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特許7398121カンキツの品種の識別方法および識別キット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-06
(45)【発行日】2023-12-14
(54)【発明の名称】カンキツの品種の識別方法および識別キット
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6895 20180101AFI20231207BHJP
   C12Q 1/686 20180101ALI20231207BHJP
【FI】
C12Q1/6895 Z
C12Q1/686 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021026673
(22)【出願日】2021-02-22
(65)【公開番号】P2021185904
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2022-06-10
(31)【優先権主張番号】P 2020094974
(32)【優先日】2020-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 [1]令和1年11月に発行された「日本DNA多型学会第28回学術集会抄録集」(発行所 一般社団法人 多型学会第28回学術集会運営委員会)第57頁において公開。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 [2]令和1年11月29日に京都大学国際科学イノベーション棟において開催された、日本DNA多型学会第28回学術集会において公開。
(73)【特許権者】
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】島田 武彦
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 朋子
(72)【発明者】
【氏名】藤井 浩
【審査官】小田 浩代
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-259755(JP,A)
【文献】Fujii H. et al.,Breeding Science,2016年,Vol. 66,pp. 683-691, Supplemental table 1
【文献】二宮 泰造 ほか,園芸学研究,Vol. 14,2015年,pp. 127-133
【文献】Fujii H. et al.,Tree Genetics & Genomes,2013年,Vol. 9,pp. 145-153, Table S2
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N15/00-15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カンキツの品種の識別方法であって、
下記(a)(l)の一塩基多型(SNP)マーカー:
(a)配列番号1で表される塩基配列の31番目の塩基に相当するSNPマーカー(SI312);
(b)配列番号2で表される塩基配列の33番目の塩基に相当するSNPマーカー(SI001);
(c)配列番号3で表される塩基配列の36番目の塩基に相当するSNPマーカー(SI322);
(d)配列番号4で表される塩基配列の66番目の塩基に相当するSNPマーカー(SI149)
(e)配列番号5で表される塩基配列の35番目の塩基に相当するSNPマーカー(SI306);
(f)配列番号6で表される塩基配列の37番目の塩基に相当するSNPマーカー(SI201);
(g)配列番号7で表される塩基配列の44番目の塩基に相当するSNPマーカー(SI210);および
(h)配列番号8で表される塩基配列の74番目の塩基に相当するSNPマーカー(SI381);
(i)配列番号41で表される塩基配列の40番目の塩基に相当するSNPマーカー(SI145);
(j)配列番号42で表される塩基配列の33番目の塩基に相当するSNPマーカー(SI2711);
(k)配列番号43で表される塩基配列の38番目の塩基に相当するSNPマーカー(SI281);および、
(l)配列番号44で表される塩基配列の55番目の塩基に相当するSNPマーカー(SI2042);
からなるSNPマーカーの群より選択される少なくとも1つのSNPマーカーを用いて、カンキツ被検体の前記品種を特定する特定工程を含み、
前記品種は、あすき、璃の香、みはや、あすみ、津之望、はるひ、津之輝、西南のひかり、麗紅、はれひめ、せとか、甘平、愛媛果試第28号、はるみ、かんきつ中間母本農6号、たまみ、西之香、および、あまかであり、
前記特定工程において、前記カンキツ被検体について、下記(A)~(AG)からなる群より選択される少なくとも1つの前記品種の特定を行い:
(A)前記SI001、前記SI210、および前記SI306からなるサブセット、または、前記SI306、前記SI201、および前記SI210からなるサブセットを用いた、あすきの特定;
(B)前記SI145、前記SI210および前記SI281からなるサブセット、または、前記SI322、前記SI281および前記SI201からなるサブセット、または、前記SI322、前記SI281および前記SI381からなるサブセット、または、前記SI281、前記SI2711および前記SI210からなるサブセット、または、前記SI281、前記SI210および前記SI381からなるサブセットを用いた、あすきの特定;
(C)前記SI306および前記SI322からなるサブセットを用いた、璃の香の特定;
(D)前記SI201、前記SI2042および前記SI312からなるサブセット、または、前記SI312、前記SI2042および前記SI381からなるサブセット、または、前記SI312、前記SI322および前記SI306からなるサブセット、または、前記SI312、前記SI306および前記SI201からなるサブセット、または、前記SI312、前記SI306および前記SI381からなるサブセット、または、前記SI2042、前記SI001および前記SI145からなるサブセット、または、前記SI2042、前記SI001および前記SI281からなるサブセット、または、前記SI2042、前記SI001および前記SI201からなるサブセット、または、前記SI2042、前記SI145および前記SI322からなるサブセット、または、前記SI2042、前記SI145および前記SI306からなるサブセット、または、前記SI2042、前記SI322および前記SI306からなるサブセット、または、前記SI2042、前記SI322および前記SI201からなるサブセット、または、前記SI2042、前記SI281および前記SI306からなるサブセット、または、前記SI2042、前記SI2711および前記SI201からなるサブセット、または、前記SI2042、前記SI306および前記SI201からなるサブセット、または、前記SI2042、前記SI306および前記SI210からなるサブセット、または、前記SI2042、前記SI306および前記SI381からなるサブセット、または、前記SI2042、前記SI201および前記SI210からなるサブセット、または、前記SI2042、前記SI201および前記SI381からなるサブセット、または、前記SI001、前記SI322および前記SI306からなるサブセット、または、前記SI001、前記SI281および前記SI306からなるサブセット、または、前記SI001、前記SI306および前記SI201からなるサブセット、または、前記SI322、前記SI281および前記SI306からなるサブセット、または、前記SI322、前記SI306および前記SI210からなるサブセット、または、前記SI281、前記SI306および前記SI381からなるサブセット、または、前記SI306、前記SI201および前記SI210からなるサブセットを用いた、璃の香の特定;
(E)前記SI001および前記SI306からなるサブセットを用いた、みはやの特定;
(F)前記SI2042、前記SI210、前記SI306および前記SI312からなるサブセット、または、前記SI312、前記SI2042、前記SI306および前記SI381からなるサブセット、または、前記SI312、前記SI001、前記SI306および前記SI210からなるサブセット、または、前記SI312、前記SI001、前記SI306および前記SI381からなるサブセット、または、前記SI2042、前記SI322、前記SI306および前記SI201からなるサブセット、または、前記SI001、前記SI322、前記SI306および前記SI201からなるサブセットを用いた、みはやの特定;
(G)前記SI312、前記SI306、および前記SI149からなるサブセット、または、前記SI312、前記SI306、および前記SI210からなるサブセット、または、前記SI312、前記SI306、および前記SI381からなるサブセット、または、前記SI312、前記SI306、および前記SI322からなるサブセット、または、前記SI312、前記SI306、および前記SI201からなるサブセット、または、前記SI001、前記SI149、および前記SI306からなるサブセット、または、前記SI001、前記SI306、および前記SI210からなるサブセット、または、前記SI001、前記SI306、および前記SI381からなるサブセット、または、前記SI001、前記SI306、および前記SI322からなるサブセット、または、前記SI001、前記SI306、および前記SI201からなるサブセット、または、前記SI149、前記SI306、および前記SI210からなるサブセット、または、前記SI149、前記SI306、および前記SI381からなるサブセット、または、前記SI149、前記SI306、および前記SI201からなるサブセット、または、前記SI306、前記SI210、および前記SI322からなるサブセット、または、前記SI306、前記SI210、および前記SI201からなるサブセット、または、前記SI306、前記SI381、および前記SI322からなるサブセット、または、前記SI306、前記SI381、および前記SI201からなるサブセット、または、前記SI306、前記SI322、および前記SI201からなるサブセットを用いた、あすみの特定;
(H)前記SI145および前記SI306からなるサブセットを用いた、あすみの特定;
(I)前記SI001、前記SI210、および前記SI312からなるサブセット、または、前記SI210、前記SI312、および前記SI381からなるサブセットを用いた、津之望の特定;
(J)前記SI145および前記SI210からなるサブセットを用いた、津之望の特定;
(K)前記SI201および前記SI306からなるサブセット、または、前記SI201および前記SI381からなるサブセット、または、前記SI201および前記SI322からなるサブセットを用いた、はるひの特定;
(L)前記SI145および前記SI201からなるサブセット、または、前記SI322および前記SI201からなるサブセット、または、前記SI2711および前記SI201からなるサブセット、または、前記SI306および前記SI201からなるサブセット、または、前記SI201および前記SI381からなるサブセットを用いた、はるひの特定;
(M)前記SI001、前記SI210、および前記SI312からなるサブセット、または、前記SI210、前記SI312、および前記SI381からなるサブセットを用いた、津之輝の特定;
(N)前記SI149、前記SI210、および前記SI306からなるサブセット、または、前記SI210、前記SI306、および前記SI322からなるサブセットを用いた、西南のひかりの特定;
(O)前記SI281、前記SI312および前記SI322からなるサブセット、または、前記SI145、前記SI322および前記SI306からなるサブセット、または、前記SI281、前記SI306および前記SI210からなるサブセット、または、前記SI281、前記SI201および前記SI210からなるサブセットを用いた、西南のひかりの特定;
(P)前記SI210および前記SI312からなるサブセットを用いた、麗紅の特定;
(Q)前記SI210および前記SI312からなるサブセットを用いた、麗紅の特定;
(R)前記SI306、前記SI210、および前記SI001からなるサブセット、または、前記SI149、前記SI210、および前記SI322からなるサブセット、または、前記SI210、前記SI306、および前記SI381からなるサブセット、または、前記SI306、前記SI210、および前記SI322からなるサブセットを用いた、はれひめの特定;
(S)前記SI001、前記SI201、および前記SI312からなるサブセット、または、前記SI210、前記SI312、および前記SI381からなるサブセットを用いた、せとかの特定;
(T)前記SI145、前記SI2042および前記SI210からなるサブセット、または、前記SI2042、前記SI281および前記SI210からなるサブセット、または、前記SI001、前記SI145および前記SI210からなるサブセット、または、前記SI001、前記SI281および前記SI210からなるサブセット、または、前記SI145、前記SI281および前記SI210からなるサブセット、または、前記SI145、前記SI2711および前記SI210からなるサブセット、または、前記SI145、前記SI210および前記SI381からなるサブセット、または、前記SI322、前記SI281および前記SI210からなるサブセット、または、前記SI281、前記SI2711および前記SI210からなるサブセット、または、前記SI281、前記SI306および前記SI210からなるサブセット、または、前記SI281、前記SI201および前記SI210からなるサブセット、または、前記SI281、前記SI210および前記SI381からなるサブセットを用いた、せとかの特定;
(U)前記SI149、前記SI210、および前記SI306からなるサブセットを用いた、甘平の特定;
(V)前記SI145、前記SI201、前記SI2711および前記SI312からなるサブセット、または、前記SI2711、前記SI201、前記SI210および前記SI381からなるサブセットを用いた、甘平の特定;
(W)前記SI001、前記SI306、および前記SI322からなるサブセット、または、前記SI001、前記SI201、および前記SI322からなるサブセットを用いた、愛媛果試第28号の特定;
(X)前記SI281、前記SI312および前記SI322からなるサブセット、または、前記SI2042、前記SI322および前記SI2711からなるサブセット、または、前記SI2042、前記SI322および前記SI306からなるサブセット、または、前記SI001、前記SI322および前記SI2711からなるサブセット、または、前記SI001、前記SI322および前記SI306からなるサブセット、または、前記SI145、前記SI201および前記SI381からなるサブセット、または、前記SI322、前記SI281および前記SI2711からなるサブセット、または、前記SI322、前記SI281および前記SI306からなるサブセット、または、前記SI322、前記SI281および前記SI381からなるサブセットを用いた、愛媛果試第28号の特定;
(Y)前記SI312、前記SI210、前記SI149、および前記SI381からなるサブセット、または、前記SI312、前記SI210、前記SI149、および前記SI322からなるサブセット、または、前記SI312、前記SI210、前記SI149、および前記SI201からなるサブセット、または、前記SI312、前記SI306、前記SI210、および前記SI201からなるサブセット、または、前記SI312、前記SI210、前記SI381、および前記SI201からなるサブセット、または、前記SI312、前記SI210、前記SI322、および前記SI201からなるサブセットを用いた、はるみの特定;
(Z)前記SI2042、前記SI281、前記SI312および前記SI322からなるサブセット、または、前記SI312、前記SI2042、前記SI322および前記SI281からなるサブセット、または、前記SI312、前記SI001、前記SI322および前記SI281からなるサブセット、または、前記SI312、前記SI145、前記SI322および前記SI281からなるサブセット、または、前記SI312、前記SI145、前記SI281および前記SI306からなるサブセット、または、前記SI312、前記SI145、前記SI281および前記SI210からなるサブセット、または、前記SI312、前記SI145、前記SI201および前記SI210からなるサブセット、または、前記SI312、前記SI322、前記SI281および前記SI2711からなるサブセット、または、前記SI312、前記SI322、前記SI281および前記SI210からなるサブセット、または、前記SI312、前記SI322、前記SI201および前記SI210からなるサブセット、または、前記SI145、前記SI281、前記SI2711および前記SI210からなるサブセット、または、前記SI322、前記SI281、前記SI2711および前記SI306からなるサブセット、または、前記SI322、前記SI281、前記SI2711および前記SI210からなるサブセット、または、前記SI281、前記SI2711、前記SI306および前記SI210からなるサブセット、または、前記SI281、前記SI2711、前記SI210および前記SI381からなるサブセットを用いた、はるみの特定;
(AA)前記SI312および前記SI381からなるサブセット、または、前記SI312および前記SI322からなるサブセットを用いた、かんきつ中間母本農6号の特定;
(AB)前記SI001、前記SI149、および前記SI381からなるサブセットを用いた、たまみの特定;
(AC)前記SI2042、前記SI2711、前記SI312および前記SI322からなるサブセット、または、前記SI312、前記SI2042、前記SI2711および前記SI306からなるサブセット、または、前記SI312、前記SI001、前記SI145および前記SI2711からなるサブセット、または、前記SI312、前記SI001、前記SI322および前記SI2711からなるサブセット、または、前記SI312、前記SI001、前記SI2711および前記SI306からなるサブセット、または、前記SI2042、前記SI145、前記SI2711および前記SI381からなるサブセット、または、前記SI2042、前記SI322、前記SI281および前記SI2711からなるサブセット、または、前記SI2042、前記SI322、前記SI2711および前記SI210からなるサブセット、または、前記SI2042、前記SI322、前記SI2711および前記SI381からなるサブセット、または、前記SI2042、前記SI281、前記SI2711および前記SI306からなるサブセット、または、前記SI2042、前記SI2711、前記SI306および前記SI381からなるサブセット、または、前記SI2042、前記SI2711、前記SI210および前記SI381からなるサブセット、または、前記SI001、前記SI145、前記SI281および前記SI2711からなるサブセット、または、前記SI001、前記SI145、前記SI2711および前記SI210からなるサブセット、または、前記SI001、前記SI145、前記SI2711および前記SI381からなるサブセット、または、前記SI001、前記SI322、前記SI281および前記SI2711からなるサブセット、または、前記SI001、前記SI322、前記SI2711および前記SI210からなるサブセット、または、前記SI001、前記SI322、前記SI2711および前記SI381からなるサブセット、または、前記SI001、前記SI281、前記SI2711および前記SI306からなるサブセット、または、前記SI001、前記SI2711、前記SI306および前記SI210からなるサブセット、または、前記SI001、前記SI2711、前記SI306および前記SI381からなるサブセット、または、前記SI001、前記SI2711、前記SI210および前記SI381からなるサブセットを用いた、たまみの特定;
(AD)前記SI312、前記SI201、および前記SI306からなるサブセット、または、前記SI312、前記SI210、および前記SI381からなるサブセット、または、前記SI312、前記SI381、および前記SI201からなるサブセット、または、前記SI001、前記SI306、および前記SI381からなるサブセット、または、前記SI001、前記SI306、および前記SI201からなるサブセット、または、前記SI001、前記SI210、および前記SI381からなるサブセット、または、前記SI001、前記SI381、および前記SI201からなるサブセット、または、前記SI149、前記SI306、および前記SI381からなるサブセット、または、前記SI149、前記SI210、および前記SI381からなるサブセット、または、前記SI149、前記SI381、および前記SI201からなるサブセットを用いた、西之香の特定;
(AE)前記SI281および前記SI381からなるサブセット、または、前記SI2711および前記SI381からなるサブセットを用いた、西之香の特定;
(AF)前記SI001、前記SI149、および前記SI306からなるサブセット、または、前記SI001、前記SI149、および前記SI210からなるサブセット、または、前記SI001、前記SI149、および前記SI322からなるサブセットを用いた、あまかの特定;ならびに、
(AG)前記SI2042、前記SI2711および前記SI312からなるサブセット、または、前記SI312、前記SI001および前記SI2711からなるサブセット、または、前記SI2042、前記SI281および前記SI2711からなるサブセット、または、前記SI2042、前記SI2711および前記SI381からなるサブセット、または、前記SI001、前記SI281および前記SI2711からなるサブセット、または、前記SI001、前記SI2711および前記SI381からなるサブセットを用いた、あまかの特定;
前記特定工程において、表1~2に記載の、前記品種と前記SNPマーカーとの関係に基づき、前記カンキツ被検体の前記品種を特定する、
【表1】
【表2】
識別方法。
【請求項2】
前記特定工程において、前記品種の特定に用いるSNPマーカーを含む領域を増幅するプライマーセットを用いて、前記カンキツ被検体のDNAにおける前記領域を増幅する、請求項1に記載の識別方法。
【請求項3】
前記プライマーセットは、長さ150bp以下の増幅断片が生じるように設計されている、請求項2に記載の識別方法。
【請求項4】
前記プライマーセットは、下記(a’)(l’):
(a’)前記SI312を含む領域を増幅するためのプライマーセットであって、配列番号9に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第1のプライマーと、配列番号10に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第2のプライマーとからなるプライマーセット;
(b’)前記SI001を含む領域を増幅するためのプライマーセットであって、配列番号11に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第1のプライマーと、配列番号12に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第2のプライマーとからなるプライマーセット;
(c’)前記SI322を含む領域を増幅するためのプライマーセットであって、配列番号13に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第1のプライマーと、配列番号14に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第2のプライマーとからなるプライマーセット;
(d’)配列番号4で表される塩基配列の66番目の塩基に相当するSNPマーカー(SI149)を含む領域を増幅するためのプライマーセットであって、配列番号15に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第1のプライマーと、配列番号16に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第2のプライマーとからなるプライマーセット;
(e’)前記SI306を含む領域を増幅するためのプライマーセットであって、配列番号17に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第1のプライマーと、配列番号18に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第2のプライマーとからなるプライマーセット;
(f’)前記SI201を含む領域を増幅するためのプライマーセットであって、配列番号19に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第1のプライマーと、配列番号20に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第2のプライマーとからなるプライマーセット;
(g’)前記SI210を含む領域を増幅するためのプライマーセットであって、配列番号21に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第1のプライマーと、配列番号22に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第2のプライマーとからなるプライマーセット;
(h’)前記SI381を含む領域を増幅するためのプライマーセットであって、配列番号23に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第1のプライマーと、配列番号24に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第2のプライマーとからなるプライマーセット;
(i’)前記SI145を含む領域を増幅するためのプライマーセットであって、配列番号45に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第1のプライマーと、配列番号46に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第2のプライマーとからなるプライマーセット;
(j’)前記SI2711を含む領域を増幅するためのプライマーセットであって、配列番号47に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第1のプライマーと、配列番号48に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第2のプライマーとからなるプライマーセット;
(k’)前記SI281を含む領域を増幅するためのプライマーセットであって、配列番号49に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第1のプライマーと、配列番号50に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第2のプライマーとからなるプライマーセット;および、
(l’)前記SI2042を含む領域を増幅するためのプライマーセットであって、配列番号51に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第1のプライマーと、配列番号52に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第2のプライマーとからなるプライマーセット;
からなる群より選択される、請求項2または3に記載の識別方法。
【請求項5】
前記特定工程において、前記プライマーセットを用いて増幅した増幅断片に含まれるSNPマーカーを検出するTaqMan(登録商標)プローブをさらに用いる、請求項2から4の何れか1項に記載の識別方法。
【請求項6】
前記カンキツ被検体のDNAは、前記カンキツ被検体の生鮮果実または加工果実から調製したDNAである、請求項2から5の何れか1項に記載の識別方法。
【請求項7】
請求項1から6の何れか1項に記載の識別方法において、カンキツの品種を識別するための識別キットであって、下記(a’)(l’):
(a’)配列番号1で表される塩基配列の31番目の塩基に相当するSNPマーカーを含む領域を増幅するためのプライマーセットであって、配列番号9に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第1のプライマーと、配列番号10に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第2のプライマーとからなるプライマーセット;
(b’)配列番号2で表される塩基配列の33番目の塩基に相当するSNPマーカーを含む領域を増幅するためのプライマーセットであって、配列番号11に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第1のプライマーと、配列番号12に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第2のプライマーとからなるプライマーセット;
(c’)配列番号3で表される塩基配列の36番目の塩基に相当するSNPマーカーを含む領域を増幅するためのプライマーセットであって、配列番号13に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第1のプライマーと、配列番号14に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第2のプライマーとからなるプライマーセット;
(d’)配列番号4で表される塩基配列の66番目の塩基に相当するSNPマーカー(SI149)を含む領域を増幅するためのプライマーセットであって、配列番号15に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第1のプライマーと、配列番号16に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第2のプライマーとからなるプライマーセット;
(e’)配列番号5で表される塩基配列の35番目の塩基に相当するSNPマーカーを含む領域を増幅するためのプライマーセットであって、配列番号17に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第1のプライマーと、配列番号18に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第2のプライマーとからなるプライマーセット;
(f’)配列番号6で表される塩基配列の37番目の塩基に相当するSNPマーカーを含む領域を増幅するためのプライマーセットであって、配列番号19に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第1のプライマーと、配列番号20に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第2のプライマーとからなるプライマーセット;
(g’)配列番号7で表される塩基配列の44番目の塩基に相当するSNPマーカーを含む領域を増幅するためのプライマーセットであって、配列番号21に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第1のプライマーと、配列番号22に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第2のプライマーとからなるプライマーセット;
(h’)配列番号8で表される塩基配列の74番目の塩基に相当するSNPマーカーを含む領域を増幅するためのプライマーセットであって、配列番号23に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第1のプライマーと、配列番号24に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第2のプライマーとからなるプライマーセット;
(i’)配列番号41で表される塩基配列の40番目の塩基に相当するSNPマーカーを含む領域を増幅するためのプライマーセットであって、配列番号45に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第1のプライマーと、配列番号46に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第2のプライマーとからなるプライマーセット;
(j’)配列番号42で表される塩基配列の33番目の塩基に相当するSNPマーカーを含む領域を増幅するためのプライマーセットであって、配列番号47に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第1のプライマーと、配列番号48に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第2のプライマーとからなるプライマーセット;
(k’)配列番号43で表される塩基配列の38番目の塩基に相当するSNPマーカーを含む領域を増幅するためのプライマーセットであって、配列番号49に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第1のプライマーと、配列番号50に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第2のプライマーとからなるプライマーセット;および、
(l’)配列番号44で表される塩基配列の55番目の塩基に相当するSNPマーカーを含む領域を増幅するためのプライマーセットであって、配列番号51に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第1のプライマーと、配列番号52に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第2のプライマーとからなるプライマーセット;
からなる群より選択される少なくとも1つのプライマーセットを含む、識別キット。
【請求項8】
前記プライマーセットを用いて増幅した増幅断片に含まれるSNPマーカーを検出するTaqMan(登録商標)プローブをさらに含む、請求項7に記載の識別キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カンキツの品種の識別方法および識別キットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、果樹類の優良品種が無断で国外に流出する問題、並びに、それらの生産物および加工品が違法に国内に逆輸入される問題が顕在化しており、育成者権の侵害のリスクが高まっている。したがって、育成者権の保護の観点から、生産物等の被検体に対して、果樹類の品種を、DNAレベルで、迅速かつ高精度に識別する方法が求められている。また、食品の偽装表示を取締り、食品の安全性を確保する観点からも、加工業者が自社調査により原材料等の品種を識別し得る方法への需要がある。
【0003】
植物品種の識別方法として、増幅断片制限断片長多型(Cleaved Amplified Polymorphic Sequence;CAPS)のようなDNA多型を利用したDNA多型分析が知られている(非特許文献1)。CAPS分析においては、特定のゲノム領域をPCRにより増幅し、増幅産物を特定の制限酵素で切断し、切断断片のサイズを電気泳動により分析することにより、品種を識別する。CAPS分析は、DNAシーケンサ等の解析装置を必要とせず、簡便であり、かつ、安定した結果が得られるという利点を備える。非特許文献1には、国内に流通するカンキツの品種を、カンキツの種苗等の被検体から抽出したDNAを用いてCAPS分析することが記載されている。
【0004】
また、CAPSのようにDNA多型分析に用いられる他のDNA多型として、一塩基多型(Single nucleotide polymorphism;SNP)が知られている(非特許文献2)。非特許文献2には、カンキツの品種間における384個のSNP、および、幾つかの代表的なカンキツの品種におけるSNPの近傍配列が開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】藤井浩ら、DNA多型、27(1)、71-79、2019
【文献】Fujii et al., Tree Genetics and Genomes 9, 2013, 145-153
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
税関等の検査現場において果樹品種の識別を行う際に、被検体として、生鮮果実および加工品が使用され得る。しかしながら、生鮮果実および加工品から抽出されたDNAには、糖、酸、ポリフェノール等の夾雑物が混入し易い。また、加工品に含まれているDNAは、加工時の熱処理および化学処理等により劣化し易い。そのため、生鮮果実および加工品等の被検体からは、高品質のDNAが得られにくい。
【0007】
非特許文献1に記載されたようなCAPS分析は、CAPSを検出するために、比較的長鎖のPCR増幅産物を必要とする。したがって、PCRの増幅に時間がかかる場合もある。また、生鮮果実および加工品等の被検体から調製された低品質のDNAを用いてCAPS分析法を行うと、PCRの増幅効率および制限酵素処理の精度が低下して、安定した解析結果が得られにくい場合もある。
【0008】
非特許文献2に記載されたようなSNPは、CAPS分析よりも必要なPCR増幅産物が短いため、DNAが低品質な場合にも高い解析精度が期待できる。しかしながら、ある植物のSNPが知られていたとしても、どのSNPが目的の品種識別に適切に用いることができるかは不明であり、それぞれのSNPと特定の品種との関係を明らかにすることは容易ではない。
【0009】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、検出精度および作業効率に優れ、かつ、安定した解析結果が得られる、カンキツの品種の識別方法および識別キットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記の問題に鑑み、カンキツの品種を識別するDNA多型として、SNPを用いることを鋭意検討した。そして、日本国内において流通するカンキツの98%を占める48品種について、非特許文献2に開示された384個のSNPを検討し、品種の同定に使用可能なSNPを選出し、選出されたSNPについて、アレル頻度、検出精度、作業効率等の各種条件を鋭意検討した。その結果、上記48品種のカンキツのすべてを、高い検出精度および作業効率で、安定して識別し得る、8個のSNPからなるSNPマーカーを見出した。さらに、上記48品種を含むカンキツ84品種のカンキツのすべてを、高い検出精度および作業効率で、安定して識別し得る、11個のSNPからなるSNPマーカーを見出して、本発明を完成するに至った。
【0011】
具体的には、本発明は、以下の特徴を有する。
〔1〕カンキツの品種の識別方法であって、
下記(a)~(c)および(e)~(l)の一塩基多型(SNP)マーカー:
(a)配列番号1で表される塩基配列の31番目の塩基に相当するSNPマーカー(SI312);
(b)配列番号2で表される塩基配列の33番目の塩基に相当するSNPマーカー(SI001);
(c)配列番号3で表される塩基配列の36番目の塩基に相当するSNPマーカー(SI322);
(e)配列番号5で表される塩基配列の35番目の塩基に相当するSNPマーカー(SI306);
(f)配列番号6で表される塩基配列の37番目の塩基に相当するSNPマーカー(SI201);
(g)配列番号7で表される塩基配列の44番目の塩基に相当するSNPマーカー(SI210);
(h)配列番号8で表される塩基配列の74番目の塩基に相当するSNPマーカー(SI381);
(i)配列番号41で表される塩基配列の40番目の塩基に相当するSNPマーカー(SI145);
(j)配列番号42で表される塩基配列の33番目の塩基に相当するSNPマーカー(SI2711);
(k)配列番号43で表される塩基配列の38番目の塩基に相当するSNPマーカー(SI281);および、
(l)配列番号44で表される塩基配列の55番目の塩基に相当するSNPマーカー(SI2042);
からなるSNPマーカーの群より選択される少なくとも1つのSNPマーカーを用いて、カンキツ被検体の前記品種を特定する特定工程を含む、識別方法。
〔2〕前記SNPマーカーの群より選択される2つ以上の前記SNPマーカーの組合せを用いて、カンキツ被検体の前記品種を特定する特定工程を含む、上記〔1〕に記載の識別方法。
〔3〕前記品種は、宮川早生、ダンカングレープフルーツ、トロビタスイートオレンジ、リスボンレモン、璃の香、不知火(またはデコポン(登録商標))、イヨカン、川野なつだいだい、ハッサク、太田ポンカン、みはや、あすみ、あすき、麗紅、津之輝、西南のひかり、津之望、はるひ、清見、せとか、はるみ、はれひめ、甘平、愛媛果試第28号(または紅まどんな(登録商標))、ユズ、土佐文旦、河内晩柑、ヒュウガナツ、スダチ、大宜味クガニー、カラ、タンカンT132、セミノール、カボスの品種、天草、黄金柑、キシュウミカン、スイートスプリング、サンボウカン、アンコール、たまみ、西之香、サガマンダリン、マーコット、南香、あまか、かんきつ中間母本農6号、カブス、せとみ、陽香、朱見、早香、べにばえ、はれやか、津之香、ミホコール、ダンシータンジェリン、クレメンティン、チチュウカイマンダリン、キングマンダリン、ミネオラ、オーランド、フォーチュン、サザンイエロー、ありあけ、安芸タンゴール、ウィルキング、ページ、ロビンソン、リー、フェアチャイルド、ノバ、オセオラ、清峰、かんきつ中間本母農5号、サザンレッド、辺塚だいだい、スィートライム、タヒチライム、サマーフレッシュ、タチバナ、ユコウ、ジャバラ、および、クネンボである、上記〔1〕または〔2〕に記載の識別方法。
〔4〕前記品種は、あすき、璃の香、みはや、あすみ、津之望、はるひ、津之輝、西南のひかり、麗紅、はれひめ、せとか、甘平、愛媛果試第28号、はるみ、かんきつ中間母本農6号、たまみ、西之香、およびあまかである、上記〔3〕に記載の識別方法。
〔5〕前記特定工程において、前記カンキツ被検体について、下記(1)~(30)からなる群より選択される少なくとも1つの前記品種の特定を行う、上記〔1〕に記載の識別方法:
(1)前記SI001および前記SI201からなるサブセット、または、前記SI001および前記SI210からなるサブセット、または、前記SI322および前記SI381からなるサブセットを用いた、宮川早生の特定;
(2)前記SI001および前記SI149をからなるサブセットを用いた、ダンカングレープフルーツの特定;
(3)前記SI001、前記SI149、前記SI210、前記SI312、および前記SI381からなるサブセット、または、前記SI001、前記SI149、前記SI210、前記SI312および前記SI322からなるサブセット、または、前記SI001、前記SI210、前記SI306、前記SI312、およびSI381からなるサブセットを用いた、トロビタスイートオレンジの特定;
(4)前記SI312および前記SI322からなるサブセットを用いた、リスボンレモンの特定;
(5)前記SI001、前記SI149、および前記SI201からなるサブセット、または、前記SI001、前記SI149、および前記SI322からなるサブセットを用いた、不知火の特定;
(6)前記SI001、前記SI149、前記SI312、および前記SI322からなるサブセット、または、前記SI001、前記SI306、前記SI312、および前記SI322からなるサブセット、または、前記SI149、前記SI312、前記SI322、および前記SI381からなるサブセットを用いた、イヨカンの特定;
(7)前記SI210および前記SI322からなるサブセットを用いた、川野なつだいだいの特定;
(8)前記SI001、前記SI149、および前記SI210からなるサブセット、または、前記SI001、前記SI210、および前記SI381からなるサブセットを用いた、ハッサクの特定;
(9)前記SI149、前記SI210、および前記SI312からなるサブセット、または、前記SI210、前記SI312、および前記SI322からなるサブセット、または、前記SI210、前記SI312、および前記SI381からなるサブセットを用いた、太田ポンカンの特定;
(10)前記SI306および前記SI322からなるサブセットを用いた、璃の香の特定;
(11)前記SI001および前記SI306からなるサブセットを用いた、みはやの特定;
(12)前記SI312、前記SI306、および前記SI149からなるサブセット、または、前記SI312、前記SI306、および前記SI210からなるサブセット、または、前記SI312、前記SI306、および前記SI381からなるサブセット、または、前記SI312、前記SI306、および前記SI322からなるサブセット、または、前記SI312、前記SI306、および前記SI201からなるサブセット、または、前記SI001、前記SI149、および前記SI306からなるサブセット、または、前記SI001、前記SI306、および前記SI210からなるサブセット、または、前記SI001、前記SI306、および前記SI381からなるサブセット、または、前記SI001、前記SI306、および前記SI322からなるサブセット、または、前記SI001、前記SI306、および前記SI201からなるサブセット、または、前記SI149、前記SI306、および前記SI210からなるサブセット、または、前記SI149、前記SI306、および前記SI381からなるサブセット、または、前記SI149、前記SI306、および前記SI201からなるサブセット、または、前記SI306、前記SI210、および前記SI322からなるサブセット、または、前記SI306、前記SI210、および前記SI201からなるサブセット、または、前記SI306、前記SI381、および前記SI322からなるサブセット、または、前記SI306、前記SI381、および前記SI201からなるサブセット、または、前記SI306、前記SI322、および前記SI201からなるサブセットを用いた、あすみの特定;
(13)前記SI001、前記SI210、および前記SI306からなるサブセット、または、前記SI306、前記SI201、および前記SI210からなるサブセットを用いた、あすきの特定;
(14)前記SI210および前記SI312からなるサブセットを用いた、麗紅の特定;
(15)前記SI001、前記SI210、および前記SI312からなるサブセット、または、前記SI210、前記SI312、および前記SI381からなるサブセットを用いた、津之輝の特定;
(16)前記SI149、前記SI210、および前記SI306からなるサブセット、または、前記SI210、前記SI306、および前記SI322からなるサブセットを用いた、西南のひかりの特定;
(17)前記SI001、前記SI210、および前記SI312からなるサブセット、または、前記SI210、前記SI312、および前記SI381からなるサブセットを用いた、津之望の特定;
(18)前記SI201および前記SI306からなるサブセット、または、前記SI201および前記SI381からなるサブセット、または、SI201およびSI322からなるサブセットを用いた、はるひの特定;
(19)前記SI201、前記SI312、および前記SI381からなるサブセット、または、前記SI149、前記SI201、および前記SI210からなるサブセット、または、前記SI149、前記SI210、および前記SI322からなるサブセットを用いた、清見の特定;
(20)前記SI001、前記SI201、および前記SI312からなるサブセット、または、前記SI210、前記SI312、および前記SI381からなるサブセットを用いた、せとかの特定;
(21)前記SI312、前記SI210、前記SI149、および前記SI381からなるサブセット、または、前記SI312、前記SI210、前記SI149、および前記SI322からなるサブセット、または、前記SI312、前記SI210、前記SI149、および前記SI201からなるサブセット、または、前記SI312、前記SI306、前記SI210、および前記SI201からなるサブセット、または、前記SI312、前記SI210、前記SI381、および前記SI201からなるサブセット、または、前記SI312、前記SI210、前記SI322、および前記SI201からなるサブセットを用いた、はるみの特定;
(22)前記SI306、前記SI210、および前記SI001からなるサブセット、または、前記SI149、前記SI210、および前記SI322からなるサブセット、または、前記SI210、前記SI306、および前記SI381からなるサブセット、または、前記SI306、前記SI210、および前記SI322からなるサブセットを用いた、はれひめの特定;
(23)前記SI149、前記SI210、および前記SI306からなるサブセットを用いた、甘平の特定;
(24)前記SI001、前記SI306、および前記SI322からなるサブセット、または、前記SI001、前記SI201、および前記SI322からなるサブセットを用いた、愛媛果試第28号の特定;
(25)前記SI001および前記SI381からなるサブセットを用いた、ユズの特定;
(26)SI201、およびSI306からなるサブセットを用いた、河内晩柑の特定;
(27)前記SI001、前記SI149、および前記SI381からなるサブセットを用いた、たまみの特定;
(28)前記SI312、前記SI201、および前記SI306からなるサブセット、または、前記SI312、前記SI210、および前記SI381からなるサブセット、または、前記SI312、前記SI381、および前記SI201からなるサブセット、または、前記SI001、前記SI306、および前記SI381からなるサブセット、または、前記SI001、前記SI306、および前記SI201からなるサブセット、または、前記SI001、前記SI210、および前記SI381からなるサブセット、または、前記SI001、前記SI381、および前記SI201からなるサブセット、または、前記SI149、前記SI306、および前記SI381からなるサブセット、または、前記SI149、前記SI210、および前記SI381からなるサブセット、または、前記SI149、前記SI381、および前記SI201からなるサブセットを用いた、西之香の特定;
(29)前記SI001、前記SI149、および前記SI306、または、前記SI001、前記SI149、および前記SI210、または、前記SI001、前記SI149、および前記SI322からなるサブセットを用いた、あまかの特定;および、
(30)前記SI312および前記SI381からなるサブセット、または、前記SI312および前記SI322からなるサブセットを用いた、かんきつ中間母本農6号の特定;
前記SI149は、配列番号4で表される塩基配列の66番目の塩基に相当するSNPマーカーである。
〔6〕前記特定工程において、前記カンキツ被検体について、下記(31)~(52)からなる群より選択される少なくとも1つの前記品種の特定を行う、上記〔1〕に記載の識別方法:
(31)前記SI201、前記SI2042および前記SI312からなるサブセット、または、前記SI312、前記SI2042および前記SI381からなるサブセット、または、前記SI312、前記SI322および前記SI306からなるサブセット、または、前記SI312、前記SI306および前記SI201からなるサブセット、または、前記SI312、前記SI306および前記SI381からなるサブセット、または、前記SI2042、前記SI001および前記SI145からなるサブセット、または、前記SI2042、前記SI001および前記SI281からなるサブセット、または、前記SI2042、前記SI001および前記SI201からなるサブセット、または、前記SI2042、前記SI145および前記SI322からなるサブセット、または、前記SI2042、前記SI145および前記SI306からなるサブセット、または、前記SI2042、前記SI322および前記SI306からなるサブセット、または、前記SI2042、前記SI322および前記SI201からなるサブセット、または、前記SI2042、前記SI281および前記SI306からなるサブセット、または、前記SI2042、前記SI2711および前記SI201からなるサブセット、または、前記SI2042、前記SI306および前記SI201からなるサブセット、または、前記SI2042、前記SI306および前記SI210からなるサブセット、または、前記SI2042、前記SI306および前記SI381からなるサブセット、または、前記SI2042、前記SI201および前記SI210からなるサブセット、または、前記SI2042、前記SI201および前記SI381からなるサブセット、または、前記SI001、前記SI322および前記SI306からなるサブセット、または、前記SI001、前記SI281および前記SI306からなるサブセット、または、前記SI001、前記SI306および前記SI201からなるサブセット、または、前記SI322、前記SI281および前記SI306からなるサブセット、または、前記SI322、前記SI306および前記SI210からなるサブセット、または、前記SI281、前記SI306および前記SI381からなるサブセット、または、前記SI306、前記SI201および前記SI210からなるサブセットを用いた、璃の香の特定;
(32)前記SI2042、前記SI2711、前記SI312および前記SI381からなるサブセット、または、前記SI312、前記SI001、前記SI2711および前記SI381からなるサブセット、または、前記SI312、前記SI145、前記SI2711および前記SI381からなるサブセット、または、前記SI312、前記SI2711、前記SI306および前記SI381からなるサブセット、または、前記SI312、前記SI2711、前記SI210および前記SI381からなるサブセット、または、前記SI2042、前記SI2711、前記SI201および前記SI381からなるサブセット、または、前記SI2042、前記SI2711、前記SI210および前記SI381からなるサブセット、または、前記SI001、前記SI2711、前記SI201および前記SI381からなるサブセット、または、前記SI001、前記SI2711、前記SI210および前記SI381からなるサブセット、または、前記SI145、前記SI2711、前記SI201および前記SI381からなるサブセット、または、前記SI2711、前記SI306、前記SI201および前記SI381からなるサブセットを用いた、朱見の特定;
(33)前記SI145、前記SI210および前記SI281からなるサブセット、または、前記SI322、前記SI281および前記SI201からなるサブセット、または、前記SI322、前記SI281および前記SI381からなるサブセット、または、前記SI281、前記SI2711および前記SI210からなるサブセット、または、前記SI281、前記SI210および前記SI381からなるサブセットを用いた、あすきの特定;
(34)前記SI145および前記SI306からなるサブセットを用いた、あすみの特定;
(35)前記SI2042、前記SI2711および前記SI312からなるサブセット、または、前記SI312、前記SI001および前記SI2711からなるサブセット、または、前記SI2042、前記SI281および前記SI2711からなるサブセット、または、前記SI2042、前記SI2711および前記SI381からなるサブセット、または、前記SI001、前記SI281および前記SI2711からなるサブセット、または、前記SI001、前記SI2711および前記SI381からなるサブセットを用いた、あまかの特定;
(36)前記SI281、前記SI312および前記SI322からなるサブセット、または、前記SI2042、前記SI322および前記SI2711からなるサブセット、または、前記SI2042、前記SI322および前記SI306からなるサブセット、または、前記SI001、前記SI322および前記SI2711からなるサブセット、または、前記SI001、前記SI322および前記SI306からなるサブセット、または、前記SI145、前記SI201および前記SI381からなるサブセット、または、前記SI322、前記SI281および前記SI2711からなるサブセット、または、前記SI322、前記SI281および前記SI306からなるサブセット、または、前記SI322、前記SI281および前記SI381からなるサブセットを用いた、愛媛果試第28号の特定;
(37)前記SI145、前記SI201、前記SI312および前記SI381からなるサブユニット、または、前記SI312、前記SI322、前記SI201および前記SI381からなるサブユニット、または、前記SI312、前記SI281、前記SI201および前記SI381からなるサブユニット、または、前記SI312、前記SI201、前記SI210および前記SI381からなるサブユニット、または、前記SI145、前記SI322、前記SI306および前記SI210からなるサブユニット、または、前記SI145、前記SI322、前記SI306および前記SI381からなるサブユニット、または、前記SI145、前記SI281、前記SI201および前記SI210からなるサブユニット、または、前記SI145、前記SI201、前記SI210および前記SI381からなるサブユニット、または、前記SI322、前記SI281、前記SI201および前記SI381からなるサブユニット、または、前記SI281、前記SI201、前記SI210および前記SI381からなるサブセットを用いた、かんきつ中間母本農5号の特定;
(38)前記SI312および前記SI322からなるサブユニット、または、前記SI312および前記SI281からなるサブユニット、または、前記SI312および前記SI2711からなるサブユニット、または、前記SI312および前記SI381からなるサブセットを用いた、かんきつ中間母本農6号の特定;
(39)前記SI145、前記SI201、前記SI2711および前記SI312からなるサブユニット、または、前記SI2711、前記SI201、前記SI210および前記SI381からなるサブセットを用いた、甘平の特定;
(40)前記SI281、前記SI312および前記SI322からなるサブユニット、または、前記SI145、前記SI322および前記SI306からなるサブユニット、または、前記SI281、前記SI306および前記SI210からなるサブユニット、または、前記SI281、前記SI201および前記SI210からなるサブセットを用いた、西南のひかりの特定;
(41)前記SI145、前記SI2042および前記SI210からなるサブユニット、または、前記SI2042、前記SI281および前記SI210からなるサブユニット、または、前記SI001、前記SI145および前記SI210からなるサブユニット、または、前記SI001、前記SI281および前記SI210からなるサブユニット、または、前記SI145、前記SI281および前記SI210からなるサブユニット、または、前記SI145、前記SI2711および前記SI210からなるサブユニット、または、前記SI145、前記SI210および前記SI381からなるサブユニット、または、前記SI322、前記SI281および前記SI210からなるサブユニット、または、前記SI281、前記SI2711および前記SI210からなるサブユニット、または、前記SI281、前記SI306および前記SI210からなるサブユニット、または、前記SI281、前記SI201および前記SI210からなるサブユニット、または、前記SI281、前記SI210および前記SI381からなるサブセットを用いた、せとかの特定;
(42)前記SI2042、前記SI306および前記SI312からなるサブユニット、または、前記SI312、前記SI001および前記SI306からなるサブユニット、または、前記SI312、前記SI322および前記SI306からなるサブユニット、または、前記SI2042、前記SI306および前記SI201からなるサブユニット、または、前記SI001、前記SI306および前記SI201からなるサブユニット、または、前記SI145、前記SI306および前記SI381からなるサブユニット、または、前記SI322、前記SI2711および前記SI306からなるサブユニット、または、前記SI281、前記SI306および前記SI201からなるサブユニット、または、前記SI306、前記SI210および前記SI381からなるサブセットを用いた、せとみの特定;
(43)前記SI2042、前記SI2711、前記SI312および前記SI322からなるサブユニット、または、前記SI312、前記SI2042、前記SI2711および前記SI306からなるサブユニット、または、前記SI312、前記SI001、前記SI145および前記SI2711からなるサブユニット、または、前記SI312、前記SI001、前記SI322および前記SI2711からなるサブユニット、または、前記SI312、前記SI001、前記SI2711および前記SI306からなるサブユニット、または、前記SI2042、前記SI145、前記SI2711および前記SI381からなるサブユニット、または、前記SI2042、前記SI322、前記SI281および前記SI2711からなるサブユニット、または、前記SI2042、前記SI322、前記SI2711および前記SI210からなるサブユニット、または、前記SI2042、前記SI322、前記SI2711および前記SI381からなるサブユニット、または、前記SI2042、前記SI281、前記SI2711および前記SI306からなるサブユニット、または、前記SI2042、前記SI2711、前記SI306および前記SI381からなるサブユニット、または、前記SI2042、前記SI2711、前記SI210および前記SI381からなるサブユニット、または、前記SI001、前記SI145、前記SI281および前記SI2711からなるサブユニット、または、前記SI001、前記SI145、前記SI2711および前記SI210からなるサブユニット、または、前記SI001、前記SI145、前記SI2711および前記SI381からなるサブユニット、または、前記SI001、前記SI322、前記SI281および前記SI2711からなるサブユニット、または、前記SI001、前記SI322、前記SI2711および前記SI210からなるサブユニット、または、前記SI001、前記SI322、前記SI2711および前記SI381からなるサブユニット、または、前記SI001、前記SI281、前記SI2711および前記SI306からなるサブユニット、または、前記SI001、前記SI2711、前記SI306および前記SI210からなるサブユニット、または、前記SI001、前記SI2711、前記SI306および前記SI381からなるサブユニット、または、前記SI001、前記SI2711、前記SI210および前記SI381からなるサブユニットを用いた、たまみの特定;
(44)前記SI210および前記SI2711からなるサブユニットを用いた、津之輝の特定;
(45)前記SI145および前記SI210からなるサブユニットを用いた、津之望の特定;
(46)前記SI281および前記SI381からなるサブユニット、または、前記SI2711および前記SI381からサブユニットを用いた、西之香の特定;
(47)前記SI145および前記SI201からなるサブユニット、または、前記SI322および前記SI201からなるサブユニット、または、前記SI2711および前記SI201からなるサブユニット、または、前記SI306および前記SI201からなるサブユニット、または、前記SI201および前記SI381からなるサブユニットを用いた、はるひの特定;
(48)前記SI2042、前記SI281、前記SI312および前記SI322からなるサブユニット、または、前記SI312、前記SI2042、前記SI322および前記SI281からなるサブユニット、または、前記SI312、前記SI001、前記SI322および前記SI281からなるサブユニット、または、前記SI312、前記SI145、前記SI322および前記SI281からなるサブユニット、または、前記SI312、前記SI145、前記SI281および前記SI306からなるサブユニット、または、前記SI312、前記SI145、前記SI281および前記SI210からなるサブユニット、または、前記SI312、前記SI145、前記SI201および前記SI210からなるサブユニット、または、前記SI312、前記SI322、前記SI281および前記SI2711からなるサブユニット、または、前記SI312、前記SI322、前記SI281および前記SI210からなるサブユニット、または、前記SI312、前記SI322、前記SI201および前記SI210からなるサブユニット、または、前記SI145、前記SI281、前記SI2711および前記SI210からなるサブユニット、または、前記SI322、前記SI281、前記SI2711および前記SI306からなるサブユニット、または、前記SI322、前記SI281、前記SI2711および前記SI210からなるサブユニット、または、前記SI281、前記SI2711、前記SI306および前記SI210からなるサブユニット、または、前記SI281、前記SI2711、前記SI210および前記SI381からなるサブユニットを用いた、はるみの特定;
(49)前記SI2711および前記SI281からなるサブユニットを用いた、はれひめの特定;
(50)前記SI201、前記SI2042、前記SI312および前記SI322からなるサブユニット、または、前記SI312、前記SI2042、前記SI281および前記SI201からなるサブユニット、または、前記SI312、前記SI2042、前記SI201および前記SI381からなるサブユニット、または、前記SI312、前記SI001、前記SI322および前記SI201からなるサブユニット、または、前記SI312、前記SI001、前記SI281および前記SI201からなるサブユニット、または、前記SI312、前記SI001、前記SI201および前記SI381からなるサブユニット、または、前記SI2042、前記SI322、前記SI201および前記SI210からなるサブユニット、または、前記SI001、前記SI322、前記SI201および前記SI210からなるサブユニットを用いた、べにばえの特定;
(51)前記SI2042、前記SI210、前記SI306および前記SI312からなるサブユニット、または、前記SI312、前記SI2042、前記SI306および前記SI381からなるサブユニット、または、前記SI312、前記SI001、前記SI306および前記SI210からなるサブユニット、または、前記SI312、前記SI001、前記SI306および前記SI381からなるサブユニット、または、前記SI2042、前記SI322、前記SI306および前記SI201からなるサブユニット、または、前記SI001、前記SI322、前記SI306および前記SI201からなるサブユニットを用いた、みはやの特定;
(52)前記SI210および前記SI312からなるサブユニットを用いた、麗紅の特定。
〔7〕前記特定工程において、前記品種の特定に用いるSNPマーカーを含む領域を増幅するプライマーセットを用いて、前記カンキツ被検体のDNAにおける前記領域を増幅する、上記〔1〕から〔6〕の何れかに記載の識別方法。
〔8〕前記プライマーセットは、長さ150bp以下の増幅断片が生じるように設計されている、上記〔7〕に記載の識別方法。
〔9〕前記プライマーセットは、下記(a’)~(c’)および(d’)~(l’):
(a’)前記SI312を含む領域を増幅するためのプライマーセットであって、配列番号9に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第1のプライマーと、配列番号10に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第2のプライマーとからなるプライマーセット;
(b’)前記SI001を含む領域を増幅するためのプライマーセットであって、配列番号11に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第1のプライマーと、配列番号12に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第2のプライマーとからなるプライマーセット;
(c’)前記SI322を含む領域を増幅するためのプライマーセットであって、配列番号13に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第1のプライマーと、配列番号14に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第2のプライマーとからなるプライマーセット;
(e’)前記SI306を含む領域を増幅するためのプライマーセットであって、配列番号17に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第1のプライマーと、配列番号18に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第2のプライマーとからなるプライマーセット;
(f’)前記SI201を含む領域を増幅するためのプライマーセットであって、配列番号19に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第1のプライマーと、配列番号20に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第2のプライマーとからなるプライマーセット;
(g’)前記SI210を含む領域を増幅するためのプライマーセットであって、配列番号21に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第1のプライマーと、配列番号22に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第2のプライマーとからなるプライマーセット;
(h’)前記SI381を含む領域を増幅するためのプライマーセットであって、配列番号23に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第1のプライマーと、配列番号24に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第2のプライマーとからなるプライマーセット;
(i’)前記SI145を含む領域を増幅するためのプライマーセットであって、配列番号45に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第1のプライマーと、配列番号46に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第2のプライマーとからなるプライマーセット;
(j’)前記SI2711を含む領域を増幅するためのプライマーセットであって、配列番号47に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第1のプライマーと、配列番号48に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第2のプライマーとからなるプライマーセット;
(k’)前記SI281を含む領域を増幅するためのプライマーセットであって、配列番号49に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第1のプライマーと、配列番号50に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第2のプライマーとからなるプライマーセット;および、
(l’)前記SI2042を含む領域を増幅するためのプライマーセットであって、配列番号51に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第1のプライマーと、配列番号52に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第2のプライマーとからなるプライマーセット;
からなる群より選択される、上記〔7〕または〔8〕に記載の識別方法。
〔10〕前記特定工程において、前記プライマーセットを用いて増幅した増幅断片に含まれるSNPマーカーを検出するTaqMan(登録商標)プローブをさらに用いる、上記〔7〕から〔9〕の何れかに記載の識別方法。
〔11〕前記カンキツ被検体のDNAは、前記カンキツ被検体の生鮮果実または加工果実から調製したDNAである、上記〔7〕から〔10〕の何れかに記載の識別方法。
〔12〕カンキツの品種を識別するための識別キットであって、下記(a’)~(c’)および(e’)~(l’):
(a’)配列番号1で表される塩基配列の31番目の塩基に相当するSNPマーカーを含む領域を増幅するためのプライマーセットであって、配列番号9に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第1のプライマーと、配列番号10に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第2のプライマーとからなるプライマーセット;
(b’)配列番号2で表される塩基配列の33番目の塩基に相当するSNPマーカーを含む領域を増幅するためのプライマーセットであって、配列番号11に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第1のプライマーと、配列番号12に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第2のプライマーとからなるプライマーセット;
(c’)配列番号3で表される塩基配列の36番目の塩基に相当するSNPマーカーを含む領域を増幅するためのプライマーセットであって、配列番号13に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第1のプライマーと、配列番号14に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第2のプライマーとからなるプライマーセット;
(d’)配列番号4で表される塩基配列の66番目の塩基に相当するSNPマーカーを含む領域を増幅するためのプライマーセットであって、配列番号15に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第1のプライマーと、配列番号16に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第2のプライマーとからなるプライマーセット;
(e’)配列番号5で表される塩基配列の35番目の塩基に相当するSNPマーカーを含む領域を増幅するためのプライマーセットであって、配列番号17に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第1のプライマーと、配列番号18に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第2のプライマーとからなるプライマーセット;
(f’)配列番号6で表される塩基配列の37番目の塩基に相当するSNPマーカーを含む領域を増幅するためのプライマーセットであって、配列番号19に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第1のプライマーと、配列番号20に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第2のプライマーとからなるプライマーセット;
(g’)配列番号7で表される塩基配列の44番目の塩基に相当するSNPマーカーを含む領域を増幅するためのプライマーセットであって、配列番号21に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第1のプライマーと、配列番号22に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第2のプライマーとからなるプライマーセット;および、
(h’)配列番号8で表される塩基配列の74番目の塩基に相当するSNPマーカーを含む領域を増幅するためのプライマーセットであって、配列番号23に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第1のプライマーと、配列番号24に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第2のプライマーとからなるプライマーセット;
(i’)配列番号41で表される塩基配列の40番目の塩基に相当するSNPマーカーを含む領域を増幅するためのプライマーセットであって、配列番号45に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第1のプライマーと、配列番号46に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第2のプライマーとからなるプライマーセット;
(j’)配列番号42で表される塩基配列の33番目の塩基に相当するSNPマーカーを含む領域を増幅するためのプライマーセットであって、配列番号47に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第1のプライマーと、配列番号48に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第2のプライマーとからなるプライマーセット;
(k’)配列番号43で表される塩基配列の38番目の塩基に相当するSNPマーカーを含む領域を増幅するためのプライマーセットであって、配列番号49に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第1のプライマーと、配列番号50に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第2のプライマーとからなるプライマーセット;および、
(l’)配列番号44で表される塩基配列の55番目の塩基に相当するSNPマーカーを含む領域を増幅するためのプライマーセットであって、配列番号51に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第1のプライマーと、配列番号52に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第2のプライマーとからなるプライマーセット;
からなる群より選択される少なくとも1つのプライマーセットを含む、識別キット。
〔13〕前記プライマーセットを用いて増幅した増幅断片に含まれるSNPマーカーを検出するTaqMan(登録商標)プローブをさらに含む、上記〔12〕に記載の識別キット。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、検出精度および作業効率に優れ、かつ、安定した解析結果が得られるカンキツの品種の識別方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】表7に示す8個のSNPについての、カンキツ48品種のSNPジェノタイピングの結果を示すグラフである。
図2】SI2711およびSI281についての、カンキツ84品種のSNPジェノタイピングの結果を示すグラフである。
図3】SI2042およびSI145についての、カンキツ84品種のSNPジェノタイピングの結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一態様について、詳細に説明する。なお、本明細書中に記載された文献の全てが、本明細書中において参考として援用される。また、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上(Aを含みかつAより大きい)、B以下(Bを含みかつBより小さい)」を意味する。
【0015】
本明細書中で使用される場合、用語「ポリヌクレオチド」は、「核酸」または「核酸分子」と交換可能に使用され、ヌクレオチドの重合体が意図される。ここで、核酸は、DNAの形態(例えば、cDNAもしくはゲノムDNA)、または、RNA(例えば、mRNA)の形態にて存在し得る。DNAまたはRNAは、二本鎖であっても、一本鎖であってもよい。一本鎖DNAまたはRNAは、コード鎖(センス鎖)であっても、非コード鎖(アンチセンス鎖)であってもよい。本明細書において使用される場合、塩基の表記は、適宜IUPACおよびIUBの定める1文字表記を使用する。また、本明細書において、「3’末端」とは、遺伝子配列の下流における端部領域または位置を意味し、「5’末端」とは、遺伝子配列の上流における端部領域または位置を意味している。
【0016】
〔識別方法〕
本発明の一態様に係るカンキツの品種の識別方法は、一塩基多型(SNP)マーカーを用いてカンキツの品種を識別する方法である。識別方法は、下記(a)~(c)および(e)~(l)の一塩基多型(SNP)マーカー:
(a)配列番号1で表される塩基配列の31番目の塩基に相当するSNPマーカー(SI312);
(b)配列番号2で表される塩基配列の33番目の塩基に相当するSNPマーカー(SI001);
(c)配列番号3で表される塩基配列の36番目の塩基に相当するSNPマーカー(SI322);
(e)配列番号5で表される塩基配列の35番目の塩基に相当するSNPマーカー(SI306);
(f)配列番号6で表される塩基配列の37番目の塩基に相当するSNPマーカー(SI201);
(g)配列番号7で表される塩基配列の44番目の塩基に相当するSNPマーカー(SI210);
(h)配列番号8で表される塩基配列の74番目の塩基に相当するSNPマーカー(SI381);
(i)配列番号41で表される塩基配列の40番目の塩基に相当するSNPマーカー(SI145);
(j)配列番号42で表される塩基配列の33番目の塩基に相当するSNPマーカー(SI2711);
(k)配列番号43で表される塩基配列の38番目の塩基に相当するSNPマーカー(SI281);
(l)配列番号44で表される塩基配列の55番目の塩基に相当するSNPマーカー(SI2042);
からなるSNPマーカーの群より選択される少なくとも1つのSNPマーカーを用いて、カンキツ被検体の前記品種を特定する特定工程を含む。
【0017】
(カンキツの品種)
本発明の一態様に係る識別方法により識別するカンキツの品種は、ミカン科ミカン亜科のミカン属(Citrus)、キンカン属(Fortunella)、およびカラタチ属(Poncirus)等に属する植物体の集合であり、その特性の相違により他の植物体の集合と区別可能な植物体の集合を意味している。また、カンキツの品種は、日本の農林水産省に品種登録された品種であってもよいし、品種登録されていない品種であってもよいし、品種として確立される前の育成段階のものを含む。
【0018】
このようなカンキツの品種は、例えば、ウンシュウミカン(Citrus unshiu)の品種(または宮川早生)、ダンカングレープフルーツ、トロビタスイートオレンジ(Citrus sinensis)、リスボンレモン、不知火(またはデコポン(登録商標))、イヨカン(Citrus iyo)の品種、ナツダイダイ(Citrus natsudaidai)の品種(または川野なつだいだい)、ハッサク(Citrus hassaku)の品種、ポンカン(Citrus reticulata var poonensis)の品種(または太田ポンカン)、璃の香、みはや、あすみ、あすき、麗紅、津之輝、西南のひかり、津之望、はるひ、清見、せとか、はるみ、はれひめ、甘平、愛媛果試第28号(または紅まどんな(登録商標))、ユズ(Citrus jyunos)の品種、ブンタン(Citrus maxima)の品種(または土佐文旦)、河内晩柑、ヒュウガナツ(Citrus tamurana)の品種、スダチ(Citrus sudachi)の品種、シークヮーサー(Citrus depressa)の品種(または大宜味クガニー)、カラ(カラマンダリン)、タンカン(Citrus tankan)の品種(またはT132)、セミノール、カボス(Citrus sphaerocarpa)の品種、天草、黄金柑、キシュウミカン、スイートスプリング、サンボウカン、アンコール、たまみ、西之香、サガマンダリン、マーコット、南香、あまか、かんきつ中間母本農6号、およびカブス(Citrus aurantium)の品種である。これらのカンキツの48品種(以下、「カンキツ48品種」と略記する場合がある)は、日本国内におけるカンキツの品種の総流通量の98%を占める。
【0019】
また、上記のカンキツ48品種に加えて、カンキツの品種は、例えば、せとみ、陽香、朱見、早香、べにばえ、はれやか、津之香、ミホコール、ダンシータンジェリン、クレメンティン、チチュウカイマンダリン、キングマンダリン、ミネオラ、オーランド、フォーチュン、サザンイエロー、ありあけ、安芸タンゴール、ウィルキング、ページ、ロビンソン、リー、フェアチャイルド、ノバ、オセオラ、清峰、かんきつ中間本母農5号、サザンレッド、辺塚だいだい、スィートライム、タヒチライム、サマーフレッシュ、タチバナ、ユコウ、ジャバラ、および、クネンボ、等の品種が挙げられる。
【0020】
これらの中でも、宮川早生、ダンカングレープフルーツ、トロビタスイートオレンジ、リスボンレモン、璃の香、不知火、イヨカンの品種、川野なつだいだい、ハッサクの品種、太田ポンカン、みはや、あすみ、あすき、麗紅、津之輝、西南のひかり、津之望、はるひ、清見、せとか、はるみ、はれひめ、甘平、および愛媛果試第28号は、日本国内の作付面積の約94%を占める主要な品種である。
【0021】
また、本発明の一態様に係る識別方法により識別するカンキツの品種は、あすき、璃の香、みはや、あすみ、津之望、はるひ、津之輝、西南のひかり、麗紅、はれひめ、せとか、甘平、愛媛果試第28号、はるみ、かんきつ中間母本農6号、たまみ、西之香、およびあまかであることが特に好ましい。これらの品種は、2020年5月時点において、日本の農林水産省に品種登録されて付与された育成者権が存続しており、これらの品種の識別は、育成者権保護の観点から特に重要である。
【0022】
本明細書において、カンキツの品種の識別とは、品種が不特定の1種または複数種のカンキツ被検体を解析して、カンキツ被検体の品種を他の品種と区別すること、カンキツ被検体の品種が特定の品種に含まれているか否かを判定すること、または、カンキツ被検体の品種を特定すること等を意味する。
【0023】
本明細書において、カンキツ被検体は、ミカン科ミカン亜科のミカン属(Citrus)、キンカン属(Fortunella)、およびカラタチ属(Poncirus)等に属する植物体の生鮮果実、種子、苗、花、葉、樹木、根、芽、およびこれらの一部分、ならびに、これらの加工品、特に加工果実が挙げられる。当該植物体の加工果実としては、果汁(ジュース)、果実缶詰、果実瓶詰、乾燥果実、ジャム、砂糖漬け果皮等が挙げられる。税関および加工業者の検査現場等においてカンキツの品種識別に実用的に使用し得るという観点から、カンキツ被検体として、生鮮果実および加工果実を好適に使用することができる。
【0024】
(SNPマーカー)
本発明の一態様にかかる識別方法においては、上記(a)~(c)および(e)~(l)の11個のSNPマーカーのうちの少なくとも1つを用いたSNP分析を行う。また、11個のSNPマーカーの他に、(d)配列番号4で表される塩基配列の66番目の塩基に相当するSNPマーカー(SI149)も、カンキツの識別方法に用いることができる。ここで、SNPは、DNAの塩基配列中のある特定の領域内に一塩基の変異が見られるDNA多型を意味している。本発明の一態様にかかる識別方法において、SNPは、クレメンティン(Citrus clementina v1.0)のゲノム配列を基準とした一塩基多型である。基準品種であるクレメンティン(Citrus clementina v1.0)のゲノム配列は、Phytozomeのゲノムデータベース(https://phytozome.jgi.doe.gov/pz/portal.html)に公表されている。
【0025】
「配列番号X(X=1~8)で表される塩基配列(塩基配列Xとする)のY番目の塩基に相当するSNPマーカー」とは、非特許文献2に記載されたSNPマーカーである。塩基配列Xは、基準となるカンキツ品種(品種名:クレメンティン(Citrus clementina v1.0))由来の塩基配列であり、他のカンキツ品種においては、SNPマーカーの部分以外でも塩基配列が異なる部分が含まれ得る。
【0026】
他のカンキツ品種において、塩基配列Xに対応する塩基配列を塩基配列X’としたとき、「配列番号Xで表される塩基配列のY番目の塩基に相当する」とは、次の通りである。塩基配列XのY番目の塩基(塩基配列XとX’とがY番目の塩基以外で同一の場合)や、塩基配列X’上で当該塩基に対応している塩基を指す。このSNPマーカーが位置するゲノム上の領域は、多数のカンキツ品種間で保存されているため、ホモロジー検索等の手法によって、このSNPマーカーを特定することができる。
【0027】
上記(a)~(l)のSNPマーカーにおいて、SNPの位置および塩基は、以下のとおりである:
(a)配列番号1で表される塩基配列の31番目の塩基のCまたはG;
(b)配列番号2で表される塩基配列の33番目の塩基のCまたはG;
(c)配列番号3で表される塩基配列の36番目の塩基のAまたはT;
(d)配列番号4で表される塩基配列の66番目の塩基のAまたはG;
(e)配列番号5で表される塩基配列の35番目の塩基のAまたはG;
(f)配列番号6で表される塩基配列の37番目の塩基のCまたはT;
(g)配列番号7で表される塩基配列の44番目の塩基のAまたはG;
(h)配列番号8で表される塩基配列の74番目の塩基のCまたはT;
(i)配列番号41で表される塩基配列の40番目の塩基のAまたはT;
(j)配列番号42で表される塩基配列の33番目の塩基のAまたはC;
(k)配列番号43で表される塩基配列の38番目の塩基のAまたはG;
(l)配列番号44で表される塩基配列の55番目の塩基のAまたはC。
【0028】
非特許文献2には、カンキツの品種における384個のSNPマーカーが開示されている。本発明者らは、384個のSNPマーカーの情報を参照して鋭意検討した結果、カンキツ48品種を識別可能であり、アレル頻度、SNP検出のためのPCRプライマーおよびプローブの設計等の各種条件を満たす、(a)~(h)の8個のSNPマーカーを見出し、本発明を完成させた。上記(a)~(h)のSNPマーカーは、カンキツ被検体において、384個のSNPマーカーの中から選択された8個のSNPマーカーのそれぞれの存在を検出するためのDNAマーカーである。
【0029】
SNPマーカーは、識別の対象となるカンキツ被検体のDNAの塩基配列におけるSNPを検出し、品種ごとに対応付けられたSNPの情報と比較することで、カンキツ被検体の品種を識別する。識別方法においては、識別の対象となるカンキツの品種に応じて、上記(a)~(h)のSNPマーカーの中から、適切な種類および数のSNPマーカーを任意に選択して組み合わせて、カンキツの品種識別用SNPマーカーサブセットを構成する。
【0030】
上記(a)~(h)のSNPマーカーの中から適切なSNPマーカーまたはそのサブセットを選択することにより、カンキツ被検体の品種を識別することができる。具体的には、品種が不特定のカンキツ被検体が、カンキツ48品種のいずれであるかを特定することができる。さらには、カンキツ被検体が、カンキツ48品種以外の品種であるか否かについても判定することができる。
【0031】
例えば、識別したい品種が特定の2品種だけである場合は、上記(a)~(h)のSNPマーカーのうちから、当該2品種の間で相違する1個のSNPマーカーを選択し、解析すればよい。これにより、被検体が2品種のいずれかであるかを特定することができる。また、識別したい品種が多数である場合は、当該品種間でSNP解析結果が重複しないように、上記(a)~(h)のSNPマーカーの群より、少なくとも1つのSNPマーカーを選択し、カンキツ被検体の品種を特定すればよい。また、識別する品種に応じて、上記(a)~(h)のSNPマーカーの群より選択される2つ以上のSNPマーカーの組合せを用いて、カンキツ被検体の品種を特定してもよい。さらに、上記(a)~(h)のSNPマーカーの群より選択される3個以上、4個以上、5個以上、6個以上、7個以上、または8個のSNPマーカーの組合せを用いて、カンキツ被検体の品種を特定してもよい。
【0032】
本発明の一態様に係る識別方法において用いる上記(a)~(h)のSNPマーカーのうち、7個のSNPマーカーからなる2組の最少サブセット(サブセット1およびサブセット2)内のSNPマーカーを適宜組み合わせてSNP分析することにより、カンキツの上記48品種の全てを識別することができる。上記サブセット1は、上述した8個のSNPマーカーのうちのSI312、SI001、SI322、SI149、SI306、SI210およびSI381からなる。また、サブセット2は、上述した8個のSNPマーカーのうちのSI312、SI001、SI322、SI149、SI306、SI201およびSI210からなる。
【0033】
また、本発明の一態様に係る識別方法において用いる上記(a)~(l)のSNPマーカーのうち、9個のSNP(SI312、SI2042、SI145、SI322、SI281、SI2711、SI306、SI201、および、SI381)からなる最少サブセットを用いることによって、後述する表5および6に示す84品種のカンキツの全てを識別することができる。
【0034】
カンキツ48品種と上記(a)~(h)のそれぞれのSNPマーカーとの関係を、以下の表1に示す。また、カンキツ48品種と上記(i)~(l)のそれぞれのSNPマーカーとの関係を、以下の表2に示す。
【0035】
【表1】
【0036】
【表2】
【0037】
本発明の一実施形態において、表1に示すカンキツの上記48品種と上記(a)~(h)のそれぞれのSNPマーカーとの関係に基づけば、カンキツ被検体について、下記(1)~(30)からなる群より選択される少なくとも1つの品種の特定を行うことができる:
(1)前記SI001および前記SI201からなるサブセット、または、前記SI001および前記SI210からなるサブセット、または、前記SI322および前記SI381からなるサブセットを用いた、宮川早生の特定;
(2)前記SI001および前記SI149をからなるサブセットを用いた、ダンカングレープフルーツの特定;
(3)前記SI001、前記SI149、前記SI210、前記SI312、および前記SI381からなるサブセット、または、前記SI001、前記SI149、前記SI210、前記SI312および前記SI322からなるサブセット、または、前記SI001、前記SI210、前記SI306、前記SI312、およびSI381からなるサブセットを用いた、トロビタスイートオレンジの特定;
(4)前記SI312および前記SI322からなるサブセットを用いた、リスボンレモンの特定;
(5)前記SI001、前記SI149、および前記SI201からなるサブセット、または、前記SI001、前記SI149、および前記SI322からなるサブセットを用いた、不知火の特定;
(6)前記SI001、前記SI149、前記SI312、および前記SI322からなるサブセット、または、前記SI001、前記SI306、前記SI312、および前記SI322からなるサブセット、または、前記SI149、前記SI312、前記SI322、および前記SI381からなるサブセットを用いた、イヨカンの特定;
(7)前記SI210および前記SI322からなるサブセットを用いた、川野なつだいだいの特定;
(8)前記SI001、前記SI149、および前記SI210からなるサブセット、または、前記SI001、前記SI210、および前記SI381からなるサブセットを用いた、ハッサクの特定;
(9)前記SI149、前記SI210、および前記SI312からなるサブセット、または、前記SI210、前記SI312、および前記SI322からなるサブセット、または、前記SI210、前記SI312、および前記SI381からなるサブセットを用いた、太田ポンカンの特定;
(10)前記SI306および前記SI322からなるサブセットを用いた、璃の香の特定;
(11)前記SI001および前記SI306からなるサブセットを用いた、みはやの特定;
(12)前記SI312、前記SI306、および前記SI149からなるサブセット、または、前記SI312、前記SI306、および前記SI210からなるサブセット、または、前記SI312、前記SI306、および前記SI381からなるサブセット、または、前記SI312、前記SI306、および前記SI322からなるサブセット、または、前記SI312、前記SI306、および前記SI201からなるサブセット、または、前記SI001、前記SI149、および前記SI306からなるサブセット、または、前記SI001、前記SI306、および前記SI210からなるサブセット、または、前記SI001、前記SI306、および前記SI381からなるサブセット、または、前記SI001、前記SI306、および前記SI322からなるサブセット、または、前記SI001、前記SI306、および前記SI201からなるサブセット、または、前記SI149、前記SI306、および前記SI210からなるサブセット、または、前記SI149、前記SI306、および前記SI381からなるサブセット、または、前記SI149、前記SI306、および前記SI201からなるサブセット、または、前記SI306、前記SI210、および前記SI322からなるサブセット、または、前記SI306、前記SI210、および前記SI201からなるサブセット、または、前記SI306、前記SI381、および前記SI322からなるサブセット、または、前記SI306、前記SI381、および前記SI201からなるサブセット、または、前記SI306、前記SI322、および前記SI201からなるサブセットを用いた、あすみの特定;
(13)前記SI001、前記SI210、および前記SI306からなるサブセット、または、前記SI306、前記SI201、および前記SI210からなるサブセットを用いた、あすきの特定;
(14)前記SI210および前記SI312からなるサブセットを用いた、麗紅の特定;
(15)前記SI001、前記SI210、および前記SI312からなるサブセット、または、前記SI210、前記SI312、および前記SI381からなるサブセットを用いた、津之輝の特定;
(16)前記SI149、前記SI210、および前記SI306からなるサブセット、または、前記SI210、前記SI306、および前記SI322からなるサブセットを用いた、西南のひかりの特定;
(17)前記SI001、前記SI210、および前記SI312からなるサブセット、または、前記SI210、前記SI312、および前記SI381からなるサブセットを用いた、津之望の特定;
(18)前記SI201および前記SI306からなるサブセット、または、前記SI201および前記SI381からなるサブセット、または、SI201およびSI322からなるサブセットを用いた、はるひの特定;
(19)前記SI201、前記SI312、および前記SI381からなるサブセット、または、前記SI149、前記SI201、および前記SI210からなるサブセット、または、前記SI149、前記SI210、および前記SI322からなるサブセットを用いた、清見の特定;
(20)前記SI001、前記SI201、および前記SI312からなるサブセット、または、前記SI210、前記SI312、および前記SI381からなるサブセットを用いた、せとかの特定;
(21)前記SI312、前記SI210、前記SI149、および前記SI381からなるサブセット、または、前記SI312、前記SI210、前記SI149、および前記SI322からなるサブセット、または、前記SI312、前記SI210、前記SI149、および前記SI201からなるサブセット、または、前記SI312、前記SI306、前記SI210、および前記SI201からなるサブセット、または、前記SI312、前記SI210、前記SI381、および前記SI201からなるサブセット、または、前記SI312、前記SI210、前記SI322、および前記SI201からなるサブセットを用いた、はるみの特定;
(22)前記SI306、前記SI210、および前記SI001からなるサブセット、または、前記SI149、前記SI210、および前記SI322からなるサブセット、または、前記SI210、前記SI306、および前記SI381からなるサブセット、または、前記SI306、前記SI210、および前記SI322からなるサブセットを用いた、はれひめの特定;
(23)前記SI149、前記SI210、および前記SI306からなるサブセットを用いた、甘平の特定;
(24)前記SI001、前記SI306、および前記SI322からなるサブセット、または、前記SI001、前記SI201、および前記SI322からなるサブセットを用いた、愛媛果試第28号の特定;
(25)前記SI001および前記SI381からなるサブセットを用いた、ユズの特定;
(26)SI201、およびSI306からなるサブセットを用いた、河内晩柑の特定;
(27)前記SI001、前記SI149、および前記SI381からなるサブセットを用いた、たまみの特定;
(28)前記SI312、前記SI201、および前記SI306からなるサブセット、または、前記SI312、前記SI210、および前記SI381からなるサブセット、または、前記SI312、前記SI381、および前記SI201からなるサブセット、または、前記SI001、前記SI306、および前記SI381からなるサブセット、または、前記SI001、前記SI306、および前記SI201からなるサブセット、または、前記SI001、前記SI210、および前記SI381からなるサブセット、または、前記SI001、前記SI381、および前記SI201からなるサブセット、または、前記SI149、前記SI306、および前記SI381からなるサブセット、または、前記SI149、前記SI210、および前記SI381からなるサブセット、または、前記SI149、前記SI381、および前記SI201からなるサブセットを用いた、西之香の特定;
(29)前記SI001、前記SI149、および前記SI306、または、前記SI001、前記SI149、および前記SI210、または、前記SI001、前記SI149、および前記SI322からなるサブセットを用いた、あまかの特定;および、
(30)前記SI312および前記SI381からなるサブセット、または、前記SI312および前記SI322からなるサブセットを用いた、かんきつ中間母本農6号の特定。
【0038】
例えば、SI001およびSI210からなるサブセットを用いてカンキツ被検体をSNP分析する。その結果、SI001で検出されるSNPアレルがGGであり、SI210で検出されるSNPアレルがAAであれば、このような解析結果が得られる品種は宮川早生だけであるので、当該カンキツ被検体の品種が宮川早生であると特定することができる。
【0039】
また、本発明の一態様に係る識別方法の特定工程においては、カンキツ被検体について、下記の少なくとも1つの品種を特定することがより好ましい:
(10)前記SI306および前記SI322からなるサブセットを用いた、璃の香の特定;
(11)前記SI001および前記SI306からなるサブセットを用いた、みはやの特定;
(12)前記SI312、前記SI306、および前記SI149からなるサブセット、または、前記SI312、前記SI306、および前記SI210からなるサブセット、または、前記SI312、前記SI306、および前記SI381からなるサブセット、または、前記SI312、前記SI306、および前記SI322からなるサブセット、または、前記SI312、前記SI306、および前記SI201からなるサブセット、または、前記SI001、前記SI149、および前記SI306からなるサブセット、または、前記SI001、前記SI306、および前記SI210からなるサブセット、または、前記SI001、前記SI306、および前記SI381からなるサブセット、または、前記SI001、前記SI306、および前記SI322からなるサブセット、または、前記SI001、前記SI306、および前記SI201からなるサブセット、または、前記SI149、前記SI306、および前記SI210からなるサブセット、または、前記SI149、前記SI306、および前記SI381からなるサブセット、または、前記SI149、前記SI306、および前記SI201からなるサブセット、または、前記SI306、前記SI210、および前記SI322からなるサブセット、または、前記SI306、前記SI210、および前記SI201からなるサブセット、または、前記SI306、前記SI381、および前記SI322からなるサブセット、または、前記SI306、前記SI381、および前記SI201からなるサブセット、または、前記SI306、前記SI322、および前記SI201からなるサブセットを用いた、あすみの特定;
(13)前記SI001、前記SI210、および前記SI306からなるサブセット、または、前記SI306、前記SI201、および前記SI210からなるサブセットを用いた、あすきの特定;
(14)前記SI210および前記SI312からなるサブセットを用いた、麗紅の特定;
(15)前記SI001、前記SI210、および前記SI312からなるサブセット、または、前記SI210、前記SI312、および前記SI381からなるサブセットを用いた、津之輝の特定;
(16)前記SI149、前記SI210、および前記SI306からなるサブセット、または、前記SI210、前記SI306、および前記SI322からなるサブセットを用いた、西南のひかりの特定;
(17)前記SI001、前記SI210、および前記SI312からなるサブセット、または、前記SI210、前記SI312、および前記SI381からなるサブセットを用いた、津之望の特定;
(18)前記SI201および前記SI306からなるサブセット、または、前記SI201および前記SI381からなるサブセット、または、SI201およびSI322からなるサブセットを用いた、はるひの特定;
(20)前記SI001、前記SI201、および前記SI312からなるサブセット、または、前記SI210、前記SI312、および前記SI381からなるサブセットを用いた、せとかの特定;
(21)前記SI312、前記SI210、前記SI149、および前記SI381からなるサブセット、または、前記SI312、前記SI210、前記SI149、および前記SI322からなるサブセット、または、前記SI312、前記SI210、前記SI149、および前記SI201からなるサブセット、または、前記SI312、前記SI306、前記SI210、および前記SI201からなるサブセット、または、前記SI312、前記SI210、前記SI381、および前記SI201からなるサブセット、または、前記SI312、前記SI210、前記SI322、および前記SI201からなるサブセットを用いた、はるみの特定;
(22)前記SI306、前記SI210、および前記SI001からなるサブセット、または、前記SI149、前記SI210、および前記SI322からなるサブセット、または、前記SI210、前記SI306、および前記SI381からなるサブセット、または、前記SI306、前記SI210、および前記SI322からなるサブセットを用いた、はれひめの特定;
(23)前記SI149、前記SI210、および前記SI306からなるサブセットを用いた、甘平の特定;
(24)前記SI001、前記SI306、および前記SI322からなるサブセット、または、前記SI001、前記SI201、および前記SI322からなるサブセットを用いた、愛媛果試第28号の特定;
(27)前記SI001、前記SI149、および前記SI381からなるサブセットを用いた、たまみの特定;
(28)前記SI312、前記SI201、および前記SI306からなるサブセット、または、前記SI312、前記SI210、および前記SI381からなるサブセット、または、前記SI312、前記SI381、および前記SI201からなるサブセット、または、前記SI001、前記SI306、および前記SI381からなるサブセット、または、前記SI001、前記SI306、および前記SI201からなるサブセット、または、前記SI001、前記SI210、および前記SI381からなるサブセット、または、前記SI001、前記SI381、および前記SI201からなるサブセット、または、前記SI149、前記SI306、および前記SI381からなるサブセット、または、前記SI149、前記SI210、および前記SI381からなるサブセット、または、前記SI149、前記SI381、および前記SI201からなるサブセットを用いた、西之香の特定;
(29)前記SI001、前記SI149、および前記SI306、または、前記SI001、前記SI149、および前記SI210、または、前記SI001、前記SI149、および前記SI322からなるサブセットを用いた、あまかの特定;および、
(30)前記SI312および前記SI381からなるサブセット、または、前記SI312および前記SI322からなるサブセットを用いた、かんきつ中間母本農6号の特定。
【0040】
本発明者らは、さらに鋭意検討した結果、実施例に示すように、(a)~(c)および(e)~(l)の11個のSNPマーカーが、カンキツ48品種を含む、84品種のカンキツを識別可能である、アレル頻度、SNP検出のためのPCRプライマーおよびプローブの設計等の各種条件を満たすことを見出した。具体的な識別方法は、上述のカンキツ48品種の識別方法と同様である。
【0041】
36品種のカンキツと上記(a)~(h)のそれぞれのSNPマーカーとの関係を、以下の表3に示す。また、36品種のカンキツと上記(i)~(l)のそれぞれのSNPマーカーとの関係を、以下の表4に示す。
【0042】
【表3】
【0043】
【表4】
【0044】
本発明の一実施形態において、表1および表3に示すカンキツ84品種と(a)~(c)および(e)~(l)の11個のそれぞれのSNPマーカーとの関係に基づけば、カンキツ被検体について、下記(31)~(52)からなる群より選択される少なくとも1つの品種の特定を行うことができる:
(31)前記SI201、前記SI2042および前記SI312からなるサブセット、または、前記SI312、前記SI2042および前記SI381からなるサブセット、または、前記SI312、前記SI322および前記SI306からなるサブセット、または、前記SI312、前記SI306および前記SI201からなるサブセット、または、前記SI312、前記SI306および前記SI381からなるサブセット、または、前記SI2042、前記SI001および前記SI145からなるサブセット、または、前記SI2042、前記SI001および前記SI281からなるサブセット、または、前記SI2042、前記SI001および前記SI201からなるサブセット、または、前記SI2042、前記SI145および前記SI322からなるサブセット、または、前記SI2042、前記SI145および前記SI306からなるサブセット、または、前記SI2042、前記SI322および前記SI306からなるサブセット、または、前記SI2042、前記SI322および前記SI201からなるサブセット、または、前記SI2042、前記SI281および前記SI306からなるサブセット、または、前記SI2042、前記SI2711および前記SI201からなるサブセット、または、前記SI2042、前記SI306および前記SI201からなるサブセット、または、前記SI2042、前記SI306および前記SI210からなるサブセット、または、前記SI2042、前記SI306および前記SI381からなるサブセット、または、前記SI2042、前記SI201および前記SI210からなるサブセット、または、前記SI2042、前記SI201および前記SI381からなるサブセット、または、前記SI001、前記SI322および前記SI306からなるサブセット、または、前記SI001、前記SI281および前記SI306からなるサブセット、または、前記SI001、前記SI306および前記SI201からなるサブセット、または、前記SI322、前記SI281および前記SI306からなるサブセット、または、前記SI322、前記SI306および前記SI210からなるサブセット、または、前記SI281、前記SI306および前記SI381からなるサブセット、または、前記SI306、前記SI201および前記SI210からなるサブセットを用いた、璃の香の特定;
(32)前記SI2042、前記SI2711、前記SI312および前記SI381からなるサブセット、または、前記SI312、前記SI001、前記SI2711および前記SI381からなるサブセット、または、前記SI312、前記SI145、前記SI2711および前記SI381からなるサブセット、または、前記SI312、前記SI2711、前記SI306および前記SI381からなるサブセット、または、前記SI312、前記SI2711、前記SI210および前記SI381からなるサブセット、または、前記SI2042、前記SI2711、前記SI201および前記SI381からなるサブセット、または、前記SI2042、前記SI2711、前記SI210および前記SI381からなるサブセット、または、前記SI001、前記SI2711、前記SI201および前記SI381からなるサブセット、または、前記SI001、前記SI2711、前記SI210および前記SI381からなるサブセット、または、前記SI145、前記SI2711、前記SI201および前記SI381からなるサブセット、または、前記SI2711、前記SI306、前記SI201および前記SI381からなるサブセットを用いた、朱見の特定;
(33)前記SI145、前記SI210および前記SI281からなるサブセット、または、前記SI322、前記SI281および前記SI201からなるサブセット、または、前記SI322、前記SI281および前記SI381からなるサブセット、または、前記SI281、前記SI2711および前記SI210からなるサブセット、または、前記SI281、前記SI210および前記SI381からなるサブセットを用いた、あすきの特定;
(34)前記SI145および前記SI306からなるサブセットを用いた、あすみの特定;
(35)前記SI2042、前記SI2711および前記SI312からなるサブセット、または、前記SI312、前記SI001および前記SI2711からなるサブセット、または、前記SI2042、前記SI281および前記SI2711からなるサブセット、または、前記SI2042、前記SI2711および前記SI381からなるサブセット、または、前記SI001、前記SI281および前記SI2711からなるサブセット、または、前記SI001、前記SI2711および前記SI381からなるサブセットを用いた、あまかの特定;
(36)前記SI281、前記SI312および前記SI322からなるサブセット、または、前記SI2042、前記SI322および前記SI2711からなるサブセット、または、前記SI2042、前記SI322および前記SI306からなるサブセット、または、前記SI001、前記SI322および前記SI2711からなるサブセット、または、前記SI001、前記SI322および前記SI306からなるサブセット、または、前記SI145、前記SI201および前記SI381からなるサブセット、または、前記SI322、前記SI281および前記SI2711からなるサブセット、または、前記SI322、前記SI281および前記SI306からなるサブセット、または、前記SI322、前記SI281および前記SI381からなるサブセットを用いた、愛媛果試第28号の特定;
(37)前記SI145、前記SI201、前記SI312および前記SI381からなるサブユニット、または、前記SI312、前記SI322、前記SI201および前記SI381からなるサブユニット、または、前記SI312、前記SI281、前記SI201および前記SI381からなるサブユニット、または、前記SI312、前記SI201、前記SI210および前記SI381からなるサブユニット、または、前記SI145、前記SI322、前記SI306および前記SI210からなるサブユニット、または、前記SI145、前記SI322、前記SI306および前記SI381からなるサブユニット、または、前記SI145、前記SI281、前記SI201および前記SI210からなるサブユニット、または、前記SI145、前記SI201、前記SI210および前記SI381からなるサブユニット、または、前記SI322、前記SI281、前記SI201および前記SI381からなるサブユニット、または、前記SI281、前記SI201、前記SI210および前記SI381からなるサブセットを用いた、かんきつ中間母本農5号の特定;
(38)前記SI312および前記SI322からなるサブユニット、または、前記SI312および前記SI281からなるサブユニット、または、前記SI312および前記SI2711からなるサブユニット、または、前記SI312および前記SI381からなるサブセットを用いた、かんきつ中間母本農6号の特定;
(39)前記SI145、前記SI201、前記SI2711および前記SI312からなるサブユニット、または、前記SI2711、前記SI201、前記SI210および前記SI381からなるサブセットを用いた、甘平の特定;
(40)前記SI281、前記SI312および前記SI322からなるサブユニット、または、前記SI145、前記SI322および前記SI306からなるサブユニット、または、前記SI281、前記SI306および前記SI210からなるサブユニット、または、前記SI281、前記SI201および前記SI210からなるサブセットを用いた、西南のひかりの特定;
(41)前記SI145、前記SI2042および前記SI210からなるサブユニット、または、前記SI2042、前記SI281および前記SI210からなるサブユニット、または、前記SI001、前記SI145および前記SI210からなるサブユニット、または、前記SI001、前記SI281および前記SI210からなるサブユニット、または、前記SI145、前記SI281および前記SI210からなるサブユニット、または、前記SI145、前記SI2711および前記SI210からなるサブユニット、または、前記SI145、前記SI210および前記SI381からなるサブユニット、または、前記SI322、前記SI281および前記SI210からなるサブユニット、または、前記SI281、前記SI2711および前記SI210からなるサブユニット、または、前記SI281、前記SI306および前記SI210からなるサブユニット、または、前記SI281、前記SI201および前記SI210からなるサブユニット、または、前記SI281、前記SI210および前記SI381からなるサブセットを用いた、せとかの特定;
(42)前記SI2042、前記SI306および前記SI312からなるサブユニット、または、前記SI312、前記SI001および前記SI306からなるサブユニット、または、前記SI312、前記SI322および前記SI306からなるサブユニット、または、前記SI2042、前記SI306および前記SI201からなるサブユニット、または、前記SI001、前記SI306および前記SI201からなるサブユニット、または、前記SI145、前記SI306および前記SI381からなるサブユニット、または、前記SI322、前記SI2711および前記SI306からなるサブユニット、または、前記SI281、前記SI306および前記SI201からなるサブユニット、または、前記SI306、前記SI210および前記SI381からなるサブセットを用いた、せとみの特定;
(43)前記SI2042、前記SI2711、前記SI312および前記SI322からなるサブユニット、または、前記SI312、前記SI2042、前記SI2711および前記SI306からなるサブユニット、または、前記SI312、前記SI001、前記SI145および前記SI2711からなるサブユニット、または、前記SI312、前記SI001、前記SI322および前記SI2711からなるサブユニット、または、前記SI312、前記SI001、前記SI2711および前記SI306からなるサブユニット、または、前記SI2042、前記SI145、前記SI2711および前記SI381からなるサブユニット、または、前記SI2042、前記SI322、前記SI281および前記SI2711からなるサブユニット、または、前記SI2042、前記SI322、前記SI2711および前記SI210からなるサブユニット、または、前記SI2042、前記SI322、前記SI2711および前記SI381からなるサブユニット、または、前記SI2042、前記SI281、前記SI2711および前記SI306からなるサブユニット、または、前記SI2042、前記SI2711、前記SI306および前記SI381からなるサブユニット、または、前記SI2042、前記SI2711、前記SI210および前記SI381からなるサブユニット、または、前記SI001、前記SI145、前記SI281および前記SI2711からなるサブユニット、または、前記SI001、前記SI145、前記SI2711および前記SI210からなるサブユニット、または、前記SI001、前記SI145、前記SI2711および前記SI381からなるサブユニット、または、前記SI001、前記SI322、前記SI281および前記SI2711からなるサブユニット、または、前記SI001、前記SI322、前記SI2711および前記SI210からなるサブユニット、または、前記SI001、前記SI322、前記SI2711および前記SI381からなるサブユニット、または、前記SI001、前記SI281、前記SI2711および前記SI306からなるサブユニット、または、前記SI001、前記SI2711、前記SI306および前記SI210からなるサブユニット、または、前記SI001、前記SI2711、前記SI306および前記SI381からなるサブユニット、または、前記SI001、前記SI2711、前記SI210および前記SI381からなるサブユニットを用いた、たまみの特定;
(44)前記SI210および前記SI2711からなるサブユニットを用いた、津之輝の特定;
(45)前記SI145および前記SI210からなるサブユニットを用いた、津之望の特定;
(46)前記SI281および前記SI381からなるサブユニット、または、前記SI2711および前記SI381からサブユニットを用いた、西之香の特定;
(47)前記SI145および前記SI201からなるサブユニット、または、前記SI322および前記SI201からなるサブユニット、または、前記SI2711および前記SI201からなるサブユニット、または、前記SI306および前記SI201からなるサブユニット、または、前記SI201および前記SI381からなるサブユニットを用いた、はるひの特定;
(48)前記SI2042、前記SI281、前記SI312および前記SI322からなるサブユニット、または、前記SI312、前記SI2042、前記SI322および前記SI281からなるサブユニット、または、前記SI312、前記SI001、前記SI322および前記SI281からなるサブユニット、または、前記SI312、前記SI145、前記SI322および前記SI281からなるサブユニット、または、前記SI312、前記SI145、前記SI281および前記SI306からなるサブユニット、または、前記SI312、前記SI145、前記SI281および前記SI210からなるサブユニット、または、前記SI312、前記SI145、前記SI201および前記SI210からなるサブユニット、または、前記SI312、前記SI322、前記SI281および前記SI2711からなるサブユニット、または、前記SI312、前記SI322、前記SI281および前記SI210からなるサブユニット、または、前記SI312、前記SI322、前記SI201および前記SI210からなるサブユニット、または、前記SI145、前記SI281、前記SI2711および前記SI210からなるサブユニット、または、前記SI322、前記SI281、前記SI2711および前記SI306からなるサブユニット、または、前記SI322、前記SI281、前記SI2711および前記SI210からなるサブユニット、または、前記SI281、前記SI2711、前記SI306および前記SI210からなるサブユニット、または、前記SI281、前記SI2711、前記SI210および前記SI381からなるサブユニットを用いた、はるみの特定;
(49)前記SI2711および前記SI281からなるサブユニットを用いた、はれひめの特定;
(50)前記SI201、前記SI2042、前記SI312および前記SI322からなるサブユニット、または、前記SI312、前記SI2042、前記SI281および前記SI201からなるサブユニット、または、前記SI312、前記SI2042、前記SI201および前記SI381からなるサブユニット、または、前記SI312、前記SI001、前記SI322および前記SI201からなるサブユニット、または、前記SI312、前記SI001、前記SI281および前記SI201からなるサブユニット、または、前記SI312、前記SI001、前記SI201および前記SI381からなるサブユニット、または、前記SI2042、前記SI322、前記SI201および前記SI210からなるサブユニット、または、前記SI001、前記SI322、前記SI201および前記SI210からなるサブユニットを用いた、べにばえの特定;
(51)前記SI2042、前記SI210、前記SI306および前記SI312からなるサブユニット、または、前記SI312、前記SI2042、前記SI306および前記SI381からなるサブユニット、または、前記SI312、前記SI001、前記SI306および前記SI210からなるサブユニット、または、前記SI312、前記SI001、前記SI306および前記SI381からなるサブユニット、または、前記SI2042、前記SI322、前記SI306および前記SI201からなるサブユニット、または、前記SI001、前記SI322、前記SI306および前記SI201からなるサブユニットを用いた、みはやの特定;
(52)前記SI210および前記SI312からなるサブユニットを用いた、麗紅の特定。
【0045】
(SNP分析)
特定工程において、上記(a)~(l)のSNPマーカーを用いてカンキツ被検体のSNP分析を行う方法としては、特に限定されず、SNPを検出する公知のSNP分析方法を用いることができる。このような公知のSNP分析方法には、カンキツ被検体のPCR増幅断片中のSNPを、蛍光標識したオリゴヌクレオチドプローブにより検出することによりSNP分析する方法が含まれる。
【0046】
すなわち、特定工程において、品種の特定に用いるSNPマーカーを含む領域を増幅するプライマーセットを用いて、カンキツ被検体のDNAにおける前記領域を増幅してもよい。カンキツ被検体のDNAの前記領域の増幅は、カンキツ被検体から抽出したDNAを鋳型にして、SNPマーカーを含む領域を増幅するプライマーを用いて、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により行う。そして、得られた増幅断片におけるSNPの塩基(遺伝子型)を決定し、決定された塩基(遺伝子型)と品種との関係を示す表1~4に示すようなデータに基づいて、カンキツ被検体の品種を特定する。
【0047】
ここで、カンキツ被検体からDNAを抽出する方法としては、特に限定されず、公知のDNA抽出方法を用いることができる。また、市販のDNA抽出キットを用いて、DNAを抽出してもよい。被検体の種類および夾雑物の量等に応じて、DNA抽出工程の前に、適宜に前処理を行ってもよい。例えば、被検体が固体である場合は、DNA抽出工程の前に、被検体を、液化窒素等により予め粉末化しておいてもよい。また、被検体が液体である場合は、被検体を遠心分離することにより固形分を沈殿させて、回収されるペレットを、DNA抽出工程に用いてもよい。さらに、被検体が生鮮果実または加工果実等である場合は、DNA抽出工程の前に、洗浄バッファによる洗浄を行い、被検体に含まれる糖類およびフェノール類等をある程度除去してもよい。また、被検体から抽出されたDNAは、PCR反応において鋳型として用いるために、必要に応じて洗浄または精製してもよい。
【0048】
PCRにより、上記(a)~(l)のSNPマーカーのいずれかを含む領域を増幅するためのプライマーセットは、標的のSNPマーカーを含む領域のDNA断片を増幅することができるものである限り、特に限定されない。カンキツ被検体が生鮮果実および加工果実等である場合には、抽出されるDNAサンプル中の夾雑物が多いため、増幅断片の長さが短くなるようにプライマーセットを設計することが好ましい。例えば、プライマー増幅断片の長さが、150塩基対(bp)以下となるようにプライマーセットを設計することが好ましく、120bp以下となるようにプライマーセットを設計することがより好ましく、100bp以下となるようにプライマーセットを設計することがさらに好ましい。
【0049】
上記(a)~(l)のSNPマーカーのいずれかを含む領域を増幅するためのプライマーセットは、フォワードプライマーである第1のプライマーと、リバースプライマーである第2のプライマーとが含まれる。これらのプライマーの長さは、例えば、15bp以上、16bp以上、17bp以上、18bp以上、または20bp以上であってもよく、50塩基bp以下、40bp以下、または30bp以下であってもよい。
【0050】
SNPマーカーを含む領域を増幅するためのプライマーセットは、下記(a’)~(h’):
(a’)配列番号1で表される塩基配列の31番目の塩基に相当するSNPマーカー(SI312)を含む領域を増幅するためのプライマーセットであって、配列番号9に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第1のプライマーと、配列番号10に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第2のプライマーとからなるプライマーセット;
(b’)配列番号2で表される塩基配列の33番目の塩基に相当するSNPマーカー(SI001)を含む領域を増幅するためのプライマーセットであって、配列番号11に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第1のプライマーと、配列番号12に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第2のプライマーとからなるプライマーセット;
(c’)配列番号3で表される塩基配列の36番目の塩基に相当するSNPマーカー(SI322)を含む領域を増幅するためのプライマーセットであって、配列番号13に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第1のプライマーと、配列番号14に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第2のプライマーとからなるプライマーセット;
(d’)配列番号4で表される塩基配列の66番目の塩基に相当するSNPマーカー(SI149)を含む領域を増幅するためのプライマーセットであって、配列番号15に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第1のプライマーと、配列番号16に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第2のプライマーとからなるプライマーセット;
(e’)配列番号5で表される塩基配列の35番目の塩基に相当するSNPマーカー(SI306)を含む領域を増幅するためのプライマーセットであって、配列番号17に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第1のプライマーと、配列番号18に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第2のプライマーとからなるプライマーセット;
(f’)配列番号6で表される塩基配列の37番目の塩基に相当するSNPマーカー(SI201)を含む領域を増幅するためのプライマーセットであって、配列番号19に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第1のプライマーと、配列番号20に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第2のプライマーとからなるプライマーセット;
(g’)配列番号7で表される塩基配列の44番目の塩基に相当するSNPマーカー(SI210)を含む領域を増幅するためのプライマーセットであって、配列番号21に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第1のプライマーと、配列番号22に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第2のプライマーとからなるプライマーセット;
(h’)配列番号8で表される塩基配列の74番目の塩基に相当するSNPマーカー(SI381)を含む領域を増幅するためのプライマーセットであって、配列番号23に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第1のプライマーと、配列番号24に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第2のプライマーとからなるプライマーセット;
(i’)配列番号41で表される塩基配列の40番目の塩基に相当するSNPマーカーを含む領域を増幅するためのプライマーセットであって、配列番号45に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第1のプライマーと、配列番号46に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第2のプライマーとからなるプライマーセット;
(j’)配列番号42で表される塩基配列の33番目の塩基に相当するSNPマーカーを含む領域を増幅するためのプライマーセットであって、配列番号47に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第1のプライマーと、配列番号48に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第2のプライマーとからなるプライマーセット;
(k’)配列番号43で表される塩基配列の38番目の塩基に相当するSNPマーカーを含む領域を増幅するためのプライマーセットであって、配列番号49に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第1のプライマーと、配列番号50に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第2のプライマーとからなるプライマーセット;および、
(l’)配列番号44で表される塩基配列の55番目の塩基に相当するSNPマーカーを含む領域を増幅するためのプライマーセットであって、配列番号51に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第1のプライマーと、配列番号52に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第2のプライマーとからなるプライマーセット;
からなる群より選択されてもよい。
【0051】
例えば、(a’)のプライマーセットにおいて、第1のプライマーには、配列番号9の塩基配列を全て含み、より長いプライマー、ならびに、配列番号9の塩基配列の少なくとも一部(例えば15bp)を含み、その前または後に他の塩基配列を含むプライマーも含まれる。
【0052】
また、例えば、(a’)のプライマーセットは、(a’-1)配列番号1に示される塩基配列における1番目~22番目の塩基配列の少なくとも一部の塩基配列またはその均等な塩基配列からなる第1のプライマーと、第2のプライマーは、配列番号1に示される塩基配列における66番目~91番目の塩基配列の少なくとも一部の塩基配列またはその均等な塩基配列の相補配列からなる第2のプライマー、の組み合わせ、または、(a’-2)配列番号1に示される塩基配列における1番目~22番目の塩基配列の少なくとも一部の塩基配列またはその均等な塩基配列の相補配列からなる第1のプライマー、および、配列番号1に示される塩基配列における66番目~91番目の塩基配列の少なくとも一部の塩基配列またはその均等な塩基配列からなる第2のプライマー、の組み合わせであってもよい。
【0053】
なお、本願明細書において、「均等な塩基配列」とは、品種間における塩基配列のバリエーションに対応する塩基配列であってよい。所定の塩基配列に均等な塩基配列とは、所定の塩基配列において、数個(例えば1~10個、好ましくは1~5個、より好ましくは1、2または3個)の塩基の修飾(置換、欠失、挿入または付加)を含む塩基配列であってよい。このような均等な塩基配列は、当該技術分野における当業者にとって明らかであり、カンキツの品種の遺伝子情報を登録しているデータベースを参照することにより、または、カンキツの品種において染色体番号および塩基のゲノム上の位置により特定されるSNPの近傍領域の塩基配列を解読することにより、決定することができる。
【0054】
SNP分析におけるPCRは、単独のプライマーセットを含む反応系でDNA断片を増幅するシングルプレックスPCR、または、複数のプライマーセットを含む反応系で遺伝子増幅するマルチプレックスPCR、のいずれであってもよい。マルチプレックスPCRの場合は、異なる波長を有する蛍光物質(例えば、NED、6-FAM、VIC、PET)により標識したプライマーセットを混合してもよい。
【0055】
PCRの反応条件は、用いるDNAポリメラーゼおよびPCR装置の種類、増幅断片の長さ等に応じて適宜に設定され得る。サイクル条件としては、変性工程、アニーリング工程および伸長工程の3工程を1サイクルとする3ステップPCR法、および、変性工程とアニーリングおよび伸長工程との2工程を1サイクルとする2ステップPCR法を適用することができる。2ステップPCR法を用いることにより、PCRにかかる時間を短縮することができる。2ステップPCR法のサイクル条件の一例としては、例えば、DNAポリメラーゼの活性化を90~100℃で5~15分間(例えば、95℃で10分間)行った後に、変性工程(90~100℃で10~20秒間、例えば、95℃で15秒間)とアニーリングおよび伸長工程(55~65℃で45秒間~2分間、例えば、60℃で1分間)とを1サイクルとして、合計30~50サイクル、例えば、40サイクル行う。鋳型となるDNAの量および品質に応じて、SNPマーカーを安定的に検出するために、サイクル数を調整してもよい。例えば、加工果実等から抽出されるDNAは、葉等から抽出されるDNAよりも、量および品質が低下するため、サイクル数を45~50サイクル程度に増加させてもよい。
【0056】
SNP分析におけるPCRとして、PCRによる増幅およびSNPマーカーの特定を行うTaqMan(登録商標)-PCR法のようなリアルタイムPCRを用いることがより好ましい。すなわち、特定工程において、上述したプライマーセットを用いて増幅した増幅断片に含まれるSNPマーカーを検出するTaqMan(登録商標)プローブをさらに用いることが好ましい。リアルタイムPCR法を用いることにより、高処理能力の識別方法を提供することができる。なお、PCRにより増幅した増幅断片においてSNPマーカーを特定する方法としては、自動DNAシークエンサー等を用いて増幅断片の塩基配列を決定することにより、解析してもよい。
【0057】
TaqMan(登録商標)-PCR法によるリアルタイムPCRに用いるプローブは、上述したプライマーセットと共に用いられる、蛍光標識したプローブセットであり、このようなプローブセットは、例えば、下記(a’’)~(l’’)から選択されるプローブセットである:
(a’’)前記(a’)のプライマーセットと共に用いるプローブであって、配列番号25に示される塩基配列を有する第1のプローブと、配列番号26に示される塩基配列を有する第2のプローブとからなるプローブセット;
(b’’)前記(b’)のプライマーセットと共に用いるプローブであって、配列番号27に示される塩基配列を有する第1のプローブと、配列番号28に示される塩基配列を有する第2のプローブとからなるプローブセット;
(c’’)前記(c’)のプライマーセットと共に用いるプローブであって、配列番号29に示される塩基配列を有する第1のプローブと、配列番号30に示される塩基配列を有する第2のプローブとからなるプローブセット;
(d’’)前記(d’)のプライマーセットと共に用いるプローブであって、配列番号31に示される塩基配列を有する第1のプローブと、配列番号32に示される塩基配列を有する第2のプローブとからなるプローブセット;
(e’’)前記(e’)のプライマーセットと共に用いるプローブであって、配列番号33に示される塩基配列を有する第1のプローブと、配列番号34に示される塩基配列を有する第2のプローブとからなるプローブセット;
(f’’)前記(f’)のプライマーセットと共に用いるプローブであって、配列番号35に示される塩基配列を有する第1のプローブと、配列番号36に示される塩基配列を有する第2のプローブとからなるプローブセット;
(g’’)前記(g’)のプライマーセットと共に用いるプローブであって、配列番号37に示される塩基配列を有する第1のプローブと、配列番号38に示される塩基配列を有する第2のプローブとからなるプローブセット;
(h’’)前記(h’)のプライマーセットと共に用いるプローブであって、配列番号39に示される塩基配列を有する第1のプローブと、配列番号40に示される塩基配列を有する第2のプローブとからなるプローブセット;
(i’’)前記(i’)のプライマーセットと共に用いるプローブであって、配列番号53に示される塩基配列を有する第1のプローブと、配列番号54に示される塩基配列を有する第2のプローブとからなるプローブセット;
(j’’)前記(j’)のプライマーセットと共に用いるプローブであって、配列番号55に示される塩基配列を有する第1のプローブと、配列番号56に示される塩基配列を有する第2のプローブとからなるプローブセット;
(k’’)前記(k’)のプライマーセットと共に用いるプローブであって、配列番号57に示される塩基配列を有する第1のプローブと、配列番号58に示される塩基配列を有する第2のプローブとからなるプローブセット;および、
(l’’)前記(l’)のプライマーセットと共に用いるプローブであって、配列番号59に示される塩基配列を有する第1のプローブと、配列番号60に示される塩基配列を有する第2のプローブとからなるプローブセット。
【0058】
SNP分析におけるTaqMan(登録商標)-PCR法によるリアルタイムPCRは、例えば、以下のように行う。まず、プローブの5’末端にレポーター蛍光(FAM、VIC等)を標識する。このプローブの3’末端に上記レポーター蛍光を消光可能なクエンチャー蛍光を標識する。次いで、レポーター蛍光およびクエンチャー蛍光を標識したプローブを、カンキツ被検体から抽出したDNAに、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズさせる。ここで、ストリンジェントな条件とは、例えば、1×SSC、0.1% SDS中、60℃で洗浄する条件である。そして、5’ヌクレアーゼ活性を有するDNAポリメラーゼ(Taq DNAポリメラーゼ等)を用いて標的配列を増幅する。その結果、レポーター蛍光とクエンチャー蛍光を標識したプローブのレポーター蛍光標識部分が切断され、レポーター蛍光が遊離する。遊離したレポーター蛍光を検出し、レポーター蛍光の発光を対照と比較する。
【0059】
本発明の一態様に係る識別方法において用いられる上記(a)~(l)のSNPマーカーは、PCRによる増幅断片が短鎖である、アレル頻度が適切である、TaqMan(登録商標)プローブを作成可能である等の条件を満たすものとして選択されたものである。したがって、当該識別方法においては、PCR増幅等にかかる時間が短く、従来のCAPS分析法の8分の1程度の時間で迅速に品種を識別することができる。また、当該識別方法は、マルチプレックス解析が可能であり、作業効率が高い。さらに、当該識別方法は、夾雑物の混入、および熱処理等による劣化を有する低品質のDNAサンプルを用いる場合であっても、検出精度に優れ、再現性の高い安定した結果が得られる。そのため、当該識別方法は、カンキツ被検体として、種苗だけでなく、生鮮果実および加工果実を用いても精度よくカンキツの品種を識別することが可能である。したがって、当該識別方法は、税関および加工業者の検査現場等の導入に適しており、実用的な技術として、育成者権の保護および食品安全性の確保に貢献することができる。
【0060】
(その他)
別の実施形態において、本発明の一態様に係る識別方法は、指定の品種のカンキツの植物体またはその加工品において、他の品種の混在の可能性の評価に利用することができる。例えば、指定の品種のカンキツの植物体またはその加工品について、指定の品種に特有のSNP以外のSNPが検出される場合(例えば、他の品種に特有のSNPが検出される場合)、他の品種の混在の可能性、および/または、指定の品種が、他の品種により代用されている可能性があると評価することができる。また、指定の品種に特有のSNP以外のSNPが検出されない場合、他の品種の混在の可能性、および/または、指定の品種が他の品種により代用されている可能性がないか、または、低いと評価することができる。
【0061】
〔識別キット〕
本発明の一態様に係るカンキツの品種の識別キットは、カンキツの品種を識別するための識別キットであって、下記(a’)~(l’):
(a’)配列番号1で表される塩基配列の31番目の塩基に相当するSNPマーカーを含む領域を増幅するためのプライマーセットであって、配列番号9に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第1のプライマーと、配列番号10に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第2のプライマーとからなるプライマーセット;
(b’)配列番号2で表される塩基配列の33番目の塩基に相当するSNPマーカーを含む領域を増幅するためのプライマーセットであって、配列番号11に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第1のプライマーと、配列番号12に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第2のプライマーとからなるプライマーセット;
(c’)配列番号3で表される塩基配列の36番目の塩基に相当するSNPマーカーを含む領域を増幅するためのプライマーセットであって、配列番号13に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第1のプライマーと、配列番号14に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第2のプライマーとからなるプライマーセット;
(d’)配列番号4で表される塩基配列の66番目の塩基に相当するSNPマーカーを含む領域を増幅するためのプライマーセットであって、配列番号15に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第1のプライマーと、配列番号16に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第2のプライマーとからなるプライマーセット;
(e’)配列番号5で表される塩基配列の35番目の塩基に相当するSNPマーカーを含む領域を増幅するためのプライマーセットであって、配列番号17に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第1のプライマーと、配列番号18に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第2のプライマーとからなるプライマーセット;
(f’)配列番号6で表される塩基配列の37番目の塩基に相当するSNPマーカーを含む領域を増幅するためのプライマーセットであって、配列番号19に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第1のプライマーと、配列番号20に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第2のプライマーとからなるプライマーセット;
(g’)配列番号7で表される塩基配列の44番目の塩基に相当するSNPマーカーを含む領域を増幅するためのプライマーセットであって、配列番号21に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第1のプライマーと、配列番号22に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第2のプライマーとからなるプライマーセット;
(h’)配列番号8で表される塩基配列の74番目の塩基に相当するSNPマーカーを含む領域を増幅するためのプライマーセットであって、配列番号23に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第1のプライマーと、配列番号24に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第2のプライマーとからなるプライマーセット;
(i’)配列番号41で表される塩基配列の40番目の塩基に相当するSNPマーカーを含む領域を増幅するためのプライマーセットであって、配列番号45に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第1のプライマーと、配列番号46に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第2のプライマーとからなるプライマーセット;
(j’)配列番号42で表される塩基配列の33番目の塩基に相当するSNPマーカーを含む領域を増幅するためのプライマーセットであって、配列番号47に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第1のプライマーと、配列番号48に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第2のプライマーとからなるプライマーセット;
(k’)配列番号43で表される塩基配列の38番目の塩基に相当するSNPマーカーを含む領域を増幅するためのプライマーセットであって、配列番号49に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第1のプライマーと、配列番号50に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第2のプライマーとからなるプライマーセット;および、
(l’)配列番号44で表される塩基配列の55番目の塩基に相当するSNPマーカーを含む領域を増幅するためのプライマーセットであって、配列番号51に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第1のプライマーと、配列番号52に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第2のプライマーとからなるプライマーセット;
からなる群より選択される少なくとも1つのプライマーセットを含む。
【0062】
例えば、本発明の一態様に係るカンキツの品種の識別キットは、上記(a’)~(l’)のプライマーセットのうち少なくとも2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10つまたは11つのプライマーセットを含んでいてもよい。また、当該識別キットは、上記(a’)~(l’)の12個のプライマーセットをすべて含んでいてもよい。
【0063】
また、本発明の一形態に係る識別キットは、前記プライマーセットを用いて増幅した増幅断片に含まれるSNPマーカーを検出するTaqMan(登録商標)プローブをさらに含んでもよい。
【0064】
すなわち、上述したプライマーセットおよびプローブは、本発明に係るカンキツの品種の識別キットに含まれるプライマーセットおよびプローブの一態様である。したがって、本発明に係るカンキツの品種の識別キットの詳細は、上述した本発明の一形態に係るカンキツの品種の識別方法の説明に準じる。
【0065】
本発明の一形態に係るカンキツの品種の識別キットは、上述したプライマーセットおよびプローブの他に、PCRに必要な試薬類、DNA抽出用試薬、使用説明書等を含んでもよい。
【0066】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例
【0067】
〔1.材料およびDNAの調製〕
(材料)
生鮮果実として、農業・食品産業技術総合研究機構 果樹茶業研究部門(NIFTS)のカンキツ研究領域において保存されるカンキツのうち、以下の表5に示される48品種および表6に示される36品種の果実を用意した。
【0068】
【表5】
【0069】
【表6】
【0070】
表5および6におけるアクセッション番号(JP No.)は、農業・食品産業技術総合研究機構(NARO)遺伝資源センターにおけるGenebank(http://www.gene.affrc.go.jp/databases-plant_search.php)に基づく記載である。また、登録番号は、農林水産省(MAFF)における品種登録ホームページ(http://www.hinshu2.maff.go.jp)に基づく記載である。分類学による分類は、田中式(Tanaka, T. (1956)Species problem in Citrus. Japanese Society for Promotion of Science, Tokyo, 1-152)に基づいて行った。
【0071】
以下の品種:宮川早生、ダンカングレープフルーツ、トロビタスイートオレンジ、リスボンレモン、イヨカン、川野なつだいだい、ハッサク、太田ポンカン、ユズ、およびスダチについては、長期にわたる栽培において開発された、遺伝的に有利な形質を備えた栽培変種を用いた。
【0072】
在来種のうち、アクセッション番号を有する代表的な品種を選択し、全てのCAPSマーカー遺伝子型により同一であることを確認した。
【0073】
各品種の生鮮果実を採取した。また、生鮮果実から、果汁(ストレートジュース)、果実缶詰および乾燥果実を調製した。果汁(ストレートジュース)は、生鮮全果を絞り、95℃で5秒間殺菌することにより調製した。果実缶詰は、0.3%水酸化ナトリウムで処理してパルプセグメントおよび付着するアルベドを除き、砂糖18%を含むシロップ中に浸漬したさのうを密封し、80℃で15分間殺菌することにより調製した。乾燥果実は、スライスした果実を食品乾燥機中、50℃で10時間乾燥させることにより調製した。さらに、市販の加工品として、不知火の果汁ジュース、果実缶詰、および乾燥果実を購入した。
【0074】
上記の生鮮果実、果汁、果実缶詰および乾燥果実、並びに市販の加工品から、以下の方法により、ゲノムDNAを抽出した。果汁は、6,000gで10分間、遠心分離(工機ホールディングス株式会社製CR21N)することにより回収したペレットを使用した。
【0075】
また、コントロールとして、各品種の葉から、同様にしてゲノムDNAを抽出した。
【0076】
(DNAの調製)
用意した各材料のサンプルを、液化窒素により粉末化し、洗浄バッファ(0.1M Tris-HCl(pH8.0)、50mM EDTA(pH8.0)、1%ポリビニルピロリドン、10%ポリエチレングリコール(PEG)#6,000、および2%β-メルカプトエタノール)を用いて2回プレ洗浄を行い、セチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)法によりゲノムDNAを単離した。
【0077】
単離されたDNAを、DNA洗浄プロトコル(DNeasy(登録商標)Plant Mini Kit(キアゲン社製))にしたがって、DNeasy(登録商標)ミニスピンカラムを用いて精製した。
【0078】
〔2.プライマーセットおよびプローブの設計、並びにSNPジェノタイピングアッセイ〕
(プライマーセットおよびプローブの設計)
384個の予め報告されているSNPを検証し、これらが以下の基準に適合しているかを検証した:(1)高いアレル頻度;(2)共顕性の対立遺伝子型;(3)PCRの増幅断片が短く(例えば、100bp未満)、生鮮果実および加工果実のジェノタイピングに適しているか;および、(4)各SNP座のゲノム領域が、異なる染色体に分散していて、ゲノムワイドなSNPアッセイを可能にしているか。
【0079】
上記基準に適合したSNPについて、Primer Express ver. 3.0(Applied Biosystems社製)を用いて、TaqMan(登録商標)MGBプローブおよびプライマーセットを設計した。プローブについては、5-カルボキシルフルオレセイン(FAM)およびヘキサクロロ-フルオレセイン(HEX)を用いて、オリゴヌクレオチドの5’末端を標識した。これらの2種類の色素は、異なる励起波長を有するため(FAM:518nm、HEX:556nm)、同じチューブ内で識別することが可能である。
【0080】
(SNPジェノタイピングアッセイ)
生鮮果実から抽出したDNAを用いて、SNPジェノタイピングアッセイを行った。SNPジェノタイピング試薬は、以下のように調製した:TaqMan Genotyping Master Mix(Thermo Fisher社製)7.5μL、各プライマー10μM、FAM-およびHEX-標識TaqMan(登録商標)-MGBプローブ5μM、および精製DNA10ngに、RNaseフリー水を加えて15μLとした。
【0081】
サイクル条件は、以下のとおりであった:50℃ 2分;95℃ 10分;95℃ 15秒(変性)および60℃ 1分(アニーリング)を40サイクル。全ての反応は、QuantStudio(登録商標)3リアルタイムPCRシステム(Thermo Fisher社製)において行った。生鮮果実および加工果実のサンプルについて、各サンプルから抽出されたDNAの量が少ない場合は、PCRサイクル数を45サイクルに、DNAテンプレート量を1ngに変更した。
【0082】
QuantStudio(登録商標)Design & Analysis software v 1.4.1(Thermo Fisher社製)を用いてデータ分析を行い、閾値サイクル(Ct)値およびΔRn値を算出したところ、バックグラウンドの蛍光を超える有意な蛍光シグナルを示した。レポーター色素の蛍光は、各ウェルにおいてパッシブ色素の蛍光に対して標準化した。各サンプルにおける2種類のレポーター色素の標準化された強度を、対立遺伝子の識別プロット上にプロットし、アルゴリズム的にクラスター化した。対立遺伝子の識別プロット上のサンプルの位置にしたがって、遺伝子型を判定した。
【0083】
明瞭なシグナルおよび対立遺伝子識別プロットパターンを解析可能であるSNPとして、以下の表7に示す8個のSNPを見出した。これらの8個のSNPについての全てのジェノタイピングアッセイにおいて、生鮮果実から抽出したDNAを用いた結果は、葉から抽出したDNAを用いた結果と一致した。
【0084】
【表7】
【0085】
増幅および塩基決定に使用したプライマーセットおよびプローブは、以下の表8および表9に示したとおりである。表9において、プローブのヌクレオチド配列中、SNP部位に相当する部分は下線が付されている。
【0086】
【表8】
【0087】
【表9】
【0088】
選出された8個のSNP:SI312、SI001、SI322、SI149、SI306、SI201、SI210、およびSI381は、カンキツの48品種のジェノタイピングに適用可能であった。PCRの増幅断片は、いずれも60~99bpであった。8個のSNPは、クレメンティンおよびマンダリンの基準ゲノム配列において、スキャフォールド1、2、4、6、7、8および9に分散していた。また、8個のSNPは、非コード領域よりもむしろ、カンキツおよび関連種にわたって高度に保存されているコード領域内に位置していた。
【0089】
図1は、8個のSNPについて、カンキツ48品種のSNPジェノタイピングの結果を示す対立遺伝子識別プロットである。8個のSNPは、48品種の全てについて、明瞭な対立遺伝子識別プロットパターンを示し、高い信頼性で遺伝子型を割り当てることができた。
【0090】
8個のSNPと、カンキツの48品種との関係は、上述の表1に示したとおりであった。また、8個のSNPについてのヘテロ接合性(He値)、ホモ接合性(Ho値)および多型情報含有値(PIC値)を、以下の表10に示す。He値、Ho値およびPIC値は、出願人が開発したMarkerToolKitソフトウェアにより算出した。
【0091】
【表10】
【0092】
He値は、0.36~0.50であり、平均値は0.45であった。Ho値は、0.35~0.65であり、平均値は0.50であった。PIC値は、0.30~0.38であり、平均値は0.35であった。
【0093】
18の代表的なカンキツ品種の間のオープンリーディングフレーム(ORF)におけるSNPのPIC値は、0.32~0.35の範囲であり、平均PIC値は0.34であることが報告されており、これは本発明の結果と類似していた。これは、8個のSNPが、カンキツの品種識別のための適度な多様性を保持していることを示す。
【0094】
〔3.親子関係の利用による選出されたSNPのバリデーション〕
8個のSNPの信頼性を評価するために、出願人が開発した親子推定ソフトウェアMARCOにより、共顕性を有する遺伝様式を、親子関係の品種のサブセットを用いて評価した。MARCOにより、親から子への各SNPにおける対立遺伝子の伝達に基づき、親子関係を評価した。
【0095】
試験に用いたカンキツの48品種のうち、以下の親子関係を有する9種類の組み合わせ:不知火(清見×中野3号ポンカン)、璃の香(リスボンレモン×ヒュウガナツ)、清見(宮川早生×トロビタスイートオレンジ)、はるみ(清見×ポンカンF-2432)、甘平(西之香×ポンカン)、愛媛果試第28号(南香×天草)、スイートスプリング(上田温州×ハッサク)、西之香(清見×トロビタスイートオレンジ)、および、あまか(清見×アンコール)を用いて、8個のSNPにおける品種の遺伝子型を解析し、親から子への系統を追跡した。
【0096】
解析した9種類の親子関係の組み合わせの全てにおいて、不一致なしに、8個のSNPについて、親の対立遺伝子の子への遺伝が確認された。
【0097】
この結果から、8個のSNPは、親子関係を有するカンキツ間で遺伝しており、親子分析および品種識別に適用可能であることが示された。
【0098】
〔4.品種識別のためのSNPの最少サブセット〕
8個のSNPについてのカンキツ48品種のSNPジェノタイピングの結果を、出願人が開発したMinimalMarkerソフトウェアにより解析し、カンキツの48品種を識別するための最少サブセットを解析した。
【0099】
その結果、8個のSNPのうち、カンキツの48品種の全てを識別し得る、7個のSNPからなる2組の最少サブセットが見つかった。サブセット1は、SI312、SI001、SI322、SI149、SI306、SI210およびSI381からなる。一方、サブセット2は、SI312、SI001、SI322、SI149、SI306、SI201およびSI210からなる。
【0100】
さらに、カンキツの48品種のうち、特定の品種を識別するためのSNPの最少サブセットを解析した。
【0101】
宮川早生、ダンカングレープフルーツ、リスボンレモン、川野なつだいだい、麗紅、はるひ、璃の香、みはや、およびかんきつ中間母本農6号は、少なくとも2個のSNPからなるサブセットにより識別することができた。
【0102】
不知火、ハッサク、太田ポンカン、津之輝、西南のひかり、津之望、清見、せとか、はれひめ、あすみ、あすき、甘平、愛媛果試第28号(紅まどんな(登録商標))、たまみ、西之香、およびあまかは、少なくとも3個のSNPからなるサブセットにより識別することができた。
【0103】
イヨカンおよびはるみは、少なくとも4個のSNPからなるサブセットにより識別することができた。
【0104】
例えば、璃の香は、SI306(GG)およびSI322(AT)における遺伝子型により、他のカンキツ47品種から識別することができた。また、麗紅は、SI210(AA)およびSI312(CC)における遺伝子型により、他のカンキツ47品種から識別することができた。一方、西南のひかりは、2種類のサブセット、すなわち、サブセット1:SI149(GG)、SI210(GG)およびSI306(AA)、または、サブセット2:SI210(GG)、SI306(AA)およびSI322(AA)により、識別することができた。また、津之輝は、2種類のサブセット、すなわち、サブセット1:SI001(CG)、SI210(AA)およびSI312(CG)、または、サブセット2:SI210(AA)、SI312(CG)およびSI381(TC)により、識別することができた。
【0105】
異なるSNPの組み合わせを有する最少サブセットの総数は、品種に応じて、1個(ダンカングレープフルーツ、リスボンレモン、川野なつだいだい、麗紅、璃の香、みはや、甘平、および、たまみ)から18個(あすみ)まで異なる。以下の表11に、48品種のうちの幾つかの品種について、識別に必要なSNPの最少サブセットの例、および、最少サブセットの数を示す。
【0106】
【表11】
【0107】
〔5.SNPジェノタイピングアッセイの加工果実への適用〕
8個のSNPについてのジェノタイピングアッセイが、加工果実に適用可能であるかを検証した。
【0108】
複数の品種の加工果実(果汁、果実缶詰および乾燥果実)から抽出したDNAを用いて、8個のSNPについて、SNPジェノタイピングアッセイを行った。
【0109】
DNAの調製において、加工果実から抽出されたDNAの量が少なかったため、PCR増幅を45サイクル行った。鋳型DNAの量は、全てのサンプルの種類の間で等しく調製したが、Ct値は異なり、葉、生鮮果実、ジュース、果実缶詰、乾燥果実の順に低かった。この順番は、全てのアッセイにわたって一致した。ΔRn値は、DNAの変性の程度に対応する傾向があり、果実缶詰および乾燥果実から調製したDNAサンプルは、生鮮果実およびジュースから調製したDNAサンプルと比較して、低い値を示した。
【0110】
8個のSNPの全ては、加工果実から抽出したDNAを用いた場合であっても、安定して検出された。また、SNPの対立遺伝子の遺伝子型は、葉および生鮮果実から抽出したDNAを用いた場合の結果と一致した。これらの結果から、上記8個のSNPについてのジェノタイピングアッセイは、加工果実に適用可能であることが確認された。
【0111】
〔6.84品種のカンキツの識別〕
表3のSI312、SI001、SI322、SI306、SI201、SI210およびSI381、ならびに、表12のSI145、SI2711、SI281およびSI2042の合計11個のSNPについて、ジェノタイピングアッセイを行った。その結果、表5および6に記載の84品種のカンキツに適用可能であることが分かった。表12のSNPに関し、増幅および塩基決定に使用したプライマーセットおよびプローブは、以下の表13および表14に示したとおりである。表14において、プローブのヌクレオチド配列中、SNP部位に相当する部分は下線が付されている。11個のSNPについての全てのジェノタイピングアッセイにおいて、生鮮果実から抽出したDNAを用いた結果は、葉から抽出したDNAを用いた結果と一致した。
【0112】
【表12】
【0113】
【表13】
【0114】
【表14】
【0115】
図2および3は、表12の4個のSNPについて、カンキツ84品種のSNPジェノタイピングの結果を示す対立遺伝子識別プロットである。4個のSNPは、84品種の全てについて、明瞭な対立遺伝子識別プロットパターンを示し、高い信頼性で遺伝子型を割り当てることができた。
【0116】
〔7.親子関係の利用による選出されたSNPのバリデーション〕
上記〔6.84品種のカンキツの識別〕で検証した11個のSNPの信頼性を評価するために、出願人が開発した親子推定ソフトウェアMARCOにより、共顕性を有する遺伝様式を、親子関係の品種のサブセットを用いて評価した。MARCOにより、親から子への各SNPにおける対立遺伝子の伝達に基づき、親子関係を評価した。
【0117】
試験に用いた84品種のうち、以下の親子関係を有する42種類の組み合わせを用いて、11個のSNPにおける品種の遺伝子型を解析し、親から子への系統を追跡した。宮川早生以外の下記カンキツの親子関係は、表5または表6に記載のとおりである。
【0118】
(親子関係を有する42種類の組み合わせ)
宮川早生(キシュウミカン×クネンボ)、不知火、璃の香、津之望、清見、はるみ、甘平、愛媛果試第28号、カラ、セミノール、スイートスプリング、アンコール、たまみ、西之香、サガマンダリン、南香、あまか、かんきつ中間母本農6号、せとみ、陽香、朱見、早香、はれやか、津之香、ミホコール、クレメンティン、ミネオラ、オーランド、フォーチュン、ありあけ、安芸タンゴール、ウィルキング、ページ、ロビンソン、リー、フェアチャイルド、ノバ、オセオラ、清峰、かんきつ中間本母農5号、サザンレッド、サマーフレッシュ。
【0119】
解析した42種類の親子関係の組み合わせの全てにおいて、不一致なしに、11個のSNPについて、親の対立遺伝子の子への遺伝が確認された。この結果から、11個のSNPは、親子関係を有するカンキツ間で遺伝しており、親子分析および品種識別に適用可能であることが示された。
【0120】
〔8.84品種のカンキツ識別のためのSNPの最少サブセット〕
11個のSNPについての84品種のカンキツのSNPジェノタイピングの結果を、出願人が開発したMinimalMarkerソフトウェアにより解析し、カンキツの84品種を識別するための最少サブセットを解析した。
【0121】
その結果、11個のSNPのうち、カンキツの84品種の全てを識別し得る、9個のSNP(SI312、SI2042、SI145、SI322、SI281、SI2711、SI306、SI201、および、SI381)からなる最少サブセットが見つかった。
【0122】
さらに、11個のSNPのうち、特定の品種を識別するためのSNPの最少サブセットを解析した。
【0123】
あすみ、かんきつ中間母本農6号、津之輝、津之望、西之香、はるひ、はれひめ、麗紅は、11個のSNPのうち、少なくとも2個のSNPからなるサブセットにより識別することができた。
【0124】
璃の香、あすき、あまか、愛媛果試第28号(紅まどんな(登録商標))、西南のひかり、せとか、せとみは、11個のSNPのうち、少なくとも3個のSNPからなるサブセットにより識別することができた。
【0125】
かんきつ中間母本農5号、甘平、たまみ、はるみ、べにばえ、みはやは、11個のSNPのうち、少なくとも4個のSNPからなるサブセットにより識別することができた。
【0126】
異なるSNPの組み合わせを有する最少サブセットの総数は、品種に応じて、1個(あすみ、津之輝、津之望、はれひめ、麗紅)から26個(璃の香)まで異なっていた。以下の表15および表16に、84品種のうちの幾つかの品種について、識別に必要なSNPの最少サブセットの例、および、最少サブセットの数を示す。
【0127】
【表15】
【0128】
【表16】
【産業上の利用可能性】
【0129】
本発明は、税関等の検査現場に導入できる術用可能な技術として、育成者権の保護および食品安全性の確保に貢献することができる。
図1
図2
図3
【配列表】
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