(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-06
(45)【発行日】2023-12-14
(54)【発明の名称】感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、感活性光線性又は感放射線性膜、パターン形成方法、電子デバイスの製造方法、フォトマスク製造用感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、及びフォトマスクの製造方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/004 20060101AFI20231207BHJP
G03F 7/039 20060101ALI20231207BHJP
G03F 7/038 20060101ALI20231207BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20231207BHJP
C07D 309/12 20060101ALI20231207BHJP
C07D 209/42 20060101ALI20231207BHJP
C07D 275/06 20060101ALI20231207BHJP
C07D 235/18 20060101ALI20231207BHJP
C07D 231/26 20060101ALI20231207BHJP
C07D 487/04 20060101ALI20231207BHJP
C07D 251/70 20060101ALI20231207BHJP
C07C 381/12 20060101ALI20231207BHJP
C07C 309/42 20060101ALI20231207BHJP
C07C 309/58 20060101ALI20231207BHJP
C08F 212/14 20060101ALN20231207BHJP
【FI】
G03F7/004 503A
G03F7/039 601
G03F7/038 601
G03F7/20 521
G03F7/20 501
C07D309/12
C07D209/42
C07D275/06
C07D235/18
C07D231/26
C07D487/04 136
C07D251/70 C
C07C381/12
C07C309/42
C07C309/58
C08F212/14
(21)【出願番号】P 2022511785
(86)(22)【出願日】2021-03-12
(86)【国際出願番号】 JP2021010246
(87)【国際公開番号】W WO2021200056
(87)【国際公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-06-13
(31)【優先権主張番号】P 2020061655
(32)【優先日】2020-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】弁理士法人航栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】石原 英幸
(72)【発明者】
【氏名】高橋 年哉
(72)【発明者】
【氏名】三好 太朗
(72)【発明者】
【氏名】福▲崎▼ 英治
【審査官】高橋 純平
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/045534(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/070327(WO,A1)
【文献】特開2014-153440(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004-7/18
G03F 7/20
C07D 309/12
C07D 209/42
C07D 275/06
C07D 235/18
C07D 231/26
C07D 487/04
C07D 251/70
C07C 381/12
C07C 309/42
C07C 309/58
C08F 212/14
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸の作用により現像液に対する溶解性が変化する樹脂(P)と、
酸の作用により分解し極性が変化する基(a)を有し、かつ活性光線又は放射線の照射により酸(ac1)を発生する化合物(A)と、
活性光線又は放射線の照射により、前記化合物(A)から発生する酸(ac1)よりpKaが高い酸(ac2)を発生する化合物(B)と、
塩基性化合物(C)と、
を含有する感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物であって、
前記化合物(A)が下記一般式(b3)で表され、
前記化合物(B)が下記一般式(B-1)で表さ
れ、
前記化合物(A)の含有量と前記化合物(B)の含有量との和に対する前記化合物(B)の含有量と前記塩基性化合物(C)の含有量との和の比である[(B)+(C)]/[(A)+(B)]が、モル比で0.3以上1.0以下である、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【化1】
一般式(b3)中、Lは単結合又は二価の連結基を表す。Lが複数存在するとき、複数のLは同一であっても異なっていてもよい。Aは酸の作用により分解し極性が変化する基(a)を表す。Aが複数存在するとき、複数のAは同一であっても異なっていてもよい。o、p及びqはそれぞれ独立に0から5の整数を表す。ただし、oとpとqの総和は1以上5以下である。M
+はスルホニウムイオン又はヨードニウムイオンを表す。
【化2】
一般式(B-1)中、R
51はアリール基を表し、M
+はスルホニウムカチオン又はヨードニウムカチオンを表す。
【請求項2】
前記酸(ac2)のpKaが前記酸(ac1)のpKaより1以上高い請求項1に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【請求項3】
前記塩基性化合物(C)の含有量に対する前記化合物(B)の含有量の比である(B)/(C)が、モル比で1.1以上10以下である請求項1又は2に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【請求項4】
前記化合物(A)の含有量が、前記感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物の全固形分に対して、5質量%以上60質量%以下である請求項1~
3のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【請求項5】
前記酸の作用により分解し極性が変化する基(a)が、下記一般式(T-1)で表される基である請求項1~
4のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【化3】
一般式(T-1)中、
R
11は水素原子又はアルキル基を表す。
R
12は水素原子、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を表し、前記アルキル基及びシクロアルキル基は、エーテル結合又はカルボニル結合を含んでいてもよい。 R
13はアルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を表し、前記アルキル基及びシクロアルキル基は、エーテル結合又はカルボニル結合を含んでいてもよい。
R
11及びR
12は互いに結合して環を形成していても良い。
R
12及びR
13は互いに結合して環を形成していても良い。
*は結合手を表す。
【請求項6】
前記化合物(B)の含有量に対する前記化合物(A)の含有量の比である(A)/(B)が、モル比で0.2以上2.0以下である請求項1~
5のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1~
6のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いて形成された感活性光線性又は感放射線性膜。
【請求項8】
請求項1~
6のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いてレジスト膜を形成するレジスト膜形成工程と、前記レジスト膜を露光する露光工程と、露光された前記レジスト膜を、現像液を用いて現像する現像工程と、を含むパターン形成方法。
【請求項9】
請求項
8に記載のパターン形成方法を含む、電子デバイスの製造方法。
【請求項10】
請求項1~
6のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物をフォトマスク製造用に用いるフォトマスク製造用感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【請求項11】
請求項
10に記載のフォトマスク製造用感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いるフォトマスクの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、感活性光線性又は感放射線性膜、パターン形成方法、電子デバイスの製造方法、フォトマスク製造用感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、及びフォトマスクの製造方法に関する。より詳細には、本発明は、超LSI(Large Scale Integration)及び高容量マイクロチップの製造プロセス、ナノインプリント用モールド作成プロセス並びに高密度情報記録媒体の製造プロセス等に適用可能な超マイクロリソグラフィプロセス、並びにその他のフォトファブリケーションプロセスに好適に用いられる感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、感活性光線性又は感放射線性膜、パターン形成方法、電子デバイスの製造方法、フォトマスク製造用感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、及びフォトマスクの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、IC(Integrated Circuit)、LSIなどの半導体デバイスの製造プロセスにおいては、フォトレジスト組成物を用いたリソグラフィーによる微細加工が行われている。近年、集積回路の高集積化に伴い、サブミクロン領域又はクオーターミクロン領域の超微細パターン形成が要求されるようになってきている。それに伴い、露光波長もg線からi線に、更にKrFエキシマレーザー光に、というように短波長化の傾向が見られ、現在では193nm波長を有するArFエキシマレーザーを光源とする露光機が開発されている。また、更に解像力を高める技術として、従来から投影レンズと試料の間に高屈折率の液体(以下、「液浸液」ともいう)で満たす、所謂、液浸法の開発が進んでいる。
【0003】
また、現在では、エキシマレーザー光以外にも、電子線(EB)、X線及び極紫外線(EUV)等を用いたリソグラフィーも開発が進んでいる。
【0004】
特許文献1には、酸分解性基を有する樹脂と、特定の有機カチオン及び酸分解性基を有し窒素原子を有さない有機スルホン酸アニオンからなる塩と、特定の有機カチオン及び窒素原子を有さない有機スルホン酸アニオンからなる塩とを含有するレジスト組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、近年、形成されるパターンの更なる微細化などにより、パターン形成方法において解像力をより向上でき、現像欠陥をより低減できる感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物が求められている。さらに、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を調製した後一定期間が経過した場合にも解像力が高く、現像欠陥が少ない感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物が求められている。
【0007】
本発明の課題は、パターン形成方法において解像力が高く、現像欠陥が少なく、かつ感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を調製した後一定期間が経過した場合にも解像力が高く、現像欠陥が少ない感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、上記感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いた感活性光線性又は感放射線性膜、パターン形成方法、電子デバイスの製造方法、フォトマスク製造用感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、及びフォトマスクの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは鋭意検討し、以下の構成により上記課題を達成することができることを見出した。
<1>
酸の作用により現像液に対する溶解性が変化する樹脂(P)と、
酸の作用により分解し極性が変化する基(a)を有し、かつ活性光線又は放射線の照射により酸(ac1)を発生する化合物(A)と、
活性光線又は放射線の照射により、上記化合物(A)から発生する酸(ac1)よりpKaが高い酸(ac2)を発生する化合物(B)と、
塩基性化合物(C)と、
を含有する感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物であって、
上記化合物(A)が下記一般式(b3)で表され、
上記化合物(B)が下記一般式(B-1)で表さ
れ、
上記化合物(A)の含有量と上記化合物(B)の含有量との和に対する上記化合物(B)の含有量と上記塩基性化合物(C)の含有量との和の比である[(B)+(C)]/[(A)+(B)]が、モル比で0.3以上1.0以下である、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【化101】
一般式(b3)中、Lは単結合又は二価の連結基を表す。Lが複数存在するとき、複数のLは同一であっても異なっていてもよい。Aは酸の作用により分解し極性が変化する基(a)を表す。Aが複数存在するとき、複数のAは同一であっても異なっていてもよい。o、p及びqはそれぞれ独立に0から5の整数を表す。ただし、oとpとqの総和は1以上5以下である。M
+はスルホニウムイオン又はヨードニウムイオンを表す。
【化102】
一般式(B-1)中、R
51はアリール基を表し、M
+はスルホニウムカチオン又はヨードニウムカチオンを表す。
<2>
上記酸(ac2)のpKaが上記酸(ac1)のpKaより1以上高い<1>に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
<3>
上記塩基性化合物(C)の含有量に対する上記化合物(B)の含有量の比である(B)/(C)が、モル比で1.1以上10以下である<1>又は<2>に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
<
4>
上記化合物(A)の含有量が、上記感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物の全固形分に対して、5質量%以上60質量%以下である<1>~<
3>のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
<
5>
上記酸の作用により分解し極性が変化する基(a)が、下記一般式(T-1)で表される基である<1>~<
4>のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【化103】
一般式(T-1)中、
R
11は水素原子又はアルキル基を表す。
R
12は水素原子、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を表し、上記アルキル基及びシクロアルキル基は、エーテル結合又はカルボニル結合を含んでいてもよい。 R
13はアルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を表し、上記アルキル基及びシクロアルキル基は、エーテル結合又はカルボニル結合を含んでいてもよい。
R
11及びR
12は互いに結合して環を形成していても良い。
R
12及びR
13は互いに結合して環を形成していても良い。
*は結合手を表す。
<
6>
上記化合物(B)の含有量に対する上記化合物(A)の含有量の比である(A)/(B)が、モル比で0.2以上2.0以下である<1>~<
5>のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
<
7>
<1>~<
6>のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いて形成された感活性光線性又は感放射線性膜。
<
8>
<1>~<
6>のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いてレジスト膜を形成するレジスト膜形成工程と、上記レジスト膜を露光する露光工程と、露光された上記レジスト膜を、現像液を用いて現像する現像工程と、を含むパターン形成方法。
<
9>
<
8>に記載のパターン形成方法を含む、電子デバイスの製造方法。
<
10>
<1>~<
6>のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物をフォトマスク製造用に用いるフォトマスク製造用感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。 <
11>
<
10>に記載のフォトマスク製造用感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いるフォトマスクの製造方法。
本発明は、上記<1>~<
11>に関するものであるが、本明細書には参考のためその他の事項についても記載した。
【0009】
[1]
酸の作用により現像液に対する溶解性が変化する樹脂(P)と、
酸の作用により分解し極性が変化する基(a)を有し、かつ活性光線又は放射線の照射により酸(ac1)を発生する化合物(A)と、
活性光線又は放射線の照射により、上記化合物(A)から発生する酸(ac1)よりpKaが高い酸(ac2)を発生する化合物(B)と、
塩基性化合物(C)と、
を含有する感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
[2]
上記酸(ac2)のpKaが上記酸(ac1)のpKaより1以上高い[1]に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
[3]
上記塩基性化合物(C)の含有量に対する上記化合物(B)の含有量の比である(B)/(C)が、モル比で1.1以上10以下である[1]又は[2]に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
[4]
上記化合物(A)の含有量と上記化合物(B)の含有量との和に対する上記化合物(B)の含有量と上記塩基性化合物(C)の含有量との和の比である[(B)+(C)]/[(A)+(B)]が、モル比で0.3以上1.0以下である[1]~[3]のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
[5]
上記化合物(A)の含有量が、上記感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物の全固形分に対して、5質量%以上60質量%以下である[1]~[4]のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
[6]
上記化合物(A)が下記一般式(b1)で表される[1]~[5]のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【0010】
【0011】
一般式(b1)中、Lは単結合又は二価の連結基を表す。Lが複数存在するとき、複数のLは同一であっても異なっていてもよい。Aは酸の作用により分解し極性が変化する基(a)を表す。Aが複数存在するとき、複数のAは同一であっても異なっていてもよい。nは1から5の整数を表す。Xはn+1価の連結基を表す。M+はスルホニウムイオン又はヨードニウムイオンを表す。
[7]
上記化合物(A)が下記一般式(b3)で表される[1]~[6]のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【0012】
【0013】
一般式(b3)中、Lは単結合又は二価の連結基を表す。Lが複数存在するとき、複数のLは同一であっても異なっていてもよい。Aは酸の作用により分解し極性が変化する基(a)を表す。Aが複数存在するとき、複数のAは同一であっても異なっていてもよい。o、p及びqはそれぞれ独立に0から5の整数を表す。ただし、oとpとqの総和は1以上5以下である。M+はスルホニウムイオン又はヨードニウムイオンを表す。
[8]
上記酸の作用により分解し極性が変化する基(a)が、下記一般式(T-1)で表される基である[1]~[7]のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【0014】
【0015】
一般式(T-1)中、
R11は水素原子又はアルキル基を表す。
R12は水素原子、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を表し、上記アルキル基及びシクロアルキル基は、エーテル結合又はカルボニル結合を含んでいてもよい。
R13はアルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を表し、上記アルキル基及びシクロアルキル基は、エーテル結合又はカルボニル結合を含んでいてもよい。
R11及びR12は互いに結合して環を形成していても良い。
R12及びR13は互いに結合して環を形成していても良い。
*は結合手を表す。
[9]
上記化合物(B)の含有量に対する上記化合物(A)の含有量の比である(A)/(B)が、モル比で0.2以上2.0以下である[1]~[8]のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
[10]
[1]~[9]のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いて形成された感活性光線性又は感放射線性膜。
[11]
[1]~[9]のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いてレジスト膜を形成するレジスト膜形成工程と、上記レジスト膜を露光する露光工程と、露光された上記レジスト膜を、現像液を用いて現像する現像工程と、を含むパターン形成方法。
[12]
[11]に記載のパターン形成方法を含む、電子デバイスの製造方法。
[13]
[1]~[9]のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物をフォトマスク製造用に用いるフォトマスク製造用感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
[14]
[13]に記載のフォトマスク製造用感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いるフォトマスクの製造方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、パターン形成方法において解像力が高く、現像欠陥が少なく、かつ感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を調製した後一定期間が経過した場合にも解像力が高く、現像欠陥が少ない感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、上記感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いた感活性光線性又は感放射線性膜、パターン形成方法、電子デバイスの製造方法、フォトマスク製造用感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、及びフォトマスクの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されない。
本明細書中における「活性光線」又は「放射線」とは、例えば、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザーに代表される遠紫外線、極紫外線(EUV:Extreme Ultraviolet)、X線、軟X線、及び電子線(EB:Electron Beam)等を意味する。本明細書中における「光」とは、活性光線又は放射線を意味する。本明細書中における「露光」とは、特に断らない限り、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザーに代表される遠紫外線、極紫外線、X線、及びEUV等による露光のみならず、電子線、及びイオンビーム等の粒子線による描画も含む。
本明細書において、「~」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
【0018】
本明細書において、(メタ)アクリレートはアクリレート及びメタクリレートの少なくとも1種を表す。また(メタ)アクリル酸はアクリル酸及びメタクリル酸の少なくとも1種を表す。
本明細書において、樹脂の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、及び分散度(「分子量分布」ともいう。)(Mw/Mn)は、GPC(Gel Permeation Chromatography)装置(東ソー株式会社製HLC-8120GPC)によるGPC測定(溶剤:テトラヒドロフラン、流量(サンプル注入量):10μL、カラム:東ソー株式会社製TSK gel Multipore HXL-M、カラム温度:40℃、流速:1.0mL/分、検出器:示差屈折率検出器(Refractive Index Detector))によるポリスチレン換算値として定義される。
【0019】
本明細書中における基(原子団)の表記について、置換及び無置換を記していない表記は、置換基を有さない基と共に置換基を有する基をも包含する。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含する。また、本明細書中における「有機基」とは、少なくとも1個の炭素原子を含む基をいう。
【0020】
また、本明細書において、「置換基を有していてもよい」というときの置換基の種類、置換基の位置、及び、置換基の数は特に限定されない。置換基の数は例えば、1つ、2つ、3つ、又はそれ以上であってもよい。置換基の例としては水素原子を除く1価の非金属原子団を挙げることができ、例えば、以下の置換基Tから選択することができる。
【0021】
(置換基T)
置換基Tとしては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基及びtert-ブトキシ基等のアルコキシ基;フェノキシ基及びp-トリルオキシ基等のアリールオキシ基;メトキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基及びフェノキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基;アセトキシ基、プロピオニルオキシ基及びベンゾイルオキシ基等のアシルオキシ基;アセチル基、ベンゾイル基、イソブチリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基及びメトキサリル基等のアシル基;メチルスルファニル基及びtert-ブチルスルファニル基等のアルキルスルファニル基;フェニルスルファニル基及びp-トリルスルファニル基等のアリールスルファニル基;アルキル基;シクロアルキル基;アリール基;ヘテロアリール基;水酸基;カルボキシ基;ホルミル基;スルホ基;シアノ基;アルキルアミノカルボニル基;アリールアミノカルボニル基;スルホンアミド基;シリル基;アミノ基;モノアルキルアミノ基;ジアルキルアミノ基;アリールアミノ基、ニトロ基;ホルミル基;並びにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0022】
本明細書において表記される二価の基の結合方向は、特に断らない限り制限されない。例えば、「L-M-N」なる一般式で表される化合物中の、Mが-OCO-C(CN)=CH-である場合、L側に結合している位置を*1、N側に結合している位置を*2とすると、Mは、*1-OCO-C(CN)=CH-*2であってもよく、*1-CH=C(CN)-COO-*2であってもよい。
【0023】
本発明に係る感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物(以下、「本発明の組成物」ともいう。)は、
酸の作用により現像液に対する溶解性が変化する樹脂(P)と、
酸の作用により分解し極性が変化する基(a)を有し、かつ活性光線又は放射線の照射により酸(ac1)を発生する化合物(A)と、
活性光線又は放射線の照射により、上記化合物(A)から発生する酸(ac1)よりpKaが高い酸(ac2)を発生する化合物(B)と、
塩基性化合物(C)と、
を含有する。
【0024】
本発明の組成物は、レジスト組成物であることが好ましく、ポジ型のレジスト組成物であっても、ネガ型のレジスト組成物であってもよい。
本発明の組成物は、アルカリ現像用のレジスト組成物であっても、有機溶剤現像用のレジスト組成物であってもよい。
本発明の組成物は、ポジ型のレジスト組成物であり、アルカリ現像用のレジスト組成物であることが好ましい。
また、本発明の組成物は、化学増幅型のレジスト組成物であることが好ましく、化学増幅ポジ型レジスト組成物であることがより好ましい。
【0025】
本発明により上記課題が解決できるメカニズムは、完全には明らかになっていないが、本発明者らは以下のように推定している。
本発明の組成物に含まれる、酸の作用により分解し極性が変化する基(a)を有し、かつ活性光線又は放射線の照射により酸(ac1)を発生する化合物(A)は、基(a)として典型的には酸の作用により極性が増大する基を有するため、化合物(A)が露光されて分解した後の分解物はアルカリ現像液に容易に溶解することができ、現像欠陥の発生を抑制することができると考えられる。更に、露光部の現像液溶解性が高くなることで、露光部と未露光部の溶解コントラストが向上し、微細パターンの解像力を向上できるものと考えられる。更に、化合物(A)から発生する酸(ac1)よりpKaが高い酸(ac2)を発生する化合物(B)を併用することで、露光に対する酸発生剤の応答が向上し、微細パターンの解像力を更に向上できるものと考えられる。
また、本発明の組成物は、化合物(A)と化合物(B)に加えて、更に塩基性化合物(C)を含有することで、組成物の酸性を緩和することができ、調製後一定期間経過した後も、化合物(A)の基(a)が、組成物中で分解することを抑制することができると考えられる。その結果、調製後一定期間経過した後の分解物同士の極性相互作用に基づく凝集を抑制することができ、解像力の劣化や現像欠陥の悪化を抑制することができると考えられる。
酸の作用により架橋反応することでアルカリ現像液に対する溶解性が減少する樹脂と架橋剤を併用したネガ型のパターン形成においても上記と同様のメカニズムが考えらえる。
【0026】
[酸の作用により現像液に対する溶解性が変化する樹脂(P)]
酸の作用により現像液に対する溶解性が変化する樹脂(P)(単に「樹脂(P)」ともいう。)について説明する。
【0027】
樹脂(P)の好ましい態様の1つは、酸の作用により分解し、アルカリ現像液に対する溶解性が増大する樹脂である。
樹脂(P)は、酸の作用により分解し極性が増大する基(「酸分解性基」ともいう。)を有する樹脂(「酸分解性樹脂」ともいう。)であることが好ましい。
酸分解性樹脂は、酸分解性基を有しているため、酸の作用により分解し、アルカリ現像液に対する溶解性が増大する。
【0028】
また、樹脂(P)の別の好ましい態様の1つは、酸の作用によりアルカリ現像液に対する溶解性が減少する樹脂である。この態様の樹脂(P)は、酸の作用により架橋反応することでアルカリ現像液に対する溶解性が減少する樹脂であることが好ましい。なお、この態様の場合、本発明の組成物は架橋剤を含有することが好ましい。架橋剤については後述する。
【0029】
樹脂(P)は、酸分解性基を有する繰り返し単位を有することが好ましい。
【0030】
樹脂(P)としては、公知の樹脂を適宜使用することができる。例えば、米国特許出願公開2016/0274458A1号明細書の段落[0055]~[0191]、米国特許出願公開2015/0004544A1号明細書の段落[0035]~[0085]、米国特許出願公開2016/0147150A1号明細書の段落[0045]~[0090]に開示された公知の樹脂を樹脂(P)として好適に使用できる。
【0031】
上記酸分解性基は、極性基が酸の作用により分解し脱離する基(脱離基)で保護された構造を有することが好ましい。
上記極性基としては、例えば、カルボキシル基、フェノール性水酸基、フッ素化アルコール基、スルホン酸基、スルホンアミド基、スルホニルイミド基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)メチレン基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルカルボニル)メチレン基、ビス(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルスルホニル)メチレン基、ビス(アルキルスルホニル)イミド基、トリス(アルキルカルボニル)メチレン基、及び、トリス(アルキルスルホニル)メチレン基等の酸性基(典型的には、2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液中で解離する基)、並びに、アルコール性水酸基等が挙げられる。
【0032】
なお、アルコール性水酸基とは、炭化水素基に結合した水酸基であって、芳香環上に直接結合した水酸基(フェノール性水酸基)以外の水酸基をいい、水酸基としてα位がフッ素原子などの電子求引性基で置換された脂肪族アルコール(例えば、ヘキサフルオロイソプロパノール基など)は除く。アルコール性水酸基としては、pKa(酸解離定数)が12以上20以下の水酸基であることが好ましい。
【0033】
上記極性基としては、カルボキシル基、フェノール性水酸基、フッ素化アルコール基(好ましくはヘキサフルオロイソプロパノール基)、又は、スルホン酸基が好ましい。
【0034】
上記酸の作用により分解し脱離する基(脱離基)としては、例えば、式(Y1)~(Y4)で表される基が挙げられる。
式(Y1):-C(Rx1)(Rx2)(Rx3)
式(Y2):-C(=O)OC(Rx1)(Rx2)(Rx3)
式(Y3):-C(R36)(R37)(OR38)
式(Y4):-C(Rn)(H)(Ar)
【0035】
式(Y1)及び式(Y2)中、Rx1~Rx3は、各々独立に、アルキル基(直鎖状若しくは分岐鎖状)又はシクロアルキル基(単環若しくは多環)を表す。なお、Rx1~Rx3の全てがアルキル基(直鎖若しくは分岐)である場合、Rx1~Rx3のうち少なくとも2つはメチル基であることが好ましい。
なかでも、Rx1~Rx3は、各々独立に、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を表すことが好ましく、Rx1~Rx3は、各々独立に、直鎖状のアルキル基を表すことがより好ましい。
Rx1~Rx3の2つが結合して、単環又は多環を形成してもよい。
Rx1~Rx3のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、及び、t-ブチル基等の炭素数1~4のアルキル基が好ましい。
Rx1~Rx3のシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、及び、シクロヘキシル基等の単環のシクロアルキル基、並びに、ノルボルニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、及び、アダマンチル基等の多環のシクロアルキル基が好ましい。
Rx1~Rx3の2つが結合して形成されるシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、及び、シクロヘキシル基等の単環のシクロアルキル基、並びに、ノルボルニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、及び、アダマンチル基等の多環のシクロアルキル基が好ましく、炭素数5~6の単環のシクロアルキル基がより好ましい。
Rx1~Rx3の2つが結合して形成されるシクロアルキル基は、例えば、環を構成するメチレン基の1つが、酸素原子等のヘテロ原子、又は、カルボニル基等のヘテロ原子を有する基で置き換わっていてもよい。
式(Y1)又は式(Y2)で表される基は、例えば、Rx1がメチル基又はエチル基であり、Rx2とRx3とが結合して上述のシクロアルキル基を形成している態様が好ましい。
【0036】
式(Y3)中、R36~R38は、各々独立に、水素原子又は1価の有機基を表す。R37とR38とは、互いに結合して環を形成してもよい。1価の有機基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、及び、アルケニル基等が挙げられる。R36は水素原子であることも好ましい。
【0037】
式(Y3)としては、下記式(Y3-1)で表される基が好ましい。
【0038】
【0039】
ここで、L1及びL2は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、又は、これらを組み合わせた基(例えば、アルキル基とアリール基とを組み合わせた基)を表す。
Mは、単結合又は2価の連結基を表す。
Qは、ヘテロ原子を含んでいてもよいアルキル基、ヘテロ原子を含んでいてもよいシクロアルキル基、ヘテロ原子を含んでいてもよいアリール基、アミノ基、アンモニウム基、メルカプト基、シアノ基、アルデヒド基、又は、これらを組み合わせた基(例えば、アルキル基とシクロアルキル基とを組み合わせた基)を表す。
アルキル基及びシクロアルキル基は、例えば、メチレン基の1つが、酸素原子等のヘテロ原子、又は、カルボニル基等のヘテロ原子を有する基で置き換わっていてもよい。
なお、L1及びL2のうち一方は水素原子であり、他方はアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、又は、アルキレン基とアリール基とを組み合わせた基であることが好ましい。
Q、M、及び、L1の少なくとも2つが結合して環(好ましくは、5員若しくは6員環)を形成してもよい。
パターンの微細化の点では、L2が2級又は3級アルキル基であることが好ましく、3級アルキル基であることがより好ましい。2級アルキル基としては、イソプロピル基、シクロヘキシル基又はノルボルニル基が挙げられ、3級アルキル基としては、tert-ブチル基又はアダマンタン基を挙げることができる。これらの態様では、Tg(ガラス転移温度)や活性化エネルギーが高くなるため、膜強度の担保に加え、かぶりの抑制ができる。
【0040】
式(Y4)中、Arは、芳香環基を表す。Rnは、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を表す。RnとArとは互いに結合して非芳香族環を形成してもよい。Arはより好ましくはアリール基である。
【0041】
樹脂(P)は、アセタール構造を有することが好ましい。
酸分解性基は、アセタール構造を有することが好ましい。アセタール構造は、例えば、カルボキシル基、フェノール性水酸基、フッ素化アルコール基などの極性基が、上記式(Y3)で表される基で保護された構造である。
【0042】
酸分解性基を有する繰り返し単位としては、下記一般式(A)で表される繰り返し単位が好ましい。
【0043】
【0044】
一般式(A)中、L1は、2価の連結基を表し、R1~R3は、各々独立に、水素原子、又は1価の置換基を表し、R4は酸の作用によって分解し脱離する基を表す。
L1は、2価の連結基を表す。2価の連結基としては、-CO-、-O-、-S―、-SO-、―SO2-、炭化水素基(例えば、アルキレン基、シクロアルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基等)、及び、これらの複数が連結した連結基等が挙げられる。中でも、L1としては、-CO-、アリーレン基が好ましい。
アリーレン基としては、フェニレン基が好ましい。
アルキレン基は、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよい。アルキレン基の炭素数は特に制限されないが、1~10が好ましく、1~3がより好ましい。
【0045】
R1~R3は、各々独立に、水素原子又は1価の置換基を表す。1価の置換基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、又はハロゲン原子が挙げられる。
アルキル基は、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよい。アルキル基の炭素数は特に制限されないが、1~10が好ましく、1~3がより好ましい。
シクロアルキル基は、単環型であってもよく、多環型であってもよい。このシクロアルキル基の炭素数は、好ましくは3~8とする。
ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が挙げられる。
【0046】
R4は、酸の作用によって分解し脱離する基(脱離基)を表す。
中でも、脱離基としては、上記式(Y1)~(Y4)で表される基が挙げられ、上記式(Y3)で表される基が好ましい。
【0047】
上記各基が置換基を有する場合、置換基としては、例えば、アルキル基(炭素数1~4)、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基(炭素数1~4)、カルボキシル基、及び、アルコキシカルボニル基(炭素数2~6)等が挙げられる。置換基中の炭素数は、8以下が好ましい。
【0048】
酸分解性基を有する繰り返し単位としては、一般式(AI)で表される繰り返し単位も好ましい。
【0049】
【0050】
一般式(AI)において、
Xa1は、水素原子、又は、アルキル基を表す。
Tは、単結合、又は、2価の連結基を表す。
Rx1~Rx3は、それぞれ独立に、アルキル基(直鎖状、又は、分岐鎖状)、又は、シクロアルキル基(単環、又は、多環)を表す。ただし、Rx1~Rx3の全てがアルキル基(直鎖状、又は、分岐鎖状)である場合、Rx1~Rx3のうち少なくとも2つはメチル基であることが好ましい。
Rx1~Rx3の2つが結合して、シクロアルキル基(単環若しくは多環)を形成してもよい。
【0051】
Xa1により表される、アルキル基としては、例えば、メチル基又は-CH2-R11で表される基が挙げられる。R11は、ハロゲン原子(フッ素原子等)、水酸基又は1価の有機基を表し、例えば、炭素数5以下のアルキル基、及び、炭素数5以下のアシル基が挙げられ、炭素数3以下のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。Xa1としては、水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基、又は、ヒドロキシメチル基が好ましい。
【0052】
Tの2価の連結基としては、アルキレン基、芳香環基、-COO-Rt-基、及び、-O-Rt-基等が挙げられる。式中、Rtは、アルキレン基、又は、シクロアルキレン基を表す。
Tは、単結合又は-COO-Rt-基が好ましい。Tが-COO-Rt-基を表す場合、Rtは、炭素数1~5のアルキレン基が好ましく、-CH2-基、-(CH2)2-基、又は、-(CH2)3-基がより好ましい。
【0053】
Rx1~Rx3のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、及び、t-ブチル基等の炭素数1~4のアルキル基が好ましい。
Rx1~Rx3のシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、及び、シクロヘキシル基等の単環のシクロアルキル基、又は、ノルボルニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、及び、アダマンチル基等の多環のシクロアルキル基が好ましい。
Rx1~Rx3の2つが結合して形成されるシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、及び、シクロヘキシル基等の単環のシクロアルキル基が好ましく、その他にも、ノルボルニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、及び、アダマンチル基等の多環のシクロアルキル基が好ましい。中でも、炭素数5~6の単環のシクロアルキル基が好ましい。
Rx1~Rx3の2つが結合して形成されるシクロアルキル基は、例えば、環を構成するメチレン基の1つが、酸素原子等のヘテロ原子、又は、カルボニル基等のヘテロ原子を有する基で置き換わっていてもよい。
一般式(AI)で表される繰り返し単位は、例えば、Rx1がメチル基又はエチル基であり、Rx2とRx3とが結合して上述のシクロアルキル基を形成している態様が好ましい。
【0054】
上記各基が置換基を有する場合、置換基としては、例えば、アルキル基(炭素数1~4)、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基(炭素数1~4)、カルボキシル基、及び、アルコキシカルボニル基(炭素数2~6)等が挙げられる。置換基中の炭素数は、8以下が好ましい。
【0055】
一般式(AI)で表される繰り返し単位としては、好ましくは、酸分解性(メタ)アクリル酸3級アルキルエステル系繰り返し単位(Xa1が水素原子又はメチル基を表し、かつ、Tが単結合を表す繰り返し単位)である。
【0056】
樹脂(P)は、酸分解性基を有する繰り返し単位を、1種単独で含んでもよく、2種以上を併用して含んでもよい。
【0057】
樹脂(P)が酸分解性基を有する繰り返し単位を含有する場合、樹脂(P)に含まれる酸分解性基を有する繰り返し単位の含有量(酸分解性基を有する繰り返し単位が複数存在する場合はその合計)は、樹脂(P)の全繰り返し単位に対して、10~90モル%が好ましく、20~80モル%がより好ましく、30~70モル%が更に好ましい。
【0058】
(ラクトン基又はスルトン基を有する繰り返し単位)
樹脂(P)は、更にラクトン基又はスルトン基を有する繰り返し単位を有していてもよい。
ラクトン基又はスルトン基としては、ラクトン構造又はスルトン構造を有していればいずれの基でも用いることができるが、好ましくは5~7員環ラクトン構造又は5~7員環スルトン構造を有する基であり、5~7員環ラクトン構造にビシクロ構造、又は、スピロ構造を形成する形で他の環構造が縮環しているもの、又は5~7員環スルトン構造にビシクロ構造、又は、スピロ構造を形成する形で他の環構造が縮環しているもの、がより好ましい。下記一般式(LC1-1)~(LC1-21)のいずれかで表されるラクトン構造を有する基、又は下記一般式(SL1-1)~(SL1-3)のいずれかで表されるスルトン構造を有する基を有する繰り返し単位を有することがより好ましい。また、ラクトン構造又はスルトン構造を有する基が主鎖に直接結合していてもよい。好ましい構造としては、一般式(LC1-1)、一般式(LC1-4)、一般式(LC1-5)、一般式(LC1-6)、一般式(LC1-13)、及び、一般式(LC1-14)で表される基が好ましい。
【0059】
【0060】
ラクトン構造部分又はスルトン構造部分は、置換基(Rb2)を有していてもよい。好ましい置換基(Rb2)としては、炭素数1~8のアルキル基、炭素数4~7のシクロアルキル基、炭素数1~8のアルコキシ基、炭素数1~8のアルコキシカルボニル基、カルボキシル基、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基、及び、酸分解性基等が挙げられる。n2は、0~4の整数を表す。n2が2以上の時、複数存在するRb2は、異なっていてもよく、また、複数存在するRb2同士が結合して環を形成してもよい。
【0061】
ラクトン構造又はスルトン構造を有する基を有する繰り返し単位としては、例えば、下記一般式(AII)で表される繰り返し単位等が挙げられる。
【0062】
【0063】
一般式(AII)中、Rb0は、水素原子、ハロゲン原子、又は、炭素数1~4のアルキル基を表す。
Rb0のアルキル基が有していてもよい好ましい置換基としては、水酸基、及び、ハロゲン原子が挙げられる。
Rb0のハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及び、ヨウ素原子が挙げられる。Rb0は、水素原子又はメチル基が好ましい。
Abは、単結合、アルキレン基、単環又は多環の脂環炭化水素構造を有する2価の連結基、エーテル基、エステル基、カルボニル基、カルボキシル基、又は、これらを組み合わせた2価の基を表す。なかでも、単結合、又は、-Ab1-CO2-で表される連結基が好ましい。Ab1は、直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキレン基、又は、単環若しくは多環のシクロアルキレン基であり、メチレン基、エチレン基、シクロヘキシレン基、アダマンチレン基、又は、ノルボルニレン基が好ましい。
Vは、ラクトン構造又はスルトン構造を有する基を表す。
Vのラクトン構造又はスルトン構造を有する基としては、一般式(LC1-1)~(LC1-21)、一般式(SL1-1)~(SL1―3)のうちのいずれかで示される基が好ましい。
【0064】
ラクトン構造又はスルトン構造を有する基を有する繰り返し単位は、通常、光学異性体が存在するが、いずれの光学異性体を用いてもよい。また、1種の光学異性体を単独で用いても、複数の光学異性体を混合して用いてもよい。1種の光学異性体を主に用いる場合、その光学純度(ee)は90以上が好ましく、95以上がより好ましい。
【0065】
ラクトン構造又はスルトン構造を有する基を有する繰り返し単位の具体例を以下に挙げるが、本発明はこれらに限定されない。なお、式中RxはH、CH3、CH2OH、またはCF3を表す。
【0066】
【0067】
【0068】
ラクトン基又はスルトン基を有する繰り返し単位の含有量は、樹脂(P)中の全繰り返し単位に対し、1~60モル%が好ましく、5~50モル%がより好ましく、10~40モル%が更に好ましい。
【0069】
(酸基を有する繰り返し単位)
樹脂(P)は、酸基を有する繰り返し単位を有していてもよい。
酸基としては、酸解離定数(pKa)が13以下の酸基が好ましい。
上記pKaは、後述の化合物(A)が活性光線又は放射線の照射により発生する酸のpKaにおけるpKaと同義である。
【0070】
酸基を有する繰り返し単位としては、式(B)で表される繰り返し単位が好ましい。
【0071】
【0072】
R3は、水素原子、又は、1価の有機基を表す。
1価の有機基としては、-L4-R8で表される基が好ましい。L4は、単結合、又は、エステル基を表す。R8は、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、又は、これらを組み合わせた基が挙げられる。
【0073】
R4及びR5は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、又は、アルキル基を表す。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又は、ヨウ素原子が挙げられる。
【0074】
L2は、単結合、又は、エステル基を表す。
L3は、(n+m+1)価の芳香族炭化水素環基、又は、(n+m+1)価の脂環式炭化水素環基を表す。芳香族炭化水素環基としては、ベンゼン環基、及び、ナフタレン環基が挙げられる。脂環式炭化水素環基としては、単環であっても、多環であってもよく、例えば、シクロアルキル環基が挙げられる。
R6は、水酸基、又は、フッ素化アルコール基(好ましくは、ヘキサフルオロイソプロパノール基)を表す。なお、R6が水酸基の場合、L3は(n+m+1)価の芳香族炭化水素環基であることが好ましい。
R7は、ハロゲン原子を表す。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又は、ヨウ素原子が挙げられる。
mは、1以上の整数を表す。mは、1~3の整数が好ましく、1~2の整数が好ましい。
nは、0又は1以上の整数を表す。nは、1~4の整数が好ましい。
なお、(n+m+1)は、1~5の整数が好ましい。
【0075】
酸基を有する繰り返し単位としては、下記一般式(I)で表される繰り返し単位が好ましい。
樹脂(P)が下記一般式(I)で表される繰り返し単位を含有し、かつ本発明の組成物が架橋剤を含有する場合、酸の作用により樹脂(P)と架橋剤とが反応し、樹脂(P)のアルカリ現像液に対する溶解性が減少する。
【0076】
【0077】
一般式(I)中、
R41、R42及びR43は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基又はアルコキシカルボニル基を表す。但し、R42はAr4と結合して環を形成していてもよく、その場合のR42は単結合又はアルキレン基を表す。
X4は、単結合、-COO-、又は-CONR64-を表し、R64は、水素原子又はアルキル基を表す。
L4は、単結合又はアルキレン基を表す。
Ar4は、(n+1)価の芳香環基を表し、R42と結合して環を形成する場合には(n+2)価の芳香環基を表す。
nは、1~5の整数を表す。
【0078】
一般式(I)におけるR41、R42、及び、R43のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、オクチル基、及び、ドデシル基等の炭素数20以下のアルキル基が好ましく、炭素数8以下のアルキル基がより好ましく、炭素数3以下のアルキル基が更に好ましい。
【0079】
一般式(I)におけるR41、R42、及び、R43のシクロアルキル基としては、単環型でも、多環型でもよい。なかでも、シクロプロピル基、シクロペンチル基、及び、シクロヘキシル基等の炭素数3~8個で単環型のシクロアルキル基が好ましい。
一般式(I)におけるR41、R42、及び、R43のハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及び、ヨウ素原子が挙げられ、フッ素原子が好ましい。
一般式(I)におけるR41、R42、及び、R43のアルコキシカルボニル基に含まれるアルキル基としては、上記R41、R42、R43におけるアルキル基と同様のものが好ましい。
【0080】
上記各基における好ましい置換基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アミノ基、アミド基、ウレイド基、ウレタン基、水酸基、カルボキシル基、ハロゲン原子、アルコキシ基、チオエーテル基、アシル基、アシロキシ基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、及び、ニトロ基が挙げられる。置換基の炭素数は8以下が好ましい。
【0081】
Ar4は、(n+1)価の芳香環基を表す。nが1である場合における2価の芳香環基は、置換基を有していてもよく、例えば、フェニレン基、トリレン基、ナフチレン基、及び、アントラセニレン基等の炭素数6~18のアリーレン基、又は、チオフェン環、フラン環、ピロール環、ベンゾチオフェン環、ベンゾフラン環、ベンゾピロール環、トリアジン環、イミダゾール環、ベンゾイミダゾール環、トリアゾール環、チアジアゾール環、及び、チアゾール環等のヘテロ環を含む芳香環基が好ましい。
【0082】
nが2以上の整数である場合における(n+1)価の芳香環基の具体例としては、2価の芳香環基の上記した具体例から、(n-1)個の任意の水素原子を除してなる基が挙げられる。
(n+1)価の芳香環基は、更に置換基を有していてもよい。
【0083】
上述したアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシカルボニル基、アルキレン基、及び、(n+1)価の芳香環基が有し得る置換基としては、例えば、一般式(I)におけるR41、R42、及び、R43で挙げたアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、ヒドロキシエトキシ基、プロポキシ基、ヒドロキシプロポキシ基、及び、ブトキシ基等のアルコキシ基;フェニル基等のアリール基;等が挙げられる。
X4により表わされる-CONR64-(R64は、水素原子又はアルキル基を表す)におけるR64のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、オクチル基、及び、ドデシル基等の炭素数20以下のアルキル基が挙げられ、炭素数8以下のアルキル基が好ましい。
X4としては、単結合、-COO-、又は、-CONH-が好ましく、単結合、又は、-COO-がより好ましい。
【0084】
L4におけるアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基、及び、オクチレン基等の炭素数1~8のアルキレン基が好ましい。
Ar4としては、炭素数6~18の芳香環基が好ましく、ベンゼン環基、ナフタレン環基、及び、ビフェニレン環基がより好ましい。
一般式(I)で表される繰り返し単位は、ヒドロキシスチレン構造を備えていることが好ましい。即ち、Ar4は、ベンゼン環基であることが好ましい。
【0085】
一般式(I)で表される繰り返し単位としては、下記一般式(1)で表される繰り返し単位が好ましい。
【0086】
【0087】
一般式(1)中、
A1は水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、又はシアノ基を表す。
Rは、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルケニル基、アラルキル基、アルコキシ基、アルキルカルボニルオキシ基、アルキルスルホニルオキシ基、アルキルオキシカルボニル基又はアリールオキシカルボニル基を表し、複数個ある場合には同じであっても異なっていてもよい。複数のRを有する場合には、互いに共同して環を形成していてもよい。Rとしては水素原子が好ましい。
aは1~3の整数を表す。
bは0~(3-a)の整数を表す。
【0088】
以下、一般式(I)で表される繰り返し単位の具体例を示すが、本発明は、これに限定されるものではない。式中、aは1、2又は3を表す。
【0089】
【0090】
【0091】
【0092】
上記酸基を有する繰り返し単位としては、以下に具体的に記載する繰り返し単位が好ましい。式中、Rは水素原子又はメチル基を表し、aは1、2又は3を表す。
【0093】
【0094】
【0095】
酸基を有する繰り返し単位の含有量は、樹脂(P)中の全繰り返し単位に対し、10~80モル%が好ましく、15~75モル%がより好ましく、20~70モル%が更に好ましい。
【0096】
樹脂(P)は、上記した繰り返し構造単位以外にも、ドライエッチング耐性、標準現像液適性、基板密着性、レジストプロファイル、解像力、耐熱性、感度等を調節する目的などによって、様々な繰り返し単位を有していてもよい。
【0097】
樹脂(P)は、常法(例えばラジカル重合)に従って合成できる。一般的な合成方法としては、例えば、(1)モノマー種及び開始剤を溶剤に溶解させ、加熱することにより重合を行う一括重合法、(2)モノマー種と開始剤を含有する溶液を1~10時間かけて滴下することにより加熱溶剤へ加える滴下重合法等が挙げられる。
【0098】
樹脂(P)の重量平均分子量(Mw)は、1,000~200,000が好ましく、2,000~30,000がより好ましく、3,000~25,000が更に好ましい。分散度(Mw/Mn)は、通常1.0~3.0であり、1.0~2.6が好ましく、1.0~2.0がより好ましく、1.1~2.0が更に好ましい。
【0099】
樹脂(P)は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明の組成物中、樹脂(P)の含有量は、全固形分中に対して、通常20質量%以上の場合が多く、40質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、60質量%以上が更に好ましい。上限は特に制限されないが、99.5質量%以下が好ましく、99質量%以下がより好ましく、98質量%以下が更に好ましい。
なお、本発明の組成物の全固形分とは、溶剤を除く他の成分(感活性光線性又は感放射線性膜を構成し得る成分)を意図する。
【0100】
[酸の作用により分解し極性が変化する基(a)を有し、かつ活性光線又は放射線の照射により酸(ac1)を発生する化合物(A)]
本発明の組成物が含有する、酸の作用により分解し極性が変化する基(a)を有し、かつ活性光線又は放射線の照射により酸(ac1)を発生する化合物(A)(単に「化合物(A)」又は「光酸発生剤(A)」ともいう。)について説明する。
化合物(A)は、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物(光酸発生剤)である。
化合物(A)の分子量は特に限定されないが、例えば5000以下であり、3000以下であることが好ましく、2000以下であることがより好ましい。
化合物(A)は繰り返し単位を有さない化合物であることが好ましい。
【0101】
化合物(A)が有する酸の作用により分解し極性が変化する基(a)(単に「基(a)」ともいう。)は、好ましくは酸の作用により分解し極性が増大する基(酸分解性基)である。
化合物(A)が有する基(a)が酸分解性基である場合、化合物(A)は酸の作用により分解し、アルカリ現像液中での溶解度が増大する。
【0102】
上記酸分解性基は、極性基が酸の作用により分解し脱離する基(脱離基)で保護された構造を有することが好ましい。
上記極性基としては、例えば、カルボキシル基、フェノール性水酸基、フッ素化アルコール基、スルホン酸基、スルホンアミド基、スルホニルイミド基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)メチレン基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルカルボニル)メチレン基、ビス(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルスルホニル)メチレン基、ビス(アルキルスルホニル)イミド基、トリス(アルキルカルボニル)メチレン基、及び、トリス(アルキルスルホニル)メチレン基等の酸性基(典型的には、2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液中で解離する基)、並びに、アルコール性水酸基等が挙げられる。
【0103】
なお、アルコール性水酸基とは、炭化水素基に結合した水酸基であって、芳香環上に直接結合した水酸基(フェノール性水酸基)以外の水酸基をいい、水酸基としてα位がフッ素原子などの電子求引性基で置換された脂肪族アルコール(例えば、ヘキサフルオロイソプロパノール基など)は除く。アルコール性水酸基としては、pKa(酸解離定数)が12以上20以下の水酸基であることが好ましい。
【0104】
上記極性基としては、カルボキシル基、フェノール性水酸基、フッ素化アルコール基(好ましくはヘキサフルオロイソプロパノール基)、又は、スルホン酸基が好ましい。
【0105】
上記酸の作用により分解し脱離する基(脱離基)としては、例えば、式(Y1)~(Y4)で表される基が挙げられる。
式(Y1):-C(Rx1)(Rx2)(Rx3)
式(Y2):-C(=O)OC(Rx1)(Rx2)(Rx3)
式(Y3):-C(R36)(R37)(OR38)
式(Y4):-C(Rn)(H)(Ar)
【0106】
式(Y1)及び式(Y2)中、Rx1~Rx3は、各々独立に、アルキル基(直鎖状若しくは分岐鎖状)又はシクロアルキル基(単環若しくは多環)を表す。なお、Rx1~Rx3の全てがアルキル基(直鎖若しくは分岐)である場合、Rx1~Rx3のうち少なくとも2つはメチル基であることが好ましい。
なかでも、Rx1~Rx3は、各々独立に、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を表すことが好ましく、Rx1~Rx3は、各々独立に、直鎖状のアルキル基を表すことがより好ましい。
Rx1~Rx3の2つが結合して、単環又は多環を形成してもよい。
Rx1~Rx3のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、及び、t-ブチル基等の炭素数1~4のアルキル基が好ましい。
Rx1~Rx3のシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、及び、シクロヘキシル基等の単環のシクロアルキル基、並びに、ノルボルニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、及び、アダマンチル基等の多環のシクロアルキル基が好ましい。
Rx1~Rx3の2つが結合して形成されるシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、及び、シクロヘキシル基等の単環のシクロアルキル基、並びに、ノルボルニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、及び、アダマンチル基等の多環のシクロアルキル基が好ましく、炭素数5~6の単環のシクロアルキル基がより好ましい。
Rx1~Rx3の2つが結合して形成されるシクロアルキル基は、例えば、環を構成するメチレン基の1つが、酸素原子等のヘテロ原子、又は、カルボニル基等のヘテロ原子を有する基で置き換わっていてもよい。
式(Y1)又は式(Y2)で表される基は、例えば、Rx1がメチル基又はエチル基であり、Rx2とRx3とが結合して上述のシクロアルキル基を形成している態様が好ましい。
【0107】
式(Y3)中、R36~R38は、各々独立に、水素原子又は1価の有機基を表す。R37とR38とは、互いに結合して環を形成してもよい。1価の有機基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、及び、アルケニル基等が挙げられる。R36は水素原子であることも好ましい。
【0108】
式(Y3)としては、下記式(Y3-1)で表される基が好ましい。
【0109】
【0110】
ここで、L1及びL2は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、又は、これらを組み合わせた基(例えば、アルキル基とアリール基とを組み合わせた基)を表す。
Mは、単結合又は2価の連結基を表す。
Qは、ヘテロ原子を含んでいてもよいアルキル基、ヘテロ原子を含んでいてもよいシクロアルキル基、ヘテロ原子を含んでいてもよいアリール基、アミノ基、アンモニウム基、メルカプト基、シアノ基、アルデヒド基、又は、これらを組み合わせた基(例えば、アルキル基とシクロアルキル基とを組み合わせた基)を表す。
アルキル基及びシクロアルキル基は、例えば、メチレン基の1つが、酸素原子等のヘテロ原子、又は、カルボニル基等のヘテロ原子を有する基で置き換わっていてもよい。
なお、L1及びL2のうち一方は水素原子であり、他方はアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、又は、アルキレン基とアリール基とを組み合わせた基であることが好ましい。
Q、M、及び、L1の少なくとも2つが結合して環(好ましくは、5員若しくは6員環)を形成してもよい。
パターンの微細化の点では、L2が2級又は3級アルキル基であることが好ましく、3級アルキル基であることがより好ましい。2級アルキル基としては、イソプロピル基、シクロヘキシル基又はノルボルニル基が挙げられ、3級アルキル基としては、tert-ブチル基又はアダマンタン基を挙げることができる。これらの態様では、Tg(ガラス転移温度)や活性化エネルギーが高くなるため、膜強度の担保に加え、かぶりの抑制ができる。
【0111】
式(Y4)中、Arは、芳香環基を表す。Rnは、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を表す。RnとArとは互いに結合して非芳香族環を形成してもよい。Arはより好ましくはアリール基である。
【0112】
化合物(A)が有する基(a)は、アセタール構造を有することが好ましい。
アセタール構造は、例えば、カルボキシル基、フェノール性水酸基、フッ素化アルコール基などの極性基が、上記式(Y3)で表される基で保護された構造である。
【0113】
化合物(A)が有する基(a)は、下記一般式(T-1)で表される基であることが特に好ましい。
【0114】
【0115】
一般式(T-1)中、
R11は水素原子又はアルキル基を表す。
R12は水素原子、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を表し、上記アルキル基及びシクロアルキル基は、エーテル結合又はカルボニル結合を含んでいてもよい。
R13はアルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を表し、上記アルキル基及びシクロアルキル基は、エーテル結合又はカルボニル結合を含んでいてもよい。
R11及びR12は互いに結合して環を形成していても良い。
R12及びR13は互いに結合して環を形成していても良い。
*は結合手を表す。
【0116】
一般式(T-1)で表される基については後述する。
【0117】
化合物(A)は、下記一般式(b1)で表される化合物であることが好ましい。
【0118】
【0119】
一般式(b1)中、Lは単結合又は二価の連結基を表す。Lが複数存在するとき、複数のLは同一であっても異なっていてもよい。Aは酸の作用により分解し極性が変化する基(a)を表す。Aが複数存在するとき、複数のAは同一であっても異なっていてもよい。nは1から5の整数を表す。Xはn+1価の連結基を表す。M+はスルホニウムイオン又はヨードニウムイオンを表す。
【0120】
一般式(b1)中、Xはn+1価の連結基を表す。
Xが表す連結基としては、特に限定されないが、例えば、脂肪族基(直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい)、芳香族基、-O-、-CO-、-COO-、-OCO-、及び、これらの2つ以上の基を組み合わせた基が挙げられる。
上記脂肪族基としては、アルキル基(直鎖状でも分岐状でも良く、好ましくは炭素数1~20、より好ましくは炭素数1~10のアルキル基)のn個の水素原子を取り除いてなる基、及びシクロアルキル基(単環でも多環でもよく、好ましくは炭素数3~20、より好ましくは炭素数5~10のシクロアルキル基)のn個の水素原子を取り除いてなる基が好ましい。
上記脂肪族基は置換基を有していても良く、置換基としては、例えば、上記置換基Tが挙げられる。
上記脂肪族基は、炭素-炭素原子間にヘテロ原子(例えば、硫黄原子、酸素原子、窒素原子等)を有していても良い。
【0121】
上記芳香族基としては、アリール基(好ましくは炭素数6~20、より好ましくは炭素数6~10のアリール基)のn個の水素原子を取り除いてなる基が好ましい。
上記芳香族基は置換基を有していても良く、置換基としては、例えば、上記置換基Tが挙げられる。
上記芳香族基は、炭素-炭素原子間にヘテロ原子(例えば、硫黄原子、酸素原子、窒素原子等)を有していても良い。
【0122】
Xは、n+1価の芳香族基であることが好ましい。
【0123】
一般式(b1)中、nは1から5の整数を表し、1から3の整数を表すことが好ましく、2又は3を表すことがより好ましく、3を表すことが更に好ましい。
【0124】
一般式(b1)中、Lは単結合又は二価の連結基を表す。
Lが表す二価の連結基としては、特に限定されないが、例えば、脂肪族基(直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい)、芳香族基、-O-、-CO-、-COO-、-OCO-、及び、これらの2つ以上の基を組み合わせた基が挙げられる。
上記脂肪族基としては、アルキレン基(直鎖状でも分岐状でも良く、好ましくは炭素数1~20、より好ましくは炭素数1~10のアルキレン基)、及びシクロアルキレン基(単環でも多環でもよく、好ましくは炭素数3~20、より好ましくは炭素数5~10のシクロアルキレン基)が好ましい。
上記脂肪族基は置換基を有していても良く、置換基としては、例えば、上記置換基Tが挙げられる。
上記脂肪族基は、炭素-炭素原子間にヘテロ原子(例えば、硫黄原子、酸素原子、窒素原子等)を有していても良い。
【0125】
上記芳香族基としては、アリーレン基(好ましくは炭素数6~20、より好ましくは炭素数6~10のアリーレン基)が好ましい。
上記芳香族基は置換基を有していても良く、置換基としては、例えば、上記置換基Tが挙げられる。
上記芳香族基は、炭素-炭素原子間にヘテロ原子(例えば、硫黄原子、酸素原子、窒素原子等)を有していても良い。
【0126】
Lは、アリーレン基であることが好ましい。
【0127】
一般式(b1)中、Aは酸の作用により分解し極性が変化する基(a)を表し、酸分解性基を表すことが好ましい。酸分解性基の具体例及び好ましい範囲については前述したとおりである。
Aは、下記一般式(T-1)で表される基及び下記一般式(T-2)で表される基よりなる群から選択される少なくとも1種の基であることが特に好ましく、下記一般式(T-1)で表される基であることが最も好ましい。
【0128】
【0129】
一般式(T-1)中、
R11は水素原子又はアルキル基を表す。
R12は水素原子、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を表し、上記アルキル基及びシクロアルキル基は、エーテル結合又はカルボニル結合を含んでいてもよい。
R13はアルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を表し、上記アルキル基及びシクロアルキル基は、エーテル結合又はカルボニル結合を含んでいてもよい。
R11及びR12は互いに結合して環を形成していても良い。
R12及びR13は互いに結合して環を形成していても良い。
*は結合手を表す。
一般式(T-2)中、
R21、R22及びR23は、各々独立に、アルキル基を表す。
R21~R23のうちの2つが互いに結合して環を形成しても良い。
*は結合手を表す。
【0130】
一般式(T-1)中、R11は水素原子又はアルキル基を表す。
R11がアルキル基を表す場合、アルキル基としては、直鎖状でも分岐状でも良く、好ましくは炭素数1~10、より好ましくは炭素数1~5、更に好ましくは炭素数1~3のアルキル基である。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、へキシル基、オクチル基等を挙げることができる。
上記アルキル基は置換基を有していても良く、置換基としては、例えば、上記置換基Tが挙げられる。
R11は水素原子又は炭素数1~3のアルキル基であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。
【0131】
一般式(T-1)中、R12は水素原子、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を表す。
R12がアルキル基を表す場合、アルキル基としては、直鎖状でも分岐状でも良く、好ましくは炭素数1~10、より好ましくは炭素数1~5のアルキル基である。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、へキシル基、オクチル基等を挙げることができる。
上記アルキル基は置換基を有していても良く、置換基としては、例えば、上記置換基Tが挙げられる。
上記アルキル基は、エーテル結合又はカルボニル結合を含んでいてもよい。
【0132】
R12がシクロアルキル基を表す場合、シクロアルキル基としては、単環でも多環でも良く、好ましくは炭素数3~20、より好ましくは炭素数5~15、更に好ましくは炭素数5~10のシクロアルキル基である。シクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロオクチル基、アダマンチル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、カンファニル基、ジシクロペンチル基、α-ピネル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロドデシル基、アンドロスタニル基等を挙げることができる。
上記シクロアルキル基は置換基を有していても良く、置換基としては、例えば、上記置換基Tが挙げられる。
上記シクロアルキル基は、エーテル結合又はカルボニル結合を含んでいてもよい。
【0133】
R12がアリール基を表す場合、アリール基としては、好ましくは炭素数6~20、より好ましくは炭素数6~15、更に好ましくは炭素数6~10のアリール基である。アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等を挙げることができる。
上記アリール基は置換基を有していても良く、置換基としては、例えば、上記置換基Tが挙げられる。
【0134】
R12が水素原子又は炭素数1~5のアルキル基であることが好ましい。
【0135】
一般式(T-1)中、R13はアルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を表す。
R13が表すアルキル基、シクロアルキル基又はアリール基は、上記R12が表すものとして記載したアルキル基、シクロアルキル基又はアリール基と同様である。
R13は炭素数1~5のアルキル基であることが好ましい。
【0136】
R11及びR12は互いに結合して環を形成していても良い。
R11及びR12が互いに結合して形成される環としては、脂肪族環であることが好ましい。
上記脂肪族環としては、炭素数3~20のシクロアルカンであることが好ましく、炭素数5~15のシクロアルカンであることがより好ましい。上記シクロアルカンは単環でも多環でもよい。
上記脂肪族環は置換基を有していても良く、置換基としては、例えば、上記置換基Tが挙げられる。
上記脂肪族環は、炭素-炭素原子間にヘテロ原子(例えば、硫黄原子、酸素原子、窒素原子等)を有していても良い。
【0137】
R12及びR13は互いに結合して環を形成していても良い。
R12及びR13が互いに結合して形成される環としては、環員に酸素原子を含む脂肪族環であることが好ましい。
上記脂肪族環としては、炭素数3~20であることが好ましく、炭素数5~15であることがより好ましい。上記脂肪族環は単環でも多環でもよい。
上記脂肪族環は置換基を有していても良く、置換基としては、例えば、上記置換基Tが挙げられる。
上記脂肪族環は、炭素-炭素原子間に酸素原子以外のヘテロ原子(例えば、硫黄原子、窒素原子等)を有していても良い。
【0138】
一般式(T-1)中、R11及びR12は互いに結合しておらず、かつ、R12及びR13は互いに結合して環を形成している態様は本発明において好ましい態様の1つである。
【0139】
一般式(T-2)中、R21、R22及びR23は、各々独立に、アルキル基を表す。
R21、R22及びR23がアルキル基を表す場合、アルキル基としては特に限定されず、直鎖状でも分岐状でもよい。上記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基等の炭素数1~4のアルキル基が好ましい。
上記アルキル基は置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、アリール基(例えば炭素数6~15)、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基(例えば炭素数1~4)、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基(例えば炭素数2~6)等が挙げられる。置換基中の炭素数は8以下が好ましい。
【0140】
R21~R23のうちの2つが互いに結合して環を形成しても良い。
R21~R23のうちの2つが互いに結合して環を形成する場合、R21~R23のうちの2つが互いに結合してシクロアルキル基を形成することが好ましい。上記シクロアルキル基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の単環のシクロアルキル基でも良いし、ノルボルニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、アダマンチル基等の多環のシクロアルキル基でも良い。その中でも、炭素数5~6の単環のシクロアルキル基が好ましい。
上記シクロアルキル基は、例えば、環を構成するメチレン基の1つが、酸素原子等のヘテロ原子、又は、カルボニル基等のヘテロ原子を有する基で置き換わっていてもよい。
【0141】
一般式(b1)中、M+はスルホニウムイオン又はヨードニウムイオンを表す。
M+が表すスルホニウムイオン又はヨードニウムイオンは、窒素原子を有さないことが好ましい。
【0142】
M+は特に限定されないが、下記一般式(ZIA)、又は一般式(ZIIA)で表されるカチオンが好ましい。
【0143】
【0144】
上記一般式(ZIA)において、
R201、R202及びR203は、各々独立に、有機基を表す。
R201、R202及びR203としての有機基の炭素数は、一般的に1~30であり、好ましくは1~20である。
また、R201~R203のうち2つが結合して環構造を形成してもよく、環内に酸素原子、硫黄原子、エステル結合、アミド結合、又はカルボニル基を含んでいてもよい。R201~R203の内の2つが結合して形成する基としては、アルキレン基(例えば、ブチレン基、ペンチレン基)及び-CH2-CH2-O-CH2-CH2-が挙げられる。
【0145】
一般式(ZIA)としてのカチオンの好適な態様としては、後述するカチオン(ZI-11)、カチオン(ZI-12)、一般式(ZI-13)で表されるカチオン(カチオン(ZI-13))及び一般式(ZI-14)で表されるカチオン(カチオン(ZI-14))が挙げられる。
nが2以上の場合における2価以上のカチオンは、一般式(ZIA)で表される構造を複数有するカチオンであってもよい。このようなカチオンとしては、例えば、一般式(ZIA)で表されるカチオンのR201~R203の少なくとも1つと、一般式(ZIA)で表されるもうひとつのカチオンのR201~R203の少なくとも一つとが、単結合又は連結基を介して結合した構造を有する2価のカチオンなどを挙げることができる。
【0146】
まず、カチオン(ZI-11)について説明する。
カチオン(ZI-11)は、上記一般式(ZIA)のR201~R203の少なくとも1つがアリール基である、カチオンすなわち、アリールスルホニウムカチオンである。
アリールスルホニウムカチオンは、R201~R203の全てがアリール基でもよいし、R201~R203の一部がアリール基であり、残りがアルキル基又はシクロアルキル基であってもよい。
アリールスルホニウムカチオンとしては、例えば、トリアリールスルホニウムカチオン、ジアリールアルキルスルホニウムカチオン、アリールジアルキルスルホニウムカチオン、ジアリールシクロアルキルスルホニウムカチオン、及びアリールジシクロアルキルスルホニウムカチオンが挙げられる。
【0147】
アリールスルホニウムカチオンに含まれるアリール基としては、フェニル基、又はナフチル基が好ましく、フェニル基がより好ましい。アリール基は、酸素原子、窒素原子、又は硫黄原子等を有する複素環構造を有するアリール基であってもよい。複素環構造としては、ピロール残基、フラン残基、チオフェン残基、インドール残基、ベンゾフラン残基、及びベンゾチオフェン残基等が挙げられる。アリールスルホニウムカチオンが2つ以上のアリール基を有する場合に、2つ以上あるアリール基は同一であっても異なっていてもよい。
アリールスルホニウムカチオンが必要に応じて有しているアルキル基又はシクロアルキル基は、炭素数1~15の直鎖状アルキル基、炭素数3~15の分岐鎖状アルキル基、又は炭素数3~15のシクロアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、及びシクロヘキシル基等が挙げられる。
【0148】
R201~R203のアリール基、アルキル基、及びシクロアルキル基は、各々独立に、アルキル基(例えば炭素数1~15)、シクロアルキル基(例えば炭素数3~15)、アリール基(例えば炭素数6~14)、アルコキシ基(例えば炭素数1~15)、ハロゲン原子、水酸基、ラクトン環基又はフェニルチオ基を置換基として有してもよい。
ラクトン環基としては、例えば、後述する(KA-1-1)~(KA-1-17)のいずれかで表される構造から水素原子を除した基が挙げられる。
【0149】
次に、カチオン(ZI-12)について説明する。
カチオン(ZI-12)は、式(ZIA)におけるR201~R203が、各々独立に、芳香環を有さない有機基を表す化合物である。ここで芳香環とは、ヘテロ原子を含む芳香族環も包含する。
R201~R203としての芳香環を有さない有機基は、一般的に炭素数1~30であり、炭素数1~20が好ましい。
R201~R203は、各々独立に、好ましくはアルキル基、シクロアルキル基、アリル基、又はビニル基であり、より好ましくは直鎖状又は分岐鎖状の2-オキソアルキル基、2-オキソシクロアルキル基、又はアルコキシカルボニルメチル基、更に好ましくは直鎖状又は分岐鎖状の2-オキソアルキル基である。
【0150】
R201~R203のアルキル基及びシクロアルキル基としては、好ましくは、炭素数1~10の直鎖状アルキル基又は炭素数3~10の分岐鎖状アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、及びペンチル基)、及び、炭素数3~10のシクロアルキル基(例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基、及びノルボルニル基)が挙げられる。
R201~R203は、ハロゲン原子、アルコキシ基(例えば炭素数1~5)、水酸基、シアノ基、又はニトロ基によって更に置換されていてもよい。
【0151】
次に、カチオン(ZI-13)について説明する。
【0152】
【0153】
一般式(ZI-13)中、Q1は、アルキル基、シクロアルキル基、又はアリール基を表し、環構造を有するとき、上記環構造は、酸素原子、硫黄原子、エステル結合、アミド結合、及び炭素-炭素二重結合の少なくとも1種を含んでいてもよい。R6c及びR7cは、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基又はアリール基を表す。R6cとR7cとが結合して環を形成してもよい。Rx及びRyは、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、又はアルケニル基を表す。Rx及びRyが結合して環を形成してもよい。また、Q1、R6c及びR7cから選ばれる少なくとも2つが結合して環構造を形成してもよく、上記環構造に炭素-炭素二重結合を含んでいてもよい。
【0154】
一般式(ZI-13)中、Q1で表されるアルキル基及びシクロアルキル基としては、炭素数1~15(好ましくは炭素数1~10)の直鎖状アルキル基、炭素数3~15(好ましくは炭素数3~10)の分岐鎖状アルキル基、又は炭素数3~15(好ましくは炭素数1~10)のシクロアルキル基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、及びシクロヘキシル基、及びノルボルニル基等が挙げられる。
Q1で表されるアリール基としては、フェニル基、又はナフチル基が好ましく、フェニル基がより好ましい。アリール基は、酸素原子又は硫黄原子等を有する複素環構造を有するアリール基であってもよい。複素環構造としては、フラン環、チオフェン環、ベンゾフラン環、及びベンゾチオフェン環等が挙げられる。
【0155】
上記Q1は、更に置換基を有していてもよい。この態様として、例えば、Q1としてベンジル基などが挙げられる。
なお、Q1が環構造を有する場合、上記環構造は、酸素原子、硫黄原子、エステル結合、アミド結合、及び、炭素-炭素二重結合の少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0156】
R6c及びR7cで表されるアルキル基、シクロアルキル基、及びアリール基としては、上述したQ1と同様のものが挙げられ、その好ましい態様も同じである。また、R6cとR7cは、結合して環を形成してもよい。
R6c及びR7cで表されるハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が挙げられる。
【0157】
Rx及びRyで表されるアルキル基、及びシクロアルキル基としては、上述したQ1と同様のものが挙げられ、その好ましい態様も同じである。
Rx及びRyで表されるアルケニル基としては、アリル基又はビニル基が好ましい。
上記Rx及びRyは、更に置換基を有していてもよい。この態様として、例えば、Rx及びRyとして2-オキソアルキル基又はアルコキシカルボニルアルキル基などが挙げられる。
Rx及びRyで表される2-オキソアルキル基としては、例えば、炭素数1~15(好ましくは炭素数1~10)のものが挙げられ、具体的には、2-オキソプロピル基、及び2-オキソブチル基等が挙げられる。
Rx及びRyで表されるアルコキシカルボニルアルキル基としては、例えば、炭素数1~15(好ましくは炭素数1~10)のものが挙げられる。また、RxとRyは、結合して環を形成してもよい。
RxとRyとが互いに連結して形成される環構造は、酸素原子、硫黄原子、エステル結合、アミド結合、又は、炭素-炭素二重結合を含んでいてもよい。
【0158】
一般式(ZI-13)中、Q1とR6cとが結合して環構造を形成してもよく、形成される環構造は、炭素-炭素二重結合を含んでいてもよい。
【0159】
上記カチオン(ZI-13)は、なかでも、カチオン(ZI-13A)であることが好ましい。
カチオン(ZI-13A)は、下記一般式(ZI-13A)で表される、フェナシルスルフォニウムカチオンである。
【0160】
【0161】
一般式(ZI-13A)中、
R1c~R5cは、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、シクロアルキルカルボニルオキシ基、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アルキルチオ基又はアリールチオ基を表す。
R6c及びR7cとしては、上述した一般式(ZI-13)中のR6c及びR7cと同義であり、その好ましい態様も同じである。
Rx及びRyとしては、上述した一般式(ZI-13)中のRx及びRyと同義であり、その好ましい態様も同じである。
【0162】
R1c~R5c中のいずれか2つ以上、RxとRyは、各々結合して環構造を形成してもよく、この環構造は、各々独立に酸素原子、硫黄原子、エステル結合、アミド結合、又は、炭素-炭素二重結合を含んでいてもよい。また、R5c及びR6c、R5c及びRxは、各々結合して環構造を形成してもよく、この環構造は、各々独立に炭素-炭素二重結合を含んでいてもよい。また、R6cとR7cは、各々結合して環構造を形成してもよい。
上記環構造としては、芳香族又は非芳香族の炭化水素環、芳香族又は非芳香族の複素環、及びこれらの環が2つ以上組み合わされてなる多環縮合環が挙げられる。環構造としては、3~10員環が挙げられ、4~8員環が好ましく、5又は6員環がより好ましい。
【0163】
R1c~R5c中のいずれか2つ以上、R6cとR7c、及びRxとRyが結合して形成する基としては、ブチレン基、及びペンチレン基等が挙げられる。
R5cとR6c、及びR5cとRxが結合して形成する基としては、単結合又はアルキレン基が好ましい。アルキレン基としては、メチレン基、及びエチレン基等が挙げられる。
【0164】
次に、カチオン(ZI-14)について説明する。
カチオン(ZI-14)は、下記一般式(ZI-14)で表される。
【0165】
【0166】
一般式(ZI-14)中、
lは0~2の整数を表す。
rは0~8の整数を表す。
R13は、水素原子、フッ素原子、水酸基、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、又は単環若しくは多環のシクロアルキル骨格を有する基を表す。これらの基は置換基を有してもよい。
R14は、複数存在する場合は各々独立して、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルキルスルホニル基、シクロアルキルスルホニル基、アルキルカルボニル基、アルコキシカルボニル基、又は単環若しくは多環のシクロアルキル骨格を有するアルコキシ基を表す。これらの基は置換基を有してもよい。
R15は、各々独立して、アルキル基、シクロアルキル基、又はナフチル基を表す。これらの基は置換基を有してもよい。2つのR15が互いに結合して環を形成してもよい。2つのR15が互いに結合して環を形成するとき、環骨格内に、酸素原子、又は窒素原子等のヘテロ原子を含んでもよい。一態様において、2つのR15がアルキレン基であり、互いに結合して環構造を形成することが好ましい。
【0167】
一般式(ZI-14)において、R13、R14及びR15のアルキル基は、直鎖状又は分岐鎖状である。アルキル基の炭素数は、1~10が好ましい。アルキル基としては、メチル基、エチル基、n-ブチル基、又はt-ブチル基等がより好ましい。
【0168】
次に、一般式(ZIIA)について説明する。
一般式(ZIIA)中、R204及びR205は、各々独立に、アリール基、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。
R204及びR205のアリール基としてはフェニル基、又はナフチル基が好ましく、フェニル基がより好ましい。R204及びR205のアリール基は、酸素原子、窒素原子、又は硫黄原子等を有する複素環構造を有するアリール基であってもよい。複素環構造を有するアリール基の骨格としては、例えば、ピロール、フラン、チオフェン、インドール、ベンゾフラン、及びベンゾチオフェン等が挙げられる。
R204及びR205のアルキル基及びシクロアルキル基としては、炭素数1~10の直鎖状アルキル基又は炭素数3~10の分岐鎖状アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、及びペンチル基)、又は、炭素数3~10のシクロアルキル基(例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基、及びノルボルニル基)が好ましい。
【0169】
R204及びR205のアリール基、アルキル基、及びシクロアルキル基は、各々独立に、置換基を有していてもよい。R204~R207のアリール基、アルキル基、及びシクロアルキル基が有していてもよい置換基としては、例えば、アルキル基(例えば炭素数1~15)、シクロアルキル基(例えば炭素数3~15)、アリール基(例えば炭素数6~15)、アルコキシ基(例えば炭素数1~15)、ハロゲン原子、水酸基、ラクトン環基及びフェニルチオ基等が挙げられる。
ラクトン環基としては、例えば、下記(KA-1-1)~(KA-1-17)のいずれかで表される構造から水素原子を除した基が挙げられる。
【0170】
【0171】
上記ラクトン環構造を含有する構造は、置換基を有していても有していなくてもよい。置換基としては、例えば上記置換基Tが挙げられる。
【0172】
M+の好ましい例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。Meは、メチル基を表し、Buはn-ブチル基を表す。
【0173】
【0174】
【0175】
【0176】
【0177】
化合物(A)は、下記一般式(b2)で表されることが好ましい。
【0178】
【0179】
一般式(b2)中、Lは単結合又は二価の連結基を表す。Lが複数存在するとき、複数のLは同一であっても異なっていてもよい。Aは酸の作用により分解し極性が変化する基(a)を表す。Aが複数存在するとき、複数のAは同一であっても異なっていてもよい。nは1から5の整数を表す。M+はスルホニウムイオン又はヨードニウムイオンを表す。
【0180】
一般式(b2)中のL、A、n及びM+は、それぞれ前述した一般式(b1)中のL、A、n及びM+と同様である。
【0181】
化合物(A)は、下記一般式(b3)で表されることが特に好ましい。
【0182】
【0183】
一般式(b3)中、Lは単結合又は二価の連結基を表す。Lが複数存在するとき、複数のLは同一であっても異なっていてもよい。Aは酸の作用により分解し極性が変化する基(a)を表す。Aが複数存在するとき、複数のAは同一であっても異なっていてもよい。o、p及びqはそれぞれ独立に0から5の整数を表す。ただし、oとpとqの総和は1以上5以下である。M+はスルホニウムイオン又はヨードニウムイオンを表す。
【0184】
一般式(b3)中のL、A及びM+は、それぞれ前述した一般式(b1)中のL、A及びM+と同様である。
一般式(b3)中のo、p及びqはそれぞれ独立に0から3の整数を表すことが好ましく、0から2の整数を表すことがより好ましく、0又は1を表すことが更に好ましい。
【0185】
化合物(A)のアニオン部分の好ましい具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0186】
【0187】
【0188】
【0189】
化合物(A)は活性光線又は放射線の照射により酸(ac1)を発生する。
酸(ac1)のpKaは、-12以上0以下であることが好ましく、-5以上0以下であることがより好ましく、-2以上0以下であることが更に好ましい。
なお、化合物(A)は、酸の作用により分解し極性が変化する基(a)を有しているが、上記酸(ac1)が上記基(a)を有している場合は、上記酸(ac1)のpKaは上記基(a)が酸の作用により分解する前の状態でのpKaである。
本明細書においてpKa(酸解離定数)とは、水溶液中でのpKaを表し、具体的には、下記ソフトウェアパッケージ1を用いて、ハメットの置換基定数及び公知文献値のデータベースに基づいた値を、計算により求められる値である。本明細書中に記載したpKaの値は、後述する場合を除き、全てこのソフトウェアパッケージ1を用いて計算により求めた値を示す。
ソフトウェアパッケージ1: Advanced Chemistry Development (ACD/Labs) Software V8.14 for Solaris (1994-2007 ACD/Labs)。
【0190】
一方で、pKaは、分子軌道計算法によっても求められる。この具体的な方法としては、熱力学サイクルに基づいて、溶媒中におけるH+解離自由エネルギーを計算して算出する手法が挙げられる(なお、本明細書において、上記溶媒としては、通常は水を使用し、水ではpKaを求められない場合にはDMSO(ジメチルスルホキシド)を使用する)。
H+解離自由エネルギーの計算方法については、例えばDFT(密度汎関数法)により計算できるが、他にも様々な手法が文献等で報告されており、これに制限されるものではない。なお、DFTを実施できるソフトウェアは複数存在するが、例えば、Gaussian16が挙げられる。
【0191】
本明細書中のpKaとは、上述した通り、ソフトウェアパッケージ1を用いて、ハメットの置換基定数及び公知文献値のデータベースに基づいた値を計算により求められる値を指すが、この手法によりpKaが算出できない場合には、DFT(密度汎関数法)に基づいてGaussian16により得られる値を採用するものとする。
【0192】
化合物(A)の好ましい例としては、実施例で使用したものや、上記のアニオンと上記のカチオンを組み合わせた化合物を挙げることができる。
【0193】
化合物(A)は、例えば、カップリング反応を使用する方法により合成することができる。
カップリング反応は、例えば、鈴木カップリング等を適用することができる。対カチオンは、例えば、特開平6-184170号公報等に記載の公知のアニオン交換法やイオン交換樹脂による変換法により、所望のカチオンに変換することができる。
【0194】
化合物(A)は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明の組成物中、化合物(A)の含有量(複数種存在する場合はその合計)は、本発明の組成物の全固形分を基準として、5~60質量%が好ましく、10~50質量%がより好ましく、15~50質量%が更に好ましく、15~40質量%が特に好ましい。
【0195】
[活性光線又は放射線の照射により、上記化合物(A)から発生する酸(ac1)よりpKaが高い酸(ac2)を発生する化合物(B)]
本発明の組成物が含有する、活性光線又は放射線の照射により、上記化合物(A)から発生する酸(ac1)よりpKaが高い酸(ac2)を発生する化合物(B)(単に「化合物(B)」又は「光酸発生剤(B)」ともいう。)について説明する。
化合物(B)は、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物(光酸発生剤)である。
【0196】
化合物(B)から発生する酸(ac2)のpKaは、上記化合物(A)から発生する酸(ac1)のpKaより高い。
化合物(B)から発生する酸(ac2)のpKaは、上記化合物(A)から発生する酸(ac1)のpKaより1以上高いことが好ましい。
酸(ac2)のpKaと酸(ac1)のpKaとの差は2以上17以下であることが好ましく、2以上9以下であることがより好ましく、3以上5以下であることが更に好ましい。
酸(ac2)のpKaは、-0.5以上10以下であることが好ましく、2以上8以下であることがより好ましく、3以上5以下であることが更に好ましい。
【0197】
化合物(B)は下記一般式(B-1)で表される化合物であることが好ましい。
【0198】
【0199】
一般式(B-1)中、R51は1価の有機基を表し、M+はスルホニウムカチオン又はヨードニウムカチオンを表す。
【0200】
一般式(B-1)中のR51が表す1価の有機基は、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はヘテロ環基であることが好ましく、アリール基であることが好ましい。
R51がアルキル基を表す場合、アルキル基としては、直鎖状でも分岐状でも良く、好ましくは炭素数1~10、より好ましくは炭素数1~5のアルキル基である。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、へキシル基、オクチル基等を挙げることができる。
上記アルキル基は置換基を有していても良く、置換基としては、例えば、上記置換基Tが挙げられる。
上記アルキル基は、エーテル結合又はカルボニル結合を含んでいてもよい。
【0201】
R51がシクロアルキル基を表す場合、シクロアルキル基としては、単環でも多環でも良く、好ましくは炭素数3~20、より好ましくは炭素数5~15、更に好ましくは炭素数5~10のシクロアルキル基である。シクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロオクチル基、アダマンチル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、カンファニル基、ジシクロペンチル基、α-ピネル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロドデシル基、アンドロスタニル基等を挙げることができる。
上記シクロアルキル基は置換基を有していても良く、置換基としては、例えば、上記置換基Tが挙げられる。
上記シクロアルキル基は、エーテル結合又はカルボニル結合を含んでいてもよい。
【0202】
R51がアリール基を表す場合、アリール基としては、好ましくは炭素数6~20、より好ましくは炭素数6~15、更に好ましくは炭素数6~10のアリール基である。アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等を挙げることができ、フェニル基が最も好ましい。
上記アリール基は置換基を有していても良く、置換基としては、例えば、上記置換基Tが挙げられる。
【0203】
R51がヘテロ環基を表す場合、ヘテロ環基としては、好ましくは炭素数3~20、より好ましくは炭素数4~15のヘテロ環基である。ヘテロ環基が有するヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子等が挙げられる。
上記ヘテロ環基は置換基を有していても良く、置換基としては、例えば、上記置換基Tが挙げられる。
【0204】
一般式(B-1)中のM+は上記一般式(b1)中のM+と同義であり、具体例及び好ましい範囲も同様である。
【0205】
化合物(B)は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明の組成物中、化合物(B)の含有量(複数種存在する場合はその合計)は、本発明の組成物の全固形分を基準として、1~30質量%が好ましく、2~30質量%がより好ましく、5~15質量%が更に好ましく、5~10質量%が特に好ましい。
【0206】
本発明の組成物中、化合物(B)の含有量に対する化合物(A)の含有量の比である(A)/(B)が、モル比で0.2以上2.0以下であることが好ましく、0.2以上1.5以下であることがより好ましい。(A)/(B)をモル比で0.2以上2.0以下とすることで、化合物(B)による解像力の向上と現像欠陥の低減効果を得つつ、調製後一定期間経過した後も性能劣化の少ない組成物とすることができる。
【0207】
[塩基性化合物(C)]
本発明の組成物が含有する塩基性化合物(C)(単に「化合物(C)」ともいう。)について説明する。
塩基性化合物(C)は酸拡散制御剤として機能することができる。
酸拡散制御剤は、露光時に光酸発生剤等から発生する酸をトラップし、余分な発生酸による、未露光部における酸分解性樹脂の反応を抑制するクエンチャーとして作用する。
【0208】
塩基性化合物(C)は含窒素化合物であることが好ましい。
塩基性化合物(C)は下記一般式(c1)~(c5)のいずれかで示される構造を有する化合物であることが好ましい。
【0209】
【0210】
一般式(c1)及び(c5)中、
R200、R201及びR202は、同一でも異なってもよく、各々独立に、水素原子、アルキル基(好ましくは炭素数1~20)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3~20)又はアリール基(炭素数6~20)を表す。R201とR202は、互いに結合して環を形成してもよい。
R203、R204、R205及びR206は、同一でも異なってもよく、各々独立に、炭素数1~20のアルキル基を表す。
【0211】
一般式(c1)及び(c5)中のアルキル基は、置換基を有していても無置換であってもよい。
上記アルキル基について、置換基を有するアルキル基としては、炭素数1~20のアミノアルキル基、炭素数1~20のヒドロキシアルキル基、又は炭素数1~20のシアノアルキル基が好ましい。
一般式(c1)及び(c5)中のアルキル基は、無置換であることがより好ましい。
【0212】
塩基性化合物(C)としては、チアゾール、ベンゾチアゾール、オキサゾール、ベンゾオキサゾール、グアニジン、アミノピロリジン、ピラゾール、ピラゾリン、ピペラジン、アミノモルホリン、アミノアルキルモルフォリン、ピペリジン、又はこれらの構造を有する化合物が好ましく、チアゾール構造、ベンゾチアゾール構造、オキサゾール構造、ベンゾオキサゾール構造、イミダゾール構造、ジアザビシクロ構造、オニウムヒドロキシド構造、オニウムカルボキシレート構造、トリアルキルアミン構造、アニリン構造若しくはピリジン構造を有する化合物、水酸基及び/若しくはエーテル結合を有するアルキルアミン誘導体、又は、水酸基及び/若しくはエーテル結合を有するアニリン誘導体等がより好ましい。
【0213】
塩基性化合物(C)は、活性光線又は放射線の照射により塩基性が低下又は消失する塩基性化合物(CB)(以下、「化合物(CB)」ともいう。)であってもよい。化合物(CB)は、プロトンアクセプター性官能基を有し、かつ、活性光線又は放射線の照射により分解して、プロトンアクセプター性が低下、消失、又はプロトンアクセプター性から酸性に変化する化合物である。
【0214】
プロトンアクセプター性官能基とは、プロトンと静電的に相互作用し得る基又は電子を有する官能基であって、例えば、環状ポリエーテル等のマクロサイクリック構造を有する官能基、又は、π共役に寄与しない非共有電子対をもった窒素原子を有する官能基を意味する。π共役に寄与しない非共有電子対を有する窒素原子とは、例えば、下記式に示す部分構造を有する窒素原子である。
【0215】
【0216】
プロトンアクセプター性官能基の好ましい部分構造として、例えば、クラウンエーテル構造、アザクラウンエーテル構造、1~3級アミン構造、ピリジン構造、イミダゾール構造、及びピラジン構造等が挙げられる。
【0217】
化合物(CB)は、活性光線又は放射線の照射により分解してプロトンアクセプター性が低下若しくは消失し、又はプロトンアクセプター性から酸性に変化した化合物を発生する。ここでプロトンアクセプター性の低下若しくは消失、又はプロトンアクセプター性から酸性への変化とは、プロトンアクセプター性官能基にプロトンが付加することに起因するプロトンアクセプター性の変化であり、具体的には、プロトンアクセプター性官能基を有する化合物(CB)とプロトンとからプロトン付加体が生成するとき、その化学平衡における平衡定数が減少することを意味する。
プロトンアクセプター性は、pH測定を行うことによって確認することができる。
【0218】
活性光線又は放射線の照射により化合物(CB)が分解して発生する化合物のpKaは、pKa<-1を満たすことが好ましく、-13<pKa<-1を満たすことがより好ましく、-13<pKa<-3を満たすことが更に好ましい。
【0219】
塩基性化合物(C)は、窒素原子を有し、酸の作用により脱離する基を有する低分子化合物(CD)(以下、「化合物(CD)」ともいう。)であってもよい。化合物(CD)は、酸の作用により脱離する基を窒素原子上に有するアミン誘導体であることが好ましい。
酸の作用により脱離する基としては、アセタール基、カルボネート基、カルバメート基、3級エステル基、3級水酸基、又はヘミアミナールエーテル基が好ましく、カルバメート基、又はヘミアミナールエーテル基がより好ましい。
化合物(CD)の分子量は、100~1000が好ましく、100~700がより好ましく、100~500が更に好ましい。
化合物(CD)は、窒素原子上に保護基を有するカルバメート基を有してもよい。カルバメート基を構成する保護基としては、下記一般式(d-1)で表される。
【0220】
【0221】
一般式(d-1)において、
Rbは、各々独立に、水素原子、アルキル基(好ましくは炭素数1~10)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3~30)、アリール基(好ましくは炭素数3~30)、アラルキル基(好ましくは炭素数1~10)、又はアルコキシアルキル基(好ましくは炭素数1~10)を表す。Rbは相互に結合して環を形成していてもよい。
Rbが示すアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、及びアラルキル基は、各々独立にヒドロキシル基、シアノ基、アミノ基、ピロリジノ基、ピペリジノ基、モルホリノ基、オキソ基等の官能基、アルコキシ基、又はハロゲン原子で置換されていてもよい。Rbが示すアルコキシアルキル基についても同様である。
【0222】
Rbとしては、直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、シクロアルキル基、又はアリール基が好ましく、直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又はシクロアルキル基がより好ましい。
2つのRbが相互に連結して形成する環としては、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素、複素環式炭化水素及びその誘導体等が挙げられる。
一般式(d-1)で表される基の具体的な構造としては、米国特許公報US2012/0135348A1号明細書の段落[0466]に開示された構造が挙げられるが、これに限定されない。
【0223】
化合物(CD)は、下記一般式(6)で表される構造を有することが好ましい。
【0224】
【0225】
一般式(6)において、
lは0~2の整数を表し、mは1~3の整数を表し、l+m=3を満たす。
Raは、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。lが2のとき、2つのRaは同じでも異なっていてもよく、2つのRaは相互に連結して式中の窒素原子と共に複素環を形成していてもよい。この複素環には式中の窒素原子以外のヘテロ原子を含んでいてもよい。
Rbは、上記一般式(d-1)におけるRbと同義であり、好ましい例も同様である。
一般式(6)において、Raとしてのアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、及びアラルキル基は、各々独立にRbとしてのアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、及びアラルキル基が置換されていてもよい基として前述した基と同様な基で置換されていてもよい。
【0226】
上記Raのアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、及びアラルキル基(これらの基は、上記基で置換されていてもよい)の具体例としては、Rbについて前述した具体例と同様な基が挙げられる。
本発明における特に好ましい化合物(DD)の具体例としては、米国特許出願公開2012/0135348A1号明細書の段落[0475]に開示された化合物が挙げられるが、これに限定されない。
【0227】
塩基性化合物(C)は、カチオン部に窒素原子を有するオニウム塩化合物(CE)(以下、「化合物(CE)」ともいう。)であってもよい。化合物(CE)は、カチオン部に窒素原子を含む塩基性部位を有する化合物であることが好ましい。塩基性部位は、アミノ基であることが好ましく、脂肪族アミノ基であることがより好ましい。塩基性部位中の窒素原子に隣接する原子の全てが、水素原子又は炭素原子であることが更に好ましい。また、塩基性向上の観点から、窒素原子に対して、電子求引性の官能基(カルボニル基、スルホニル基、シアノ基、及びハロゲン原子等)が直結していないことが好ましい。
化合物(CE)の好ましい具体例としては、米国特許出願公開2015/0309408A1号明細書の段落[0203]に開示された化合物が挙げられるが、これに限定されない。
【0228】
塩基性化合物(C)の好ましい例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。Meはメチル基を表す。
【0229】
【0230】
【0231】
【0232】
【0233】
塩基性化合物(C)は1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明の組成物中、塩基性化合物(C)の本発明の組成物中の含有量(複数種存在する場合はその合計)は、組成物の全固形分に対して、0.001~20質量%が好ましく、0.01~10質量%がより好ましい。
【0234】
本発明の組成物中、塩基性化合物(C)の含有量に対する化合物(B)の含有量の比である(B)/(C)が、モル比で1.1以上10以下であることが好ましく、2以上8以下であることがより好ましく、2以上4以下であることが更に好ましい。(B)/(C)をモル比で1.1以上10以下とすることで、化合物(B)による解像力の向上と現像欠陥の低減効果を得つつ、調製後一定期間経過した後も性能劣化の少ない組成物とすることができる。
【0235】
本発明の組成物中、化合物(A)の含有量と化合物(B)の含有量との和に対する化合物(B)の含有量と塩基性化合物(C)の含有量との和の比である[(B)+(C)]/[(A)+(B)]が、モル比で0.3以上1.0以下であることが好ましく、0.3以上0.8以下であることがより好ましく、0.5以上0.8以下であることが更に好ましい。[(B)+(C)]/[(A)+(B)]をモル比で0.3以上1.0以下とすることで、化合物(B)による解像力の向上と現像欠陥の低減効果を得つつ、調製後一定期間経過した後も性能劣化の少ない組成物とすることができる。
【0236】
[溶剤]
本発明の組成物は、溶剤を含有することが好ましい。
本発明の組成物においては、公知のレジスト溶剤を適宜使用できる。例えば、米国特許出願公開2016/0070167A1号明細書の段落[0665]~[0670]、米国特許出願公開2015/0004544A1号明細書の段落[0210]~[0235]、米国特許出願公開2016/0237190A1号明細書の段落[0424]~[0426]、及び、米国特許出願公開2016/0274458A1号明細書の段落[0357]~[0366]に開示された公知の溶剤を好適に使用できる。
組成物を調製する際に使用できる溶剤としては、例えば、アルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレート、アルキレングリコールモノアルキルエーテル、乳酸アルキルエステル、アルコキシプロピオン酸アルキル、環状ラクトン(好ましくは炭素数4~10)、環を有してもよいモノケトン化合物(好ましくは炭素数4~10)、アルキレンカーボネート、アルコキシ酢酸アルキル、及びピルビン酸アルキル等の有機溶剤が挙げられる。
【0237】
有機溶剤として、構造中に水酸基を有する溶剤と、水酸基を有さない溶剤とを混合した混合溶剤を使用してもよい。
水酸基を有する溶剤、及び水酸基を有さない溶剤としては、前述の例示化合物を適宜選択できるが、水酸基を含む溶剤としては、アルキレングリコールモノアルキルエーテル、又は乳酸アルキル等が好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME:1-メトキシ-2-プロパノール)、プロピレングリコールモノエチルエーテル(PGEE)、2-ヒドロキシイソ酪酸メチル、又は乳酸エチルがより好ましい。また、水酸基を有さない溶剤としては、アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、アルキルアルコキシプロピオネート、環を有していてもよいモノケトン化合物、環状ラクトン、又は酢酸アルキル等が好ましく、これらの中でも、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA:1-メトキシ-2-アセトキシプロパン)、エチルエトキシプロピオネート、2-ヘプタノン、γ-ブチロラクトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン又は酢酸ブチルがより好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、γ-ブチロラクトン、エチルエトキシプロピオネート、シクロヘキサノン、シクロペンタノン又は2-ヘプタノンが更に好ましい。水酸基を有さない溶剤としては、プロピレンカーボネートも好ましい。
水酸基を有する溶剤と水酸基を有さない溶剤との混合比(質量比)は、1/99~99/1であり、10/90~90/10が好ましく、20/80~60/40がより好ましい。水酸基を有さない溶剤を50質量%以上含有する混合溶剤が、塗布均一性の点で好ましい。
溶剤は、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを含有することが好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート単独溶剤でもよいし、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを含有する2種類以上の混合溶剤でもよい。
【0238】
[界面活性剤]
本発明の組成物は、更に界面活性剤を含んでいてもよい。界面活性剤を含有することにより、波長が250nm以下、特には220nm以下の露光光源を使用した場合に、良好な感度及び解像度で、密着性及び現像欠陥のより少ないパターンを形成することが可能となる。
界面活性剤としては、フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤を用いることが特に好ましい。
フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤としては、例えば、米国特許出願公開第2008/0248425号明細書の[0276]に記載の界面活性剤が挙げられる。また、エフトップEF301若しくはEF303(新秋田化成(株)製);フロラードFC430、431若しくは4430(住友スリーエム(株)製);メガファックF171、F173、F176、F189、F113、F110、F177、F120若しくはR08(DIC(株)製);サーフロンS-382、SC101、102、103、104、105若しくは106(旭硝子(株)製);トロイゾルS-366(トロイケミカル(株)製);GF-300若しくはGF-150(東亜合成化学(株)製)、サーフロンS-393(セイミケミカル(株)製);エフトップEF121、EF122A、EF122B、RF122C、EF125M、EF135M、EF351、EF352、EF801、EF802若しくはEF601((株)ジェムコ製);PF636、PF656、PF6320若しくはPF6520(OMNOVA社製);又は、FTX-204G、208G、218G、230G、204D、208D、212D、218D若しくは222D((株)ネオス製)を用いてもよい。なお、ポリシロキサンポリマーKP-341(信越化学工業(株)製)も、シリコン系界面活性剤として用いることができる。
【0239】
また、界面活性剤は、上記に示すような公知のものの他に、テロメリゼーション法(テロマー法ともいわれる)又はオリゴメリゼーション法(オリゴマー法ともいわれる)により製造されたフルオロ脂肪族化合物を用いて合成してもよい。具体的には、このフルオロ脂肪族化合物から導かれたフルオロ脂肪族基を備えた重合体を、界面活性剤として用いてもよい。このフルオロ脂肪族化合物は、例えば、特開2002-90991号公報に記載された方法によって合成することができる。
また、米国特許出願公開第2008/0248425号明細書の[0280]に記載されているフッ素系及び/又はシリコン系以外の界面活性剤を使用してもよい。
【0240】
界面活性剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0241】
本発明の組成物が界面活性剤を含んでいる場合、その含有量は、組成物の全固形分を基準として、好ましくは0~2質量%、より好ましくは0.0001~2質量%、更に好ましくは0.0005~1質量%である。
【0242】
[架橋剤]
本発明の組成物は、酸の作用により樹脂(P)を架橋する化合物(架橋剤)を含有してもよい。架橋剤としては、公知の化合物を適宜に使用することができる。例えば、米国特許出願公開2016/0147154A1号明細書の段落[0379]~[0431]、及び、米国特許出願公開2016/0282720A1号明細書の段落[0064]~[0141]に開示された公知の化合物を架橋剤として好適に使用できる。
架橋剤は、樹脂を架橋しうる架橋性基を有している化合物であり、架橋性基としては、ヒドロキシメチル基、アルコキシメチル基、アシルオキシメチル基、アルコキシメチルエーテル基、オキシラン環、及びオキセタン環等が挙げられる。
架橋性基は、ヒドロキシメチル基、アルコキシメチル基、オキシラン環又はオキセタン環であることが好ましい。
架橋剤は、架橋性基を2個以上有する化合物(樹脂も含む)であることが好ましい。
架橋剤は、ヒドロキシメチル基又はアルコキシメチル基を有する、フェノール誘導体、ウレア系化合物(ウレア構造を有する化合物)又はメラミン系化合物(メラミン構造を有する化合物)であることがより好ましい。
架橋剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の組成物が架橋剤を含有する場合、架橋剤の含有量は、本発明の組成物の全固形分に対して、1~50質量%が好ましく、3~40質量%が好ましく、5~30質量%が更に好ましい。
【0243】
[その他の添加剤]
本発明の組成物は、上記に説明した成分以外にも、カルボン酸、カルボン酸オニウム塩、Proceeding of SPIE, 2724,355 (1996)等に記載の分子量3000以下の溶解阻止化合物、染料、可塑剤、光増感剤、光吸収剤、酸化防止剤などを適宜含有することができる。
【0244】
特にカルボン酸は、性能向上のために好適に用いられることもできる。カルボン酸としては、安息香酸、ナフトエ酸などの、芳香族カルボン酸が好ましい。
【0245】
本発明の組成物がカルボン酸を含む場合、カルボン酸の含有量は、組成物の全固形分に対して0.01~10質量%が好ましく、より好ましくは0.01~5質量%、更に好ましくは0.01~3質量%である。
【0246】
本発明における感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物は、解像力向上の観点から、膜厚10~250nmで使用されることが好ましく、より好ましくは、膜厚20~200nmで使用されることが好ましく、更に好ましくは30~100nmで使用されることが好ましい。組成物中の固形分濃度を適切な範囲に設定して適度な粘度をもたせ、塗布性、製膜性を向上させることにより、このような膜厚とすることができる。
【0247】
本発明における感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物の固形分濃度は、通常1.0~10質量%であり、好ましくは、2.0~5.7質量%、更に好ましくは2.0~5.3質量%である。固形分濃度を上記範囲とすることで、レジスト溶液を基板上に均一に塗布することができ、更にはラインウィズスラフネスに優れたレジストパターンを形成することが可能になる。
固形分濃度とは、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物の総質量に対する、溶剤を除く他の成分の質量の質量百分率である。
【0248】
[用途]
本発明の組成物は、活性光線又は放射線の照射により反応して性質が変化する感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物に関する。更に詳しくは、本発明の組成物は、IC(Integrated Circuit)等の半導体製造工程、液晶若しくはサーマルヘッド等の回路基板の製造、インプリント用モールド構造体の作製、その他のフォトファブリケーション工程、又は平版印刷版、若しくは酸硬化性組成物の製造に使用される感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物に関する。本発明において形成されるパターンは、エッチング工程、イオンインプランテーション工程、バンプ電極形成工程、再配線形成工程、及びMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)等において使用できる。
【0249】
[感活性光線性又は感放射線性膜]
本発明は、本発明の感活性光線又は感放射線性組成物により形成された感活性光線性又は感放射線性膜(好ましくはレジスト膜)にも関する。このような膜は、例えば、本発明の組成物が基板等の支持体上に塗布されることにより形成される。この膜の厚みは、0.02~0.1μmが好ましい。基板上に塗布する方法としては、スピンコート、ロールコート、フローコート、ディップコート、スプレーコート、ドクターコート等の適当な塗布方法により基板上に塗布されるが、スピン塗布が好ましく、その回転数は1000~3000rpm(rotations per minute)が好ましい。塗布膜は60~150℃で1~20分間、好ましくは80~120℃で1~10分間プリベークして薄膜を形成する。
被加工基板及びその最表層を構成する材料は、例えば、半導体用ウエハの場合、シリコンウエハを用いることができ、最表層となる材料の例としては、Si、SiO2、SiN、SiON、TiN、WSi、BPSG、SOG、有機反射防止膜等が挙げられる。
【0250】
レジスト膜を形成する前に、基板上に予め反射防止膜を塗設してもよい。
反射防止膜としては、チタン、二酸化チタン、窒化チタン、酸化クロム、カーボン、アモルファスシリコン等の無機膜型と、吸光剤とポリマー材料からなる有機膜型のいずれも用いることができる。また、有機反射防止膜として、ブリューワーサイエンス社製のDUV30シリーズや、DUV-40シリーズ、シプレー社製のAR-2、AR-3、AR-5等の市販の有機反射防止膜を使用することもできる。
【0251】
なお、本発明のパターン形成方法においては、レジスト膜の上層にトップコートを形成してもよい。トップコートは、レジスト膜と混合せず、さらにレジスト膜上層に均一に塗布できることが好ましい。
トップコートについては、特に限定されず、従来公知のトップコートを、従来公知の方法によって形成でき、例えば、特開2014-059543号公報の段落0072~0082の記載に基づいてトップコートを形成できる。
例えば、特開2013-61648号公報に記載されたような塩基性化合物を含有するトップコートをレジスト膜上に形成することが好ましい。トップコートが含み得る塩基性化合物の具体的な例は、上述の酸拡散抑制剤と同様である。
また、トップコートは、エーテル結合、チオエーテル結合、ヒドロキシル基、チオール基、カルボニル結合及びエステル結合からなる群より選択される基又は結合を少なくとも一つ含む化合物を含むことが好ましい。
【0252】
また、トップコートは、樹脂を含有することが好ましい。トップコートが含有することができる樹脂としては、特に限定されないが、感活性光線性又は感放射線性組成物に含まれ得る疎水性樹脂と同様のものを使用することができる。
疎水性樹脂に関しては、特開2013-61647号公報の[0017]~[0023](対応する米国公開特許公報2013/244438号の[0017]~[0023])、及び特開2014-56194号公報の[0016]~[0165]の記載を参酌でき、これらの内容は本願明細書に組み込まれる。
トップコートは、芳香環を有する繰り返し単位を含有する樹脂を含むことが好ましい。芳香環を有する繰り返し単位を含有することで、特に電子線またはEUV露光の際に、二次電子の発生効率、及び活性光線又は放射線により酸を発生する化合物からの酸発生効率が高くなり、パターン形成時に高感度化、高解像化の効果が期待できる
【0253】
トップコートが複数の樹脂を含む場合、フッ素原子及び/又は珪素原子を有する樹脂(XA)を少なくとも1種含むことが好ましい。フッ素原子及び/又は珪素原子を有する樹脂(XA)を少なくとも1種、及び、フッ素原子及び/又は珪素原子の含有率が樹脂(XA)より小さい樹脂(XB)をトップコート組成物が含むことがより好ましい。これにより、トップコート膜を形成した際に、樹脂(XA)がトップコート膜の表面に偏在するため、現像特性や液浸液追随性などの性能を改良させることができる。
【0254】
また、トップコートは、酸発生剤、架橋剤を含有しても良い。
【0255】
トップコートは、典型的には、トップコート形成用組成物から形成される。
トップコート形成用組成物は、各成分を溶剤に溶解し、フィルター濾過することが好ましい。フィルターとしては、ポアサイズ0.1μm以下、より好ましくは0.05μm以下、更に好ましくは0.03μm以下のポリテトラフロロエチレン製、ポリエチレン製、又はナイロン製のものが好ましい。また、組成物の固形分濃度が高い場合(例えば、25質量%以上)は、フィルター濾過に用いるフィルターのポアサイズは3μm以下が好ましく、0.5μm以下がより好ましく、0.3μm以下が更に好ましい。このフィルターは、ポリテトラフロロエチレン製、ポリエチレン製、又はナイロン製のものが好ましい。フィルター濾過においては、例えば日本国特許出願公開第2002-62667号明細書(特開2002-62667)に開示されるように、循環的な濾過を行ってもよく、複数種類のフィルターを直列又は並列に接続して濾過を行ってもよい。また、組成物を複数回濾過してもよい。更に、フィルター濾過の前後で、組成物に対して脱気処理等を行ってもよい。
トップコート形成用組成物は、金属等の不純物を含まないことが好ましい。これら材料に含まれる金属成分の含有量としては、10ppm以下が好ましく、5ppm以下がより好ましく、1ppm以下が更に好ましく、実質的に含まないこと(測定装置の検出限界以下であること)が特に好ましい。
レジスト組成物の原料(樹脂及び光酸発生剤等)の製造工程(原料を合成する工程等)に用いられる装置の装置内を、一部または全部グラスライニング処理することも、レジスト組成物の金属不純物の含有量を少量(例えば、質量ppmオーダー)にするために好ましい。このような方法が、例えば、2017年12月21日の化学工業日報に記載されている。
【0256】
後述する露光を液浸露光とする場合、トップコートは、レジスト膜と液浸液との間に配置され、レジスト膜を直接、液浸液に接触させない層としても機能する。この場合、トップコート(トップコート形成用組成物)が有することが好ましい特性としては、レジスト膜への塗布適性、放射線、特に193nmに対する透明性、液浸液(好ましくは水)に対する難溶性である。また、トップコートは、レジスト膜と混合せず、さらにレジスト膜の表面に均一に塗布できることが好ましい。
なお、トップコート形成用組成物を、レジスト膜の表面に、レジスト膜を溶解せずに均一に塗布するために、トップコート形成用組成物は、レジスト膜を溶解しない溶剤を含有することが好ましい。レジスト膜を溶解しない溶剤としては、後に詳述する有機溶剤を含有する現像液(有機系現像液)とは異なる成分の溶剤を用いることがさらに好ましい。
【0257】
トップコート形成用組成物の塗布方法は、特に限定されず、従来公知のスピンコート法、スプレー法、ローラーコート法、浸漬法などを用いることができる。
【0258】
トップコートの膜厚は特に制限されないが、露光光源に対する透明性の観点から、通常5nm~300nm、好ましくは10nm~300nm、より好ましくは20nm~200nm、更に好ましくは30nm~100nmの厚みで形成される。
トップコートを形成後、必要に応じて基板を加熱(PB)する。
トップコートの屈折率は、解像性の観点から、レジスト膜の屈折率に近いことが好ましい。
トップコートは液浸液に不溶であることが好ましく、水に不溶であることがより好ましい。
トップコートの後退接触角は、液浸液追随性の観点から、トップコートに対する液浸液の後退接触角(23℃)が50~100度であることが好ましく、80~100度であることがより好ましい。
液浸露光においては、露光ヘッドが高速でウエハ上をスキャンし露光パターンを形成していく動きに追随して、液浸液がウエハ上を動く必要があることから、動的な状態におけるトップコートに対する液浸液の接触角が重要になり、より良好なレジスト性能を得るためには、上記範囲の後退接触角を有することが好ましい。
【0259】
トップコートを剥離する際は、有機系現像液を使用してもよいし、別途剥離剤を使用してもよい。剥離剤としては、レジスト膜への浸透が小さい溶剤が好ましい。トップコートの剥離がレジスト膜の現像と同時にできるという点では、トップコートは、有機系現像液により剥離できることが好ましい。剥離に用いる有機系現像液としては、レジスト膜の低露光部を溶解除去できるものであれば特に制限されない。
【0260】
有機系現像液で剥離するという観点からは、トップコートは有機系現像液に対する溶解速度が1~300nm/secが好ましく、10~100nm/secがより好ましい。
ここで、トップコートの有機系現像液に対する溶解速度とは、トップコートを成膜した後に現像液に暴露した際の膜厚減少速度であり、本発明においては23℃の酢酸ブチルに浸漬させた際の速度とする。
トップコートの有機系現像液に対する溶解速度を1/sec秒以上、好ましくは10nm/sec以上とすることによって、レジスト膜を現像した後の現像欠陥発生が低減する効果がある。また、300nm/sec以下、好ましくは100nm/secとすることによって、おそらくは、液浸露光時の露光ムラが低減した影響で、レジスト膜を現像した後のパターンのラインエッジラフネスがより良好になるという効果がある。
トップコートはその他の公知の現像液、例えば、アルカリ水溶液などを用いて除去してもよい。使用できるアルカリ水溶液として具体的には、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの水溶液が挙げられる。
【0261】
[パターン形成方法]
本発明は、本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いてレジスト膜を形成するレジスト膜形成工程と、レジスト膜を露光する露光工程と、露光されたレジスト膜を、現像液を用いて現像する現像工程と、を含むパターン形成方法にも関する。
本発明において、上記露光は、電子線、ArFエキシマレーザー又は極紫外線を用いて行われることが好ましく、電子線又は極紫外線を用いて行われることがより好ましい。
【0262】
精密集積回路素子の製造などにおいてレジスト膜上への露光(パターン形成工程)は、まず、本発明のレジスト膜にパターン状に、ArFエキシマレーザー、電子線又は極紫外線(EUV)照射を行うことが好ましい。露光量は、ArFエキシマレーザーの場合、1~100mJ/cm2程度、好ましくは20~60mJ/cm2程度、電子線の場合、0.1~20μC/cm2程度、好ましくは3~10μC/cm2程度、極紫外線の場合、0.1~20mJ/cm2程度、好ましくは3~15mJ/cm2程度となるように露光する。
次いで、ホットプレート上で、好ましくは60~150℃で5秒~20分間、より好ましくは80~120℃で15秒~10分間、さらに好ましくは80~120℃で1~10分間、露光後加熱(ポストエクスポージャーベーク)を行い、次いで、現像、リンス、乾燥することによりパターンを形成する。ここで、露光後加熱は、樹脂(P)における酸分解性基を有する繰り返し単位の酸分解性によって、適宜調整される。酸分解性が低い場合、露光後加熱の温度は110℃以上、加熱時間は45秒以上であることも好ましい。
現像液は適宜選択されるが、アルカリ現像液(代表的にはアルカリ水溶液)又は有機溶剤を含有する現像液(有機系現像液ともいう)を用いることが好ましい。現像液がアルカリ水溶液である場合には、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(TBAH)等の、0.1~5質量%、好ましくは2~3質量%アルカリ水溶液で、0.1~3分間、好ましくは0.5~2分間、浸漬(dip)法、パドル(puddle)法、スプレー(spray)法等の常法により現像する。アルカリ現像液には、アルコール類及び/又は界面活性剤を、適当量添加してもよい。こうして、ネガ型パターンの形成おいては、未露光部分の膜は溶解し、露光された部分は現像液に溶解し難いことにより、またポジ型パターンの形成おいては、露光された部分の膜は溶解し、未露光部の膜は現像液に溶解し難いことにより、基板上に目的のパターンが形成される。
【0263】
本発明のパターン形成方法が、アルカリ現像液を用いて現像する工程を有する場合、アルカリ現像液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水等の無機アルカリ類、エチルアミン、n-プロピルアミン等の第一アミン類、ジエチルアミン、ジ-n-ブチルアミン等の第二アミン類、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン等の第三アミン類、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルコールアミン類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドドキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、テトラペンチルアンモニウムヒドロキシド、テトラヘキシルアンモニウムヒドロキシド、テトラオクチルアンモニウムヒドロキシド、エチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ブチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、メチルトリアミルアンモニウムヒドロキシド、ジブチルジペンチルアンモニウムヒドロキシド等のテトラアルキルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、ジメチルビス(2-ヒドロキシテチル)アンモニウムヒドロキシド等の第四級アンモニウム塩、ピロール、ピヘリジン等の環状アミン類等のアルカリ性水溶液を使用することができる。
更に、上記アルカリ性水溶液にアルコール類、界面活性剤を適当量添加して使用することもできる。
アルカリ現像液のアルカリ濃度は、通常0.1~20質量%である。
アルカリ現像液のpHは、通常10.0~15.0である。
特に、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの2.38質量%の水溶液が望ましい。
【0264】
アルカリ現像の後に行うリンス処理におけるリンス液としては、純水を使用し、界面活性剤を適当量添加して使用することもできる。
また、現像処理又はリンス処理の後に、パターン上に付着している現像液又はリンス液を超臨界流体により除去する処理を行うことができる。
【0265】
本発明のパターン形成方法が、有機溶剤を含有する現像液を用いて現像する工程を有する場合、上記工程における上記現像液(以下、有機系現像液とも言う)としては、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤、エーテル系溶剤等の極性溶剤及び炭化水素系溶剤を用いることができる。
【0266】
本発明において、エステル系溶剤とは分子内にエステル基を有する溶剤のことであり、ケトン系溶剤とは分子内にケトン基を有する溶剤のことであり、アルコール系溶剤とは分子内にアルコール性水酸基を有する溶剤のことであり、アミド系溶剤とは分子内にアミド基を有する溶剤のことであり、エーテル系溶剤とは分子内にエーテル結合を有する溶剤のことである。これらの中には、1分子内に上記官能基を複数種有する溶剤も存在するが、その場合は、その溶剤の有する官能基を含むいずれの溶剤種にも当てはまるものとする。例えば、ジエチレングリコールモノメチルエーテルは、上記分類中の、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤いずれにも当てはまるものとする。また、炭化水素系溶剤とは置換基を有さない炭化水素溶剤のことである。
特に、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤及びエーテル系溶剤から選択される少なくとも1種類の溶剤を含有する現像液であることが好ましい。
【0267】
現像液は、レジスト膜の膨潤を抑制できるという点から、炭素原子数が7以上(7~14が好ましく、7~12がより好ましく、7~10がさらに好ましい)、かつヘテロ原子数が2以下のエステル系溶剤を用いることが好ましい。
上記エステル系溶剤のヘテロ原子は、炭素原子および水素原子以外の原子であって、例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子等が挙げられる。ヘテロ原子数は、2以下が好ましい。
炭素原子数が7以上かつヘテロ原子数が2以下のエステル系溶剤の好ましい例としては、酢酸アミル、酢酸イソアミル、酢酸2-メチルブチル、酢酸1-メチルブチル、酢酸ヘキシル、プロピオン酸ペンチル、プロピオン酸ヘキシル、プロピオン酸ヘプチル、ブタン酸ブチル、イソブタン酸イソブチルなどが挙げられ、酢酸イソアミル、又はイソブタン酸イソブチルを用いることが特に好ましい。
【0268】
現像液は、上述した炭素原子数が7以上かつヘテロ原子数が2以下のエステル系溶剤に代えて、上記エステル系溶剤および上記炭化水素系溶剤の混合溶剤、又は、上記ケトン系溶剤および上記炭化水素溶剤の混合溶剤を用いてもよい。この場合においても、レジスト膜の膨潤の抑制に効果的である。
エステル系溶剤と炭化水素系溶剤とを組み合わせて用いる場合には、エステル系溶剤として酢酸イソアミルを用いることが好ましい。また、炭化水素系溶剤としては、レジスト膜の溶解性を調製するという観点から、飽和炭化水素溶剤(例えば、オクタン、ノナン、デカン、ドデカン、ウンデカン、ヘキサデカンなど)を用いることが好ましい。
ケトン系溶剤としては、例えば、1-オクタノン、2-オクタノン、1-ノナノン、2-ノナノン、アセトン、2-ヘプタノン(メチルアミルケトン)、4-ヘプタノン、1-ヘキサノン、2-ヘキサノン、ジイソブチルケトン、2,5-ジメチル-4-ヘキサノン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、フェニルアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、アセトニルアセトン、イオノン、ジアセトニルアルコール、アセチルカービノール、アセトフェノン、メチルナフチルケトン、イソホロン、プロピレンカーボネート等を挙げることができ、ジイソブチルケトン、2,5-ジメチル-4-ヘキサノンを用いることが特に好ましい。
エステル系溶剤としては、例えば、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ペンチル、酢酸イソアミル、酢酸アミル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチル-3-エトキシプロピオネート、3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸ブチル、蟻酸プロピル、乳酸エチル、乳酸ブチル、乳酸プロピル、酪酸ブチル、2-ヒドロキシイソ酪酸メチル等を挙げることができる。
アルコール系溶剤としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、sec-ブチルアルコール、4-メチル-2-ペンタノール、tert-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、n-ヘキシルアルコール、n-ヘプチルアルコール、n-オクチルアルコール、n-デカノール等のアルコールや、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のグリコール系溶剤や、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、メトキシメチルブタノール等のグリコールエーテル系溶剤等を挙げることができる。
エーテル系溶剤としては、例えば、上記グリコールエーテル系溶剤の他、アニソール、ジオキサン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
アミド系溶剤としては、例えば、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン等が使用できる。
炭化水素系溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤、ペンタン、ヘキサン、オクタン、デカン、ウンデカン等の脂肪族炭化水素系溶剤が挙げられる。
なお、炭化水素系溶剤である脂肪族炭化水素系溶剤においては、同じ炭素数で異なる構造の化合物の混合物であってもよい。例えば、脂肪族炭化水素系溶媒としてデカンを使用した場合、同じ炭素数で異なる構造の化合物である2-メチルノナン、2,2-ジメチルオクタン、4-エチルオクタン、イソオクタンなどが脂肪族炭化水素系溶媒に含まれていてもよい。
また、上記同じ炭素数で異なる構造の化合物は、1種のみが含まれていてもよいし、上記のように複数種含まれていてもよい。
上記の溶剤は、複数混合してもよいし、上記以外の溶剤や水と混合し使用してもよい。但し、本発明の効果を十二分に奏するためには、現像液全体としての含水率が10質量%未満であることが好ましく、実質的に水分を含有しないことがより好ましい。
有機系現像液における有機溶剤(複数混合の場合は合計)の濃度は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは50~100質量%、さらに好ましくは85~100質量%、さらにより好ましくは90~100質量%、特に好ましくは95~100質量%である。最も好ましくは、実質的に有機溶剤のみからなる場合である。なお、実質的に有機溶剤のみからなる場合とは、微量の界面活性剤、酸化防止剤、安定剤、消泡剤などを含有する場合を含むものとする。
特に、有機系現像液は、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤及びエーテル系溶剤からなる群より選択される少なくとも1種類の有機溶剤を含有する現像液であるのが好ましい。
【0269】
有機系現像液の蒸気圧は、20℃に於いて、5kPa以下が好ましく、3kPa以下が更に好ましく、2kPa以下が特に好ましい。有機系現像液の蒸気圧を5kPa以下にすることにより、現像液の基板上あるいは現像カップ内での蒸発が抑制され、ウェハ面内の温度均一性が向上し、結果としてウェハ面内の寸法均一性が良化する。
5kPa以下の蒸気圧を有する具体的な例としては、1-オクタノン、2-オクタノン、1-ノナノン、2-ノナノン、2-ヘプタノン(メチルアミルケトン)、4-ヘプタノン、2-ヘキサノン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、フェニルアセトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤、酢酸ブチル、酢酸ペンチル、酢酸イソアミル、酢酸アミル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチル-3-エトキシプロピオネート、3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、蟻酸ブチル、蟻酸プロピル、乳酸エチル、乳酸ブチル、乳酸プロピル等のエステル系溶剤、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、sec-ブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、n-ヘキシルアルコール、n-ヘプチルアルコール、n-オクチルアルコール、n-デカノール等のアルコール系溶剤、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のグリコール系溶剤や、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、メトキシメチルブタノール等のグリコールエーテル系溶剤、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミドのアミド系溶剤、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤、オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素系溶剤が挙げられる。
特に好ましい範囲である2kPa以下の蒸気圧を有する具体的な例としては、1-オクタノン、2-オクタノン、1-ノナノン、2-ノナノン、2-ヘプタノン、4-ヘプタノン、2-ヘキサノン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、フェニルアセトン等のケトン系溶剤、酢酸ブチル、酢酸アミル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチル-3-エトキシプロピオネート、3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、乳酸エチル、乳酸ブチル、乳酸プロピル等のエステル系溶剤、n-ブチルアルコール、sec-ブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、n-ヘキシルアルコール、n-ヘプチルアルコール、n-オクチルアルコール、n-デカノール等のアルコール系溶剤、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のグリコール系溶剤や、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、メトキシメチルブタノール等のグリコールエーテル系溶剤、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミドのアミド系溶剤、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤、オクタン、デカン、ウンデカン等の脂肪族炭化水素系溶剤が挙げられる。
【0270】
有機系現像液は、塩基性化合物を含んでいてもよい。本発明で用いられる現像液が含みうる塩基性化合物の具体例及び好ましい例としては、前述した感活性光線又は感放射線性組成物が含みうる塩基性化合物におけるものと同様である。
【0271】
有機系現像液には、必要に応じて界面活性剤を適当量添加することができる。
界面活性剤としては特に限定されないが、例えば、イオン性や非イオン性のフッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤等を用いることができる。これらのフッ素及び/又はシリコン系界面活性剤として、例えば特開昭62-36663号公報、特開昭61-226746号公報、特開昭61-226745号公報、特開昭62-170950号公報、特開昭63-34540号公報、特開平7-230165号公報、特開平8-62834号公報、特開平9-54432号公報、特開平9-5988号公報、米国特許第5405720号明細書、同5360692号明細書、同5529881号明細書、同5296330号明細書、同5436098号明細書、同5576143号明細書、同5294511号明細書、同5824451号明細書記載の界面活性剤を挙げることができ、好ましくは、非イオン性の界面活性剤である。非イオン性の界面活性剤としては特に限定されないが、フッ素系界面活性剤又はシリコン系界面活性剤を用いることが更に好ましい。
界面活性剤の使用量は現像液の全量に対して、好ましくは0.0001~2質量%、さらに好ましくは0.0001~1質量%、特に好ましくは0.0001~0.1質量%である。
【0272】
現像方法としては、たとえば、現像液が満たされた槽中に基板を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、基板表面に現像液を表面張力によって盛り上げて一定時間静止することで現像する方法(パドル法)、基板表面に現像液を噴霧する方法(スプレー法)、一定速度で回転している基板上に一定速度で現像液吐出ノズルをスキャンしながら現像液を吐出しつづける方法(ダイナミックディスペンス法)などを適用することができる。
上記各種の現像方法が、現像装置の現像ノズルから現像液をレジスト膜に向けて吐出する工程を含む場合、吐出される現像液の吐出圧(吐出される現像液の単位面積あたりの流速)は好ましくは2mL/sec/mm2以下、より好ましくは1.5mL/sec/mm2以下、更に好ましくは1mL/sec/mm2以下である。流速の下限は特に無いが、スループットを考慮すると0.2mL/sec/mm2以上が好ましい。
吐出される現像液の吐出圧を上記の範囲とすることにより、現像後のレジスト残渣に由来するパターンの欠陥を著しく低減することができる。
このメカニズムの詳細は定かではないが、恐らくは、吐出圧を上記範囲とすることで、現像液がレジスト膜に与える圧力が小さくなり、レジスト膜・パターンが不用意に削られたり崩れたりすることが抑制されるためと考えられる。
なお、現像液の吐出圧(mL/sec/mm2)は、現像装置中の現像ノズル出口における値である。
【0273】
現像液の吐出圧を調整する方法としては、例えば、ポンプなどで吐出圧を調整する方法や、加圧タンクからの供給で圧力を調整することで変える方法などを挙げることができる。
【0274】
また、有機溶剤を含む現像液を用いて現像する工程の後に、他の溶媒に置換しながら、現像を停止する工程を実施してもよい。
【0275】
有機溶剤を含む現像液を用いて現像する工程の後には、リンス液を用いて洗浄する工程を含んでいてもよいが、スループット(生産性)、リンス液使用量等の観点から、リンス液を用いて洗浄する工程を含まなくてもよい。
【0276】
有機溶剤を含む現像液を用いて現像する工程の後のリンス工程に用いるリンス液としては、レジストパターンを溶解しなければ特に制限はなく、一般的な有機溶剤を含む溶液を使用することができる。上記リンス液としては、炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤及びエーテル系溶剤からなる群より選択される少なくとも1種類の有機溶剤を含有するリンス液を用いることが好ましい。
炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤及びエーテル系溶剤の具体例としては、有機溶剤を含む現像液において説明したものと同様のものを挙げることができ、特に、酢酸ブチル及びメチルイソブチルカルビノールを好適に挙げることができる。
有機溶剤を含む現像液を用いて現像する工程の後に、より好ましくは、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、炭化水素系溶剤からなる群より選択される少なくとも1種類の有機溶剤を含有するリンス液を用いて洗浄する工程を行い、更に好ましくは、アルコール系溶剤又は炭化水素系溶剤を含有するリンス液を用いて洗浄する工程を行うことが好ましい。
【0277】
リンス液に含まれる有機溶剤としては、有機溶剤の中でも炭化水素系溶剤を用いることも好ましく、脂肪族炭化水素系溶剤を用いることがより好ましい。リンス液に用いられる脂肪族炭化水素系溶剤としては、その効果がより向上するという観点から、炭素数5以上の脂肪族炭化水素系溶剤(例えば、ペンタン、ヘキサン、オクタン、デカン、ウンデカン、ドデカン、ヘキサデカン等)が好ましく、炭素原子数が8以上の脂肪族炭化水素系溶剤が好ましく、炭素原子数が10以上の脂肪族炭化水素系溶剤がより好ましい。
なお、上記脂肪族炭化水素系溶剤の炭素原子数の上限値は特に限定されないが、例えば、16以下が挙げられ、14以下が好ましく、12以下がより好ましい。
上記脂肪側炭化水素系溶剤の中でも、特に好ましくは、デカン、ウンデカン、ドデカンであり、最も好ましくはウンデカンである。
このようにリンス液に含まれる有機溶剤として炭化水素系溶剤(特に脂肪族炭化水素系溶剤)を用いることで、現像後にわずかにレジスト膜に染み込んでいた現像液が洗い流されて、膨潤がより抑制され、パターン倒れが抑制されるという効果が一層発揮される。
【0278】
上記各成分は、複数混合してもよいし、上記以外の有機溶剤と混合し使用してもよい。
【0279】
リンス液中の含水率は、10質量%以下が好ましく、より好ましくは5質量%以下、特に好ましくは3質量%以下である。含水率を10質量%以下にすることで、良好な現像特性を得ることができる。
【0280】
有機溶剤を含む現像液を用いて現像する工程の後に用いるリンス液の蒸気圧は、20℃に於いて0.05kPa以上、5kPa以下が好ましく、0.1kPa以上、5kPa以下が更に好ましく、0.12kPa以上、3kPa以下が最も好ましい。リンス液の蒸気圧を0.05kPa以上、5kPa以下にすることにより、ウェハ面内の温度均一性が向上し、更にはリンス液の浸透に起因した膨潤が抑制され、ウェハ面内の寸法均一性が良化する。
【0281】
リンス液には、界面活性剤を適当量添加して使用することもできる。
【0282】
リンス工程においては、有機溶剤を含む現像液を用いる現像を行ったウェハを上記の有機溶剤を含むリンス液を用いて洗浄処理する。洗浄処理の方法は特に限定されないが、たとえば、一定速度で回転している基板上にリンス液を吐出しつづける方法(回転塗布法)、リンス液が満たされた槽中に基板を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、基板表面にリンス液を噴霧する方法(スプレー法)、などを適用することができ、この中でも回転塗布方法で洗浄処理を行い、洗浄後に基板を2000rpm~4000rpmの回転数で回転させ、リンス液を基板上から除去することが好ましい。また、リンス工程の後に加熱工程(PostBake)を含むことも好ましい。ベークによりパターン間及びパターン内部に残留した現像液及びリンス液が除去される。リンス工程の後の加熱工程は、通常40~160℃、好ましくは70~95℃で、通常10秒~3分、好ましくは30秒から90秒間行う。
【0283】
リンス液を用いて洗浄する工程を有さない場合、例えば、特開2015-216403の段落〔0014〕~〔0086〕に記載の現像処理方法を採用できる。
【0284】
また、本発明のパターン形成方法は、有機系現像液を用いた現像工程と、アルカリ現像液を用いた現像工程とを有していてもよい。有機系現像液を用いた現像によって露光強度の弱い部分が除去され、アルカリ現像液を用いた現像を行うことによって露光強度の強い部分も除去される。このように現像を複数回行う多重現像プロセスにより、中間的な露光強度の領域のみを溶解させずにパターン形成が行えるので、通常より微細なパターンを形成できる(特開2008-292975号公報の段落[0077]と同様のメカニズム)。
【0285】
本発明における感活性光線又は感放射線性組成物、及び、本発明のパターン形成方法において使用される各種材料(例えば、レジスト溶剤、現像液、リンス液、反射防止膜形成用組成物、トップコート形成用組成物など)は、金属、ハロゲンを含む金属塩、酸、アルカリ、硫黄原子又はリン原子を含む成分等の不純物を含まないことが好ましい。ここで、金属原子を含む不純物としては、Na、K、Ca、Fe、Cu、Mn、Mg、Al、Cr、Ni、Zn、Ag、Sn、Pb、Li、またはこれらの塩などを挙げることができる。
これら材料に含まれる不純物の含有量としては、1ppm以下が好ましく、1ppb(parts per billion)以下がより好ましく、100ppt(parts per trillion)以下が更に好ましく、10ppt以下が特に好ましく、実質的に含まないこと(測定装置の検出限界以下であること)が最も好ましい。
各種材料から金属等の不純物を除去する方法としては、例えば、フィルターを用いた濾過を挙げることができる。フィルター孔径としては、ポアサイズ10nm以下が好ましく、5nm以下がより好ましく、3nm以下が更に好ましい。フィルターの材質としては、ポリテトラフロロエチレン製、ポリエチレン製、ナイロン製のフィルターが好ましい。フィルターは、これらの材質とイオン交換メディアを組み合わせた複合材料であってもよい。フィルターは、有機溶剤であらかじめ洗浄したものを用いてもよい。フィルター濾過工程では、複数種類のフィルターを直列又は並列に接続して用いてもよい。複数種類のフィルターを使用する場合は、孔径及び/又は材質が異なるフィルターを組み合わせて使用しても良い。また、各種材料を複数回濾過してもよく、複数回濾過する工程が循環濾過工程であっても良い。
また、各種材料に含まれる金属等の不純物を低減する方法としては、各種材料を構成する原料として金属含有量が少ない原料を選択する、各種材料を構成する原料に対してフィルター濾過を行う、装置内をテフロン(登録商標)でライニングする等してコンタミネーションを可能な限り抑制した条件下で蒸留を行う等の方法を挙げることができる。各種材料を構成する原料に対して行うフィルター濾過における好ましい条件は、上記した条件と同様である。
フィルター濾過の他、吸着材による不純物の除去を行っても良く、フィルター濾過と吸着材を組み合わせて使用しても良い。吸着材としては、公知の吸着材を用いることができ、例えば、シリカゲル、ゼオライトなどの無機系吸着材、活性炭などの有機系吸着材を使用することができる。
また、本発明の有機系処理液に含まれる金属等の不純物を低減する方法としては、各種材料を構成する原料として金属含有量が少ない原料を選択する、各種材料を構成する原料に対してフィルター濾過を行う、装置内をテフロン(登録商標)でライニングする等してコンタミネーションを可能な限り抑制した条件下で蒸留を行う等の方法を挙げることができる。各種材料を構成する原料に対して行うフィルター濾過における好ましい条件は、上記した条件と同様である。
フィルター濾過の他、吸着材による不純物の除去を行ってもよく、フィルター濾過と吸着材を組み合わせて使用してもよい。吸着材としては、公知の吸着材を用いることができ、例えば、シリカゲル、ゼオライトなどの無機系吸着材、活性炭などの有機系吸着材を使用することができる。
【0286】
[収容容器]
現像液及びリンス液に使用し得る有機溶剤(「有機系処理液」ともいう)としては、収容部を有する、化学増幅型又は非化学増幅型レジスト膜のパターニング用有機系処理液の収容容器に保存されたものを使用することが好ましい。この収容容器としては、例えば、収容部の、有機系処理液に接触する内壁が、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、及び、ポリエチレン-ポリプロピレン樹脂のいずれとも異なる樹脂、又は、防錆・金属溶出防止処理が施された金属から形成された、レジスト膜のパターニング用有機系処理液の収容容器であることが好ましい。この収容容器の上記収容部に、レジスト膜のパターニング用有機系処理液として使用される予定の有機溶剤を収容し、レジスト膜のパターニング時において、上記収容部から排出したものを使用することができる。
【0287】
上記の収容容器が、更に、上記の収容部を密閉するためのシール部を有している場合、このシール部も、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、及び、ポリエチレン-ポリプロピレン樹脂からなる群より選択される1種以上の樹脂とは異なる樹脂、又は、防錆・金属溶出防止処理が施された金属から形成されることが好ましい。
【0288】
ここで、シール部とは、収容部と外気とを遮断可能な部材を意味し、パッキンやOリングなどを好適に挙げることができる。
【0289】
ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、及び、ポリエチレン-ポリプロピレン樹脂からなる群より選択される1種以上の樹脂とは異なる樹脂は、パーフルオロ樹脂であることが好ましい。
【0290】
パーフルオロ樹脂としては、四フッ化エチレン樹脂(PTFE)、四フッ化エチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、四フッ化エチレン-六フッ化プロピレン共重合樹脂(FEP)、四フッ化エチレン-エチレン共重合体樹脂(ETFE)、三フッ化塩化エチレン-エチレン共重合樹脂(ECTFE)、フッ化ビニリデン樹脂(PVDF)、三フッ化塩化エチレン共重合樹脂(PCTFE)、フッ化ビニル樹脂(PVF)等を挙げることができる。
【0291】
特に好ましいパーフルオロ樹脂としては、四フッ化エチレン樹脂、四フッ化エチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、四フッ化エチレン-六フッ化プロピレン共重合樹脂を挙げることができる。
【0292】
防錆・金属溶出防止処理が施された金属における金属としては、炭素鋼、合金鋼、ニッケルクロム鋼、ニッケルクロムモリブデン鋼、クロム鋼、クロムモリブデン鋼、マンガン鋼等を挙げることができる。
【0293】
防錆・金属溶出防止処理としては、皮膜技術を適用することが好ましい。
【0294】
皮膜技術には、金属被覆(各種メッキ),無機被覆(各種化成処理,ガラス,コンクリート,セラミックスなど)および有機被覆(さび止め油,塗料,ゴム,プラスチックス)の3種に大別されている。
【0295】
好ましい皮膜技術としては、錆止め油、錆止め剤、腐食抑制剤、キレート化合物、可剥性プラスチック、ライニング剤による表面処理が挙げられる。
【0296】
中でも、各種のクロム酸塩、亜硝酸塩、ケイ酸塩、燐酸塩、オレイン酸、ダイマー酸、ナフテン酸等のカルボン酸、カルボン酸金属石鹸、スルホン酸塩、アミン塩、エステル(高級脂肪酸のグリセリンエステルや燐酸エステル)などの腐食抑制剤、エチレンジアンテトラ酢酸、グルコン酸、ニトリロトリ酢酸、ヒドロキシエチルエチオレンジアミン三作酸、ジエチレントリアミン五作酸などのキレート化合物及びフッ素樹脂ライニングが好ましい。特に好ましいのは、燐酸塩処理とフッ素樹脂ライニングである。
【0297】
また、直接的な被覆処理と比較して、直接、錆を防ぐわけではないが、被覆処理による防錆期間の延長につながる処理方法として、防錆処理にかかる前の段階である「前処理」を採用することも好ましい。
【0298】
このような前処理の具体例としては、金属表面に存在する塩化物や硫酸塩などの種々の腐食因子を、洗浄や研磨によって除去する処理を好適に挙げることができる。
【0299】
収容容器としては具体的に以下を挙げることができる。
【0300】
・Entegris社製 FluoroPurePFA複合ドラム(接液内面;PFA樹脂ライニング)
・JFE社製 鋼製ドラム缶(接液内面;燐酸亜鉛皮膜)
【0301】
また、本発明において用いることができる収容容器としては、特開平11-021393号公報[0013]~[0030]、及び特開平10-45961号公報[0012]~[0024]に記載の容器も挙げることができる。
【0302】
本発明の有機系処理液は、静電気の帯電、引き続き生じる静電気放電に伴う薬液配管や各種パーツ(フィルター、O-リング、チューブなど)の故障を防止する為、導電性の化合物を添加しても良い。導電性の化合物としては特に制限されないが、例えば、メタノールが挙げられる。添加良は特に制限されないが、好ましい現像特性を維持する観点で、10質量%以下が好ましく、更に好ましくは、5質量%以下である。薬液配管の部材に関しては、SUS(ステンレス鋼)、或いは帯電防止処理の施されたポリエチレン、ポリプロピレン、又はフッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン、パーフロオロアルコキシ樹脂など)で被膜された各種配管を用いることができる。フィルターやO-リングに関しても同様に、帯電防止処理の施されたポリエチレン、ポリプロピレン、又はフッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン、パーフロオロアルコキシ樹脂など)を用いることができる。
【0303】
なお、一般的に、現像液およびリンス液は、使用後に配管を通して廃液タンクに収容される。その際、リンス液として炭化水素系溶媒を使用すると、現像液中に溶解したレジストが析出し、ウエハ背面や、配管側面などに付着することを防ぐために、再度、レジストが溶解する溶媒を配管に通す方法がある。配管に通す方法としては、リンス液での洗浄後に基板の背面や側面などをレジストが溶解する溶媒で洗浄して流す方法や、レジストに接触させずにレジストが溶解する溶剤を配管を通るように流す方法が挙げられる。
配管に通す溶剤としては、レジストを溶解し得るものであれば特に限定されず、例えば上述した有機溶媒が挙げられ、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールモノエチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、2-ヘプタノン、乳酸エチル、1-プロパノール、アセトン、等を用いることができる。中でも好ましくは、PGMEA,PGME,シクロヘキサノンを用いることができる。
【0304】
[電子デバイスの製造方法]
また、本発明は、上記したパターン形成方法を含む、電子デバイスの製造方法にも関する。本発明の電子デバイスの製造方法により製造された電子デバイスは、電気電子機器(例えば、家電、OA(Office Automation)関連機器、メディア関連機器、光学用機器、及び通信機器等)に、好適に搭載される。
【0305】
[フォトマスク製造用感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、フォトマスクの製造方法]
本発明の組成物の好ましい態様の1つは、フォトマスク製造用に用いるフォトマスク製造用感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物である。
また、本発明は上記フォトマスク製造用感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いるフォトマスクの製造方法にも関する。
【実施例】
【0306】
以下に実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、及び処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されるべきものではない。
実施例4、5、10~16、24、26、29、30、33~35、37、38、42、45、49~52、54及び55は、「実施例」とあるのを「参考例」に読み替えるものとする。
【0307】
<樹脂(P)>
使用した樹脂(P)の繰り返し単位の構造及びその含有量(モル比率)、重量平均分子量(Mw)、及び分散度(Mw/Mn)を以下に示す。
【0308】
【0309】
【0310】
【0311】
【0312】
【0313】
【0314】
【0315】
【0316】
【0317】
<光酸発生剤(A)>
使用した光酸発生剤(A)の構造を以下に示す。
【0318】
【0319】
【0320】
【0321】
【0322】
【0323】
【0324】
【0325】
【0326】
【0327】
【0328】
下記A-11及びA-12は光酸発生剤(A)ではないが、参考例において光酸発生剤として用いた。
【0329】
【0330】
【0331】
<光酸発生剤(B)>
使用した光酸発生剤(B)の構造を以下に示す。
【0332】
【0333】
【0334】
<塩基性化合物(C)>
使用した塩基性化合物(C)の構造を以下に示す。
【0335】
【0336】
<架橋剤>
使用した架橋剤の構造を以下に示す。
【0337】
【0338】
<溶剤>
使用した溶剤を以下に示す。
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
PGME:プロピレングリコールモノメチルエーテル
EL:乳酸エチル
【0339】
[レジスト組成物の調製及び塗設]
(1)支持体の準備
酸化窒化Crを蒸着した8インチウェハー(通常のフォトマスクブランクスに使用する遮蔽膜処理を施した物)を準備した。
(2)レジスト組成物の調製
表1及び2に示す成分を同表に示す溶剤に溶解させて、同表に示す固形分含有量(全固形分濃度)で溶液を調製し、これを0.03μmのポアサイズを有するポリエチレンフィルターで濾過してレジスト組成物を調製した。
(3)レジスト膜の作製
上記8インチウェハー上に東京エレクトロン(株)製スピンコーターMark8を用いてレジスト組成物を塗布し、120℃、600秒間ホットプレート上で乾燥して、膜厚50nmのレジスト膜を得た。すなわち、レジスト塗布ウェハーを得た。
【0340】
表1及び2において、溶剤以外の各成分の含有量(質量%)は、レジスト組成物中の全固形分に対する含有比率を意味する。また、下記表1には用いた溶剤の全溶剤に対する含有比率(質量%)を記載した。
【0341】
【0342】
【0343】
[EB露光及び現像]
(4)レジストパターンの作製
上記(3)で得られたレジスト膜に電子線描画装置((株)アドバンテスト製;F7000S、加速電圧50KeV)を用いて、パターン照射を行った。照射後に、100℃、600秒ホットプレート上で加熱し、2.38質量%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)水溶液を用いて60秒間浸漬した後、30秒間、水でリンスして乾燥した。
【0344】
[評価]
(5)レジストパタ-ンの評価
(調製直後のレジスト組成物を用いた場合の解像力の評価)
調製直後のレジスト組成物を用いて作製したレジストパターンについて以下の評価を行った。
線幅50nmの1:1ラインアンドスペースパターンを解像するときの照射エネルギーを感度(Eop1)とした。上記感度(Eop1)を示す露光量における限界解像力(ラインとスペース(ライン:スペース=1:1)が分離解像する最小の線幅)を調製直後のレジスト組成物を用いた場合の解像力(「r1」ともいう。)(単位:nm)とした。
【0345】
(調製した後一定期間が経過したレジスト組成物を用いた場合の解像力の評価)
調製した後、40℃の温度下にて1ヵ月間保存したレジスト組成物を用いて、上記と同様の手順にて、感度(Eop1)を求め、上記感度(Eop1)を示す露光量における限界解像力を評価し、調製した後一定期間が経過したレジスト組成物を用いた場合の解像力(「r2」ともいう。)(単位:nm)とした。
【0346】
(レジスト組成物経時前後の解像力変化の評価)
上記で求めた調製した後一定期間が経過したレジスト組成物を用いた場合の解像力(r2)と調製直後のレジスト組成物を用いた場合の解像力(r1)の差からレジスト組成物経時前後の解像力変化(「△r」ともいう。)を求めた。具体的には下記式1で△rを算出した。
△r=r2-r1 式1
△rの数値が小さいほどレジスト組成物経時後の性能劣化が小さく、性能良好であることを示す。
【0347】
(調製直後のレジスト組成物を用いた場合の現像欠陥)
調製直後のレジスト組成物を用いて作製したレジストパターンについて以下の評価を行った。
上記感度(Eop1)で形成した線幅50nmの1:1ラインアンドスペースパターンをケー・エル・エー・テンコール社製の欠陥検査装置KLA2360(商品名)を用い、欠陥検査装置のピクセルサイズを0.13μmに、また閾値を20に設定して、比較イメージとピクセル単位の重ね合わせによって生じる差異から抽出される欠陥(個数/cm2)を検出して、単位面積あたりの欠陥数(個/cm2)を算出した。その後、欠陥レビューを行うことで全欠陥の中から現像欠陥を分類抽出し、調製直後のレジスト組成物を用いた場合の単位面積あたりの現像欠陥数(「d1」ともいう。)(単位:個/cm2)を算出した。
【0348】
(調製した後一定期間が経過したレジスト組成物を用いた場合の現像欠陥)
調製した後、40℃の温度下にて1ヵ月間保存したレジスト組成物を用いて、上記と同様の手順にて、調製した後一定期間が経過したレジスト組成物を用いた場合の単位面積あたりの現像欠陥数(「d2」ともいう。)(単位:個/cm2)を算出した。単位面積あたりの現像欠陥数の値が0.5未満のものをA、0.5以上1.0未満のものをB、1.0以上5.0未満のものをC、5.0以上のものをDとした。値が小さいほど良好な性能であることを示す。
【0349】
(レジスト組成物経時前後の現像欠陥性能変化の評価)
上記で求めた調製した後一定期間が経過したレジスト組成物を用いた場合の単位面積あたりの現像欠陥数(d2)と調製直後のレジスト組成物を用いた場合の単位面積あたりの現像欠陥数(d1)の差からレジスト組成物経時前後の現像欠陥性能変化(「△d」ともいう。)を求めた。具体的には下記式2で△dを算出した。
△d=d2-d1 式2
△dの数値が小さいほどレジスト組成物経時後の性能劣化が小さく、性能良好であることを示す。
△dが1.0未満である場合をA、1.0以上2.0未満である場合をB、2.0以上3.0未満である場合をC、3.0以上である場合をDとした。
【0350】
調製した後一定期間が経過したレジスト組成物を用いた場合の解像力(r2)、調製した後一定期間が経過したレジスト組成物を用いた場合の単位面積あたりの現像欠陥数(d2)、レジスト組成物経時前後の解像力変化(△r)、及びレジスト組成物経時前後の現像欠陥性能変化(△d)の結果を下記表3及び4に示した。
また、下記表3及び4には、レジスト組成物中の塩基性化合物(C)の含有量に対する光酸発生剤(B)の含有量の比(モル比)である(B)/(C)、光酸発生剤(A)の含有量と光酸発生剤(B)の含有量との和に対する光酸発生剤(B)の含有量と塩基性化合物(C)の含有量との和の比(モル比)である[(B)+(C)]/[(A)+(B)]、光酸発生剤(B)の含有量に対する光酸発生剤(A)の含有量の比(モル比)である(A)/(B)も記載した。
【0351】
【0352】
【0353】
実施例の結果より、本発明のレジスト組成物は、解像力が高く、現像欠陥が少なく、かつ調製後一定期間経過した後も解像力が高く、現像欠陥が少ないことが分かる。
参考例では、本発明における光酸発生剤(A)を用いていないため、解像力が実施例よりも劣っていた。なお、参考例と実施例の比較から、調製後一定期間経過した後の解像力の低下及び現像欠陥の悪化という課題は光酸発生剤(A)を用いない参考例では生じ難いことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0354】
本発明により、パターン形成方法において解像力が高く、現像欠陥が少なく、かつ感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を調製した後一定期間が経過した場合にも解像力が高く、現像欠陥が少ない感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、上記感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いた感活性光線性又は感放射線性膜、パターン形成方法、電子デバイスの製造方法、フォトマスク製造用感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、及びフォトマスクの製造方法を提供することができる。
【0355】
本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。
本出願は、2020年3月30日出願の日本特許出願(特願2020-061655)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。