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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-07
(45)【発行日】2023-12-15
(54)【発明の名称】画像形成システム
(51)【国際特許分類】
   B41J 11/00 20060101AFI20231208BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20231208BHJP
【FI】
B41J11/00 Z
B41J2/01 103
B41J2/01 305
B41J2/01 125
B41J2/01 123
【請求項の数】 42
(21)【出願番号】P 2020059083
(22)【出願日】2020-03-27
(65)【公開番号】P2021154658
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】京相 忠
【審査官】羽鳥 公一
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-141027(JP,A)
【文献】特開2011-051735(JP,A)
【文献】特開2003-231832(JP,A)
【文献】特開2012-143944(JP,A)
【文献】特開2002-006129(JP,A)
【文献】特開2012-171187(JP,A)
【文献】特開平05-096723(JP,A)
【文献】特開平05-057907(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01
B41J 2/165-2/20
B41J 2/21-2/215
B41J 11/00-11/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体を搬送する第1の搬送部材を有し、前記第1の搬送部材によって搬送される前記記録媒体の第1の面に第1のインクを塗布して第1の画像を形成する第1の画像形成装置と、
前記第1の面に前記第1の画像が形成された前記記録媒体を搬送し、前記記録媒体の前記第1の面と接触する部分の少なくとも一部における表面エネルギーが、前記第1のインクの表面エネルギーよりも低い第2の搬送部材を有し、前記第2の搬送部材によって搬送される前記記録媒体の第1の面と反対側の第2の面に第2のインクを塗布して第2の画像を形成する第2の画像形成装置と、
を備え、
前記第2の搬送部材における前記記録媒体の前記第1の面と接触する部分の少なくとも一部における表面エネルギーは、前記第1の搬送部材における前記記録媒体の前記第2の面と接触する部分の表面エネルギーよりも低い、
画像形成システム。
【請求項2】
前記第2の画像形成装置は、前記第2の搬送部材によって搬送される前記記録媒体の前記第2の面に塗布された前記第2のインクを乾燥させる乾燥部をさらに有し、
前記第2の搬送部材は、前記乾燥部における前記記録媒体の前記第1の面と接触する部分の少なくとも一部における表面エネルギーが前記第1のインクの表面エネルギーよりも低い、
請求項1に記載の画像形成システム。
【請求項3】
前記乾燥部における前記第2の搬送部材は、耐熱性のコーティングが施されている、
請求項2に記載の画像形成システム。
【請求項4】
前記第1の画像形成装置は、前記第1の搬送部材によって搬送される前記記録媒体の前記第1の面に塗布された前記第1のインクを乾燥させる第1の乾燥部をさらに有し、
前記第2の画像形成装置は、前記第の搬送部材によって搬送される前記記録媒体の前記第2の面に塗布された前記第2のインクを乾燥させる第2の乾燥部をさらに有し、
前記第2の搬送部材は、前記第2の乾燥部における前記記録媒体の前記第1の面と接触する部分の少なくとも一部における表面エネルギーが、前記第1の乾燥部における前記記録媒体の前記第2の面と接する部分の表面エネルギーよりも低い、
請求項1に記載の画像形成システム。
【請求項5】
前記第2の画像形成装置は、記第2の画像が形成される前に、前記第1の画像が形成された前記記録媒体の前記第2の面に記第2のインクと反応する前処理液を塗布する前処理部をさらに有する、
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の画像形成システム。
【請求項6】
前記第1のインクはラテックスインクであり、
前記第2の搬送部材の前記記録媒体の前記第1の面と接触し、前記ラテックスインクのガラス転移温度よりも温度が高い部分の表面エネルギーが、前記第1のインクの表面エネルギーよりも低い、
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の画像形成システム。
【請求項7】
前記第1のインクはワックスを含み、前記第2の搬送部材の前記記録媒体の前記第1の面と接触し、前記ワックスの融点よりも温度が高い部分の表面エネルギーが、前記第1のインクの表面エネルギーよりも低い、
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の画像形成システム。
【請求項8】
前記第1のインクは、水性インクである、
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の画像形成システム。
【請求項9】
前記記録媒体は、コート紙である、
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の画像形成システム。
【請求項10】
前記第2の搬送部材は、前記記録媒体の前記第1の面に接触する表面に設けられた凹凸により、前記第1のインクの表面エネルギーよりも低い表面エネルギーを有する、
請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の画像形成システム。
【請求項11】
記録媒体を搬送する第1の搬送部材を有し、前記第1の搬送部材によって搬送される前記記録媒体の第1の面に第1のインクを塗布して第1の画像を形成する第1の画像形成装置と、
前記第1の面に前記第1の画像が形成された前記記録媒体を搬送し、前記記録媒体の前記第1の面と接触する部分の少なくとも一部における表面エネルギーが、前記第1のインクの表面エネルギーよりも低い第2の搬送部材を有し、前記第2の搬送部材によって搬送される前記記録媒体の第1の面と反対側の第2の面に第2のインクを塗布して第2の画像を形成する第2の画像形成装置と、を備え、
前記第2の画像形成装置は、前記第2の搬送部材によって搬送される前記記録媒体の前記第2の面に塗布された前記第2のインクを乾燥させる乾燥部をさらに有し、
前記第2の搬送部材は、前記乾燥部における前記記録媒体の前記第1の面と接触する部分の少なくとも一部における表面エネルギーが前記第1のインクの表面エネルギーよりも低い、
画像形成システム。
【請求項12】
前記乾燥部における前記第2の搬送部材は、耐熱性のコーティングが施されている、
請求項11に記載の画像形成システム。
【請求項13】
前記第2の画像形成装置は、記第2の画像が形成される前に、前記第1の画像が形成された前記記録媒体の前記第2の面に記第2のインクと反応する前処理液を塗布する前処理部をさらに有する、
請求項11または請求項12に記載の画像形成システム。
【請求項14】
前記第1のインクはラテックスインクであり、
前記第2の搬送部材の前記記録媒体の前記第1の面と接触し、前記ラテックスインクのガラス転移温度よりも温度が高い部分の表面エネルギーが、前記第1のインクの表面エネルギーよりも低い、
請求項11から請求項13のいずれか1項に記載の画像形成システム。
【請求項15】
前記第1のインクはワックスを含み、前記第2の搬送部材の前記記録媒体の前記第1の面と接触し、前記ワックスの融点よりも温度が高い部分の表面エネルギーが、前記第1のインクの表面エネルギーよりも低い、
請求項11から請求項13のいずれか1項に記載の画像形成システム。
【請求項16】
前記第1のインクは、水性インクである、
請求項11から請求項13のいずれか1項に記載の画像形成システム。
【請求項17】
前記記録媒体は、コート紙である、
請求項11から請求項16のいずれか1項に記載の画像形成システム。
【請求項18】
前記第2の搬送部材は、前記記録媒体の前記第1の面に接触する表面に設けられた凹凸により、前記第1のインクの表面エネルギーよりも低い表面エネルギーを有する、
請求項11から請求項17のいずれか1項に記載の画像形成システム。
【請求項19】
記録媒体を搬送する第1の搬送部材を有し、前記第1の搬送部材によって搬送される前記記録媒体の第1の面に第1のインクを塗布して第1の画像を形成する第1の画像形成装置と、
前記第1の面に前記第1の画像が形成された前記記録媒体を搬送し、前記記録媒体の前記第1の面と接触する部分の少なくとも一部における表面エネルギーが、前記第1のインクの表面エネルギーよりも低い第2の搬送部材を有し、前記第2の搬送部材によって搬送される前記記録媒体の第1の面と反対側の第2の面に第2のインクを塗布して第2の画像を形成する第2の画像形成装置と、を備え、
前記第1の画像形成装置は、前記第1の搬送部材によって搬送される前記記録媒体の前記第1の面に塗布された前記第1のインクを乾燥させる第1の乾燥部をさらに有し、
前記第2の画像形成装置は、前記第の搬送部材によって搬送される前記記録媒体の前記第2の面に塗布された前記第2のインクを乾燥させる第2の乾燥部をさらに有し、
前記第2の搬送部材は、前記第2の乾燥部における前記記録媒体の前記第1の面と接触する部分の少なくとも一部における表面エネルギーが、前記第1の乾燥部における前記記録媒体の前記第2の面と接する部分の表面エネルギーよりも低い、
画像形成システム。
【請求項20】
前記第2の画像形成装置は、記第2の画像が形成される前に、前記第1の画像が形成された前記記録媒体の前記第2の面に記第2のインクと反応する前処理液を塗布する前処理部をさらに有する、
請求項19に記載の画像形成システム。
【請求項21】
前記第1のインクはラテックスインクであり、
前記第2の搬送部材の前記記録媒体の前記第1の面と接触し、前記ラテックスインクのガラス転移温度よりも温度が高い部分の表面エネルギーが、前記第1のインクの表面エネルギーよりも低い、
請求項19または請求項20のいずれか1項に記載の画像形成システム。
【請求項22】
前記第1のインクはワックスを含み、前記第2の搬送部材の前記記録媒体の前記第1の面と接触し、前記ワックスの融点よりも温度が高い部分の表面エネルギーが、前記第1のインクの表面エネルギーよりも低い、
請求項19または請求項20のいずれか1項に記載の画像形成システム。
【請求項23】
前記第1のインクは、水性インクである、
請求項19または請求項20のいずれか1項に記載の画像形成システム。
【請求項24】
前記記録媒体は、コート紙である、
請求項19から請求項23のいずれか1項に記載の画像形成システム。
【請求項25】
前記第2の搬送部材は、前記記録媒体の前記第1の面に接触する表面に設けられた凹凸により、前記第1のインクの表面エネルギーよりも低い表面エネルギーを有する、
請求項19から請求項24のいずれか1項に記載の画像形成システム。
【請求項26】
記録媒体を搬送する第1の搬送部材を有し、前記第1の搬送部材によって搬送される前記記録媒体の第1の面に第1のインクを塗布して第1の画像を形成する第1の画像形成装置と、
前記第1の面に前記第1の画像が形成された前記記録媒体を搬送し、前記記録媒体の前記第1の面と接触する部分の少なくとも一部における表面エネルギーが、前記第1のインクの表面エネルギーよりも低い第2の搬送部材を有し、前記第2の搬送部材によって搬送される前記記録媒体の第1の面と反対側の第2の面に第2のインクを塗布して第2の画像を形成する第2の画像形成装置と、
を備え、
前記第2の画像形成装置は、記第2の画像が形成される前に、前記第1の画像が形成された前記記録媒体の前記第2の面に記第2のインクと反応する前処理液を塗布する前処理部をさらに有する、
画像形成システム。
【請求項27】
前記第1のインクはラテックスインクであり、
前記第2の搬送部材の前記記録媒体の前記第1の面と接触し、前記ラテックスインクのガラス転移温度よりも温度が高い部分の表面エネルギーが、前記第1のインクの表面エネルギーよりも低い、
請求項26に記載の画像形成システム。
【請求項28】
前記第1のインクはワックスを含み、前記第2の搬送部材の前記記録媒体の前記第1の面と接触し、前記ワックスの融点よりも温度が高い部分の表面エネルギーが、前記第1のインクの表面エネルギーよりも低い、
請求項26に記載の画像形成システム。
【請求項29】
前記第1のインクは、水性インクである、
請求項26に記載の画像形成システム。
【請求項30】
前記記録媒体は、コート紙である、
請求項26から請求項29のいずれか1項に記載の画像形成システム。
【請求項31】
前記第2の搬送部材は、前記記録媒体の前記第1の面に接触する表面に設けられた凹凸により、前記第1のインクの表面エネルギーよりも低い表面エネルギーを有する、
請求項26から請求項30のいずれか1項に記載の画像形成システム。
【請求項32】
記録媒体を搬送する第1の搬送部材を有し、前記第1の搬送部材によって搬送される前記記録媒体の第1の面に第1のインクを塗布して第1の画像を形成する第1の画像形成装置と、
前記第1の面に前記第1の画像が形成された前記記録媒体を搬送し、前記記録媒体の前記第1の面と接触する部分の少なくとも一部における表面エネルギーが、前記第1のインクの表面エネルギーよりも低い第2の搬送部材を有し、前記第2の搬送部材によって搬送される前記記録媒体の第1の面と反対側の第2の面に第2のインクを塗布して第2の画像を形成する第2の画像形成装置と、
を備え、
前記第1のインクはラテックスインクであり、
前記第2の搬送部材の前記記録媒体の前記第1の面と接触し、前記ラテックスインクのガラス転移温度よりも温度が高い部分の表面エネルギーが、前記第1のインクの表面エネルギーよりも低い、
画像形成システム。
【請求項33】
記録媒体を搬送する第1の搬送部材を有し、前記第1の搬送部材によって搬送される前記記録媒体の第1の面に第1のインクを塗布して第1の画像を形成する第1の画像形成装置と、
前記第1の面に前記第1の画像が形成された前記記録媒体を搬送し、前記記録媒体の前記第1の面と接触する部分の少なくとも一部における表面エネルギーが、前記第1のインクの表面エネルギーよりも低い第2の搬送部材を有し、前記第2の搬送部材によって搬送される前記記録媒体の第1の面と反対側の第2の面に第2のインクを塗布して第2の画像を形成する第2の画像形成装置と、
を備え、
前記第1のインクはワックスを含み、前記第2の搬送部材の前記記録媒体の前記第1の面と接触し、前記ワックスの融点よりも温度が高い部分の表面エネルギーが、前記第1のインクの表面エネルギーよりも低い、
画像形成システム。
【請求項34】
前記記録媒体は、コート紙である、
請求項32または請求項33に記載の画像形成システム。
【請求項35】
前記第2の搬送部材は、前記記録媒体の前記第1の面に接触する表面に設けられた凹凸により、前記第1のインクの表面エネルギーよりも低い表面エネルギーを有する、
請求項32から請求項34のいずれか1項に記載の画像形成システム。
【請求項36】
記録媒体を搬送する第1の搬送部材を有し、前記第1の搬送部材によって搬送される前記記録媒体の第1の面に第1のインクを塗布して第1の画像を形成する第1の画像形成装置と、
前記第1の面に前記第1の画像が形成された前記記録媒体を搬送し、前記記録媒体の前記第1の面と接触する部分の少なくとも一部における表面エネルギーが、前記第1のインクの表面エネルギーよりも低い第2の搬送部材を有し、前記第2の搬送部材によって搬送される前記記録媒体の第1の面と反対側の第2の面に第2のインクを塗布して第2の画像を形成する第2の画像形成装置と、
を備え、
前記記録媒体は、コート紙である、
画像形成システム。
【請求項37】
前記第2の搬送部材は、前記記録媒体の前記第1の面に接触する表面に設けられた凹凸により、前記第1のインクの表面エネルギーよりも低い表面エネルギーを有する、
請求項36に記載の画像形成システム。
【請求項38】
記録媒体を搬送する第1の搬送部材を有し、前記第1の搬送部材によって搬送される前記記録媒体の第1の面に第1のインクを塗布して第1の画像を形成する第1の画像形成装置と、
前記第1の面に前記第1の画像が形成された前記記録媒体を搬送し、前記記録媒体の前記第1の面と接触する部分の少なくとも一部における表面エネルギーが、前記第1のインクの表面エネルギーよりも低い第2の搬送部材を有し、前記第2の搬送部材によって搬送される前記記録媒体の第1の面と反対側の第2の面に第2のインクを塗布して第2の画像を形成する第2の画像形成装置と、
を備え、
前記第2の搬送部材は、前記記録媒体の前記第1の面に接触する表面に設けられた凹凸により、前記第1のインクの表面エネルギーよりも低い表面エネルギーを有する、
画像形成システム。
【請求項39】
前記第1のインクの表面エネルギーよりも低い第2の搬送部材の表面エネルギーは、30mN/m以下である、
請求項1から請求項38のいずれか1項に記載の画像形成システム。
【請求項40】
前記第2の画像形成装置は、前記第2の搬送部材における前記記録媒体の前記第1の面と接触する部分の少なくとも一部における表面エネルギーに係わる構成以外は、前記第1の画像形成装置と同様の構成である、
請求項1から請求項39のいずれか1項に記載の画像形成システム。
【請求項41】
前記第2の搬送部材における前記記録媒体の前記第2の面と接触する部分の少なくとも一部における表面エネルギーが、前記第2のインクの表面エネルギーよりも低い、
請求項1から請求項40のいずれか1項に記載の画像形成システム。
【請求項42】
前記第1の画像形成装置は、前記第1のインクを吐出するヘッドと前記記録媒体との1回の相対移動によって前記記録媒体への前記第1の画像の形成を完成させるシングルパス方式の画像形成装置である、
請求項1から請求項41のいずれか1項に記載の画像形成システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、画像形成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、記録媒体に画像を形成する画像形成システムが知られている。本画像形成システムでは、記録媒体にインクを吐出して画像を形成した後、インクが十分に乾燥しないうちに記録媒体に形成された画像に接触すると、形成された画像に画像欠陥が生じる場合がある。そこで、このような画像欠陥の発生を抑制するための技術が知られている。例えば、特許文献1には、記録ヘッドの直後に設けられ、直前に設けられた記録ヘッドにより画像が形成された記録媒体の面に接触する排紙ローラを、表面エネルギーが低い材質で形成する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-141027号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、記録媒体の両面に画像を形成する画像形成システムが知られている。この種の画像形成システムとして、第1の画像形成装置で記録媒体の第1の面に画像を形成した後、第2の画像記録装置で記録媒体の第1の面とは反対側の第2の面に画像を形成する画像形成システムがある。このような記録媒体の両面に画像を形成する画像形成システムでは、第1の画像形成装置において記録媒体の第1の面を乾燥させても、第2の画像形成装置において、記録媒体を搬送する搬送部材に記録媒体の第1の面が接触することにより、第1の面に形成された画像に画像欠陥が生じる場合があった。
【0005】
上記従来の技術では、直前に設けられた記録ヘッドにより記録媒体に形成された画像に接触することによる画像欠陥については考慮されているものの、その反対側の面に形成されている画像については十分には考慮されておらず、画像欠陥が生じる懸念がある。
【0006】
本開示は、上記事情を考慮して成されたものであり、記録媒体の第1の面に第1の画像を形成した後に、第1の面と反対側の第2の面に第2の画像を形成する工程において、第1の面に形成された画像に画像欠陥が生じるのを抑制することができる画像形成システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本開示の第1の態様の画像形成システムは、記録媒体を搬送する第1の搬送部材を有し、第1の搬送部材によって搬送される記録媒体の第1の面に第1のインクを塗布して第1の画像を形成する第1の画像形成装置と、第1の面に第1の画像が形成された記録媒体を搬送し、記録媒体の第1の面と接触する部分の少なくとも一部における表面エネルギーが、第1のインクの表面エネルギーよりも低い第2の搬送部材を有し、第2の搬送部材によって搬送される記録媒体の第1の面と反対側の第2の面に第2のインクを塗布して第2の画像を形成する第2の画像形成装置と、を備え、第2の搬送部材における記録媒体の第1の面と接触する部分の少なくとも一部における表面エネルギーは、第1の搬送部材における記録媒体の第2の面と接触する部分の表面エネルギーよりも低い
【0011】
本開示の第の態様の画像形成システムは、第1の態様の画像形成システムにおいて、第2の画像形成装置は、第1の搬送部材によって搬送される記録媒体の第2の面に塗布された第2のインクを乾燥させる乾燥部をさらに有し、第2の搬送部材は、乾燥部における記録媒体の第1の面と接触する部分の少なくとも一部における表面エネルギーが第1のインクの表面エネルギーよりも低い。
【0012】
本開示の第の態様の画像形成システムは、第の態様の画像形成システムにおいて、乾燥部における第2の搬送部材は、耐熱性のコーティングが施されている。
【0013】
本開示の第4の態様の画像形成システムは、第1の態様の画像形成システムにおいて、第1の画像形成装置は、第1の搬送部材によって搬送される記録媒体の第1の面に塗布された第1のインクを乾燥させる第1の乾燥部をさらに有し、第2の画像形成装置は、第の搬送部材によって搬送される記録媒体の第2の面に塗布された第2のインクを乾燥させる第2の乾燥部をさらに有し、第2の搬送部材は、第2の乾燥部における記録媒体の第1の面と接触する部分の少なくとも一部における表面エネルギーが、第1の乾燥部における記録媒体の第2の面と接する部分の表面エネルギーよりも低い。
【0015】
本開示の第の態様の画像形成システムは、第1の態様から第の態様のいずれか1態様の画像形成システムにおいて、第2の画像が形成される前に、第1の画像が形成された記録媒体の第2の面に第2のインクと反応する前処理液を塗布する前処理部をさらに有する。
【0016】
本開示の第の態様の画像形成システムは、第1の態様から第の態様のいずれか1態様の画像形成システムにおいて、第1のインクはラテックスインクであり、第2の搬送部材の記録媒体の第1の面と接触し、ラテックスインクのガラス転移温度よりも温度が高い部分の表面エネルギーが、第1のインクの表面エネルギーよりも低い。
【0017】
本開示の第の態様の画像形成システムは、第1の態様から第の態様のいずれか1態様の画像形成システムにおいて、第1のインクはワックスを含み、第2の搬送部材の記録媒体の第1の面と接触し、ワックスの融点よりも温度が高い部分の表面エネルギーが、第1のインクの表面エネルギーよりも低い。
【0018】
本開示の第の態様の画像形成システムは、第1の態様から第の態様のいずれか1態様の画像形成システムにおいて、第1のインクは、水性インクである。
【0020】
本開示の第の態様の画像形成システムは、第1の態様から第の態様のいずれか1態様の画像形成システムにおいて、記録媒体は、コート紙である。
【0021】
本開示の第10の態様の画像形成システムは、第1の態様から第9の態様のいずれか1態様の画像形成システムにおいて、第2の搬送部材は、記録媒体の第1の面に接触する表面に設けられた凹凸により、第1のインクの表面エネルギーよりも低い表面エネルギーを有する。
上記目的を達成するために本開示の第11の態様の画像形成システムは、記録媒体を搬送する第1の搬送部材を有し、第1の搬送部材によって搬送される記録媒体の第1の面に第1のインクを塗布して第1の画像を形成する第1の画像形成装置と、第1の面に第1の画像が形成された記録媒体を搬送し、記録媒体の第1の面と接触する部分の少なくとも一部における表面エネルギーが、第1のインクの表面エネルギーよりも低い第2の搬送部材を有し、第2の搬送部材によって搬送される記録媒体の第1の面と反対側の第2の面に第2のインクを塗布して第2の画像を形成する第2の画像形成装置と、を備え、第2の画像形成装置は、第2の搬送部材によって搬送される記録媒体の第2の面に塗布された第2のインクを乾燥させる乾燥部をさらに有し、第2の搬送部材は、乾燥部における記録媒体の第1の面と接触する部分の少なくとも一部における表面エネルギーが第1のインクの表面エネルギーよりも低い。
本開示の第12の態様の画像形成システムは、第11の態様の画像形成システムにおいて、乾燥部における第2の搬送部材は、耐熱性のコーティングが施されている。
本開示の第13の態様の画像形成システムは、第11の態様または第12の態様の画像形成システムにおいて、第2の画像形成装置は、第2の画像が形成される前に、第1の画像が形成された記録媒体の第2の面に第2のインクと反応する前処理液を塗布する前処理部をさらに有する。
本開示の第14の態様の画像形成システムは、第11の態様から第13の態様のいずれか1態様の画像形成システムにおいて、第2の搬送部材の記録媒体の第1の面と接触し、ラテックスインクのガラス転移温度よりも温度が高い部分の表面エネルギーが、第1のインクの表面エネルギーよりも低い。
本開示の第15の態様の画像形成システムは、第11の態様から第13の態様のいずれか1態様の画像形成システムにおいて、第1のインクはワックスを含み、第2の搬送部材の記録媒体の第1の面と接触し、ワックスの融点よりも温度が高い部分の表面エネルギーが、第1のインクの表面エネルギーよりも低い。
本開示の第16の態様の画像形成システムは、第11の態様から第13の態様のいずれか1態様の画像形成システムにおいて、第1のインクは、水性インクである。
本開示の第17の態様の画像形成システムは、第11の態様から第16の態様のいずれか1態様の画像形成システムにおいて、記録媒体は、コート紙である。
本開示の第18の態様の画像形成システムは、第11の態様から第17の態様のいずれか1態様の画像形成システムにおいて、第2の搬送部材は、記録媒体の第1の面に接触する表面に設けられた凹凸により、第1のインクの表面エネルギーよりも低い表面エネルギーを有する。
上記目的を達成するために本開示の第19の態様の画像形成システムは、記録媒体を搬送する第1の搬送部材を有し、第1の搬送部材によって搬送される記録媒体の第1の面に第1のインクを塗布して第1の画像を形成する第1の画像形成装置と、第1の面に第1の画像が形成された記録媒体を搬送し、記録媒体の第1の面と接触する部分の少なくとも一部における表面エネルギーが、第1のインクの表面エネルギーよりも低い第2の搬送部材を有し、第2の搬送部材によって搬送される記録媒体の第1の面と反対側の第2の面に第2のインクを塗布して第2の画像を形成する第2の画像形成装置と、を備え、第1の画像形成装置は、第1の搬送部材によって搬送される記録媒体の第1の面に塗布された第1のインクを乾燥させる第1の乾燥部をさらに有し、第2の画像形成装置は、第の搬送部材によって搬送される記録媒体の第2の面に塗布された第2のインクを乾燥させる第2の乾燥部をさらに有し、第2の搬送部材は、第2の乾燥部における記録媒体の第1の面と接触する部分の少なくとも一部における表面エネルギーが、第1の乾燥部における記録媒体の第2の面と接する部分の表面エネルギーよりも低い。
本開示の第20の態様の画像形成システムは、第19の態様の画像形成システムにおいて、第2の画像形成装置は、第2の画像が形成される前に、第1の画像が形成された記録媒体の第2の面に第2のインクと反応する前処理液を塗布する前処理部をさらに有する。
本開示の第21の態様の画像形成システムは、第19の態様または第20の態様の画像形成システムにおいて、第1のインクはラテックスインクであり、第2の搬送部材の記録媒体の第1の面と接触し、ラテックスインクのガラス転移温度よりも温度が高い部分の表面エネルギーが、第1のインクの表面エネルギーよりも低い。
本開示の第22の態様の画像形成システムは、第19の態様または第20の態様の画像形成システムにおいて、第1のインクはワックスを含み、第2の搬送部材の記録媒体の第1の面と接触し、ワックスの融点よりも温度が高い部分の表面エネルギーが、第1のインクの表面エネルギーよりも低い。
本開示の第23の態様の画像形成システムは、第19の態様または第20の態様の画像形成システムにおいて、第1のインクは、水性インクである。
本開示の第24の態様の画像形成システムは、第19の態様から第23の態様のいずれか1態様の画像形成システムにおいて、記録媒体は、コート紙である。
本開示の第25の態様の画像形成システムは、第19の態様から第24の態様のいずれか1態様の画像形成システムにおいて、第2の搬送部材は、記録媒体の第1の面に接触する表面に設けられた凹凸により、第1のインクの表面エネルギーよりも低い表面エネルギーを有する。
上記目的を達成するために本開示の第26の態様の画像形成システムは、記録媒体を搬送する第1の搬送部材を有し、第1の搬送部材によって搬送される記録媒体の第1の面に第1のインクを塗布して第1の画像を形成する第1の画像形成装置と、第1の面に第1の画像が形成された記録媒体を搬送し、記録媒体の第1の面と接触する部分の少なくとも一部における表面エネルギーが、第1のインクの表面エネルギーよりも低い第2の搬送部材を有し、第2の搬送部材によって搬送される記録媒体の第1の面と反対側の第2の面に第2のインクを塗布して第2の画像を形成する第2の画像形成装置と、を備え、第2の画像形成装置は、第2の画像が形成される前に、第1の画像が形成された記録媒体の第2の面に前第2のインクと反応する前処理液を塗布する前処理部をさらに有する。
本開示の第27の態様の画像形成システムは、第26の態様の画像形成システムにおいて、第1のインクはラテックスインクであり、第2の搬送部材の記録媒体の第1の面と接触し、ラテックスインクのガラス転移温度よりも温度が高い部分の表面エネルギーが、第1のインクの表面エネルギーよりも低い。
本開示の第28の態様の画像形成システムは、第26の態様の画像形成システムにおいて、第1のインクはワックスを含み、第2の搬送部材の記録媒体の第1の面と接触し、ワックスの融点よりも温度が高い部分の表面エネルギーが、第1のインクの表面エネルギーよりも低い。
本開示の第29の態様の画像形成システムは、第26の態様の画像形成システムにおいて、第1のインクは、水性インクである。
本開示の第30の態様の画像形成システムは、第26の態様から第29の態様のいずれか1態様の画像形成システムにおいて、記録媒体は、コート紙である。
本開示の第31の態様の画像形成システムは、第26の態様から第30の態様のいずれか1態様の画像形成システムにおいて、第2の搬送部材は、記録媒体の第1の面に接触する表面に設けられた凹凸により、第1のインクの表面エネルギーよりも低い表面エネルギーを有する。
上記目的を達成するために本開示の第32の態様の画像形成システムは、記録媒体を搬送する第1の搬送部材を有し、第1の搬送部材によって搬送される記録媒体の第1の面に第1のインクを塗布して第1の画像を形成する第1の画像形成装置と、第1の面に第1の画像が形成された記録媒体を搬送し、記録媒体の第1の面と接触する部分の少なくとも一部における表面エネルギーが、第1のインクの表面エネルギーよりも低い第2の搬送部材を有し、第2の搬送部材によって搬送される記録媒体の第1の面と反対側の第2の面に第2のインクを塗布して第2の画像を形成する第2の画像形成装置と、を備え、第1のインクはラテックスインクであり、第2の搬送部材の記録媒体の第1の面と接触し、ラテックスインクのガラス転移温度よりも温度が高い部分の表面エネルギーが、第1のインクの表面エネルギーよりも低い。
上記目的を達成するために本開示の第33の態様の画像形成システムは、記録媒体を搬送する第1の搬送部材を有し、第1の搬送部材によって搬送される記録媒体の第1の面に第1のインクを塗布して第1の画像を形成する第1の画像形成装置と、第1の面に第1の画像が形成された記録媒体を搬送し、記録媒体の第1の面と接触する部分の少なくとも一部における表面エネルギーが、第1のインクの表面エネルギーよりも低い第2の搬送部材を有し、第2の搬送部材によって搬送される記録媒体の第1の面と反対側の第2の面に第2のインクを塗布して第2の画像を形成する第2の画像形成装置と、を備え、第1のインクはワックスを含み、第2の搬送部材の記録媒体の第1の面と接触し、ワックスの融点よりも温度が高い部分の表面エネルギーが、第1のインクの表面エネルギーよりも低い。
本開示の第34の態様の画像形成システムは、第32の態様または第33の態様の画像形成システムにおいて、記録媒体は、コート紙である。
本開示の第35の態様の画像形成システムは、第32の態様から第34の態様のいずれか1態様の画像形成システムにおいて、第2の搬送部材は、記録媒体の第1の面に接触する表面に設けられた凹凸により、第1のインクの表面エネルギーよりも低い表面エネルギーを有する。
上記目的を達成するために本開示の第36の態様の画像形成システムは、記録媒体を搬送する第1の搬送部材を有し、第1の搬送部材によって搬送される記録媒体の第1の面に第1のインクを塗布して第1の画像を形成する第1の画像形成装置と、第1の面に第1の画像が形成された記録媒体を搬送し、記録媒体の第1の面と接触する部分の少なくとも一部における表面エネルギーが、第1のインクの表面エネルギーよりも低い第2の搬送部材を有し、第2の搬送部材によって搬送される記録媒体の第1の面と反対側の第2の面に第2のインクを塗布して第2の画像を形成する第2の画像形成装置と、を備え、記録媒体は、コート紙である。
本開示の第37の態様の画像形成システムは、第36の態様の画像形成システムにおいて、第2の搬送部材は、記録媒体の第1の面に接触する表面に設けられた凹凸により、第1のインクの表面エネルギーよりも低い表面エネルギーを有する。
上記目的を達成するために本開示の第38の態様の画像形成システムは、記録媒体を搬送する第1の搬送部材を有し、第1の搬送部材によって搬送される記録媒体の第1の面に第1のインクを塗布して第1の画像を形成する第1の画像形成装置と、第1の面に第1の画像が形成された記録媒体を搬送し、記録媒体の第1の面と接触する部分の少なくとも一部における表面エネルギーが、第1のインクの表面エネルギーよりも低い第2の搬送部材を有し、第2の搬送部材によって搬送される記録媒体の第1の面と反対側の第2の面に第2のインクを塗布して第2の画像を形成する第2の画像形成装置と、を備え、第2の搬送部材は、記録媒体の第1の面に接触する表面に設けられた凹凸により、第1のインクの表面エネルギーよりも低い表面エネルギーを有する。
本開示の第39の態様の画像形成システムは、第1の態様から第38の態様のいずれか1態様の画像形成システムにおいて、第1のインクの表面エネルギーよりも低い第2の搬送部材の表面エネルギーは、30mN/m以下である。
本開示の第40の態様の画像形成システムは、第1の態様から第39の態様のいずれか1態様の画像形成システムにおいて、第2の画像形成装置は、第2の搬送部材における記録媒体の第1の面と接触する部分の少なくとも一部における表面エネルギーに係わる構成以外は、第1の画像形成装置と同様の構成である。
本開示の第41の態様の画像形成システムは、第1の態様から第40の態様のいずれか1態様の画像形成システムにおいて、第2の搬送部材における記録媒体の第2の面と接触する部分の少なくとも一部における表面エネルギーが、第2のインクの表面エネルギーよりも低い。
本開示の第42の態様の画像形成システムは、第1の態様から第41の態様のいずれか1態様の画像形成システムにおいて、第1の画像形成装置は、第1のインクを吐出するヘッドと記録媒体との1回の相対移動によって記録媒体への第1の画像の形成を完成させるシングルパス方式の画像形成装置である。
【発明の効果】
【0022】
本開示によれば、記録媒体の第1の面に第1の画像を形成した後に、第1の面と反対側の第2の面に第2の画像を形成する工程において、第1の面に形成された画像に画像欠陥が生じるのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】実施形態の画像形成システムの構成の一例の概略図である。
図2A】画像に生じるオフセットを説明するための図である。
図2B】画像に生じるオフセットを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、各実施形態は本発明を限定するものではない。
【0025】
図1を参照して本実施形態の画像形成システム10について説明する。なお、一例として本実施形態の画像形成システム10に、連続用紙である記録媒体19の両面(表面19A及び裏面19B)に、シングルパス方式で画像を形成するインクジェットプリンタを適用した形態について説明する。シングルパス方式とは、インクを吐出するヘッドと記録媒体との1回の相対移動によって記録媒体への画像の形成を完成させる方式である。なお、本実施形態の表面19Aが本開示の第1の面の一例であり、裏面19Bが本開示の第2の面の一例である。
【0026】
図1には、本実施形態の画像形成システム10全体の構成の一例を表す概略図が示されている。図1に示すように、本実施形態の画像形成システム10は、送出装置12、第1の画像形成装置14、第2の画像形成装置14、反転装置16、及び巻取装置18を備える。なお、第1の画像形成装置14及び第2の画像形成装置14について、個々を区別せずに総称する場合は、個々を区別するための符号「1」及び「2」の記載を省略し、単に「画像形成装置14」という。また、第1の画像形成装置14及び第2の画像形成装置14の各々が備える各部材の名称についても、個々を区別せずに総称する場合は、個々を区別するための符号「1」及び「2」の記載を省略する。
【0027】
送出装置12は、連続用紙である記録媒体19を給紙するための給紙ロール13を備える。給紙ロール13には、用紙搬送方向に長尺状の記録媒体19が巻き付けられており、画像形成に応じて記録媒体19が、第1の画像形成装置14に搬送される。
【0028】
第1の画像形成装置14は、記録媒体19の表面19Aに画像を形成する装置である。本実施形態の第1の画像形成装置14は、前処理部20、画像形成部30、及び乾燥部40を有する。
【0029】
前処理部20は、画像形成部30において画像が形成される表面19Aに、前処理を行う機能を有する。図1に示すように本実施形態の前処理部20は、塗布ロール22、対向ローラ24、及び前処理液乾燥部26を含む。また、前処理部20は、搬送ローラ21、25、及び27を含み、搬送ローラ21、25、及び27によって、記録媒体19が搬送される。
【0030】
塗布ロール22には、図示を省略した前処理液供給部により、予め定められた量の前処理液が塗布される。塗布ロール22によって、記録媒体19の表面19Aに、均一に前処理液が塗布される。前処理液は、画像形成部30において画像が形成される前に、画像を形成する表面19Aを前処理するための液体である。前処理液としては、画像の形成に用いられるインクと反応する液体が挙げられ、例えば、インク中の成分を凝集させる凝集剤を含有する液体が挙げられる。この場合の凝集剤としては、多価金属化合物、有機酸、金属錯体、及び水溶性カチオン性ポリマー等が挙げられる。
【0031】
塗布ロール22と対向ローラ24との間を通った記録媒体19は、前処理液乾燥部26に搬送される。前処理液乾燥部26は、記録媒体19の表面19Aに塗布された前処理液を乾燥する機能を有する。前処理液乾燥部26が前処理液を乾燥させる手段は限定されない。乾燥手段としては、例えば、ヒータ等の公知の加熱手段や、ドライヤ等の送風または熱風を利用した送風手段等を用いることができる。また、前処理液乾燥部26に含まれる搬送ローラ25に加熱手段を設けてもよい。前処理液乾燥部26を通過した記録媒体19は、搬送ローラ27によって、後段の画像形成部30に搬送される。
【0032】
本実施形態の画像形成部30は、上述したようにシングルパスのインクジェット方式により、記録媒体19の表面19Aに画像を形成する機能を有する。本実施形態の画像形成部30が記録媒体19の表面19Aに形成する画像が、本開示の第1の画像の一例である。図1に示すように本実施形態の画像形成部30は、描画ドラム32、及びインクジェットヘッド34K、34C、34M、34Yを含む。また、画像形成部30は、搬送ローラ31及び33を有する。
【0033】
搬送ローラ31及び33によって搬送された記録媒体19は、描画ドラム32の外周面に表面19Aを外側に向けて保持された状態で搬送され、表面19Aにインクジェットヘッド34K、34C、34M、及び34Yの各々からインクが付与される。インクジェットヘッド34K、34C、34M、及び34Yの各々から付与されるインクが、本開示の第1のインクの一例である。本実施形態のインクジェットヘッド34K、34C、34M、及び34Yの各々は、記録媒体19における画像形成領域の最大幅に対応する長さを有するフルライン型のインクジェット方式のヘッドである。インクジェットヘッド34Kは黒色(K)のインクを吐出し、インクジェットヘッド34Cはシアン色(C)のインクを吐出し、インクジェットヘッド34Mはマゼンタ色(M)のインクを吐出し、インクジェットヘッド34Yは黄色(Y)のインクを吐出する。インク吐出面には、画像形成領域の全幅にわたってインク吐出用のノズル(図示省略)が複数配列されたノズル列が形成されている。
【0034】
描画ドラム32上に保持された記録媒体19の表面19Aに向けてインクジェットヘッド34K、34C、34M、及び34Yの各々から、対応する色のインクの液滴が吐出されることにより、前処理部20で予め表面19Aに塗布された前処理液にインクが接触し、インク中に分散する色材が凝集され、色材の凝集体が形成される。これにより、記録媒体19上での色材流れなどが防止され、記録媒体19の表面19Aに画像が形成される。表面19Aに画像が形成された記録媒体19は、画像形成部30から乾燥部40に搬送される
【0035】
乾燥部40は、記録媒体19の表面19Aに塗布されたインクを乾燥させる機能を有する。図1に示すように本実施形態の乾燥部40は、乾燥ドラム42を有するインク乾燥部44を含む。また、乾燥部40は、搬送ローラ45、47、及び49を含み、搬送ローラ45、47、及び49によって、記録媒体19が搬送される。
【0036】
インク乾燥部44は、記録媒体19の表面19Aに塗布されたインクを乾燥する機能を有する。記録媒体19は、インク乾燥部44の乾燥ドラム42の外周面に表面19Aを外側に向けた状態に保持されて搬送される。なお、インク乾燥部44がインクを乾燥させる手段は限定されない。乾燥手段としては、例えば、ヒータ等の公知の加熱手段や、ドライヤ等の送風または熱風を利用した送風手段等を用いることができる。また、乾燥ドラム42に加熱手段を設けてもよい。インク乾燥部44を通過した記録媒体19は、搬送ローラ45、47、及び49によって、後段の反転装置16に搬送される。
【0037】
なお、上述した第1の画像形成装置14の搬送ローラ21、塗布ロール22、対向ローラ24、搬送ローラ25、27、搬送ローラ31、33、45、47、49、描画ドラム32、乾燥ドラム42が、本開示の第1の搬送部材の一例である。これらのうち、塗布ロール22、及び搬送ローラ27、33、45、47、49が記録媒体19の表面19Aに接触する。また、対向ローラ24、搬送ローラ25、搬送ローラ31、描画ドラム32、乾燥ドラム42が記録媒体19の裏面19Bに接触する。
【0038】
反転装置16は、図示を省略したターンバー機構を備え、記録媒体19の表面19Aと裏面19Bとを入れ替える(反転させる)機能を有する。反転装置16により表裏が反転された記録媒体19は、裏面19Bを上(図1における上側)にした状態で、後段の第2の画像形成装置14に搬送される。
【0039】
本実施形態の第2の画像形成装置14は、記録媒体19の裏面19Bに画像を形成する装置である。本実施形態の第2の画像形成装置14は、第1の画像形成装置14と同様の構成を有し、前処理部20、画像形成部30、及び乾燥部40を有する。
【0040】
前処理部20は、画像形成部30において画像が形成される裏面19Bに、前処理を行う機能を有する。図1に示すように本実施形態の前処理部20は、塗布ロール22、対向ローラ24、及び前処理液乾燥部26を含む。また、前処理部20は、搬送ローラ21、25、及び27を含み、搬送ローラ21、25、及び27によって、記録媒体19が搬送される。塗布ロール22と同様に、塗布ロール22によって、記録媒体19の裏面19Bに、均一に前処理液が塗布される。
【0041】
塗布ロール22と対向ローラ24との間を通った記録媒体19は、前処理液乾燥部26に搬送される。前処理液乾燥部26と同様に、前処理液乾燥部26は、記録媒体19の裏面19Bに塗布された前処理液を乾燥する機能を有する。前処理液乾燥部26を通過した記録媒体19は、搬送ローラ27によって、後段の画像形成部30に搬送される。
【0042】
本実施形態の画像形成部30は、画像形成部30と同様に、上述したようにシングルパスのインクジェット方式により、記録媒体19の裏面19Bに画像を形成する機能を有する。本実施形態の画像形成部30が記録媒体19の裏面19Bに形成する画像が、本開示の第2の画像の一例である。図1に示すように本実施形態の画像形成部30は、描画ドラム32、及びインクジェットヘッド34K、34C、34M、34Yを含む。また、画像形成部30は、搬送ローラ31及び33を有する。
【0043】
搬送ローラ31及び33によって搬送された記録媒体19は、描画ドラム32の外周面に裏面19Bを外側に向けて保持された状態で搬送され、裏面19Bにインクジェットヘッド34K、34C、34M、及び34Yの各々からインクが付与される。インクジェットヘッド34K、34C、34M、及び34Yの各々から付与されるインクが、本開示の第2のインクの一例である。裏面19Bに画像が形成された記録媒体19は、画像形成部30から乾燥部40に搬送される
【0044】
乾燥部40と同様に乾燥部40は、記録媒体19の裏面19Bに塗布されたインクを乾燥させる機能を有する。図1に示すように本実施形態の乾燥部40は、乾燥ドラム42を有するインク乾燥部44を含む。また、乾燥部40は、搬送ローラ45、47、及び49を含み、搬送ローラ45、47、及び49によって、記録媒体19が搬送される。
【0045】
インク乾燥部44と同様にインク乾燥部44は、記録媒体19の裏面19Bに塗布されたインクを乾燥する機能を有する。記録媒体19は、インク乾燥部44の乾燥ドラム42の外周面に裏面19Bを外側に向けた状態に保持されて搬送される。インク乾燥部44を通過した記録媒体19は、搬送ローラ45、47、及び49によって、後段の巻取装置18に搬送される。
【0046】
なお、上述した第2の画像形成装置14の搬送ローラ21、塗布ロール22、対向ローラ24、搬送ローラ25、27、31、33、45、47、49、描画ドラム32、乾燥ドラム42が、本開示の第2の搬送部材の一例である。これらのうち、塗布ロール22、及び搬送ローラ27、33、45、47、49が記録媒体19の裏面19Bに接触する。また、対向ローラ24、搬送ローラ25、搬送ローラ31、描画ドラム32、乾燥ドラム42が記録媒体19の表面19Aに接触する。
【0047】
巻取装置18は、表面19A及び裏面19Bの両面に画像が形成された記録媒体19を巻き取る機能を有する。図1に示すように本実施形態の巻取装置18は、巻取ロール17、及び搬送ローラ51、53を含む。搬送ローラ51及び搬送ローラ53により搬送された記録媒体19は、裏面19Bを外側に向けた状態で巻取ロール17によって巻き取られる。
【0048】
このように、第1の画像形成装置14と第2の画像形成装置14とは、前処理部20、画像形成部30、及び乾燥部40を有する点で同様である。また、第1の画像形成装置14と第2の画像形成装置14とは、記録媒体19を搬送する搬送部材として、搬送ローラ21、塗布ロール22、対向ローラ24、搬送ローラ25、27、31、33、45、47、49、描画ドラム32、乾燥ドラム42を含む点で、同様である。
【0049】
一方、第1の画像形成装置14と、第2の画像形成装置14とでは、搬送される記録媒体19に画像が形成されている面について相違する。具体的には、第1の画像形成装置14を搬送される記録媒体19の裏面19Bには画像が形成されていない状態のままである。これに対して第2の画像形成装置14を搬送される記録媒体19の表面19Aには画像が形成された状態のままである。すなわち、第2の画像形成装置14の対向ローラ24、搬送ローラ25、搬送ローラ31、描画ドラム32、乾燥ドラム42の各々は、第1の画像形成装置14によって画像が形成された記録媒体19の表面19Aに接触することになる。
【0050】
そこで、本実施形態の画像形成システム10では、第2の画像形成装置14の対向ローラ24、搬送ローラ25、搬送ローラ31、描画ドラム32、乾燥ドラム42の各々の表面エネルギーが、表面19Aの画像の形成に用いたインクの表面エネルギーよりも低い。
【0051】
本実施形態と異なり、第2の画像形成装置14の対向ローラ24、搬送ローラ25、搬送ローラ31、描画ドラム32、乾燥ドラム42の各々の表面エネルギーが、表面19Aの画像の形成に用いたインクの表面エネルギーよりも高い場合、インクが上記のローラまたはドラムと接触によって剥がれ、表面19Aに形成された画像に画像欠陥が生じる場合がある。このような画像欠陥としては、例えば、オフセットが知られている。図2Aに示したように、記録媒体19に形成された画像60にオフセットが生じた場合、例えば、図2Bに示すように、画像(インク)が剥がれて欠陥62が生じた画像60となる。このように、形成された画像(インク)が剥がれることにより生じる画像欠陥をオフセットという。
【0052】
画像の形成に用いたインクの表面エネルギーよりも、表面エネルギーが高い部材に接触した場合、オフセットのような画像欠陥が生じやすくなる。表面エネルギーとは、表面自由エネルギーともいい、固体に働く表面張力のことであり、その固体が有する、別の液体や固体に対する濡れやすさを表している。表面エネルギーが低いほど、濡れ難くなり、一方、表面エネルギーが高いほど、濡れ易くなる。具体的には、固体の表面エネルギーは、その固体が有する分子間力の和で構成される。
【0053】
すなわち、インクを用いて形成された画像に接触する搬送部材の表面エネルギーが高いほど、画像が剥がれ易くなり、オフセットが生じ易くなる。具体的には、画像に接触する搬送部材の表面エネルギーが、画像の形成に用いられたインクよりも高いと、画像が剥がれ易くなり、オフセットが生じ易くなる。
【0054】
そのため、本実施形態の画像形成システム10では、上述のように、第2の画像形成装置14の対向ローラ24、搬送ローラ25、搬送ローラ31、描画ドラム32、乾燥ドラム42の各々の表面エネルギーを、表面19Aの画像の形成に用いたインクの表面エネルギーよりも低くしている。なお、以下では、第2の画像形成装置14において、記録媒体19の表面19Aと接触する搬送部材である、対向ローラ24、搬送ローラ25、搬送ローラ31、描画ドラム32、乾燥ドラム42を総称する場合、「第2の画像形成装置14における表面19Aに接触する搬送部材」という。
【0055】
なお、第2の画像形成装置142の後段に設けられた巻取装置18においても、搬送ローラ51及び53は、画像が形成された状態の記録媒体19の表面19Aに接触するため、第2の画像形成装置14における表面19Aに接触する搬送部材と同様に、表面エネルギーを低くすることが好ましい。
【0056】
画像の形成に汎用される水性インクの表面エネルギーは、30mN/m~40mN/m程度であることが知られている。本実施形態の画像形成システム10では、画像形成部30のインクジェットヘッド34K、34C、34M、34Yの各々から吐出されるインクの表面エネルギーは、30mN/m~40mN/mである。そのため、第2の画像形成装置14における表面19Aに接触する搬送部材の表面エネルギーは、30mN/m以下が好ましい。
【0057】
第2の画像形成装置14における表面19Aに接触する搬送部材の表面エネルギーを低くする方法は限定されないが、例えば、搬送部材の少なくとも表面を、表面エネルギーが低い部材で形成することが挙げられる。表面エネルギーが低い材料としては、PTFE(Poly Tetra Fluoro Ethylene:ポリテトラフルオロエチレン)、ETFE(Ethylene TetraFluoro Ethylene:エチレンテトラフルオロエチレン共重合体)、及びFDTS(1H,1H,2H,2H-パーフルオロデシルトリクロロシラン)樹脂等のフッ素樹脂系材料が挙げられる。また、表面エネルギーが低い材料としては、PTA(Pure Terephthalic Acid:高純度テレフタル酸)、PEEK(Poly Ether Ether Ketone:ポリエーテルエーテルケトン)、及びシリコーン系コート剤等が挙げられる。
【0058】
また、例えば、第2の画像形成装置14における表面19Aに接触する搬送部材の表面に凹凸を設ける等により、搬送部材の表面の構造的に表面エネルギーを低くしてもよい。表面に微細な凹凸を有することにより、表面と液体との界面に空隙を多く含むため、撥水性を高くすることができる。なお、このように、表面の構造を、撥水性を有する構造とする場合、化学的な劣化が発生しにくくなるため、長期間使用する場合に好ましい。
【0059】
なお、本実施形態では、第1の画像形成装置14については、搬送部材における表面エネルギーを考慮せず、汎用的な搬送部材を用いている。汎用的な搬送部材の材料として採用されるステンレスの表面エネルギーは、1000mN/mである。
【0060】
なお、第1の画像形成装置14についても、搬送部材である対向ローラ24、搬送ローラ25、搬送ローラ31、描画ドラム32、乾燥ドラム42の表面エネルギーを低くしてもよいが、この場合、搬送部材の表面エネルギーを低くするためのコストを要する。これに対して、本実施形態の画像形成システム10では、第2の画像形成装置14における表面19Aに接触する搬送部材のみ、表面エネルギーを低くするため、低コストで、記録媒体19の表面19Aに形成された画像に発生するオフセットを抑制することができる。
【0061】
なお、画像形成部30における画像の形成に用いるインクが水性インクの場合、インクに含まれている水分を蒸発させるための乾燥工程が必要となり、上述したオフセットが発生し易くなる傾向がある。そのため、画像形成部30における画像の形成に用いるインクが水性インクの場合、第2の画像形成装置14における表面19Aに接触する搬送部材の表面エネルギーを低くすることで、オフセットを抑制する効果が顕著に発揮される。
【0062】
また、画像形成部30における画像の形成に用いるインクがラテックスインクやワックス等の粘着性のある樹脂が含まれるインクの場合、形成された画像がベタつき易いため、上述したオフセットが発生し易くなる傾向がある。そのため、画像形成部30における画像の形成に用いるインクが粘着性のある樹脂が含まれるインクの場合、第2の画像形成装置14における表面19Aに接触する搬送部材の表面エネルギーを低くすることで、オフセットを抑制する効果が顕著に発揮される。
【0063】
また、本実施形態の画像形成システム10のように、前処理液が塗布された上に、画像を形成する場合、インクの溶剤が記録媒体19の表面に残り易いため、上述したオフセットが発生易くなる傾向がある。そのため、前処理液が塗布された上に、画像を形成する場合、第2の画像形成装置14における表面19Aに接触する搬送部材の表面エネルギーを低くすることで、オフセットを抑制する効果が顕著に発揮される。
【0064】
また、本実施形態の画像形成システム10のように、シングルパス方式の場合、インクを吐出するヘッドと記録媒体との複数回の相対移動によって記録媒体への画像の形成を完成させるマルチパス方式に比べて、インクの乾燥時間が短くなる。インクが乾燥しきれない状態では、上述したオフセットが発生易くなる傾向がある。そのため、シングルパス方式で画像を形成する場合、第2の画像形成装置14における表面19Aに接触する搬送部材の表面エネルギーを低くすることで、オフセットを抑制する効果が顕著に発揮される。
【0065】
また、記録媒体19として印刷用紙に表面にコート層が形成されたコート紙を用いる場合、コート紙に水が含まれているとコート層が弱くなり、コート紙に形成された画像がコート層と共に剥がれて、上述したオフセットが発生易くなる傾向がある。そのため、記録媒体19がコート紙である場合、第2の画像形成装置14における表面19Aに接触する搬送部材の表面エネルギーを低くすることで、オフセットを抑制する効果が顕著に発揮される。
【0066】
なお、本実施形態では、第2の画像形成装置14における表面19Aに接触する搬送部材の全てについて、表面エネルギーを、表面19Aの画像の形成に用いたインクの表面エネルギーよりも低くする形態について説明したが、これら搬送部材の全てについて、表面エネルギーを低くしなくてもよい。これらのうちの少なくとも一部の搬送部材について表面エネルギーを低くすることにより、記録媒体19の表面19Aに形成されたオフセット等の画像欠陥を抑制する効果が得られる。なお、高温な搬送部材に接触した場合、インク内の溶剤の強度が低下して柔らかくなり、オフセットが発生し易くなる傾向がある。そのため、画像形成部30において、第2の画像形成装置14における表面19Aに接触する搬送部材のうち、温度が比較的、高温となる搬送部材について、表面エネルギーを低くすることが好ましい。
【0067】
特に、ラテックスインクの場合、温度が比較的、高温となる搬送部材について、表面エネルギーを低くすることが好ましい。例えば、第2の画像形成装置14における表面19Aに接触する搬送部材の最高温度Tpがインクのガラス転移温度Tgよりも高い場合、インクが軟化して最高温度Tpとなった部材にインクが付着してオフセットが発生し易くなる。そのため、インクのガラス転移温度Tgよりも、第2の画像形成装置14における表面19Aに接触する搬送部材のうち、最高温度Tpが高い部材が存在する場合、少なくとも最高温度Tpがインクのガラス転移温度Tgよりも高い部材については、表面エネルギーを低くすることが好ましい。換言すると、表面19Aの画像の形成に用いられるインクのガラス転移温度Tgよりも温度が高い、第2の画像形成装置14における表面19Aに接触する搬送部材の表面エネルギーを、表面19Aの画像の形成に用いられるインクの表面エネルギーよりも低くすることが好ましい。なお、表面19Aの画像の形成に用いるインクのガラス転移温度Tgの具体例としては、約100度が挙げられる。
【0068】
また例えば、第2の画像形成装置14における表面19Aに接触する搬送部材のうち、最高温度Tpがインクに含まれるワックスの融点Twよりも高い部材が存在する場合、インクが軟化して最高温度Tpがワックスの融点Twよりも高い部材にインクが付着してオフセットが発生し易くなる。そのため、インクに含まれるワックスの融点Twよりも、第2の画像形成装置14における表面19Aに接触する搬送部材のうち、最高温度Tpがワックスの融点Twよりも高い部材が存在する場合、少なくとも最高温度Tpがワックスの融点Twよりも高い部材については、表面エネルギーを低くすることが好ましい。換言すると、表面19Aの画像の形成に用いられるインクに含まれるワックスの融点Twよりも温度が高い、第2の画像形成装置14における表面19Aに接触する搬送部材の表面エネルギーを、表面19Aの画像の形成に用いられるインクの表面エネルギーよりも低くすることが好ましい。なお、表面19Aの画像の形成に用いるインクに含まれるワックスの融点Twの具体例としては、約100度が挙げられる。
【0069】
第2の画像形成装置14における表面19Aに接触する搬送部材のうち、最高温度Tpが、インクのガラス転移温度Tgまたはワックスの融点Twよりも高い部材としては、前処理液乾燥部26に設けられた搬送ローラ25、及びインク乾燥部44に設けられた乾燥ドラム42等が挙げられる。このような高温となる搬送部材の表面エネルギーを低くするための材料としては、PTFE等、耐熱性が高い、フッ素樹脂材料が挙げられる。
【0070】
以上説明したように、上記各形態の画像形成システム10は、画像形成装置14と、第2の画像形成装置14とを備える。画像形成装置14は、記録媒体19を搬送する搬送部材を有し、搬送部材によって搬送される記録媒体19の表面19Aにインクを塗布して画像を形成する。画像形成装置14は、表面19Aに画像が形成された記録媒体19を搬送し、記録媒体19の表面19Aと接触する部分の少なくとも一部における表面エネルギーが、第1の画像形成装置14におけるインクの表面エネルギーよりも低い搬送部材を有し、搬送部材によって搬送される記録媒体19の表面19Aと反対側の裏面19Bにインクを塗布して画像を形成する。
【0071】
従って、本構成の画像形成システム10によれば、記録媒体19の表面19Aに画像を形成した後に、表面19Aと反対側の裏面19Bに画像を形成する工程において、表面19Aに形成された画像に画像欠陥が生じるのを抑制することができる。
【0072】
なお、上記実施形態で説明した画像形成システム10の構成等は、一例であり、主旨を逸脱しない範囲内において状況に応じて変更してもよい。例えば、上記実施形態では、第1の画像形成装置14及び第2の画像形成装置14について、第2の画像形成装置14における表面19Aに接触する搬送部材の表面エネルギー以外は同様の構成としていたが、その他の構成についても異なっていてもよい。
【0073】
また例えば、上記実施形態では、K、C、M、及びYの4色のインクにより画像を形成する形態について説明したが、画像を形成するインクの色や色数の組合せについては特に限定されず、必要に応じて淡インク、濃インク、及び特別色インク等を追加してもよい。また、インクジェットヘッド34K、34C、34M、34Y等、各色のインクを吐出するヘッドの配置順序も特に限定はない。
【符号の説明】
【0074】
10 画像形成システム
12 送出装置
13 給紙ロール
14 第1の画像形成装置、14 第2の画像形成装置
16 反転装置
17 巻取ロール
18 巻取装置
19 記録媒体、19A 表面、19B 裏面
20、20 前処理部
21、21、25、25、27、27、31、31、33、33、45、45、47、47、49、49、51、53 搬送ローラ
22、22 塗布ローラ
24、24 対向ローラ
26、26 前処理液乾燥部
30、30 画像形成部
32、32 描画ドラム
34Y、34Y、34M、34M、34C、34C、34K、34K インクジェットヘッド
40、40 乾燥部
42、42 乾燥ドラム
44、44 インク乾燥部
60 画像
62 欠陥
図1
図2A
図2B