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  • 特許-組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-07
(45)【発行日】2023-12-15
(54)【発明の名称】組成物
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20231208BHJP
   H10K 50/10 20230101ALI20231208BHJP
   H05B 33/02 20060101ALI20231208BHJP
【FI】
G02B5/30
H05B33/14 A
H05B33/02
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2019007267
(22)【出願日】2019-01-18
(65)【公開番号】P2019139221
(43)【公開日】2019-08-22
【審査請求日】2021-12-07
(31)【優先権主張番号】P 2018024566
(32)【優先日】2018-02-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【弁理士】
【氏名又は名称】森住 憲一
(74)【代理人】
【識別番号】100162710
【弁理士】
【氏名又は名称】梶田 真理奈
(72)【発明者】
【氏名】葛西 辰昌
(72)【発明者】
【氏名】幡中 伸行
【審査官】吉川 陽吾
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/123551(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/054769(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
H10K 50/10
H10K 59/10
H05B 33/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)-1:
【化1】
・・・(I)-1
[式(I)-1中、Arは、2つ以上の環構造を有する2価の基を表し、該2つ以上の環構造のうちの1つが6員環であり、該6員環の1位及び4位でL及びLと結合し、
及びLは、それぞれ独立に、単結合又は二価の連結基を表し、
及びGは、それぞれ独立に、二価の芳香族基又は二価の脂環式炭化水素基を表し、該二価の芳香族基及び該二価の脂環式炭化水素基に含まれる水素原子は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のフルオロアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、シアノ基、又はニトロ基で置換されていてもよく、該二価の芳香族基及び該二価の脂環式炭化水素基に含まれる炭素原子は、それぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子、又は窒素原子で置換されていてもよく、
*は結合手を表す]
で表される構造を有する1種以上の液晶化合物と、非イオン性シラン化合物及びイオン性化合物とを含む組成物の硬化物である垂直配向液晶硬化膜と、前記垂直配向液晶硬化膜の面内方向に対して水平方向に配向したフィルムとを備える積層体であって、
前記組成物に含まれる液晶化合物が液晶硬化膜の面内方向に対して垂直方向に配向しており、
前記非イオン性シラン化合物は、その分子内に少なくとも一つのアルコキシシリル基と、エポキシ基、アミノ基、イソシアヌレート基、メルカプト基、カルボキシ基、及びヒドロキシ基から選択される少なくとも一つの極性基を有するシランカップリング剤であり、
前記イオン性化合物は、全て非金属元素からなり、カチオン部位の分子構造中にSi元素又はF元素を有し、下記式(10)を満たし、
5<M<16・・・(10)
[式(10)中、Mは下記式(11):
M=(プラスの電荷を有する原子上に直接結合される置換基の内、分子鎖末端までの共有結合数が最も多い置換基の、プラスの電荷を有する原子から分子鎖末端までの共有結合数)÷(プラスの電荷を有する原子の数)・・・(11)
で表される]
前記垂直配向液晶硬化膜は下記関係式(1):
-150nm≦RthC(550)≦-30nm・・・(1)
[関係式(1)中、RthC(550)は垂直配向液晶硬化膜の波長550nmにおける厚み方向の位相差値を示す]
を満たし、
前記積層体が下記関係式(4)、(5)、(6)を満たす、積層体。
|R0(550)-R40(550)|≦10nm・・・(4)
[関係式(4)中、R0(550)は、波長550nmにおける積層体の面内位相差値を示し、R40(550)は、前記垂直配向液晶硬化膜の面内方向に対して水平方向に配向したフィルムの進相軸方向周りで40°回転させた時の、波長550nmにおける位相差値を示す]
|R0(450)-R40(450)|≦10nm・・・(5)
[関係式(5)中、R0(450)は波長450nmにおける積層体の面内位相差値を示し、R40(450)は、前記垂直配向液晶硬化膜の面内方向に対して水平方向に配向したフィルムの進相軸方向周りで40°回転させた時の、波長450nmにおける位相差値を示す]
|{R0(450)-R40(450)}-{R0(550)-R40(550)}|≦3nm・・・(6)
[関係式(6)中、R0(450)は波長450nmにおける積層体の面内位相差値を示し、R0(550)は波長550nmにおける積層体の面内位相差値を示し、R40(450)は、前記垂直配向液晶硬化膜の面内方向に対して水平方向に配向したフィルムの進相軸方向周りで40°回転させた時の、波長450nmにおける位相差値を示し、R40(550)は、前記垂直配向液晶硬化膜の面内方向に対して水平方向に配向したフィルムの進相軸方向周りで40°回転させた時の、波長550nmにおける位相差値を示す]
【請求項2】
前記式(I)-1で表される構造を有する1種以上の液晶化合物が波長260nm以上400nm以下の領域に極大吸収を有する、請求項1に記載の積層体
【請求項3】
前記式(I)-1で表される構造を有する液晶化合物は、下記式(I)-2:
【化2】
・・・(I)-2
[式(I)-2中、Arは、2つ以上の環構造を有する2価の基を表し、該2つ以上の環構造のうちの1つが6員環であり、該6員環の1位及び4位でL及びLと結合し、
、L、及びBは、それぞれ独立に、単結合又は二価の連結基を表し、
、G、及びGは、それぞれ独立に、二価の芳香族基又は二価の脂環式炭化水素基を表し、該二価の芳香族基及び該二価の脂環式炭化水素基に含まれる水素原子は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のフルオロアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、シアノ基、又はニトロ基で置換されていてもよく、該二価の芳香族基及び該二価の脂環式炭化水素基に含まれる炭素原子は、それぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子、又は窒素原子で置換されていてもよく、
*は結合手を表す]
で表される構造を有する液晶化合物である、請求項1又は請求項2に記載の積層体
【請求項4】
前記式(I)-1で表される構造を有する液晶化合物は、下記式(I)-3:
【化3】
・・・(I)-3
[式(I)-3中、Arは、2つ以上の環構造を有する2価の基を表し、該2つ以上の環構造のうちの1つが6員環であり、該6員環の1位及び4位でL及びLと結合し、
、L、B、及びB2は、それぞれ独立に、単結合又は二価の連結基を表し、
、G、G、及びG4は、それぞれ独立に、二価の芳香族基又は二価の脂環式炭化水素基を表し、該二価の芳香族基及び該二価の脂環式炭化水素基に含まれる水素原子は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のフルオロアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、シアノ基、又はニトロ基で置換されていてもよく、該二価の芳香族基及び該二価の脂環式炭化水素基に含まれる炭素原子は、それぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子、又は窒素原子で置換されていてもよく、
*は結合手を示す]
で表される液晶化合物である、請求項1~3のいずれかに記載の積層体
【請求項5】
前記液晶化合物は、重合性基を1つ以上有する、請求項1~4のいずれかに記載の積層体
【請求項6】
前記イオン性化合物の分子量が100以上10,000以下である、請求項1~5のいずれかに記載の積層体
【請求項7】
垂直配向液晶硬化膜が、下記関係式(2):
RthC(450)/RthC(550)≦1・・・(2)
[関係式(2)中、RthC(450)は垂直配向液晶硬化膜の波長450nmにおける厚み方向の位相差値を示し、RthC(550)は垂直配向液晶硬化膜の波長550nmにおける厚み方向の位相差値を示す]
を満たす、請求項1~6のいずれかに記載の積層体
【請求項8】
基材をさらに備え、前記垂直配向液晶硬化膜が前記基材と隣接している、請求項1~7のいずれかに記載の積層体。
【請求項9】
垂直配向液晶硬化膜の面内方向に対して水平方向に配向したフィルムが、下記関係式(3):
ReA(450)/ReA(550)≦1・・・(3)
[関係式(3)中、ReA(450)は前記垂直配向液晶硬化膜の面内方向に対して水平方向に配向したフィルムの波長450nmにおける面内位相差値を示し、ReA(550)は前記垂直配向液晶硬化膜の面内方向に対して水平方向に配向したフィルムの波長550nmにおける面内位相差値を示す]
を満たす、請求項1~8のいずれかに記載の積層体。
【請求項10】
前記垂直配向液晶硬化膜の面内方向に対して水平方向に配向したフィルムが水平配向液晶硬化膜である、請求項1~9のいずれかに記載の積層体。
【請求項11】
請求項1~10のいずれかに記載の積層体と、偏光フィルムとを含む、楕円偏光板。
【請求項12】
前記垂直配向液晶硬化膜の面内方向に対して水平方向に配向したフィルムが水平配向液晶硬化膜である、請求項11に記載の楕円偏光板。
【請求項13】
前記水平方向に配向したフィルムの遅相軸と、偏光フィルムの吸収軸との成す角が45±5°である、請求項11又は請求項12に記載の楕円偏光板。
【請求項14】
前記偏光フィルムは、偏光フィルムのフィルム面内に対して液晶化合物が水平方向に配向した水平配向液晶硬化膜を含み、該水平配向液晶硬化膜が二色性色素を含む、請求項11~13のいずれかに記載の楕円偏光板。
【請求項15】
前記二色性色素はアゾ基を有する、請求項14に記載の楕円偏光板。
【請求項16】
前記偏光フィルムを構成する水平配向液晶硬化膜は、液晶化合物が膜の面内方向に対して水平方向に配向したスメクチック相の状態で硬化した硬化膜である、請求項14又は請求項15に記載の楕円偏光板。
【請求項17】
請求項1116のいずれかに記載の楕円偏光板を含む、有機EL表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組成物、垂直配向液晶硬化膜、積層体、楕円偏光板、及び有機EL表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
楕円偏光板は、偏光板と位相差板とが積層された光学部材であり、例えば平面状態で画像を表示する装置(たとえば、有機EL表示装置)において、装置を構成する電極での光反射を防止するために用いられている。この楕円偏光板において、位相差板としては、いわゆるλ/4板が用いられる。
かかる楕円偏光板に用いられる位相差板としては、逆波長分散性を示すものが、可視光の広い波長範囲で同等の位相差性能を発揮する点で好適である。逆波長分散性を示す位相差板として、逆波長分散性を示す重合性液晶化合物を水平方向に配向させた状態で重合し硬化させた水平配向液晶硬化膜からなる位相差板が知られている。
また、斜め方向から見た場合にも、正面方向から見たときと同様の光学性能を発揮させるように補償する機能を有する光学補償機能付き偏光板も求められている。このような光学補償機能付き偏光板として、逆波長分散性の水平配向液晶硬化膜と共に、垂直配向させた状態で重合性液晶化合物を重合硬化させた垂直配向液晶硬化膜をさらに備えたものが知られている。さらにこの垂直配向液晶硬化膜の中でも、逆波長分散性を示す重合性液晶化合物を使用した垂直配向液晶硬化膜が特許文献1に提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-57646号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、逆波長分散性を示す液晶化合物は分子重心が不安定であるため、液晶化合物のみでは配向欠陥が多数発生し垂直配向しにくい。このため、垂直配向液晶硬化膜の作製には、垂直配向用の配向膜が必要とされる。しかし、その場合には垂直配向用の配向膜を形成する工程が必要となり、そのために生産性が低下するという問題があった。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は配向膜がなくても配向欠陥の発生が抑制された垂直配向液晶硬化膜を形成可能な組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明には、以下の態様が含まれる。
[1]下記式(I)-1:
【化1】
・・・(I)-1
[式(I)-1中、Arは、2つ以上の環構造を有する2価の基を表し、該2つ以上の環構造のうちの1つが6員環であり、該6員環の1位及び4位でL及びLと結合し、
及びLは、それぞれ独立に、単結合又は二価の連結基を表し、
及びGは、それぞれ独立に、二価の芳香族基又は二価の脂環式炭化水素基を表し、該二価の芳香族基及び該二価の脂環式炭化水素基に含まれる水素原子は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のフルオロアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、シアノ基、又はニトロ基で置換されていてもよく、該二価の芳香族基及び該二価の脂環式炭化水素基に含まれる炭素原子は、それぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子、又は窒素原子で置換されていてもよく、
*は結合手を表す]
で表される構造を有する1種以上の液晶化合物と、非イオン性シラン化合物及びイオン性化合物からなる群から選択される少なくとも一つとを含む組成物。
[2]前記式(I)-1で表される構造を有する1種以上の液晶化合物が波長260nm以上400nm以下の領域に極大吸収を有する、[1]に記載の組成物。
[3]前記式(I)-1で表される構造を有する液晶化合物は、下記式(I)-2:
【化2】
・・・(I)-2
[式(I)-2中、Arは、2つ以上の環構造を有する2価の基を表し、該2つ以上の環構造のうちの1つが6員環であり、該6員環の1位及び4位でL及びLと結合し、
、L、及びBは、それぞれ独立に、単結合又は二価の連結基を表し、
、G、及びGは、それぞれ独立に、二価の芳香族基又は二価の脂環式炭化水素基を表し、該二価の芳香族基及び該二価の脂環式炭化水素基に含まれる水素原子は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のフルオロアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、シアノ基、又はニトロ基で置換されていてもよく、該二価の芳香族基及び該二価の脂環式炭化水素基に含まれる炭素原子は、それぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子、又は窒素原子で置換されていてもよく、
*は結合手を表す]
で表される構造を有する液晶化合物である、[1]又は[2]に記載の組成物。
[4]前記式(I)-1で表される構造を有する液晶化合物は、下記式(I)-3:
【化3】
・・・(I)-3
[式(I)-3中、Arは、2つ以上の環構造を有する2価の基を表し、該2つ以上の環構造のうちの1つが6員環であり、該6員環の1位及び4位でL及びLと結合し、
、L、B、及びB2は、それぞれ独立に、単結合又は二価の連結基を表し、
、G、G、及びG4は、それぞれ独立に、二価の芳香族基又は二価の脂環式炭化水素基を表し、該二価の芳香族基及び該二価の脂環式炭化水素基に含まれる水素原子は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のフルオロアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、シアノ基、又はニトロ基で置換されていてもよく、該二価の芳香族基及び該二価の脂環式炭化水素基に含まれる炭素原子は、それぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子、又は窒素原子で置換されていてもよく、
*は結合手を示す]
で表される液晶化合物である、[1]~[3]のいずれかに記載の組成物。
[5]前記液晶化合物は、重合性基を1つ以上有する、[1]~[4]のいずれかに記載の組成物。
[6]前記非イオン性シラン化合物がシランカップリング剤である、[1]~[5]のいずれかに記載の組成物。
[7]前記非イオン性シラン化合物が、アルコキシシリル基と極性基とを有するシランカップリング剤である、[1]~[6]のいずれかに記載の組成物。
[8]前記イオン性化合物が全て非金属元素からなる、[1]~[7]のいずれかに記載の組成物。
[9]前記イオン性化合物の分子量が100以上10,000以下である、[1]~[8]のいずれかに記載の組成物。
[10][1]~[9]のいずれかに記載の組成物の硬化物である垂直配向液晶硬化膜であって、前記組成物に含まれる液晶化合物が液晶硬化膜の面内方向に対して垂直方向に配向している、垂直配向液晶硬化膜。
[11]下記関係式(1):
-150nm≦RthC(550)≦-30nm・・・(1)
[関係式(1)中、RthC(550)は垂直配向液晶硬化膜の波長550nmにおける厚み方向の位相差値を示す]
を満たす、[10]に記載の垂直配向液晶硬化膜。
[12]下記関係式(2):
RthC(450)/RthC(550)≦1・・・(2)
[関係式(2)中、RthC(450)は垂直配向液晶硬化膜の波長450nmにおける厚み方向の位相差値を示し、RthC(550)は垂直配向液晶硬化膜の波長550nmにおける厚み方向の位相差値を示す]
を満たす、[10]又は[11]に記載の垂直配向液晶硬化膜。
[13]基材と、[10]~[12]のいずれかに記載の垂直配向液晶硬化膜とを備え、
前記垂直配向液晶硬化膜が前記基材と隣接している、積層体。
[14][10]~[12]のいずれかに記載の垂直配向液晶硬化膜と、前記垂直配向液晶硬化膜の面内方向に対して水平方向に配向したフィルムとを備える、積層体。
[15]下記関係式(3):
ReA(450)/ReA(550)≦1・・・(3)
[関係式(3)中、ReA(450)は前記垂直配向液晶硬化膜の面内方向に対して水平方向に配向したフィルムの波長450nmにおける面内位相差値を示し、ReA(550)は前記垂直配向液晶硬化膜の面内方向に対して水平方向に配向したフィルムの波長550nmにおける面内位相差値を示す]
を満たす、[14]に記載の積層体。
[16]下記関係式(4):
|R0(550)-R40(550)|≦10nm・・・(4)
[関係式(4)中、R0(550)は、波長550nmにおける積層体の面内位相差値を示し、R40(550)は、前記垂直配向液晶硬化膜の面内方向に対して水平方向に配向したフィルムの進相軸方向周りで40°回転させた時の、波長550nmにおける位相差値を示す]
を満たす、[14]又は[15]に記載の積層体。
[17]下記関係式(5):
|R0(450)-R40(450)|≦10nm・・・(5)
[関係式(5)中、R0(450)は波長450nmにおける積層体の面内位相差値を示し、R40(450)は、前記垂直配向液晶硬化膜の面内方向に対して水平方向に配向したフィルムの進相軸方向周りで40°回転させた時の、波長450nmにおける位相差値を示す]
を満たす、請求項14~16のいずれかに記載の積層体。
[18]下記関係式(6):
|{R0(450)-R40(450)}-{R0(550)-R40(550)}|≦3nm・・・(6)
[関係式(6)中、R0(450)は波長450nmにおける積層体の面内位相差値を示し、R0(550)は波長550nmにおける積層体の面内位相差値を示し、R40(450)は、前記垂直配向液晶硬化膜の面内方向に対して水平方向に配向したフィルムの進相軸方向周りで40°回転させた時の、波長450nmにおける位相差値を示し、R40(550)は、前記垂直配向液晶硬化膜の面内方向に対して水平方向に配向したフィルムの進相軸方向周りで40°回転させた時の、波長550nmにおける位相差値を示す]
を満たす、[14]~[17]のいずれかに記載の積層体。
[19]前記垂直配向液晶硬化膜の面内方向に対して水平方向に配向したフィルムが水平配向液晶硬化膜である、[14]~[18]のいずれかに記載の積層体。
[20][14]~[19]のいずれかに記載の積層体と、偏光フィルムとを含む、楕円偏光板。
[21]前記垂直配向液晶硬化膜の面内方向に対して水平方向に配向したフィルムが水平配向液晶硬化膜である、[20]に記載の楕円偏光板。
[22]前記水平方向に配向したフィルムの遅相軸と、偏光フィルムの吸収軸との成す角が45±5°である、[20]又は[21]に記載の楕円偏光板。
[23]前記偏光フィルムは、偏光フィルムのフィルム面内に対して液晶化合物が水平方向に配向した水平配向液晶硬化膜を含み、該水平配向液晶硬化膜が二色性色素を含む、[20]~[22]のいずれかに記載の楕円偏光板。
[24]前記二色性色素はアゾ基を有する、[23]に記載の楕円偏光板。
[25]前記偏光フィルムを構成する水平配向液晶硬化膜は、液晶化合物が膜の面内方向に対して水平方向に配向したスメクチック相の状態で硬化した硬化膜である、[23]又は[24]に記載の楕円偏光板。
[26][20]~[25]のいずれかに記載の楕円偏光板を含む、有機EL表示装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、配向膜がなくても配向欠陥の発生が抑制された垂直配向液晶硬化膜を形成可能な組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の楕円偏光板の層構成の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書において、アクリル及びメタクリルを「(メタ)アクリル」と称する場合がある。また、化合物名の後に「系」を付けて、化合物及びその誘導体を包括的に称する場合がある。化合物名の後に「系」を付けて重合体名を表す場合には、重合体の繰返し単位が化合物若しくはその誘導体に由来すること、又は化合物若しくはその誘導体に由来する繰返し単位に重合後に化学修飾等を施した重合体であることを意味する。
【0010】
<組成物>
本発明の組成物(以下、垂直配向液晶硬化膜形成用組成物と記載することがある)は、下記式(I)-1:
【化4】
・・・(I)-1
[式(I)-1中、Arは、2つ以上の環構造を有する2価の基を表し、該2つ以上の環構造のうちの1つが6員環であり、該6員環の1位及び4位でL及びLと結合し、
及びLは、それぞれ独立に、単結合又は二価の連結基を表し、
及びGは、それぞれ独立に、二価の芳香族基又は二価の脂環式炭化水素基を表し、該二価の芳香族基及び該二価の脂環式炭化水素基に含まれる水素原子は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のフルオロアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、シアノ基、又はニトロ基で置換されていてもよく、該二価の芳香族基及び該二価の脂環式炭化水素基に含まれる炭素原子は、それぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子、又は窒素原子で置換されていてもよく、
*は結合手を表す]
で表される構造を有する1種以上の液晶化合物と、非イオン性シラン化合物及びイオン性化合物からなる群から選択される少なくとも一つとを含み、非イオン性シラン化合物およびイオン性化合物をともに含むことが好ましい。
【0011】
組成物は、前記式(I)-1で表される1種以上の液晶化合物、非イオン性シラン化合物及び/又はイオン性化合物以外に、必要に応じて他の成分を更に含んでもよい。
【0012】
本発明の組成物は、配向膜がなくても配向欠陥の発生が抑制された垂直配向液晶硬化膜を形成することができる。その理由は以下のように推測される。式(I)-1で表される構造を有する1種以上の液晶化合物(以下、液晶化合物(I)-1と記載することがある)は、式(I)-1中、Arが2つ以上の環構造を有する2価の基を表し、該2つ以上の環構造のうちの1つが6員環であり、該6員環の1,4位にL及びLと結合するため、T字型の構造をとる傾向にある。このような構造を有する化合物は、一般的に、逆波長分散性を示す傾向にあり、通常、液晶化合物(I)-1は、逆波長分散性を発現する。一方、液晶化合物(I)-1は、T字型構造を有するため、通常、単独では垂直配向しにくい。本発明の組成物は、液晶化合物(I)-1と、非イオン性シラン化合物及びイオン性化合物からなる群から選択される少なくとも一つとを含む。液晶硬化膜の製造において、基材に組成物を塗布して塗布膜を形成し、塗布膜を加熱して乾燥させ乾燥被膜を形成すると、乾燥被膜中では、非イオン性シラン化合物と液晶化合物(I)-1との親和性及び/又はイオン性化合物と液晶化合物(I)-1との親和性から、基材表面側にイオン性化合物が存在し、及び/又は乾燥被膜の基材とは反対側の表面側に非イオン性シラン化合物が存在するような分布を生じる。このような分布は垂直配向規制力を高めるため、液晶化合物(I)-1は乾燥被膜内で基材表面に対して垂直方向に配向する傾向にある。このため、液晶化合物(I)-1が垂直配向した状態を保持して硬化膜を形成することができる。よって、本実施形態に係る組成物は、基材に配向膜を形成しなくても、垂直配向液晶硬化膜を形成することができると考えられる。非イオン性シラン化合物及びイオン性化合物からなる群から選択される少なくとも一つとしては、非イオン性シラン化合物のみを含む、イオン性化合物のみを含む、並びに非イオン性シラン化合物及びイオン性化合物の両方を含む3つの態様が挙げられる。非イオン性シラン化合物及びイオン性化合物はどちらか一方だけでも垂直配向規制力を高める効果が有るが、垂直配向規制力を更に高める観点から、非イオン性シラン化合物及びイオン性化合物をともに含んでいることが好ましい。
【0013】
[1.液晶化合物]
液晶化合物(I)-1は、下記式(I)-1:
【化5】
・・・(I)-1
で表される構造を有する1種以上の液晶化合物である。
【0014】
式(I)-1中、Arは、2つ以上の環構造を有する2価の基を表し、該2つ以上の環構造のうちの1つが6員環であり、該6員環の1位及び4位でL及びLと結合し、
及びLは、それぞれ独立に、単結合又は二価の連結基を表し、
及びGは、それぞれ独立に、二価の芳香族基又は二価の脂環式炭化水素基を表し、該二価の芳香族基及び該二価の脂環式炭化水素基に含まれる水素原子は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のフルオロアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、シアノ基、又はニトロ基で置換されていてもよく、該二価の芳香族基及び該二価の脂環式炭化水素基に含まれる炭素原子は、それぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子、又は窒素原子で置換されていてもよく、
*は結合手を表す。
【0015】
Arは、2つ以上の環構造を有する2価の基を表す。本明細書において、Arが有する環構造の単位は、単環である。たとえば、後述する液晶化合物A、(A)-2、及び(A)-3において、Arはそれぞれ4つ、2つ、及び3つの環構造を有する。2つ以上の環構造は、2以上の単環が縮合して互いに隣り合ってもよいし、2以上の単環が化学結合を介して互いに結合してもよいし、2以上の単環が縮合せず化学結合を介さずに隣り合ってもよい。また、単環と、単環が縮合した縮合環(多環)とが化学結合を介して互いに結合してもよく、多環と多環とが化学結合を介して互いに結合してもよい。2以上の環を結合する化学結合は、たとえば、共役二重結合(より具体的には、-C=C-及び-C=N-等)及びカルボニル基のように共役系の空間的な広がりを拡張させる結合又は基を含んでもよい。
【0016】
単環としては、たとえば、単環式の炭化水素環(より具体的には、シクロアルカン環、及びベンゼン環等)、及び単環式の複素環が挙げられる。単環式の複素環としては、たとえば、5員環の複素環(より具体的には、ピロール環、フラン環、チオフェン環、オキサゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、チアゾ-ル環、トリアゾ-ル環、ピロリジン環、テトラヒドロフラン環、及びテトラヒドロチオフェン環等)、及び6員環の複素環(より具体的には、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、チアジン環、及びピペリジン環等)が挙げられる。多環は2環以上の環構造を有する構造であって、該環構造は芳香環であってもよいし、炭化水素環であってもよい。多環としては、例えば、縮合環及び単環式の複素環を含むものが挙げられる。縮合環は、たとえば、これらの単環のうち、同一の種類の単環を2以上縮合した環、及び異なる種類の単環を2以上縮合した環である。縮合環としては、たとえば、多環式の炭化水素環(より具体的には、ナフタレン環、アントラセン環、及びフェナントレン環等)、及び多環式の複素環(より具体的には、キノリン環、キノキサリン環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、フルオレン環、インドール環、カルバゾール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾチアゾール環、チエノチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、1,3-ベンゾジチオール環、及びフェナンスロリン環等)が挙げられる。これらの縮合環のうち、逆波長分散特性を発現させる観点から多環構造が好ましく、多環式の複素環構造がより好ましい。
【0017】
単環及び多環は置換基を有してもよい。単環及び多環が有してもよい置換基としては、たとえば、水素原子、炭素数1~20のアルキル基、及び炭素数1~20のアルコキシ基が挙げられ、これらの置換基は更にシアノ基、イミノ基、アルカポリエニル基、シアノ基、又はアミノ基を有していてもよく、更に該置換基中の炭素原子が酸素原子、窒素原子、又は硫黄原子で置換されていてもよい(この場合、炭素原子に結合している水素原子は置換される原子の価数に合わせて増減されていてもよい)。これらの置換基のうち、イミノ基、アルカポリエニル基、シアノ基、ヒドロキシ基、及びアミノ基のように共役系の空間的な広がりを拡張させてもよい。これらの置換基は更に置換されていてもよい。
【0018】
Arの有する6員環としては、たとえば、ベンゼン環、及びシクロヘキサン環が挙げられる。6員環は環員原子としてヘテロ原子を含んでもよい。6員環を含む縮合環としては、たとえば、キノリン環、キノキサリン環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、フルオレン環、インドール環、カルバゾール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾチアゾール環、チエノチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、1,3-ベンゾジチオール環、及びフェナンスロリン環が挙げられる。
【0019】
Arは、偏光板の逆波長分散性を更に向上させる観点から、環員原子として1以上の硫黄原子を有する環構造を含む2価の基を表すことが好ましい。Arは、逆波長分散性を更に向上させる観点から、下記式で表される2価の基を表すことが好ましい。*は結合手を示す。
【化6】
上記式中、X、X、及びXは、それぞれ独立に、CR1X、2X、NR3X、硫黄原子、及び酸素原子のいずれかから選択される。R1X、R2X、及びR3Xは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を示す。
Uは、少なくとも1つの環構造を含み、該環構造としては前述の段落0016~0018に記載の単環及び/又は多環を含む構造が挙げられ、
Yは、任意の置換基であってもよいが、逆波長分散性を向上させる観点から少なくとも1つ以上の環構造を含むことが好ましく、該環構造としては前述の段落0016~0018に記載の単環及び/又は多環を含む構造が挙げられる。
10は、二価の連結基であって、単結合、-O-CO-O-、-N=N-、-C≡C-、-CRa=CRb-、-CH=N-N=CH-、又は-CRc=N-を表す。
11は、二価の連結基であって、単結合、-CO-、-COO-、-O-CO-O-、-CO-NH-、-CH=CH-COO-、-CH=CH-OCO-、-CHCH-COO-、-CHCH-OCO-、-CH-COO-、-CH-OCO-、-N=N-、-C≡C-、-CRd=CRe-、-CH=N-N=CH-、-CRf=N-、-CRg=N-NRh-、-N=N-CRij-、-N=CRk-CRlm-、-N=CRn-NRo-、-CRp=CRq-NRr-、又は-CRst-N=CRu-を表す。ここで、R~Ruは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~10のアルキル基を示し、該アルキル基中の炭素原子は窒素原子、酸素原子、硫黄原子で置換されていてもよい(この場合、原子価数に合わせて適宜水素原子数が増減される)。
Zは、水素原子又は置換基が結合していてもよい第14~16族の非金属原子を表す。Zは、逆波長分散性を向上させる観点から、共役系の空間的広がりを拡張させるような構造(より具体的には、2重結合部位、3重結合部位、並びにヒュッケル則を満たす芳香環及び複素環等)、並びに窒素原子及び硫黄原子から選ばれる原子からなる群から選択される少なくとも一つ以上を有することが好ましい。
【0020】
及びLが表す二価の連結基としては、たとえば、炭素数1~4のアルキレン基、-O-、-S-、-Ra1ORa2-、-Ra3COORa4-、-Ra5OCORa6-、Ra7OC=OORa8-、-N=N-、-CR=CR-、及び-C≡C-が挙げられる。ここで、Ra1~Ra8は、それぞれ独立に、単結合又は炭素数1~4のアルキレン基(より具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、及びブチレン基等)を表し、R及びRは、それぞれ独立に、炭素数1~4のアルキル基(より具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、及びブチル基等)又は水素原子を表す。
【0021】
及びLは、それぞれ独立に、好ましくは、単結合、炭素数1~4のアルキレン基、-O-、-S-、-Ra1ORa2-、-Ra3COORa4-、-Ra5OCORa6-、Ra7OC=OORa8-、-N=N-、-CR=CR-、又は-C≡C-を表す。L及びLは、それぞれ独立に、より好ましくは、単結合、-ORa2-1-、-CH-、-CHCH-、-COORa4-1-、又はOCORa6-1-を表す。ここで、Ra2-1、Ra4-1、及びRa6-1は、それぞれ独立に、単結合、-CH-、又は-CHCH-を表す。L及びLは、それぞれ独立に、さらに好ましくは、単結合、-O-、-CHCH-、-COO-、-COOCHCH-、又は-OCO-を表す。
【0022】
及びGが表す二価の芳香族基としては、たとえば、フェニレンジイル基及びナフチリレンジイル基が挙げられる。二価の芳香族基は、ハロゲン原子(より具体的には、フッ素原子、塩素原子、及び臭素原子等)又は炭素数1~4のアルキル基のような置換基で置換されていてもよい。二価の芳香族基は、環員原子としてヘテロ原子(より具体的には、酸素原子、硫黄原子、及び窒素原子等)を有していてもよい。G及びGが表す二価の脂環式炭化水素基としては、たとえば、シクロペンタンジイル基、シクロヘキサンジイル基、及びシクロヘプタンジイル基が挙げられる。二価の脂環式炭化水素基は、ハロゲン原子及び炭素数1~4のアルキル基のような置換基で置換されていてもよい。
【0023】
本明細書において芳香族基とは、平面性を有する環状構造の基であり、該環状構造が有するπ電子数がヒュッケル則に従い[4n+2]個であるものをいう(nは1以上の正の整数を示す)。環員原子として-N=及びS-のようなヘテロ原子を含んで環状構造を形成している場合、これらヘテロ原子上の非共有結合電子対を含めてヒュッケル則を満たし、芳香族性を有する場合も含む。
【0024】
及びGは、それぞれ独立に、好ましくは、ハロゲン原子及び炭素数1~4のアルキル基からなる群から選ばれる少なくとも1つの置換基で置換されていてもよい1,4-フェニレンジイル基、ハロゲン原子及び炭素数1~4のアルキル基からなる群から選ばれる少なくとも1つの置換基で置換されていてもよい1,4-シクロヘキサンジイル基であり、より好ましくはメチル基で置換された1,4-フェニレンジイル基、無置換の1,4-フェニレンジイル基、又は無置換の1,4-trans-シクロヘキサンジイル基であり、特に好ましくは無置換の1,4-フェニレンジイル基、又は無置換の1,4-trans-シクロへキサンジイル基である。また、複数存在するG及びGのうち少なくとも1つは二価の脂環式炭化水素基であることが好ましく、また、L又はLに結合するG及びGのうち少なくとも1つは二価の脂環式炭化水素基であることがより好ましい。
【0025】
液晶化合物(I)-1は、波長260~400nmの領域に極大吸収を有していることが好ましい。液晶化合物(I)-1がヘテロ原子を有する芳香族基や共役系を拡張するような構造を有している場合、ベンゼン環に比べ近紫外領域の吸収が長波長側へシフトするため260nm以上の波長領域に極大吸収を有することが多く、このように260nm以上の波長領域に極大吸収を有すると逆波長分散性が向上する観点から好ましい。また、波長400nmよりも大きい波長領域に極大吸収を有する場合、着色が発生することがあるため液晶化合物(I)-1は波長400nm以下の領域に極大吸収を有することが好ましい。更に、波長分散性がより向上する観点から、波長280nm以上400nm以下の領域に極大吸収を有することがより好ましく、波長300nm以上400nm以下の領域に極大吸収を有することが更に好ましい。
【0026】
液晶化合物(I)-1は、下記式(I)-2:
【化7】
・・・(I)-2
で表される構造を有する液晶化合物(以下、液晶化合物(I)-2と記載することがある)であることが好ましい。
【0027】
式(I)-2中、Arは、2つ以上の環構造を有する2価の基を表し、該2つ以上の環構造のうちの1つが6員環であり、該6員環の1位及び4位でL及びLと結合し、
、L、及びBは、それぞれ独立に、単結合又は二価の連結基を表し、
、G、及びGは、それぞれ独立に、二価の芳香族基又は二価の脂環式炭化水素基を表し、該二価の芳香族基及び該二価の脂環式炭化水素基に含まれる水素原子は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のフルオロアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、シアノ基、又はニトロ基で置換されていてもよく、該二価の芳香族基及び該二価の脂環式炭化水素基に含まれる炭素原子は、それぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子、又は窒素原子で置換されていてもよく、
*は結合手を表す。
【0028】
式(I)-2中のAr、L、L、G、及びGは、式(I)-1中のAr、L、L、G、及びGとそれぞれ同義である。
【0029】
は、好ましくは、単結合、炭素数1~4のアルキレン基、-O-、-S-、-Ra1ORa2-、-Ra3COORa4-、-Ra5OCORa6-、Ra7OC=OORa8-、-N=N-、-CR=CR-、又は-C≡C-を表す。L及びLは、それぞれ独立に、より好ましくは、単結合、-ORa2-1-、-CH-、-CHCH-、-COORa4-1-、又は-OCORa6-1-を表す。ここで、Ra2-1、Ra4-1、Ra6-1は、それぞれ独立に、単結合、-CH-、又は-CHCH-を表す。L及びLは、それぞれ独立に、さらに好ましくは、単結合、-O-、-CHCH-、-COO-、-COOCHCH-、又は-OCO-を表す。
【0030】
が表す二価の芳香族基としては、たとえば、フェニレンジイル基及びナフチリレンジイル基が挙げられる。二価の芳香族基は、ハロゲン原子(より具体的には、フッ素原子、塩素原子、及び臭素原子等)又は炭素数1~4のアルキル基のような置換基で置換されていてもよい。G表す二価の脂環式炭化水素基としては、たとえば、シクロペンタンジイル基、シクロヘキサンジイル基、及びシクロヘプタンジイル基が挙げられる。二価の脂環式炭化水素基は、ハロゲン原子又は炭素数1~4のアルキル基のような置換基で置換されていてもよい。
【0031】
は、それぞれ独立に、好ましくは、ハロゲン原子及び炭素数1~4のアルキル基からなる群から選ばれる少なくとも1つの置換基で置換されていてもよい1,4-フェニレンジイル基、ハロゲン原子及び炭素数1~4のアルキル基からなる群から選ばれる少なくとも1つの置換基で置換されていてもよい1,4-シクロヘキサンジイル基であり、より好ましくはメチル基で置換された1,4-フェニレンジイル基、無置換の1,4-フェニレンジイル基、又は無置換の1,4-trans-シクロヘキサンジイル基であり、特に好ましくは無置換の1,4-フェニレンジイル基、又は無置換の1,4-trans-シクロへキサンジイル基である。
【0032】
液晶化合物(I)-1は、下記式(I)-3:
【化8】
・・・(I)-3
で表される構造を有する液晶化合物(以下、液晶化合物(I)-3と記載することがある)であることがより好ましい。
【0033】
式(I)-3中、Arは、2つ以上の環構造を有する2価の基を表し、該2つ以上の環構造のうちの1つが6員環であり、該6員環の1位及び4位でL及びLと結合し、
、L、B、及びB2は、それぞれ独立に、単結合又は二価の連結基を表し、
、G、G、及びG4は、それぞれ独立に、二価の芳香族基又は二価の脂環式炭化水素基を表し、該二価の芳香族基又は該二価の脂環式炭化水素基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のフルオロアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、シアノ基、又はニトロ基で置換されていてもよく、該二価の芳香族基又は該二価の脂環式炭化水素基に含まれる炭素原子は、酸素原子、硫黄原子、又は窒素原子で置換されていてもよく、
*は結合手を示す。
【0034】
式(I)-3中のAr、L、L、G、及びGは、式(I)-1中のAr、L、L、G、及びGとそれぞれ同義である。式(I)-3中のB及びGは、それぞれ式(I)-2中のB及びGと同義である。
【0035】
は、好ましくは、単結合、炭素数1~4のアルキレン基、-O-、-S-、-Ra1ORa2-、-Ra3COORa4-、-Ra5OCORa6-、Ra7OC=OORa8-、-N=N-、-CR=CR-、又は-C≡C-を表す。L及びLは、それぞれ独立に、より好ましくは、単結合、-ORa2-1-、-CH-、-CHCH-、-COORa4-1-、又は-OCORa6-1-を表す。ここで、Ra2-1、Ra4-1、Ra6-1は、それぞれ独立に、単結合、-CH-、又は-CHCH-を表す。L及びLは、それぞれ独立に、さらに好ましくは、単結合、-O-、-CHCH-、-COO-、-COOCHCH-、又は-OCO-を表す。
【0036】
が表す二価の芳香族基としては、たとえば、フェニレンジイル基又はナフチリレンジイル基が挙げられる。二価の芳香族基は、ハロゲン原子(より具体的には、フッ素原子、塩素原子、及び臭素原子等)又は炭素数1~4のアルキル基のような置換基で置換されていてもよい。Gが表す二価の脂環式炭化水素基としては、たとえば、シクロペンタンジイル基、シクロヘキサンジイル基、及びシクロヘプタンジイル基が挙げられる。二価の脂環式炭化水素基は、ハロゲン原子又は炭素数1~4のアルキル基のような置換基で置換されていてもよい。
【0037】
は、好ましくは、ハロゲン原子及び炭素数1~4のアルキル基からなる群から選ばれる少なくとも1つの置換基で置換されていてもよい1,4-フェニレンジイル基、ハロゲン原子及び炭素数1~4のアルキル基からなる群から選ばれる少なくとも1つの置換基で置換されていてもよい1,4-シクロヘキサンジイル基であり、より好ましくはメチル基で置換された1,4-フェニレンジイル基、無置換の1,4-フェニレンジイル基、又は無置換の1,4-trans-シクロヘキサンジイル基であり、特に好ましくは無置換の1,4-フェニレンジイル基、又は無置換の1,4-trans-シクロへキサンジイル基である。
【0038】
液晶化合物(I)-1は、重合性基を1つ以上有してもよい。本明細書において、重合性基とは、光重合開始剤から発生した活性ラジカルや酸のような活性種によって重合反応に関与し得る基のことをいう。重合性基としては、たとえば、エポキシ基、ビニル基、ビニルオキシ基、1-クロロビニル基、イソプロペニル基、4-ビニルフェニル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、オキシラニル基、及びオキセタニル基が挙げられる。これらの重合性基のうち、アクリロイルオキシ基、及びメタクリロイルオキシ基であることが好ましい。本明細書において、重合性基を有する液晶化合物(I)-1は、重合反応により重合体を形成し得る。
【0039】
液晶化合物(I)-1としては、たとえば、式(A)-1~式(A)-5で表される構造を有する液晶化合物が挙げられる。
【0040】
(液晶化合物A)
【化9】
・・・(A)-1
(液晶化合物(A)-2)
【化10】
・・・(A)-2
(液晶化合物(A)-3)
【化11】
・・・(A)-3
(液晶化合物(A)-4)
【化12】
・・・(A)-4
(液晶化合物(A)-5)
【化13】
・・・(A)-5
【0041】
液晶化合物(I)-1の含有量(複数種の液晶化合物を含む場合は、その含有量の合計)は、組成物の固形分100質量部に対して50~99.5質量部であることが好ましく、60~99質量部であることがより好ましく、70~99質量部であることが更に好ましい。本明細書において、組成物の固形分の質量とは、該組成物から溶媒を除いた成分の合計の質量のことをいう。
【0042】
[2.非イオン性シラン化合物]
本明細書において、非イオン性シラン化合物は、非イオン性であってSi元素を含む化合物である。非イオン性シラン化合物は、垂直配向液晶硬化膜の作製において、液晶化合物(I)-1の垂直配向性を十分に向上させ、イオン性化合物との組み合わせにより液晶化合物(I)-1の垂直配向性を更に向上させることができる。また、非イオン性シラン化合物は、組成物の表面張力を低下させやすく、組成物の基材に対するぬれ性を向上させることができる。非イオン性シラン化合物としては、たとえば、ポリシランのようなケイ素ポリマー、シリコーンオイル及びシリコーンレジンのようなシリコーン樹脂、並びにシリコーンオリゴマー、シルセスシロキサン、及びアルコキシシランのような有機無機シラン化合物(より具体的には、シランカップリング剤等)が挙げられる。
【0043】
非イオン性シラン化合物は、シリコーンモノマータイプのものであってもよく、シリコーンオリゴマー(ポリマー)タイプのものであってもよい。シリコーンオリゴマーを(単量体)-(単量体)コポリマーの形式で示すと、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマー、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマー、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマー、及び3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマーのようなメルカプトプロピル基含有のコポリマー;メルカプトメチルトリメトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマー、メルカプトメチルトリメトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマー、メルカプトメチルトリエトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマー、及びメルカプトメチルトリエトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマーのようなメルカプトメチル基含有のコポリマー;3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマー、3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマー、3-メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマー、3-メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマー、3-メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマー、3-メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマー、3-メタクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマー、及び3-メタクリロキシイルオプロピルメチルジエトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマーのようなメタクリロイルオキシプロピル基含有のコポリマー;3-アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマー、3-アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマー、3-アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマー、3-アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマー、3-アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマー、3-アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマー、3-アクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマー、及び3-アクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマーのようなアクリロイルオキシプロピル基含有のコポリマー;ビニルトリメトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマー、ビニルトリメトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマー、ビニルトリエトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマー、ビニルトリエトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマー、ビニルメチルジメトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマー、ビニルメチルジメトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマー、ビニルメチルジエトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマー、及びビニルメチルジエトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマーのようなビニル基含有のコポリマー;3-アミノプロピルトリメトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマー、3-アミノプロピルトリメトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマー、3-アミノプロピルトリエトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマー、3-アミノプロピルトリエトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマー、3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマー、3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマー、3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマー、及び3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマーのようなアミノ基含有のコポリマー等が挙げられる。これらの非イオン性シラン化合物は、1種を単独で用いてもよく、又は2種以上組み合わせて用いてもよい。また、レベリング剤の項に例示するシラン含有化合物も使用することもできる。これら非イオン性シラン化合物のうち、密着性を更に向上させる観点から、シランカップリング剤が好ましい。
【0044】
シランカップリング剤は、末端にビニル基、エポキシ基、スチリル基、メタクリル基、アクリル基、アミノ基、イソシアヌレート基、ウレイド基、メルカプト基、イソシアネート基、カルボキシ基、及びヒドロキシ基からなる群から選択される少なくとも1種のような官能基と、少なくとも一つのアルコキシシリル基又はシラノール基とを有するSi元素を含む化合物である。これらの官能基を適宜選定することにより、垂直配向液晶硬化膜の機械的強度の向上、垂直配向液晶硬化膜の表面改質、垂直配向液晶硬化膜と隣接する層(たとえば、基材)との密着性向上等の特異な効果を付与することが可能である。シランカップリング剤は、密着性を更に向上させる観点から、アルコキシシリル基ともう一つの異なる反応基(たとえば、上記官能基)とを有するシランカップリング剤であることが好ましい。更に、シランカップリング剤は、アルコキシシリル基と極性基とを有するシランカップリング剤であることが好ましい。シランカップリング剤がその分子内に少なくとも一つのアルコキシシリル基と、少なくとも一つの極性基とを有すると、液晶化合物の垂直配向性が更に向上し、垂直配向促進効果が顕著に得られる。極性基としては、たとえば、エポキシ基、アミノ基、イソシアヌレート基、メルカプト基、カルボキシ基、及びヒドロキシ基が挙げられる。尚、極性基はシランカップリング剤の反応性を制御するために適宜置換基又は保護基を有していてもよい。
【0045】
シランカップリング剤としては、たとえば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルジメトキシメチルシラン、及び3-グリシドキシプロピルエトキシジメチルシランが挙げられる。
【0046】
また、市販のシランカップリング剤としては、たとえば、KP321、KP323、KP324、KP326、KP340、KP341、X22-161A、KF6001、KBM-1003、KBE-1003、KBM-303、KBM-402、KBM-403、KBE-402、KBE-403、KBM-1403、KBM-502、KBM-503、KBE-502、KBE-503、KBM-5103、KBM-602、KBM-603、KBM-903、KBE-903、KBE-9103、KBM-573、KBM-575、KBM-9659、KBE-585、KBM-802、KBM-803、KBE-846、及びKBE-9007のような信越化学工業(株)製のシランカップリング剤が挙げられる。
【0047】
非イオン性シラン化合物の含有率は、通常、組成物の固形分に対して0.01~5質量%であることが好ましく、0.05~4質量%であることがより好ましく、0.1~3質量%であることが更に好ましくは。非イオン性シラン化合物の含有率が組成物の固形分に対して0.01質量%以上であると液晶化合物の垂直配向性が更に向上し、非イオン性シラン化合物の含有率が組成物の固形分に対して5質量%以下で含まれると、組成物の塗布性が低下しにくい。
【0048】
[3.イオン性化合物]
イオン性化合物は、垂直配向液晶硬化膜の作製において、液晶化合物(I)-1の垂直配向性を十分に向上させ、非イオン性シラン化合物との組み合わせにより液晶化合物(I)-1の垂直配向性を更に向上させることができる。
【0049】
イオン性化合物としては、たとえば、オニウム塩(より具体的には、窒素原子がプラスの電荷を有する第四級アンモニウム塩、第三級スルホニウム塩、及びリン原子がプラスの電荷を有する第四級ホスホニウム塩等)が挙げられる。これらのオニウム塩のうち、液晶化合物(I)-1の垂直配向性を更に向上させる観点から第四級オニウム塩が好ましく、入手性及び量産性を向上させる観点から、第四級ホスホニウム塩又は第四級アンモニウム塩が更に好ましい。オニウム塩は分子内に2つ以上第四級オニウム塩部位を有していてもよく、オリゴマーやポリマーであってもよい。
【0050】
イオン性化合物の分子量は、液晶化合物(I)-1の垂直配向性を更に向上させる観点から、100以上が好ましい。また、イオン性化合物の分子量は、組成物の塗布性を更に向上させる観点から、10000以下であることが好ましく、5000以下であることがより好ましく、3000以下であることが更に好ましい。イオン性化合物の分子量は、液晶化合物(I)-1の垂直配向性を更に向上させ、かつ組成物の塗布性を更に向上させる観点から、100以上10000以下であることがより好ましい。
【0051】
イオン性化合物のカチオン成分としては、たとえば、無機のカチオン及び有機のカチオンが挙げられる。これらイオン性化合物のカチオン性分のうち、液晶化合物の配向欠陥の発生を抑制する観点から、有機のカチオンが好ましい。有機のカチオンとしては、たとえば、イミダゾリウムカチオン、ピリジニウムカチオン、アンモニウムカチオン、スルホニウムカチオン、及びホスホニウムカチオンを挙げられる。
【0052】
一方、イオン性化合物は一般的に対アニオンを有する。上記カチオン成分の対イオンとなるアニオン成分としては、たとえば、無機のアニオン、又は有機のアニオンが挙げられる。これらのアニオン成分のうち、液晶化合物の配向欠陥の発生を抑制する観点から、有機のアニオンが好ましい。また、カチオンとアニオンとは、必ずしも一対一の対応となっている必要があるわけでは無ない。アニオン成分としては、たとえば、次のようなものが挙げられる。
クロライドアニオン〔Cl〕、
ブロマイドアニオン〔Br〕、
ヨーダイドアニオン〔I〕、
テトラクロロアルミネートアニオン〔AlCl 〕、
ヘプタクロロジアルミネートアニオン〔AlCl 〕、
テトラフルオロボレートアニオン〔BF 〕、
ヘキサフルオロホスフェートアニオン〔PF 〕、
パークロレートアニオン〔ClO 〕、
ナイトレートアニオン〔NO 〕、
アセテートアニオン〔CHCOO〕、
トリフルオロアセテートアニオン〔CFCOO〕、
フルオロスルホネートアニオン〔FSO 〕、
メタンスルホネートアニオン〔CHSO 〕、
トリフルオロメタンスルホネートアニオン〔CFSO 〕、
p-トルエンスルホネートアニオン〔p-CHSO 〕、
ビス(フルオロスルホニル)イミドアニオン〔(FSO〕、
ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオン〔(CFSO〕、
トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メタニドアニオン〔(CFSO〕、
ヘキサフルオロアーセネートアニオン〔AsF 〕、
ヘキサフルオロアンチモネートアニオン〔SbF 〕、
ヘキサフルオロニオベートアニオン〔NbF 〕、
ヘキサフルオロタンタレートアニオン〔TaF 〕、
ジメチルホスフィネートアニオン〔(CHPOO〕、
(ポリ)ハイドロフルオロフルオライドアニオン〔F(HF) 〕(たとえば、nは1~3の整数を表す)、
ジシアナミドアニオン〔(CN)〕、
チオシアンアニオン〔SCN〕、
パーフルオロブタンスルホネートアニオン〔CSO 〕、
ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミドアニオン〔(CSO〕、
パーフルオロブタノエートアニオン〔CCOO〕、及び
(トリフルオロメタンスルホニル)(トリフルオロメタンカルボニル)イミドアニオン
〔(CFSO)(CFCO)N〕。
【0053】
イオン性化合物の具体例は、上記カチオン成分とアニオン成分との組合せから適宜選択することができる。具体的なカチオン成分とアニオン成分の組合せである化合物として、次のようなものが挙げられる。
【0054】
(ピリジニウム塩)
N-ヘキシルピリジニウム ヘキサフルオロホスフェート、
N-オクチルピリジニウム ヘキサフルオロホスフェート、
N-メチル-4-ヘキシルピリジニウム ヘキサフルオロホスフェート、
N-ブチル-4-メチルピリジニウム ヘキサフルオロホスフェート、
N-オクチル-4-メチルピリジニウム ヘキサフルオロホスフェート、
N-ヘキシルピリジニウム ビス(フルオロスルホニル)イミド、
N-オクチルピリジニウム ビス(フルオロスルホニル)イミド、
N-メチル-4-ヘキシルピリジニウム ビス(フルオロスルホニル)イミド、
N-ブチル-4-メチルピリジニウム ビス(フルオロスルホニル)イミド、
N-オクチル-4-メチルピリジニウム ビス(フルオロスルホニル)イミド、
N-ヘキシルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
N-オクチルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
N-メチル-4-ヘキシルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
N-ブチル-4-メチルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
N-オクチル-4-メチルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
N-ヘキシルピリジニウム p-トルエンスルホネート、
N-オクチルピリジニウム p-トルエンスルホネート、
N-メチル-4-ヘキシルピリジニウム p-トルエンスルホネート、
N-ブチル-4-メチルピリジニウム p-トルエンスルホネート、及び
N-オクチル-4-メチルピリジニウム p-トルエンスルホネート。
【0055】
(イミダゾリウム塩)
1-エチル-3-メチルイミダゾリウム ヘキサフルオロホスフェート、
1-エチル-3-メチルイミダゾリウム ビス(フルオロスルホニル)イミド、
1-エチル-3-メチルイミダゾリウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
1-エチル-3-メチルイミダゾリウム p-トルエンスルホネート、
1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム メタンスルホネートなど。
【0056】
(ピロリジニウム塩)
N-ブチル-N-メチルピロリジニウム ヘキサフルオロホスフェート、
N-ブチル-N-メチルピロリジニウム ビス(フルオロスルホニル)イミド、
N-ブチル-N-メチルピロリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
N-ブチル-N-メチルピロリジニウム p-トルエンスルホネートなど。
【0057】
(アンモニウム塩)
テトラブチルアンモニウム ヘキサフルオロホスフェート、
テトラブチルアンモニウム ビス(フルオロスルホニル)イミド、
テトラヘキシルアンモニウム ビス(フルオロスルホニル)イミド、
トリオクチルメチルアンモニウム ビス(フルオロスルホニル)イミド、
(2-ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウム ビス(フルオロスルホニル)イミド、
テトラブチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
テトラヘキシルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
トリオクチルメチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
(2-ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
テトラブチルアンモニウム p-トルエンスルホネート、
テトラヘキシルアンモニウム p-トルエンスルホネート、
トリオクチルメチルアンモニウム p-トルエンスルホネート、
(2-ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウム p-トルエンスルホネート、
(2-ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウム ジメチルホスフィネート、
1-(3-トリメトキシシリルプロピル)-1,1,1-トリブチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
1-(3-トリメトキシシリルプロピル)-1,1,1-トリメチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
1-(3-トリメトキシシリルブチル)-1,1,1-トリブチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
1-(3-トリメトキシシリルブチル)-1,1,1-トリメチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
N-{(3-トリエトキシシリルプロピル)カルバモイルオキシエチル)}-N,N,N-トリメチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、及び
N-[2-{3-(3-トリメトキシシリルプロピルアミノ)-1-オキソプロポキシ}エチル]-N,N,N-トリメチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド。
【0058】
(ホスホニウム塩)
トリブチル(2-メトキシエチル)ホスホニウム ビス (トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
トリブチルメチルホスホニウムビス (トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
1,1,1-トリメチル-1-[(トリメトキシシリル)メチル]ホスホニウム ビス (トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
1,1,1-トリメチル-1-[2-(トリメトキシシリル)エチル]ホスホニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
1,1,1-トリメチル-1-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]ホスホニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
1,1,1-トリメチル-1-[4-(トリメトキシシリル)ブチル]ホスホニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
1,1,1-トリブチル-1-[(トリメトキシシリル)メチル]ホスホニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
1,1,1-トリブチル-1-[2-(トリメトキシシリル)エチル]ホスホニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、及び
1,1,1-トリブチル-1-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]ホスホニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド。
【0059】
これらのイオン性化合物はそれぞれ単独で用いてもよく、又は2種以上組み合わせて用いてもよい。また、液晶化合物の垂直配向性を更に向上させる観点から、イオン性化合物はカチオン部位の分子構造中にSi元素及び/又はF元素を有していることが好ましい。イオン性化合物がカチオン部位の分子構造中にSi元素及び/又はF元素を有していると、イオン性化合物を垂直配向液晶硬化膜の表面に偏析させることができるからである。これらのイオン性化合物のうち、全て非金属元素からなるイオン性化合物(より具体的には、下記イオン性化合物(1)~(3)等)が好ましい。
【0060】
(イオン性化合物(1))
【化14】
(イオン性化合物(2))
【化15】
(イオン性化合物(3))
【化16】
【0061】
液晶化合物の垂直配向性を向上させる方法としては、たとえば、ある程度鎖長の長いアルキル基を有する界面活性剤を用いて基材表面を処理する方法が挙げられる。この方法は、たとえば、「液晶便覧」の第2章 液晶の配向と物性(丸善株式会社発行)等に記載されている。このように界面活性剤により液晶化合物の垂直配向性を向上させる方法は、イオン性化合物に適用することができる。すなわち、液晶化合物の垂直配向性を向上させる方法としては、たとえば、ある程度鎖長の長いアルキル基を有するイオン性化合物を用いて基材表面を処理する方法が挙げられる。より具体的には、イオン性化合物は、液晶化合物の垂直配向性を向上させる観点から、下記式(10)を満たすことが好ましい。
5<M<16・・・(10)
式(10)中、Mは下記式(11)で表される。
M=(プラスの電荷を有する原子上に直接結合される置換基の内、分子鎖末端までの共有結合数が最も多い置換基の、プラスの電荷を有する原子から分子鎖末端までの共有結合数)÷(プラスの電荷を有する原子の数)・・・(11)
【0062】
なお、イオン性化合物の分子中にプラスの電荷を有する原子が2つ以上存在する場合、プラスの電荷を有する原子を2つ以上有する置換基については、基点として考えるプラスの電荷を有する原子から数えて最も近い別のプラスの電荷を有する原子までの共有結合数を、上記Mの定義に記載の「プラスの電荷を有する原子から分子鎖末端までの共有結合数」とする。また、イオン性化合物が繰返し単位を2つ以上有するオリゴマーやポリマーである場合には、構成単位を一分子として考え、上記Mを算出する。プラスの電荷を有する原子が環構造に組み込まれている場合、環構造を経由して同プラスの電荷を有する原子に至るまでの共有結合数、又は環構造に結合している置換基の末端までの共有結合数の内、共有結合数が多い方を、上記Mの定義に記載の「プラスの電荷を有する原子から分子鎖末端までの共有結合数」とする。
【0063】
イオン性化合物の含有率は、通常、組成物の固形分に対して0.01~5質量%であることが好ましく、0.05~4質量%であることがより好ましく、0.1~3質量%であることが更に好ましい。イオン性化合物の含有率が組成物の固形分中に0.01質量%以上であると、液晶化合物の垂直配向性が更に向上し、イオン性化合物の含有率が組成物の固形分に対して5質量%以下であると、組成物の塗布性が低下しにくい。
【0064】
[4.他の成分]
本発明の組成物は、必要に応じて他の成分として、たとえば、溶媒、光重合開始剤、重合禁止剤、光増感剤、レベリング剤、密着性向上剤のような添加剤を更に含んでもよい。これらの添加剤は1種を単独で用いてもよく、又は2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0065】
(溶媒)
本発明の組成物は、通常、溶媒に溶解した状態で基材等に塗布されるため、溶剤を含むことが好ましい。溶媒としては、たとえば、水、メタノール、エタノール、エチレングリコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル、1-メトキシ-2-プロパノール、2-ブトキシエタノール、及びプロピレングリコールモノメチルエーテルのようなアルコール溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、γ-ブチロラクトン、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート及び乳酸エチルのようなエステル溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2-ヘプタノン、及びメチルイソブチルケトンのようなケトン溶媒;ペンタン、ヘキサン、及びヘプタンのような脂肪族炭化水素溶媒;エチルシクロヘキサンのような脂環式炭化水素溶媒;トルエン及びキシレンのような芳香族炭化水素溶媒;アセトニトリルのようなニトリル溶媒;テトラヒドロフラン及びジメトキシエタンのようなエーテル溶媒;クロロホルム及びクロロベンゼンのような塩素含有溶媒;ジメチルアセトアミド、ジメチルホルミアミド、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、及び1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンのようなアミド系溶媒が挙げられる。これらの溶媒は、1種を単独で用いてもよく、又は2種以上組み合わせて用いてもよい。これらの溶媒のうち、アルコール溶媒、エステル溶媒、ケトン溶媒、塩素含有溶媒、アミド系溶媒、及び芳香族炭化水素溶媒が好ましい。これらの溶媒は1種を単独で用いてもよく、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0066】
溶媒の含有量は、組成物100質量部に対して、好ましくは50~98質量部、より好ましくは70~95質量部である。従って、組成物100質量部に占める固形分の含有量は、2~50質量部が好ましい。組成物の固形分が50質量部以下であると、組成物の粘度が低くなることから、垂直配向液晶硬化膜の厚みが略均一になり、垂直配向液晶硬化膜にムラが生じ難くなる傾向がある。上記固形分は、製造しようとする垂直配向液晶硬化膜の厚みを考慮して適宜定めることができる。
【0067】
(光重合開始剤)
本発明の組成物は、重合反応を進行させる目的で、光重合開始剤を含んでもよい。本明細書において、光重合開始剤は、活性エネルギー線を吸収し、重合反応を開始させる活性種を提供する。光重合開始剤は、ラジカル重合で硬化する硬化性組成物、たとえば(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレートを硬化性材料として使用する場合に光ラジカル重合開始剤を使用することができ、カチオン重合で硬化する硬化性組成物、たとえばエポキシ化合物、オキセタン化合物を硬化性組成物として使用する場合に光カチオン重合開始剤を使用することができる。
【0068】
光重合開始剤としては、光ラジカル重合開始剤、及び光カチオン重合開始剤が挙げられる。光ラジカル重合開始剤としては、たとえば、ベンゾイン化合物、ベンゾフェノン化合物、ベンジルケタール化合物、α-ヒドロキシケトン化合物、α-アミノケトン化合物、トリアジン化合物等が挙げられる。光カチオン重合開始剤としては、たとえば、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ヨードニウム塩や芳香族スルホニウム塩等のオニウム塩、及び鉄-アレーン錯体が挙げられる。光重合開始剤としては、たとえば、イルガキュア(Irgacure(登録商標))907、イルガキュア184、イルガキュア651、イルガキュア819、イルガキュア250、イルガキュア369、イルガキュア379、イルガキュア127、イルガキュア2959、イルガキュア754、及びイルガキュア379EGのようなBASFジャパン株式会社製の光重合開始剤;セイクオールBZ、セイクオールZ、及びセイクオールBEEのような精工化学株式会社製の光重合開始剤、カヤキュアー(kayacure)BP100(日本化薬株式会社製)、及びカヤキュアーUVI-6992のようなダウ社製の光重合開始剤;、アデカオプトマーSP-152、アデカオプトマーSP-170、アデカオプトマーN-1717、アデカオプトマーN-1919、アデカアークルズNCI-831、アデカアークルズNCI-930のような株式会社ADEKA製の光重合開始剤;、TAZ-A、及びTAZ-PPのような日本シイベルヘグナー社製の光重合開始剤;TAZ-104のような三和ケミカル社製の光重合開始剤;カヤラッド(登録商標)シリーズのような日本化薬株式会社製の光重合開始剤;サイラキュア UVIシリーズのようなダウケミカル社製の光重合開始剤;CPIシリーズのようなサンアプロ株式会社製の光重合開始剤;TAZ、BBI、及びDTSのようなみどり化学株式会社製の光重合開始剤;RHODORSIL(登録商標)のようなローディア株式会社製の光重合開始剤が挙げられる。これらの光重合開始剤は、1種を単独で用いてもよく、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。光重合開始剤は、使用する材料に合わせて適宜選択して使用することができる。
【0069】
光重合開始剤は、光源から発せられるエネルギーを十分に活用でき、生産性に優れるため、光重合開始剤の極大吸収波長が300nm~400nmであることが好ましく、300nm~380nmであることがより好ましく、これらの光重合開始剤のうち、α-アセトフェノン系重合開始剤、及びオキシム系光重合開始剤が好ましい。
【0070】
α-アセトフェノン系重合開始剤としては、たとえば、2-メチル-2-モルホリノ-1-(4-メチルスルファニルフェニル)プロパン-1-オン、2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-2-ベンジルブタン-1-オン(2-ジメチルアミノ-2-ベンジル-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン)、及び2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-2-(4-メチルフェニルメチル)ブタン-1-オンが挙げられる。α-アセトフェノン系重合開始剤は、2-メチル-2-モルホリノ-1-(4-メチルスルファニルフェニル)プロパン-1-オン、及び2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-2-ベンジルブタン-1-オンが好ましい。α-アセトフェノン化合物の市販品としては、イルガキュア369、379EG、及び907のようなBASFジャパン(株)製のα-アセトフェノン系重合開始剤、及びセイクオールBEEのような精工化学社製のα-アセトフェノン系重合開始剤等が挙げられる。
【0071】
オキシム系光重合開始剤は、光が照射されることによってラジカルを生成させる。このラジカルにより塗布膜の深部における組成物の重合が好適に進行する。また、塗布膜の深部での重合反応をより効率的に進行させる観点から、波長350nm以上の紫外線を効率的に利用可能なオキシム系光重合開始剤を使用することが好ましい。波長350nm以上の紫外線を効率的に利用可能なオキシム系光重合開始剤としては、たとえば、好ましくはトリアジン化合物及びオキシムエステル型カルバゾール化合物が挙げられ、感度の観点からは、たとえば、より好ましくはオキシムエステル型カルバゾール化合物が挙げられる。オキシムエステル型カルバゾール化合物としては、たとえば、1,2-オクタンジオン、1-[4-(フェニルチオ)-2-(O-ベンゾイルオキシム)]、及びエタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-1-(O-アセチルオキシム)が挙げられる。オキシムエステル型カルバゾール化合物の市販品としては、たとえば、イルガキュアOXE-01、イルガキュアOXE-02、イルガキュアOXE-03のようなBASFジャパン株式会社製のオキシムエステル型カルバゾール化合物、及びアデカオプトマーN-1919、アデカアークルズNCI-831のような株式会社ADEKA製のオキシムエステル型カルバゾール化合物が挙げられる。
【0072】
光重合開始剤の含有量は、本発明の組成物中に含まれる固形分(組成物中から溶剤の含量を除いたもの)を100質量部としたときに、通常、0.1~20質量部であることが好ましく、0.5~10質量部であることがより好ましく、1~7質量部であることが更に好ましい。光重合開始剤が組成物100質量部に対して0.1~20質量部であると、重合反応が十分に進行しやすい。
【0073】
(レベリング剤)
レベリング剤は、本発明の組成物の塗布性を調製する目的、すなわち、塗布するための組成物の流動性を調整し、該組成物を塗布して得られる層表面をより平坦にさせる目的で組成物に添加してもよい。レベリング剤としては、たとえば、シランカップリング剤等のシリコーン系のレベリング剤、ポリアクリレート系のレベリング剤、及びフルオロアルキル系のレベリング剤が挙げられる。これらのレベリング剤のうち、液晶化合物の垂直配向性を更に向上させる観点から、シリコーン系のレベリング剤及びフルオロアルキル系のレベリング剤が好ましい。
【0074】
市販のレベリング剤としては、たとえば、DC3PA、SH7PA、DC11PA、SH28PA、SH29PA、SH30PA、ST80PA、ST86PA、SH8400、SH8700、及びFZ2123のような東レ・ダウコーニング(株)製レベリング剤;KP321、KP323、KP324、KP326、KP340、KP341、X22-161A、KF6001、KBM-1003、KBE-1003、KBM-303、KBM-402、KBM-403、KBE-402、KBE-403、KBM-1403、KBM-502、KBM-503、KBE-502、KBE-503、KBM-5103、KBM-602、KBM-603、KBM-903、KBE-903、KBE-9103、KBM-573、KBM-575、KBE-585、KBM-802、KBM-802、KBM-803、KBE-846、及びKBE-9007のような信越化学工業(株)製レベリング剤;TSF400、TSF401、TSF410、TSF4300、TSF4440、TSF4445、TSF-4446、TSF4452、及びTSF4460のようなモメンティブ パフォーマンス マテリアルズ ジャパン合同会社製レベリング剤;フロリナート(fluorinert)(登録商標)FC-72、同FC-40、同FC-43、及び同FC-3283のような住友スリーエム(株)製レベリング剤;メガファック(登録商標)R-08、同R-30、同R-90、同F-410、同F-411、同F-443、同F-445、同F-470、同F-477、同F-479、同F-482、同F-483、同F-556のようなDIC(株)製レベリング剤;エフトップ(商品名)EF301、同EF303、同EF351、及び同EF352のような三菱マテリアル電子化成(株)製レベリング剤;サーフロン(登録商標)S-381、同S-382、同S-383、同S-393、同SC-101、同SC-105、KH-40、及びSA-100のようなAGCセイミケミカル(株)製レベリング剤;商品名E1830、同E5844のような(株)ダイキンファインケミカル研究所製レベリング剤;BM-1000、BM-1100、BYK-352、BYK-353、及びBYK-361NのようなChemie社製レベリング剤(いずれも商品名:BM)が挙げられる。これらのレベリング剤は1種を単独で用いてもよく、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0075】
レベリング剤の含有率は、通常、本発明の組成物の固形分に対して0.001~3質量%であることが好ましく、0.01~3質量%がより好ましく、0.1~3質量%は更に好ましい。レベリング剤の含有率が組成物の固形分に対して0.001~3質量%であると、組成物の塗布性が更に向上する。
【0076】
(垂直配向液晶硬化膜形成用組成物の調製方法)
本発明の組成物は、たとえば、液晶化合物(I)-1と、非イオン性シラン化合物若しくはイオン性化合物のどちらか一方、又は両方と、必要に応じて添加する添加剤とを所定の温度で撹拌等することにより、これらの成分を略均一に分散又は溶解して得ることができる。
【0077】
<垂直配向液晶硬化膜>
垂直配向液晶硬化膜は、本発明の組成物の硬化物であって、液晶化合物が面内方向に対して垂直方向に配向している。すなわち、垂直配向液晶硬化膜は、垂直配向液晶硬化膜の面内方向に対して垂直方向に配向した状態の液晶化合物を含む。また、垂直配向液晶硬化膜は、垂直配向液晶硬化膜の面内方向に対して垂直方向に配向した状態の液晶化合物の重合体を含んでもよい。垂直配向液晶硬化膜が形成する3次元屈折率楕円体は2軸性を有していてもよいが、1軸性を有することが好ましい。
【0078】
垂直配向液晶硬化膜は、垂直配向液晶硬化膜を含む楕円偏光板を備えるディスプレイの斜方反射色相の悪化(たとえば、該ディスプレイの斜方の色相に赤及び青のような着色が確認される問題)を抑制する観点から、
下記関係式(1):
-150nm≦RthC(550)≦-30nm・・・(1)
[関係式(1)中、RthC(550)は垂直配向液晶硬化膜の波長550nmにおける厚み方向の位相差値を示す]
を満たすことが好ましい。垂直配向液晶硬化膜の厚み方向の位相差値RthC(550)は、前記ディスプレイの斜方反射色相の悪化を更に抑制する観点から、-100nm以上-40nm以下であることがより好ましく、-80nm以上-40nm以下であることが更に好ましい。
【0079】
垂直配向液晶硬化膜の厚み方向の位相差値RthC(550)は、垂直配向液晶硬化膜の厚さdCによって、調整することができる。面内位相差値は、下記式(1-2):
RthC(550)=[(nxC(550)+nyC(550))/2-nzC(550)]×dC・・・(1-2)
[式(1-2)中、nxC(550)は垂直配向液晶硬化膜のフィルム面内における波長550nmの主屈折率を示し、nyC(550)はnxC(550)と同一面内で直交する方向の波長550nmの屈折率を示し、nzC(550)は垂直配向液晶硬化膜の厚み方向の波長550nmの屈折率を示し、dCは垂直配向液晶硬化膜の膜厚を示す]
によって決定されることから、所望の厚み方向の位相差値RthC(550)を得るためには、3次元屈折率と膜厚dCとを調整すればよい。なお、3次元屈折率は、上述の液晶化合物の分子構造並びに配向性に依存する。また、nxC(550)=nyC(550)である場合には、nxC(550)はフィルム面内で任意の方向の屈折率とすることができる。
【0080】
垂直配向液晶硬化膜の膜厚の上限は、薄膜化の観点から、好ましくは3μm以下であり、より好ましくは2.5μm以下、さらに好ましくは2.0μm以下、特に好ましくは1.5μm以下である。また、垂直配向液晶硬化膜の膜厚の下限は、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.3μm以上、さらに好ましくは0.4μm以上である。垂直配向液晶硬化膜の膜厚は、エリプソメータ又は接触式膜厚計を用いて測定することができる。
【0081】
また、垂直配向液晶硬化膜は、垂直配向液晶硬化膜を含む楕円偏光板での短波長側での斜方から見た場合の楕円率の低下を抑制する観点から、
下記関係式(2):
RthC(450)/RthC(550)≦1・・・(2)
[関係式(2)中、RthC(450)は垂直配向液晶硬化膜の波長450nmにおける厚み方向の位相差値を示し、RthC(550)は垂直配向液晶硬化膜の波長550nmにおける厚み方向の位相差値を示す]
を満たすことが好ましい。前記楕円率の低下を更に抑制する観点から、垂直配向液晶硬化膜のRthC(450)/RthC(550)は、0.95以下であることがより好ましく、0.90以下であることが更に好ましい。また、垂直配向液晶硬化膜の厚み方向の位相差値RthC(450)は、RthC(550)と同様に、垂直配向液晶硬化膜の厚さdCによって、調整することができる。
【0082】
[垂直配向液晶硬化膜の製造方法]
垂直配向液晶硬化膜の製造方法は、垂直配向液晶硬化膜形成用組成物を基材に塗布し、基材上に塗布膜を形成する塗布膜形成工程と、塗布膜を乾燥させ、乾燥被膜を形成する乾燥被膜形成工程と、乾燥被膜に活性エネルギー線を照射し、垂直配向液晶硬化膜を形成する硬化膜形成工程とを含む。本製造方法で製造される積層体は、基材と垂直配向液晶硬化膜とから構成される。液晶化合物が重合性基を1つ以上有し、該組成物が光重合開始剤を更に含む場合を例に挙げて説明する。
【0083】
(塗布膜形成工程)
塗布膜形成工程では、たとえば、印刷装置を用いて、前記組成物を基材に塗布し基材上に塗布膜を形成する。塗布する方法としては、たとえば、グラビアコーティング法、ダイコーティング法、及びフレキソ法のような印刷方法が挙げられる。
【0084】
(乾燥被膜形成工程)
乾燥被膜形成工程では、たとえば、加熱装置を用いて、塗布膜を乾燥させ、乾燥被膜を形成する。塗布膜は加熱され、塗布膜中の溶剤が除去された後、液晶化合物が垂直に配向し、乾燥被膜に転化する。加熱温度は、溶剤を除去でき、かつ液晶化合物の相転移温度以上であることが好ましい。
【0085】
(硬化膜形成工程)
硬化膜形成工程では、たとえば、光照射装置を用いて、乾燥被膜に活性エネルギー線(より具体的には、紫外線等)を照射し、垂直配向液晶硬化膜を形成する。本発明において、垂直配向液晶硬化膜形成用組成物は非イオン性シラン化合物及び/又はイオン性化合物を含むことにより液晶化合物に対して垂直配向規制力を発現するため、液晶化合物は乾燥被膜中で基材平面に対して垂直に配向した液晶状態を保持している。乾燥被膜に活性エネルギー線を照射することで、液晶化合物は垂直配向した液晶状態を保持して光重合する。これにより、基材上に直接的に垂直配向液晶硬化膜を形成することができる。
【0086】
(他の工程:垂直配向膜形成工程)
すでに説明したように、本発明の垂直配向液晶硬化膜は、配向膜を形成せずに基材上に直接的に形成することができる。一方、垂直配向液晶硬化膜の製造方法は、垂直配向液晶硬化膜の配向性を更に向上させる目的で、垂直配向膜を形成する垂直配向膜形成工程を更に含んでもよい。かかる場合、垂直配向液晶硬化膜は、垂直配向膜を介して間接的に基材上に形成される。
【0087】
垂直配向膜形成工程は、塗布膜形成工程の前に実行される工程であって、垂直配向膜を形成する。ここで、垂直配向膜の形成方法の例を説明する。配向膜形成工程は、例えば、垂直配向膜形成用組成物の塗布膜を形成する工程と、前記塗布膜から乾燥被膜を形成する工程と、必要に応じて、前記乾燥被膜を硬化させ配向膜を形成する工程とを含む。
塗布膜形成工程では、たとえば、印刷装置を用いて、基材上に垂直配向膜形成用組成物を塗布して、塗布膜を形成する。垂直配向膜形成用組成物として、たとえば、後述するような配向性ポリマーと溶剤とを含む組成物を用いることができる。乾燥被膜形成工程では、たとえば、加熱装置を用いて前記塗布膜を加熱して塗布膜を乾燥させ、乾燥被膜を形成する。さらにUV照射により硬化させる工程が必要な場合には、UV照射装置を用いて、第2乾燥被膜にUVを照射して硬化させて垂直配向膜を形成する。垂直配向液晶硬化膜の製造方法が垂直配向膜形成工程を含む場合は、垂直配向膜上に垂直配向液晶硬化膜を形成する。
【0088】
<積層体>
本発明の積層体は、前記垂直配向液晶硬化膜を備える。積層体は、基材、垂直配向膜、水平配向用の配向膜(以下、水平配向膜と記載することがある)、粘着層、及び/又は後述の前記垂直配向液晶硬化膜の面内方向に対して水平方向に配向したフィルム(以下、水平配向フィルムと記載することがある)を更に備えてもよい。積層体の構成としては、たとえば、前記垂直配向液晶硬化膜と水平配向膜と水平配向フィルムとを備える積層体、前記垂直配向液晶硬化膜と基材とを備える積層体、及び前記垂直配向液晶硬化膜と水平配向膜と水平配向フィルムと基材とを備える積層体が挙げられる。ただし、本発明では、垂直配向膜がなくても垂直配向液晶硬化膜を形成できるため、積層体は、垂直配向膜を備えなくてもよい。たとえば、積層体が基材と垂直配向液晶硬化膜とを備える場合、垂直配向液晶硬化膜は基材と隣接することができる。また、前述の方法で作製した基材に隣接する垂直配向液晶硬化膜は、粘着層を介して垂直配向液晶硬化膜だけを転写し、基材を取り除いて積層体を製造することもできる。
【0089】
〔基材〕
基材としては、ガラス基材及びフィルム基材が挙げられ、加工性の観点からフィルム基材が好ましく、連続的に製造できる点で長尺のロール状フィルムがより好ましい。フィルム基材を構成する樹脂としては、たとえば、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びノルボルネン系ポリマーのようなポリオレフィン;環状オレフィン系樹脂;ポリビニルアルコール;ポリエチレンテレフタレート;ポリメタクリル酸エステル;ポリアクリル酸エステル;トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、及びセルロースアセテートプロピオネートのようなセルロースエステル;ポリエチレンナフタレート;ポリカーボネート;ポリスルホン;ポリエーテルスルホン;ポリエーテルケトン;ポリフェニレンスルフィド及びポリフェニレンオキシドのようなプラスチックが挙げられる。この基材の粘着層との接合面に、シリコーン処理のような離型処理が施されたものであることができる。市販のセルロースエステル基材としては、たとえば、フジタックフィルムのような富士写真フイルム株式会社製のセルロースエステル基材;「KC8UX2M」、「KC8UY」、及び「KC4UY」のようなコニカミノルタオプト株式会社製のセルロースエステル基材が挙げられる。このような樹脂を、溶媒キャスト法、溶融押出法等の公知の手段により製膜して、基材とすることができる。
【0090】
市販の環状オレフィン系樹脂としては、たとえば、「Topas(登録商標)」のようなTicona社(独)製の環状オレフィン系樹脂;「アートン(登録商標)」のようなJSR株式会社製の環状オレフィン系樹脂;「ゼオノア(ZEONOR)(登録商標)」、及び「ゼオネックス(ZEONEX)(登録商標)」のような日本ゼオン株式会社製の環状オレフィン系樹脂;「アペル」(登録商標)のような三井化学株式会社製の環状オレフィン系樹脂が挙げられる。市販されている環状オレフィン系樹脂基材を用いることもできる。市販の環状オレフィン系樹脂基材としては、「エスシーナ(登録商標)」及び「SCA40(登録商標)」のような積水化学工業株式会社製の環状オレフィン系樹脂基材;「ゼオノアフィルム(登録商標)」のようなオプテス株式会社製の環状オレフィン系樹脂基材;「アートンフィルム(登録商標)」のようなJSR株式会社製の環状オレフィン系樹脂基材が挙げられる。
【0091】
基材は、各層を積層しやすく、かつ剥離が容易な厚みであることが好ましい。このような基材の厚みは、通常、5~300μmであり、好ましくは10~150μmである。
【0092】
[垂直配向膜]
配向膜は液晶硬化膜の液晶化合物を所定方向に配向させる配向規制力を有する膜である。配向膜の形成方法に関しては配向膜材料の種類、ラビング条件や光照射条件によって、垂直配向、水平配向、ハイブリッド配向、及び傾斜配向等の様々な配向の制御が可能である。このように配向規制力を発現させる処理を配向処理という。この中でも、垂直配向膜は液晶化合物を垂直方向に配向させる配向規制力を有する配向膜である。垂直配向膜を用いることで、垂直配向液晶硬化膜を形成することができる。
【0093】
垂直配向膜は、垂直配向液晶硬化膜形成用組成物の塗布等により溶解しない溶媒耐性を有し、また、溶媒の除去や液晶化合物の配向のための加熱処理における耐熱性を有するものが好ましい。
【0094】
垂直配向膜は、基材等の表面の表面張力を下げるような材料を適用することが好ましい。このような材料としては、配向性ポリマー、たとえば、ポリイミド、ポリアミド、その加水分解物であるポリアミック酸、及びパーフルオロアルキルのフッ素系ポリマー、シラン化合物、並びにそれらの縮合反応により得られるポリシロキサン化合物が挙げられる。垂直配向膜は、このような材料と溶媒、たとえば、垂直配向液晶硬化膜の項で例示した溶媒とを含む組成物を基材等の上に塗布し、溶媒除去後、塗布膜に加熱等施すことで得ることができる。
【0095】
垂直配向膜にシラン化合物を使用する場合には、表面張力を低下させやすく、垂直配向膜に隣接する層との密着性を高めやすい観点から、垂直配向膜は構成元素にSi元素とC元素とを含む化合物を含有する膜が好ましく、シラン化合物を好適に使用することができる。シラン化合物としては、前述の非イオン性シラン化合物や、イオン性化合物の項に例示されているようなシラン含有イオン性化合物等が使用可能であり、これらのシラン化合物を使用することにより垂直配向規制力を高めることができる。これらのシラン化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよく、その他材料と混合して使用してもよい。シラン化合物が非イオン性シラン化合物である場合には、垂直配向規制力を高めやすい観点から分子末端にアルキル基を有するシラン化合物が好ましく、炭素数3~30のアルキル基を有するシラン化合物がより好ましい。
【0096】
垂直配向膜の膜厚は、配向規制力発現の観点から、好ましくは5μm以下であり、より好ましくは3μm以下であり、さらに好ましくは2μm以下であり、好ましくは1nm以上であり、より好ましくは5nm以上であり、さらに好ましくは10nm以上であり、特に好ましくは30nm以上である。垂直配向膜の膜厚は、エリプソメータ又は接触式膜厚計を用いて測定することができる。
【0097】
〔水平配向用の配向膜〕
水平配向膜は、液晶化合物を水平方向に配向させる配向規制力を有する。水平配向膜は、水平配向液晶硬化膜形成用組成物を水平配向膜上に製膜した際に水平配向液晶硬化膜の水平配向状態を形成することができる。配向規制力は、たとえば、配向膜の種類、表面状態、及びラビング条件によって任意に調整することが可能であり、光配向性ポリマーから形成されている場合は、偏光照射条件等によって任意に調整することが可能である。このように配向規制力を発現させる処理を配向処理という。
【0098】
水平配向膜は、液晶組成物の塗布等により溶解しない溶媒耐性を有し、また、溶媒の除去や液晶化合物の配向のための加熱処理における耐熱性を有するものが好ましい。
【0099】
水平配向膜としては、たとえば、ラビング配向膜、光配向膜、及び表面に凹凸パターンや複数の溝を有するグルブ配向膜が挙げられる。たとえば長尺のロール状フィルムに適用する場合には、配向方向を容易に制御できる点で、光配向膜が好ましい。
【0100】
ラビング配向膜は、通常、配向性ポリマーと溶媒とを含む組成物(以下、ラビング配向膜形成用組成物と記載することがある)を基材に塗布し、溶媒を除去して塗布膜を形成し、該塗布膜をラビングすることで配向規制力を付与することができる。
【0101】
配向性ポリマーとしては、たとえば、アミド結合を有するポリアミドやゼラチン類、イミド結合を有するポリイミド及びその加水分解物であるポリアミック酸、ポリビニルアルコール、アルキル変性ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリオキサゾール、ポリエチレンイミン、ポリスチレン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、並びにポリアクリル酸エステル類が挙げられる。これらの配向性ポリマーは、1種を単独で用いてもよく、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0102】
ラビング配向膜形成用組成物中の配向性ポリマーの濃度は、配向性ポリマーが溶媒に完溶する範囲であればよい。配向性ポリマーの含有量は、ラビング配向膜形成用組成物100質量部に対して、0.1~20質量部であることが好ましく、0.1~10質量部であることがより好ましい。
【0103】
ラビング配向膜形成用組成物の市販品としては、たとえば、サンエバー(登録商標)のような日産化学工業(株)製のラビング配向膜形成用組成物、及びオプトマー(登録商標)のようなJSR(株)製のラビング配向膜形成用組成物が挙げられる。
【0104】
ラビング処理の方法としては、たとえば、ラビング布が巻きつけられ、回転しているラビングロールに、前記塗布膜を接触させる方法が挙げられる。ラビング処理を行う時に、マスキングを行えば、配向の方向が異なる複数の領域(パターン)を配向膜に形成することもできる。
【0105】
光配向膜は、通常、光反応性基を有するポリマー又はモノマーと溶媒とを含む組成物(以下、光配向膜形成用組成物と記載することがある)を基材に塗布し、溶媒を除去後に偏光(好ましくは、偏光UV)を照射することで得られる。光配向膜は、照射する偏光の偏光方向を選択することにより、配向規制力の方向を任意に制御することができる。
【0106】
光反応性基とは、光照射することにより配向能を生じる基をいう。具体的には、光照射により生じる分子の配向誘起反応、異性化反応、光二量化反応、光架橋反応、又は光分解反応のような配向能の起源となる光反応に関与する基が挙げられる。光反応性基としては、不飽和結合、特に二重結合を有する基が好ましく、炭素-炭素二重結合(C=C結合)、炭素-窒素二重結合(C=N結合)、窒素-窒素二重結合(N=N結合)、及び炭素-酸素二重結合(C=O結合)からなる群より選ばれる少なくとも一つの二重結合を有する基が特に好ましい。
【0107】
C=C結合を有する光反応性基としては、たとえば、ビニル基、ポリエン基、スチルベン基、スチルバゾール基、スチルバゾリウム基、カルコン基、及びシンナモイル基が挙げられる。C=N結合を有する光反応性基としては、たとえば、芳香族シッフ塩基、芳香族ヒドラゾン等の構造を有する基が挙げられる。N=N結合を有する光反応性基としては、たとえば、アゾベンゼン基、アゾナフタレン基、芳香族複素環アゾ基、ビスアゾ基、ホルマザン基、及びアゾキシベンゼン構造を有する基が挙げられる。C=O結合を有する光反応性基としては、たとえば、ベンゾフェノン基、クマリン基、アントラキノン基、及びマレイミド基が挙げられる。これらの基は、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリルオキシ基、シアノ基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基、及びハロゲン化アルキル基のような置換基を有していてもよい。
【0108】
光二量化反応又は光架橋反応に関与する基が、配向性に優れる点で好ましい。中でも、光二量化反応に関与する光反応性基が好ましく、配向に必要な偏光照射量が比較的少なく、かつ熱安定性や経時安定性に優れる光配向膜が得られやすいという点で、シンナモイル基及びカルコン基が好ましい。光反応性基を有するポリマーとしては、当該ポリマー側鎖の末端部が桂皮酸構造又は桂皮酸エステル構造となるようなシンナモイル基を有するものが特に好ましい。
【0109】
光反応性基を有するポリマー又はモノマーの含有量は、ポリマー又はモノマーの種類や目的とする光配向膜の厚さによって調節でき、光配向膜形成用組成物100質量部に対して、0.2質量部以上とすることが好ましく、0.3~10質量部がより好ましい。
【0110】
偏光を照射するには、たとえば、基材上に塗布された光配向膜形成用組成物から、溶媒を除去したものに直接、偏光を照射する形式であってよい。また、当該偏光は、実質的に平行光であると好ましい。照射する偏光の波長は、光反応性基を有するポリマー又はモノマーの光反応性基が、光エネルギーを吸収し得る波長域のものがよい。具体的には、波長250~400nmの領域のUV(紫外線)が特に好ましい。当該偏光を照射する光源としては、たとえば、キセノンランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、並びにKrF及びArFのような紫外光レーザーが挙げられる。これらの光源のうち、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、及びメタルハライドランプが、波長313nmの紫外線の発光強度が大きいため好ましい。前記光源からの光を、適当な偏光素子を通過して照射することにより、偏光UVを照射することができる。偏光素子としては、たとえば、偏光フィルター、グラントムソン、及びグランテーラーのような偏光プリズム、並びにワイヤーグリッドが挙げられる。これらの偏光素子のうち、大面積化と熱による耐性の観点からワイヤーグリッドが好ましい。
【0111】
なお、ラビング又は偏光照射を行うときに、マスキングを行えば、液晶配向の方向が異なる複数の領域(パターン)を形成することもできる。
【0112】
グルブ(groove)配向膜は、膜表面に凹凸パターン又は複数のグルブ(溝)を有する膜である。等間隔に並んだ複数の直線状のグルブを有する膜に組成物を塗布した場合、その溝に沿った方向に液晶化合物が配向する。
【0113】
グルブ配向膜を得る方法としては、感光性ポリイミド膜表面にパターン形状のスリットを有する露光用マスクを介して露光後、現像及びリンス処理を行って凹凸パターンを形成する方法、表面に溝を有する板状の原盤に、硬化前のUV硬化樹脂の層を形成し、形成された樹脂層を基材へ移してから硬化する方法、及び、基材に形成した硬化前のUV硬化樹脂の膜に、複数の溝を有するロール状の原盤を押し当てて凹凸を形成し、その後硬化する方法等が挙げられる。
【0114】
水平配向膜の膜厚は、薄膜化を実現し及び配向規制力を発現させる観点から、好ましくは1μm以下であり、より好ましくは0.5μm以下であり、さらに好ましくは0.3μm以下である。また、水平配向膜の膜厚は、好ましくは1nm以上であり、より好ましくは5nm以上であり、さらに好ましくは10nm以上であり、特に好ましくは30nm以上である。水平配向膜の膜厚は、エリプソメータ又は接触式膜厚計を用いて測定することができる。
【0115】
〔垂直配向液晶硬化膜の面内方向に対して水平方向に配向したフィルム〕
本発明の積層体を構成する、垂直配向液晶硬化膜の面内方向に対して水平方向に配向したフィルムは、位相差フィルムである。水平配向フィルムとしては、たとえば、延伸フィルム及び水平配向液晶硬化膜(以下、水平配向液晶硬化膜Aともいう)が挙げられる。水平配向フィルムの光学特性は、重合性液晶化合物の配向状態又は延伸方法により調整することができる。水平配向フィルムの薄膜化の観点から、水平配向液晶硬化膜Aが好ましい。
【0116】
(水平配向液晶硬化膜A)
本明細書において、水平配向液晶硬化膜Aは、重合性液晶化合物が垂直配向液晶硬化膜の面内方向に対して水平方向に配向した状態で硬化した液晶硬化膜である。水平配向液晶硬化膜Aは、重合性液晶化合物の光軸が垂直配向液晶硬化膜の面内方向に対して水平方向に配向している。重合性液晶化合物としては、例えば、重合性基を少なくとも1つ有する液晶化合物(I)-1が挙げられる。なお、本明細書では、本発明の積層体に含まれる水平配向液晶硬化膜を水平配向液晶硬化膜Aと称し、後述する偏光板の偏光フィルムに含まれる水平配向液晶硬化膜を水平配向液晶硬化膜Bと称し、それぞれを区別する。
【0117】
(水平配向液晶硬化膜Aの製造方法)
水平配向液晶硬化膜Aは、組成物(以下、水平配向液晶硬化膜A形成用組成物と記載することがある)の硬化物である。水平配向液晶硬化膜Aの製造方法の一例としては、予め作製した水平配向膜上に水平配向液晶硬化膜A形成用組成物を塗布し、塗布膜を形成する塗布工程と、塗布膜を乾燥させて乾燥被膜を形成する乾燥被膜形成工程と、乾燥被膜に活性エネルギー線を照射し、水平配向液晶硬化膜を形成する硬化膜形成工程とを含む。
【0118】
(延伸フィルム)
延伸フィルムとしては、たとえば、ポリカーボネート系樹脂からなる延伸フィルムが挙げられる。市販の延伸フィルムとしては、例えば、「ピュアエース(登録商標)WR」のような帝人株式会社製の延伸フィルムが挙げられる。延伸フィルムは、通常、基材フィルムを延伸することで得られる。基材フィルムを延伸する方法としては、たとえば、基材フィルムがロールに巻き取られている巻き取り体を準備し、巻き取り体から、基材フィルムを連続的に巻き出し、巻き出された基材フィルムを加熱炉に搬送する。加熱炉の設定温度は、基材フィルムのガラス転移温度近傍~ガラス転移温度+50℃の範囲が好ましい。加熱炉において、基材フィルムの搬送方向、又は搬送方向と直交する方向へ延伸する。延伸する際は、搬送方向や張力を調整し任意の角度に傾斜をつけて一軸延伸、二軸延伸、又は斜め延伸の熱延伸処理を行う。延伸フィルムの遅延軸方向は延伸方法により異なり、延伸方法に応じて遅延軸又は光軸が決定される。延伸フィルムと本発明の積層体とは、粘着層を介して接着させることができる。
【0119】
本発明の積層体は、積層体を備える楕円偏光板での短波長側における楕円率の低下を抑制する観点から、積層体を構成する水平配向フィルムが、下記関係式(3):
ReA(450)/ReA(550)≦1・・・(3)
[関係式(3)中、ReA(450)は前記垂直配向液晶硬化膜の面内方向に対して水平方向に配向したフィルムの波長450nmにおける面内位相差値を示し、ReA(550)は前記垂直配向液晶硬化膜の面内方向に対して水平方向に配向したフィルムの波長550nmにおける面内位相差値を示す]
を満たすことが好ましい。楕円率の低下を更に抑制する観点から、ReA(450)/ReA(550)は、0.95以下であることがより好ましく、0.90以下であることが更に好ましい。
また、同様に積層体を備える楕円偏光板の楕円率が向上する観点から、以下(3)-2:
120nm≦ReA(550)≦170nm・・・(3)-2
を満たすことが好ましい。積層体を備える楕円偏光板の楕円率が向上する観点から、好ましくは130nm≦ReA(550)≦160nmである。
【0120】
本発明に記載の積層体の内、垂直配向液晶硬化膜と垂直配向液晶硬化膜の面内方向に対して水平方向に配向したフィルムを含む積層体は、正面方向の位相差値と斜方からの位相差値の差が小さくなるという観点、すなわち該積層体を含む楕円偏光板を備えるディスプレイの斜方反射色相の悪化を抑制する観点から、下記関係式(4):
|R0(550)-R40(550)|≦10nm・・・(4)
[関係式(4)中、R0(550)は、波長550nmにおける積層体の面内位相差値を示し、R40(550)は、前記垂直配向液晶硬化膜の面内方向に対して水平方向に配向したフィルムの進相軸方向周りで40°回転させた時の、波長550nmにおける位相差値を示す]
を満たすことが好ましい。斜方反射色相の悪化を更に抑制する観点から、8nm以下であることがより好ましく、4nm以下であることが更に好ましい。
【0121】
本発明に記載の積層体の内、垂直配向液晶硬化膜と垂直配向液晶硬化膜の面内方向に対して水平方向に配向したフィルムを含む積層体は、該積層体を含む楕円偏光板を備えるディスプレイの斜方反射色相の悪化を抑制する観点から、下記関係式(5):
|R0(450)-R40(450)|≦10nm・・・(5)
[関係式(5)中、R0(450)は波長450nmにおける積層体の面内位相差値を示し、R40(450)は、前記垂直配向液晶硬化膜の面内方向に対して水平方向に配向したフィルムの進相軸方向周りで40°回転させた時の、波長450nmにおける位相差値を示す]
を満たすことが好ましい。斜方反射色相の悪化を更に抑制する観点から、8nm以下であることがより好ましく、4nm以下であることが更に好ましい。
【0122】
本発明に記載の積層体の内、垂直配向液晶硬化膜と垂直配向液晶硬化膜の面内方向に対して水平方向に配向したフィルムを含む積層体は、該積層体を含む楕円偏光板を備えるディスプレイの斜方反射色相の悪化を抑制する観点から、下記関係式(6):
|{R0(450)-R40(450)}-{R0(550)-R40(550)}|≦3nm・・・(6)
[関係式(6)中、R0(450)は波長450nmにおける積層体の面内位相差値を示し、R0(550)は波長550nmにおける積層体の面内位相差値を示し、R40(450)は、前記垂直配向液晶硬化膜の面内方向に対して水平方向に配向したフィルムの進相軸方向周りで40°回転させた時の、波長450nmにおける位相差値を示し、R40(550)は、前記垂直配向液晶硬化膜の面内方向に対して水平方向に配向したフィルムの進相軸方向周りで40°回転させた時の、波長550nmにおける位相差値を示す]
を満たすことが好ましい。斜方反射色相の悪化を更に抑制する観点から2nm以下であることがより好ましく、1nm以下であることが更に好ましい。
【0123】
[積層体の製造方法]
本発明の積層体の製造方法は、垂直配向液晶硬化膜形成工程を含む。垂直配向液晶硬化膜形成工程は、上述の垂直配向液晶硬化膜の製造方法であってよい。すでに説明した垂直配向液晶硬化膜の製造方法により、基材及び垂直配向液晶硬化膜から構成される積層体、並びに基材、配向膜、及び垂直配向液晶硬化膜からなる積層体を製造することができる。
積層体が垂直配向液晶硬化膜の面内方向に対して水平配向に配向したフィルムを備える場合、積層体の製造方法は、延伸フィルム貼合工程又は水平配向液晶硬化膜A形成工程を更に含む。延伸フィルム貼合工程は、粘接着剤を用いて延伸フィルムを、たとえば、垂直配向液晶硬化膜に貼り合わせる。水平配向液晶硬化膜Aを備える積層体の製造方法は、たとえば、粘着層を介して垂直配向液晶硬化膜と水平配向液晶硬化膜とを貼合して製造してもよいし、水平配向膜及び水平配向液晶硬化膜Aを垂直配向液晶硬化膜上に形成してもよい。また、延伸フィルム上又は水平配向液晶硬化膜Aに垂直配向液晶硬化膜を形成してもよい。
【0124】
[粘接着剤]
粘接着剤としては、たとえば、感圧式粘着剤、乾燥固化型接着剤、及び化学反応型接着剤が挙げられる。化学反応型接着剤としては、たとえば、活性エネルギー線硬化型接着剤が挙げられる。
【0125】
感圧式粘着剤は、通常、ポリマーを含み、溶媒を含んでいてもよい。ポリマーとしては、たとえば、アクリル系ポリマー、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、及びポリエーテルが挙げられる。これらの感圧式粘着剤のうち、アクリル系ポリマーを含む感圧式粘着剤は、光学的な透明性に優れ、適度の濡れ性や凝集力を有し、接着性に優れ、さらには耐候性や耐熱性等が高く、加熱や加湿の条件下で浮きや剥がれ等が生じ難いため好ましい。
【0126】
アクリル系ポリマーとしては、たとえば、エステル部分のアルキル基がメチル基、エチル基又はブチル基のような炭素数1~20のアルキル基である(メタ)アクリレートと、(メタ)アクリル酸やヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の官能基を有する(メタ)アクリル系モノマーとの共重合体が好ましい。
【0127】
このような共重合体を含む感圧式粘着剤は、粘着性に優れており、被転写体に貼合した後に取り除くときも、被転写体に糊残り等を生じさせることなく、比較的容易に取り除くことが可能であるので好ましい。アクリル系ポリマーのガラス転移温度は、25℃以下が好ましく、0℃以下がより好ましい。このようなアクリル系ポリマーの質量平均分子量は、10万以上であることが好ましい。
【0128】
溶媒としては、たとえば、上記溶媒として挙げられた溶媒が挙げられる。感圧式粘着剤は、光拡散剤を含有していてもよい。光拡散剤は、感圧式粘着剤に光拡散性を付与する添加剤であり、感圧式粘着剤が含むポリマーの屈折率と異なる屈折率を有する微粒子であればよい。光拡散剤としては、無機化合物からなる微粒子、及び有機化合物(ポリマー)からなる微粒子が挙げられる。アクリル系ポリマーを含めて、感圧式粘着剤が有効成分として含むポリマーの多くは1.4~1.6程度の屈折率を有するため、その屈折率が1.2~1.8である光拡散剤から適宜選択することが好ましい。感圧式粘着剤が有効成分として含むポリマーと光拡散剤との屈折率差は、通常、0.01以上であり、表示装置の明るさと表示性の観点からは、0.01~0.2が好ましい。光拡散剤として用いる微粒子は、球形の微粒子、それも単分散に近い微粒子が好ましく、平均粒径が2~6μmである微粒子がより好ましい。屈折率は、一般的な最小偏角法又はアッベ屈折計によって測定される。
【0129】
無機化合物からなる微粒子としては、たとえば、酸化アルミニウム(屈折率1.76)及び酸化ケイ素(屈折率1.45)が挙げられる。有機化合物(ポリマー)からなる微粒子としては、たとえば、メラミンビーズ(屈折率1.57)、ポリメタクリル酸メチルビーズ(屈折率1.49)、メタクリル酸メチル/スチレン共重合体樹脂ビーズ(屈折率1.50~1.59)、ポリカーボネートビーズ(屈折率1.55)、ポリエチレンビーズ(屈折率1.53)、ポリスチレンビーズ(屈折率1.6)、ポリ塩化ビニルビーズ(屈折率1.46)、及びシリコーン樹脂ビーズ(屈折率1.46)が挙げられる。光拡散剤の含有量は、通常、ポリマー100質量部に対して、3~30質量部である。
【0130】
感圧式粘着剤の厚みは、その密着力等に応じて決定されるため、特に制限されないが、通常、1μm~40μmである。加工性や耐久性等の点から、当該厚さは3μm~25μmであることが好ましく、5μm~20μmであることがより好ましい。感圧式粘着剤から形成される粘着層の厚さを5μm~20μmとすることにより、表示装置を正面から見た場合や斜めから見た場合の明るさを保ち、表示像のにじみやボケを生じ難くすることができる。
【0131】
乾燥固化型接着剤は、溶媒を含んでいてもよい。乾燥固化型接着剤としては、たとえば、水酸基、カルボキシル基、又はアミノ基のようなプロトン性官能基とエチレン性不飽和基とを有するモノマーの重合体、又は、ウレタンポリマーを主成分として含有し、さらに、多価アルデヒド、エポキシ化合物、エポキシ樹脂、メラミン化合物、ジルコニア化合物、及び亜鉛化合物のような架橋剤若しくは硬化性化合物を含有する組成物が挙げられる。水酸基、カルボキシル基又はアミノ基等のプロトン性官能基とエチレン性不飽和基とを有するモノマーの重合体としては、たとえば、エチレン-マレイン酸共重合体、イタコン酸共重合体、アクリル酸共重合体、アクリルアミド共重合体、ポリ酢酸ビニルのケン化物及び、ポリビニルアルコール系樹脂が挙げられる。
【0132】
ポリビニルアルコール系樹脂としては、たとえば、ポリビニルアルコール、部分ケン化ポリビニルアルコール、完全ケン化ポリビニルアルコール、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール、アセトアセチル基変性ポリビニルアルコール、メチロール基変性ポリビニルアルコール、及びアミノ基変性ポリビニルアルコールが挙げられる。水系の粘接着剤におけるポリビニルアルコール系樹脂の含有量は、水100質量部に対して、通常、1~10質量部であり、好ましくは1~5質量部である。
【0133】
ウレタン樹脂としては、たとえば、ポリエステル系アイオノマー型ウレタン樹脂が挙げられる。ここでいうポリエステル系アイオノマー型ウレタン樹脂とは、ポリエステル骨格を有するウレタン樹脂であって、その中に少量のイオン性成分(親水成分)が導入された樹脂である。係るアイオノマー型ウレタン樹脂は、乳化剤を使用せずに、水中で乳化してエマルジョンとなるため、水系の粘接着剤とすることができる。ポリエステル系アイオノマー型ウレタン樹脂を用いる場合は、架橋剤として水溶性のエポキシ化合物を配合することが有効である。
【0134】
エポキシ樹脂としては、ジエチレントリアミン又はトリエチレンテトラミン等のポリアルキレンポリアミンとアジピン酸等のジカルボン酸との反応で得られるポリアミドポリアミンに、エピクロロヒドリンを反応させて得られるポリアミドエポキシ樹脂等が挙げられる。係るポリアミドエポキシ樹脂の市販品としては、たとえば、住化ケムテックス株式会社製の「スミレーズレジン(登録商標)650」及び「スミレーズレジン675」、並びに日本PMC株式会社製「WS-525」が挙げられる。エポキシ樹脂を配合する場合、その含有量は、ポリビニルアルコール系樹脂100質量部に対して、通常、1~100質量部であり、好ましくは1~50質量部である。
【0135】
乾燥固化型接着剤から形成される粘接着剤層の厚さは、外観不良の発生を抑制する観点から、通常、0.001~5μmであり、好ましくは0.01~2μmであり、さらに好ましくは0.01~0.5μmである。
【0136】
活性エネルギー線硬化型接着剤は、溶媒を含んでいてもよい。活性エネルギー線硬化型接着剤とは、活性エネルギー線の照射を受けて硬化する粘接着剤である。活性エネルギー線硬化型接着剤としては、たとえば、エポキシ化合物とカチオン重合開始剤とを含有するカチオン重合性の接着剤、アクリル系硬化成分とラジカル重合開始剤とを含有するラジカル重合性の接着剤、エポキシ化合物のようなカチオン重合性の硬化成分とアクリル系化合物等のラジカル重合性の硬化成分との両者を含有し、さらにカチオン重合開始剤とラジカル重合開始剤とを含有する接着剤、及び、これら重合開始剤を含まずに電子ビームを照射することで硬化される接着剤が挙げられる。
【0137】
これらの活性エネルギー線硬化型接着剤のうち、アクリル系硬化成分と光ラジカル重合開始剤とを含有するラジカル重合性の活性エネルギー線硬化型接着剤、及びエポキシ化合物と光カチオン重合開始剤とを含有するカチオン重合性の活性エネルギー線硬化型接着剤が好ましい。アクリル系硬化成分としては、たとえば、メチル(メタ)アクリレート及びヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのような(メタ)アクリレート、並びに(メタ)アクリル酸が挙げられる。エポキシ化合物を含有する活性エネルギー線硬化型接着剤は、エポキシ化合物以外の化合物をさらに含有していてもよい。エポキシ化合物以外の化合物としては、たとえば、オキセタン化合物及びアクリル化合物が挙げられる。
【0138】
光ラジカル重合開始剤及び光カチオン重合開始剤としては、たとえば、上述の光ラジカル重合開始剤及び光カチオン重合開始剤が挙げられる。ラジカル重合開始剤及びカチオン重合開始剤の含有量は、活性エネルギー線硬化型接着剤100質量部に対して、通常、0.5~20質量部であり、好ましくは1~15質量部である。
【0139】
活性エネルギー線硬化型接着剤には、さらに、イオントラップ剤、酸化防止剤、連鎖移動剤、粘着付与剤、熱可塑性樹脂、充填剤、流動調整剤、可塑剤、及び消泡剤が含有されていてもよい。
【0140】
<楕円偏光板>
楕円偏光板は、前記積層体と、偏光フィルムとを含む。楕円偏光板は、必要に応じて、任意の層(より具体的には、保護層及び粘接着剤等)を更に含んでもよい。積層体及び偏光フィルムは、たとえば、粘接着剤を介して接着する。
【0141】
図1は、楕円偏光板の層構成の一例を示す概略断面図である。図1に示される楕円偏光板20は、積層体15と、粘接着剤7と、偏光フィルム11と、保護層13とから構成される。積層体15は、基材1と、水平配向膜3と、水平配向液晶硬化膜A 5と、粘接着剤7と、垂直配向液晶硬化膜9とから構成される。水平配向液晶硬化膜A 5の遅相軸と、偏光フィルム11の吸収軸との成す角は、好ましくは45±5°である。
【0142】
(偏光フィルム)
偏光フィルムは、偏光機能を有するフィルムである。偏光フィルムとしては、たとえば、二色性色素を含み、偏光フィルムのフィルム表面に対して水平方向に配向したフィルム(より具体的には二色性色素を吸着させた延伸フィルム(以下、偏光フィルムAと記載することがある)、及び二色性色素を含む水平配向液晶硬化膜(以下、偏光フィルムを構成する前記水平配向液晶硬化膜を水平配向液晶硬化膜B、水平配向液晶硬化膜Bから構成される偏光フィルムを偏光フィルムBと記載することがある)等)が挙げられる。楕円偏光板の薄膜化の観点から、二色性色素を含む水平配向液晶硬化膜Bが好ましい。二色性色素は、吸収異方性を示し、二色性色素の分子の長軸方向における吸光度と、短軸方向における吸光度とが異なる性質を有する色素を意味する。
【0143】
(水平配向液晶硬化膜B)
水平配向液晶硬化膜Bは、二色性色素と、重合性液晶化合物(以下、水平配向液晶硬化膜Bを形成する重合性液晶化合物を重合性液晶化合物(B)と記載することがある)とを含有する組成物(以下、偏光フィルムB形成用組成物と記載することがある)の硬化物である。水平配向液晶硬化膜Bは、二色性色素を含み、重合性液晶化合物(B)が面内方向に対して水平方向に配向した状態で硬化した液晶硬化膜である。
【0144】
水平配向液晶硬化膜Bは、重合性液晶化合物(B)が膜の面内方向に対して水平方向に配向したスメクチック相の状態で硬化した硬化膜であることが好ましい。すなわち、重合性液晶化合物(B)がサーモトロピック液晶である場合は、ネマチック液晶相を示すサーモトロピック性液晶化合物であってもよいし、スメクチック液晶相を示すサーモトロピック性液晶化合物であってもよい。重合反応により硬化膜として偏光機能を発現する際には、重合性液晶化合物が示す液晶状態は、スメクチック相であることが好ましく、高次スメクチック相であれば高性能化の観点からより好ましい。中でも、スメクチックB相、スメクチックD相、スメクチックE相、スメクチックF相、スメクチックG相、スメクチックH相、スメクチックI相、スメクチックJ相、スメクチックK相又はスメクチックL相を形成する高次スメクチック液晶化合物がより好ましく、スメクチックB相、スメクチックF相又はスメクチックI相を形成する高次スメクチック液晶化合物がさらに好ましい。重合性液晶化合物(B)が形成する液晶相がこれらの高次スメクチック相であると、偏光性能のより高い偏光膜を製造することができる。また、このように偏光性能の高い偏光膜はX線回折測定においてヘキサチック相やクリスタル相といった高次構造由来のブラッグピークが得られるものである。当該ブラッグピークは分子配向の周期構造に由来するピークであり、その周期間隔が3~6Åである膜を得ることができる。水平配向液晶硬化膜Bは、スメクチック相の状態で重合された重合性液晶化合物(B)の重合体を含むことが、より高い偏光特性が得られるという観点から好ましい。なお、重合性液晶化合物(B)が有する後述の重合性基は、水平配向液晶硬化膜B中において、未重合の状態であってもよく、重合した状態であってもよい。すなわち、水平配向液晶硬化膜Bは、重合性液晶化合物(B)(モノマー)、重合性液晶化合物(B)のオリゴマー、重合性液晶化合物(B)の重合体、及びこれらの組み合わせのいずれの状態で含んでいてもよい。重合性液晶化合物(B)が有する重合性基は、水平配向液晶硬化膜B中において、未重合の状態であることが好ましい。
【0145】
重合性液晶化合物(B)としては、具体的には、下記式(B1)で表される化合物(以下、重合性液晶化合物(B1)ともいう)等が挙げられる。当該重合性液晶は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0146】
-V-W-X-Y-X-Y-X-W-V-U (B1)
[式(B1)中、
、X、及びXは、それぞれ独立に、2価の芳香族基又は2価の脂環式炭化水素基を表し、ここで、該2価の芳香族基又は該2価の脂環式炭化水素基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のフルオロアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、シアノ基、又はニトロ基で置換されていてもよく、該2価の芳香族基又は該2価の脂環式炭化水素基を構成する炭素原子が、酸素原子、硫黄原子、又は窒素原子で置換されていてもよい。ただし、X、X、及びXのうち少なくとも1つは、置換基を有していてもよい1,4-フェニレン基、又は置換基を有していてもよいシクロヘキサン-1,4-ジイル基を表す。
、Y、W、及びWは、それぞれ独立に、単結合又は二価の連結基を表す。
及びVは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルカンジイル基を表し、該アルカンジイル基を構成する-CH-は、-O-、-CO-、-S-又はNH-で置換されていてもよい。
及びUは、それぞれ独立に、重合性基又は水素原子を表し、U及びUのうちの少なくとも1つは重合性基を表す。
【0147】
重合性液晶化合物(B1)において、X、X、及びXのうち少なくとも1つは、置換基を有していてもよい1,4-フェニレン基、又は置換基を有していてもよいシクロヘキサン-1,4-ジイル基を表す。特に、X及びXは置換基を有していてもよいシクロヘキサン-1,4-ジイル基を表すことが好ましく、該シクロへキサン-1,4-ジイル基は、トランス-シクロへキサン-1,4-ジイル基を表すことがさらに好ましい。置換基を有していてもよい1,4-フェニレン基、又は、置換基を有していてもよいシクロへキサン-1,4-ジイル基が任意に有する置換基としては、たとえば、メチル基、エチル基、及びブチル基のような炭素数1~4のアルキル基、シアノ基、並びに塩素原子及びフッ素原子のようなハロゲン原子が挙げられる。置換基を有していてもよい1,4-フェニレン基、又は、置換基を有していてもよいシクロへキサン-1,4-ジイル基は、好ましくは1,4-フェニレン基及びシクロへキサン-1,4-ジイル基である。また、Y及びYが同一構造である場合、X、X及びXのうち少なくとも1つが異なる構造であることが好ましい。X、X及びXのうち少なくとも1つが異なる構造である場合には、スメクチック液晶性が発現しやすい傾向にある。
【0148】
及びYは、それぞれ独立に、単結合、-CHCH-、-CHO-、-CHCHO-、-COO-、-OCO-、-N=N-、-CR=CR-、-C≡C-又はCR=N-を表すことが好ましく、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表す。Y及びYは、それぞれ独立に、-CHCH-、-COO-、-OCO-、又は単結合を表すことがより好ましい。また、X、X及びXが全て同一構造である場合、Y及びYが互いに異なる結合方式であることが好ましい。Y及びYが互いに異なる結合方式である場合には、スメクチック液晶性が発現しやすい傾向にある。
【0149】
及びWは、それぞれ独立に、単結合、-O-、-S-、-COO-、又はOCO-を表すことが好ましく、それぞれ独立に、単結合又は-O-を表すことがより好ましい。
【0150】
及びVで表される炭素数1~20のアルカンジイル基としては、たとえば、メチレン基、エチレン基、プロパン-1,3-ジイル基、ブタン-1,3-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基、ペンタン-1,5-ジイル基、ヘキサン-1,6-ジイル基、ヘプタン-1,7-ジイル基、オクタン-1,8-ジイル基、デカン-1,10-ジイル基、テトラデカン-1,14-ジイル基、及びイコサン-1,20-ジイル基が挙げられる。V及びVは、好ましくは炭素数2~12のアルカンジイル基を表し、より好ましくは直鎖状の炭素数6~12のアルカンジイル基を表す。V及びVが直鎖状の炭素数6~12のアルカンジイル基を表す場合、重合性液晶化合物(B1)の配向性が向上し、スメクチック液晶性を発現しやすい傾向にある。
置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルカンジイル基が任意に有する置換基としては、たとえば、シアノ基、並びに塩素原子及びフッ素原子のようなハロゲン原子が挙げられるが、該アルカンジイル基は、無置換であることが好ましく、無置換かつ直鎖状のアルカンジイル基であることがより好ましい。
【0151】
及びUは、ともに重合性基を表すことが好ましく、ともに光重合性基を表すことがより好ましい。光重合性基を有する重合性液晶化合物(B1)は、熱重合性基よりも低温条件下で重合できるため、液晶がより秩序度の高い状態で重合体を形成できる点で有利である。
【0152】
及びUで表される重合性基は、互いに同一であっても異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。重合性基としては、たとえば、ビニル基、ビニルオキシ基、1-クロロビニル基、イソプロペニル基、4-ビニルフェニル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、オキシラニル基、及びオキセタニル基が挙げられる。これらの光重合性基のうち、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、ビニルオキシ基、オキシラニル基、及びオキセタニル基が好ましく、メタクリロイルオキシ基、及びアクリロイルオキシ基がより好ましい。
【0153】
このような重合性液晶化合物(B1)としては、例えば、以下の式(1-1)~(1-23)で表される重合性液晶化合物が挙げられる。
【化17】
【0154】
【化18】
【0155】
【化19】
【0156】
【化20】
【0157】
例示した前記重合性液晶化合物(B1)のうち、式(1-2)、式(1-3)、式(1-4)、式(1-6)、式(1-7)、式(1-8)、式(1-13)、式(1-14)及び式(1-15)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。重合性液晶化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0158】
重合性液晶化合物(B1)は、例えば、Lub等、Recl.Trav.Chim.Pays-Bas、115、321-328(1996)、又は特許第4719156号などに記載の公知の方法で製造できる。
【0159】
偏光フィルムB形成用組成物は、本発明の効果を損なわない限り、重合性液晶化合物(B)以外の他の液晶化合物を含んでいてもよいが、配向秩序度の高い偏光膜を得る観点から、偏光フィルムB形成用組成物に含まれる全液晶化合物の総質量に対する重合性液晶化合物(B)の割合は、好ましくは51質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上であり、さらに好ましくは90質量%以上である。
【0160】
また、偏光フィルムB形成用組成物が2種以上の重合性液晶化合物(B)を含む場合、そのうちの少なくとも1種が重合性液晶化合物(B1)であってもよく、その全てが重合性液晶化合物(B1)であってもよい。複数の重合性液晶化合物を組み合わせることにより、液晶-結晶相転移温度以下の温度でも一時的に液晶性を保持することができる場合がある。
【0161】
偏光フィルムB形成用組成物における重合性液晶化合物(B)の含有量は、偏光フィルムB形成用組成物の固形分に対して、好ましくは40~99.9質量%であり、より好ましくは60~99質量%であり、さらに好ましくは70~99質量%である。重合性液晶化合物(B)の含有量が上記範囲内であると、液晶化合物の配向性が高くなる傾向がある。なお、固形分とは、偏光フィルムB形成用組成物から溶剤を除いた成分の合計量をいう。
【0162】
(二色性色素)
二色性色素とは、分子の長軸方向における吸光度と、短軸方向における吸光度とが異なる性質を有する色素をいう。二色性色素としては、可視光を吸収する特性を有する特性を有することが好ましく、380~680nmの波長範囲に吸収極大波長(λMAX)を有するものがより好ましい。二色性色素としては、たとえば、ヨウ素、及び二色性の有機染料が挙げられる。二色性の有機染料としては、例えば、アクリジン色素、オキサジン色素、シアニン色素、ナフタレン色素、アゾ色素、及びアントラキノン色素が挙げられる。これらの二色性の有機染料のうち、アゾ色素が好ましい。アゾ色素としては、たとえば、モノアゾ色素、ビスアゾ色素、トリスアゾ色素、テトラキスアゾ色素、及びスチルベンアゾ色素が挙げられる。これらのアゾ色素のうち、好ましくはビスアゾ色素及びトリスアゾ色素である。二色性の有機染料は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよいが、可視光全域で吸収を得るためには、3種類以上の二色性色素を組み合わせて用いることが好ましく、3種類以上のアゾ色素を組み合わせて用いることがより好ましい。ポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、染色処理前に、水への浸漬処理を施しておくことが好ましい。
【0163】
アゾ色素としては、例えば、式(I)で表される化合物が挙げられる。
-A(-N=N-A-N=N-A -T(I)
[式(I)中、
、A、及びAは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい1,4-フェニレン基、ナフタレン-1,4-ジイル基、又は置換基を有していてもよい2価の複素環基を表し、T及びTは、それぞれ独立に、電子吸引基又は電子放出基を表し、アゾ結合面内に対して実質的に180°の位置に有する。pは0~4の整数を表す。pが2以上の整数を表す場合、複数のAは互いに同一でも異なっていてもよい。アゾ色素が可視域に吸収を示す範囲で-N=N-結合は、-C=C-結合、-COO-結合、-NHCO-結合、又は-N=CH-結合に置き換わっていてもよい。]
【0164】
、A、及びAが表す1,4-フェニレン基、ナフタレン-1,4-ジイル基、及び2価の複素環基が任意に有する置換基としては、たとえば、メチル基、エチル基、及びブチル基のような炭素数1~4のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、及びブトキシ基のような炭素数1~4のアルコキシ基;トリフルオロメチル基のような炭素数1~4のフッ化アルキル基;シアノ基;ニトロ基;塩素原子及びフッ素原子のようなハロゲン原子;アミノ基、ジエチルアミノ基及びピロリジノ基のような置換アミノ基又は無置換アミノ基(置換アミノ基とは、炭素数1~6のアルキル基を1つ又は2つ有するアミノ基、あるいは2つの置換アルキル基が互いに結合して炭素数2~8のアルカンジイル基を形成しているアミノ基を意味する。無置換アミノ基は、-NHである。)が挙げられる。なお、炭素数1~6のアルキル基としては、たとえば、メチル基、エチル基、及びヘキシル基が挙げられる。炭素数2~8のアルカンジイル基としては、たとえば、エチレン基、プロパン-1,3-ジイル基、ブタン-1,3-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基、ペンタン-1,5-ジイル基、ヘキサン-1,6-ジイル基、ヘプタン-1,7-ジイル基、及びオクタン-1,8-ジイル基が挙げられる。スメクチック液晶のような高秩序液晶構造中に包摂するためには、A、A及びAは、無置換又は水素原子がメチル基又はメトキシ基で置換された1,4-フェニレン基、又は2価の複素環基を表すことが好ましく、pは0~2の整数を表すことが好ましい。中でもpが1であり、かつ、A、A及びAの3つの構造のうち少なくとも2つが1,4-フェニレン基であることが分子合成の簡便さと高い性能の両方を有するという点でより好ましい。
【0165】
2価の複素環基としては、たとえば、キノリン、チアゾール、ベンゾチアゾール、チエノチアゾール、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、オキサゾール、及びベンゾオキサゾールのような複素環からそれぞれ2個の水素原子を除いた基が挙げられる。Aが2価の複素環基を表す場合には、分子結合角度が実質的に180°となる構造が好ましく、具体的には、二つの5員環が縮合したベンゾチアゾール構造、ベンゾイミダゾール構造、及びベンゾオキサゾール構造がより好ましい。
【0166】
及びTは、それぞれ独立に、電子吸引基又は電子放出基を表し、互いに異なる構造の電子吸引基又は電子放出基を表すことが好ましく、Tが電子吸引基を表し、かつT電子放出基を表す場合、又はTが電子放出基を表し、かつT電子吸引基を表す場合がさらに好ましい。具体的には、T及びTは、それぞれ独立に、炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のアルコキシ基、シアノ基、ニトロ基、炭素数1~6のアルキル基を1つ又は2つ有する置換アミノ基、2つの該置換アルキル基が互いに結合して炭素数2~8のアルカンジイル基を形成しているアミノ基、及びトリフルオロメチル基が好ましい。中でもスメクチック液晶のような高秩序液晶構造中に包摂するためには、分子の排除体積がより小さい構造体である必要があるため、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、シアノ基、炭素数1~6のアルキル基を1つ又は2つ有する置換アミノ基、2つの該置換アルキル基が互いに結合して炭素数2~8のアルカンジイル基を形成しているアミノ基が好ましい。
【0167】
このようなアゾ色素としては、例えば、以下の式(2-1)~(2-8)で表されるアゾ色素が挙げられる。
【0168】
【化21】
【0169】
【化22】
【化23】
【0170】
式(2-1)~(2-8)中、
~B30は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、シアノ基、ニトロ基、置換又は無置換のアミノ基(置換アミノ基及び無置換アミノ基の定義は前記のとおり)、塩素原子、又はトリフルオロメチル基を表す。また、スメクチック液晶と組み合わせる場合には高い偏光性能が得られる観点から、B、B、B、B14、B18、B19、B22、B23、B24、B27、B28、及びB29は、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表すことが好ましく、水素原子を表すことがさらに好ましい。
n1~n4は、それぞれ独立に、0~2の整数を表す。
n1が2を表す場合、複数のBは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、
n2が2を表す場合、複数のBは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、
n3が2を表す場合、複数のBは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、
n4が2を表す場合、複数のB14は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0171】
前記アントラキノン色素としては、式(2-9)で表される化合物が好ましい。
【0172】
【化24】
【0173】
[式(2-9)中、
~Rは、それぞれ独立に、水素原子、-R、-NH、-NHR、-NR 、-SR、又はハロゲン原子を表す。
は、炭素数1~4のアルキル基又は炭素数6~12のアリール基を表す。]
【0174】
前記オキサジン色素としては、式(2-10)で表される化合物が好ましい。
【0175】
【化25】
【0176】
[式(2-10)中、
~R15は、それぞれ独立に、水素原子、-R、-NH、-NHR、-NR 、-SR、又はハロゲン原子を表す。
は、炭素数1~4のアルキル基又は炭素数6~12のアリール基を表す。]
【0177】
前記アクリジン色素としては、式(2-11)で表される化合物が好ましい。
【0178】
【化26】
【0179】
[式(2-11)中、
16~R23は、それぞれ独立に、水素原子、-R、-NH、-NHR、-NR 、-SR、又はハロゲン原子を表す。
は、炭素数1~4のアルキル基又は炭素数6~12のアリール基を表す。]
【0180】
式(2-9)、式(2-10)及び式(2-11)中、Rで表される炭素数1~4のアルキル基としては、たとえば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、及びヘキシル基が挙げられる。式(2-9)、式(2-10)及び式(2-11)中、Rで表される炭素数6~12のアリール基としては、たとえば、フェニル基、トルイル基、キシリル基、及びナフチル基が挙げられる。
【0181】
前記シアニン色素としては、式(2-12)で表される化合物及び式(2-13)で表される化合物が好ましい。
【0182】
【化27】
【0183】
[式(2-12)中、
及びDは、それぞれ独立に、式(2-12a)~式(2-12d)のいずれかで表される基を表す。
【化28】
n5は1~3の整数を表す。]
【0184】
【化29】
【0185】
[式(2-13)中、
及びDは、それぞれ独立に、式(2-13a)~式(2-13h)のいずれかで表される基を表す。
【化30】
n6は1~3の整数を表す。]
【0186】
二色性の有機染料の含有量(複数種含む場合にはその合計量)は、良好な光吸収特性を得る観点から、重合性液晶化合物(B)100質量部に対して、通常0.1~30質量部であり、好ましくは1~20質量部であり、より好ましくは3~15質量部である。二色性の有機染料の含有量が重合性液晶化合物(B)100質量部に対して0.1質量部以上であると、二色性の有機染料の光吸収が十分となり、十分な偏光性能が得られる傾向にある。二色性の有機染料の含有量が重合性液晶化合物(B)100質量部に対して30質量部以下であると、重合性液晶化合物の配向が阻害されにくい。
【0187】
(二色性色素を吸着させた延伸フィルム)
二色性色素を吸着させた延伸フィルムの少なくとも一方には、透明保護フィルムを備えてもよい。二色性色素を吸着させた延伸フィルムを偏光子として含むフィルムは通常、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを一軸延伸する工程、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを二色性色素で染色することにより、その二色性色素を吸着させる工程、二色性色素が吸着されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸水溶液で処理する工程、及びホウ酸水溶液による処理後に水洗する工程を経て製造された偏光子の少なくとも一方の面に接着剤を介して透明保護フィルムで挟み込むことで作製される。
【0188】
ポリビニルアルコール系樹脂は、ポリ酢酸ビニル系樹脂をケン化することによって得られる。ポリ酢酸ビニル系樹脂としては、たとえば、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルの他、酢酸ビニルとそれに共重合可能な他の単量体との共重合体が用いられる。酢酸ビニルに共重合可能な他の単量体としては、例えば、不飽和カルボン酸類、オレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸類、及びアンモニウム基を有するアクリルアミド類が挙げられる。
【0189】
ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は、通常85~100モル%程度であり、好ましくは98モル%以上である。ポリビニルアルコール系樹脂は変性されていてもよく、例えば、アルデヒド類で変性されたポリビニルホルマールやポリビニルアセタールも使用することができる。ポリビニルアルコール系樹脂の重合度は、通常1,000~10,000程度であり、好ましくは1,500~5,000の範囲である。
【0190】
このようなポリビニルアルコール系樹脂を製膜したものが、偏光フィルムの原反フィルムとして用いられる。ポリビニルアルコール系樹脂を製膜する方法は、特に限定されるものでなく、公知の方法で製膜することができる。ポリビニルアルコール系原反フィルムの膜厚は、例えば、10~150μm程度とすることができる。
【0191】
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの一軸延伸は、二色性色素による染色の前、染色と同時、又は染色の後で行うことができる。一軸延伸を染色の後で行う場合、この一軸延伸は、ホウ酸処理の前に行ってもよいし、ホウ酸処理中に行ってもよい。また、これらの複数の段階で一軸延伸を行うことも可能である。一軸延伸にあたっては、周速の異なるロール間で一軸に延伸してもよいし、熱ロールを用いて一軸に延伸してもよい。また一軸延伸は、大気中で延伸を行う乾式延伸であってもよいし、溶媒を用い、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを膨潤させた状態で延伸を行う湿式延伸であってもよい。延伸倍率は、通常3~8倍程度である。
【0192】
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの二色性色素による染色は、例えば、二色性色素を含有する水溶液に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬する方法によって行われる。
【0193】
二色性色素としてヨウ素を用いる場合は通常、ヨウ素及びヨウ化カリウムを含有する水溶液に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬して染色する方法が採用される。この水溶液におけるヨウ素の含有量は、水100質量部あたり、通常、0.01~1質量部程度である。またヨウ化カリウムの含有量は、水100質量部あたり、通常、0.5~20質量部程度である。染色に用いる水溶液の温度は、通常20~40℃程度である。また、この水溶液への浸漬時間(染色時間)は、通常20~1,800秒程度である。
【0194】
一方、二色性色素として二色性の有機染料を用いる場合は通常、水溶性二色性染料を含む水溶液にポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬して染色する方法が採用される。この水溶液における二色性有機染料の含有量は、水100質量部あたり、通常、1×10-4~10質量部程度であり、好ましくは1×10-3~1質量部であり、さらに好ましくは1×10-3~1×10-2質量部である。この水溶液は、硫酸ナトリウム等の無機塩を染色助剤として含んでいてもよい。染色に用いる二色性染料水溶液の温度は、通常、20~80℃程度である。また、この水溶液への浸漬時間(染色時間)は、通常、10~1,800秒程度である。
【0195】
二色性色素による染色後のホウ酸処理は、通常、染色されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸水溶液に浸漬する方法により行うことができる。このホウ酸水溶液におけるホウ酸の含有量は、水100質量部に対して、通常、2~15質量部程度であり、好ましくは5~12質量部である。二色性色素としてヨウ素を用いた場合には、このホウ酸水溶液はヨウ化カリウムを含有することが好ましく、その場合のヨウ化カリウムの含有量は、水100質量部あたり、通常0.1~15質量部程度であり、好ましくは5~12質量部である。ホウ酸水溶液への浸漬時間は、通常60~1,200秒程度であり、好ましくは150~600秒、さらに好ましくは200~400秒である。ホウ酸処理の温度は、通常50℃以上であり、好ましくは50~85℃、さらに好ましくは60~80℃である。
【0196】
ホウ酸処理後のポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、通常、水洗処理される。水洗処理は、例えば、ホウ酸処理されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムを水に浸漬する方法により行うことができる。水洗処理における水の温度は、通常5~40℃程度である。また浸漬時間は、通常1~120秒程度である。
【0197】
水洗後に乾燥処理が施されて、偏光子が得られる。乾燥処理は例えば、熱風乾燥機や遠赤外線ヒーターを用いて行うことができる。乾燥処理の温度は、通常30~100℃程度であり、好ましくは50~80℃である。乾燥処理の時間は、通常60~600秒程度であり、好ましくは120~600秒である。乾燥処理により、偏光子の水分率は実用程度にまで低減される。その水分率は、通常5~20質量%程度であり、好ましくは8~15質量%である。水分率が5質量%を下回ると、偏光子の可撓性が失われ、偏光子がその乾燥後に損傷したり、破断したりすることがある。また、水分率が20質量%を上回ると、偏光子の熱安定性が悪くなる可能性がある。
【0198】
こうしてポリビニルアルコール系樹脂フィルムに、一軸延伸、二色性色素による染色、ホウ酸処理、水洗及び乾燥をして得られる偏光子の厚さは好ましくは5~40μmである。
【0199】
<有機EL表示装置>
有機EL表示装置は、前記楕円偏光板を含む。有機EL表示装置の好ましい態様としては、たとえば、粘着剤を介して、楕円偏光板を有機ELパネルと貼合した装置が挙げられる。
【実施例
【0200】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。尚、例中の「%」及び「部」は、特記ない限り、それぞれ質量%及び質量部を意味する。
【0201】
[液晶化合物の調製]
液晶化合物Aは特開2010-31223号公報に記載の方法に準じて製造した。また、液晶化合物Bは、特開2009-173893号公報に記載の方法に準じて製造した。以下に、液晶化合物A及び液晶化合物Bの分子構造をそれぞれ示す。
【0202】
(液晶化合物A)
【化31】
【0203】
(液晶化合物B)
【化32】
【0204】
[測定方法]
(極大吸収波長及び最大吸光度の比の算出方法)
液晶化合物Aの1mg/50mLテトラヒドロフラン溶液を調製し、測定用試料とした。光路長1cmの測定用セルに測定用試料を入れた。測定用試料を紫外可視分光光度計(株式会社島津製作所製「UV-2450」)にセットして、吸収スペクトルを測定した。なお、レファレンスは測定用試料の溶媒のみとした。得られた吸収スペクトルから極大吸収度となる波長を読み取り、これを極大吸収波長λmaxとした。更に、得られた吸収スペクトルから波長260nm以上400nm以下の領域における液晶化合物Aの極大吸収波長を読み取った。尚、波長260nm以上400nm以下の領域において複数の極大吸収波長が存在する場合は、複数の極大吸収波長の中で最も吸光度が高い波長をλmaxとした。得られた極大吸収波長を表1に示す。
【0205】
[イオン性化合物の調製]
イオン性化合物(1)は、特願2016-514802号公報に記載の方法に準じて製造した。また、イオン性化合物(2)及びイオン性化合物(3)は、特開2013-28586号公報又は特開2013-199509号公報に記載の方法に準じて製造した。以下に、イオン性化合物(1)~(3)の構造式をそれぞれ示す。
【0206】
(イオン性化合物(1))
【化33】
(イオン性化合物(2))
【化34】
(イオン性化合物(3))
【化35】
【0207】
<実施例1>
〔垂直配向液晶硬化膜形成用組成物(A-1)の調製〕
液晶化合物A及び液晶化合物Bを質量比90:10で混合し、混合物を得た。得られた混合物100質量部に対して、レベリング剤(DIC社製「F-556」)1.5質量部と、光重合開始剤としての2-ジメチルアミノ-2-ベンジル-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン(BASFジャパン株式会社製「イルガキュア(登録商標)369(Irg369)」)6質量部とを添加した。また、シラン化合物としての3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン(信越化学工業株式会社製「KBE-9103」)を0.5%となるように、イオン性化合物(1)を2.0%となるように更に添加した。
【0208】
固形分濃度が13%となるようにN-メチル-2-ピロリドン(NMP)を添加した。80℃で1時間攪拌することにより、垂直配向液晶硬化膜形成用組成物(A-1)(以下、組成物(A-1)と記載することがある)を得た。尚、シラン化合物(信越化学工業株式会社製「KBE-9103」)は組成物(A-1)中で溶剤や環境中の水分と反応して加水分解が進行し、極性基であるアミノ基が生成することを確認した。
【0209】
〔垂直配向液晶硬化膜(A-1)の作製方法〕
コロナ処理装置(春日電機株式会社製「AGF-B10」)を用いて、基材としての非晶質シクロオレフィンポリマーフィルム(COPフィルム)(日本ゼオン株式会社「ZF-14-23」)に対して、出力0.3kW及び処理速度3m/分の条件でコロナ処理を1回実施した。バーコーターを用いて、コロナ処理を施した基材の表面に、組成物(A-1)を塗布し、塗布膜を形成した。塗布膜を120℃で1分間乾燥させ、乾燥被膜を形成した。次いで、高圧水銀ランプ(ウシオ電機株式会社製「ユニキュアVB-15201BY-A」)を用いて、窒素雰囲気下及び波長365nmにおける積算光量500mJ/cmの条件で、乾燥被膜に紫外線を照射した。その結果、垂直配向液晶硬化膜(A-1)(膜厚:1.0μm)を形成した。
【0210】
〔垂直配向液晶硬化膜(A-1)の光学特性〕
得られた垂直配向液晶硬化膜(A-1)を粘着剤(リンテック社製感圧式粘着剤 15μm)を介してガラスと貼合して、光学特性測定用サンプルを作製した。
【0211】
(位相差値の測定)
基材であるZF-14-23は波長550nmにおける位相差値R(550)が1nm以下の光学的等方フィルムであり、光学特性測定用サンプルの測定値に影響が出ないことを確認した。続いて、測定機(王子計測社製「KOBRA-WPR」)を用いて、光学特性測定用サンプルへの光の入射角を変えて位相差値を測定した。
【0212】
(平均屈折率の測定)
波長λ=450nm及び550nmにおける平均屈折率は屈折率計(株式会社アタゴ製「多波長アッベ屈折計DR-M4」)を用いて測定した。得られた膜厚、平均屈折率、及び測定機(王子計測機器株式会社製「KOBRA-WPR」)の測定結果から算出されるRthはそれぞれ、Rth(450)=-60nm、Rth(550)=-70nmであり、Rth(450)/Rth(550)=0.85であった。
【0213】
(配向液晶硬化膜の配向性評価)
偏光顕微鏡(オリンパス株式会社製「BX-51」)を用いて、倍率200倍の条件で観察し、視野480μm×320μmにおける配向欠陥数をカウントした。ここで、測定用サンプルに起因する配向欠陥数のみをカウントし、光学特性サンプル以外の環境異物等に起因する欠陥数は除外しカウントしなかった。偏光顕微鏡での観察結果から、以下の評価基準に基づいて垂直配向液晶硬化膜(A-1)の配向性を評価した。A、B及びCを配向性が優れると判断した。表1に示すように、組成物(A-1)で作製した垂直配向液晶硬化膜(A-1)の配向性は、Aであった。
(評価基準)
A(極めて良い):配向欠陥数が0個以上3個以下である。
B(非常に良い):配向欠陥数が4個以上10個以下である。
C(良い) :配向欠陥数が11個以上50個以下である。
D(悪い) :配向欠陥数が51個以上であるか、又は全く配向していない。
【0214】
<実施例2~9、実施例20、実施例21、及び比較例1>
実施例1の基材、シラン化合物0.5%、及びイオン性化合物(2)2%を表1に記載の基材の種類、シラン化合物の種類及び添加量、並びにイオン性化合物の種類及び添加量に変更した以外は、実施例1の組成物(A-1)の調製方法と同様にして実施例2~9及び実施例20、実施例21、比較例1の組成物(A-2)~(A-9)、(A-20)、(A-21)、及び(B-1)をそれぞれ調製した。組成物(A-1)を組成物(A-2)~(A-9)、(A-20)、(A-21)、及び(B-1)に変更し、更に塗布膜の膜厚を変更して表1に示す位相差値となるように変更した以外は、実施例1の垂直配向液晶硬化膜(A-1)の作製方法と同様にして、実施例2~9、実施例20、実施例21、及び比較例1の垂直配向液晶硬化膜(A-2)~(A-9)、(A-20)、(A-21)、及び(B-1)をそれぞれ作製した。また、実施例1と同様の方法で、光学特性測定用サンプルを作製し、位相差値、平均屈折率及び配向性を評価した。結果を表1に示す。
【0215】
<実施例10>
基材をCOPフィルム(日本ゼオン株式会社製「ZF-14-23」)から保護層付きポリエチレンテレフタラート(以下、保護層付きPETと記載することがある)に変更したこと、及び光学特性測定時にはPET基材を剥離してサンプルを作製したこと以外は、実施例1の垂直配向液晶硬化膜(A-1)の調製方法と同様にして、垂直配向液晶硬化膜(A-10)を調製した。また、実施例1と同様の方法で、光学特性測定用サンプルを作製し、位相差値、平均屈折率及び配向性を評価した。結果を表1に示す。以下、保護層付きPETの調製方法を説明する。
【0216】
〔保護層形成用組成物の調製〕
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(東亞合成株式会社製「アロニックス(登録商標)M-403」多官能アクリレート)50部と、アクリレート樹脂(ダイセルユーシービー株式会社製「エベクリル4858」)50部と、2-メチル-1[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モリフォリノプロパン-1-オン(チバ スペシャルティケミカルズ社製「イルガキュア(登録商標)907」)3部とをイソプロパノール250部に溶解させて、溶液を調製した。得られた溶液を保護層形成用組成物とした。
【0217】
〔保護層付きPETの製造〕
バーコーターを用いて、PETフィルム(膜厚38μm)上に保護層形成用組成物を塗布し、塗布膜を形成した。塗布膜を50℃で1分間乾燥させ、乾燥被膜を形成した。高圧水銀ランプ(ウシオ電機株式会社製「ユニキュアVB-15201BY-A」)を用いて、窒素雰囲気下及び波長365nmにおける積算光量400mJ/cmの条件で、紫外線を乾燥被膜に照射した。その結果、アクリル樹脂からなる保護層付きPETを形成した。尚、実施例1に記載の光学特性測定方法に準じて、粘着剤を介してガラスへ貼合し、PETフィルムを剥離した後に保護層の波長550nmにおける位相差値を測定したところ1nm以下であり、光学的等方フィルムであることを確認した。また、形成した保護層の膜厚をエリプソメータで測定したところ2μmであった。
【0218】
<実施例11>
実施例1の液晶化合物の組成を液晶化合物A/液晶化合物B=90%/10%から液晶化合物(A)-2 100%に変更した以外は、実施例1の組成物(A-1)及び垂直配向液晶硬化膜(A-1)の調製方法と同様にして、それぞれ実施例11の組成物(A-11)及び垂直配向液晶硬化膜(A-11)を作製した。液晶化合物(A)-2は、特開2016-81035号公報を参考にして調製した。液晶化合物(A)-2は、下記式(A)-2で表される。また、実施例1と同様の方法で、測定用サンプルを作製し、位相差値、平均屈折率及び配向性を評価した。更に、液晶化合物(A)-2の極大吸収波長及び最大吸光度の比も実施例1と同様にして算出した。結果を表1に示す。
【化36】
・・・(A)-2
【0219】
<実施例12>
実施例1の液晶化合物の組成を液晶化合物A/液晶化合物B=90%/10%から液晶化合物(A)-3 100%に変更した以外は、実施例1の組成物(A-1)及び垂直配向液晶硬化膜(A-1)の調製方法と同様にして、それぞれ実施例12の組成物(A-12)及び垂直配向液晶硬化膜(A-12)を作製した。液晶化合物(A)-3は、国際特許公開2015/025793号公報を参考にして調製した。液晶化合物(A)-3は、下記式(A)-3で表される。また、実施例1と同様の方法で、光学特性測定用サンプルを作製し、位相差値、平均屈折率及び配向性を評価した。更に、液晶化合物(A)-3の極大吸収波長及び最大吸光度の比も実施例1と同様にして算出した。結果を表1に示す。
【化37】
・・・(A)-3
【0220】
<実施例13>
実施例1の液晶化合物の組成を液晶化合物A/液晶化合物B=90%/10%から液晶化合物(A)-4 100%に変更した以外は、実施例1の組成物(A-1)及び垂直配向液晶硬化膜(A-1)の調製方法と同様にして、それぞれ実施例11の組成物(A-13)及び垂直配向液晶硬化膜(A-13)を作製した。液晶化合物(A)-4は、特開2011-207765号公報を参考にして調製した。液晶化合物(A)-4は、下記式(A)-4で表される。また、実施例1と同様の方法で、光学特性測定用サンプルを作製し、位相差値、平均屈折率及び配向性を評価した。更に、液晶化合物(A)-4の極大吸収波長及び最大吸光度の比も実施例1と同様にして算出した。結果を表1に示す。
【化38】
・・・(A)-4
【0221】
<実施例14>
実施例1の液晶化合物の組成を液晶化合物A/液晶化合物B=90%/10%から液晶化合物(A)-5 100%に変更した以外は、実施例1の組成物(A-1)及び垂直配向液晶硬化膜(A-1)の調製方法と同様にして、それぞれ実施例14の組成物(A-14)及び垂直配向液晶硬化膜(A-14)を作製した。液晶化合物(A)-5は、特開2010-31223号公報を参考にして調製した。液晶化合物(A)-5は、下記式(A)-5で表される。また、実施例1と同様の方法で、光学特性測定用サンプルを作製し、位相差値、平均屈折率及び配向性を評価した。更に、液晶化合物(A)-5の極大吸収波長及び最大吸光度の比も実施例1と同様にして算出した。結果を表1に示す。
【化39】
・・・(A)-5
【0222】
<実施例15>
実施例1のシラン化合物を3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン(信越化学工業株式会社製「KBE-9103」)から3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業株式会社製「KBE-403」へ変更した以外は、実施例1の組成物(A-1)及び垂直配向液晶硬化膜(A-1)の調製方法と同様にして、それぞれ実施例15の組成物(A-15)及び垂直配向液晶硬化膜(A-15)を作製した。また、実施例1と同様の方法で、光学特性測定用サンプルを作製し、位相差値、平均屈折率及び配向性を評価した。結果を表1に示す。
【0223】
<実施例16>
〔偏光フィルムAの製造〕
ポリビニルアルコールフィルム(平均重合度約2,400、ケン化度99.9モル%以上、厚さ75μm)を、30℃の純水に浸漬した後、ヨウ素/ヨウ化カリウム/水の質量比が0.02/2/100の水溶液に30℃で浸漬してヨウ素染色を行った(ヨウ素染色工程)。ヨウ素染色工程を経たポリビニルアルコールフィルムを、ヨウ化カリウム/ホウ酸/水の質量比が12/5/100の水溶液に、56.5℃で浸漬してホウ酸処理を行った(ホウ酸処理工程)。ホウ酸処理工程を経たポリビニルアルコールフィルムを8℃の純水で洗浄した後、65℃で乾燥して、ポリビニルアルコールにヨウ素が吸着配向している偏光子(延伸後の厚さ27μm)を得た。この際、ヨウ素染色工程とホウ酸処理工程において延伸を行った。かかる延伸におけるトータル延伸倍率は5.3倍であった。得られた偏光子と、ケン化処理されたトリアセチルセルロースフィルム(コニカミノルタ製「KC4UYTAC」40μm)とを水系接着剤を介してニップロールで貼り合わせた。得られた貼合物の張力を430N/mに保ちながら、60℃で2分間乾燥して、片面に保護フィルムとしてトリアセチルセルロースフィルムを有する偏光フィルムAを得た。なお、前記水系接着剤は水100部に、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール(クラレ製「クラレポバール KL318」)3部と、水溶性ポリアミドエポキシ樹脂(住化ケムテックス製「スミレーズレジン650」、固形分濃度30%の水溶液)1.5部とを添加して調製した。
【0224】
〔偏光フィルムAの光学特性の測定〕
得られた偏光フィルムAについて光学特性の測定を行った。測定は上記で得られた偏光フィルムAの偏光子面を入射面として分光光度計(日本分光製「V7100」)にて実施した。偏光フィルムの吸収軸はポリビニルアルコールの延伸方向と一致しており、得られた偏光フィルムの視感度補正単体透過率は42.1%、視感度補正偏光度は99.996%、単体色相aは-1.1、単体色相bは3.7であった。
【0225】
〔水平配向膜形成用組成物の調製〕
下記構造の光配向性材料(重量平均分子量:30000)5部と、溶媒としてのシクロペンタノン95部とを混合し、得られた混合物を80℃で1時間攪拌することにより、水平配向膜形成用組成物を得た。
【化40】
【0226】
〔水平配向液晶硬化膜A形成用組成物の調製〕
液晶化合物A、及び液晶化合物Bを質量比90:10で混合し、混合物を得た。得られた混合物100質量部に対して、レベリング剤(DIC社製「F-556」)1.0部と、重合開始剤としての2-ジメチルアミノ-2-ベンジル-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン(BASFジャパン株式会社製「イルガキュア(登録商標)369(Irg369)」)6部とを添加した。また、固形分濃度が13%となるようにN-メチル-2-ピロリドン(NMP)を添加した。80℃で1時間攪拌することにより、水平配向液晶硬化膜A形成用組成物を得た。
【0227】
〔水平配向液晶硬化膜Aの製造〕
COPフィルム(日本ゼオン株式会社製「ZF-14-50」)上にコロナ処理を実施した。その後、バーコーターを用いて、水平配向膜形成用組成物を塗布し、塗布膜を形成した。塗布膜を80℃で1分間乾燥させ、乾燥被膜を形成した。偏光UV照射装置(ウシオ電機株式会社製「SPOT CURE SP-9」)を用いて、波長313nmにおける積算光量100mJ/cm及び軸角度45°の条件で偏光UV露光を実施して水平配向膜を得た。得られた水平配向膜の膜厚をエリプソメータで測定したところ、100nmであった。
【0228】
続いて、バーコーターを用いて、水平配向膜に水平配向液晶硬化膜A形成用組成物を塗布し、塗布膜を形成した。塗布膜を120℃で1分間乾燥させ、乾燥被膜を形成した。高圧水銀ランプ(ウシオ電機株式会社製「ユニキュアVB-15201BY-A」)を用いて、窒素雰囲気下及び波長365nmにおける積算光量500mJ/cmの条件で、乾燥被膜に紫外線を照射(することにより、水平配向液晶硬化膜Aを形成した。基材、水平配向膜及び水平配向液晶硬化膜Aからなる積層体を得た。水平配向液晶硬化膜Aの膜厚をエリプソメータで測定したところ、2.3μmであった。
【0229】
〔水平配向液晶硬化膜AのRe測定〕
基材、水平配向膜及び水平配向液晶硬化膜Aからなる積層体を粘着剤を介してガラスに貼合した後、基材であるCOPフィルムを剥離した。これによりRe測定用の水平配向液晶硬化膜Aを得た。測定機(王子計測機器株式会社製「KOBRA-WPR」)を用いて、水平配向液晶硬化膜Aの面内位相差値ReA(λ)を測定した。各波長(450nm、550nm、及び650nm)における位相差値ReA(λ)を測定結果は、ReA(450)=121nm、ReA(550)=142nm、ReA(650)=146nm、及びReA(450)/ReA(550)=0.85であった。
【0230】
〔水平配向液晶硬化膜Aと垂直配向液晶硬化膜とからなる積層体のR0、及びR40の測定〕
上記方法にて製造した水平配向液晶硬化膜A、及び実施例1の方法で作製した垂直配向液晶硬化膜(A-1)を粘着剤(リンテック社製感圧式粘着剤 15μm)を介して貼合し、水平配向液晶硬化膜Aと垂直配向液晶硬化膜(A-1)とを含む積層体を作製した。更に、同積層体から基材として使用しているCOPフィルムを1枚剥離し、粘着剤を介してガラスと貼合し、位相差値測定用の積層体を得た。COPフィルム及び水平配向膜に位相差がないことを確認した上で、位相差値測定用の積層体の正面方向の位相差値R0(λ)、及び水平配向液晶硬化膜Aの進相軸を中心として40°傾斜させた時の位相差値R40(λ)(λ=450nm及び550nm)を測定機(王子計測機器株式会社製「KOBRA-WPR」)を用いて測定した。測定結果を表2に示す。得られたR0(λ)及びR40(λ)(λ=450nm及び550nm)の値から|R0(550)-R40(550)|、|R0(450)-R40(450)|、及び|{R0(450)-R40(450)}-{R0(550)-R40(550)}|を算出した。結果を表3に示す。
【0231】
〔斜方反射色相の評価〕
上記方法にて作製した積層体(水平配向液晶硬化膜Aと垂直配向液晶硬化膜(A-1)とを含む積層体)と偏光フィルムAとを、偏光フィルムAの吸収軸と水平配向液晶硬化膜Aの遅相軸との成す角度が45°となるように粘着剤を介して貼合し、基材を剥離して光学補償機能付き楕円偏光板を作製した。その後、粘着剤を介してアルミホイルに貼合し、仰角45°、方位角0~360°方向から楕円偏光板の斜方反射色相を目視で観察した。目視での観察結果から下記評価基準に基づいて斜方反射色相を評価した。結果を表3に示す。
(評価基準)
A(良い):目視で黒色が確認される。
B(悪い):目視で明らかな着色が確認される。
【0232】
<実施例17及び18>
垂直配向液晶硬化膜の膜厚を変更することでRthC(450)、及びRthC(550)の値を表2に記載のように変更したこと以外は、実施例16と同様に位相差値測定、斜方反射色相確認を実施した。結果を表2及び表3に示す。
【0233】
<実施例19>
偏光フィルムAを、以下に示す方法で作製した水平方向に配向した水平配向液晶硬化膜Bと二色性色素とを含む偏光フィルムBへ変更した以外は、実施例16と同様に位相差値の測定、及び斜方反射色相の評価を実施した。結果を表2及び表3に示す。
【0234】
〔偏光フィルムB形成用組成物の調製〕
下記の成分を混合し、80℃で1時間攪拌することで、重合性液晶化合物(B)と二色性色素とを含む偏光フィルムB形成用組成物を得た。二色性色素には、特開2013-101328号公報の実施例に記載のアゾ系色素を用いた。重合性液晶化合物(B)としての式(1-6)及び(1-7)で示される重合性液晶化合物は、lub et al., Recl.Trav.Chim.Pays-Bas, 115, 321-328(1996)に記載の方法に従って製造した。
重合性液晶化合物(B):
【化41】
75部
【化42】
25部
二色性色素1:
ポリアゾ色素;化合物(1-8) 2.5部
【化43】
化合物(1-5) 2.5部
【化44】
化合物(1-16) 2.5部
【化45】
重合開始剤;
2-ジメチルアミノ-2-ベンジル-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン(イルガキュア369;チバスペシャルティケミカルズ社製) 6部
レベリング剤;
ポリアクリレート化合物(BYK-Chemie社製「BYK-361N」)
1.2部
溶剤;o-キシレン 250部
【0235】
〔偏光フィルムBの製造〕
(水平配向膜の作製)
トリアセチルセルロースフィルム(TAC)(コニカミノルタ社製「KC4UY」)上にコロナ処理を実施した。次いで、バーコーターを用いて、コロナ処理を施したTAC表面に水平配向膜形成用組成物を塗布し、塗布膜を形成した。塗布膜を80℃で1分間乾燥させて、乾燥被膜を形成した。偏光UV照射装置(ウシオ電機株式会社製「SPOT CURE SP-7」)を用いて、積算光量100mJ/cm及び軸角度90°の条件で乾燥被膜に対して偏光UV露光を実施して水平配向膜を得た。得られた水平配向膜の膜厚をエリプソメータで測定したところ、150nmであった。
【0236】
(水平配向液晶硬化膜Bの作製)
更に、バーコーターを用いて、偏光フィルムB形成用組成物を水平配向膜に塗布し、塗布膜を形成した。その後、120℃に設定した乾燥オーブンで1分間塗布膜を乾燥させた。その結果、重合性液晶化合物(B)及び二色性色素が配向した乾燥塗膜を得た。この乾燥塗膜を室温(25℃)まで自然冷却した後に高圧水銀ランプ(ウシオ電機株式会社製「ユニキュアVB―15201BY-A」)を用いて、窒素雰囲気下、波長365nm、及び波長365nmにおける積算光量1000mJ/cm2の条件で、紫外線を照射することにより重合性液晶化合物(B)を重合して、二色性色素を含む水平配向液晶硬化膜Bを有する偏光フィルムBを作製した。
【0237】
[偏光フィルムBの偏光度、及び単体透過率の測定]
得られた偏光フィルムBの偏光度、及び単体透過率は以下のように測定した。透過軸方向の透過率(T)及び吸収軸方向の透過率(T)を、分光光度計(島津製作所株式会社製「UV-3150」)に偏光子付フォルダーをセットした装置を用いて、ダブルビーム法により2nmステップ380~680nmの波長範囲で測定した。下記式(p)及び(q)を用いて、各波長における単体透過率、及び偏光度を算出した。さらに、日本工業規格JIS Z 8701の2度視野(C光源)により視感度補正を行い、視感度補正単体透過率(Ty)及び視感度補正偏光度(Py)を算出したところ、単体透過率は42%、偏光度は97%であり、偏光フィルムとして有用な値であることを確認した。
単体透過率(%)=(T+T)/2・・・(p)
偏光度(%)={(T-T)/(T+T)}×100・・・(q)
【0238】
<比較例2>
以下に示す垂直配向膜及び垂直配向液晶硬化膜を作製したこと以外は、実施例16と同様にサンプルを作製し、位相差値の測定及び斜方反射色相の評価を実施した。結果を表2及び表3に示す。
【0239】
(垂直配向膜形成用組成物(B)の作製)
0.5%のポリイミド(日産化学工業株式会社製「サンエバーSE-610」)、72.3%のN-メチル-2-ピロリドン、18.1%の2-ブトキシエタノール、9.1%のエチルシクロヘキサン、及び0.01%のDPHA(新中村化学製)を混合して、垂直配向膜形成用組成物(B)を作製した。
【0240】
(垂直配向液晶硬化膜形成用組成物(B)の調製)
下記式(LC242)に示す液晶化合物LC242:PaliocolorLC242(BASF社 登録商標)に対して、レベリング剤(DIC社製「F-556」)0.1部と、重合開始剤Irg369 3部とを添加し、固形分濃度が13%となるようにシクロペンタノンを添加して、これらを混合し、垂直配向液晶硬化膜形成用組成物(B)を得た。
液晶化合物LC242:PaliocolorLC242(BASF社登録商標)
【化46】
【0241】
(垂直配向液晶硬化膜の作製)
基材としてのCOPフィルム(日本ゼオン株式会社「ZF-14-23」)に対してコロナ処理を実施した。バーコーターを用いて、コロナ処理を実施したCOPフィルムにバーコーターを用いて、垂直配向膜形成用組成物(B)を塗布し、塗布膜を形成した。塗布膜を80℃で1分間乾燥させ、垂直配向膜を得た。得られた垂直配向膜の膜厚をエリプソメータで測定したところ、0.2μmであった。続いて、作製した垂直配向膜上に垂直配向液晶硬化膜形成用組成物(B)を塗布し、塗布膜を形成した。塗布膜を80℃で1分乾燥させ、乾燥被膜を形成した。その後、高圧水銀ランプ(ウシオ電機株式会社製「ユニキュアVB-15201BY-A」)を用いて、窒素雰囲気下、及び波長365nmにおける積算光量500mJ/cmの条件で乾燥被膜に紫外線を照射して、垂直配向液晶硬化膜を形成した。得られた垂直配向液晶硬化膜の膜厚は0.5μmであった。
【0242】
表1中、欄シラン化合物の「添加量」及びイオン性化合物の「添加量」は、垂直配向液晶硬化膜形成用組成物に対する添加量(単位:重量%)をそれぞれ示す。欄液晶化合物の比の数字及び括弧内のアルファベットは、添加した液晶化合物の添加量の比率を示す。たとえば、90/10(A/B)は、質量比(液晶化合物A/液晶化合物B)90/10であることを示す。
【0243】
【表1】
【0244】
実施例1~15の組成物(A-1)~(A-15)は、液晶化合物A、(A)-2、(A)-3、(A)-4、及び(A)-5のうちの少なくとも1種と、シラン化合物KBE-9103又はKBE-403と、イオン性化合物(1)~(3)のうちのいずれか1種とを含有していた。液晶化合物A、(A)-2、(A)-3、(A)-4、及び(A)-5は、式(I)-1で表される液晶化合物に包含される液晶化合物であった。シラン化合物KBE-9103及びKBE-403は、非イオン性シラン化合物であった。実施例1~15の垂直配向液晶硬化膜(A-1)~(A-15)の配向性評価は、A及びBのいずれかであった。実施例20の組成物(A-20)は液晶化合物Aとイオン性化合物とを含み、実施例21の組成物(A-21)は液晶化合物Aと非イオン性のシラン性化合物とを含んでいた。実施例(20)の垂直配向液晶硬化膜(A-20)、及び実施例(21)の垂直配向液晶硬化膜(A-21)の配向性評価はいずれもCであった。
【0245】
比較例1の組成物(B-1)は非イオン性シラン化合物及びイオン性化合物を含有していなかった。比較例1の垂直配向液晶硬化膜(B-1)の配向性評価は、Dであった。
【0246】
以上から、実施例1~15の垂直配向液晶硬化膜(A-1)~(A-15)、(A-20)、及び(A-21)は、比較例1の配向液晶硬化膜(B-1)に比べ、配向性に優れることが明らかである。実施例1~15、実施例20、及び実施例21の組成物(A-1)~(A-15)、(A-20)、及び(A-21)は、比較例1の組成物(B-1)に比べ、垂直配向膜がなくても配向性に優れる垂直配向液晶硬化膜を形成可能であることが明らかである。
【0247】
実施例16~19の楕円偏光板は、組成物(A-1)を用いて作製した垂直配向液晶硬化膜と、水平配向膜と、水平配向液晶硬化膜Aと、偏光フィルムとを含んでいた。実施例16~19の楕円偏光板の斜方反射色相はいずれもAであった。
【0248】
比較例2の楕円偏光板は、組成物(B-2)を用いて作製した垂直配向液晶硬化膜と、水平配向膜と、水平配向液晶硬化膜Aと、偏光フィルムとを含んでいた。組成物(B-2)は、液晶化合物LC242を含んでいた。液晶化合物のArは、環構造を1つ有する2価の基であり、式(I)-1で表される液晶化合物に包含される化合物ではなかった。比較例2の楕円偏光板の斜方反射色相は、Bであった。
【0249】
以上から、実施例16~19の楕円偏光板は、比較例2の楕円偏光板に比べ、斜方反射色相に優れることが明らかである。
【0250】
【表2】
【0251】
【表3】
【符号の説明】
【0252】
1・・・基材、3・・・水平配向膜、5・・・水平配向液晶硬化膜A、7・・・粘着層、9・・・垂直配向液晶硬化膜、11・・・偏光フィルム、13・・・保護層、15・・・積層体、20・・・楕円偏光板
図1