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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-07
(45)【発行日】2023-12-15
(54)【発明の名称】半導体装置及び半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3205 20060101AFI20231208BHJP
   H01L 21/768 20060101ALI20231208BHJP
   H01L 21/822 20060101ALI20231208BHJP
   H01L 27/04 20060101ALI20231208BHJP
   G03F 7/38 20060101ALI20231208BHJP
【FI】
H01L21/88 B
H01L27/04 L
G03F7/38 511
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020056789
(22)【出願日】2020-03-26
(65)【公開番号】P2021158213
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】308033711
【氏名又は名称】ラピスセミコンダクタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古川 貴光
【審査官】小▲高▼ 孔頌
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-165025(JP,A)
【文献】特開2010-067916(JP,A)
【文献】特開2004-311787(JP,A)
【文献】米国特許第05059278(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3205
H01L 21/768
H01L 21/822
H01L 27/04
G03F 7/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、
前記半導体基板上に形成されるシード層と、
前記シード層上に形成され、間隔を空けて並ぶ並列部分を含むと共に、当該並列部分の底部に前記並列部分の並び方向に貫通する貫通路が形成される配線とを備え
前記貫通路の高さが、前記配線の高さの10%以上且つ15%以下である
半導体装置。
【請求項2】
半導体基板上にシード層を形成する工程と、
前記シード層上にレジストを塗布する工程と、
配線の形状を表す配線パターンにより前記レジストを露出するように前記レジストの他の部分を覆う遮光部と、前記配線の形状を平面視したときに間隔を空けて並ぶ並列部分に亘って、前記レジストを覆う線状部とを有するマスク部材を、前記レジスト上に配置する工程と、
前記マスク部材を用いて前記レジストを露光することにより、配線パターンを開口しつつ、前記線状部により前記並列部分に対応して間隔を空けて並ぶレジスト間を開口の底部において線状につなぎ、かつ前記線状の部分の高さが前記配線の高さの10%以上且つ15%以下であるレジストパターンを形成する工程と、
前記レジストパターンにおいて前記シード層上のレジストが除去されて開口した箇所に配線を形成する工程と、
エッチングにより、前記シード層を除去する工程と、
を含む半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記線状部は、露光機の解像限界未満の幅を有する一本の線状に形成されている請求項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記線状部は、露光機の解像限界未満の幅を有し、且つ前記解像限界未満の間隔に配置される複数の線状体を含む請求項に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置及び半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体装置の高集積化、高機能化、微細化に伴って、配線を溝の中に埋め込み、且つ配線材料に例えば銅を用いた、配線構造が採用されてきている。
この構造を作成するには、半導体基板上にシード層を堆積した後、リソグラフィ及びドライエッチング工程などを用いて、溝を形成し、例えば、電解めっき法などにより銅を堆積し、先に設けた溝の中に銅が埋め込まれてなる配線を形成できる(特許文献1および特許文献2参照。)。
【0003】
上記特許文献1および上記特許文献2では、配線パターンを用いて、インダクタ領域が形成されている半導体装置に関する発明が開示されている。
上記特許文献1で開示されている発明においては、渦巻状のインダクタ領域をダマシン法によって形成することが開示されている。
また、上記特許文献2で開示されている発明においては、一部切欠を有する円状のインダクタ領域を、電界めっき法により形成したCu膜をウェットエッチングすることによって形成することが開示されている。
【0004】
ここで、上記特許文献1のような渦巻状のインダクタ領域を、上記特許文献2のような電界めっき法により形成する方法を、図11図18を用いて説明する。
図11に示すように、半導体基板501上にTiシード層502と、このTiシード層502上にCuシード層503とが形成される。
これらのシード層は、電解めっきの陰極としての役割の他に、半導体基板501との密着強度を安定化する接着剤のような機能を持っているものである。シード層があることで、電解めっきは、信頼性の高く安定した密着特性が得られるものである。
次に、図12に示すように、Cuシード層503上に所定厚さのレジストを塗布する。
【0005】
そして、フォトリソグラフィにより、マスク部材を用いて、レジストを露光し、露光したレジストが除去されることで、図13に示すような開口溝505を有するレジストパターンが形成される。
【0006】
図14に示すように、電解めっき法により開口溝505の内部にCuめっきからなる配線506が形成される。そして、配線506を形成した状態において、有機溶剤等によりレジスト504を除去することで、図15に示すような配線506からなるインダクタ領域が形成される。
【0007】
次に、図16に示すように、ウェットエッチングにより、Cuシード層503の除去が行われる。しかし、配線506間の間隔の幅Wが狭く、溶解生成物507が配線506間から外に流れず、配線506の間の内部に滞留する。このため、ウェットエッチングのエッチングレートが低下し、配線506の間の下部には、Cu残り508が発生する。
【0008】
この状態において、図17に示すように、ウェットエッチングにより、Tiシード層502の除去が行われても、配線506の間の下部に残ったCu残り508がマスクとなって、その下のTiシード層502がエッチングされずに残ってしまう。
【0009】
図18は、このインダクタ領域の平面図を示すものであって、図11図17に示される箇所は、図18のAA線に沿った断面図となるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2011-233807号公報
【文献】特開2004-22906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
図18のインダクタ領域の配線506の配置を見てもわかるように、配線506間の間隔が狭く、配線506間のスペースが限られており、このような配線506間の狭いスペース内に溶解生成物507が滞留しやすく、Cu残り508が発生しやすい状態になっている。
【0012】
このCu残り508が除去されるまでCuエッチングの時間を延長すると、配線506のCuもエッチングされて、配線506の幅が細くなってしまうという不具合が発生することになる。
【0013】
本発明は、上記した点に鑑みてなされたものであり、配線の幅の減少等の不具合の発生を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る半導体装置は、半導体基板と、前記半導体基板上に形成されるシード層と、前記シード層上に形成され、間隔を空けて並ぶ並列部分を含むと共に、当該並列部分の底部に前記並列部分の並び方向に貫通する貫通路が形成される配線とを備え、前記貫通路の高さが、前記配線の高さの10%以上且つ15%以下である
【0015】
本発明によれば、前記シード層上に形成され、間隔を空けて並ぶ並列部分を含む配線は、並列部分に並列の並び方向に貫通する貫通路を有する。これにより、シード層のエッチングを行うと、エッチング用の流体が貫通路を介して、配線間の狭い間隔のスペース内にも流れ込み、当該流体のスペース内における循環を良好なものにすることができ、当該スペース内における溶解生成物の滞留を防ぐことができる。これにより、配線間の狭いスペース内における溶解生成物の滞留によるエッチングレートの低下を軽減させることができる。
なお、ここで、エッチング用の流体は、ウェットエッチングにおける液体が含まれるが、特にこれに限定されるものではなく、ドライエッチングにおける気体を含めてもよい。
【0017】
本発明によれば、貫通路の高さが、配線の高さの10%未満になると、貫通路を介して、エッチング用流体の流動性が低下して、溶解生成物及び、Cu残りが配線間内に滞留してしまう。
また、貫通路の高さが、配線の高さの15%を超えると、配線の断面積の減少に伴って、配線の抵抗値が増加する。
【0018】
本発明に係る半導体装置の製造方法は、半導体基板上にシード層を形成する工程と、前記シード層上にレジストを塗布する工程と、配線の形状を表す配線パターンにより前記レジストを露出するように前記レジストの他の部分を覆う遮光部と、前記配線の形状を平面視したときに間隔を空けて並ぶ並列部分に亘って、前記レジストを覆う線状部とを有するマスク部材を、前記レジスト上に配置する工程と、前記マスク部材を用いて前記レジストを露光することにより、配線パターンを開口しつつ、前記線状部により前記並列部分に対応して間隔を空けて並ぶレジスト間を開口の底部において線状につなぎ、かつ前記線状の部分の高さが前記配線の高さの10%以上且つ15%以下であるレジストパターンを形成する工程と、前記レジストパターンにおいて前記シード層上のレジストが除去されて開口した箇所に配線を形成する工程と、エッチングにより、前記シード層を除去する工程と、を含む。
【0019】
本発明によれば、半導体基板上にシード層を形成し、シード層上にレジストを塗布することで、配線の形状を表す配線パターンにより前記レジストを露出するように前記レジストの他の部分を覆う遮光部と、前記配線の形状を平面視したときに間隔を空けて並ぶ並列部分に亘って、前記レジストを覆う線状部とを有するマスク部材を用いてシード層上のレジストに対してレジストパターンを形成することができる。
そして、レジストパターンにおいてシード層上のレジストが除去されて開口した箇所に配線を形成し、エッチングにより、シード層を除去することで、半導体基板上に配線を形成することができる。
【0020】
さらに、本発明に係る半導体装置の製造方法は、前記線状部は、露光機の解像限界未満の幅を有する一本の線状に形成されている。
【0021】
本発明によれば、線状部が露光機の解像限界未満の幅を有する一本の線状に形成されていることで、当該線状部により所望の高さの線状のレジストを形成することが可能となる。
この線状のレジストにより、配線が間隔を空けて並ぶ並列部分に当該並列の並び方向に貫通する貫通路を形成することが可能となる。
この貫通路が形成されることで、エッチングにおけるエッチング液等の流体が当該貫通路内を流れ、配線間内の溶解生成物の滞留を防ぎ、配線間内のエッチングレートの低下を防ぎ、配線間内にCu残りが発生することを防止することができる。これにより、Cu残りがマスクとなってシード層のエッチングが妨げられるのを防止することができ、良好なエッチング性能を得ることができる。
【0022】
さらに、本発明に係る半導体装置の製造方法は、前記線状部は、露光機の解像限界未満の幅を有し、且つ前記解像限界未満の間隔に配置される複数の線状体を含む。
【0023】
本発明は、線状部は、露光機の解像限界未満の幅を有し、且つ解像限界未満の間隔に配置される複数の線状体を含んでいる。このため、線状体の数の増減により、所望の幅の線状部を形成することが可能となる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、貫通路を介して、溶解生成物の滞留を防止することができて、溶解生成物の滞留によるエッチングレートの低下を防止し、配線間内のCu残りの発生を防止することができ、結果として、配線の幅の減少等の不具合の発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の製造方法の一例におけるマスク部材を示す平面図である。
図2】本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の製造方法の一例におけるフォトリソグラフィ後を示す平面図である。
図3】(A)は、本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の製造方法の一例における図2に示す状態からCuめっきを行った後の図2のCC線の位置の断面図、(B)は、図2に示す状態からCuめっきを行った後の図2のDD線の位置の断面図である。
図4】(A)は、本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の製造方法の一例におけるレジストを除去した際の図2のCC線の位置の断面図、(B)は、レジストを除去した際の図2のDD線の位置の断面図である。
図5】本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の製造方法の一例におけるCuシード層のエッチング後を示す断面図である。
図6】本発明の第2の実施の形態に係る半導体装置の製造方法の一例におけるマスク部材を示す平面図である。
図7】本発明の第2の実施の形態に係る半導体装置の製造方法の一例におけるフォトリソグラフィ後を示す平面図である。
図8】(A)は、本発明の第2の実施の形態に係る半導体装置の製造方法の一例における図7に示す状態からCuめっきを行った後の図7のEE線の位置の断面図、(B)は、図7に示す状態からCuめっきを行った後の図7のFF線の位置の断面図である。
図9】(A)は、本発明の第2の実施の形態に係る半導体装置の製造方法の一例におけるレジストを除去した際の図7のEE線の位置の断面図、(B)は、レジストを除去した際の図7のFF線の位置の断面図である。
図10】本発明の第2の実施の形態に係る半導体装置の製造方法の一例におけるCuシード層のエッチング後を示す断面図である。
図11】従来の実施の形態に係る半導体装置の製造方法の一例における半導体基板にシード層を設けた断面図である。
図12】従来の実施の形態に係る半導体装置の製造方法の一例におけるレジストを塗布した状態を示す断面図である。
図13】従来の実施の形態に係る半導体装置の製造方法の一例におけるレジスト露光後の状態を示す断面図である。
図14】従来の実施の形態に係る半導体装置の製造方法の一例における電解めっき法による配線を設けた状態を示す断面図である。
図15】従来の実施の形態に係る半導体装置の製造方法の一例におけるレジスト除去後の状態を示す断面図である。
図16】従来の実施の形態に係る半導体装置の製造方法の一例におけるCuシード層のエッチング後の状態を示す断面図である。
図17】従来の実施の形態に係る半導体装置の製造方法の一例におけるTiシード層のエッチング後の状態を示す断面図である。
図18】従来の実施の形態に係る半導体装置の製造方法の一例におけるインダクタ領域の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(第1の実施の形態)
以下、本発明の第1の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。尚、各図面において、実質的に同一又は等価な構成要素又は部分には同一の参照符号を付している。
また、本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲がある場合、数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において、構造A「上」という表現は、構造Aに接触して上方に位置する場合だけを表すのではない。別の構造Bを介して、構造Aの上方に位置する場合も含みうる。
【0027】
図1は、本発明の実施の形態に係る半導体装置10の製造方法におけるフォトリソグラフィに用いるマスク部材80を示す平面図である。
このマスク部材80は、マスク部材80の全体のうちの代表的な一部を示すものである。
【0028】
このマスク部材80は、フォトリソグラフィに用いる露光機の光を透過しない遮光部85と、当該光を透過させる透過部86とから形成されている。
透過部86は、配線60の形状を表す配線パターンによりレジスト40を露出させるために形成されているものである。遮光部85は、透過部86において露出するレジスト40以外の部分を覆うために形成されているものである。
具体的には、図1に示すマスク部材80は、インダクタ領域における後述するめっきCu42による配線60を形成するためのものである。
図1の中央の3つの透過部86は、後述するインダクタ領域の配線60を形成するためのものである。図1に示すマスク部材80の中央には左右に延設されている線状部82が形成されている。
【0029】
この線状部82は、後述するめっきCu42による配線60内の貫通路70を形成するためのものである。この線状部82の幅Tは、当該半導体装置10の製造におけるフォトリソグラフィで用いられる露光機(いわゆる半導体製造装置における等倍投影型露光装置)の解像限界(いわゆる最小線幅)未満の幅に設定される。本実施の形態では、幅Tは1~2μmに設定されている。
【0030】
そして、従来の埋め込み型の配線の一般的な形成方法において、図11で説明したものと同様に、半導体基板11上にTiシード層20と、このTiシード層20上にCuシード層30とを形成する。そして、図12で説明したものと同様に、Cuシード層30上に所定厚さのレジスト40を塗布し、図1に示すマスク部材80を用いて、フォトリソグラフィにより、レジスト40を上述した露光機で露光し、露光したレジスト40が除去されることで、図2の平面図に示すような状態となる。上述した線状部82により、線状レジスト83が形成される。
【0031】
このフォトリソグラフィ後の図2の平面図に示される状態において、電解めっき法によりCuめっきを行うと、図3の断面図に示すように開口溝50の内部にめっきCu42が充填される。なお、本明細書において、断面図では、図中下向きの方向が重力方向である。
この図2に示す状態からCuめっきを行った後の図2のCC線の位置の断面図が図3(A)に示され、図2に示す状態からCuめっきを行った後の図2のDD線の位置の断面図が図3(B)に示される。
この開口溝50内部に充填されためっきCu42がインダクタ領域における配線60として形成される。
この配線60下部のCuシード層30上には、線状部82による線状レジスト83が、配線60の長手方向(伸延方向)に対して直交する(交差する)方向に残留している。この線状レジスト83が残留していることで、めっきCu42からなる配線60の内部にめっきCu42が充填されずにトンネル状の空洞になっている後述する貫通路70が形成されるものである。
【0032】
この図3に示すような状態のものから、有機溶剤等を用いてレジスト40を除去すると、図4に示すようなめっきCu42により、Cuシード層30上に形成され、間隔を空けて並ぶ並列部分を含む配線60が形成される。前記並列部分に前記並列の並び方向に貫通する線状レジスト83も除去されることで、めっきCu42からなる配線60の内部であって、Cuシード層30上に、配線60の長手方向(伸延方向)に直交する(交差する)方向に、すなわち、間隔を空けて並ぶめっきCu42の並列部分に当該並列の並び方向に貫通する貫通路70が形成される。これにより、貫通路70を有する配線60からなるインダクタ領域が形成される。なお、配線60は、伸延したり、湾曲又は屈曲したり、様々な形状に形成されうる。その中で、並列部分は、図3において、参照番号42により示される部分に相当する。
【0033】
この図4に示すような状態のものから、エッチング液を用いたウェットエッチングにより、Cuシード層30の除去が行われる。本実施の形態では、エッチング液には、例えば、硫酸を主成分とした酸系の溶液を用いているが、Cuシード層30の除去が可能な溶液であればこれに限られない。
ここで、図4に示す本実施の形態に係る半導体装置10の製造方法においても、インダクタ領域を構成する配線60間の間隔の幅Wは、図16に示す従来技術で説明したものと同様に狭いが、図5に示すように、配線60の下部に配線60の長手方向(伸延方向)に対して直交する(交差する)方向にトンネル状に貫通する貫通路70が形成されていることで、従来技術の図16において説明したような溶解生成物が滞留しない。図5に示す左右方向又は上下方向にウェットエッチングにおけるエッチング液等の流体の流れが発生し、従来技術で説明したような溶解生成物が流体の流れによって外部へ放出され、配線60の狭い間隔内に溶解生成物が滞留することを防止することができる。
【0034】
本実施の形態に係るマスク部材80において、上述したように貫通路70を形成するための線状部82の幅Tは、例えば、1~2μmに設定されている。
本実施の形態に係る半導体装置10は、上述したようなマスク部材80を用いることで、貫通路70の高さは、配線60としてのめっきCu42の高さの10%以上且つ15%以下となるように形成されている。
【0035】
本実施の形態によれば、貫通路70の高さが、配線60の高さの10%未満になると、貫通路70を介して、エッチング用流体の流動性が低下して、溶解生成物及び、Cu残りが配線60の間隔内に滞留してしまう。
また、貫通路70の高さが、配線60の高さの15%を超えると、配線60の断面積の減少に伴って、配線60の抵抗値が増加する。
【0036】
本実施の形態に係る半導体装置10における配線60の長手方向(伸延方向)における貫通路70の間隔は、図18に示すようなインダクタ領域において、並列に配置された配線60が直線状に形成されている箇所(具体的には、図18の一点鎖線領域H以外の領域)に比べて、並列に配置された配線60が直角方向に折れ曲がったコーナー箇所(具体的には、図18の一点鎖線領域H)の方が、配線60の長手方向(伸延方向)に対して貫通路70間の配置間隔が狭くなって高密度に分布するように形成されている。
【0037】
これは、並列に配置された配線60の長手方向(伸延方向)が直線上に形成されている箇所(具体的には、図18の一点鎖線領域H以外の領域)では、ドライエッチングにおけるエッチング用のエッチング液等の流体も流れが阻害されずに、配線60間の溶解生成物も容易に排出されやすい。それに対して、並列に配置された配線60が直角に折れ曲がったコーナー箇所(図18の一点鎖線領域H)のような角部では、エッチング用のエッチング液等の流体の流れが角部により阻害されて、配線60間の溶解生成物が残留しやすい傾向がある。このため、配線60のコーナー箇所(一点鎖線領域H)では、貫通路70の間隔を狭くして、高密度に分布するように配置することで、エッチング用の流体の流れを促進させて、配線60間の溶解生成物の残留をより抑えようとしているものである。
【0038】
本実施の形態に係る半導体装置10及びその製造方法では、上述したような構成を有することで下記に示すような作用及び効果を奏する。
【0039】
本実施の形態によれば、間隔を空けて並ぶ並列部分を有する配線60は、当該並列部分に並列の並び方向に貫通する貫通路70を有することで、Cuシード層30のエッチングを行った場合、エッチング用の流体が貫通路70を介して、配線60間の狭い間隔のスペース内にも流れ込み、当該流体のスペース内における流れ(循環)を良好なものにすることができる。これにより、当該スペース内における溶解生成物の滞留を防ぐことができ、配線60間の狭いスペース内における溶解生成物の滞留によるエッチングレートの低下を軽減させることができる。
【0040】
本実施の形態によれば、半導体基板11上にシード層(Tiシード層20、Cuシード層30)を形成し、シード層上にレジスト40を塗布することで、フォトリソグラフィによりレジスト40を部分的に露出させるマスク部材80を用いてシード層上のレジスト40に対してレジストパターンを形成することができる。
ここで、マスク部材80は、配線60の形状を表す配線パターンによりレジスト40を露出するようにレジスト40の他の部分を覆う遮光部85と、配線60の形状を平面視したときに間隔を空けて並ぶ並列部分に亘って、所定の幅(具体的には、露光機の解像限界未満の幅)でレジスト60を覆う線状部82とを有するものである。
上述したようなマスク部材80を用いてレジスト40を露光することにより、配線パターンを開口しつつ、前記並列部分に対応して間隔を空けて並ぶレジスト60間を開口の底部において線状につなぐレジストパターンが形成される。
そして、レジストパターンにおいてシード層上のレジスト40が除去されて開口した箇所に電解めっき法によりめっきCu42による配線60を形成し、ウェットエッチングにより、シード層を除去することで、半導体基板11上に配線60を形成することができる。
本実施の形態によれば、線状部82が露光機の解像限界未満の幅を有する一本の線状に形成されていることで、当該線状部82により所望の高さの線状のレジスト40を形成することができる。この線状のレジスト40により、配線60が間隔を空けて並ぶ並列部分に当該並列の並び方向に貫通する貫通路70を形成することができる。
【0041】
本実施の形態によれば、配線60が間隔を空けて並ぶ並列部分に当該並列の並び方向に貫通する貫通路70が形成されることで、エッチングにおけるエッチング液等の流体が当該貫通路70内を流れ、配線60間内の溶解生成物の滞留を防ぎ、配線60間内のエッチングレートの低下を防ぎ、配線60間内にCu残りが発生することを防止することができる。これにより、Cu残りがマスクとなってシード層のエッチングが妨げられるのを防止することができ、良好なエッチング性能を得ることができる。
良好なエッチング性能を得ることができることで、過度のエッチングを行う必要が無いことで、結果として、過度のエッチングによる配線60の幅の減少等の不具合の発生を防止することができる。
【0042】
(第2の実施の形態)
第1の実施の形態では、図1に示すように、1本の貫通路70を形成するために、1本の線状部82をマスク部材80に形成していたが、本実施の形態では、第1の実施の形態よりもさらに幅の小さな線状部82(具体的には、解像限界未満の幅である0.5μm程度の幅)を多数、当該解像限界未満の間隔に並列させて配置されることにより、図7図9に示すような第1の実施の形態よりも幅広の貫通路70を形成しているものである。
具体的には、図6に示すように、解像限界未満の幅を有する複数の線状体82aを、解像限界未満の間隔で並列に配置させたマスク部材80を用いることにより、図7の平面図に示すように、当該マスク部材80を用いたフォトリソグラフィ後では、第1の実施の形態よりも幅広の線状レジスト83が形成される。
【0043】
第1の実施の形態と同様に、このフォトリソグラフィ後の図7の平面図に示される状態において、電解めっき法によりCuめっきを行うと、図8の断面図に示すように開口溝50の内部にめっきCu42が充填される。
この図7に示す状態からCuめっきを行った後の図7のEE線の位置の断面図が図8(A)に示され、図7に示す状態からCuめっきを行った後の図7のFF線の位置の断面図が図8(B)に示される。
この開口溝50内部に充填されためっきCu42がインダクタ領域における配線60として形成される。
【0044】
この配線60下部のCuシード層30上には、第1の実施の形態よりも幅広の線状部82による線状レジスト83が、配線60の長手方向(伸延方向)に対して直交する(交差する)方向に残留している。この線状レジスト83が残留していることで、図9に示すように、めっきCu42からなる配線60の内部にめっきCu42が充填されずにトンネル状の空洞になっている貫通路70が形成される。
【0045】
本実施の形態では、露光機の解像限界よりもさらに小さな幅の線状体82aを、解像限界未満の間隔で配置させると、当該線状体82aの数を増減させることで、線状レジスト83及び貫通路70の幅及び高さを第1の実施の形態よりも、より細かく制御することが可能となる。これにより、所望の幅の線状部82及び線状レジスト83を形成することができ、結果として、所望の幅及び高さを有する貫通路70を形成することが可能となるものである。
【0046】
その他の構成は、第1の実施の形態で説明したものと同様であって、当該構成による作用及び効果も、第1の実施の形態で説明したものと同様の作用及び効果を奏するものであり、それらの説明を省略する。
【符号の説明】
【0047】
10 半導体装置
11 半導体基板
20 Tiシード層
30 Cuシード層
40 レジスト
42 めっきCu
50 開口溝
60 配線
70 貫通路
80 マスク部材
82 線状部
82a 線状体
83 線状レジスト
85 遮光部
86 透過部
501 半導体基板
502 Tiシード層
503 Cuシード層
504 レジスト
505 開口溝
506 配線
507 溶解生成物
508 Cu残り
図1
図2
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