(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-07
(45)【発行日】2023-12-15
(54)【発明の名称】表示装置用支持基板、有機EL表示装置、および有機EL表示装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H10K 77/10 20230101AFI20231208BHJP
H10K 71/80 20230101ALI20231208BHJP
H10K 59/10 20230101ALI20231208BHJP
H10K 50/87 20230101ALI20231208BHJP
H10K 50/84 20230101ALI20231208BHJP
C08G 73/10 20060101ALI20231208BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20231208BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20231208BHJP
【FI】
H10K77/10
H10K71/80
H10K59/10
H10K50/87
H10K50/84
C08G73/10
G09F9/00 342
G09F9/30 310
G09F9/30 365
(21)【出願番号】P 2019211567
(22)【出願日】2019-11-22
【審査請求日】2022-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】城野 貴史
(72)【発明者】
【氏名】山下 俊
(72)【発明者】
【氏名】朴 燦曉
(72)【発明者】
【氏名】朴 珍永
(72)【発明者】
【氏名】金 洙京
【審査官】小久保 州洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-227205(JP,A)
【文献】特開2018-101017(JP,A)
【文献】特開2019-039983(JP,A)
【文献】特開2018-104525(JP,A)
【文献】国際公開第2019/188265(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/050933(WO,A1)
【文献】特開2003-330006(JP,A)
【文献】特開2003-035905(JP,A)
【文献】特開2017-041391(JP,A)
【文献】特開2014-025059(JP,A)
【文献】特開2015-072365(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10K 77/10
H10K 71/80
H10K 59/10
H10K 50/84
H10K 50/87
H05B 33/02
H10K 50/10
H05B 33/10
C08G 73/10
G09F 9/30
G09F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
10~150μmの厚さのTFTガラス基板と、
前記TFTガラス基板に接して設けられた150nm以下の厚さのポリイミド樹脂層と、
を含
み、
前記ポリイミド樹脂層が、酸二無水物として4、4’-オキシジフタル酸無水物(ODPA)、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、2,2-ビス(4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル)プロパン二無水物(BSAA)、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)、または1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(CBDA)を含み、ジアミンとして2,2-ビス[3-(3-アミノベンズアミド)-4-ヒドロキシフェニル]ヘキサフルオロプロパン(HFHA)、trans-1,4-ジアミノシクロへキサン、または2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)を含む、ポリイミド樹脂で形成されることを特徴とする、
有機EL表示装置用支持基板。
【請求項2】
前記ポリイミド樹脂層の厚さが0.1nm以上である、請求項
1に記載の表示装置用支持基板。
【請求項3】
前記ポリイミド樹脂層の厚さが100nm以下である、請求項1
又は2に記載の表示装置用支持基板。
【請求項4】
前記TFTガラス基板の厚さが30~100μmである、請求項1~
3のいずれか一項に記載の表示装置用支持基板。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれか一項に記載の
有機EL表示装置用支持基板を備える、有機EL表示装置。
【請求項6】
ガラス基板上に20~150nmの厚さのポリイミド樹脂層を設ける工程と、
前記ポリイミド樹脂層上に10~150μmの厚さのTFTガラス基板を設ける工程と、
前記TFTガラス基板にTFT回路層を形成する工程と、
前記TFT回路層上に有機層を含む発光層を設ける工程と、
前記発光層を封止層により封止する工程と、
を含む、有機EL表示装置を製造する方法であって、
前記ポリイミド樹脂層にレーザー光を照射することにより、前記ポリイミド樹脂層を前記ガラス基板から剥離する工程を含
み、
前記ポリイミド樹脂層が、酸二無水物として4、4’-オキシジフタル酸無水物(ODPA)、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、2,2-ビス(4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル)プロパン二無水物(BSAA)、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)、または1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(CBDA)を含み、ジアミンとして2,2-ビス[3-(3-アミノベンズアミド)-4-ヒドロキシフェニル]ヘキサフルオロプロパン(HFHA)、trans-1,4-ジアミノシクロへキサン、または2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)を含む、ポリイミド樹脂で形成される、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置用支持基板、この表示装置用支持基板を備える有機EL表示装置、および有機EL表示装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機エレクトロルミネッセンス(以下、「有機EL」とも言う)表示装置等の表示装置の分野で、製品の軽量化、小型化、およびフレキシブル化が望まれている。こうした有機EL表示装置には、ガラスや樹脂による透明基板が利用されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、数10μm以下の厚みを有する薄ガラス基板を利用し、該薄ガラス基板上に薄膜トランジスタ回路が形成された表示装置において、該薄ガラス基板が、保持部材上に透明樹脂膜を形成し、該透明樹脂膜上に塗布ガラス材を塗布してから焼成し、その後、該保持部材が除去されて形成されたガラス基板であることを特徴とする表示装置が記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、ガラス基板の総厚をより薄くしてもフレキシブル性と耐屈曲性とを兼ね備えた電気光学装置であって、一対のガラス基板間に挟持された電気光学層と、前記電気光学層から光が射出される側の第1の面と、前記第1の面とは反対側の第2の面と、を有する電気光学パネルと、前記電気光学パネルの前記第1の面上に設けられた保護層と、前記保護層の上方に設けられた第1の表面層と、前記電気光学パネルの側面と前記第2の面とを覆うように設けられた樹脂層と、前記樹脂層を介して前記第2の面に対向するように設けられた第2の表面層と、を備え、前記保護層は、エッチング液に対してガラスよりも高い耐性を有することを特徴とする、有機EL装置が記載されている。
【0005】
また、特許文献3には、基板上に有機樹脂層を形成する工程と、前記有機樹脂層上に絶縁膜を形成する工程と、前記絶縁膜上に素子層を形成する工程と、光学系によってレーザー光を伸張する工程と、前記レーザー光を縮小して、線状ビームを形成する工程と、前記基板を介して、前記基板と前記有機樹脂層との界面の加工領域に前記線状ビームを照射する工程と、を有することを特徴とする、表示品位が良好かつ歩留りの高い可撓性表示装置の作製方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2011-227205号公報
【文献】特開2011-14483号公報
【文献】特開2018-55103号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の有機樹脂層を含むフレキシブル有機EL表示装置用支持基板は、薄膜トランジスタ(以下、「TFT」ともいう)回路層を形成する際におよそ450℃に焼成されるため、基板に含まれる有機樹脂層が黄変してしまうという問題があった。そのため、例えば、スマートフォンやタブレットなど、カメラモジュールと表示装置を搭載している携帯情報端末等の電子機器において、表示装置の有機樹脂層が黄変してしまっている場合、表示装置の背面にカメラモジュールを重ねて設けることができないという問題があった。
【0008】
本発明の目的は、上記課題を解決するために、有機EL表示装置の薄型化およびフレキシブル化を実現しつつ、高い透明性を実現できる表示装置用支持基板を提供することにある。
【0009】
また、本発明の別の目的は、薄型であり、フレキシブル性を有するとともに、高い透明性を有する有機EL表示装置を提供することにある。また、本発明のさらに別の目的は、薄型であり、フレキシブル性を有するとともに、高い透明性を有する有機EL表示装置を製造できる有機EL表示装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上述した課題を解決するために鋭意検討し、10~150μmの厚さのTFTガラス基板と、前記TFTガラス基板に接して設けられた150nm以下の厚さの高耐熱性を有するポリイミド樹脂層との組み合わせをを含む表示装置用支持基板により、高温に晒された場合であっても表示装置用支持基板の着色を抑制でき、その結果上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
【0011】
したがって、本発明の表示装置用支持基板は、
10~150μmの厚さのTFTガラス基板と、
前記TFTガラス基板に接して設けられた150nm以下の厚さのポリイミド樹脂層と、
を含むことを特徴にする。
【0012】
好ましくは、表示装置は有機EL表示装置である。
【0013】
ポリイミド樹脂層の厚さは、0.1nm以上であり得る。
【0014】
ポリイミド樹脂層の厚さは、100nm以下であり得る。
【0015】
TFTガラス基板の厚さは、30~100μmであり得る。
【0016】
ポリイミド樹脂層は、酸二無水物として4、4’-オキシジフタル酸無水物(ODPA)、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、2,2-ビス(4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル)プロパン二無水物(BSAA)、4、4’-オキシジフタル酸無水物(ODPA)、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)、または1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(CBDA)を含み、ジアミンとして2,2-ビス[3-(3-アミノベンズアミド)-4-ヒドロキシフェニル]ヘキサフルオロプロパン(HFHA)、trans-1,4-ジアミノシクロへキサン、または2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)を含む、ポリイミド樹脂で形成され得る。
【0017】
本発明はまた、本発明の表示装置用支持基板を備える有機EL表示装置にも関する。
【0018】
本発明はまた、有機EL表示装置の製造方法にも関し、ガラス基板上に20~150nmの厚さのポリイミド樹脂層を形成する工程と、前記ポリイミド樹脂層上に10~150μmの厚さのTFTガラス基板を設ける工程と、前記TFTガラス基板にTFT回路層を形成する工程と、前記TFT回路層上に有機層を含む発光層を設ける工程と、前記発光層を封止層により封止する工程とを含み、さらに前記ポリイミド樹脂層にレーザー光を照射することにより、前記ポリイミド樹脂層を前記ガラス基板から剥離する工程を含む。
【発明の効果】
【0019】
本発明の表示装置用支持基板によれば、薄型化およびフレキシブル化を実現しつつ、高い透明性を有する有機EL表示装置を提供できる。また、本発明の有機EL表示装置によれば、本発明の表示装置用支持基板を備えるので、薄型であり、フレキシブル性を有するとともに、高い透明性を有する有機EL表示装置を提供できる。また、本発明の有機EL表示装置の製造方法によれば、薄型であり、フレキシブル性を有するとともに、高い透明性を有する有機EL表示装置を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、本発明の表示装置用支持基板の構造を示す模式的な断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の有機EL表示装置の構造を示す模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0022】
[表示装置用支持基板]
本発明の表示装置用支持基板は、
10~150μmの厚さのTFTガラス基板と、
前記TFTガラス基板に接して設けられた150nm以下の厚さのポリイミド樹脂層と、
を含むことに特徴がある。
【0023】
好ましくは、本発明の表示装置用支持基板は、有機EL表示装置用の支持基板である。
【0024】
図1は、本発明の表示装置用支持基板の構造を示す模式的な断面図である。本発明の表示装置用支持基板1は、10~150μmの厚さのTFTガラス基板2と、TFTガラス基板2に接して設けられた150nm以下の厚さのポリイミド樹脂層3から成る。好ましくは、ポリイミド樹脂層3は、TFTガラス基板1のTFT回路層が形成される面とは反対の面に接して設けられる。
【0025】
こうした本発明の表示装置用支持基板によれば、10~150μmの厚さのTFTガラス基板と、150nm以下の厚さのポリイミド樹脂層から構成されるので、実装される表示装置の薄型化およびフレキシブル化を実現できる。また、150nm以下の厚さの高耐熱性のポリイミド樹脂層を含むので、高い透明性を有する表示装置を提供できる。以下、各成分について詳細に説明する。
【0026】
(TFTガラス基板)
本発明の表示装置用支持基板は、10~150μmの厚さのTFTガラス基板を含む。
【0027】
本発明のTFTガラス基板は、表示装置用支持基板として機能するとともに、TFT回路層が形成されるTFT形成用のガラス基板としても機能する。本発明の表示装置用支持基板は、TFTガラス基板が優れたガスバリア性を有するので、ポリイミドフィルムのみからなる従来のフレキシブル基板材料を用いる場合と比べて、TFTを形成するためのガスバリア層を形成する必要がないという有利な点を有する。
【0028】
TFTガラス基板の厚さは、10~150μmである。好ましくは、本発明のTFTガラス基板の厚さは、20μm以上であり、より好ましくは30μm以上である。また、本発明のTFTガラス基板の厚さは、好ましくは125μm以下であり、より好ましくは100μm以下である。TFTガラス基板の厚さは、例えば、断面を走査電子顕微鏡(SEM)で観察することにより測定することができる。
【0029】
(ポリイミド樹脂層)
本発明の表示装置用支持基板は、TFTガラス基板に接して設けられた150nm以下の厚さのポリイミド樹脂層を含む。ポリイミド樹脂層は、TFTガラス基板のTFT回路層が形成されない面に接して設けられる。
【0030】
ポリイミド樹脂層の厚さは、150nm以下であり、好ましくは100nm以下であり、より好ましくは90nm以下であり、さらに好ましくは80nm以下である。ポリイミド樹脂層の厚さの下限は、特に限定されないが、例えば0nm超、0.1nm以上、1nm以上、5nm以上、または10nm以上である。ポリイミド樹脂層の厚さは、例えば、断面を透過電子顕微鏡(TEM)で観察することにより測定することができる。ポリイミド樹脂層の厚さを150nm以下に薄くすることにより、たとえポリイミド樹脂が高温に晒されて黄変してしまったとしても、表示装置用支持基板の透明性を確保できるという有利な点を有する。
【0031】
ポリイミド樹脂層は、好ましくは透明ポリイミド樹脂で形成される。このようなポリイミド樹脂としては、特に限定されないが、例えば、具体的な例としては、下記一般式(11)で表されるポリイミド樹脂を用いることができる。これは例えば下記一般式(12)で表されるポリイミド前駆体樹脂をイミド閉環(イミド化反応)させることで得られる。イミド化反応の方法としては特に限定されず、熱イミド化や化学イミド化が挙げられる。中でも、ポリイミド樹脂膜の耐熱性、可視光領域での透明性の観点から、熱イミド化が好ましい。
【0032】
【0033】
一般式(11)および(12)中、R2は4価の有機基、R3は2価の有機基を示す。X1、X2は各々独立に水素原子、炭素数1~10の1価の有機基または炭素数1~10の1価のアルキルシリル基を示す。
【0034】
ポリアミド酸やポリアミド酸エステル、ポリアミド酸シリルエステルなどのポリイミド前駆体樹脂は、ジアミン化合物と酸二無水物またはその誘導体との反応により合成することができる。誘導体としては、該酸二無水物のテトラカルボン酸、そのテトラカルボン酸のモノ、ジ、トリ、またはテトラエステル、酸塩化物などが挙げられ、具体的にはメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n―ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基などでエステル化された構造が挙げられる。重合反応の反応方法は、目的のポリイミド前駆体樹脂が製造できれば特に制限はなく、公知の反応方法を用いることができる。
【0035】
具体的な反応方法としては、所定量の全てのジアミン成分および溶剤を反応器に仕込み溶解させた後、所定量の酸二無水物成分を仕込み、室温~80℃で0.5~30時間撹拌する方法などが挙げられる。
【0036】
ポリイミド前駆体樹脂の合成に用いられる酸二無水物とジアミンは既知のものを使用することができる。
【0037】
酸二無水物としては特に限定されず、芳香族酸二無水物、脂環式酸二無水物、または脂肪族酸二無水物が挙げられる。
【0038】
芳香族酸二無水物としては、4、4’-オキシジフタル酸無水物、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル)プロパン二無水物、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ターフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-オキシフタル酸二無水物、2,3,3’,4’-オキシフタル酸二無水物、2,3,2’,3’-オキシフタル酸二無水物、ジフェニルスルホン-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノン-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,1-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、1,4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、ビス(1,3-ジオキソ-1,3-ジヒドロイソベンズフラン-5-カルボン酸)1,4-フェニレン-2,2-ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、9,9-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物、2,3,5,6-ピリジンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンニ無水物、2,2-ビス(4-(3,4-ジカルボキシベンゾイルオキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、1,6-ジフルオロプロメリット酸二無水物、1-トリフルオロメチルピロメリット酸二無水物、1,6-ジトリフルオロメチルピロメリット酸二無水物、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ビフェニル二無水物、2,2’-ビス[(ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物、2,2’-ビス[(ジカルボキシフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパンニ無水物、9,9’-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン酸二無水物あるいはこれらの芳香族環にアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子などで置換した酸二無水物化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0039】
脂環式酸二無水物としては、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-テトラメチル-1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2-ジメチル-1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3-ジメチル-1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロヘプタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,4,5-テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物、3,4-ジカルボキシ-1-シクロヘキシルコハク酸二無水物、2,3,5-トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、3,4-ジカルボキシ-1,2,3,4-テトラヒドロ-1-ナフタレンコハク酸二無水物、ビシクロ[3,3,0]オクタン-2,4,6,8-テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[4,3,0]ノナン-2,4,7,9-テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[4,4,0]デカン-2,4,7,9-テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[4,4,0]デカン-2,4,8,10-テトラカルボン酸二無水物、トリシクロ[6,3,0,0<2,6>]ウンデカン-3,5,9,11-テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2,2,2]オクタン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2,2,2]オクト-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2,2,1]ヘプタンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2,2,1]ヘプタン-5-カルボキシメチル-2,3,6-トリカルボン酸二無水物、7-オキサビシクロ[2,2,1]ヘプタン-2,4,6,8-テトラカルボン酸二無水物、オクタヒドロナフタレン-1,2,6,7-テトラカルボン酸二無水物、テトラデカヒドロアントラセン-1,2,8,9-テトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジシクロへキサンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-オキシジシクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、および5-(2,5-ジオキソテトラヒドロ-3-フラニル)-3-メチル-3-シクロヘキセン-1,2-ジカルボンサン無水物、並びにそれらの誘導体、あるいはこれらの脂環にアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子などで置換した酸二無水物化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0040】
脂肪族酸二無水物としては、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-ペンタンテトラカルボン酸二無水物およびそれらの誘導体などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0041】
これらの芳香族酸二無水物、脂環式酸二無水物、または脂肪族酸二無水物は、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0042】
これらのうち、市販され手に入れやすい観点、反応性の観点の観点から、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-オキシフタル酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンニ無水物、2,2’-ビス[(ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジシクロへキサンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、4、4’-オキシジフタル酸無水物、2,2-ビス(4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル)プロパン二無水物を用いることが好ましい。
【0043】
ジアミンとしては特に限定されず、芳香族ジアミン化合物、脂環式ジアミン化合物、または脂肪族ジアミン化合物が挙げられる。
【0044】
芳香族ジアミン化合物としては、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、3,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,4’-ジアミノジフェニルスルヒド、4,4’-ジアミノジフェニルスルヒド、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、ベンジジン、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、3,3’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,2’-ジメチルベンジジン、3,3’-ジメチルベンジジン、2,2’3,3’-テトラメチルベンジジン、2,2’-ジクロロベンジジン、3,3’-ジクロロベンジジン、2,2’3,3’-テトラクロロベンジジン、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、1,5-ナフタレンジアミン、2,6-ナフタレンジアミン、ビス(4-アミノフェノキシフェニル)スルホン、ビス(3-アミノフェノキシフェニル)スルホン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス{4-(4-アミノフェノキシ)フェニル}エーテル、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン、2,2’-ビス[3-(3-アミノベンズアミド)-4-ヒドロキシフェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4-アミノフェニルー4-アミノベンゼンスルホナート、3-アミノフェニル-4-アミノベンゼンスルホナート、1,4-フェニレン-ビス(4-アミノベンゼンスルホナート)あるいはこれらの芳香族環にアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子などで置換したジアミン化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0045】
脂環式ジアミン化合物としては、シクロブタンジアミン、イソホロンジアミン、ビシクロ[2,2,1]ヘプタンビスメチルアミン、トリシクロ[3,3,1,13,7]デカン-1,3-ジアミン、1,2-シクロヘキシルジアミン、1,3-シクロヘキシルジアミン、1,4-シクロヘキシルジアミン、trans-1,4-ジアミノシクロへキサン、4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、3,3’-ジエチル-4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、3,3’,5,5’-テトラエチル-4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、3,5-ジエチル-3’,5’-ジメチル-4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、4,4’-ジアミノジシクロヘキシルエーテル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジシクロヘキシルエーテル、3,3’-ジエチル-4,4’-ジアミノジシクロヘキシルエーテル、3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ジアミノジシクロヘキシルエーテル、3,3’,5,5’-テトラエチル-4,4’-ジアミノジシクロヘキシルエーテル、3,5-ジエチル-3’,5’-ジメチル-4,4’-ジアミノジシクロヘキシルエーテル、2,2-ビス(4-アミノシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(3-エチル-4-アミノシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(3,5-ジメチル-4-アミノシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(3,5-ジエチル-4-アミノシクロヘキシル)プロパン、2,2-(3,5-ジエチル-3’,5’-ジメチル-4,4’-ジアミノジシクロヘキシル)プロパン、あるいはこれらの脂環にアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子などで置換したジアミン化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0046】
脂肪族ジアミン化合物としては、エチレンジアミン、1,3-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタン、1,5-ジアミノペンタン、1,6-ジアミノヘキサン、1,7-ジアミノヘプタン、1,8-ジアミノオクタン、1,9-ジアミノノナン、1,10-ジアミノデカンなどのアルキレンジアミン類、ビス(アミノメチル)エーテル、ビス(2-アミノエチル)エーテル、ビス(3-アミノプロピル)エーテルなどのエチレングリコールジアミン類、および1,3-ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、1,3-ビス(4-アミノブチル)テトラメチルジシロキサン、α,ω-ビス(3-アミノプロピル)ポリジメチルシロキサンなどのシロキサンジアミン類が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0047】
これらの芳香族ジアミン、脂環式ジアミン、または脂肪族ジアミンは、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0048】
表示装置用支持基板のポリイミド樹脂には、耐熱性および可視光領域での高い透明性が求められるので、透明性を付与するために酸二無水物やジアミン成分に嵩高いフッ素置換基としてトリフルオロメチル基や、脂環式モノマー成分を有していることが好ましい。すなわち、ポリイミド樹脂が、トリフルオロメチル基および脂環式炭化水素基から選ばれる少なくとも1種の基を有することが好ましい。トリフルオロメチル基含有モノマー、脂環式モノマー成分は酸二無水物とジアミン成分の両方に用いても、片方に用いてもよいが、モノマーの入手し易さの観点からジアミン成分に用いることが好ましい。また、十分な透明性を発現するため、ポリイミド樹脂に含まれるジアミン残基の全量に対して、トリフルオロメチル基また脂環式炭化水素基から選ばれる少なくとも1種の基を有するジアミン残基が50モル%以上含まれることが好ましい。
【0049】
別の好ましい実施形態として、酸二無水物として4、4’-オキシジフタル酸無水物(ODPA)、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)、2,2-ビス(4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル)プロパン二無水物(BSAA)、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(CBDA)、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物(PMDA-H)を含むことが好ましい。ジアミンとしては2,2-ビス[3-(3-アミノベンズアミド)-4-ヒドロキシフェニル]ヘキサフルオロプロパン(HFHA)、trans-1,4-ジアミノシクロへキサン(t-DACH)、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)を含むことが好ましい。
【0050】
また、別の好ましい実施形態として、酸二無水物として、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、4、4’-オキシジフタル酸無水物(ODPA)、1,2,4,5‐シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物(PMDA-H)、2,2-ビス(4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル)プロパン二無水物(BSAA)、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(CBDA)を含むことが好ましく、ジアミンとしては、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、p-フェニレンジアミン、3,3’-ジメチルベンジジン、2,2-ビス[3-(3-アミノベンズアミド)-4-ヒドロキシフェニル]ヘキサフルオロプロパン(HFHA)、trans-1,4-ジアミノシクロへキサン、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)を含むことが好ましい。
【0051】
特に、特に透明性の高い表示装置用支持基板を得る目的で、酸二無水物やジアミン成分にトリフルオロメチル基や脂環式モノマー成分を導入することが有効である。この場合の酸二無水物として4、4’-オキシジフタル酸無水物(ODPA)、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、2,2-ビス(4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル)プロパン二無水物(BSAA)、4、4’-オキシジフタル酸無水物(ODPA)、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(CBDA)を含むことが好ましい。ジアミンとしては2,2-ビス[3-(3-アミノベンズアミド)-4-ヒドロキシフェニル]ヘキサフルオロプロパン(HFHA)、trans-1,4-ジアミノシクロへキサン、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)を含むことが好ましい。
【0052】
特に好ましいポリイミド樹脂として、一般式(1)~(3)で表される繰り返し構造単位の少なくとも1つを主成分とするポリイミドが挙げられる。
【0053】
【0054】
一般式(1)~(3)中、R1は(4)~(9)で表される少なくとも一種類以上の基である。
【0055】
【0056】
前記ポリイミド、およびポリイミド前駆体樹脂は、分子量を好ましい範囲に調整するために末端封止剤により両末端を封止してもよい。酸二無水物と反応する末端封止剤としては、モノアミンや一価のアルコールなどが挙げられる。また、ジアミン化合物と反応する末端封止剤としては、酸無水物、モノカルボン酸、モノ酸クロリド化合物、モノ活性エステル化合物、二炭酸エステル類、ビニルエーテル類などが挙げられる。また、末端封止剤を反応させることにより、末端基として種々の有機基を導入することができる。
【0057】
本発明の表示装置用支持基板は、高温に晒された場合であっても、高い透明性を示すことができる。例えば、本発明の表示装置用支持基板は、450℃に120分間晒された場合であっても、高い透明性を維持し、具体的には、可視光領域の全光線透過量が70%以上であり、好ましくは80%以上であり、より好ましくは90%以上であり得る。可視光領域の全光線透過量は、例えば可視光透過測定器により測定できる。
【0058】
[有機EL表示装置]
本発明はまた、上記で説明した本発明の表示装置用支持基板を備える有機EL表示装置にも関する。
【0059】
図2は、本発明の有機EL表示装置の構造を示す模式的な断面図である。本発明の有機EL表示装置10は、上記で説明した表示装置用支持基板1を備え、表示装置用支持基板1のTFTガラス基板2上にTFT回路層11が設けられ、さらにTFT回路層11上にTFT回路層の駆動回路と電気的に接続された、有機層を含む発光層12が設けられ、さらに発光層12上に封止層13が設けられた構造を含む。なお、本発明の有機EL表示装置は、ボトムエミッション構造であってもよく、また、トップエミッション構造であってもよい。
【0060】
TFT回路層としては、特に限定されないが、例えば、非晶質シリコン、非晶質シリコン、多結晶シリコン、低温ポリシリコン、または微結晶シリコンから成る半導体層を有する薄膜トランジスタから成るTFT回路層が挙げられる。また、TFT回路層は、通常、上記した半導体層以外に、TFTガラス基板上に設けられたゲート電極、ゲート絶縁膜、ソース電極およびドレイン電極を含む。
【0061】
発光層は、当該技術分野で公知の有機層を含む発光層であってよく、一般的に陽極電極、多層構造の有機化合物を含む有機層、および陰極電極をからなる発光層である。一実施形態において、発光層は、第1電極上に順次積層された正孔注入層、正孔輸送層、有機層、電子輸送層、および電子注入層を含むことができる。ここで、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層および電子注入層のうち1つまたは2つ以上の層は省略可能である。また、発光層は、発光層に注入される電子および/または正孔を制御するための少なくとも1つの機能層をさらに含むことができる。
【0062】
封止層は、発光層を酸素および/または水分が浸透することを防止するためのものである。封止層を構成する物質は特に限定されず、例えば、無機層または有機層で形成されるか、または無機層と有機層が交互に積層された複層構造で形成されてもよい。無機層の材料としては、例えば、窒化シリコン(SiNx)、酸化シリコン(SiOx)、酸化窒化シリコン(SiON)または酸化アルミニウム(AlxOy)が挙げられ、有機層の材料としては、例えば、ベンゾシクロブテン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、またはポリイミド樹脂などが挙げられる。
【0063】
なお、本発明の有機EL表示装置は、上記した層構造以外に他の機能層を設けてもよい。こうした他の機能層としては、例えば、タッチパネル層、ハードコート層、粘着剤層、反射防止層、帯電防止層などが挙げられる。
【0064】
本発明の有機EL表示装置は、高い透明性を有する。好ましくは、本発明の有機EL表示装置は、可視光領域の全光線透過量が70%以上であり、好ましくは80%以上であり、より好ましくは90%以上であり得る。可視光領域の全光線透過量は、例えば可視光透過測定器により測定できる。
【0065】
こうした本発明の有機EL表示装置によれば、支持基板として、10~150μmの厚さのTFTガラス基板と、TFTガラス基板に接して設けられた150nm以下の厚さの高い耐熱性を有するポリイミド樹脂層とから構成される本発明の表示装置用支持基板を用いているので、薄型であり、フレキシブル性を有するとともに、高い透明性を有する。
【0066】
[有機EL表示装置の製造方法]
本発明はまた、有機EL表示装置を製造する方法にも関する。本発明の有機EL表示装置を製造する方法は、ガラス基板上に20~150nmの厚さのポリイミド樹脂層を形成する工程と、前記ポリイミド樹脂層上に10~150μmの厚さのTFTガラス基板を設ける工程と、前記TFTガラス基板にTFT回路層を形成する工程と、前記TFT回路層上に発光層を設ける工程と、前記発光層を封止層により封止する工程とを含み、前記ポリイミド樹脂層にレーザー光を照射することにより、前記ポリイミド樹脂を前記ガラス基板から剥離する工程を含むことを特徴にする。
【0067】
ガラス基板上に20~150nmの厚さのポリイミド樹脂層を形成する工程は、キャリア基板であるガラス基板上に、厚さ20~150nmのポリイミド樹脂層を設ける工程である。ポリイミド樹脂層の形成方法は、特に限定されないが、100~750nmの厚さでポリイミド樹脂の前駆体NMP溶液をコーティングし、その後乾燥、硬化させることにより形成できる。乾燥条件は特に限定されないが、例えば50℃~300℃で10分~10時間加熱することにより行うことができる。また、硬化条件は特に限定されないが、例えば、300℃超~500℃の温度で10分~3時間加熱することにより行うことができる。ポリイミド樹脂をコーティングする方法は、特に限定されず、従来公知の方法を使用でき、例えば、スピンコート法、スリットコート法、スプレーコート法、ロールコート法、バーコート法などが例示される。ポリイミド樹脂の硬化は、通常、加熱により行われる。なお、キャリア基板であるガラス基板の厚さは特に限定されず、例えば0.1mm~30mmである。
【0068】
ポリイミド樹脂層上に10~150μmの厚さのTFTガラス基板を設ける工程は、前記した工程で得られたポリイミド樹脂層上に、TFT回路を形成するためのガラス基板を積層する工程である。ポリイミド樹脂層とTFTガラス基板は、通常、加熱により接着される。この加熱条件は特に限定されないが、例えば、300℃~400℃で1分~30分加熱することにより行うことができる。
【0069】
TFTガラス基板にTFT回路層を形成する工程は、前記工程で積層したTFTガラス基板に、TFT回路を形成する工程である。TFT回路を形成する工程は、従来公知の方法によりゲート電極、ゲート絶縁膜、半導体層、ソース電極およびドレイン電極を形成して行われる。また、TFT回路層としては、特に限定されないが、例えば、非晶質シリコン、非晶質シリコン、多結晶シリコン、低温ポリシリコン、または微結晶シリコンから成る半導体層を有する薄膜トランジスタから成るTFT回路層が挙げられる。こうしたTFT回路層を形成する工程は、通常、半導体層を400~450℃で1時間~5時間アニーリングする工程を含む。
【0070】
TFT回路層上に有機層を含む発光層を設ける工程は、前記工程で形成したTFT回路層上に、有機EL発光層を形成する工程である。発光層は、従来公知の方法で形成することができ、通常、第1電極上に順次積層された正孔注入層、正孔輸送層、有機層、電子輸送層、および電子注入層を含むことができ、ここで、TFT回路層の駆動回路と発光層は電気的に接続される。各層は、蒸着法により形成してもよく、塗布法により形成してもよい。
【0071】
前記発光層を封止層により封止する工程は、前記工程で形成した発光層上に封止層を設ける工程である。封止層を構成する物質は特に限定されず、例えば、無機層または有機層で形成されるか、または無機層と有機層が交互に積層された複層構造で形成されてもよい。無機層の材料としては、例えば、窒化シリコン(SiNx)、酸化シリコン(SiOx)、酸化窒化シリコン(SiON)または酸化アルミニウム(AlxOy)が挙げられ、有機層の材料としては、例えば、ベンゾシクロブテン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、またはポリイミド樹脂などが挙げられる。また、封止層の形成は、従来公知の方法により行うことができ、例えば、スパッタ法、真空蒸着法、プラズマCVD法、イオンプレーティング法などにより行われ得る。
【0072】
本発明の有機EL表示装置を製造する方法は、上記した工程に加えて、さらに、ポリイミド樹脂層にレーザー光を照射することにより、ポリイミド樹脂層をガラス基板から剥離する工程を含む。すなわち、本発明の有機EL表示装置を製造する方法は、有機EL表示装置を取り出すために、ポリイミド樹脂層にレーザー光を照射することにより、キャリア基板であるガラス基板とポリイミド樹脂の界面を変質させ、ポリイミド樹脂層をガラス基板から剥離させる工程を含む。
【0073】
ポリイミド樹脂層をガラス基板から剥離する工程において、レーザー光はキャリア基板であるガラス基板側からポリイミド樹脂層に照射される。レーザー光の波長は、ポリイミド樹脂を変質できるものであれば特に限定されないが、通常は紫外光である。レーザー光は、好ましくはレーザーリフト法により照射される。
【0074】
ポリイミド樹脂層にレーザー光を照射することによるガラス基板とポリイミド樹脂の界面の変質は、ポリイミド樹脂層の焼成を含み得る。そのため、ポリイミド樹脂層の厚さはレーザー光を照射することにより薄層化され、剥離後のポリイミド樹脂層の厚さは当初形成したポリイミド樹脂層の厚さよりも薄くなり得る。すなわち、剥離後の有機EL表示装置のポリイミド樹脂層の厚さは、150nm以下であり、好ましくは100nm以下であり、より好ましくは90nm以下であり、さらに好ましくは80nm以下である。ポリイミド樹脂層の厚さの下限は、特に限定されないが、例えば0。01nm超、0.1nm以上、1nm以上、5nm以上、または10nm以上である。ポリイミド樹脂層の厚さは、例えば、断面を透過電子顕微鏡(TEM)で観察することにより測定することができる。
【0075】
従来、10~150μmの薄層ガラス基板を支持基板として用いて、この薄層ガラス基板をキャリア基板としてのガラス基板と直接接していた場合、TFT回路を形成する工程で高温に晒されると、薄層ガラス基板をガラス基板から剥離することが困難になるという問題があった。本発明の剥離工程によれば、キャリア基板としてのガラス基板と薄層ガラス基板との間に高耐熱性のポリイミド樹脂層を設けて、このポリイミド樹脂層とガラス基板との間の界面をレーザー光で変質させることにより、薄層ガラス基板を支持基板として用いた場合であって、高温に晒された場合であっても、支持基板をガラス基板から容易に剥離できる。そのため、本発明は、10~150μmの薄層ガラス基板と、キャリア基板としてのガラス基板を剥離するための、ポリイミド樹脂組成物の使用にも関し、このポリイミド樹脂組成物は、150nm以下の厚さを有するポリイミド樹脂層を形成する。
【0076】
本発明の有機EL表示装置を製造する方法によれば、10~150μmの厚さのTFTガラス基板と、TFTガラス基板に接して設けられた150nm以下の厚さのポリイミド樹脂層とから構成される表示装置用支持基板を備える有機EL表示装置を製造できるので、薄型であり、フレキシブル性を有するとともに、高い透明性を有する有機EL表示装置を製造できる。
【実施例】
【0077】
本発明を以下の実施例および比較例により詳細に説明する。但し本発明は以下の実施例の記載に限定されない。
【0078】
[実施例]
0.5mm厚のガラス基板上に酸二無水物として4、4’-オキシジフタル酸無水物(ODPA)およびジアミンとして2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)を含むワニスをスロットダイで500nmの厚さで塗布し、窒素オーブン(光洋サーモシステム社製)に投入し、50℃で30分間乾燥させた後、100℃で30分間乾燥させ、150℃で30分間乾燥させ、200℃で30分間乾燥させ、250℃で30分間乾燥させ、300℃で30分間乾燥させ、350℃で30分間硬化させて厚さ100nmのポリイミド樹脂層を形成した。次いで、ポリイミド樹脂層上にTFTガラス基板としての厚さ50μmの薄層ガラス(日本電気硝子社製)を積層し、350℃で10分間加熱してポリイミド樹脂層とTFTガラス基板としての薄層ガラスを接着した。次いで、この薄層ガラス上に公知の方法でTFT回路層と発光層を形成し、さらに発光層上に封止層を形成してガラス基板上に表示装置を形成した。TFT回路層を形成する工程において、半導体層を450℃で2時間アニーリングした。最後に、ガラス基板の表示装置が積層されている面と反対の面からレーザーリフトオフ法により波長308nmのレーザー光をポリイミド樹脂層に照射して、ポリイミド樹脂層をガラス基板から剥離し、有機EL表示装置を得た。得られた有機EL表示装置のポリイミド樹脂層の厚さを断面TEM観察により測定したところ、70nmであった。
【0079】
[比較例]
上記実施例のポリイミド樹脂層の代わりに一般的なエポキシ樹脂層を用い、エポキシ樹脂層に薄層ガラスを積層した後、160℃で10分間加熱したこと以外は実施例と同様にして有機EL表示装置の製造を行ったが、TFT回路層を形成する工程において、半導体層を450℃で2時間アニーリングした際にエポキシ樹脂層が発泡してエポキシ樹脂層と薄層ガラスが剥離してしまい、有機EL表示装置を製造することができなかった。
【0080】
[評価]
(可視光透過試験)
得られた実施例1の有機EL表示装置の可視光に対する透過度を可視光透過測定器(日本分光社製、UV-500)で測定した。実施例1の有機EL表示装置は、可視光領域の全光線透過率が、90%以上であった。そのため、本発明の有機EL表示装置は、透明性に優れるものであった。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明の表示装置用支持基板は、高い透明性を有するので、例えば、スマートフォンやタブレットなど、複数のモジュールを搭載している電子機器に特に有用であり、例えば、カメラモジュールと表示装置を搭載している携帯情報端末等の電子機器において、表示装置の背面にカメラモジュールを設けることが可能になる。