IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士フイルム株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-感熱転写記録シート 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-08
(45)【発行日】2023-12-18
(54)【発明の名称】感熱転写記録シート
(51)【国際特許分類】
   B41M 5/385 20060101AFI20231211BHJP
【FI】
B41M5/385 400
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022552004
(86)(22)【出願日】2021-09-21
(86)【国際出願番号】 JP2021034648
(87)【国際公開番号】W WO2022065320
(87)【国際公開日】2022-03-31
【審査請求日】2022-10-19
(31)【優先権主張番号】P 2020161494
(32)【優先日】2020-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002631
【氏名又は名称】弁理士法人イイダアンドパートナーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100076439
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 敏三
(74)【代理人】
【識別番号】100161469
【弁理士】
【氏名又は名称】赤羽 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100198328
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 幸恵
(72)【発明者】
【氏名】藤江 賀彦
【審査官】中澤 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-052403(JP,A)
【文献】特開2010-253944(JP,A)
【文献】特開2003-220768(JP,A)
【文献】特開2015-013456(JP,A)
【文献】特開2014-198432(JP,A)
【文献】特開2011-073378(JP,A)
【文献】国際公開第2017/171059(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/171060(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 5/385
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材上に色材層とを有する感熱転写記録シートであって、
前記色材層は、イエロー染料を含有するイエロー染料層、マゼンタ染料を含有するマゼンタ染料層、及びシアン染料を含有するシアン染料層を有し、
前記マゼンタ染料は、下記一般式(1)で表される化合物を含み、
前記イエロー染料は、下記一般式(4)で表される化合物と、下記一般式(2)、(3)、(5)、(6)及び(7)のいずれかで表される化合物の少なくとも1種とを含み、
前記シアン染料は、下記一般式(8)~(12)のいずれかで表される化合物の少なくとも1種を含む、
感熱転写記録シート。
【化1】
一般式(1)中、R11はフェニル基、又は炭素数1~4の無置換アルキル基を示す。R12はフェニル基、又は炭素数1~4の無置換アルキル基を示す。R13及びR14は炭素数1~8のアルキル基を示す。
【化2】
一般式(2)中、R21及びR22は炭素数1~18のアルキル基を示す。R23は水素原子、又はメチル基を示す。R24は水素原子、又はアルキル基を示す。R21とR24は互いに結合して環を形成してもよい。
【化3】
一般式(3)中、X31は水素原子、又は臭素原子を示す。R31は水素原子、又は炭素数1~4の無置換アルキル基を示す。R32及びR33は炭素数1~6のアルキル基を示す。
【化4】
一般式(4)中、X41は水素原子、又は塩素原子を示す。R41は炭素数1~4の無置換アルコキシ基、又は炭素数0~4のアミノ基を示す。R42及びR43は炭素数1~4のアルキル基を示す。
【化5】
一般式(5)中、R51は水素原子、ハロゲン原子、又は炭素数2~10のアルコキシカルボニル基を示す。R52は炭素数1~6のアルキル基を示す。
【化6】
一般式(6)中、R61及びR62は炭素数1~4のアルキル基を示す。
【化7】
一般式(7)中、R71は炭素数1~4のアルコキシ基、又は炭素数0~4のアミノ基を示す。R72、R73及びR74は炭素数1~4のアルキル基を示す。
【化8】
一般式(8)中、X81は水素原子、又は塩素原子を示す。R81及びR82は炭素数1~6の無置換アルキル基を示す。R83は水素原子、炭素数1~4の無置換アルキル基、又は炭素数1~4の無置換アルコキシ基を示す。R84はメチル基、又はエチル基を示す。R85は炭素数1~4のアルキル基、アリール基、又は5員もしくは6員のヘテロアリール基を示す。
【化9】
一般式(9)中、R91は炭素数1~4のアルキル基を示す。R92は水素原子、炭素数1~4のアルキル基、又は炭素数1~4のアルコキシ基を示す。R93及びR94は炭素数1~6のアルキル基を示す。
【化10】
一般式(10)中、R101及びR102は炭素数1~8のアルキル基を示す。R103は水素原子、又は炭素数1~3のアルキル基を示す。
【化11】
一般式(11)中、R111及びR112は炭素数1~4のアルキル基を示す。R113は炭素数1~4のアルキル基を示す。
【化12】
一般式(12)中、R121及びR122は水素原子、炭素数1~6のアルキル基、又は炭素数6~10のアリール基を示す。
【請求項2】
前記イエロー染料が、前記一般式(4)で表される化合物と、前記一般式(2)及び(6)のいずれかで表される化合物の少なくとも1種とを含む、請求項に記載の感熱転写記録シート。
【請求項3】
基材と、前記基材上に色材層とを有する感熱転写記録シートであって、
前記色材層は、イエロー染料を含有するイエロー染料層、マゼンタ染料を含有するマゼンタ染料層、及びシアン染料を含有するシアン染料層を有し、
前記マゼンタ染料は、下記一般式(1)で表される化合物を含み、
前記イエロー染料は、下記一般式(3)で表される化合物と、下記一般式(2)で表される化合物とを含み、
前記シアン染料は、下記一般式(8)~(12)のいずれかで表される化合物の少なくとも1種を含む、
感熱転写記録シート。
【化13】
一般式(1)中、R11はフェニル基、又は炭素数1~4の無置換アルキル基を示す。R12はフェニル基、又は炭素数1~4の無置換アルキル基を示す。R13及びR14は炭素数1~8のアルキル基を示す。
【化14】
一般式(2)中、R21及びR22は炭素数1~18のアルキル基を示す。R23は水素原子、又はメチル基を示す。R24は水素原子、又はアルキル基を示す。R21とR24は互いに結合して環を形成してもよい。
【化15】
一般式(3)中、X31は水素原子、又は臭素原子を示す。R31は水素原子、又は炭素数1~4の無置換アルキル基を示す。R32及びR33は炭素数1~6のアルキル基を示す。
【化16】
一般式(8)中、X81は水素原子、又は塩素原子を示す。R81及びR82は炭素数1~6の無置換アルキル基を示す。R83は水素原子、炭素数1~4の無置換アルキル基、又は炭素数1~4の無置換アルコキシ基を示す。R84はメチル基、又はエチル基を示す。R85は炭素数1~4のアルキル基、アリール基、又は5員もしくは6員のヘテロアリール基を示す。
【化17】
一般式(9)中、R91は炭素数1~4のアルキル基を示す。R92は水素原子、炭素数1~4のアルキル基、又は炭素数1~4のアルコキシ基を示す。R93及びR94は炭素数1~6のアルキル基を示す。
【化18】
一般式(10)中、R101及びR102は炭素数1~8のアルキル基を示す。R103は水素原子、又は炭素数1~3のアルキル基を示す。
【化19】
一般式(11)中、R111及びR112は炭素数1~4のアルキル基を示す。R113は炭素数1~4のアルキル基を示す。
【化20】
一般式(12)中、R121及びR122は水素原子、炭素数1~6のアルキル基、又は炭素数6~10のアリール基を示す。
【請求項4】
前記シアン染料が、前記一般式(8)で表される化合物と、前記一般式(9)~(12)のいずれかで表される化合物の少なくとも1種とを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の感熱転写記録シート。
【請求項5】
前記シアン染料中、前記一般式(8)で表される化合物の含有量(I)と、前記一般式(9)~(12)のいずれかで表される化合物の含有量の合計(II)との比が、質量比で、(I):(II)=90~50:10~50である、請求項1~4のいずれか1項に記載の感熱転写記録シート。
【請求項6】
前記シアン染料が、前記一般式(8)で表される化合物と前記一般式(12)で表される化合物とを含む、請求項1~のいずれか1項に記載の感熱転写記録シート。
【請求項7】
前記マゼンタ染料が、前記一般式(1)で表される化合物と、下記一般式(13)~(20)のいずれかで表される化合物の少なくとも1種とを含む、請求項1~のいずれか1項に記載の感熱転写記録シート。
【化21】
一般式(13)中、R131はハロゲン原子、水酸基、炭素数1~8のアルコキシ基、又は炭素数6~10のアリールオキシ基を示す。
【化22】
一般式(14)中、R141及びR142は炭素数6~10のアリール基を示す。
【化23】
一般式(15)中、R151は炭素数1~6のアルキル基、又は炭素数1~6のアルケニル基を示す。R152は炭素数1~4のアルキル基を示す。R153及びR154は炭素数1~6のアルキル基を示す。
【化24】
一般式(16)中、R161は炭素数1~4のアルキル基を示す。R162及びR163は炭素数1~10のアルキル基を示す。
【化25】
一般式(17)中、R171は炭素数1~6のアルキル基を示す。R172は炭素数1~6のアルキル基、又は炭素数6~10のアリール基を示す。R173は水素原子、又は炭素数1~4のアルキル基を示す。R174及びR175は炭素数1~4のアルキル基を示す。
【化26】
一般式(18)中、R181は炭素数1~4のアルキル基、又は炭素数6~10のアリール基を示す。R182は炭素数1~12のアルキル基を示す。R183は水素原子、又は炭素数1~4のアルキル基を示す。R184及びR185は炭素数1~12のアルキル基を示す。
【化27】
一般式(19)中、R191及びR192は炭素数1~6のアルキル基を示す。R193は炭素数1~6のアルキル基、又は炭素数6~10のアリール基を示す。R194はアルキル基、又は炭素数0~12のアミノ基を示す。
【化28】
一般式(20)中、R201は炭素数1~4のアルコキシ基、又は炭素数0~6のアミノ基を示す。R202及びR203は炭素数1~4のアルキル基を示す。
【請求項8】
前記マゼンタ染料が、前記一般式(1)で表される化合物と、前記一般式(15)で表される化合物とを含む、請求項に記載の感熱転写記録シート。
【請求項9】
前記マゼンタ染料が、前記一般式(1)で表される化合物と、前記一般式(15)で表される化合物と、前記一般式(13)で表される化合物とを含む、請求項に記載の感熱転写記録シート。
【請求項10】
前記マゼンタ染料が、前記一般式(1)で表される化合物と、前記一般式(13)で表される化合物と、前記一般式(14)で表される化合物とを含む、請求項に記載の感熱転写記録シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感熱転写記録シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、種々の熱転写記録方法が知られているが、中でも昇華型転写記録方式は、銀塩写真の画質に最も近いカラーハードコピーが作製できるプロセスとして注目されている。しかも、銀塩写真に比べて、ドライであること、デジタルデータから直接可視像化できる、複製作りが簡単である等の利点を持っている。
【0003】
この昇華型熱転写記録方式では、色素(以下、染料ともいう。)を含有する感熱転写記録シート(以下、単にインクシートともいう。)と感熱転写受像シート(以下、単に受像シートともいう。)を重ね合わせ、次いで、電気信号によって発熱が制御されるサーマルヘッドによって感熱転写記録シートを加熱することで感熱転写記録シート中の色素を受像シートに転写して画像情報の記録を行うものであり、シアン、マゼンタ、イエローの3色あるいはこれにブラックを加えた4色を重ねて記録することで色の濃淡に連続的な変化を表現したカラー画像を転写記録することができる。
従来、感熱転写記録シートの色素及びその組み合わせの改良は様々な試みがなされている。例えば特許文献1ではイソチアゾリルアゾチアゾール色素を用いた感熱転写記録シートが提案されている。また特許文献2ではイソチアゾリルアゾチアゾール色素を含むマゼンタ染料層とアリーリデンピラゾロン色素を含むイエロー染料層を有する感熱転写記録シートが提案されている。この感熱転写記録シートによれば、肌色の再現性を高めることができることが記載されている。
【0004】
【文献】特許第3001991号公報
【文献】特開2010-52404号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記昇華型熱転写記録方式による黒色の表現方法には、ブラック染料のみにより表現する方法、シアン染料、イエロー染料、マゼンタ染料の3色を順次転写させて形成するプロセスブラックにより表現する方法等がある。
上記方式による印刷は、近年では写真プリント以外にも、従業員証や学生証のような身分証明書(IDカード)にも用いられるようになってきた。この身分証明書においては、文字情報やバーコードの印刷部分に用いられるブラックの品質(特に色味)は非常に重要である。そのためブラックは、ブラック染料のみを用いて印刷されたり、熱溶融法転写方式によって別プロセスとして印刷されたりしている。しかし、印刷の速度向上やコストの点で、シアン染料、イエロー染料、マゼンタ染料の3色を順次転写させて形成するプロセスブラックで上記用途に十分な高品質のブラックを表現できることが望まれているが、その色味については改善の余地があった。
さらに、上記方式による印刷対象の拡大に伴い、これまであまりなかったプリント配色(例えば黒地背景のカラーでの文字情報印刷など)が多く使用されるようになってきた。このような配色においては黒地の濃さ(ブラックの高濃度化)による視覚効果によってカラーが際立つため(他色の引き締め効果)、ブラックの高品質化が求められ続けている。
特許文献1は、イソチアゾリルアゾチアゾール色素を含有する感熱転写記録シートについて記載しているものの、他の色相の染料との組合せについては具体的な開示がない。
特許文献2に記載の感熱転写記録シートには、形成されるプロセスブラックによる他色の引き締め効果等の点で改善の余地があった。
本発明は、高濃度かつ色味に優れ、他色の引き締め効果にも優れたプロセスブラックの形成が可能な感熱転写記録シートを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、下記手段で本発明の上記目的が達成できることを見い出した。
〔1〕
基材と、基材上に色材層とを有する感熱転写記録シートであって、
色材層は、イエロー染料を含有するイエロー染料層、マゼンタ染料を含有するマゼンタ染料層、及びシアン染料を含有するシアン染料層を有し、
マゼンタ染料は、下記一般式(1)で表される化合物を含み、
イエロー染料は、下記一般式(2)~(7)のいずれかで表される化合物の少なくとも1種を含み、
シアン染料は、下記一般式(8)~(12)のいずれかで表される化合物の少なくとも1種を含む、
感熱転写記録シート。
【化1】
一般式(1)中、R11はフェニル基、又は炭素数1~4の無置換アルキル基を示す。R12はフェニル基、又は炭素数1~4の無置換アルキル基を示す。R13及びR14は炭素数1~8のアルキル基を示す。
【化2】
一般式(2)中、R21及びR22は炭素数1~18のアルキル基を示す。R23は水素原子、又はメチル基を示す。R24は水素原子、又はアルキル基を示す。R21とR24は互いに結合して環を形成してもよい。

【化3】
一般式(3)中、X31は水素原子、又は臭素原子を示す。R31は水素原子、又は炭素数1~4の無置換アルキル基を示す。R32及びR33は炭素数1~6のアルキル基を示す。
【化4】
一般式(4)中、X41は水素原子、又は塩素原子を示す。R41は炭素数1~4の無置換アルコキシ基、又は炭素数0~4のアミノ基を示す。R42及びR43は炭素数1~4のアルキル基を示す。
【化5】
一般式(5)中、R51は水素原子、ハロゲン原子、又は炭素数2~10のアルコキシカルボニル基を示す。R52は炭素数1~6のアルキル基を示す。


【化6】
一般式(6)中、R61及びR62は炭素数1~4のアルキル基を示す。
【化7】
一般式(7)中、R71は炭素数1~4のアルコキシ基、又は炭素数0~4のアミノ基を示す。R72、R73及びR74は炭素数1~4のアルキル基を示す。
【化8】
一般式(8)中、X81は水素原子、又は塩素原子を示す。R81及びR82は炭素数1~6の無置換アルキル基を示す。R83は水素原子、炭素数1~4の無置換アルキル基、又は炭素数1~4の無置換アルコキシ基を示す。R84はメチル基、又はエチル基を示す。R85は炭素数1~4のアルキル基、アリール基、又は5員もしくは6員のヘテロアリール基を示す。

【化9】
一般式(9)中、R91は炭素数1~4のアルキル基を示す。R92は水素原子、炭素数1~4のアルキル基、又は炭素数1~4のアルコキシ基を示す。R93及びR94は炭素数1~6のアルキル基を示す。
【化10】
一般式(10)中、R101及びR102は炭素数1~8のアルキル基を示す。R103は水素原子、又は炭素数1~3のアルキル基を示す。
【化11】
一般式(11)中、R111及びR112は炭素数1~4のアルキル基を示す。R113は炭素数1~4のアルキル基を示す。
【化12】
一般式(12)中、R121及びR122は水素原子、炭素数1~6のアルキル基、又は炭素数6~10のアリール基を示す。
【0007】
〔2〕
シアン染料が、一般式(8)で表される化合物と、一般式(9)~(12)のいずれかで表される化合物の少なくとも1種とを含む、〔1〕に記載の感熱転写記録シート。
〔3〕
シアン染料中、一般式(8)で表される化合物の含有量(I)と、一般式(9)~(12)のいずれかで表される化合物の含有量の合計(II)との比が、質量比で、(I):(II)=90~50:10~50である、〔1〕又は〔2〕に記載の感熱転写記録シート。
〔4〕
シアン染料が、一般式(8)で表される化合物と一般式(12)で表される化合物とを含む、〔1〕~〔3〕のいずれか1つに記載の感熱転写記録シート。
〔5〕
イエロー染料が、一般式(4)で表される化合物と、一般式(2)、(3)、(5)、(6)及び(7)のいずれかで表される化合物の少なくとも1種とを含む、〔1〕~〔4〕のいずれか1つに記載の感熱転写記録シート。
〔6〕
イエロー染料が、一般式(4)で表される化合物と、一般式(2)及び(6)のいずれかで表される化合物の少なくとも1種とを含む、〔1〕~〔5〕のいずれか1つに記載の感熱転写記録シート。
〔7〕
イエロー染料が、一般式(3)で表される化合物と、一般式(2)で表される化合物とを含む、〔1〕~〔4〕のいずれか1つに記載の感熱転写記録シート。
【0008】
〔8〕
マゼンタ染料が、一般式(1)で表される化合物と、下記一般式(13)~(20)のいずれかで表される化合物の少なくとも1種とを含む、〔1〕~〔7〕のいずれか1つに記載の感熱転写記録シート。
【化13】
一般式(13)中、R131はハロゲン原子、水酸基、炭素数1~8のアルコキシ基、又は炭素数6~10のアリールオキシ基を示す。
【化14】
一般式(14)中、R141及びR142は炭素数6~10のアリール基を示す。
【化15】
一般式(15)中、R151は炭素数1~6のアルキル基、又は炭素数1~6のアルケニル基を示す。R152は炭素数1~4のアルキル基を示す。R153及びR154は炭素数1~6のアルキル基を示す。
【化16】
一般式(16)中、R161は炭素数1~4のアルキル基を示す。R162及びR163は炭素数1~10のアルキル基を示す。

【化17】
一般式(17)中、R171は炭素数1~6のアルキル基を示す。R172は炭素数1~6のアルキル基、又は炭素数6~10のアリール基を示す。R173は水素原子、又は炭素数1~4のアルキル基を示す。R174及びR175は炭素数1~4のアルキル基を示す。
【化18】
一般式(18)中、R181は炭素数1~4のアルキル基、又は炭素数6~10のアリール基を示す。R182は炭素数1~12のアルキル基を示す。R183は水素原子、又は炭素数1~4のアルキル基を示す。R184及びR185は炭素数1~12のアルキル基を示す。
【化19】
一般式(19)中、R191及びR192は炭素数1~6のアルキル基を示す。R193は炭素数1~6のアルキル基、又は炭素数6~10のアリール基を示す。R194はアルキル基、又は炭素数0~12のアミノ基を示す。
【化20】
一般式(20)中、R201は炭素数1~4のアルコキシ基、又は炭素数0~6のアミノ基を示す。R202及びR203は炭素数1~4のアルキル基を示す。
【0009】
〔9〕
マゼンタ染料が、一般式(1)で表される化合物と、一般式(15)で表される化合物とを含む、〔1〕~〔8〕のいずれか1つに記載の感熱転写記録シート。
〔10〕
マゼンタ染料が、一般式(1)で表される化合物と、一般式(15)で表される化合物と、一般式(13)で表される化合物とを含む、〔1〕~〔9〕のいずれか1つに記載の感熱転写記録シート。
〔11〕
マゼンタ染料が、一般式(1)で表される化合物と、一般式(13)で表される化合物と、一般式(14)で表される化合物とを含む、〔1〕~〔9〕のいずれか1つに記載の感熱転写記録シート。
【発明の効果】
【0010】
本発明の感熱転写記録シートによれば、高濃度かつ色味に優れ、他色の引き締め効果にも優れたプロセスブラックを形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例の評価試験2において用いた評価用画像パターン1を示す模式図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の説明において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において化合物の表示(例えば、化合物と末尾に付して呼ぶとき)については、この化合物そのもののほか、その塩、そのイオンを含む意味に用いる。また、所望の効果を奏する範囲で、置換基を導入するなど構造の一部を変化させた誘導体を含む意味である。
本明細書において置換基が解離性の水素原子(水素原子が塩基の作用により解離する基)を有する場合、この置換基にはイオンないし塩の形態が含まれる。
本明細書において置換又は無置換を明記していない置換基、連結基等(以下、置換基等という。)については、その基に適宜の置換基を有していてもよい意味である。よって、本明細書において、単に、「~基」(例えば「アルキル基」)と記載されている場合であっても、この「~基」(例えば「アルキル基」)は、置換基を有しない態様(例えば「無置換アルキル基」)に加えて、更に置換基を有する態様(例えば「置換アルキル基」)も包含する。これは置換又は無置換を明記していない化合物についても同義である。好ましい置換基としては、後記する置換基Tが挙げられる。
本明細書において単に「置換基」という場合、後記する置換基Tから選ばれる置換基が好ましく適用される。
本明細書において、特定の符号で示された置換基等が複数あるとき、又は複数の置換基等を同時若しくは択一的に規定するときには、それぞれの置換基等は互いに同一でも異なっていてもよいことを意味する。また、特に断らない場合であっても、複数の置換基等が隣接するときにはそれらが互いに連結したり縮環したりして環を形成していてもよい意味である。
本発明において、アルキル基というときは、直鎖、分岐、もしくは環状のアルキル基を表す。アルキル基を含む基(アルコキシ基、アルコキシカルボニル基等)中のアルキル基についても同様である。
本発明において、ある基の炭素数を規定する場合、この炭素数は、本発明ないし本明細書において特段の断りのない限りは、基全体の炭素数を意味する。つまり、この基がさらに置換基を有する形態である場合、この置換基を含めた全体の炭素数を意味する。
本発明において、炭素数0のアミノ基とは一般的な無置換アミノ基(NH基)を表す。アミノ基の炭素数が1以上であるとき、その炭素数は置換基を含めたアミノ基全体の炭素数を意味する。例えば、後述する例示化合物(7-1)は、一般式(7)におけるR71として炭素数2のアミノ基(ジメチルアミノ基)を有している。
【0013】
<感熱転写記録シート>
最初に、本発明の感熱転写記録シートについて詳細に説明する。
本発明の感熱転写記録シートは、基材と、基材上に色材層とを有する感熱転写記録シートであり、色材層は、イエロー染料を含有するイエロー染料層、マゼンタ染料を含有するマゼンタ染料層、及びシアン染料を含有するシアン染料層を有する。
【0014】
(色材層)
本発明の感熱転写記録シートは、基材上に色材層を有し、色材層は、イエロー染料層、マゼンタ染料層、及びシアン染料層を有する。本発明の感熱転写記録シートは、これらの染料層に加えて、ブラック染料層を有していてもよい。これらの染料層は、同一の基材上に面順次に塗り分けられているのが好ましい。一例として、イエロー、マゼンタ及びシアンの各色相の染料層が同一の基材の長軸方向に、感熱転写受像シートの記録面の面積に対応して面順次に塗り分けられている場合を挙げることができる。基材を長尺にして、上記各染料層を面順次に繰り返し塗り分けてもよい。この3層に加えて、ブラックの色相の染料層と転写性保護層のどちらか、あるいは双方が塗り分けられるのも好ましい態様である。
この様な態様を取る場合、各色の開始点をプリンターに伝達する目的で、感熱転写記録シート上に目印を付与することも好ましい態様である。このように面順次で塗り分けることによって、染料の転写による画像の形成、さらには画像上への保護層の積層を一つの感熱転写記録シートで行なうことが可能となる。
しかしながら、本発明は上記のような染料層の設け方に限定されるものではない。昇華型熱転写インク層(染料層)と熱溶融転写インク層を併設することも可能であり、また、イエロー、マゼンタ、シアン及びブラック以外の色相の染料層を設ける等の変更をすることも可能である。また、形態としては長尺であっても良いし、枚葉の熱転写シートであっても良い。
【0015】
各色の染料層は単層構成であっても複層構成であってもよく、複層構成の場合、染料層を構成する各層の組成は同一であっても異なっていてもよい。
【0016】
染料層には染料を含有する。染料層は、通常、染料に加えてバインダーを含有する。さらに、必要に応じて、ワックス類、シリコーン樹脂、含フッ素有機化合物等を含有することができる。
【0017】
各々の染料(色素)は、染料層中にそれぞれ10~90質量%含有されることが好ましく、20~80質量%含有されることがより好ましい。
染料層の塗布は、ロールコート、バーコート、グラビアコート、グラビアリバースコート等の一般的な方法で行われる。また染料層の塗布量は、0.1~2.0g/m(固形分換算、以下本発明における塗布量は特に断りのない限り、固形分換算の数値である。)が好ましく、更に好ましくは0.2~1.2g/mである。染料層の膜厚は0.1~2.0μmであることが好ましく、更に好ましくは0.2~1.2μmである。
【0018】
-染料-
以下、各染料について説明する。
マゼンタ染料は、下記一般式(1)で表される化合物を含み、イエロー染料は、下記一般式(2)~(7)のいずれかで表される化合物の少なくとも1種を含み、シアン染料は、下記一般式(8)~(12)のいずれかで表される化合物の少なくとも1種を含む。
さらに、マゼンタ染料は、一般式(1)で表される化合物に加えて、一般式(13)~(20)で表される化合物の少なくとも1種を含む態様とすることもできる。
本発明において、下記一般式で表される化合物は、その異性体構造(例えば、互変異性体構造)の少なくとも1つがこの一般式に当てはまる限り、どのような異性体構造をとるものでもよい。
以下に、本発明で使用する一般式(1)~(20)で表される化合物についてさらに詳細に説明する。
【0019】
【化21】
【0020】
一般式(1)中、R11はフェニル基、又は炭素数1~4の無置換アルキル基を示す。R11としてとりうるフェニル基は置換基を有していてもよい。R11における置換基としては、後述する置換基Tから選択される置換基が挙げられ、ハロゲン原子、脂肪族基、不飽和脂肪族基、アリール基、脂肪族オキシ基、アシルオキシ基、脂肪族オキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、脂肪族オキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、脂肪族もしくはアリールスルホニルアミノ基、脂肪族チオ基、スルファモイル基、脂肪族もしくはアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、脂肪族オキシカルボニル基、カルバモイル基、イミド基、水酸基、シアノ基、ニトロ基等が好ましい。R11は、好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、無置換フェニル基であり、さらに好ましくはメチル基、エチル基、無置換フェニル基であり、最も好ましくはメチル基、または無置換フェニル基である。
12はフェニル基、又は炭素数1~4の無置換アルキル基を示す。R12としてとりうるフェニル基は、置換基を有していてもよい。R12における置換基としては、後述する置換基Tから選択される置換基が挙げられ、ハロゲン原子、脂肪族基、不飽和脂肪族基、アリール基、脂肪族オキシ基、アシルオキシ基、脂肪族オキシカルボニルオキシ基、アミノ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、脂肪族もしくはアリールスルホニルアミノ基、脂肪族チオ基、スルファモイル基、脂肪族もしくはアリールスルホニル基、アシル基、脂肪族オキシカルボニル基、カルバモイル基、水酸基、シアノ基、ニトロ基等が好ましい。R12は、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、又は無置換フェニル基が好ましく、t-ブチル基、又は無置換フェニル基がより好ましい。
13及びR14は炭素数1~8のアルキル基を示す。R13及びR14としてとりうる炭素数1~8のアルキル基は、置換基を有していてもよい。R13及びR14における置換基としては、後述する置換基Tから選択される置換基が挙げられ、水酸基、ハロゲン原子、不飽和脂肪族基、アリール基、脂肪族オキシ基、アシルオキシ基(より好ましくは、アルキルカルボニルオキシ基)、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基、アシルアミノ基、脂肪族オキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、脂肪族もしくはアリールスルホニルアミノ基、脂肪族チオ基、脂肪族もしくはアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、脂肪族オキシカルボニル基、カルバモイル基、シアノ基等が好ましい。R13及びR14は、炭素数2~6のアルキル基が好ましく、炭素数2~4の無置換アルキル基、及び、水酸基、アルキルカルボニルオキシ基、又はアルキルカルボニル基を置換基として有する炭素数2~4のアルキル基がより好ましい。
【0021】
一般式(1)で表される化合物の具体例を以下に示すが、本発明はこれらの化合物に限定されない。
【0022】
【化22】
【0023】
【化23】
【0024】
【化24】
【0025】
一般式(2)中、R21及びR22は炭素数1~18のアルキル基を示す。R21及びR22としてとりうる炭素数1~18のアルキル基の炭素数は、1~16が好ましく、1~14がより好ましい。R21及びR22としてとりうる炭素数1~18のアルキル基は、置換基を有していてもよい。R21及びR22における置換基としては、後述する置換基Tから選択される基が挙げられ、アリールオキシ基(フェノキシ基が好ましく、4-シクロヘキシルフェノキシ基がより好ましい)、アリール基(フェニル基が好ましい)、カルバモイルオキシ基(フェニルアミノカルボニルオキシ基が好ましい)、ハロゲン原子、不飽和脂肪族基、アシルオキシ基、脂肪族オキシカルボニルオキシ、アミノ基、アシルアミノ基、脂肪族オキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、脂肪族もしくはアリールスルホニルアミノ基、脂肪族チオ基、スルファモイル基、脂肪族もしくはアリールスルホニル基、アシル基、脂肪族オキシカルボニル基、カルバモイル基、水酸基、シアノ基等が挙げられる。R21とR22とは同一でも異なっていてもよいが、R21とR22とは異なっていることが好ましい。R21及びR22は、炭素数1~6の無置換アルキル基、又はフェニル基、フェノキシ基(好ましくは置換基Tから選択される置換基をさらに有するフェノキシ基であり、シクロヘキシルフェノキシ基)、もしくはフェニルアミノカルボニルオキシ基を置換基として有する、炭素数7~14のアルキル基であることが好ましい。
23は水素原子、又はメチル基を示す。R23は、メチル基であることが好ましい。
24は水素原子、又はアルキル基を示す。R24としてとりうるアルキル基の炭素数は、1~8が好ましく、1~6がより好ましく、1~5がさらに好ましい。R24としてとりうるアルキル基は、置換基を有していてもよい。R24における置換基としては、不飽和脂肪族基、アリール基、脂肪族オキシ基、アシルオキシ基、脂肪族オキシカルボニルオキシ、アミノ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、脂肪族オキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、脂肪族もしくはアリールスルホニルアミノ基、脂肪族チオ基、スルファモイル基、脂肪族もしくはアリールスルホニル基、アシル基、脂肪族オキシカルボニル基、カルバモイル基、水酸基等が挙げられる。
21とR24は互いに結合して環を形成してもよい。
24は、水素原子であるか、R21と結合して環を形成していることが好ましく、水素原子であるか、R21と結合してピペリジン環(置換基を有していてもよい)を形成していることがより好ましい。
【0026】
一般式(2)で表される化合物の具体例を以下に示すが、本発明はこれらの化合物に限定されない。
【0027】
【化25】
【0028】
【化26】
【0029】
一般式(3)中、X31は水素原子、又は臭素原子を示す。
31は水素原子、又は炭素数1~4の無置換アルキル基を示す。R31は、水素原子、メチル基、エチル基、又はプロピル基が好ましく、水素原子又はイソプロピル基であることがより好ましい。
32及びR33は炭素数1~6のアルキル基を示す。R32及びR33としてとりうる炭素数1~6のアルキル基は、置換基を有していてもよい。R32及びR33における置換基としては、後述する置換基Tから選択される置換基が挙げられ、ハロゲン原子、不飽和脂肪族基、アリール基、脂肪族オキシ基、アシルオキシ基、脂肪族オキシカルボニルオキシ、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、脂肪族オキシカルボニルアミノ基、脂肪族もしくはアリールスルホニルアミノ基、脂肪族チオ基、スルファモイル基、脂肪族もしくはアリールスルフィニル基、脂肪族もしくはアリールスルホニル基、アシル基、脂肪族オキシカルボニル基、水酸基、シアノ基等が好ましい。R32及びR33は、炭素数1~4の無置換アルキル基が好ましく、n-プロピル基、n-ブチル基がより好ましい。
【0030】
一般式(3)で表される化合物の具体例を以下に示すが、本発明はこれらの化合物に限定されない。
【0031】
【化27】
【0032】
【化28】
【0033】
一般式(4)中、X41は水素原子、又は塩素原子を示す。
41は炭素数1~4の無置換アルコキシ基、又は炭素数0~4のアミノ基を示す。R41としてとりうる炭素数0~4のアミノ基は、置換基を有していてもよい。R41における置換基としては、後述する置換基Tから選択される置換基が挙げられ、ハロゲン原子、脂肪族基、不飽和脂肪族基、アリール基、脂肪族オキシ基、アシルオキシ基水酸基、シアノ基等が好ましい。R41は、炭素数1~4の無置換アルコキシ基、又はアルキルアミノ基が好ましく、エトキシ基、又はジメチルアミノ基がより好ましい。
42及びR43は炭素数1~4のアルキル基を示す。R42及びR43としてとりうる炭素数1~4のアルキル基は、置換基を有していてもよい。R42及びR43における置換基としては、後述する置換基Tから選択される置換基が挙げられ、ハロゲン原子、不飽和脂肪族基、脂肪族オキシ基、アシルオキシ基、脂肪族オキシカルボニルオキシ、脂肪族チオ基、脂肪族オキシカルボニル基、水酸基、シアノ基等が好ましい。R43及びR43は、炭素数1~4の無置換アルキル基が好ましく、エチル基がより好ましい。
【0034】
一般式(4)で表される化合物の具体例を以下に示すが、本発明はこれらの化合物に限定されない。
【0035】
【化29】
【0036】
【化30】
【0037】
一般式(5)中、R51は水素原子、ハロゲン原子、又は炭素数2~10のアルコキシカルボニル基を示す。R51としてとりうるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が挙げられ、塩素原子が好ましい。R51としてとりうる炭素数2~10のアルコキシカルボニル基は置換基を有してもよい。R51における置換基としては、後述する置換基Tから選択される置換基が挙げられ、ハロゲン原子、不飽和脂肪族基、アリール基、脂肪族オキシ基、アシルオキシ基、脂肪族チオ基、水酸基等が好ましい。R51は、塩素原子、又はフェニル基を置換基として有する炭素数7~10のアルコキシカルボニル基が好ましく、塩素原子、又はベンジルオキシカルボニル基がより好ましい。
52は炭素数1~6のアルキル基を示す。R52としてとりうる炭素数1~6のアルキル基は、置換基を有してもよい。R52における置換基としては、後述する置換基Tから選択される置換基が挙げられ、ハロゲン原子、不飽和脂肪族基、アリール基、脂肪族オキシ基、アシルオキシ基、脂肪族チオ基、水酸基等が好ましい。R52は、炭素数1~4の無置換アルキル基が好ましく、n-ブチル基がより好ましい。
【0038】
一般式(5)で表される化合物の具体例を以下に示すが、本発明はこれらの化合物に限定されない。
【0039】
【化31】
【0040】
【化32】
【0041】
一般式(6)中、R61及びR62は炭素数1~4のアルキル基を示す。
61及びR62としてとりうる炭素数1~4のアルキル基は、置換基を有していてもよい。R61及びR62における置換基としては、後述する置換基Tから選択される置換基が挙げられ、ハロゲン原子、不飽和脂肪族基、アリール基、脂肪族オキシ基、アシルオキシ基、アシル基、水酸基が好ましい。R61及びR62は、炭素数1~4の無置換アルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0042】
一般式(6)で表される化合物の具体例を以下に示すが、本発明はこれらの化合物に限定されない。
【0043】
【化33】
【0044】
【化34】
一般式(7)中、R71は炭素数1~4のアルコキシ基、又は炭素数0~4のアミノ基を示す。
71としてとりうる炭素数1~4のアルコキシ基及び炭素数0~4のアミノ基は、置換基を有していてもよい。R71における置換基としては、後述する置換基Tから選択される置換基が挙げられ、ハロゲン原子、脂肪族基、不飽和脂肪族基、アリール基、脂肪族オキシ基、アシルオキシ基、水酸基、シアノ基等が好ましい。R71は、炭素数1~4の無置換アルコキシ基、又はアルキル基を置換基として有する炭素数1~4のアミノ基が好ましく、エトキシ基、又はジメチルアミノ基がより好ましい。
72、R73及びR74は炭素数1~4のアルキル基を示す。R72、R73及びR74としてとりうる炭素数1~4のアルキル基は、置換基を有していてもよい。R72、R73及びR74における置換基としては、後述する置換基Tから選択される置換基が挙げられ、ハロゲン原子、不飽和脂肪族基、アリール基、脂肪族オキシ基、アシルオキシ基、水酸基等が好ましい。R72、R73及びR74は、炭素数1~4の無置換アルキル基が好ましく、メチル基、又はエチル基がより好ましい。
【0045】
一般式(7)で表される化合物の具体例を以下に示すが、本発明はこれらの化合物に限定されない。
【0046】
【化35】
【0047】
【化36】
【0048】
一般式(8)中、X81は水素原子、又は塩素原子を示す。X81は塩素原子が好ましい。
81及びR82は炭素数1~6の無置換アルキル基を示す。R81及びR82は、炭素数1~4の無置換アルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、又はプロピル基がより好ましい。
83は水素原子、炭素数1~4の無置換アルキル基、又は炭素数1~4の無置換アルコキシ基を示す。R83は、水素原子、メチル基、エチル基、メトキシ基、又はエトキシ基が好ましく、水素原子、メチル基、エトキシ基がより好ましい。
84はメチル基、又はエチル基を示す。
85は炭素数1~4のアルキル基、アリール基、又は5員もしくは6員のヘテロアリール基を示す。R85としてとりうるアリール基は、炭素数6~30のアリール基が好ましく、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。R85としてとりうる5もしくは6員のヘテロアリール基は、ヘテロ原子として、酸素原子、窒素原子、及び硫黄原子のいずれを有するものでもよく、フリル基、ピリジル基、チエニル基等が挙げられる。R85としてとりうる炭素数1~4のアルキル基、アリール基、及び5もしくは6員のヘテロアリール基は、置換基を有していてもよい。R85における置換基としては、後述する置換基Tから選択される置換基が挙げられ、ハロゲン原子、脂肪族基、不飽和脂肪族基、アリール基、脂肪族オキシ基、アシルオキシ基、脂肪族オキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、脂肪族オキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、脂肪族チオ基、脂肪族もしくはアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、脂肪族オキシカルボニル基、水酸基、シアノ基、ニトロ基等が好ましい。R85は、炭素数1~4の無置換アルキル基、フェニル基、フリル基又はピリジル基が好ましく、メチル基、エチル基、フリル基、又はピリジル基がより好ましい。
【0049】
一般式(8)で表される化合物の具体例を以下に示すが、本発明はこれらの化合物に限定されない。
【0050】
【化37】
【0051】
【化38】
【0052】
一般式(9)中、R91は炭素数1~4のアルキル基を示す。R91としてとりうる炭素数1~4のアルキル基は、置換基を有していてもよい。R91における置換基としては、ハロゲン原子、不飽和脂肪族基、アリール基、脂肪族オキシ基、アシルオキシ基、脂肪族オキシカルボニルオキシ、脂肪族オキシカルボニル基、水酸基等が挙げられる。R91は、炭素数1~4の無置換アルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、又はプロピル基がより好ましい。
92は水素原子、炭素数1~4のアルキル基、又は炭素数1~4のアルコキシ基を示す。R92としてとりうる炭素数1~4のアルキル基及び炭素数1~4のアルコキシ基は、置換基を有していてもよい。R92における置換基としては、ハロゲン原子、不飽和脂肪族基、脂肪族オキシ基、アシルオキシ基、脂肪族オキシカルボニルオキシ、脂肪族チオ基水酸基等が挙げられる。R92は、水素原子、炭素数1~4の無置換アルキル基、又は炭素数1~4の無置換アルコキシ基が好ましく、水素原子、メチル基、又はメトキシ基がより好ましい。
93及びR94は炭素数1~6のアルキル基を示す。R93及びR94としてとりうる炭素数1~6のアルキル基は、置換基を有していてもよい。R93及びR94における置換基としては、後述する置換基Tから選択される置換基が挙げられ、ハロゲン原子、不飽和脂肪族基、脂肪族オキシ基、アシルオキシ基、脂肪族オキシカルボニルオキシ、アシル基、脂肪族オキシカルボニル基、水酸基、シアノ基等が好ましい。R93及びR94は、炭素数1~4の無置換アルキル基が好ましく、エチル基、イソプロピル基がより好ましく、エチル基がさらに好ましい。
【0053】
一般式(9)で表される化合物の具体例を以下に示すが、本発明はこれらの化合物に限定されない。
【0054】
【化39】
【0055】
【化40】
【0056】
一般式(10)中、R101及びR102は炭素数1~8のアルキル基を示す。R101及びR102としてとりうる炭素数1~8のアルキル基は、置換基を有していてもよい。R101及びR102における置換基としては、後述する置換基Tから選択される置換基が挙げられ、ハロゲン原子、不飽和脂肪族基、アリール基、脂肪族オキシ基、アシルオキシ基、脂肪族オキシカルボニルオキシ、アシルアミノ基、脂肪族もしくはアリールスルホニルアミノ基、脂肪族チオ基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、脂肪族オキシカルボニル基、水酸基、シアノ基等が好ましい。R101及びR102は、炭素数1~6の無置換アルキル基が好ましく、n-ヘキシル基がより好ましい。
103は水素原子、又は炭素数1~3のアルキル基を示す。R103として取りうる炭素数1~3のアルキル基は、置換基を有していてもよい。R103における置換基としては、後述する置換基Tから選択される置換基が挙げられ、ハロゲン原子、不飽和脂肪族基、脂肪族オキシ基、脂肪族チオ基等が好ましい。R103は、炭素数1~3の無置換アルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0057】
一般式(10)で表される化合物の具体例を以下に示すが、本発明はこれらの化合物に限定されない。
【0058】
【化41】
【0059】
【化42】
【0060】
一般式(11)中、R111及びR112は炭素数1~4のアルキル基を示す。R111及びR112としてとりうる炭素数1~4のアルキル基は、置換基を有していてもよい。R111及びR112における置換基としては、後述する置換基Tから選択される置換基が挙げられ、ハロゲン原子、不飽和脂肪族基、脂肪族オキシ基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、脂肪族チオ基、アシル基、脂肪族オキシカルボニル基、水酸基、シアノ基等が好ましい。R111及びR112は、炭素数1~4の無置換アルキル基が好ましく、エチル基がより好ましい。
113は炭素数1~4のアルキル基を示す。R113としてとりうる炭素数1~4のアルキル基は、置換基を有していてもよい。R113における置換基としては、後述する置換基Tから選択される置換基が挙げられ、ハロゲン原子、不飽和脂肪族基、脂肪族オキシ基、水酸基等が好ましい。R113は、炭素数1~4の無置換アルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0061】
一般式(11)で表される化合物の具体例を以下に示すが、本発明はこれらの化合物に限定されない。
【0062】
【化43】
【0063】
【化44】
【0064】
一般式(12)中、R121及びR122は水素原子、炭素数1~6のアルキル基、又は炭素数6~10のアリール基を示す。
121及びR122としてとりうる炭素数6~10のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基が挙げられる。R121及びR122としてとりうる炭素数1~6のアルキル基及び炭素数6~10のアリール基は、置換基を有していてもよい。R121及びR122における置換基としては、後述する置換基Tから選択される置換基が挙げられ、ハロゲン原子、脂肪族基(アルキル基が好ましい)、不飽和脂肪族基、アリール基、脂肪族オキシ基、アシルオキシ基、脂肪族オキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ基、アシルアミノ基、脂肪族オキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、脂肪族もしくはアリールスルホニルアミノ基、脂肪族チオ基、脂肪族もしくはアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、脂肪族オキシカルボニル基、水酸基、シアノ基等が好ましい。R121及びR122としては、炭素数1~6の無置換アルキル基、及びアルキル基を置換基として有するフェニル基が好ましく、メチル基、エチル基、イソプロピル基、及びメチルフェニル基がより好ましい。
【0065】
一般式(12)で表される化合物の具体例を以下に示すが、本発明はこれらの化合物に限定されない。
【0066】
【化45】
【0067】
【化46】
【0068】
一般式(13)中、R131はハロゲン原子、水酸基、炭素数1~8のアルコキシ基、又は炭素数6~10のアリールオキシ基を示す。
131としてとりうるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が挙げられ、臭素原子が好ましい。
131としてとりうる炭素数6~10のアリールオキシ基が有するアリール基は、フェニル基、ナフチル基が好ましい。
131としてとりうる炭素数1~8のアルコキシ基及び炭素数6~10のアリールオキシ基は、置換基を有していてもよい。R131における置換基としては、後述する置換基Tから選択される置換基が挙げられ、水酸基、ハロゲン原子、脂肪族基、不飽和脂肪族基、アリール基、脂肪族オキシ基、アシルオキシ基、脂肪族オキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ基、脂肪族チオ基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、脂肪族オキシカルボニル基、シアノ基等が好ましい。
131は、水酸基を置換基として有するアルコキシ基、ハロゲン原子、又は炭素数6~10の無置換アリールオキシ基が好ましく、水酸基を置換基として有するエトキシ基、フェノキシ基、又は臭素原子が好ましい。
【0069】
一般式(13)で表される化合物の具体例を以下に示すが、本発明はこれらの化合物に限定されない。
【0070】
【化47】
【0071】
【化48】
【0072】
一般式(14)中、R141及びR142は炭素数6~10のアリール基を示す。
141及びR142としてとりうる炭素数6~10のアリール基は、フェニル基、ナフチル基が好ましい。R141及びR142としてとりうる炭素数6~10のアリール基は、置換基を有していてもよい。R141及びR142における置換基としては、後述する置換基Tから選択される置換基が挙げられ、ハロゲン原子、脂肪族基、不飽和脂肪族基、脂肪族オキシ基、アシルオキシ基、脂肪族オキシカルボニルオキシ、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、脂肪族オキシカルボニルアミノ基、脂肪族チオ基、アシル基、脂肪族オキシカルボニル基、水酸基、シアノ基等が好ましい。R141及びR142は、フェニル基が好ましい。
【0073】
一般式(14)で表される化合物の具体例を以下に示すが、本発明はこれらの化合物に限定されない。
【0074】
【化49】
【0075】
【化50】
【0076】
一般式(15)中、R151は炭素数1~6のアルキル基、又は炭素数1~6のアルケニル基を示す。R151としてとりうる炭素数1~6のアルキル基及び炭素数1~6のアルケニル基は、置換基を有していてもよい。R151における置換基としては、後述する置換基Tから選択される置換基が挙げられ、不飽和脂肪族基、脂肪族オキシ基、アシルオキシ基、脂肪族オキシカルボニルオキシ、脂肪族オキシカルボニル基、水酸基等が好ましい。R151としては、炭素数2~6の無置換アルキル基、又は炭素数2~6の無置換アルケニル基が好ましく、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、アリル基がより好ましい。
152は炭素数1~4のアルキル基を示す。R152としてとりうる炭素数1~4のアルキル基は、置換基を有していてもよい。R152における置換基としては、後述する置換基Tから選択される置換基が挙げられ、ハロゲン原子、脂肪族基、不飽和脂肪族基、脂肪族オキシ基、水酸基等が好ましい。R152としては、炭素数1~4の無置換アルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
153及びR154は炭素数1~6のアルキル基を示す。R153及びR154としてとりうる炭素数1~6のアルキル基は、置換基を有していてもよい。R153及びR154における置換基としては、後述する置換基Tから選択される置換基が挙げられ、ハロゲン原子、不飽和脂肪族基、脂肪族オキシ基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、水酸基、シアノ基等が好ましい。R153及びR154としては、炭素数2~6の無置換アルキル基が好ましく、n-プロピル基、n-ブチル基が好ましい。
【0077】
一般式(15)で表される化合物の具体例を以下に示すが、本発明はこれらの化合物に限定されない。
【0078】
【化51】
【0079】
【化52】
【0080】
一般式(16)中、R161は炭素数1~4のアルキル基を示す。R161としてとりうる炭素数1~4のアルキル基は、置換基を有していてもよい。R161における置換基としては、後述する置換基Tから選択される置換基が挙げられ、ハロゲン原子、不飽和脂肪族基、脂肪族オキシ基、水酸基等が好ましい。R161としては、炭素数1~4の無置換アルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、イソプロピル基が特に好ましい。
162及びR163は炭素数1~10のアルキル基を示す。R162及びR163としてとりうる炭素数1~10のアルキル基は、置換基を有していてもよい。R162及びR163における置換基としては、後述する置換基Tから選択される置換基が挙げられ、ハロゲン原子、不飽和脂肪族基、アリール基(フェニル基が好ましい)脂肪族オキシ基、アシルオキシ基(アルキルカルボニルオキシ基が好ましい)、アシルアミノ基、脂肪族オキシカルボニルアミノ基、脂肪族もしくはアリールスルホニルアミノ基、脂肪族チオ基、脂肪族もしくはアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、脂肪族オキシカルボニル基、水酸基、シアノ基等が好ましい。R162及びR163としては、炭素数1~4の無置換アルキル基(より好ましくは、メチル基、エチル基)、メチルカルボニルオキシエチル基、ベンジル基等が好ましい。
【0081】
一般式(16)で表される化合物の具体例を以下に示すが、本発明はこれらの化合物に限定されない。
【0082】
【化53】
【0083】
【化54】
【0084】
一般式(17)中、R171は炭素数1~6のアルキル基を示す。R171としてとりうる炭素数1~6のアルキル基は、置換基を有していてもよい。R171における置換基としては、後述する置換基Tから選択される置換基が挙げられ、ハロゲン原子、不飽和脂肪族基、脂肪族オキシ基、アシルオキシ基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、脂肪族オキシカルボニル基等が好ましい。R171としては、炭素数1~4の無置換アルキル基が好ましく、t-ブチル基がより好ましい。
172は炭素数1~6のアルキル基、又は炭素数6~10のアリール基を示す。R172としてとりうる炭素数6~10のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基が挙げられる。R172としてとりうる炭素数1~6のアルキル基及び炭素数6~10のアリール基は、置換基を有していてもよい。R172における置換基としては、後述する置換基Tから選択される置換基が挙げられ、ハロゲン原子、脂肪族基(アルキル基が好ましい)、脂肪族オキシ基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、脂肪族チオ基、アシル基、脂肪族オキシカルボニル基等が好ましい。R172としては、置換基(好ましくはアルキル基)を有するフェニル基が好ましく、メチルフェニル基がより好ましい。
173は水素原子、又は炭素数1~4のアルキル基を示す。R173としてとりうる炭素数1~4のアルキル基は、置換基を有していてもよい。R173における置換基としては、後述する置換基Tから選択される置換基が挙げられ、ハロゲン原子、不飽和脂肪族基、脂肪族オキシ基、アシルオキシ基等が好ましい。R173としては、水素原子、又は炭素数1~4の無置換アルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
174及びR175は炭素数1~4のアルキル基を示す。R174及びR175としてとりうる炭素数1~4のアルキル基は、置換基を有していてもよい。R174及びR175における置換基としては、後述する置換基Tから選択される置換基が挙げられ、ハロゲン原子、不飽和脂肪族基、脂肪族オキシ基、アシルオキシ基、アシル基、脂肪族オキシカルボニル基、水酸基、シアノ基等が好ましい。R174及びR175としては、炭素数1~4の無置換アルキル基が好ましく、エチル基がより好ましい。
【0085】
一般式(17)で表される化合物の具体例を以下に示すが、本発明はこれらの化合物に限定されない。
【0086】
【化55】
【0087】
【化56】
【0088】
一般式(18)中、R181は炭素数1~4のアルキル基、又は炭素数6~10のアリール基を示す。
181としてとりうる炭素数6~10のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基が挙げられる。R181としてとりうる炭素数1~4のアルキル基及び炭素数6~10のアリール基は、置換基を有していてもよい。R181における置換基としては、後述する置換基Tから選択される置換基が挙げられ、ハロゲン原子、脂肪族基、脂肪族オキシ基、アシルオキシ基、アシル基等が好ましい。R181としては、置換基を有するフェニル基が好ましく、クロロフェニル基がより好ましい。
182は炭素数1~12のアルキル基を示す。R182としてとりうる炭素数1~12のアルキル基の炭素数は、1~10が好ましく、2~10がより好ましく、2~6がさらに好ましい。R182としてとりうる炭素数1~12のアルキル基は、置換基を有していてもよい。R182における置換基としては、後述する置換基Tから選択される置換基が挙げられ、アリール基、脂肪族オキシ基、アミノ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、脂肪族オキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、脂肪族もしくはアリールスルホニルアミノ基、イミド基(N-フタルイミド基が好ましい)等が好ましい。R182としては、炭素数3~12のアルキル基が好ましく、炭素数3~12の無置換アルキル基、又はN-フタルイミドを置換基として有する炭素数10~12のアルキル基が好ましく、イソプロピル基、又はN-フタルイミド基を置換基として有するイソプロピル基がより好ましい。
183は水素原子、又は炭素数1~4のアルキル基を示す。R183としてとりうる炭素数1~4のアルキル基は、置換基を有していてもよい。R183における置換基としては、後述する置換基Tから選択される置換基が挙げられ、ハロゲン原子、不飽和脂肪族基、脂肪族オキシ基、アシルオキシ基等が好ましい。R183は、炭素数1~4の無置換アルキル基、又は水素原子が好ましく、水素原子がより好ましい。
184及びR185は炭素数1~12のアルキル基を示す。R184及びR185としてとりうる炭素数1~12のアルキル基の炭素数は、1~10が好ましく、2~9がより好ましく、2~6がさらに好ましい。R184及びR185としてとりうる炭素数1~12のアルキル基は、置換基を有していてもよい。R184及びR185における置換基としては、後述する置換基Tから選択される置換基が挙げられ、アルコキシ基、アリールオキシ基(さらに脂肪族オキシ基が置換していることが好ましく、例えば、アルコキシフェノキシ基)、アルキルカルボニルオキシ基、シアノ基等が好ましい。R184及びR185としては、炭素数2~6の無置換アルキル基、又はアルコキシ基、アルコキシフェノキシ基、アルキルカルボニルオキシ基、もしくはシアノ基を置換基として有する、炭素数2~11のアルキル基が好ましい。
【0089】
一般式(18)で表される化合物の具体例を以下に示すが、本発明はこれらの化合物に限定されない。
【0090】
【化57】
【0091】
【化58】
【0092】
一般式(19)中、R191及びR192は炭素数1~6のアルキル基を示す。
191及びR192としてとりうる炭素数1~6のアルキル基は、置換基を有していてもよい。R191及びR192における置換基としては、後述する置換基Tから選択される置換基が挙げられ、ハロゲン原子、不飽和脂肪族基、脂肪族オキシ基、アシルオキシ基、アシル基、脂肪族オキシカルボニル基、水酸基、シアノ基等が好ましい。R191及びR192としては、炭素数3~6の無置換アルキル基が好ましく、n-ブチル基がより好ましい。
193は炭素数1~6のアルキル基、又は炭素数6~10のアリール基を示す。R193としてとりうる炭素数6~10のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基が挙げられる。R193としてとりうる炭素数1~6のアルキル基及び炭素数6~10のアリール基は、置換基を有していてもよい。R193における置換基としては、後述する置換基Tから選択される置換基が挙げられ、ハロゲン原子、脂肪族基、不飽和脂肪族基、アリール基、脂肪族オキシ基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、脂肪族もしくはアリールスルホニルアミノ基、脂肪族チオ基、アシル基、脂肪族オキシカルボニル基等が好ましい。R193としては、炭素数1~6の無置換アルキル基、炭素数6~10の無置換アリール基が好ましく、フェニル基、n-ブチル基、t-ブチル基がより好ましい。
194はアルキル基、又は炭素数0~12のアミノ基を示す。R194としてとりうるアルキル基の炭素数は、1~12が好ましく、2~10がより好ましく、3~8がさらに好ましい。R194としてとりうる炭素数0~12のアミノ基の炭素数は、1~12が好ましく、2~12がより好ましく、2~10がさらに好ましい。R194としてとりうるアルキル基及び炭素数0~12のアミノ基は、置換基を有していてもよい。R194における置換基としては、後述する置換基Tから選択される置換基が挙げられ、アルキル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基等が好ましい。R194は、炭素数3~6の無置換アルキル基、又は置換基を有する炭素数2~12のアミノ基が好ましく、n-ブチル基、イソブチル基、又はアルキルカルボニル基もしくはアリールカルボニル基を置換基として有する炭素数4~12のアミノ基がより好ましい。
【0093】
一般式(19)で表される化合物の具体例を以下に示すが、本発明はこれらの化合物に限定されない。
【0094】
【化59】
【0095】
【化60】
【0096】
一般式(20)中、R201は炭素数1~4のアルコキシ基、又は炭素数0~6のアミノ基を示す。
201としてとりうる炭素数1~4のアルコキシ基及び炭素数0~6のアミノ基は、置換基を有していてもよい。R201における置換基としては、後述する置換基Tから選択される置換基が挙げられ、ハロゲン原子、脂肪族基(アルキル基が好ましい)、不飽和脂肪族基、脂肪族オキシ基、アシルオキシ基、アシル基、脂肪族オキシカルボニル基、水酸基、シアノ基等が好ましい。R201は、炭素数1~4の無置換アルコキシ基、又は炭素数2~6のジアルキルアミノ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基、又はジメチルアミノ基がより好ましい。
202及びR203は炭素数1~4のアルキル基を示す。R202及びR203としてとりうる炭素数1~4のアルキル基は、置換基を有していてもよい。R202及びR203における置換基としては、後述する置換基Tから選択される置換基が挙げられ、ハロゲン原子、不飽和脂肪族基、脂肪族オキシ基、アシルオキシ基、アシル基、脂肪族オキシカルボニル基、水酸基、シアノ基等が好ましい。R202及びR203は、炭素数1~4の無置換アルキル基が好ましく、メチル基、又はエチル基がより好ましい。
【0097】
一般式(20)で表される化合物の具体例を以下に示すが、本発明はこれらの化合物に限定されない。
【0098】
【化61】
【0099】
置換基Tとしては、下記のものが挙げられる。本発明において、ある基の全体の炭素数が規定されている場合、その基が有する置換基は、以下に挙げられる置換基Tの中から、全体の炭素数が満たされるように選択される。
【0100】
[置換基T]
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が挙げられる。中でも塩素原子、臭素原子が好ましく、特に塩素原子が好ましい。
脂肪族基は、直鎖、分枝または環状の脂肪族基であり、飽和脂肪族基には、アルキル基、シクロアルキル基、ビシクロアルキル基が含まれ、置換基を有してもよい。これらの炭素数は1~30が好ましい。例としてはメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、t-ブチル基、n-オクチル基、エイコシル基、2-クロロエチル基、2-シアノエチル基、ベンジル基及び2-エチルヘキシル基を挙げることができる。シクロアルキル基は、炭素数3~30のシクロアルキル基が好ましい。例としては、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、4-n-ドデシルシクロヘキシル基を挙げることができる。ビシクロアルキル基としては、炭素数5~30のビシクロアルキル基、つまり、炭素数5~30のビシクロアルカンから水素原子を一個取り去った一価の基を挙げることができる。例として、ビシクロ[1.2.2]ヘプタン-2-イル基、ビシクロ[2.2.2]オクタン-3-イル基を挙げることができる。さらに環構造が多いトリシクロ構造なども包含するものである。
【0101】
不飽和脂肪族基としては、直鎖、分枝または環状の不飽和脂肪族基であり、アルケニル基、シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基、アルキニル基が含まれる。アルケニル基としては直鎖、分岐、環状のアルケニル基を示す。アルケニル基としては、炭素数2~30のアルケニル基が好ましい。例としてはビニル基、アリル基、プレニル基、ゲラニル基、オレイル基を挙げることができる。シクロアルケニル基としては、炭素数3~30のシクロアルケニル基、つまり、炭素数3~30のシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基が好ましい。例としては、2-シクロペンテン-1-イル基、2-シクロヘキセン-1-イル基が挙げられる。ビシクロアルケニル基としては炭素数5~30のビシクロアルケニル基、つまり二重結合を一個持つビシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基が好ましい。例として、ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン-1-イル基、ビシクロ[2.2.2]オクト-2-エン-4-イル基を挙げることができる。アルキニル基は、炭素数2~30のアルキニル基が好ましく、例えば、エチニル基、及びプロパルギル基が挙げられる。
【0102】
アリール基は、炭素数6~30のアリール基が好ましく、例えば、フェニル基、p-トリル基(メチルフェニル基)、ナフチル基、m-クロロフェニル基、o-ヘキサデカノイルアミノフェニル基が挙げられ、置換基を有してもよいフェニル基が好ましい。
ヘテロ環基は、芳香族もしくは非芳香族のヘテロ環化合物から一個の水素原子を取り除いた一価の基であり、それらはさらに縮環していてもよい。これらのヘテロ環基としては、好ましくは5または6員のヘテロ環基であり、また環構成のヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子が好ましい。さらに好ましくは、炭素数3~30の5もしくは6員の芳香族のヘテロ環基である。ヘテロ環基におけるヘテロ環としては、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、キナゾリン環、シンノリン環、フタラジン環、キノキサリン環、ピロール環、インドール環、フラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピラゾール環、イミダゾール環、ベンズイミダゾール環、トリアゾール環、オキサゾール環、ベンズオキサゾール環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、イソチアゾール環、ベンズイソチアゾール環、チアジアゾール環、イソオキサゾール環、ベンズイソオキサゾール環、ピロリジン環、ピペリジン環、ピペラジン環、イミダゾリジン環、チアゾリン環が挙げられる。
脂肪族オキシ基(例えばアルコキシ基)は、炭素数は1~30が好ましい。例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、n-オクチルオキシ基、メトキシエトキシ基、ヒドロキシエトキシ基及び3-カルボキシプロポキシ基などを挙げることができる。
アリールオキシ基は、炭素数6~30のアリールオキシ基が好ましい。アリールオキシ基の例として、フェノキシ基、2-メチルフェノキシ基、4-t-ブチルフェノキシ基、3-ニトロフェノキシ基、2-テトラデカノイルアミノフェノキシ基などを挙げることができる。好ましくは、置換基を有してもよいフェニルオキシ基である。
【0103】
アシルオキシ基は、ホルミルオキシ基、炭素数2~30のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数6~30のアリールカルボニルオキシ基が好ましい。アシルオキシ基の例には、ホルミルオキシ基、アセチルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ステアロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、p-メトキシフェニルカルボニルオキシ基などを挙げることができる。
カルバモイルオキシ基は、炭素数1~30のカルバモイルオキシ基が好ましい。カルバモイルオキシ基の例には、N,N-ジメチルカルバモイルオキシ基、N,N-ジエチルカルバモイルオキシ基、モルホリノカルボニルオキシ基、N,N-ジ-n-オクチルアミノカルボニルオキシ基、N-n-オクチルカルバモイルオキシ基などを挙げることができる。
脂肪族オキシカルボニルオキシ基(例えばアルコキシカルボニルオキシ基)は、炭素数2~30が好ましく、置換基を有していてもよい。例えば、メトキシカルボニルオキシ基、エトキシカルボニルオキシ基、t-ブトキシカルボニルオキシ基、n-オクチルカルボニルオキシ基などを挙げることができる。
アリールオキシカルボニルオキシ基は、炭素数7~30のアリールオキシカルボニルオキシ基が好ましい。アリールオキシカルボニルオキシ基の例には、フェノキシカルボニルオキシ基、p-メトキシフェノキシカルボニルオキシ基、p-n-ヘキサデシルオキシフェノキシカルボニルオキシ基などを挙げることができる。好ましくは置換基を有してもよいフェノキシカルボニルオキシ基である。
【0104】
アミノ基は、アミノ基、脂肪族アミノ基(例えばアルキルアミノ基)、アリールアミノ基及びヘテロ環アミノ基を含む。アミノ基は、炭素数1~30の脂肪族アミノ基(例えばアルキルアミノ基)、炭素数6~30のアリールアミノ基が好ましい。アミノ基の例には、例えば、アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、アニリノ基、N-メチル-アニリノ基、ジフェニルアミノ基、ヒドロキシエチルアミノ基、カルボキシエチルアミノ基、スルフォエチルアミノ基、3,5-ジカルボキシアニリノ基、4-キノリルアミノ基などを挙げることができる。
アシルアミノ基は、ホルミルアミノ基、炭素数1~30のアルキルカルボニルアミノ基、炭素数6~30のアリールカルボニルアミノ基が好ましい。アシルアミノ基の例には、ホルミルアミノ基、アセチルアミノ基、ピバロイルアミノ基、ラウロイルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、3,4,5-トリ-n-オクチルオキシフェニルカルボニルアミノ基などを挙げることができる。
アミノカルボニルアミノ基は、炭素数1~30のアミノカルボニルアミノ基が好ましい。アミノカルボニルアミノ基の例には、カルバモイルアミノ基、N,N-ジメチルアミノカルボニルアミノ基、N,N-ジエチルアミノカルボニルアミノ基、モルホリノカルボニルアミノ基などを挙げることができる。なお、この基における「アミノ」の用語は、前述のアミノ基における「アミノ」と同じ意味である。
【0105】
脂肪族オキシカルボニルアミノ基(例えばアルコキシカルボニルアミノ基)は、炭素数2~30が好ましく、置換基を有してもよい。例えば、メトキシカルボニルアミノ基、エトキシカルボニルアミノ基、t-ブトキシカルボニルアミノ基、n-オクタデシルオキシカルボニルアミノ基、N-メチルーメトキシカルボニルアミノ基などを挙げることができる。
アリールオキシカルボニルアミノ基は、炭素数7~30のアリールオキシカルボニルアミノ基が好ましい。アリールオキシカルボニルアミノ基の例には、フェノキシカルボニルアミノ基、p-クロロフェノキシカルボニルアミノ基、m-n-オクチルオキシフェノキシカルボニルアミノ基などを挙げることができる。置換基を有してもよいフェニルオキシカルボニルアミノ基が好ましい。
スルファモイルアミノ基は、炭素数0~30のスルファモイルアミノ基が好ましい。スルファモイルアミノ基の例には、スルファモイルアミノ基、N,N-ジメチルアミノスルホニルアミノ基、N-n-オクチルアミノスルホニルアミノ基などを挙げることができる。
脂肪族アリールスルホニルアミノ基は、炭素数1~30の脂肪族スルホニルアミノ基(例えばアルキルスルホニルアミノ基)、炭素数6~30のアリールスルホニルアミノ基(好ましくは置換基を有してもよいフェニルスルホニルアミノ基)が好ましい。例えば、メチルスルホニルアミノ基、ブチルスルホニルアミノ基、フェニルスルホニルアミノ基、2,3,5-トリクロロフェニルスルホニルアミノ基、p-メチルフェニルスルホニルアミノ基などを挙げることができる。
【0106】
脂肪族チオ基(例えばアルキルチオ基)は、炭素数1~30のアルキルチオ基が好ましい。アルキルチオ基の例には、メチルチオ基、エチルチオ基、n-ヘキサデシルチオ基などを挙げることができる。
スルファモイル基は、炭素数0~30のスルファモイル基が好ましい。スルファモイル基の例には、N-エチルスルファモイル基、N-(3-ドデシルオキシプロピル)スルファモイル基、N,N-ジメチルスルファモイル基、N-アセチルスルファモイル基、N-ベンゾイルスルファモイル基、N-(N’-フェニルカルバモイル)スルファモイル)基などを挙げることができる。
脂肪族もしくはアリールスルフィニル基は、炭素数1~30の脂肪族スルフィニル基(例えばアルキルスルフィニル基)、6~30のアリールスルフィニル基(好ましくは置換基を有してもよいフェニルスルフィニル基)が好ましい。例えば、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基、p-メチルフェニルスルフィニル基などを挙げることができる。
脂肪族もしくはアリールスルホニル基は、炭素数1~30の脂肪族スルホニル基(例えばアルキルスルホニル基)、6~30のアリールスルホニル基(好ましくは置換基を有してもよいフェニルスルホニル基)が好ましい。例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル、フェニルスルホニル、p-トルエンスルホニル基などを挙げることができる。
【0107】
アシル基は、ホルミル基、炭素数2~30の脂肪族カルボニル基(例えばアルキルカルボニル基)、炭素数7~30のアリールカルボニル基(好ましくは置換基を有してもよいフェニルカルボニル基)、炭素数4~30の炭素原子でカルボニル基と結合しているヘテロ環カルボニル基が好ましい。例えば、アセチル、ピバロイル、2-クロロアセチル、ステアロイル、ベンゾイル、p-n-オクチルオキシフェニルカルボニル、2-ピリジルカルボニル、2-フリルカルボニル基などを挙げることができる。
アリールオキシカルボニル基は、炭素数7~30のアリールオキシカルボニル基が好ましい。アリールオキシカルボニル基の例には、フェノキシカルボニル、o-クロロフェノキシカルボニル、m-ニトロフェノキシカルボニル、p-t-ブチルフェノキシカルボニル基などを挙げることができる。好ましくは置換基を有してもよいフェニルオキシカルボニル基である。
脂肪族オキシカルボニル基(例えばアルコキシカルボニル基)は、炭素数2~30が好ましく、置換基を有してもよい。例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、t-ブトキシカルボニル、n-オクタデシルオキシカルボニル基などを挙げることができる。
カルバモイル基は、炭素数1~30のカルバモイル基が好ましい。カルバモイル基の例には、カルバモイル、N-メチルカルバモイル、N,N-ジメチルカルバモイル、N,N-ジ-n-オクチルカルバモイル、N-(メチルスルホニル)カルバモイル基などを挙げることができる。
アリールもしくはヘテロ環アゾ基として、例えば、フェニルアゾ、4-メトキシフェニルアゾ、4-ピバロイルアミノフェニルアゾ、2-ヒドロキシ-4-プロパノイルフェニルアゾ基などを挙げることができる。
イミド基として、例えば、N-スクシンイミド基、N-フタルイミド基などを挙げることができる。
これらに加え、水酸基、シアノ基、ニトロ基、スルホ基、カルボキシル基が挙げられる。
これらの各基はさらに置換基を有してもよく、このような置換基としては、上述の置換基Tが挙げられる。
【0108】
上記一般式で表される化合物は、いずれも、市販品を用いるか従来公知の方法に従い合成することができる。
【0109】
一般式(1)で表わされる化合物に関しては、米国特許第5,789,560号明細書記載の方法で製造することができる。
【0110】
一般式(2)で表される化合物は、ディスパースイエロー201(例えばPlast Yellow 8070(有本化学工業株式会社製、商品名)、Macrolex Yellow 6G(ランクセス社製、商品名))等のように市販品として入手するか、一般的に行われているマロノニトリルとアミノベンズアルデヒド誘導体との脱水縮合反応(例えば、Journal of the Society of Dyers and Colourists(1977年)93(4)126~133頁に記載の方法)により合成することができる。
【0111】
一般式(3)で表される化合物は、例えばHSY-2186(三菱ケミカル株式会社製、商品名)等のように市販品として入手するか、国際公開公報2018-91979号明細書記載の方法により合成することができる。
【0112】
一般式(4)で表される化合物は、例えばHSY-2701(三菱ケミカル株式会社製、商品名)等のように市販品として入手するか、一般的に行われているピラゾロン誘導体とアミノベンズアルデヒド誘導体との脱水縮合反応(例えば中国特許100,546,979号明細書に記載の方法)により合成することができる。
【0113】
一般式(5)で表される化合物は、例えば、BOCサイエンス社製試薬(カタログ番号69808-32-8)等のように市販品として入手するか、一般的に行われているアニリン誘導体とピリドン誘導体とのジアゾカップリング反応(例えば、Zeitschrift fuel Chemie(1989年)29(11)422-423頁に記載の方法)により合成することができる。
【0114】
一般式(6)で表される化合物は、ソルベントイエロー93(例えばPlast Yellow8000(有本化学工業株式会社製、商品名)、KP Plast Yelow G(紀和化学工業株式会社製、商品名)等)等のように市販品として入手するか、一般的に行われているピラゾロン誘導体とオルソぎ酸エステルとの縮合反応(例えば、薬学雑誌(1953年)73巻1063~1066頁に記載の方法)により合成することができる。
【0115】
一般式(7)で表される化合物は、一般的に行われているメロシアニン色素の合成法と同様に、2,3,3-トリメチルインドレニンをN―アルキル化した後に、Vilsmeier反応により活性メチレン部位をホルミル化し、続いて、ピラゾロン誘導体との脱水縮合反応することによって合成することができる。
【0116】
一般式(8)で表される化合物は、例えばHSB-2115、HSB-2131及びHSB-2207(いずれも三菱ケミカル株式会社製、商品名)等のように市販品として入手するか、一般的に行われている4-ニトロソアニリン誘導体とフェノール誘導体との脱水縮合反応(例えば、特許5,308,692号公報に記載の方法)により合成することができる。
【0117】
一般式(9)で表される化合物は、一般的に行われている4-ニトロソアニリン誘導体とナフトール誘導体との脱水縮合反応(例えば、特許5,308,692号公報に記載の方法)により合成することができる。
【0118】
一般式(10)で表される化合物は、アルファ・ケミストリー社製試薬(カタログ番号ACM75214618)やDisperse Blue354(例えば、Foron Brilliant Blue S-R(クラリアント社製、商品名)やKayalon Polyester Brilliant Blue FR-S(日本化薬株式会社製、商品名))等のように市販品として入手するか、一般的に行われている方法(例えば、中国特許106,675,082号明細書記載の方法)により合成することができる。
【0119】
一般式(11)で表される化合物は、アニリン誘導体とアミノチオフェン誘導体とのジアゾカップリング反応、続いて3―アシルアミノアニリン誘導体とのジアゾカップリング反応(例えば中国特許106,928,745号明細書記載の方法)により合成することができる。
【0120】
一般式(12)で表される化合物は、ソルベントブルー36(例えばSumipast Blue OA(住化ケミテックス株式会社製、商品名)やPlast Blue8510(有本化学工業株式会社製、商品名)等)、ソルベントブルー63(例えばPlast Blue8540(有本化学工業株式会社製、商品名))等のように市販品として入手することができる。
【0121】
一般式(13)で表される化合物は、ディスパースレッド60(例えばPlast Red 8375(有本化学工業株式会社製、商品名)やSumikaron Red E-FBL(住化ケミテックス株式会社製、商品名))等のように市販品として入手することができる。
【0122】
一般式(14)で表される化合物は、ディスパースバイオレット26(例えばSumikalon Bordeaux SE BL(住化ケミテックス株式会社製、商品名)等のように市販品として入手することができる。
【0123】
一般式(15)で表される化合物は、HSR-2150及びHSR-2164(いずれも三菱ケミカル株式会社製、商品名)等のように市販品として入手することができる。
【0124】
一般式(16)で表される化合物は、一般的に行われている5-アミノ-3-メチルイソチアゾール-4-カルボニトリルと3―アシルアミノアニリン誘導体とのジアゾカップリング反応(例えば、特開2004-345270号公報記載の方法)により合成することができる。
【0125】
一般式(17)で表される化合物は、一般的に行われている5-アミノ-2-(N,N-ジアルキルアミノ)ピリジン誘導体とピラゾロトリアゾール誘導体との酸化カップリング反応(例えば、特許第3,513,792号明細書記載の方法)により合成することができる。
【0126】
一般式(18)で表される化合物は、一般的に行われている4-ニトロソアニリン誘導体とピラゾロトリアゾール誘導体との縮合反応(例えば、特開2007-262165号公報記載の方法)により合成することができる
【0127】
一般式(19)で表される化合物は、一般的に行われている、2-(N,N-ジアルキル)-5-ホルミルチアゾール誘導体と、6-ヒドロキシ-2-ピリドン-3-カルボニトリル誘導体との縮合反応(例えば、特許2839675号明細書記載の方法)により合成することができる。
【0128】
一般式(20)で表される化合物は、一般的に行われている、4-(ジシアノメチレン)-1-フェニル-4-ピラゾロン誘導体とN,N-ジアルキルアニリン誘導体との反応(例えば、Dyes and Pigments(1988年)9(5)393~399頁記載の方法)により合成することができる。
【0129】
本発明の感熱転写記録シートによれば、高濃度かつ色味に優れ、他色の引き締め効果のあるプロセスブラックの形成が可能である。その詳細なメカニズムについては不明であるが、以下のように考えられる。
一般式(1)で表される化合物(マゼンタ染料)は転写性が高く、低~中濃度プリント領域では吸収波形がシャープなため鮮やかであり色再現域が広くなるが、高濃度プリントの濃度飽和領域では吸収波形がブロード化する特徴がある。プロセスブラック形成において、一般式(1)で表されるマゼンタ染料を含む染料層と、一般式(2)~(7)で表されるイエロー染料を含む染料層と、一般式(8)~(12)で表されるシアン染料を含む染料層を用いることにより、得られたプロセスブラック部分ではイエローの吸収波形、マゼンタ吸収波形、及びシアン吸収波形の境界が効率的に埋まり、可視領域で平坦な吸収に近づくため、良質なプロセスブラックを形成できる。
また、本発明の好ましい形態の感熱転写記録シートによれば、上記効果に加えて、退色時の色バランスの高い画像を得ることもできる。その理由は以下のように考えられる。
一般式(1)で表されるマゼンタ染料は耐光性や湿熱堅牢性が高く、他の染料と混合しても(インクシートにおいて一般式(1)で表されるマゼンタ染料に加えて他のマゼンタ染料を併用する場合、及びプリントにおいてシアン染料やイエロー染料と、一般式(1)で表されるマゼンタ染料が混合される場合の両方を指す)、触媒的に退色を加速することがない。
【0130】
各色調の染料層においては、染料を単独で用いることができ、複数組合せて用いることもできる。
以下に、本発明における、シアン染料、イエロー染料、マゼンタ染料の好ましい組み合わせの態様をそれぞれ記載する。各染料の好ましい組み合わせの態様は別の色相の染料の好ましい組み合わせの態様とさらに組み合わせることができる。
【0131】
シアン染料は、一般式(8)で表される化合物と一般式(9)~(12)のいずれかで表される化合物の少なくとも1種とを含むことが好ましい。この組み合わせによれば、本発明の上記効果に加えてグレー画像の光による退色時の色バランスを高めることができる。さらに、逆転写性を低下させることができる(すなわち、プリント時の、インクシートへの染料の戻り(逆転写)を低減することができる)。上記化合物を組み合わせて用いる場合、一般式(8)で表される化合物の含有量(I)と、一般式(9)~(12)のいずれかで表される化合物の含有量の合計(II)との比が、質量比で、(I):(II)=90~50:10~50が好ましく、80~60:20~40がより好ましい。(I)+(II)=100である。
シアン染料は、一般式(8)で表される化合物と一般式(12)で表される化合物とを含むことも好ましい。この組み合わせによれば、本発明の効果に加えて、グレー画像の光による退色時の色バランスを高めること、逆転写性を低下させること、単色画像の光による退色時の各染料の残存率を高めること、暗所高温高湿環境下での退色バランスを高めること等ができる。
【0132】
イエロー染料は、一般式(4)で表される化合物と一般式(2)、(3)、(5)~(7)のいずれかで表される化合物の少なくとも1種とを含むことが好ましい。イエロー染料は、一般式(4)で表される化合物と一般式(2)又は(6)のいずれかで表される化合物の少なくとも1種とを含むことも好ましい。上記化合物を組み合わせて用いる場合、一般式(4)で表される化合物の含有量(III)と、一般式(2)、(3)、(5)~(7)のいずれかで表される化合物の含有量の合計(IV)との比が、質量比で、(III):(IV)=90~50:10~50が好ましく、90~60:10~40がより好ましい。(III)+(IV)=100である。
イエロー染料が、一般式(3)で表される化合物と一般式(2)で表される化合物とを含むことも好ましい。上記化合物を組み合わせて用いる場合、一般式(3)で表される化合物の含有量(XVI)と、一般式(2)で表される化合物の含有量(V)との比は、質量比で、(XVI):(V)=90~50:10~50が好ましく、80~60:20~40がより好ましい。(XVI)+(V)=100である。
これらの組み合わせによれば、本発明の上記効果に加えて、色再現性を高めることができる。
【0133】
マゼンタ染料は、一般式(1)で表される化合物と一般式(13)~(20)のいずれかで表される化合物の少なくとも1種とを含むことが好ましい。上記化合物を組み合わせて用いる場合、一般式(1)で表される化合物の含有量(VI)と、一般式(13)~(20)のいずれかで表される化合物の含有量の合計(VII)との比は、質量比で、(VI):(VII)=90~50:10~50が好ましく、80~60:20~40がより好ましい。(VI)+(VII)=100である。
マゼンタ染料は、一般式(1)で表される化合物と一般式(15)で表される化合物とを含むことも好ましい。上記化合物を組み合わせて用いる場合、一般式(1)で表される化合物の含有量(VIII)と一般式(15)で表される化合物の含有量(IX)との比は、質量比で、(VIII):(IX)=90~50:10~50が好ましく、80~60:20~40がより好ましい。(VIII)+(IX)=100である。
マゼンタ染料は、一般式(1)で表される化合物と、一般式(15)で表される化合物と、一般式(13)で表される化合物とを含むことも好ましい。上記化合物を組み合わせて用いる場合、一般式(1)で表される化合物の含有量(X)と、一般式(15)で表される化合物の含有量(XI)と、一般式(13)で表される化合物の含有量(XII)との比は、質量比で、(X):(XI):(XII)=90~50:5~25:5~25が好ましく、80~60:10~20:10~20がより好ましい。(X)+(XI)+(XII)=100である。
マゼンタ染料は、一般式(1)で表される化合物と、一般式(13)で表される化合物と、一般式(14)で表される化合物とを含むことも好ましい。上記化合物を組み合わせて用いる場合、一般式(1)で表される化合物の含有量(XIII)と、一般式(13)で表される化合物の含有量(XIV)と、一般式(14)で表される化合物の含有量(XV)との比、質量比で、(XIII):(XIV):(XV)=90~50:5~25:5~25が好ましく、80~60:10~20:10~20がより好ましい。(XIII)+(XIV)+(XV)=100である。
これらの組み合わせによれば、本発明の上記効果に加えて、色再現性を高めることができる。
【0134】
本発明の上記効果をより効率よく得る観点からは、各色相の染料は以下のように組み合わせることが好ましい。
マゼンタ染料が一般式(1)で表される化合物を含み、イエロー染料が一般式(2)~(7)のいずれかで表される化合物の少なくとも1種を含み、シアン染料が一般式(8)で表される化合物と一般式(9)~(12)のいずれかで表される化合物の少なくとも1種とを含むことが好ましい。
マゼンタ染料が一般式(1)で表される化合物を含み、イエロー染料が一般式(2)~(7)のいずれかで表される化合物の少なくとも1種を含み、シアン染料が一般式(8)で表される化合物と一般式(12)で表される化合物とを含むことがより好ましい。
マゼンタ染料が一般式(1)で表される化合物を含み、イエロー染料が一般式(4)で表される化合物と一般式(2)、(3)、(5)~(7)のいずれかで表される化合物の少なくとも1種とを含み、シアン染料が一般式(8)で表される化合物と一般式(9)~(12)のいずれかで表される化合物の少なくとも1種とを含むことが好ましい。
マゼンタ染料が一般式(1)で表される化合物を含み、イエロー染料が一般式(4)で表される化合物と一般式(2)又は(6)で表される化合物とを含み、シアン染料が一般式(8)で表される化合物と一般式(9)~(12)のいずれかで表される化合物の少なくとも1種とを含むことが好ましい。
マゼンタ染料が一般式(1)で表される化合物を含み、イエロー染料が一般式(3)で表される化合物と一般式(2)で表される化合物とを含み、シアン染料が一般式(8)で表される化合物と一般式(9)~(12)のいずれかで表される化合物の少なくとも1種とを含むことが好ましい。
マゼンタ染料が一般式(1)で表される化合物と一般式(13)~(20)のいずれかで表される化合物の少なくとも1種を含み、イエロー染料が一般式(4)で表される化合物と一般式(2)、(3)、(5)~(7)のいずれかで表される化合物の少なくとも1種とを含み、シアン染料が一般式(8)で表される化合物と一般式(9)~(12)のいずれかで表される化合物の少なくとも1種とを含むことが好ましい。
【0135】
-その他の色素-
本発明に用いられる色素は、その他に色素を併用することも可能である。併用する色素としては熱により拡散し、感熱転写記録シートに組み込み可能かつ、加熱により感熱転写記録シートから受像シートに転写するものであれば特に限定されず、熱転写シート用の色素として従来から用いられてきている色素、あるいは公知の色素を用いることができる。
併用するのに好ましい色素としては、例えば、ジアリールメタン色素、トリアリールメタン色素、チアゾール色素、メロシアニン等のメチン色素、インドアニリン、アセトフェノンアゾメチン、ピラゾロアゾメチン、イミダゾルアゾメチン、イミダゾアゾメチン、ピリドンアゾメチン等に代表されるアゾメチン色素、キサンテン色素、オキサジン色素、ジシアノスチレン、トリシアノスチレン等に代表されるシアノメチレン色素、チアジン色素、アジン色素、アクリジン色素、ベンゼンアゾ色素、ピリドンアゾ、チオフェンアゾ、イソチアゾールアゾ、ピロールアゾ、ピラールアゾ、イミダゾールアゾ、チアジアゾールアゾ、トリアゾールアゾ、ジズアゾ等のアゾ色素、スピロピラン色素、インドリノスピロピラン色素、フルオラン色素、ローダミンラクタム色素、ナフトキノン色素、アントラキノン色素、キノフタロン色素、インドアニリン色素等が挙げられる。
【0136】
-バインダー-
本発明の感熱転写記録シートにおいて、各色相の染料はそれぞれバインダーと呼ばれる高分子化合物に分散された状態で基材上に塗布されていることが好ましい。本発明に用いる感熱転写記録シート用のバインダーとしては、各種公知のものが使用できる。
【0137】
バインダー用高分子化合物の例としては、ポリアクリロニトリル、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリルアミド等のアクリル樹脂、ポリビニルアセトアセタール、ポリビニルブチラール等のポリビニルアセタール樹脂、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、酢酸セルロース、酢酪酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロース、硝酸セルロース等の変性セルロース樹脂、ニトロセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース及びエチルセルロース等のセルロース樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、フェノキシ樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、各種エストラマー等が挙げられる。これらを単独で用いる他、これらを混合、または共重合して用いることも可能である。
本発明におけるバインダーとしては、ポリビニルアセタール樹脂が好ましく、より好ましくはポリビニルアセトアセタール樹脂である。さらに好ましくは、樹脂中のアセタール部が80質量%以上かつこのアセタール部分においてアセトアセタール比が90質量%以上のポリビニルアセトアセタール樹脂である。このようなアセタール樹脂は特許第3065111号公報やこの明細書中に引用された文献による方法で合成できる他、積水化学工業株式会社製 エスレックスKS-5(商品名)、電気化学工業株式会社製 デンカブチラール#5000-D(商品名)など、商業的に入手可能な製品がある。
【0138】
-架橋剤-
本発明の感熱転写記録シートにおいて、バインダーを各種架橋剤によって架橋することも好ましい態様である。
架橋剤とは、高分子化合物の主鎖や側鎖についた官能基と反応し、高分子同士を結合する性質を持つ化合物である。架橋剤は対象となる高分子化合物の種類に応じて適したものが選ばれる。代表的な例としては、ポリビニルアセタール樹脂など活性水素を有する水酸基を有した高分子化合物に対しては、分子中に複数のイソシアネート基(-N=C=O)を有するイソシアネート類が架橋剤として好ましく用いられる。以下にイソシアネート類の具体例を挙げる。
(1)ジイソシアネート化合物
芳香族ポリイソシアネートとして、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、ナフタリンジイソシアネートなどが、また脂肪族ポリイソシアネートとして、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシレリンジイソシアネート、水添キシレリンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートなどを挙げることができる。
(2)トリイソシアネート化合物
トリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネート、イソシアヌレート結合トリレンジイソシアネート、トリメチロールプロパン変性ヘキサメチレンジイソシアネート、イソシアヌレート結合ヘキサメチレンジイソシアネート、ビューレット結合ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチロールイソホロンジイソシアネート、イソシアヌレート結合イソホロンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(イソシアネートフェニル)チオフォスフェートなどを挙げることができる。
また、これらイソシアネート化合物の混合物やイソシアネート化合物を主鎖や側鎖に有するポリマーの使用も好ましい。
【0139】
これらイソシアネート類はバーノック(大日本インキ化学工業株式会社製)、タケネート、MT-オレスター(何れも三井化学ポリウレタン株式会社製)、コロネート(日本ポリウレタン工業社製)等の商品名で商業的に入手可能である。
【0140】
イソシアネート類の使用量はイソシアネート基(-NCO)とバインダーの活性水素(H)のモル比(NCO/H)で0.2から2.0の範囲が好ましく、0.3から1.5の範囲がより好ましい。
【0141】
バインダーとイソシアネート類の架橋反応を促進する目的で触媒を添加しても良い。このような触媒については「最新ポリウレタン材料と応用技術」(株式会社シーエムシー出版,2005年)に記載がある。
【0142】
-離型剤-
本発明において、染料層は、通常染料とバインダーを含有するが、必要に応じて、ワックス類、フッ素原子含有脂肪族基を有する高分子化合物、シリコーン化合物、ポリマー粒子、無機粒子を含有することができる。以下、本発明の好適に用いられるフッ素原子含有脂肪族基を有する高分子化合物とシリコーン化合物について説明する。
【0143】
フッ素離型剤(フッ素原子含有脂肪族基を有する高分子化合物)
本発明に用いられるフッ素原子含有脂肪族基を有する高分子化合物において、好ましい形態は、フッ素原子含有脂肪族基を側鎖に有する高分子化合物である。フッ素原子含有脂肪族基を側鎖に有する高分子化合物は、テロメリゼーション法(テロマー法ともいわれる)もしくはオリゴメリゼーション法(オリゴマー法ともいわれる)により製造されたフッ素原子含有脂肪族化合物から導くことができる。フッ素原子含有脂肪族化合物は、例えば、特開2002-90991号公報に記載された方法等によって容易に合成することができる。
【0144】
ここで、フッ素原子含有脂肪族基は、少なくとも1個のフッ素原子を置換基として有する脂肪族基(直鎖、分岐または環状の脂肪族基)であり、好ましくは炭素原子数が1~36の、アルキル基、アルケニル基またはシクロアルキニル基である。より好ましくは炭素原子数が1~36(好ましくは1~18、より好ましくは1~12、さらに好ましくは1~10、最も好ましくは4~8)のアルキル基で、この脂肪族基はフッ素原子以外に置換基を有してもよい。この置換基としては、例えば、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、フッ素原子以外のハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基、アシルアミノ基、スルホンアミノ基、カルバモイル基、スルファモイル基、シアノ基、ニトロ基、アシル基、スルホニル基、ウレイド基、ウレタン基等が挙げられる。
本発明においてフッ素原子含有脂肪族基として最も好ましくは、パーフルオロアルキル基である。
【0145】
フッ素原子含有脂肪族基を側鎖に有する高分子化合物としては、フッ素原子含有脂肪族基を有するモノマーの重合体もしくは共重合体が好ましく、このようなモノマーとしては、アクリル酸化合物(例えばアクリル酸類、アクリル酸エステル類、アクリル酸アミド類で、アクリル酸エステル類、アクリル酸アミド類が好ましく、アクリル酸エステル類がより好ましい)、メタクリル酸化合物(例えばメタクリル酸類、メタクリル酸エステル類、メタクリル酸アミド類で、メタクリル酸エステル類、メタクリル酸アミド類が好ましく、メタクリル酸エステル類がより好ましい)のアシル部またはアルコールもしくはアミド部(窒素原子に置換する基)にフッ素原子含有脂肪族基を置換基として有するモノマーやアクリロニトリル化合物にフッ素原子含有脂肪族基を置換基として有するモノマーで得られる高分子化合物が好ましい。
【0146】
フッ素原子含有脂肪族基を側鎖に有する高分子化合物としては、フッ素原子含有脂肪族基を有するモノマーとの共重合体の場合、組み合わせるモノマーとしては、アクリレート類、メタアクリレート類、アクリロニトリル類、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、オレフィン類、スチレン類等が挙げられ、なかでもアクリレート類、メタアクリレート類、アクリロニトリル類、アクリルアミド類、メタクリルアミド類が好ましく、より好ましくはアクリレート類、メタアクリレート類であり、これらの中でも、アルコール部もしくはアミド部の窒素原子に置換する基中にポリオキシアルキレン(例えば、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン)を有するものが好ましい。
本発明においては共重合体が好ましく、2元共重合体でも3元共重合体でもそれ以上であってもかまわない。
【0147】
例えば、フッ素原子含有脂肪族基を有するモノマーと(ポリ(オキシアルキレン))アクリレート及び/又は(ポリ(オキシアルキレン))メタクリレートとの共重合体が好ましく、不規則に分布しているものでも、ブロック共重合していてもよい。また、ポリ(オキシアルキレン)基としては、ポリ(オキシエチレン)基、ポリ(オキシプロピレン)基、ポリ(オキシブチレン)基などが挙げられ、また、ポリ(オキシエチレンとオキシプロピレンとオキシエチレンとのブロック連結体)やポリ(オキシエチレンとオキシプロピレンとのブロック連結体)など同じポリマー鎖内に異なる鎖長のアルキレンを有するようなユニットでもよい。さらに、フッ素原子含有脂肪族基を有するモノマーと(ポリ(オキシアルキレン))アクリレート(又はメタクリレート)との共重合体は2元共重合体ばかりでなく、異なる2種以上のフッ素原子含有脂肪族基を有するモノマーや、異なる2種以上の(ポリ(オキシアルキレン))アクリレート(又はメタクリレート)などを同時に共重合した3元以上の共重合体でもよい。
【0148】
フッ素原子含有脂肪族基を側鎖に有する高分子化合物の質量平均分子量は、好ましくは5,000~100,000であり、より好ましくは8,000~50,000であり、さらに好ましくは10,000~40,000である。
【0149】
例えば、パーフルオロブチル基(-C)を有するアクリレート(又はメタクリレート)と(ポリ(オキシアルキレン))アクリレート(又はメタクリレート)との共重合体、パーフルオロブチル基を有するアクリレート(又はメタクリレート)と(ポリ(オキシエチレン))アクリレート(又はメタクリレート)と(ポリ(オキシプロピレン))アクリレート(又はメタクリレート)との共重合体、パーフルオロヘキシル基(-C13)を有するアクリレート(又はメタクリレート)と(ポリ(オキシアルキレン))アクリレート(又はメタクリレート)との共重合体、パーフルオロヘキシル基を有するアクリレート(又はメタクリレート)と(ポリ(オキシエチレン))アクリレート(又はメタクリレート)と(ポリ(オキシプロピレン))アクリレート(又はメタクリレート)との共重合体、パーフルオロオクチル基(-C17)を有するアクリレート(又はメタクリレート)と(ポリ(オキシアルキレン))アクリレート(又はメタクリレート)との共重合体、パーフルオロオクチル基を有するアクリレート(又はメタクリレート)と(ポリ(オキシエチレン))アクリレート(又はメタクリレート)と(ポリ(オキシプロピレン))アクリレート(又はメタクリレート)との共重合体などを挙げることができる。
【0150】
また、これらフッ素原子含有脂肪族基を側鎖に有する高分子化合物は、「パーフルオロアルキル含有オリゴマー」等の一般名称で商業的に入手可能であり、例えば下記の製品を使用することができる。
大日本インキ化学工業株式会社製:メガファックF-470、メガファックF-471、メガファックF-472SF、メガファックF-474、メガファックF-475、メガファックF-477、メガファックF-478、メガファックF-479、メガファックF-480SF、メガファックF-472、メガファックF-483、メガファックF-484、メガファックF-486、メガファックF-487、メガファックF-489、メガファックF-172D、メガファックF-178K、メガファックF-178RM(いずれも商品名)、住友スリーエム株式会社製:ノベック(商標名) FC-4430、FC-4432(いずれも商品名)。
【0151】
上記フッ素原子含有脂肪族基を側鎖に有する高分子化合物は非イオン性(水中で解離した基、例えば、スルホ基、カルボキシル基、を有しないもの)であることが好ましく、一定の水溶性を有することがさらに好ましい。ここで一定の水溶性とは高分子化合物が25℃において純水に対して1%以上の溶解度を有することである。
具体的には、水酸基、上記のようなオキシアルキレン基を有する高分子化合物であり、例えば、大日本インキ化学工業株式会社製 メガファックF-470、メガファックF-472SF、メガファックF-477、メガファックF-479、メガファックF-480SF、メガファックF-484、メガファックF-486(いずれも商品名)のように水への溶解性を示す化合物が好ましい。
【0152】
フッ素原子含有脂肪族基を側鎖に有する高分子化合物は、イエロー、マゼンタ、シアン、必要に応じてブラックのどの染料層に含有させてもよく、1つの染料層に含有させても複数の染料層に含有させてもよい。イエロー、マゼンタ、シアンの各染料層に含有させることが好ましい。
また、フッ素原子含有脂肪族基を側鎖に有する高分子化合物添加量は染料とバインダーの種類や量に応じて決めることができ、染料層の全固形分(質量)に対して、好ましくは0.01質量%~20質量%であり、より好ましくは、0.1質量%~10質量%であり、さらに好ましくは0.2質量%~5質量%である。
【0153】
シリコーン離型剤(シリコーン化合物)
次に、本発明の感熱転写記録シートに好適に用いられるシリコーン化合物について説明する。
本発明の感熱転写記録シートにおいては、シリコーン化合物を併用することも好ましい。本発明におけるシリコーン化合物とは、分子中の主鎖や側鎖にSiOを繰り返し単位とするポリシロキサン構造を有する化合物である。代表的なものにSiOを繰り返し単位とするポリマー主鎖のSi原子上に水素原子、アルキル基やアリール基が結合したシリコーンオイルがある。以下、本明細書において、ポリシロキサンとは、上記シリコーンオイルのように、SiOを繰り返し単位としてSi原子上に水素原子、アルキル基、アリール基を有する構造を示す。
本発明で好ましく用いられるシリコーン化合物は、シリコーングラフトポリマー、シリコーンブロックポリマーである。シリコーングラフトポリマーとは、ポリマーを構成する1本の主鎖からポリシロキサン構造を有する多数の側鎖が枝状に分かれた構造を有するポリマーである。シリコーンブロックポリマーとは、ポリマーを構成する主鎖の中にポリシロキサン構造が埋め込まれた構造を有するポリマーである。
【0154】
シリコーングラフトポリマーにおける主鎖は、単一のモノマーが重合したものであっても良いし、複数の種類のモノマーが共重合したものでも良い。また、複数のポリマーセグメントが結合したブロックポリマー構造を持っていても良い。また、側鎖はポリシロキサン構造のみであっても、他の構造が混合していても良い。また、側鎖のポリシロキサン部は一種のポリシロキサン部からなっても、複数の異なる種類のポリシロキサン部からなっても良い。ポリマー中のポリシロキサン部の平均含量は5質量%以上70質量%以下の範囲が好ましく、10質量%以上50質量%以下がより好ましい。
シリコーンブロックポリマーにおいて、ポリマー鎖の部分は、単一のモノマーが重合したものであっても良いし、複数の種類のモノマーが共重合したものでも良い。ポリマー鎖の部分は、複数の異なる種類のポリマー鎖からなっても良い。ポリシロキサン部もポリマー鎖と同様に複数の異なる種類のポリシロキサン部からなっても良い。また、ポリマー鎖、ポリシロキサン部ともに側鎖を有して、いわゆるグラフトポリマー構造にしても良い。ポリマー中のポリシロキサン部の平均含量は5質量%以上70質量%以下の範囲が好ましく、10質量%以上50質量%以下がより好ましい。
【0155】
この様なポリマーは種々の方法で合成できる。例えば、主鎖として適当な官能基を有するポリマー鎖を形成後、上記官能基と反応する官能基を有するポリシロキサン部を直接反応させる方法や、ジイソシアネートのような架橋剤を作用させて反応させる方法などが知られている。
また、この様なポリマーは市販もされている。例えば、ダイアロマーSP712(商品名)、大日精化工業株式会社製などが挙げられる。
【0156】
この様なポリマーのより好ましい構造としては、ポリマー鎖の部分が、使用されるバインダーと類似の構造を取るものである。例えば、バインダーとして本発明で好ましく用いられるポリビニルアセトアセタールを使用する場合、シリコーン化合物のポリマー鎖はポリビニルアセトアセタール構造を有する場合が好ましい。
【0157】
(基材)
本発明の感熱転写記録シート及び、後述する保護層転写シートの基材は特に限定されず、必要とされる耐熱性と強度を有するものであれば、従来公知のいずれのものでも使用することができる。
例としては、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステルフィルムが挙げられる。
基材の厚さは、その強度及び耐熱性等が適切になるように材料に応じて適宜変更することができるが、好ましくは1~100μmである。より好ましくは2~50μmのものであり、さらに好ましくは3~10μmのものが用いられる。
【0158】
(染料バリア層)
本発明の感熱転写記録シートは、染料層と基材との間に染料の基材方向への拡散を防止するための染料バリア層を設けることができる。
染料バリア層としては通常のものが使用でき、例えば、ポリビニルアルコール樹脂やアセタール化度の低いポリビニルアセタール樹脂(樹脂全体に対してアセタール部分が50%以下)等である。
【0159】
(易接着処理)
基材の表面に対しては、塗布液の濡れ性及び接着性の向上を目的として、易接着処理を行なってもよい。処理方法として、コロナ放電処理、火炎処理、オゾン処理、紫外線処理、放射線処理、粗面化処理、化学薬品処理、真空プラズマ処理、大気圧プラズマ処理、プライマー処理、グラフト化処理等公知の樹脂表面改質技術を例示することができる。
また、基材上に塗布によって易接着層を形成することもできる。易接着層に用いられる樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリアクリル酸エステル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂やポリビニルアルコール樹脂等のビニル樹脂、ポリビニルアセトアセタールやポリビニルブチラール等のポリビニルアセタール樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリウレタン樹脂、スチレンアクリレート樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等を例示することができる。
易接着層の形成は、基材に用いられるフィルムを溶融押出し形成する時に、上記樹脂を含む塗布液を未延伸フィルムに塗布し、その後に延伸処理して行なうことも可能である。
また、上記の処理は、二種類以上を併用することもできる。
【0160】
(転写性保護層)
次に、本発明の感熱転写記録シートに用いることができる転写性保護層積層体について説明する。
本発明において、感熱転写記録シートに転写性保護層積層体を上記各染料層と面順次に設けるのが好ましい。転写性保護層積層体を基材上に設けて保護層転写シートとして感熱転写記録シートとは別に調製してもよい。転写性保護層積層体は、熱転写された画像の上に透明樹脂からなる保護層を熱転写で形成し、画像を覆い保護するためのものであり、耐擦過性、耐光性、耐候性、耐薬品性等の耐久性向上を目的とする。転写された染料が感熱転写受像シート表面に曝されたままでは、耐擦過性、耐光性、耐候性、耐薬品性等の画像耐久性が不十分な場合に有効である。
転写性保護層積層体は、基材上に、基材側から離型層、転写性保護層、接着剤層の順に形成することができる。転写性保護層を複数の層で形成することも可能である。転写性保護層が他の層の機能を兼ね備えている場合には、離型層、接着剤層を省くことも可能である。離型層を用いる場合は、基材として易接着層の設けられたものを用いることも可能である。
【0161】
転写性保護層を形成する樹脂としては、耐擦過性、耐薬品性、透明性、硬度に優れた樹脂が好ましく、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリルウレタン樹脂、これら各樹脂のシリコーン変性樹脂、紫外線遮断性樹脂、これら各樹脂の混合物、電離放射線硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂等を用いることができる。なかでも、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂が好ましい。また、前述した各種架橋剤によって架橋することも可能である。
【0162】
(背面層)
本発明の感熱転写記録シートは、染料層を塗設した基材の面の他方の面(裏面)、すなわちサーマルヘッド等に接する側に背面層を設けることが好ましい。また、保護層転写シートの場合にも、転写性保護層を塗設した基材の面の他方の面(裏面)、すなわちサーマルヘッド等に接する側に背面層を設けることが好ましい。
感熱転写記録シートの基材の裏面とサーマルヘッド等の加熱デバイスとが直接接触した状態で加熱されると、熱融着が起こりやすい。また、両者の間の摩擦が大きく、感熱転写記録シートを印画時に滑らかに搬送することが難しい。
背面層は、感熱転写記録シートがサーマルヘッドからの熱エネルギーに耐え得るように設けられるものであって、熱融着を防止し、滑らかな走行を可能にする。近年、プリンターの高速化に伴いサーマルヘッドの熱エネルギーが増加しているため、必要性は大きくなっている。
背面層は、バインダーに滑剤、離型剤、界面活性剤、無機粒子、有機粒子、顔料等を添加したものを塗布することによって形成される。また、背面層と基材との間に中間層を設けてもよく、無機微粒子と水溶性樹脂またはエマルジョン化可能な親水性樹脂からなる層が開示されている。
【0163】
バインダーとしては、耐熱性の高い公知の樹脂を用いることができる。例として、エチルセルロース、ヒドロキシセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、酢酸セルロース、酢酪酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロース、ニトロセルロース等のセルロース樹脂、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリビニルアセトアセタール樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリビニルピロリドン等のビニル樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリルアミド、アクリロニトリル-スチレン共重合体等のアクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリビニルトルエン樹脂、クマロンインデン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン変性又はフッ素変性ウレタン等の天然又は合成樹脂の単体又は混合物を挙げることができる。
背面層の耐熱性を高めるため、紫外線又は電子ビームを照射して樹脂を架橋する技術が知られている。また、架橋剤を用い、加熱により架橋させることも可能である。この際、触媒が添加されることもある。架橋剤としては、ポリイソシアネート等が知られており、このためには、水酸基を有する官能基を有する樹脂が適している。特開昭62-259889号公報には、ポリビニルブチラールとイソシアネート化合物との反応生成物にリン酸エステルのアルカリ金属塩又はアルカリ土類塩及び炭酸カルシウム等の充填剤を添加することにより背面層を形成することが開示されている。また、特開平6-99671号公報には、耐熱滑性層を形成する高分子化合物を、アミノ基を有するシリコーン化合物と1分子中に2個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物を反応させることにより得ることが開示されている。
【0164】
機能を十分に発揮させるために、背面層には、滑剤、可塑剤、安定剤、充填剤、ヘッド付着物除去のためのフィラー等の添加剤が配合されていても良い。
滑剤としては、フッ化カルシウム、フッ化バリウム、フッ化黒鉛等のフッ化物、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、硫化鉄等の硫化物、酸化鉛、アルミナ、酸化モリブデン等の酸化物、グラファイト、雲母、窒化ホウ素、粘土類(滑石、酸性白度等)等の無機化合物からなる固体滑剤、フッ素樹脂、シリコーン樹脂等の有機樹脂、シリコーンオイル、ステアリン酸金属塩等の金属セッケン類、ポリエチレンワックス、パラフィンワックス等の各種ワックス類、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤、フッ素含有界面活性剤等の界面活性剤を挙げることができる。
アルキルリン酸モノエステル、アルキルリン酸ジエステルの亜鉛塩等の燐酸エステル界面活性剤も用いられるが、酸根を有しており、サーマルヘッドからの熱量が大になると燐酸エステルが分解し、更に背面層のpHが低下してサーマルヘッドの腐食摩耗が激しくなるという問題点がある。これに対しては、中和したリン酸エステル界面活性剤を用いる方法、水酸化マグネシウム等の中和剤を用いる方法等が知られている。
その他の添加剤としては高級脂肪酸アルコール、オルガノポリシロキサン、有機カルボン酸及びその誘導体、タルク、シリカ等の無機化合物の微粒子等を挙げることができる。
【0165】
背面層は、上に例示したようなバインダーに添加剤を加えた材料を溶剤中に溶解または分散させた塗工液を、グラビアコーティング、ロールコーティング、ブレードコーティング、ワイヤーバー等の従来から公知の方法で塗布することによって形成される。0.1~10μmの膜厚が好ましく、さらに好ましくは0.5~5μmの膜厚である。
【0166】
<感熱転写受像シート>
次に本発明の感熱転写記録シートとともに、画像形成において好適に用いることができる感熱転写受像シートについて説明する。
この感熱転写受像シートは、染料を受容する熱可塑性の受容ポリマーを含有する少なくとも1層の受容層を基材上に有することが好ましい。受容層には、紫外線吸収剤、離型剤、滑剤、酸化防止剤、防腐剤、界面活性剤、その他の添加物を含有させることができる。基材と受容層との間に、例えば断熱層(多孔質層)、光沢制御層、白地調整層、帯電調節層、接着層、プライマー層等の中間層が形成されていてもよい。基材と受容層との間に少なくとも1層の断熱層を有することが好ましい。
受容層及びこれらの中間層は同時重層塗布により形成されることが好ましく、中間層は、必要に応じて複数設けることができる。
基材の裏面側にはカール調整層、筆記層、帯電調整層が形成されていてもよい。基材裏面各層を塗布するためには、ロールコート、バーコート、グラビアコート、グラビアリバースコート等の一般的な方法を用いることができる。
【0167】
ラテックス
本発明において、感熱転写受像シートは、受容層に色素染着可能なポリマーラテックスを使用することが好ましい。またポリマーラテックスとしては単独でも複数のポリマーラテックスを混合使用してもよい。
ポリマーラテックスとは一般に熱可塑性樹脂が微粒子として水溶性の分散媒中に分散されたものである。本発明のポリマーラテックスに用いられる熱可塑性樹脂の例としては、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアクリレート、塩化ビニル共重合体、ポリウレタン、スチレン-アクリロニトリル共重合体、ポリカプロラクトン等が挙げられる。
このうちポリカーボネート、ポリエステル、塩化ビニル共重合体が好ましく、ポリエステル、塩化ビニル共重合体が特に好ましい。
【0168】
ポリエステルはジカルボン酸誘導体とジオール化合物との縮合により得られ、芳香環や飽和炭化環を含有してもよく、分散性を付与するための水溶性基を有してもよい。
【0169】
塩化ビニル共重合体としては、塩化ビニルと酢酸ビニル共重合体、塩化ビニルとアクリルレートの共重合体、塩化ビニルとメタクリレートの共重合体、塩化ビニルと酢酸ビニルとアクリレートの共重合体、塩化ビニルとアクリレートとエチレンの共重合体等が挙げられる。このように2元共重合体でも3元以上の共重合体でもよく、モノマーが不規則に分布していても、ブロック共重合していてもよい。
この共重合体にはビニルアルコール誘導体やマレイン酸誘導体、ビニルエーテル誘導体等の補助的なモノマー成分を添加してもよい。共重合体において塩化ビニル成分は50質量%以上含有されていることが好ましく、またマレイン酸誘導体、ビニルエーテル誘導体等の補助的なモノマー成分は10質量%以下であることが好ましい。
ポリマーラテックスは単独でも混合物として使用してもよい。ポリマーラテックスは、均一構造であってもコア/シェル型であってもよく、このときコアとシェルをそれぞれ形成する樹脂のガラス転移温度が異なっても良い。
【0170】
この様なポリマーラテックスのガラス転移温度(Tg)は、20℃以上90℃以下であることが好ましく、より好ましくは25℃以上80℃以下である。
【0171】
商業的に入手可能なアクリレートラテックスとしては、日本ゼオン株式会社製、NipolLX814(Tg25℃)、NipolLX857X2(Tg43℃)等(いずれも商品名)が挙げられる。
商業的に入手可能なポリエステルラテックスとしては、東洋紡株式会社製 バイロナールMD-1100(Tg40℃)、バイロナールMD-1400(Tg20℃)、バイロナールMD-1480(Tg20℃)、MD-1985(Tg20℃)等(いずれも商品名)が挙げられる。
商業的に入手可能な塩化ビニル共重合体としては、日信化学工業株式会社製 ビニブラン276(Tg33℃)、ビニブラン609(Tg48℃)、住化ケムテックス株式会社製スミエリート1320(Tg30℃)、スミエリート1210(Tg20℃)等(いずれも商品名)が挙げられる。
【0172】
ポリマーラテックスの添加量は、ポリマーラテックスの固形分が受容層中の全ポリマーの50~98質量%であることが好ましく、70~95質量%であることがより好ましい。またポリマーラテックスの平均粒子サイズは、好ましくは1~50000nmであり、より好ましくは5~1000nmである。
【0173】
中空ポリマー
本発明において、断熱層には中空ポリマーを含有することが好ましい。
本発明における中空ポリマーとは粒子内部に空隙を有するポリマー粒子であり、好ましくは水分散物であり、例えば、1)ポリスチレン、アクリル樹脂、スチレン-アクリル樹脂等により形成された隔壁内部に水等の分散媒が入っており、塗布乾燥後、粒子内の水が粒子外に蒸発して粒子内部が中空となる非発泡型の中空ポリマー粒子、2)ブタン、ペンタン等の低沸点液体を、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステルのいずれか又はそれらの混合物もしくは重合物よりなる樹脂で覆っており、塗工後、加熱により粒子内部の低沸点液体が膨張することにより内部が中空となる発泡型マイクロバルーン、3)上記の2)をあらかじめ加熱発泡させて中空ポリマーとしたマイクロバルーンなどが挙げられる。
これらの中でも、上記1)の非発泡型の中空ポリマー粒子が好ましく、必要に応じて2種以上混合して使用することができる。具体例としてはロームアンドハース社製 ローペイク HP-1055、JSR社製 SX866(B)、日本ゼオン社製 Nipol MH5055(いずれも商品名)などが挙げられる。
【0174】
これらの中空ポリマーの平均粒子径は0.1~5.0μmであることが好ましく、0.2~3.0μmであることがさらに好ましく、0.4~1.4μmであることが特に好ましい。
また、中空ポリマーは、空隙率が20~70%のものが好ましく、30~60%のものがより好ましい。
【0175】
本発明において、中空ポリマー粒子のサイズは、透過型電子顕微鏡を用いて、その外径の円相当換算直径を測定し算出する。平均粒径は、中空ポリマー粒子を少なくとも300個透過電子顕微鏡を用いて観察し、その外形の円相当径を算出し、平均して求める。また中空ポリマーの空隙率とは、粒子体積に対する空隙部分の体積の割合から求める。
【0176】
本発明に用いる中空ポリマーの樹脂特性として、ガラス転移温度(Tg)が70℃以上200℃以下であることが好ましく、90℃以上180℃以下である中空ポリマーがさらに好ましい。中空ポリマーとしては、中空ポリマーラッテックスが特に好ましい。
【0177】
水溶性ポリマー
本発明に用いることができる感熱転写受像シートにおいて、受容層及び/または断熱層は水溶性ポリマーを含有させることができる。ここで水溶性ポリマーとは、20℃において水100gに対し0.05g以上の溶解度を有し、より好ましくは0.1g以上、さらに好ましくは0.5g以上の溶解度を有する。
【0178】
本発明に用いることのできる水溶性ポリマーとして、カラギナン類、ペクチン、デキストリン、ゼラチン、カゼイン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドン共重合体、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、水溶性ポリエステル等を挙げることができる。このうちゼラチンとポリビニルアルコールが好ましい。
【0179】
本発明においてゼラチンは分子量10,000から1,000,000までのものを用いることができる。本発明に用いられるゼラチンはCl、SO 2-等の陰イオンを含んでいてもよいし、Fe2+、Ca2+、Mg2+、Sn2+、Zn2+等の陽イオンを含んでいても良い。ゼラチンは水に溶かして添加することが好ましい。
またゼラチンには、アルデヒド型架橋剤、N-メチロール型架橋剤、ビニルスルホン型架橋剤、クロロトリアジン型架橋剤等の公知の架橋剤を添加することができる。このうちビニルスルホン型架橋剤、クロロトリアジン型架橋剤が好ましく、具体的例としては、ビスビニルスルホニルメチルエーテル、N,N’-エチレン-ビス(ビニルスルホニルアセタミド)エタン、4,6-ジクロロ-2-ヒドロキシ-1,3,5-トリアジンまたはそのナトリウム塩を挙げることができる。
【0180】
ポリビニルアルコールとしては、完全けん化物、部分けん化物、変性ポリビニルアルコール等の各種ポリビニルアルコールを用いることができる。これらポリビニルアルコールについては、長野浩一ら共著,「ポバール」(高分子刊行会発行)に記載のものが用いられる。ポリビニルアルコールは、その水溶液に添加する微量の溶剤あるいは無機塩類によって粘度調整をしたり粘度安定化させたりすることが可能であって、詳しくは上記文献「ポバール」144~154頁記載のものを使用することができる。その代表例としてホウ酸を含有させることで塗布面質を向上させることができ、好ましい。ホウ酸の添加量は、ポリビニルアルコールに対し0.01~40質量%であることが好ましい。
【0181】
ポリビニルアルコールの具体例として、完全けん化物としてはPVA-105、PVA-110、PVA-117、PVA-117Hなど、部分けん化物としてはPVA-203、PVA-205、PVA-210、PVA-220など、変性ポリビニルアルコールとしてはC-118、HL-12E、KL-118、MP-203(いずれも商品名、株式会社クラレ製)が挙げられる。
【0182】
添加物(離型剤)
本発明において感熱転写受像シートの受容層には、前述のフッ素原子含有脂肪族基を側鎖に有する高分子化合物を含有させることができる。この場合、感熱転写記録シートが含有するフッ素原子含有脂肪族基を側鎖に有する高分子化合物と同一の高分子化合物を含有しても同じ範疇の異なる高分子化合物を含有してもよく、いずれも本発明において好ましい態様である。また、離型剤として公知のポリエチレンワックス、アミドワックス等の固形ワックス類、シリコーンオイル、リン酸エステル化合物、フッ素含有界面活性剤、シリコーン界面活性剤を含有してもよい。
【0183】
フッ素原子含有脂肪族基を側鎖に有する高分子化合物の含有量は、受容層の全固形分(質量)に対して0.01質量%~20質量%であり、好ましくは0.1質量%~10質量%であり、さらに好ましくは1質量%~5質量%である。
【0184】
<画像形成>
本発明の感熱転写記録シートを用いた画像形成方法では、感熱転写受像シートの受容層と感熱転写記録シートの染料層とが接するように重ね合わせて、サーマルヘッドからの画像信号に応じた熱エネルギーを付与することにより画像を形成することが好ましい。
具体的な画像形成は、例えば特開2005-88545号公報などに記載された方法と同様にして行うことができる。本発明では、消費者にプリント物を提供するまでの時間を短縮するという観点から、プリント時間は15秒未満が好ましく、3~12秒がより好ましく、さらに好ましくは、3~7秒である。
【0185】
上記プリント時間を満たすために、プリント時のライン速度は0.73msec/line以下であることが好ましく、更に好ましくは0.65msec/line以下である。また、高速化条件における転写効率向上の観点から、プリント時のサーマルヘッド最高到達温度は、180℃以上450℃以下が好ましく、更に好ましくは200℃以上450℃以下である。更には350℃以上450℃以下が好ましい。
【0186】
本発明は、感熱転写記録方式を利用したプリンター、複写機などに利用することができる。熱転写時の熱エネルギーの付与手段は、従来公知の付与手段のいずれも使用することができ、例えば、サーマルプリンター(例えば、日立製作所製(商品名)、ビデオプリンターVY-100)等の記録装置によって記録時間をコントロールすることにより、5~100mJ/mm程度の熱エネルギーを付与することによって所期の目的を十分に達成することができる。また、上記の感熱転写受像シートは、基材を適宜選択することにより、熱転写記録可能な枚葉またはロール状の感熱転写受像シート、カード類、透過型原稿作成用シート等の各種用途に適用することもできる。
【実施例
【0187】
以下、本発明を実施例に基づき更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例中で、部、%、又は量比とあるのは、特に断りのない限り質量基準である。
【0188】
<マゼンタ染料層塗工液の調製例>
例示化合物(1-1)5.0質量部、ポリビニルアセタール樹脂(KS-3(商品名)、積水化学社製)5.0質量部、マット剤(フローセンUF(商品名)、住友精工社製)0.1質量部、メチルエチルケトン45質量部、トルエン45質量部を混合して、マゼンタ染料層塗工液(M1)を調製した。
【0189】
<イエロー染料層塗工液の調製例>
例示化合物(2-1)5.0質量部、ポリビニルアセタール樹脂(KS-3(商品名)、積水化学社製)5.0質量部、マット剤(フローセンUF(商品名)、住友精工社製)0.1質量部、メチルエチルケトン45質量部、トルエン45質量部を混合して、イエロー染料層塗工液(Y1)を調製した。
【0190】
<シアン染料層塗工液の調製例>
例示化合物(8-1)5.0質量部、ポリビニルアセタール樹脂(KS-3(商品名)、積水化学社製)5.0質量部、マット剤(フローセンUF(商品名)、住友精工社製)0.1質量部、メチルエチルケトン45質量部、トルエン45質量部を混合して、シアン染料層塗工液(C1)を調製した。
【0191】
<背面層塗工液の調製>
アクリルポリオール樹脂(アクリディックA-801(商品名)、大日本インキ化学工業社製)26.0質量部、ステアリン酸亜鉛(SZ-2000(商品名)、堺化学工業社製)0.43質量部、リン酸エステル(プライサーフA217(商品名)、第一工業製薬社製)1.27質量部、イソシアネート化合物50%溶液(バーノックD-800(商品名)、大日本インキ化学工業社製)8.0質量部、及びメチルエチルケトン/トルエン(質量比2/1)64質量部を混合して背面層塗工液を調製した。
【0192】
<離型層塗工液の調製>
変性セルロース樹脂(L-30(商品名)、ダイセル化学工業社製)5.0質量部、メチルエチルケトン95.0質量部を混合し、離型層塗工液を調製した。
【0193】
<保護層塗工液の調製>
アクリル樹脂溶液(固形分40%、UNO-1(商品名)、岐阜セラミック(有)製)90質量部、メタノール5質量部、2-プロパノール5質量部を混合し、保護層塗工液を調製した。
【0194】
<接着層塗工液の調製>
アクリル樹脂(ダイアナールBR-77(商品名)、三菱レイヨン社製)25質量部、紫外線吸収剤1(2,4,6-トリス(4-ブトキシ-2-ヒドロキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、カタログ番号3135-19-1、東京化成社製)2質量部、紫外線吸収剤2(2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、カタログ番号2440-22-4、東京化成社製)1質量部、紫外線吸収剤3(2-(5-t-ブチル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、カタログ番号3147-76-0、東京化成工業(株))1質量部、紫外線吸収剤4(2-t-ブチル-6-(5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-メチルフェノール、カタログ番号3896-11-5、富士フイルム和光純薬社製)1質量部、ポリメタクリル酸メチル微粒子(タフチックFH-S005(商品名)、日本エクスラン工業社製)0.4質量部、メチルエチルケトン46質量部、トルエン24質量部を混合し、接着層塗工液を調製した。
【0195】
実施例1:感熱転写記録シートの作製
基材として片面に易接着処理がされている厚さ4.5μmのポリエステルフィルム(ルミラー5A-F595(商品名)、東レ社製)を用い、このポリエステルフィルムの易接着処理がされていない面に、乾燥後の固形分塗布量が1g/mとなるように前述の背面層塗工液を塗布した。乾燥後、50℃で熱処理を行い硬化させた。
このようにして作製したポリエステルフィルムの、易接着処理されている面に、マゼンタ染料層塗工液(M1)、イエロー染料層塗工液(Y1)、シアン染料層塗工液(C1)、及び転写性保護層積層体を面順次となるように(各色相の領域が易接着処理面上において隣り合うように)塗布した感熱転写記録シートを作製した。各染料層の固形分塗布量は、0.8g/mとなるように調節した。なお、転写性保護層積層体の塗工は、離型層塗工液を塗布し、乾燥した後に、その上に保護層塗工液を塗布し、さらに乾燥した後に、その上に接着層塗工液を塗布することで実施した。
【0196】
実施例2~90及び比較例1~13
マゼンタ染料層塗工液(M1)、イエロー染料層塗工液(Y1)、シアン染料層塗工液(C1)の調製において、マゼンタ染料(M染料)、イエロー染料(Y染料)、シアン染料(C染料)の組み合わせを表1-1及び表1-2(併せて表1という)に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2~90の感熱転写記録シート、及び比較例1~13の感熱転写記録シートを調製した。各染料層塗工液中の染料の量はM1、Y1、C1と同量(5.0質量部)とし、ある染料層塗工液において、複数種の染料を用いる場合には、複数種の染料の合計量を5.0質量部とし、複数種の染料の量比を表1に示すように調整して用いた。
【0197】
【表1-1】
【0198】
【表1-2】
【0199】
比較用の染料としては、以下を使用した。
【0200】
【化62】
【0201】
【化63】
【0202】
【化64】
【0203】
<評価試験>
上記の本発明の実施例1~90の感熱転写記録シート及び比較例1~13の感熱転写記録シートについて、感熱転写プリンター(フジフイルムサーマルフォトプリンターASK-300(商品名)、富士フイルム社製)を用いて、印画紙(フジフイルムクオリティサーマルフォトペーパー(商品名)、富士フイルム社製)に画像プリントを出力して、以下の評価試験を行った。以下の説明において、表2-1~表2-4を併せて表2という。
【0204】
評価試験1:プロセスブラック濃度評価
出力画像として高精細カラーディジタル標準画像CMYK/SCID(JIS規格X9201:2001)のカラーチャートデータ(S7、S8、S9、及びS10)を用いて色の計測に必要なサイズを加味して1つの色票を10mm四方となるように全928色票をプリントした。得られた色票群を自動スキャニングテーブル(i1iO(商品名)、エックスライト社製)を用いて、視野角2°でCIELab表色系におけるL*値、a*値、及びb*値を計測した。無彩色(白~灰~黒)を選定するため、全色票群からa*値及びb*値のいずれについても-3以上3未満である色票群を抜き出し、その色票群の中で最も小さなL*値(最も高濃度の黒)であったもののL*値を以下の評価基準で評価した。結果を表2に示す。なお、本評価において明度L*は値が小さいものほど、黒色として濃度が高いことを示している。黒として、明度が22以上ある場合は灰色がかったぼやけた黒であるが、明度が20前後で実用上耐えうる黒となり、明度が18よりも小さな場合、高級感や重厚感を与える高濃度の黒となる。加えて高濃度の黒は、文字やバーコードをよりくっきりとプリントするためにも重要である。
--評価基準--
A:18未満
B:18以上22未満
C:22以上
【0205】
評価試験2:他色引き締め効果の評価
図1に示した評価用画像パターン1を用いて評価した。図1において、Kはプロセスブラック部分(RGB値として、R0、G0、B0)を示し、Yはイエロー部分(RGB値として、R255、G255、B0)を示し、Mはマゼンタ部分(RGB値として、R255、G0、B255)を示し、Cはシアン部分(RGB値として、R0、G255、B255)を示し、Wはホワイト部分(RGB値として、R255、G255、B255)を示す。図1に示すように、プロセスブラック部分(K)は90mm×90mmの大きさであり、イエロー部分(Y)、マゼンタ部分(M)、シアン部分(C)、及びホワイト部分(W)は、それぞれ25mm×25mmの大きさである。イエロー部分(Y)、マゼンタ部分(M)、シアン部分(C)、及びホワイト部分(W)は、プロセスブラック部分内に、上下二段に10mmの間隔をあけて離間して形成されている。
図1に示した評価用画像パターン1を、プロセスブラック部分は最高到達濃度(最も高濃度の黒)で、イエロー、マゼンタ、及びシアンの部分は反射濃度(ISO濃度ステータスT、視野角2°)が1.0となるようにプリントした。ホワイト部分は、染料が転写されていない部分(印画紙の色の部分)である。得られた評価用画像パターン1のプリントについて、目視にて以下の評価基準で評価した。パネルは10人とし、最も多くのパネルが示した評価基準を評価値とした。評価に用いた、同濃度単独ベタ画像は、上記イエロー部分、マゼンタ部分、又はシアン部分と同じRGB値の画像のみを上記と同じ反射濃度でプリントしたものである。さらに、プリントされていない印画紙をホワイトの単独ベタ画像とした。結果を表2に示す。
--評価基準--
A:とても引き締まって見える
(カラー部分(イエロー部分、マゼンタ部分、シアン部分、及びホワイト部分)が同濃度単独ベタ画像より色濃く見え、輪郭がくっきりとしている)
B:引き締まって見える
(カラー部分が同濃度単独ベタ画像と同じ色濃さに見えるが輪郭はくっきりしている)
C:ぼやけて見える
(カラー部分が同濃度単独ベタ画像より色淡く見える、又は輪郭がぼやけて見える)
【0206】
評価試験3:色再現体積評価
前述の評価試験1でプリントし、自動スキャニングテーブル(i1iO(商品名)、エックスライト社製)を用いて計測したCIELab表色系におけるL*値、a*値、及びb*値を3次元プロットして、各感熱転写記録シートの色再現体積を算出した。得られた色再現体積について、比較例4の色再現体積を基準(100%)とした相対値を求め、以下の評価基準で評価した。結果を表2に示す。色再現体積が高いほど、彩度の高い色を含めてさまざまな色を表現できることを意味する。色再現体積は、写真プリントにおいて、忠実な色再現を実現可能な設計ができるようになるだけでなく、原色を利用することの多いデジタル画像で、従来プリントで再現できなかったような鮮やかな原色についても近しい色みを再現できることを示している。
--評価基準--
S:110%以上
A:105%以上110%未満
B:100%以上105%未満
C:100%未満
【0207】
評価試験4:耐光性評価1/単色退色バランス
各染料の単色領域での光による退色性のバランスを以下のようにして評価した。
30mm四方のイエロー、マゼンタ、シアンの画像を別々に、イエロー、マゼンタ、及びシアンのそれぞれの反射濃度(ISO濃度ステータスT、視野角2°)が1.0となるようにプリントした。得られたプリントについて、キセノンウェザーメーター(XL-75L(商品名)、スガ試験機社製)を用いて耐光性試験(サンプル温度25℃、照射量100キロルクス、366nm以下カットオフフィルタ使用、照射時間72時間)を実施した。試験後のイエロー、マゼンタ、及びシアンの反射濃度を測定して、それぞれについて耐光性試験前の反射濃度に対する残存率を算出した。算出したイエロー、マゼンタ、及びシアンの残存率の内、最大のものと最小のものとの差(残存率の差)を算出して、下記評価基準により評価した。評価基準は以下の通りである。結果を表2に示す。
この残存率の差が小さいことは、プリント画像のイエロー、マゼンタ、及びシアンのプリントの単色部分での各染料の光退色の速度が近いことを意味しており、退色バランスに優れる。退色のバランスに優れると色偏りなく均一に色褪せていくため好ましい。一方で、退色バランスに劣るとプリント画像が特定の色が偏って退色してしまうため、好ましくない。
--評価基準--
A:5%未満
B:5%以上10%未満
C:10%以上
【0208】
評価試験5:耐光性評価2/グレー退色バランス
各染料の混色領域での光による退色性のバランスを以下のようにして評価した。
30mm四方のグレーの画像を、イエロー、マゼンタ、及びシアンの感熱転写記録シートを用いて、イエロー、マゼンタ、及びシアンのそれぞれの反射濃度(ISO濃度ステータスT、視野角2°)が1.0となるように順次重ねてプリントしてプリント画像(グレー)を作成した。このプリント画像に対して、キセノンウェザーメーター(XL-75L(商品名)、スガ試験機社製)を用いて耐光性試験(サンプル温度25℃、照射量100キロルクス、366nm以下カットオフフィルタ使用、照射時間72時間)を実施した。試験後のグレー画像中のイエロー、マゼンタ、シアンの反射濃度を測定して、それぞれの耐光性試験前の反射濃度に対する残存率を算出した。算出したイエロー、マゼンタ、シアンの残存率の内、最大のものと最小のものとの差を算出し、下記評価基準により評価した。結果を表2に示す。
この残存率の差がより小さいことは、プリント画像のグレー部分(混色部分)での光による退色バランスがよいことを示している。各色相の染料は、混色領域内での相互作用により、各色相の染料の光による退色の度合いが大きく異なる場合がある。プリント画像における混色部分の退色バランスは、写真プリントにおいては非常に重要である。グレー退色バランスが悪いと、例えば人物の顔のプリントにおいて、黒髪が茶髪へ変化したり、肌色が赤み(熱っぽい肌色)や青み(血の気が引いたような肌色)に変化したりして好ましくない。グレー退色バランスに優れると上記が解決されプリントの退色として好ましい。
--評価基準--
A:5%未満
B:5%以上10%未満
C:10%以上
【0209】
評価試験6:暗所高温高湿経時評価
各染料の混合時の、高温としたときの退色性のバランスを以下のようにして評価した。
評価試験5と同様にして作成したグレー画像を、恒温恒湿機(型番:ARS-0220-J、エスペック社製)中において、暗所高温高湿経時条件下(温度65℃、相対湿度70%RH、経時90日)で処理した。処理後のグレー画像中のイエロー、マゼンタ、及びシアンの反射濃度をそれぞれ測定して、処理前の反射濃度に対する残存率をそれぞれ算出した。算出したイエロー、マゼンタ、及びシアンの残存率の内、最大のものと最小のものとの差を算出し、下記評価基準により評価した。結果を表2に示す。
この残存率の差が、より小さい方がプリント画像の高温高湿によるグレー退色バランスがよいことを示している。
--評価基準--
A:10%未満
B:10%以上20%未満
C:20%以上
【0210】
評価試験7:逆転写性
マゼンタ、イエロー及びシアンの各染料のベタ画像(50mm四方)がこの順番に重なるように、印画紙の画像形成領域に、各染料を順次にプリントして黒色プリント画像を得た。使用後の感熱転写記録シートのイエロー染料層及びシアン染料層から、メチルエチルケトン/トルエン(重量比1/1)を用いて染料をそれぞれ抽出して、各染料層に含まれる染料中のマゼンタ染料を、高速クロマトグラフィを用いて定量した。各染料層中の全染料の含有量に占めるマゼンタ染料の割合(質量%)を求め、最も大きな数値を下記評価基準により評価した。結果を表2に示す。
このようにすることで、プリント中に、イエロー染料層、及びシアン染料層へ、印画紙の画像形性領域から、マゼンタ染料がどれだけ移行(逆転写)したかを調べることができる。印画紙からの他の染料層への染料の逆転写を抑制することで、プリント画像の色再現を確実に行うことができる。
--評価基準--
A:2%未満
B:2%以上5%未満
C:5%以上
【0211】
総合評価
評価試験1~7における評価結果(S、A、B、C)をもとに、これらの評価結果を下記の基準で得点化して、合計得点により総合評価を行った。合計得点が高いほど、好ましい。結果を表2に示す。
S:2点
A:1点
B:0点
C:-1点
【0212】
【表2-1】
【0213】
【表2-2】
【0214】
【表2-3】
【0215】
【表2-4】
【0216】
実施例1~90の感熱転写記録シートと比較例1~13の感熱転写記録シートを比較すると、実施例1~90の感熱転写記録シートは、濃度の高いプロセスブラックを形成でき、他色の引き締め効果もあることから、良好なブラックを形成できることがわかる。
【0217】
本発明の各感熱転写記録シートと比較例の各感熱転写記録シートを比較すると、本発明の各感熱転写記録シートは、色再現体積も広がり、さまざまな色が表現できることもわかる。特に、シアン染料を一般式(8)で表される化合物と一般式(9)~(12)のいずれかで表される化合物の少なくとも1種とすることにより、色再現性は高まる傾向である。
【0218】
本発明の各感熱転写記録シートと比較例の各感熱転写記録シートを比較すると、本発明の各感熱転写記録シートの好ましい形態においては、光や高温高湿条件に暴露されても退色バランスがよく、画像の色バランスが長持ちすることがわかる。特に、シアン染料を一般式(8)で表される化合物と一般式(9)~(12)のいずれかで表される化合物の少なくとも1種とすることにより、混色部分において光による各染料の退色のバランスをより高めることができ、一般式(8)で表される化合物と一般式(12)で表される化合物とすると、光及び高温高湿による各染料の退色のバランスをより高めることができる。
本発明の各感熱転写記録シートと比較例の各感熱転写記録シートを比較すると、本発明の各感熱転写記録シートの好ましい形態では、逆転写が少ないことがわかる。特に、シアン染料を一般式(8)で表される化合物と一般式(9)~(12)のいずれかで表される化合物の少なくとも1種とすることにより、逆転写を効率よく低減することができる。
【0219】
本発明をその実施態様とともに説明したが、我々は特に指定しない限り我々の発明を説明のどの細部においても限定しようとするものではなく、添付の請求の範囲に示した発明の精神と範囲に反することなく幅広く解釈されるべきであると考える。
【0220】
本願は、2020年9月25日に日本国で特許出願された特願2020-161494に基づく優先権を主張するものであり、これらはここに参照してその内容を本明細書の記載の一部として取り込む。
【符号の説明】
【0221】
K:プロセスブラック部分
Y:イエロー部分
M:マゼンタ部分
C:シアン部分
W:ホワイト部分
図1