(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-06
(45)【発行日】2023-12-14
(54)【発明の名称】クリーニングブレード、クリーニング装置、プロセスカートリッジ、及び、画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 21/00 20060101AFI20231207BHJP
【FI】
G03G21/00 318
(21)【出願番号】P 2019203606
(22)【出願日】2019-11-09
【審査請求日】2022-09-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100117215
【氏名又は名称】北島 有二
(72)【発明者】
【氏名】中井 洋志
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 一彦
【審査官】飯野 修司
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-245881(JP,A)
【文献】特開2012-137582(JP,A)
【文献】特開2015-094793(JP,A)
【文献】特開2005-266299(JP,A)
【文献】特開2000-276019(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定方向に回転又は走行する像担持体の表面に当接して前記像担持体の表面に付着した付着物を除去するクリーニングブレードであって、
前記像担持体の表面に当接する先端稜線部を形成する2つの面のうち少なくとも1つの面に、複数の凹部が設けられ、
前記複数の凹部は、
少なくとも2つ以上の凹部が互いに隣接して、少なくとも1つの凹部が前記先端稜線部に隣接して
いて、
それぞれの外形が正六角形であることを特徴とするクリーニングブレード。
【請求項2】
前記複数の凹部は、それぞれの外形が、前記先端稜線部に対して平行かつ垂直でない辺を有していることを特徴とする請求項1に記載のクリーニングブレード。
【請求項3】
前記複数の凹部は、正六角形の外形の一辺が、隣接する凹部同士で共有されたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のクリーニングブレード。
【請求項4】
前記正六角形の凹部は、その外形の一辺が、隣接する凹部同士で共有されて、その共有される一辺となる壁部の厚みWが、
1μm≦W≦5μm
なる関係を満たすように形成されたことを特徴とする請求項1~請求項3のいずれかに記載のクリーニングブレード。
【請求項5】
前記正六角形の凹部は、その外形の一片の長さAと、その深さBと、が、
1μm≦A≦10μm
0.5μm≦B≦3μm
なる関係を満たすように形成されたことを特徴とする請求項1~請求項4のいずれかに記載のクリーニングブレード。
【請求項6】
請求項1~請求項5のいずれかに記載のクリーニングブレードを備えたことを特徴とするクリーニング装置。
【請求項7】
画像形成装置本体に対して着脱可能に設置されるプロセスカートリッジであって、
請求項6に記載のクリーニング装置と前記像担持体とが一体化されたことを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項8】
前記像担持体の表面に潤滑剤を供給する潤滑剤供給装置が一体化されたことを特徴とする請求項7に記載のプロセスカートリッジ。
【請求項9】
前記潤滑剤は、脂肪酸金属塩を含有することを特徴とする請求項8に記載のプロセスカートリッジ。
【請求項10】
請求項6に記載のクリーニング装置と前記像担持体とを備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項11】
前記像担持体の表面に潤滑剤を供給する潤滑剤供給装置を備えたことを特徴とする請求項10に記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記潤滑剤は、脂肪酸金属塩を含有することを特徴とする請求項11に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、感光体ドラム、感光体ベルト、中間転写ベルト、中間転写ドラム等の像担持体の表面に付着したトナーなどの付着物を除去するクリーニングブレードと、それを備えたクリーニング装置と、それを備えたプロセスカートリッジと、複写機、プリンタ、ファクシミリ、又は、それらの複合機等の電子写真方式を用いた画像形成装置と、に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、複写機、プリンタ等の電子写真方式を用いた画像形成装置では、所定方向に回転又は走行する感光体ドラム、感光体ベルト、中間転写ベルト、中間転写ドラム等の像担持体の表面にクリーニングブレードを当接させて、像担持体上に残留した未転写トナーなどの付着物を除去する技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
詳しくは、転写部に対して像担持体の走行方向下流側では、ゴム材料からなる略板状のクリーニングブレードが像担持体の表面に摺接している。そして、クリーニングブレードによって像担持体上に残留(付着)した未転写トナーが、その他の付着物(トナー添加物や紙粉などである。)とともに除去されて、クリーニングブレードが設置されたクリーニング装置の内部に未転写トナーなどの付着物が回収されることになる。
【0004】
一方、特許文献1には、クリーニングブレードの感光体表面への密着性を向上させることなどを目的として、クリーニングブレードの長手方向端部に溝を形成したり、ブレード内部に孔を形成したりする技術が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の技術は、周囲の温度が変化したときなどに、クリーニングブレードによって像担持体の表面に付着した付着物を除去するクリーニング性能が低下してしまうことがあった。そして、そのようにクリーニング性能が低下することによって、クリーニング不良などの異常画像が発生してしまっていた。
【0006】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、像担持体の表面に付着した付着物を除去するクリーニング性能が低下してしまう不具合が生じにくい、クリーニングブレード、クリーニング装置、プロセスカートリッジ、及び、画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明におけるクリーニングブレードは、所定方向に回転又は走行する像担持体の表面に当接して前記像担持体の表面に付着した付着物を除去するクリーニングブレードであって、前記像担持体の表面に当接する先端稜線部を形成する2つの面のうち少なくとも1つの面に、複数の凹部が設けられ、前記複数の凹部は、少なくとも2つ以上の凹部が互いに隣接して、少なくとも1つの凹部が前記先端稜線部に隣接していて、それぞれの外形が正六角形であるものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、像担持体の表面に付着した付着物を除去するクリーニング性能が低下してしまう不具合が生じにくい、クリーニングブレード、クリーニング装置、プロセスカートリッジ、及び、画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】この発明の実施の形態における画像形成装置を示す全体構成図である。
【
図2】プロセスカートリッジとその近傍とを示す構成図である。
【
図4】(A)複数の凹部を示す正面図と、(B)その複数の凹部のX-X断面を示す断面図と、である。
【
図6】実施例1~15と比較例1~3との、実験条件と実験結果とを示す表図である。
【
図7】変形例としての、プロセスカートリッジとその近傍とを示す構成図である。
【
図8】実施例16~18と比較例4との、実験条件と実験結果とを示す表図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、この発明を実施するための形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
【0011】
まず、
図1及び
図2にて、画像形成装置1における全体の構成・動作について説明する。
図1は、実施の形態における画像形成装置を示す全体構成図である。
図2は、
図1の画像形成装置1に設置されたイエロー用のプロセスカートリッジ10Y(作像部)の構成を示す断面図である。
なお、4つのプロセスカートリッジ10Y、10M、10C、10BK(作像部)は、作像プロセスに用いられるトナーTの色が異なる以外はほぼ同一構造であるので、
図2ではイエロー用のプロセスカートリッジ10Yのみを代表的に図示する。
【0012】
図1において、1は画像形成装置としてのタンデム型カラー複写機、2は入力画像情報に基づいたレーザ光を発する書込み部、3は原稿Dを原稿読込部4に搬送する原稿搬送部、4は原稿Dの画像情報を読み込む原稿読込部、を示す。
また、7は転写紙等のシートが収容される給紙装置、9はシートの搬送タイミングを調整するレジストローラ、10Y、10M、10C、10BKは各色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)のトナー像が形成されるプロセスカートリッジ(作像部)、を示す。
また、16は各プロセスカートリッジ10Y、10M、10C、10BKの感光体ドラム上に形成されたトナー像を中間転写ベルト17上に重ねて転写する1次転写ローラ、17は複数色のトナー像が重ねて転写される中間転写ベルト、を示す。
また、18は中間転写ベルト17上のトナー像をシート上に転写するための2次転写ローラ、19は中間転写ベルト17を清掃する中間転写ベルトクリーニング装置、20はシート上のトナー像(未定着画像)を定着する定着装置、を示す。
【0013】
以下、画像形成装置1における、通常のカラー画像形成時の動作について説明する。
まず、原稿Dは、原稿搬送部3の搬送ローラによって、原稿台から搬送されて、原稿読込部4のコンタクトガラス5上に載置される。そして、原稿読込部4で、コンタクトガラス5上に載置された原稿Dの画像情報が光学的に読み取られる。
そして、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色の画像情報は、書込み部2に送信される。そして、書込み部2からは、各色の画像情報に基づいたレーザ光L(露光光)が、それぞれ、対応するプロセスカートリッジ10Y、10M、10C、10BKの感光体ドラム11(像担持体)上に向けて発せられる。
【0014】
一方、4つのプロセスカートリッジ10Y、10M、10C、10BKの感光体ドラム11(
図2参照)は、それぞれ、所定方向(反時計方向)に回転(走行)している。そして、まず、感光体ドラム11の表面は、帯電装置12との対向部で、一様に帯電される(帯電工程である。)。こうして、感光体ドラム11上には、帯電電位が形成される。その後、帯電された感光体ドラム11の表面は、それぞれのレーザ光Lの照射位置に達する。
書込み部2において、4つの光源から画像信号に対応したレーザ光Lが各色に対応してそれぞれ射出される。各レーザ光Lは、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの色成分ごとに別の光路を通過することになる(露光工程である。)。
【0015】
イエロー成分に対応したレーザ光Lは、紙面左側から1番目の感光体ドラム11(像担持体)の表面に照射される。このとき、イエロー成分のレーザ光は、高速回転するポリゴンミラーにより、感光体ドラム11の回転軸方向(主走査方向)に走査される。こうして、帯電装置12にて帯電された後の感光体ドラム11の表面には、イエロー成分に対応した静電潜像が形成される。
【0016】
同様に、マゼンタ成分に対応したレーザ光は、紙面左から2番目の感光体ドラム11の表面に照射されて、マゼンタ成分に対応した静電潜像が形成される。シアン成分のレーザ光は、紙面左から3番目の感光体ドラム11の表面に照射されて、シアン成分の静電潜像が形成される。ブラック成分のレーザ光は、紙面左から4番目の感光体ドラム11の表面に照射されて、ブラック成分の静電潜像が形成される。
【0017】
その後、各色の静電潜像が形成された感光体ドラム11の表面は、それぞれ、現像装置13との対向位置に達する。そして、各現像装置13から感光体ドラム11上に各色のトナーが供給されて、感光体ドラム11上の潜像が現像される(現像工程である。)。
その後、現像工程後の感光体ドラム11の表面は、それぞれ、中間転写ベルト17との対向部(1次転写ニップ)に達する。ここで、それぞれの対向部には、中間転写ベルト17の内周面に当接するように1次転写ローラ16が設置されている。そして、1次転写ローラ16の位置で、中間転写ベルト17の表面に、感光体ドラム11上に形成された各色のトナー像が、順次重ねて転写される(1次転写工程である。)。
【0018】
そして、転写工程後の感光体ドラム11の表面は、それぞれ、除電ランプの位置を通過した後に、クリーニング装置14との対向位置に達する。そして、この位置で、クリーニングブレード14aによって感光体ドラム11の表面に付着したトナー(未転写トナー)などの付着物が除去されて、除去されたトナーがクリーニング装置14内に回収される(クリーニング工程である。)。クリーニング装置14内に回収された未転写トナーは、搬送スクリュ14bによってクリーニング装置14の外部に排出(搬送)されて、廃トナー回収容器の内部に廃トナーとして回収される。
その後、感光体ドラム11の表面は、除電ランプの位置を通過して、感光体ドラム11における一連の作像プロセスが終了する。
【0019】
他方、感光体ドラム11上の各色のトナー像が重ねて転写(担持)された中間転写ベルト17は、
図1の時計方向に走行して、2次転写ローラ18との対向位置に達する。そして、2次転写ローラ18との対向位置で、中間転写ベルト17上に担持されたカラーのトナー像がシートに転写される(2次転写工程である。)。
その後、像担持体としての中間転写ベルト17の表面は、中間転写ベルトクリーニング装置19の位置に達する。そして、中間転写ベルト17上に付着した未転写トナー(付着物)がクリーニングブレード19aによって除去されて、その除去された未転写トナーが中間転写ベルトクリーニング装置19に回収されて、中間転写ベルト17における一連の転写プロセスが終了する。
【0020】
ここで、中間転写ベルト17と2次転写ローラ18との間(2次転写ニップである。)に搬送されるシートは、給紙装置7からレジストローラ9等を経由して搬送されたものである。
詳しくは、用紙などのシートを収納する給紙装置7から、給紙ローラ8により給送されたシートが、搬送ガイドを通過した後に、レジストローラ9(タイミングローラ)に導かれる。レジストローラ9に達したシートは、タイミングを合わせて、2次転写ニップに向けて搬送される。
【0021】
そして、フルカラー画像が転写されたシートは、搬送ベルトによって定着装置20に導かれる。定着装置20では、定着ベルトと加圧ローラとのニップにて、カラー画像(トナー)がシート上に定着される。
そして、定着工程後のシートは、排紙ローラによって、装置本体1外に出力画像として排出されて、一連の画像形成プロセスが完了する。
【0022】
次に、
図2にて、プロセスカートリッジ10Yについて詳述する。
図2に示すように、プロセスカートリッジ10Yは、像担持体としての感光体ドラム11と、帯電装置12(帯電ローラ)と、現像装置13と、クリーニング装置14と、が一体的にユニットとして構成されている。
【0023】
ここで、像担持体としての感光体ドラム11は、負帯電性の有機感光体であって、ドラム状導電性支持体上に感光層等を設けたものである。
感光体ドラム11は、基層としての導電性支持体上に、絶縁層である下引き層、感光層としての電荷発生層及び電荷輸送層、表面層(保護層)が順次積層されている。
感光体ドラム11は、駆動モータによって
図2の反時計方向に回転駆動される。
【0024】
図2を参照して、帯電装置12は、導電性芯金の外周に中抵抗の弾性層を被覆してなる帯電ローラである。帯電装置12には帯電用電源部から所定の電圧(DC電圧にAC電圧が重畳されたものである。)が印加されて、これにより対向する感光体ドラム11の表面を一様に帯電する。
【0025】
現像装置13は、主として、感光体ドラム11に対向する現像ローラ13aと、現像ローラ13aに対向する第1搬送スクリュ13bと、仕切部材を介して第1搬送スクリュ13bに対向する第2搬送スクリュ13cと、現像ローラ13aに対向するドクターブレード13dと、で構成される。現像ローラ13aは、内部に固設されてローラ周面に磁極を形成するマグネットと、マグネットの周囲を回転するスリーブと、で構成される。マグネットによって現像ローラ13a(スリーブ)上に複数の磁極が形成されて、現像ローラ13a上に現像剤Gが担持されることになる。
現像装置13の内部には、現像剤として、キャリアCとトナーTとからなる2成分現像剤Gが収容されている。
【0026】
クリーニング装置14には、像担持体としての感光体ドラム11に当接して感光体ドラム11の表面をクリーニングするクリーニングブレード14a、クリーニング装置14内に回収された未転写トナーを幅方向(
図2の紙面垂直方向である。)に搬送する搬送スクリュ14b(搬送部材)、などが設置されている。
【0027】
クリーニングブレード14aは、ウレタンゴム等のゴム材料からなり、感光体ドラム11表面に所定角度かつ所定圧力で当接している。そして、感光体ドラム11の表面に付着するトナーなどの付着物(シートから生じる紙粉、帯電装置12による放電時に感光体ドラム11上に生じる放電生成物、トナーに添加されている添加剤、等の付着物も含むものとする。)がクリーニングブレード14aによって機械的に掻き取られてクリーニング装置14内に回収されることになる。本実施の形態において、クリーニングブレード14aは、感光体ドラム11の回転方向に対してカウンタ方向にて感光体ドラム11に当接している。
なお、本実施の形態において、クリーニングブレード14aには、複数の凹部M(
図10参照)が形成されているが、これについては後で詳しく説明する。
【0028】
搬送スクリュ14bは、軸部上にスクリュ部が形成されたものであって、所定方向に回転駆動することで、クリーニング装置14の内部に回収されたトナーなどの付着物を廃トナー回収容器に向けて搬送する。搬送スクリュ14bは、感光体ドラム11を回転駆動する駆動モータからギア列を介して駆動力が入力されて、感光体ドラム11の駆動に連動して
図2の反時計方向に回転駆動される。
【0029】
図2にて、先に述べた作像プロセスをさらに詳しく説明する。
現像ローラ13aは、
図2中の矢印方向に回転している。現像装置13内の現像剤Gは、間に仕切部材を介在するように配設された第1搬送スクリュ13b及び第2搬送スクリュ13cの矢印方向の回転によって、トナー補給部30からトナー補給口を介して補給されたトナーTとともに撹拌混合されながら長手方向(
図2の紙面垂直方向である。)に循環する。
【0030】
そして、摩擦帯電してキャリアCに吸着したトナーTは、キャリアCとともに現像ローラ13a上に担持される。現像ローラ13a上に担持された現像剤Gは、その後にドクターブレード13dの位置に達する。そして、現像ローラ13a上の現像剤Gは、ドクターブレード13dの位置で適量に調整された後に、感光体ドラム11との対向位置(現像領域である。)に達する。
【0031】
その後、現像領域において、現像剤G中のトナーTが、感光体ドラム11の表面に形成された静電潜像に付着する。詳しくは、レーザ光Lが照射された画像部の潜像電位(露光電位)と、現像ローラ13aに印加された現像バイアスとの、電位差(現像ポテンシャル)によって形成される電界によって、トナーTが潜像に付着する。
【0032】
その後、現像工程にて感光体ドラム11に付着したトナーTは、そのほとんどが中間転写ベルト17上に転写される。そして、感光体ドラム11の表面に付着(残留)した未転写のトナーTが、クリーニングブレード14aによってクリーニング装置14内に回収される。その後、クリーニング工程後の感光体ドラム11の表面は除電ランプの位置を通過して、一連の作像プロセスが終了する。
【0033】
ここで、装置本体1に設けられたトナー補給部30は、交換可能に構成されたトナーボトル31と、トナーボトル31を保持・回転駆動するとともに現像装置13に新品トナーTを補給するトナーホッパ部32と、で構成されている。また、トナーボトル31内には、新品のトナーT(
図2では、イエローのトナーである。)が収容されている。また、トナーボトル31の内周面には、螺旋状の突起が形成されている。
なお、トナーボトル31内の新品トナーTは、現像装置13内のトナーT(既設のトナーである。)の消費にともない、トナー補給口から現像装置13内に適宜に補給されるものである。現像装置13内のトナーTの消費は、現像装置13の第2搬送スクリュ13cの下方に設置された磁気センサによって間接的又は直接的に検知される。
【0034】
以下、本実施の形態において特徴的な、クリーニングブレード14a(クリーニング装置14)の構成・動作について説明する。
先に
図2等を用いて説明したように、本実施の形態におけるクリーニング装置14には、所定方向に回転する像担持体としての感光体ドラム11の表面に当接して感光体ドラム11の表面に付着した付着物を除去するクリーニングブレード14aが設置されている。
なお、クリーニング装置としての中間転写ベルトクリーニング装置19にも、所定方向に走行する像担持体としての中間転写ベルト17の表面に当接して中間転写ベルト17の表面に付着した付着物を除去するクリーニングブレード19aが設置されている。そして、いずれのクリーニングブレード14a、19aも、大きさなどは異なるものの、大まかな形状や、後述する特徴的な凹部群Mを有する構成は同じであるため、以下、感光体ドラム11用のクリーニングブレード14aの説明をして、中間転写ベルト17用のクリーニングブレード19aの説明を適宜に省略する。
【0035】
図3(A)に示すように、本実施の形態におけるクリーニングブレード14aには、感光体ドラム11(像担持体)の表面に当接する先端稜線部14a1(エッジ部)を形成する2つの面14a2、14a3のうち少なくとも1つの面に、複数の凹部M0(凹部群M)が設けられている。
具体的に、
図3(A)に示すように、本実施の形態では、先端稜線部14a1を形成する端面14a2(カット面)と側面14a3とのいずれにも凹部群Mが形成されている。また、本実施の形態では、図示は省略するが、凹部群Mが、少なくとも、端面14a2と側面14a3との先端稜線部14a1から所定距離だけ離れる範囲内(少なくとも感光体ドラム11に接する可能性のある数10μmの範囲内である。)であって、画像領域(画像が形成される可能性がある幅方向の最大領域である。)の全域にわたって形成されている。
なお、
図4(特に、
図4(B))を参照して、1つの凹部M0は、壁部Nに囲まれて、端面14a2や側面14a3からブレード内部に板厚方向(厚み方向)に凹んで開口した部分である。
また、凹部群Mは、端面14a2と側面14a3とのうち一方の面のみに形成することもできるし、画像領域の一部の領域のみに形成することもできるし、先端稜線部14a1から短手方向(幅方向に直交する方向である。)の全域に形成することもできる。
また、クリーニングブレード14aは、ゴム材料からなる略板状の部材であって、その端面14a2(カット面)の短手方向の長さがクリーニングブレード14aの板厚(厚み)となる。
【0036】
そして、それらの複数の凹部M0(凹部群M)は、少なくとも2つ以上の凹部M0が互いに隣接して、少なくとも1つの凹部M0が先端稜線部14a1に隣接している。
換言すると、凹部群Mは、少なくとも2つ以上の凹部M0の壁部Nと壁部Nとが少なくとも1点で接していて、少なくとも1つの凹部M0の壁部Nが少なくとも1点で先端稜線部14a1に接している。
【0037】
具体的に、
図4(A)に示すように、本実施の形態における凹部群Mは、10個の凹部M0(正六角形の外形を有する凹部である。)が、1つの集合体として隣接するように形成されている。そして、これらの凹部群Mが、端面14a2と側面14a3とに、画像領域の全域にわたって、隙間をあけて複数並設されている。
また、1つの凹部群Mは、
図4(A)の下方の3つの凹部M0のそれぞれの頂部に相当する壁部Nの部分が、先端稜線部14a1に隣接している。
【0038】
このように、本実施の形態におけるクリーニングブレード14aは、先端稜線部14a1(エッジ部)を形成する2つの面14a2、14a3のうち少なくとも1つの面に凹部群Mが設けられ、その凹部群Mの少なくとも2つ以上の凹部M0が互いに隣接して、少なくとも1つの凹部M0が先端稜線部14a1に隣接している。
そのため、周囲の温度(周囲環境)が変化したときなどであっても、クリーニングブレード14aによって感光体ドラム11の表面に付着した付着物を除去するクリーニング性能が低下してしまう不具合が生じにくくなる。そのため、クリーニング不良などの異常画像も発生しにくくなる。
また、周囲環境が変化しても、クリーニングブレード14aが捲れたり異常音が生じたりする不具合が生じにくくなる。
【0039】
以下、上述した本発明の効果について補足して説明する。
クリーニングブレード14aの材料を最適化することで、クリーニング性能の低下をある程度軽減することはできるものの、周囲環境が変化したときまで、クリーニング性能を安定的に維持したり、クリーニングブレードの耐摩耗性(耐久性)を良好に維持したり、クリーニングブレード14aに求められる機能をすべて満足させるには限界がある。特に、ゴム材料の特性は周囲環境に大きく左右されるため、すべての周囲環境下において優れた摺動性を維持することは極めて困難である。例えば、一般的な使用温度の範囲内においては、ゴム特性である硬度は低温で高くなり、高温で低くなる。また、反発弾性は低温で低くなり、高温で高くなる。そのため、低温環境でのクリーニング性能を向上させるために反発弾性を高く設定すると、高温環境下で異音が発生しやすくなる。これに対して、高温環境下での捲れを抑制するために硬度を高く設定すると、逆に低温環境下で硬度が高くなり過ぎて、感光体ドラム11(被クリーニング部材)との密着性が低下してクリーニング不良が生じやすくなる。このように、クリーニングブレード14aの材料を最適化するだけでは、クリーニングブレード14aに求められる特性に対して何かしらのトレードオフが発生してしまい、すべての機能を満足させることが困難になる。
また、感光体ドラム11(被クリーニング部材)に低付着力の材料を使用、添加、コーティングなどした場合には、感光体ドラム11(被クリーニング部材)に本来求められるべき機能と耐久性との両立が困難になってしまう。
これに対して、本実施の形態では、クリーニングブレード14aが感光体ドラム11に接触する先端稜線部14a1に接した面に、他と少なくとも一点で接触する凹部M0を形成して、さらに複数の凹部M0のうち少なくとも1つが先端稜線部14a1に接しているため、クリーニングブレード14aの挙動が安定して、スティックスリップが少なく、さらにエッジ部が感光体ドラム11に側に引き込まれにくくなる。
【0040】
なお、本実施の形態において、クリーニングブレード14aとして、
図3(A)に示すように、互いに略直交する位置関係にある端面14a2と1つの側面14a3とが接する位置に先端稜線部14a1が形成されたものを用いた。
これに対して、クリーニングブレード14aとして、
図3(B)に示すように、端面14a2と1つの側面14a3とを中継する傾斜面14a4が形成されて、その傾斜面14a4と側面14a3とが接する位置に先端稜線部14a1が形成されたものを用いることもできる。
その場合、先端稜線部14a1を形成する傾斜面14a4と側面14a3とのうち、少なくとも1つの面に凹部群Mを形成して、その凹部群Mの少なくとも2つ以上の凹部M0を互いに隣接させて、少なくとも1つの凹部M0を先端稜線部14a1に隣接させることで、上述したものと同様の本発明の効果を得ることができる。
【0041】
ここで、
図4(A)を参照して、本実施の形態における複数の凹部M0は、それぞれの外形が、先端稜線部14a1に対して平行かつ垂直でない辺(傾斜している辺)を有している。
具体的に、本実施の形態における凹部M0は、正六角形の外形を有しており、先端稜線部14a1に対して垂直な2辺を有しているものの、先端稜線部14a1に対して平行でも垂直でもない傾斜した4辺を有している。
これにより、トナーから離脱した外添剤などの微粒子を凹部M0に保持して、クリーニングブレード14aと感光体ドラム11との間の潤滑効果を高めることができる。詳しくは、凹部Mの外形が、先端稜線部14a1に平行な辺や垂直な辺しか有さない多角形である場合(
図5(C)参照)は、凹部M0に保持された微粒子が感光体ドラム11の回転方向にしか動けないため、次第に微粒子の偏在化が生じて潤滑効果が持続しない。これに対して、先端稜線部14a1に対して平行でも垂直でもない傾斜した辺を有する多角形の凹部Mが形成されている場合には、凹部Mの中で微粒子が循環することができるため、潤滑効果をより持続させることが可能となる。このような多角形の中でも正六角形は回転対称の次数が最も高いため、これらを隙間なく配置したハニカム構造の面14a2、14a3(面内)で、クリーニングブレード14aの摺動の不均一性が極めて高くなる。
【0042】
図4(A)を参照して、本実施の形態における複数の凹部M0は、それぞれの外形が、多角形であって、特に正六角形である。
また、本実施の形態における複数の凹部M0は、多角形の外形の一辺が、隣接する凹部M0同士で共有されている。すなわち、凹部M0は、隣接していない壁部N以外のすべての壁部Nが、隣接する凹部M0の壁部Nと共有されている。
なお、本願明細書等において、凹部Mの「外形」とは、凹部Mが形成された面上に形成される外形(壁部Nで囲まれた縁部)であって、その面に対して垂直方向にみた形状であるものと定義する。
【0043】
このように、本実施の形態における凹部M0は、その外形が多角形であって、特に正六角形となっている。そして、その正六角形の凹部M0を交互に隙間なく配置したハニカム構造の凹部群Mとなっている。
これにより、周囲の温度(周囲環境)が変化しても、安定したクリーニング性能を維持できるとともに、クリーニングブレード14aの捲れや異常音の発生を軽減することができる。これは、多角形の凹部M0を隙間なく配置することにより、凹部M0と凹部M0との境目(壁部N)が線状の凸部になり、これらの多数の凸部(壁部N)がそれぞれ微小なブレードエッジの役割を果たすことになるためである。
【0044】
なお、
図4(B)を参照して、本実施の形態において、正六角形の凹部M0は、その外形の一辺が、隣接する凹部M0同士で共有されて、その共有される一辺となる壁部Nの厚みW(幅)が、
1μm≦W≦5μm
なる関係を満たすように形成されている。
これにより、上述した多数の凸部(壁部N)がそれぞれ微小なブレードエッジの役割を果たす効果が発揮されやすくなる。
【0045】
また、
図4(A)、(B)を参照して、本実施の形態において、正六角形の凹部M0はその外形の一片の長さAと、その深さBと、が、
1μm≦A≦10μm
0.5μm≦B≦3μm
なる関係を満たすように形成されている。
ハニカム構造を形成する凹部群Mにおける正六角形の凹部M0の一辺の長さAはできるだけ短い方が良いが、10μm以下であれば、5μm程度の大きさのトナー粒子が数個からなる凝集体をクリーニングする性能が向上する。また、凹部M0の深さBについては、トナー粒子が埋まり込んでしまわないように、3μmを上限に設定している。また、凹部M0の加工が難しくならないように、その一辺の長さAや深さBの下限を設定している。
【0046】
なお、本実施の形態では、凹部群Mを形成する凹部M0として、正六角形の外形のものを用いて、それらの凹部M0を隙間なくハニカム状に配列した。
しかし、凹部M0や凹部群Mの構成は、これに限定されることなく、例えば、
図5(A)~(G)に示すようなものとすることもできる。
そして、そのような場合であっても、先端稜線部14a1を形成する2つの面14a2、14a3のうち少なくとも1つの面に凹部群Mが設けられ、その凹部群Mの少なくとも2つ以上の凹部M0が互いに隣接して、少なくとも1つの凹部M0が先端稜線部14a1に隣接していることで、周囲の温度(周囲環境)が変化しても、安定したクリーニング性能を維持できるとともに、クリーニングブレード14aの捲れや異常音の発生を軽減することができる。
【0047】
具体的に、
図5(A)に示す凹部群Mは、複数の正方形の凹部M0と複数の正三角形の凹部M0とで構成されている。複数の正方形の凹部M0は、隣接する凹部M0に角部で接していて、そのうちの1つの辺が先端稜線部14a1に接している。また、複数の正三角形の凹部M0は、隣接する凹部M0に頂部と辺とが接していて、いずれの凹部M0も先端稜線部14a1に接していない。また、複数の正方形の凹部M0と複数の正三角形の凹部M0とは離れた位置に形成されている。
また、
図5(B)に示す凹部群Mは、複数の円形の凹部M0が密集して配置されたものである。複数の円形の凹部M0は、隣接する凹部M0に接していて、そのうちの一部の凹部M0が先端稜線部14a1に接している。また、円形の凹部M0は、先端稜線部14a1に対して平行でも垂直でもない辺(壁部N)のみを有している。
また、
図5(C)に示す凹部群Mは、複数の正方形の凹部M0が隙間なく隣接して配置されたものである。複数の正方形の凹部M0は、隣接する凹部M0に辺同士が接していて、そのうちの一部の凹部M0の辺が先端稜線部14a1に接している。
また、
図5(D)に示す凹部群Mも、複数の正方形の凹部M0が隙間なく隣接して配置されたものである。しかし、複数の正方形の凹部M0は、隣接する凹部M0に辺同士が接しているものの、そのうちの一部の凹部M0の角部が先端稜線部14a1に接している。また、正方形の凹部M0は、先端稜線部14a1に対して平行でも垂直でもない傾斜した辺(壁部N)のみを有している。
また、
図5(E)に示す凹部群Mは、複数の正八角形の凹部M0が密集して配置されたものである。複数の正八角形の凹部M0は、隣接する凹部M0に辺同士が接していて、そのうちの一部の凹部M0の辺が先端稜線部14a1に接している。また、正八角形の凹部M0は、先端稜線部14a1に対して平行でも垂直でもない傾斜した辺(壁部N)を有している。
また、
図5(F)に示す凹部群Mは、複数の正三角形の凹部M0が隙間なく隣接して配置されたものである。複数の正三角形の凹部M0は、隣接する凹部M0に辺同士が接していて、そのうちの一部の凹部M0の辺が先端稜線部14a1に接している。また、正三角形の凹部M0は、先端稜線部14a1に対して平行でも垂直でもない傾斜した辺(壁部N)を有している。
また、
図5(G)に示す凹部群Mは、複数の正六角形の凹部M0が隙間なくハニカム状に配置されたものである。複数の正六角形の凹部M0は、隣接する凹部M0に辺同士が接していて、そのうちの一部の凹部M0の辺が先端稜線部14a1に接している。また、正六角形の凹部M0は、先端稜線部14a1に対して平行でも垂直でもない傾斜した辺(壁部N)を有している。
【0048】
図6は、上述した本発明の種々の効果を確認するためにおこなった実験(実施例1~15、比較例1~3)の、実験条件と実験結果とを示す表図である。
(1)実施例1
図6を参照して、実施例1は、画像形成装置として、本実施の形態におけるものと略同等である複写機「imagio MPC2503」(リコー社製)の黒色用のプロセスカートリッジ10BKのクリーニングブレード14aに対して、端面14a2(カット面)の全面が
図4に示すようなハニカム状の凹部群Mが形成されるように改造したものを用いた。なお、クリーニングブレード14aは、エキシマレーザ(東成エレクトロビーム社)を用いて加工して複数の凹部M0(凹部群M)を形成した。このとき、正六角形の凹部M0は、一辺の長さAが10μm、深さBが3μm、壁部Nの厚みWが1μmとなるように、レーザ出力条件を調整した。
そして、その改造した複写機を用いて、モノクロ画像を印刷して、クリーニングブレード14aの摺動性に基づく特性評価((A)低温環境下におけるクリーニング不良と、(B)高温環境下における異常音及びブレード捲れと、である。)を以下のようにおこなった。
(A)低温環境下でのクリーニング不良の評価
5℃15%の温湿度環境にて、2次転写電流を切った状態で黒縦帯チャートを連続100枚印刷(通紙)して、印刷画像におけるクリーニング不良の発生の有無を確認した。クリーニング不良が発生した場合には、発生開始するまでの通紙枚数を記録した。
(B)高温環境下での異音、ブレード捲れ評価
(A)の評価後のクリーニングブレード14aを、現像装置13から感光体ドラム11上にトナーが供給されないように改造した複写機「imagio MPC2503」(リコー社製)のプロセスカートリッジ10BKに装着して、35℃85%の温湿度環境にて、白紙を連続100枚目まで印刷(通紙)して、異音、ブレード捲れの発生の有無を確認した。異音やブレード捲れが発生した場合には、発生するまでの通紙枚数を記録した。なお、このとき、(A)の評価後のクリーニングブレード14aは清掃せずに、トナーや紙粉などが付着した状態のものをそのまま使用した。
【0049】
(2)実施例2
クリーニングブレード14aの端面14a2(カット面)に形成した凹部M0の外形(凹部群Mの形状)を
図5(G)に示したものとした以外は、実施例1と同様に構成して評価をおこなった。
(3)実施例3
クリーニングブレード14aの端面14a2(カット面)に形成した凹部M0の外形(凹部群Mの形状)を
図5(F)に示したものとした以外は、実施例1と同様に構成して評価をおこなった。なお、このとき、正三角形の凹部M0の一辺の長さAは10μm、深さBは3μm、壁部Nの厚みWは1μmに設定した。
(4)実施例4
クリーニングブレード14aの端面14a2(カット面)に形成した凹部M0の外形(凹部群Mの形状)を
図5(D)に示したものとした以外は、実施例1と同様に構成して評価をおこなった。なお、このとき正方形の凹部M0の一辺の長さAは10μm、深さBは3μm、壁部Nの厚みWは1μmに設定した。
(5)実施例5
クリーニングブレード14aの端面14a2(カット面)に形成した凹部M0の外形(凹部群Mの形状)を
図5(C)に示したものとした以外は、実施例1と同様に構成して評価をおこなった。なお、このとき、正方形の凹部M0の一辺の長さAは10μm、深さBは3μm、壁部Nの厚みWは1μmに設定した。
(6)実施例6
クリーニングブレード14aの端面14a2(カット面)に形成した凹部M0の外形(凹部群Mの形状)を
図5(B)に示したものとした以外は、実施例1と同様に構成して評価をおこなった。なお、このとき、円形の凹部M0の直径Aは10μm、深さBは3μm、壁部Nの厚みWは1μmに設定した。
【0050】
(7)実施例7
クリーニングブレード14aの端面14a2(カット面)に形成した正六角形の凹部M0(一辺の長さA:10μm、深さB:3μm)の壁部Nの厚みWを5μmに設定した以外は、実施例1と同様に構成して評価をおこなった。
(8)実施例8
クリーニングブレード14aの端面14a2(カット面)に形成した正六角形の凹部M0(一辺の長さA:10μm、深さB:3μm)の壁部Nの厚みWを8μmに設定した以外は、実施例1と同様に構成して評価をおこなった。
(9)実施例9
クリーニングブレード14aの端面14a2(カット面)に形成した正六角形の凹部M0(一辺の長さA:10μm、深さB:3μm)の壁部Nの厚みWを0.5μmに設定した以外は、実施例1と同様に構成して評価をおこなった。
(10)実施例10
クリーニングブレード14aの端面14a2(カット面)に形成した正六角形の凹部M0(深さB:3μm、壁部Nの厚みW:1μm)の一辺の長さAを1μmに設定した以外は、実施例1と同様に構成して評価をおこなった。
(11)実施例11
クリーニングブレード14aの端面14a2(カット面)に形成した正六角形の凹部M0(深さB:3μm、壁部Nの厚みW:1μm)の一辺の長さAを12μmに設定した以外は、実施例1と同様に構成して評価をおこなった。
(12)実施例12
クリーニングブレード14aの端面14a2(カット面)に形成した正六角形の凹部M0(深さB:3μm、壁部Nの厚みW:1μm)の一辺の長さAを0.5μmに設定した以外は、実施例1と同様に構成して評価をおこなった。
(13)実施例13
クリーニングブレード14aの端面14a2(カット面)に形成した正六角形の凹部M0(一辺の長さA:10μm、壁部Nの厚みW:1μm)の深さBを0.5μmに設定した以外は、実施例1と同様に構成して評価をおこなった。
(14)実施例14
クリーニングブレード14aの端面14a2(カット面)に形成した正六角形の凹部M0(一辺の長さA:10μm、壁部Nの厚みW:1μm)の深さBを4μmに設定した以外は、実施例1と同様に構成して評価をおこなった。
(15)実施例15
クリーニングブレード14aの端面14a2(カット面)に形成した正六角形の凹部M0(一辺の長さA:10μm、壁部Nの厚みW:1μm)の深さBを0.3μmに設定した以外は、実施例1と同様に構成して評価をおこなった。
【0051】
(16)比較例1
クリーニングブレード14aの端面14a2(カット面)にいかなる加工(凹部M0)も施さなかった以外は、実施例1と同様に構成して評価をおこなった。
(17)比較例2
クリーニングブレード14aの端面14a2(カット面)に、複数の凹部M0ではなくて、先端稜線部14a1に平行な溝を短手方向に間隔をあけて複数形成した以外は、実施例1と同様に構成して評価をおこなった。なお、このとき、溝の幅を3μm、溝と溝の短手方向の間隔は3μm、深さBは3μmに設定した。
(18)比較例8
クリーニングブレード14aの端面14a2(カット面)に、複数の凹部M0ではなくて、先端稜線部14a1に対して45度傾斜した溝を短手方向に間隔をあけて平行に複数形成した以外は、実施例1と同様に構成して評価をおこなった。なお、このとき、溝の幅(-45度の方向の幅である。)を3μm、溝と溝の短手方向の間隔は3μm、深さBは3μmに設定した。
【0052】
(実験結果1)
実施例1~5と実施例6との比較から、凹部M0が先端稜線部14a1に対して平行でも垂直でもない傾斜した辺を有していたり、円形の凹部M0であったりする方が、低温時のクリーニング不良や高温時の異音に対して効果が大きくなることがわかる。特に、高温時の異音に対して効果が大きくなる。これは、実施例の評価内容から、クリーニングブレード14aに形成された凹部M0に、低温時にトナーや外添剤などの微粒子が保持され、高温時にもその微粒子が保持され続けていると考えられる。
(実験結果2)
実施例1~4と実施例5との比較から、凹部M0が多角形である場合には、凹部M0が円形である場合に比べて、低温時のクリーニング性に対する効果がやや大きくなることがわかる。これは、凹部M0の壁部Nが直線状である方が、微粒子の挙動が安定するためと考えられる。
(実験結果3)
実施例1~3と実施例4との比較から、隣接する凹部M0同士で壁部Nを共有する場合には、特に低温時におけるクリーニング不良に対して効果が大きくなることがわかる。これは、凹部M0と凹部M0との境目にあたる壁部Nが見かけ上は線状の凸部になり、それぞれ微小なブレードエッジの役割を果たすためである。
(実験結果4)
実施例1、2と実施例3との比較から、多角形の凹部M0が正六角形である場合には、特に本発明の効果が大きくなることがわかる。これは、正六角形は回転対称の次数が最も高いため、これらを隙間なく配置したハニカム構造の面内ではブレード摺動の不均一性が特に解消されるためである。
(実験結果5)
実施例1、2、7と実施例8、9との比較から、低温時のクリーニング性に差が見られており、壁部Nの厚みWには微小なブレードエッジとしての挙動を示す範囲に良好な範囲(1μm≦W≦5μm)があることがわかる。
(実験結果6)
実施例1、2、10、13と実施例11、12、14、15との比較から、凹部M0の一辺の長さAが短すぎたり深さBが浅すぎたりする場合には、高温時の異音に対する余裕度がやや下がってしまうことがわかる。これは、一辺の長さAが短すぎたり深さBが浅すぎたりする場合には、凹部M0に微粒子が充分に保持されていないためと考えられる。
また、一辺の長さAが長すぎたり深さBが深すぎたりする場合には、クリーニング性の余裕度がやや低下してしまうことがわかる。これは、一辺の長さAが長すぎたり深さBが深すぎたりする場合には、逆に凹部M0で微粒子を抱え込みすぎてしまうためと考えられる。
これらのことから、1μm≦A≦10μm、0.5μm≦B≦3μmなる範囲内で凹部M0を形成することが好ましい。
【0053】
<変形例>
図7に示すように、変形例としてのプロセスカートリッジ10Y(画像形成装置1)には、感光体ドラム11(像担持体)の表面に潤滑剤を供給する潤滑剤供給装置15が設けられている。具体的に、プロセスカートリッジ10Yには、感光体ドラム11、帯電装置12、現像装置13、クリーニング装置14、潤滑剤供給装置15が一体化されている。なお、変形例におけるクリーニング装置14のクリーニングブレード14aは、本実施の形態のものと同様に構成されている。
詳しくは、
図7を参照して、潤滑剤供給装置15は、感光体ドラム11に摺接する発泡弾性層が周設されて感光体ドラム11上に潤滑剤を供給する潤滑剤供給ローラ15a、潤滑剤供給ローラ15a(発泡弾性層)に摺接する固形潤滑剤15b、固形潤滑剤15bを潤滑剤供給ローラ15aに向けて付勢する圧縮スプリング15c、感光体ドラム11に当接して感光体ドラム11上に供給された潤滑剤を薄層化(均一化)する薄層化ブレード15d(均しブレード)、等で構成される。
潤滑剤供給装置15は、クリーニング装置14(クリーニングブレード14a)に対して感光体ドラム11の回転方向下流側であって、帯電装置12に対して感光体ドラム11の回転方向上流側に配設されている。また、薄層化ブレード15dは、潤滑剤供給ローラ15aに対して感光体ドラム11の回転方向下流側に配設されている。
【0054】
潤滑剤供給ローラ15aは、金属材料からなる軸部(芯金)上に発泡ポリウレタン(ウレタンフォーム)からなる発泡弾性層が形成されたローラ状部材であって、その発泡弾性層が感光体ドラム11表面に接触した状態で
図2の反時計方向に回転する。これにより、固形潤滑剤15bから潤滑剤供給ローラ15aを介して感光体ドラム11上に潤滑剤が供給される。
潤滑剤供給ローラ15aは、
図2の反時計方向に回転する感光体ドラム11に対してカウンタ方向(逆方向)で摺接するように回転駆動される(
図2の反時計方向の回転である。)。
また、潤滑剤供給ローラ15aは、固形潤滑剤15bと感光体ドラム11とに摺接するように配置されていて、潤滑剤供給ローラ15aが回転することによって固形潤滑剤15bから潤滑剤を掻き取り、その潤滑剤を感光体ドラム11上に塗布する。
また、固形潤滑剤15bの後方部には、潤滑剤供給ローラ15aと固形潤滑剤15bとの接触ムラをなくすために圧縮スプリング15cが配置されていて、固形潤滑剤15bを潤滑剤供給ローラ15aに付勢している。
ここで、変形例において、固形潤滑剤15bは、ステアリン酸亜鉛などの脂肪酸金属塩を含有するものである。
このように潤滑剤供給装置15を設けた場合には、クリーニングブレード14aの凹部M0に潤滑剤が保持されることになるため、特に優れた潤滑性が得られて、先に説明した本発明における効果が長期にわたって維持されることになる。
【0055】
薄層化ブレード15dは、ウレタンゴム等のゴム材料からなる板状部材であって、感光体ドラム11表面に所定角度かつ所定圧力で当接している。薄層化ブレード15dは、潤滑剤供給ローラ15aに対して、感光体ドラム11の回転方向下流側に配設されている。そして、潤滑剤供給ローラ15aによって感光体ドラム11上に供給された潤滑剤は、薄層化ブレード15dによって、感光体ドラム11上に均一かつ適量に薄層化される。
固形潤滑剤15bを潤滑剤供給ローラ15aを介して感光体ドラム11表面に塗布すると、感光体ドラム11表面には粉体状の潤滑剤が塗布されるが、この状態のままでは潤滑性は充分に発揮されないため、薄層化ブレード15dが潤滑剤を薄層化・均一化する部材として機能することになる。薄層化ブレード15dにより、感光体ドラム11上での潤滑剤の皮膜化がおこなわれて、潤滑剤はその潤滑性を充分に発揮することになる。
なお、変形例において、薄層化ブレード15dも、本実施の形態のものと同様に、複数の凹部M0(凹部群M)を形成することができる。
【0056】
ここで、潤滑剤(固形潤滑剤15b)の材料としては、均一に素早く感光体ドラム11の表面に延展してドラム表面を保護するとともに、クリーニングブレード14aを保護するために潤滑性を付与する働きを持つものが好ましい。そのような材料として、無機潤滑剤、脂肪酸金属塩、ワックス類、オイル類、フッ素樹脂などが挙げられるが、特に脂肪酸金属塩はそのような材料として好適である。
また、脂肪酸金属塩としては、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸鉛、ステアリン酸鉄、ステアリン酸ニッケル、ステアリン酸コバルト、ステアリン酸銅、ステアリン酸ストロンチウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸カドミウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、オレイン酸亜鉛、オレイン酸マグネシウム、オレイン酸鉄、オレイン酸コバルト、オレインサン銅、オレイン酸鉛、オレイン酸マンガン、パルミチン酸亜鉛、パルミチン酸コバルト、パルミチン酸鉛、パルミチン酸マグネシウム、パルミチン酸アルミニウム、パルミチン酸カルシウム、カプリル酸鉛、カプリン酸鉛、リノレン酸亜鉛、リノレン酸コバルト、リノレン酸カルシウム、リシノール酸亜鉛、リシノール酸カドミウム及びそれらの混合物があるが、これに限るものではない。また、これらを混合して使用してもよい。特に、脂肪酸金属塩としてのステアリン酸亜鉛は、感光体ドラム11への成膜性に優れることから、潤滑剤の主成分(潤滑剤の全体に占める重量比が50%よりも多い成分である。)として使用することが好ましい。
【0057】
図8は、上述した変形例における効果を確認するためにおこなった実験(実施例16~18、比較例4)の、実験条件と実験結果とを示す表図である。
(1)実施例16
プロセスカートリッジとして潤滑剤供給装置15が設置されたもの(
図7に示すものである。)を用いた以外は、実施例1と同様に構成して評価をおこなった。なお、このとき、潤滑剤(固形潤滑剤15b)として、ステアリン酸亜鉛をバー状に成型したものを使用した。
(2)実施例17
潤滑剤(固形潤滑剤15b)としてラウリン酸亜鉛をバー状に成形したものを使用した以外は、実施例16と同様に構成して評価をおこなった。
(3)実施例18
潤滑剤(固形潤滑剤15b)としてパラフィンワックスをバー状に成形したものを使用した以外は、実施例16と同様に構成して評価をおこなった。
(4)比較例4
クリーニングブレード14aの端面14a2(カット面)にいかなる加工(凹部M0)も施さなかった以外は、実施例16と同様に構成して評価をおこなった。
【0058】
(実験結果1)
実施例16~18と比較例4との比較から、潤滑剤供給装置15を設置した場合にも、本実施の形態のものと同様に、本発明の効果は良好に発揮されることがわかった。
(実験結果2)
実施例16、17と実施例18との比較から、潤滑剤が脂肪酸金属塩を含む場合には、本発明の効果がより大きくなることがわかった。
(実験結果3)
実施例16と実施例17との比較から、脂肪酸金属塩がステアリン酸亜鉛である場合には、本発明の効果がさらに大きくなることがわかった。
【0059】
以上説明したように、本実施の形態におけるクリーニングブレード14a、19aは、所定方向に回転又は走行する像担持体としての感光体ドラム11や中間転写ベルト17の表面に当接して、その表面に付着した付着物を除去するものであって、感光体ドラム11や中間転写ベルト17の表面に当接する先端稜線部14a1を形成する2つの面14a2、14a3のうち少なくとも1つの面に、複数の凹部M0(凹部群M)が設けられている。そして、その複数の凹部M0(凹部群M)は、少なくとも2つ以上の凹部M0が互いに隣接して、少なくとも1つの凹部M0が先端稜線部14a1に隣接している。
これにより、感光体ドラム11や中間転写ベルト17の表面に付着した付着物を除去するクリーニング性能が低下してしまう不具合が生じにくくなる。
【0060】
なお、本実施の形態では、作像部における各部(感光体ドラム11、帯電装置12、現像装置13、クリーニング装置14などである。)を一体化してプロセスカートリッジ10Y、10M、10C、10BKを構成して、作像部のコンパクト化とメンテナンス作業性の向上とを図っている。これに対して、クリーニング装置14をプロセスカートリッジの構成部材とせずに、単体で装置本体1に対して着脱可能(交換可能)に設置されるように構成することもできる。そして、このような場合にも、本実施の形態のものと同様の効果を得ることができる。
なお、「プロセスカートリッジ」とは、像担持体を帯電する帯電装置と、像担持体上に形成された潜像を現像する現像装置と、像担持体上をクリーニングするクリーニング装置と、のうち少なくとも1つと、像担持体と、が一体化されて、画像形成装置本体に対して着脱可能に設置されるユニットと定義する。
【0061】
また、本実施の形態では、像担持体としての感光体ドラム11や中間転写ベルト17の表面に付着した付着物をクリーニングするクリーニングブレード14a、19aに対して本発明を適用した。これに対して、像担持体としての感光体ベルトの表面に付着した付着物をクリーニングするクリーニングブレードや、中間転写ドラムの表面に付着した付着物をクリーニングするクリーニングブレード、などに対しても、当然に本発明を適用することができる。
また、本実施の形態では、カラー画像形成装置1に設置されたクリーニングブレード14aに対して本発明を適用したが、モノクロ画像形成装置に設置されたクリーニングブレード14aに対しても当然に本発明を適用することができる。
そして、それらのような場合にも、本実施の形態や変形例のものと同様の効果を得ることができる。
【0062】
なお、本発明が本実施の形態に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、本実施の形態の中で示唆した以外にも、本実施の形態は適宜変更され得ることは明らかである。また、前記構成部材の数、位置、形状等は本実施の形態に限定されず、本発明を実施する上で好適な数、位置、形状等にすることができる。
【符号の説明】
【0063】
1 画像形成装置(画像形成装置本体)、
10Y、10M、10C、10BK プロセスカートリッジ、
11 感光体ドラム(像担持体)、
14 クリーニング装置、
14a クリーニングブレード、
14a1 先端稜線部(エッジ部)、
14a2 端面(カット面)、
14a3 側面、
14a4 傾斜面、
15 潤滑剤供給装置、
19 中間転写ベルトクリーニング装置(クリーニング装置)、
19a クリーニングブレード、
M 凹部群(複数の凹部)、
M0 凹部、
N 壁部。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0064】