(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-07
(45)【発行日】2023-12-15
(54)【発明の名称】III族窒化物基板の製造方法及びIII族窒化物基板
(51)【国際特許分類】
C30B 29/38 20060101AFI20231208BHJP
C30B 25/20 20060101ALI20231208BHJP
C23C 16/34 20060101ALI20231208BHJP
H01L 21/205 20060101ALI20231208BHJP
【FI】
C30B29/38 D
C30B25/20
C23C16/34
H01L21/205
(21)【出願番号】P 2020002945
(22)【出願日】2020-01-10
【審査請求日】2022-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100129746
【氏名又は名称】虎山 滋郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135758
【氏名又は名称】伊藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100154391
【氏名又は名称】鈴木 康義
(72)【発明者】
【氏名】久保田 芳宏
(72)【発明者】
【氏名】永田 和寿
【審査官】今井 淳一
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-073425(JP,A)
【文献】特開2003-347590(JP,A)
【文献】特開2010-226023(JP,A)
【文献】特表2019-528570(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C30B 29/38
C30B 25/20
C23C 16/34
H01L 21/205
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Si<111>基板、サファイア基板、SiC基板、GaAs基板、及びSCAM(ScAlMgO
4)基板からなる群から選択される基板の両面に表面がIII族元素面であるIII族窒化物膜を形成してIII族窒化物膜担持体を作製する工程と、
前記III族窒化物膜担持体の両面の少なくとも一方の面のIII族窒化物膜にイオン注入を行って前記III族窒化物膜にイオン注入領域を形成する工程と、
前記III族窒化物膜担持体の前記イオン注入を行ったIII族窒化物膜を、主成分がIII族窒化物である多結晶のベース基板と貼り合わせて、前記III族窒化物膜担持体を前記ベース基板に接合する工程と、
前記ベース基板から前記III族窒化物膜担持体を離間させて、前記III族窒化物膜の前記イオン注入領域を前記ベース基板に転写し、表面がN面であるIII族窒化物膜を前記ベース基板に形成する工程と、
THVPE法で、前記ベース基板の前記表面がN面であるIII族窒化物膜の上にIII族窒化物膜を形成し、III族窒化物膜の厚膜を作製する工程とを含
み、
前記イオン注入領域は、前記III族窒化物膜に照射されたイオンが前記III族窒化物膜内に侵入し、エネルギーを失って止まった領域であるIII族窒化物基板の製造方法。
【請求項2】
前記表面がIII族元素面であるIII族窒化物膜が、表面がGa面であるGaN膜である請求項1に記載のIII族窒化物基板の製造方法。
【請求項3】
前記ベース基板が多結晶GaN(P-GaN)基板である請求項1又は2に記載のIII族窒化物基板の製造方法。
【請求項4】
前記ベース基板における前記表面がN面であるIII族窒化物膜の上に形成するIII族窒化物膜がGaN膜である請求項1~3のいずれか1項に記載のIII族窒化物基板の製造方法。
【請求項5】
前記ベース基板は、気相成長法でPBN基板上に前記多結晶を形成することにより得られた基板である請求項1~4のいずれか1項に記載のIII族窒化物基板の製造方法。
【請求項6】
前記気相成長法がTHVPE法である請求項5に記載のIII族窒化物基板の製造方法。
【請求項7】
前記III族窒化物膜担持体を作製する工程は、MOCVD法で、前記基板の両面に、前記表面がIII族元素面であるIII族窒化物膜を、お互いに膜厚が略同じになるように形成し、
前記III族窒化物膜担持体を作製する工程により作製された前記III族窒化物膜担持体の曲率半径が10m以上である請求項1~6のいずれか1項に記載のIII族窒化物基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、III族窒化物基板の製造方法及びその製造法により製造されたIII族窒化物基板に関する。
【背景技術】
【0002】
結晶性GaN系窒化物基板、AlN系窒化物基板等のIII族窒化物基板は広いバンドギャップを有し、極短波長の発光性や高耐圧で優れた高周波特性を持つ。このため、III族窒化物基板は、レーザー、ショットキーダイオード、パワーデバイス、高周波デバイス等のデバイスへの応用に期待されている。しかしながら、現状はこれらのIII族窒化物の大口径、高品質で厚膜(長尺)の結晶成長が難しい等から、III族窒化物基板は高価格になり、これら基板の用途拡大や広い普及を妨げている。
【0003】
例えば、GaN基板についてみると、一般的に液体アンモニアもしくはNaフラックス等の液中でGaN結晶を成長させたバルクGaN基板は比較的高品質である。しかし、高温、高圧装置が必要なため、大型化(大口径、厚物)が難しい。これに対し、気相法で結晶成長する有機金属気相成長法(MOCVD法)やハイドライド気相成長法(HVPE法、THVPE法等)を用いてサファイア基板、GaAs基板、SiC基板、SCAM(ScAlMgO4)基板、GaN基板、AlN基板等の単結晶基板上にGaNをヘテロエピタキシャル成長あるいはホモエピタキシャル成長させれば、大型化、すなわち、大型で高品質の基板が原理的には製造可能である。しかし、実際にはGaN結晶と格子定数及び熱膨張係数が同じ、または比較的近いGaN基板やSCAM基板等の単結晶基板は、現状、小型のものしか製造されておらず、大きな単結晶基板がないのでエピタキシャル成膜による大型化が難しい。
【0004】
この打開策として、非特許文献1には、Naフラックス法から得たGaN単結晶を、ハニカム形状に切り出した複数枚のタイル状基板を熱分解グラファイト(PG)製サセプター上に貼り合せて、GaN単結晶を大型化し、その大型化したGaN単結晶を種基板とし、その上にHVPE法等でGaNを成長させ、大型のGaN基板を得ることが記載されている。また、特許文献1には気相法等の公知方法から得たGaN単結晶をハニカム形状に切り出した複数枚のタイル状基板を、熱分解グラファイト(PG)製サセプター上に貼り合せてGaN単結晶を大型化し、その大型化したGaN単結晶を種基板とし、その上にHVPE法等でGaNを成長させ、大型のGaN基板を得ることが記載されている。しかし、これらの方法は、ベース基板ともいえるPGサセプターと、PGサセプターを種基板に貼り合せるアルミナ系接着剤もしくはジルコニア系接着材と、種基板であるタイル状GaN単結晶もしくはSCAM単結晶との間の熱膨張率の差異が大きくなるため、温度変化による膨張・収縮により、種基板の移動や剥がれ、反り等が起き、成膜反応期間中に結晶方位や同一平面性を保持することが難しく、方位の揃った成膜が困難であった。
【0005】
一方、比較的、大口径品が入手可能なSi基板、サファイア基板、SiC基板、GaAs基板、SCAM(ScAlMgO4)基板等の単結晶基板を、ベース基板及び種基板を兼ねて用いることにより、大型のGaN基板を作製することも試みられている。しかし、これらの単結晶基板とGaN結晶との間の格子定数や熱膨張係数の大きな不整合のために、エピタキシャル成膜で得られるGaN基板には各種の欠陥が発生、増加するとともに、反り及び割れが生じやすくなり、問題となっている。
【0006】
その一つの解決策として格子定数や熱膨張係数が同じか、または近いGaNやAlNの多結晶粉体、あるいは特許文献2に記載されているようにムライト組成の粉体等に焼結助剤を添加して焼結させてセラミックスを作製し、得られたセラミックスをベース基板に用い、そのベース基板上にSi基板、サファイア基板、SiC基板、GaAs基板、GaN基板、AlN基板等の単結晶薄膜を転写・貼り合せて、それらを種基板とし、さらにその種基板上にGaNをヘテロエピタキシャル成長することにより、大型のGaN基板を得る試みも提案されている。しかしこの方法では、セラミックス原料中あるいは焼結助剤等に起因する金属不純物がエピタキャルGaN成膜中に拡散・汚染し、高特性の基板を得るのが難しい。
【0007】
そのため、改善策の一つとして、特許文献3ではGaNの熱膨張率に比較的に近いAlNセラミックスをベース基板として用い、さらにその基板全体をSi、SiO2、Si3N4等の無機物の多層膜で包み込んで封止した後、その上にSiO2を積層した後に種基板のSi<111>の薄膜を転写・貼り合せ、しかる後にGaNをエピタキシャル成膜し、ベース基板からの金属不純物拡散を防止する提案がなされている。しかし、多層の無機物で包み封止するには多くの工程を必要とするため、高コストになりやすく経済的でなく、しかも、多層膜による完全な密閉シール性を担保することが極めて難しかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許第6203460号公報
【文献】特許第6331553号公報
【文献】USP 9,997,391 B2
【非特許文献】
【0009】
【文献】Phys. Status Solidi B 254, No.8,1600671 (2017)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、大口径及び高品質のIII族窒化物基板を製造できるIII族窒化物基板の製造方法と、その製造方法により製造されたIII族窒化物基板とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は上記目的を達成するため、下記のIII族窒化物基板の製造方法及びその製造方法により製造されたIII族窒化物基板を提供する。すなわち、
[1]Si<111>基板、サファイア基板、SiC基板、GaAs基板、及びSCAM(ScAlMgO4)基板からなる群から選択される基板の両面に表面がIII族元素面であるIII族窒化物膜を形成してIII族窒化物膜担持体を作製する工程と、前記III族窒化物膜担持体の両面の少なくとも一方の面のIII族窒化物膜にイオン注入を行って前記III族窒化物膜にイオン注入領域を形成する工程と、前記III族窒化物膜担持体の前記イオン注入を行ったIII族窒化物膜を、主成分がIII族窒化物である多結晶のベース基板と貼り合わせて、前記III族窒化物膜担持体を前記ベース基板に接合する工程と、前記ベース基板から前記III族窒化物膜担持体を離間させて、前記III族窒化物膜の前記イオン注入領域を前記ベース基板に転写し、表面がN面であるIII族窒化物膜を前記ベース基板に形成する工程と、THVPE法で、前記ベース基板の前記表面がN面であるIII族窒化物膜の上にIII族窒化物膜を形成し、III族窒化物膜の厚膜を作製する工程とを含むIII族窒化物基板の製造方法。
[2]前記表面がIII族元素面であるIII族窒化物膜が、表面がGa面であるGaN膜である上記[1]に記載のIII族窒化物基板の製造方法。
[3]前記ベース基板が多結晶GaN(P-GaN)基板である上記[1]又は[2]に記載のIII族窒化物基板の製造方法。
[4]前記ベース基板における前記表面がN面であるIII族窒化物膜の上に形成するIII族窒化物膜がGaN膜である上記[1]~[3]のいずれか1つに記載のIII族窒化物基板の製造方法。
[5]前記ベース基板は、気相成長法でPBN基板上に前記多結晶を形成することにより得られた基板である上記[1]~[4]のいずれか1つに記載のIII族窒化物基板の製造方法。
[6]前記気相成長法がTHVPE法である上記[5]に記載のIII族窒化物基板の製造方法。
[7]前記III族窒化物膜担持体を作製する工程は、MOCVD法で、前記基板の両面に、前記表面がIII族元素面であるIII族窒化物膜を、お互いに膜厚が略同じになるように形成し、前記III族窒化物膜担持体を作製する工程により作製された前記III族窒化物膜担持体の曲率半径が10m以上である上記[1]~[6]のいずれか1つに記載のIII族窒化物基板の製造方法。
[8]上記[1]~[7]のいずれか1つに記載のIII族窒化物基板の製造方法により製造されたIII族窒化物基板。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、大口径及び高品質のIII族窒化物基板を製造できるIII族窒化物基板の製造方法と、その製造方法により製造されたIII族窒化物基板とを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、実施例1においてベース基板の作製及び種基板上の結晶の形成に使用した反応装置を説明するための図である。
【
図2】
図2は、実施例1においてベース基板の作製及び種基板上の結晶の形成に使用した反応装置を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[III族窒化物基板の製造方法]
本発明のIII族窒化物基板の製造方法は、Si<111>基板、サファイア基板、SiC基板、GaAs基板、及びSCAM(ScAlMgO4)基板からなる群から選択される基板の両面に表面がIII族元素面であるIII族窒化物膜を形成してIII族窒化物膜担持体を作製する工程(A)と、III族窒化物膜担持体の両面の少なくとも一方の面のIII族窒化物膜にイオン注入を行ってIII族窒化物膜にイオン注入領域を形成する工程(B)と、III族窒化物膜担持体のイオン注入を行ったIII族窒化物膜を、主成分がIII族窒化物である多結晶のベース基板と貼り合わせて、III族窒化物膜担持体をベース基板に接合する工程(C)と、ベース基板からIII族窒化物膜担持体を離間させて、III族窒化物膜のイオン注入領域をベース基板に転写し、表面がN面であるIII族窒化物膜を前記ベース基板に形成する工程(D)と、THVPE法(トリハイドライド気相成長法)で、ベース基板の表面がN面であるIII族窒化物膜の上にIII族窒化物膜を形成する工程(E)とを含む。これにより、大口径及び高品質のIII族窒化物基板を製造できる。以下、本発明のIII族窒化物基板の製造方法の各工程を説明する。
【0015】
工程(A)
工程Aでは、Si<111>基板、サファイア基板、SiC基板、GaAs基板、及びSCAM(ScAlMgO4)基板からなる群から選択される基板の両面に表面がIII族元素面であるIII族窒化物膜を形成してIII族窒化物膜担持体を作製する。この工程では、表面がIII族元素面である大口径のIII族窒化物種結晶を作製する。そして、この工程では、III窒化物種結晶と類似の結晶形で、格子定数がIII窒化物種結晶の格子定数に比較的近く、かつ、大口径の基板が容易に得られる、Si<111>基板、サファイア基板、GaAs基板、SiC基板、及びSCAM(ScAlMgO4)基板からなる群からから選ばれた基板が用いられる。これにより、大口径のIII族窒化物基板を製造できる。この基板の両面に、好ましくは気相成長により、表面がIII族元素面であるIII族窒化物膜を成膜する。
【0016】
表面がIII族元素面であるIII族窒化物膜は、MOCVD(有機金属気相成長法)、HVPE(ハイドライド気相成長法)等の通常の気相成長法で得られる。使用基板は、上記の基板の中から、目的のIII族元素面のIII族窒化物種結晶の格子定数、大口径基板の入手の容易さ、コスト等から適宜、選択される。このようにして選ばれた基板の両面に略同じ膜厚になるようにMOCVD、HVPE等の気相成長法で目的の表面がIII族元素面であるIII族窒化物膜を形成することが好ましい。得られたIII族窒化物膜は、後述の工程(E)で、III族窒化物膜を形成するための種結晶として使用するため、III族窒化物膜の成膜は、気相成長法の中で特に結晶特性がよいIII族窒化物膜が得られるMOCVD法がより好ましい。MOCVD法では、例えば、プロセスガスとしてトリメチルガリウム(TMG)もしくはトリエチルガリウム(TEG)及びアンモニア(NH3)を使用し、キャリアガスとして窒素(N2)、水素(H2)等を使用することができる。
【0017】
また、III族窒化物膜の膜厚は、後述の工程(E)で良好な種結晶が得られやすくするために0.5μm以上であることが好ましい。そして、III族窒化物膜担持体の反りを小さくするために、III族窒化物膜の膜厚は、表面と裏面とで略同じ厚さにすることが好ましい。例えば、基板の一方の面に形成されたIII族窒化物膜の厚さと基板の他方の面に形成されたIII族窒化物膜の厚さとの差が0.5μm以下であることが好ましく、0.3μm以下であることがより好ましく、0.1μm以下であることがさらに好ましく、基板の一方の面に形成されたIII族窒化物膜の厚さと基板の他方の面に形成されたIII族窒化物膜の厚さが同じであることが特に好ましい。なお、基板の両面に表面がIII族元素面であるIII属窒化物膜を成膜するのは、片面のみの成膜では、基板とIII属窒化物膜との間の熱膨張係数の違いから、III族窒化物膜担持体に大きな反りが発生したり、クラックが発生したりする場合があるからである。基板の両面に形成されたIII属窒化物膜の膜厚がお互いに略同じになるように基板の両面にIII属窒化物を成膜することにより、上述のようなことは起こらず、フラットなベース基板へのIII族窒化物膜の一括転写も容易となる。
【0018】
III族窒化物膜担持体の曲率半径は10m以上が好ましく、20m以上がより好ましい。III族窒化物膜担持体の曲率半径が10m以上であると、基板の反りが小さいので、後述の工程(C)及び(D)による薄膜転写を容易に実施することができる。
【0019】
表面がIII族元素面であるIII族窒化物膜には、例えば、表面がAl面であるAlN膜、表面がGa面であるGaN膜、表面がIn面であるInN膜等が挙げられる。本発明のIII族窒化物基板の製造方法は、GaN基板を特に好適に製造できるので、これらの中で、表面がIII族元素面であるIII族窒化物膜は、表面がGa面であるGaN膜であることが好ましい。なお、III族窒化物は、ウルツ鉱構造を有し、通常、c軸方向に非対称であり、極性を有している。そして、c軸方向に成長したIII族窒化物膜のIII族元素側の極性面がIII族元素面であり、窒素側の極性面がN面である。また、GaNの場合は、c軸方向に成長したGaN膜のGa側の極性面がGa面であり、窒素側の極性面がN面である。
【0020】
なお、III族元素面に比べてN面の方がKOH水溶液によるエッチングレートが大きい。このため、III族窒化物膜の表面がIII族元素面であるか、N面であるかは、例えば、KOH水溶液によるエッチングレートの違いから判断することができる。例えば、40℃、2mol/LのKOH水溶液にIII族窒化物膜を45分間浸した場合、Ga面はエッチングされないが、N面はエッチングされる。このエッチングの有無から、GaN膜の表面がGa面であるか、N面であるかを判断することができる。
【0021】
工程(B)
工程(B)では、III族窒化物膜担持体の両面の少なくとも一方の面のIII族窒化物膜にイオン注入を行ってIII族窒化物膜にイオン注入領域を形成する。イオン注入とは、真空中で、注入を目的とする原子もしくは分子をイオン化し、数keVから数MeVに加速して固体中に注入する方法である。注入するイオンには、例えば、水素イオン、アルゴン(Ar)イオン等が挙げられる。イオン注入には、例えば、イオン注入装置が使用される。イオン注入装置は、高エネルギー加速器及び同位体分離器を小型化したものであり、イオン源、加速器、質量分離器、ビーム走査部、注入室等から構成される。なお、イオン注入領域の深さは、イオンの加速エネルギー、照射量等で調整することができる。III族窒化物膜に照射されたイオンはIII族窒化物膜内に侵入し、エネルギーを失って止まる。また、イオン注入を行う前に、III族窒化物膜の表面に極薄いSiO2膜を形成し、イオン注入の均一性を向上させてもよい。SiO2膜の厚さは、例えば、200~1000nmである。
【0022】
工程(C)
工程(C)では、III族窒化物膜担持体のイオン注入を行ったIII族窒化物膜を、主成分がIII族窒化物である多結晶のベース基板と貼り合わせて、III族窒化物膜担持体をベース基板に接合する。これにより、主成分がIII族窒化物である多結晶のベース基板上に、上記III族窒化物膜のイオン注入領域を接合して、一括転写することができる。
【0023】
III族窒化物膜担持体を接合する前に、ベース基板の表面を、CMP等を用いて研磨し、ベース基板の表面を平滑にしてもよい。また、III族窒化物膜担持体を接合する前に、ベース基板の表面にSiO2膜を形成してもよい。この場合も、III族窒化物膜担持体を接合する前に、ベース基板の表面にあるSiO2膜を、CMP等を用いて研磨し、SiO2膜の表面を平滑にしてもよい。ベース基板の表面、またベース基板の表面に形成されたSiO2膜の表面の平滑度が悪いと、III族窒化物膜担持体の全面またはベース基板の全面が接合しないため、転写すべきIII族窒化物膜の一部しか、ベース基板に転写しなかったり、III族窒化物膜がベース基板に転写できなかったりする場合がある。また、III族窒化物膜担持体とベース基板との間の接合をより強固にするために、加熱しながらIII族窒化物膜担持体をベース基板と貼り合わせてもよい。
【0024】
ベース基板の主成分であるIII属窒化物には、例えば、AlN、GaN、InN等が挙げられる。本発明のIII族窒化物基板の製造方法は、GaN基板を特に好適に製造できるので、これらの中で、上記主成分がIII族窒化物である多結晶のベース基板のIII族窒化物はGaNであることが好ましい。また、低価格であるという観点から、上記主成分がIII族窒化物である多結晶のベース基板は多結晶GaN(P-GaN)基板であることがより好ましい。さらに、表面がIII族元素面であるIII族窒化物膜のIII族窒化物と、ベース基板の主成分であるIII属窒化物は、同様のものであることが好ましい。
【0025】
ベース基板は、目的のIII族窒化物膜と熱膨張率が同じか、または略同じであることが好ましい。ベース基板の熱膨張率がIII族窒化物膜の熱膨張率に対して大きく異なると、III族窒化物膜に反り、クラック等が発生する場合がある。したがって、ベース基板の主成分は、目的とするIII族窒化物膜と同様にIII族窒化物であり、低価格であることからベース基板は多結晶の基板であることが好ましい。
【0026】
ベース基板は種々の製造方法で作製可能である。しかし、上記ベース基板は、気相成長法でPBN(熱分解窒化ホウ素)基板上に多結晶を形成することにより得られた基板であることが好ましい。ベース基板を気相成長法で形成することにより、不純物の少ない良質なベース基板を得ることができる。PBN基板は高純度であるので、気相成長法でPBN基板上に多結晶を形成することにより、金属不純物が極めて少ないベース基板を得ることができる。また、PBN基板は劈開性を有するので、気相成長法でPBN基板上に多結晶を形成することにより、多結晶のベース基板をPBN基板から容易に剥離することができる。さらに、PBN基板は劈開性を有するので、多結晶のベース基板とPBN基板との間に大きな応力が発生すると、多結晶のベース基板はPBN基板から剥離するので、歪みの少ない良質なベース基板を得ることができる。
【0027】
III族窒化物膜の成長速度が速く、効率的かつ経済的な気相成長法であることから、上記気相成長法は、THVPE法であることが好ましい。高強度のベース基板を必要とするときは、減圧下でTHVPE法により多結晶を形成することが好ましい。また、ベース基板がそれほど強度を必要としないときは、III族窒化物膜の成長速度が速いことから、常圧下でTHVPE法により多結晶を形成することが好ましい。THVPE法では、例えば、プロセスガスとして三塩化ガリウム(GaCl3)及びアンモニア(NH3)を使用し、キャリアガスとして窒素(N2)を使用することができる。
【0028】
工程(D)
工程(D)では、ベース基板からIII族窒化物膜担持体を離間させて、III族窒化物膜のイオン注入領域をベース基板に転写し、表面がN面であるIII族窒化物膜を前記ベース基板に形成する。なお、III族窒化物膜のベース基板側の面はIII族元素面であるので、ベース基板に転写されたIII族窒化物膜は、それが反転した面、すなわち、N面となる。これにより、表面がN面であるIII族窒化物膜をベース基板上に容易に形成することができる。
【0029】
III族窒化物膜のイオン注入領域がベース基板に転写されるので、ベース基板に転写されたIII族窒化物膜の厚さはIII族窒化物膜のイオン注入領域の深さにより決まる。すなわち、III族窒化物膜のイオン注入領域の深さを大きくすると、ベース基板に転写されたIII族窒化物膜は厚くなり、III族窒化物膜のイオン注入領域の深さを小さくすると、ベース基板に転写されたIII族窒化物膜は薄くなる。ベース基板に転写されたIII族窒化物膜の厚さは50~2000nmであることが好ましい。III族窒化物膜の厚さが50nm以上であると、III族窒化物膜は種結晶としての効果を十分に発揮することができ、後述の工程(E)において、欠陥の少ないIII族窒化物膜を形成することができる。また、III族窒化物膜の厚さが2000nm以下であると、イオン注入装置の出力を抑えて、イオン注入装置の稼働に必要な経費を低減でき、III族窒化物基板の製造コストを低減することができる。
【0030】
III族窒化物膜をベース基板に転写した後のIII族窒化物膜担持体を、III族窒化物膜のベース基板への転写に、再度使用することができる。この場合、III族窒化物膜担持体の反りを低減するという観点から、III族窒化物膜のベース基板への転写に使用した面の反対側のIII族窒化物膜をベース基板に転写すること好ましい。また、III族窒化物膜をベース基板に転写した後のIII族窒化物膜担持体を、III族窒化物膜のベース基板への転写に、複数回再利用する場合、同様の観点から、III族窒化物膜担持体の一方の面に設けられたIII族窒化物膜と、III族窒化物膜担持体の他方の面に設けられたIII族窒化物膜とを交互に使用することが好ましい。
【0031】
工程(E)
工程(E)では、THVPE法で、ベース基板の表面がN面であるIII族窒化物膜の上にIII族窒化物膜を形成し、III族窒化物膜が厚膜になるまでIII族窒化結晶の結晶成長を続け、III族窒化物膜の厚膜を作製する。このIII族窒化物膜の厚膜をIII族窒化物基板として使用できる。これにより、これまで難しかったIII族窒化物単結晶の厚膜化(長尺化)が可能となる。また、THVPE法で、表面がN面であるIII族窒化物膜の上にIII族窒化物膜を形成するので、III族窒化物結晶の結晶成長がさらに速くなり、一度のIII族窒化物膜の転写で厚いIII族窒化物膜を形成できる。このため、本発明のIII族窒化物基板の製造方法は効率的、経済的であり、大変好ましい成膜方法である。
【0032】
さらに、主成分がIII族窒化物である多結晶のベース基板を用いるため、ベース基板の熱膨張率は、表面がN面であるIII族窒化物膜の上に形成するIII族窒化物膜の熱膨張率と近似している。このため、成膜時や成膜後のベース基板の反りや熱応力によるIII族窒化物膜の特性劣化を抑えることができる。これにより、高品質のIII族窒化物膜を得ることができるとともに、これまで難しかったIII族窒化物単結晶の厚膜化(長尺化)がさらに容易になる。加えて、ベース基板と、ベース基板に転写されたIII族窒化物膜及び表面がN面であるIII族窒化物膜の上に形成するIII族窒化物膜とは同類物質であり、金属不純物の問題も発生しづらい。これにより、さらに高品質のIII族窒化物膜を得ることができる。
【0033】
表面がN面であるIII族窒化物膜の上に形成されるIII属窒化物膜のIII族窒化物には、例えば、AlN、GaN、InN等が挙げられる。本発明のIII族窒化物基板の製造方法は、GaN基板を特に好適に製造できるので、これらの中で、表面がN面であるIII族窒化物膜の上に形成するIII族窒化物膜はGaN膜であることが好ましい。また、表面がN面であるIII族窒化物膜の上に形成するIII族窒化物膜のIII族窒化は表面がN面であるIII族窒化物膜のIII族窒化物と同様のものであることが好ましい。
【0034】
本発明はIII族窒化物基板に好適な製造方法とその製造方法から得られた基板を提供するものである。III族窒化物基板のIII族窒化物は、基板の特性向上のために、Al、In、Ga等を添加した2元系のIII属窒化物であってもよいし、3元系等の多元系のIII族窒化物であってもよい。そのようなIII族窒化物には、例えば、AlxGa1-xN、InxGa1-xN、AlxInyGa1-x-yN等が挙げられる。さらに、必要に応じてIII族窒化物基板は、Zn、Cd、Mg、Si等のドーパントを含むことができる。
【0035】
[III族窒化物基板]
本発明のIII族窒化物基板は、本発明のIII族窒化物基板の製造方法により製造されたものである。したがって、本発明のIII族窒化物基板は、大口径であり、かつ高品質である。
【実施例】
【0036】
以下に実施例及び比較例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0037】
[実施例1]
0)ベース基板の準備
図1及び
図2を参照して、実施例1におけるベース基板の作製を説明する。水冷ジャケットと排気口を有する内径1500mm×高さ1800mmの不図示のステンレス製反応装置(内面は予め極薄くジルコニアを溶射し、コーテングした)にアルミナのマット状の断熱材10を入れ、その内側に円筒状にロッド状のSiCヒーターを持つ加熱装置9(内径1000mm×高さ1300mm)とガス供給管5(上記の反応装置と同材質で中心管6;内径φ30mm、2番目の管8;内径φ40mm、最外管7;内径φ50mm)を設けた。一方、φ170mmのPBN(熱分解窒化ホウ素)製の3枚のサセプター3を120°間隔に配置収納するφ520mmのPBNコート・グラファイトのサセプター公転冶具4を準備した。このサセプター面に加熱ヒーターで1250℃に加熱しつつ、同時にサセプター公転冶具4は10rpmで回転してサセプター3を公転させ、その公転歯車の力を用いて3枚の各サセプター3は30rpmで自転させた。サセプターの温度及び回転の安定を確認した後、反応装置内部1に3重管の中心管6からGaCl
3ガスを、最外管7からNH
3ガスを、中心管6と最外管7との間の2番目の管8からN
2ガスを供給して常圧でTHVPE反応を開始した。GaN膜成長として約300μm/hの膜成長速度で4時間反応させて、GaNの多結晶2をサセプター3上に形成した。
【0038】
冷却後、得られたGaNの多結晶をPBNサセプター3からPBNの層間剥離しやすい部分で剥離した。そして、剥離した多結晶を、旋盤でφ155mmの円盤とした。固定砥石を用いてこの円盤を研磨することにより、この円盤のPBN層を完全に除去した。さらに、砥石を用いて、この円盤の両面を円盤の厚さが750μmになるまでさらに研磨した。そして、CMP(化学機械研磨)でGaNの多結晶表面の鏡面仕上げを行い、円盤の表面を平滑にし、GaNの多結晶製ベース基板を準備した。このGaNの多結晶製ベース基板の熱膨張率差を測ったところ略5.2ppm/Kであった。因みにGaN単結晶の熱膨張率は、500℃において、約5.6ppm/Kである。
【0039】
このベース基板上面にプラズマCVD装置でSiO2を0.5μm積層してSiO2膜を形成し、CMPで軽くSiO2膜を研磨し、SiO2膜の厚さを0.4μmとした。
【0040】
1)基板の両面にGaN膜を成膜する工程
φ150mm×t625μmのSi<111>基板の両面に通常のMOCVD法でGaN膜を形成した。Si<111>基板の表面におけるGaN膜の厚さは5.7μmであり、裏面のGaN膜の厚さは5.8μmであった。また、Si<111>基板の表面及び裏面の両方においてGaN膜の表面はGa面であった。また、Si<111>基板の表面のみの成膜終了時の基板の曲率半径は3.5mであった。しかし、Si<111>基板の裏面をさらに成膜した後の基板の曲率半径は31mで、基板の反りはほとんど見られなかった。
【0041】
2)GaN膜にイオン注入する工程
上記Si<111>基板の表面におけるGaN膜(膜厚5.7μm)に0.5μmの深さまで水素イオンを注入した。
【0042】
3)ベース基板にGaN膜を一括転写する工程
事前に準備しておいた上記ベース基板に、このイオン注入したGaN膜を一括転写した。この転写によりベース基板上の転写されたGaN膜の表面はN面であった。目的とするGaN膜の種結晶基板としてこのGaN膜を使用した。なお、残ったSi<111>基板の裏面におけるGaN膜は再利用用とした。
【0043】
4)GaN膜を積層・厚膜化する工程
ベース基板の作製で使用した装置でベース基板と同じ条件で、上記の種結晶基板を用いてTHVPE反応を72時間継続して、種基板の上にGaN単結晶を形成した。得られたGaN単結晶は冷却後も反り及び変形がなく、大型で厚いGaN単結晶が得られた。このGaN単結晶を旋盤でφ150mm×厚さ約15mmに加工した後、ダイヤモンド切断及び両面研磨を実施してφ150mm×厚さ625μmの実施例1のGaN単結晶基板を15枚作製した。
【0044】
5)得られたGaN単結晶基板の評価
得られた15枚のGaN基板のうち、最上層部のGaN基板(最も種基板から離れている位置のGaN基板)では、(002)面のX線ロッキングカーブのFWHM(Full Width at Half Maximum)において面内の任意の3点の平均が35arcsecであり、バラツキが1arcsecであり、この基板は結晶性が極めて良好な基板であった。一方、15枚の基板のうち、最下層部のGaN基板(最も種基板側のGaN基板)では、(002)面のX線ロッキングカーブのFWHMにおいて、面内の任意の3点の平均が80arcsecであり、バラツキが4arcsecであり、最上層部のGaN基板よりも結晶性がやや劣っていたが、この基板も結晶性が良好な基板であった。因みに上記の各基板の表面の化学分析をした結果、最上層部のGaN基板及び最下層部のGaN基板ともGaN基板への金属汚染は検出限界以下であった。
【0045】
さらに積層欠陥を単色Cathode Luminescence像で観察した結果、最上層部のGaN基板には積層欠陥が全く見られなかった。一方、最下層部のGaN基板では極僅かな積層欠陥が見られたが、その程度はMOCVD法によるGaN基板と同程度であった。以上の結果から実施例1のGaN基板結晶は、大口径であり高品質のGaN結晶基板であることが示された。
【0046】
[比較例1]
Si<111>基板の両面におけるGaN膜の成膜の成膜方法をMOCVD法からTHVPE法に変えた。MOCVD法では得られたGaN膜の表面はGa面であったが、THVPE法では得られたGaN面の表面はN面であった。このため、イオン注入後にベース基板へ一括転写でGaN膜の表面はGa面となってしまった。THVPE反応により形成されるGaN膜は、GaN膜のGa面にはミスマッチである。このため、THVPE法によってGaN膜の厚膜(長尺)化を実施するために表面がN面であるGaN膜を得るために、GaN膜を他のSi<111>基板に転写し、Si<111>基板に転写したGaN膜をさらにベース基板に転写しなければならず実用的ではなかった。
【0047】
[実施例2]
0)ベース基板の準備
実施例1の反応を30Torrの減圧下で78時間行い、その後研削、研磨して625μmの厚さの多結晶GaNのベース基板を作成した。
【0048】
1)基板の両面にGaN膜を成膜する工程
φ150mm×t625μmのC面サファイア基板の両面にHVPE法でGaN膜を形成した。C面サファイア基板の表面におけるGaN膜の厚さは8.5μmであり、裏面のGaN膜の厚さは8.4μmであった。また、C面サファイア基板の表面及び裏面の両方においてGaN膜の表面はGa面であった。また、C面サファイア基板の表面のみの成膜終了時の基板の曲率半径は2.5mであった。しかし、C面サファイア基板の裏面をさらに成膜した後の基板の曲率半径は25mで、基板の反りは極めて小さかった。
【0049】
2)GaN膜にイオン注入する工程
上記C面サファイア基板の表面におけるGaN膜(膜厚8.5μm)に0.6μmの深さまで水素イオンを注入した。
【0050】
3)ベース基板にGaN膜を一括転写する工程
事前に準備しておいた上記ベース基板に、このイオン注入したGaN膜を一括転写した。この転写によりベース基板上の転写されたGaN膜の表面はN面であった。目的とするGaN膜の種結晶基板としてこのGaN膜を使用した。なお、残ったC面サファイア基板の裏面におけるGaN膜は再利用用とした。
【0051】
4)GaN膜を積層・厚膜化する工程
ベース基板の作製で使用した装置でベース基板と同じ条件で、上記の種結晶基板を用いてTHVPE反応を72時間継続して、種基板の上にGaN単結晶を形成した。得られたGaN単結晶は冷却後も反り及び変形がなく、大型で厚いGaN単結晶が得られた。このGaN単結晶を旋盤でφ150mm×厚さ約15mmに加工した後、ダイヤモンド切断及び両面研磨を実施してφ150mm×厚さ625μmの実施例1のGaN単結晶基板を15枚作製した。
【0052】
5)得られたGaN単結晶基板の評価
得られた15枚のGaN基板のうち、最上層部のGaN基板(最も種基板から離れている位置のGaN基板)では、(002)面のX線ロッキングカーブのFWHM(Full Width at Half Maximum)において面内の任意の3点の平均が45arcsecであり、バラツキが2arcsecであり、この基板は結晶性が極めて良好な基板であった。一方、15枚の基板のうち、最下層部のGaN基板(最も種基板側のGaN基板)では、(002)面のX線ロッキングカーブのFWHMにおいて、面内の任意の3点の平均が95arcsecであり、バラツキが6arcsecであり、最上層部のGaN基板よりも結晶性がやや劣っていたが、この基板も結晶性が良好な基板であった。因みに上記の各基板の表面の化学分析をした結果、最上層部のGaN基板及び最下層部のGaN基板ともGaN基板への金属汚染は検出限界以下であった。
【0053】
さらに積層欠陥を単色Cathode Luminescence像で観察した結果、最上層部のGaN基板には積層欠陥が全く見られなかった。一方、最下層部のGaN基板では極僅かな積層欠陥が見られたが、その程度はMOCVD法のGaN基板と同程度であった。以上の結果から実施例2のGaN基板結晶は、大口径であり高品質のGaN結晶基板が得られたことを示した。
【符号の説明】
【0054】
1 反応装置内部
2 GaNの多結晶
3 サセプター
4 サセプター公転冶具
5 ガス供給管
6 中心管
7 最外管
8 2番目の管
9 加熱装置
10 断熱材