(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-06
(45)【発行日】2023-12-14
(54)【発明の名称】サラシア属植物の抽出物を含有する経口組成物
(51)【国際特許分類】
A23L 33/105 20160101AFI20231207BHJP
A61K 36/185 20060101ALI20231207BHJP
A61K 47/42 20170101ALI20231207BHJP
A61K 47/44 20170101ALI20231207BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20231207BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20231207BHJP
A61P 3/06 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
A23L33/105
A61K36/185
A61K47/42
A61K47/44
A61K9/48
A61P3/10
A61P3/06
(21)【出願番号】P 2019116665
(22)【出願日】2019-06-24
【審査請求日】2022-05-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【氏名又は名称】迫田 恭子
(72)【発明者】
【氏名】荻山 大輝
【審査官】澤田 浩平
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-060792(JP,A)
【文献】特開2010-077065(JP,A)
【文献】特開2001-149038(JP,A)
【文献】特開2019-000101(JP,A)
【文献】特開2006-188463(JP,A)
【文献】特開2009-007268(JP,A)
【文献】ウェブサイト「ムスメとムスコがコスメだっ!.com」の2019年 6月 9日の記事「DHA・EPAで不安な毎日にさよならっ!!|さよなら中性生活プレミアム」,2019年 6月 9日,[オンライン], [令和 5年 6月14日検索],インターネット,URL,https://cosme.xn--5ckhj4hwa.com/goodbye-neutral-life-premium/
【文献】ブログサイト「mikotyanの日記」の2019年 6月 8日の記事「DHAと相性の良いナットウキナーゼ・クリルオイル・サラシア・ビタミンEも厳選配合!のサプリです♪」,2019年 6月 8日,[オンライン], [令和 5年 6月14日検索],インターネット,URL,http://mikotyan.seesaa.net/article/466766185.html
【文献】ブログサイト「ミューのなんでも日記」の2019年 6月 6日の記事「純国産DHA・EPA・DPA」,2019年 6月 6日,[オンライン], [令和 5年 6月14日検索],インターネット,URL,http://myu70401.seesaa.net/article/466647707.html
【文献】ブログサイト「あなたに必要なものきっとみつかる」の2019年 6月23日の記事「[さよなら中性生活プレミアム]DHA・EPAで不安な毎日にさよなら」,2019年 6月23日,[オンライン], [令和 5年 6月14日検索],インターネット,URL,http://sarukko220.blog.fc2.com/blog-entry-7777.html
【文献】ブログサイト「便利、お得、快適、すぐれものな新商品&サービスに関する情報ブログです!」の2019年 6月18日の記事「話題の青魚サラサラ成分 DHA・EPA・DPA を、532mg配合! 『さよなら中性生活』」,2019年 6月18日,[オンライン], [令和 5年 6月14日検索],インターネット,URL,https://sky3886.blog.fc2.com/blog-entry-20.html
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L,A61K,A61P,C12N
CAPlus/REGISTRY//FSTA(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)サラシア属植物の抽出物、(B)ナットウキナーゼ、並びに(C)液状油及び/又は水を含有する、経口組成物
(但し、ドコサヘキサエン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサペンタエン酸、クリルオイル及びビタミンEを含む場合、並びに納豆自体を含む場合を除く)。
【請求項2】
前記(A)成分が、サラシア属植物の熱水抽出物である、請求項1に記載の経口組成物。
【請求項3】
前記(A)成分、(B)成分、及び(C)成分を内容物として含む軟カプセル剤である、請求項1又は2に記載の経口組成物。
【請求項4】
食品である、請求項1~3のいずれかに記載の経口組成物。
【請求項5】
経口組成物(但し、ドコサヘキサエン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサペンタエン酸、クリルオイル及びビタミンEを含む場合を除く)に含まれる液状油及び/又は水中で、サラシア属植物の抽出物及びナットウキナーゼを共存させる、液状油及び/又は水中でサラシア属植物の抽出物の分散安性を向上させる方法。
【請求項6】
ナットウキナーゼを有効成分とする、
経口組成物(但し、ドコサヘキサエン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサペンタエン酸、クリルオイル及びビタミンEを含む場合を除く)に含まれる液状油及び/又は水中でサラシア属植物の抽出物の分散安定性を向上させるために使用される分散安定化剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サラシア属植物の抽出物を含み、液状油及び/又は水に対する分散性安定性が向上している経口組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
サラシア属植物は、インド、スリランカ、タイ、ベトナム、中国南部地域 に生育するニシキギ科のつる性多年生植物である。サラシア属植物は、インド、スリランカ、東南アジア諸国の伝承医学では天然の薬物として利用されており、さらに近年になって、これらの植物の抽出物が血糖降下作用、リパーゼ阻害作用などの薬効を有することが報告されている(特許文献1~5参照)。また、サラシア属植物の抽出物には、脂質及び糖質の代謝を活性化させ得ることも報告されている(特許文献6参照)。
【0003】
サラシア属植物の抽出物を食品や内服用医薬品等の経口組成物として提供する場合、摂取を容易にするために、サラシア属植物の抽出物は、水に含有させて飲料や液剤等として提供したり、液状油に含有させて軟カプセル剤等として提供したりすることがある。サラシア属植物の抽出物を水や液状油に分散させた経口組成物では、サラシア属植物の抽出物を安定に分散させた状態を維持することが必要になる。しかしながら、従来技術では、サラシア属植物の抽出物を液状油又は水に安定に分散させて、優れた分散安定性を備えさせる技術については、十分な検討がなされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平9-301882号公報
【文献】特開平11-116496号公報
【文献】特開平11-29472号公報
【文献】特開2001-261569号公報
【文献】特開2005-8572号公報
【文献】特開2009-38969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者は、サラシア属植物の抽出物(特に、熱水抽出物)を液状油又は水に分散させた経口組成物では、経時的に沈殿物が生じ、分散状態を安定に維持できないという欠点があることを知得した。そこで、本発明の目的は、当該欠点を克服し、サラシア属植物の抽出物の分散安定性を向上させた経口組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、サラシア属植物の抽出物と共にナットウキナーゼを含む場合には、液状油及び/又は水に分散させても、経時的な沈殿物の生成を抑制でき、分散状態を安定に維持できることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて、更に検討を重ねることにより完成したものである。
【0007】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. (A)サラシア属植物の抽出物、(B)ナットウキナーゼ、並びに(C)液状油及び/又は水を含有する、経口組成物。
項2. 前記(A)成分が、サラシア属植物の熱水抽出物である、項1に記載の経口組成物。
項3. 前記(A)成分、(B)成分、及び(C)成分を内容物として含む軟カプセル剤である、項1又は2に記載の経口組成物。
項4. 食品である、項1~3のいずれかに記載の経口組成物。
項5. 液状油及び/又は水中で、サラシア属植物の抽出物及びナットウキナーゼを共存させる、液状油及び/又は水中でサラシア属植物の抽出物の分散安性を向上させる方法。
項6. ナットウキナーゼを有効成分とする、液状油及び/又は水中でサラシア属植物の抽出物の分散安定性を向上させるために使用される分散安定化剤。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、液状油又は水にサラシア属植物の抽出物を分散させた状態を安定に維持でき、経時的に沈殿物が生じるのを抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
1.経口組成物
本発明の経口組成物は、サラシア属植物の抽出物((A)成分と表記することもある)、ナットウキナーゼ((B)成分と表記することもある)、並びに液状油及び/又は水((C)成分と表記することもある)を含有することを特徴とする。以下、本発明の経口組成物について詳述する。
【0010】
[(A)サラシア属植物の抽出物]
本発明の経口組成物は、サラシア属植物の抽出物を含有する。サラシア属植物の抽出物とは、サラシア属植物を抽出原料として抽出処理を行うことにより得られる成分である。
【0011】
抽出原料として使用されるサラシア属植物の種類については、特に制限されないが、例えば、サラシア・キネンシス(Salacia chinnensis)、サラシア・レティキュラータ(Salacia reticulata)、サラシア・オブロンガ(Salacia oblonga)、サラシア・プリノイデス(Salacia prinoides)、サラシア・ラフォティリア(Salacia latifolia)、サラシア・ブルノニアーナ(Salacia burunoniana)、サラシア・グランディフローラ(Salacia grandiflora)、サラシア・マクロスペルマ(Salacia macroeperma)等が挙げられる。これらのサラシア属植物の中でも、好ましくはサラシア・キネンシスが挙げられる。
【0012】
抽出原料として使用されるサラシア属植物の抽出対象部位については、特に制限されないが、例えば、根茎、葉、果実、樹皮等が挙げられる。これらの中でも、好ましくは茎、根、樹皮、より好ましくは茎が挙げられる。また、抽出処理に供されるサラシア属植物の抽出対象部位は、抽出効率を高めるために、必要に応じて、乾燥、裁断、粉砕等の処理が施されていてもよい。
【0013】
抽出処理については、植物抽出物の製造に使用される一般的な抽出手法であればよく、例えば、溶媒抽出処理、超臨界抽出処理、水蒸気蒸留処理等が挙げられる。これらの中でも、好ましくは溶媒抽出処理が挙げられる。
【0014】
溶媒抽出処理で使用される抽出溶媒としては、例えば、水;メタノール、エタノール等の低級アルコール;プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール等の多価アルコール;アセトン等の親水性溶媒;これらの混合溶媒等が挙げられる。これらの抽出溶媒の中でも、好ましくは水、低級アルコール、及びこれらの混合溶媒、より好ましくは水、エタノール、及びこれらの混合溶媒、特に好ましくは水が挙げられる。
【0015】
溶媒抽出処理は、抽出溶媒中に、サラシア属植物の抽出対象部位を浸漬させて、必要に応じて撹拌することによって行えばよく、例えば、サラシア属植物の抽出対象部位100g当たり抽出溶媒1~50L程度に浸漬させて、例えば1~24時間程度行えばよい。
【0016】
また、溶媒抽出処理は、加熱(例えば、60~110℃、好ましくは80~98℃条件下で行うことが好ましい。特に、抽出溶媒として水を使用して加熱条件下でサラシア属植物の抽出処理を行うことにより得られる抽出物(即ち、サラシア属植物の熱水抽出物)には、常温の水に溶解しない成分と液状油に溶解しない成分が混在することになるため、液状油に対する分散性安定性、及び常温の水に対する分散安定性が著しく悪くなる傾向が現れる。しかしながら、本発明では、ナットウキナーゼを含有させることによって、サラシア属植物の熱水抽出処理物であっても、液状油及び水に対して安定に分散させた状態を維持させることができる。このような本発明の効果を鑑みれば、本発明で使用されるサラシア属植物の抽出物の好適な一例として、サラシア属植物の熱水抽出処理物が挙げられる。なお、本発明において、「サラシア属植物の熱水抽出処理物」とは、具体的には、60~110℃、好ましくは80~98℃の熱水を用いて抽出処理されたサラシア属植物の抽出物を指す。
【0017】
抽出処理後に固液分離により固形物を除去することにより、サラシア属植物の抽出物(抽出液)が得られる。抽出処理により得られた抽出液は、必要に応じて、濾過処理;ポリスチレンゲル(ポリスチレン・ジビニルベンゼン共重合体等)、イオン交換樹脂、活性炭等の担体を充填したカラムを用いた各種クロマトグラフィー等の吸着処理に供して精製処理に供してもよい。また、得られた抽出液は、非濃縮エキスとしてそのまま使用してもよいが、必要に応じて濃縮工程に供して軟エキスとして使用したり、更に乾燥工程に供してエキス末として使用したりしてもよい。
【0018】
本発明の経口組成物において、サラシア属植物の抽出物の含有量については、当該経口組成物の形態や用途等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、サラシア属植物の抽出物の乾燥重量換算で、1~50重量%、好ましくは1.5~45重量%、より好ましくは2~40重量%が挙げられる。
【0019】
[(B)ナットウキナーゼ]
本発明の経口組成物は、サラシア属植物の抽出物の分散安定性を向上させるために、ナットウキナーゼを含有する。ナットウキナーゼとは、納豆菌が産生するフィブリン分解作用を有する酵素である。
【0020】
本発明で使用されるナットウキナーゼは、公知の製造方法で得ることができる。ナットウキナーゼの具体的な製造方法としては、納豆菌を培養する方法、ナットウキナーゼをコードする遺伝子を組み込んだ形質転換体から得る方法、化学合成によって合成する方法等が挙げられる。本発明で使用されるナットウキナーゼは、いずれの製造方法で得られたものであってもよいが、製造コストの低減等の観点から、納豆菌を培養する方法で得られたものが好ましい。
【0021】
また、本発明で使用されるナットウキナーゼは、精製品であってもよいが、経口組成物に配合可能であることを限度として、精製されていない状態であってもよい。例えば、納豆菌を培養することにより得られたナットウキナーゼを使用する場合であれば、納豆菌の培養物の抽出物であってもよい。更には、納豆菌の培養物を、イオン交換クロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィー等に供してナットウキナーゼを精製したものであってもよく、また、納豆菌の培養物を必要に応じて固液分離等の粗精製処理に供した後に、水分の除去又は乾燥させたもの等であってもよい。
【0022】
また、ナットウキナーゼは、賦形剤等を添加した粉末品、粗精製品、精製品等として市販されており、本発明では、ナットウキナーゼとして、これらの市販品を使用することもできる。
【0023】
本発明の経口組成物において、ナットウキナーゼの含有量については、当該経口組成物の形態等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、1~60000FU/gが挙げられる。サラシア属植物の抽出物の分散安定性をより一層効果的に向上させるという観点から、本発明の経口組成物におけるナットウキナーゼの含有量として、好ましくは200~10000FU/g、より好ましくは1200~8000FU/gが挙げられる。
【0024】
また、本発明の経口組成物において、サラシア属植物の抽出物とナットウキナーゼの比率は、前述する各成分の含有量に応じた範囲内であればよいが、例えば、サラシア属植物の抽出物の乾燥重量換算1g当たり、ナットウキナーゼが1000~400000FUとなる比率が挙げられる。サラシア属植物の抽出物の分散安定性をより一層効果的に向上させるという観点から、サラシア属植物の抽出物の乾燥重量換算1g当たり、ナットウキナーゼが、好ましくは1000~80000FU、より好ましくは10000~80000FUが挙げられる。
【0025】
なお、本発明において、ナットウキナーゼの活性を示す「FU」は、公益財団法人日本健康・栄養食品協会が2003年1月15日に公示したナットウ菌培養エキス食品の規格基準に従うフィブリン分解活性単位である。
【0026】
[(C)液状油及び/又は水]
本発明の経口組成物は、分散媒として、液状油及び/又は水を含有する。
【0027】
液状油とは、25℃において液状の形態を保つ油である。本発明で使用される液状油としては、食品又は内服用医薬品に使用可能であることを限度として、特に制限されないが、例えば、米油、ヤシ油、大豆油、コーン油、菜種油(キャノーラ油を含む)、パーム油、サフラワー油、ヒマワリ油、大豆油、オリーブ油、綿実油、落花生油、カカオ脂等の植物油;魚油、魚卵油等の動物油;脂肪酸、中鎖脂肪酸(炭素数6~12程度)トリグリセリド、ドコサヘキサエン酸、エイコサペンタエン酸等が挙げられる。これらの液状油は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの液状油の中でも、好ましくは植物油、動物油が挙げられる。
【0028】
本発明の経口組成物は、分散媒として、液状油又は水のいずれか一方のみを含んでいてもよく、またこれらが混合された状態(例えば、乳化状、分散状等)で含まれていてもよい。
【0029】
本発明の経口組成物における液状油及び/又は水の含有量については、当該経口組成物の形態等に応じて、分散媒としての役割を果たす範囲で適宜設定すればよいが、例えば、液状油及び/又は水の総量で、20~96重量%が挙げられる。より具体的には、液状油の場合であれば、22~80重量%、好ましくは25~70重量%、より好ましくは30~70重量%が挙げられる。また、水の場合であれば、20~96重量%、好ましくは22~80重量%、より好ましくは25~70重量%が挙げられる。
【0030】
[その他の成分]
本発明の経口組成物は、前述する(A)~(C)成分に加えて、他の栄養成分や薬理成分を含有していてもよい。このような栄養成分や薬理成分としては、食品や内服用医薬品に使用可能なものであれば特に制限されないが、例えば、ビタミン、アミノ酸、ミネラル、糖質、脂肪酸、香料、調味剤、植物エキス(サラシア属植物の抽出物以外)、抗酸化剤、血糖降下剤、抗コレステロール剤、免疫賦活剤等が挙げられる。これらの成分は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、これらの成分の含有量については、使用する添分の種類や経口組成物の用途等に応じて適宜設定される。
【0031】
更に、本発明の経口組成物は、所望の製剤形態に調製するために、必要に応じて、前述する(A)~(C)成分の他に、基剤や添加剤等が含まれていてもよい。このような基剤及び添加剤としては、食品や医薬品に使用可能なものであれば特に制限されないが、例えば、低級アルコール、固形油、高級アルコール、水溶性高分子、界面活性剤、多価アルコール、pH調整剤、緩衝剤、酸化防止剤、防腐剤、増粘剤、キレート剤等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、これらの基剤や添加剤の含有量については、使用する成分の種類や経口組成物の用途等に応じて適宜設定される。
【0032】
[剤型・製剤形態]
本発明の経口組成物の剤型については、経口摂取又は経口投与が可能であることを限度として特に制限されず、固体状、半固体状、又は液体状のいずれであってもよく、該経口組成物の種類や用途に応じて適宜設定すればよい。
【0033】
本発明の経口組成物の製剤形態については、経口摂取又は経口投与が可能であることを限度として特に制限されないが、具体的には、食品及び内服用医薬品が挙げられる。
【0034】
本発明の経口組成物を食品の製剤形態にする場合、前述する(A)~(C)成分を、そのまま又は他の食品素材や添加成分と組み合わせて所望の形態に調製すればよい。このような飲食品としては、一般の飲食品の他、特定保健用食品、栄養補助食品、機能性食品、病者用食品等が挙げられる。これらの飲食品の形態として、特に制限されないが、具体的には軟カプセル剤、ゼリー剤等のサプリメント;栄養ドリンク、清涼飲料、炭酸飲料、乳酸飲料等の飲料等が挙げられる。これらの食品の中でも、特に(C)成分が液状油である場合には、本発明の経口組成物の好適な一態様として、サラシア属植物の抽出物、ナットウキナーゼ及び液状油を含む組成物を内容物として含むソフトカプセル剤が挙げられる。また、(C)成分が水である場合には、本発明の経口組成物の好適な一態様として、サラシア属植物の抽出物、ナットウキナーゼ及び水を含む飲料が挙げられる。
【0035】
本発明の経口組成物を内服用医薬品の製剤形態にする場合、前述する(A)~(C)成分を、そのまま又は他の添加成分と組み合わせて所望の形態に調製すればよい。このような内服用の医薬品としては、具体的には、ソフトカプセル剤、ゼリー剤、シロップ剤、液剤等が挙げられる。これらの内服用医薬品の中でも、特に(C)成分が液状油である場合には、本発明の経口組成物の好適な一態様として、サラシア属植物の抽出物、ナットウキナーゼ及び液状油を含む組成物を内容物として含むソフトカプセル剤が挙げられる。また、(C)成分が水である場合には、本発明の経口組成物の好適な一態様として、サラシア属植物の抽出物、ナットウキナーゼ及び水を含むシロップ剤又は液剤が挙げられる。
【0036】
2.分散安定化方法・分散安定化剤
本発明の分散安定化方法は、液状油及び/又は水中でサラシア属植物の抽出物の分散安性を向上させる方法であって、液状油及び/又は水中で、サラシア属植物の抽出物及びナットウキナーゼを共存させることを特徴とする。
【0037】
また、本発明の分散安定化剤は、液状油及び/又は水中でサラシア属植物の抽出物の分散安定性を向上させるために使用される剤であって、ナットウキナーゼを有効成分とすることを特徴とする。
【0038】
これらの分散安定化方法及び分散安定化剤において、使用される成分の種類や使用量、具体的実施態様等については、前記「1.経口組成物」の欄に記載の通りである。
【実施例】
【0039】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0040】
なお、以下に示す実施例、比較例、及び処方例において、使用した成分の入手元、組成等については、以下の通りである。
サラシア熱水抽出物:「サラシアエキスパウダーK」(日本新薬株式会社製)(サラシア キネンシス(Salacia chinensis)の茎を熱水抽出した抽出物の乾燥粉末)
ナットウキナーゼ粉末:「納豆菌培養エキスNSK-SD40」(株式会社日本生物.科学研究所製)
【0041】
試験例1
表1に示す組成の経口組成物を調製した。具体的には、基剤(水又はキャノーラ油)に所定量のサラシア熱水抽出物及びナットウキナーゼを添加して分散させ、経口組成物を得た。調製直後は、いずれの経口組成物でも、沈殿物は生じておらず、サラシア熱水抽出物が安定に分散した状態になっていた。
【0042】
得られた各経口組成物20gを透明ガラス瓶(直径30mm、高さ65mm;マルエム製スクリュー管No.6)に充填し、遮光条件下で4℃で7日間静置した。その後、目視にて沈殿物の生成の程度を確認し、以下の判定基準に従って、分散状態について評点化した。
<分散状態の判定基準>
1:沈殿物が生じており、ガラス瓶を逆さまにして撹拌しても、沈殿物は消失しない。
2:沈殿物が生じているが、ガラス瓶を逆さまにして撹拌すると、沈殿物は消失する。
3:沈殿物が僅かに生じているが、軽く撹拌するだけで、沈殿物は消失する。
4:沈殿物が生じていない。
【0043】
得られた結果を表1に示す。サラシア熱水抽出物単独で水又はキャノーラ油に分散させた場合には、保存後には、撹拌では消失しない沈殿物が生成していた(比較例1及び2)。これに対して、サラシア熱水抽出物とナットウキナーゼを共存させた場合には、沈殿物の生成が効果的に抑制されており、水又はキャノーラ油中での分散安定性が向上していた(実施例1~4)。
【0044】
【0045】
処方例
表2に示す組成の内容液、及び表3に示す組成の剤皮(カプセル皮膜)を用いて、ソフトカプセル剤(1剤当り、内容液300mg又は400mg、剤皮150mg含有)を製造した。得られたソフトカプセル剤中の内容液は、経時的な沈殿物の生成を抑制できており、分散状態を安定に維持できていた。
【0046】
【0047】