(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-07
(45)【発行日】2023-12-15
(54)【発明の名称】加工装置
(51)【国際特許分類】
B23Q 11/00 20060101AFI20231208BHJP
B24B 55/06 20060101ALI20231208BHJP
B24B 27/06 20060101ALN20231208BHJP
【FI】
B23Q11/00 Z
B24B55/06
B24B27/06 M
(21)【出願番号】P 2020025708
(22)【出願日】2020-02-18
【審査請求日】2022-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 良信
【審査官】山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-301078(JP,A)
【文献】特開2017-198309(JP,A)
【文献】特開2006-114884(JP,A)
【文献】特開2015-168044(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 11/00;
B24B 27/06,55/00,55/06,55/12;
B28D 1/24;
H01L 21/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部にグリスを用いる
とともに、圧縮エアにより駆動する空圧機器を有
して、ウェーハである被加工物を加工する加工装置であって、
該空圧機器に圧縮エア供給源から圧縮エアを供給する供給路と、該供給路に設置されるバルブと、該バルブを収容する収容ボックスと、を有し、
該バルブは、
該空圧機器に圧縮エアを供給する給気部
として機能するシリンダポートと、該空圧機器からの該グリスを含む排気を受入れる排気受入部
として機能するシリンダポートとを適宜逆転させる構成を有し
て、該排気受入部として機能するシリンダポートから受入れた該グリスを含む排気を該収容ボックス内に排出し、
該収容ボックスは、
該収容ボックスの内部の、該グリスを含む排気を含む雰囲気を、該加工装置
の加工中の該被加工物を覆う外装カバーの外部へ、またはフィルターを介して収容ボックスの外側へ排出する排気ユニットを備えることを特徴とする加工装置。
【請求項2】
該空圧機器は、エアアクチュエータまたはエアオペレイトバルブである請求項1に記載の加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空圧機器を有する加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
切削装置や研削装置、レーザー加工装置など各種被加工物を加工したり処理(洗浄、紫外線照射)したりする加工装置において、内部の駆動源としてエアシリンダやロータリエアアクチュエータなど、エアを用いるアクチュエータやエアオペレイトバルブなどの空圧機器が使われている(例えば、特許文献1、特許文献2及び特許文献3参照)。これらの空圧機器は、軽く安価であり動力源もエアであるためにクリーンなため良く用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-064490号公報
【文献】特開2011-159823号公報
【文献】特開2001-341040号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、これらの空圧機器では、エアを供給した分排気も発生し、これらはバルブに戻され、バルブの外側の装置内に排出される、空圧機器の内部には、グリスなど潤滑油が使用されており、エアは潤滑油に触れている場合もあり、バルブに戻され装置内に排出されたエアはグリスの成分を含む恐れがある。グリスの成分が装置内に漂うと、被加工物に付着する恐れがあり、半導体デバイスなど精密部品にとっては、不良発生の原因になる。
【0005】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、装置内にグリスが排出されることを抑制することができる加工装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の加工装置は、内部にグリスを用いるとともに、圧縮エアにより駆動する空圧機器を有して、ウェーハである被加工物を加工する加工装置であって、該空圧機器に圧縮エア供給源から圧縮エアを供給する供給路と、該供給路に設置されるバルブと、該バルブを収容する収容ボックスと、を有し、該バルブは、該空圧機器に圧縮エアを供給する給気部として機能するシリンダポートと、該空圧機器からの該グリスを含む排気を受入れる排気受入部として機能するシリンダポートとを適宜逆転させる構成を有して、該排気受入部として機能するシリンダポートから受入れた該グリスを含む排気を該収容ボックス内に排出し、該収容ボックスは、該収容ボックスの内部の、該グリスを含む排気を含む雰囲気を、該加工装置の加工中の該被加工物を覆う外装カバーの外部へ、またはフィルターを介して収容ボックスの外側へ排出する排気ユニットを備えることを特徴とする。
【0007】
前記加工装置において、該空圧機器は、エアアクチュエータまたはエアオペレイトバルブでも良い。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、装置内にグリスが排出されることを抑制することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る加工装置の構成例を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示された加工装置の収容ボックス及びバルブを模式的に示す図である。
【
図3】
図3は、
図2に示された収容ボックス、バルブ、エアアクチュエータを模式的に示す図である。
【
図4】
図4は、
図3に示されたエアアクチュエータのロッドが伸張した状態を模式的に示す図である。
【
図5】
図5は、実施形態2に係る加工装置の収容ボックス及びバルブを模式的に示す図である。
【
図6】
図6は、実施形態1及び実施形態2の変形例に係る加工装置の空圧機器であるエアオペレイトバルブの一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0011】
〔実施形態1〕
本発明の実施形態1に係る加工装置を図面に基いて説明する。
図1は、実施形態1に係る加工装置の構成例を示す斜視図である。
図2は、
図1に示された加工装置の収容ボックス及びバルブを模式的に示す図である。
図3は、
図2に示された収容ボックス、バルブ、エアアクチュエータを模式的に示す図である。
図4は、
図3に示されたエアアクチュエータのロッドが伸張した状態を模式的に示す図である。
【0012】
(切削装置)
実施形態1に係る
図1に示す加工装置1は、被加工物200を切削(加工)する切削装置である。実施形態1では、被加工物200は、シリコン、サファイア、ガリウムなどを母材とする円板状の半導体ウェーハや光デバイスウェーハ等のウェーハである。被加工物200は、表面201に格子状に形成された複数の分割予定ライン202によって格子状に区画された領域にデバイス203が形成されている。
【0013】
また、本発明の被加工物200は、中央部が薄化され、外周部に厚肉部が形成された所謂TAIKO(登録商標)ウェーハでもよく、ウェーハの他に、樹脂により封止されたデバイスを複数有した矩形状のパッケージ基板、セラミックスで構成されたセラミックス基板、フェライト基板、又はニッケル及び鉄の少なくとも一方を含む基板、ガラス基板等でも良い。実施形態1において、被加工物200は、裏面204が外周縁に環状フレーム205が装着された粘着テープ206に貼着されて、環状フレーム205に支持されている。
【0014】
図1に示された加工装置1は、被加工物200をチャックテーブル10で保持し分割予定ライン202に沿って切削ブレード21で切削する切削装置である。加工装置1は、
図1に示すように、被加工物200を保持面11で吸引保持するチャックテーブル10と、チャックテーブル10に保持された被加工物200を切削ブレード21で切削する切削ユニット20と、チャックテーブル10に保持された被加工物200を撮影する撮像ユニット30と、制御ユニット100とを備える。
【0015】
また、加工装置1は、
図1に示すように、チャックテーブル10と切削ユニット20とを相対的に移動させる移動ユニット40を備える。移動ユニット40は、チャックテーブル10を水平方向及び装置本体2の短手方向と平行なX軸方向に加工送りするX軸移動ユニット41と、切削ユニット20を水平方向及び装置本体2の長手方向と平行でかつX軸方向に直交するY軸方向に割り出し送りするY軸移動ユニット42と、切削ユニット20をX軸方向とY軸方向との双方と直交する鉛直方向に平行なZ軸方向に切り込み送りするZ軸移動ユニット43と、チャックテーブル10をZ軸方向と平行な軸心回りに回転するとともにX軸移動ユニット41によりチャックテーブル10とともにX軸方向に加工送りされる回転移動ユニット44とを備える。加工装置1は、
図1に示すように、切削ユニット20を2つ備えた、即ち、2スピンドルのダイサ、いわゆるフェイシングデュアルタイプの切削装置である。
【0016】
X軸移動ユニット41は、チャックテーブル10を回転移動ユニット44とともに加工送り方向であるX軸方向に移動させることで、チャックテーブル10と切削ユニット20とを相対的にX軸方向に沿って加工送りするものである。X軸移動ユニット41は、チャックテーブル10を被加工物200が搬入出される搬入出領域301と、チャックテーブル10に保持された被加工物200が切削ユニット20により切削加工される加工領域302とに亘ってX軸方向に移動させる。
【0017】
Y軸移動ユニット42は、切削ユニット20を割り出し送り方向であるY軸方向に移動させることで、チャックテーブル10と切削ユニット20とを相対的にY軸方向に沿って割り出し送りするものである。Z軸移動ユニット43は、切削ユニット20を切り込み送り方向であるZ軸方向に移動させることで、チャックテーブル10と切削ユニット20とを相対的にZ軸方向に沿って切り込み送りするものである。
【0018】
X軸移動ユニット41、Y軸移動ユニット42及びZ軸移動ユニット43は、軸心回りに回転自在に設けられた周知のボールねじ、ボールねじを軸心回りに回転させる周知のモータ及びチャックテーブル10又は切削ユニット20をX軸方向、Y軸方向又はZ軸方向に移動自在に支持する周知のガイドレールを備える。
【0019】
チャックテーブル10は、円盤形状であり、被加工物200を保持する保持面11がポーラスセラミック等から形成されている。また、チャックテーブル10は、X軸移動ユニット41により搬入出領域301と加工領域302とに亘ってX軸方向に移動自在に設けられ、かつ回転移動ユニット44によりZ軸方向と平行な軸心回りに回転自在に設けられている。チャックテーブル10は、図示しない真空吸引源と接続され、真空吸引源により吸引されることで、保持面11に載置された被加工物200を吸引、保持する。実施形態1では、チャックテーブル10は、粘着テープ206を介して被加工物200の裏面204側を吸引、保持する。
【0020】
また、チャックテーブル10の周囲には、
図1に示すように、環状フレーム205をクランプするクランプ部12が複数設けられている。クランプ部12は、
図2に示す圧縮エア供給源から供給される圧縮エアにより駆動する空圧機器であるロータリエアアクチュエータ13により環状フレーム205をクランプする状態と、環状フレーム205のクランプを解除する状態とに亘って回転される。
【0021】
切削ユニット20は、チャックテーブル10に保持された被加工物200を切削する切削ブレード21を着脱自在に装着した加工ユニットである。切削ユニット20は、それぞれ、チャックテーブル10に保持された被加工物200に対して、Y軸移動ユニット42によりY軸方向に移動自在に設けられ、かつ、Z軸移動ユニット43によりZ軸方向に移動自在に設けられている。
【0022】
切削ユニット20は、
図1に示すように、Y軸移動ユニット42、Z軸移動ユニット43などを介して、装置本体2から立設した門型の支持フレーム3の柱部に設けられている。切削ユニット20は、Y軸移動ユニット42及びZ軸移動ユニット43により、チャックテーブル10の保持面11の任意の位置に切削ブレード21を位置付け可能となっている。
【0023】
切削ユニット20は、
図1に示すように、切削ブレード21と、Y軸移動ユニット42及びZ軸移動ユニット43によりY軸方向及びZ軸方向に移動自在に設けられたスピンドルハウジング22と、スピンドルハウジング22に軸心回りに回転可能に設けられかつ図示しないモータにより回転されるとともに先端に切削ブレード21が装着されるスピンドル23と、スピンドルハウジング22の先端面に固定されたブレードカバー24と、切削ブレード21に切削水を供給するノズル25とを備える。
【0024】
切削ブレード21は、略リング形状を有する極薄の切削砥石である。実施形態1において、切削ブレード21は、
図2に示すように、円環状の円形基台211と、円形基台211の外周縁に配設されて被加工物200を切削する円環状の切り刃212とを備える所謂ハブブレードである。切り刃212は、ダイヤモンドやCBN(Cubic Boron Nitride)等の砥粒と、金属や樹脂等のボンド材(結合材)とからなり所定厚みに形成されている。なお、本発明では、切削ブレード21は、切り刃212のみで構成された所謂ワッシャーブレードでもよい。
【0025】
スピンドル23は、モータにより切削ブレード21を軸心回りに回転させる。ブレードカバー24は、切削ブレード21を覆うものである。ブレードカバー24は、
図2に示すように、スピンドルハウジング22の先端面に固定されたカバー本体241と、切削ブレード21の上側を覆う上方カバー242と、カバー本体241に固定されかつ切削ブレード21の搬入出領域301側の前側を覆う前側カバー243と、上方カバー242に固定されかつ切削ブレード21の加工領域302側の後側を覆う後側カバー244とを備える。
【0026】
ノズル25は、前側カバー243に設けられたシャワーノズル251と、後側カバー244の下端に取り付けられた一対のクーラーノズル252とを備える。シャワーノズル251は、切削ブレード21の切り刃212の刃先とX軸方向に対面し、切削中に切削ブレード21の切り刃212の刃先に切削水を供給する。クーラーノズル252は、X軸方向と平行に延在し、互いにY軸方向に間隔をあけて配置されている。クーラーノズル252は、互いの間に切削ブレード21の切り刃212の下端を位置づけており、切削中に切削ブレード21の切り刃212の下端に切削水を供給する。
【0027】
また、実施形態1において、ブレードカバー24は、カバー本体241に対して後側カバー244をX軸方向に移動させる空圧機器であるエアアクチュエータ50を備える。エアアクチュエータ50は、
図3及び
図4に示すように、圧縮エア供給源90からレギュレータ91を介して圧縮エアが供給されるシリンダ51と、シリンダ51内を第1室511と第2室512とに仕切るピストン52と、ピストン52に連結したロッド53とを備える。シリンダ51は、カバー本体241に取り付けられている。ロッド53は、X軸方向と平行に配置され、先端が後側カバー244に取り付けられている。
【0028】
実施形態1において、エアアクチュエータ50は、
図3に示すように、第1室511内に圧縮エアが供給され、第2室512が大気解放されると、ロッド53が縮小して、
図2に点線で示すカバー本体241に近接する切削位置に後側カバー244を位置付ける。なお、切削位置は、切削ユニット20が被加工物200を切削する際に、後側カバー244が位置付けられる位置である。エアアクチュエータ50は、
図4に示すように、第2室512内に圧縮エアが供給され、第1室511が大気解放されると、ロッド53が伸張して、
図2に実線で示すカバー本体241から離間するブレード着脱位置に後側カバー244を位置付ける。なお、ブレード着脱位置は、切削ユニット20のスピンドル23に切削ブレード21を着脱する際に、後側カバー244が位置付けられる位置である。
【0029】
なお、切削ユニット20の切削ブレード21及びスピンドル23の軸心は、Y軸方向と平行である。
【0030】
撮像ユニット30は、切削ユニット20と一体的に移動するように、切削ユニット20に固定されている。撮像ユニット30は、チャックテーブル10に保持された切削前の被加工物200の分割すべき領域を撮影する撮像素子を備えている。撮像素子は、例えば、CCD(Charge-Coupled Device)撮像素子又はCMOS(Complementary MOS)撮像素子である。撮像ユニット30は、チャックテーブル10に保持された被加工物200を撮影して、被加工物200と切削ブレード21との位置合わせを行なうアライメントを遂行するため等の画像を得、得た画像を制御ユニット100に出力する。
【0031】
また、加工装置1は、チャックテーブル10のX軸方向の位置を検出するため図示しないX軸方向位置検出ユニットと、切削ユニット20のY軸方向の位置を検出するための図示しないY軸方向位置検出ユニットと、切削ユニット20のZ軸方向の位置を検出するためのZ軸方向位置検出ユニットとを備える。X軸方向位置検出ユニット及びY軸方向位置検出ユニットは、X軸方向、又はY軸方向と平行なリニアスケールと、読み取りヘッドとにより構成することができる。Z軸方向位置検出ユニットは、モータのパルスで切削ユニット20のZ軸方向の位置を検出する。X軸方向位置検出ユニット、Y軸方向位置検出ユニット及びZ軸方向位置検出ユニットは、チャックテーブル10のX軸方向、切削ユニット20のY軸方向又はZ軸方向の位置を制御ユニット100に出力する。なお、実施形態1では、加工装置1の各構成要素のX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向の位置は、予め定められた図示しない基準位置を基準とした位置で定められる。
【0032】
また、加工装置1は、切削前後の被加工物200を収容するカセット61が載置されかつカセット61をZ軸方向に移動させるカセットエレベータ60と、切削後の被加工物200を洗浄する洗浄ユニット70と、カセット61に被加工物200を出し入れするとともに被加工物200を搬送する搬送ユニット80を備える。
【0033】
洗浄ユニット70は、切削後の被加工物200を吸引保持しZ軸方向と軸心回りに回転するスピンナーテーブル71と、スピンナーテーブル71に吸引保持した被加工物200に洗浄水を供給する洗浄水供給ノズル72と、スピンナーテーブル71をZ軸方向に昇降させる図示しない昇降用エアアクチュエータとを備える。
【0034】
搬送ユニット80は、被加工物200を支持した環状フレーム205を把持する把持ユニット81と、把持ユニット81をZ軸方向に移動させる空圧機器である昇降用エアアクチュエータ82と、把持ユニット81を昇降用エアアクチュエータ82とともにY軸方向に移動させる空圧機器である水平移動用エアアクチュエータ83とを備える。
【0035】
洗浄ユニット70の昇降用エアアクチュエータ、エアアクチュエータ82,83は、エアアクチュエータ50と構成が同等である。
【0036】
前述した空圧機器であるロータリエアアクチュエータ13、エアアクチュエータ50、洗浄ユニット70の昇降用エアアクチュエータ、エアアクチュエータ82,83は、内部に潤滑油としてグリスを用いるものである。これらのロータリエアアクチュエータ13、エアアクチュエータ50、洗浄ユニット70の昇降用エアアクチュエータ、エアアクチュエータ82,83は、構成が同等である。
【0037】
エアアクチュエータ50、洗浄ユニット70の昇降用エアアクチュエータ、エアアクチュエータ82,83は、ピストン52とシリンダ51との間の摩擦を抑制するためにグリスを内部に用いている。このために、エアアクチュエータ50、洗浄ユニット70の昇降用エアアクチュエータ、エアアクチュエータ82,83は、シリンダ51即ち第1室511及び第2室512内にグリスを含む雰囲気が存在することとなる。
【0038】
また、加工装置1は、
図1に示すように、加工領域302の外側を囲って切削水の拡散を抑制する加工室壁6と、装置本体2上をカセットエレベータ60及びカセットエレベータ60上に設置されたカセット61を除いて覆う外装カバー7とを備えている。実施形態1において、加工室壁6は、加工領域302に位置付けられたチャックテーブル10及び切削ユニット20を収容する加工室303を加工装置1内に形成する。外装カバー7は、加工室壁6即ちチャックテーブル10、切削ユニット20、洗浄ユニット70及び搬送ユニット80を収容している。
【0039】
また、加工装置1は、
図2、
図3及び
図4に示すように、ロータリエアアクチュエータ13及びエアアクチュエータ50,82,83に圧縮エア供給源90から圧縮エアを供給する供給路92と、供給路92に設置されるバルブ93と、バルブ93を収容する収容ボックス94とを有する。
【0040】
供給路92は、
図2に示すように、圧縮エア供給源90と接続しかつ圧縮エアの圧力を調整するレギュレータ91が設けられた幹供給路921と、幹供給路921から分岐して空圧機器であるロータリエアアクチュエータ13及びエアアクチュエータ50,82,83と1対1で対応して、対応したロータリエアアクチュエータ13及びエアアクチュエータ50,82,83に接続した枝供給路922とを有する。
【0041】
枝供給路922と、空圧機器であるロータリエアアクチュエータ13及びエアアクチュエータ50,82,83と、バルブ93とは1対1で対応している。このために、加工装置1は、枝供給路922とロータリエアアクチュエータ13及びエアアクチュエータ50,82,83と、バルブ93とを同数、実施形態1では複数有している。以下、ロータリエアアクチュエータ13及びエアアクチュエータ50,82,83と、これらと対応する枝供給路922及びバルブ93の構成は、互いに等しいので、エアアクチュエータ50と、エアアクチュエータ50と対応する枝供給路922及びバルブ93を代表して説明する。
【0042】
枝供給路922は、バルブ93の供給ポート931に接続して、供給ポート931に圧縮エアを供給する。また、供給路92は、エアアクチュエータ50の第1室511とバルブ93とに接続した第1室供給路923と、エアアクチュエータ50の第2室512とバルブ93とに接続した第2室供給路924とを備える。第1室供給路923と第2室供給路924とは、互いに一組となって、バルブ93とロータリエアアクチュエータ13及びエアアクチュエータ50,82,83と1対1で対応している。
【0043】
第1室供給路923は、エアアクチュエータ50の第1室511に圧縮エア供給源90からの圧縮エアを供給可能であり、エアアクチュエータ50の第1室511をバルブ93を介して大気解放することが可能である。第2室供給路924は、エアアクチュエータ50の第2室512に圧縮エア供給源90からの圧縮エアを供給可能であり、エアアクチュエータ50の第2室512をバルブ93を介して大気解放することが可能である。なお、本明細書でいう第1室511及び第2室512を大気解放するとは、第1室511及び第2室512を収容ボックス94の内部と連通させることをいう。
【0044】
バルブ93は、エアアクチュエータ50の第1室511と第2室512とのうち一方に圧縮エアを供給して他方を大気解放して、エアアクチュエータ50のロッド53を伸縮するもの、即ち駆動源である圧縮エアをエアアクチュエータ50に供給してエアアクチュエータ50を駆動するものである。バルブ93は、供給ポート931と、排気ポート932と、一対のシリンダポート933,934とを備えた所謂4方向電磁弁(方向切替弁ともいう)である。実施形態1では、供給ポート931は、1つ設けられかつ供給路92の枝供給路922に接続し、排気ポート932は、1つ設けられている。
【0045】
一対のシリンダポート933,934のうち一方のシリンダポート933は、第1室供給路923及び第1室511内と連通している。他方のシリンダポート934は、第2室供給路924及び第2室512内と連通している。こうして、バルブ93は、供給ポート931が供給路92の枝供給路922に接続し、一方のシリンダポート933が第1室供給路923と連通し、他方のシリンダポート934が第2室供給路924と連通することで、供給路92に設置されている。
【0046】
また、バルブ93は、図示しない電磁石と、電磁石への電流を供給することと電磁石への電流の供給を停止することとが切り替えられることで、
図3に示す一方のシリンダポート933が供給ポート931と連通しかつ他方のシリンダポート934が排気ポート932と連通する状態と、
図4に示す一方のシリンダポート933が排気ポート932と連通しかつ他方のシリンダポート934が供給ポート931と連通する状態とを切り替える図示しない弁体とを備える。
【0047】
バルブ93は、
図3に示す一方のシリンダポート933が供給ポート931と連通し他方のシリンダポート934が排気ポート932と連通する状態では、一方のシリンダポート933がエアアクチュエータ50の第1室511内に圧縮エア供給源90からの圧縮エアを供給し、他方のシリンダポート934がエアアクチュエータ50の第2室512からのグリスを含む排気を受入れて排気ポート932を介して収容ボックス94の内部に導いて、エアアクチュエータ50のロッド53を縮小する。
図3に示す状態では、一方のシリンダポート933は、エアアクチュエータ50の第1室511内に圧縮エア供給源90からの圧縮エアを供給する給気部として機能し、他方のシリンダポート934は、エアアクチュエータ50の第2室512からのグリスを含む排気を受入れる排気受入部として機能する。
【0048】
バルブ93は、
図4に示す一方のシリンダポート933が排気ポート932と連通しかつ他方のシリンダポート934が供給ポート931と連通する状態では、一方のシリンダポート933がエアアクチュエータ50の第1室511からのグリスを含む排気を受入れて排気ポート932を介して収容ボックス94の内部に導き、他方のシリンダポート934がエアアクチュエータ50の第2室512内に圧縮エア供給源90からの圧縮エアを供給して、エアアクチュエータ50のロッド53を伸張する。
図4に示す状態では、一方のシリンダポート933は、エアアクチュエータ50の第1室511からのグリスを含む排気を受入れる排気受入部として機能し、他方のシリンダポート934は、エアアクチュエータ50の第2室512内に圧縮エア供給源90からの圧縮エアを供給する給気部として機能する。
【0049】
こうして、実施形態1において、バルブ93は、前述した弁体を備えることで、シリンダポート933,934が、エアアクチュエータ50に圧縮エア供給源90からの圧縮エアを供給する給気部としての機能を発揮する状態と、エアアクチュエータ50からのグリスを含む排気を受入れる排気受入部としての機能を発揮する状態とを適宜逆転させる構成を有している。
【0050】
収容ボックス94は、複数のバルブ93を収容する内部が密閉された箱状のボックス本体941と、収容ボックス94のボックス本体941の内部のバルブ93から供給されたグリスを含む排気を含む雰囲気を加工装置1の外部へ排出する排気ユニット942とを備える。排気ユニット942は、一端がボックス本体941に接続してボックス本体941内に連通しているとともに他端が外装カバー7を貫通して加工装置1の外装カバー7の外側に連通した排気ダクト943と、排気ダクト943内の気体を加工装置1の外装カバー7の外側に排出する図示しない排気用のファンを備える。
【0051】
また、実施形態1では、排気ダクト943は、
図1に示すように、一端が加工室壁6に連なって加工室303内と連通した加工室用排気ダクト304の他端が接続している。排気ユニット942は、収容ボックス94のボックス本体941内のグリスを含む排気を含む雰囲気を加工装置1の外装カバー7の外側へ排出するとともに、加工室壁6内即ち加工室303内の雰囲気を加工装置1の外装カバー7の外側へ排出する。
【0052】
制御ユニット100は、加工装置1の上述した各ユニットをそれぞれ制御して、被加工物200に対する加工動作を加工装置1に実施させるものである。なお、制御ユニット100は、CPU(central processing unit)のようなマイクロプロセッサを有する演算処理装置と、ROM(read only memory)又はRAM(random access memory)のようなメモリを有する記憶装置と、入出力インターフェース装置とを有するコンピュータである。制御ユニット100の演算処理装置は、記憶装置に記憶されているコンピュータプログラムに従って演算処理装置が演算処理を実施して、加工装置1を制御するための制御信号を入出力インターフェース装置を介して加工装置1の上述した構成要素に出力する。
【0053】
また、制御ユニット100は、加工動作の状態や画像などを表示する液晶表示装置などにより構成される表示ユニット102と、オペレータが加工内容情報などを登録する際に用いる入力ユニットとに接続されている。入力ユニットは、表示ユニット102に設けられたタッチパネルと、キーボード等の外部入力装置とのうち少なくとも一つにより構成される。
【0054】
以上説明したように、実施形態1に係る加工装置1は、収容ボックス94のボックス本体941が複数のバルブ93を収容するので、バルブ93がエアアクチュエータ50からのグリスを含む排気を排気ポート932からボックス本体941内に排気する。加工装置1は、収容ボックス94がボックス本体941の内部のグリスを含む排気を含む雰囲気を加工装置1の外装カバー7の外側へ排出する排気ユニット942を備えている。このように、加工装置1は、バルブ93を収容ボックス94のボックス本体941内に収容し、収容ボックス94がボックス本体941の内部の雰囲気を加工装置1の外装カバー7の外側へ排出する排気ユニット942を備えているので、加工装置1の内部である外装カバー7の内側にエアアクチュエータ50からの排気戻りのエアアクチュエータ50のグリスを含む雰囲気が排出されることを抑制できる。その結果、加工装置1は、外装カバー7の内側にグリスが排出されることを抑制することができるという効果を奏する。
【0055】
〔実施形態2〕
本発明の実施形態2に係る加工装置を図面に基いて説明する。
図5は、実施形態2に係る加工装置の収容ボックス及びバルブを模式的に示す図である。なお、
図5は、実施形態1と同一部分に同一符号を付して説明を省略する。
【0056】
実施形態2に係る加工装置1は、
図5に示すように、収容ボックス94の排気ユニット942-2が、排気ダクト943を備えずに、収容ボックス94のボックス本体941の外壁を貫通した孔944と、孔944を塞ぐフィルター945とを備え、加工室用排気ダクト304の他端が外装カバー7を貫通し加工室用排気ダクト304内の気体を加工装置1の外装カバー7の外側に排出する図示しない排気用のファンを備えること以外、実施形態1と構成が同じである。
【0057】
フィルター945は、雰囲気内のグリスの通過を規制し、期待が通過することを許容するものである。実施形態2に係る加工装置1は、収容ボックス94の排気ユニット942-2が収容ボックス94のボックス本体941の内部のグリスを含む排気を含む雰囲気をフィルター945を介して外装カバー7の内側でかつ収容ボックス94のボックス本体941の外側へ排出する。
【0058】
実施形態2に係る加工装置1は、収容ボックス94のボックス本体941が複数のバルブ93を収容するので、バルブ93がエアアクチュエータ50からのグリスを含む排気を排気ポート932からボックス本体941内に排気する。加工装置1は、収容ボックス94がボックス本体941の内部のグリスを含む排気を含む雰囲気をグリスの通過を規制するフィルター945を介して収容ボックス94のボックス本体941の外側へ排出する排気ユニット942-2を備えている。このように、実施形態2に係る加工装置1は、バルブ93を収容ボックス94のボックス本体941内に収容し、収容ボックス94がボックス本体941の内部の雰囲気をフィルター945を介して収容ボックス94のボックス本体941の外側へ排出する排気ユニット942-2を備えているので、加工装置1の内部である外装カバー7の内側にエアアクチュエータ50からの排気戻りのエアアクチュエータ50のグリスを含む雰囲気が排出されることを抑制できる。その結果、加工装置1は、外装カバー7の内側にグリスが排出されることを抑制することができるという効果を奏する。
【0059】
なお、本発明は、上記実施形態及び変形例に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。例えば、実施形態1及び実施形態2に係る加工装置1は、空圧機器として、
図6に示すエアオペレイトバルブ110を備え、バルブ93は、駆動源である圧縮エアをエアオペレイトバルブ110に供給してエアオペレイトバルブ110を駆動しても良い。なお、
図6は、実施形態1及び実施形態2の変形例に係る加工装置の空圧機器であるエアオペレイトバルブの一例を示す断面図である。
図6は、実施形態1と同一部分に同一符号を付して説明を省略する。
【0060】
なお、
図6に示すエアオペレイトバルブ110は、液体と気体との少なくとも一方で構成される流体が供給される供給ポート111と流体を各種の機器に供給する排出ポート112と設けられた弁箱113と、弁箱113内に設けられ供給ポート111又は排出ポート112と連通する2つの弁座114と、弁座114を開閉する2つの弁体115とを備える。弁箱113は、内側の空間が供給ポート931と連通可能な第1室116と、排出ポート112と連通可能な第2室117とに区画され、各室116,117に弁体115に連結された板状部材118を収容している。
【0061】
また、弁箱113は、第1室116内の板状部材118を、第1室116内の板状部材118に連結された弁体115が弁座114を閉じる方向に付勢するばね119を第1室116内に収容し、第2室117内の板状部材118を、第2室117内の板状部材118に連結された弁体115が弁座114を開く方向に付勢するばね120を第2室117内に収容している。
【0062】
図6に示すエアオペレイトバルブ110は、バルブ93から第1室116に圧縮エア供給源90からの圧縮エアが第1室供給路923を通して供給され、第2室117が第2室供給路924及びバルブ93により大気解放されることで、2つの弁体115がそれぞれ弁座114を開いて、供給ポート111から供給された流体を排出ポート112から排出する。
図6に示すエアオペレイトバルブ110は、第1室116が第1室供給路923及びバルブ93により大気解放され、バルブ93から第2室117に圧縮エア供給源90からの圧縮エアが第2室供給路924を通して供給されることで、2つの弁体115がそれぞれ弁座114を閉じて、供給ポート111から排出ポート112への流体の流れを遮断する。このように、エアオペレイトバルブ110は、バルブ93から圧縮エアが供給されて、駆動される。
【0063】
また、前述した実施形態1では、加工装置1は、被加工物200を切削する切削装置であったが、本発明では、切削装置に限定されず、例えば、被加工物200を研削する研削装置、被加工物200を研磨する研磨装置、又は被加工物200をレーザー加工するレーザー加工装置等の被加工物200に種々の加工を施す種々の加工装置でも良い。
【符号の説明】
【0064】
1 加工装置
13 ロータリエアアクチュエータ(空圧機器)
50 エアアクチュエータ(空圧機器)
82 昇降用エアアクチュエータ(空圧機器)
83 水平移動用エアアクチュエータ(空圧機器)
90 圧縮エア供給源
92 供給路
93 バルブ
94 収容ボックス
110 エアオペレイトバルブ(空圧機器)
933,934 シリンダポート(給気部、排気受入部)
942,942-2 排気ユニット
943 排気ダクト
945 フィルター