(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-06
(45)【発行日】2023-12-14
(54)【発明の名称】粘着フィルム、それを含む光学部材およびそれを含む光学表示装置
(51)【国際特許分類】
C09J 7/38 20180101AFI20231207BHJP
C09J 133/04 20060101ALI20231207BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20231207BHJP
C09J 11/04 20060101ALI20231207BHJP
C09J 201/10 20060101ALI20231207BHJP
G02B 5/30 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J133/04
C09J11/06
C09J11/04
C09J201/10
G02B5/30
(21)【出願番号】P 2022047093
(22)【出願日】2022-03-23
【審査請求日】2022-03-23
(31)【優先権主張番号】10-2021-0037615
(32)【優先日】2021-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】590002817
【氏名又は名称】三星エスディアイ株式会社
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG SDI Co., LTD.
【住所又は居所原語表記】150-20 Gongse-ro,Giheung-gu,Yongin-si, Gyeonggi-do, 446-902 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】李 正 孝
(72)【発明者】
【氏名】金 源
(72)【発明者】
【氏名】金 泰 志
(72)【発明者】
【氏名】黄 伍 顯
(72)【発明者】
【氏名】ナム イリナ
(72)【発明者】
【氏名】金 一 鎭
【審査官】澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-065113(JP,A)
【文献】特開2012-184322(JP,A)
【文献】国際公開第2017/171084(WO,A1)
【文献】特開2020-132658(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03750965(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
G02B 5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル系共重合体、硬化剤、一官能以上のモノマー、光熱変換材料、開始剤、および融点が30℃~60℃であるバインダーを含む粘着剤組成物から形成されてなる粘着フィルムであって、
前記粘着フィルムは、下記数式1で表される剥離強度上昇率が5.0以上である、粘着フィルム:
【数1】
前記数式1中、
P1は、粘着フィルムと被着体との試験片で測定される前記被着体に対する前記粘着フィルムの初期剥離強度(単位:gf/inch)(ただし、1(gf/inch)=3.86×10
-3(N/cm))であり、
P2は、前記粘着フィルムと前記被着体の試験片に光照射した後の前記被着体に対する前記粘着フィルムの剥離強度(単位:gf/inch)(ただし、1(gf/inch)=3.86×10
-3(N/cm))である。
【請求項2】
(メタ)アクリル系共重合体、硬化剤、一官能以上のモノマー、光熱変換材料、開始剤、および融点が30℃~60℃であるバインダーを含む粘着剤組成物から形成されてなる粘着フィルムであって、
前記粘着フィルムと被着体との試験片で測定される前記被着体に対する前記粘着フィルムの初期剥離強度が0gf/inch(0N/cm)超100gf/inch(0.386N/cm)以下であり、
前記粘着フィルムと前記被着体との試験片に光照射した後の前記被着体に対する前記粘着フィルムの剥離強度が300gf/inch(1.158N/cm)以上である、粘着フィルム。
【請求項3】
前記数式1中のP1は、0gf/inch(0N/cm)超100gf/inch(0.386N/cm)以下である、請求項1に記載の粘着フィルム。
【請求項4】
前記数式1中のP2は、300gf/inch(1.158N/cm)以上である、請求項
1に記載の粘着フィルム。
【請求項5】
前記一官能以上のモノマーのホモポリマーのガラス転移温度は、前記(メタ)アクリル系共重合体のガラス転移温度より高い、請求項1~4のいずれか1項に記載の粘着フィルム。
【請求項6】
前記一官能以上のモノマーのホモポリマーのガラス転移温度と、前記(メタ)アクリル系共重合体のガラス転移温度との差は、20℃以上である、請求項1~5のいずれか1項に記載の粘着フィルム。
【請求項7】
前記一官能以上のモノマーは、ホモポリマーのガラス転移温度が-30℃以上である、請求項1~6のいずれか1項に記載の粘着フィルム。
【請求項8】
前記一官能以上のモノマーは、芳香族基を含有する一官能以上のモノマーを含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の粘着フィルム。
【請求項9】
前記芳香族基を含有する一官能以上のモノマーは、下記化学式1で表される化合物を含む、請求項8に記載の粘着フィルム:
【化1】
前記化学式1中、
R
1は水素原子またはメチル基であり、sは0~10の整数であり、R
2は置換もしくは非置換の炭素数6~50のアリール基または置換もしくは非置換の炭素数6~50のアリールオキシ基であり、Tは置換もしくは非置換の炭素数1~6のアルキレン基または置換もしくは非置換の炭素数1~6のアルキレンオキシ基である。
【請求項10】
前記一官能以上のモノマーは、前記(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して、10質量部~200質量部で含まれる、請求項1~9のいずれか1項に記載の粘着フィルム。
【請求項11】
前記(メタ)アクリル系共重合体は、ガラス転移温度(Tg)が-10℃以下である、請求項1~10のいずれか1項に記載の粘着フィルム。
【請求項12】
前記(メタ)アクリル系共重合体は、アルキル基含有(メタ)アクリル系単量体および水酸基含有(メタ)アクリル系単量体を含む単量体混合物の共重合体を含み、前記水酸基含有(メタ)アクリル系単量体は、前記単量体混合物中の単量体の全モル数に対して0.1モル%~10モル%で含まれる、請求項1~11のいずれか1項に記載の粘着フィルム。
【請求項13】
前記単量体混合物は、ホモポリマーのガラス転移温度が-80℃以上0℃以下である少なくとも1種の単量体を含む、請求項12に記載の粘着フィルム。
【請求項14】
前記単量体混合物は、カルボン酸基含有単量体をさらに含む、請求項12または13に記載の粘着フィルム。
【請求項15】
前記硬化剤は、イソシアネート系硬化剤と金属キレート系硬化剤との混合物を含む、請求項1~14のいずれか1項に記載の粘着フィルム。
【請求項16】
前記光熱変換材料は、無機色素、有機色素、有機無機ハイブリッド色素、金属、半金属、非金属、金属酸化物、非金属酸化物、および半金属酸化物からなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項1~15のいずれか1項に記載の粘着フィルム。
【請求項17】
前記開始剤は、光ラジカル開始剤および光カチオン開始剤の少なくとも一方を含む、請求項1~16のいずれか1項に記載の粘着フィルム。
【請求項18】
前記バインダーは、エステル部位に炭素数16~22の直鎖状または分枝鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリレートを含む単量体混合物から形成されてなるバインダーを含む、請求項1~17のいずれか1項に記載の粘着フィルム。
【請求項19】
前記単量体混合物は、エステル部位に炭素数10以下の直鎖状または分枝鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリレートおよびシリコン変性一官能(メタ)アクリレートの少なくとも一方をさらに含む、請求項18に記載の粘着フィルム。
【請求項20】
前記粘着剤組成物は、前記(メタ)アクリル系共重合体 100質量部、前記硬化剤 0.01質量部~8質量部、前記一官能以上のモノマー 10質量部~200質量部、前記光熱変換材料 0.001質量部~5質量部、前記開始剤 0.01質量部~7.5質量部、および前記融点が30℃~60℃であるバインダー 0.1質量部~20質量部を含む、請求項1~19のいずれか1項に記載の粘着フィルム。
【請求項21】
フレキシブルパネルおよび前記フレキシブルパネルの少なくとも一面に積層された粘着フィルムを含み、前記粘着フィルムは請求項1~20のいずれか1項に記載の粘着フィルムを含む、光学部材。
【請求項22】
前記光学部材は、フレキシブル基板を含む前記フレキシブルパネル、前記フレキシブル基板の下部面に積層された前記粘着フィルム、および前記粘着フィルムの下部面に積層された保護層を含む、請求項21に記載の光学部材。
【請求項23】
請求項1~20のいずれか1項に記載の粘着フィルムを含む、光学表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着フィルム、それを含む光学部材およびそれを含む光学表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機発光ダイオード(OLED)に基づいた光学表示装置の開発が進められている。特に、フレキシブル特性を有する有機発光ダイオードに基づいた光学表示装置が注目を浴びている。
【0003】
フレキシブル特性を有する有機発光ダイオードに基づいたフレキシブルパネルは、パネルの上部および下部にそれぞれポリイミド系フィルム等のプラスチックフィルムを備える。フレキシブルパネルは、液晶パネルおよび通常の有機発光ダイオードに基づいたパネルに比べて相対的に柔軟である。よって、フレキシブルパネルの加工、組立て、および/または検査等の工程中に、フレキシブルパネルの表面において傷の発生またはパネルを保護するための工程用保護フィルムが、フレキシブルパネルに一時的に貼付される必要がある。フレキシブルパネルの検査後、外観異常や異物等の不良がある場合、工程用保護フィルムをフレキシブルパネルから容易に剥離するためには、剥離強度が低くなければならない。フレキシブルパネルの検査後は、パネルを支持し、外部環境からパネルを保護するために、パネルに永久的に粘着される補強用保護フィルムが粘着されなければならない。よって、補強用保護フィルムは工程用保護フィルムに比べて高い剥離強度と信頼性とが要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のパネルの製造工程では、パネルに工程用の一時的な保護フィルムを貼付する工程、工程用の一時的な保護フィルムをパネルから剥離する工程、およびパネルに補強用保護フィルムを貼付する工程が順に全て行われなければならないため、工程が複雑だった。また、工程用保護フィルムは、剥離工程後には捨てることになるため、経済性および環境親和性に劣るという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、被着体に粘着された後に容易に除去でき、所定の工程によって被着体に固定できる粘着フィルムを提供することを目的とする。
【0007】
本発明の他の目的は、初期には被着体に低い剥離強度で貼付されて被着体を一時的に保護し、不要な部分だけを選択的に切断して被着体が変形および/または損傷することなく、被着体から容易に除去される粘着フィルムを提供することにある。
【0008】
本発明のさらに他の目的は、光照射した後は、光照射前に比べて剥離強度が著しく高くなるため、被着体に固定されて被着体を含む光学部材の耐久性を高くすることのできる粘着フィルムを提供することにある。
【0009】
本発明のさらに他の目的は、フレキシブルパネル基板に対して工程用の一時的な保護フィルムとしてのみならず、選択的に一部分のみが剥離された後にパターンを形成するパターン補強用保護フィルムとして同時に使用可能な粘着フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一側面によれば、下記の粘着フィルムを提供する:
(メタ)アクリル系共重合体、硬化剤、一官能以上のモノマー、光熱変換材料、および開始剤を含む粘着剤組成物から形成されてなる粘着フィルムであって、前記粘着フィルムは、下記数式1で表される剥離強度上昇率が5.0以上である、粘着フィルム:
【0011】
【0012】
前記数式1中、
P1は、粘着フィルムと被着体との試験片で測定される前記被着体に対する前記粘着フィルムの初期剥離強度(単位:gf/inch)であり、
P2は、前記粘着フィルムと前記被着体との試験片に光照射した後の前記粘着フィルムの前記被着体に対する剥離強度(単位:gf/inch)である。
【0013】
また、本発明は、(メタ)アクリル系共重合体、硬化剤、一官能以上のモノマー、光熱変換材料、および開始剤を含む粘着剤組成物から形成されてなる粘着フィルムであって、前記粘着フィルムと被着体の試験片で測定される前記被着体に対する前記粘着フィルムの初期剥離強度が0gf/inch超100gf/inch以下であり、前記粘着フィルムと被着体の試験片に光照射した後の前記被着体に対する前記粘着フィルムの剥離強度が300gf/inch以上である粘着フィルムを提供する。
【0014】
本発明の光学部材は、フレキシブルパネルおよび前記フレキシブルパネルの少なくとも一面に積層された本発明の粘着フィルムを含む。
【0015】
本発明の光学表示装置は、本発明の粘着フィルムを含む。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】(a)は、T形剥離強度(T-peel strength)を測定するための試験片を示した図であり、(b)は試験片からT形剥離強度を測定する際の測定駆動を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
添付の実施形態によって、本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者が容易に実施できるように詳しく説明する。本発明は、様々な相違する形態に具現することができ、ここで説明する実施例に限定されない。
【0018】
本明細書において、「(メタ)アクリル」は、アクリルおよび/またはメタクリルを意味する。
【0019】
本明細書において、「共重合体」は、ポリマーまたは樹脂を含むことができる。
【0020】
本明細書において、「バインダー」は、粘着ポリマーまたは粘着樹脂に比べて重量平均分子量が低い化合物であり、例えば、重量平均分子量が10,000g/mol~100,000g/molであり得る。なお、本明細書において、重量平均分子量は、ポリスチレンを標準物質としたゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定した値を採用する。
【0021】
本明細書において、単量体またはモノマーの「ガラス転移温度」は、測定対象に対してTA Instrument社製のDSC Discoveryを用いて測定したガラス転移温度(Tg)を意味する。具体的には、測定対象の単量体またはモノマーのホモポリマーに対して、20℃/分の昇温速度で180℃まで温度を上げた後、徐々に冷まして-100℃まで冷却し、10℃/分の昇温速度で100℃まで昇温した時の吸熱転移曲線でデータを得た後、吸熱転移曲線の変曲点をガラス転移温度として決定することができる。
【0022】
本明細書において、「融点」は、TA Instrument社製のDSC Discoveryを用いて測定した融点(Tm)を意味する。具体的には、測定対象のバインダーに対して20℃/分の昇温速度で180℃まで温度を上げた後、徐々に冷まして-100℃まで冷却し、10℃/分の昇温速度で100℃まで昇温した時の吸熱転移曲線でデータを得た後、吸熱転移曲線の変曲点を融点として決定することができる。
【0023】
本明細書において、「剥離強度」は、T形剥離強度(T-peel strength)を意味する。
【0024】
本明細書において、数値範囲を記載する際、「X~Y」はX以上Y以下(X≦、≦Y)を意味する。
【0025】
本発明の粘着フィルムは、光照射前の状態としては剥離強度(初期剥離強度)が低い粘着フィルムである。本発明の粘着フィルムは、光照射前は剥離強度が適正範囲を有し、被着体に低い剥離強度で貼付されて被着体を一時的に保護し、被着体が変形および/または損傷することなく被着体から容易に除去することができる。よって、本発明の粘着フィルムは、フレキシブルパネル基板、具体的にはフレキシブルOLEDパネル基板に対して、工程用の一時的な保護フィルムとして使用できる。これは、従来の光硬化型粘着剤組成物で粘着フィルムを形成する際、光照射前は剥離強度が全くない粘着フィルム形成用塗膜とは区別されるものであり、上記塗膜は被着体の一時的な保護を行うことができない。
【0026】
具体的には、本発明の粘着フィルムは、初期剥離強度が0gf/inch超100gf/inch以下、具体的には、0.1gf/inch、5gf/inch、10gf/inch、15gf/inch、20gf/inch、25gf/inch、30gf/inch、35gf/inch、40gf/inch、45gf/inch、50gf/inch、55gf/inch、60gf/inch、65gf/inch、70gf/inch、75gf/inch、80gf/inch、85gf/inch、90gf/inch、95gf/inch、100gf/inch、例えば、10gf/inch~100gf/inch、10gf/inch~80gf/inch、20gf/inch~80gf/inchであり得る。初期剥離強度は、(メタ)アクリル系共重合体、硬化剤、一官能性以上のモノマー、光熱変換材料、および開始剤を含む粘着剤組成物によって具現できる。粘着剤組成物は、融点が30℃~60℃であるバインダーをさらに含むこともできる。これについては、下記で詳しく説明する。なお、1(gf/inch)=3.86×10-3(N/cm)である。
【0027】
本発明の粘着フィルムは、光照射後は光照射前に比べて被着体に対する剥離強度が著しく増加する剥離強度向上粘着フィルムである。本発明の粘着フィルムは、光照射後は剥離強度が高くなって、光照射後は被着体に貼付されて被着体の永久的な保護効果を提供する。よって、本発明の粘着フィルムは、被着体の一時的な保護および永久的な保護機能を同時に行って、工程用の一時的な保護フィルムと補強用保護フィルムとして共に使用できるため、工程簡素化、経済性および環境親和性効果を全て得ることができる。工程用の一時的な保護フィルムは、被着体に一時的に貼付され除去されるフィルムであり、被着体を一時的に保護するフィルムである。補強用保護フィルムは、被着体に永久的に貼付されて被着体を外部環境等から保護し、被着体から除去されないフィルムである。
【0028】
本発明の粘着フィルムは、補強用保護フィルムに使用できる。補強用保護フィルムは、フレキシブルパネルの少なくとも一面に積層されて、外部の衝撃等からフレキシブルパネルを保護する保護フィルムを意味する。
【0029】
本明細書において、「被着体」は、プラスチックフィルムであり、例えば、ポリイミド系フィルム、ポリカーボネート系フィルム、ポリエチレンナフタレート系フィルム、ポリエチレンテレフタレート系フィルム等を含むポリエステル系フィルム、ポリエーテルスルホン系フィルム、およびポリウレタンフィルム等を含み得る。好ましくは、被着体はポリイミド系フィルムである。
【0030】
「ポリイミド系フィルム」は、前駆体であるポリアミド酸で重合反応により加工されて繰り返し単位内にイミド基と芳香族基とを含有している高分子フィルムであり、優れた機械的特性によりフレキシブル用OLEDパネルの基板として広く使用されている。
【0031】
以下、本発明の一実施例にかかる粘着フィルムを説明する。
【0032】
本実施形態にかかる粘着フィルム(以下、単に「粘着フィルム」とも称する)は、下記数式1で表される剥離強度上昇率が5.0以上である。この範囲であれば、被着体に貼付され光照射後の被着体に高剥離強度および高信頼性で貼付されることにより、被着体に対する接着効果を表し、補強用保護フィルムとして使用できる。
【0033】
【0034】
上記数式1中、
P1は、粘着フィルムと被着体との試験片で測定される前記被着体に対する前記粘着フィルムの初期剥離強度(単位:gf/inch)であり、
P2は、粘着フィルムと被着体の試験片に光照射した後の前記被着体に対する前記粘着フィルムの剥離強度(単位:gf/inch)である。
【0035】
好ましくは、上記数式1の剥離強度上昇率は、5.0~200、具体的には、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195、200、好ましくは5.0~100、より好ましくは5.0~70、さらに好ましくは5.0~50、最も好ましくは5.0~20であり得る。上記範囲であれば、粘着フィルムの初期剥離強度および光照射後の剥離強度の確保が容易になり得る。
【0036】
粘着フィルムは、上記数式1中のP1(初期剥離強度)が、0gf/inch超100gf/inch以下、具体的には、0.1gf/inch、5gf/inch、10gf/inch、15gf/inch、20gf/inch、25gf/inch、30gf/inch、35gf/inch、40gf/inch、45gf/inch、50gf/inch、55gf/inch、60gf/inch、65gf/inch、70gf/inch、75gf/inch、80gf/inch、85gf/inch、90gf/inch、95gf/inch、100gf/inch、例えば、10gf/inch~100gf/inch、10gf/inch~80gf/inch、20gf/inch~80gf/inchであり得る。上記範囲であれば、被着体が変形および/または損傷することなく被着体から容易に除去でき、光照射後の剥離強度向上が容易になり得る。
【0037】
粘着フィルムは、上記数式1中のP2が300gf/inch以上、具体的には、300gf/inch、350gf/inch、400gf/inch、450gf/inch、500gf/inch、550gf/inch、600gf/inch、650gf/inch、700gf/inch、750gf/inch、800gf/inch、850gf/inch、900gf/inch、950gf/inch、1000gf/inch、例えば、300gf/inch~1000gf/inch、300gf/inch~900gf/inchであり得る。上記範囲であれば、被着体に高剥離強度および高信頼性で貼付されることにより、被着体に対する保護効果を表すことができる。
【0038】
本発明において、P2は、粘着フィルムと被着体との試験片に光照射した後に測定される値である。本発明では、光照射後の粘着フィルムの凝集力および/またはモジュラス向上による粘着フィルムの物理的変化、光照射による一官能以上のモノマーの硬化にもかかわらず、光熱変換材料が光照射によって光を熱に変換させ、発生した熱は、被着体表面で粘着フィルムの流動性を高め粘着フィルムの拡散(diffusion)を向上させ、再度粘着フィルムが常温に戻ると被着体の表面に対してアンカレッジの効果を表すことにより、粘着フィルムの被着体に対する剥離強度を高めることができる。一般に、一官能以上のモノマーが光照射によって硬化されると、硬化収縮を起こしながら剥離強度の減少を引き起こすが、本発明では、光照射後であっても粘着フィルムの収縮を抑制することができた。これについては、下記で詳述する。
【0039】
上記「光照射」は、波長280nm~430nm、例えば、280nm、290nm、300nm、310nm、320nm、330nm、340nm、350nm、360nm、370nm、380nm、390nm、400nm、410nm、420nm、430nmnm、具体的には、波長350nm~390nmにおいて1000mJ/cm2でエネルギーを照射することを含み得る。UV照射は、UV LED、高圧水銀ランプ、およびメタルハライドランプからなる群より選択される少なくとも1種の光源を用いて行うことができる。
【0040】
本発明の粘着フィルムは、(メタ)アクリル系共重合体、硬化剤、一官能以上のモノマー、光熱変換材料、および開始剤を含む粘着剤組成物から形成される。
【0041】
一具体例において、粘着フィルムは、(メタ)アクリル系共重合体と硬化剤とによる熱硬化によって形成された粘着フィルムマトリックスに、一官能以上のモノマー、光熱変換材料、および開始剤が分散され得る。
【0042】
粘着剤組成物は、融点が30℃~60℃であるバインダーをさらに含むことができる。一具体例において、粘着フィルムは(メタ)アクリル系共重合体と硬化剤とによる熱硬化によって形成された粘着フィルムマトリックスに、一官能以上のモノマー、光熱変換材料、融点が30℃~60℃であるバインダー、および開始剤が分散され得る。
【0043】
((メタ)アクリル系共重合体)
(メタ)アクリル系共重合体は、粘着フィルムのマトリックスを形成し、硬化剤によって硬化されることにより、粘着フィルムの初期剥離強度を提供することができる。(メタ)アクリル系共重合体は、光照射後に一官能以上のモノマーと一緒に粘着フィルムのモジュラスおよび凝集力向上の助けにもなり得る。
【0044】
(メタ)アクリル系共重合体は、ガラス転移温度(Tg)が-10℃以下、具体的には、-70℃、-65℃、-60℃、-55℃、-50℃、-45℃、-40℃、-35℃、-30℃、-25℃、-20℃、例えば、-60℃~-20℃であり得る。上記範囲であれば、被着体に対する濡れ性(wetting、密着力)と粘着フィルムの初期剥離強度との提供に役立ち得、光照射後には、一官能以上のモノマーで形成されたオリゴマーに比べ、ガラス転移温度の調節によって粘着フィルムの収縮を抑制することにより、剥離強度を高めることができる。
【0045】
(メタ)アクリル系共重合体は、重量平均分子量が500,000g/mol以上、具体的には、500,000g/mol、600,000g/mol、700,000g/mol、800,000g/mol、900,000g/mol、1,000,000g/mol、1,100,000g/mol、1,200,000、1,300,000g/mol、1,400,000g/mol、1,500,000g/mol、例えば、600,000g/mol~1,500,000g/molであり得る。上記範囲であれば、被着体に対する濡れ性(wetting、密着力)と粘着フィルムの初期剥離強度とを提供することができる。
【0046】
(メタ)アクリル系共重合体は、アルキル基含有(メタ)アクリル系単量体および水酸基含有(メタ)アクリル系単量体を含む単量体混合物の共重合体を含み得る。
【0047】
アルキル基含有(メタ)アクリル系単量体は、粘着フィルムのマトリックスを形成するものであり、非置換の炭素数1~20、具体的には炭素数2~11のアルキル基を含有する(メタ)アクリル酸エステルを含み得る。例えば、アルキル基を有する(メタ)アクリル系単量体は、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、iso-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、およびラウリル(メタ)アクリレートのからなる群より選択される少なくとも1種を含むことができる。
【0048】
アルキル基含有(メタ)アクリル系単量体は、単量体混合物中の単量体の全モル数に対して、85モル%~99.5モル%、具体的には、85モル%、86モル%、87モル%、88モル%、89モル%、90モル%、91モル%、92モル%、93モル%、94モル%、95モル%、96モル%、97モル%、98モル%、99モル%、99.5モル%、例えば90モル%~98モル%、95モル%~99モル%で含まれ得る。上記範囲であれば、被着体に対する濡れ性と粘着フィルムの初期剥離強度とを提供する効果が表れ得る。
【0049】
水酸基含有(メタ)アクリル系単量体は、1個以上の水酸基を含有する(メタ)アクリレートであり得る。例えば、水酸基含有(メタ)アクリレートは、1個以上の水酸基を有する炭素数1~20のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル、1個以上の水酸基を有する炭素数5~20のシクロアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル、または1個以上の水酸基を有する炭素数6~20のアリール基を有する(メタ)アクリル酸エステルであり得る。具体的には、水酸基含有(メタ)アクリレートは、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、1-クロロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンジ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシシクロペンチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、およびシクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも1種であり得る。
【0050】
水酸基含有(メタ)アクリル系単量体は、単量体混合物中の単量体の全モル数に対して、0.1モル%~10モル%、具体的には、0.1モル%、0.5モル%、1モル%、1.5モル%、2モル%、2.5モル%、3モル%、3.5モル%、4モル%、4.5モル%、5モル%、5.5モル%、6モル%、6.5モル%、7モル%、7.5モル%、8モル%、8.5モル%、9モル%、9.5モル%、10モル%、例えば、0.5モル%~10モル%、0.5モル%~5モル%、2モル%~10モル%、1モル%~5モル%で含まれ得る。上記範囲であれば、粘着層に凝集力を付与して粘着層を形成させ、粘着フィルムの初期剥離強度の提供に効果を表し得る。
【0051】
単量体混合物は、カルボン酸基含有単量体をさらに含み得る。カルボン酸基含有単量体は、(メタ)アクリル系共重合体のガラス転移温度を高めて初期粘着強度の提供に役立ち得る。カルボン酸基含有単量体は、(メタ)アクリル酸を含み得るが、これに制限されるのではない。
【0052】
カルボン酸基含有単量体は、単量体混合物中の単量体の全モル数に対して、0.05モル%~5モル%、具体的には、0.05モル%、0.1モル%、0.5モル%、1モル%、1.5モル%、2モル%、2.5モル%、3モル%、3.5モル%、4モル%、4.5モル%、5モル%、例えば、0.1モル%~5モル%で含まれ得る。上記範囲であれば、粘着層に凝集力を付与して粘着層を形成させ、粘着フィルムの初期剥離強度の提供に効果を表し得る。
【0053】
単量体混合物は、ホモポリマーのガラス転移温度が-80℃以上0℃以下、具体的には、-80℃、-75℃、-70℃、-65℃、-60℃、-55℃、-50℃、-45℃、-40℃、-35℃、-30℃、-25℃、-20℃、-15℃、-10℃、-5℃、0℃、例えば、-60℃~-20℃である少なくとも1種の単量体を含み得る。上記範囲であれば、上記のガラス転移温度の範囲を有する(メタ)アクリル系共重合体の製造が容易になり得る。
【0054】
単量体混合物は、メチルアクリレート、アクリル酸、メタクリル酸等を含み得るが、これらに制限されるものではない。
【0055】
一具体例において、単量体混合物は、芳香族基を有する単量体を含まなくてもよい。芳香族基を有する単量体で形成された(メタ)アクリル系共重合体から製造された粘着フィルムは、上記数式1で表される剥離強度上昇率に到達し難くなる場合がある。
【0056】
(メタ)アクリル系共重合体は、単量体混合物を通常の重合方法で重合させて製造できる。重合方法は、当業者に知られている通常の方法を含み得る。例えば、(メタ)アクリル系共重合体は、単量体混合物に開始剤を添加した後、通常の共重合体重合、例えば、懸濁重合、乳化重合、溶液重合等で製造できる。重合温度は、60℃~70℃が好ましく、重合時間は4時間~8時間が好ましい。開始剤は、アゾ系重合開始剤;および/または過酸化ベンゾイルもしくは過酸化アセチルのような過酸化物等を含む通常のものを使用できる。
【0057】
(硬化剤)
硬化剤は、(メタ)アクリル系共重合体を熱硬化させて粘着フィルムのマトリックスを形成し、粘着フィルムの初期剥離強度の提供に役立ち得る。
【0058】
硬化剤は、熱硬化剤として、イソシアネート系硬化剤、金属キレート系硬化剤、カルボジイミド系硬化剤、アジリジン系硬化剤、およびエポキシ系硬化剤からなる群より選択される少なくとも1種を含むことができる。好ましくは、イソシアネート系硬化剤単独、またはイソシアネート系硬化剤と金属キレート系硬化剤との混合物を含み得る。この混合物は、本発明の効果の具現をより容易にすることができる。
【0059】
イソシアネート系硬化剤は、2官能以上、具体的には、2官能~6官能のイソシアネート系硬化剤を含み得る。一具体例において、イソシアネート系硬化剤は、m-キシレンジイソシアネート等を含むキシレンジイソシアネート(XDI)、4,4’-メチレンビス(フェニルイソシアネート)等を含むメチレンビス(フェニルイソシアネート)(MDI)、ナフタレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、およびイソホロンジイソシアネートからなる群より選択される少なくとも1種、またはこれらの付加体を含み得る。例えば、上記付加体は、トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加体、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加体、イソホロンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加体、キシレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加体、トリレンジイソシアネートのイソシアヌレート体、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体、またはイソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート体であり得る。イソシアネート系硬化剤は、上記付加体の1種以上を含み得る。
【0060】
イソシアネート系硬化剤は、(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して5質量部以下、具体的には、0.001質量部、0.005質量部、0.1質量部、0.5質量部、1質量部、1.5質量部、2質量部、2.5質量部、3質量部、3.5質量部、4質量部、4.5質量部、5質量部、例えば、0.001質量部~3質量部、より具体的には、0.01質量部~2質量部で含まれ得る。上記範囲であれば、粘着フィルムの信頼性を高めることができる。
【0061】
金属キレート系硬化剤は、通常の金属キレート系硬化剤を使用できるが、例えば、アルミニウム、チタン、鉄、銅、亜鉛、スズ、チタニウム、ニッケル、アンチモン、マグネシウム、バナジウム、クロム、ジルコニウム等の金属を含む硬化剤を含み得る。例えば、金属キレート系硬化剤は、アルミニウムエチルアセトアセテートジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムイソプロピレート、モノ-sec-ブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウム-sec-ブチレート、アルミニウムエチレート、テトライソプロピルチタネート、テトラノーマルブチルチタネート、ブチルチタネート二量体、チタンアセチルアセトネート、チタンオクチレングリコレート、チタンテトラアセチルアセトネート、チタンエチルアセトアセテート、ポリヒドロキシチタンステアレート、およびアルミニウムアセチルアセトネートからなる群より選択される少なくとも1種を含み得る。
【0062】
金属キレート系硬化剤は、(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して3質量部以下、具体的には、0.001質量部、0.005質量部、0.1質量部、0.5質量部、1質量部、1.5質量部、2質量部、2.5質量部、3質量部、例えば0.001質量部~1質量部、より具体的には0.01質量部~1質量部で含まれ得る。上記範囲であれば、本発明の粘着フィルムの効果に影響を与えず、さらなる効果を得ることができる。
【0063】
硬化剤は、(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して、0.01質量部~8質量部、具体的には、0.01質量部、0.05質量部、1質量部、2質量部、3質量部、4質量部、5質量部、6質量部、7質量部、8質量部、例えば0.01質量部~3質量部、より具体的には0.1質量部~2質量部で含まれ得る。上記範囲であれば、粘着フィルムの信頼性を高めることができる。
【0064】
(一官能以上のモノマー)
一官能以上のモノマーは、開始剤によって反応し得る1個以上の官能基を有する。官能基は、UV硬化性ビニル基または(メタ)アクリレート基を意味し得る。
【0065】
一官能以上のモノマーは、光照射後の粘着フィルムの凝集力および/またはモジュラスを上昇させることができる。よって、粘着フィルムが被着体の表面に貼付された状態で光硬化されると、粘着フィルムが被着体により高い剥離強度で貼付されるようにすることにより、粘着フィルムの剥離強度を高めることができる。
【0066】
好ましくは、一官能以上のモノマーは2個以下の上記官能基を有し得る。これにより、光照射による硬化時に粘着フィルムが収縮し過ぎることを効果的に防ぐことができる。
【0067】
一官能以上のモノマーのホモポリマーのガラス転移温度は、(メタ)アクリル系共重合体のガラス転移温度と比べて所定の範囲を有するようにすることが好ましい。これにより、粘着フィルムが光照射によって硬化しても、粘着フィルムの収縮を抑制することにより、光照射後の剥離強度を高めることができる。
【0068】
一官能以上のモノマーのホモポリマーのガラス転移温度は、(メタ)アクリル系共重合体のガラス転移温度よりも高く、その差は20℃以上、具体的には、20℃、25℃、30℃、35℃、40℃、45℃、50℃、55℃、60℃、65℃、70℃、75℃、80℃、85℃、90℃、95℃、100℃、110℃、115℃、120℃、例えば20℃~120℃、40℃~100℃が好ましい。上記範囲であれば、光照射後の剥離強度が上昇し得る。
【0069】
一官能以上のモノマーは、ホモポリマーのガラス転移温度が-30℃以上、具体的には、-30℃、-25℃、-20℃、-15℃、-10℃、-5℃、0℃、5℃、10℃、15℃、20℃、25℃、30℃、35℃、40℃、45℃、50℃、例えば-30℃~50℃であり得る。上記範囲であれば、(メタ)アクリル系共重合体に比べて、ガラス転移温度が高くなり光照射後の凝集力向上による粘着フィルムの剥離強度向上効果を得ることができる。
【0070】
一官能以上のモノマーは、エステル部位に炭素数が1~20、好ましくは炭素数8~20の直鎖状または分枝鎖状のアルキル基を有したり、あるいは炭素数1~20、好ましくは炭素数6~20の直鎖状または分枝鎖状のアルキレン基を有する、一官能以上の(メタ)アクリレートを含み得る。例えば、一官能以上のモノマーは、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、メチルアクリレート、n-ブチルメタアクリレート、および1,6-ヘキサンジオールジアクリレートからなる群より選択される少なくとも1種を含むことができる。
【0071】
一具体例において、一官能以上のモノマーは、1個以上の芳香族基を含有する一官能以上のモノマーを含み得る。
【0072】
上記「芳香族基」は、炭素数6~50の単環または多環の芳香環を含有することを意味し得る。例えば、芳香族基は、置換または非置換のフェニル基、ビフェニル基、テルフェニル基、ナフタレニル基等を意味し得る。
【0073】
芳香族基を含有する一官能以上のモノマーは、芳香環を含有することにより、被着体、例えば芳香族を有するプラスチックフィルム、具体的にはポリイミド系フィルムとのπ-π結合によるスタッキング(stacking)効果を通じて、粘着フィルムのポリイミド系フィルムに対するタック性を高めることにより、被着体に対する粘着フィルムの粘着力向上に寄与することができる。また、芳香族基は、直鎖状または分枝鎖状のアルキル基に比べてバルキーな置換基であり、光照射前には(メタ)アクリル系共重合体と硬化剤のネットワーク型硬化物、例えばIPN(interpenetrating polymer networks)構造またはsemi-IPN構造間に挿入されていることにより、被着体に対する粘着フィルムの初期剥離強度が上昇し過ぎることの抑制を助ける。
【0074】
芳香族基を含有する一官能以上のモノマーは、下記化学式1で表される化合物を含むことができるが、これに制限されるものではない。
【0075】
【0076】
上記化学式1中、
R1は水素原子またはメチル基であり、sは0~10の整数であり、R2は置換もしくは非置換の炭素数6~50のアリール基または置換もしくは非置換の炭素数6~50のアリールオキシ基であり、Tは置換もしくは非置換の炭素数1~6のアルキレン基または置換もしくは非置換の炭素数1~6のアルキレンオキシ基である。
【0077】
本明細書において、「置換または非置換の」における置換は、1つ以上の水素原子が炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のチオアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、ハロゲン原子(F、Cl、BrまたはI)、炭素数3~10のシクロアルキル基、または炭素数6~20のアリール基で置換されることを意味する。
【0078】
具体的には、R2は、置換または非置換のフェノキシ基、置換または非置換のフェニル基、置換または非置換のビフェニル基、置換または非置換のテルフェニル基、置換または非置換のフェニルフェニル基等であり得る。
【0079】
具体的には、芳香族基を含有する一官能以上のモノマーは、フェノキシ(メタ)アクリレート、フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、2-エチルフェノキシ(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、2-エチルチオフェニル(メタ)アクリレート、2-フェニルエチル(メタ)アクリレート、3-フェニルプロピル(メタ)アクリレート、4-フェニルブチル(メタ)アクリレート、2-(2-メチルフェニル)エチル(メタ)アクリレート、2-(3-メチルフェニル)エチル(メタ)アクリレート、2-(4-メチルフェニル)エチル(メタ)アクリレート、2-(4-プロピルフェニル)エチル(メタ)アクリレート、2-(4-(1-メチルエチル)フェニル)エチル(メタ)アクリレート、2-(4-メトキシフェニル)エチル(メタ)アクリレート、2-(4-シクロヘキシルフェニル)エチル(メタ)アクリレート、2-(2-クロロフェニル)エチル(メタ)アクリレート、2-(3-クロロフェニル)エチル(メタ)アクリレート、2-(4-クロロフェニル)エチル(メタ)アクリレート、2-(4-ブロモフェニル)エチル(メタ)アクリレート、2-(3-フェニルフェニル)エチル(メタ)アクリレート、オルソビフェニル(メタ)アクリレート、メタビフェニル(メタ)アクリレート、パラビフェニル(メタ)アクリレート、2,6-テルフェニル(メタ)アクリレート、オルソテルフェニル(メタ)アクリレート、メタテルフェニル(メタ)アクリレート、パラテルフェニル(メタ)アクリレート、4-(4-メチルフェニル)フェニル(メタ)アクリレート、4-(2-メチルフェニル)フェニル(メタ)アクリレート、2-(4-メチルフェニル)フェニル(メタ)アクリレート、2-(2-メチルフェニル)フェニル(メタ)アクリレート、4-(4-エチルフェニル)フェニル(メタ)アクリレート、4-(2-エチルフェニル)フェニル(メタ)アクリレート、2-(4-エチルフェニル)フェニル(メタ)アクリレート、2-(2-エチルフェニル)フェニル(メタ)アクリレート、ビフェニルメチル(メタ)アクリレート、ナフチル(メタ)アクリレート、エトキシ化フェニル(メタ)アクリレート、およびエトキシ化フェニルフェノール(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも1種を含むことができる。
【0080】
好ましくは、芳香族基を含有する一官能以上のモノマーは、ベンジル(メタ)アクリレート、エチレングリコールフェニルエーテルアクリレート、エトキシ化フェニルアクリレート、エトキシ化フェニルフェノールアクリレート、フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、ビフェニルメチル(メタ)アクリレート、1-ナフチル(メタ)アクリレート、および2-ナフチル(メタ)アクリレート等を含むナフチル(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも1種を含むことができる。
【0081】
一官能以上のモノマーは、(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して、10質量部~200質量部、具体的には、10質量部、15質量部、20質量部、25質量部、30質量部、35質量部、40質量部、45質量部、50質量部、55質量部、60質量部、65質量部、70質量部、75質量部、80質量部、85質量部、90質量部、95質量部、100質量部、105質量部、110質量部、115質量部、120質量部、125質量部、130質量部、135質量部、140質量部、145質量部、150質量部、155質量部、160質量部、165質量部、170質量部、175質量部、180質量部、185質量部、190質量部、195質量部、200質量部、例えば30質量部~150質量部、より具体的には30質量部~120質量部で含まれ得る。上記範囲であれば、光照射後の粘着フィルムの剥離強度上昇に貢献することができ、粘着フィルムの収縮を抑制することができる。
【0082】
(光熱変換材料)
光熱変換材料は、光照射によって光を熱に変換させ、発生した熱は被着体表面で粘着フィルムの流動性を高めて粘着フィルムの拡散(diffusion)を向上させ、再度粘着フィルムが常温に戻ると被着体の表面に対してアンカレッジの効果を表すことにより、粘着フィルムの被着体に対する剥離強度を高めることができる。
【0083】
光熱変換材料は、上記の光照射時の照射波長である280nm~430nm、具体的には、280nm、290nm、300nm、310nm、320nm、330nm、340nm、350nm、360nm、370nm、380nm、390nm、400nm、410nm、420nm、430nm、例えば波長350nm~390nmにおける光を吸収して熱を放出できる材料であれば、特に制限されない。
【0084】
例えば、光熱変換材料は、染料、顔料等の無機色素、有機色素、有機無機ハイブリッド色素金属、半金属、非金属、金属酸化物、非金属酸化物、および半金属酸化物からなる群より選択される少なくとも1種を含むことができる。具体的には、光熱変換材料は、アゾ系色素、シアニン系色素、ナフトキノン系色素、アントラキノン系色素、スクアリリウム系色素、フタロシアニン系色素、ポルフィリン系色素、インディゴ系色素、ジチオール錯体系色素、アズレニウム系色素、キノンイミド系色素、キノンジイミン系色素等の色素や有機顔料;亜鉛、白金、金、銀、銅、チタニウム、シリコン、クロム、ニッケル、ゲルマニウム、アルミニウム等の金属、非金属または半金属、これらの酸化物の1種以上を含むことができる。
【0085】
光熱変換材料は、液相または固相の形態になり得、例えば、球形、半球形、無定形、板状形等のマイクロ粒子またはナノ粒子、薄膜、蒸着膜等の形態を有することができる。
【0086】
光熱変換材料中の光熱変換粒子は、平均粒径(D50)が1000nm以下、具体的には、10nm、50nm、100nm、200nm、300nm、400nm、500nm、600nm、700nm、800nm、900nm、1000nm、例えば10nm~300nm、より具体的には10nm~100nmであり得る。上記範囲であれば、光熱変換材料に光を照射した際に熱を発生させて粘着フィルムの剥離強度を高めることができる。また、粘着層は約80%以上の高い透過率と約5%以下の低いヘーズ特性を有することができるため、光学用保護フィルムとして使用できる。上記「平均粒径(D50)」は、当業者に知られている通常の方法で測定できる。
【0087】
光熱変換材料中の光熱変換粒子は、表面処理されない場合もあるが、表面処理されることにより、粘着フィルム内の他の成分との相溶性を高め、粘着フィルムの光学的透明性を改善することができる。一具体例において、光熱変換粒子は(メタ)アクリレート系化合物で表面処理することができ、(メタ)アクリレート系化合物は粘着フィルム中の他の成分との相溶性を高めることができる。
【0088】
光熱変換材料は、(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して、0.001質量部~5質量部、具体的には0.001質量部、0.005質量部、0.01質量部、0.05質量部、0.1質量部、0.5質量部、1質量部、1.5質量部、2質量部、2.5質量部、3質量部、3.5質量部、4質量部、4.5質量部、5質量部、例えば0.01質量部~2質量部で含むことができる。上記範囲であれば、光照射後の粘着フィルムの剥離強度上昇に寄与することができ、粘着フィルムの透明性の低下を防ぐことができる。
【0089】
(開始剤)
開始剤は、一官能以上のモノマーを硬化させることにより、光照射による粘着フィルムの物理的変化を提供することができる。開始剤は、光ラジカル開始剤および光カチオン開始剤の少なくとも一方を含み、熱開始剤をさらに含むことができる。
【0090】
一具体例において、開始剤は、上記の光照射時に適用される照射波長の範囲内で最大吸収波長を有する光開始剤を含むことができる。例えば、光開始剤は、波長280nm~430nmで最大吸収波長を有し得る。上記範囲であれば、光照射によって一官能以上のモノマーの光硬化効果を得ることができる。具体的に、光開始剤は、リン系開始剤、ケトン系開始剤等を含むことができるが、これらに制限されない。
【0091】
開始剤は、(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して、0.01質量部~7.5質量部、具体的には0.15質量部~4.5質量部で含まれ得る。上記範囲であれば、光照射による一官能以上のモノマーに対する均一な硬化効果、および残量の開始剤による粘着フィルムの透明性の低下防止効果を提供することができる。
【0092】
(融点が30℃~60℃であるバインダー)
粘着剤組成物は、融点が30℃~60℃であるバインダーをさらに含むことができる。
【0093】
融点が30℃~60℃であるバインダーは、粘着フィルムの剥離強度の上昇を提供する。融点が30℃~60℃であるバインダーは、光照射による一官能以上のモノマーの硬化時に発生する熱と光熱変換材料に光照射時に発生する熱とによって、被着体表面で流動性が増加し、拡散(diffusion)され、粘着フィルムが再度常温で放置されると、被着体表面で再度結晶化することにより、アンカレッジの効果によって粘着フィルムの剥離強度を上昇させることができる。
【0094】
上記の融点「30℃~60℃」は、本発明の(メタ)アクリル系共重合体、硬化剤、一官能以上のモノマー、光熱変換材料および開始剤を含む組成物において、光照射時の光熱変換材料から発生される熱による剥離強度上昇効果を提供するために選択されたものである。融点が30℃未満では、バインダーの側鎖部分が所定の工程前から非結晶化されて流動性が増加している状態で初期剥離強度が高いため、工程用の一時的な保護フィルムの性能が低下し得る。融点が60℃を超えると、バインダーの側鎖部分の結晶化部分の流動性に変化がなく、剥離強度の上昇が微弱になり得る。
【0095】
一具体例において、バインダーは、融点が30℃~60℃、具体的には30℃~50℃、より具体的には30℃~40℃であり得る。上記範囲であれば、剥離強度上昇が優れたものになり得る。
【0096】
バインダーは、上記の融点を提供できれば、組成に特別な制限はない。バインダーは、1種の単量体から形成することもでき、2種以上の単量体から形成することもできる。好ましくは、2種以上の単量体を含む単量体混合物から形成されてなるバインダーであり、上記融点への到達が容易になり得る。
【0097】
バインダーを形成する単量体混合物は、エステル部位に炭素数が16~22の直鎖状または分枝鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリレート(以下「第1単量体」とも称する)を含み得る。第1単量体は、バインダー製造時に上記融点への到達が容易になり得る。第1単量体は、ステアリル(メタ)アクリレートおよびセチル(メタ)アクリレートの少なくとも一方を含み得る。
【0098】
第1単量体は、単量体混合物中の単量体の全モル数に対して、100モル%以下、具体的には、70モル%、75モル%、80モル%、85モル%、90モル%、100モル%、例えば70モル%~100モル%、70モル%~99モル%、90モル%~99モル%、90モル%~100モル%で含まれ得る。上記範囲であれば、上記融点に到達でき、光照射後の剥離強度を向上させることができる。
【0099】
単量体混合物は、第1単量体と重合してバインダーを形成できる単量体(以下、「第2単量体」とも称する)をさらに含み得る。
【0100】
第2単量体は、シリコンを含有しない非シリコン系単量体およびシリコンを含有するシリコン系単量体の少なくとも一方を含み得る。好ましくは、第2単量体としてシリコン系単量体を含むことができる。
【0101】
シリコン系単量体は、被着体に対する粘着フィルムの初期剥離強度を下げ、粘着フィルムの被着体に対する濡れ性を改善し、被着体の表面に粘着フィルムをよりよく染み込ませることにより、剥離強度上昇の幅をさらに高めることができる。
【0102】
シリコン系単量体は、シリコン変性一官能(メタ)アクリレートを含み得る。例えば、シリコン系単量体は下記化学式2で表される化合物を含むことができる。
【0103】
【0104】
上記化学式2中、
R1、R2、R3、R4、R5、R6、およびR7は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数3~10のシクロアルキル基または炭素数6~10のアリール基であり、R8は炭素数1~10のアルキレン基または炭素数6~10のアリーレン基であり、R9は水素原子またはメチル基であり、nは10~100の整数である。
【0105】
一具体例において、シリコン系単量体は下記化学式3で表される化合物を含むことができる。
【0106】
【0107】
上記化学式3中、nは10~100の整数である。
【0108】
シリコン系単量体は、当業者に知られている通常の方法で製造したり、商業的に販売される製品を使用したりすることができる。
【0109】
非シリコン系単量体は、第1単量体に比べてエステル部位に炭素数10以下、例えば炭素数4~10の直鎖状または分枝鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリレートを含むことができる。例えば、非シリコン系単量体はt-ブチル(メタ)アクリレート等を含むことができる。
【0110】
第2単量体は、単量体混合物中の単量体の全モル数に対して、1モル%~30モル%、具体的には1モル%、5モル%、10モル%、15モル%、20モル%、25モル%、30モル%、例えば1モル%~10モル%で含むことができる。上記範囲であれば、上記融点に到達でき、光照射後の剥離強度を上昇させることができる。
【0111】
バインダーは、単量体混合物を使用して当業者に知られている通常の方法によって製造できる。
【0112】
融点が30℃~60℃であるバインダーは、(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して、0.1質量部~20質量部、具体的には、0.1質量部、0.5質量部、1質量部、2質量部、3質量部、4質量部、5質量部、6質量部、7質量部、8質量部、9質量部、10質量部、11質量部、12質量部、13質量部、14質量部、15質量部、16質量部、17質量部、18質量部、19質量部、20質量部、例えば0.5質量部~5質量部で含まれ得る。上記範囲であれば、光照射による剥離強度の向上効果を提供することができる。
【0113】
粘着剤組成物は、硬化促進剤をさらに含むことができる。
【0114】
硬化促進剤は、粘着フィルムの硬化反応を助け、粘着層の凝集力をさらに高めることができる。硬化促進剤は、当業者に知られている通常の硬化促進剤を含むことができる。具体的には、例えば、スズ系金属化合物、亜鉛金属化合物、アミン類化合物、チタン系金属化合物、ビスマス系金属化合物およびアルミニウム系金属化合物を挙げることができる。これらのなかでも、スズ系金属化合物が好ましく使用でき、例えば、ジブチルスズジラウレート、ビス-アセチルアセトネート-ジブチルスズ、ジブチルスズジマレート、およびジマレートスズ等の4価または2価の有機スズ系化合物を含むことができるが、これらに制限されるものではない。
【0115】
硬化促進剤は、(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して、0.001質量部~3質量部で含まれ得る。上記範囲であれば、粘着フィルムの硬化速度を高め、凝集力の向上を助ける。
【0116】
粘着剤組成物は、シランカップリング剤をさらに含むことができる。
【0117】
シランカップリング剤は、粘着フィルムの剥離強度をさらに高めることができる。シランカップリング剤は、当業者に知られている通常のシランカップリング剤を含むことができる。例えば、シランカップリング剤は、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン等のエポキシ基含有シランカップリング剤を含み得るが、これらに制限されるものではない。
【0118】
シランカップリング剤は、(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して0.01質量部~5質量部で含まれ得る。上記範囲であれば、剥離強度の改善効果がさらに表れ得る。
【0119】
粘着剤組成物は、添加剤をさらに含むことができる。添加剤は、粘着フィルムに含まれるもので、当業者に知られている通常の添加剤を含むことができる。例えば、添加剤は、顔料、紫外線吸収剤、酸化防止剤、レベリング剤、帯電防止剤、遅延剤、およびリワーク剤からなる群より選択される少なくとも1種を含むことができるが、これらに制限されるものではない。
【0120】
粘着剤組成物は、溶剤をさらに含むことができる。溶剤は、粘着剤組成物の塗工性を高めて薄くかつ均一な表面を有する粘着フィルムができるようにする。溶剤は、当業者に知られている通常の種類を含むことができる。例えば、溶剤は、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エチルアセテート、トルエン等を含むことができるが、これらに制限されるものではない。一具体例において、粘着剤組成物は、固形分含有量が15質量%~40質量%、具体的には20質量%~30質量%であり得る。上記範囲であれば、組成物の塗工性が優れ得る。
【0121】
粘着フィルムは、可視光領域(例:波長380nm~780nm)でヘーズ(haze)が5%以下、具体的には0.1%~2%であり得、全光線透過率が80%以上、具体的には85%~95%であり得る。上記範囲であれば、光学透明性が良いため光学表示装置に使用できる。
【0122】
粘着フィルムの粘着層の厚さが200μm以下、具体的には0μm超100μm以下、より具体的には5μm~50μmであり得る。上記範囲であれば、フレキシブルパネルに対する保護効果を提供する助けになり得る。
【0123】
本発明の光学部材は、フレキシブルパネルおよびフレキシブルパネルの少なくとも一面に形成された粘着フィルムを含み、粘着フィルムは本実施形態による粘着フィルムを含む。
【0124】
本発明の一実施形態による光学部材は、フレキシブル基板を含むフレキシブルパネル、フレキシブル基板の下部面に積層された粘着フィルム、および粘着フィルムの下部面に積層された保護層を含み得る。
【0125】
光学部材は、フレキシブル基板、フレキシブル基板の下部面に積層された粘着フィルム、および粘着フィルムの下部面に積層された保護層を含み得る。一具体例において、フレキシブル基板の下部面は、フレキシブルパネルから発光する方向と反対側の面であり得る。
【0126】
フレキシブル基板は、有機発光ダイオード等の光学素子を支持する役割を果たすことができる。フレキシブル基板は、プラスチックフィルムとして、例えば、ポリイミド系フィルム、ポリエチレンテレフタレート系フィルム、ポリエチレンナフタレート系フィルム等を含むポリエステル系フィルム、ポリカーボネート系フィルム、ポリエーテルスルホン系フィルム等を含むことができる。
【0127】
保護層は、光学的に透明かつ屈曲性を提供できるものであれば、特に制限されない。例えば、保護層は、ポリエチレンテレフタレート系フィルム、ポリエチレンナフタレート系フィルム等を含むポリエステル系フィルム、ポリカーボネート系フィルム、ポリエーテルスルホン系フィルム等を含む保護フィルムを含み得る。
【0128】
フレキシブル基板の上部面には光学素子がさらに積層され得る。光学素子は、光学表示装置の一定の光学的機能、例えば、発光、偏光、光学補償、ディスプレイ画質改善、および/または導電性を提供することができる。光学素子は、OLED素子、ウィンドウフィルム、ウィンドウ、偏光板、カラーフィルター、位相差フィルム、楕円偏光フィルム、反射偏光フィルム、反射防止フィルム、補償フィルム、輝度向上フィルム、配向膜、光拡散フィルム、ガラス飛散防止フィルム、表面保護フィルム、OLED素子バリア層、プラスチックLCD基板、またはITO(indium tin oxide)、FTO(fluorinated tin oxide)、AZO(aluminum dopped zinc oxide)、CNT(carbon nanotube)、Agナノワイヤー、グラフェン等を含む透明電極フィルム等を挙げることができる。
【0129】
光学部材は、当業者に知られている通常の方法を適宜応用して製造できる。例えば、光学部材は、フレキシブル基板を含むフレキシブルパネルを準備し、フレキシブル基板の下部面に粘着フィルムと保護層との積層体を接合し、フレキシブル基板またはフレキシブルパネルに外観異常や異物等の不良がなければ、光照射をすることにより、粘着フィルムと保護層の積層体を高剥離強度でフレキシブルパネルに接合させ、製造することができる。しかし、外観異常や不良がある場合は、粘着フィルムと保護層との積層体をフレキシブルパネルから剥離すればよい。
【0130】
本発明の光学表示装置は、本発明の粘着フィルムを含む。
【0131】
光学表示装置は、有機発光素子表示装置、液晶表示装置等を含むことができる。光学表示装置は、フレキシブルディスプレイ装置を含むことができる。しかし、光学表示装置は非フレキシブルディスプレイ装置を含んでもよい。
【実施例】
【0132】
以下、本発明の好ましい実施例を通じて本発明の構成および作用をより詳しく説明する。但し、これは本発明の好ましい例示として提示したものであり、如何なる味でもこれによって本発明が制限されると解釈してはならない。
【0133】
(製造例1)
窒素ガスが還流し、温度調節が容易になるように冷却装置が設けられた1Lの反応器に、溶媒である酢酸エチルを添加した。n-ブチルアクリレート(BA)85モル%、メチルアクリレート(MA)10モル%、4-ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)4モル%、およびアクリル酸(AA)1モル%を含む単量体混合物100質量部を上記反応器に添加した。単量体混合物に窒素ガスを30分間投入して酸素を除去した後、反応器の内部温度を62℃に維持した。単量体混合物を均一に攪拌し、開始剤であるV-601(アゾ系ラジカル開始剤、富士フイルム和光純薬株式会社製)0.1質量部を投入し、62℃で8時間反応させて、(メタ)アクリル系共重合体(重量平均分子量:1,298,112g/mol、ガラス転移温度:-51℃)を製造した。溶媒である酢酸エチルを添加して、(メタ)アクリル系共重合体溶液(固形分質量:30質量%)を製造した。
【0134】
(製造例2~3)
製造例1において、各単量体の含有量を下記表1(単位:モル%)のように変更したことを除いては、製造例1と同様の方法で、(メタ)アクリル系共重合体溶液を製造した。なお、下記表1で「-」は、該当成分が含まれないことを意味する。また、Mwの単位は(g/mol)であり、Tgの単位は(℃)である。
【0135】
【0136】
(製造例4)
窒素ガスが還流し、温度調節が容易になるように冷却装置が設けられた1Lの反応器に、溶媒であるトルエンを添加した。ステアリルメタアクリレート(STMA)98モル%、およびシリコンアクリレート(信越化学工業株式会社製、KF-2012)2モル%を含む単量体混合物100質量部を反応器に添加した。単量体混合物に窒素ガスを30分間投入して酸素を除去した後、反応器の内部温度を70℃に維持した。単量体混合物を均一に攪拌し、開始剤であるV-601(アゾ系ラジカル開始剤、富士フイルム和光純薬株式会社製)0.2質量部を投入し、70℃で4時間反応させて、ステアリルメタアクリレートとシリコンアクリレートとから形成されてなるバインダー(融点:38℃)を製造した。溶媒であるトルエンを添加してバインダー溶液(固形分質量:30質量%)を製造した。
【0137】
(実施例1)
固形分基準で、製造例1で製造した(メタ)アクリル系共重合体(Tg:-51℃)100質量部、硬化剤としてイソシアネート系硬化剤(TD-75、綜研化学株式会社製)0.5質量部と、金属キレート系硬化剤(Hardener M-2、アルミニウムキレート系硬化剤、サイデン化学株式会社製)0.3質量部、硬化促進剤として促進剤S(スズ系硬化促進剤、綜研化学株式会社製)0.2質量部、一官能モノマーであるエチレングリコールフェニルエーテルアクリレート(ミウォンスペシャリティーケミカル社製、ホモポリマーのTg:7℃)40質量部、開始剤としてOmnirad(登録商標) TPO H(IGM Resins B.V.社製、リン系開始剤)0.5質量部、および光熱変換材料としてアクリレート変性された酸化亜鉛ナノ粒子を含む分散液Primsol-40C(KC Tech社製、酸化亜鉛ナノ粒子の平均粒径:30nm)0.5質量部を添加し、メチルエチルケトンを添加して、希釈して粘着剤組成物(固形分質量:30質量%)を製造した。上記表1では、各成分の固形分100%基準の含有量を表している。
【0138】
上記で製造した粘着剤組成物を、基材フィルムであるポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(SKC社製、厚さ:75μm,一面にウレタン系プライマーでコーティングされている)のプライマーコーティングされた面に、厚さ13μmになるように塗布した。その後、90℃で4分間乾燥させた後、得られた粘着層に、離型フィルム(厚さ:25μm,一面にシリコン離型処理されている)を接合し、50℃で2日間放置し、基材フィルムに粘着フィルム(厚さ:13μm)および離型フィルムが順に積層された粘着フィルム含有シートを製造した。
【0139】
(実施例2~5)
各成分の種類および/または含有量を下記表2のように変更したことを除いては、実施例1と同様の方法で、粘着フィルム含有シートを製造した。なお、下記表2で「-」は、該当成分が含まれないことを意味する。
【0140】
(比較例1~3)
各成分の種類および/または含有量を下記表2のように変更したことを除いては、実施例1と同様の方法で、粘着フィルム含有シートを製造した。
【0141】
実施例および比較例で製造した粘着フィルム含有シートに対して、下記の物性を評価し、その結果を下記表2に示した。
【0142】
(1)初期剥離強度(単位:gf/inch):実施例および比較例の粘着フィルム含有シートから、離型フィルムを剥離させて粘着フィルムを露出させた。露出された粘着フィルムの表面に、ポリイミド系フィルム(GF200,SKCKOLON社,厚さ:50μm)を貼付し、2kg荷重のロールで圧着し、幅×長さを25mm×100mmの大きさに切断して試験片を製造した。製造した試験片を
図1の(a)に示した。
図1の(a)を参照すると、PETフィルム(1)、粘着フィルム(2)、ポリイミド系フィルム(3)が順に積層されている。試験片を23±1℃および相対湿度55±5%RHで30分間放置した。JIS Z 2037(2009)に基づいて、引張試験機Texture analyzer(TA industry社製)を用いて、剥離温度25℃、剥離速度2400mm/min、剥離角度180°の条件で、T形剥離強度の測定方法で粘着フィルムからポリイミド系フィルムを剥離させた際の剥離強度を測定した。T形剥離強度は、
図1の(b)を参考にして測定することができる。T形剥離強度は、粘着フィルムのPETフィルム(1)および粘着フィルム(2)からポリイミド系フィルム(3)を剥離させた際の剥離強度力である。T形剥離強度測定時のPETフィルム(1)、粘着フィルム(2)は、TA Instrument社製のジグに固定された状態で、ポリイミド系フィルム(3)を
図1の(b)の矢印方向のように引っ張って測定できる。
【0143】
(2)UV照射後の剥離強度(単位:gf/inch):上記(1)と同じ方法でPETフィルム、粘着フィルム、ポリイミド系フィルムの順に積層された試験片を製造した。試験片に対してPETフィルム側からUV LED照射機(SUV-L5160A、UVSMT社製)を使用して、波長385nmでUV照射エネルギー1000mJ/cm2で照射し、23±1℃および相対湿度55±5%RHで30分間放置した。JIS Z 2037(2009)に基づいて引張試験機Texture analyzer(TA industry社製)を用いて、剥離温度25℃、剥離速度2400mm/min、剥離角度180°の条件で、T形剥離強度の測定方法によって、粘着フィルムからポリイミド系フィルムを剥離した際の剥離強度を測定した。
【0144】
【0145】
表2において、二酸化チタンは、アクリレート変性された二酸化チタンナノ粒子を含む分散液(二酸化チタンナノ粒子の平均粒径:50nm)から得た。
【0146】
上記表2で示したように、本発明の粘着フィルムは、初期剥離強度が100gf/inch以下である。よって、上記表2では表していないが、被着体に粘着された後に被着体から容易に除去できる。本発明の粘着フィルムは、数式1で表される剥離強度上昇率が5.0以上である。よって、上記表2では表していないが、光照射前に比べて剥離強度が著しく高いため、被着体に固定されて被着体を含む光学部材の耐久性を高めることができる。よって、本発明の粘着フィルムは、フレキシブルパネル基板に対して工程用の一時的な保護フィルムと、選択的に一部分のみ剥離された後、パターンを形成するパターン補強用保護フィルムとして同時に使用できる。
【0147】
よって、本発明は被着体に粘着した後、容易に除去することができ、所定の工程によって被着体に固定され得る粘着フィルムを提供する。本発明は、光照射前は被着体に低い剥離強度で貼付して被着体を一時的に保護し、不要な部分のみを選択的に切断して被着体が変形および/または損傷することなく、被着体から容易に除去される粘着フィルムを提供する。本発明は、光照射した後は光照射前に比べて剥離強度力が著しく高くなるため、被着体に固定されて被着体を含む光学部材の耐久性を高くすることができる粘着フィルムを提供する。本発明は、フレキシブルパネル基板に対して工程用の一時的な保護フィルムと、選択的に一部分のみ剥離された後、パターンを形成するパターン補強用保護フィルムとして同時に使用できる粘着フィルムを提供する。
【0148】
一方、本発明の構成から外れる比較例の粘着フィルムは、本発明の全ての効果を有しなかった。
【0149】
本発明の単純な変形あるいは変更は、本分野の通常の知識を有する者によって容易に実施することができ、このような変形や変更は全て本発明の範囲に含まれると見なすことができる。