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特許7398545パッシブ型RFIDタグ、RFIDシステム及びパッシブ型RFIDタグを動作させる方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-06
(45)【発行日】2023-12-14
(54)【発明の名称】パッシブ型RFIDタグ、RFIDシステム及びパッシブ型RFIDタグを動作させる方法
(51)【国際特許分類】
   G06K 19/07 20060101AFI20231207BHJP
   G05F 1/56 20060101ALI20231207BHJP
   H02J 50/20 20160101ALI20231207BHJP
   H04B 1/59 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
G06K19/07 150
G05F1/56 310J
G05F1/56 310Q
G06K19/07 090
G06K19/07 170
G06K19/07 230
H02J50/20
H04B1/59
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022205253
(22)【出願日】2022-12-22
(62)【分割の表示】P 2019066615の分割
【原出願日】2019-03-29
(65)【公開番号】P2023040059
(43)【公開日】2023-03-22
【審査請求日】2022-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】308033711
【氏名又は名称】ラピスセミコンダクタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001025
【氏名又は名称】弁理士法人レクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山内 茂樹
【審査官】後藤 彰
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-63278(JP,A)
【文献】特開2011-40890(JP,A)
【文献】国際公開第2013/140505(WO,A1)
【文献】特開2011-134049(JP,A)
【文献】特開平9-298486(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K 19/07
G05F 1/56
H02J 50/20
H04B 1/59
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リーダーライタから送信される、無変調信号部と前記無変調信号部の直後に続く変調信号部とを含む無線信号をアンテナで受信するパッシブ型RFIDタグであって、
前記アンテナに接続され、前記無線信号の受信によって前記アンテナから得られる受信信号を整流して直流電圧として電源ラインに出力する整流回路と、
前記電源ラインに接続され、前記直流電圧が印加されると前記受信信号を検波及び復調して受信データを得ると共に送信データを変調して変調信号を前記アンテナに供給する復調及び変調回路と、
前記電源ラインに接続され、前記直流電圧を定電圧化させて第1のレギュレータ電圧を生成する動作を行う第1のレギュレータ回路と、
前記第1のレギュレータ回路の前記第1のレギュレータ電圧の生成によって前記第1のレギュレータ電圧が印加されることにより動作を開始し、前記変調信号部の受信タイミングで制御信号を生成する制御回路と、
前記電源ラインに接続され、前記制御信号に応答して前記直流電圧を定電圧化させて第2のレギュレータ電圧を生成する動作を行い、前記第2のレギュレータ電圧を外部に出力する第2のレギュレータ回路と、を備えることを特徴とするパッシブ型RFIDタグ。
【請求項2】
前記制御回路は、前記復調及び変調回路がオンコマンドを示す前記受信データを得たとき前記制御信号としてイネーブル信号を生成し、
前記第2のレギュレータ回路は前記イネーブル信号に応答して前記第2のレギュレータ電圧の生成動作を開始することを特徴とする請求項1記載のパッシブ型RFIDタグ。
【請求項3】
前記制御回路は、前記復調及び変調回路がオフコマンドを示す前記受信データを得たとき前記制御信号として前記イネーブル信号を停止し、
前記第2のレギュレータ回路は前記イネーブル信号の停止に応答して前記第2のレギュレータ電圧の生成動作を停止させることを特徴とする請求項2記載のパッシブ型RFIDタグ。
【請求項4】
前記電源ラインに接続され、前記電源ラインの電圧が所定の直流電圧に達すると所定のタイマ時間を計測するタイマ回路を更に備え、前記タイマ回路が前記所定のタイマ時間の計測後に第1のイネーブル信号を生成し、
前記第1のレギュレータ回路は前記第1のイネーブル信号に応答して前記第1のレギュレータ電圧の生成動作を開始することを特徴とする請求項1記載のパッシブ型RFIDタ
グ。
【請求項5】
無変調信号部と前記無変調信号部の直後に続く変調信号部とを含む無線信号を送信するリーダーライタと、前記リーダーライタから送信される前記無線信号をアンテナで受信するパッシブ型RFIDタグと、を備えるRFIDシステムであって、
前記パッシブ型RFIDタグは、
前記アンテナに接続され、前記無線信号の受信によって前記アンテナから得られる受信信号を整流して直流電圧として電源ラインに出力する整流回路と、
前記電源ラインに接続され、前記直流電圧が印加されると前記受信信号を検波及び復調して受信データを得ると共に送信データを変調して変調信号を前記アンテナに供給する復調及び変調回路と、
前記電源ラインに接続され、前記直流電圧を定電圧化させて第1のレギュレータ電圧を生成する動作を行う第1のレギュレータ回路と、
前記第1のレギュレータ回路の前記第1のレギュレータ電圧の生成によって前記第1のレギュレータ電圧が印加されることにより動作を開始し、前記変調信号部の受信タイミングで制御信号を生成する制御回路と、
前記電源ラインに接続され、前記制御信号に応答して前記直流電圧を定電圧化させて第2のレギュレータ電圧を生成する動作を行い、前記第2のレギュレータ電圧を外部に出力する第2のレギュレータ回路と、を備えることを特徴とするRFIDシステム。
【請求項6】
パッシブ型RFIDタグを動作させる方法であって、
無線信号を受信するステップと、
前記無線信号を整流して直流電圧を生成するステップと、
第1のレギュレータ回路によって前記直流電圧を定電圧化させて第1のレギュレータ電圧を生成するステップと、
前記第1のレギュレータ電圧を制御回路に供給して前記制御回路を動作させるステップと、
受信データを受信するステップと、
前記受信データに基づいて前記制御回路によってイネーブル信号を生成するステップと、
前記イネーブル信号を第2のレギュレータ回路に供給して前記第2のレギュレータ回路を動作させるステップと、
前記第2のレギュレータ回路によって第2のレギュレータ電圧を外部接続端子に供給するステップと、
を備えることを特徴とする方法。
【請求項7】
前記無線信号はコマンド変調信号部を含み、
前記コマンド変調信号部を整流回路に供給して前記直流電圧を生成するステップを更に備えることを特徴とする請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記直流電圧に達すると整流化された前記無線信号に応答してタイマ時間を計測するステップと、
前記タイマ時間の計測後に第1のイネーブル信号を生成するステップと、
前記第1のレギュレータ回路によって前記直流電圧を定電圧化させるステップは前記第1のイネーブル信号に応答して開始されることを特徴とする請求項6または7記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リーダーライタから送信される電波を電源として動作するパッシブ型RFIDタグ、そのパッシブ型RFIDタグを有するRFIDシステム、及びパッシブ型RFIDタグを動作させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パッシブ型RFIDは、親機のリーダーライタから送信される電波を電源として子機のタグが動作し、リーダーライタとタグとの間で情報を通信する技術である。
【0003】
従来のパッシブ型RFIDタグには、電波を受信するアンテナからの受信信号である交流信号を整流する整流回路と、その整流回路の出力直流電圧を安定化させるレギュレータ回路と、そのレギュレータ回路の出力電圧によって動作する制御回路と、アンテナに接続され、整流回路の出力直流電圧によって動作し、制御回路によって送受信制御される復調・変調回路とが備えられている。このような構成の従来のRFIDタグは、例えば、特許文献1に開示されている。
【0004】
アンテナではリーダーライタからの送信電波が受信され、受信信号は交流信号として整流回路に供給されて直流電圧となる。その直流電圧はレギュレータ回路と復調・変調回路とに供給される。レギュレータ回路の出力電圧によって動作する制御回路は、受信データをメモリに書き込み、またメモリに書き込まれたデータ読み出して送信データとして復調・変調回路に供給する。復調・変調回路は、受信信号を検波及び復調して受信データとして制御回路に供給すると共に制御回路から供給される応答の送信データを変調して送信信号としてアンテナに供給する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-122600号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、リーダーライタが子機のタグのメモリに情報を書き込み、又はその書き込まれた情報を読み出すといった使用以外にタグに外部センサを設けてそのセンサが検出したセンサ情報を読み取るというような使用方法が実現されている。しかしながら、センサを外部に設けた場合には、レギュレータ回路の出力電圧によってセンサ回路などの外部回路が動作するためタグでは消費電力が増大する。よって、受信電波を電源としたタグでは十分の電力を確保することが難しく、リーダーライタの読取りのために復調・変調回路が送信信号を強く出力することができず、リーダーライタとタグと間の通信可能距離が短くなってしまうという問題があった。
【0007】
そこで、本発明の目的は、外部接続の回路を設けても十分の電力を確保することができるパッシブ型RFIDタグ、RFIDシステム、及びパッシブ型RFIDタグを動作させる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のパッシブ型RFIDタグは、リーダーライタから送信される、無変調信号部と前記無変調信号部の直後に続く変調信号部とを含む無線信号をアンテナで受信するパッシブ型RFIDタグであって、前記アンテナに接続され、前記無線信号の受信によって前記アンテナから得られる受信信号を整流して直流電圧として電源ラインに出力する整流回路と、前記電源ラインに接続され、前記直流電圧が印加されると前記受信信号を検波及び復調して受信データを得ると共に送信データを変調して変調信号を前記アンテナに供給する復調及び変調回路と、前記電源ラインに接続され、前記直流電圧を定電圧化させて第1のレギュレータ電圧を生成する動作を行う第1のレギュレータ回路と、前記第1のレギュレータ回路の前記第1のレギュレータ電圧の生成によって前記第1のレギュレータ電圧が印加されることにより動作を開始し、前記変調信号部の受信タイミングで制御信号を生成する制御回路と、前記電源ラインに接続され、前記制御信号に応答して前記直流電圧を定電圧化させて第2のレギュレータ電圧を生成する動作を行い、前記第2のレギュレータ電圧を外部に出力する第2のレギュレータ回路と、を備えることを特徴としている。
【0009】
本発明のパッシブ型RFIDタグは、前記制御回路は、前記復調及び変調回路がオンコマンドを示す前記受信データを得たとき前記制御信号としてイネーブル信号を生成し、前記第2のレギュレータ回路は前記イネーブル信号に応答して前記第2のレギュレータ電圧の生成動作を開始することを特徴としている。
【0010】
また、本発明のパッシブ型RFIDタグは、前記電源ラインに接続され、前記電源ラインの電圧が所定の直流電圧に達すると所定のタイマ時間を計測するタイマ回路を更に備え、前記タイマ回路が前記所定のタイマ時間の計測後に第1のイネーブル信号を生成し、前記第1のレギュレータ回路は前記第1のイネーブル信号に応答して前記第1のレギュレータ電圧の生成動作を開始し、前記制御回路は、前記第1のレギュレータ回路の前記第1のレギュレータ電圧の生成によって前記第1のレギュレータ電圧が印加されることにより、前記制御信号として第2のイネーブル信号を生成し、前記第2のレギュレータ回路は前記第2のイネーブル信号に応答して前記第2のレギュレータ電圧の生成動作を開始することを特徴としている。
【0011】
本発明のRFIDシステムは、無変調信号部と前記無変調信号部の直後に続く変調信号部とを含む無線信号を送信するリーダーライタと、前記リーダーライタから送信される前記無線信号をアンテナで受信するパッシブ型RFIDタグと、を備えるRFIDシステムであって、前記パッシブ型RFIDタグは、前記アンテナに接続され、前記無線信号の受信によって前記アンテナから得られる受信信号を整流して直流電圧として電源ラインに出力する整流回路と、前記電源ラインに接続され、前記直流電圧が印加されると前記受信信号を検波及び復調して受信データを得ると共に送信データを変調して変調信号を前記アンテナに供給する復調及び変調回路と、前記電源ラインに接続され、前記直流電圧を定電圧化させて第1のレギュレータ電圧を生成する動作を行う第1のレギュレータ回路と、前記第1のレギュレータ回路の前記第1のレギュレータ電圧の生成によって前記第1のレギュレータ電圧が印加されることにより動作を開始し、前記変調信号部の受信タイミングで制御信号を生成する制御回路と、前記電源ラインに接続され、前記制御信号に応答して前記直流電圧を定電圧化させて第2のレギュレータ電圧を生成する動作を行い、前記第2のレギュレータ電圧を外部に出力する第2のレギュレータ回路と、を備えることを特徴としている。
【0012】
本発明のパッシブ型RFIDタグを動作させる方法は、無線信号を受信するステップと、前記無線信号を整流して直流電圧を生成するステップと、第1のレギュレータ回路によって前記直流電圧を定電圧化させて第1のレギュレータ電圧を生成するステップと、前記第1のレギュレータ電圧を制御回路に供給して前記制御回路を動作させるステップと、受信データを受信するステップと、前記受信データに基づいて前記制御回路によってイネーブル信号を生成するステップと、前記イネーブル信号を第2のレギュレータ回路に供給して前記第2のレギュレータ回路を動作させるステップと、前記第2のレギュレータ回路によって第2のレギュレータ電圧を外部接続端子に供給するステップと、を備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明のパッシブ型RFIDタグ、RFIDシステム、及びパッシブ型RFIDタグを動作させる方法によれば、外部接続回路を設けた場合に、無線信号の無変調信号部の受信時に整流回路の出力直流電圧によってキャパシタには電荷が蓄積される一方、無線信号の無変調信号部の受信時に第2のレギュレータ回路が第2のレギュレータ電圧を外部接続回路に出力し、その際、キャパシタに蓄積された電荷が放電されるので、余裕をもって外部接続回路に電力供給が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施例1としてパッシブ型RFIDタグを有するRFIDシステムを示す図である。
図2図1のパッシブ型RFIDタグの動作を示す波形図である。
図3図1のパッシブ型RFIDタグ中の制御回路の動作を示すフロー図である。
図4】本発明の実施例2としてパッシブ型RFIDタグを有するRFIDシステムを示す図である。
図5図4のパッシブ型RFIDタグの動作を示す波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施例を、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0016】
図1は実施例1として本発明を適用したパッシブ型RFIDタグ11の回路構成を示している。このパッシブ型RFID用タグ11は、整流回路12、レギュレータ回路13、14、制御回路15、及び復調・変調回路16を備えている。整流回路12はアンテナ21に接続されている。アンテナ21はリーダーライタ31のアンテナ32から送出された電波である無線信号を受信してそれを受信信号として整流回路12に供給する。整流回路12は、供給された交流信号である受信信号を整流して直流電圧として出力する。整流回路12の直流電圧の出力端子には電源ラインPLを介してレギュレータ回路13、14、及び復調・変調回路16が接続されており、整流回路12の出力直流電圧がレギュレータ回路13、14、及び復調・変調回路16に供給される。
【0017】
整流回路12の直流電圧の出力端子とレギュレータ回路13、14、及び復調・変調回路16各々を接続する電源ラインPLにはキャパシタ(コンデンサ)22が接続されている。キャパシタ22は電源ラインPLとグランドとの間に接続されているが、タグ11を構成するICチップ20外に外付けされている。キャパシタ22には整流回路12の出力直流電圧が印加されることにより電荷が蓄積される。
【0018】
レギュレータ回路13は、第1のレギュレータ回路であり、整流回路12の出力直流電圧を予め定められたレギュレータ電圧に安定化させ、そのレギュレータ電圧を制御回路15に出力する。
【0019】
レギュレータ回路14は、第2のレギュレータ回路であり、レギュレータ回路13と同様に整流回路12の出力直流電圧を予め定められたレギュレータ電圧に安定化させ、そのレギュレータ電圧を外部接続端子23に出力する。外部接続端子23には例えば、図1に示されたようにマイコン回路24が接続されている。マイコン回路24はコンピュータからなり、外部接続端子23から出力されるレギュレータ電圧を電源電圧として動作する。
【0020】
制御回路15はレギュレータ回路13に接続される共にレギュレータ回路14及び復調・変調回路16に接続されている。制御回路15はレギュレータ回路13から出力されるレギュレータ電圧を電源電圧として動作する。
【0021】
復調・変調回路16は、アンテナ21に接続されており、整流回路12の出力直流電圧を電源電圧として動作する。復調・変調回路16はアンテナ21から供給される受信信号を検波及び復調処理して受信データとして制御回路に供給し、また、制御回路15から供給される応答の送信データを変調して送信信号としてアンテナ21に供給する。
【0022】
レギュレータ回路13、14のレギュレータ電圧は同一電圧でも良いし、互いに異なる電圧でも良く、制御回路15及びマイコン回路24各々の動作電圧によって設定される。
【0023】
制御回路15は、復調・変調回路16から受信データを得て、その受信テータに含まれるコマンドに応じて応答のための送信データを生成する。また、制御回路15は、復調・変調回路16から得た受信データのコマンドに応じてレギュレータ回路14にイネーブル信号ENを出力する。レギュレータ回路14は制御回路15からイネーブル信号ENが供給されている期間に亘って定電圧化動作を実行する。
【0024】
次に、かかる構成のパッシブ型RFIDタグ11の動作について図2の動作波形図に従って説明する。
【0025】
リーダーライタ31のアンテナ32から送出された無線信号は、図2(a)に示すようにCW信号部、コマンド変調信号部、そして変調信号部を連続的に含む。CW信号部は無変調連続波、すなわちキャリア信号だけの部分であり、コマンドのプリアンブルを表す部分である。コマンド変調信号部はキャリアがコマンドを表すビット列で変調された信号の部分である。変調信号部は他のコマンドやパラメータを表すビット列で変調された信号が続く部分である。また、変調信号部はコマンドやパラメータを表さない特定のピット列で変調された信号でも良い。図2(a)に示した無線信号では、コマンド変調信号部CM1及びCM3の各々にはイネーブル信号ENのオンコマンドが含まれ、コマンド変調信号部CM2にはイネーブル信号ENのオフコマンドが含まれている。
【0026】
図2(a)に示すように時点t1で無線信号のCW信号部がアンテナ21で受信されると、その受信信号が整流回路12に供給され、整流されて直流電圧となる。図2(b)に示すように、整流回路12の出力直流電圧は、CW信号部受信以降、キャパシタ22を充電させつつ徐々に上昇してほぼ一定した直流電圧V1に達する。この直流電圧V1はレギュレータ回路13及び復調・変調回路16に供給され、レギュレータ回路13及び復調・変調回路16を活性化させる。レギュレータ回路13ではその直流電圧を安定化させてレギュレータ電圧を生成して制御回路15に供給し、そのレギュレータ電圧により制御回路15が動作する。すなわち、パッシブ型RFIDタグ11は無線信号のコマンド変調信号部を含む変調信号部に対処できる待機状態となる。しかしながら、待機状態では制御回路15の電力消費は小さく、キャパシタ22を十分に充電させることになる。
【0027】
無線信号のCW信号部に続いて時点t2でコマンド変調信号部CM1がアンテナ21で受信されると、その受信信号が整流回路12に供給され、整流されて直流電圧となるので、図2(b)に示すように、整流回路12の出力直流電圧は、ほぼ一定した直流電圧V1を継続する。
【0028】
無線信号のコマンド変調信号部CM1は復調・変調回路16で検波及び復調処理されて受信データとして制御回路に供給される。コマンド変調信号部CM1には図2(a)に示すように、イネーブル信号ENのオンコマンドが含まれているので、イネーブル信号ENのオンコマンドを示す受信データが制御回路15には供給される。制御回路15は図3に示すように、受信データを受けるとそれがイネーブル信号ENのオンコマンドであるか否かを判別する(ステップS101)。イネーブル信号ENのオンコマンドである場合には、図2(c)に示すようにイネーブル信号ENを生成する(ステップS102)。イネーブル信号ENはレギュレータ回路14に供給され、レギュレータ回路14を動作させる。レギュレータ回路14は整流回路12の出力直流電圧を受け入れてその直流電圧を安定化させて、図2(d)に示すように、レギュレータ電圧を生成する。そのレギュレータ電圧は外部接続端子23を介してマイコン回路24に供給されるので、マイコン回路24はそのレギュレータ電圧によって起動する。
【0029】
無線信号のコマンド変調信号部CM1に続いて時点t3で変調信号部がアンテナ21で受信されると、その受信信号が整流回路12に供給され、整流されて直流電圧となるので、図2(b)に示すように、整流回路12の出力直流電圧は、ほぼ一定した直流電圧V1を継続する。復調・変調回路16から得られた受信データにコマンドが含まれていないので、制御回路15はイネーブル信号ENの生成を継続する。よって、レギュレータ回路14はレギュレータ電圧を外部接続端子23を介してマイコン回路24に供給し続けるので、マイコン回路24はそのレギュレータ電圧によって動作を続ける。
【0030】
無線信号の変調信号部に続いて時点t4でコマンド変調信号部CM2がアンテナ21で受信されると、その受信信号が整流回路12に供給され、整流されて直流電圧となるので、図2(b)に示すように、整流回路12の出力直流電圧は、ほぼ一定した直流電圧V1を継続する。
【0031】
無線信号のコマンド変調信号部CM2は復調・変調回路16で検波及び復調処理されて受信データとして制御回路に供給される。コマンド変調信号部CM2には図2(a)に示すように、イネーブル信号ENのオフコマンドが含まれているので、イネーブル信号ENのオフコマンドを示す受信データが制御回路15には供給される。制御回路15は図3に示すように、ステップS102実行後において受信データを受けるとそれがイネーブル信号ENのオフコマンドであるか否かを判別する(ステップS103)。イネーブル信号ENのオフコマンドである場合には、図2(c)に示すようにイネーブル信号ENの生成を停止する(ステップS104)。イネーブル信号ENのレギュレータ回路14への供給が停止されるので、レギュレータ回路14はレギュレータ電圧の生成を停止する。これにより、レギュレータ回路14からマイコン回路24へのレギュレータ電圧の供給が停止されるので、マイコン回路24は動作を停止する。
【0032】
無線信号の変調信号部の後に無線信号の受信がなくなった場合、例えば、図2(a)に示すように、イネーブル信号ENのオンコマンドを示すコマンド変調信号部CM3に続いて時点t5で変調信号部が到来し、その後の時点t6で無線信号が止まった場合には、パッシブ型RFIDタグ11は動作を停止する。具体的には、変調信号部を受信している限りは整流回路12から直流電圧が出力される。これにより制御回路15はイネーブル信号ENの生成を継続し、レギュレータ回路14はレギュレータ電圧を外部接続端子23を介し
てマイコン回路24に供給し続ける。しかしながら、変調信号部の受信が終了して無線信号自体がなくなると、整流回路12から直流電圧が出力されなくなるので、時点t6以降、キャパシタ22の蓄積電荷の放電に従って図2(b)に示すように、整流回路12の出力直流電圧は徐々に低下する。これにより制御回路15は図2(c)に示すように、イネーブル信号ENの生成を停止し、レギュレータ回路14は図2(d)に示すように、レギュレータ電圧の生成を停止するので、マイコン回路24は動作を停止する。
【0033】
このように本実施例1では、イネーブル信号ENのオンコマンドを受信して制御回路15からイネーブル信号ENがレギュレータ回路14に供給されている期間には、パッシブ型RFIDタグ11内の各部の回路の動作に加えて外部のマイコン回路24を動作させることができる。その際にはキャパシタ22に蓄積された電荷が放電されるので、余裕をもって電力供給が可能である。よって、リーダーライタ31とパッシブ型RFIDタグ11との間の通信を従来よりも電力不足なく長く維持することができる。また、マイコン回路24の動作中にはキャパシタ22に蓄積された電荷が放電されるので、リーダーライタ31とパッシブ型RFIDタグ11との間の障害により受信電力が一時的に低下してもキャパシタ22の蓄積電荷によってその受信電力低下を補うことができる。
【0034】
マイコン回路24は動作中には例えば、温度センサ等のセンサによってセンサ測定値を得てその測定値データを制御回路15に供給し、制御回路15は測定値データをメモリ(図示せず)に保存することができる。リーダーライタ31は適当なタイミングでそのセンサ測定値の読取りコマンドを無線信号でアンテナ32からパッシブ型RFIDタグ11に対して送信する。パッシブ型RFIDタグ11では、アンテナ21を介して復調・変調回路16が得た受信データから制御回路15がセンサ測定値の読取りコマンドを認識すると、メモリからセンサ測定値を読み出し、センサ測定値を含む応答の送信データを作成し、復調・変調回路16は制御回路15から供給される応答の送信データを変調して送信信号としてアンテナ21に供給する。よって、リーダーライタ31ではその送信信号をアンテナ32を介して受信することによりセンサ測定値を得ることができる。
【0035】
リーダーライタ31では、パッシブ型RFIDタグ11から返信される変調信号レベルをもって、おおよそのリーダーライタ31とパッシブ型RFIDタグ11との間の距離を把握することができる。また、リーダーライタ31が同一のRFIDタグ11に複数回アクセスする場合、又は、返信される変調信号レベルを検出して、複数回にわけてアクセスする場合には、その把握した距離から計算される充電時間に基づいて第2のレギュレータ回路14の起動コマンドのオンオフ時間を管理することによりデータ収集時間を最適にすることができる。
【0036】
図4は実施例2として本発明を適用したパッシブ型RFIDタグ51の回路構成を示している。このパッシブ型RFIDタグ51では、実施例1と同一部分は同一符号を用いている。レギュレータ回路13、14の各々がイネーブル信号EN1、EN2の供給によって動作する点を除いて整流回路12、レギュレータ回路13、14、制御回路15、復調・変調回路16、キャパシタ22は実施例1のタグ11と同様である。なお、キャパシタ22はタグ51を構成するICチップ50の外に外付けされている。パッシブ型RFIDタグ51は更にタイマ回路52を有している。タイマ回路52は、整流回路12の直流電圧の出力端子、すなわち電源ラインPLに接続されており、整流回路12の直流電圧がV1に達した時点から所定のタイマ時間を計測する。タイマ回路52は、所定のタイマ時間の計測終了時点でイネーブル信号EN1を生成し、それをレギュレータ回路13に供給する。所定のタイマ時間はV1に達した時点から無線信号においてCW信号部から変調信号部に代わる時点までの時間、又は変調信号部に代わる直前の時点に相当する。
【0037】
制御回路15は、レギュレータ回路13から出力されるレギュレータ電圧を電源電圧と
して動作し、その動作開始から所定の遅延時間の経過後にイネーブル信号EN2を生成し、それをレギュレータ回路14に供給する。所定の遅延時間はレギュレータ電圧を受けてから制御回路15の動作が安定するまでの遅延であっても良い。
【0038】
その他の構成は実施例1と同様であるので、ここでの説明を省略する。
【0039】
次に、かかる構成の実施例2のパッシブ型RFIDタグ51の動作について図5の動作波形図に従って説明する。
【0040】
リーダーライタ31のアンテナ32から送出された無線信号は、図5(a)に示すようにCW信号部、そして変調信号部を含む。CW信号部は無変調連続波、すなわちキャリア信号だけの部分であり、コマンドのプリアンブルを表す部分である。CW信号部の長さは一定である。変調信号部はコマンドやパラメータを表すビット列で変調された信号が続く部分である。また、変調信号部はコマンドやパラメータを表さない特定のピット列で変調された信号でも良い。
【0041】
図5(a)に示すように時点t1で無線信号のCW信号部がアンテナ21で受信されると、その受信信号が整流回路12に供給され、整流されて直流電圧となる。図5(b)に示すように、整流回路12の出力直流電圧は、CW信号部受信以降、キャパシタ22を充電しつつ徐々に上昇してほぼ一定した直流電圧V1に達する。この直流電圧V1はタイマ回路52に供給され、タイマ回路5は、図5(c)に示すように、時点t2で所定のタイマ時間T1の計測を開始する。このタイマ時間T1の計測中にはレギュレータ回路13及び制御回路15は動作していないので、キャパシタ22の充電をより早く充電させることができる。
【0042】
タイマ回路5は所定のタイマ時間T1の計測を時点t3で終了すると、図5(d)に示すように、イネーブル信号EN1を生成し、それをレギュレータ回路13に供給する。時点t3は、無線信号がCW信号部から変調信号部に代わる時点t4の直前の時点である。
【0043】
レギュレータ回路13は、イネーブル信号EN1に応答して整流回路12の出力直流電圧V1を安定化させて、図5(e)に示すように、レギュレータ電圧を生成し、そのレギュレータ電圧を制御回路15に供給する。そのレギュレータ電圧により制御回路15が起動する。
【0044】
制御回路15は動作を開始すると、その動作開始から所定の遅延時間の経過後に、図5(f)に示すように、イネーブル信号EN2を生成する。イネーブル信号EN2はレギュレータ回路14に供給され、レギュレータ回路14を動作させる。レギュレータ回路14は整流回路12の出力直流電圧を受け入れてその直流電圧を安定化させて、図5(g)に示すように、レギュレータ電圧を生成する。そのレギュレータ電圧は外部接続端子23を介してマイコン回路24に供給されるので、マイコン回路24はそのレギュレータ電圧によって起動する。無線信号の変調信号部が到来している期間においては、レギュレータ回路14はレギュレータ電圧を外部接続端子23を介してマイコン回路24に供給し続けるので、マイコン回路24はそのレギュレータ電圧によって動作を続ける。
【0045】
時点t5において変調信号部の受信が終了して無線信号自体がなくなると、整流回路12から直流電圧が出力されなくなるので、キャパシタ22の蓄積電荷の放電に従って図5(b)に示すように、整流回路12の出力直流電圧は徐々に低下する。これによりレギュレータ回路13、14各々からのレギュレータ電圧の生成が停止するので、マイコン回路24は動作を停止する。
【0046】
このように本実施例2では、無線信号のCW信号部受信中にはキャパシタ22を十分に充電させ、無線信号の変調信号部の開始直前にレギュレータ回路13と共に制御回路15を起動させ、そして制御回路15から制御回路15からイネーブル信号EN2をレギュレータ回路14に供給し、レギュレータ回路14からマイコン回路24にレギュレータ電圧を供給することが行われる。よって、レギュレータ回路14からマイコン回路24にレギュレータ電圧が供給されている期間には、パッシブ型RFIDタグ51内の各部の回路の動作に加えて外部のマイコン回路24を動作させることができる。その際にはキャパシタ22に蓄積された電荷が放電されるので、外部のマイコン回路24には余裕をもって電力供給が可能である。よって、リーダーライタ31とパッシブ型RFIDタグ51との間の通信を従来よりも電力不足なく長く維持することができる。また、マイコン回路24の動作中にはキャパシタ22に蓄積された電荷が放電されるので、リーダーライタ31とパッシブ型RFIDタグ51との間の障害により受信電力が一時的に低下してもキャパシタ22の蓄積電荷によってその受信電力低下を補うことができる。
【0047】
マイコン回路24は、実施例2でも実施例1と同様に動作中には例えば、温度センサ等のセンサによってセンサ測定値を得てその測定値データを制御回路15に供給し、制御回路15は測定値データをメモリ(図示せず)に保存することができる。リーダーライタ31は適当なタイミングでそのセンサ測定値の読取りコマンドを無線信号でアンテナ32からパッシブ型RFIDタグ11に対して送信する。パッシブ型RFIDタグ11では、アンテナ21を介して復調・変調回路16が得た受信データから制御回路15がセンサ測定値の読取りコマンドを認識すると、メモリからセンサ測定値を読み出し、センサ測定値を含む応答の送信データを作成し、復調・変調回路16は制御回路15から供給される応答の送信データを変調して送信信号としてアンテナ21に供給する。よって、リーダーライタ31ではその送信信号をアンテナ32を介して受信することによりセンサ測定値を得ることができる。
【0048】
実施例2では、所定のタイマ時間T1を計測するタイマ52を設けたが、これに代えて電圧検出器(又は、電圧比較器)を設けて整流回路12の出力直流電圧が所定の電圧に達したことを検出して第1のレギュレータ回路13を動作させるようにしても良い。
【0049】
なお、上記した実施例1及び2においては、パッシブ型RFIDタグとして説明したが、タグに外部電源を備え、リーダーライタ31からアクセスがあった時のみ外部電源の電力を使用するという構成にもすることができる。こうすることにより待機時の電力削減ができ、低消費電力化が可能となる。
【符号の説明】
【0050】
11,51 パッシブ型RFIDタグ
12 整流回路
13,14 レギュレータ回路
15 制御回路
16 復調・変調回路
20,50 ICチップ
21,32 アンテナ
22 キャパシタ
23 外部接続端子
24 マイコン回路
31 リーダーライタ
PL 電源ライン
図1
図2
図3
図4
図5