(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-07
(45)【発行日】2023-12-15
(54)【発明の名称】流量制御器、ガス供給系及び流量制御方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/3065 20060101AFI20231208BHJP
G05D 7/06 20060101ALI20231208BHJP
【FI】
H01L21/302 101G
G05D7/06 Z
(21)【出願番号】P 2019104938
(22)【出願日】2019-06-05
【審査請求日】2022-03-24
(31)【優先権主張番号】P 2018126105
(32)【優先日】2018-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】澤地 淳
【審査官】船越 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-094425(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0125154(US,A1)
【文献】特開2004-178478(JP,A)
【文献】特開昭57-178511(JP,A)
【文献】特開2017-011260(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3065
G05D 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理装置に供給されるガスの流量を制御可能なバルブと、
制御部と
を有し、
前記制御部は、
前記ガスの供給開始を指示する指令が前記処理装置から発行された時点で、前記バルブを開いて前記ガスの流量の制御を開始し
、
前記ガスの流量が所定の目標流量に到達するまでの過渡期間に、所定の周期で前記ガスの流量を積算した積算流量と所定の目標積算流量との差分に基づき、該差分を補償する、前記ガスの流量の時間的変化率を決定し
、
決定した前記時間的変化率で前記ガスの流量が変化するよう前記バルブの開度を制御
し、
前記過渡期間に含まれる任意の時点での前記積算流量と前記目標積算流量との差分と、前記過渡期間の前記任意の時点以降の期間における前記積算流量の増加量とを一致させる演算を行うことで、前記差分を補償する時間的変化率を決定し、
前記時間的変化率は、前記過渡期間の前記任意の時点以降の期間における前記処理装置に供給される前記ガスの流量の波形の傾きに該当する、
ことを特徴とする流量制御器。
【請求項2】
前記制御部は、決定した前記時間的変化率が所定の閾値よりも大きい場合に、当該時間的変化率を前記閾値まで減少させ、減少後の時間的変化率で前記ガスの流量が変化するよう前記バルブの開度を制御する請求項
1に記載の流量制御器。
【請求項3】
処理装置にガスを供給するガス供給系であって、
前記ガスの供給源と、
前記ガスの供給源から前記処理装置に供給される前記ガスの流量を制御する流量制御器と、
を有し、
前記流量制御器は、
前記処理装置に供給されるガスの流量を制御可能なバルブと、
制御部と
を有し、
前記制御部は、
前記ガスの供給開始を指示する指令が前記処理装置から発行された時点で、前記バルブを開いて前記ガスの流量の制御を開始し
、
前記ガスの流量が所定の目標流量に到達するまでの過渡期間に、所定の周期で前記ガスの流量を積算した積算流量と所定の目標積算流量との差分に基づき、該差分を補償する、前記ガスの流量の時間的変化率を決定し
、
決定した前記時間的変化率で前記ガスの流量が変化するよう前記バルブの開度を制御
し、
前記過渡期間に含まれる任意の時点での前記積算流量と前記目標積算流量との差分と、前記過渡期間の前記任意の時点以降の期間における前記積算流量の増加量とを一致させる演算を行うことで、前記差分を補償する時間的変化率を決定し、
前記時間的変化率は、前記過渡期間の前記任意の時点以降の期間における前記処理装置に供給される前記ガスの流量の波形の傾きに該当する、
ことを特徴とするガス供給系。
【請求項4】
処理装置に供給されるガスの供給開始を指示する指令が前記処理装置から発行された時点で、前記ガスの流量を制御可能なバルブを開いて前記ガスの流量の制御を開始する工程と、
前記ガスの流量が所定の目標流量に到達するまでの過渡期間に、所定の周期で前記ガスの流量を積算した積算流量と所定の目標積算流量との差分に基づき、該差分を補償する、前記ガスの流量の時間的変化率を決定する工程と、
決定した前記時間的変化率で前記ガスの流量が変化するよう前記バルブの開度を制御する工程と、
前記過渡期間に含まれる任意の時点での前記積算流量と前記目標積算流量との差分と、前記過渡期間の前記任意の時点以降の期間における前記積算流量の増加量とを一致させる演算を行うことで、前記差分を補償する時間的変化率を決定する工程と
を含
み、
前記時間的変化率は、前記過渡期間の前記任意の時点以降の期間における前記処理装置に供給される前記ガスの流量の波形の傾きに該当する、
ことを特徴とする流量制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、流量制御器、ガス供給系及び流量制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体ウエハ等の被処理体を処理ガスのプラズマ等により処理する処理装置が知られている。処理装置に供給されるガスの流量は、流量制御器によって制御される。
【0003】
流量制御器は、例えば、開度が可変であり、ガスの流量を制御可能な制御バルブを有し、ガスの供給開始を指示する指令が処理装置から発行された時点で、制御バルブを開いてガスの流量の制御を開始する。処理装置から発行される指令には、処理装置に供給すべきガスの目標流量及び目標供給時間を指定するための情報が含まれる。流量制御器は、処理装置から発行された指令により指定された目標供給時間が経過するまで、ガスの流量が指令により指定された目標流量となるように制御バルブの開度を制御する。そして、流量制御器は、目標供給時間が経過した時点で、制御バルブを閉じてガスの流量の制御を停止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、高精度な流量制御を実現することができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様による流量制御器は、処理装置に供給されるガスの流量を制御可能なバルブと、前記ガスの供給開始を指示する指令が前記処理装置から発行された時点で、前記バルブを開いて前記ガスの流量の制御を開始し、前記指令が発行された時点から所定の周期で前記ガスの流量を積算した積算流量を算出し、算出した前記積算流量が所定の目標積算流量に到達した時点で、前記バルブを閉じて前記ガスの流量の制御を停止するバルブ制御部と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、高精度な流量制御を実現することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る処理システムの一例を示す図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係る流量制御方法の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態に係る流量制御方法の他の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、第2実施形態に係る処理システムの一例を示す図である。
【
図5】
図5は、第2実施形態に係る流量制御方法の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して種々の実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。
【0010】
従来、半導体ウエハ等の被処理体をガスのプラズマ等により処理する処理装置が知られている。処理装置に供給されるガスの流量は、流量制御器によって制御される。
【0011】
流量制御器は、例えば、開度が可変であり、ガスの流量を制御可能な制御バルブを有し、ガスの供給開始を指示する指令が処理装置から発行された時点で、制御バルブを開いてガスの流量の制御を開始する。処理装置から発行される指令には、処理装置に供給すべきガスの目標流量及び目標供給時間を指定するための情報が含まれる。流量制御器は、指令により指定された目標供給時間が経過するまで、ガスの流量が目標流量となるように制御バルブの開度を制御する。そして、流量制御器は、目標供給時間が経過した時点で、制御バルブを閉じてガスの流量の制御を停止する。
【0012】
ところで、流量制御器には機差が存在するため、制御バルブを開いてからガスの流量が目標流量に到達するまでの立ち上がり特性は、流量制御器ごとにばらつく場合がある。例えば、流量制御器ごとに、ガスの流量のオーバーシュートやアンダーシュートが生じることがある。このため、流量制御器では、流量制御器ごとの立ち上がり特性のばらつきにより、処理装置に供給されるガスの積算流量が、流量制御器ごとにばらつく場合がある。結果として、高精度な流量制御が阻害される虞がある。
【0013】
[第1実施形態]
[処理システムの全体構成]
まず、第1実施形態に係る処理システム10aの全体構成の一例について、
図1を参照しながら説明する。
図1は、第1実施形態に係る処理システム10aの一例を示す図である。処理システム10aは、ガス供給系100及び処理装置101aを有する。ガス供給系100は、流量制御器FD、一次側バルブFV1、及び二次側バルブFV2を有し、ガス供給源GSから処理装置101aへのガスの供給を制御する。処理装置101aは、例えば容量結合型プラズマエッチング装置である。
【0014】
[処理装置101aの構成例]
処理装置101aは、例えば、表面がアルマイト処理(陽極酸化処理)されたアルミニウムからなる略円筒形のチャンバCを有している。チャンバCは、接地されている。チャンバCの内部には載置台120が設けられている。載置台120は、被処理体の一例である半導体ウエハWを載置する。
【0015】
載置台120には、整合器130aを介してプラズマを励起するための高周波電源130が接続されている。高周波電源130は、チャンバC内にてプラズマを生成するために適した周波数、例えば60MHzの高周波電力を載置台120に印加する。また、載置台120は、半導体ウエハWを載置するとともに、下部電極としても機能する。整合器130aは、高周波電源130の内部(または出力)インピーダンスに負荷インピーダンスを整合させる。整合器130aは、チャンバC内にプラズマが生成されているときに高周波電源130の内部インピーダンスと負荷インピーダンスとが見かけ上一致するように機能する。
【0016】
チャンバCの天井部分には、シャワーヘッド110が設けられている。シャワーヘッド110は、上部電極としても機能する。高周波電源130からの高周波電力は載置台120とシャワーヘッド110との間に印加される。ガスは、シャワーヘッド110のガス導入口140から、シャワーヘッド110の内部に設けられたバッファ空間110bに導入され、シャワーヘッド110の下面に形成された多数のガス通気孔110aを通ってチャンバC内に吐出される。
【0017】
処理装置101aは、チャンバC内へ供給された所望のガスのプラズマにより半導体ウエハWに微細加工を施す。チャンバC内に供給されるガスの流量は、流量制御器FDによって制御される。本実施例において、流量制御器FDは、例えば圧力式の流量制御装置(FCS)である。流量制御器FDの構成については、後に詳述する。
【0018】
処理装置101aは、制御部102によって、その動作が統括的に制御される。制御部102は、例えば、CPU(Central Processing Unit)を備え、処理装置101aの各部を制御する。また、制御部102は、ガス供給源GSから処理装置101aへのガスの供給を開始する際に、ガスの供給開始を指示する指令(以下「供給開始指令」と呼ぶ)をガス供給系100へ発行する。供給開始指令には、処理装置101a(チャンバC)に供給すべきガスの目標流量及び目標供給時間を指定するための情報が含まれる。
【0019】
[流量制御器FDの構成例]
流量制御器FDは、ガス供給源GSから処理装置101aにガスを供給するためのガス供給管150に接続されている。ガス供給管150は、処理装置101aのガス導入口140に接続されている。流量制御器FDの上流側(ガス供給源GS側)には一次側バルブFV1が配置され、流量制御器FDの下流側(処理装置101a側)には二次側バルブFV2が配置されている。一次側バルブFV1及び二次側バルブFV2は、供給開始指令が制御部102から発行された時点で、全開に制御される。
【0020】
流量制御器FDは、開度が可変であり、ガスの流量を制御可能な制御バルブ201、制御バルブ201の開度を制御するバルブ制御部202、圧力計203、圧力計204、オリフィス205、配管206、配管207、配管208及び記憶部209を有する。記憶部209には、流量制御器FDで実行される各種処理をバルブ制御部202の制御にて実現するための制御プログラムや各種データ等が格納される。例えば、記憶部209には、関係情報209aが格納されている。
【0021】
関係情報209aは、処理装置101a(チャンバC)に供給すべきガスの目標流量及び目標供給時間に対する目標積算流量の関係を記憶するデータである。チャンバCに供給すべきガスの目標流量及び目標供給時間は、例えば、レシピによって規定される。目標積算流量は、供給開始指令が制御部102から発行された時点からチャンバCに実際に供給されるガスの流量を積算した積算流量の目標値であり、制御バルブ201を閉じるタイミングを決定するための指標となる。関係情報209aは、例えば、チャンバCに供給すべきガスの目標流量及び目標供給時間から目標積算流量を算出する式の情報である。また、関係情報209aは、チャンバCに供給すべきガスの目標流量及び目標供給時間に対して目標積算流量を対応付けたテーブルであってもよい。
【0022】
バルブ制御部202は、例えば、CPUを備え、記憶部209に記憶された制御プログラムを読み出して実行することにより、制御バルブ201等の各部を制御する。例えば、バルブ制御部202は、制御バルブ201の開度を制御することでガス供給管150を流れ、チャンバC内に供給されるガスの流量を制御する。制御バルブ201の一例としては、電磁弁駆動型のメタルダイヤフラムバルブが挙げられる。
【0023】
一次側バルブFV1の上流側は、配管を介してガス供給源GSに接続されている。一次側バルブFV1の下流側は、配管206に接続されている。配管206の下流側は、制御バルブ201の上流側に接続されている。制御バルブ201の下流側は、配管207の上流側に接続されている。配管207の下流側は、オリフィス205を介して配管208の上流側に接続されている。配管208の下流側は、二次側バルブFV2の上流側に接続されている。二次側バルブFV2の下流側は、ガス供給管150に接続されている。
【0024】
ここで、配管207の流路内の圧力をP1と定義する。また、配管208の流路内の圧力をP2と定義する。流量制御器FDにおいて、配管207の流路内の圧力P1と、配管208の流路内の圧力P2とが、臨界膨張圧力条件P1>2×P2を概ね満足するように制御されているとき、オリフィス205を流れるガスの流量Qは、以下の関係式(1)で表される。すなわち、オリフィス205を流れるガスの流量Qは、オリフィス205の上流側の圧力P1のみによって決まる。
Q=CP1 ・・・(1)
【0025】
バルブ制御部202は、供給開始指令が制御部102から発行された時点で、制御バルブ201を開いて、上記式(1)に基づくガスの流量の制御を開始する。具体的には、バルブ制御部202は、上記式(1)に基づいて制御バルブ201の開度を制御して圧力P1を調整することにより、オリフィス205の下流側のガスの流量Qを供給開始指令により指定された目標流量となるように制御する。これにより、流量Qのガスが処理装置101a(チャンバC)に供給される。なお、上記式(1)のCはオリフィス205の口径やガス温度等により決まる定数である。また、圧力P1及び圧力P2は、圧力計203及び圧力計204によりそれぞれ計測される。
【0026】
そして、バルブ制御部202は、供給開始指令が発行された時点から所定の周期でガスの流量Qを積算した積算流量を算出する。
【0027】
そして、バルブ制御部202は、算出した積算流量が所定の目標積算流量に到達した時点で、制御バルブ201を閉じて、上記式(1)に基づくガスの流量の制御を停止する。具体的には、バルブ制御部202は、関係情報209aを用いて、積算流量が供給開始指令により指定された目標流量及び目標供給時間に対応する目標積算流量に到達したか否かを監視する。そして、バルブ制御部202は、積算流量が目標積算流量に到達していない場合、上記式(1)に基づくガスの流量の制御を継続し、積算流量が目標算出流量に到達した時点で、制御バルブ201を閉じて、上記式(1)に基づくガスの流量の制御を停止する。
【0028】
これにより、流量制御器FDでは、流量制御器FDごとの立ち上がり特性にばらつきがある場合でも、処理装置101aに供給されるガスの積分流量を目標積算流量に一致させることができ、高精度な流量制御を実現することができる。
【0029】
かかる構成の処理装置101aにおいてエッチング等の処理を行う際には、まず、半導体ウエハWがチャンバC内に搬入され、載置台120上に載置される。そして、チャンバC内の圧力が真空状態に減圧される。そして、ガス供給源GSから出力されたガスがシャワーヘッド110からシャワー状にチャンバC内に導入される。そして、高周波電源130から出力された所定の高周波電力が載置台120に印加される。
【0030】
チャンバC内に導入されたガスを高周波電力により電離及び解離させることにより生成されたプラズマの作用により、載置台120上に載置された半導体ウエハWにプラズマエッチング等の処理が行われる。プラズマエッチング等の処理の終了後、半導体ウエハWはチャンバCの外部に搬出される。なお、処理装置101aは、必ずしもプラズマを用いて処理する場合に限らず、熱処理等により半導体ウエハWに微細加工を施すようにしてもよい。
【0031】
[流量制御方法]
次に、第1実施形態に係る流量制御器FDによる流量制御方法について説明する。
図2は、第1実施形態に係る流量制御方法の一例を示す図である。
【0032】
図2(a)及び
図2(b)において、横軸は、時間を示し、縦軸は、処理装置101a(チャンバC)に供給されるガスの流量(つまり、オリフィス205の下流側のガスの流量Q)を示す。以下では、説明の便宜上、処理装置101a(チャンバC)に供給されるガスの流量を「供給流量」と記載する場合がある。また、
図2(a)及び
図2(b)において、時点0は、供給開始指令が処理装置101a(制御部102)から発行された時点を示す。また、時点t
pは、供給開始指令により指定された目標経過時間が経過した時点を示す。
【0033】
図2(a)では、供給開始指令により指定された目標流量及び目標供給時間に対応する目標積算流量が示されている。目標積算流量は、特定の流量制御器FDに関して、時点0から時点t
pまでに処理装置101a(チャンバC)に実際に供給されるガスの流量を積算することによって、予め求められる。特定の流量制御器FDは、例えば、特定の規格に従って整備された流量制御器FDである。そして、目標流量及び目標供給時間に対する目標積算流量の関係が関係情報209aに予め記憶される。また、
図2(b)では、
図2(a)において示された目標積算流量に対応する供給流量の変化が破線の波形311により示されている。
【0034】
図2(b)に示すように、バルブ制御部202は、供給開始指令が制御部102から発行された時点0で、制御バルブ201を開いて、上記式(1)に基づくガスの流量の制御を開始する。これにより、供給流量のオーバーシュートが発生する。すなわち、時点0において制御バルブ201が開放されてから時点t
1において供給流量が供給開始指令により指定された目標流量に到達するまでの期間に、供給流量が目標積算流量に対応する供給流量(波形311参照)を超えるオーバーシュートが発生する。
【0035】
そして、バルブ制御部202は、供給開始指令が発行された時点0から所定の周期Δtで供給流量(オリフィス205の下流側のガスの流量Q)を積算した積算流量を算出する。周期Δtは、供給開始指令が制御部102から発行される周期よりも短い周期であり、例えば、1ミリ秒である。
【0036】
そして、バルブ制御部202は、関係情報209aを用いて、積算流量が供給開始指令により指定された目標流量及び目標供給時間に対応する目標積算流量(つまり、
図2(a)において示された目標積算流量)に到達したか否かを監視する。ここでは、時点t
2において積算流量が目標積算流量に到達するものとする。バルブ制御部202は、積算流量が目標積算流量に到達した時点t
2で、制御バルブ201を閉じて、上記式(1)に基づくガスの流量の制御を停止する。
【0037】
ここで、流量制御器FDでは、上述した通り、時点0において制御バルブ201が開放されてから時点t1において供給流量が供給開始指令により指定された目標流量に到達するまでの期間に、供給流量のオーバーシュートが発生する。このため、仮に供給開始指令により指定された目標供給時間が経過する時点tpまで上記式(1)に基づくガスの流量の制御が継続されたとすると、供給流量のオーバーシュートに対応する分だけ積算流量が目標積算流量を超過してしまう。
【0038】
そこで、バルブ制御部202は、供給開始指令により指定された目標供給時間が経過する前に、積算流量が目標積算流量に到達した時点t2で、制御バルブ201を閉じて、上記式(1)に基づくガスの流量の制御を停止する。
【0039】
これにより、流量制御器FDでは、流量制御器FDごとの立ち上がり特性にばらつきがある場合でも、処理装置101aに供給されるガスの積分流量を目標積算流量に一致させることができ、高精度な流量制御を実現することができる。
【0040】
図3は、第1実施形態に係る流量制御方法の他の一例を示す図である。
【0041】
図3(a)及び
図3(b)において、横軸は、時間を示し、縦軸は、処理装置101a(チャンバC)に供給されるガスの流量(つまり、オリフィス205の下流側のガスの流量Q)を示す。以下では、説明の便宜上、処理装置101a(チャンバC)に供給されるガスの流量を「供給流量」と記載する場合がある。また、
図3(a)及び
図3(b)において、時点0は、供給開始指令が処理装置101a(制御部102)から発行された時点を示す。また、時点t
pは、供給開始指令により指定された目標経過時間が経過した時点を示す。
【0042】
図3(a)では、供給開始指令により指定された目標流量及び目標供給時間に対応する目標積算流量が示されている。目標積算流量は、特定の流量制御器FDに関して、時点0から時点t
pまでに処理装置101a(チャンバC)に実際に供給されるガスの流量を積算することによって、予め求められる。特定の流量制御器FDは、例えば、特定の規格に従って整備された流量制御器FDである。そして、目標流量及び目標供給時間に対する目標積算流量の関係が関係情報209aに予め記憶される。また、
図3(b)では、
図3(a)において示された目標積算流量に対応する供給流量の変化が破線の波形311により示されている。
【0043】
図3(b)に示すように、バルブ制御部202は、供給開始指令が制御部102から発行された時点0で、制御バルブ201を開いて、上記式(1)に基づくガスの流量の制御を開始する。これにより、供給流量のアンダーシュートが発生する。すなわち、時点0において制御バルブ201が開放されてから時点t
1において供給流量が供給開始指令により指定された目標流量に到達するまでの期間に、供給流量が目標積算流量に対応する供給流量(波形311参照)を下回るアンダーシュートが発生する。
【0044】
そして、バルブ制御部202は、供給開始指令が発行された時点0から所定の周期Δtで供給流量(オリフィス205の下流側のガスの流量Q)を積算した積算流量を算出する。周期Δtは、供給開始指令が制御部102から発行される周期よりも短い周期であり、例えば、1ミリ秒である。
【0045】
そして、バルブ制御部202は、関係情報209aを用いて、積算流量が供給開始指令により指定された目標流量及び目標供給時間に対応する目標積算流量(つまり、
図3(a)において示された目標積算流量)に到達したか否かを監視する。ここでは、時点t
2において積算流量が目標積算流量に到達するものとする。バルブ制御部202は、積算流量が目標積算流量に到達した時点t
2で、制御バルブ201を閉じて、上記式(1)に基づくガスの流量の制御を停止する。
【0046】
ここで、流量制御器FDでは、上述した通り、時点0において制御バルブ201が開放されてから時点t1において供給流量が供給開始指令により指定された目標流量に到達するまでの期間に、供給流量のアンダーシュートが発生する。このため、仮に供給開始指令により指定された目標供給時間が経過する時点tpまで上記式(1)に基づくガスの流量の制御が継続されたとすると、供給流量のアンダーシュートに対応する分だけ積算流量が目標積算流量を下回ってしまう。
【0047】
そこで、バルブ制御部202は、供給開始指令により指定された目標供給時間が経過した後に、積算流量が目標積算流量に到達した時点t2で、制御バルブ201を閉じて、上記式(1)に基づくガスの流量の制御を停止する。
【0048】
これにより、流量制御器FDでは、流量制御器FDごとの立ち上がり特性にばらつきがある場合でも、処理装置101aに供給されるガスの積分流量を目標積算流量に一致させることができ、高精度な流量制御を実現することができる。
【0049】
以上のように、第1実施形態に係る流量制御器FDは、制御バルブ201と、バルブ制御部202とを有する。制御バルブ201は、処理装置101aに供給されるガスの流量を制御可能に構成されている。バルブ制御部202は、ガスの供給開始を指示する指令が処理装置101aから発行された時点で、制御バルブ201を開いてガスの流量の制御を開始し、指令が発行された時点から所定の周期でガスの流量を積算した積算流量を算出する。バルブ制御部202は、算出した積算流量が所定の目標積算流量に到達した時点で、制御バルブ201を閉じてガスの流量の制御を停止する。これにより、流量制御器FDは、流量制御器FDごとの立ち上がり特性にばらつきがある場合でも、処理装置101aに供給されるガスの積分流量を目標積算流量に一致させることができ、高精度な流量制御を実現することができる。
【0050】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態について説明する。
図4は、第2実施形態に係る処理システム10aの一例を示す図である。第2実施形態に係る処理システム10aは、
図1に示す第1実施形態に係る処理システム10aと略同様の構成であるため、同一の部分については同一の符号を付して説明を省略し、主に異なる部分について説明する。
【0051】
流量制御器FDは、
図1に示すバルブ制御部202に代えて、バルブ制御部302を有する。また、記憶部209には、関係情報209bが格納されている。
【0052】
関係情報209bは、処理装置101a(チャンバC)に供給すべきガスの目標流量及び目標供給時間に対する目標積算流量の関係を記憶するデータである。チャンバCに供給すべきガスの目標流量及び目標供給時間は、例えば、レシピによって規定される。目標積算流量は、供給開始指令が制御部102から発行された時点からチャンバCに実際に供給されるガスの流量を積算した積算流量の目標値である。本実施形態では、目標積算流量は、供給開始指令が制御部102から発行された時点からの経過時間ごとに予め設定されている。
【0053】
バルブ制御部302は、制御バルブ201の開度を制御することでガス供給管150を流れ、チャンバC内に供給されるガスの流量を制御する。バルブ制御部302は、供給開始指令が制御部102から発行された時点で、制御バルブ201を開いて、上記式(1)に基づくガスの流量の制御を開始する。具体的には、バルブ制御部302は、上記式(1)に基づいて制御バルブ201の開度を制御して圧力P1を調整することにより、オリフィス205の下流側のガスの流量Qを供給開始指令により指定された目標流量となるように制御する。これにより、流量Qのガスが処理装置101a(チャンバC)に供給される。
【0054】
そして、バルブ制御部302は、ガスの流量が所定の目標流量に到達するまでの過渡期間に、所定の周期でガスの流量Qを積算した積算流量と所定の目標積算流量との差分に基づき、該差分を補償する、ガスの流量Qの時間的変化率を決定する。所定の目標流量は、供給開始指令により指定される。所定の目標積算流量は、供給開始指令により指定された目標流量に対応して関係情報209aから取得される。
【0055】
そして、バルブ制御部302は、決定した時間的変化率でガスの流量Qが変化するよう制御バルブ201の開度を制御する。
【0056】
これにより、流量制御器FDでは、流量制御器FDごとの立ち上がり特性にばらつきがある場合でも、目標積算流量に対する積算流量の不足分をガスの流量Qの時間的変化により補償することができ、高精度な流量制御を実現することができる。
【0057】
次に、第2実施形態に係る流量制御器FDによる流量制御方法について説明する。
図5は、第2実施形態に係る流量制御方法の一例を示す図である。
【0058】
図5において、横軸は、時間を示し、縦軸は、処理装置101a(チャンバC)に供給されるガスの流量(つまり、オリフィス205の下流側のガスの流量Q)を示す。以下では、説明の便宜上、処理装置101a(チャンバC)に供給されるガスの流量を「供給流量」と記載する場合がある。また、
図5において、時点0は、供給開始指令が処理装置101a(制御部102)から発行された時点を示す。また、時点t
pは、供給開始指令により指定された目標供給時間が経過した時点を示す。また、
図5には、供給開始指令により指定された目標流量Q
pが示されている。本実施例では、目標流量Q
p及び目標供給時間に対する目標積算流量の関係が関係情報209bに予め記憶されている。目標積算流量は、供給開始指令が制御部102から発行された時点0からの経過時間ごとに予め設定されている。
【0059】
図5では、目標積算流量に対応する供給流量の時間的変化が破線の波形411により示されている。波形411は、時間tをパラメータとする一次関数f(t)=Q
p/t
p・tにより表される。なお、波形411を表す関数としては、一次関数に限らず、時定数を含む指数関数などの任意の一次遅れ関数が用いられてもよい。波形411は、時点0において立ち上がり、時点t
pにおいて目標流量Q
pに到達する。
図5では、時点0から時点t
pまでの期間が「供給流量が所定の目標流量に到達するまでの過渡期間」として定義されている。
【0060】
図5に示すように、バルブ制御部302は、供給開始指令が制御部102から発行された時点0で、制御バルブ201を開いて、上記式(1)に基づくガスの流量の制御を開始する。これにより、時点0から所定時間遅れて時点t
1において、供給流量が立ち上がる。
【0061】
そして、バルブ制御部302は、供給開始指令が発行された時点0から所定の周期で供給流量(オリフィス205の下流側のガスの流量Q)を積算した積算流量を算出する。
【0062】
そして、バルブ制御部302は、過渡期間に、積算流量と所定の目標積算流量との差分に基づき、該差分を補償する、ガスの流量Qの時間的変化率を決定する。すなわち、バルブ制御部302は、過渡期間に含まれる任意の時点t
aでの積算流量と目標積算流量との差分と、過渡期間の任意の時点t
a以降の期間(t
p-t
a)における積算流量の増加量とを一致させる演算を行うことで、差分を補償する時間的変化率を決定する。
図5の例では、任意の時点t
aでの積算流量と目標積算流量との差分が斜線の領域の面積S
1に相当し、期間(t
p-t
a)における積算流量の増加量が横線の領域の面積S
2に相当する。面積S
1は、「1/2・f(t
a)・t
a‐S」(ただし、Sは積算流量である。)により表される。面積S
2は、「1/2・(Q
p-f(t
a))・(t
p-t
2)」(ただし、t
2は面積S
1が面積S
2に一致すると仮定された場合に供給流量が目標流量Q
pに到達する時点である。)により表される。バルブ制御部302は、面積S
1を面積S
2に一致させる演算を行うことで、差分を補償する、ガスの流量Qの時間的変化率を決定する。すなわち、バルブ制御部302は、面積S
1を面積S
2に一致させる演算を行うことで、
図5の期間(t
2-t
a)における供給流量の波形の傾きをガスの流量Qの時間的変化率として決定する。
【0063】
そして、バルブ制御部302は、決定した時間的変化率でガスの流量Qが変化するよう制御バルブ201の開度を制御する。
【0064】
これにより、流量制御器FDでは、流量制御器FDごとの立ち上がり特性にばらつきがある場合でも、ガスの流量Qが所定の目標流量に到達するまでの過渡期間に目標積算流量に対する積算流量の不足分を補償でき、高精度な流量制御を実現することができる。
【0065】
以上のように、第2実施形態に係る流量制御器FDは、制御バルブ201と、バルブ制御部302とを有する。バルブ制御部302は、ガスの供給開始を指示する指令が処理装置101aから発行された時点で、制御バルブ201を開いてガスの流量の制御を開始する。バルブ制御部302は、ガスの流量が所定の目標流量に到達するまでの過渡期間に、所定の周期でガスの流量を積算した積算流量と所定の目標積算流量との差分に基づき、該差分を補償する、ガスの流量の時間的変化率を決定する。そして、バルブ制御部302は、決定した時間的変化率でガスの流量が変化するよう制御バルブ201の開度を制御する。これにより、流量制御器FDは、流量制御器FDごとの立ち上がり特性にばらつきがある場合でも、ガスの流量が所定の目標流量に到達するまでの過渡期間に目標積算流量に対する積算流量の不足分を補償でき、高精度な流量制御を実現することができる。
【0066】
なお、第2実施形態では、積算流量と所定の目標積算流量との差分に基づき決定される時間的変化率でガスの流量が変化するよう制御バルブ201の開度を制御する場合を例に説明したが、開示の技術はこれに限定されない。例えば、決定した時間的変化率が所定の閾値よりも大きい場合に、当該時間的変化率を閾値まで減少させ、減少後の時間的変化率でガスの流量が変化するよう制御バルブ201の開度を制御してもよい。これにより、ガスの流量のオーバーシュートを抑制することができる。
【符号の説明】
【0067】
FD 流量制御器
10a 処理システム
100 ガス供給系
101a 処理装置
102 制御部
201 制御バルブ
202、302 バルブ制御部
203 圧力計
204 圧力計
205 オリフィス
206 配管
207 配管
208 配管
209 記憶部
209a、209b 関係情報