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特許7398460固体ドーパントを昇華させるための多孔質の仕切り部材を備えたドーピング導管を含むインゴット引上げ装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-06
(45)【発行日】2023-12-14
(54)【発明の名称】固体ドーパントを昇華させるための多孔質の仕切り部材を備えたドーピング導管を含むインゴット引上げ装置
(51)【国際特許分類】
   C30B 15/04 20060101AFI20231207BHJP
   C30B 29/06 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
C30B15/04
C30B29/06 502H
【請求項の数】 37
(21)【出願番号】P 2021533812
(86)(22)【出願日】2019-11-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-14
(86)【国際出願番号】 US2019060924
(87)【国際公開番号】W WO2020123074
(87)【国際公開日】2020-06-18
【審査請求日】2022-10-26
(31)【優先権主張番号】16/220,058
(32)【優先日】2018-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/220,060
(32)【優先日】2018-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518112516
【氏名又は名称】グローバルウェーハズ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】GlobalWafers Co.,Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100112911
【弁理士】
【氏名又は名称】中野 晴夫
(72)【発明者】
【氏名】スカラ,ロベルト
(72)【発明者】
【氏名】バッタン,フランコ
(72)【発明者】
【氏名】アリンジェル,ステファン
【審査官】宮崎 園子
(56)【参考文献】
【文献】特表2003-532611(JP,A)
【文献】特表2016-509989(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C30B 15/04
C30B 29/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコンインゴットを製造するためのインゴット引上げ装置であって、
シリコンの融液を保持するためのるつぼであって、るつぼの上部を横切って延びる水平面を有するるつぼと、
融液からシリコンインゴットを引き上げるための成長チャンバ、および、
融液にドーパントを導入するためのドーパント導管、を含み、
ドーパント導管は、所定の長さと長手方向の軸とを有し、
1つまたはそれ以上の側壁であって、1つまたは複数の側壁はドーパントが通過する導管チャンバを形成し、導管チャンバは幅を有する側壁、
固体ドーパントがそこを通ってドーパント導管に導入される入口、
ガス状のドーパントがそこを通ってドーパント導管から排出される出口、および、
入口と出口との間に配置され、入口から導入された固体ドーパントを支持し、ガス状のドーパントは通過する仕切り部材であって、導管チャンバの幅方向に延在し、ドーパント導管の長さの最後の25%以内にある仕切り部材であって、仕切り部材は、長手方向の軸に対して最上点と最下点を有する支持面を有し、支持面は最上点と最下点を通って延びる支持平面を規定し、支持面は、るつぼの上部を横切って延びる水平面に平行である仕切り部材、を含む、インゴット引上げ装置。
【請求項2】
仕切り部材は、多孔質であり、昇華したドーパントが仕切り部材を通過して融液に向かうことを可能にした請求項1に記載のインゴット引上げ装置。
【請求項3】
仕切り部材は、1mm未満の公称最大孔径を有する請求項2に記載のインゴット引上げ装置。
【請求項4】
仕切り部材は、500μm未満の公称最大孔径を有する請求項2に記載のインゴット引上げ装置。
【請求項5】
仕切り部材は、1μm~1mmの公称最大孔径を有する請求項2に記載のインゴット引上げ装置。
【請求項6】
仕切り部材は、10μm~750μmの公称最大孔径を有する請求項2に記載のインゴット引上げ装置。
【請求項7】
ドーパント導管は円筒形であり、仕切り部材が円板である請求項1に記載のインゴット引上げ装置。
【請求項8】
ドーパント導管は、断面が、楕円形、三角形、正方形、または長方形である請求項1に記載のインゴット引上げ装置。
【請求項9】
ドーパント導管の長手方向の軸と水平面は、45度から90度の間の角度を形成する請求項1に記載のインゴット引上げ装置。
【請求項10】
ドーパント導管の長手方向の軸と水平面は、45度から75度の間の角度を形成する請求項1に記載のインゴット引上げ装置。
【請求項11】
ドーパント導管の長手方向の軸と支持平面は45度から90度の間の鋭角を形成する請求項9に記載のインゴット引上げ装置。
【請求項12】
ドーパント導管の長手方向の軸と支持平面は45度から75度の間の鋭角を形成する請求項9に記載のインゴット引上げ装置。
【請求項13】
支持面は、ドーパント導管の出口と平行である請求項11に記載のインゴット引上げ装置。
【請求項14】
ドーパント導管は不活性ガス源と流体連通しており、不活性ガスをドーパント導管内に導入して昇華したドーパントと混合し、ドープされた不活性ガスを形成し、ドープされた不活性ガスは、ドーパント導管の出口から排出される請求項1に記載のインゴット引上げ装置。
【請求項15】
仕切り部材に支持された固体ドーパントと組み合わされ、固体ドーパントはヒ素である請求項1に記載のインゴット引上げ装置。
【請求項16】
仕切り部材に支持された固体ドーパントと組み合わされ、固体ドーパントがリンである請求項1に記載のインゴット引上げ装置。
【請求項17】
インゴット引上げ装置は、るつぼを加熱するための加熱要素を含み、インゴット引上げ装置は、固体ドーパントを加熱するための分離した加熱要素を有さない請求項1に記載のインゴット引上げ装置。
【請求項18】
仕切り部材は、ドーパント導管の長さの最後の10%以内にある請求項1に記載のインゴット引上げ装置。
【請求項19】
仕切り部材は、ドーパント導管の長さの最後の5%以内にある請求項1に記載のインゴット引上げ装置。
【請求項20】
ドープされたインゴットを準備する方法であって、
るつぼ内でシリコンの融液を準備する工程、
固体ドーパントをドーパント導管の入口に供給する工程であって、ドーパント導管は、融液からインゴットが引き上げられる成長チャンバ内に延びており、固体ドーパントは、ドーパント導管によって規定される導管チャンバを通過し、導管チャンバの幅にわたって延びてドーパント導管内に配置された、ドーパント導管の長さの最後の25%以内にある仕切り部材の上に静止し、仕切り部材は、融液の表面に平行である工程、
固体ドーパントを昇華させるために、融液からの輻射熱を用いて、仕切り部材に支持された固体ドーパントを加熱する工程、
ドーパント導管内に不活性ガスを導入し、不活性ガスと昇華したドーパントとを混合し、昇華したドーパントが混合された不活性ガスは、仕切り部材を通過してドーパント導管の出口から排出され、不活性ガスの圧力は仕切り部材を通過する際に低下する工程、
昇華したドーパントが混入した不活性ガスを融液に接触させて、不活性ガスから融液にドーパントを吸収させる工程、および、
シリコン融液からシリコンインゴットを引き上げる工程、を含む方法。
【請求項21】
ドーパントは、リンである請求項20に記載の方法。
【請求項22】
仕切り部材は、多孔質であり、1mm未満の公称最大孔径を有する請求項20に記載の方法。
【請求項23】
仕切り部材は、1mm未満の公称最大孔径を有する請求項20に記載の方法。
【請求項24】
仕切り部材は、500μm未満の公称最大孔径を有する請求項20に記載の方法。
【請求項25】
仕切り部材は、1μm~1mmの公称最大孔径を有する請求項20に記載の方法。
【請求項26】
仕切り部材は、石英である請求項20に記載の方法。
【請求項27】
圧力は、仕切り部材を横切って少なくとも5mbar低減される請求項20に記載の方法。
【請求項28】
シリコンの融液を保持するるつぼと、融液からシリコンインゴットを引き上げる成長チャンバと、融液にドーパントを導入するドーパント導管とを含むインゴット引上げ装置であって、ドーパント導管は長手方向の軸を有し、かつ1つまたはそれ以上の側壁を含み、1つまたはそれ以上の側壁はドーパントが通過する導管チャンバを形成し、導管チャンバは幅を有し、ドーパント導管は、固体ドーパントがドーパント導管に導入される入口と、気体ドーパントがドーパント導管を通って排出される出口と、入口と出口との間に配置され、入口から導入された固体ドーパントを支持する仕切り部材と、をさらに含み、仕切り部材は、導管チャンバの幅を横切って延び、仕切り部材は、長手方向の軸に対して最上点と最下点を有する支持面を有し、支持面は最上点と最下点を通って延びる支持平面を規定している装置で、ドープされたインゴットを準備する方法であって、
るつぼでシリコンの融液を形成し、支持面は融液の表面と平行である工程、
固体ドーパントを仕切り部材に搭載する工程であって、仕切り部材は融液の表面から1mmと15mmとの間に配置され、融液からの輻射熱により固体ドーパントを加熱して、固体ドーパントを昇華させる工程、
導管チャンバに不活性ガスを導入し、不活性ガスが昇華したドーパントと混合してドープされた不活性ガスを形成する工程、
ドーピングされた不活性ガスを仕切り部材に通して、ドーパントを融液に接触させて入り込ませる工程、および、
シリコンの融液からドープされたインゴットを引き上げる工程、を含む方法。
【請求項29】
ドーパント導管は円筒形であり、仕切り部材は円板である請求項28に記載の方法。
【請求項30】
ドーパント導管は、断面が、楕円形、三角形、正方形、または長方形である請求項28に記載の方法。
【請求項31】
るつぼは、るつぼの上部を横切って延びる水平面を有し、ドーパント導管の長手方向の軸と水平面は、45度から90度の間の角度を形成する請求項28に記載の方法。
【請求項32】
ドーパント導管の長手方向の軸と支持平面とが45度から90度の間の鋭角を形成する請求項28に記載の方法。
【請求項33】
融液は加熱要素より加熱され、固体ドーパントは、融液を加熱するために使用される加熱要素から分離された加熱要素によっては加熱されない請求項20に記載の方法。
【請求項34】
仕切り部材は、ドーパント導管の長さの最後の10%以内にある請求項20に記載の方法。
【請求項35】
仕切り部材は、ドーパント導管の長さの最後の5%以内にある請求項20に記載の方法。
【請求項36】
融液は加熱要素により加熱され、固体ドーパントは、融液を加熱するために使用される加熱要素から分離された加熱要素によっては加熱されない請求項28に記載の方法。
【請求項37】
仕切り部材は、ドーパント導管の長さの最後の5%以内にある請求項28に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2018年12月14日に出願された米国特許出願第16/220,060号、および2018年12月14日に出願された米国特許出願第16/220,058号の優先権を主張するものであり、これらはいずれもその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本開示の分野は、ドープされたシリコンインゴットを準備するためのドーパント供給システムを含むインゴット引上げ装置に関し、特に、ドーパント導管を横切って配置された多孔質の仕切り部材を有するドーパント導管を有するドーパント供給システムに関する。
【背景技術】
【0003】
半導体電子部品の製造のためのほとんどのプロセスの出発材料である単結晶シリコンは、一般的に、いわゆるCzochralski(「Cz」)法によって準備される。この方法では、多結晶シリコン(「ポリシリコン」)をるつぼに入れて溶かし、種結晶を溶かしたシリコンに接触させ、ゆっくりと引き上げることで単結晶を成長させる。
【0004】
用途によっては、シリコン結晶に所望の抵抗率を持たせるために、融液にドーパントが添加される。従来、ドーパントは、シリコン融液レベルの数フィート上に位置する供給ホッパーから融液に供給される。しかしながら、この方法は揮発性のドーパントには適していない。なぜなら、このようなドーパントは周囲の環境中に制御されずに蒸発する傾向にあり、その結果、酸化物粒子(すなわち、副酸化物)が生成されて融液中に落下し、成長中の結晶に取り込まれるからである。これらの粒子は、異質な核生成サイトとして作用し、最終的には結晶引上げプロセスの失敗につながる。
【0005】
いくつかの既知のドーパントシステムは、揮発性ドーパントを気体として成長チャンバに導入する。しかしながら、そのようなシステムは、ドーピング手続きが実行されるたびに手動で再充填しなければならない。さらに、そのようなシステムは、使用中に再充填することができない。このため、1回の成長プロセスで使用できるドーパントペイロードの容量が限られている。このため、成長可能なシリコンインゴットのサイズが制限されてしまう。さらに、そのようなシステムは、成長プロセス中にドーパントを不均一に供給する傾向があり、それにより、成長したインゴットの長手方向の軸に沿ってドーパント濃度の変動が大きくなる。
【0006】
他の既知のシステムでは、ドーパントを気化させるために融液の近くの蒸発レセプタクルにドーパントを導入する。揮発性ドーパントが使用される場合、固体ドーパント顆粒が激しく動き、蒸発レセプタクルから排出されて融液中に落下することがあり、ドーパントプロセスの一貫性が低下する。
【0007】
Czochralski法によってドーピングされたシリコンインゴットを製造するために、シリコン融液をドーピングするための改良されたドーパント供給システムが必要となる。
【0008】
このセクションは、以下に記載および/または請求される、本開示の様々な態様に関連する、技術の様々な態様を読者に紹介することを意図する。この議論は、本開示の様々な態様のより良い理解のための背景情報を読者に提供するのに役立つと考えられる。従って、これらの記述は、先行技術として認めるものではなく、この観点から読まれるべきものであることを理解すべきである。
【発明の概要】
【0009】
本開示の一態様は、シリコンインゴットを製造するためのインゴット引上げ装置に関連する。インゴット引上げ装置は、シリコンの融液を保持するためのるつぼと、融液からシリコンインゴットを引き上げるための成長チャンバとを含む。インゴット引上げ装置は、融液にドーパントを導入するためのドーパント導管を含む。ドーパント導管は、1つまたはそれ以上の側壁を含む。1つまたはそれ以上の側壁は、ドーパントが通過する導管チャンバを形成する。導管チャンバは、幅を有している。ドーパント導管は、固体ドーパントがドーパント導管に導入される入口を含む。導管チャンバは、ガス状のドーパントがドーパント導管を通って排出される出口を含む。ドーパント導管は、ドーパント導管の入口と出口の間に配置され、入口から導入された固体ドーパントを支持する仕切り部材を含む。仕切り部材は、導管チャンバの幅方向に延びている。
【0010】
本開示の別の態様は、ドープされたインゴットを準備する方法に関する。シリコンの融液がるつぼ内で準備される。固体ドーパントが、ドーパント導管の入口に供給される。ドーパント導管は、融液からインゴットが引き上げられる成長チャンバ内に延びる。固体ドーパントは、ドーパント導管によって規定された導管チャンバを通って、導管チャンバの幅に広がるドーパント導管内に配置された仕切り部材の上に通過する。仕切り部材に支持された固体ドーパントは、加熱されて昇華する。不活性ガスがドーパント導管に導入される。不活性ガスは昇華したドーパントと混合する。昇華したドーパントが混入した不活性ガスは、仕切り部材を通過し、ドーパント導管の出口から排出される。不活性ガスは、仕切り部材を通過する際に減圧される。昇華したドーパントが混入した不活性ガスを融液に接触させて、不活性ガスから融液にドーパントを吸収させる。シリコンの融液からシリコンインゴットが引き上げられる。
【0011】
さらに、本開示のさらなる態様は、インゴット引上げ装置でドーピングされたインゴットを準備する方法に関する。この装置は、シリコンの融液を保持するためのるつぼと、融液からシリコンインゴットを引き上げるための成長チャンバと、融液にドーパントを導入するためのドーパント導管とを含む。ドーパント導管は、ドーパントが通過する導管チャンバを形成する1つまたはそれ以上の側壁を含む。導管チャンバは幅を有する。ドーパント導管は、固体ドーパントがドーパント導管に導入される入口と、気体ドーパントがドーパント導管を通って排出される出口と、入口と出口との間に配置され、入口から導入された固体ドーパントを支持する仕切り部材とをさらに含む。仕切り部材は、導管チャンバの幅方向に延びる。るつぼの中でシリコンの融液が形成される。仕切り部材の上に固体ドーパントが供給される。導管チャンバの中に不活性ガスが導入される。不活性ガスは昇華したドーパントと混合し、ドープされた不活性ガスを形成する。ドープされた不活性ガスが仕切り部材を通過することで、ドーパントが融液に接触して入り込む。ドープされたインゴットがシリコンの融液から引き上げられる。
【0012】
本開示の上述の態様に関連して、特徴の様々な改良が存在する。さらなる特徴もまた、本開示の上述の態様に同様に組み込まれ得る。これらの改良点および追加の特徴は、個別に存在してもよいし、任意の組み合わせで存在してもよい。例えば、本開示の図示された実施形態のいずれかに関連して以下に議論される様々な特徴は、本開示の上述した態様のいずれかに、単独でまたは任意の組み合わせで組み込まれてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】ドーパント供給システムを有するインゴット引上げ装置の断面図である。
図2】ドーパント供給システムのドーパント導管の断面正面図である。
図3図2の位置から回転させたドーパント導管の側面図である。
図4】実施例1に記載された3つのドーパント量に対するシード端での抵抗率のボックスプロットである。
【0014】
対応する参照符号は、図面全体で対応する部分を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
インゴット引上げ装置(またはより簡単に「インゴット引上げ器」)は、図1において、全体が100で示される。インゴット引上げ装置100は、サセプタ106に囲まれた、シリコンなどの半導体または太陽電池グレードの材料の融液104を保持するためのるつぼ102を含む。インゴット引上げ装置100は、成長チャンバ126を規定する結晶引上げハウジング108を含む。半導体または太陽電池グレードの材料は、断熱材112に囲まれた1つまたはそれ以上の加熱要素110から提供される熱により溶融される。
【0016】
融液104からインゴット116を成長させて引き上げるために、インゴット引上げ装置100内に引上げ機構114が設けられる。引上げ機構114は、引上げケーブル118と、引上げケーブル118の一端に結合されたシードホルダまたはチャック120と、結晶成長を開始するためにシードホルダまたはチャック120に結合された種結晶122とを含む。
【0017】
また、インゴット引上げ装置100は、ガス状のドーパントを融液104に導入するためのドーパント供給システム130を含む。ドーパント供給システム130は、ドーパント導管134と、仕切り部材138とを含む。図示された実施形態では、ドーパント供給システム130は、また、ドーパント供給装置140、位置決めシステム142、および不活性ガス源144を含む。一般に、ドーパント供給システム130は、固体ドーパント(例えば、ドーパント顆粒)を昇華させ、ガス状ドーパントを、溶融面146を横切って流すように構成されている。気体ドーパントは、図1に示すように、結晶成長が始まる前および/または結晶成長中にインゴット引上げ100に導入されてもよい。
【0018】
操作中に、ドーパント供給システムがここに記載されるように機能することを可能にする適切に低い昇華温度または蒸発温度で、ヒ素、リン、または任意の他の元素または化合物などの固体ドーパント148が、導管134の第1の端部150に向かって配置された入口124を介してドーパント導管134に導入される。固体ドーパント148は、ドーパント導管134を通って下方に落下し、導管チャンバ164を通過して、多孔質の仕切り部材138上に静止する。導管134に供給された熱により、仕切り部材138上に静止している固体ドーパント148が気化してガス状ドーパントになる。ガス状のドーパントは、ドーパント導管134を通過して多孔質の仕切り部材138を通過する、不活性ガス源144から供給された不活性ガス152と混合する。その中に混合されたドーパントを有する不活性ガス、すなわち「ドープされた不活性ガス」198は、ドーパント導管134から出口190を通って流出し、溶融面146を横切る。
【0019】
固体ドーパント148が気化によって消費されるので、より多くの固体ドーパント148が供給装置140によってドーパント導管134に供給されてもよい。固体ドーパント148をドーパント導管134に連続的または断続的に供給することにより、ドーピングプロセスおよび/または結晶成長プロセスの間、気体ドーパントの比較的一定の濃度を溶融面146の上方に維持してもよい。
【0020】
次に図2を参照すると、ドーパント導管134は、ドーパント導管側壁154を含み、側壁154の第1の端部150の近くに、固体ドーパント148がそこを通って導入される入口124を含む。導管134は、側壁154の第2の端部136の近くに、そこを通してガス状のドーパントが導管134から排出される出口190を含む。図1~3に示す実施形態では、ドーパント導管134は、単一のドーパント導管側壁154によって規定される概ね円筒形の形状を有する。一般に、ドーパント導管134は、ドーパント供給システム130がここに記載されるように機能することを可能にする、任意の適切な形状および/または任意の数のドーパント導管側壁を有してもよい(例えば、断面が円形、楕円形、三角形、正方形、または長方形でもよい)。いくつかの実施形態では、側壁154は石英でできている。
【0021】
ドーパント導管134は、幅W134を有し、仕切り部材138は導管134の幅W134を横切って延びて、導管チャンバ164を通って落下するすべての固体ドーパントを受け止める(すなわち、仕切り部材138は、導管134を横切って完全に延び、チャンバ164を塞ぐ)。導管134が円筒形である実施形態では、仕切り部材138は、少なくとも導管チャンバ164の直径を有する円板である)。仕切り部材138は、導管入口124と出口190との間に配置され、出口190により近い位置(例えば、導管の長さの最後の約25%以内、または導管の長さの最後の約10%以内、または最後の約5%以内)にあってもよい。仕切り部材138は、ドーピングされた不活性ガスが仕切り部材138を通過することを可能にしつつ、仕切り部材138がドーパントを支持することを可能にする任意の適切な厚さを有してもよい。
【0022】
仕切り部材138は、昇華したドーパントが仕切り部材138を通過して融液104に向かうことを可能にするように構成されてもよい(例えば、多孔質)。いくつかの実施形態では、仕切り部材138は、約1mm未満、約750μm未満、約675μm未満、約600μm未満、約500μm未満、または約400μm未満、約10μm~約1mm、約10μm~約750μm、または約10μm~約750μmの公称最大孔径(nominal maximum pore size)を有する。いくつかの実施形態では、仕切り部材138は、石英(例えば、00型、0型、1型、2型など)でできている。仕切り部材138およびドーパント導管134は、仕切り部材138がドーパント導管134の側壁に溶接またはその他の方法で接続された別個の構成要素から作られてもよい。
【0023】
ドーパント導管134は、結晶引上げハウジング108(図1)内に配置され、バルブアセンブリ158を介して、ハウジング108の外側に延びている。図1に示す実施形態では、ドーパント導管134は、位置決めシステム142に摺動可能に結合されている。位置決めシステム142は、ドーパント導管134を上昇および/または下降させるように構成されている。位置決めシステム142は、レール160と、カップリング部材162と、カップリング部材162をレール160に沿って移動させるように構成されたモータ(図示せず)とを含む。レール160は、ドーパント導管134の長手方向軸A(図2)に実質的に平行な方向に延びている。結合部材162は、レール160に摺動可能に結合され、ドーパント導管134に固着されている。ドーパント導管134は、ドーパント導管134の入口124に延びる供給導管196と相対的に移動してもよい。位置決めシステム142を使用して、ドーパント導管134は、インゴット引上げ装置100の中に昇降してもよい。他の実施形態では、ドーパント導管134は、全体がハウジング内に配置されてもよい。いくつかの実施形態では、ドーパント導管134は、インゴット引上げ装置100に恒久的に取り付けられる(例えば、管ハウジングを引上げハウジング108に接続することによって)。さらに他の実施形態では、ドーパント導管134は、ドーパント供給システム130がここに記載されるように機能することを可能にする任意の方法で、ハウジング108内および/またはハウジング108外に配置および/または固定されてもよい。
【0024】
図1および図2に示す実施形態では、ドーパント導管134は、溶融面146を横切るガス状のドーパントの分配を容易にするために、溶融面146に対して角度が設けられている。ドーパント導管134は、ドーパント導管134の長手方向軸A(図2)が、融液面146に対して、および/または、るつぼ102の上面を横切って延びる水平面Pに対して、約45度から約90度の間の角度(すなわち、鋭角)を形成するように角度が付けられている。他の実施形態では、ドーパント導管134の長手方向軸Aと融液面146および/または水平面Pとの間に形成される角度は、約45度から約75度の間である。
【0025】
仕切り部材138は、ドーパント導管134の長手方向軸Aに対して角度をつけてもよい。図3に示すように、仕切り部材138は、支持面192を有する。支持面192は、長手方向軸Aに対して最上点Pおよび最下点Pを有し、最上点Pおよび最下点Pは、最上点Pおよび最下点Pを通って延びる平面P138を規定する。導管134の長手方向軸Aと平面P138とは、約45度から約90度の間(例えば、45度から90度の間)の角度を形成する。いくつかの実施形態では、この角度は、仕切り部材138が溶融面146(および、るつぼ102の上面を横切って導管134の出口190まで延びる水平面P)と実質的に平行になることを可能にするために、ドーパント導管134と溶融面146との間に形成される角度と同じである。
【0026】
ドーパント導管134の出口190は、また、融液面146を横切るガス状のドーパントの分配を容易にするために、導管134の長手方向軸Aに対して角度をつけてもよい。例えば、出口190は、出口190が溶融面146と実質的に平行になるように、ドーパント導管134の長手方向軸Aに対して約45度から約75度の間の角度で角度をつけてもよい。他の実施形態では、ドーパント導管134は、ドーパント導管134の長手方向軸Aが、融液面146および/またはるつぼ102の上部を横切って延びる水平面Pに対して約90度の角度を形成するように、融液面146に対して実質的に垂直に配置される。図示された実施形態に示されたドーパント導管134、出口190、および仕切り部材138の配置は例示的なものであり、ドーパント導管134、出口190、および仕切り部材138は、ドーパント供給システム130がここに記載されたように機能することを可能にする任意の適切な構成または配向を有してもよい。
【0027】
本実施形態では、ドーパント導管134は、不活性ガス源144と流体連通しており、ガス状のドーパントを導管134から出口190を通って融液104に向かって運び出す。不活性ガスは、ドーパント導管134の上部およびドーパント供給システム130の他の上流の構成要素において、昇華したドーパントの逆流を低減または排除してもよい(例えば、可燃性リンの蓄積を低減するため)。不活性ガス152は、不活性ガス152が導管134の出口190に向かって下向きに流れるように、所定の流量で不活性ガス源144からドーパント導管134に導入してもよい。例えば、毎分約10ノルマルリットル未満、毎分約5ノルマルリットル未満、さらには毎分約2ノルマルリットル未満の不活性ガス流量を、溶融面146へのガス状ドーパントの十分な供給を維持しながら使用することができる。不活性ガス152は、アルゴンであってもよいが、ドーパント供給システム130がここに記載されたように機能することを可能にする任意の他の適切な不活性ガスが使用されてもよい。導管チャンバ164内の不活性ガスの流量は、ドーパント導管134を介したドーパントの逆流を防止するために、ドーパントの昇華速度に少なくとも部分的に基づいて制御されてもよい。
【0028】
いくつかの実施形態では、ドーパント導管134は、導管134内の不活性ガス152の流れを制限する流量制限器を含まず、および/または、導管134を追加のチャンバまたはレセプタクルに分割するために仕切り部材138に接続された仕切りなどの垂直仕切りを含まない。
【0029】
ドーパント導管134は、固体ドーパント148をドーパント導管134内に供給するように構成されたドーパント供給装置140と通信可能に結合されてもよい。ドーパント供給装置140は自動化されていてもよいし、他の実施形態のように手動で操作されてもよいし、部分的に自動化されてもよい。供給装置140は、1つまたはそれ以上のユーザ定義のパラメータ、および/または環境固有のパラメータに基づいて、固体ドーパント148をドーパント導管134に自動的に供給するように構成されてもよい。例えば、成長プロセス中のプリセット時間、ユーザ定義の間隔、ドーパント導管134内の固体ドーパント148の質量、導管チャンバ164内のガス状ドーパントの濃度、およびガス状ドーパントおよび/または不活性ガス152の体積または質量流量、のうちのいずれか1つ以上のパラメータに基づいて、自動供給装置140は固体ドーパント148をドーパント導管134内に供給してもよい。固体ドーパント148を導管134に連続的および/または断続的に供給することにより、結晶成長プロセス中に成長チャンバ126内で比較的一定の気体ドーパント濃度を維持することができ、その結果、成長したインゴット内のドーパント濃度プロファイルがより均一になる。
【0030】
供給装置140は、供給装置140によってドーパント導管134に供給される固体ドーパント148の頻度および/または量を制御するように構成されたコントローラ182に結合されてもよい。コントローラ182は、1つまたはそれ以上のユーザ定義のパラメータおよび/または環境固有のパラメータに基づいて、コントローラ182および/または給電装置140との間で信号を送受信するように構成されたプロセッサ184を含む。本実施形態では、コントローラ182は、プロセッサ184に結合されたユーザインタフェース186と、プロセッサ184に結合されたセンサ188とを含む。ユーザインタフェース186は、ユーザ定義のパラメータを受信し、ユーザ定義のパラメータをプロセッサ184および/またはコントローラ182に伝達するように構成される。センサ188は、環境固有のパラメータを受信および/または測定し、そのような環境固有のパラメータをプロセッサ184および/またはコントローラ182に通信するように構成される。
【0031】
仕切り部材138は、出口190の近くのドーパント導管134内に配置されている。仕切り部材138は、固体ドーパント148を保持し、融液104から固体ドーパント148に熱を伝達してドーパントを気化させる一方で、気化したガスが仕切り部材138を通過するように構成されている。仕切り部材138は、融液104からの輻射熱が、仕切り部材138上に落下した固体ドーパント148を気化させるように、融液104の十分近くに配置されてもよい。例えば、仕切り部材138は、融液表面146よりも上に約1mmから約15mmの間に配置されてもよい。いくつかの実施形態では、ドーパント導管134の出口190は、溶融物104内に配置されて、仕切り部材138を融液表面146の近くに配置する。他の実施形態では、分離した加熱要素(図示せず)を用いて、その中のドーパント148を気化させるための熱を供給してもよい。
【0032】
一般に、仕切り部材138は、不活性ガスの圧力が仕切り部材138を通過する際に低下するように、仕切り部材の上流および下流のガスに圧力差を設ける。いくつかの実施形態では、不活性ガスの圧力は、仕切り部材138を通過する際に、少なくとも約5mbar低減される。いくつかの実施形態では、仕切り部材138上に静止している固体ドーパント148が、仕切り部材138を横切る圧力差に寄与する。これにより、圧力差をドーパント導管134内の固体ドーパント148の量に相関させることができる。ドーパントが存在しないときの圧力差を校正に使用してもよい。
【0033】
本開示の実施形態によれば、上述したインゴット引上げ装置100の実施形態によって、ドープされたインゴットを準備してもよい。多結晶シリコンは、加熱要素110によって溶融され、るつぼ102内にシリコンの融液を形成する。固体ドーパント148は、入口124を介してドーパント導管134に導入される。固体ドーパント148は、導管134を通って仕切り部材138に落下し、ここで固体ドーパント148が静止する。仕切り部材138に堆積した固体ドーパント148は、(例えば、融液104からの輻射熱によって)加熱され、固体ドーパント148を昇華させる。
【0034】
不活性ガス152は、導管チャンバ164に導入され、昇華したドーパントと混合して、ドープされた不活性ガス198を形成する。ドープされた不活性ガス198は、仕切り部材138を通過して、ドーパントが溶融面146に接触し、融液104に吸収される。ドーピングされたインゴットは、その中にドーパントを有するシリコン融液から引き上げられる。インゴットは、プレロードチャージされた多結晶シリコンの(例えば、バッチプロセス)から成長させてもよいし、連続的なCzochralskiプロセス、あるいは半連続的なCzochralskiプロセスで成長させてもよい。
【0035】
本開示の実施形態のインゴット引上げ装置は、従来のインゴット引上げ装置に比べていくつかの利点がある。ドーパント導管の幅を横切って延びる仕切り部材を使用することにより、ドーパント粒子が融液中に落下することなく(例えば、昇華中に退避レセプタクルから飛び出すことにより)、固体ドーパントを比較的活発に昇華させることができる。これは、リンのような勢いよく昇華する傾向にあるドーパントには特に有利である。また、仕切り部材は、融液からの輻射熱にさらされるドーパント顆粒の表面を増加させ、これにより、インゴット引上げ装置の環境とのより効率的な熱交換が可能となり、インゴット融液が最初にドーピングされる時間を短縮できる。
【実施例
【0036】
本開示のプロセスは、以下の実施例によってさらに説明される。これらの実施例は、限定的な意味で見られるべきではない。
【0037】
実施例1:ドーパント供給システムの使用による安定性および再現性
単結晶シリコンインゴットを、異なる量のリンのドーピング(ライトドーピング、ミディアムドーピング、ヘビードーピング)で準備した。シリコン融液は、その中に仕切り部材を有するドーパント導管を有する図1のドーパント供給システムによって、インゴット成長前にドーピングされた。ドーパント導管の出口は、融液の表面から上方に約5mmの位置にあった。多数のインゴットのシード端の抵抗率の分布のボックスプロットを図4に示す。図4に示すように、3つのドーパント量すべてについて、シード端の抵抗率の分布は比較的狭く、ここに記載のドーパント供給システムの使用によるドーピングの良好な安定性および再現性を示している。
【0038】
単結晶インゴットを成長させるための試行回数は、その中に仕切り部材を有するドーパント導管を有する図1のドーパント供給システムを使用した場合、4%減少した。これは、再現性の向上とシード端での抵抗率のより良い制御を示している。
【0039】
ここで使用されるように、寸法、濃度、温度、または他の物理的もしくは化学的な特性または特徴の範囲と関連して使用される「約」、「実質的に」、「本質的に」、および「約」という用語は、例えば、丸め、測定方法、または他の統計的変動に起因する変動を含む、特性または特徴の範囲の上限および/または下限に存在する可能性のある変動をカバーすることを意味する。
【0040】
本開示の要素またはその実施形態を紹介する場合、冠詞「a(ある)」、「an(ある)」、「the(その)」および「said(その)」は、1つまたはそれ以上の要素が存在することを意味することを意図する。用語「comprising(含む)」、「including(含む)」、「containing(含む)」、および「having(有する)」は、包括的であることを意図しており、記載された要素以外の追加の要素が存在する可能性があることを意味する。特定の向きを示す用語(例えば、「top(上)」、「bottom(底)」、「side(横)」など)の使用は、説明の便宜上のものであり、記載された物品の特定の向きを必要とするものではない。
【0041】
本開示の範囲から逸脱することなく、上記の構造および方法に様々な変更を加えることができるため、上記の説明に含まれ、添付の図面に示されているすべての事項は、限定的な意味ではなく例示として解釈されることが意図されている。
図1
図2
図3
図4