IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 国立大学法人三重大学の特許一覧 ▶ 独立行政法人産業技術総合研究所の特許一覧 ▶ 株式会社精工技研の特許一覧

<>
  • 特許-光電界センサヘッド 図1
  • 特許-光電界センサヘッド 図2
  • 特許-光電界センサヘッド 図3
  • 特許-光電界センサヘッド 図4
  • 特許-光電界センサヘッド 図5
  • 特許-光電界センサヘッド 図6
  • 特許-光電界センサヘッド 図7
  • 特許-光電界センサヘッド 図8
  • 特許-光電界センサヘッド 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-07
(45)【発行日】2023-12-15
(54)【発明の名称】光電界センサヘッド
(51)【国際特許分類】
   G01R 29/08 20060101AFI20231208BHJP
   G02F 1/035 20060101ALI20231208BHJP
   H01Q 17/00 20060101ALI20231208BHJP
【FI】
G01R29/08 F
G02F1/035
H01Q17/00
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020101056
(22)【出願日】2020-06-10
(65)【公開番号】P2021196203
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2023-02-07
(73)【特許権者】
【識別番号】304026696
【氏名又は名称】国立大学法人三重大学
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000147350
【氏名又は名称】株式会社精工技研
(74)【代理人】
【識別番号】100178906
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 充和
(72)【発明者】
【氏名】村田 博司
(72)【発明者】
【氏名】黒川 悟
(72)【発明者】
【氏名】鳥羽 良和
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 正博
【審査官】島田 保
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-035268(JP,A)
【文献】国際公開第95/002192(WO,A1)
【文献】特開2001-174766(JP,A)
【文献】特開平10-239647(JP,A)
【文献】特開平05-088124(JP,A)
【文献】特開平06-308437(JP,A)
【文献】特開2017-009408(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 29/00-29/26
G02F 1/035
H01Q 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気光学効果を有する材料からなる基板上に形成された光変調器と、
前記光変調器に接続された入力光ファイバ及び出力光ファイバと、
前記基板と前記入力光ファイバ及び前記出力光ファイバの一部を収納したパッケージと、を有し、
前記光変調器は、光導波路と、該光導波路に電界を印加するために設けた変調電極と、該変調電極に接続され前記基板上に配置されたアンテナと、を有し、前記アンテナに誘起される電圧信号により前記光導波路に入力された光波を変調し変調光として出力するように構成され、
前記基板の裏面側又は表面側のいずれか一方に、前記裏面側又は前記表面側より入射する電波を吸収する電波吸収体を配置したことを特徴とする光電界センサヘッド。
【請求項2】
電気光学効果を有する材料からなる基板上に形成された光変調器と、
前記光変調器に接続された入出力光ファイバと、
前記基板と前記入出力光ファイバの一部を収納したパッケージと、を有し、
前記光変調器は、光導波路と、該光導波路に電界を印加するために設けた変調電極と、該変調電極に接続され前記基板上に配置されたアンテナと、を有し、前記アンテナに誘起される電圧信号により前記光導波路に入力された光波を変調し変調光として出力するように構成され、
前記光変調器は、入射光を内部で反射して折り返す反射型光変調器であって、
前記基板の裏面側又は表面側のいずれか一方に、前記裏面側又は前記表面側より入射する電波を吸収する電波吸収体を配置したことを特徴とする光電界センサヘッド。
【請求項3】
電気光学効果を有する材料からなる1つの基板上に形成された2つの光変調器と、
前記2つの光変調器にそれぞれ接続された入力光ファイバ及び出力光ファイバと、
前記基板と前記入力光ファイバ及び前記出力光ファイバの一部を収納したパッケージと、を有し、
前記2つの光変調器は、それぞれ、光導波路と、該光導波路に電界を印加するために設けた変調電極と、該変調電極に接続され前記基板上に配置されたアンテナと、を有し、前記アンテナに誘起される電圧信号により前記光導波路に入力された光波を変調し変調光として出力するように構成され、
前記2つのアンテナは、互いにほぼ直交する方向の電界成分に対して最大感度を有するアンテナであって、
前記基板の裏面側又は表面側のいずれか一方に、前記裏面側又は前記表面側より入射する電波を吸収する電波吸収体を配置したことを特徴とする光電界センサヘッド。
【請求項4】
電気光学効果を有する材料からなる1つの基板上に形成された2つの光変調器と、
前記2つの光変調器にそれぞれ接続された入出力光ファイバと、
前記基板と前記入出力光ファイバの一部を収納したパッケージと、を有し、
前記2つの光変調器は、それぞれ、光導波路と、該光導波路に電界を印加するために設けた変調電極と、該変調電極に接続され前記基板上に配置されたアンテナと、を有し、前記アンテナに誘起される電圧信号により前記光導波路に入力された光波を変調し変調光として出力するように構成され、
前記2つの光変調器は、それぞれ、入射光を内部で反射して折り返す反射型光変調器であって、
前記2つのアンテナは、互いにほぼ直交する方向の電界成分に対して最大感度を有するアンテナであって、
前記基板の裏面側又は表面側のいずれか一方に、前記裏面側又は前記表面側より入射する電波を吸収する電波吸収体を配置したことを特徴とする光電界センサヘッド。
【請求項5】
前記電波吸収体は、前記パッケージ内に収納されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の光電界センサヘッド。
【請求項6】
前記電波吸収体は、前記基板の裏面に貼り付けられていることを特徴とする請求項5に記載の光電界センサヘッド。
【請求項7】
前記電波吸収体は、前記パッケージの外側に貼り付けられていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の光電界センサヘッド。
【請求項8】
前記光変調器は、前記光導波路に入力された光波の位相を変調し位相変調光として出力するように構成したことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の光電界センサヘッド。
【請求項9】
前記光変調器は、分岐干渉型の光導波路を用いた分岐干渉型光変調器であって、前記光導波路に入力された光波の強度を変調し強度変調光として出力するように構成したことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の光電界センサヘッド。
【請求項10】
前記2つの光変調器は第1及び第2の光変調器から構成され、
前記第1の光変調器は第1の光導波路と、該第1の光導波路に電界を印加するための第1及び第2の変調電極とを有し、
前記第2の光変調器は第2の光導波路と、該第2の光導波路に電界を印加するための第3及び第4の変調電極とを有し、
前記第1の光導波路と前記第2の光導波路は互いに交差し、
前記基板上に長方形の4つの頂点付近にそれぞれ右回りに順に配置された第1、第2、第3及び第4のパッチアンテナを有し、
前記第1の光導波路は前記第1及び第2のパッチアンテナ間と前記第3及び第4のパッチアンテナ間を通過し、前記第2の光導波路は前記第1及び第4のパッチアンテナ間と前記第2及び第3のパッチアンテナ間を通過するように配置され、
前記第1の変調電極は前記第1及び第2のパッチアンテナに接続され、前記第2の変調電極は前記第4及び第3のパッチアンテナに接続され、前記第3の変調電極は前記第1及び第4のパッチアンテナに接続され、前記第4の変調電極は前記第2及び第3のパッチアンテナに接続され、
前記第1、第2のパッチアンテナ間に誘起される電圧信号と前記第3、第4のパッチアンテナ間に誘起される電圧信号により前記第1の光導波路を伝搬する光波が位相変調され、
前記第1、第4のパッチアンテナ間に誘起される電圧信号と前記第2、第3のパッチアンテナ間に誘起される電圧信号により前記第2の光導波路を伝搬する光波が位相変調されるように構成したことを特徴とする請求項3又は4に記載の光電界センサヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、その場の電磁波などの電界を検出するため、光変調器を用いてその場の電磁波を光信号に変換して出力する光電界センサヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
EMC分野における電磁波ノイズの検出やイミュニティ試験等における電磁波強度の測定、放送用又は通信用の送信アンテナから放出される電磁波の監視等において、電磁波の電界強度や位相を任意の場所で正確に測定することが必要とされる。従来、このような目的で、光ファイバにより入力された入力光の強度をその場の電界強度に応じて変調して光ファイバにより出力する光電界センサヘッドと、その出力光を電気信号に変換するO/E変換器とを用い、そのO/E変換された電気信号により、その場の電界を測定する光電界センサが使用されている。主として誘電体材料で構成され、電波周波数での応答が可能な広帯域特性を有する光電界センサヘッドを測定箇所に設置し、それと光源およびO/E変換器などの測定機器との間を光ファイバで接続することにより、測定する電磁波や電磁ノイズ、落雷などによる誘導の影響を受けないで、電磁波の強度や位相特性を正確に測定することができるという特徴がある。
【0003】
通常、光電界センサヘッドは、電気光学効果を有する材料から作られた基板、例えばニオブ酸リチウム結晶基板上に、光導波路と、その光導波路近傍に設置された変調電極とにより構成した光変調器と、アンテナとを備え、電磁波等の電界によりアンテナに誘起された電圧を変調電極に印加して光変調器を通過する光波の強度を変調することを動作原理としている。この場合、アンテナは基板上に一体として形成されるか、又は基板の外部に設置される。
【0004】
このような光電界センサヘッドの従来例としては、高周波数化に対応した光電界センサが特許文献1に、3軸方向の電界検出を可能にした光電界センサヘッドが特許文献2に記載されている。また、光電界センサを用いた電磁波の測定システムの例が特許文献3及び4に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平11-352165号公報
【文献】特開2007-78633号公報
【文献】特開2014-2005号公報
【文献】特開2017-9445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の光電界センサヘッドは、光電界センサヘッドを構成する光導波路型の光変調器とその変調電極に接続されるアンテナを、フォトリソグラフィー等の技術により基板の片側の表面に形成し、光導波路の入出射端に光ファイバを接続した後、光変調器を保護するため、基板と光ファイバの接続部を電磁波を透過するパッケージ内に収納して構成されている。しかし、従来の光電界センサヘッドを用いて電磁波を測定する場合、光変調器の基板として通常用いるニオブ酸リチウム結晶基板等は電磁波を透過するため、表面側からアンテナに到達する電磁波と裏面側からアンテナに到達する電磁波を分離して測定したい場合に対応できなかった。すなわち、電磁波の伝搬方向を分離して測定することができなかった。
【0007】
本発明の目的は、上記の課題を解決し、電磁波の伝搬方向を分離して測定することが可能な光電界センサヘッドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、第1の観点では、本発明による光電界センサヘッドは、電気光学効果を有する材料からなる基板上に形成された光変調器と、前記光変調器に接続された入力光ファイバ及び出力光ファイバと、前記基板と前記入力光ファイバ及び前記出力光ファイバの一部を収納したパッケージと、を有し、前記光変調器は、光導波路と該光導波路に電界を印加するために設けた変調電極と、該変調電極に接続され前記基板上に配置されたアンテナと、を有し、前記アンテナに誘起される電圧信号により前記光導波路に入力された光波を変調し変調光として出力するように構成され、前記基板の裏面側又は表面側のいずれか一方に、前記裏面側又は前記表面側より入射する電波を吸収する電波吸収体を配置したことを特徴とする。
【0009】
上記のように、本発明における光電界センサヘッドでは、基板の裏面側又は表面側のいずれか一方に、その方向から入射する電波を吸収する電波吸収体を配置したことにより、裏面側又は表面側からアンテナに到達する電磁波を遮断し、基板の表面、裏面のいずれか一方の側から到達する電磁波に対してのみ有効な検出感度を持たせるものである。これにより電磁波の伝搬方向を分離して測定することが可能となる。なお、ここで基板の表面側とは、光導波路や変調電極が形成される表面である。光電界センサヘッドの基板として通常用いられる誘電体基板は電磁波を透過するので、アンテナや変調電極以外の例えば接地電極等の電波を遮断する金属体等が形成されていない面を電磁波の検出面とし、その裏側の面に電波吸収体を設置すればよい。また、電波吸収体は、パッケージの内部に収納するか、又はパッケージの外側に貼り付けてもよい。又はパッケージの一部を電波吸収体を用いて構成してもよい。
【0010】
第2の観点では、本発明による光電界センサヘッドは、電気光学効果を有する材料からなる1つの基板上に形成された2つの光変調器と、前記2つの光変調器にそれぞれ接続された入力光ファイバ及び出力光ファイバと、前記基板と前記入力光ファイバ及び前記出力光ファイバの一部を収納したパッケージと、を有し、前記2つの光変調器は、それぞれ、光導波路と、該光導波路に電界を印加するために設けた変調電極と、該変調電極に接続され前記基板上に配置されたアンテナと、を有し、前記アンテナに誘起される電圧信号により前記光導波路に入力された光波を変調し変調光として出力するように構成され、前記2つのアンテナは、互いにほぼ直交する方向の電界成分に対して最大感度を有するアンテナであって、前記基板の裏面側又は表面側のいずれか一方に、前記裏面側又は前記表面側より入射する電波を吸収する電波吸収体を配置したことを特徴とする。
【0011】
本観点の発明における光電界センサヘッドは、2組の光変調器とアンテナを有し、それぞれの光変調器とアンテナの組が互いにほぼ直交する方向の電界成分を検出できるように配置することにより、電磁波の2つの直交する偏波成分を同時に分離して測定できるように構成したものである。さらに、基板の裏面側又は表面側のいずれか一方に、裏面側又は表面側より入射する電波を吸収する電波吸収体を配置したことにより、裏面側又は表面側からアンテナに到達する電磁波を遮断し、基板の表面、裏面のいずれか一方の側から到達する電磁波に対して有効な検出感度を持たせるものである。これにより電磁波の伝搬方向を分離して測定することが可能となる。以上により、本観点の発明の光電界センサヘッドは、電磁波の伝搬方向及び偏波成分を各時点において同時に分離して測定可能となる。
【0012】
第3の観点では、本発明は、前記第1又は第2の観点の光電界センサヘッドにおいて、前記電波吸収体は、前記パッケージ内に収納されていることを特徴とする。本観点の発明では、電波吸収体は基板とともにパッケージ内に収納される。例えば、基板の裏面への貼り付け、パッケージの基板裏面側又は表面側の内面への貼り付け、基板とパッケージ間への挿入固定、等の手段が可能である。パッケージ内に電波吸収体を収納することにより、電波吸収体の環境条件による性能劣化に対する保護、破損の防止等の効果が期待できる。
【0013】
第4の観点では、本発明は、前記第3の観点の光電界センサヘッドにおいて、前記電波吸収体は、前記基板の裏面に貼り付けられていることを特徴とする。電波吸収体を基板の裏面に直接貼り付けることにより、基板上に設置されたアンテナと電波吸収体の間隔を最も狭めることができ、裏面側から侵入する電波に対する遮断を最も確実に行うことができる。
【0014】
第5の観点では、本発明は、前記第1又は第2の観点の光電界センサヘッドにおいて、前記電波吸収体は、前記パッケージの外側に貼り付けられていることを特徴とする。本観点の発明では、光変調器と入力及び出力光ファイバをパッケージに収納した後の最後の工程として電波吸収体を設置することができるので、光変調器や光ファイバが強固に保護された取り扱いの容易な状態で電波吸収体の設置工程が行えるという利点がある。
【0015】
第6の観点では、本発明は、前記第1乃至第5のいずれかの観点の光電界センサヘッドにおいて、前記光変調器は、前記光導波路に入力された光波の位相を変調し位相変調光として出力するように構成したことを特徴とする。本観点の発明における光電界センサヘッドは、その場の電界によって、入力した光波を強度変調するのではなく、位相を変調して位相変調光として出力する。その後、光源及びO/E変換器等を備える端末システムにおいて、出力光ファイバから戻ってきた位相変調光を変換手段により強度変調光に変換し、O/E変換器により電気信号に変換するものである。
【0016】
このように、入力した光波を位相変調する場合は、電気光学効果を有する材料からなる基板、例えばニオブ酸リチウム結晶基板上に、単なる直線状の光導波路を形成し、その光導波路に電界を印加するための変調電極を光導波路上、又は光導波路を挟んで設けることにより容易に実現できる。この場合は、従来の強度変調器であるマッハツェンダ型光変調器のようなバイアス点はないので、光導波路形成においては特別な制御は必要なく、伝搬している光波に位相シフトを与えるだけであるので温度等の周囲環境による変動はほとんど生じない。このため、光電界センサヘッドの製造コストを大幅に低減可能である。一方、本観点の発明においては、端末システムにおいて、光電界センサヘッドの出力光ファイバからの位相変調光を強度変調光に変換するための変換手段が必要となる。この変換手段は、位相変調光をそれと同じ波長成分を有する光波と干渉させる手段を構成すること等により実現できる。
【0017】
第7の観点では、本発明は、前記第1乃至第5のいずれかの観点の光電界センサヘッドにおいて、前記光変調器は、分岐干渉型の光導波路を用いた分岐干渉型光変調器であって、前記光導波路に入力された光波の強度を変調し強度変調光として出力するように構成したことを特徴とする。本観点の発明は、光変調器として、従来から最も一般的に用いられている分岐干渉型光変調器を用いるものである。分岐干渉型光変調器の基本構成は、光の入射側から延びる入力光導波路と、入力光導波路から二股に分岐して延びる2本の位相シフト導波路と、その2本の位相シフト光導波路が合流して光の出射側につながる出力光導波路と、位相シフト導波路に並行に配置された変調電極により構成される。電圧信号を変調電極を介して位相シフト導波路に印加し、位相シフト光導波路の屈折率を変化させ、その2つの位相シフト光導波路を通過した光が合流して干渉し、光強度が変調される。小型、高効率、広帯域の光変調器が得られ、端末システムにおいて、位相変調器のような変換手段が不要であり、O/E変換器により目的とする電気信号が得られる。
【0018】
第8の観点では、本発明は、前記第6又は第7の観点の光電界センサヘッドにおいて、前記光変調器は、入射光を内部で反射して折り返す反射型光変調器であって、前記入力光ファイバと出力光ファイバは1本の入出力光ファイバで構成されていることを特徴とする。本観点の発明の反射型光変調器は、入射光を変調電極を通過した後の出力側の光導波路部分において反射させて入射側の光導波路に戻す構成を用いる。このような反射型の光変調器の構成を用いることにより、透過型の光変調器に比べて同じ電極長に対して2倍の長さ光が透過するので、光変調器の高効率化、広帯域化が可能となり、かつ小型化が可能となる。さらに、光変調器に接続される光ファイバが1本であるので取り扱いが容易となる。
【0019】
第9の観点では、本発明は、前記第2の観点の光電界センサヘッドにおいて、前記2つの光変調器は第1及び第2の光変調器から構成され、前記第1の光変調器は第1の光導波路と、該第1の光導波路に電界を印加するための第1及び第2の変調電極とを有し、前記第2の光変調器は第2の光導波路と、該第2の光導波路に電界を印加するための第3及び第4の変調電極とを有し、前記第1の光導波路と前記第2の光導波路は互いに交差し、前記基板上に長方形の4つの頂点付近にそれぞれ右回りに順に配置された第1、第2、第3及び第4のパッチアンテナを有し、前記第1の光導波路は前記第1及び第2のパッチアンテナ間と前記第3及び第4のパッチアンテナ間を通過し、前記第2の光導波路は前記第1及び第4のパッチアンテナ間と前記第2及び第3のパッチアンテナ間を通過するように配置され、前記第1の変調電極は前記第1及び第2のパッチアンテナに接続され、前記第2の変調電極は前記第4及び第3のパッチアンテナに接続され、前記第3の変調電極は前記第1及び第4のパッチアンテナに接続され、前記第4の変調電極は前記第2及び第3のパッチアンテナに接続され、前記第1、第2のパッチアンテナ間に誘起される電圧信号と前記第3、第4のパッチアンテナ間に誘起される電圧信号により前記第1の光導波路を伝搬する光波が位相変調され、前記第1、第4のパッチアンテナ間に誘起される電圧信号と前記第2、第3のパッチアンテナ間に誘起される電圧信号により前記第2の光導波路を伝搬する光波が位相変調されるように構成したことを特徴とする。
【0020】
上記のように、本観点の発明においては、長方形の4つの頂点付近にそれぞれ右回りに順に配置された第1、第2、第3及び第4のパッチアンテナが測定する電磁波の電界を受信する。先ず、第1及び第2のパッチアンテナ間に誘起される電圧が第1の変調電極に印加され、第4及び第3のパッチアンテナ間に誘起される電圧が第2の変調電極に印加される。第1及び第2の変調電極により第1の光導波路を伝搬する光波が変調される。第1及び第2のパッチアンテナ間を結ぶ向きと第3及び第4のパッチアンテナ間を結ぶ向きは同じであり、これをY方向とすると、検出する電磁波のY方向の電界成分により第1の光導波路を伝搬する光波の位相が変調されることになる。
同様に、第1及び第4のパッチアンテナ間に誘起される電圧が第3の変調電極に印加され、第2及び第3のパッチアンテナ間に誘起される電圧が第4の変調電極に印加される。第3及び第4の変調電極により第2の光導波路を伝搬する光波が変調される。第1及び第4のパッチアンテナ間を結ぶ向きと第2及び第3のパッチアンテナ間を結ぶ向きは共にY方向に直交する向きであり、これをX方向とすると、上記の電磁波のX方向の電界成分により第2の光導波路を伝搬する光波の位相が変調されることになる。
【0021】
この結果、第1及び第2の光導波路を出力したそれぞれの光波の位相変化を検出すれば、X方向、及びY方向の電界成分を分離して測定することができる。ここで、位相変調された光波の位相変化量は、参照光と干渉させた後、O/E変換器により電気信号に変換することにより、又は、光スペクトラムアナライザにより変調光成分のサイドバンドの大きさを測定すること等により得ることができる。
【0022】
また、本観点の発明に用いる電気光学効果を有する基板の代表的なものは、ニオブ酸リチウム結晶基板であり、この場合、Z板のみでなくX板も用いることができる。いずれの基板においても、Z軸方向に電界が印加されるように変調電極を構成する。
【0023】
本観点の発明においては、第1の光導波路を伝搬する光波に対して、第1及び第2の2つの変調電極により変調電圧が印加され、第2の光導波路を伝搬する光波に対して、第3及び第4の2つの変調電極により変調電圧が印加される。一般的に、光導波路を伝搬する光波の変調効率は、変調電圧が印加される部分の長さに依存して増加する。一方、周波数が高い場合、周波数が増加するほど、電極容量の影響が大きくなることや、電極長を光信号が伝搬する時間より電圧信号の位相変化が速いと変調度が低下することから、有効な変調を行うためには1つの変調電極の長さを短くする必要がある。本観点の発明では、変調電極は2箇所あるので、従来の1つの変調電極で変調する場合に比べて、高効率化が可能となり、電界検出の高感度化が可能となる。このように、本観点の発明においては、4つのパッチアンテナの配置により、X方向、Y方向のそれぞれ2つの変調電極に電圧を誘起でき、効率的な変調を行うことができる。また、1つの基板上で構成できるので小型化が可能である。
【発明の効果】
【0024】
上記のように、本発明により、電磁波の伝搬方向を分離して測定することが可能な光電界センサヘッドが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の実施例1の光電界センサヘッドの構成を模式的に示す図であり、図1(a)は透過型の側面図、図1(b)は透過型の平面図。
図2】実施例1に用いる光変調器の詳細な構成を模式的に示す図であり、図2(a)は平面図、図2(b)は図2(a)のA-A断面図。
図3】実施例1の光電界センサヘッドを用いた測定システムのブロック構成図の一例。
図4】実施例2の光電界センサヘッドの構成例を示す図であり、図4(a)は光変調器の構成を拡大して示す模式的な上面図、図4(b)は光電界センサヘッドの透過型の側面図。
図5】実施例2の光電界センサヘッドを用いた測定システムのブロック構成図の一例。
図6】実施例3の光電界センサヘッドに用いる光変調器の構成を拡大して示す模式的な上面図。
図7】実施例3の光電界センサヘッドの透過型の側面図。
図8】実施例3の光電界センサヘッドを用いた測定システムの模式的な構成図。
図9】実施例3の光電界センサヘッドの試作器の測定結果の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して本発明の光電界センサヘッドを実施例により詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一符号を付し、その重複した説明を省略する。
【実施例1】
【0027】
図1は本発明の実施例1に係る光電界センサヘッドの構成を模式的に示す図であり、図1(a)は透過型の側面図、図1(b)は透過型の平面図である。図1において、本実施例の光電界センサヘッド10は、光変調器1と、光変調器1に接続された入出力光ファイバ2と、絶縁体材料で構成され、光変調器1と入出力光ファイバ2の一部を収納したパッケージ3とを備えている。光変調器1は、電気光学効果を有する結晶基板であるXカットのニオブ酸リチウム(LiNbO)結晶から作られた基板4の上面側に形成された分岐干渉型光導波路5と変調電極6と変調電極6に接続されたアンテナ7とを備えた反射型のマッハツェンダ型光変調器である。入射光を入射側と対向する端面に設けた光反射部8で反射して折り返す構成であり、入力光ファイバと出力光ファイバは1本の入出力光ファイバ2で構成されている。入出力光ファイバ2の先端は、光変調器1の入出射端面と端面同士を接着固定するため、フェルール9内に挿入され固定されている。光変調器1及び入出力光ファイバ2の一部は、絶縁体材料で構成された直方体状のパッケージ3の中に収納されている。光変調器1はパッケージ3に固定された台座11に固定され、入出力光ファイバ2はゴム状の固定部品12によりパッケージ3に固定されている。また、本実施例においては、光変調器1の基板4の裏面側から到達する電磁波を吸収するため、パッケージ3の下側に電波吸収体13を貼り付けている。
【0028】
図2は、本実施例に用いる光変調器1の詳細な構成を模式的に示す図であり、図2(a)は平面図、図2(b)は図2(a)のA-A断面図である。図2において、光変調器1は、基板4の上面側にTi拡散によって作られた分岐干渉型光導波路5と、変調電極6及びアンテナ7と、基板4の一方の端部に設置された光反射部8とを備えている。分岐干渉型光導波路5は、入力光の入射側に延びる1本の入出力光導波路5aと、入出力光導波路5aから二股に分岐して延びる2本の位相シフト光導波路5b,5cとを備えている。
【0029】
基板4の一方の端部に入出力光導波路5aの光入出射端が形成され、他方の端部に光反射部8が設置されている。入出力光導波路5aの光入出射端には光ファイバ2の入出射端面が結合している。光反射部8は、入出力光導波路5aから入射して位相シフト光導波路5b,5cを伝搬した光を反射し、位相シフト光導波路5b,5cから入出力光導波路5aへ戻して伝搬させる。
【0030】
変調電極6は位相シフト光導波路5bと5cの間に配置された帯状の駆動電極部6aと、位相シフト光導波路5b,5cを挟んで駆動電極部6aの両側にそれぞれ配置された駆動電極部6b及び駆動電極部6cとから構成されている。ダイポールアンテナと類似の検出アンテナとして機能するアンテナ7は、アンテナ部7aと7bとから構成され、その場の電界によりアンテナ部7aと7bとの間で電圧信号を誘起する。駆動電極部6aはアンテナ部7aに接続され、駆動電極部6b及び6cはアンテナ部7bに接続されている
【0031】
分岐干渉型光導波路5と変調電極6及びアンテナ7の間には、分岐干渉型光導波路5を伝搬する光波の一部が変調電極6やアンテナ7に吸収されるのを防ぐため、バッファ層14が設置されている。バッファ層14は、主として二酸化ケイ素(SiO)膜等から作られ、その厚さは0.1~1.0μm程度である。変調電極6及びアンテナ7は、スパッタリング等によって成膜されたクロム(Cr)と金(Au)の2層膜である。分岐干渉型光導波路5の光導波路幅Wは5~12μm程度、分岐干渉型光導波路5の長さは10~40mm程度である。駆動電極部6a、6b及び6cの幅は5~20μm程度、その長さは5~30mm程度である。駆動電極部6aと駆動電極部6b、6cとの間隔は10~50μm程度である。アンテナ部7a及び7bの大きさは3~15mm程度が可能であり、その形状は矩形である必要はなく、電界により変調電極6に電圧を誘起できればよい。光反射部8は、例えば、金属ミラー等を位相シフト光導波路5b,5cの端面に固定すること等により実現できる。なお、変調電極としては、長手方向に分割され互いに容量結合した複数の電極からなるいわゆる分割電極を用いてもよい。
【0032】
アンテナ7が電波を受けたことにより誘起された電圧が駆動電極部6aと6bとの間、及び駆動電極部6aと6cとの間に互いに逆向きに印加されることにより、位相シフト光導波路5bと5cには互いに逆向きの屈折率変化が生ずる。この結果、位相シフト光導波路5bと5cを通過する光に互いに逆極性の位相シフトが生ずることにより、それらの光が合流するときに互いに干渉して強度変化が生ずる。これによりアンテナ7で受けた電波の電界強度変化に対応した光強度変化を有する変調光が得られる。本実施例においては、図2のように、位相シフト光導波路5b,5cを伝搬する光波を光反射部8で反射して戻すことにより、光波が変調電極6を2回通過するので、高効率化が可能となり、かつ小型化が可能となる。なお、分岐干渉型光導波路5を伝搬する光波はTEモードとなるように設定されている。
【0033】
次に、本実施例の光電界センサヘッド10を用いた測定システムについて説明する。
図3は実施例1に係る光電界センサヘッドを用いた測定システムのブロック構成図の一例である。図3に示すように、光電界センサヘッド10には、光送受信部21より入出力光ファイバ2を通して入射光17が送られ、光変調器1より出力される光強度変調光18が同じ入出力光ファイバ2より光送受信部21に入力される。光送受信部21は、半導体レーザ等の光源22、O/E変換器23、入射光17と光強度変調光18を分離するための送受分離器24、アンプ25を備えている。光源22からの出射光は送受分離器24を通して入出力光ファイバ2に結合し、入出力光ファイバ2から戻る光強度変調光18は送受分離器24を通してO/E変換器23に入力する。O/E変換器23において光強度変調光18は電気信号に変換され、アンプ25により増幅されて出力端子26に出力される。その電気信号はオシロスコープ等の測定器27の入力端子28に入力される。測定器27によりその電圧波形を観測等することによりアンテナ7により受信される電磁波の電界信号波形を把握することができる。なお、送受分離器24は、光サーキュレータ、光ファイバ分岐、半透過ミラーのいずれかを用いて構成することができる。
【0034】
なお、分岐干渉型光導波路5にTEモードの伝搬光を供給する方法としては、入出力光ファイバ2として偏光保存光ファイバを用いる方法や、光源22からの出射光を互いに直交する2つの偏波を合成した光波とし、分岐干渉型光導波路5をTEモードのみ伝搬可能な光導波路とする方法等がある。
【0035】
本実施例においては、光電界センサヘッド10の下側から到達する電磁波15は電波吸収体13により遮断されアンテナ7では検出されないので、光電界センサヘッド10の上側から到達する電磁波16のみを検出することができ、電磁波の伝搬方向を分離して測定することが可能となる。
【0036】
なお、電波吸収体13としては、例えば、材料内部の抵抗によって電波によって発生する電流を吸収する導電性繊維の織物等により構成される導電性電波吸収材料、誘電損失を利用し、カーボン粉等をゴム、発泡ウレタン、発泡ポリスチロール等の誘電体に混合して見かけ上の誘電損失を大きくした誘電性電波吸収材料、磁気損失によって電波を吸収する鉄、ニッケル、フェライト等を使用した磁性電波吸収材料等を用いることができる。また、材料形状としては、シート状の材料、塗布型の材料等も可能である。
【実施例2】
【0037】
図4は、本発明の実施例2の光電界センサヘッドの構成例を示す図であり、図4(a)は光変調器の構成を拡大して示す模式的な上面図、図4(b)は光電界センサヘッドの透過型の側面図である。図4(a)において、本実施例の光電界センサヘッド30の光変調器31は、実施例1と同様にニオブ酸リチウム結晶からXカットで切り出して作られた基板32と、基板32の上面側にTi拡散によって作られた直線状の光導波路33と、光導波路33を挟んで配置された1対の帯状の駆動電極部34a及び34bからなる変調電極34と、変調電極34に接続され基板32上に配置されたアンテナ35と、光導波路33を伝搬する光波を反射してその伝搬方向を反転させる光反射部36と、を有している。その場の電界によりアンテナ35に誘起される電圧信号により光導波路33に入力された光波の位相を変調し位相変調光として出力するように構成されている。すなわち、電波等の電界によりアンテナ35を構成するアンテナパッド35aとアンテナパッド35b間に電圧が誘起され、その電圧が駆動電極部34aと駆動電極部34b間に印加されることにより、その間に配置された光導波路33の屈折率変化が生ずる。この結果、光導波路33を通過する光波の位相が変調される。さらに、図4のように、光導波路33を伝搬する光波を光反射部36で反射して戻すことにより、光波が変調電極34を2回通過するので、位相変調の高効率化が可能となり、かつ小型化が可能となる。なお、光導波路33を伝搬する光波はTEモードとなるように設定されている。
【0038】
光導波路33の光入出射端には入出力光ファイバ37が接続されている。入出力光ファイバ37の光導波路33との接続端部はフェルール9内に挿入され、固定されている。入出力光ファイバ37の一部と光変調器31は、樹脂やガラス等の絶縁体材料で構成したパッケージ38の中に収納されている。光変調器31はパッケージ38に固定された台座11に固定され、入出力光ファイバ37はゴム状の固定部品12によりパッケージ38に固定されている。また、本実施例においては、光変調器31の基板32の表面側、すなわち上側から到達する電磁波を吸収するため、パッケージ38の上側の内部に実施例1と同様な電波吸収体13を貼り付けている。これにより、本実施例の光電界センサヘッド30は、下側から到達する電磁波のみを検出することができる。
【0039】
実施例1と同様に、光導波路33と変調電極34の間には、光導波路33を伝搬する光波の一部が変調電極34に吸収されるのを防ぐため、バッファ層が設置され、変調電極34及びアンテナ35は、スパッタリング等によって成膜されたクロム(Cr)と金(Au)の2層膜である。光導波路33の幅は5~12μm程度、光導波路33の長さは10~40mm程度である。駆動電極部34a及び34bの幅は5~20μm程度、その長さは5~30mm程度である。駆動電極部34aと34bの間隔は10~50μm程度である。アンテナパッド35a及び35bの大きさは3~15mm程度が可能であり、その形状は矩形である必要はなく、電界により変調電極34に電圧を誘起できればよい。光反射部36は、例えば、金属ミラー等を光導波路33の端面に固定すること等により実現できる。
【0040】
図5は、本発明の実施例2の光電界センサヘッドを用いた測定システムのブロック構成図の一例である。図5において、本測定システムは、光電界センサヘッド30と、光送受信部41、処理装置47により構成されている。光送受信部41は、光電界センサヘッド30の光変調器31への入力光を供給する光源42と、光電界センサヘッド30の入出力光ファイバ37への入力光の供給と入出力光ファイバ37からの出力光を分離するための光サーキュレータ48と、入出力光ファイバ37から出力された位相変調光を強度変調光に変換する変換手段として、上記光源42の波長において分散特性を有するシングルモード光ファイバ43を備えている。さらに、上記の強度変調光を電気信号に変換するO/E変換器44と、アンプ45を備え、アンプ45により増幅された検出信号は光送受信部41の出力端子46から出力する。出力された信号は処理装置47に送られ、光電界センサヘッド30が配置された場の電波等の強度特性及び位相特性の解析、評価等が行われ、それらのデータの保存、表示、出力などが行われる。
【0041】
本実施例において、例えば、光源42の波長を1550nm、シングルモード光ファイバ43の波長分散を約17ps/nm/kmとすれば、変調周波数が30GHzである場合、強度変調光を得るためのシングルモード光ファイバ43の最適な長さは4km程度である。
【0042】
本実施例においては、光電界センサヘッド30の上側から到達する電磁波16は電波吸収体13により遮断されアンテナ35では検出されないので、光電界センサヘッド30の下側から到達する電磁波15のみを検出することができ、電磁波の伝搬方向を分離して測定することが可能となる。
【実施例3】
【0043】
図6は、本発明の実施例3の光電界センサヘッドに用いる光変調器の構成を拡大して示す模式的な上面図であり、図7は実施例3の光電界センサヘッドの透過型の側面図である。
【0044】
本実施例の光電界センサヘッド40は光変調器49と光変調器50とを有し、図6に示すように、電気光学効果を有する材料であるニオブ酸リチウム結晶のZ板からなる基板53上に構成されている。光変調器49は、Ti拡散光導波路により形成された直線状の光導波路51と、光導波路51に電界を印加するために光導波路51に沿って形成された変調電極61と変調電極62とを有し、光変調器50は、光導波路51に略90度で交差するTi拡散光導波路により形成された直線状の光導波路52と、光導波路52に電界を印加するために光導波路52に沿って形成された変調電極63と変調電極64とを有している。また、基板53上には、正方形の4つの頂点付近にそれぞれ右回りに順に配置された略同一形状の方形パッチアンテナであるアンテナ71、72、73、74が設置され、光導波路51はアンテナ71、72間及びアンテナ73、74間を通過し、光導波路52はアンテナ71、74間及びアンテナ72、73間を通過するように配置されている。
【0045】
変調電極61はアンテナ71からの給電線81とアンテナ72からの給電線82とにより給電され、変調電極62はアンテナ74からの給電線83とアンテナ73からの給電線84によって給電される。また、変調電極63はアンテナ71からの給電線85とアンテナ74からの給電線86によって給電され、変調電極64はアンテナ72からの給電線87とアンテナ73からの給電線88により給電される。すなわち、アンテナ71と72間に誘起される電圧信号とアンテナ74と73間に誘起される電圧信号により光導波路51を伝搬する光波が位相変調され、アンテナ71と74間に誘起される電圧信号とアンテナ72と73間に誘起される電圧信号により光導波路52を伝搬する光波が位相変調されるように構成されている。また、アンテナ71~74と給電線81~88との接続部には、それぞれのアンテナと給電線との間のインピーダンス整合を図るため、切り込み部を設けている。
【0046】
ここで、4つの変調電極、61、62、63、64は、それぞれ、光導波路51又は光導波路52に沿って配置され一定の間隔で互いに対向する1組の帯状の電極、すなわち駆動電極部61aと61b、駆動電極部62aと62b、駆動電極部63aと63b、駆動電極部64aと64bをそれぞれ有し、それらの駆動電極部の両端が短絡されることにより共振器を構成している。すなわち、それぞれ1組の駆動電極部により定在波共振線路電極を構成している。
【0047】
さらに、本実施例の光電界センサヘッド40においては、変調電極61及び63で変調されて生じた光信号の位相がそれぞれ変調電極62及び64の部分で反転している場合、変調電極62及び64に印加する電圧信号の位相を反転させることにより変調を加算することができるように構成している。このため、変調電極61においては、アンテナ71からの給電線81に接続された駆動電極部61aを光導波路51上に配置し、変調電極62においては、光導波路51に対してアンテナ71の反対側にあるアンテナ73からの給電線84に接続された駆動電極部62bを光導波路51上に配置している。同様に、変調電極63においては、アンテナ74からの給電線86に接続された駆動電極部63bを光導波路52上に配置し、変調電極64においては、光導波路52に対してアンテナ74の反対側にあるアンテナ72からの給電線87に接続された駆動電極部64aを光導波路52上に配置している。アンテナ71と72間に誘起され変調電極61に印加される電圧信号とアンテナ74と73間に誘起され変調電極62に印加される電圧信号は同じであると考えられ、光導波路51上に配置された駆動電極部61aはアンテナ71に接続され、光導波路51上に配置された駆動電極部62bはアンテナ73に接続されるので、基板53中の光導波路51への印加電界の方向は変調電極61と変調電極62とでは逆向きとなる。これにより、変調電極62に印加する電圧信号の位相を反転させることができる。
【0048】
次に、本実施例の光変調器49及び50の具体的な形状の一例を示す。光導波路51及び52の光導波路幅は5~15μm程度、深さは5~10μm程度とすることができる。検出する電磁波の周波数を28GHzとする場合、アンテナ71~74の一辺の長さa=1.8mm、給電線81~88の幅は50μm、長さLm=2.6mm、変調電極61~64の長さLe=2.5mm、駆動電極部61a、61b、62a、62b、63a、63b、64a、64bの幅は30μm、各対の対向間隔は30μm、アンテナと給電線とのインピーダンス整合のための切り込み部の長さd=0.59mm、等の値とすることができる。
【0049】
本実施例の光電界センサヘッド40においては、光変調器49の光導波路51の入射端には入力光ファイバ93、出射端には出力光ファイバ94が接続され、光変調器50の光導波路52の入射端には入力光ファイバ95、出射端には出力光ファイバ96がそれぞれ接続されている。入力光ファイバ93及び95、出力光ファイバ94及び96の光導波路51及び52との接続端部はフェルール9内に挿入され、固定されている。また、図7に示すように、入力及び出力光ファイバ93~96の一部と光変調器49及び50が形成された基板53は、樹脂やガラス等の絶縁体材料で構成したパッケージ98の中に収納されている。本実施例においては、光変調器49及び50の基板53の裏面側、すなわち下側から到達する電磁波を吸収するため、基板53の裏面に電波吸収体99を貼り付けている。これにより、本実施例の光電界センサヘッド40は、上側から到達する電磁波のみを検出することができる。電波吸収体99はパッケージ98に固定され、入力及び出力光ファイバ93~96はそれぞれゴム状の固定部品12によりパッケージ98に固定されている。
【0050】
図8は実施例3に係る光電界センサヘッドを用いた測定システムの模式的な構成図である。説明のため、図8においては、光電界センサヘッド40のパッケージは省略して示している。本測定システムは、光電界センサヘッド40と、光源91と、光分岐92と、処理装置としての機能を有する光スペクトラムアナライザ97とを備えている。光源91からの出射光は光分岐92により2つに分岐され、それぞれ入力光ファイバ93及び95を経由して光電界センサヘッド40の光導波路51及び光導波路52の入射端面に結合される。光導波路51及び光導波路52の出射端面より出射した光波は、それぞれ出力光ファイバ94及び96を経由して光スペクトラムアナライザ97に入射する。光スペクトラムアナライザ97では、出力光ファイバ94からの出射光を入力することにより、光電界センサヘッド40に設けられたアンテナ71とアンテナ72間及びアンテナ74とアンテナ73間で誘起される電界信号、すなわちY方向の電界信号に対応する信号が得られる。同様に、出力光ファイバ96からの出射光を入力することにより、アンテナ71とアンテナ74間及びアンテナ72とアンテナ73間で誘起される電界信号、すなわちX方向の電界信号に対応する信号が得られる。光スペクトラムアナライザ97では、上記の電界信号は中心光周波数のサイドバンドとして現れるので、その大きさを測定することにより、光電界センサヘッド40の位置に置ける電磁波のY方向及びX方向の電界の大きさを検出することができる。
【0051】
光電界センサヘッド40においては、変調電極は各々2箇所あるので、従来の1つの変調電極で変調する場合に比べて、高効率化が可能となり、電界検出の高感度化が可能となる。このように、本観点の発明においては、4つのパッチアンテナの配置により、X方向、Y方向のそれぞれ2つの変調電極に電圧を誘起でき、効率的な変調を行うことができる。また、1つの基板上で構成できるので小型化が可能である。
【0052】
本実施例の光電界センサヘッド40は、電磁波の伝搬方向及び偏波成分を各時点において同時に分離して測定可能となる。電波吸収体99としてカーボン粉等を誘電体に混合して誘電損失を大きくした誘電性電波吸収材料のシートを使用した試作器を用いた実験においては、基板の裏面側から到達する電磁波に対する感度は、電波吸収体がない場合に比べて15dB以上減衰することが確認できた。図9は本実施例の光電界センサヘッド40の試作器の測定結果の一例を示す図である。図9は、26~32GHzの電波に対する試作器の感度特性を測定した結果を示し、基板の表面側からの入射波に対して裏面側からの入射波の感度は20dB以上の減衰量が得られ、電磁波の伝搬方向に対する十分な分離性能が得られていることがわかる。なお、基板の表面側からの入射波に対する感度は、裏面側の電波吸収体の有無によりほとんど影響されないことも確認できた。
【0053】
以上のように、本発明により、電磁波の伝搬方向を分離して測定することが可能な光電界センサヘッドを得ることができる。
【0054】
本発明は上記の実施例に限定されるものではないことは言うまでもなく、目的に応じて様々な変形が可能である。光導波路、光変調器、アンテナ等の形状、その基板上の配置方法、アンテナと変調電極との接続方法等も目的に合わせて任意に設計可能である。例えば、変調電極の形態としては、長手方向に分割され互いに容量結合した複数の電極からなるいわゆる分割電極を用いること、進行波型電極を用いること、共振型電極を用いること、等が可能である。
【符号の説明】
【0055】
1,31,49,50 光変調器
2,37 入出力光ファイバ
3,38,98 パッケージ
4,32,53 基板
5 分岐干渉型光導波路
5a 入出力光導波路
5b,5c 位相シフト光導波路
6,34,61,62,63,64 変調電極
6a,6b,6c,34a,34b,61a,62b,62a,62b,63a,63b,64a,64b 駆動電極部
7,35,71,72,73,74 アンテナ
7a,7b アンテナ部
8,36 光反射部
9 フェルール
10,30,40 光電界センサヘッド
11 台座
12 固定部品
13,99 電波吸収体
14 バッファ層
15,16 電磁波
17 入力光
18 光強度変調光
21,41 光送受信部
22,42,91 光源
23,44 O/E変換器
24 送受分離器
25,45 アンプ
26,46 出力端子
27 測定器
28 入力端子
35a、35b アンテナパッド
43 シングルモード光ファイバ
47 処理装置
92 光分岐
93,95 入力光ファイバ
94,96 出力光ファイバ
97 光スペクトラムアナライザ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9