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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-06
(45)【発行日】2023-12-14
(54)【発明の名称】自動車用揮散器
(51)【国際特許分類】
   A61L 9/12 20060101AFI20231207BHJP
   B60H 3/00 20060101ALI20231207BHJP
   B65D 83/00 20060101ALI20231207BHJP
   B65D 85/00 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
A61L9/12
B60H3/00 J
B65D83/00 F
B65D85/00 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019233297
(22)【出願日】2019-12-24
(65)【公開番号】P2021101756
(43)【公開日】2021-07-15
【審査請求日】2022-11-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【弁理士】
【氏名又は名称】迫田 恭子
(72)【発明者】
【氏名】岩沢 佳尚
(72)【発明者】
【氏名】小林 勧
【審査官】佐々木 典子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-104342(JP,A)
【文献】特開2019-041591(JP,A)
【文献】特開2014-166249(JP,A)
【文献】特開2005-318857(JP,A)
【文献】米国特許第05422078(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 9/12
B60H 3/00
B65D 83/00
B65D 85/00
F24F 8/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のエアコンの送風口に設置して使用される自動車用揮散器であって、
芳香液と、吸液部材と、容器とを含み、
前記容器に、前記芳香液が含浸された前記吸液部材が収容されてなり、
前記容器は、送風口と対向する面のみに通気孔を有しており、且つ前記容器の内部空間の容積に対する前記通気孔の総開口面積の比率が0.001~0.015mm2/mm3である、自動車用揮散器。
【請求項2】
前記容器における前記通気孔の総開口面積が、1~300mm2である、請求項1に記載の自動車用揮散器。
【請求項3】
前記容器における前記通気孔の数が1~20個である、請求項1又は2に記載の自動車用揮散器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
自動車の室内の送風口に設置して使用される自動車用揮散器であって、長期間に亘って芳香液を揮散できる自動車用揮散器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の室内に芳香等を付与して快適空間にするために、芳香液を揮散させる揮散器が広く使用されている。自動車の室内で使用される揮散器には、ダッシュボード等に置くタイプ(載置タイプ)、ルームミラー等に吊り下げるタイプ(吊り下げタイプ)、エアコンやデフロスターの送風口に取り付けるタイプ(送風口取付タイプ)等がある(例えば、特許文献1~3参照)。
【0003】
載置タイプや吊り下げタイプの自動車用揮散器は、芳香液を自然蒸散させるので、芳香液の減量速度(揮散速度)は比較的一定になり易いというメリットがあるものの、設置場所で邪魔になったり、視界を遮ったりすることがある。一方、送風口取付タイプの自動車用揮散器は、コンパクトであり設置場所で邪魔にならないというメリットがあるものの、エンジン起動後にエアコンの送風を利用して芳香液を揮散させているため、エアコン稼働時の送風により芳香液の減量速度が急激に上昇するという欠点がある。
【0004】
このように、送風口取付タイプの自動車用揮散器では、コンパクトであるが故に収容されている芳香液量が少ない上、送風時の減量速度が速いため、芳香液がなくなるのが早く、使用期間が短いことが問題となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-123554号公報
【文献】特開2019-34088号公報
【文献】特開2017-56048号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、自動車のエアコンの送風口に設置して使用される自動車用揮散器であって、長期間に亘って芳香液を揮散できる自動車用揮散器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、芳香液と、吸液部材と、容器とを含み、当該容器に当該芳香液が含浸された当該吸液部材が収容されてなる揮散器において、当該容器にエアコンの送風口と対向する面のみに通気孔を設け、且つ当該容器の内部空間の容積に対する当該通気孔の総開口面積の比率を0.001~0.015mm2/mm3に設定することにより、自動車のエアコンの送風口に設置して使用すると、エアコンの稼働時の送風による急激な芳香液の揮散を抑制しつつ、エアコンが稼働していない場合には芳香液の過剰な揮散を抑制でき、使用期間の長期化が図られることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて、更に検討を重ねることにより完成したものである。
【0008】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. 自動車のエアコンの送風口に設置して使用される自動車用揮散器であって、
芳香液と、吸液部材と、容器とを含み、
前記容器に、前記芳香液が含浸された前記吸液部材が収容されてなり、
前記容器は、送風口と対向する面のみに通気孔を有しており、且つ前記容器の内部空間の容積に対する前記通気孔の総開口面積の比率が0.001~0.015mm2/mm3である、自動車用揮散器。
項2. 前記容器における前記通気孔の総開口面積が、1~300mm2である、項1に記載の自動車用揮散器。
項3. 前記容器における前記通気孔の数が1~20個である、項1又は2に記載の自動車用揮散器。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、自動車のエアコンの送風口に設置して使用する揮散器において、エアコンの稼働時に芳香液の急激な揮散を抑制でき、且つエアコンが稼働していない場合には芳香液の過剰な揮散を抑制できるので、長期間に亘って芳香液を揮散させることができ、使用期間を長くできる。また、本発明によれば、使用期間の長期化を図りながらも、十分な強さの香りを呈させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】Aは、従来の自動車用揮散器において、空気の流れを模式的に示した断面図の一例である。Bは、本発明の自動車用揮散器において、空気の流れを模式的に示した断面図の一例である。
図2】試験例1で使用した容器の形状を示す図である。Aは、Aは自動車のエアコンの送風口と対向する面とは反対側から見た形状、Bは自動車のエアコンの送風口と対向する面から見た形状、Cは側面から見た形状である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の自動車用揮散器は、自動車のエアコンの送風口に設置して使用される自動車用揮散器であって、芳香液と、吸液部材と、容器とを含み、前記容器に、前記芳香液が含浸された前記吸液部材が収容されてなり、前記容器に、前記芳香液が含浸された前記吸液部材が収容されてなり、前記容器は、送風口と対向する面のみに通気孔を有しており、且つ前記容器の内部空間の容積に対する前記通気孔の総開口面積の比率が0.001~0.015mm2/mm3であることを特徴とする。以下、本発明の自動車用揮散器について詳述する。
【0012】
[芳香液]
芳香液は、香料を揮散させる揮散液であり、香料及び溶剤が含まれていればよい。
【0013】
芳香液に使用される香料については、天然香料、天然香料から分離された単品香料、合成された単品香料、これらの調合香料等のいずれの油性香料であってもよく、従来公知の香料を使用することができる。具体的には、単品香料として、炭化水素系香料、アルコール系香料、エーテル系香料、アルデヒド系香料、アセタール系香料、エステル系香料、ケトン系香料、カルボン酸系香料、ラクトン系香料、ムスク系香料、ニトリル系香料、硫黄含有香料等が挙げられる。また、天然香料としては、チュベローズ油、ムスクチンキ、カストリウムチンキ、シベットチンキ、アンバーグリスチンキ、ペパーミント油、ペリラ油、プチグレン油、パイン油、ローズ油、ローズマリー油、しょう脳油、芳油、クラリーセージ油、サンダルウッド油、スペアミント油、スパイクラベンダー油、スターアニス油、ラバンジン油、ラベンダー油、レモン油、レモングラス油、ライム油、ネロリ油、オークモス油、オコチア油、パチュリ油、タイム油、トンカ豆チンキ、テレピン油、ワニラ豆チンキ、バジル油、ナツメグ油、シトロネラ油、クローブ油、ボアドローズ油、カナンガ油、カルダモン油、カシア油、シダーウッド油、オレンジ油、マンダリン油、タンジェリン油、アニス油、ベイ油、コリアンダー油、エレミ油、ユーカリ油、フェンネル油、ガルバナム油、ゼラニウム油、ヒバ油、桧油、ジャスミン油、ベチバー油、ベルガモット油、イランイラン油、グレープフルーツ油、ゆず油等が挙げられる。これらの香料は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて調香して使用することもできる。
【0014】
芳香液における香料の含有量については、使用する香料の種類、呈させる香りの強さ等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、10~90重量%、好ましくは30~80重量%、より好ましくは50~80重量%が挙げられる。
【0015】
芳香液に使用される溶剤については、香料を溶解又は可溶化し得るものであればよく、例えば、親油性溶剤が挙げられる。親油性溶剤としては、具体的には、パラフィン系炭化水素(形質流動イソパラフィン、形質流動ノルマルパラフィン)、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等が挙げられる。これらの溶剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。
【0016】
芳香液における溶剤の含有量については、使用する溶剤の種類、呈させる香りの強さ等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、10~90重量%、好ましくは20~70重量%、より好ましくは20~50重量%が挙げられる。
【0017】
芳香液には、香料及び溶剤以外に、必要に応じて、他の添加剤を含有してもよい。このような他の添加剤としては、例えば、増粘剤、防腐剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色料等が挙げられる。
【0018】
[吸液部材]
吸液部材は、芳香液を含浸させて揮散させる部材である。吸液部材としては、例えば、綿、植物繊維、パルプ等の天然繊維、レーヨン、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート等の合成繊維、又はそれらの混合繊維等の繊維質材料;木片、籐、竹、ソラ等の木質材料;発泡ウレタンの樹脂製スポンジ材料等が挙げられる。また、揮散部材が繊維質材料で形成されている場合、吸液性があるフェルトは不織布であることが好ましいが、織物、編物等であってもよい。揮散部材の形状については、特に制限されず、シート状、ブロック状、棒状、帯状、紐状等のいずれであってもよい。
【0019】
吸液部材の大きさについては、含浸させる芳香液の量、揮散部材の種類等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、1~20cm3程度、好ましくは2~10cm3程度、より好ましくは4~8cm3程度が挙げられる。
【0020】
[容器]
容器は、芳香液が含浸された吸液部材を収容する部材であって、空気の流入及び流出が可能な通気孔が設けられている。
【0021】
本発明において、容器は、エアコンの送風口と対向する面のみに通気孔が設けられている。送風口取付タイプの自動車用揮散器では、容器の通気孔を介して、送風口から吹き出された空気を容器の内部空間に流入させ、且つ芳香液から揮散された香りを伴う空気を容器外に流出させることにより、自動車の室内に香りを付与する。従来の送風口取付タイプの自動車用揮散器では、容器の通気孔は、エアコンの送風口と対向する面と、その反対側又は側面との双方に設けられており、エアコンの稼働時には送風口と対向する面の通気孔から空気を流入させ、芳香液から揮散された香りを伴う空気をその反対側又は側面の通気孔から流出させる構造になっている。このような構造の場合にはエアコンを稼働した際に空気を流入させる通気孔と空気を流出させる通気孔がそれぞれ異なっているので、エアコン稼働時に送風口から吹き出された空気を制限せずにそのまま容器内に流入させることになり、その結果、容器の内部空間に流入する空気量と流出する空気量が多くなり、芳香液の減量速度(揮散速度)が不可避的に高まってしまう(図1のA参照)。これに対して、本発明の自動車用揮散器では、容器の通気孔は、エアコンの送風口と対向する面のみに設けられており、空気の流入と空気の流出は同じ通気孔が担っているので、エアコンを稼働した際に送風口から吹き出された空気の流入は、容器外に流出する空気の抵抗を受けて制限され、その結果、容器の内部空間に流入する空気量と流出する空気量が減り、エアコン稼働時に芳香液の減量速度(揮散速度)が急激に上昇するのを抑制できる(図1のB参照)。図1における各符号は、以下の通りである:1は「容器」、2は「芳香液が含浸された吸液部材」、3は「自動車のエアコンの送風口と対向する面に設けられた通気孔」、4は「自動車のエアコンの送風口と対向する面の反対面に設けられた通気孔」、5は「空気の流れ」。
【0022】
容器に設けられる通気孔の数については、エアコンの送風口と対向する面のみに設けられ、且つ後述する容積と総開口面積の比率を満たすことを限度として特に制限されないが、例えば、1~20個、好ましくは1~10個、より好ましくは1~6個、更に好ましくは1~3個、特に好ましくは1個が挙げられる。
【0023】
本発明において、容器は、内部空間の容積に対する通気孔の総開口面積の比率が0.001~0.015mm2/mm3を満たす。このような比率を満たすことにより、エアコンの稼働時に容器の内部空間に流入する空気量と流出する空気量を適切にコントロールし、エアコンの稼働時の芳香液の減量速度(揮散速度)の急激な上昇を抑制することが可能になる。また、エアコンを稼働していない場合では、前述する比率を満たすことによって芳香液が過度に自然揮散するのを抑制でき、エアコンを稼働していない際に芳香液の過剰に減量するのを抑制することが可能になる。所望の香りの強さを備えさせつつ、使用期間のより一層の長期化を図るという観点から、当該比率として、好ましくは0.001~0.010mm2/mm3、より好ましくは0.001~0.005mm2/mm3が挙げられる。本発明、「開口面積」とは、通気孔が伸びる方向に対して垂直な面に投影したときの開口(穴)している領域の面積であり、「総開口面積」とは、通気孔が1個ある場合には当該通気孔の開口面積であり、通気孔が複数ある場合には、複数の通気孔の開口面積の総和である。また、前記比率の範囲の値は、小数点以下4桁を四捨五入して、小数点以下3桁を有効数字として表される値である。
【0024】
本発明において、容器に設けられる通気孔の総開口面積については、前記比率を充足する範囲であればよいが、例えば、1~300mm2、好ましくは5~250mm2、より好ましくは10~160mm2、更に好ましくは10~70mm2が挙げられる。
【0025】
また、本発明において、容器の内部空間の容積については、前記比率を充足する範囲であればよいが、例えば、1000~50000mm3、好ましくは5000~30000mm3、より好ましくは10000~20000mm3が挙げられる。
【0026】
また、容器には、自動車のエアコンの送風口に取り付けるための取付部を有していることが好ましい。更に、容器は、内部空間に収容した吸液部材が固定できる支持部が設けられていてもよい。また、容器は、芳香液が含浸された吸液部材を収容できるように、複数のパーツに分けられて、芳香液が含浸された吸液部材を収容した後に当該複数のパーツが固定されていればよい。
【0027】
[揮散器]
本発明の自動車用揮散器は、前記芳香液を含浸させた前記吸液部材を、前記容器に収容した構造になっている。本発明の自動車用揮散器において、容器内の芳香液は、全て吸液部材に含浸された状態になっていることが好ましいが、容器内の芳香液の一部は、吸液部材に供給可能な状態で、吸液部材に含浸されていない状態で貯留されていてもよい。
【0028】
本発明の自動車用揮散器は、容器の通気孔が設けられた面側を、自動車のエアコンの送風口(吹き出し口)と対向するように設置して使用される。
【実施例
【0029】
試験例1
1.揮散器及び吸液部材の調製
表1に示す芳香液を調製した。また、直方形の吸液部材(吸液性があるフェルト;長さ40mm、幅18mm、厚み5mm、密度0.12g/m3、ポリエチレンテレフタレート80重量%とレーヨン20重量%の複合繊維物;商品名「E-6H」、米島フェルト産業株式会社製)を準備した。
【0030】
【表1】
【0031】
2.容器の準備
図2に示す形状の容器(内部空間の容積15775mm3)に、表2に示す通気孔を設けた。図2において、Aは自動車のエアコンの送風口と対向する面とは反対側から見た形状、Bは自動車のエアコンの送風口と対向する面から見た形状、Cは側面から見た形状を示している。当該容器は、自動車のエアコンの送風口(エアコンルーバー部分)に取り付けるための取付部が設けられている(図2では省略)。また、当該容器は、エアコンの送風口と対向する面とは反対側の面の一部を個性するパーツと、その他の部分を構成するパーツとに分かれており、これらの2つのパーツが脱着可能で、芳香液が含浸された吸液部材を収容できるように構成されている。
【0032】
【表2】
【0033】
3.揮散器の調製
芳香液3mlを吸液部材に含浸させ、各容器に収容し、揮散器を調製した。
【0034】
4.芳香液の減量速度の評価
各揮散器を温度40℃、湿度15~20%RHの環境に24時間静置し、静置前及び静置後の揮散器の重量を測定した。静置前の揮散器の重量から24時間静置後の揮散器の重量を差し引くことにより、減量速度(g/day)を算出した。
【0035】
5.香りの強度の評価
自動車(フィット、本田技研工業株式会社)のエンジンをかけて、車の窓を全開にして送風の状態で風量を最大にして、水温警告灯(青)が消えるまで待った。水温警告灯(青)が消えたら、送風をやめて窓を閉めた。次いで、助手席側の中央側にあるエアコンルーバーに前記揮散器を取り付け、風量を「2」及びエアコンの温度を「Lo」に設定し、香りの強度を評価した。その後、車の窓を全開にして十分な換気を行った後に、風量を「2」及びエアコンの温度を「Hi」に設定し、香りの強度を評価した。なお、香りの評価を行う際には、運転席側と助手席側のドア側にある送風口は閉じた状態にしておいた。
【0036】
また、香りの強度は、訓練された専門パネラー6名により、下記判定基準に従って評点化し、6名の評点の内、最大及び最小の評点を除いてエアコンの温度を「Lo」及び「Hi」した場合のそれぞれについて平均値を算出した。そして、各揮散器について、「Lo」の場合の評点の平均値と「Hi」の場合の評点の平均値を更に平均し、香りの強度の総合平均評点を算出した。
<香りの強度の判定基準>
芳香消臭脱臭剤協議会が定める[II]効力試験方法の[II]-1芳香剤効力試験方法に準拠した方法で香りの強度を評価した。香りの強度の判定は、6段階臭気強度表示法によって、目標とする香り強度を「4:強いにおい(コントロール強度)」にし設定して、0:無臭、1:やっと感知できるにおい(検知閾値)、2:何のにおいであるかわかる弱いにおい(認知閾値)、3:楽に感知できるにおい、4:強いにおい、5:強烈なにおい、に評点化し、7名のパネラー(臭気判定士又は臭覚テスト合格者)による平均値を算出した。
【0037】
得られた結果を表3に示す。送風口と対向する面側のみに通気孔を設け、且つ内部空間の容積に対する通気孔の総開口面積の比率が0.015mm2/mm3超である容器に、芳香液を含浸させた吸液部材を収容した揮散器では、香りの強さの点では問題なかったものの、芳香液の減量速度が1.0g/day以上であり、短期間しか香りを呈することができないものであった(比較例1~4)。また、送風口と対向する面側とその反対面側の双方に通気孔を設け、且つ内部空間の容積に対する通気孔の総開口面積の比率を0.015mm2/mm3以下にしても、減量速度が1g/day以上と速く、短期間しか香りを呈することができないものであった(比較例5)。これに対して、送風口と対向する面側のみに通気孔を設け、且つ内部空間の容積に対する通気孔の総開口面積の比率が0.001~0.015mm2/mm3である容器を使用した揮散器では、減量速度が1.g/dayを下回っており、長期間に亘って香りを呈することが可能であり、更に、香りの強さも十分に満足できるものであった。
【0038】
【表3】
【0039】
試験例2
表4に示す各芳香液を調製した。各芳香液3mlを、前記試験例1で使用した吸液部材に含浸させ、これを前記試験例1で使用した容器1に収容し、揮散器を調製した。
【0040】
【表4】
【0041】
得られた揮散器を温度40℃、湿度15~20%RHの環境に168時間静置し、静置前及び静置後の揮散器の重量を測定した。静置前及び静置後の揮散器の重量を測定した。静置前の揮散器の重量から168時間静置後の揮散器の重量を差し引いた値を7で除することにより、減量速度(g/day)を算出した。また、得られた揮散器を用いて前記試験例1と同様の方法で、香りの強度を評価した。
【0042】
得られた結果を表5に示す。この結果、芳香液の組成を変更しても、芳香液を含浸させた吸液部材を、送風口と対向する面側のみに通気孔を設け、且つ内部空間の容積に対する通気孔の総開口面積の比率が0.001~0.015mm2/mm3である容器に収容した揮散器は、減量速度が1.g/dayが遅く、香りの強さも十分に満足できるものであった。
【0043】
【表5】
【符号の説明】
【0044】
1 容器
2 芳香液が含浸された吸液部材
3 自動車のエアコンの送風口と対向する面に設けられた通気孔
4 自動車のエアコンの送風口と対向する面の反対面に設けられた通気孔
5 空気の流れ
X 比較例5で使用した容器において、送風口と反対の面側に設けた通気孔の位置
Y 実施例1~7及び比較例1~5で使用した容器において、送風口と対向する面側に設けた通気孔の位置
図1
図2