(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-06
(45)【発行日】2023-12-14
(54)【発明の名称】外用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/245 20060101AFI20231207BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20231207BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20231207BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20231207BHJP
A61P 17/16 20060101ALI20231207BHJP
A61P 17/08 20060101ALI20231207BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20231207BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20231207BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20231207BHJP
A61K 31/047 20060101ALI20231207BHJP
A61K 47/44 20170101ALI20231207BHJP
A61K 47/14 20170101ALI20231207BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
A61K31/245
A61P43/00 121
A61P29/00
A61P17/00
A61P17/16
A61P17/08
A61K47/10
A61K9/08
A61K9/06
A61K31/047
A61K47/44
A61K47/14
A61K47/26
(21)【出願番号】P 2019115535
(22)【出願日】2019-06-21
【審査請求日】2022-05-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【氏名又は名称】迫田 恭子
(72)【発明者】
【氏名】高根 俊輔
【審査官】三上 晶子
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-136491(JP,A)
【文献】特開2010-090040(JP,A)
【文献】特表2009-541222(JP,A)
【文献】特開2016-121092(JP,A)
【文献】特開2018-197202(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-33/44
A61P 1/00-43/00
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウフェナマート、イノシトール、
HLB値が7以上の非イオン性界面活性剤、1価低級アルコール、及び水を含有する、外用組成物。
【請求項2】
非イオン性界面活性剤が、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルよりなる群から選択される少なくとも1種である、請求項
1に記載の外用組成物。
【請求項3】
液状又は半固形状である、請求項1
又は2に記載の外用組成物。
【請求項4】
ウフェナマート、イノシトール、1価低級アルコール、及び水を含む外用組成物において析出物の生成を抑制する方法であって、
外用組成物中で、ウフェナマート、イノシトール、1価低級アルコール、及び水と共に、
HLB値が7以上の非イオン性界面活性剤を共存させる、析出物の生成抑制方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウフェナマート、イノシトール、1価低級アルコール、及び水を含み、析出物の生成が抑制されている外用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ウフェナマートは、非ステロイド抗炎症剤であり、皮膚炎、かゆみ、かぶれの抑制、治療する効果が知られており、抗炎症目的で外用組成物に配合して使用されている(例えば、特許文献1参照)。ウフェナマートは、脂溶性成分であるため、外用組成物に配合する場合には、乳化状態にしたり、1価低級アルコールを使用して可溶化したりすることによって製剤化されている。
【0003】
一方、イノシトールは、保湿作用や皮脂改善作用等が知られており、潤いの付与等の目的で外用組成物に配合して使用されている(例えば、特許文献2参照)。イノシトールは、水溶性成分であるため、外用組成物に配合する場合には、水に溶解させることによって製剤化されている。
【0004】
近年、外用組成物の機能性の向上に対する消費者の要望と共に消費者の美容意識が高まっており、皮膚炎等の炎症性皮膚疾患をきれいに治したいというニーズが高まっている。このような消費者ニーズに追従するために、ウフェナマートによる抗炎症作用とイノシトールによる保湿作用の双方を発揮できる外用組成物の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-199709号公報
【文献】特開2010-90040号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ウフェナマート及びイノシトールは、それぞれ外用組成物に配合できることは知られているが、ウフェナマート及びイノシトールを含む外用組成物の安定性等については、これまで検討されていない。ウフェナマートは脂溶性であるのに対して、イノシトールは水溶性であるがエタノールには殆ど溶解せず、ウフェナマートとは相反する特性がある。そこで、本発明者は、ウフェナマート及びイノシトールを含む外用組成物を開発すべく検討を行ったところ、ウフェナマート及びイノシトールは、それぞれ単独で1価低級アルコール及び水の混合溶媒に対して溶解又は可溶化させると、透明な外観を呈するが、これらの双方を一緒に1価低級アルコール及び水の混合溶媒に対して溶解又は可溶化させると、析出物が生成して白濁した状態になることを知見した。即ち、ウフェナマート、イノシトール、1価低級アルコール、及び水を含む外用組成物では、析出物の生成により白濁して透明な外観にならないという特有の課題が存在することが明らかとなった。このような析出物が生成した状態では、外観性状の悪化を招くだけでなく、ウフェナマート及び/又はイノシトールが十分に溶解又は可溶化された状態になっておらず所望の薬効を十分に発現できないことが懸念される。
【0007】
そこで、本発明の目的は、ウフェナマート、イノシトール、1価低級アルコール、及び水を含む外用組成物において、析出物の生成を抑制できる製剤化技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、外用組成物において、ウフェナマート、イノシトール、1価低級アルコール、及び水に加えて、界面活性剤を配合することにより、析出物の生成を抑制できることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて更に検討を重ねることにより完成したものである。
【0009】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. ウフェナマート、イノシトール、界面活性剤、1価低級アルコール、及び水を含有する、外用組成物。
項2. 界面活性剤が非イオン性界面活性剤である、項1に記載の外用組成物。
項3. 非イオン性界面活性剤が、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルよりなる群から選択される少なくとも1種である、項2に記載の外用組成物。
項4. 非イオン性界面活性剤のHLB値が7以上である、項2又は3に記載の外用組成物。
項5. 液状又は半固形状である、項1~4のいずれかに記載の外用組成物。
項6. ウフェナマート、イノシトール、1価低級アルコール、及び水を含む外用組成物において析出物の生成を抑制する方法であって、
外用組成物中で、ウフェナマート、イノシトール、1価低級アルコール、及び水と共に、界面活性剤を共存させる、析出物の生成抑制方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の外用組成物によれば、ウフェナマート、イノシトール、1価低級アルコール、及び水を含んでいながらも、これらの成分の共存状態で生じる析出物の生成を抑制できるので、良好な外観を呈することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】試験例1において、析出物の生成の程度の判定基準における評点1、3及び5の状態を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
1.外用組成物
本発明の外用組成物は、ウフェナマート、イノシトール、界面活性剤、1価低級アルコール、及び水を含有することを特徴とする。以下、以下、本発明の外用組成物について詳述する。
【0013】
[ウフェナマート]
本発明の外用組成物は、ウフェナマートを含有する。ウフェナマートは、フルフェナム酸ブチルとも称され、脂溶性の非ステロイド性抗炎症薬として公知の成分である。
【0014】
本発明の外用組成物におけるウフェナマートの含有量については、付与すべき薬効、外用組成物の形態等に応じて適宜設定されるが、例えば0.1~20重量%、好ましくは0.25~10重量%、更に好ましくは0.25~7重量%が挙げられる。
【0015】
[イノシトール]
本発明の外用組成物は、イノシトールを含有する。イノシトールは、1,2,3,4,5,6-シクロヘキサンヘキサオールとも称され、シクロヘキサンの各炭素上の水素原子が1つずつヒドロキシ基に置換した構造を持ち、ビタミン様作用物質として知られている公知の成分である。イノシトールには、ヒドロキシ基の立体配置の組み合わせにより、9種類の立体異性体が存在しており、本発明では、いずれの立体異性体を使用してもよいが、好ましくはmyo-イノシトール(シス-1,2,3,5-トランス-4,6-シクロヘキサンヘキサオール)が挙げられる。
【0016】
本発明の外用組成物におけるイノシトールの含有量については、付与すべき薬効、外用組成物の形態等に応じて適宜設定されるが、例えば0.05~10重量%、好ましくは0.1~10重量%、更に好ましくは0.25~7重量%が挙げられる。
【0017】
本発明の外用組成物において、ウフェナマートに対するイノシトールの比率については、これらの成分の各含有量に応じて定まるが、例えば、ウフェナマート1重量部当たり、イノシトールが0.0025~100重量部、好ましくは0.01~50重量部、更に好ましくは0.1~30重量部が挙げられる。
【0018】
[界面活性剤]
本発明の外用組成物は、界面活性剤を含有する。ウフェナマート、イノシトール、1価低級アルコール、及び水を含む外用組成物では、析出物が生成して白濁した外観になるが、本発明の外用組成物では、これらの成分に加えて界面活性剤を含むことにより、析出物の生成を抑制することが可能になる。
【0019】
本発明で使用される界面活性剤は、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、及び両性イオン性界面活性剤の中のいずれか1種以上であればいが、析出物の生成をより一層効果的に抑制するという観点から、好ましくは非イオン性界面活性剤が挙げられる。
【0020】
本発明で使用される非イオン性界面活性剤の種類については、特に制限されないが、例えば、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、レシチン誘導体等が挙げられる。
【0021】
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油としては、具体的には、具体的には、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油5、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油10、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油20、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油30、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油50、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油70、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油80、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油90、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油100等が挙げられる。
【0022】
ポリオキシエチレンアルキルエーテルとしては、具体的には、ポリオキシエチレン(2)ステアリルエーテル、ポリオキシエチレン(3)ステアリルエーテル、ポリオキシエチレン(5)ステアリルエーテル、ポリオキシエチレン(7)ステアリルエーテル、ポリオキシエチレン(11)ステアリルエーテル、ポリオキシエチレン(15)ステアリルエーテル、ポリオキシエチレン(20)ステアリルエーテル、ポリオキシエチレン(31)ステアリルエーテル等のポリオキシエチレステアリルエーテル;ポリオキシエチレン(2)ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(3)ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(5)ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(7)ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(8)ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(9)ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(12)ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(15)ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(21)ラウリルエーテル等のポリオキシエチレンラウリルエーテル;ポリオキシエチレン(2)セチルエーテル、ポリオキシエチレン(5)セチルエーテル、ポリオキシエチレン(10)セチルエーテル、ポリオキシエチレン(15)セチルエーテル、ポリオキシエチレン(20)セチルエーテル、ポリオキシエチレン(25)セチルエーテル、ポリオキシエチレン(30)セチルエーテル等のポリオキシエチレンセチルエーテル;ポリオキシエチレン(2)オレイルエーテル、ポリオキシエチレン(5)オレイルエーテル、ポリオキシエチレン(9)オレイルエーテル、ポリオキシエチレン(20)オレイルエーテル等のポリオキシエチレンオレイルエーテル;ポリオキシエチレン(5)ベヘニルエーテル、ポリオキシエチレン(10)ベヘニルエーテル、ポリオキシエチレン(20)ベヘニルエーテル、ポリオキシエチレン(30)ベヘニルエーテル等のポリオキシエチレンベヘニルエーテル等が挙げられる。
【0023】
ポリグリセリン脂肪酸エステルとして、具体的には、ミリスチン酸ポリグリセリル-10、ラウリン酸ポリグリセリル-6、ステアリン酸ポリグリセリル-2、オレイン酸ポリグリセリル-2、オレイン酸ポリグリセリル-4、オレイン酸ポリグリセリル-10、トリオレイン酸ポリグリセリル-10、パルミチン酸ポリグリセリル-10、イソステアリン酸ポリグリセリル-2、イソステアリン酸ポリグリセリル-10、トリイソステアリン酸ポリグリセリル-2、ステアリン酸ポリグリセリル-4、トリステアリン酸ポリグリセリル-6、ペンタステアリン酸ポリグリセリル-10、ペンタヒドロキシステアリン酸ポリグリセリル-10、ペンタイソステアリン酸ポリグリセリル-10、ペンタオレイン酸ポリグリセリル-10、ポリリシノレイン酸ポリグリセリル-6、ポリリシノレイン酸ポリグリセリル-10等が挙げられる。
【0024】
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルとしては、具体的には、ポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸ソルビタン、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート65、ポリオキシエチレンイソステアリン酸ソルビタン、ポリソルベート80、ポリオキシエチレンオレイン酸ソルビタン、ポリソルベート85等が挙げられる。
【0025】
グリセリン脂肪酸エステルとしては、具体的には、モノミリスチン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、モノイソステアリン酸グリセリル、モノオレイン酸グリセリル、ジオレイン酸グリセリル、トリオレイン酸グリセリル、ジステアリン酸グリセリル等が挙げられる。
【0026】
ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステルとしては、具体的には、ステアリン酸PEG-5グリセリル、ステアリン酸PEG-15グリセリル、オレイン酸PEG-5グリセリル、オレイン酸PEG-15グリセリル等が挙げられる。
【0027】
ソルビタン脂肪酸エステルとしては、具体的には、モノステアリン酸ソルビタン、モノイソステアリン酸ソルビタン、セスキイソステアリン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタン等が挙げられる。
【0028】
ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステルとしては、具体的には、ラウリン酸ポリオキシエチレンソルビット、テトラステアリン酸ポリオキシエチレンソルビット、テトラオレイン酸ポリオオキシエチレンソルビット、テトライソステアリン酸ポリオキシエチレンソルビット等が挙げられる。
【0029】
ポリエチレングリコール脂肪酸エステルとしては、具体的には、ラウリン酸ポリエチレングリコール、ステアリン酸ポリエチレングリコール、オレイン酸ポリエチレングリコール、ジステアリン酸ポリエチレングリコール、ジイソステアリン酸ポリエチレングリコール等が挙げられる。
【0030】
レシチン誘導体としては、具体的には、水添レシチン、水添リゾレシチン等が挙げられる。
【0031】
これらの非イオン性界面活性剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0032】
これらの非イオン性界面活性剤の中でも、析出物の生成をより一層効果的に抑制するという観点から、好ましくは、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;更に好ましくは、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリグリセリン脂肪酸エステル;特に好ましくは、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテルが挙げられる
【0033】
また、本発明で使用される非イオン性界面活性剤として、HLB値が7以上、特にHLB値が7~1の場合には、析出物の生成をより一層効果的に抑制することができるので、好適である。なお、本発明において、非イオン性界面活性剤のHLB値は、川上法(HLB値=7+11.7log(親水部の式量の総和/親油部の式量の総和))に従って算出される値である。
【0034】
本発明の外用組成物における界面活性剤の含有量については、外用組成物の形態等に応じて適宜設定されるが、例えば界面活性剤の総量で0.1~10重量%、好ましくは0.25~10重量%、更に好ましくは0.25~5重量%が挙げられる。
【0035】
本発明の外用組成物において、ウフェナマート及びイノシトールの総量に対する界面活性剤の比率については、これらの成分の各含有量に応じて定まるが、例えば、ウフェナマート及びイノシトールの総量(ウフェナマートとイノシトールの合計量)1重量部当たり、界面活性剤が総量で0.003~70重量部、好ましくは0.01~15重量部、更に好ましくは0.1~10重量部が挙げられる。
【0036】
[1価低級アルコール及び水]
本発明の外用組成物は、溶媒として1価低級アルコール及び水を含有する。
【0037】
本発明で使用される1価低級アルコールの種類については、特に制限されないが、例えば、炭素数2~6の1価低級アルコール、より具体的には、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロパノール等が挙げられる。これらの1価低級アルコールは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの1価低級アルコールの中でも、析出物の生成をより一層効果的に抑制するという観点から、好ましくはエタノールが挙げられる。
【0038】
本発明の外用組成物において、1価低級アルコールと水の比率については、特に制限されないが、例えば、1価低級アルコール1重量部当たり、水が0.1~1.8重量部、好ましくは0.1~1.5重量部、更に好ましくは0.15~1.0重量部が挙げられる。
【0039】
本発明の外用組成物における1価低級アルコールの含有量については、外用組成物の形態等に応じて適宜設定されるが、例えば30~89重量%、好ましくは40~89重量%、更に好ましくは50~85重量%が挙げられる。
【0040】
また、本発明の外用組成物における水の含有量については、外用組成物の形態等に応じて適宜設定されるが、例えば10~55重量%、好ましくは10~50重量%、更に好ましくは10~45重量%が挙げられる。
【0041】
[その他の成分]
本発明の外用組成物は、前述する成分の他に、必要に応じて、通常使用される他の添加剤が含まれていてもよい。このような添加剤としては、例えば、増粘剤、多価アルコール、植物油、動物油、鉱物油、脂肪酸アルキルエステル、脂肪酸、高級アルコール、pH調節剤、緩衝剤、可溶化剤、キレート剤、防腐剤、保存剤、酸化防止剤、安定化剤、香料、着色料等が挙げられる。本発明の外用組成物において、これらの添加剤を含有させる場合、その含有量については、使用する添加剤の種類等に応じて適宜設定すればよい。
【0042】
本発明の外用組成物は、前述する成分の他に、薬理成分が含まれていてもよい。このような薬理成分としては、例えば、ステロイド剤、抗ヒスタミン剤、局所麻酔剤、ウフェナマート以外の抗炎症剤、イノシトール以外の保湿剤、殺菌剤、抗菌剤、鎮痒剤、皮膚保護剤、血行促進成分、ビタミン類、ムコ多糖類等が挙げられる。これらの薬理成分は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、本発明の外用組成物において、これらの薬理成分を含有させる場合、その濃度については、使用する薬理成分の種類、期待する効果等に応じて適宜設定すればよい。
【0043】
[剤型・製剤形態]
本発明の外用組成物の剤型については、経皮適用可能であることを限度として特に制限されず、液状、半固形状(クリーム状、ゲル状、軟膏状、ペースト状)、固形状等のいずれであってもよいが、好ましくは液状又は半固形状が挙げられる。また、本発明の外用組成物は、水中油型乳化製剤、油中水型乳化製剤等の乳化製剤であってもよく、また可溶化型製剤、水性軟膏等の非乳化製剤であってもよい。
【0044】
また、本発明の外用組成物は、皮膚に適用されるものである限り、皮膚外用医薬品(医薬部外品を含む)、化粧料、皮膚洗浄料等のいずれの製剤形態であってもよい。
【0045】
本発明の外用組成物の製剤形態として、具体的には、クリーム剤、ローション剤、ジェル剤、乳液剤、液剤、パップ剤、貼付剤、リニメント剤、エアゾール剤、水性軟膏剤、パック剤等の皮膚外用医薬品;水性軟膏、クリーム、乳液、化粧水、ローション、パック、ゲル等の化粧料;ボディーシャンプー、ヘアシャンプー、リンス等の皮膚洗浄料等が挙げられる。これらの中でも、好ましくは皮膚外用医薬品が挙げられる。
【0046】
本発明の外用組成物は、ウフェナマートとイノシトールを含み、抗炎症作用と保湿作用を発揮できるので、皮膚炎、かゆみ、湿疹、かぶれ、おむつかぶれ、ただれ等の炎症性の皮膚症状や疾患の治療等に用途に使用できる。
【0047】
2.析出物の生成抑制方法
本発明は、更に、ウフェナマート、イノシトール、1価低級アルコール、及び水を含む外用組成物において析出物の生成を抑制する方法であって、外用組成物中で、ウフェナマート、イノシトール、1価低級アルコール、及び水と共に、界面活性剤を共存させることを特徴とする、析出物の生成抑制方法を提供する。
【0048】
当該方法において、使用する成分の種類や含有量、配合される他の成分の種類や含有量、外用組成物の剤型や製剤形態等については、前記「1.外用組成物」の場合と同様である。
【実施例】
【0049】
以下に実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0050】
なお、以下に示す試験例及び処方例では、イノシトールとして、myo-イノシトールを使用した。
【0051】
試験例1
表1に示す所定量の各成分を混合し、外用組成物(液剤)を調製した。調製直後に室温に静置して、外観を目視にて観察し、以下の判定基準に従って、析出物の生成の程度を評点化した。
<析出物の生成の程度の判定基準>
1:析出物の著しい生成により完全に白濁して不透明な状態になっている(
図1に示す外観例Aのような状態)。
2:評点1と評点3の中間の状態になっており、析出物の生成によって白濁し、不透明な状態になっている。
3:析出物が少し生じており、半透明な状態になっている(
図1に示す外観例Bのような状態)
4:評点3と評点4の中間の状態になっており、僅かにだけ析出物が生じているが、十分に透明な状態になっている。
5:析出物が生じておらず、完全に透明な状態になっている(
図1に示す外観例Cのような状態)
【0052】
得られた結果を表1に示す。エタノール及び水の混合溶媒中に、ウフェナマート又はイノシトールを単独で配合しても、析出物が生じず透明な外観であったが(参考例1及び2参照)、当該混合溶媒中にウフェナマートとイノシトールの双方を配合すると、析出物が著しく生成して白濁した外観になった(比較例1)。また、可溶化剤や溶解補助剤等として知られているプロピレングリコールやグリセリンを配合しても、析出物の生成を抑制することはできなかった(比較例2及び3)。これに対して、エタノール及び水の混合溶媒中に、ウフェナマート及びイノシトールと共に界面活性剤を配合すると、析出物の生成が抑制され、半透明又は透明な外観が実現できた(実施例1~5)。
【0053】
【0054】
処方例
表2に示す組成の外用組成物(液剤)を調製した。得られた外用組成物を、前記試験例1と同様の方法で析出物の生成の程度を評価したところ、いずれも、析出物の生成を抑制できていた。
【0055】