(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-07
(45)【発行日】2023-12-15
(54)【発明の名称】処理装置、分解生成物の製造方法、及び処理方法
(51)【国際特許分類】
C08J 11/24 20060101AFI20231208BHJP
H05H 1/30 20060101ALI20231208BHJP
C08J 11/10 20060101ALI20231208BHJP
【FI】
C08J11/24 ZAB
H05H1/30
C08J11/10
(21)【出願番号】P 2022062848
(22)【出願日】2022-04-05
【審査請求日】2022-04-05
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】孝治 慎之助
(72)【発明者】
【氏名】石崎 博基
【審査官】中田 光祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-179211(JP,A)
【文献】特開2009-106910(JP,A)
【文献】特開2014-043513(JP,A)
【文献】特開2019-119821(JP,A)
【文献】中国実用新案第209508118(CN,U)
【文献】特表2012-517892(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2021-0001000(KR,A)
【文献】特開2012-177178(JP,A)
【文献】特開平08-157529(JP,A)
【文献】特開2021-161338(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0289396(US,A1)
【文献】特開2003-292594(JP,A)
【文献】国際公開第2007/066446(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B 17/00- 17/04
C08J 11/00- 11/28
B09B 1/00- 5/00
B09C 1/00- 1/10
H05H 1/00- 1/54
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子化合物の分解処理装置であって、
高分子化合物及び液状媒体を収容する容器と、
前記容器内で前記液状媒体のプラズマ化処理を行う、プラズマ発生器
(電極対間の放電によりプラズマを発生させるものを除く)と、
を備え、
前記プラズマ発生器は、電磁波を受信したことに応答して前記液状媒体をプラズマ化させる電磁波受信部を備え
、
前記電磁波受信部は、導電性を有するコアと、前記コアの周囲を少なくとも部分的に被覆する誘電体被覆と、を備える、
分解処理装置。
【請求項2】
高分子化合物の分解処理装置であって、
高分子化合物及び液状媒体を収容する容器と、
前記容器内で前記液状媒体のプラズマ化処理を行う、プラズマ発生器
(電極対間の放電によりプラズマを発生させるものを除く)と、
を備え、
前記プラズマ発生器は、電磁波を送信する電磁波送信部と、前記電磁波送信部から電磁波を受信する電磁波受信部と、を備え
、
前記電磁波受信部は、導電性を有するコアと、前記コアの周囲を少なくとも部分的に被覆する誘電体被覆と、を備える、
分解処理装置。
【請求項3】
前記電磁波受信部は、電磁波を受信したことに応答して、前記液状媒体をプラズマ化させる、
請求項2に記載の分解処理装置。
【請求項4】
前記電磁波は、周波数が100MHz以上300GHz以下のマイクロ波である、
請求項2又は3に記載の分解処理装置。
【請求項5】
前記電磁波受信部は、金属材料を含む、
請求項2又は3に記載の分解処理装置。
【請求項6】
前記コアは、前記電磁波を受信したことに応答して電子を放出し、前記放出された電子は、前記誘電体被覆を通過して前記液状媒体をプラズマ化する、
請求項2又は3に記載の分解処理装置。
【請求項7】
前記電磁波受信部は、前記容器の内部に配置されて、前記液状媒体と接触する、
請求項2又は3に記載の分解処理装置。
【請求項8】
前記電磁波送信部の少なくとも一部は、前記容器の内部に配置される、
請求項2又は3に記載の分解処理装置。
【請求項9】
前記電磁波送信部は、前記容器の外部に配置され、
前記容器のうち少なくとも前記電磁波送信部からの電磁波が通過する部分は、非金属材料から形成される、
請求項2又は3に記載の分解処理装置。
【請求項10】
高分子化合物を処理することにより分解生成物を製造する方法
(電極対間の放電によりプラズマを発生させるものを除く)であって、
液状媒体を電磁波受信部と接触させた状態で、前記電磁波受信部に電磁波を照射することと、
前記高分子化合物と、プラズマ化した前記液状媒体とを接触させることと、を含
み、
前記電磁波受信部は、導電性を有するコアと、前記コアの周囲を少なくとも部分的に被覆する誘電体被覆と、を備える、方法。
【請求項11】
前記電磁波受信部は、電磁波を受信したことに応答して、前記液状媒体をプラズマ化させる、
請求項10に記載の方法。
【請求項12】
液状媒体をプラズマ化処理することにより、前記液状媒体のラジカルを発生させることをさらに含む、
請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
プラズマ化していない液状媒体に前記高分子化合物が溶解又は分散している状態で、前記液状媒体をプラズマ化処理することをさらに含む、
請求項10又は11に記載の方法。
【請求項14】
前記高分子化合物は、10℃以上150℃以下の温度条件下で、前記プラズマ化した液状媒体と接触する、
請求項10又は11に記載の方法。
【請求項15】
前記高分子化合物は、0.05MPa以上1.5MPa未満の圧力条件下で、前記プラズマ化した液状媒体と接触する、
請求項10又は11に記載の方法。
【請求項16】
前記液状媒体は、極性分子を含む、
請求項10又は11に記載の方法。
【請求項17】
前記高分子化合物は、高分子化合物の分解反応のための触媒が存在しない状態で、前記プラズマ化した液状媒体と接触する、
請求項10又は11に記載の方法。
【請求項18】
前記高分子化合物と、プラズマ化した液状媒体とを接触させることにより、前記高分子化合物から分解された分解生成物が生成する、
請求項10又は11に記載の方法。
【請求項19】
高分子化合物を分解処理する方法
(電極対間の放電によりプラズマを発生させるものを除く)であって、
液状媒体を電磁波受信部と接触させた状態で、前記電磁波受信部に電磁波を照射することと、
前記高分子化合物と、プラズマ化した前記液状媒体とを接触させることと、を含
み、
前記電磁波受信部は、導電性を有するコアと、前記コアの周囲を少なくとも部分的に被覆する誘電体被覆と、を備える、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、処理装置、分解生成物の製造方法、及び処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高分子化合物を解重合反応によって原料のモノマーに分解して再利用する、いわゆるケミカルリサイクル技術が注目を集めており、開発が進められている。特許文献1には、触媒を用いて高分子化合物を分解する技術が記載されている。特許文献2には、水の存在下、ポリエステルにマイクロ波を照射し、高温高圧下で解重合反応を行う技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-88096号公報
【文献】特開2015-168741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の技術は、後工程で触媒を除去する必要がある。特許文献2の技術は、高温高圧といった特殊な反応条件を必要とする。このため、高分子化合物の分解処理をさらに効率化する余地がある。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、高分子化合物の分解処理の効率性を向上させることができる処理装置、分解生成物の製造方法、及び処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の態様を含み得る。
[1]高分子化合物の処理装置であって、高分子化合物及び液状媒体を収容する容器と、前記容器内で前記液状媒体のプラズマ化処理を行う、プラズマ発生器と、を備える、処理装置。
[2]前記プラズマ発生器は、電磁波を送信する電磁波送信部と、前記電磁波送信部から電磁波を受信する電磁波受信部と、を備える、[1]に記載の処理装置。
[3]前記電磁波受信部は、電磁波を受信したことに応答して、前記液状媒体をプラズマ化させる、[2]に記載の処理装置。
[4]前記電磁波は、周波数が100MHz以上300GHz以下のマイクロ波である、[2]又は[3]に記載の処理装置。
[5]前記電磁波受信部は、金属材料を含む、[2]又は[3]に記載の処理装置。
[6]前記電磁波受信部は、導電性を有するコアと、前記コアを少なくとも部分的に被覆する誘電体被覆と、を備える、[2]又は[3]に記載の処理装置。
[7]前記電磁波受信部は、前記容器の内部に配置されて、前記液状媒体と接触する、[2]又は[3]に記載の処理装置。
[8]前記電磁波送信部の少なくとも一部は、前記容器の内部に配置される、[2]又は[3]に記載の処理装置。
[9]前記電磁波送信部は、前記容器の外部に配置され、前記容器のうち少なくとも前記電磁波送信部からの電磁波が通過する部分は、非金属材料から形成される、[2]又は[3]に記載の処理装置。
[10]高分子化合物を処理することにより分解生成物を製造する方法であって、前記高分子化合物と、プラズマ化した液状媒体とを接触させることを含む、方法。
[11]前記液状媒体を電磁波受信部と接触させた状態で、前記電磁波受信部に電磁波を照射することをさらに含む、[10]に記載の方法。
[12]前記電磁波受信部は、電磁波を受信したことに応答して、前記液状媒体をプラズマ化させる、[11]に記載の方法。
[13]液状媒体をプラズマ化処理することにより、前記液状媒体のラジカルを発生させることをさらに含む、[10]~[12]のいずれか1つに記載の方法。
[14]プラズマ化していない液状媒体に前記高分子化合物が溶解又は分散している状態で、前記液状媒体をプラズマ化処理することをさらに含む、[10]~[12]のいずれか1つに記載の方法。
[15]前記高分子化合物は、10℃以上150℃以下の温度条件下で、前記プラズマ化した液状媒体と接触する、[10]~[12]のいずれか1つに記載の方法。
[16]前記高分子化合物は、0.05MPa以上1.5MPa未満の圧力条件下で、前記プラズマ化した液状媒体と接触する、[10]~[12]のいずれか1つに記載の方法。
[17]前記液状媒体は、極性分子を含む、[10]~[12]のいずれか1つに記載の方法。
[18]前記高分子化合物は、高分子化合物の分解反応のための触媒が存在しない状態で、前記プラズマ化した液状媒体と接触する、[10]~[12]のいずれか1つに記載の方法。
[19]前記高分子化合物と、プラズマ化した液状媒体とを接触させることにより、前記高分子化合物から分解された分解生成物が生成する、[10]~[12]のいずれか1つに記載の方法。
[20]高分子化合物を処理する方法であって、前記高分子化合物と、プラズマ化した液状媒体とを接触させることを含む、方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、高分子化合物の分解処理の効率性を向上させることができる処理装置、分解生成物の製造方法、及び処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1の実施形態に係る処理装置を示す斜視図である。
【
図2】第1の実施形態に係る処理装置を示す、
図1のII-IIに沿って切断した断面図である。
【
図3】第2の実施形態に係る処理装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態の処理装置、分解生成物の製造方法、及び処理方法を、図面を参照して説明する。なお、図面は模式的又は概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。また、図面に示すXYZ座標は、説明の便宜上定義されたものであり、発明を限定するものではない。
【0010】
<第1実施形態>
図1及び
図2を参照して、第1実施形態に係る処理装置1及び処理装置1を用いた処理方法について説明する。
図1は、第1の実施形態に係る処理装置1を示す斜視図である。
図2は、第1の実施形態に係る処理装置1を示す、
図1のII-IIに沿って切断した断面図である。
【0011】
[処理装置1]
本実施形態によれば、高分子化合物Pの処理装置1であって、高分子化合物Pと液状媒体Mとを収容する容器10と、容器10内で液状媒体Mのプラズマ化処理を行う、プラズマ発生器20と、を備える処理装置1が提供される。
【0012】
処理装置1は、高分子化合物Pを処理するための装置である。具体的には、処理装置1は、高分子化合物Pを分解又は解重合することができる。
【0013】
(容器10)
容器10は、高分子化合物Pの処理反応の反応場となる。
図1及び
図2に示すように、容器10は、底壁12と、底壁12から上方に突出する側壁14と、を有する。容器10は、側壁14の上部に設けられる頂壁をさらに有してもよい。容器10は、底壁12及び側壁14と、任意に頂壁とから画定される内部空間を有する。容器10の内部空間は、外部に開放されてもよく、閉鎖されてもよい。
【0014】
容器10の形状は、内部空間を有する円柱形状、多角柱形状、有底筒形状などであってよい。ただし、容器10の形状は上記例に限定されず、高分子化合物P及び液状媒体Mを収容可能であれば任意の形状であってよい。
【0015】
容器10の材質は、特に限定されず、導体、半導体、又は絶縁体であってよい。容器10の材質の例として、金属、ガラス、セラミックス、ホーロー、ゴム、プラスチックなどが挙げられる。容器10が無機材料から形成されることは、分解反応の影響を十分に抑制できる点で好ましい。
【0016】
側壁14には、後述の電磁波送信部22が取り付けられる取付部16が設けられる。例えば、
図1及び
図2に示すように、取付部16は、電磁波送信部22が挿入される孔として形成される。
【0017】
(液状媒体M)
液状媒体Mは、処理装置1による高分子化合物Pの処理を媒介する。液状媒体Mは、高分子化合物Pの分散媒又は溶媒としても機能し得る。本明細書において、「液状媒体」とは、大気圧の下で液体である媒体を意味する。例えば、液状媒体Mは、温度20℃、大気圧の下で液体である。液状媒体Mの沸点は、特に限定されないが、例えば、20℃以下、10℃以下、又は0℃以下であってよい。液状媒体Mの沸点は、特に限定されないが、例えば、20℃以上、30℃以上、40℃以上、50℃以上、60℃以上、70℃以上、80℃以上、90℃以上、100℃以上、150℃以上、又は200℃以上であってよい。液状媒体Mの粘度などの特性は特に限定されない。液状媒体Mには、分散剤や粘度調整剤など任意の添加剤が添加されてもよい。
【0018】
液状媒体Mの種類は特に限定されず、任意の1種類以上の液状物質が使用可能である。液状媒体Mの例として、水、アルコール、ケトン、エーテル、エステル、カルボン酸、アミン、芳香族化合物、ニトリル、ハロゲン化アルキルなどが挙げられる。アルコールの例として、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、ジエチンレングリコール、グリセロール、アリルアルコールなどが挙げられる。ケトンの例として、アセトン、アセチルアセトン、エチルメチルケトンなどが挙げられる。エーテルの例として、ジメチルエーテル、エチルメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジブチルエーテルなどが挙げられる。エステルの例として、酢酸エチル、酢酸ブチルなどが挙げられる。カルボン酸の例として、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、安息香酸などが挙げられる。アミンの例として、アニリン、エタノールアミン、ジエタノールアミンなどが挙げられる。芳香族化合物の例として、ベンゼンなどが挙げられる。ニトリルの例として、アセトニトリルなどが挙げられる。ハロゲン化アルキルの例として、クロロホルム、ジクロロメタンなどが挙げられる。液状媒体Mは、任意の物質が溶解した溶液であってもよく、任意の物質が分散した分散液であってもよい。
【0019】
例えば、液状媒体Mは、極性分子を含む。これは、液状媒体Mが極性を有することで電磁波、特に、マイクロ波との相互作用が大きくなるため、プラズマ化しやすい点で好ましい。好ましくは、液状媒体Mは、水、アルコール、ケトン、エーテル、及びエステルからなる群から選択された1以上を含む。
【0020】
(高分子化合物P)
高分子化合物Pは、処理装置1による処理の対象である。高分子化合物Pは、1種類又は2種類以上のモノマーが重合したポリマー又はオリゴマーである。高分子化合物Pは特に限定されないが、例えば、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレンなど)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレートなど)、ポリエーテル、ポリウレタン、ポリアミド(ポリアクリルアミドなど)、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリアセタール、エポキシ樹脂、ポリスチレン、ポリハロゲン化ビニル(ポリ塩化ビニルなど)、フッ素樹脂、ポリビニルアルコール、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合合成樹脂(ABS樹脂)、合成ゴム、繊維強化プラスチックなどが挙げられる。
【0021】
高分子化合物Pは、容器10中で液状媒体Mに接触している。具体的には、
図1及び
図2に示すように、高分子化合物Pは、微粒子として液状媒体Mに分散しているか、又は液状媒体Mに溶解している。ただし、高分子化合物Pの存在形態は上記例に限定されない。例えば、高分子化合物Pは、目視可能な大きさの塊として、液状媒体M中に存在してもよい。例えば、高分子化合物Pは、底壁12又は容器10内部に設けられた載置台に載置されてもよい。
【0022】
高分子化合物Pと液状媒体Mとの質量比は、例えば、0.001:99.999~50:50、0.01:99.99~30:70、0.1:99.9~20:80、1:99~10:90、又は2:98~5:95である。
【0023】
(プラズマ発生器20)
プラズマ発生器20は、液状媒体Mをプラズマ化処理する。具体的には、プラズマ発生器20は、容器10内の液状媒体Mに作用して、液状媒体Mをプラズマ化させることができる。具体的には、
図1及び
図2に示すように、プラズマ発生器20は、電磁波を送信する電磁波送信部22と、電磁波送信部22から電磁波を受信する電磁波受信部24と、を含む。
【0024】
電磁波送信部22は、電磁波受信部24に向けて電磁波を送信する。電磁波送信部22は、電磁波受信部24と協働して液状媒体Mをプラズマ化できる電磁波を出力する。電磁波送信部22の構成は特に限定されず、上記のような電磁波を送信可能な任意の構成であってよい。例えば、
図1及び
図2に示すように、電磁波送信部22は、電磁波を出力する電磁波出力部30と、電磁波出力部30から出力された電磁波を電磁波受信部24に向けて放射する電磁波放射部32と、を有する。電磁波出力部30は、電源と、電磁波を発振する発振器と、発振された電磁波を増幅する増幅器と、を有する。電磁波放射部32は、容器10の内部に電磁波を放射する発信アンテナとして機能する。電磁波放射部32は、取付部16に取り付けられる。これにより、電磁波放射部32は、部分的に容器10の内部に位置するとともに、部分的に容器10の外部に位置する。したがって、電磁波送信部22の一部は、容器10の内部に位置し、電磁波送信部22の一部は、容器10の外部に位置する。なお、電磁波送信部22の全体が容器10の内部に配置されてもよい。すなわち、電磁波送信部22の少なくとも一部が、容器10の内部に配置され得る。電磁波放射部32が容器10と一体に形成されてもよく、電磁波送信部22の全体が容器10と一体に形成されてもよい。
【0025】
電磁波送信部22から放射される電磁波は、電磁波受信部24に照射されることにより、電磁波受信部24に電子を放出させる。例えば、電磁波は、周波数が100MHz以上300GHz以下のマイクロ波である。より具体的には、電磁波の周波数は、日本で家庭用に使用することが認められている2.45GHz、食品解凍用に使用される915MHzなどであってよい。
【0026】
電磁波受信部24は、電磁波送信部22から送信された電磁波を受信する受信アンテナとして機能する。電磁波受信部24は、電磁波送信部22から電磁波を受信したことに応答して、表面から電子を放出する。放出された電子は、容器10内の液状媒体Mを攻撃して活性化させることにより、液状媒体Mをプラズマ化する。例えば、電磁波受信部24は、金属材料を含む。
【0027】
電磁波受信部24は、容器10の内部に配置される。電磁波受信部24は、液状媒体Mに接触している。具体的には、
図1及び
図2に示すように、電磁波受信部24は、容器10の底壁12から上方(Z方向)に延在する細長い形状を有する。なお、電磁波受信部24は、容器10と一体に形成されてもよい。電磁波受信部24の数も特に限定されない。
【0028】
電磁波受信部24は、導電性を有するコア40と、コア40を少なくとも部分的に被覆する誘電性被覆42と、を有する。
図1及び
図2に示すように、コア40の外面が、誘電性被覆42によって覆われている。
【0029】
コア40は、金属材料を含む導電性部材である。コア40は、電磁波(例えばマイクロ波)を照射されると、表面から自由電子を放出する。放出された電子は、コア40を覆う誘電性被覆42を通過して電磁波受信部24を飛び出し、液状媒体Mをプラズマ化する。
【0030】
例えば、コア40の材質は、金属である。金属材料の例として、銅、鉄、アルミニウム、マグネシウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、コバルト、ニッケル、亜鉛、ゲルマニウム、パラジウム、インジウム、スズ、銀、モリブデン、タンタル、タングステン、金、白金などの単体金属、これらの1以上を主成分とする合金、金属物性を有する金属酸化物、金属炭化物、金属シリサイド、金属窒化物、これらをベースとする複合材料などが挙げられる。
【0031】
誘電性被覆42は、コア40の周囲の一部又は全部を覆う。誘電性被覆42は、液状媒体Mへのコア40の溶出を抑制する。誘電性被覆42は、コア40を構成する金属元素と液状媒体Mや空気中の酸素との反応を抑制する。これにより、誘電性被覆42は、コア40の腐食を防ぐ保護層として機能し得る。一方で、誘電性被覆42は、電磁波送信部22から照射された電磁波、及び、コア40から放出された電子を、少なくとも部分的に透過させることができる。また、コア40から放出された電子のうち誘電性被覆42を透過できなかった電子が、誘電性被覆42の内側に蓄積すると、誘電性被覆42の両側に電位差が生じ得る。これにより、誘電性被覆42が誘電分極を起こし、誘電性被覆42の表面に電荷が発生する。誘電性被覆42を透過した電子と、誘電分極により誘電性被覆42の表面に生じた電荷と、の両方が、液状媒体Mのプラズマ化に寄与し得る。
【0032】
誘電性被覆42の材質は、誘電体である。誘電性被覆42の材質の例として、ガラス、セラミックスなどが挙げられる。ガラスの例として、非晶質の酸化ケイ素(例えば二酸化ケイ素SiO2)、ソーダ石灰ガラス、石英ガラス、ケイ酸塩ガラス、ホウケイ酸ガラスなどが挙げられる。セラミックスの例として、金属酸化物、金属炭化物、金属シリサイド、金属窒化物、金属元素を含まない無機材料(例えば、ダイヤモンド、シリコン、炭素繊維、炭化ケイ素、フラーレン、炭化ホウ素)などが挙げられる。
【0033】
誘電性被覆42の厚さは、例えば、1μm~500μm、10μm~300μm、又は50μm~200μmである。厚さが1μm以上であれば、一定の絶縁性を確保できるとともに、絶縁破壊が生じる可能性を低減できる。厚さが500μm以下であれば、電子が誘電性被覆42を透過できない可能性を低減できる。
【0034】
誘電性被覆42は、コア40とそれ以外の外部構造体(例えば容器10)との間に介在することにより、コア40を接地させない機能を有する。例えば、コア40が金属製の容器10に直接接触して接地していると、電磁波によって励起されたコア40の電子が容器10側に逃げることにより、液状媒体Mのプラズマ化が効率よく進行しない可能性がある。すなわち、誘電性被覆42は、コア40と外部構造体とを電気的に絶縁する。誘電性被覆42のうち、コア40と外部構造体との間に位置する部分は、実質的に電子を通過させない厚さを有することができる。例えば、
図2に示すように、誘電性被覆42は、コア40と底壁12との間に位置する底部において、他の部分より大きな厚さを有し得る。
【0035】
図2に示す電磁波放射部32の先端とコア40との間の距離dは、例えば、以下の関係式1を満たす。例えば、d=λ/4である。例えば、電磁波放射部32が周波数2.45GHzのマイクロ波を照射する場合には、dが27mm以上34mm以下であることが好ましい。dが関係式1を満たす場合、電磁波受信部24で安定的にプラズマを発生する点で好ましい。
[関係式1]
0.9×λ/4≦d≦1.1×λ/4 (λ:電磁波の波長)
【0036】
[処理装置1の使用方法]
次いで、処理装置1の使用方法について説明する。
本実施形態によれば、高分子化合物Pを処理する方法であって、高分子化合物Pと、プラズマ化した液状媒体Mとを接触させることを含む方法が提供される。
【0037】
別の側面として、本実施形態によれば、高分子化合物Pを処理することにより分解生成物を製造する方法であって、高分子化合物Pと、プラズマ化した液状媒体Mとを接触させることを含む、分解生成物の製造方法が提供される。
【0038】
上記の高分子化合物Pの処理方法又は分解生成物の製造方法は、具体的には以下のようなステップを含み得る。以下、高分子化合物Pの処理について、ステップごとに順を追って説明する。
【0039】
(混合ステップ)
まず、液状媒体Mのプラズマ化処理の前に、液状媒体M及び高分子化合物Pを容器10内で混合することができる。これに先立って、高分子化合物Pを粉砕してもよい。例えば、高分子化合物Pを微粒子の状態で液状媒体M中に分散するか、液状媒体Mに溶解することができる。なお、高分子化合物Pを液状媒体Mに投入するタイミングは、上記例に限定されない。例えば、液状媒体Mのプラズマ化処理と同時に高分子化合物Pを液状媒体Mに投入してもよい。また、液状媒体Mのプラズマ化処理の後、プラズマ化処理された液状媒体Mに高分子化合物Pを投入してもよい。
【0040】
(プラズマ化処理ステップ)
次いで、容器10内の液状媒体Mのプラズマ化処理を行う。具体的には、
図1及び
図2に示すように、容器10に液状媒体M及び高分子化合物Pが収容された状態で、電磁波送信部22を操作することにより、電磁波を容器10内の電磁波受信部24に照射する。電磁波受信部24のコア40は、電磁波のエネルギーを受けて、表面から自由電子を放出する。コア40から放出された自由電子の少なくとも一部は、誘電性被覆42を透過して、電磁波受信部24の周りの液状媒体Mの分子に衝突する。電子の衝突によって、液状媒体Mの一部がプラズマ化して発光する。液状媒体Mの分子同士の間で、励起電子のキャッチボールが行われる。液状媒体Mの分子は、ラジカル化及び/又はイオン化する。例えば、液状媒体Mがエチレングリコールである場合には、電子からの攻撃によって、以下のように、エチレングリコールの構造中の炭素原子、酸素原子、水素原子などに電荷が発生すると推測される。ただし、プラズマ化した液状媒体Mの構造は、下記に限定されず、複数の電荷を有するものなど、様々なバリエーションが考えられる。
【化1】
【0041】
また、コア40から放出された電子のうち誘電性被覆42を透過できなかった電子が、誘電性被覆42の内側に蓄積することによって、誘電性被覆42の誘電分極が生じ得る。これにより、誘電性被覆42の外面に発生した電荷も、液状媒体Mを励起させることができる。
【0042】
このように、液状媒体Mを電磁波受信部24と接触させた状態で、電磁波送信部22から電磁波受信部24に電磁波を照射すると、電磁波受信部24のコア40が自由電子を放出する。放出された電子は、誘電性被覆42を透過し、及び/又は誘電性被覆42の誘電分極を介して、液状媒体Mをプラズマ状態に励起することができる。このようにして液状媒体Mをプラズマ化処理することにより、上記のような液状媒体Mのラジカルを発生させることができる。
【0043】
(温度条件)
液状媒体Mのプラズマ化処理を行う際の温度(例えば、電磁波送信部22による電磁波の照射を行う際の液状媒体Mの温度)は、特に限定されないが、例えば、いずれも10℃以上150℃以下であってよい。高分子化合物Pとプラズマ化した液状媒体Mとを接触させる際の温度は、特に限定されないが、例えば、10℃以上150℃以下であってよい。これらの温度は、高分子化合物Pと液状媒体Mとが接触した状態でプラズマ化処理を行う場合には、実質的に同じ温度である。なお、ここでの「温度」とは、容器10内の液状媒体M全体の平均温度を意味する。
【0044】
プラズマ化処理を行う際の温度は、例えば、15℃以上、20℃以上、25℃以上、30℃以上、40℃以上、50℃以上、60℃以上、70℃以上、80℃以上、90℃以上、又は100℃以上であってよい。プラズマ化処理を行う際の温度は、例えば、140℃以下、120℃以下、100℃以下、80℃以下、60℃以下、50℃以下、40℃以下、又は30℃以下であってよい。
【0045】
高分子化合物Pとプラズマ化した液状媒体Mとを接触させる際の温度は、例えば、15℃以上、20℃以上、25℃以上、30℃以上、40℃以上、50℃以上、60℃以上、70℃以上、80℃以上、90℃以上、又は100℃以上であってよい。高分子化合物Pとプラズマ化した液状媒体Mとを接触させる際の温度は、例えば、140℃以下、120℃以下、100℃以下、80℃以下、60℃以下、50℃以下、40℃以下、又は30℃以下であってよい。
【0046】
原理的に、上記の液状媒体Mのプラズマ化処理において積極的な加熱操作を行う必要はないため、コスト及び効率の点で、容器10や液状媒体Mを加熱することなく、液状媒体Mのプラズマ化処理を行うことが好ましい。液状媒体Mのプラズマ化処理を行う際の温度、及び/又は、高分子化合物Pとプラズマ化した液状媒体Mとを接触させる際の温度は、室温であってよい。ただし、液状媒体Mが、プラズマ化した他の液状媒体Mの分子や電磁波(例えばマイクロ波)自体によって加熱される可能性がある。この場合には、液状媒体Mのプラズマ化処理として電磁波を照射している間、液状媒体Mの温度が増加し得る。液状媒体Mの蒸発を防ぐためには、温度が液状媒体Mの沸点を超えないように電磁波の出力を調整することが好ましい。
【0047】
(圧力条件)
液状媒体Mのプラズマ化処理を行う際の圧力、及び、高分子化合物Pとプラズマ化した液状媒体Mとを接触させる際の圧力は、いずれも特に限定されないが、0.05MPa以上1.5MPa未満であってよい。プラズマ化処理を行う圧力は、例えば、0.06MPa以上、0.07MPa以上、0.08MPa以上、0.09MPa以上、0.1MPa以上、又は大気圧以上であってよい。プラズマ化処理を行う圧力は、例えば、1.4MPa以下、1.3MPa以下、1.2MPa以下、1.1MPa以下、又は大気圧以下であってよい。
【0048】
原理的に、上記の液状媒体Mのプラズマ化処理において積極的な加圧操作を行う必要はないため、コスト及び効率の点で、容器10の内部空間や液状媒体Mを加圧することなく、液状媒体Mのプラズマ化処理を行うことが好ましい。好ましくは、液状媒体Mのプラズマ化処理、及び/又は、高分子化合物Pとプラズマ化した液状媒体Mとの接触は、大気圧下で行われ得る。例えば、容器10が外部に開放されている場合には、上記方法は大気圧下で行われ得る。
【0049】
(分解ステップ)
プラズマ化した液状媒体Mは、化学的に不安的な状態にあるので、非常に反応性が高い。このため、プラズマ化した液状媒体Mは、高分子化合物Pと反応して、高分子化合物Pを分解する。例えば、ラジカル化した液状媒体Mの不対電子が、高分子化合物Pを攻撃する。これにより、高分子化合物Pの構造中の1以上の結合が切断されて、高分子化合物Pが、より分子量の小さいポリマーやオリゴマー、及び/又は、高分子化合物Pの最小構成単位であるモノマーまで分解される。このように、プラズマ化していない液状媒体Mと高分子化合物Pとが接触している状態で、液状媒体Mをプラズマ化処理することにより、プラズマ化した液状媒体Mによって高分子化合物Pを分解することができる。より具体的には、プラズマ化していない液状媒体Mに高分子化合物Pが溶解又は分散している状態で、液状媒体Mをプラズマ化処理することにより、プラズマ化した液状媒体Mによって高分子化合物Pを分解することができる。このように、高分子化合物Pと、プラズマ化した液状媒体Mとを接触させることにより、高分子化合物Pから分解された分解生成物が生成する。
【0050】
このように、高分子化合物Pの分解は、触媒を必要としない。すなわち、高分子化合物Pは、高分子化合物の分解反応のための触媒が存在しない状態で、プラズマ化した液状媒体Mと接触する。このため、触媒を使用する分解処理に比べてコストが軽減でき、効率的である。
【0051】
(回収ステップ)
生成した分解生成物を、液状媒体M及び残存する高分子化合物Pから分離して回収する。生成分解物の回収方法は特に限定されず、既知の1以上の手法を使用可能である。回収方法の例として、乾燥、濾過、抽出、蒸留、精製、クロマトグラフィーなどが挙げられる。クロマトグラフィーの例として、高速液体クロマトグラフィー(HPLC:high performance liquid chromatography)、超高速液体クロマトグラフィー(UPLC:ultra-performance liquid chromatography)などが挙げられる。例えば、分解生成物が液状媒体Mに溶解し、高分子化合物Pが液状媒体Mに溶解しない場合には、まず分解生成物が溶解した液状媒体Mと高分子化合物Pとを分離する。その後、液状媒体Mから分解生成物を分離することにより、分解生成物を回収することができる。このようにして、高分子化合物Pを処理するとともに、高分子化合物Pから分解生成物を製造することができる。
【0052】
以上のような処理装置1及び方法によれば、触媒を必要とせず、かつ、積極的な加熱操作や加圧操作を行う必要もなく、高分子化合物Pの分解を効率的に行うことができる。これにより、高分子化合物Pの再利用を効率化することができる。したがって、環境負荷の軽減やサーキュラーエコノミーの実現に貢献できる。
【0053】
<第2実施形態>
図3を参照して、第2実施形態に係る処理装置1及び処理装置1を用いた処理方法について説明する。第2実施形態は、プラズマ発生器20が容器10の外部に位置する点で第1実施形態と相違する。以下では、主に上記実施形態との相違点について説明し、上記実施形態と共通する点についての説明は繰り返さない。
【0054】
図3は、第2の実施形態に係る処理装置1を示す断面図である。
図3に示すように、電磁波送信部22は、電磁波放射部32を含めて容器10の外部に位置する。電磁波送信部22から放射された電磁波は、容器10の側壁14を透過して、容器10内の電磁波受信部24に到達する。
【0055】
このように、容器10の側壁14は、電磁波(例えばマイクロ波)を透過する必要がある。したがって、第1実施形態とは異なり、容器10のうち少なくとも電磁波送信部22は、非金属材料から形成される。側壁14の材質の例として、ガラス、セラミックス、ゴム、プラスチックなどが挙げられる。
【0056】
第2実施形態に係る処理装置1では、電磁波送信部22が容器10の外部に位置するので、液状媒体Mに接触することによる電磁波送信部22の劣化を防止することができる。一方、第1実施形態の処理装置1は、容器10の内部で電磁波を放射するので、容器10によって電磁波が減衰しない点で有利である。
【0057】
<変形例>
電磁波受信部24の形状や大きさは上記例に限定されない。例えば、電磁波受信部24は、糸状、膜状、板状、台状、柱状、網状、繊維状、球状など、任意の形状を有し得る。電磁波受信部24は、容器10の底壁12又は側壁14と接触してもよく、容器10から離れた位置に支持されてもよく、液状媒体M中に浮かべられてもよい。
【0058】
例えば、電磁波受信部24は、大きな面積を有する膜や板の形状を有してもよい。電磁波受信部24は、底壁12上で台のような形状を有し、処理対象である高分子化合物Pを載置する台座を兼ねてもよい。電磁波受信部24は、コア40及び誘電性被覆42のコアシェル構造を有する小球の形状を有してもよい。電磁波受信部24の形状は、多数の凹凸を有する形状であってもよい。このような凹凸形状は、電磁波受信部24からの放電が起こりやすくなる点で好ましい。
【実施例】
【0059】
<実施例1>
まず、
図1のような処理装置1を用意した。電磁波送信部22としては、Sairem社製のマイクロ波出力装置(型式:GMP30K)を使用した。電磁波受信部24としては、SiO
2ガラスで銅線をコーティングしたものを使用した。SiO
2ガラス製の容器10内に液状媒体Mとしてエチレングリコール(EG:ethylene glycol)を投入した。次いで、処理対象の高分子化合物Pとしてポリエチレンテレフタレート(PET:polyethylene terephthalate)を細かく砕いた粉末を用意し、容器10内に投入して、エチレングリコールに分散させた。PET及びETの投入量は、PET及びETが質量比で3:97となるように調製した。
【0060】
次いで、電磁波出力部30を作動させ、大気中で電磁波放射部32から電磁波受信部24へマイクロ波を放射した。マイクロ波の出力は300Wに設定し、マイクロ波の照射を10分間継続した。エチレングリコールがマイクロ波によって加熱され、エチレングリコールの温度は、照射を継続している間を通して約100℃であった。その結果、電磁波受信部24の周囲でスパークした後、電磁波受信部24上で継続的にプラズマ発光が観察された。
【0061】
マイクロ波を10分間照射した後、Water社製の超高速液体クロマトグラフィー装置(型式:ACQUITY UPLC system D)を使用して、容器10内のエチレングリコール中に溶解している分解生成物を検出した。分析条件は以下のように設定した。
・固定相:ACQUITY UPLC BEH C8 1.7μm 100mm
・移動相:メタノール/水=7/3(v/v)
・測定溶液の調製方法:分解生成物をメタノール/水=7/3(v/v)で希釈したのち、シリンジフィルターでろ過することで測定溶液を作製した
・流速:0.4mL/min
・検出波長:254nm
【0062】
その結果、ビス-2-ヒドロキシエチルテレフタレート(BHET)の単量体、二量体、及び三量体がエチレングリコールに溶解していることが検出された。検出されたBHETの単量体、二量体、及び三量体を分解生成物と見なし、検出されなかった成分は未分解物と見なした。
【0063】
検出された分解生成物の量を原料であるPETのモル数に換算し、換算したPETのモル数を原料として投入したPETの全モル数で割った値を「分解率」として算出した。すなわち、「分解率」は、投入したPETの物質量に対する、検出されたBHETの単量体、二量体、及び三量体の量をPETの物質量に換算した値の比である。算出された分解率は、37%であった。すなわち、投入したPETのうち37モル%が、処理装置1によってBHETの単量体、二量体、又は三量体に分解されたことが確認された。
【0064】
<実施例2>
マイクロ波の照射時間を10分から25分に延ばした点を除き、実施例1と同様にしてPETを処理した。PETの分解率は87%であった。
【0065】
<比較例1>
電磁波受信部24を容器10に設置せず、マイクロ波を照射せず、オイルバスを用いて容器10の温度を100℃に保持した点を除き、実施例1と同様にしてPETを処理した。PETの分解は観測されず、分解率は0%であった。
【0066】
<比較例2>
電磁波受信部24を容器10に設置せず、液状媒体であるエチレングリコールの温度が約100℃に保持されるようにマイクロ波出力を調整しながらマイクロ波を照射した点を除き、実施例1と同様にしてPETを処理した。PETの分解は観測されず、分解率は0%であった。
【0067】
実施例及び比較例の実験条件及びPETの分解率を下記表1にまとめた。
【表1】
【符号の説明】
【0068】
1…処理装置、10…容器、12…底壁、14…側壁、16…取付部、20…プラズマ発生器、22…電磁波送信部、30…電磁波出力部、32…電磁波放射部、24…電磁波受信部、40…コア、42…誘電性被覆、P…高分子化合物、M…液状媒体