(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-08
(45)【発行日】2023-12-18
(54)【発明の名称】リチウム二次電池用正極活物質の製造方法および前記方法により製造されたリチウム二次電池用正極活物質
(51)【国際特許分類】
H01M 4/525 20100101AFI20231211BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20231211BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20231211BHJP
【FI】
H01M4/525
H01M4/36 C
H01M4/505
H01M4/36 A
(21)【出願番号】P 2021562865
(86)(22)【出願日】2020-11-27
(86)【国際出願番号】 KR2020017079
(87)【国際公開番号】W WO2021107684
(87)【国際公開日】2021-06-03
【審査請求日】2021-10-21
(31)【優先権主張番号】10-2019-0155170
(32)【優先日】2019-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ノ・ウ・カク
(72)【発明者】
【氏名】ヒュク・イ
(72)【発明者】
【氏名】ドゥク・ギュン・モク
(72)【発明者】
【氏名】ミン・ヒ・ソン
【審査官】儀同 孝信
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-206679(JP,A)
【文献】特表2015-536558(JP,A)
【文献】特開2018-014326(JP,A)
【文献】特開2020-031052(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/525
H01M 4/36
H01M 4/505
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次粒子が凝集した二次粒子形態のリチウム遷移金属酸化物と、ジルコニウム含有原料物質と、Bi
2O
3、Sb
2O
3、Li
2O、LiOH・H
2O、Co
2O
3およびNiOからなる群から選択される1種以上の焼結助剤とを混合して混合物を形成するステップと、
前記混合物を熱処理し、前記リチウム遷移金属酸化物の二次粒子の表面および内部に位置する一次粒子間の界面にジルコニウムを含むコーティング膜を形成するステップと、を含む、正極活物質の製造方法。
【請求項2】
前記ジルコニウム含有原料物質は、ZrO
2、Zr(OH)
4、Zr
1-xA
xO
2(AはY、Ce、およびScからなる群から選択される1つ以上の元素であり、0≦x≦0.99である)、およびZrH
2からなる群から選択される1種以上である、請求項1に記載の正極活物質の製造方法。
【請求項3】
前記ジルコニウム含有原料物質は、正極活物質の総重量に対して、ジルコニウムの含量が50~50,000ppmになるようにする量で混合される、請求項1または2に記載の正極活物質の製造方法。
【請求項4】
前記焼結助剤は、ジルコニウム含有原料物質1モル当たりに0.01モル~1モルの量で混合される、請求項1から3のいずれか一項に記載の正極活物質の製造方法。
【請求項5】
前記熱処理は300℃~1,000℃で行われる、請求項1から4のいずれか一項に記載の正極活物質の製造方法。
【請求項6】
前記二次粒子の表面および内部に位置する一次粒子間の界面にジルコニウムを含むコーティング膜が形成されたリチウム遷移金属酸化物を水洗する第3ステップをさらに含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の正極活物質の製造方法。
【請求項7】
前記二次粒子の表面および内部に位置する一次粒子間の界面にジルコニウムを含むコーティング膜が形成されたリチウム遷移金属酸化物の表面に、B、Li、Al、F、W、Mo、Ti、およびNbからなる群から選択される1種以上のコーティング元素を含むコーティング層を形成するステップをさらに含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の正極活物質の製造方法。
【請求項8】
一次粒子が凝集してなる二次粒子形態のリチウム遷移金属酸化物を含み、
前記リチウム遷移金属酸化物の二次粒子の表面および内部に位置する一次粒子間の界面にジルコニウムを含むコーティング膜が形成されていて、
前記リチウム遷移金属酸化物に含まれたジルコニウム全体中の
12原子%~
17原子%のジルコニウムが、前記リチウム遷移金属酸化物の二次粒子の内部に分布し、
前記リチウム遷移金属酸化物の二次粒子の内部が、前記リチウム遷移金属酸化物の二次粒子の半径をRμmとする際、前記リチウム遷移金属酸化物の中心から(R-1)μmの距離にある領域である、正極活物質。
【請求項9】
前記正極活物質は、ジルコニウムを、正極活物質の総重量を基準に50~50,000ppmの量で含む、請求項8に記載の正極活物質。
【請求項10】
前記リチウム遷移金属酸化物の二次粒子の内部にBi、Sb、Li、Ni、およびCoからなる群から選択される1種以上の元素が含まれる、請求項8または9に記載の正極活物質。
【請求項11】
前記リチウム遷移金属酸化物は、下記[化学式1]で表され、
[化学式1]
Li
aNi
xCo
yM
1
zM
2
wO
2
前記化学式1中、
M
1はMn、Al、またはこれらの組み合わせであり、
M
2はW、Cu、Fe、V、Cr、Ti、Zr、Zn、Al、In、Ta、Y、La、Sr、Ga、Sc、Gd、Sm、Ca、Ce、Nb、Mg、B、およびMoからなる群から選択される1種以上であり、0.8≦a≦1.2、0<x<1、0<y<1、0<z<1、0≦w≦0.1である、請求項8から10のいずれか一項に記載の正極活物質。
【請求項12】
前記リチウム遷移金属酸化物の二次粒子の表面に形成され、B、Li、Al、F、W、Mo、Ti、およびNbからなる群から選択される1種以上のコーティング元素を含むコーティング層をさらに含む、請求項8から11のいずれか一項に記載の正極活物質。
【請求項13】
請求項8から12のいずれか一項に記載の正極活物質を含むリチウム二次電池用正極。
【請求項14】
請求項13に記載のリチウム二次電池用正極を含むリチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2019年11月28日付けの韓国特許出願第10-2019-0155170号に基づく優先権の利益を主張し、該当韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は、本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、リチウム二次電池用正極活物質の製造方法、前記製造方法により製造された正極活物質、前記正極活物質を含むリチウム二次電池用正極、およびリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0003】
モバイル機器に対する技術開発と需要が増加するにつれて、エネルギー源として二次電池の需要が急激に増加している。かかる二次電池の中でも、高いエネルギー密度および電圧を有し、サイクル寿命が長く、自己放電率が低いリチウム二次電池が商用化されて広く用いられている。
【0004】
リチウム二次電池の正極活物質としては、リチウム遷移金属酸化物が用いられており、中でも、作動電圧が高く、容量特性に優れたLiCoO2のリチウムコバルト酸化物が主に用いられた。しかし、LiCoO2は、脱リチウムに応じた結晶構造の不安定化により熱的特性が非常に劣悪であり、また高価であるため、電気自動車などのような分野の動力源として大量使用するには限界がある。
【0005】
前記LiCoO2を代替するための材料として、リチウムマンガン複合金属酸化物(LiMnO2またはLiMn2O4など)、リチウムリン酸鉄化合物(LiFePO4など)、またはリチウムニッケル複合金属酸化物(LiNiO2など)などが開発された。中でも、約200mAh/gの高い可逆容量を持って大容量の電池の実現が容易なリチウムニッケル複合金属酸化物に対する研究開発がさらに活発に行われている。しかし、前記LiNiO2は、LiCoO2に比べて熱安定性が劣り、充電状態で外部からの圧力などにより内部短絡が発生すると、正極活物質それ自体が分解されて電池の破裂および発火を招くという問題があった。そこで、LiNiO2の優れた可逆容量は維持しながらも低い熱安定性を改善するための方法として、ニッケルの一部をコバルトに置換したLiNi1-αCoαO2(α=0.1~0.3)、または、ニッケルの一部をMn、Co、またはAlに置換したリチウムニッケルコバルト金属酸化物が開発された。
【0006】
しかしながら、かかる正極活物質の場合、充放電を繰り返すことで、リチウムイオンの挿入および/または脱離によって単位格子内の体積変化を経るようになり、かかる体積変化は、正極活物質内部の一次粒子間の界面に沿ってクラック(crack)をもたらし、クラックは、正極活物質の導電性を低減するボイド(void)として作用するかまたは微粉の発生を増加させ、充放電時に容量特性および抵抗特性の劣化を誘発するようになる。
【0007】
これを克服するために、従来は、非遷移金属元素をリチウム遷移金属酸化物の格子内部にドープするか、または正極活物質粒子の表面にコーティングすることで、正極活物質の物性を改善する方法が提案された。しかし、従来のドープまたはコーティングによっては、クラックおよび/または微粉の発生を十分に抑制し難いという問題がある。また、ドープの場合、非遷移金属元素がリチウム遷移金属酸化物の結晶格子の遷移金属サイトに置換されるため、容量特性が低下するという問題もある。
したがって、容量低下を最小化しながらもクラックおよび微粉の発生を抑制可能な正極活物質に対する開発が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記のような問題を解決するためのものであり、正極活物質の二次粒子の表面および二次粒子の内部に存在する一次粒子間の界面を同時にコーティングすることができる、正極活物質の製造方法およびそれにより製造された正極活物質を提供する。
【0009】
また、本発明は、前記正極活物質を含むリチウム二次電池用正極およびそれを含むリチウム二次電池を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一側面において、本発明は、一次粒子が凝集した二次粒子形態のリチウム遷移金属酸化物、ジルコニウム含有原料物質、およびBi2O3、Sb2O3、Li2O、LiOH・H2O、Co2O3、およびNiOからなる群から選択される1種以上の焼結助剤(sintering aid)を混合して混合物を形成する第1ステップと、前記混合物を熱処理し、前記リチウム遷移金属酸化物の二次粒子の表面および前記二次粒子の内部に位置する一次粒子間の界面にジルコニウムを含むコーティング膜を形成する第2ステップと、を含む、正極活物質の製造方法を提供する。
【0011】
他の側面において、本発明は、一次粒子が凝集してなる二次粒子形態のリチウム遷移金属酸化物を含み、前記リチウム遷移金属酸化物の二次粒子の表面および前記二次粒子の内部に位置する一次粒子間の界面にジルコニウムを含むコーティング膜が形成された正極活物質を提供する。
【0012】
また他の側面において、本発明は、前記正極活物質を含むリチウム二次電池用正極およびそれを含むリチウム二次電池を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る正極活物質の製造方法は、二次粒子形態のリチウム遷移金属酸化物にジルコニウム原料物質および焼結助剤(sintering aid)をともに混合し熱処理してコーティング層を形成する。本発明のように、ジルコニウム原料物質および焼結助剤をともに熱処理すると、焼結助剤によりリチウム遷移金属酸化物とジルコニウム原料物質との間に液相(liquid phase)が形成されるようになって、ジルコニウム原料物質がリチウム遷移金属酸化物表面の一次粒子間の界面である外部界面に移動し、熱処理過程で、前記外部界面から、リチウム遷移金属酸化物粒子内部の一次粒子間の界面が内部界面にジルコニウムが拡散する。これにより、本発明の製造方法によると、リチウム遷移金属酸化物の二次粒子の表面だけでなく、二次粒子の内部に存在する一次粒子間の界面(内部界面)にジルコニウムを含むコーティング膜を形成することができる。
【0014】
本発明のように、正極活物質の二次粒子の表面および二次粒子の内部に存在する一次粒子間の内部界面の何れにもジルコニウムを含むコーティング膜が形成される場合、充放電時に正極活物質のクラック(Crack)および/または微粉が発生するのを効果的に抑制することができる。また、本発明の正極活物質は、ジルコニウムがリチウム遷移金属酸化物の結晶格子内に存在するのではなく、一次粒子の表面にコーティングされるため、ジルコニウムの導入に応じた容量低下を最小化することができる。よって、本発明の正極活物質を二次電池に適用すると、優れた容量特性および寿命特性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】従来のコーティング工程と本発明に係るコーティング工程との差異点を説明するための図である。
【
図2】本発明に係る熱処理時に発生する液相形成工程を説明するための図である。
【
図3】実施例1で製造した正極活物質の表面SEM写真である。
【
図4】比較例2で製造した正極活物質の表面SEM写真である。
【
図5】実施例1および比較例2で製造した正極活物質粉末の9トン加圧後の粒度分布を示すグラフである。
【
図6】実施例2および比較例2で製造した正極活物質粉末の9トン加圧後の粒度分布を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明をより詳細に説明する。
本明細書および請求の範囲で用いられている用語や単語は、通常的もしくは辞書的な意味に限定して解釈してはならず、発明者らは、自分の発明を最善の方法で説明するために、用語の概念を適切に定義することができるという原則に則って、本発明の技術的思想に合致する意味と概念で解釈すべきである。
【0017】
本発明において、「一次粒子」は、走査型電子顕微鏡(SEM)を介して正極活物質の断面を観察した際、1つの塊りとして区別される最小粒子単位を意味し、1個の結晶粒からなってもよく、複数個の結晶粒からなってもよい。前記一次粒子の平均粒径は、正極活物質粒子の断面SEMイメージにおいて区別されるそれぞれの粒子サイズを測定する方法により測定されることができる。
【0018】
本発明において、「二次粒子」は、複数個の一次粒子が凝集して形成される二次構造体を意味する。前記二次粒子の平均粒径は、粒度分析器を用いて測定されることができ、本発明においては、粒度分析器としてMicrotrac社のs3500を用いた。
【0019】
本発明において、「粒径Dn」は、粒径に応じた面積の累積分布のn%地点での粒径を意味する。すなわち、D50は、粒径に応じた面積の累積分布の50%地点での粒径であり、D90は、粒径に応じた面積の累積分布の90%地点での粒径であり、D10は、粒径に応じた面積の累積分布の10%地点での粒径である。前記Dnは、レーザ回折法(laser diffraction method)を用いて測定することができる。具体的に、測定対象粉末を分散媒中に分散させた後、市販中のレーザ回折粒度測定装置(例えば、Microtrac S3500)に導入し、粒子がレーザビームを通過する際、粒子サイズに応じた回折パターン差を測定して粒度分布を算出する。測定装置における粒径に応じた面積の累積分布の10%、50%、および90%となる地点での粒子直径を算出することで、D10、D50、およびD90を測定することができる。
【0020】
本発明においては、「外部界面」は、二次粒子の表面に露出された一次粒子と一次粒子との間の界面を意味し、「内部界面」は、二次粒子内部の一次粒子と一次粒子との間の界面を意味する。
【0021】
正極活物質の製造方法
本発明者らは、正極活物質の安定性を改善するために研究を重ねた結果、正極活物質粒子の表面および粒子の内部に存在する一次粒子間の界面にジルコニウムコーティング膜を形成することで、正極活物質の寿命特性および抵抗特性を改善できることを見出し、本発明を完成した。
【0022】
本発明に係る正極活物質の製造方法は、(1)リチウム遷移金属酸化物、ジルコニウム含有原料物質、および焼結助剤を混合して混合物を形成するステップ(第1ステップ)と、(2)前記混合物を熱処理し、前記リチウム遷移金属酸化物の二次粒子の表面および前記二次粒子の内部に位置する一次粒子間の界面にジルコニウムを含むコーティング膜を形成するステップ(第2ステップ)と、を含む。
【0023】
以下、本発明に係る正極活物質の製造方法についてより具体的に説明する。
先ず、リチウム遷移金属酸化物とジルコニウム含有原料物質および焼結助剤(sintering aid)を混合して混合物を形成する(第1ステップ)。
【0024】
本発明に係るリチウム遷移金属酸化物は、一次粒子が凝集した二次粒子形態のリチウム遷移金属酸化物であり、充放電時にリチウムイオンの挿入または脱離が容易に起こるものであれば制限されずに用いられてもよい。
【0025】
例えば、前記リチウム遷移金属酸化物は、リチウムコバルト酸化物(LiCoO2)、リチウムニッケル酸化物(LiNiO2)などの層状化合物や、1またはそれ以上の遷移金属で置換された化合物;化学式Li1+y1Mn2-y1O4(0≦y1≦0.33)、LiMnO3、LiMn2O3、LiMnO2などのリチウムマンガン酸化物;リチウム銅酸化物(Li2CuO2);LiV3O8、LiFe3O4、V2O5、Cu2V2O7などのバナジウム酸化物;化学式LiNi1-y2My2O2(ここで、MはCo、Mn、Al、Cu、Fe、Mg、B、およびGaからなる群から選択された少なくとも1つ以上であり、0.01≦y2≦0.3である)で表されるNiサイト型リチウムニッケル酸化物;化学式LiMn2-y3My3O2(ここで、MはCo、Ni、Fe、Cr、Zn、およびTaからなる群から選択された少なくとも1つ以上であり、0.01≦y3≦0.1である)またはLiMn3MO8(ここで、MはFe、Co、Ni、Cu、およびZnからなる群から選択された少なくとも1つ以上である)で表されるリチウムマンガン複合酸化物;化学式のLiの一部がアルカリ土類金属イオンで置換されたLiMn2O4などであってもよい。
【0026】
好ましくは、本発明に係るリチウム遷移金属酸化物は、下記化学式1で表されてもよい。
[化学式1]
LiaNixCoyM1
zM2
wO2
【0027】
前記化学式1中、M1はMn、Al、またはこれらの組み合わせであり、M2はW、Cu、Fe、V、Cr、Ti、Zr、Zn、Al、In、Ta、Y、La、Sr、Ga、Sc、Gd、Sm、Ca、Ce、Nb、Mg、B、およびMoからなる群から選択される1種以上である。
【0028】
前記aは、リチウム遷移金属酸化物中のLiのモル比であって、0.8≦a≦1.2、0.85≦a≦1.15、または0.9≦a≦1.1であってもよい。
前記xは、リチウム遷移金属酸化物中のリチウムを除いた残りの金属中のNiのモル比であって、0<x<1、0.5≦x<1、0.6≦x<1、0.7≦x<1、0.8≦x<1、または0.85≦x<1であってもよい。
【0029】
前記yは、リチウム遷移金属酸化物中のリチウムを除いた残りの金属中のCoのモル比であって、0<y<1、0<y<0.50、0<y<0.40、0<y<0.30、0<y<0.20、または0<y<0.15であってもよい。
【0030】
前記zは、リチウム遷移金属酸化物中のリチウムを除いた残りの金属中のM1のモル比であって、0<z<1、0<z<0.50、0<z<0.40、0<z<0.30、0<z<0.20、または0<z<0.15であってもよい。
前記wは、リチウム遷移金属酸化物中のリチウムを除いた残りの金属中のM2のモル比であって、0≦w≦0.1、0≦w≦0.05、または0≦w≦0.02であってもよい。
【0031】
前記リチウム遷移金属酸化物は、市販中の正極活物質を購入して用いるか、または当該技術分野で周知の正極活物質の製造方法により製造されてもよい。
例えば、本発明に係るリチウム遷移金属酸化物は、遷移金属の原料物質を共沈反応させて遷移金属水酸化物を形成した後、それをリチウム原料物質と混合し焼成することで製造することができる。
【0032】
この際、前記リチウム原料物質としては、炭酸リチウム(Li2CO3)または水酸化リチウム(LiOH・H2O)などを用いてもよく、前記焼成は500℃~1,000℃、好ましくは700℃~1000℃で行われてもよい。前記焼成温度が500℃未満である場合には、リチウム原料物質と遷移金属水酸化物との十分な反応が起こらないし、1,000℃を超過する場合には、過焼成により、正極活物質が二次粒子形態ではなく単一粒子形態に製造され得る。
【0033】
一方、前記ジルコニウム含有原料物質としては、ジルコニウム(Zr)元素が含まれた物質であれば特に制限されずに用いてもよく、例えば、ZrO2、Zr(OH)4、Zr1-xAxO2(この際、AはY、Ce、およびScからなる群から選択される少なくとも何れか1つ以上の元素であり、0≦x≦0.99である)、およびZrH2からなる群から選択される1種以上を用いてもよい。
【0034】
前記ジルコニウム含有原料物質は、正極活物質の総重量に対してジルコニウムの含量が50~50,000ppm、好ましくは500~10,000ppm、より好ましくは1,000~6,000ppmになるように混合されてもよい。例えば、前記ジルコニウム含有原料物質の投入に応じた正極活物質に含まれるジルコニウムの含量が上述した範囲を超過する場合には、エネルギー密度の低下により、それを適用した二次電池容量が低下するかまたは抵抗を増加させ得るし、上述した範囲未満で含まれる場合には、ジルコニウムコーティングに応じた粒子強度の改善効果、クラックおよび/または微粉の抑制効果などが微々たるものであり得る。
【0035】
一方、前記焼結助剤は、リチウム遷移金属酸化物の内部界面にジルコニウムがコーティングされるようにするために添加されるものであり、Bi2O3、Sb2O3、Li2O、LiOH・H2O、Co2O3、およびNiOからなる群から選択される1種以上であってもよい。
【0036】
前記焼結助剤は、ジルコニウム含有原料物質1モル当たりに0.01モル~1モル、好ましくは0.05~0.5モルの含量で混合されてもよい。前記焼結助剤の含量が上述した範囲を超過する場合には、エネルギー密度の低下により、それを適用した二次電池容量が低下するかまたは抵抗を増加させ得るし、上述した範囲未満で含まれる場合には、外部界面および内部界面でのコーティング効果が低下し得る。
【0037】
次に、リチウム遷移金属酸化物、ジルコニウム含有原料物質、および焼結助剤の混合物を熱処理し、リチウム遷移金属酸化物の二次粒子の表面および前記二次粒子の内部に位置する一次粒子間の界面にジルコニウムを含むコーティング膜を形成する(第2ステップ)。
【0038】
前記熱処理は、例えば、300℃~1,000℃、好ましくは、前記熱処理は、500℃~800℃で行われてもよい。熱処理温度が前記範囲を満たす際、二次粒子の外部界面に存在するジルコニウム含有原料物質が前記外部界面を通して粒子の内部に拡散し、リチウム遷移金属酸化物の二次粒子表面の外部界面、および二次粒子内部の内部界面に、ジルコニウムが均一にコーティングされることができる。前記熱処理を300℃未満で行う場合には、ジルコニウム元素のコーティングが容易ではないため、正極活物質の製造後の水洗時、ジルコニウムが全て洗い落とされ得るし、1,000℃を超過する場合には、ジルコニウムがリチウム遷移金属酸化物の結晶格子の内部にドープされ得るし、リチウム遷移金属酸化物の結晶構造に変形が発生して容量特性が低下し得る。
【0039】
図1は、焼結助剤を用いる本発明のコーティング工程と焼結助剤を用いない従来のコーティング工程との差異点を説明する図であり、
図2は、本発明の方法により熱処理を行った際に発生する液相形成工程を説明する図である。
【0040】
図1および
図2を参照すると、焼結助剤を用いることなく、ジルコニウム含有原料物質およびリチウム遷移金属酸化物を混合した後に熱処理する従来のコーティング工程によると、
図1の(A)に示されたように、ジルコニウム含有原料物質がリチウム遷移金属酸化物の表面上にランダムに付着される。これに対し、本発明のように、焼結助剤の存在下で、ジルコニウム含有原料物質およびリチウム遷移金属酸化物を混合した後に熱処理を行うと、焼結助剤とジルコニウム含有原料物質とが反応し、
図2に示されたように、リチウム遷移金属酸化物とジルコニウム含有原料との間に反応性のある液相(liquid phase)が形成され、前記液相が正極活物質粒子とジルコニウム含有原料物質との接触点に集まるようになり、メニスカス(meniscus)を形成して圧縮圧を生成するようになる。前記圧縮圧により、
図1の(B)に示されたように、ジルコニウム含有原料物質がリチウム遷移金属酸化物の表面において、熱力学的にエネルギーが低い領域である一次粒子間の界面(外部界面)に移動して集まるようになり、熱処理過程で、前記外部界面に集まったジルコニウム含有原料物質中の一部は、二次粒子の表面に残って、外部界面にジルコニウムを含むコーティング膜を形成し、他の一部は、一次粒子間の界面に沿って二次粒子の内部に拡散し、二次粒子の内部界面にジルコニウムを含むコーティング膜を形成するようになる。
【0041】
この際、前記「メニスカス(meniscus)」は、毛細管内の液体表面が毛細管現象によって形成する曲面、すなわち、管壁に沿って周囲が中央に比べて上がるかまたは下がることによって生じた曲面を意味し、本発明においては、リチウム遷移金属酸化物と焼結助剤とが反応して生成された液相がリチウム遷移金属酸化物とジルコニウム含有原料物質との間で形成する曲面を意味する。
【0042】
一方、前記圧縮圧は、下記式1により計算することができ、正極活物質の製造時、温度、圧力、正極活物質のサイズなどに応じて適切に適用することができる。前記圧縮圧が大きいほど、前記ジルコニウム含有原料物質が、正極活物質粒子の外部表面において、熱力学的にエネルギーが低い外部界面に容易に移動することができる。
【0043】
[式1]
圧縮圧(ΔP)=-2γLV/r
前記式1中、γLVはメニスカスと周辺気体との間の表面エネルギーであり、rはメニスカス半径である。
【0044】
この際、前記メニスカス表面エネルギーは、静的接触角の測定方法から液滴を固体表面上に落とした後、停止した液滴と表面がなす角度を測定する方法から測定することができ、メニスカス半径は、形状分析法により直接測定することができる。
【0045】
上記のように、外部界面および内部界面にジルコニウムコーティング膜が形成されると、一次粒子間の界面でのクラック発生が抑制されてリチウム遷移金属酸化物粒子の強度が増加し、圧延や充放電中に正極活物質粒子の割れにより微粉が発生するのを効果的に抑制することができる。
【0046】
一方、本発明の正極活物質の製造方法は、必要に応じて、水洗ステップおよび/またはコーティング層形成ステップをさらに実施することができる。
例えば、本発明に係る正極活物質の製造方法は、前記2ステップの以後に、二次粒子の表面、および前記二次粒子の内部に位置する一次粒子間の界面にジルコニウムを含むコーティング膜が形成されたリチウム遷移金属酸化物を水洗するステップをさらに含むことができる。
【0047】
前記水洗ステップは、リチウム遷移金属酸化物の表面に存在する残留リチウムを除去するためのものであり、コーティング膜が形成されたリチウム遷移金属酸化物および水洗溶液を混合し撹拌する方法により行われてもよい。
【0048】
例えば、前記水洗ステップは、リチウム遷移金属酸化物と水洗溶液を1:0.5~1:2の重量比、好ましくは1:0.7~1:1.2の重量比で混合し、2~20分間撹拌して行われてもよい。リチウム遷移金属酸化物と水洗溶液の混合比が前記範囲を満たす際、リチウム遷移金属酸化物を損傷させることなく、残留リチウムを効果的に除去することができる。リチウム遷移金属酸化物に対する水洗溶液の混合量が少なすぎると、残留リチウムの除去が充分ではないためガスが発生し得るし、水洗溶液の混合量が多すぎると、リチウム遷移金属酸化物の表面欠陥が発生して寿命特性が低下し、抵抗が増加し得る。
【0049】
前記水洗溶液は、水またはエタノールのうち少なくとも1つ以上であってもよいが、これに限定されるものではない。好ましくは、前記水洗溶液として水を用いてもよく、この場合は、常温でリチウム副産物を十分に溶解し、前記リチウム遷移金属酸化物の表面に存在するリチウム副産物をさらに容易に除去することができる。
【0050】
また、本発明の正極活物質の製造方法は、前記2ステップの以後または前記水洗ステップの以後にコーティング層を形成するステップをさらに実施することができる。
前記コーティング層形成ステップは、前記二次粒子の表面および前記二次粒子の内部の一次粒子間の界面にジルコニウムを含むコーティング膜が形成されたリチウム遷移金属酸化物の表面に、B、Li、Al、F、W、Mo、Ti、およびNbからなる群から選択される1種以上のコーティング元素を含むコーティング層を形成してもよい。
【0051】
上記のように、リチウム遷移金属酸化物の表面にB、Li、Al、F、W、Mo、Ti、およびNbからなる群から選択される1種以上のコーティング元素を含むコーティング層をさらに形成する場合、前記コーティング層により電解液とリチウム遷移金属酸化物との接触が抑制され、遷移金属の溶出やガス発生などを抑制するという効果を得ることができる。
【0052】
具体的には、前記コーティング層形成ステップは、ジルコニウムを含むコーティング膜が形成されたリチウム遷移金属酸化物とコーティング元素(M)含有原料物質とを混合した後、熱処理する方法により行われてもよい。
【0053】
この際、前記コーティング元素(M)は、B、Li、Al、F、W、Mo、Ti、およびNbからなる群から選択される1種以上であってもよく、前記コーティング元素(M)含有原料物質は、前記コーティング元素(M)の酢酸塩、硫酸塩、炭酸塩、硝酸塩、水酸化物、酸化物、またはハロゲン化物などであってもよい。例えば、前記コーティング元素(M)含有原料物質は、ホウ酸、酸化アルミニウム、酸化タングステンなどであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0054】
一方、前記コーティング元素(M)含有原料物質は、正極活物質の総重量を基準に、コーティング元素(M)の含量が50~5,000ppm、好ましくは50~2,000ppmになるようにする量で混合されることが好ましい。コーティング元素の含量が高すぎると、コーティング層が過度に厚く形成されて容量特性および抵抗特性などに悪影響を及ぼし得るし、コーティング元素の含量が少なすぎると、電解液の遮断効果が微々たるものである。
【0055】
一方、前記コーティング層の形成のための熱処理は200℃~700℃、好ましくは250℃~500℃、より好ましくは300℃~500℃の温度範囲で行われてもよい。熱処理温度が前記範囲を満たす際、リチウム遷移金属酸化物の物性を低下させることなく、コーティング層を円滑に形成することができる。熱処理温度が高すぎると、リチウム遷移金属酸化物の結晶構造の変形が発生して正極活物質の物性低下が発生し得るし、低すぎると、コーティング層がろくに形成され得ない。
【0056】
正極活物質
次に、本発明に係る正極活物質を説明する。
本発明に係る正極活物質は、上述した本発明の製造方法により製造された正極活物質であり、外部界面および内部界面にジルコニウムを含むコーティング膜が形成されたリチウム遷移金属酸化物を含む正極活物質である。
【0057】
具体的には、本発明の正極活物質は、一次粒子が凝集してなる二次粒子形態のリチウム遷移金属酸化物を含み、この際、前記リチウム遷移金属酸化物の二次粒子の表面および内部に位置する一次粒子間の界面にジルコニウムを含むコーティング膜が形成される。
【0058】
前記リチウム遷移金属酸化物は、一次粒子が凝集した二次粒子形態のリチウム遷移金属酸化物であり、これに限定されるものではないが、例えば、下記[化学式1]で表されるリチウム遷移金属酸化物であってもよい。
【0059】
[化学式1]
LiaNixCoyM1
zM2
wO2
前記化学式1中、M1、M2、a、x、y、z、wの定義は上述したものと同様である。
【0060】
前記リチウム遷移金属酸化物は、一次粒子が複数個凝集してなる二次粒子の形態であり、この際、前記一次粒子は、平均粒径が100nm~5μm、好ましくは300nm~3μm、より好ましくは500nm~3μmの程度であり、前記二次粒子は、平均粒径D50が3μm~20μm、好ましくは4μm~15μmの程度であってもよい。
【0061】
一次粒子の平均粒径が前記範囲を満たす際、一次粒子間の界面にジルコニウムコーティング膜が円滑に形成され、二次粒子の平均粒径が前記範囲を満たす際、容量特性および抵抗特性に優れた正極活物質を得ることができる。二次粒子の平均粒径が大きすぎると、容量低下および抵抗増加が発生し得るし、小さすぎると、正極スラリーの製造時にゲル化が発生し得る。
【0062】
一方、本発明に係る正極活物質は、ジルコニウムを正極活物質の総重量を基準に50~50,000ppm、好ましくは500~10,000ppm、より好ましくは1,000~6,000ppmの量で含んでもよい。正極活物質中のジルコニウムの含量が前記範囲を満たす際、リチウム遷移金属酸化物の二次粒子の表面および内部界面にコーティング膜が適切に形成され、正極活物質の物性低下を最小化しつつ、圧延や充放電時にクラックおよび/または微粉が発生するのを効果的に抑制することができる。
【0063】
また、本発明に係る正極活物質において、リチウム遷移金属酸化物の二次粒子の内部領域に含まれたジルコニウムの量は、リチウム遷移金属酸化物にコーティングされたジルコニウム全体の量を基準に1~50atm(原子)%、好ましくは5~30atm(原子)%の程度であることが好ましい。二次粒子の内部領域にコーティングされたジルコニウムの量が前記範囲を満たす際、優れたクラックおよび/または微粉の発生抑制効果を示す。
【0064】
この際、前記リチウム遷移金属酸化物の二次粒子の内部領域は、リチウム遷移金属酸化物の二次粒子の半径をRμmとする際、リチウム遷移金属酸化物の中心から(R-1)μmの距離にある領域を意味する。
【0065】
また、本発明に係る正極活物質は、前記リチウム遷移金属酸化物の二次粒子の内部に、焼結助剤に由来した元素であるBi、Sb、Li、Ni、およびCoからなる群から選択される1種以上の元素を含むことができる。本発明の方法によると、焼結助剤とジルコニウム含有原料物質とが反応して液相を形成し、前記液相に含まれる焼結助剤の元素が熱処理時に一次粒子の界面に沿って粒子の内部に浸透することができる。これにより、本発明の製造方法により製造された本発明の正極活物質は、リチウム遷移金属酸化物の二次粒子の内部に、焼結助剤に由来した元素であるBi、Sb、Li、Ni、およびCoからなる群から選択される1種以上の元素が含まれてもよい。
【0066】
一方、本発明に係る正極活物質は、リチウム遷移金属酸化物の表面にコーティング層をさらに含むことができる。
前記コーティング層は、リチウム遷移金属酸化物の二次粒子の表面に形成され、B、Li、Al、F、W、Mo、Ti、およびNbからなる群から選択される1種以上のコーティング元素(M)を含んでもよい。
【0067】
前記コーティング元素は、正極活物質の総重量を基準に50~5,000ppm、好ましくは、50~2,000ppmの量で含まれてもよい。コーティング元素の含量が高すぎると、コーティング層が過度に厚く形成されて容量特性および抵抗特性などに悪影響を及ぼし得るし、コーティング元素の含量が少なすぎると、電解液の遮断効果が微々たるものである。
【0068】
上記のように、リチウム遷移金属酸化物の表面にB、Li、Al、F、W、Mo、Ti、およびNbからなる群から選択される1種以上のコーティング元素を含むコーティング層を含む場合、前記コーティング層により電解液とリチウム遷移金属酸化物との接触が抑制され、遷移金属の溶出やガス発生などを抑制するという効果を得ることができる。
【0069】
正極
次に、本発明に係る正極について説明する。
本発明に係る正極は、本発明に係る正極活物質を含む。
【0070】
具体的に、前記正極は、正極集電体、および前記正極集電体の少なくとも一面に位置し、前記本発明の正極活物質を含む正極活物質層を含む。正極活物質は上記したものと同様であるため、以下では正極活物質を除いた残りの構成について説明する。
【0071】
前記正極集電体は、電池に化学的変化を誘発せず且つ導電性を有したものであれば特に制限されず、例えば、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、またはアルミニウムやステンレススチールの表面に炭素、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したものが用いられてもよい。また、前記正極集電体は通常3~500μmの厚さを有してもよく、前記集電体の表面上に微細な凹凸を形成して正極活物質の接着力を高めてもよい。例えば、フィルム、シート、箔、網、多孔質体、発泡体、不織布体などの多様な形態で用いられてもよい。
【0072】
前記正極活物質層は、前記正極活物質とともに、導電材およびバインダーを含むことができる。
この際、前記正極活物質は、正極活物質層の総重量に対して80~99重量%、より具体的には85~98重量%の含量で含まれてもよい。上記した含量範囲で含まれる際、優れた容量特性を示すことができる。
【0073】
この際、前記導電材は、電極に導電性を付与するために用いられるものであり、構成される電池において、化学変化を引き起こさず電子伝導性を有するものであれば特に制限されずに使用可能である。具体的な例としては、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック、炭素繊維などの炭素系物質;銅、ニッケル、アルミニウム、銀などの金属粉末または金属繊維;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;またはポリフェニレン誘導体などの導電性高分子などが挙げられ、この中の1種の単独または2種以上の混合物が用いられてもよい。前記導電材は、正極活物質層の総重量に対して1~30重量%で含まれてもよい。
【0074】
前記バインダーは、正極活物質粒子間の付着および正極活物質と集電体との接着力を向上させる役割をする。具体的な例としては、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ビニリデンフルオライド‐ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVDF‐co‐HFP)、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン‐プロピレン‐ジエンポリマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、またはこれらの多様な共重合体などが挙げられ、この中の1種の単独または2種以上の混合物が用いられてもよい。前記バインダーは、正極活物質層の総重量に対して1~30重量%で含まれてもよい。
【0075】
前記正極は、上記した正極活物質を用いることを除いては、通常の正極製造方法により製造されてもよい。具体的に、上記した正極活物質、および選択的に、バインダーおよび導電材を溶媒中に溶解または分散させて製造した正極合材を正極集電体上に塗布した後、乾燥および圧延することで製造されてもよい。この際、前記正極活物質、バインダー、導電材の種類および含量は前述したとおりである。
【0076】
前記溶媒としては、当該技術分野で一般的に用いられる溶媒であってもよく、ジメチルスルホキシド(dimethyl sulfoxide、DMSO)、イソプロピルアルコール(isopropyl alcohol)、N‐メチルピロリドン(NMP)、アセトン(acetone)、または水などが挙げられ、この中の1種の単独または2種以上の混合物が用いられてもよい。前記溶媒の使用量は、スラリーの塗布厚さ、製造収率を考慮して、前記正極活物質、導電材、およびバインダーを溶解または分散させ、その後、正極製造のための塗布時に優れた厚さ均一度を示すことができる粘度を有するようにする程度であれば充分である。
【0077】
また、他の方法として、前記正極は、前記正極合材を別の支持体上にキャスティングした後、該支持体から剥離して得たフィルムを正極集電体上にラミネートすることで製造されてもよい。
【0078】
リチウム二次電池
上述した本発明に係る正極は、電気化学素子に適用されて有用に用いられることができる。前記電気化学素子は、具体的には電池、キャパシタなどであってもよく、より具体的にはリチウム二次電池であってもよい。
【0079】
前記リチウム二次電池は、具体的に、正極、前記正極と対向して位置する負極、前記正極と負極との間に介在するセパレータ、および電解質を含み、前記正極は前述したものと同様であるため、具体的な説明は省略し、以下では残りの構成についてのみ具体的に説明する。
【0080】
また、前記リチウム二次電池は、前記正極、負極、セパレータの電極組立体を収納する電池容器、および前記電池容器を密封する密封部材を選択的にさらに含むことができる。
【0081】
前記リチウム二次電池において、前記負極は、負極集電体、および前記負極集電体上に位置する負極活物質層を含む。
前記負極集電体は、電池に化学的変化を誘発せず且つ高い導電性を有するものであれば特に制限されず、例えば、銅、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、銅やステンレススチールの表面に炭素、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したもの、アルミニウム‐カドミウム合金などが用いられてもよい。また、前記負極集電体は通常3μm~500μmの厚さを有してもよく、正極集電体と同様に、前記集電体の表面に微細な凹凸を形成して負極活物質の結合力を強化させてもよい。例えば、フィルム、シート、箔、網、多孔質体、発泡体、不織布体などの多様な形態で用いられてもよい。
【0082】
前記負極活物質層は、負極活物質とともに選択的にバインダーおよび導電材を含む。
前記負極活物質としては、リチウムの可逆的なインターカレーションおよびデインターカレーションが可能な化合物が用いられてもよい。具体的な例としては、人造黒鉛、天然黒鉛、黒鉛化炭素繊維、非晶質炭素などの炭素質材料;Si、Al、Sn、Pb、Zn、Bi、In、Mg、Ga、Cd、Si合金、Sn合金、またはAl合金などのリチウムと合金化が可能な金属質化合物;SiOβ(0<β<2)、SnO2、バナジウム酸化物、リチウムバナジウム酸化物のようにリチウムをドープおよび脱ドープが可能な金属酸化物;またはSi‐C複合体またはSn‐C複合体のように前記金属質化合物と炭素質材料とを含む複合物などが挙げられ、これらの何れか1つまたは2つ以上の混合物が用いられてもよい。また、前記負極活物質として金属リチウム薄膜が用いられてもよい。また、炭素材料としては、低結晶性炭素および高結晶性炭素などの何れが用いられてもよい。低結晶性炭素としては、ソフトカーボン(soft carbon)およびハードカーボン(hard carbon)が代表的であり、高結晶性炭素としては、無定形、板状、鱗片状、球状、または繊維状の天然黒鉛または人造黒鉛、キッシュ黒鉛(Kish graphite)、熱分解炭素(pyrolytic carbon)、メソフェーズピッチ系炭素繊維(mesophase pitch based carbon fiber)、メソカーボンマイクロビーズ(meso‐carbon microbeads)、メソフェーズピッチ(Mesophase pitches)、および石油または石炭系コークス(petroleum or coal tar pitch derived cokes)などの高温焼成炭素が代表的である。
前記負極活物質は、負極活物質層の総重量100重量部に対して80重量部~99重量部で含まれてもよい。
【0083】
前記バインダーは、導電材、活物質、および集電体間の結合に助力をする成分であり、通常、負極活物質層の総重量100重量部に対して0.1重量部~10重量部で添加される。かかるバインダーの例としては、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン‐プロピレン‐ジエンポリマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレン‐ブタジエンゴム、ニトリル‐ブタジエンゴム、フッ素ゴム、これらの多様な共重合体などが挙げられる。
【0084】
前記導電材は、負極活物質の導電性をさらに向上させるための成分であり、負極活物質層の総重量100重量部に対して10重量部以下、好ましくは5重量部以下で添加されてもよい。かかる導電材は、当該電池に化学的変化を誘発せず且つ導電性を有したものであれば特に制限されず、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック;炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維;アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体などの導電性材料などが用いられてもよい。
【0085】
例えば、前記負極活物質層は、負極集電体上に負極活物質、および選択的にバインダーおよび導電材を溶媒中に溶解または分散させて製造した負極合材を塗布し乾燥することで製造されるか、または前記負極合材を別の支持体上にキャスティングした後、該支持体から剥離して得たフィルムを負極集電体上にラミネートすることで製造されてもよい。
【0086】
前記負極活物質層は、一例として、負極集電体上に負極活物質、および選択的にバインダーおよび導電材を溶媒中に溶解または分散させて製造した負極合材を塗布し乾燥するか、または前記負極合材を別の支持体上にキャスティングした後、該支持体から剥離して得たフィルムを負極集電体上にラミネートすることで製造されてもよい。
【0087】
一方、前記リチウム二次電池において、セパレータは、負極と正極を分離しリチウムイオンの移動通路を提供するものであり、通常、二次電池においてセパレータとして用いられるものであれば特に制限されずに使用可能であり、特に電解質のイオン移動に対して低抵抗であり、且つ、電解液含湿能力に優れることが好ましい。具体的には、多孔性高分子フィルム、例えば、エチレン単独重合体、プロピレン単独重合体、エチレン/ブテン共重合体、エチレン/ヘキセン共重合体、およびエチレン/メタクリレート共重合体などのようなポリオレフィン系高分子から製造した多孔性高分子フィルム、またはこれらの2層以上の積層構造体が用いられてもよい。また、通常の多孔性不織布、例えば、高融点のガラス繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維などからなる不織布が用いられてもよい。また、耐熱性または機械的強度を確保するためにセラミック成分または高分子物質含みのコーティングされたセパレータが用いられてもよく、選択的に単層または多層構造として用いられてもよい。
【0088】
また、本発明で用いられる電解質としては、リチウム二次電池の製造時に使用可能な有機系液体電解質、無機系液体電解質、固体高分子電解質、ゲル型高分子電解質、固体無機電解質、溶融型無機電解質などが挙げられ、これらに限定されるものではない。
【0089】
具体的に、前記電解質は、有機溶媒およびリチウム塩を含むことができる。
前記有機溶媒としては、電池の電気化学的反応に関与するイオンが移動可能な媒質の役割を行うことができるものであれば特に制限されずに用いられてもよい。具体的に、前記有機溶媒としては、メチルアセテート(methyl acetate)、エチルアセテート(ethyl acetate)、γ‐ブチロラクトン(γ‐butyrolactone)、ε‐カプロラクトン(ε‐caprolactone)などのエステル系溶媒;ジブチルエーテル(dibutyl ether)またはテトラヒドロフラン(tetrahydrofuran)などのエーテル系溶媒;シクロヘキサノン(cyclohexanone)などのケトン系溶媒;ベンゼン(benzene)、フルオロベンゼン(fluorobenzene)などの芳香族炭化水素系溶媒;ジメチルカーボネート(dimethylcarbonate、DMC)、ジエチルカーボネート(diethylcarbonate、DEC)、メチルエチルカーボネート(methylethylcarbonate、MEC)、エチルメチルカーボネート(ethylmethylcarbonate、EMC)、エチレンカーボネート(ethylene carbonate、EC)、プロピレンカーボネート(propylene carbonate、PC)などのカーボネート系溶媒;エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどのアルコール系溶媒;R‐CN(Rは炭素数2~20の直鎖状、分岐状、または環状構造の炭化水素基であり、二重結合芳香環またはエーテル結合を含んでもよい)などのニトリル類;ジメチルホルムアミドなどのアミド類;1,3‐ジオキソランなどのジオキソラン類;またはスルホラン(sulfolane)類などが用いられてもよい。この中でもカーボネート系溶媒が好ましく、電池の充放電性能を高めることができる高いイオン伝導度および高誘電率を有する環状カーボネート(例えば、エチレンカーボネートまたはプロピレンカーボネートなど)と、低粘度の直鎖状カーボネート系化合物(例えば、エチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネート、またはジエチルカーボネートなど)との混合物がより好ましい。
【0090】
前記リチウム塩としては、リチウム二次電池で用いられるリチウムイオンを提供可能な化合物であれば特に制限されずに用いられてもよい。具体的に、前記リチウム塩としては、LiPF6、LiClO4、LiAsF6、LiBF4、LiSbF6、LiAlO4、LiAlCl4、LiCF3SO3、LiC4F9SO3、LiN(C2F5SO3)2、LiN(C2F5SO2)2、LiN(CF3SO2)2、LiCl、LiI、またはLiB(C2O4)2などが用いられてもよい。前記リチウム塩の濃度は、0.1~2.0Mの範囲内で用いることが好ましい。リチウム塩の濃度が前記範囲に含まれると、電解質が適切な伝導度および粘度を有するため、優れた電解質性能を示すことができ、リチウムイオンが効果的に移動することができる。
【0091】
前記電解質には、前記電解質の構成成分の他にも電池の寿命特性の向上、電池容量の減少抑制、電池の放電容量の向上などを目的に、例えば、ジフルオロエチレンカーボネートなどのようなハロアルキレンカーボネート系化合物、ピリジン、トリエチルホスファイト、トリエタノールアミン、環状エーテル、エチレンジアミン、n‐グリム(glyme)、ヘキサリン酸トリアミド、ニトロベンゼン誘導体、硫黄、キノンイミン染料、N-置換オキサゾリジノン、N,N‐置換イミダゾリジン、エチレングリコールジアルキルエーテル、アンモニウム塩、ピロール、2‐メトキシエタノール、または三塩化アルミニウムなどの添加剤が1種以上さらに含まれてもよい。この際、前記添加剤は、電解質の総重量100重量部に対して0.1~5重量部で含まれてもよい。
【0092】
上記のように、本発明に係る正極活物質を含むリチウム二次電池は、優れた放電容量、出力特性、および寿命特性を安定的に示すため、携帯電話、ノートブック型コンピュータ、デジタルカメラなどの携帯用機器、およびハイブリッド電気自動車(hybrid electric vehicle、HEV)などの電気自動車の分野などに有用である。
【0093】
これにより、本発明の他の一実施形態によると、前記リチウム二次電池を単位セルとして含む電池モジュールおよびそれを含む電池パックが提供される。
前記電池モジュールまたは電池パックは、パワーツール(Power Tool);電気自動車(Electric Vehicle、EV)、ハイブリッド電気自動車、およびプラグインハイブリッド電気自動車(Plug‐in Hybrid Electric Vehicle、PHEV)を含む電気車;または電力貯蔵用システムのうち何れか1つ以上の中大型デバイスの電源として用いられてもよい。
【0094】
本発明のリチウム二次電池の外形は特に制限されないが、缶を用いた円筒型、角型、パウチ(pouch)型、またはコイン(coin)型などであってもよい。
本発明に係るリチウム二次電池は、小型デバイスの電源として用いられる電池セルに用いられるだけでなく、複数の電池セルを含む中大型電池モジュールに単位電池として好ましく用いられてもよい。
【0095】
以下、本発明を具体的に説明するために実施例を挙げて詳細に説明する。しかし、本発明に系る実施例は多様な他の形態に変形可能であり、本発明の範囲が以下に詳述する実施例に限定されるものと解釈されてはならない。本発明の実施例は、当業界における平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0096】
実施例1
Ni0.88Co0.05Mn0.07(OH)2とLiOH・H2OをLi/Meのモル比が1.07になるように混合し、780℃で10時間焼成し、リチウム遷移金属酸化物を製造した。前記リチウム遷移金属酸化物にZrO2およびBi2O3(焼結助剤)をアコースティックミキサー(LabRAM II、Resodyn社)を用いて混合した。この際、前記ZrO2およびBi2O3は、リチウム遷移金属酸化物の総重量を基準に、ジルコニウムの含量が5,800ppm、ビスマスの含量が1,500ppmになるようにする量で混合した。次に、混合された粉末を酸素雰囲気下で750℃に5時間維持して熱処理し、Zrコーティングされたリチウム遷移金属酸化物を製造した。その後、前記Zrコーティングされたリチウム遷移金属酸化物を蒸留水と1:1の重量比で混合し、5分間水洗した。
【0097】
その次に、前記水洗したリチウム遷移金属酸化物に、ホウ酸を、正極活物質の総重量を基準に、ボロンが500ppmになるようにする量で混合した後、300℃で5時間熱処理し、表面にボロンコーティング層が形成された正極活物質を製造した。
【0098】
実施例2
焼結助剤としてBi2O3の代わりにLiOH・H2Oを、リチウム遷移金属酸化物の総重量を基準に、Liが400ppmになるようにする量で混合したことを除いては、前記実施例1と同様に正極活物質を製造した。
【0099】
実施例3
焼結助剤としてBi2O3の代わりにCo2O3を、リチウム遷移金属酸化物の総重量を基準に、Coが1,700ppmになるようにする量で混合することを除いては、前記実施例1と同様に正極活物質を製造した。
【0100】
比較例1
Ni0.88Co0.05Mn0.07(OH)2とLiOH・H2OをLi/Meのモル比が1.07になるように混合し、780℃で10時間焼成してリチウム遷移金属酸化物を製造し、前記リチウム遷移金属酸化物を正極活物質として用いた。
【0101】
比較例2
Ni0.88Co0.05Mn0.07(OH)2とLiOH・H2OをLi/Meのモル比が1.07になるように混合し、780℃で10時間焼成してリチウム遷移金属酸化物を製造した。
【0102】
前記リチウム遷移金属酸化物にZrO2をアコースティックミキサー(LabRAM II、Resodyn社)を用いて混合した。この際、前記ZrO2は、リチウム遷移金属酸化物の総重量を基準に、ジルコニウムの含量が5,800ppmになるようにする量で混合した。次に、混合された粉末を酸素雰囲気下で750℃に5時間維持して熱処理し、Zrコーティングされたリチウム遷移金属酸化物を製造した。その後、前記Zrコーティングされたリチウム遷移金属酸化物を蒸留水と1:1の重量比で混合し、5分間水洗した。
【0103】
その次に、前記水洗したリチウム遷移金属酸化物に、ホウ酸を、正極活物質の総重量を基準に、ボロンが500ppmになるようにする量で混合した後、300℃で5時間熱処理し、表面にボロンコーティング層が形成された正極活物質を製造した。
【0104】
実験例1
走査型電子顕微鏡を用いて、実施例1および比較例2でそれぞれ製造した正極活物質粒子の表面を観察した。
図3に実施例1で製造した正極活物質の表面SEM写真を示し、
図4に比較例2で製造した正極活物質の表面SEM写真を示した。
【0105】
図3に示されたように、実施例1の正極活物質の場合、リチウム遷移金属酸化物の二次粒子の外部界面に、小さいサイズの粒子(ジルコニウム)が集中的に分布していることを確認することができる。これに対し、
図4に示されたように、比較例2の正極活物質の場合、小さいサイズの粒子がリチウム遷移金属酸化物の二次粒子の表面に全体的に均一に分布していることを確認することができる。
【0106】
実験例2
実施例1~2および比較例2において、熱処理前のリチウム遷移金属酸化物とZrO2および/または焼結助剤との混合粉末を採取した後、SEM装置内のEDS分析ツールを用いて、熱処理前のリチウム遷移金属酸化物の表面に付着されたZrの含量Aを測定した。
【0107】
次に、実施例1~2および比較例2において、前記混合粉末を熱処理して得られた、Zrコーティングされたリチウム遷移金属酸化物粉末を採取した後、SEM装置内のEDS分析ツールを用いて、熱処理後のリチウム遷移金属酸化物の表面に付着されたZrの含量Bを測定した。この際、EDS分析は、電圧(Voltage)=15kV、作動距離(working distance)=10mm、スポットサイズ(spot size)=5.5の条件で測定した。
【0108】
その次に、下記式(1)および式(2)により、リチウム遷移金属酸化物粒子の内部にコーティングされたZrの割合と、リチウム遷移金属酸化物粒子の表面にコーティングされたZrの割合とを計算し、計算結果を下記表1に示した。
【0109】
式(1):リチウム遷移金属酸化物粒子の内部にコーティングされたZrの割合(%)=(A-B/A)×100
式(2):リチウム遷移金属酸化物粒子の表面にコーティングされたZrの割合(%)=(B/A)×100
【0110】
【0111】
前記表1から、焼結助剤の存在下で熱処理を実施した実施例1および2の場合は、Zr中の一部が粒子の内部に浸透したのに対し、焼結助剤を用いていない比較例2の場合は、粒子の表面にのみZrコーティング膜が形成され、粒子の内部に浸透していないことを確認することができる。
【0112】
実験例3
前記実施例1~2および比較例2で製造した正極活物質粉末を一軸加圧器(4350 model、CARVER社)を用いて9トンの圧力で一軸加圧した後、粒度分析器(s3500、microtrac社)を用いて粒度分布を測定した。測定結果は
図5および
図6に示した。
【0113】
図5および
図6に示されたように、実施例1および実施例2で製造した正極活物質粉末の場合、比較例2で製造した正極活物質粉末に比べて、微粉量がさらに少ないことを確認することができる。
【0114】
実験例4
前記実施例1~3および比較例1~2で製造した正極活物質を用いてリチウム二次電池を製造し、実施例1~3および比較例1~2の正極活物質を含むリチウム二次電池それぞれに対して容量を評価した。
【0115】
具体的に、実施例1~3および比較例1~2でそれぞれ製造した正極活物質、カーボンブラック導電材、およびポリビニリデンフルオライド(PVdF)バインダーを96:2:2の重量比でN‐メチルピロリドン(NMP)溶媒中で混合し、正極スラリーを製造した。前記正極スラリーをアルミニウム集電体の一面に塗布した後、100℃で乾燥した後に圧延し、正極を製造した。
一方、負極としてリチウム金属を用いた。
【0116】
上記で製造した正極と負極との間に多孔性ポリエチレンセパレータを介在して電極組立体を製造した後、それを電池ケースの内部に位置させた後、前記ケースの内部に電解液を注入し、リチウム二次電池を製造した。この際、電解液としてエチレンカーボネート(EC):エチルメチルカーボネート(EMC):ジエチルカーボネート(DEC)を3:4:3の体積比で混合した有機溶媒に1MのLiPF6を溶解させた電解液を注入し、実施例1~3および比較例1~2に係るリチウム二次電池を製造した。
【0117】
前記実施例1~3および比較例1~2の二次電池それぞれを45℃で0.33Cの定電流で4.3Vまで充電を実施した後、0.33Cの定電流で3.0Vになるまで放電することを1サイクルとして、30サイクルの充放電を実施し、30サイクル以後の容量維持率および抵抗増加率を測定した。この際、前記容量維持率は、1サイクル以後の放電容量に対する30サイクル以後の放電容量の割合で計算し、抵抗増加率は、1サイクル以後の抵抗に対する抵抗増加量を百分率で計算し、それを下記表2に示した。
【0118】
【0119】
前記表2から、焼成時にジルコニウム含有原料と焼結助剤をともに投入して製造された実施例1~3の正極活物質を適用したリチウム二次電池が、比較例1~2の正極活物質を適用したリチウム二次電池に比べて、優れた寿命特性を有することを確認することができる。