(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-08
(45)【発行日】2023-12-18
(54)【発明の名称】アルコールの製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 29/149 20060101AFI20231211BHJP
C07C 31/20 20060101ALI20231211BHJP
C07C 31/22 20060101ALI20231211BHJP
B01J 27/19 20060101ALI20231211BHJP
B01J 23/652 20060101ALI20231211BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20231211BHJP
【FI】
C07C29/149
C07C31/20 B
C07C31/22
C07C31/20 Z
B01J27/19 Z
B01J23/652 Z
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2020572074
(86)(22)【出願日】2019-09-17
(86)【国際出願番号】 JP2019036317
(87)【国際公開番号】W WO2020166117
(87)【国際公開日】2020-08-20
【審査請求日】2022-07-13
(31)【優先権主張番号】P 2019025399
(32)【優先日】2019-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成30年9月19日に発行された「第122回触媒討論会、討論会A予稿集、第470頁、一般社団法人触媒学会」において発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成30年9月26日、北海道教育大学函館校にて開催された、第122回触媒討論会において発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成30年12月12日、タイ、バンコク、Chulalongkorn Universityにて開催された、International Symposium on Catalysis and Fine Chemicals 2018において発表
(73)【特許権者】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】110002239
【氏名又は名称】弁理士法人G-chemical
(72)【発明者】
【氏名】水垣 共雄
(72)【発明者】
【氏名】金田 清臣
(72)【発明者】
【氏名】梶川 泰照
(72)【発明者】
【氏名】平井 雄一郎
【審査官】吉森 晃
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-160243(JP,A)
【文献】MIZUGAKI,T et al.,Selective hydrogenation of levulinic acid to 1,4-pentanediol in water using a hydroxyapatite-support,Green Chemistry,2015年,vol.17, No.12,p.5136-5139,ISSN:1463-9262 DOI:10.1039/C5GC01878A
【文献】MIZUGAKI,T and KANEDA,K,Development of High Performance Heterogeneous Catalysts for Selective Cleavage of C-O and C-C Bonds,THE CHEMICAL RECORD,2018年09月19日,Vol.19, No.7,p.1179-1198,ISSN:1527-8999 DOI: 10.1002/tcr.201800075
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 29/149
C07C 31/20
C07C 31/22
B01J 27/19
B01J 23/652
C07B 61/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記触媒の存在下で、基質としての下記式(1)で表されるラクトンを水素化して、下記式(2)で表されるアルコールを製造するアルコールの製造方法。
触媒:金属種として下記M
1とM
2が、
M
1
1モルに対してM
2
が0.3~0.8モルの割合で、下記担体に担持されてなる触媒
(M
1)ロジウム、白金、ルテニウム、イリジウム、又はパラジウム
(M
2)スズ、バナジウム、モリブデン、タングステン、又はレニウム
(担体
)ZrO
2
【化1】
(式中、Rはヒドロキシル基を有していてもよい2価の炭化水素基を示す)
【請求項2】
前記基質としてのラクトンが、γ-バレロラクトンを除く4~7員環のラクトンである、請求項1に記載のアルコールの製造方法。
【請求項3】
触媒の使用量(M
1金属換算)が、基質の0.01~30モル%である請求項1又は2に記載のアルコールの製造方法。
【請求項4】
水の存在下で水素化反応を行う請求項1~3の何れか1項に記載のアルコールの製造方法。
【請求項5】
金属種として下記M
1とM
2が
、M
1
1モルに対してM
2
が0.3~0.8モルの割合で、下記担体に担持されてなる、ラクトンを水素化して、対応するアルコールを得るのに使用されるラクトンの水素化触媒。
(M
1)ロジウム、白金、ルテニウム、イリジウム、又はパラジウム
(M
2)スズ、バナジウム、モリブデン、タングステン、又はレニウム
(担体
)ZrO
2
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラクトンを水素化してアルコールを製造する方法に関する。本願は2019年2月15日に日本に出願した、特願2019-025399の優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
地球規模の二酸化炭素排出量削減のために、バイオマス資源から有用化成品への効率的変換反応の開発が強く望まれている。バイオマス由来の化合物としては、例えばγ-バレロラクトン等のラクトンが知られている。そして、前記ラクトンを水素化して得られるアルコールは、プラスチックなどの化成品原料として有用である。
【0003】
従来、ラクトンを水素化してアルコールを得る反応には、LiAlH4やNaBH4等の還元剤が使用されてきた。しかし、これらの還元剤を使用した場合、反応後に多量の塩が副生することが問題であった。また、前記還元剤を使用する方法は、アルコールが得られるまでに多段階の複雑な反応を経るため、作業が煩わしかった。そのため、反応後に水のみを副生する分子状水素を還元剤として使用して、簡便にアルコールが得られる、触媒的水素化反応の開発が求められている。
【0004】
分子状水素を還元剤として使用するラクトンの触媒的水素化反応としては、Ir-Ru-Re/活性炭、Ir-Zr-Re/グラフェン等を触媒として使用する方法が知られている(特許文献1)。しかし、副生物の生成を抑制して、アルコールを選択的に得る為には、高温、高圧条件下で反応させることが必要であった。また、前記反応は、1,2-ジメトキシエタン等の有機溶媒の存在下で行うものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、ラクトンを効率よく水素化して、選択的にアルコールを製造する方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、ワンステップで、ラクトンを効率よく水素化して、選択的にアルコールを製造する方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、水を溶媒として使用して、ラクトンを効率よく水素化して、選択的にアルコールを製造する方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、温和な条件下で、ラクトンを効率よく水素化して、選択的にアルコールを製造する方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、ラクトンを効率よく水素化して、アルコールを選択的に製造する用途に使用する触媒を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は上記課題を解決するため鋭意検討した結果、下記特定の触媒を使用すると、温和な条件下、ワンステップで、且つ水を溶媒として使用して、ラクトンを速やかに水素化してアルコールを選択的に製造することができることを見いだした。本発明はこれらの知見に基づいて完成させたものである。
【0008】
すなわち、本発明は下記触媒の存在下で、基質としての下記式(1)で表されるラクトンを水素化して、下記式(2)で表されるアルコールを製造するアルコールの製造方法を提供する。
触媒:金属種として下記M
1とM
2が、下記担体に担持されてなる触媒
(M
1)ロジウム、白金、ルテニウム、イリジウム、又はパラジウム
(M
2)スズ、バナジウム、モリブデン、タングステン、又はレニウム
(担体)ハイドロキシアパタイト、フルオロアパタイト、ハイドロタルサイト、又はZrO
2
【化1】
(式中、Rはヒドロキシル基を有していてもよい2価の炭化水素基を示す)
【0009】
本発明は、また、触媒が、金属種としてM1とM2を、M11モルに対してM2を0.05~1モルの割合で含有する前記アルコールの製造方法を提供する。
【0010】
本発明は、また、触媒の使用量(M1金属換算)が、基質の0.01~30モル%である前記アルコールの製造方法を提供する。
【0011】
本発明は、また、水の存在下で水素化反応を行う前記アルコールの製造方法を提供する。
【0012】
本発明は、また、金属種として下記M1とM2が下記担体に担持されてなる、ラクトンを水素化して、対応するアルコールを得るのに使用されるラクトンの水素化触媒を提供する。
(M1)ロジウム、白金、ルテニウム、イリジウム、又はパラジウム
(M2)スズ、バナジウム、モリブデン、タングステン、又はレニウム
(担体)ハイドロキシアパタイト、フルオロアパタイト、ハイドロタルサイト、又はZrO2
【発明の効果】
【0013】
本発明の製造方法によれば、ラクトンから、温和な条件下、ワンステップで、効率よく且つ選択的にアルコールを製造することができる。
また、本発明の製造方法によれば、人体に安全であり、環境に優しい水を溶媒として使用して、ラクトンから、効率よく且つ選択的にアルコールを製造することができる。
そして、このようにして得られるアルコールは、プラスチックなどの化成品原料として有用である。従って、本発明の製造方法は工業的にアルコールを製造する方法として有用である。
【0014】
また、本発明の、前記担体に担持された前記M1と前記M2は、水を溶媒として使用して、ラクトンを水素化してアルコールを得るための触媒(固体触媒、或いは不均一系触媒)として好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(触媒)
本発明のアルコールの製造方法は、金属種として下記M1とM2が、下記担体に担持されてなる触媒を、少なくとも1種使用する。
(M1)ロジウム、白金、ルテニウム、イリジウム、又はパラジウム
(M2)スズ、バナジウム、モリブデン、タングステン、又はレニウム
(担体)ハイドロキシアパタイト、フルオロアパタイト、ハイドロタルサイト、又はZrO2
【0016】
担体に担持されるM1とM2は、金属単体であってもよく、金属塩、金属酸化物、金属水酸化物、又は金属錯体等であってもよい。
【0017】
M1の担持量(金属換算)は、担体の重量(100重量%)の、例えば1~50重量%程度、好ましくは1~20重量%、特に好ましくは1~10重量%である。M1を過剰に担持しても、触媒活性は飽和して横ばい状態となり、反応を促進する効果は得られない。一方、M1の担持量が上記範囲を下回ると、十分な触媒活性が得られ難くなる傾向がある。
【0018】
M2の担持量(金属換算)は、担体の重量(100重量%)の、例えば0.01~20重量%程度、好ましくは0.01~10重量%、より好ましくは0.01~3重量%、更に好ましくは0.05~2重量%、特に好ましくは0.1~1.5重量%、最も好ましくは0.2~1.0重量%、とりわけ好ましくは0.3~0.8重量%である。M2の担持量が上記範囲を外れると、ラクトンを効率よく水素化することが困難となり、アルコールの収率が低下する傾向がある。
【0019】
尚、前記金属種の担持への担持量は、ICP-AES法によって測定することができる。
【0020】
本発明における触媒は、M1とM2の界面に触媒活性点を有すると考えられる。そして、M1とM2の一方が過剰になると、過剰の金属種によってもう一方の金属種が覆われて界面が減少し、触媒活性点が減少するためか、触媒活性が低下して、ラクトンを効率よく水素化することが困難となり、アルコールの収率が低下する傾向がある。
【0021】
そのため、M1とM2の担持量は特定の範囲であることが好ましく、M11モルに対するM2の担持量は、例えば0.05~1モルの割合であることが好ましい。また、M11モルに対するM2の担持量の上限は、好ましくは0.8モル、より好ましくは0.6モル、更に好ましくは0.5モル、特に好ましくは0.4モルである。M11モルに対するM2の担持量の下限は、好ましくは0.07モル、更に好ましくは0.1モル、特に好ましくは0.15モル、最も好ましくは0.2モル、とりわけ好ましくは0.3モルである。
【0022】
本発明における触媒は、M1とM2以外の第3金属種を担持していても良いが、第3金属種の担持量は、M1とM2の合計担持量の例えば200モル%以下、好ましくは150モル%以下、より好ましくは100モル%以下、更に好ましくは70モル%以下、更に好ましくは50モル%以下、更に好ましくは30モル%以下、特に好ましくは10モル%以下、最も好ましくは5モル%以下、とりわけ好ましくは1モル%以下である。第3金属種の担持量が上記範囲を上回ると、触媒活性点が減少するためか、本発明の効果が得られにくくなる傾向がある。
【0023】
本発明においては、M1とM2を担体に担持した状態で使用する。担体に担持することにより、M1とM2の界面面積を稼ぐことができ、触媒活性点を多く露出させることができる。
【0024】
また、本発明においては、M1とM2を担体に担持してなる触媒を使用するため、反応終了後に、濾過、遠心分離等の物理的な分離手段により容易に触媒を反応生成物から分離することができ、反応生成物から分離され、回収された触媒は、そのままで、又は洗浄、乾燥等を施した後に、再利用することができる。本発明においては、前記の通り、高価な触媒を繰り返し利用することができるので、アルコールの製造コストを大幅に削減することができる。
【0025】
担体としては、なかでも、ラクトンからアルコールを選択的且つ収率よく製造することができる点で、ハイドロキシアパタイト又はフルオロアパタイトが好ましく、特にハイドロキシアパタイトが好ましい。
【0026】
担体としては、なかでも、ラクトンからアルコールを選択的且つ収率よく製造することができる点で、ハイドロキシアパタイト又はハイドロタルサイトが好ましく、特にハイドロキシアパタイトが好ましい。
【0027】
担体としては、なかでも、ラクトンからアルコールを選択的且つ収率よく製造することができる点で、ハイドロキシアパタイト又はZrO2が好ましく、特にZrO2が好ましい。
【0028】
ハイドロキシアパタイトとしては、例えば、商品名「リン酸三カルシウム」(和光純薬工業(株)製)等の市販品を好適に使用することができる。
【0029】
前記触媒は、水を溶媒として使用して、ラクトンを効率よく水素化してアルコールを得るための水素化触媒(若しくは、環状エステル基水素化触媒)として好適に使用することができる。
【0030】
(触媒の調製方法)
本発明における触媒は、例えば、含浸法により調製することができる。
【0031】
含浸法は、上記金属種を含む化合物(=金属化合物)を溶媒(例えば、水等)に溶解して得られる溶液(例えば、水溶液)に担体を浸漬して、前記金属化合物を担体に含浸させた後、焼成することにより金属種を担体に担持させる方法である。溶液中の金属化合物濃度や、担体の浸漬時間等を調整することにより、金属種の担持量を制御することができる。
【0032】
そして、担体に、M1を含む化合物を溶媒に溶解して得られる溶液(以後、「M1含有溶液」と称する場合がある)とM2を含む化合物を溶媒に溶解して得られる溶液(以後、「M2含有溶液」と称する場合がある)を順次含浸させる方法(=逐次含浸法)や、担体にM1含有溶液とM2含有溶液を同時に含浸させる方法(=共含浸法)により調製することができる。共含浸法により触媒を調製する場合は、M1含有溶液とM2含有溶液の混合液中に担体を含浸し、その後、焼成を行えばよいが、逐次含浸法により触媒を調製する場合は、担体をM1含有溶液とM2含有溶液に順次浸漬し、その都度焼成を行うことが好ましい。
【0033】
本発明においては、なかでも、共含浸法によりM1とM2を担体に担持して得られた触媒が、とりわけ選択的にアルコールを製造することができる点で好ましい。
【0034】
例えば、M1としてのPtとM2としてのMoが、共含浸法により担体に担持された触媒(Pt-Mo/担体)は、担体を、Pt化合物(例えば、H2PtCl6等)とMo化合物[例えば、(NH4)6Mo7O24・4H2O等]を水に溶解して得られる溶液中に浸漬し、その後、溶液中から引き上げて焼成することにより調製することができる。
【0035】
本発明においては、なかでも、逐次含浸法によりM1とM2を担体に担持して得られた触媒、特に逐次含浸法によりまずM2を担体に担持させ、続いてM1を担体に担持させて得られた触媒が、触媒活性に優れ、ラクトンの水素化反応を速やかに進行することができる点で好ましい。
【0036】
例えば、M1としてのPtとM2としてのMoが、逐次含浸法により担体に担持された触媒(Pt/Mo/担体)は、担体を、Mo化合物[例えば、(NH4)6Mo7O24・4H2O等]を水に溶解して得られる溶液中に浸漬し、その後、溶液中から引き上げて焼成することでMo/担体を得、得られたMo/担体を、続いて、Pt化合物(例えば、H2PtCl6等)を水に溶解して得られる溶液中に浸漬し、その後、溶液中から引き上げて焼成することにより調製することができる。
【0037】
逐次含浸法によれば、共含浸法に比べて、M2によりM1(若しくは、M1によりM2)が被覆されるのを防止しつつ、M1とM2の合金を担体の表面に担持することができる。このようにして得られた触媒は、担体表面に担持されたM1とM2のナノサイズの合金が高分散し、優れた触媒活性を発現することができる。
【0038】
前記溶液中に担体を浸漬する際の温度は、例えば10~80℃程度である。
【0039】
前記溶液中に担体を浸漬する時間は、例えば1~30時間程度、好ましくは1~5時間である。
【0040】
焼成は、例えばマッフル炉等を使用して、300~700℃で1~5時間加熱することにより行われる。
【0041】
また、焼成後、更に還元処理を施してもよい。還元処理に使用する還元剤としては、例えば、水素(H2)等を挙げることができる。
【0042】
還元処理温度及び時間としては、例えば0~600℃(好ましくは、100~200℃)の温度で、0.5~5時間程度(好ましくは、0.5~2時間)である。
【0043】
上記調製方法により得られた触媒は、その後、洗浄処理(水や有機溶媒等により洗浄)、乾燥処理(真空乾燥等により乾燥)等を施してもよい。
【0044】
(基質)
本発明では、基質として、下記式(1)で表されるラクトンを少なくとも1種使用する。
【化2】
【0045】
前記式中、Rはヒドロキシル基を有していてもよい2価の炭化水素基を示す。
【0046】
前記Rにおける2価の炭化水素基には、2価の脂肪族炭化水素基、2価の脂環式炭化水素基、2価の芳香族炭化水素基、及びこれらから選択される2個以上の基が結合してなる2価の基が含まれる。
【0047】
2価の脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチレン、メチルメチレン、ジメチルメチレン、エチレン、プロピレン、トリメチレン基等の炭素数1~10(好ましくは、炭素数1~5)の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基;ビニレン、1-メチルビニレン、プロペニレン、1-ブテニレン、2-ブテニレン、1-ペンテニレン、2-ペンテニレン基等の炭素数2~10(好ましくは、炭素数2~5)の直鎖状又は分岐鎖状アルケニレン基等が挙げられる。
【0048】
2価の脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロペンチレン、シクロヘキシレン(例えば、1,2-シクロヘキシレン、1,3-シクロヘキシレン、1,4-シクロヘキシレン)、シクロヘプチレン基等の炭素数3~10(好ましくは、炭素数3~6)のシクロアルキレン基;シクロプロペニレン、シクロブテニレン、シクロペンテニレン、シクロヘキセニレン、シクロオクテニレン基等の炭素数3~10(好ましくは、炭素数3~6)のシクロアケニレン基等が挙げられる。
【0049】
2価の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニレン(例えば、o-フェニレン、m-フェニレン、p-フェニレン)、ビフェニレン、ナフチレン、ビナフチレン、アントラセニレン基等の炭素数6~20のアリーレン基が挙げられる。
【0050】
前記炭化水素基から選択される2個以上の基が結合してなる2価の基としては、例えば、シクロヘキシレンビス(メチレン)[例えば、1,2-シクロヘキシレンビス(メチレン)、1,3-シクロヘキシレンビス(メチレン)、1,4-シクロヘキシレンビス(メチレン)]、フェニレンビス(メチレン)[例えば、1,2-フェニレンビス(メチレン)、1,3-フェニレンビス(メチレン)、1,4-フェニレンビス(メチレン)]等が挙げられる。
【0051】
前記2価の炭化水素基は置換基としてヒドロキシル基を有していてもよい。また、前記2価の炭化水素基はヒドロキシル基以外にも、例えば、C1-5アルコキシ基、C6-10アリールオキシ基、C7-11アラルキルオキシ基、オキソ基、ハロゲン原子、ハロC1-5アルキル基等から選択される置換基を有していてもよい。
【0052】
本発明における基質としては、なかでも、温和な条件下で効率よく転化することができる(転化率が、例えば95%以上である)点で、式(1)中のRが2価の脂肪族炭化水素基(特に好ましくは炭素数1~10のアルキレン基、最も好ましくは炭素数1~7のアルキレン基)であるラクトンが好ましい。
【0053】
本発明における基質としては、温和な条件下で効率よく転化することができる(転化率は、例えば95%以上)点で、3~12員環のラクトンが好ましく、特に3~10員環のラクトンが好ましく、更に3~7員環のラクトンが好ましい。
【0054】
前記基質としては、なかでも、γ-バレロラクトン以外の前記ラクトンが好ましい。
【0055】
本発明における基質としては、温和な条件下(例えば、150℃未満の温度及び/又は6MPa以下の水素圧)で、対応するアルコールが高収率(収率は、例えば80%以上、好ましくは85%以上)で得られる点で、3~4員環及び6~10員環から選択されるラクトンが好ましく、特に3、4、及び6員環から選択されるラクトンが好ましく、とりわけ4員環のラクトン(例えば、β-ブチロラクトン)が好ましい。
【0056】
[アルコールの製造方法]
本発明のアルコールの製造方法では、上記触媒の存在下で、基質であるラクトンを水素化(好ましくは、分子状水素で水素化)する。本発明のアルコールの製造方法では、ラクトンが有する環状エステル基の開環反応が速やかに進行して、対応するアルコール(好ましくは、ポリオール)が効率よく生成する。
【化3】
(式中、Rは上記に同じ)
【0057】
触媒の使用量(触媒に含まれるM1金属換算)は、基質の、例えば0.01~30モル%程度、好ましくは0.1~10モル%、特に好ましくは0.5~5モル%、最も好ましくは1~5モル%である。
【0058】
また、触媒の使用量(触媒に含まれるM2金属換算)は、基質の、例えば0.01~10モル%程度、好ましくは0.05~5モル%、特に好ましくは0.1~2モル%である。
【0059】
触媒を上記範囲で使用すると、温和な条件下で、効率よく基質を水素化して、アルコールを選択的に製造することができる。触媒の使用量が上記範囲を下回ると、アルコールの収率が低下する傾向がある。
【0060】
水素化反応に使用する水素の供給は、例えば水素雰囲気下で反応を行う方法や、水素ガスをバブリングする方法等により行われる。
【0061】
本発明では上記触媒を使用するため温和な条件下で基質が有する環状エステル基の水素化を速やかに進行させることができ、水素化反応時の水素圧は、例えば、10MPa以下、好ましくは7MPa以下、より好ましくは6MPa以下、特に好ましくは5MPa以下(例えば、1~5MPa)である。
【0062】
また、水素化反応の反応温度は、例えば50~200℃、好ましくは100~180℃、特に好ましくは120~160℃、最も好ましくは120~150℃、とりわけ好ましくは120℃以上、150℃未満である。
【0063】
水素化反応の反応時間は、例えば1~36時間程度、好ましくは5~30時間、特に好ましくは5~20時間である。
【0064】
水素化反応はバッチ式、セミバッチ式、連続式などの何れの方法で行うこともできる。
【0065】
水素化反応は液相で行うことが好ましい。すなわち、本発明における水素化反応は液相反応が好ましい。ラクトンは沸点が高いので、水素化反応を気相で行うと反応生成物が分解し、アルコールの収率が低下する傾向があるためである。
【0066】
液相で反応を行う場合、溶媒としては、例えば、水;メタノール、エタノール、2-プロパノール、1-ブタノール等のアルコール系溶媒;1,4-ジオキサン、THF、1,2-ジメトキシエタン、ジエチルエーテル等のエーテル系溶媒;トルエン、ヘキサン、ドデカン等の炭化水素系溶媒;1,2-ジクロロエタン、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素系溶媒などを挙げることができる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0067】
本発明においては、なかでも、人体に安全であり、環境に優しい点で、水が好ましい。すなわち、本発明における水素化反応は水の存在下で行うことが好ましい。また、本発明では、水の存在下で水素化反応を行うと、ラクトンのエステル開環反応がより速やかに進行して、対応するアルコールを効率よく生成することができる。従って、本発明では、とりわけ、水の存在下で水素化反応を行うことが、アルコールを高収率で得ることができる点で好ましい。
【0068】
溶媒全量における水の使用量は、例えば1重量%以上が好ましく、より好ましくは5重量%以上、より好ましくは10重量%以上、更に好ましくは30重量%以上、更に好ましくは50重量%以上、特に好ましくは70重量%以上、最も好ましくは80重量%以上、とりわけ好ましくは90重量%以上である。従って、溶媒全量における水以外の溶媒(例えば有機溶媒、特にTHF、1,2-ジメトキシエタン等のエーテル系溶媒)の使用量は、例えば90重量%以下が好ましく、より好ましくは80重量%以下、より好ましくは70重量%以下、更に好ましくは50重量%以下、更に好ましくは30重量%以下、特に好ましくは20重量%以下、特に好ましくは10重量%以下、最も好ましくは5重量%以下、とりわけ好ましくは1重量%以下である。
【0069】
水以外の溶媒(例えば有機溶媒、特にTHF、1,2-ジメトキシエタン等のエーテル系溶媒)の使用量は、水の使用量の例えば100重量%以下であることが好ましく、より好ましくは70重量%以下、更に好ましくは50重量%以下、更に好ましくは30重量%以下、特に好ましくは20重量%以下、特に好ましくは10重量%以下、最も好ましくは5重量%以下、とりわけ好ましくは1重量%以下である。
【0070】
溶媒の使用量は、バッチ式で反応させる場合は基質の初期濃度が例えば0.01~10重量%程度となる範囲が好ましい。
【0071】
本発明では、上記触媒を使用するため、塩酸、硫酸、リン酸、酢酸などの酸や、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム等の塩基から選択される1種又は2種以上が反応系に存在せずとも、基質の水素化反応を速やかに進行させることができる。また、本発明では、前記酸や塩基を使用してもよいが、これらの使用量(2種以上含有する場合はその総量)は、基質1モルに対して、例えば0.001モル未満であることが好ましく、実質的に使用しないことが特に好ましい。反応系に前記酸や塩基が前記範囲を超えて存在すると、後処理にて中和処理が必要となるが、中和処理により塩が副生し、副生した塩を除去することで製品にロスが発生するためである。また、前記酸や塩基は腐食性を有するため、使用する反応器の材質が制限されるためである。
【0072】
反応終了後、反応生成物は、例えば、濾過、濃縮、蒸留、抽出、晶析、再結晶、カラムクロマトグラフィーなどの分離手段や、これらを組み合わせた分離手段により分離精製できる。
【0073】
本発明のアルコールの製造方法では、温和な条件下でも、基質を効率よく転化することができる。反応開始から30時間後(好ましくは20時間後)の基質の転化率は、例えば80%以上、好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上である。
【0074】
そして、基質であるラクトンの環状エステル基を速やかに水素化することにより、アルコールを選択的に且つ高収率で製造することができる。当該基質の転化率が90%以上となった時点での、反応生成物全量における、上記式(2)で表されるアルコールの選択率は、例えば70%以上、好ましくは75%以上、特に好ましくは85%以上、最も好ましくは90%以上である。
【0075】
従って、本発明のアルコールの製造方法によれば、ワンステップの簡便な方法で、また、人体に安全であり、環境に優しい水を溶媒として使用して、ラクトンを効率よく水素化して、対応するアルコールを選択的且つ高収率で製造することができる。
【実施例】
【0076】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0077】
実施例1(参考例とする)(触媒の調製:共含浸法)
H2PtCl6 0.0898gと(NH4)6Mo7O24・4H2O 0.088gを水50mLに溶解して得られた溶液中に、室温(25℃)条件下で、ハイドロキシアパタイト(HAP、商品名「リン酸三カルシウム」、和光純薬工業(株)製)1gを4時間浸漬した。浸漬後、ハイドロキシアパタイトを溶液から取り出して、ロータリーエバポレーターにて減圧下で水を留去した。これにより粉末を得た。その後、得られた粉末を空気雰囲気下、マッフル炉にて500℃で3時間焼成して、触媒(1)[Pt-Mo/HAP、Pt担持量:4重量%、Mo担持量:0.485重量%、Mo/Pt(モル比)=0.25]を得た。
【0078】
実施例2(参考例とする)
テフロン(登録商標)製内筒を備えたオートクレーブに、基質としてのβ-ブチロラクトン1ミリモルと触媒(1)100mg[基質の2モル%のPt、0.5モル%のMo、金属換算による]、及び水3mLを仕込み、水素圧5MPaの条件下、130℃で12時間反応させて反応生成物を得た。HPLCを使用して基質の転化率(conv.[%])を測定し、ガスクロマトグラフ質量分析計(GC-MS)を使用して各反応生成物の収率(yield[%])を測定した。
【0079】
実施例3~7(参考例とする)
基質、反応温度、及び水素圧を下記表に記載の通りに変更した以外は実施例2と同様に行った。
【0080】
【0081】
実施例8(参考例とする)
反応温度を130℃に変更した以外は実施例5と同様に行った。結果を下記表2に示す。
【0082】
実施例9(参考例とする)(触媒の調製:共含浸法)
ハイドロキシアパタイトに代えて、下記表2に記載の担体を使用した以外は実施例1と同様にして触媒[Pt-Mo/ZrO2、Pt担持量:4重量%、Mo担持量:0.485重量%、Mo/Pt(モル比)=0.25]を得た。
【0083】
得られた触媒を使用した以外は実施例8と同様に行った。結果を下記表2にまとめて示す。
【0084】
比較例1~7(触媒の調製:共含浸法)
ハイドロキシアパタイトに代えて、下記表2に記載の担体を使用した以外は実施例1と同様にして触媒を得た。
【0085】
得られた触媒を使用した以外は実施例8と同様に行った。結果を下記表2にまとめて示す。
【0086】
【0087】
使用した担体は以下に記載の通りである。
HAP:ハイドロキシアパタイト、和光純薬工業(株)製
ZrO2:和光純薬工業(株)製
SiO2:FUJI SILYSIA CHEMICAL LTD.
TiO2:触媒学会参照触媒、JRC TIO-4
H-β:β型ゼオライト、触媒学会参照触媒、JRC-Z-B25(1)
USY:USY型ゼオライト、N.E.Chemcat社製
MoO3:和光純薬工業(株)製
γ-Al2O3:AC-11、住友化学(株)製
MgO:宇部興産(株)製
【0088】
表2より、実施例で得られた触媒を使用してラクトンを水素化すれば、対応するポリオールを90%以上の選択率で製造できることがわかる。
一方、実施例で得られた触媒に代えて比較例で得られた触媒を使用した場合は、前記ポリオールの選択率が顕著に低下した。
【0089】
実施例10,11(参考例とする)
反応時間を下記表に記載の通りに変更した以外は実施例8と同様に行った。結果を下記表3にまとめて示す。
【0090】
実施例12,13(参考例とする)
反応時間を下記表に記載の通りに変更した以外は実施例9と同様に行った。結果を下記表3にまとめて示す。
【0091】
比較例8,9
反応時間を下記表に記載の通りに変更した以外は比較例1と同様に行った。結果を下記表3にまとめて示す。
【0092】
比較例10,11
反応時間を下記表に記載の通りに変更した以外は比較例2と同様に行った。結果を下記表3にまとめて示す。
【0093】
【0094】
表3より、実施例で得られた触媒を使用した場合、反応時間を延長すると、対応するポリオールの選択率を低下させることなく、基質の転化率を向上させることができた。
一方、実施例で得られた触媒に代えて比較例で得られた触媒を使用した場合、反応時間を延長すれば基質の転化率は向上したが、前記ポリオールの選択率はかえって低下した。これは、比較例では、生成した1,4-ペンタンジオールの分子内脱水反応が触媒によって促進されて、2-メチルテトラヒドロフランが副生したためであった。
【0095】
実施例14(参考例とする)(触媒の調製:逐次含浸法)
(NH4)6Mo7O24・4H2O 0.088gを水50mLに溶解して得られた溶液(1)を得た。
室温(25℃)条件下で、ZrO2 1gを、溶液(1)中に4時間浸漬し、その後、溶液(1)から取り出して、ロータリーエバポレーターにて減圧下で水を留去した。これにより粉末を得た。その後、得られた粉末を空気雰囲気下、マッフル炉にて500℃で3時間焼成した。これにより、Mo/ZrO2を得た。
H2PtCl6 0.0898gを水50mLに溶解して得られた溶液(2)を得た。
室温(25℃)条件下で、得られたMo/ZrO2を溶液(2)に4時間浸漬し、その後、溶液(2)から取り出して、ロータリーエバポレーターにて減圧下で水を留去した。これにより粉末を得た。その後、得られた粉末を空気雰囲気下、マッフル炉にて500℃で3時間焼成した。これにより、触媒[Pt/Mo/ZrO2、Pt担持量:4重量%、Mo担持量:0.485重量%、Mo/Pt(モル比)=0.25]を得た。
【0096】
実施例15(参考例とする)
実施例14で得られた触媒を使用した以外は実施例9と同様に行った。結果を下記表4にまとめて示す。
【0097】
比較例12,13
触媒を下記表に記載の通りに変更した以外は実施例9と同様に行った。結果を下記表4にまとめて示す。
【0098】
【0099】
実施例16~18(触媒の調製:逐次含浸法)
溶液(1)中の(NH4)6Mo7O24・4H2O濃度を変更した以外は実施例14と同様にして、触媒[Pt/Mo/ZrO2、Pt担持量:4重量%]を得た。
【0100】
得られた触媒を使用した以外は実施例15と同様に行った。結果を下記表5にまとめて示す。
【0101】
【0102】
実施例19(触媒の調製:共含浸法)
(NH4)6Mo7O24・4H2の使用量を変更した以外は実施例1と同様にして、触媒[Pt-Mo/ZrO2、Pt担持量:4重量%、Mo担持量:0.75重量%、Mo/Pt(モル比)=0.375]を得た。
【0103】
実施例20~22
基質としてγ-ブチロラクトン1ミリモルを使用し、触媒として実施例16で得られた触媒[Pt/Mo/ZrO2、Pt担持量:4重量%、Mo担持量:0.75重量%、Mo/Pt(モル比)=0.375]又は実施例19で得られた触媒[Pt-Mo/ZrO2、Pt担持量:4重量%、Mo担持量:0.75重量%、Mo/Pt(モル比)=0.375]を使用し、且つ反応時間を下記表に記載の通りに変更した以外は実施例2と同様に行った。結果を下記表6にまとめて示す。
【0104】
【0105】
実施例23~25
基質としてε-カプロラクトン1ミリモルを使用し、触媒として実施例16で得られた触媒[Pt/Mo/ZrO2、Pt担持量:4重量%、Mo担持量:0.75重量%、Mo/Pt(モル比)=0.375]又は実施例19で得られた触媒[Pt-Mo/ZrO2、Pt担持量:4重量%、Mo担持量:0.75重量%、Mo/Pt(モル比)=0.375]を使用し、且つ反応時間を下記表に記載の通りに変更した以外は実施例2と同様に行った。結果を下記表7にまとめて示す。
【0106】
【0107】
表6,7より、逐次含浸法で得られた触媒は、共含浸法で得られた触媒に比べて高活性を有することがわかった。また、逐次含浸法で得られた触媒を使用すれば、共含浸法で得られた触媒を使用する場合よりも短時間でラクトンを水素化することができることがわかった。
【0108】
以上のまとめとして、本発明の構成及びそのバリエーションを以下に付記する。
[1] 下記触媒の存在下で、基質としての式(1)で表されるラクトンを水素化して、式(2)で表されるアルコールを製造するアルコールの製造方法。
触媒:金属種として下記M1とM2が、下記担体に担持されてなる触媒
(M1)ロジウム、白金、ルテニウム、イリジウム、又はパラジウム
(M2)スズ、バナジウム、モリブデン、タングステン、又はレニウム
(担体)ハイドロキシアパタイト、フルオロアパタイト、ハイドロタルサイト、又はZrO2
[2] M1の担持量(金属換算)が担体の重量の1~50重量%である、[1]に記載のアルコールの製造方法。
[3] M2の担持量(金属換算)が担体の重量の0.01~20重量%である、[1]又は[2]に記載のアルコールの製造方法。
[4] 触媒が、金属種としてM1とM2を、M11モルに対してM2を0.05~1モルの割合で含有する、[1]~[3]の何れか1つに記載のアルコールの製造方法。
[5] M1とM2以外の金属種の担持量が、M1とM2の合計担持量の70モル%以下である、[1]~[4]の何れか1つに記載のアルコールの製造方法。
[6] M1が白金、ルテニウム、イリジウム、又はパラジウムである、[1]~[5]の何れか1つに記載のアルコールの製造方法。
[7] M1が白金、ルテニウム、又はイリジウムである、[1]~[5]の何れか1つに記載のアルコールの製造方法。
[8] M1が白金、ルテニウム、又はパラジウムである、[1]~[5]の何れか1つに記載のアルコールの製造方法。
[9] M1が白金、イリジウム、又はパラジウムである、[1]~[5]の何れか1つに記載のアルコールの製造方法。
[10] M1が白金又はパラジウムである、[1]~[5]の何れか1つに記載のアルコールの製造方法。
[11] M1が白金又はイリジウムである、[1]~[5]の何れか1つに記載のアルコールの製造方法。
[12] M2がバナジウム、モリブデン、タングステン、又はレニウムである、[1]~[11]の何れか1つに記載のアルコールの製造方法。
[13] M2がバナジウム、モリブデン、又はタングステンである、[1]~[11]の何れか1つに記載のアルコールの製造方法。
[14] M2がモリブデン、タングステン、又はレニウムである、[1]~[11]の何れか1つに記載のアルコールの製造方法。
[15] M2がバナジウム、モリブデン、又はレニウムである、[1]~[11]の何れか1つに記載のアルコールの製造方法。
[16] M2がモリブデン又はタングステンである、[1]~[11]の何れか1つに記載のアルコールの製造方法。
[17] 担体がハイドロキシアパタイト又はフルオロアパタイトである、[1]~[16]の何れか1つに記載のアルコールの製造方法。
[18] 担体がハイドロキシアパタイト又はハイドロタルサイトである、[1]~[16]の何れか1つに記載のアルコールの製造方法。
[19] 担体がハイドロキシアパタイトである、[1]~[16]の何れか1つに記載のアルコールの製造方法。
[20] 担体がZrO2である、[1]~[16]の何れか1つに記載のアルコールの製造方法。
[21] 上記式(1)中のRが2価の脂肪族炭化水素基である、[1]~[20]の何れか1つに記載のアルコールの製造方法。
[22] 上記式(1)で表されるラクトンが3~12員環のラクトンである、[1]~[20]の何れか1つに記載のアルコールの製造方法。
[23] 上記式(1)で表されるラクトンが3員環ラクトン又は4員環ラクトン又は6員環ラクトンである、[1]~[20]の何れか1つに記載のアルコールの製造方法。
[24] 触媒の使用量(M1金属換算)が、基質の0.01~30モル%である、[1]~[23]の何れか1つに記載のアルコールの製造方法。
[25] 水の存在下で水素化反応を行う[1]~[24]の何れか1つに記載のアルコールの製造方法。
[26] 有機溶媒の使用量が、水の使用量の50重量%以下である、[1]~[25]の何れか1つに記載のアルコールの製造方法。
[27] 上記式(1)で表されるラクトンの転化率が90%以上となった時点での、反応生成物全量における、上記式(2)で表されるアルコールの選択率が70%以上である、[1]~[26]の何れか1つに記載のアルコールの製造方法。
[28] 金属種として下記M1とM2が下記担体に担持されてなる、ラクトンを水素化して、対応するアルコールを得るのに使用されるラクトンの水素化触媒。
(M1)ロジウム、白金、ルテニウム、イリジウム、又はパラジウム
(M2)スズ、バナジウム、モリブデン、タングステン、又はレニウム
(担体)ハイドロキシアパタイト、フルオロアパタイト、ハイドロタルサイト、又はZrO2
[29] 下記金属種M1とM2を下記担体に担持して、ラクトンを水素化して対応するアルコールを得るのに使用される触媒を製造する、触媒の製造方法。
(M1)ロジウム、白金、ルテニウム、イリジウム、又はパラジウム
(M2)スズ、バナジウム、モリブデン、タングステン、又はレニウム
(担体)ハイドロキシアパタイト、フルオロアパタイト、ハイドロタルサイト、又はZrO2
[30] 金属種として下記M1とM2が下記担体に担持されてなる触媒の、ラクトンを水素化して対応するアルコールを得る用途への使用。
(M1)ロジウム、白金、ルテニウム、イリジウム、又はパラジウム
(M2)スズ、バナジウム、モリブデン、タングステン、又はレニウム
(担体)ハイドロキシアパタイト、フルオロアパタイト、ハイドロタルサイト、又はZrO2
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明の製造方法によれば、ラクトンから、環境に優しい水を溶媒として使用して、温和な条件下、ワンステップで、効率よく且つ選択的にアルコールを製造することができる。従って、本発明の製造方法は工業的にアルコールを製造する方法として有用である。