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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-06
(45)【発行日】2023-12-14
(54)【発明の名称】冷却システム
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/66 20060101AFI20231207BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20231207BHJP
   G01R 31/28 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
H01L21/66 B
H01L21/68 N
G01R31/28 H
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022131808
(22)【出願日】2022-08-22
(62)【分割の表示】P 2018054827の分割
【原出願日】2018-03-22
(65)【公開番号】P2022167947
(43)【公開日】2022-11-04
【審査請求日】2022-08-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(74)【代理人】
【識別番号】100170069
【弁理士】
【氏名又は名称】大原 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲政
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 克彦
【審査官】堀江 義隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-192643(JP,A)
【文献】特開2008-311483(JP,A)
【文献】特開平10-135315(JP,A)
【文献】特表2008-537322(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/66
H01L 21/683
G01R 31/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被冷却体と、
前記被冷却体に冷却液を供給する冷却液供給部と、
前記被冷却体に常温よりも高温の空気を供給する高温空気供給部と、
前記被冷却体の温度を設定する温度設定部と、
前記温度設定部によって設定された前記被冷却体の設定温度が予め設定された基準温度未満の場合には、前記冷却液を前記被冷却体に供給し、前記設定温度が前記基準温度以上の場合には、前記高温の空気を前記被冷却体に供給する切替部と、
を備える、冷却システム。
【請求項2】
前記高温空気供給部は、前記設定温度に応じた温度に前記高温の空気の温度を調整する温度調整部を備える、請求項1に記載の冷却システム。
【請求項3】
前記被冷却体は、プローバに備えられるウェーハチャックである、
請求項1又は2に記載の冷却システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェーハに形成された複数のチップの電気的な検査を行うプローバに関し、特にウェーハチャックを冷却する冷却システムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造工程では、半導体ウェーハに各種の処理を施して、デバイスを有する複数のチップを形成する。各チップは電気的特性が検査され、その後ダイサーで分断された後、リードフレーム等に固定されて組み立てられる。電気的特性の検査は、テスタを備えたプローバによって実施される。プローバは、ウェーハをウェーハチャックに保持させて、各チップの電極パッドにプローブを接触させる。テスタは、プローブに接続される端子から電源及び各種の試験信号をチップに供給し、チップの電極に出力される信号を解析することにより正常に動作するかを確認する。
【0003】
製品化されたデバイスは広い用途に使用され、例えば-55℃以下の低温環境下、又は200℃以上の高温環境下で使用される場合がある。このため、プローバにはこのような高低温環境下での検査が行えることが要求される。そこで、チラー機構等の冷却システム、又はヒータ機構等の加熱システムをプローバに搭載し、これらの冷却システム又は加熱システムによってウェーハチャックを設定温度に冷却又は加熱することにより、上記の高低温環境下での検査を可能としている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-311483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年のプローバによるウェーハ検査では、測定時間の短縮及びテストコストを低減するため、同時測定するチップ数が増大している。その際、1個のチップでは発熱量の小さいDRAM(Dynamic Random Access Memory)又はフラッシュメモリ等のデバイスであっても、同時測定数が多くなることによってその発熱量が大きくなっている。この場合、ウェーハチャックは、ウェーハ検査時に生じるデバイスの発熱により加熱されて昇温する。
【0006】
デバイスの低温域の検査温度(冷却システムによるウェーハチャックの設定温度)として、例えば-55℃が要求される冷却システムには、低温域での流動性を確保するため、沸点80℃以下の低沸点の冷却液が使用される。しかしながら、冷却液の沸点を超える温度にウェーハチャックが昇温した場合、冷却液が気化するので冷却液を使用することができない。また、ウェーハチャックの温度が冷却液の沸点以下であっても沸点近傍の温度では冷却液にキャビテーションが発生するので、同様に冷却液を使用することができない。つまり、従来の冷却システムでは、冷却液の沸点近傍以上の温度にウェーハチャックが昇温される高温域では、冷却液を使用することができなかった。このような問題は、ウェーハチャックの温度に対応した沸点の異なる液体に交換することが考えられるが、段取り替えの作業が必要となるので実運用は困難である。
【0007】
このような事情により、従来の冷却システムは、冷却液を使用することができない高温域では、ウェーハチャックの冷却能力が低下する。このため、特に発熱量の大きなデバイスを検査する場合、ウェーハチャックの温度が検査に要求される検査温度を超えてしまうという問題があった。
【0008】
一方、冷却液に代えて空気により、ウェーハチャックの温度を広範囲の温度域で制御することが考えられる。しかしながら、空気は熱容量が小さいため、冷却液を使用した冷却システムと比較して、低温域での冷却能力が劣るという欠点があった。
【0009】
つまり、従来のプローバの冷却システムには、低温域から高温域に至る広範囲の温度域において、有効な冷却能力を有するものがなかった。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、低温域から高温域に至る広範囲の温度域において有効な冷却能力を有するプローバの冷却システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のプローバの冷却システムは、本発明の目的を達成するために、ウェーハを保持するウェーハチャックと、ウェーハチャックに第1流路を介して接続されて冷却液をウェーハチャックに供給する冷却液供給部と、ウェーハチャックに第2流路を介して接続されて常温よりも高温の空気をウェーハチャックに供給する高温空気供給部と、ウェーハチャックの温度を設定する温度設定部と、第1流路と第2流路とのいずれか一方の流路を開状態とし、他方の流路を閉状態とする弁部材と、温度設定部によって設定されたウェーハチャックの設定温度が予め設定された基準温度未満の場合には、第1流路を介して冷却液をウェーハチャックに供給し、設定温度が基準温度以上の場合には、第2流路を介して高温の空気をウェーハチャックに供給するように弁部材を切り替える切替部と、を備える。
【0012】
本発明の一形態は、高温空気供給部は、常温の空気を圧縮する空気圧縮部と、空気圧縮部に第3流路を介して接続されるとともに、ウェーハチャックに第2流路を介して接続され、空気圧縮部からの圧縮空気を高温の空気と低温の空気とに分離して高温の空気をウェーハチャックに供給するボルテックスチューブと、を備えることが好ましい。
【0013】
本発明の一形態は、高温空気供給部は、設定温度に応じた温度に高温の空気の温度を調整する温度調整部を備えることが好ましい。
【0014】
本発明の一形態は、温度調整部は、第2流路と第3流路とに接続された第4流路と、第4流路に設けられ、第3流路を介してボルテックスチューブに流れる圧縮空気の量と、第3流路から第4流路を介して第2流路に流れる圧縮空気の量とを比例的に調整する比例制御弁と、第2流路に対する第4流路の合流点よりも下流側の第2流路に設けられ、ボルテックスチューブからの高温の空気と第4流路を介して第2流路に流れる圧縮空気とが混合された混合空気の温度を検出する空気温度検出部と、空気温度検出部によって検出された温度が設定温度に応じた温度になるように比例制御弁を制御する制御部と、を備えることが好ましい。
【0015】
本発明の一形態は、高温空気供給部は、ウェーハチャックに接続されてウェーハチャックに供給された高温の空気を排気する第1排気流路と、ボルテックスチューブに接続されて低温の空気を排気する第2排気流路と、第1排気流路と第2排気流路の各々の端部が接続された排気部と、を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、低温域から高温域に至る広範囲の温度域において有効な冷却能力を有する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施形態の冷却システムが適用されたプローバの構成を示すブロック図
図2】冷却液供給部の構成の一例を示すブロック図
図3】高温空気供給部の構成の一例を示すブロック図
図4】冷却液供給部から高温空気供給部に切り替えた場合の動作を示したフローチャート
図5】高温空気供給部から冷却液供給部に切り替えた場合の動作を示したフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面に従って本発明に係るプローバの冷却システムの好ましい実施形態について詳説する。
【0019】
図1は、実施形態の冷却システムが適用されたプローバ10の構成を示すブロック図である。
【0020】
まず、プローバ10について説明すると、このプローバ10は、検査するチップの電極に接触されるプローブ14を有するプローブカード16と、テスタ30と、を備えている。このテスタ30は、テスタ本体32と、テスタ本体32の端子とプローブカード16の端子とを電気的に接続するインターフェイス34と、を有する。テスタ30は、プローブ14に接続される端子から電源及び各種の試験信号をチップに供給し、チップの電極に出力される信号を解析することによりチップが正常に動作するかを確認する。
【0021】
次に、プローバ10の冷却システムについて説明する。実施形態の冷却システムは、ウェーハWを保持するウェーハチャック12と、ウェーハチャック12に第1流路18を介して接続されて冷却液をウェーハチャック12に供給する冷却液供給部20と、ウェーハチャック12に第2流路22を介して接続されて常温よりも高温の空気をウェーハチャック12に供給する高温空気供給部24と、冷却液供給部20からの冷却液、又は高温空気供給部24からの高温の空気をウェーハチャック12に供給するように切り替える切替部26と、を有する。また、プローバ10の冷却システムは、ウェーハチャック12の温度を設定する温度設定部36を有している。
【0022】
ウェーハチャック12はアルミニウム、銅等の金属、又は熱伝導性の良好なセラミック等の材料によって製作される。ウェーハチャック12の内部には、冷媒流路28が設けられる。前述の切替部26によって図3に示す電磁弁27が閉側に切り替えられるとともに電磁弁49が開側に切り替えられた場合、冷媒流路28には、冷却液供給部20からの冷却液が第1流路18を介して供給可能となる。これにより、ウェーハチャック12の表面が冷却液により低温域(例えば、-55℃以上40℃未満)で冷却される。また、切替部26によって図3に示す電磁弁27が開側に切り替えられるとともに電磁弁49が閉側に切り替えられた場合、冷媒流路28には、高温空気供給部24からの高温の空気が第2流路22を介して冷媒流路28に供給可能となる。これにより、ウェーハチャック12の表面が高温の空気により高温域(例えば、40℃以上150℃未満)で冷却される。なお、電磁弁27と電磁弁49とによって、本発明の弁部材が構成されている。
【0023】
実施形態の高温空気供給部24は、高温空気供給部24にて生成される高温の空気よりも高温に温度上昇したウェーハチャック12を高温域で冷却する装置である。高温空気供給部24の具体的な構成(図3参照)については後述する。
【0024】
図2は、冷却液供給部20の構成の一例を示すブロック図である。
【0025】
図2に示すように、冷却液供給部20はポンプ40、タンク42及び冷却器44等を有している。ポンプ40は、タンク42に溜められた低温の冷却液46を、第1流路18、ウェーハチャック12の冷媒流路28、流路48、及びタンク42の順に循環させることにより、ウェーハチャック12を前述の低温域で冷却する。なお、第1流路18には逆止弁41が取り付けられ、流路48には電磁弁49が取り付けられている。
【0026】
一方、タンク42の冷却液46は、ポンプ50によって流路52、冷却器44、流路56及びタンク42の順に循環され、冷却器44にて冷却されてタンク42に戻る。また、流路56には流量調整弁54が取り付けられており、この流量調整弁54によって循環する冷却液46の量を調整することにより、タンク42に溜められる冷却液46の温度が調整される。
【0027】
冷却器44には、代替フロン(例えば、ハイドロフルオロカーボン)の循環ライン58が設けられている。この循環ライン58によれば、コンプレッサ(圧縮機)60、流路62、凝縮機64、流路66及び冷却器44の順に代替フロンが循環される。また、流路66には膨張弁68が取り付けられている。冷却器44に供給された代替フロンは、冷却器44に供給された冷却液46に加熱されて気化する。なお、このとき、冷却液46は代替フロンによって冷却される。冷却器44にて気化した代替フロンは、コンプレッサ60によって圧縮された後、凝縮機64によって冷却されて液化し、その後、膨張弁68を経て冷却器44に供給される。なお、図2に示した凝縮機64は、ファン70による空冷式であるが水冷式であってもよい。
【0028】
ところで、図1に示したテスタ30によるチップの検査時に、ウェーハチャック12がチップによって加熱されて、例えば70℃以上の高温になると、ウェーハチャック12を冷却液46にて冷却することが困難になる。つまり、冷却液46として、例えば-55℃の低温でも流動性を有するフッ素系の不凍液を使用した場合、その冷却液46は例えば76℃(沸点)で気体となり、100℃以上で熱分解する。よって、このような低沸点の冷却液46は、高温域での冷媒として使用することができない。
【0029】
そこで、実施形態のプローバ10の冷却システムは、低温域で冷却能力を発揮する冷却液供給部20に加えて、高温域で冷却能力を発揮する高温空気供給部24を備えている。このように冷却システムを構成することにより、実施形態の冷却システムは、低温域から高温域に至る広範囲の温度域において有効な冷却能力を有している。以下、高温空気供給部24について説明する。
【0030】
図3は、高温空気供給部24の構成の一例を示すブロック図である。なお、図3では、冷却液供給部20を構成する逆止弁41及び電磁弁49も図示されている。
【0031】
図3に示すように、高温空気供給部24は、常温の空気を圧縮する空気圧縮部(例えば、コンプレッサ)72と、空気圧縮部72に第3流路74を介して接続されるとともに、ウェーハチャック12に第2流路22を介して接続されたボルテックスチューブ76と、を備えている。このボルテックスチューブ76は、空気圧縮部72からの圧縮空気を高温の空気と低温の空気とに分離して高温の空気をウェーハチャック12側に供給する。なお、第2流路22には逆止弁23が取り付けられている。
【0032】
ボルテックスチューブ76は公知のものであり、ノズル78から本体80に供給された圧縮空気を冷気と暖気とに分離させる装置である。ノズル78から本体80に供給された圧縮空気は、本体80の内部で断熱膨張して超音速或いは亜音速の旋回流となる。旋回流の外周部のエンタルピーは増加する一方、中心部のエンタルピーは低下するため冷気と暖気とに分離される。分離された暖気はチューブ82の先端から第2流路22に排出され、冷気は排気口84から排出される。チューブ82から排出される暖気の温度は、運転条件によるが40℃から150℃に設定することが可能である。また、冷気の温度は0℃以下に設定することが可能である。なお、第3流路74には、空気圧縮部72からの圧縮空気を一定の圧力に減圧するレギュレータ86と、流路遮断用の電磁弁88と、が設けられている。
【0033】
また、高温空気供給部24は、温度調整部90を備えている。この温度調整部90は、ウェーハチャック12に供給する高温の空気の温度を、ウェーハチャック12の設定温度に応じた温度に調整する機能を有する。前述の設定温度とは、温度設定部36にて設定される温度であって、実施形態の冷却システムによって制御するウェーハチャック12の温度である。
【0034】
温度調整部90は、第4流路92と、比例制御弁94と、空気温度検出部(例えば、温度センサ)96と、制御部98と、を備えている。
【0035】
第4流路92は、第2流路22と第3流路74とに接続されている。より具体的には、第4流路92は、電磁弁88よりも下流側の第3流路74と、ボルテックスチューブ76と逆止弁23との間の第2流路22とに接続されている。この第4流路92は、空気圧縮部72からの圧縮空気の一部を、ボルテックスチューブ76をバイパスさせて第2流路22に直接流すための流路である。
【0036】
比例制御弁94は、第4流路に設けられている。この比例制御弁94は、比例制御弁を作動させる制御信号の値に比例して、その開度が制御可能な公知の弁部材である。この比例制御弁94は、制御部98からの制御信号によって開度が制御されることにより、第3流路74を介してボルテックスチューブ76に流れる圧縮空気の量と、第3流路74から第4流路92を介して第2流路22に流れる圧縮空気の量とを比例的に調整する。
【0037】
空気温度検出部96は、第2流路22に設けられている。より具体的には、空気温度検出部96は、第2流路22に対する第4流路92の合流点93よりも下流側で、かつ逆止弁23よりも上流側の第2流路22に設けられている。この空気温度検出部96は、ボルテックスチューブ76から排出された高温の空気と、第4流路92を介して第2流路22に流れる常温の圧縮空気と、が混合された混合空気の温度を検出する。
【0038】
制御部98は、CPU(central processing unit)を含む演算処理回路100、及びメモリ等の記憶媒体102を備えている。記憶媒体102には、ウェーハチャック12の設定温度(例えば、100℃)に応じた高温の空気の温度(例えば、97℃)のデータが設定温度毎に予め記憶されている。すなわち、記憶媒体102は、ウェーハチャック12の設定温度と高温の空気の温度との関係が対応づけられた換算マップを有している。
【0039】
演算処理回路100は、温度設定部36にてウェーハチャック12の設定温度(例えば、100℃)が設定されると、その設定温度に応じた高温の空気の温度(例えば、97℃)を記憶媒体102から読み出す。そして、演算処理回路100は、空気温度検出部96にて検出される高温の空気(混合空気)の温度が、読み出した高温の空気の温度(例えば、97℃)となるように比例制御弁94に制御信号を送信し、比例制御弁94の開度を制御する。つまり、制御部98は、空気温度検出部96によって検出された温度が設定温度に応じた温度になるように比例制御弁94を制御する。これにより、実施形態の温度調整部90によれば、ボルテックスチューブ76からウェーハチャック12に供給される高温の空気の温度を、ウェーハチャック12の設定温度に応じた温度に調整することができる。
【0040】
更に、高温空気供給部24は、第1排気流路104と、第2排気流路106と、排気チャンバ108と、を備えている。この排気チャンバ108は、本発明の排気部の一例である。
【0041】
第1排気流路104は、ウェーハチャック12に接続されてウェーハチャック12に供給された高温の空気を排気する流路である。第2排気流路106は、ボルテックスチューブ76の排気口84に接続されて低温の空気を排気する流路である。排気チャンバ108には、第1排気流路104と第2排気流路106の各々の端部が接続されている。よって、このように構成された高温空気供給部24の排気系によれば、第1排気流路104から排出された高温の空気と、第2排気流路106から排出された低温の空気と、を排気チャンバ108にて混合して外部に排気することができる。このように低温の空気を高温の空気によって加温して外部に排気することにより、プローバ10及びプローバ10の近傍に存在する装置機器の結露を防止することができる。
【0042】
次に、上記の如く構成された冷却システムの動作の一例について説明する。以下の説明では、冷却液供給部20と高温空気供給部24との運転を切り替えるために設定される切替温度として40℃を例示する。この切替温度が本発明の基準温度に相当する。なお、基準温度は40℃に限定されるものではない。
【0043】
図4は、冷却システムの運転を冷却液供給部20から高温空気供給部24に切り替えた場合の動作の一例を示したフローチャートである。図4によれば、温度設定部36によってウェーハチャック12の設定温度を100℃(基準温度以上)に設定すると(S10)、冷却液46(図2参照)をタンク42に回収する動作が実行される。具体的には、乾燥空気を第1流路18に供給して、第1流路18、冷媒流路28及び流路48に溜まっている冷却液46をタンク42に回収する(S20)。
【0044】
冷却液46の回収動作が完了すると(S30)、図1の切替部26によって図3の電磁弁27が開側に切り替えられるとともに電磁弁49が閉側に切り替えられ、その後、高温空気供給部24が起動される(S40)。この後、温度調整部90によって、ボルテックスチューブ76から排出される高温の空気の温度を、ウェーハチャック12の設定温度(100℃)に応じた温度(97℃)に制御してウェーハチャック12に供給し(S50)、ウェーハチャック12を冷却する。
【0045】
これにより、実施形態の冷却システムによれば、低沸点の冷却液46を使用することが困難な100℃の高温域の設定温度であっても、ウェーハチャック12を良好に冷却することができる。また、ボルテックスチューブ76は、150℃程度の高温の空気を生成することが可能なので、ウェーハチャック12の設定温度が150℃程度であっても実施形態の高温空気供給部24によってその設定温度に対応することができる。更に、高温域の冷却媒体として常温よりも高温の空気を使用したので、ウェーハチャック12の表面の温度分布を略均一にすることができる。これにより、ウェーハチャック12に保持されるウェーハWの温度分布もその表面において略均一となるので、チップの検査を良好に行うことができる。
【0046】
図5は、冷却システムの運転を高温空気供給部24から冷却液供給部20に切り替えた場合の動作の一例を示したフローチャートである。図5によれば、温度設定部36によってウェーハチャック12の設定温度を、例えば-30℃(基準温度未満)に設定すると(S60)、まず、高温空気供給部24が停止される(S70)。高温空気供給部24の停止が完了すると、図1の切替部26によって図3の電磁弁27が閉側に切り替えられるとともに電磁弁49が開側に切り替えられ、その後、冷却液供給部20が起動される(S80)。この後、冷却液供給部20によって冷却液46の温度を、ウェーハチャック12の設定温度(-30℃未満)に応じた温度に制御して、ウェーハチャック12に冷却液46を供給し(S90)、ウェーハチャック12を冷却する。なお、冷却液48の冷却温度は、例えばコンプレッサ60(図2参照)のモーター回転数をインバーターで制御することにより制御可能である。
【0047】
これにより、実施形態の冷却システムによれば、空気では十分な冷却能力を得ることが困難な-30℃の低温域の設定温度であっても、ウェーハチャック12を良好に冷却することができる。また、冷却液46として、-55℃程度であっても流動性を有するフッ素系の不凍液を使用すれば、ウェーハチャック12の設定温度が-55℃であっても実施形態の高温空気供給部24によってその設定温度に対応することができる。
【0048】
以上の如く、実施形態のプローバ10の冷却システムによれば、低温域から高温域に至る広範囲の温度域において有効な冷却能力を有する。
【0049】
なお、実施形態では、高温の空気の供給装置としてボルテックスチューブ76を例示したが、これに限定されるものではない。例えば、電気ヒータと送風機とを備えた供給装置を構成し、電気ヒータにて加熱された高温の空気を送風機にてウェーハチャック12に供給するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0050】
10…プローバ、12…ウェーハチャック、14…プローブ、16…プローブカード、18…第1流路、20…冷却液供給部、22…第2流路、23…逆止弁、24…高温空気供給部、26…切替部、27…電磁弁、28…冷媒流路、30…テスタ、32…テスタ本体、34…インターフェイス、36…温度設定部、40…ポンプ、41…逆止弁、42…タンク、44…冷却器、46…冷却液、48…流路、49…電磁弁、50…ポンプ、52…流路、54…流量調整弁、56…流路、58…循環ライン、60…コンプレッサ、62…流路、64…凝縮機、66…流路、68…膨張弁、70…ファン、72…空気圧縮部、74…第3流路、76…ボルテックスチューブ、78…ノズル、80…本体、82…チューブ、84…排気口、86…レギュレータ、88…電磁弁、90…温度調整部、92…第4流路、94…比例制御弁、96…空気温度検出部、98…制御部、100…演算処理回路、102…記憶媒体、104…第1排気流路、106…第2排気流路、108…排気チャンバ
図1
図2
図3
図4
図5