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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-06
(45)【発行日】2023-12-14
(54)【発明の名称】レールクランプ装置
(51)【国際特許分類】
   B66C 9/18 20060101AFI20231207BHJP
   B61H 7/00 20060101ALI20231207BHJP
   F16D 63/00 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
B66C9/18
B61H7/00 Z
F16D63/00 L
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020049216
(22)【出願日】2020-03-19
(65)【公開番号】P2021147184
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2022-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000005902
【氏名又は名称】株式会社三井E&S
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】吉浦 慎一
【審査官】中田 誠二郎
(56)【参考文献】
【文献】特公昭35-001624(JP,B1)
【文献】実開平04-058586(JP,U)
【文献】特表2013-512158(JP,A)
【文献】特開昭53-104955(JP,A)
【文献】実開平06-061883(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 9/00-11/26;
17/00-17/26
B61H 7/00
F16D 63/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
岸壁クレーンが走行するレールの幅方向に開閉して前記レールの側面を両側から把持可能に構成されるクランプ機構と、前記クランプ機構が搭載されるとともに前記岸壁クレーンに固定される本体と、前記レールの両側面に当接する一対のフランジを有して前記本体に設置されているガイド車輪と、前記ガイド車輪の車軸と前記本体との間に配置される連結機構とを備えたレールクランプ装置において、
前記連結機構が、前記本体に対して前記ガイド車輪を上下方向に相対移動可能な状態で連結する構成を有し、前記連結機構が、前記車軸が挿入されて前記車軸を上下方向に沿って案内する長孔を有することを特徴とするレールクランプ装置。
【請求項2】
前記連結機構が、前記本体に対して上下方向に進退移動可能な進退部材を有し、前記進退部材の下端部に前記車軸が連結されている請求項1に記載のレールクランプ装置。
【請求項3】
前記連結機構が、前記ガイド車輪を前記レールに向かって押し付ける方向に、前記ガイド車輪に付勢力を付与する付勢手段を有している請求項1または2に記載のレールクランプ装置。
【請求項4】
前記付勢手段が圧縮コイルばねを有していて、前記圧縮コイルばねの伸縮により前記ガイド車輪に前記付勢力を付与する請求項3に記載のレールクランプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レール上を走行する岸壁クレーンの逸走を防止するためのレールクランプ装置に関し、より詳細には、ガイド車輪をレールの上下方向の歪みや段差に追従させることができるレールクランプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
岸壁に敷設されたレール上を走行するコンテナクレーンやアンローダなどの岸壁クレーンには、突風や暴風等による逸走を防止するためのレールクランプ装置が装備されている(例えば、特許文献1参照)。レールクランプ装置の本体は岸壁クレーンのシルビームから下方に突設された支柱や岸壁クレーンの走行装置に固定される。レールクランプ装置の本体には、レール幅方向に開閉してレールの側面を両側から把持可能に構成されるクランプ機構が搭載されている。レールクランプ装置は、さらに、レールに対する本体のレール幅方向の位置ずれを抑制するガイド車輪を備えている。
【0003】
岸壁クレーンの走行時には、レールクランプ装置は、クランプ機構を構成する一対のクランプ部をレール幅方向に開いて、それぞれのクランプ部をレールの頭部の側方の近くに離間させた状態で、岸壁クレーンとともにレール上を走行する。この際、レール上を転動するガイド車輪によってレールクランプ装置の本体をレールに沿ってガイドして、レールに対する本体のレール幅方向の位置ずれを抑制することで、岸壁クレーンの走行時においてクランプ機構のクランプ部がレールに接触することを防いでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-203429号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、地盤沈下や地盤の変形などによって地面に歪みが生じると、その影響を受けてレールに上下方向やレール幅方向に歪みが生じることがある。特許文献1に記載されているレールクランプ装置のように、従来では、レールクランプ装置の本体に対してガイド車輪が一定の位置に固定されていた。そのため、レールに上下方向の歪みやレールどうしの継ぎ目の段差がある場合に、レールクランプ装置の本体とレールとの上下方向の離間距離が変化すると、ガイド車輪がレールの上下方向の歪みや段差に追従せずに、ガイド車輪がレールから浮き上がることや、ガイド車輪がレールに過剰に押し付けられることがあった。
【0006】
レールクランプ装置の本体とレールとの上下方向の離間距離が遠くなり、ガイド車輪がレールから浮き上がってしまうと、ガイド車輪によるレールに対する本体のレール幅方向の拘束が解除されてしまう。そのため、レールに幅方向の歪みがある場合に、レールクランプ装置の本体とレールとがレール幅方向に位置ずれするおそれがあった。ガイド車輪がレールから浮き上がり、レールクランプ装置の本体とレールとがレール幅方向に位置ずれした状態から、レールクランプ装置の本体とレールとの上下方向の離間距離が近づくと、クランプ機構のクランプ部がレールに接触し、クランプ機構やレールが損傷するおそれがあった。また、レールクランプ装置の本体とレールとの上下方向の離間距離が近くなり、ガイド車輪がレールに過剰に押し付けられた状態になると、レールクランプ装置や岸壁クレーンに大きな負荷が掛かるおそれがあった。
【0007】
本発明は、上記の状況を鑑みてなされたものであり、その目的は、ガイド車輪をレールの上下方向の歪みや段差に追従させることができるレールクランプ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記のような目的を達成するための本発明のレールクランプ装置は、岸壁クレーンが走行するレールの幅方向に開閉して前記レールの側面を両側から把持可能に構成されるクランプ機構と、前記クランプ機構が搭載されるとともに前記岸壁クレーンに固定される本体と、前記レールの両側面に当接する一対のフランジを有して前記本体に設置されているガイド車輪と、前記ガイド車輪の車軸と前記本体との間に配置される連結機構とを備えたレールクランプ装置において、前記連結機構が、前記本体に対して前記ガイド車輪を上下方向に相対移動可能な状態で連結する構成を有し、前記連結機構が、前記車軸が挿入されて前記車軸を上下方向に沿って案内する長孔を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、連結機構により、本体に対してガイド車輪が上下方向に相対移動可能な状態で連結されているので、ガイド車輪をレールの上下方向の歪みや段差に追従させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係る実施形態のレールクランプ装置を側面視で模式的に示す説明図である。
図2図1のレールクランプ装置付近を拡大した説明図である。
図3図2のA-A断面矢視図である。
図4図3のレールクランプ装置の変形例を模式的に例示する説明図である。
図5図2のレールクランプ装置の変形例を模式的に例示する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明のレールクランプ装置を図に示した実施形態に基づいて説明する。
【0012】
図中のX方向は岸壁に敷設されているレールRの長手方向Xを示し、Y方向は長手方向Xに直交するレールRの幅方向Yを示し、Z方向は上下方向Zを示している。なお、以下の説明では、図1および図2における紙面左側を長手方向Xの一方側、紙面右側を長手方向Xの他方側とする。また、図1および図2における紙面手前側(図3図4における左側)を幅方向Yの一方側、紙面奥側(図3図4における右側)を幅方向Yの他方側とする。
【0013】
本発明に係る実施形態のレールクランプ装置10について、図1図3を参照しながら説明する。レールクランプ装置10は、岸壁に敷設されたレールR上を走行する岸壁クレーン1に装備される。レールクランプ装置10は、突風や暴風等による岸壁クレーン1の逸走を防止する装置である。岸壁クレーン1は、接岸した船舶に対する荷役作業を行うクレーンであり、コンテナクレーンやアンローダなどが例示できる。
【0014】
岸壁クレーン1は、上下方向Zに延在する複数の脚体2を有しており、長手方向Xに離間している脚体2の下部どうしは長手方向Xに延在する桁であるシルビーム3によって連結されている。シルビーム3の下部には、レールR上を走行する複数の走行装置4が設けられている。それぞれの脚体2の下方に走行装置4が配置されている。
【0015】
長手方向Xに離間して配置されている走行装置4どうしの間には、岸壁クレーン1に対してレールクランプ装置10を連結するための支柱5(シルビームコラムともいう)が設けられている。支柱5はシルビーム3からレールRに向かって下方に突設されている。支柱5の上端部はシルビーム3の下端部に接合されており、支柱5の下端部はレールRの直上に位置している。
【0016】
図1では、幅方向Yの一方側の脚体2、シルビーム3、走行装置4、支柱5、およびレールクランプ装置10を図示しているが、幅方向Yの他方側にも同様に、脚体2、シルビーム3、走行装置4、支柱5、およびレールクランプ装置10が設けられている。岸壁クレーン1は、幅方向Yの一方側と他方側にそれぞれ設けられている走行装置4により、幅方向Yに離間して略平行に敷設された2本のレールR上を走行する。なお、レールクランプ装置10は、幅方向Yの一方側と他方側にそれぞれ設けることが好ましいが、幅方向Yの一方側または他方側の片側だけに設けることもできる。
【0017】
図2および図3に例示するように、レールクランプ装置10は、クランプ機構11と、クランプ機構11が搭載された本体12と、本体12に設置されるガイド車輪13と、ガイド車輪13の車軸14と本体12との間に配置される連結機構15とを備えている。レールクランプ装置10の本体12は、岸壁クレーン1に固定される。この実施形態では、本体12を支柱5の長手方向Xの他方側に固定している。岸壁クレーン1に対する本体12の固定位置や固定方法はこの実施形態に限定されず、例えば、本体12を支柱5の長手方向Xの一方側に固定することもできる。また、本体12を走行装置4などの岸壁クレーン1の他の部位に固定することもできる。
【0018】
クランプ機構11は、幅方向Yに開閉してレールRの側面を両側から把持可能な構成になっている。クランプ機構11は、幅方向Yに開閉可能な一対のクランプ部を有している。岸壁クレーン1を走行させるときには、クランプ機構11の一対のクランプ部を幅方向Yに互いに離れる向きに開いて、それぞれのクランプ部をレールRの頭部の側方(幅方向Yの一方側と他方側)の近くに離間させた状態にする。
【0019】
突風や暴風等による岸壁クレーン1の逸走を防止するときには、クランプ機構11の一対のクランプ部を幅方向Yに互いに近づく向きに閉じて、レールRの頭部の側面を一対のクランプ部によって両側から挟み込んだ状態にすることで、クランプ機構11によりレールクランプ装置10を介して岸壁クレーン1をレールRに対して係止した状態にする。
【0020】
本体12は、内部に空洞を有する箱型のケーシングを有しており、クランプ機構11を搭載できる構造になっている。本体12の下端はレールRの直上に位置している。本体12に対してクランプ機構11は作動可能な状態で固定されている。本体12の下面には上下方向Zに貫通する開口部が設けられていて、その開口部からクランプ機構11の一対のクランプ部の下部が下方に突出した構造になっている。この実施形態では、外形が直方体形状のケーシングを有する本体12を例示しているが、クランプ機構11を搭載、保持でき、かつ、クランプ機構11の作動の妨げとならない限りは、本体12の形状、構造はこの実施形態に限定されない。
【0021】
ガイド車輪13は、本体12のレールRに対する幅方向Yの位置ずれを抑制するガイド機能を有する非駆動輪である。ガイド車輪13はレールR上に配置される。図3に例示するように、ガイド車輪13は、レールRの上面に当接する踏面と、レールRの両側面に当接する一対のフランジとを有している。この実施形態では、ガイド車輪13に車軸14が挿通するベアリングが設けられていて、車軸14に対してガイド車輪13が回転可能な構成になっている。車軸14は幅方向Yに延在し、ガイド車輪13は車軸14に対して幅方向Yに相対移動しない構成になっている。
【0022】
図2に例示するように、この実施形態では、本体12の下方に長手方向Xに間隔をあけてクランプ機構11の一方側と他方側にそれぞれガイド車輪13、車軸14、および連結機構15が設けられている。ガイド車輪13の数や配置はこの実施形態に限定されず、例えば、本体12にガイド車輪13を1つだけ設けた構成にすることもできるし、3つ以上のガイド車輪13を設けた構成にすることもできる。
【0023】
このレールクランプ装置10では、連結機構15が、本体12に対してガイド車輪13を上下方向Zに相対移動可能な状態で連結する構成を有している。連結機構15は、本体12に対するガイド車輪13の幅方向Yへの相対移動を規制する構造になっている。図3に例示するように、この実施形態の連結機構15は、車軸14が挿入されて車軸14を上下方向Zに沿って案内する長孔16と、車軸14が下端部に連結されて本体12に対して上下方向Zに進退移動可能な進退部材18とを有している。この連結機構15は、さらに、ガイド車輪13に付勢力を付与する付勢手段30を有している。
【0024】
この実施形態では、上下方向Zに延在する棒状の進退部材18が挿設される筒状の基部19が本体12に設けられていて、その基部19に沿って進退部材18が上下方向Zに進退移動可能な構成になっている。基部19は本体12の下部に内蔵されており、進退部材18の下部が本体12(基部19)の下端部から下方に突出している。そして、進退部材18の下端部に車軸14の上端部が接合されている。進退部材18および基部19は、ガイド車輪13の幅方向Yの一方側と他方側にそれぞれ設けられている。進退部材18は、本体12に対して上下方向Zに進退移動可能な構成であれば、進退部材18を本体12に対して進退移動可能とする機構や、進退部材18の形状、配置等はこの実施形態に限定されず、異なる構成にすることもできる。
【0025】
この実施形態では、本体12にケーシングから下方に突出する板状の突出部17が設けられていて、その突出部17に幅方向Yに貫通して上下方向Zに延在する長孔16が形成されている。突出部17はガイド車輪13の幅方向Yの一方側と他方側にそれぞれ設けられていて、その一対の突出部17の長孔16に車軸14が挿通している。車軸14の幅方向Yの両端部には突出部17に対する車軸14の幅方向Yへの相対移動を規制するフランジ状のストッパ14aが設けられている。このストッパ14aは任意に設けることができる。
【0026】
長孔16の幅寸法は車軸14の直径と略同一に設定されている。長孔16の上端の高さ位置は、車軸14が長孔16の上端に位置した状態で、ガイド車輪13が本体12のケーシングの下面に接触しない高さ位置に設定されている。長孔16の下端の高さ位置は、車軸14が長孔16の下端に位置した状態で、進退部材18が基部19から抜け落ちない高さ位置に設定されている。
【0027】
付勢手段30は、ガイド車輪13をレールRに向かって押し付ける方向に、ガイド車輪13に付勢力を付与する。付勢手段30は、本体12に対してガイド車輪13が上下方向Zに相対移動した場合にも、付勢手段30によってガイド車輪13に付与される付勢力の大きさが、ガイド車輪13がレールR上を転動可能であり、かつ、ガイド車輪13がレールRから脱線することを防止できる大きさとなるように構成される。
【0028】
この実施形態の付勢手段30は、車軸14の上端部と本体12(基部19)の下面との間に配置された上下方向Zに伸縮可能な圧縮コイルばねで構成されている。幅方向Yの一方側と他方側のそれぞれの進退部材18に、上下方向Zに伸縮する圧縮コイルばねが外嵌めされている。圧縮コイルばねの伸縮により本体12に対して車軸14が下向きに付勢されることで、ガイド車輪13に下向きの付勢力が付与される構成になっている。
【0029】
圧縮コイルばねは、ガイド車輪13が連結機構15による移動可能範囲の最も高い位置にあるときに最も縮んだ状態となり、圧縮コイルばねからガイド車輪13に付与される付勢力が最大となる。このときにも圧縮コイルばねがガイド車輪13に対して、ガイド車輪13がレールR上を転動可能な大きさの付勢力を付与する構成になっている。さらに、ガイド車輪13が連結機構15による移動可能範囲の最も低い位置にあるときにも、圧縮コイルばねが縮んだ状態となり、圧縮コイルばねからガイド車輪13に、ガイド車輪13をレールRに向かって押し付ける方向の付勢力が付与される構成になっている。
【0030】
レールクランプ装置10は、岸壁クレーン1の走行時には、それぞれのガイド車輪13がレールRに乗った状態で岸壁クレーン1とともにレールR上を走行する。レールRは長手方向Xの10mにつき幅方向Yに数mm程度歪んでいる場合があるが、レールRに沿って転動するガイド車輪13により、本体12がレールRに沿ってガイドされる。そのため、レールRに幅方向Yの歪みがある場合にも、ガイド車輪13のガイド機能により、本体12がレールRの幅方向Yの歪みに追従して移動し、レールRと本体12との幅方向Yの位置ずれが抑制される。これにより、岸壁クレーン1の走行時に、本体12に搭載されているクランプ機構11のクランプ部とレールRとが接触することが防がれる。
【0031】
このレールクランプ装置10では、レールRに上下方向Zの歪みや段差がある場合には、それぞれのガイド車輪13がレールRから上下方向Zの力を受けることで本体12に対して上下方向Zに相対移動し、それぞれのガイド車輪13がレールRの上下方向Zの歪みや段差に追従してレールR上を転動する。この実施形態では、車軸14が長孔16に沿って上下移動し、車軸14に伴って進退部材18が本体12(基部19)に対して上下方向Zに進退移動する。さらに、付勢手段30によってガイド車輪13に下向きの付勢力が付与されることで、それぞれのガイド車輪13の踏面がレールRの上面に押し付けられた状態が維持される。
【0032】
このように、本発明に係る実施形態のレールクランプ装置10によれば、連結機構15により、本体12に対してガイド車輪13が上下方向Zに相対移動可能な状態で連結されているので、ガイド車輪13をレールRの上下方向Zの歪みや段差に追従させることができる。これにより、ガイド車輪13がレールRから浮いた状態になることで起こり得る本体12とレールRとの幅方向Yの位置ずれを抑制するには有利になり、岸壁クレーン1の走行時に、クランプ機構11のクランプ部がレールRに接触するリスクを低くできる。また、ガイド車輪13がレールRに過剰に押し付けられることも防げるので、レールクランプ装置10や岸壁クレーン1に大きな負荷が掛かることも回避できる。
【0033】
なお、この実施形態では、連結機構15により本体12に対してガイド車輪13が上下方向Zと略平行に相対移動可能な場合を例示しているが、連結機構15は、本体12に対してガイド車輪13を上下方向Zに相対移動可能な状態で連結する構成であればよく、例えば、本体12に対してガイド車輪13が上下方向Zの成分を含む斜め方向(XZ平面上)に相対移動する構成にすることもできる。
【0034】
この実施形態のように、連結機構15が、車軸14を上下方向Zに沿って案内する長孔16を有する構成にすると、簡素な構成でありながら、車軸14を一定の軌道で安定的に上下移動させることができる。また、車軸14を案内する長孔16を設けることで、ガイド車輪13がレールRの上下方向Zの歪みや段差を乗り越える際の、車軸14およびガイド車輪13の長手方向Xや幅方向Yのガタツキやブレを抑制できる。
【0035】
なお、この実施形態では、長孔16が上下方向Zと略平行に延在している場合を例示しているが、例えば、上下方向Zの成分を含む斜め方向(上下方向Zおよび長手方向X)に延在する長孔16にすることもできる。また、この実施形態では、本体12に設けた突出部17に長孔16を設けているが、例えば、本体12を構成するケーシングに長孔16を設けた構成にすることもできる。また、この実施形態では、車軸14が貫通する長孔16を例示しているが、例えば、車軸14の幅方向Yの端部が嵌る溝状(凹状)の長孔16にすることもできる。この場合には、ストッパ14aは不要となる。
【0036】
連結機構15が、進退部材18を有する構成にすると、進退部材18により車軸14およびガイド車輪13を本体12に対して安定的に上下移動させることができる。また、この実施形態のように、連結機構15が進退部材18を有して、進退部材18に付勢手段30を構成する圧縮コイルばねを外嵌めした構成にすると、進退部材18により、圧縮コイルばねが伸縮方向と異なる方向に歪むことを抑制できる。それ故、進退部材18を設けることで、圧縮コイルばねによりガイド車輪13に対して安定的に付勢力を付与するには有利になる。
【0037】
連結機構15は、例えば、長孔16を有する突出部17または進退部材18の一方のみを有する構成にすることもできるが、この実施形態のように、両者を兼ね備えた構成にすると、岸壁クレーン1の走行時にガイド車輪13および車軸14から連結機構15に伝達される長手方向Xや幅方向Yの応力が、突出部17と進退部材18とに分散されるので、応力集中が起こり難くなる。それ故、突出部17や進退部材18が歪むリスクや破損するリスクを低くするには有利になる。
【0038】
連結機構15が付勢手段30を有する構成にすると、付勢手段30による付勢力により、ガイド車輪13をレールRに押し付けた状態にできるので、ガイド車輪13がレールRからより浮き難くなり、ガイド車輪13をレールRの上下方向Zの歪みや段差により確実に追従させることができる。また、付勢手段30を設けることで、ガイド車輪13がレールRの上下方向Zの歪みや段差を乗り越える際に、ガイド車輪13がより跳ね難くなるので、ガイド車輪13のガタツキやブレを抑制するには有利になる。
【0039】
なお、付勢手段30は任意に設けることができる。付勢手段30を設けない場合にも、ガイド車輪13は自重によりレールRの上下方向Zの歪みや段差に追従して上下移動する。付勢手段30を設けない場合には、ガイド車輪13がレールRから浮くことを抑制するために、ガイド車輪13の重量を比較的重く設定することが好ましい。一方で、付勢手段30を設ける場合には、付勢手段30によりガイド車輪13をレールRに押し付けた状態にできるので、ガイド車輪13を重くせずともガイド車輪13がレールRから浮くことを抑制できる。それ故、付勢手段30を設けると、付勢手段30を設けない場合に比して、ガイド車輪13の軽量化を図ることができ、レールクランプ装置10の軽量化を図るには有利になる。
【0040】
付勢手段30は、ガイド車輪13をレールRに向かって押し付ける方向に、ガイド車輪13に付勢力を付与できる構成であれば、圧縮コイルばねに限定されず、他にも様々な構成にすることができる。付勢手段30は、例えば、板ばね等の他のばね部材や、ゴムなどの弾性部材で構成することもできる。また、例えば、進退部材18を油圧や空気圧、電磁力などで作動するアクチュエータのロッドで構成し、付勢手段30を進退部材18(ロッド)に対して油圧や空気圧、電磁力等で付勢力を付与する圧力機構で構成することもできる。付勢手段30を圧縮コイルばねで構成すると、特に付勢手段30を非常に簡素で安価に構成でき、付勢手段30に不具合が生じるリスクも低くできる。
【0041】
なお、圧縮コイルばねの設置位置はこの実施形態に限定されない。例えば、進退部材18が挿設される筒状の基部19の内空部の上面と進退部材18の上端面との間に圧縮コイルばねを配置して、圧縮コイルばねにより進退部材18の上端面を下向きに付勢することで、進退部材18および車軸14を介してガイド車輪13に下向きの付勢力を付与する構成にすることもできる。
【0042】
次に、本発明に係る別の実施形態のレールクランプ装置10について、図4を参照しながら説明する。
【0043】
この実施形態のレールクランプ装置10は、車軸14に対してガイド車輪13が固定されており、進退部材18の下端部に設けられた軸受部20に車軸14が回転可能に軸支されている。車軸14の幅方向Yの両端部には軸受部20に対する車軸14の幅方向Yへの相対移動を規制するフランジ状のストッパ14aが設けられている。このストッパ14aは任意に設けることができる。
【0044】
この実施形態では、本体12の下部に上下方向Zに延在する管状の基部19が設けられていて、その基部19に棒状の進退部材18が上下方向Zに挿通している。進退部材18の上端にはフランジ状のストッパ18aが設けられていて、基部19から進退部材18が抜け落ちない構造になっている。
【0045】
この実施形態の付勢手段30は、軸受部20の上端部と本体12の下端部との間に配置された圧縮コイルばねで構成されている。圧縮コイルばねによって本体12に対して軸受部20が下向きに付勢されることで、軸受部20および車軸14を介してガイド車輪13に下向きの付勢力が付与される。この実施形態では、長孔16を有する突出部17は設けていない。
【0046】
この実施形態のように、ガイド車輪13と車軸14とが接合されている場合には、連結機構15を進退部材18で構成し、進退部材18の下端部に車軸14を軸支する軸受部20を設けることで、連結機構15を簡素に構成できる。また、軸受部20の上端部と本体12の下端部との間に圧縮コイルばねを設けることで、付勢手段30を簡素に構成できる。なお、この実施形態の構造においても、付勢手段30は、ガイド車輪13をレールRに向かって押し付ける方向に、ガイド車輪13に付勢力を付与できる構成であれば、圧縮コイルばねに限定されず、他にも前述した様々な構成にすることができる。
【0047】
次に、本発明に係るさらに別の実施形態のレールクランプ装置10について、図5を参照しながら説明する。
【0048】
この実施形態の連結機構15は、本体12に設けられた幅方向Yを軸方向とする回転軸21と、この回転軸21に上端部が回動可能に連結されたアーム22とを有して構成されている。アーム22は上下方向Zに対して長手方向Xに角度を付けて回転軸21から斜め下方向に延在し、アーム22の下端部にガイド車輪13の車軸14が連結されている。図5の一点鎖線の矢印で示すように、この実施形態では、回転軸21を回転中心にしてアーム22が回動し、本体12に対して車軸14およびガイド車輪13がXZ平面上に円弧を描くように相対移動することで、本体12に対してガイド車輪13が上下方向Zに相対移動する構成になっている。
【0049】
この実施形態の付勢手段30は、図5の実線の矢印で示すように、ガイド車輪13をレールRに向かって押し付ける方向に、アーム22に回動付勢力を付与することで、アーム22および車軸14を介してガイド車輪13に下向きの付勢力を付与する構成になっている。この実施形態の付勢手段30は、圧縮コイルばねを有して構成することもできるし、板ばねなどの他の種類のばねや、油圧等の圧力機構で構成することもできる。
【0050】
なお、連結機構15は、上記で例示した実施形態に限定されず、その他にも様々な構成にすることができる。例えば、連結機構15を、上端部が本体12に固定されて下端部が車軸14に連結される上下方向Zに伸縮可能なテレスコピック構造の伸縮管などで構成することもできる。
【符号の説明】
【0051】
1 岸壁クレーン
2 脚体
3 シルビーム
4 走行装置
5 支柱
10 レールクランプ装置
11 クランプ機構
12 本体
13 ガイド車輪
14 車軸
14a ストッパ
15 連結機構
16 長孔
17 突出部
18 進退部材
18a ストッパ
19 基部
20 軸受部
21 回転軸
22 アーム
30 付勢手段
R レール
図1
図2
図3
図4
図5