061】
[0068]V1は、患者の血液中に目下あるのと同じ濃度を提供するとしたときに治療用血漿タンパク質が占有しなければならない理論ボリュームを示している。この理論ボリュームは、ある凝固因子VIIIレベルを達成するための用量に関する推定値を提供する。モデル作成器102は、例示の式(2)を用いてV1を決定する。本明細書に記載した例では、V1が約0.04L/kgである。
【数2】
【0062】
[0069]図示したモデルの第2の成分は、コンパートメント間クリアランス(「Q」)と、患者間ばらつきを勘案していない第2の分布ボリューム(「V2」)と、を含む。モデル作成器102は、例示の式(3)を使用してQを決定すると共に、式(4)を使用してV2を決定する。コンパートメント間クリアランスQは、第1の分布ボリュームV1に対する第2の分布ボリュームV2のスケール関係を決定するためにクリアランスCLと連携して使用される。この例では、コンパートメント間クリアランスQは体重と有意な関係になく、このことは定常状態における分布ボリュームの決定に関してV1及びV2が累積性であることを示している。換言すると、総分布ボリュームはV1とV2とを加算することによって決定される。一実装形態では、患者サンプルの平均総分布ボリュームが約0.053L/kgであることが分かった。
【数3】
【数4】
【0063】
[0070]上の例示の式(1)~(4)によって実現されるモデル106を作成した後に、この例示のモデル作成器102は、サンプリングされた各患者に関するCL、Q、V1、V2及びV1+V2の個々の値を決定すると共にこれらの結果をモデルと比較することによってモデルを検証することがある。このような比較によって、モデルの確度に関する指示が提供される。幾つかの例では、モデル作成器102は、モデルが正確であるかどうかを判定するためにサンプリングされた患者データに関する統計分布を決定することがある。そのモデルが正確でないとされた事例では、モデル作成器102は、追加の患者サンプル104の収集及び/又は他のモデル化技法の実行を行うことがある。
【0064】
[0071]1つ又は複数の薬物動態モデル106の作成に応じて、モデル作成器102はこの薬物動態モデル(複数可)106をPKサーバ108に提供する。送信はローカルエリアネットワークなどのプライベートネットワークを介すること、又はインターネットなどのパブリックネットワークを介することがあり得る。モデル作成器102はまたモデル106を、1つ又は複数のインターフェースを介してPKサーバ108によってもアクセスが可能なデータベース116に記憶することがある。他の事例では、モデル作成器102がPKサーバ108を一体化することができる。
【0065】
[0072]ランダムな患者のサンプルに適用されるように上の式(1)~(4)に基づいた薬物動態モデル106を提供することに加えて、例示のモデル作成器102は、モデルを、薬剤投与ツールを使用して治療用血漿タンパク質投与を計算しようとする各患者向けに改良することがある。事例として、PKサーバ108は、体重、年齢、性別、内因性の凝固因子VIIIレベル、及び以前の処置の投与レベルを含む患者固有の情報を受信することがある。モデル作成器102は、以前の処置の情報(例えば、投与の量、間隔、その他)を使用し、投与推奨値と薬物動態プロファイルを当該患者により一致させながらも起こり得る患者変動が依然として勘案されるようにモデルを改良又は調整する。モデル作成器102は、PKサーバ108にこの患者固有のモデルを送信する。
【0066】
[0073]別法として、PKサーバ108は、患者固有の薬物動態変動を勘案するために、モデル作成器102によって提供された薬物動態モデル106を使用して患者固有のモデルを作成するように構成されることがある。この方式では、1つ又は複数の基本モデル106が、ある具体的な患者に関する以前の処置情報の受信に応じてPKサーバ108によって改良又は調整される。PKサーバ108は、同じヘルスケア施術者又は他のヘルスケア施術者によって後で使用するために、患者固有モデルをデータベース116に記憶するように構成されることがある。
【0067】
[0074]さらに他の実施形態では、例示のツール110は、患者固有の処置情報に基づいて薬物動態モデルを調整又は改良するように構成されることがある。事例として、ツール110は、ユーザに以前の処置情報を提供させるためのフィールドを含むことがある。例示のツール110は、ある患者に関する薬物動態プロファイル及び投与推奨値を決定する際にこの以前の処置情報を使用する。追加として又は別法として、ツール110は、複数の患者からの処置情報を使用してモデル106を改良及び/又は調整することがある。
【0068】
患者固有ツールの実施形態
[0075]上で検討したように、PKサーバ108は、薬剤投与ツール110に関する様々な実施形態を提供するように構成することが可能である。
図3~13は、ある具体的な患者向けの投与計画及び推定/概算の薬物動態プロファイルを1つ又は複数の薬物動態モデル106を使用して決定するために薬剤投与ツール110によって提供される例示のユーザインターフェースの図を含む。これらのユーザインターフェースは、薬剤投与ツール110の構成に基づいて体裁及び/又は機能が修正され得ることを理解されたい。事例として、ユーザインターフェースのグラフ要素は、クライアントデバイス112の種別(例えば、スマートフォンディスプレイ、タブレットディスプレイ、パーソナルコンピュータディスプレイ)に基づいて修正されることがある。
【0069】
[0076]
図3は、ヘルスケア施術者による薬剤投与ツール110へのアクセスを可能にさせるためのユーザ登録フィールドを含むユーザインターフェース300の図を含む。インターフェース300は、ユーザ情報(例えば、名前、習慣、アドレス、連絡情報)に関するデータフィールドを含む。さらに、ユーザインターフェース300は、ユーザが認可されたヘルスケア専門職であることを確認するためにPKサーバ108によって使用される麻薬取締局(「DEA」)ナンバーに関するフィールドを含む。ヘルスケア専門職がDEAナンバーを有していない事例では、専門職はツール110を使用するためのアカウントを手作業でセットアップするためにカスタマーサポートに連絡をとることがある。
【0070】
[0077]
図3のユーザ提供の(適正なDEAナンバーを含む)情報に受信に応じて、例示のPKサーバ108は図示した実施形態では、ユーザダッシュボードを含むユーザアカウントを作成するように構成されている。
図4は、ダッシュボードの患者情報部分に関するユーザインターフェース400の図を含む。ユーザインターフェース400は、ユーザの看護下にある患者に関するユーザ管理を実現している。ユーザはこのユーザインターフェース400を使用して、新たな患者を追加する、目下の患者を再アクティブ化する、以前の処置に関する詳細(以前の決定薬物動態プロファイル及び投与推奨値を含む)を提供するレポートを開く、又は患者情報のレポートを開く。患者を追加するためには、薬剤投与ツール110は、名前、アドレス、保険情報、年齢、性別、体重(又は、BMI)、医学的状態、臨床検査データ、その他を含む患者情報を求めてユーザにプロンプトを出す別のユーザインターフェースを設けることがある。
【0071】
[0078]任意の患者について、薬剤投与ツール110は、推定/概算の薬物動態プロファイル及び投与推奨値を決定することをユーザに可能にさせている。
図5は、新規の患者訪問に関連するユーザインターフェース500の図を含む。この図示した例では、ユーザインターフェース500は、治療用血漿タンパク質の注入に関する患者情報のためのフィールドを含む。患者が既にツール110に登録済みであるような事例では、フィールドのうちの少なくとも幾つかが事前設定されていることがある。さらに、「PK注入の用量」フィールドは、当該患者向けに推定薬物動態プロファイル及び投与推奨値を決定するためのステップのユーザによる進捗に応じてツール110によって設定済みのことがある。
【0072】
[0079]例示の薬剤投与ツール110はまた、与えられた情報が所定の閾値を超える場合にユーザに警告するように構成されることがある。例えば、ツール110は、注入前レベルが20IU/kgを超える場合に警告メッセージを提供するように構成されることがある。この警告は、入力された値が当該フィールドに関して一般的でないことの指示をユーザに提供する。しかし、ユーザはそれでも、警告を発生させた情報によるツール110の使用を継続することもあり得る。別法として、ツール110は、所定の範囲内の情報だけしか受け入れないように構成されることがある。
【0073】
[0080]患者名、体重、誕生日、注入日、及びウォッシュアウト又は注入前レベル情報を提供した後に、例示の薬剤投与ツール110は次のステップに進むようにユーザにプロンプトを出す。
図6は、
図5のユーザインターフェース500への情報のユーザの提供に引き続いて表示されるユーザインターフェース600の図を含む。
【0074】
[0081]例示のユーザインターフェース600は、以前の患者処置及び/又は注入前(又は、ウォッシュアウト)情報及び投与量(すなわち、PK注入)を含んだサンプルに関するレビューを提供する。ユーザは、ツール110において患者向けの薬物動態モデル106を改良又は調整するように1つ又は複数の以前の処置及び/又はサンプルからのデータを使用するように選択することが可能である。ユーザはこの選択を、インターフェース600の右側にある「On/Off」ボタンのトグル切替えによって実施する。事例として、ユーザは、過去3年間に行われた以前の処置及び/又はサンプルをアクティブ解除することがある。この選択の結果として、ツール110は、薬物動態モデル106の改良のために、アクティブにされた以前の処置及び/又はサンプルのみを使用する。このためツール110のこの構成によればユーザは、所望に応じて指定の以前の患者処置及び/又はサンプルだけを使用して薬物動態モデルを改良することが可能となる。幾つかの事例では、ユーザは以前の処置及び/又はサンプルをすべてアクティブ解除し、これによりツール110にモデル作成器102によって提供された薬物動態モデル106を使用させるように選択することがある。
【0075】
[0082]図示した実施形態では、治療用血漿タンパク質による処置に関する3つの患者サンプルを示している。サンプルの各々は、治療用血漿タンパク質の注入処置からある時点での患者の採血に対応する。事例として、第1のサンプルは注入後6時間に収集され、第2のサンプルは注入後24時間に収集され、また第3のサンプルは注入後30時間に収集されたものである。このサンプル情報は、サンプルが収集された時点における患者の血液内の凝固因子VIIIの濃度に関する決定を提供する。選択されたある患者サンプルと連携した薬物動態モデル106の使用によれば、サンプリングされた集団内に共通する患者変動の補償もしながら、決定される患者薬物動態プロファイルを患者向けに固有なものとするように改良することができることを理解されたい。
【0076】
[0083]薬物動態モデル106内にどの処置及び/又はサンプルを含めるべきかを選択した後に、薬剤投与ツール110は、例示のツール110に
図7のユーザインターフェース700を表示させる「次のステップ」ボタンを選択するようにユーザにプロンプトを出す。例示のユーザインターフェース700は、当該患者向けの推定薬物動態プロファイル及び投与推奨値の決定にどの以前の処置及び/又はサンプルを含めるべきかに関するレビューを提供する。選択された以前の処置及び/又はサンプルは、以前に与えられた用量に基づいて投与計画に重みを付与するために使用されることがある。ユーザインターフェース700は、「計算」ボタンを選択し、薬剤投与ツール110(又は、PKサーバ108)に対して薬物動態モデル106に患者固有の情報を適用させ、当該患者向けの推定又は概算の薬物動態プロファイル及び投与推奨値を決定するようにユーザにプロンプトを出す。幾つかの事例では、ツール110は、得られる決定が確実に患者に対してより固有なものとなるように、ユーザが以前の処置及び/又はサンプルを少なくとも所定の数(例えば、3つ)だけ提供し終わるまで「計算」ボタンを利用可能にしないことがある。ツール110及び/又はPKサーバ108は、患者固有情報に関してユーザにプロンプトを出すユーザインターフェース500及び/又は他のユーザインターフェース内で提供される患者情報と最適一致するような利用可能な薬物動態モデルの薬物動態モデルを選択することを理解されたい。事例として、薬物動態モデルは、患者の年齢、体重、性別及び/又は活動レベルに基づいて選択することがある。
【0077】
[0084]
図8は、ツール110及び/又はPKサーバ108による計算後の
図7のユーザインターフェース700で、決定された患者の薬物動態プロファイルが表示されている図を含む。「理論値」フィールドは、以前の患者処置及び/又はサンプルによらず薬物動態モデル106だけに基づいたデータに対応する。「調整値」フィールドは、以前の処置及び/又はサンプル情報による調整を受けた薬物動態モデル106に基づいた患者に固有の薬物動態プロファイルデータに対応する。「オフセット」フィールドは、「理論値」と「調整値」のそれぞれのフィールドの間の差に対応する。図示した例では、薬物動態プロファイルデータは、治療用血漿タンパク質のクリアランス、分布ボリューム(vdBeta)、治療用血漿タンパク質が投与後に達成し得る最大濃度(CMax/Peak)、治療用血漿タンパク質の半減期(FVIII半減期)、及び患者内の治療用血漿タンパク質の濃度に関する最小(又は、低い方の)事前指定の閾値までの時間を含む。他の実施形態では、ユーザインターフェース700は、より少ないフィールド数を含むことも、V1及びV2及び/又はアッセイ種別を含む薬物動態プロファイルに関する追加のフィールドを含むことも可能であることを理解されたい。
【0078】
[0085]幾つかの事例では、例示のツール110は、薬物動態プロファイルデータのうちのいずれかが薬物動態モデル106の作成に使用したサンプリングされた患者集団のうちのある百分率より外れている場合に警告及び/又はアラートを出すことがある。事例として、ツール100は、調整済みのクリアランス値が処置を受けている患者と同じ集団組内のサンプリングされた患者のクリアランス値の95%より外れていることを指摘することがある。この警告及び/又はアラートは、入力された患者情報を検証するためのユーザによるトリガとして使用されることがある。この警告及び/又はアラートはまた、その投与計画が異常であること、又は処置を受けている患者と同様の特性を有するサンプリングされた患者に関する投与計画を外れていることの指示として使用されることがある。
【0079】
[0086]
図8に示した薬物動態プロファイルデータの提供に加えて、例示のツール110は、推定薬物動態プロファイル及び投与推奨値のグラフ表現も提供する。
図9及び10は、ある具体的な患者に関する投与及び薬物動態情報(例えば、患者中の時変動する治療用血漿タンパク質レベル(例えば、CL))を表示しているユーザインターフェース900及び1000の図を含む。治療用血漿タンパク質レベルは、患者内の凝固因子VIIIの正常レベルを基準とした濃度百分率として示される。しかし他の実施形態では、治療用血漿タンパク質レベルを計測単位として示すことがある。
【0080】
[0087]
図9は、患者に関する推定又は概算の薬物動態プロファイル902をグラフ表示しているユーザインターフェース900の図を含む。例示の薬物動態プロファイル902は、治療用血漿タンパク質が投与された時点で始まり時間の経過に従って患者中で治療用血漿タンパク質がどのように代謝されるかを示している。患者の薬物動態プロファイル902を実線で表している。例示のユーザインターフェース900はまた、薬物動態モデル106の作成に使用したサンプル患者の薬物動態プロファイル904(破線で示す)に対する患者の薬物動態プロファイル902の比較を含む。ユーザインターフェース900はまた、サンプル患者の薬物動態プロファイル904の±20%を表した網掛けしたバンド906を含む。
【0081】
[0088]さらに、例示のユーザインターフェース900は、治療用血漿タンパク質の注入後に患者が1回又は複数回の血液検査を受けた事例における患者サンプルのグラフ表現908及び910を含む。患者サンプル908は、患者の薬物動態プロファイル902の決定に含めないように選択したサンプルに対応し、また患者サンプル910は患者の薬物動態プロファイル902の決定に含めるように選択したサンプルに対応する。この血液検査は、最初の注入後に患者中の治療用血漿タンパク質の量を決定するために実行されており、且つ患者の薬物動態プロファイル902をさらに改良するために実行されることがある。事例として、注入後に5回以上の採血を実行するのではなく、例示のPKサーバ108及び/又はツール110が、これより少ない回数の採血からのデータを薬物動態モデル106に基づいたサンプル患者の薬物動態プロファイル904と連携して使用して患者の薬物動態プロファイル902を作成するために使用されることがある。
【0082】
[0089]
図10の例示のユーザインターフェース1000によればユーザは、
図9に示した患者の薬物動態プロファイル902に基づいて投与間隔及び/又は治療用血漿タンパク質の濃度に関する最小の(低い方の)指定の閾値(例えば、目標トラフ)に対する変更に基づいた投与変化をグラフで参照することが可能となる。事例として、
図10は、患者の推定薬物動態プロファイル902に基づいて投与された治療用血漿タンパク質がどのように代謝されるかを視覚的に示している投与計画のグラフである。この投与計画は、治療用血漿タンパク質の濃度が30%の目標トラフ未満とならないようにする72時間の投与間隔を含む。例示の薬剤投与ツール110は、この情報を使用して72時間ごとに投与すべき推定投与量(例えば、48.0IU又は0.76IU/kg)を計算する。例示のツール110はまた、治療用血漿タンパク質レベルが目標トラフを超える(例えば、これ未満となる)時間量を計算する。他の事例では、ツール110は、治療用血漿タンパク質レベルが目標トラフ未満にある時間(患者が治療用血漿タンパク質により保護されておらず出血を受けやすい状態にある時間量に対応する)に関する指示を提供することがある。
【0083】
[0090]例示のツール110は、インターフェース1000を介して間隔及び目標トラフを調整すると共に、これに従って投与量及び時間経過に従った治療用血漿タンパク質レベルを含む投与計画を変更することをユーザに対して可能にさせるように構成されている。間隔又は目標トラフのいずれかを変更しても患者の推定薬物動態プロファイル902が変わらないことを理解されたい。そうではなく、例示のツール110は、決定された患者の薬物動態プロファイル902に対して選択された間隔又は目標トラフを適用する。
【0084】
[0091]例示のツール100のインターフェース1000の構成によれば、ヘルスケア施術者は間隔又は目標トラフに対する変更に応じて投与がどのように変わるかを決定することが可能である。事例として、ヘルスケア施術者は、毎2日型投与間隔と毎3日型投与間隔(又は、毎日投与間隔などの追加の間隔)とに関する投与計画を比較して、ある患者について投与間隔を延長する(又は、短縮する)ことが可能かどうかを判定することが可能であり、これにより必要となるヘルスケア施設への訪問回数及び/又は自己処置の回数を減らすことができる。目標トラフによって、ヘルスケア施術者は、患者中の所望の最小治療用血漿タンパク質レベルによって投与計画がどのような影響を受けるのかを決定することが可能である。事例として、ヘルスケア施術者は、ある(比較的活動的な)患者について10%目標トラフが受け容れ可能であると判定し、これに従ってユーザインターフェース1000の目標トラフを10%に設定することがある。目標トラフの選択の受信に応答して、例示のツール110は、毎3日型投与間隔を維持しながらも凝固因子VIIIの濃度が10%閾値未満にならないような推定投与量を決定する。これに従ってヘルスケア施術者は、ツール110を使用し、10%目標トラフについて毎3日型投与計画を適用して投与量又はCMaxが安全閾値未満にならないようにできるかどうかを判定する。
【0085】
[0092]例示の薬剤投与ツール110はまた、時間経過に従った治療用血漿タンパク質レベルのグラフと、スケジュール(例えば、週間、月間、年間、その他)に基づいた投与量と、を提供している。事例として、ユーザは、インターフェース1000の「スケジュール」ボタンを選択し、投与に利用可能な日をツール110に表示させることが可能である。ユーザは、どの日に患者に投与を施すべきかを選択し、治療用血漿タンパク質レベルが目標トラフ未満にならないようにツール110に投与量及び時間経過に従った治療用血漿タンパク質レベルを決定させている。例えば、
図11は、ユーザに対して治療用血漿タンパク質の投与を施す特定の日(及び/又は、回数)の選択を可能にしている例示のユーザインターフェース1100の図を示している。例えば、ユーザは、治療用血漿タンパク質の1753IUの投与量を、月曜日、水曜日、金曜日及び日曜日に48時間投与間隔を用いて患者に与えるべきであることをツール110に入力することがある。ユーザは、日付/時間及び患者内の指定の凝固因子VIII濃度を参照するために濃度ライン1102のどの箇所を選択することもできる。
【0086】
[0093]
図12は、ユーザに対して凝固因子VIIIの量が指定の濃度を超えている時間量及び指定の濃度未満の時間量の参照を可能にするユーザインターフェース1200の図を示している。事例として、ユーザは、「未満の時間」を3%とするように、且つ「超える時間」を10%とするように選択することがある。この情報に応答して、例示のツール110及び/又はPKサーバ108は、凝固因子VIIIの量が10%を超える及び3%未満となる時間量を決定する。例示のツール110はまた、ユーザインターフェース1200のグラフ内にこの時間をグラフ表示する。この情報は例えば、患者が非保護状態のままとなり得ると共に出血を生じやすい3%未満の時間量と、患者が完全に保護されている時間量と、を示す。
【0087】
[0094]例示の薬剤投与ツール110によればまた、ユーザは、データベース116(及び/又は、クライアントデバイス112のローカルメモリ)に患者薬物動態プロファイルを投与及び治療用血漿タンパク質レベルデータと連携して記憶することが可能である。事例として、ユーザは、
図10のインターフェース1000にある「保存」ボタンを選択し、薬剤投与ツール110に対して
図5~12に関連して説明した情報をデータ記憶に保存させることが可能である。この情報はまた、レポートとして保存されることがある。
図13は、
図5~12に関連して説明した保存情報に関するレポート1300を含む。ヘルスケア施術者は、ある患者に関して治療用血漿タンパク質の投与計画がどのように計算されたかを判定するためにレポート1300を参照することがある。
【0088】
[0095]患者投与情報の提供に加えて、例示のツール110は、病院情報システム及び/又は注入ポンプ120に対して投与情報を送信するようにPKサーバ108と連携して構成されることがある。例えば、
図1に戻ると、ヘルスケア施術者はクライアントデバイス112cにあるツール110を用いてある患者に関する投与情報を決定することがある。ツール110は、この投与情報をPKサーバ108に送信するように構成されることがある。ヘルスケア施術者はまた、投与を行わせようとする注入ポンプを特定することがある。投与情報の受信に応答して、PKサーバ108はこの投与情報を注入ポンプ及び/又は病院情報システムに送信する。別法として、PKサーバ108は、注入ポンプによる要求を受けるまで投与情報を保持しておくことがある。ポンプが指定されない事例では、病院情報システムが、どのポンプに患者への注入を行わせるかを決定すると共に、この投与量情報を対応するポンプに送信させる。
【0089】
[0096]別法として、クライアントデバイス112cにある例示のツール110が、注入ポンプ120に(例えば、近距離通信、Bluetooth(登録商標)、その他を介して)投与量情報を直接通信することがある。事例として、ツール110は、クライアントデバイス112cに対して通信セッションの確立又は近接配置のポンプの位置特定を行わせるように構成されることがある。ポンプ120との通信が確立されると、ツール110は注入ポンプをプログラムするために投与情報を送信する。
【0090】
[0097]追加として又は別法として、ツール110は、患者によって直接使用されることがある。事例として、例示のツール110は、ヘルスケア施術者が投与計画を選択し終えた後に患者にスケジュールを送信するように構成されることがある。例えば、ツール110は、患者のクライアントデバイス112に対して、治療用血漿タンパク質をどれだけ注入すべきか及びいつ注入すべきかを患者に指令する投与計画又はスケジュールを送信することがある。この投与計画又はスケジュールは、患者が治療用血漿タンパク質の投与を受けるべき具体的な日(及び/又は、回数)を1週間の中、1か月の中、1年の中、その他で指示する(また、注意喚起を含むことがある)。さらに、ツール110を患者に対して利用可能とし、以前の処置を参照すること及び投与間隔の変更に基づいて投与計画をどのように変更されるのかを比較することを患者に可能にさせることがある。
【0091】
マーケティングツールの実施形態
[0098]上述の実施形態では、ヘルスケア施術者は例示のツール110を使用して治療用血漿タンパク質を患者に投与するための投与計画を決定する。第2の実施形態では、例示のツール110はこれに代えて、ヘルスケア施術者に対して治療用血漿タンパク質の機能をセールス又はマーケティングのプレゼンテーションの一部として実証説明するための一般化された投与計画(例えば、理論患者に関する投与計画)を提供するように構成されることがある。例えば、販売員は、毎2日型及び毎3日型投与計画の下で治療用血漿タンパク質ADVATE薬剤がどのように働くかを実証説明することがある。例示のツール110はまた、第1の品名の治療用血漿タンパク質が理論患者についてどのように働くかを、第2の品名の治療用血漿タンパク質と対比して比較することがある。
【0092】
[0099]
図14~18は、このマーケティングツール実施形態における薬剤投与ツール110によって提供されるユーザインターフェースを表示している。このユーザインターフェースは、ヘルスケア施術者に対して理論患者の体重及び半減期を勘案しながら理論患者の薬物動態プロファイルに基づいて治療用血漿タンパク質をどのように処方することが可能であるかを実証説明するために販売員が使用し得る理論患者データを示している。半減期は、薬剤が患者の最初の濃度の半分に達するのに要する時間である。
【0093】
[00100]特に、例示のツール110は販売員に対して、指定の理論患者について投与が毎2日対毎3日で実施されたときに治療用血漿タンパク質がどのような働きになるかをヘルスケア施術者に実証説明することを可能にする。
図14~18に示したユーザインターフェースは、単なる例示の実施形態であることを理解されたい。他の例では、ユーザインターフェースのレイアウト及び/又は機能は販売員の要件に基づいて変更されることがある。
【0094】
[00101]
図14は、
図1のクライアントデバイス112にある薬剤投与ツール110に設けられたユーザインターフェース1400の図を含む。インターフェース1400は、実際の患者又は理論患者について指定された目下の投与計画を提供させるようにユーザにプロンプトを出すように構成されている。この図示した実施形態では、理論患者は、体重が60kgであり且つ12時間の薬剤半減期を有すると指定されている。さらに、ユーザは48時間ごとに2300IUという投与計画を指定している。さらに、ユーザは、スクロールバー1401を用いてトラフ閾値(例えば、最小又は小さい方の閾値)を1%とするように選択している。トラフは、ユーザインターフェース1400の中でライン1402として示してある。
【0095】
[00102]患者及び薬剤パラメータの提供に応答して、薬剤投与ツール110は、薬物動態モデル(例えば、上に記載した薬物動態モデル106)を使用して理論患者の薬物動態プロファイルを決定する。投薬実行ツール110は、このプロファイルを用いて投与計画(例えば、投与量及び間隔)を決定する。ツール110は、投与計画をある時間期間にわたる理論患者内の治療用血漿タンパク質の濃度としてグラフ表示する(ライン1404で示す)。例えば、時点「0」において、2300IUの薬剤が理論患者に投与されており、このため患者中の治療用血漿タンパク質が76.7%濃度であることが示されている。治療用血漿タンパク質の濃度は、理論患者に関する決定された薬物動態プロファイルに基づいて次の48時間にわたって低下する。
【0096】
[00103]
図15は、ユーザが「2日」ボタンを選択した後の
図14のユーザインターフェース1400を示している。このボタンの選択によって、理論患者の薬物動態プロファイルに基づいてツール110に毎2日型投与計画を決定させている。この投与計画は、用量(例えば、600IU)と、当該時間期間にわたる理論患者内の治療用血漿タンパク質濃度のグラフ表示(ライン1406で示す)と、を含む。例示のツール110は、治療用血漿タンパク質の濃度が指定の1%目標トラフ未満にならないように2日投与間隔に関する用量を決定する。
【0097】
[00104]
図15のユーザインターフェース1400はまた、ユーザが最初に提供した投与計画と、ツール110が決定した投与計画との比較を提供する。図示した例では、ツール110は、ユーザが48時間ごとに2300IUではなく600IUを処方するだけでよいことをグラフ指示している。換言すると、ツール110は、治療用血漿タンパク質の濃度を1%目標トラフ未満にならないようにさせるのに必要な投与量を、ユーザが過大に見積っていたことを示している。
【0098】
[00105]
図16は、ユーザが「3日」ボタンを選択した後の
図14のユーザインターフェース1400を示している。このボタンの選択によって、理論患者の薬物動態プロファイルに基づいてツール110に毎3日型投与計画を決定させている。この投与計画は、用量(例えば、2600IU)と、理論患者内の時変動する治療用血漿タンパク質濃度のグラフ表示(ライン1408で示す)と、を含む。ツール110は、濃度が指定の1%目標トラフ未満にならないように投与計画を決定する。
【0099】
[00106]
図16のユーザインターフェース1400はまた、ユーザが最初に提供した投与計画と、ツール110を用いて決定した投与計画との比較を表示する。図示した例では、ツール110は、投与と投与の間の期間中のいずれにおいても濃度が1%未満にならないようにヘルスケア施術者が毎72時間に2600IUを処方しなければならないことをグラフ指示している。販売員は、このグラフ比較を使用して、投与量を毎48時間に与えられる目下の投与量から若干上昇させるだけで投与間の時間を増大させながらも、出血に対して同じ保護が達成されることをヘルスケア施術者に示すことが可能である。投与間隔が拡大すれば患者にかかるストレスが減る(例えば、ヘルスケア施術者への通所回数が減る)と共に、ヘルスケア施術者にかかるストレスも減る(例えば、実施する投与回数が減る)ことを理解されたい。
【0100】
[00107]販売員は、
図15及び16に表示されたグラフを使用して、同じ理論患者について毎2日型投与間隔と毎3日型投与間隔を用いて投与計画がどのように変わるかをヘルスケア施術者にグラフで例示できる。販売員はまたこのツールを使用して、治療用血漿タンパク質を1%閾値を破ることなく3日ごとに患者に投与可能であることを示すことによって、毎3日型間隔を使用する恩恵をグラフでハイライトすることが可能である。販売員は、ユーザインターフェース1400の中に含まれた「両方」ボタンを選択することによって毎3日型間隔と毎2日型間隔を同時に表示することがある。
【0101】
[00108]毎2日型投与計画と毎3日型投与計画の間の違いについてのグラフ表示に加えて、例示の薬剤投与ツール110はまた、指定のパラメータに基づいて理論患者がどのくらいの期間にわたって非保護状態に置かれるかをグラフで示す。例えば、
図17のユーザインターフェース1400は、理論患者内の時変動する治療用血漿タンパク質濃度(例えば、ライン1404)が目標トラフライン1402未満になるとの判定に応じてツール110によって表示される指示1410を示している。この実施形態では、ユーザは、目標トラフが13%まで上昇するようにスクロールバー1401を高くする。例示のツール110は、治療用血漿タンパク質濃度が13%未満である持続時間を決定すると共に、この持続時間を指示1410のところに示す。例示のツール110はまた、治療用血漿タンパク質濃度が13%目標トラフ未満にならないように新たな投与計画(例えば、間隔及び/又は用量)を決定することがある。
【0102】
[00109]
図18は、理論患者がどのくらいの期間にわたって治療用血漿タンパク質による保護を受けていなかったかに関する指示1802を表示したユーザインターフェース1800の図を含む。指示1802は、
図17と連携した決定に従った治療用血漿タンパク質濃度が13%目標トラフ未満に置かれた持続時間に基づく。例示のツール110はまた、治療用血漿タンパク質濃度が目標トラフ未満に置かれた持続時間に基づいて1年あたりの出血回数を予測する。図示した例では、指示1802は、理論患者では1週あたり39時間にわたって非保護状態に置かれることになり、1年あたり2.3回の出血を起こすことになることを示したグラフを含む。販売員は、
図17及び18に提示された情報を使用して、ヘルスケア施術者に対して、毎3日型投与計画によって患者が治療用血漿タンパク質の恩恵による保護を受けていない時間がどのように短縮される(又は、排除される)のかを示すことが可能である。
【0103】
例示の薬剤投与ツール使用に関する流れ図の実施形態
[00110]
図19及び20は本開示の例示の一実施形態による患者(又は、理論患者)に関する投与計画を決定するための例示の手順1900を示す流れ図を示している。例示の手順1900は、例えば
図1~18と連携して説明したPKサーバ108及び/又は薬剤投与ツール110によって実行することができる。手順1900を
図19及び20に示した流れ図に関連して説明しているが、手順1900に関連する機能を実行する他の多くの方法も使用し得ることを理解されたい。例えば、ブロックの多くはその順序を変更することができ、ある種のブロックは他のブロックと組み合わせることができ、且つ記載したブロックの多くは任意選択である。
【0104】
[00111]手順1900は、薬剤投与ツール110によってユーザ(例えば、ヘルスケア施術者、販売員、患者、その他)が投与計画の決定を希望するとの指示が受信されたとき(ブロック1902)に開始される。この指示は、クライアントデバイス112上における薬剤投与ツール110の動作及び/又はPKサーバ108上の薬剤投与ツールのアクセスと同時とすることが可能である。投与計画の要求の受信に応答して、薬剤投与ツールは、患者情報(例えば、体重、性別、年齢、活動レベル、その他)を求めるプロンプトを出す(ブロック1904)。この患者情報は、実際の患者に対応させることも、又は理論患者に対応させることも可能である。
【0105】
[00112]例示の薬剤投与ツール110はまた、その患者に関する以前の治療用血漿タンパク質処置を求めるプロンプトを出す(ブロック1908)。幾つかの実施形態では、薬剤投与ツール110は、記憶されたデータ構造(例えば、データベース116)から以前の処置情報にアクセスすることができる。例示の薬剤投与ツール110は、以前の処置及び/又はサンプルに基づいて、薬物動態モデル(例えば、薬物動態モデル106)にアクセスし、これを改良する(ブロック1910)。以前の処置情報は、薬剤投与ツール110に利用可能でないこと、又は薬剤投与ツール110に提供されないことがあることを理解されたい。これらの実施形態では、薬剤投与ツール110は無修正の薬物動態モデル106を使用する。さらに、この手順1900において、薬物動態モデル106が既に作成済みでPKサーバ108及び/又はツール110に提供済みであることを理解されたい。他の例では、薬物動態モデル106はブロック1902~1910で指定されたステップの間及び/又は前の任意の時点で患者からのサンプル104によって作成されることがある。
【0106】
[00113]例示の薬剤投与ツール110は、(改良済み又は修正済みの)薬物動態モデル及び患者情報を使用して、その患者に関する(推定又は概算の)薬物動態プロファイルを決定する(ブロック1912)。薬剤投与ツール110は次いで、投与間隔及び/又は目標トラフを求めるプロンプトを出す(ブロック1914)。幾つかの事例では、投与ツール110は、ユーザによってトラフが提供又は指定されていないときに、デフォルトの目標トラフ(例えば、1%)を使用することがある。薬剤投与ツール110は次に、治療用血漿タンパク質の用量と、指定された時間期間にわたる患者中の治療用血漿タンパク質の濃度の推定値と、を決定する(ブロック1916)。薬剤投与ツール110は、決定された投与及び時間経過に従った濃度を含む投与計画をユーザに対してグラフで提供する(ブロック1918)。
【0107】
[00114]投与計画の提供後に、図示した実施形態の薬剤投与ツール110は、ユーザが異なる投与間隔を選択したかどうかを判定する(ブロック1920)。事例として、ユーザは毎2日型投与間隔及び毎3日型投与間隔を参照するように選択する可能性がある。ユーザが異なる間隔を設けている場合、例示の薬剤投与ツール110はブロック1916に戻ると共に、選択された間隔に基づいて新たな投与計画を決定する。
【0108】
[00115]しかし、ユーザが異なる間隔を選択していない場合、例示の薬剤投与ツール110は、ユーザが異なる目標トラフを選択したかどうかを判定する(ブロック1922)。ユーザが異なるトラフを選択した場合、例示の薬剤投与ツール110は治療用血漿タンパク質濃度がトラフレベルになる経過時間を決定する(ブロック1924)。薬剤投与ツール110は次いで、この経過時間のグラフ指示をユーザに提供する(ブロック1926)。薬剤投与ツール110は次に、ユーザが投与ツール110に新たに提供された目標トラフに基づいた投与計画を決定させるように選択したかどうか判定する(ブロック1928)。ユーザが新たなトラフに基づいた投与計画を希望する場合、例示の手順1900はブロック1916に戻ると共に、薬剤投与ツール110は新たな投与計画を決定する。
【0109】
[00116]しかし、ユーザが新たな投与計画の参照を希望しない場合、例示の薬剤投与ツール110は目下の投与計画を記憶させるプロンプトを出す(ブロック1930)。投与計画の記憶に応じて、例示の手順1900は終了する。或いは(例えば、ユーザによって選択された場合)、例示の手順1900はブロック1902に戻り、別の患者に関する投与計画及び/又は同じ患者についてのヘルスケア施術者への別の訪問に関する投与計画を決定する。
【0110】
患者活動レベル例の実施形態
[00117]
図21及び22は、ある具体的な患者に関する薬物動態プロファイルが活動レベルに基づいて調整されている例示の一実施形態を示した図である。
図21は、第1の縦列の通常の投与計画(すなわち、予防(IU))と、第2の縦列の患者の活動レベルと、第3の縦列の投与計画に対する調整と、を含んだデータ構造2100を示している。データ構造2100の各横列は曜日に対応する。
【0111】
[00118]ある具体的な患者(例えば、Hem A)についての推定又は概算の薬物動態プロファイル及び対応する通常の投与計画が、
図3~13に関連して上で検討した手順を用いて決定される。この実施形態では、
図1の例示のPKサーバ108が、患者の活動に基づいて通常の投与計画を調整するように構成されている。この調整によって、患者中の治療用血漿タンパク質レベルを高い方の閾値を超えるように維持する必要性を上昇させるような活動レベル上昇の結果としての出血のリスクが補償される。上で検討したように、患者内の治療用血漿タンパク質の量又は濃度は、患者の代謝に依存する。
【0112】
[00119]これらの一時的なリスク上昇を補償するために、例示のPKサーバ108は、活動の週間スケジュールを求めるプロンプトを患者又はヘルスケア施術者に出すことがある。他の事例では、PKサーバ108は、患者によって管理される電子式のカレンダー又は活動ログ記録を介してスケジュールを受信することがある。この実施形態では、強度の低い活動が強度が比較的高い活動と分離されるように、その活動が強度に従って分類される。この強度はまた、活動の持続時間に基づくことがある。PKサーバ108は、様々な活動を対応する強度レベル(持続時間にわたって実施される調整を伴う)と関連させたデータ構造を含むことがある。
【0113】
[00120]例示のPKサーバ108は、活動及び関連付けされた強度を用いて通常の患者の薬物動態プロファイルを調整し、出血リスクが上昇する一時的な期間に基づいて修正済み薬物動態プロファイルを決定する。PKサーバ108は次いで、修正済み薬物動態プロファイルを比較し、計算された治療用血漿タンパク質濃度が目標トラフ未満になるような時間期間が存在するかどうかを判定する。濃度が目標トラフ未満になる時間期間が判定された場合、PKサーバ108は、どの時点及びどれだけの追加投与量で患者に治療用血漿タンパク質を与えるべきかを決定する。他の事例では、PKサーバ108及び/又はツール110は、治療中の患者と同様の活動ライフスタイルをもつサンプル患者を含んだ薬物動態モデル106を使用することがある。
【0114】
[00121]
図21及び22の例では、PKサーバ108は、月曜日に予定されている活動(例えば、マウンテンバイク)が、治療用血漿タンパク質の濃度を目標トラフレベルより高く(例えば、3%)維持する必要性を増大させるような比較的強いものであると判定する。PKサーバ108はこれに応じて、治療用血漿タンパク質の濃度が3%未満にならないように、月曜日に1000IUの追加量を患者に投与すべきであると決定する。
【0115】
[00122]
図22は、活動関連の出血リスクの一時的変化に基づいた修正済み薬物動態プロファイルのグラフ2200を示している。グラフ2200は、第1火曜日の前(追加投与が与えられる前に)、患者中の治療用血漿タンパク質の濃度が3%未満になっていることを示している。グラフ2200はまた、第2火曜日前に、月曜日に患者に1000IUが与えられたことを示している。この追加投与によって、治療用血漿タンパク質の濃度を3%目標トラフを超えたままにさせる。この方式により例示のPKサーバ108は、比較的活動的な患者に関する出血のおそれを低減している。
【0116】
治療用血漿タンパク質比較の実施形態
[00123]例示のモデル作成器102、PKサーバ108及び薬剤投与ツール110について、ある特定のタイプの治療用血漿タンパク質に関する投与計画の決定に関連して説明した。しかし、幾つかの例では、モデル作成器102は、複数のタイプ又は品名の治療用血漿タンパク質に関する薬物動態モデルを作成することができる。これによって例えば、ユーザ(例えば、販売員)は、同じ患者について異なる治療用血漿タンパク質の濃度が同じ又は異なる投与間隔でどのように違うのかの比較が可能になる。
【0117】
[00124]例えばユーザは、ツール110に患者情報を提供することがある。この患者情報は、ツール110によって、第1の品名の治療用血漿タンパク質に関する第1の薬物動態モデル及び第2の品名の治療用血漿タンパク質に関する第2の薬物動態モデル内に組み入れられる。ユーザは次いで、第1の治療用血漿タンパク質に関して処方される投与計画と第2の治療用血漿タンパク質に関して処方されるとをツール110に入力し、これによりツール110に対してユーザインターフェース内に、患者に関するある時間期間にわたる第1の治療用血漿タンパク質と第2の治療用血漿タンパク質の濃度を同時に表示させることがある。例示のツール110はまた、変更によって濃度がどのように影響を受けるかを示すために投与間隔及び/又は用量を(製造者治療用血漿タンパク質により許容又は推奨される範囲で)修正することを可能とさせ得る。
【0118】
[00125]特に、ユーザはツール110を使用して、第1の品名の治療用血漿タンパク質が、投与の間に3%の目標トラフを維持しながら、投与量2600IUの3日投与間隔で提供され得ることを示すことができる。これに比して第2の品名の治療用血漿タンパク質では、ツール110は同じ3%目標トラフを超えるように維持するために2日ごとでは2000IUの投与量を提供すべきであることを示している。この事例では、第1の品名の治療用血漿タンパク質の方が、患者を出血から安全に維持しながら1週間に必要となる注入回数を削減するような、患者に投与するためのより妥当な選択肢となり得る。
【0119】
処置の実施形態
[00126]上で検討したように、例示の薬剤投与ツール110及び/又はPKサーバ108は、患者に投与する治療用血漿タンパク質(例えば、凝固因子VIII)の量を決定する。患者に治療用血漿タンパク質を投与するために一態様では、治療用血漿タンパク質は、1つ又は複数の治療において受け容れ可能な担体を含む。「治療において(pharmaceutically)」又は「治療において(pharmacologically)」受け容れ可能とは、当技術分野でよく知られた経路を用いて投与されたときに、安定であり、凝集及び分解産物などのタンパク質劣化が抑制されており、またさらにアレルギーや他の有害反応を発現しないような分子的実体及び組成のことを意味している。「治療において受け容れ可能な担体」には、臨床的に有用な溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤及び抗真菌剤、等張性遅延剤及び吸収遅延剤、その他のいずれか及びすべてが含まれる。
【0120】
[00127]調合薬の投与は、経口的、局所的、経皮的、非経口的、吸入噴霧による、経膣的、直腸的、又は頭蓋内注入によっている。本明細書で使用する場合に非経口的という用語は、皮下注入、静脈内、筋肉内、槽内注入、又は点滴技法を含む。静脈内、皮内、筋内、乳腺内、腹腔内、髄こう内、眼球後、肺内の注入及び/又はある特定の部位への外科的植え込みによる投与も同様に企図される。一般に、組成には本質的に発熱因子が存在せず、さらには受容者に害を及ぼす可能性がある他の不純物も存在しない。
【0121】
[00128]治療用血漿タンパク質の単1回投与又は複数回投与は、ヘルスケア施術者によって選択された用量レベル及びパターンで実行される。検討したように、治療用血漿タンパク質に関する投与計画は、年齢、性別、体重、状態、活動レベル、食餌、その他を含む患者の様々な特性に基づく。投与計画はまた、処置しようとする疾患の種別、疾患の重篤度及び経過、治療用血漿タンパク質の投与が予防目的であるか又は治療目的であるか、以前の治療、患者の臨床履歴及び治療用血漿タンパク質に対する応答、並びにヘルスケア施術者の裁量に基づくことがある。一例として、組換え凝固因子FVIII治療用血漿タンパク質の典型的な用量は概ね30IU/kg~50IU/kgである。
【0122】
[00129]一実施形態では、凝固因子FVIII治療用血漿タンパク質は、治療用血漿タンパク質の治療循環レベルを維持するために最初にボーラスで投与され、続いて連続注入によって投与されることがある。別の実施形態では、創造的な化合物が1回投与で投与されることがある。当業者であれば、個々の患者に関する妥当な医療行為及び臨床条件を例示のツール110によって提供される結果と連携させた決定に従って有効投与量及び投与計画を容易に最適化できよう。投与の頻度は、薬剤の薬物動態パラメータ及び投与の経路に依存することがある。最終的な投与計画は、薬剤の作用を修正する様々な要因(例えば、薬剤の具体的な作用、損傷の重篤性及び患者の応答、患者の年齢、状態、体重、性別及び食餌、任意の感染の重篤度、投与の時間、並びに他の臨床要因)を考慮しながらヘルスケア施術者によって決定される。
【0123】
[00130]治療用血漿タンパク質の有効な用量は、15~85IU/kg(15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、62、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84又は85IU/kg)とすると共に、投与間隔は1~5日、2~5日、3~5日、3~6日、3日、4日、5日、6日、7日又は8日以上ごとに1回とすること、又は1週間に3回、又は1週間に3回以下とすることが好ましい。使用し得る追加の治療投与量は約10~約150IU/kgであり、より具体的には約100~110、110~120、120~130、130~140、140~150IU/kgであり、またさらに具体的には、約110、115、120、125、130、135、140、145又は150IU/kgである。この用量は、効能が体現できるだけ十分に大きな量である一方、重篤な副作用を回避できるように大きすぎないようにすべきである。この治療ウィンドウは、環境及び遺伝の要因に従って各患者ごとに異なる。
【0124】
[00131]患者と処置関連の変数(平均Cmax、目標トラフ未満の時間、指定の閾値(例えば、患者内の治療用血漿タンパク質の濃度の5、10、20、30%及び40%)を超えている経過時間、並びに予防時の出血のリスク)との関係は、投与計画を最適化するために使用し得る指標である。この方式によって、止血に有効であり非血友病性のFVIII範囲を有し且つ上昇させた予防的効能を有する個別化された投与計画が作成され且つ実装される。様々な実施形態では、例えば上述のようなPKガイド式投与計画に従ったとき、オンデマンドの投与計画と比較して年間出血率(「ABR」)が、少なくとも50、60、70、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99%だけ低下する。
【0125】
[00132]治療用血漿タンパク質濃度が1IU dL(-1)未満の時間が長くなることは、通常の予防投与計画で処置を受ける重篤な血友病A患者における総出血及び関節出血の増大に関連する。72h間隔でのPKガイド式投与を使用してトラフレベルを基準線より上の≧1%に目標設定することは有効な処置方針であることが立証されている。FVIIIトラフを基準線より上の>1%に目標設定することが一般に有効であるが、この方針だけではすべての患者に(とりわけ、オンデマンド治療に関して高ABRの最新履歴を有する患者で)適当とならないことがあり得る。このような患者では、より大きなトラフ用量及び/又はより頻繁な治療用血漿タンパク質濃度ピークを実現するためにより大きな用量及び/又はより短い投与間隔を含む代替的な投与計画を必要とすることがある。
【0126】
[00133]一実施形態では、PKガイド式投与計画を使用した患者は、オンデマンド治療からのABRの96%低減を意味するABR中央値の2.0(範囲0~17.1)を体験した。個々のFVIII治療用血漿タンパク質半減期(中央値:11.7hr、範囲:7.3~30.7、IQR:10.1~13.6、5~95%パーセンタイル:7.7~21.4)、またしたがってFVIII治療用血漿タンパク質の用量/注入(中央値41.3(IU/kg)、範囲18.9~84.9)は、研究コホートで広範に変動した。これによって、個別化された投与計画を用いた患者における低いABRの実現においてFVIII治療用血漿タンパク質トラフ以外の処置及び患者関連の変数の役割の検討が可能となった。
【0127】
[00134]毎3日によるPKガイド式投与を処方された患者からのデータ(n=34)を検討した。これらの患者の平均Cmaxは、各患者の個々のIVR値及び予防的注入1回あたりのその平均用量を用いて推定した。各患者における治療用血漿タンパク質の濃度と、5、10、20、30又は40%を超える治療用血漿タンパク質FVIIIレベルにある(すなわち、止血に有効な非血友病性の範囲内にある)経過時間とを個々のPKプロファイル及び実際の注入履歴からのパラメータを用いて推定した。年齢及びBMIを共変動とした分析のためには、負の2項多変量回帰モデルを使用した。
【0128】
[00135]毎3日型注入スケジュールによるPKガイド式投与の患者において、平均Cmaxの推定値は24.3~167.5%(中央値70.9%)の範囲であった。
図23のグラフ2300に示したように、低いCmaxと出血リスクの上昇の間には有意な関係が見られた。
図24は、平均Cmaxと出血リスクを提供する表2400を含む。治療用血漿タンパク質FVIIIの濃度が20%を超えている経過時間(関節出血のみ)、治療用血漿タンパク質FVIIIの濃度が30%を超えている経過時間、及び治療用血漿タンパク質の濃度が40%を超えている経過時間は、ABRの低下と有意な関係を示した。
図25は、治療用血漿タンパク質FVIIIの濃度が30%を超える総経過時間の百分率を出血リスクに関連させたグラフ2500を示している。
図26は、非血友病性範囲にある経過時間を出血リスクに関連させた表2600を示している。
【0129】
[00136]検査したすべての治療用血漿タンパク質濃度変数(例えば、5%超、10%超及び20%超)について同様の有意な関係が見出された。しかし、係数変数は1週間の間に平均治療用血漿タンパク質濃度の上昇に伴って低下した。
図27は、1週間にわたる平均治療用血漿タンパク質濃度(「AUC」)を1年にわたる出血率と関連させたグラフ2700の図示を含む。
図28は、1週間にわたる平均治療用血漿タンパク質濃度を患者の出血リスクと関連させて示した表2800を含む。
図29に示したように、平均Cmax、%超時間及び週間AUC変数はすべて強い相関があった。
【0130】
[00137]各患者において予防中でのABRの大幅な低下が見られた。しかし、
図30のグラフ3000に示したように、予防時に高ABRの患者の多くは、先行するオンデマンド期間に出血発症がより多数回あり、また予防時により低い%ABR低減であった。これらの結果によって、Cmax値及び/又は「止血に有効な」非血友病性FVIII範囲にある経過時間がより大きいことと、毎3日によるPKガイド式投与の患者における予防的効能の向上との間の関係性が立証される。逆に、低FVIII治療用血漿タンパク質範囲にある経過期間が増大すると出血のリスクは増大した。FVIII治療用血漿タンパク質トラフの目標を基準線より上に>1%とすることが一般的に有効であるが、この方針だけではすべての患者に(とりわけ、オンデマンド治療に関して高ABRの最新履歴を有する患者で)適当とならないことがあり得る。このような患者では、より大きなトラフ用量及び/又はより頻繁なピークを実現するためにより大きな用量及び/又はより短い投与間隔を含む代替的な投与計画を必要とすることがある。
【0131】
プロセッサ
[00138]例示のコンピューティングデバイスの電気システム(例えば、モデル作成器102、PKサーバ108及び/又はクライアントデバイス112)の詳細ブロック図を
図31に示す。この例では、デバイス102、108及び/又は112は、1つ又は複数のメモリデバイス3108、他のコンピュータ回路3110、及び1つ又は複数のインターフェース回路3112にアドレス/データバス3106によって通信可能に結合させた1つ又は複数のプロセッサ3104を含むことが好ましいメインユニット3102を含む。プロセッサ3104は、INTEL PENTIUM(登録商標)又はCORE(商標)のマイクロプロセッサファミリーからのマイクロプロセッサなどの適当な任意のプロセッサとすることができる。メモリ3108は、揮発性メモリ及び不揮発性メモリを含むことが好ましい。メモリ3108は、上述のように環境100内の他のデバイスと対話するソフトウェアプログラムを記憶することが好ましい。このプログラムは、適当な任意の方式でプロセッサ3104によって実行されることがある。例示の一実施形態では、メモリ3108は、デバイス102、108及び/又は112によってクラウドコンピューティングを使用できるように「クラウド」の一部とすることができる。メモリ3108はまた、デバイス102、108及び/又は112から取り出された(又は、これらを介してロードされた)ドキュメント、ファイル、プログラム、ウェブページ、患者サンプル、薬物動態モデル、患者薬物動態プロファイル、その他を表したデジタルデータを記憶することがある。
【0132】
[00139]例示のメモリデバイス3108は、ソフトウェア命令3123、患者サンプル/薬物動態モデル3124、アプリケーションインターフェース3126、ユーザインターフェースフィーチャ、許可、プロトコル、識別コード、コンテンツ情報、登録情報、イベント情報及び/又は構成を記憶する。メモリデバイス3108はまた、デバイス102、108及び/又は112が使用するために、ネットワーク又はシステムインターフェースフィーチャ、許可、プロトコル、構成及び/又はプレファランス情報3128を記憶することがある。メモリデバイス3108には、本明細書に開示した方法及び装置の実装を容易にするために他の多くのデータフィールド及び履歴を記憶することがあり得ることが理解されよう。さらに、本明細書に開示した方法及び装置の実装を容易にするために任意のタイプの適当なデータ構造(例えば、フラットファイルデータ構造、リレーショナルデータベース、ツリーデータ構造、その他)を使用し得ることが理解されよう。
【0133】
[00140]インターフェース回路3112は、イーサネットインターフェース及び/又はユニバーサルシリアルバス(USB)インターフェースなどの適当な任意のインターフェース標準を用いて実装することができる。メインユニット3102にデータ及びコマンドを入力するために、インターフェース回路3112に1つ又は複数の入力デバイス3114を接続することがある。例えば、入力デバイス3114は、キーボード、マウス、タッチ画面、トラックパッド、トラックボール、アイソポイント、イメージセンサ、文字認識、バーコードスキャナ、マイクロフォン及び/又は発話若しくは音声認識システムとすることができる。
【0134】
[00141]メインユニット3102にはインターフェース回路3112を介して、1つ又は複数のディスプレイ、プリンタ、スピーカ及び/又は他の出力デバイス3116が接続されることもある。ディスプレイは、陰極線管(CRT)、液晶ディスプレイ(LCD)、又は他のタイプの任意のディスプレイとすることができる。ディスプレイは、デバイス102、108及び/又は112の動作中に生成される視覚表示を生成する。例えば、ディスプレイは、ユーザインターフェースを提供することがあり、またデバイス102、108及び/又は112から受信した1つ又は複数のウェブページを表示することがある。ユーザインターフェースは、リンク、ボタン、タブ、チェックボックス、サムネイル、テキストフィールド、ドロップダウンボックス、その他を含むデバイス102、108及び/又は112のユーザからの人的入力を求めるプロンプトを含むことがあり、またテキスト、静止画、ビデオ、オーディオ及びアニメーションなど、ユーザ入力に応答して様々な出力を提供することがある。
【0135】
[00142]1つ又は複数の記憶デバイス3118はまた、インターフェース回路3112を介してメインユニット3102に接続されることがある。例えば、メインユニット3102には、ハードドライブ、CDドライブ、DVDドライブ及び/又は他の記憶デバイスが接続されることがある。記憶デバイス3118は、識別子、識別コード、登録情報、患者サンプル、患者情報、薬物動態モデル、患者薬物動態プロファイル、処置投与計画、統計データ、セキュリティデータ、その他など、デバイス102、108及び/又は112によって使用し得る任意のタイプのデータを記憶することができる。
【0136】
[00143]コンピューティングデバイス102、108及び/又は112はまた、ネットワーク3121(例えば、インターネット)への接続又はネットワーク3121に接続されたワイヤレス送受信機3122を介して他のネットワークデバイス3120とデータをやり取りすることができる。ネットワークデバイス3120は、あるタイプのデータ、また特に1つ又は複数のデータリポジトリに記憶し得る大量のデータを記憶し得る1つ又は複数のサーバを含むことがある。サーバは、データベース、プログラム、ファイル、ライブラリ、識別子、識別コード、登録情報、コンテンツ情報、患者サンプル、患者情報、薬物動態モデル、患者薬物動態プロファイル、処置投与計画、統計データ、セキュリティデータ、その他を含む任意の種類のデータを処理又は管理することがある。サーバは、大量データの受信、送信、処理及び記憶に関係する様々なアプリケーションを記憶し且つ動作させることができる。環境100のデバイス102、108及び/又は112に対するサポート、管理又は実装のために、1つ又は複数のサーバの様々な構成を使用し得ることを理解されたい。例えばサーバは、PKサーバ108の運用者、病院システム、患者、薬剤製造者、サービスプロバイダ、その他を含む様々な異なるエンティティによって動作させることがある。さらに、サーバ上にも記憶されたある種のデータをデバイス102、108及び/又は112のうちの1つに、例えばメモリ3108又は記憶デバイス3118内に一時的又は恒久的のいずれかで記憶することがある。ネットワーク接続は、イーサネット接続、デジタル加入者線(DSL)、電話線、同軸ケーブル、ワイヤレス接続、その他などの任意のタイプのネットワーク接続とすることができる。
【0137】
[00144]デバイス102、108及び/又は112に対するアクセスは、適当なセキュリティソフトウェア又はセキュリティ対策によって規制することが可能である。個々のサードパーティクライアント又は消費者のアクセスは、デバイス102、108及び/又は112によって規定すること、並びにある種のデータ及び/又は動作に制限することが可能である。したがって、環境100のユーザに、1つ又は複数のコンピューティングデバイス102、108及び/又は112での登録が要求されることがある。
【0138】
結論
[00145]本明細書に記載した開示の方法及び手順のすべては、1つ又は複数のコンピュータプログラム又は構成要素を使用して実装可能であることが理解されよう。これらの構成要素は、RAM、ROM、フラッシュメモリ、磁気ディスク若しくは光ディスク、光学メモリ、又は他の記憶媒体を含む任意の従来のコンピュータ可読媒体上の一連のコンピュータ命令として設けることができる。これらの命令は、この一連のコンピュータ命令を実行したときに、開示の方法及び手順の全部又は一部を実行する又は実行を容易にするプロセッサによって実行されるように構成することができる。
【0139】
[00146]本明細書に記載した例示の実施形態に対する様々な変更及び修正が当業者に明らかであることが理解されよう。このような変更及び修正は、本主題の精神及び趣旨を逸脱することなく、且つ意図した利点を損なうことなく実施可能である。したがって、このような変更及び修正が添付の特許請求の範囲によって包含されるように意図している。
【0140】
[00147]上記の例に関して、以下の項目をさらなる例示として提供する。
1.治療用血漿タンパク質投与計画をクライアントデバイスに提供するための装置であって、
サンプリングされた患者の薬物動態プロファイルに関するベイズモデルを生成するように構成されたモデル作成器であって、該ベイズモデルが、患者の年齢又は体重のうちの少なくとも一方に基づいた(i)治療用血漿タンパク質クリアランスと(ii)治療用血漿タンパク質の分布ボリューム関係とを含む、該モデル作成器と、
薬物動態サーバであり、
患者の概算薬物動態プロファイルを、前記ベイズモデルと前記患者の年齢又は前記患者の体重のうちの少なくとも一方とに基づいて決定すること、
前記患者の前記概算薬物動態プロファイルに基づいて、投与量と、ある時間期間にわたる治療用血漿タンパク質レベルとを含んだ前記治療用血漿タンパク質投与計画を決定すること、
前記患者への前記投与量の付与に関する投与間隔の受信に応答して前記治療用血漿タンパク質投与計画を修正すること、
前記修正済み治療用血漿タンパク質投与計画を前記クライアントデバイスに送信すること、
前記治療用血漿タンパク質レベルが所定の目標トラフ未満である持続時間を判定すること、及び
前記治療用血漿タンパク質レベルが前記所定の目標トラフ未満である前記持続時間に基づいて、治療用血漿タンパク質レベルが前記所定の目標トラフ未満にならないように投与計画を計算すること、
を行うように構成された薬物動態サーバと、
を備える装置。
2.前記投与間隔が2日型投与間隔であり、
前記薬物動態サーバが前記2日型投与間隔に代わって3日型投与間隔を受信したことに応答して前記治療用血漿タンパク質投与計画をさらに修正するように構成された、
項目1に記載の装置。
3.前記薬物動態サーバが、前記治療用血漿タンパク質投与計画及び前記修正済み治療用血漿タンパク質投与計画を決定するように構成された薬剤投与ツールを前記クライアントデバイスに送信するように構成された、
項目1に記載の装置。
4.前記薬物動態サーバが、前記修正済み治療用血漿タンパク質投与計画を、前記治療用血漿タンパク質を前記患者に投与するための注入ポンプに送信するようにさらに構成された、
項目1に記載の装置。
5.前記概算薬物動態プロファイルが前記患者の第1の治療用血漿タンパク質処置向けに決定された第1の概算薬物動態プロファイルであり、
前記薬物動態サーバが、前記修正済み治療用血漿タンパク質投与計画に基づいて前記患者の第2の治療用血漿タンパク質処置向けの前記患者の第2の概算薬物動態プロファイルを決定するようにさらに構成されている、
項目1に記載の装置。
6.前記治療用血漿タンパク質の前記分布ボリューム関係が、凝固因子VIII及び修正型凝固因子VIIIの少なくとも一方に関する関係である、
項目1に記載の装置。
7.治療用血漿タンパク質投与計画を提供するための方法であって、
プロセッサを介して、サンプリングされた患者の薬物動態プロファイルのベイズモデルと、該患者の年齢又は該患者の体重のうちの少なくとも一方とを用いて患者の推定薬物動態プロファイルを決定するステップであって、該ベイズモデルが、患者の年齢又は体重のうちの少なくとも一方に基づいた(i)治療用血漿タンパク質クリアランスと(ii)治療用血漿タンパク質の分布ボリューム関係とを含む、該ステップと、
プロセッサを介して、前記推定薬物動態プロファイルに少なくとも基づいて、(i)第1の投与量と(ii)前記患者中のある時間期間にわたる第1の治療用血漿タンパク質レベルとを含む第1の指定の投与間隔向けの第1の投与計画を決定するステップと、
プロセッサを介して、前記推定薬物動態プロファイルに少なくとも基づいて、(i)第2の投与量と(ii)前記患者中の前記時間期間にわたる第2の治療用血漿タンパク質レベルとを含む第2の指定の投与間隔向けの第2の投与計画を決定するステップと、
クライアントデバイスを介して、前記第1の治療用血漿タンパク質レベル及び第2の治療用血漿タンパク質レベルが所定の目標トラフ未満である持続時間を判定するステップと、
前記クライアントデバイスを介して、前記第1の治療用血漿タンパク質レベル及び第2の治療用血漿タンパク質レベルが前記所定の目標トラフ未満である前記持続時間に基づいて、治療用血漿タンパク質レベルが前記所定の目標トラフ未満にならないように投与計画を計算するステップと、
を含み、
前記患者の前記推定薬物動態プロファイルが患者固有の特性に基づいて改良される、
方法。
8.前記患者の前記推定薬物動態プロファイルが、年齢、体重、又は性別を含む、
項目7に記載の方法。
9.前記プロセッサを介して、前記患者の以前の処置に従って前記患者の前記推定薬物動態プロファイルを調整するステップをさらに含む項目7に記載の方法。
10.前記第1の投与計画が前記第2の投与計画と連携して表示されるように前記第1の投与計画及び前記第2の投与計画をクライアントデバイス上に表示するステップをさらに含む項目7に記載の方法。
11.前記第1の指定の投与間隔が48時間であり且つ前記第2の指定の投与間隔が72時間である、
項目7に記載の方法。
12.前記第1の投与量が、前記時間期間にわたる前記患者中の前記第1の治療用血漿タンパク質レベルが最小閾値レベル未満にならないように決定される、
項目7に記載の方法。
13.前記最小閾値レベルが20%未満である、
項目12に記載の方法。
14.前記患者中の前記第1の治療用血漿タンパク質レベルが、最小閾値レベル、前記第1の投与量又は前記第1の指定の投与間隔のうちの少なくとも1つに基づき、
前記患者中の前記第2の治療用血漿タンパク質レベルが前記最小閾値レベル、前記第2の投与量又は前記第2の指定の投与間隔のうちの少なくとも1つに基づく、
項目7に記載の方法。
15.前記ベイズモデルが、前記治療用血漿タンパク質が代謝される時間に対応する第1のコンパートメントと前記患者内で前記治療用血漿タンパク質のある量を実現するための用量に対応する第2のコンパートメントとを有する2コンパートメントモデルを含む、
項目7に記載の方法。