(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-07
(45)【発行日】2023-12-15
(54)【発明の名称】画像処理装置、撮像装置、画像処理方法及び画像処理プログラム
(51)【国際特許分類】
H04N 25/70 20230101AFI20231208BHJP
【FI】
H04N25/70
(21)【出願番号】P 2021574004
(86)(22)【出願日】2021-01-25
(86)【国際出願番号】 JP2021002355
(87)【国際公開番号】W WO2021153472
(87)【国際公開日】2021-08-05
【審査請求日】2022-09-06
(31)【優先権主張番号】P 2020015550
(32)【優先日】2020-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【氏名又は名称】松浦 憲三
(74)【代理人】
【識別番号】100170069
【氏名又は名称】大原 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【氏名又は名称】松村 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【氏名又は名称】松浦 憲政
(72)【発明者】
【氏名】岡田 和佳
(72)【発明者】
【氏名】岸根 慶延
(72)【発明者】
【氏名】川中子 睦
(72)【発明者】
【氏名】平川 友也
【審査官】橘 高志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/081925(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/074064(WO,A1)
【文献】特開2016-171368(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 25/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサと、偏光方向間の関係を記憶するメモリとを備え、前記プロセッサが画像処理を行う画像処理装置であって、
前記プロセッサは、
nを4以上の整数とすると、2次元状に配列された光電変換素子からなる複数の画素に、偏光方向がそれぞれ異なるn個の第1偏光子が規則的に設けられた撮像素子から第1画像データを取得する取得処理と、
前記第1画像データをデモザイク処理し、異なる前記偏光方向に応じたn枚の第1偏光画像データを生成する第1偏光画像データ生成処理と、
前記n枚の第1偏光画像データと前記メモリに記憶された前記偏光方向間の関係とを使用し、n枚以下の第2偏光画像データを生成する第2偏光画像データ生成性処理と、
を行う画像処理装置。
【請求項2】
前記偏光方向間の関係は、前記n個の第1偏光子が有する特性と前記第1偏光子に対応する画素の物理量との関係である請求項1記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記nが4の場合において、
前記第1画像データから偏光方向毎に分離した4枚の偏光画像データを、それぞれI
1、I
2、I
3、I
4とすると、前記プロセッサは、次式、
【数1】
(ただし、aはパラメータ)
の演算を行い、前記デモザイク処理された4枚の第1偏光画像データを生成する、
請求項1又は2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記nが4の場合において、
前記メモリは、
前記n個の前記第1偏光子の偏光方向間の関係として、次の行列、
【数2】
(ただし、l
1~l
3、c
0~c
3は係数である)
を記憶し、
前記n枚の第1偏光画像データの各画素位置に元から存在する第1画素値をx
0とし、
前記画素位置において、前記デモザイク処理により生成された3つの第2画素値をそれぞれx
1demo、x
2demo、x
3demoとすると、
前記プロセッサは、4枚以下の前記第2偏光画像データを生成するための、前記画素位置において生成する3個の画素値(x
1r、x
2r、x
3r)を、次式、
【数3】
により算出する、
請求項1から3のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記撮像素子に光量分布が均一な非偏光の光が入射した場合に得られる隣接画素の4つの偏光情報をx
0~x
3とすると、前記係数c
0~c
3と前記偏光情報x
0~x
3とは、次式、
【数4】
を満たす、
請求項4に記載の画像処理装置。
【請求項6】
パラメータiを1~3とし、前記[数
2]で表した行列内の係数l
1、l
2、l
3をl
i、係数c
1、c
2、c
3をc
iで表すと、前記l
iは、次式、
【数10】
(ただし、行列Aを、前記撮像素子から取得した4つの偏光情報から別の4個の物理量への変換を与えるm行4列の行列とすると、前記[数10]式中の行列Bは、A
TAの第(i+1)行、及び第(j+1)列を除去した3行3列の行列Bの余因子行列である)
で表される、
請求項4又は5に記載に画像処理装置。
【請求項7】
前記行列Aは、4行4列の単位行列である、
請求項6に記載の画像処理装置。
【請求項8】
パラメータiを1~3とし、前記[数2]で示した行列内の係数l
1、l
2、l
3をl
iとし、係数c
1、c
2、c
3をc
iとすると、前記l
iは、次式、
【数18】
で表される、
請求項4から7のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項9】
撮影光学系と、
nを4以上の整数とすると、2次元状に配列された光電変換素子からなる複数の画素に、偏光方向がそれぞれ異なるn個の第1偏光子が規則的に設けられた撮像素子と、
請求項1から8のいずれか1項に記載の画像処理装置と、を備え、
前記プロセッサは、前記撮像素子から第1画像データを取得する、
撮像装置。
【請求項10】
瞳領域が第1瞳領域、第2瞳領域及び第3瞳領域に分割され、前記第1瞳領域、第2瞳領域及び第3瞳領域を通過する光をそれぞれ異なる方向に偏光する3個の第2偏光子と、
前記第1瞳領域、第2瞳領域及び第3瞳領域からそれぞれ異なる波長帯域の光を通過させる3個の波長選択素子と、を含む撮影光学系と、
2次元状に配列された光電変換素子からなる複数の画素に、偏光方向がそれぞれ異なる4つの第1偏光子が規則的に設けられた撮像素子と、
請求項6に記載の画像処理装置と、を備え、
前記プロセッサは、前記撮像素子から前記第1画像データを取得し、
前記行列Aは、前記第1画像データから、3つの各波長帯域の光の混信が除去された3つの各波長帯域の光に対応した3枚の画像データを算出する際の混信除去行列である、
撮像装置。
【請求項11】
プロセッサと、偏光方向間の関係を記憶するメモリとを備え、前記プロセッサが画像処理を行う画像処理方法であって、
nを4以上の整数とすると、2次元状に配列された光電変換素子からなる複数の画素に、偏光方向がそれぞれ異なるn個の第1偏光子が規則的に設けられた撮像素子から第1画像データを取得するステップと、
前記第1画像データをデモザイク処理し、偏光方向が異なるn枚の第1偏光画像データを生成するステップと、
前記n枚の第1偏光画像データと前記メモリに記憶された前記偏光方向間の関係とを使用し、n枚以下の第2偏光画像データを生成するステップと、
を含む画像処理方法。
【請求項12】
nを4以上の整数とすると、2次元状に配列された光電変換素子からなる複数の画素に、偏光方向がそれぞれ異なるn個の第1偏光子が規則的に設けられた撮像素子から第1画像データを取得する機能と、
前記第1画像データをデモザイク処理し、偏光方向が異なるn枚の第1偏光画像データを生成する機能と、
前記n枚の第1偏光画像データと前記n個の第1偏光子の偏光方向間の関係とを使用し、n枚以下の第2偏光画像データを生成する機能と、
をコンピュータにより実現させる画像処理プログラム。
【請求項13】
非一時的かつコンピュータ読取可能な記録媒体であって、請求項12に記載の画像処理プログラムが記録された記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像処理装置、撮像装置、画像処理方法及び画像処理プログラムに係り、特に撮像素子から取得した偏光画像データから、複数枚の偏光画像データを生成する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の撮像素子は、アレイ状に配列され、それぞれ特定の色および偏光角度の光を検出する複数の受光ユニット(セル)を備え、複数のセルは、検出する色および偏光角度の双方が隣接するセル間で異なっている。
【0003】
具体的には、複数のセルには、偏光角度0°、45°、90°、135°のいずれかの偏光角度の光を透過させる偏光子(偏光フィルタ)が設けられ、更に赤色、緑色、青色(RGB)のいずれかの色フィルタが設けられている。
【0004】
これにより、偏光角度0°、45°、90°、135°毎に、RGBの画像(偏光画像)の生成を可能にしている。
【0005】
また、特許文献1には、偏光RAW画像をデモザイクして偏光角度の異なる複数の偏光画像を生成する画像処理部が記載されている。ここで、デモザイクとは、撮像素子で捉えた画素群に基づき、同一偏光角度毎に偏光画像を生成する処理である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示の技術に係る一つの実施形態は、撮像素子から取得した偏光画像データから、複数枚の偏光画像データを良好に生成する画像処理装置、撮像装置、画像処理方法及び画像処理プログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1態様に係る発明は、プロセッサと、偏光方向間の関係を記憶するメモリとを備え、プロセッサが画像処理を行う画像処理装置であって、プロセッサは、nを4以上の整数とすると、2次元状に配列された光電変換素子からなる複数の画素に、偏光方向がそれぞれ異なるn個の第1偏光子が規則的に設けられた撮像素子から第1画像データを取得する取得処理と、第1画像データをデモザイク処理し、異なる偏光方向に応じたn枚の第1偏光画像データを生成する第1偏光画像データ生成処理と、n枚の第1偏光画像データとメモリに記憶された偏光方向間の関係とを使用し、n枚以下の第2偏光画像データを生成する第2偏光画像データ生成処理と、を行う。
【0009】
本発明の第2態様に係る画像処理装置において、偏光方向間の関係は、n個の第1偏光子が有する特性と第1偏光子に対応する画素の物理量との関係であることが好ましい。
【0010】
本発明の第3態様に係る画像処理装置において、nが4の場合において、
第1画像データから偏光方向毎に分離した4枚の偏光画像データを、それぞれI1、I2、I3、I4とすると、プロセッサは、次式、
【0011】
【0012】
(ただし、aはパラメータ)
の演算を行い、デモザイク処理された4枚の第1偏光画像データを生成することが好ましい。
【0013】
本発明の第4態様に係る画像処理装置において、nが4の場合において、メモリは、n個の第1偏光子の偏光方向間の関係として、次の行列、
【0014】
【0015】
(ただし、l1~l3、c0~c3は係数である)
を記憶し、n枚の第1偏光画像データの各画素位置に元から存在する第1画素値をx0とし、画素位置において、デモザイク処理により生成された3つの第2画素値をそれぞれx1demo、x2demo、x3demoとすると、プロセッサは、4枚以下の第2偏光画像データを生成するための、画素位置において生成する3個の画素値(x1r、x2r、x3r)を、次式、
【0016】
【0017】
により算出することが好ましい。
【0018】
本発明の第5態様に係る画像処理装置において、撮像素子に光量分布が均一な非偏光の光が入射した場合に得られる隣接画素の4つの偏光情報をx0~x3とすると、係数c0~c3と偏光情報x0~x3とは、次式、
【0019】
【0020】
を満たす。一例としてxiは光の輝度値である。
【0021】
本発明の第6態様に係る画像処理装置において、パラメータiを1~3とし、[数2]で表した行列内の係数l1、l2、l3をli、係数c1、c2、c3をciで表すと、liは、次式、
【0022】
【0023】
(ただし、行列Aを、撮像素子から取得した4つの偏光情報から別のm個の物理量への変換を与えるm行4列の行列とすると、[数10]式中の行列Bは、ATAの第(i+1)行、及び第(j+1)列を除去した3行3列の行列Bの余因子行列である)で表される。
【0024】
本発明の第7態様に係る画像処理装置において、行列Aは、4行4列の単位行列であることが好ましい。
【0025】
本発明の第8態様に係る画像処理装置において、パラメータiを1~3とし、[数2]で示した行列内の係数l1、l2、l3をliとし、係数c1、c2、c3をciとすると、liは、次式、
【0026】
【0027】
で表される。
【0028】
本発明の第9態様に係る撮像装置は、撮影光学系と、nを4以上の整数とすると、2次元状に配列された光電変換素子からなる複数の画素に、偏光方向がそれぞれ異なるn個の第1偏光子が規則的に設けられた撮像素子と、第1態様から第8態様のいずれかの画像処理装置と、を備え、プロセッサは、撮像素子から第1画像データを取得する。
【0029】
本発明の第10態様に係る撮像装置は、瞳領域が第1瞳領域、第2瞳領域及び第3瞳領域に分割され、第1瞳領域、第2瞳領域及び第3瞳領域を通過する光をそれぞれ異なる方向に偏光する3個の第2偏光子と、第1瞳領域、第2瞳領域及び第3瞳領域からそれぞれ異なる波長帯域の光を通過させる3個の波長選択素子と、を含む撮影光学系と、2次元状に配列された光電変換素子からなる複数の画素に、偏光方向がそれぞれ異なる4つの第1偏光子が規則的に設けられた撮像素子と、第6態様の画像処理装置と、を備え、プロセッサは、撮像素子から第1画像データを取得し、行列Aは、第1画像データから、3つの各波長帯域の光の混信が除去された3つの各波長帯域の光に対応した3枚の画像データを算出する際の混信除去行列である。
【0030】
第11態様に係る発明は、プロセッサと、偏光方向間の関係を記憶するメモリとを備え、プロセッサが画像処理を行う画像処理方法であって、nを4以上の整数とすると、2次元状に配列された光電変換素子からなる複数の画素に、偏光方向がそれぞれ異なるn個の第1偏光子が規則的に設けられた撮像素子から第1画像データを取得するステップと、第1画像データをデモザイク処理し、偏光方向が異なるn枚の第1偏光画像データを生成するステップと、n枚の第1偏光画像データとメモリに記憶された偏光方向間の関係とを使用し、n枚以下の第2偏光画像データを生成するステップと、を含む。
【0031】
本発明の第12態様に係る画像処理プログラムは、nを4以上の整数とすると、2次元状に配列された光電変換素子からなる複数の画素に、偏光方向がそれぞれ異なるn個の第1偏光子が規則的に設けられた撮像素子から第1画像データを取得する機能と、第1画像データをデモザイク処理し、偏光方向が異なるn枚の第1偏光画像データを生成する機能と、n枚の第1偏光画像データとn個の第1偏光子の偏光方向間の関係とを使用し、n枚以下の第2偏光画像データを生成する機能と、をコンピュータにより実現させる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】
図1は、本発明に係る撮像装置の第1実施形態の概略構成を示す図である。
【
図2】
図2は、
図1に示した撮像素子の概略構成を示す図である。
【
図3】
図3は、
図2に示した1つ画素(
図2の破線部)の概略構成を示す断面図である。
【
図4】
図4は、撮像素子の各画素ブロックに備えられる偏光フィルタ素子の配列パターンの一例を示す図である。
【
図5】
図5は、
図1に示した撮像素子の画素の配列の概略構成を示す図である。
【
図6】
図6は、
図1に示した画像処理装置の概略構成を示すブロック図である。
【
図7】
図7は、偏光RAW画像データから、偏光方向毎の偏光画像データI
1~I
4が分離される態様を示す模式図である。
【
図8】
図8は、偏光画像データI
1~I
4毎にカーネルKをコンボリューションすることにより、黒塗り部分の画素値を補間して4枚の第1偏光画像データを生成する態様を示す模式図である。
【
図9】
図9は、画素P1を中心とする隣接する8画素(合計9画素)を示す図である。
【
図10】
図10は、偏光方向が異なる4つの画素P1、P2、P3、P4の画素値の関係を示す模式図である。
【
図11】
図11は、本発明に係る撮像装置の第2実施形態の概略構成を示す図である。
【
図12】
図12は、
図11に示したバンドパスフィルタユニットの実施形態を示す正面図である。
【
図13】
図13は、各バンドパスフィルタの透過波長特性の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、添付図面に従って本発明に係る画像処理装置、撮像装置、画像処理方法及び画像処理プログラムの好ましい実施形態について説明する。
【0034】
[撮像装置の構成]
図1は、本発明に係る撮像装置の第1実施形態の概略構成を示す図である。
【0035】
第1実施形態の撮像装置1-1は、それぞれ偏光方向が異なる4枚の偏光画像を撮像する偏光カメラであり、撮影光学系10-1と、撮像素子100と、画像処理装置200と、を備える。
【0036】
撮影光学系10-1は、被写体の光学像を撮像素子100の受光面に結像させる一般的な撮影レンズである。
【0037】
また、撮影光学系10-1は、図示しない焦点調節機構及び絞りを有する。焦点調節機構は、例えば、撮影光学系10-1の全体を光軸Lに沿って前後移動させて、焦点を調節する。
【0038】
<撮像素子>
図2は、
図1に示した撮像素子の概略構成を示す図である。
図3は、
図2に示した1つ画素(
図2の破線部)の概略構成を示す断面図である。
【0039】
撮像素子100は、CMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)型のイメージセンサであり、ピクセルアレイ層110、偏光フィルタ素子アレイ層120、及びマイクロレンズアレイ層140を有する。各層は、像面側から物体側に向かって、ピクセルアレイ層110、偏光フィルタ素子アレイ層120、マイクロレンズアレイ層140の順で配置される。尚、撮像素子100は、CMOS型に限らず、XYアドレス型、又はCCD(Charge Coupled Device)型のイメージセンサでもよい。
【0040】
ピクセルアレイ層110は、多数の光電変換素子であるフォトダイオード112を2次元状に配列して構成される。1つのフォトダイオード112は、1つの画素を構成する。各フォトダイオード112は、水平方向(x方向)及び垂直方向(y方向)に沿って規則的に配置される。
【0041】
偏光フィルタ素子アレイ層120は、透過させる光の偏光方向がそれぞれ異なるn個の第1偏光子(偏光フィルタ素子122A、122B、122C、122D)が規則的に設けられている。尚、nは4以上の整数であり、本例では、n=4の場合に関して示している。
【0042】
図4は、撮像素子の各画素ブロックに備えられる偏光フィルタ素子の配列パターンの一例を示す図である。
【0043】
図4に示すように、隣接する4個(2×2個)の画素P1、P2、P3、P4で1つの画素ブロックPB(X,Y)が構成され、画素ブロックPB内の各画素P1、P2、P3、P4には、前述した偏光フィルタ素子122A、122B、122C、122Dがそれぞれ設けられている。
【0044】
4個の偏光フィルタ素子122A、122B、122C、122Dは、互いに偏光方向が45°異なっている。
【0045】
例えば、偏光フィルタ素子122Aが、入射する光のうちの
図4上で左右方向(x軸方向)の光成分のみを透過する場合、この場合の偏光方向θ1を0°とすると、偏光フィルタ素子122Bの偏光方向θ2は45°であり、偏光フィルタ素子122Cの偏光方向θ3は90°であり、偏光フィルタ素子122Dの偏光方向
θ4は135°である。尚、4種類の偏光フィルタ素子122A、122B、122C、122Dの配列パターンは、
図4に示した例に限定されない。
【0046】
図5は、
図1に示した撮像素子の画素の配列の概略構成を示す図である。
【0047】
図5に示すように、撮像素子100は、前述したように受光面に4種類の画素P1~P4を有する。隣接する4個(2×2個)の画素ブロックPB(X,Y)が、水平方向(x軸方向)及び垂直方向(y軸方向)に沿って規則的に配列される。
【0048】
撮像装置1-1は、シャッタレリーズスイッチ等から撮影指示入力を受け付けると、撮像素子100における露光制御を行う。この露光制御により撮像素子100の受光面に結像された被写体の光学像は、撮像素子100により電気信号に変換される。撮像素子100の各画素には、フォトダイオード112に入射する光の光量に応じた電荷が蓄積され、撮像素子100からは各画素に蓄積された電荷量に応じた電気信号が画像信号(第1画像データ)として読み出される。
【0049】
ここで、第1画像データは、本例では画素P1~P4毎の4個の偏光情報を有する画像データである。以下、第1画像データを、「偏光RAW画像データ」という。
【0050】
図1に戻って、画像処理装置200は、撮像素子100から偏光RAW画像データを取得し、後述する画像処理(RAW現像処理)を行い、偏光方向別の4枚の偏光画像データ(第2偏光画像データ)を生成する。
【0051】
<画像処理装置>
図6は、
図1に示した画像処理装置の概略構成を示すブロック図である。
【0052】
図6に示すように、画像処理装置200は、アナログ信号処理部200A、プロセッサ200B及びメモリ200Cを含む。
【0053】
アナログ信号処理部200Aは、撮像素子100から出力されるアナログの画素信号を取り込み、所定の信号処理(たとえば、相関二重サンプリング処理、増幅処理等)を施した後、デジタル信号に変換して出力する。
【0054】
プロセッサ200Bは、アナログ信号処理部200Aから偏光RAW画像データを取得する取得処理を行う。尚、撮像素子100がCMOS型撮像素子である場合、アナログ信号処理部等は、CMOS型撮像素子内に内蔵されていることが多く、この場合、プロセッサ200Bは、CMOS型撮像素子から偏光RAW画像データを取得することができる。
【0055】
プロセッサ200Bは、取得した偏光RAW画像データをデモザイク処理し、偏光方向がそれぞれ異なる4枚の偏光画像データ(第1偏光画像データ)を生成する。
【0056】
≪デモザイク処理≫
次に、偏光RAW画像データのデモザイク処理について説明する。
【0057】
偏光RAW画像データから偏光方向毎に分離した4枚の偏光画像データを、それぞれI1、I2、I3、I4とすると、プロセッサ200Bは、次式、
【0058】
【0059】
(ただし、aはパラメータ)
の演算を行い、デモザイク処理された4枚の第1偏光画像データを生成する第1偏光画像データ生成処理を行う。
【0060】
4枚の偏光画像データ(I1、I2、I3、I4)のうちの偏光画像データI1は、画素P1の画素値のみを有し、他の画素位置の画素値がゼロの画像データである。同様に、偏光画像データI2は、画素P2の画素値のみを有し、他の画素位置の画素値がゼロの画像データであり、偏光画像データI3は、画素P3の画素値のみを有し、他の画素位置の画素値がゼロの画像データであり、偏光画像データI4は、画素P4の画素値のみを有し、他の画素位置の画素値がゼロの画像データである。
【0061】
[数1]式は、各偏光画像データI1~I4と重み付け係数を有する7×7のカーネルKとの畳み込み演算(コンボリューション)により、画素値がゼロの画素位置における画素値を、その周辺画素の画素値により推定(補間)するデモザイク処理を示す。
【0062】
カーネルKの係数は、画素値を推定する画素位置から近い画素位置ほど、大きい重み付け係数が割り当てられている。
【0063】
また、カーネルKにおけるaはパラメータであり、パラメータaを調整することで、鮮鋭度をコントロールすることができる。例えば、パラメータaを0に近づけると、鮮鋭度が小さく、かつノイズが小さくなり、パラメータaをマイナスに大きくすると、鮮鋭度が高く、かつノイズが大きくなる。
【0064】
尚、[数1]式に示したカーネルKのサイズ、重み付け係数、及びパラメータaは一例にすぎず、本発明はこれに限定されない。
【0065】
図7は、偏光RAW画像データから、偏光方向毎の偏光画像データI
1~I
4が分離される態様を示す模式図である。偏光方向毎の偏光画像データI
1~I
4に分離することで、後の処理を行いやすくする。
【0066】
図7に示す偏光画像データI
1~I
4において、黒塗り部分の画素値はゼロである。デモザイク処理は、黒塗り部分の画素値を、その周辺画素の画素値に基づいて推定(補間)し、黒塗り部分に補間した画素値を埋め込み、4枚の第1偏光画像データを生成する処理である。
【0067】
図8は、偏光画像データI
1~I
4毎にカーネルKをコンボリューションすることにより、黒塗り部分の画素値を補間して4枚の第1偏光画像データを生成する態様を示す模式図である。
【0068】
カーネルKは、例えばメモリ200Cに記憶されており、プロセッサ200Bは、メモリ200CからカーネルKを読み出し、偏光画像データI1~I4毎にカーネルKをコンボリューションすることで、4枚の第1偏光画像データを生成するデモザイク処理を行う。
【0069】
上記のデモザイク処理は、
図4及び
図5に示したように、偏光方向が異なる4種類の第1偏光子を有する画素P1~P4の空間的な配置関係から、偏光画像データI
1~I
4毎に、所定の画素位置(
図8に示した黒塗り部分の画素位置)における画素値を補間処理により生成する。
【0070】
≪第2偏光画像データの生成方法≫
次に、n枚の第1偏光画像データ、及びn個の第1偏光子の偏光方向間の関係を使用し、第1偏光画像データよりも補間精度を上げたn枚以下の第2偏光画像データを生成する方法について説明する。n個の第1偏光子の偏光方向間の関係については後述する。
【0071】
以下、説明を簡単にするために、nが4の場合について説明する。
【0072】
nが4の場合、
図6に示したメモリ200Cは、偏光方向が異なるn個(4個)の第1偏光子の偏光方向間の関係として、次の行列、
【0073】
【0074】
(ただし、l1~l3、c0~c3は係数である)
を記憶している。
【0075】
また、nが4の場合、デモザイク処理により4枚の第1偏光画像データが生成される。
【0076】
4枚の第1偏光画像データの同じ画素位置には、元から存在する画素値(以下、「第1画素値x0」という)と、デモザイク処理により生成した3個の画素値(以下、「第2画素値(x1demo、x2demo、x3demo)」という)とが存在する。
【0077】
図6に示したプロセッサ200Bは、メモリ200Cに記憶された、4個の第1偏光子の偏光方向間の関係([数2]の行列)と、各画素位置の4つの画素値(第1画素値(x
0)、3個の第2画素値(x
1demo、x
2demo、x
3demo))とに基づいて、次式、
【0078】
【0079】
の演算を行い、各画素位置において、デモザイク処理により生成した3個の第2画素値(x1demo、x2demo、x3demo)を補正した3個の画素値(x1r、x2r、x3r)を演算する。
【0080】
これにより、プロセッサ200Bは、デモザイク処理された4枚の第1偏光画像データよりも補間精度を上げた4枚以下(本例では、4枚)の第2偏光画像データ(I1r、I2r、I3r、I4r)を生成する第2偏光画像データ生成処理を行う。
【0081】
このようにして生成された4枚の第2偏光画像データ(I1r、I2r、I3r、I4r)は、後段の図示しない表示装置又は記録装置に出力され、表示又は記録することができる。
【0082】
≪偏光方向間の関係≫
n個の第1偏光子の偏光方向間の関係としては、n個の第1偏光子が有する特性と第1偏光子に対応する画素の物理量との関係などが挙げられる。一例として、[数2]の行列で示したn=4の場合の第1偏光子の偏光方向間の関係について説明する。
【0083】
撮像素子100に面内の光量分布が均一な非偏光の光(一例として自然光)が入射する場合、
図4及び
図5に示した隣接する4個(2×2個)の画素P1、P2、P3、P4から得られる4つの偏光情報(画素値)をx
0~x
3とすると、[数3]に示した行列内の係数c
0~c
3と、画素値x
0~x
3とは、次式、
【0084】
【0085】
を満たす。換言すると、[数4]式を満たす係数c0~c3が存在する。
【0086】
ここで均一の度合いは、画素値の補正ができる範囲で分布(明暗差)は許容される。一例として20%以下で確認を行った。また、非偏光とは単一方向の偏光ではなく、複数方向の偏光が混在していることを示す。
【0087】
図9は、画素P1を中心とする隣接する8画素(合計9画素)を示す図である。
図10は、偏光方向が異なる4つの画素P1、P2、P3、P4の画素値の関係を示す模式図である。
【0088】
図10に示すように偏光方向の間隔が4等分(45°間隔)の場合、[数4]式のc
iは、c0=c2=1、c1=c3=-1である。
【0089】
しかしながら、実際には撮像素子100の製造誤差の影響などで、上記関係から僅かにずれる。
【0090】
そこで、全体が真っ白な入力(均一な非偏光の光)を撮像素子100に入射させ、撮像素子100の出力結果を使用してキャリブレーションしておく。
【0091】
全体が真っ白な画像では、急峻な変化がないため、隣接画素間の関係を調べればよい。そして、[数4]式を満たすciを決める。ciを定数倍したものも同条件をみたすため、ciは一意に定まらない。したがって、ciの総和が1などの制約を設けることで、ciを決定する。
【0092】
[数4]式は、デモザイク処理により生成される偏光方向が異なる4つの画素値(x0demo、x1demo、x2demo、x3demo)の間でも成立し、画素値(x0demo、x1demo、x2demo、x3demo)と係数c0~c3との関係は、次式で表すことができる。
【0093】
[数5]
c0x0demo+c1x1demo+c2x2demo+c3x3demo=0
次の[数5’]式は、上記[数5]式を変形した数式である。
【0094】
[数5’]
x0demo=-(1/c0)(c1x1demo+c2x2demo+c3x3demo)
また、偏光方向がそれぞれ異なる4つの画素P1、P2、P3、P4のうちの、ある偏光方向の画素(例えば、偏光方向0°の画素P1)において、元から存在する第1画素値と、デモザイク処理により推定した第2画素値(同じ偏光方向の画素値)との誤差をδとする。
【0095】
同様にして、4つの画素P1、P2、P3、P4のうちの、ある偏光方向の画素から偏光方向がそれぞれ45°ずつ異なる3つの画素(例えば、偏光方向45°、90°、及び135°の画素P2、P3,P4)において、元から存在する第1画素値と、デモザイク処理により推定した第2画素値との誤差をそれぞれl1δ、l2δ、l3δとする。
【0096】
係数l1、l2、l3は、[数2]の行列内のl1、l2、l3と同じである。また、係数l1、l2、l3の算出方法については後述する。
【0097】
いま、画素P1の画素位置において、画素P1に対して偏光方向が45°異なる画素P2の真の値(求めたい画素値)をx1rとすると、画素値x1rは、次式、
[数6]
x1r=x1demo+l1δ
により表すことができる。
【0098】
上記[数6]式における誤差δは、画素P1の元から存在する画素値x0と、デモザイク処理により推定した画素値x0demoとの誤差であるため、次式、
[数7]
δ=x0-x0demo
で表すことができる。
【0099】
[数6]式のδに、[数7]式の右辺を代入すると、[数5]は、次式、
[数8]
x1r=x1demo+l1(x0-x0demo)
で表すことができる。また、[数8]式のx0demoに、[数5’]式の右辺を代入し、整
理すると、[数8]式は、次式により表すことができる。
【0100】
[数9]
x1r=l1x0+{(1+l1c1/c0)x1demo+(l1c2/c0)x2demo+(l1c3/c0)x3demo}
上記[数9]式は、[数3]式において、x1rを算出する数式に相当する。
【0101】
また、画素P1の画素位置において、画素P1から偏光方向が90°異なる画素P3の画素値x2r(誤差l2δのない画素値)、及び偏光方向が135°異なる画素P4の画素値x3r(誤差l3δのない画素値)を算出する数式も同様にして求めることができる。
【0102】
そして、[数3]式は、これらの誤差のない画素値(x1r、x2r、x3r)を求める数式を表したものであり、[数3]式の右辺の行列は、[数2]で表したものである。
【0103】
尚、[数2]、及び[数3]式に示した係数l1~l3は、それぞれ1にしてもよい。
【0104】
≪係数l1、l2、l3の算出方法≫
[数2]で表した行列内の係数l1、l2、l3をli、係数c1、c2、c3をciで表すと、liは、次式、
【0105】
【0106】
(ただし、行列Aを、撮像素子から取得した4つの偏光情報から別の4個の物理量への変換を与えるm行4列の行列とすると、[数10]式中の行列Bは、ATAの第(i+1)行、及び第(j+1)列を除去した3行3列の行列Bの余因子行列である)で表すことができる。
【0107】
いま、行列Aを、[数11]に示す単位行列とする。
【0108】
【0109】
ATAは、[数12]に示す行列で表すことができる。
【0110】
【0111】
ATAの第(i+1)行、及び第(j+1)列を除去した行列Bi,jは、[数13]で表すことができる。
【0112】
【0113】
[数10]式中の余因子行列Bi,jは、[数13]式の行列Bを元に、次式で表すことができる。
【0114】
【0115】
また、ciは、第(i+1)成分を除外したベクトルであるため、次式で表すことができる。
【0116】
【0117】
よって、[数10]式の係数l1は、次式で表すことができる。
【0118】
【0119】
同様にして、[数10]式の係数l2、l3も、それぞれ次式で表すことができる。
【0120】
【0121】
これにより、[数10]式の係数l1~l3は、次式で表すことができる。
【0122】
【0123】
また、本例の撮像素子100に設けられた4種類の偏光フィルタ素子122A~122Dのそれぞれの偏光方向(θ1~θ4)は、180°をn(=4)等分した、45°ずつ異なる0°、45°、90°、及び135°であるが、各偏光方向は、これに限定されない。
【0124】
次に、cos二乗モデルでの係数ciの導出について説明する。
【0125】
nを4以上の整数とすると、[数4]式は、次式で表すことができる。
【0126】
【0127】
[数19]式において、φiは撮像素子のそれぞれ異なる複数の画素の偏光方向を示す角度である。
【0128】
[数19]式が任意のθで成立するためには、次式を満たす必要がある。
【0129】
【0130】
変数が冗長なので、例えば、c0=1にすると、[数20]式は、次式に書き換えることがでる。
【0131】
【0132】
[数21]式は、次式で表すことができる。
【0133】
【0134】
ここで、
【0135】
【0136】
と表すことができる。
【0137】
例えば、φ0=0°、φ1=45°、φ2=90°、φ4=135°とすると、c0=1、c1=-1、c2=1、c3=-1となり、φ0=0°、φ1=10°、φ2=30°、φ4=60°とすると、c0=1、c1=-1.6527、c2=0.8794、c3=-0.2267となる。
【0138】
<第2実施形態>
図11は、本発明に係る撮像装置の第2実施形態の概略構成を示す図である。
【0139】
第2実施形態の撮像装置1-2は、それぞれ波長帯域が異なる3枚以上の複数の画像(マルチスペクトル画像)を撮像するマルチスペクトルカメラであり、撮影光学系10-2と、撮像素子100と、画像処理装置200-2と、を備える。
【0140】
尚、
図11において、
図1に示した第1実施形態の撮像装置1-1と共通する部分には同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。また、画像処理装置200-2は、
図6に示した画像処理装置200と共通するが、演算に使用する係数が相違する。
【0141】
第2実施形態の撮像装置1-2は、第1実施形態の撮像装置1-1と比較して、主として撮影光学系10-2が、第1実施形態の撮像装置1-1の撮影光学系10-1と相違する。
【0142】
≪撮影光学系≫
撮影光学系10-2は、複数のレンズ12を組み合わせて構成される。撮影光学系10-2は、その瞳近傍にバンドパスフィルタユニット16及び偏光フィルタユニット18を有する。また、撮影光学系10-2は、図示しない焦点調節機構を有する。焦点調節機構は、例えば、撮影光学系10-2の全体を光軸Lに沿って前後移動させて、焦点を調節する。
【0143】
撮影光学系10-2の瞳領域は、第1瞳領域、第2瞳領域及び第3瞳領域に分割される。バンドパスフィルタユニット16は、第1瞳領域、第2瞳領域及び第3瞳領域からそれぞれ異なる波長帯域の光を通過させる3個の波長選択素子を有している。
【0144】
図12は、
図11に示したバンドパスフィルタユニットの実施形態を示す正面図である。
【0145】
図12に示すバンドパスフィルタユニット16は、第1波長帯域λ1の光を通過させる第1瞳領域Z1、第2波長帯域λ2の光を通過させる第2瞳領域Z2、及び第3波長帯域λ3の光を通過させる第3瞳領域Z3を有し、第1瞳領域Z1、第2瞳領域Z2及び第3瞳領域Z3ごとに異なる波長帯域の光を透過させる波長選択ユニットとして機能する。
【0146】
即ち、バンドパスフィルタユニット16は、その中心が撮影光学系10-2の光軸Lと一致するように配置され、中心角が90°の3つ扇形の開口領域16A1、16A2、16A3を備えた遮光性を有する枠体16Aと、その枠体16Aの各開口領域16A1、16A2、16A3に設けられた3個の波長選択素子であるバンドパスフィルタ16B1、16B2、16B3と、で構成される。
【0147】
図13は、各バンドパスフィルタの透過波長特性の一例を示すグラフである。
【0148】
各バンドパスフィルタ16B1~16B3は、それぞれ異なる波長帯域の光を透過させる。具体的には、バンドパスフィルタ16B1は、波長帯域λ1の光を透過させる。バンドパスフィルタ16B2は、波長帯域λ2の光を透過させる。バンドパスフィルタ16B3は、波長帯域λ3の光を透過させる。
【0149】
また、偏光フィルタユニット18は、瞳分割された第1瞳領域Z1、第2瞳領域Z2及び第3瞳領域Z3を通過する光をそれぞれ異なる方向に偏光する3個の第2偏光子を有する。
【0150】
図14は、
図11に示した偏光フィルタユニットの実施形態を示す正面図である。
【0151】
図14に示す偏光フィルタユニット18は、
図11に示したバンドパスフィルタユニット16と同様に、その中心が撮影光学系10-2の光軸Lと一致するように配置され、中心角が90°の3つ扇形の開口領域18A1、18A2、18A3を備えた遮光性を有する枠体18Aと、第1瞳領域Z1、第2瞳領域Z2及び第3瞳領域Z3を通過する光をそれぞれ異なる方向に偏光する3個の第2偏光子(偏光フィルタ18B1、18B2、18B3)と、で構成される。
【0152】
バンドパスフィルタユニット16及び偏光フィルタユニット18は近接配置され、それぞれの第1瞳領域Z1、第2瞳領域Z2及び第3瞳領域Z3の投影形状が同一である。したがって、バンドパスフィルタユニット16のバンドパスフィルタ16B1を透過した光は、偏光フィルタユニット18の偏光フィルタ18B1のみを通過し、同様にバンドパスフィルタ16B2を透過した光は、偏光フィルタ18B2のみを通過し、バンドパスフィルタ16B3を透過した光は、偏光フィルタ18B3のみを通過する。
【0153】
また、本例の偏光フィルタユニット18の各偏光フィルタ18B1、18B2、18B3の偏光方向(θ1、θ2、θ3)は、撮像素子100の画素P1、P2、P3に設けられた各偏光フィルタ素子122A、122B、122Cの偏光方向(θ1、θ2、θ3)と同一である。
【0154】
したがって、第1瞳領域Z1を通過する波長帯域λ1を有する偏光方向θ1の光は、撮像素子100の同じ偏光方向θ1の画素P1と、偏光方向θ1と偏光方向が±45°異なる画素P2,P4の各フォトダイオード112に入射し、同様に第2瞳領域Z2を通過する波長帯域λ2を有する偏光方向θ2の光は、撮像素子100の同じ偏光方向θ2の画素P2と、偏光方向θ2と偏光方向が±45°異なる画素P3,P1の各フォトダイオード112に入射し、また第3瞳領域Z3を通過する波長帯域λ3を有する偏光方向θ3の光は、撮像素子100の同じ偏光方向θ3の画素P3と、偏光方向θ3と偏光方向が±45°異なる画素P2,P4の各フォトダイオード112に入射する。
【0155】
撮像素子100の画素P1のフォトダイオードには、撮影光学系10-2の第1瞳領域Z1、第2瞳領域Z2及び第3瞳領域Z3をそれぞれ通過する波長帯域λ1を有する偏光方向θ1の光、波長帯域λ2を有する偏光方向θ2の光、及び波長帯域λ3を有する偏光方向θ3の光が入射する。
【0156】
即ち、撮像素子100の画素P1のフォトダイオードには、各波長帯域λ1~λ3の光がそれぞれ入射(混信)する。同様に、撮像素子100の画素P2~P4のフォトダイオードにも各波長帯域λ1~λ3の光がそれぞれ入射する。
【0157】
このため、画像処理装置200-2(
図11)は、混信除去処理を行って、各波長帯域λ1~λ3の画像信号を生成する。
【0158】
混信除去を行う場合も[数3]式に示した演算を行うことで、各画素位置において、デモザイク処理により生成した3個の第2画素値(x1demo、x2demo、x3demo)を補正した3個の画素値(x1r、x2r、x3r)を演算する。この場合、3個の画素値(x1r、x2r、x3r)は、各波長帯域λ1~λ3の画素値である。
【0159】
また、混信除去を行う場合、バンドパスフィルタユニット16及び偏光フィルタユニット18の3つの第1瞳領域Z1、第2瞳領域Z2及び第3瞳領域Z3のうちのいずれか1の瞳領域のみを開口し、他の瞳領域を遮光して、全体が真っ白な入力を撮像素子100に入射させ、撮像素子100の出力結果を取得する。これを、3つの第1瞳領域Z1、第2瞳領域Z2及び第3瞳領域Z3ごとに実施する。このようにして取得した撮像素子100の出力結果を使用し、隣接画素間の混信関係を調べて、[数4]式を満たすciを決める。
【0160】
また、[数10]式で示した係数liを求める場合の行列A(余因子行列Bを求めるための元になる行列)を混信除去行列とする。
【0161】
図6に示した画像処理装置200のメモリ200Cは、混信除去を行う場合の[数2]に示した行列を記憶しており、プロセッサ200Bは、混信除去を行う場合、メモリ200Cに記憶された、混信除去用の4個の第1偏光子の偏光方向間の関係([数2]の行列)と、各画素位置の4つの画素値(第1画素値(x
0)、3個の第2画素値(x
1demo、x
2demo、x
3demo))とに基づいて、[数3]式に示した演算を行うことで、各波長帯域λ1~λ3に対応した3枚のスペクトル画像(マルチスペクトル画像)を取得することができる。
【0162】
尚、撮影光学系10-2のバンドパスフィルタユニット16及び偏光フィルタユニット18の3つの第1瞳領域Z1、第2瞳領域Z2及び第3瞳領域Z3は、それぞれ中心角が90°の扇型であるが、中心角が120°の扇型でもよい。また、3つの瞳領域は、扇型に限らず、光軸Lを中心とする1つの円と、2つの環状帯とで構成される3つの瞳領域でもよい。
【0163】
[その他]
本実施形態の撮像素子100は、カラーフィルタを備えていないが、各画素に赤色フィルタ、緑色フィルタ、又は青色フィルタが、例えば、2×2個の画素ブロックPB毎にベイヤ配列で繰り返し配置されたものでもよい。これによれば、赤色、緑色、及び青色の色毎に偏光方向が異なる複数の偏光画像を取得することができ、また、色フィルタ、緑色フィルタ、又は青色フィルタの各波長帯域内で、3以下の波長帯域を選択するバンドパスフィルタを設けることで、最大で9枚(=3×3)のマルチスペクトル画像を撮像することができる。
【0164】
また、本発明は撮像装置に限らず、例えば、
図6に示した画像処理装置200、及び
図6に示した画像処理装置200における画像処理方法及び画像処理プログラムを含む。
【0165】
この場合、画像処理方法は、プロセッサ200Bと、メモリ200Cとを備え、プロセッサ200Bが、以下に示す各ステップを実行する。即ち、プロセッサ200Bは、撮像素子100から偏光RAW画像データ(第1画像データ)を取得するステップと、第1画像データをデモザイク処理し、偏光方向が異なる4枚の第1偏光画像データを生成するステップと、4枚の第1偏光画像データとメモリ200Cに記憶された4個の第1偏光子の偏光方向間の関係を使用し、4枚以下の第2偏光画像データを生成するステップと、を実行する。
【0166】
画像処理プログラムは、上記の画像処理方法をコンピュータにより実現させる。
【0167】
本実施形態において、例えば、プロセッサ200Bの各種の処理を実行する処理部(processing unit)のハードウェア的な構造は、次に示すような各種のプロセッサ(processor)である。各種のプロセッサには、ソフトウェア(プログラム)を実行して各種の処理部として機能する汎用的なプロセッサであるCPU(Central Processing Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などの製造後に回路構成を変更可能なプロセッサであるプログラマブルロジックデバイス(Programmable Logic Device:PLD)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路などが含まれる。
【0168】
1つの処理部は、これら各種のプロセッサのうちの1つで構成されていてもよいし、同種または異種の2つ以上のプロセッサ(例えば、複数のFPGA、あるいはCPUとFPGAの組み合わせ)で構成されてもよい。また、複数の処理部を1つのプロセッサで構成してもよい。複数の処理部を1つのプロセッサで構成する例としては、第1に、クライアントやサーバなどのコンピュータに代表されるように、1つ以上のCPUとソフトウェアの組合せで1つのプロセッサを構成し、このプロセッサが複数の処理部として機能する形態がある。第2に、システムオンチップ(System On Chip:SoC)などに代表されるように、複数の処理部を含むシステム全体の機能を1つのIC(Integrated Circuit)チップで実現するプロセッサを使用する形態がある。このように、各種の処理部は、ハードウェア的な構造として、上記各種のプロセッサを1つ以上用いて構成される。
【0169】
更に、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子などの回路素子を組み合わせた電気回路(circuitry)である。
【0170】
また、本発明は上述した実施形態に限定されず、本発明の精神を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0171】
1-1、1-2 撮像装置
10-1、10-2 撮影光学系
12 レンズ
16 バンドパスフィルタユニット
16A 枠体
16A1、16A2、16A3 開口領域
16B1、16B2、16B3 バンドパスフィルタ
18 偏光フィルタユニット
18A 枠体
18A1、18A2、18A3 開口領域
18B1、18B2、18B3 偏光フィルタ
100 撮像素子
110 ピクセルアレイ層
112 フォトダイオード
120 偏光フィルタ素子アレイ層
122A、122B、122C、122D 偏光フィルタ素子
140 マイクロレンズアレイ層
200 画像処理装置
200A アナログ信号処理部
200B プロセッサ
200C メモリ
L 光軸