(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-08
(45)【発行日】2023-12-18
(54)【発明の名称】正極活物質の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/525 20100101AFI20231211BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20231211BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20231211BHJP
C01G 53/00 20060101ALI20231211BHJP
【FI】
H01M4/525
H01M4/505
H01M4/36 C
C01G53/00 A
(21)【出願番号】P 2021562872
(86)(22)【出願日】2021-03-23
(86)【国際出願番号】 KR2021003563
(87)【国際公開番号】W WO2021194212
(87)【国際公開日】2021-09-30
【審査請求日】2021-10-21
(31)【優先権主張番号】10-2020-0036937
(32)【優先日】2020-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ウ・ラム・イ
(72)【発明者】
【氏名】ウ・ヒョン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ドン・ジン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ファ・ソク・チェ
(72)【発明者】
【氏名】ヒョン・ウク・キム
【審査官】上野 文城
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/020845(WO,A1)
【文献】特開2020-033235(JP,A)
【文献】特表2018-536972(JP,A)
【文献】特表2018-515884(JP,A)
【文献】特開2018-014325(JP,A)
【文献】特開2002-304992(JP,A)
【文献】特開2019-106240(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110330060(CN,A)
【文献】特開平11-246226(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/525
H01M 4/505
H01M 4/36
C01G 53/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)1次粒子がランダムに凝集したコア部、及び前記コア部を囲んで粒子中心から外部方向に配向した1次粒子で形成されるシェル部、を含み、前記シェル部を形成する1次粒子の(001)面における結晶粒の大きさに対する(100)面における結晶粒の大きさの比が3以上である正極活物質用前駆体を準備する段階と、
(B)前記正極活物質用前駆体を、リチウム含有原料物質と混合して焼成することで、リチウム遷移金属酸化物を製造する段階と、を含み、
前記リチウム遷移金属酸化物の平均粒径(D50)が、前記正極活物質用前駆体の平均粒径(D50)に比べて、0.01%~20%収縮され、
前記(A)段階は、pH12以上で共沈反応を行って、1次粒子がランダムに凝集したコア部を形成した後、pH12未満で共沈反応を行って、前記コア部を囲んで粒子中心から外部方向に配向した1次粒子で形成されるシェル部を形成することを含
み、
前記(A)段階は、濾過部及び抽出部を備えた反応器に原料物質を連続的に供給しながら、共沈反応により正極活物質用前駆体粒子を形成する第1段階と、前記反応器の内部に、反応溶液が一定の水位に達すると、前記濾過部を介して反応溶液中の固形分を除いた濾液を排出することにより、反応溶液の水位を一定に維持する第2段階と、前記抽出部を介して正極活物質用前駆体を含む反応溶液中の一部を集水槽で抽出することにより、反応溶液内の固形分濃度が一定の水準以下になるように維持させる第3段階と、を含む、正極活物質の製造方法。
【請求項2】
前記正極活物質用前駆体は、シェル部を形成する1次粒子の(001)面における結晶粒の大きさに対する(100)面における結晶粒の大きさの比が3~6のものである、請求項1に記載の正極活物質の製造方法。
【請求項3】
前記正極活物質用前駆体は、コア部の直径に対するシェル部の厚さの比が1以上のものである、請求項1または2に記載の正極活物質の製造方法。
【請求項4】
前記第3段階において、前記抽出は、反応溶液中の正極活物質用前駆体の粒径が目標とする正極活物質用前駆体の最低粒径に達する時点から行われるものである、請求項
1から3のいずれか一項に記載の正極活物質の製造方法。
【請求項5】
前記第3段階は、前記反応溶液内の固形分濃度が85重量%以下になるように維持させるものである、請求項
1から4のいずれか一項に記載の正極活物質の製造方法。
【請求項6】
前記(B)段階において、前記焼成は、700℃~1000℃で5時間~35時間行うものである、請求項1から
5のいずれか一項に記載の正極活物質の製造方法。
【請求項7】
(C)前記リチウム遷移金属酸化物を、コーティング元素含有原料物質と混合して熱処理することで、リチウム遷移金属酸化物の表面にコーティング層を形成させる段階をさらに含む、請求項1から
6のいずれか一項に記載の正極活物質の製造方法。
【請求項8】
前記正極活物質用前駆体は、下記化学式1又は化学式2で表され、
[化学式1]
[Ni
xCo
yM
1
zM
2
w](OH)
2
[化学式2]
[Ni
xCo
yM
1
zM
2
w]O・OH
前記化学式1及び化学式2において、0.5≦x<1、0<y≦0.5、0<z≦0.5、0≦w≦0.2であり、
M
1は、Mn及びAlからなる群から選択される少なくとも一つ以上であり、
M
2は、Zr、B、W、Mo、Cr、Nb、Mg、Hf、Ta、La、Ti、Sr、Ba、Ce、F、P、S及びYからなる群から選択される少なくとも一つ以上である、請求項1から
7のいずれか一項に記載の正極活物質の製造方法。
【請求項9】
前記正極活物質は、平均粒径(D50)が1μm~25μmのものである、請求項1から
8のいずれか一項に記載の正極活物質の製造方法。
【請求項10】
前記正極活物質は、粒子強度が100MPa~250MPaのものである、請求項1から
9のいずれか一項に記載の正極活物質の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2020年3月26日に出願された韓国特許出願第10-2020-0036937号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、正極活物質の製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
モバイル機器に対する技術開発と需要の増加に伴い、エネルギー源としての二次電池の需要が急激に増加している。このような二次電池のうち、高いエネルギー密度と電圧を有し、かつサイクル寿命が長く、自己放電率が低いリチウム二次電池が商用化されて広く使用されている。
【0004】
リチウム二次電池の正極活物質としては、リチウム遷移金属複合酸化物が用いられており、この中でも作用電圧が高く、容量特性に優れたLiCoO2などのリチウムコバルト複合金属酸化物が主に用いられている。しかし、LiCoO2は、脱リチウムによる結晶構造の不安定化のため、熱的特性が劣悪である。また、前記LiCoO2は、高価であるため、電気自動車などのような分野の動力源として大量使用するには限界がある。
【0005】
前記LiCoO2を代替するための材料として、リチウムマンガン複合金属酸化物(LiMnO2又はLiMn2O4など)、リン酸鉄リチウム化合物(LiFePO4など)又はリチウムニッケル複合金属酸化物(LiNiO2など)などが開発された。この中でも、約200mAh/gの高い可逆容量を有して大容量の電池の具現が容易なリチウムニッケル複合金属酸化物に対する研究開発がより活発に進められている。しかし、前記LiNiO2は、LiCoO2に比べて熱安定性が劣っており、充電状態で外部からの圧力などにより内部短絡が生じると、正極活物質そのものが分解され、電池の破裂及び発火をもたらす問題があった。これにより、前記LiNiO2の優れた可逆容量は維持しながらも、低い熱安定性を改善するための方法として、Niの一部をCo、Mn、又はAlで置換したリチウム遷移金属酸化物が開発された。
【0006】
このようなリチウム遷移金属酸化物、特に、高含量のニッケル(Ni-rich)を含むリチウム遷移金属酸化物を正極活物質として使用するリチウムイオン電池の場合、電池の容量、高出力の有無、及び高温でのガス発生の有無は、正極活物質の組成、不純物の含量、表面に存在するリチウム副産物の含量のような化学的特性だけでなく、正極活物質粒子の大きさ、表面積、密度及び形状などの物理的特性にも影響を受ける。
【0007】
一方、前述したリチウム遷移金属酸化物を合成するために、正極活物質用前駆体をリチウム化合物と混合して焼成する過程で、正極活物質用前駆体の物理的特性が大きく変わることになる。
【0008】
したがって、正極活物質の製造時に変わる物理的特性を適宜調節することにより、正極活物質の機械的強度を高め、これを電池に適用した時に、電池の容量特性及び抵抗特性などを改善することができる正極活物質の製造方法が必要な実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、前記のような問題を解決するためのものであって、正極活物質の製造時、粒子の収縮が発生して粒子強度及びエネルギー密度を改善することができる正極活物質の製造方法の提供を図る。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、(A)1次粒子がランダムに凝集したコア部;及び前記コア部を囲んで粒子中心から外部方向に配向した1次粒子で形成されるシェル部;を含み、前記シェル部を形成する1次粒子の(001)面における結晶粒の大きさに対する(100)面における結晶粒の大きさの比が3以上である正極活物質用前駆体を準備する段階;及び(B)前記正極活物質用前駆体をリチウム含有原料物質と混合して焼成することで、リチウム遷移金属酸化物を製造する段階;を含み、前記リチウム遷移金属酸化物の平均粒径(D50)が前記正極活物質用前駆体の平均粒径(D50)に比べて0.01%~20%収縮されたものである、正極活物質の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、1次粒子がランダムに凝集したコア部;及び前記コア部を囲んで粒子中心から外部方向に配向した1次粒子で形成されるシェル部;を含み、前記シェル部を形成する1次粒子の(001)面における結晶粒の大きさに対する(100)面における結晶粒の大きさの比が3以上である正極活物質用前駆体を用いて正極活物質を製造することにより、前述したリチウム遷移金属酸化物粒子が正極活物質用前駆体粒子に対して特定の割合で収縮されることから、粒子の緻密度が高くなるため、正極活物質の機械的強度を改善することができ、これを二次電池に適用時、電池の容量特性などを改善することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書及び特許請求の範囲に用いられた用語や単語は、通常的かつ辞典的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者は自身の発明を最良の方法で説明するために用語の概念を適宜定義することができるとの原則に即し、本発明の技術的思想に適合する意味と概念として解釈されなければならない。
【0013】
本明細書において、「含む」、「備える」又は「有する」などの用語は、実施された特徴、数字、段階、構成要素又はこれらの組み合わせが存在することを指定しようとするものであって、1つ又はそれ以上の他の特徴や数字、段階、構成要素又はこれらの組み合わせなどの存在又は付加の可能性を予め排除するものではないと理解されなければならない。
【0014】
本明細書において、「粒子」は、マイクロ単位の粒を称し、「1次粒子」は、単一粒子の1次構造体を意味し、「2次粒子」は、2次粒子を構成する1次粒子に対する意図的な凝集又は組立ての工程なしでも1次粒子間の物理的又は化学的結合により1次粒子同士凝集した凝集体、すなわち2次構造体を意味する。
【0015】
本明細書において、シェル部を形成する1次粒子の(001)面における結晶粒の大きさに対する(100)面における結晶粒の大きさの比は、XRDを使用して測定した(100)ピークの半価幅(FWHM)値を使用してシェラーの式(Scherrer equation)から得た結晶粒の大きさを、(001)ピークの半価幅値を使用してシェラーの式から得た結晶粒の大きさで割った値である。
【0016】
本明細書において、「平均粒径(D50)」は、粒子の粒径分布曲線において、体積累積量の50%に該当する粒径と定義することができる。前記平均粒径(D50)は、例えば、レーザー回折法(laser diffraction method)を用いて測定することができる。前記レーザー回折法は、一般的に、数nm領域から数mm程度の粒径の測定が可能であり、高再現性及び高分解性の結果を得ることができる。
【0017】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0018】
正極活物質の製造方法
本発明者は、正極活物質の製造過程で、正極活物質用前駆体の物理的特性が変わることを用いて、粒子内の不必要な空隙(void space)を減らし、緻密な形態の正極活物質粒子を製造することができることを見出して、本発明を完成した。
【0019】
本発明に係る正極活物質の製造方法は、(A)1次粒子がランダムに凝集したコア部;及び前記コア部を囲んで粒子中心から外部方向に配向した1次粒子で形成されるシェル部;を含み、前記シェル部を形成する1次粒子の(001)面における結晶粒の大きさに対する(100)面における結晶粒の大きさの比が3以上である正極活物質用前駆体を準備する段階;及び(B)前記正極活物質用前駆体をリチウム含有原料物質と混合して焼成することで、リチウム遷移金属酸化物を製造する段階;を含む。そして、前記リチウム遷移金属酸化物の平均粒径(D50)が、前記正極活物質用前駆体の平均粒径(D50)に比べて0.01%~20%収縮されたものである。
【0020】
本発明に係る正極活物質の製造方法は、(C)前記リチウム遷移金属酸化物をコーティング元素含有原料物質と混合して熱処理することで、リチウム遷移金属酸化物の表面にコーティング層を形成させる段階をさらに含むことができる。
【0021】
以下、正極活物質の製造方法の各段階を具体的に説明する。
【0022】
段階(A)
本発明に係る正極活物質の製造方法は、先ず、1次粒子がランダムに凝集したコア部;及び前記コア部を囲んで粒子中心から外部方向に配向した1次粒子で形成されるシェル部;を含み、前記シェル部を形成する1次粒子の(001)面における結晶粒の大きさに対する(100)面における結晶粒の大きさの比が3以上である正極活物質用前駆体を準備する。
【0023】
本発明によれば、1次粒子がランダムに凝集したコア部;及び前記コア部を囲んで粒子中心から外部方向に配向した1次粒子で形成されるシェル部;を含み、前記シェル部を形成する1次粒子の(001)面における結晶粒の大きさに対する(100)面における結晶粒の大きさの比が3以上である正極活物質用前駆体を用いて正極活物質を製造することにより、リチウム遷移金属酸化物粒子が正極活物質用前駆体粒子に対して特定の割合で収縮することができ、これにより、粒子の緻密度が高くなるため、正極活物質の機械的強度を改善することができ、これを二次電池に適用時、電池の容量特性を改善することができる。
【0024】
本発明によれば、前記正極活物質用前駆体のシェル部を形成する1次粒子の(001)面における結晶粒の大きさに対する(100)面における結晶粒の大きさの比は3以上、具体的には、3~6であってよい。この場合、1次粒子の内部でリチウムイオンが移動中に妨害されることなく動くことができる長さが相対的に長くなるので、リチウム移動性改善の側面でより効果的であり得る。また、このような正極活物質用前駆体を用いて製造された正極活物質は、粒子の緻密度が高い可能性がある。
【0025】
本発明によれば、前記正極活物質用前駆体は、前記コア部の直径に対するシェル部の厚さの比が1以上のものであってよい。このような正極活物質用前駆体を用いて製造された正極活物質は、粒子の緻密度が高い可能性があり、シェル部の占める領域が広くて、リチウム移動性に優れる可能性がある。
【0026】
本発明によれば、前記(A)段階は、濾過部及び抽出部を備えた反応器に原料物質を連続的に供給しながら、共沈反応により正極活物質用前駆体粒子を形成する第1段階;前記反応器の内部に反応溶液が一定の水位に達すると、前記濾過部を介して反応溶液中の固形分を除いた濾液を排出することにより、反応溶液の水位を一定に維持する第2段階;及び前記抽出部を介して正極活物質用前駆体を含む反応溶液中の一部を集水槽で抽出することにより、反応溶液内の固形分濃度が一定の水準以下になるように維持させる第3段階;を含む正極活物質用前駆体の製造方法を含むものであってよい。すなわち、前記正極活物質用前駆体は、前述した正極活物質用前駆体の製造方法により製造されるものであってよい。この場合、(001)面における結晶粒の成長が抑制され、相対的に(100)面における結晶粒の大きさが優勢に形成され得、これにより、正極活物質用前駆体のシェル部を形成する1次粒子の(001)面における結晶粒の大きさに対する(100)面における結晶粒の大きさの比が3以上、具体的には、3~6であってよい。また、正極活物質用前駆体のコア部の大きさが小さく、シェル部の厚さが長いので、リチウム移動性に優れた正極活物質用前駆体が製造され得る。
【0027】
前記正極活物質用前駆体の製造方法に関連し、先ず、濾過部及び抽出部を備えた反応器に原料物質を連続的に供給する。前記原料物質は、反応器に備えられた投入部を介して反応器に連続的に供給され得る。前記原料物質は、反応器の内部で混合して反応溶液を形成し、前記反応溶液の共沈反応により正極活物質用前駆体粒子が形成され得る(第1段階)。
【0028】
この際、前記濾過部は、反応器の内部に配置され、前記反応溶液が一定の水準に達すると、前記反応溶液内の固形分を除いた濾液を反応器の外部に排出するためのものであり、前記抽出部は、反応溶液中の一部を抽出して集水槽に移送することにより、前記反応溶液内の固形分含量を一定の水準以下に維持させるためのものである。また、前記反応器は、反応溶液を収容し、正極活物質用前駆体を生成する共沈反応を行うためのものである。
【0029】
一方、前記原料物質は、遷移金属含有溶液、アンモニウムイオン含有溶液及び塩基性水溶液を含んでよい。
【0030】
前記遷移金属含有溶液に含まれる遷移金属は、ニッケル、コバルト、M1(ここで、M1は、Mn及びAlからなる群から選択される少なくとも一つ以上である)などであってよい。具体的には、前記遷移金属含有溶液は、遷移金属の酢酸塩、硝酸塩、硫酸塩、ハライド、硫化物、水酸化物、酸化物、又はオキシ水酸化物などを含んでよく、水に溶解され得るものであれば、特に制限されずに使用してよい。
【0031】
例えば、前記ニッケル(Ni)は、前記遷移金属含有溶液にNi(OH)2、NiO、NiOOH、NiCO3・2Ni(OH)2・4H2O、NiC2O2・2H2O、Ni(NO3)2・6H2O、NiSO4、NiSO4・6H2O、脂肪酸ニッケル塩、又はニッケルハロゲン化物などで含まれてよく、これらのうち少なくとも一つ以上が使用されてよい。一方、ニッケルの含量は、遷移金属の総モル数に対して60モル%以上になるように調節されてよい。
【0032】
また、前記コバルト(Co)は、前記遷移金属含有溶液にCo(OH)2、CoOOH、Co(OCOCH3)2・4H2O、Co(NO3)2・6H2O、又はCoSO4・7H2Oなどで含まれてよく、これらのうち少なくとも一つ以上が使用されてよい。
【0033】
また、前記M1がマンガン(Mn)である場合、前記マンガンは、前記遷移金属含有溶液にMn2O3、MnO2、及びMn3O4などのマンガン酸化物;MnCO3、Mn(NO3)2、MnSO4、酢酸マンガン、ジカルボン酸マンガン塩、クエン酸マンガン及び脂肪酸マンガン塩のようなマンガン塩;オキシ水酸化物、並びに塩化マンガンなどで含まれてよく、これらのうち少なくとも一つ又はそれ以上が使用されてよい。
【0034】
また、前記M1がアルミニウム(Al)である場合、前記アルミニウムは、前記遷移金属含有溶液にアルミニウムを含む酢酸塩、硝酸塩、硫酸塩、ハライド、硫化物、水酸化物、酸化物、又はオキシ水酸化物などで含まれてよい。
【0035】
また、前記遷移金属含有溶液は、ニッケル、コバルト、及びM1以外に他の金属元素(M2)をさらに含んでよい。この際、前記金属元素M2は、Zr、B、W、Mo、Cr、Nb、Mg、Hf、Ta、La、Ti、Sr、Ba、Ce、F、P、S及びYからなる群から選択される少なくとも一つ以上を含んでよい。
【0036】
前記遷移金属含有溶液が金属元素M2をさらに含む場合、前記遷移金属含有溶液の製造時、前記金属元素M2含有原料物質がさらに添加されてよい。
【0037】
前記金属元素M2含有原料物質としては、金属元素M2を含む酢酸塩、硝酸塩、硫酸塩、ハライド、硫化物、水酸化物、酸化物、又はオキシ水酸化物からなる群から選択される少なくとも一つ以上が使用されてよい。例えば、前記金属元素M2がWである場合、酸化タングステンなどが使用されてよい。
【0038】
一方、前記M1又はM2含有原料物質は、正極活物質用前駆体の製造段階ではなく、リチウム遷移金属酸化物の製造段階で、すなわち、正極活物質用前駆体をリチウム含有原料物質と混合して焼成する段階で、粉末状態として添加されてドーピングされるものであってよい。
【0039】
前記アンモニウムイオン含有溶液は、NH4OH、(NH4)2SO4、NH4NO3、NH4Cl、CH3COONH4、及び(NH4)2CO3からなる群から選択される少なくとも一つ以上を含んでよい。この際、溶媒としては、水、又は水と均一に混合可能な有機溶媒(具体的には、アルコールなど)と水の混合物が使用されてよい。
【0040】
前記塩基性水溶液は、NaOH、KOH、Ca(OH)2からなる群から選択される少なくとも一つ以上を含んでよく、溶媒としては、水、又は水と均一に混合可能な有機溶媒(具体的には、アルコールなど)と水の混合物が使用されてよい。この際、前記塩基性水溶液の濃度は、5重量%~35重量%、好ましくは15重量%~35重量%、より好ましくは20重量%~30重量%であってよい。塩基性水溶液の濃度が前記範囲内の場合、均一な大きさの前駆体粒子を形成することができ、前駆体粒子の形成時間が早く、収得率も優れる可能性がある。
【0041】
一方、前記原料物質は、反応溶液のpHが12以上、好ましくは12~13になるようにする量で供給されることが好ましい。また、pH調整のために、遷移金属含有溶液の投入前に一定量のアンモニウムイオン含有溶液及び塩基性水溶液を先に投入してpHを調節することもできる。
【0042】
反応溶液のpHにより前駆体形成反応の様態が変わる。具体的には、pHが12以上の条件では、粒子核(seed)生成反応が主に起こり、pHが12未満の条件では、粒子成長反応が主に起こるようになる。したがって、反応が開始する初期には、粒子核が多く形成され得るように、反応溶液のpHを12以上に一定の時間以上維持することが好ましい。
【0043】
一方、粒子核生成が十分に行われた後には、原料物質の供給流量を調節し、反応溶液のpHを12未満になるようにすることにより、前駆体粒子を成長させることができる。
【0044】
例えば、反応器に供給される遷移金属含有溶液、アンモニウムイオン含有溶液及び/又は塩基性水溶液の流量を調節することにより、反応溶液のpHを12未満、好ましくは10~11.9、より好ましくは10.5~11.7になるように調節することができる。反応溶液のpHを前記範囲に調節しながら遷移金属含有溶液を投入すると、核生成反応が終了し、粒子成長反応が行われる。
【0045】
本発明によれば、前記(A)段階は、pH12以上で共沈反応を行って、1次粒子がランダムに凝集したコア部を形成した後、pH12未満で共沈反応を行って、前記コア部を囲んで粒子中心から外部方向に配向した1次粒子で形成されるシェル部を形成することを含むものであってよい。例えば、前記(A)段階は、pH12以上で0.5時間~6時間共沈反応を行った後、pH12未満で1時間~96時間共沈反応を行うことを含むものであってよい。この場合、正極活物質用前駆体のコア部の大きさが小さく、シェル部の厚さが長いので、リチウム移動性に優れた正極活物質用前駆体を製造することができる。
【0046】
一方、前記過程で、原料物質の供給により反応器内部の反応溶液の水位が徐々に上昇することになる。反応器内の反応溶液が一定の水位に達すると、前記濾過部を介して反応溶液中の固形分を除いた濾液を排出することにより、反応溶液の水位を一定に維持しながら共沈反応を行うことができる(第2段階)。
【0047】
この際、前記濾液の排出は、反応溶液の水位が反応器の総容量の70%~100%、好ましくは80%~90%に達した時点から連続的に行うことができる。濾液排出の時点が遅くなりすぎると、前駆体と濾液を分離するフィルターの気孔に前駆体が入り込むか、クロッギング現象が発生して濾過流量が減少することがあり、濾過流量が減少する場合、反応物の高さが徐々に高くなり、反応が終了することがある。したがって、これを予測して濾過の水位を適宜調節しなければならない。
【0048】
反応器内の反応溶液水位を一定に維持するために、前記濾過部を介して排出される濾液の排出流量が、原料物質の総供給流量と同一であるのが好ましい。
【0049】
一方、共沈反応の進行に伴い、前駆体粒子が生成され、これにより、反応溶液の固形分含量が徐々に増加することになる。反応溶液中の固形分含量が高すぎると、撹拌が難しいので原料物質の混合が円滑に行われず、これにより、共沈反応が不均一に発生して、正極活物質用前駆体の品質不良が発生するようになる。これを防止するためには、固形分含量が高くない水準で反応を終了しなければならないが、この場合、生産性増大の効果が低下するという問題がある。
【0050】
しかし、本発明では、抽出部を介して正極活物質用前駆体を含む反応溶液中の一部を集水槽で抽出して、反応溶液内の固形分濃度を一定の水準以下に維持しながら共沈反応を行う(第3段階)ことにより、固形分含量の増加により発生する問題を解決できるようにした。
【0051】
一方、本発明によれば、前記抽出は、反応溶液中の正極活物質用前駆体の粒径が、目標とする正極活物質用前駆体の最低粒径に達する時点から行われることが好ましい。前記時点で抽出を開始する場合、最終的に得られる正極活物質用前駆体の粒度特性を阻害しないことができるからである。
【0052】
また、本発明によれば、前記抽出は、反応溶液内の固形分濃度が85重量%以下、好ましくは60重量%~85重量%に維持され得るようにする量で行われることが好ましい。反応溶液中の固形分濃度が85重量%以下を維持する場合、撹拌が円滑に行われて、正極活物質用前駆体の品質不良の発生を最小化することができるからである。
【0053】
一方、前記反応溶液中の正極活物質用前駆体粒子が所望の大きさだけ成長すると共沈反応を終了し、反応溶液から正極活物質用前駆体粒子を分離して洗浄及び乾燥させて、正極活物質用前駆体粉末を得る。前記共沈反応終了時点は、例えば、正極活物質用前駆体粒子の粒径が目標とする正極活物質用前駆体粒子の最大粒径に達する時点であることが好ましい。
【0054】
前記正極活物質用前駆体は、コア部;前記コア部を囲んで粒子中心から外部方向に配向した1次粒子で形成されるシェル部;を含むコア-シェル構造の前駆体である。前記コア部は、粒子核の形成時期に形成されるものであって、1次粒子が特別な配向性なしにランダムに凝集した形態を有する。
【0055】
前記シェル部は、粒子成長時期に形成されるものであって、1次粒子が一定の配向性を持って配列された形態を有する。具体的には、前記シェル部は、1次粒子が前駆体粒子中心から外部方向に放射状に配列された形態を有する。
【0056】
コア部は、1次粒子がランダムに凝集しているので、リチウムイオンの吸蔵、脱離時に、リチウムイオンの移動経路が確保されず、リチウム移動性が低い。一方、前記シェル部は、粒子が放射状に配列されているので、リチウム移動経路が確保され、リチウム移動性に優れている。したがって、粒子内でコア部の占める領域が大きいとリチウム移動性が低下し、シェル部の占める領域が大きいとリチウム移動性が改善するようになる。
【0057】
一方、本発明によれば、前記正極活物質用前駆体は、例えば、下記[化学式1]又は[化学式2]で表されるものであってよい。
【0058】
[化学式1]
[NixCoyM1
zM2
w](OH)2
[化学式2]
[NixCoyM1
zM2
w]O・OH
前記化学式1及び化学式2において、M1は、Mn及びAlからなる群から選択される少なくとも一つ以上であり、M2は、Zr、B、W、Mo、Cr、Nb、Mg、Hf、Ta、La、Ti、Sr、Ba、Ce、F、P、S及びYからなる群から選択される少なくとも一つ以上であってよい。
【0059】
前記xは、前駆体内の金属元素中のニッケルの原子分率を意味するものであって、0.5≦x<1、0.6≦x≦0.98、又は0.7≦x≦0.95であってよい。
【0060】
前記yは、前駆体内の金属元素中のコバルトの原子分率を意味するものであって、0<y≦0.5、0.01≦y≦0.4、又は0.01≦y≦0.3であってよい。
【0061】
前記zは、前駆体内の金属元素中のM1元素の元素分率を意味するものであって、0<z≦0.5、0.01≦z≦0.4、又は0.01≦z≦0.3であってよい。
【0062】
前記wは、前駆体内の金属元素中のM2元素の元素分率を意味するものであって、0≦w≦0.2、0≦w≦0.1、0≦w≦0.05、又は0≦w≦0.02であってよい。
【0063】
一方、前記正極活物質用前駆体の製造方法により製造された正極活物質用前駆体は、タップ密度及び圧延密度特性に優れている。タップ密度及び圧延密度が高い正極活物質用前駆体を用いて正極活物質を製造する場合、タップ密度及び圧延密度が高い正極活物質を製造することができ、正極活物質のタップ密度及び圧延密度が高いと、電極のエネルギー密度を改善する効果を得ることができる。
【0064】
段階(B)
前記のような1次粒子がランダムに凝集したコア部;及び前記コア部を囲んで粒子中心から外部方向に配向した1次粒子で形成されるシェル部;を含み、前記シェル部を形成する1次粒子の(001)面における結晶粒の大きさに対する(100)面における結晶粒の大きさの比が3以上である正極活物質用前駆体を、リチウム含有原料物質と混合して焼成することにより、前記正極活物質用前駆体の平均粒径(D50)に比べて0.01%~20%収縮された平均粒径(D50)を有するリチウム遷移金属酸化物を製造することができ、これを用いて正極活物質を製造することができる。
【0065】
この際、高温での焼成過程を通じて、(001)面における結晶粒の大きさに対する(100)面における結晶粒の大きさの比が3以上である1次粒子、すなわち、シェル部を形成する1次粒子間の空隙は減るようになる。1次粒子の配向性が明らかではない既存の正極活物質用前駆体では、このような空隙の減少効果がその無作為配向性により全体的に相殺され、焼成前後の2次粒子の大きさの変化が直接的に観察されなかった。しかし、本発明で使用された正極活物質用前駆体のシェル部の1次粒子は、一定方向に配向性を有するので、1次粒子間の空隙の結晶粒方向除去の効果が互いに加わって、2次粒子の大きさが小さくなる可能性がある。このように2次粒子内に存在する不必要な空隙が効果的に減ることにより、粒子がより緻密に形成され得る。
【0066】
前記リチウム含有原料物質は、例えば、炭酸リチウム(Li2CO3)、水酸化リチウム(LiOH)、LiNO3、CH3COOLi及びLi2(COO)2からなる群から選択される少なくとも一つ以上であってよく、好ましくは、炭酸リチウム(Li2CO3)、水酸化リチウム(LiOH)又はこれらの組み合わせであってよい。
【0067】
正極活物質の製造時、前記正極活物質用前駆体とリチウム含有原料物質は、1:1~1:1.625、又は1:1~1:1.15モル比で混合してよい。リチウム含有原料物質が前記範囲未満で混合される場合、製造される正極活物質の容量が低下する恐れがあり、リチウム含有原料物質が前記範囲を超過して混合される場合、未反応のLiが副産物として残り、容量低下及び焼成後の正極活物質粒子の分離(正極活物質含浸現象誘発)が発生する可能性がある。
【0068】
一方、前述したように、正極活物質用前駆体をリチウム含有原料物質と混合して焼成する段階において、M1(ここで、M1は、Mn及びAlからなる群から選択される少なくとも一つ以上)、又はM2(Zr、B、W、Mo、Cr、Nb、Mg、Hf、Ta、La、Ti、Sr、Ba、Ce、F、P、S及びYからなる群から選択される少なくとも一つ以上)含有原料物質を粉末形態として添加することにより、M1又はM2がドーピングされた正極活物質を製造することができる。
【0069】
本発明によれば、前記焼成は、700℃~1000℃の温度で行うことができる。焼成温度が700℃未満の場合、不十分な反応により粒子内に原料物質が残るようになって、電池の高温安定性を低下することがあり、体積密度及び結晶性が低下して、構造的安定性が落ちる可能性がある。一方、焼成温度が1000℃を超過する場合、粒子の不均一な成長が発生する可能性があり、粒子解砕が難しくて容量低下などが発生する可能性がある。一方、製造される正極活物質の粒子大きさの制御、容量、安定性及びリチウム含有副産物の減少を考慮すると、前記焼成温度は、より好ましくは700℃~980℃であってよい。
【0070】
前記焼成は、5時間~35時間行うことができる。焼成時間が5時間未満の場合、反応時間が短すぎて高結晶性の正極活物質が得難い可能性があり、35時間を超過する場合、粒子の大きさが過度に大きくなり、生産効率が低下し得る。
【0071】
本発明のように、1次粒子がランダムに凝集したコア部;及び前記コア部を囲んで粒子中心から外部方向に配向した1次粒子で形成されるシェル部;を含み、前記シェル部を形成する1次粒子の(001)面における結晶粒の大きさに対する(100)面における結晶粒の大きさの比が3以上である正極活物質用前駆体を用いて、特定の条件で正極活物質を製造することにより、正極活物質粒子が緻密になるにつれて、前記段階(B)で製造したリチウム遷移金属酸化物は、正極活物質用前駆体に比べて平均粒径(D50)の大きさが小さくなるものであってよい。具体的には、前記リチウム遷移金属酸化物の平均粒径(D50)が、前記正極活物質用前駆体の平均粒径(D50)に比べて0.01%~20%収縮、好ましくは0.1%~10%収縮されたものであってよい。
【0072】
段階(C)
前記リチウム遷移金属酸化物をコーティング元素含有原料物質と混合して熱処理することにより、前記リチウム遷移金属酸化物の表面にコーティング層が形成された正極活物質を製造することができる。
【0073】
前記コーティング元素含有原料物質に含まれるコーティング元素は、Zr、B、W、Mo、Cr、Nb、Mg、Hf、Ta、La、Ti、Sr、Ba、Ce、F、P、S及びYなどであってよい。前記コーティング元素含有原料物質は、前記コーティング元素を含む酢酸塩、硝酸塩、硫酸塩、ハライド、硫化物、水酸化物、酸化物、又はオキシ水酸化物などであってよい。前記コーティング元素含有原料物質は、粉末状態であってよい。例えば、前記金属元素がBの場合、ホウ酸(B(OH)3)などが使用されてよい。
【0074】
前記熱処理は、200℃~400℃の温度で行うことができる。熱処理温度が前記範囲内の場合、遷移金属酸化物の構造的安定性を維持させながらコーティング層を形成させることができる。前記熱処理は、1時間~10時間行うことができる。熱処理時間が前記範囲内の場合、適切なコーティング層を形成することができ、生産効率が改善することができる。
【0075】
本発明によれば、前記正極活物質の製造方法により製造された正極活物質は、平均粒径(D50)が1μm~25μmのものであってよい。好ましくは5μm~15μm、又は9μm以上15μm未満のものであってよい。正極活物質の平均粒径が前記範囲内の場合、タップ密度及び圧延密度に優れて、高いエネルギー密度を確保することができる。
【0076】
本発明によれば、前記正極活物質の製造方法により製造された正極活物質は、機械的強度が改善したものであってよい。具体的には、前記正極活物質は、粒子強度が100MPa~250MPaのものであってよい。好ましくは150MPa~200MPa、160MPa~200MPa、又は160MPa~180MPaのものであってよい。したがって、前記正極活物質を電池に適用した時、電池の容量特性及び抵抗特性などを改善することができる。
【0077】
前記正極活物質は、1次粒子が凝集して形成された2次粒子の形態を有し、前記1次粒子が一定方向、すなわち、粒子中心から外部方向に配向した配向性を有するシェル部を含む正極活物質を意味するものであってよい。
【0078】
前述したように、正極活物質用前駆体粒子に対して、リチウム遷移金属酸化物粒子の平均粒径が減少するにつれて、正極活物質粒子は、正極活物質用前駆体粒子に比べてより緻密に形成され得る。これにより、前記正極活物質粒子を電池に適用することにより、エネルギーの体積密度が改善し、機械的強度が改善するにつれて、寿命特性がさらに改善することができる。
【0079】
正極
また、本発明は、前述の方法により製造された正極活物質を含むリチウム二次電池用正極を提供することができる。
【0080】
具体的には、前記正極は、正極集電体、及び前記正極集電体の少なくとも一面に位置し、前記正極活物質を含む正極活物質層を含む。
【0081】
前記正極集電体は、電池に化学的変化を誘発することなく導電性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、又はアルミニウムやステンレススチールの表面に炭素、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したものなどが使用されてよい。また、前記正極集電体は、通常3~500μmの厚さを有することができ、前記集電体の表面上に微細な凹凸を形成して正極活物質の接着力を高めることもできる。例えば、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体など多様な形態で使用されてよい。
【0082】
前記正極活物質層は、正極活物質とともに、導電材及びバインダーを含んでよい。
【0083】
この際、前記正極活物質は、正極活物質層の総重量に対して80重量%~99重量%、より具体的には85重量%~98重量%の含量で含まれてよい。前記含量範囲で含まれると、優れた容量特性を示すことができる。
【0084】
この際、前記導電材は、電極に導電性を付与するために使用されるものであって、構成される電池において、化学変化を引き起こすことなく電子伝導性を有するものであれば、特別な制限なく使用可能である。具体例としては、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック、炭素繊維などの炭素系物質;銅、ニッケル、アルミニウム、銀などの金属粉末又は金属繊維;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;又はポリフェニレン誘導体などの伝導性高分子などが挙げられ、これらのうち1種単独又は2種以上の混合物が使用されてよい。前記導電材は、正極活物質層の総重量に対して1重量%~30重量%で含まれてよい。
【0085】
前記バインダーは、正極活物質粒子同士の付着及び正極活物質と集電体との接着力を向上させる役割をする。具体例としては、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVDF-co-HFP)、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンポリマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、又はこれらの多様な共重合体などが挙げられ、これらのうち1種単独又は2種以上の混合物が使用されてよい。前記バインダーは、正極活物質層の総重量に対して1重量%~30重量%で含まれてよい。
【0086】
前記正極は、前記正極活物質を用いることを除き、通常の正極の製造方法により製造され得る。例えば、前記正極は、前記正極活物質及び選択的に、バインダー及び導電材を溶媒中に溶解又は分散させて製造した正極合材を正極集電体上に塗布した後、乾燥圧延することにより製造するか、前記正極合材を別途の支持体上にキャスティングした後、該支持体から剥離して得たフィルムを正極集電体上にラミネーションすることにより製造することができる。この際、前記正極活物質、バインダー、導電材の種類及び含量は、前記の通りである。
【0087】
前記溶媒としては、当該技術分野で一般的に使用される溶媒であってよく、ジメチルスルホキシド(dimethyl sulfoxide、DMSO)、イソプロピルアルコール(isopropyl alcohol)、N-メチルピロリドン(NMP)、アセトン(acetone)又は水などが挙げられ、これらのうち1種単独又は2種以上の混合物が使用されてよい。前記溶媒の使用量は、スラリーの塗布厚さ、製造歩留まりを考慮して、前記正極活物質、導電材及びバインダーを溶解又は分散させ、その後、正極の製造のための塗布時、優れた厚さ均一度を示すことができる粘度を有するようにする程度なら十分である。
【0088】
リチウム二次電池
また、本発明は、前記正極を含む電気化学素子を製造することができる。前記電気化学素子は、具体的には、電池、キャパシターなどであってよく、より具体的には、リチウム二次電池であってよい。
【0089】
前記リチウム二次電池は、具体的には、正極、前記正極と対向して位置する負極、及び前記正極と負極との間に介在される分離膜及び電解質を含み、前記正極は、前述した通りであるので、具体的な説明を省略する。以下、残りの構成に対してのみ具体的に説明する。
【0090】
また、前記リチウム二次電池は、前記正極、負極、分離膜の電極組立体を収納する電池容器、及び前記電池容器を封止する封止部材を選択的にさらに含んでよい。
【0091】
前記リチウム二次電池において、前記負極は、負極集電体及び前記負極集電体上に位置する負極活物質層を含む。
【0092】
前記負極集電体は、電池に化学的変化を誘発することなく高い導電性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、銅、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、銅やステンレススチールの表面に炭素、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したもの、アルミニウム-カドミウム合金などが使用されてよい。また、前記負極集電体は、通常3μm~500μmの厚さを有することができ、正極集電体と同様に、前記集電体の表面に微細な凹凸を形成して負極活物質の結合力を強化させることもできる。例えば、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体など多様な形態で使用されてよい。
【0093】
前記負極活物質層は、負極活物質とともに選択的にバインダー及び導電材を含む。
【0094】
前記負極活物質としては、リチウムの可逆的なインターカレーション及びデインターカレーションが可能な化合物が使用されてよい。具体例としては、人造黒鉛、天然黒鉛、黒鉛化炭素繊維、非晶質炭素などの炭素質材料;Si、Al、Sn、Pb、Zn、Bi、In、Mg、Ga、Cd、Si合金、Sn合金、又はAl合金など、リチウムと合金化が可能な金属質化合物;SiOβ(0<β<2)、SnO2、バナジウム酸化物、リチウムバナジウム酸化物のように、リチウムをドープ及び脱ドープ可能な金属酸化物;又はSi-C複合体又はSn-C複合体のように、前記金属質化合物と炭素質材料を含む複合物などが挙げられ、これらのうち何れか一つ又は二つ以上の混合物が使用されてよい。また、前記負極活物質として、金属リチウム薄膜が使用されてもよい。また、炭素材料としては、低結晶性炭素及び高結晶性炭素などが全て使用されてよい。低結晶性炭素としては、軟化炭素(soft carbon)及び硬化炭素(hard carbon)などが代表的であり、高結晶性炭素としては、無定形、板状、麟片状、球状又は繊維状の天然黒鉛、又は人造黒鉛、キッシュ黒鉛(Kish graphite)、熱分解炭素(pyrolytic carbon)、メソ相ピッチ系炭素繊維(mesophase pitch based carbon fiber)、メソ炭素微小球体(meso-carbon microbeads)、メソ相ピッチ(Mesophase pitches)、及び石油と石炭系コークス(petroleum or coal tar pitch derived cokes)などの高温焼成炭素が代表的である。
【0095】
前記負極活物質は、負極活物質層の総重量に対して80重量%~99重量%で含まれてよい。
【0096】
前記バインダーは、導電材、活物質及び集電体の間の結合に助力する成分であって、通常、負極活物質層の総重量に対して0.1重量%~10重量%で含まれてよい。このようなバインダーの例としては、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンポリマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ニトリル-ブタジエンゴム、フッ素ゴム、これらの多様な共重合体などが挙げられる。
【0097】
前記導電材は、負極活物質の導電性をより向上させるための成分であって、負極活物質層の総重量に対して10重量%以下、好ましくは5重量%以下で添加されてよい。このような導電材は、当該電池に化学的変化を誘発することなく導電性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック;炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維;フッ化カーボン、アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体などの導電性素材などが使用されてよい。
【0098】
前記負極は、負極集電体上に負極活物質及び選択的に、バインダー及び導電材を溶媒中に溶解又は分散させて製造した負極合材を塗布して乾燥するか、又は前記負極合材を別途の支持体上にキャスティングした後、該支持体から剥離して得たフィルムを負極集電体上にラミネーションすることにより製造され得る。
【0099】
一方、前記リチウム二次電池において、分離膜は、負極と正極を分離し、リチウムイオンの移動通路を提供するものであって、通常、リチウム二次電池において分離膜として使用されるものであれば、特別な制限なしに使用可能であり、特に電解質のイオン移動に対して、低抵抗でありかつ電解液含浸能に優れているものが好ましい。具体的には、多孔性高分子フィルム、例えば、エチレン単独重合体、プロピレン単独重合体、エチレン/ブテン共重合体、エチレン/ヘキセン共重合体及びエチレン/メタクリレート共重合体などのようなポリオレフィン系高分子で製造した多孔性高分子フィルム又はこれらの2層以上の積層構造体が使用されてよい。また、通常の多孔性不織布、例えば、高融点のガラス繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維などからなる不織布が使用されてもよい。また、耐熱性又は機械的強度の確保のために、セラミック成分又は高分子物質が含まれているコーティングされた分離膜が使用されてもよく、選択的に単層又は多層構造で使用されてよい。
【0100】
また、本発明で使用される電解質としては、リチウム二次電池の製造時に使用可能な有機系液体電解質、無機系液体電解質、固体高分子電解質、ゲル状高分子電解質、固体無機電解質、溶融型無機電解質などが挙げられ、これらに限定されるものではない。
【0101】
具体的には、前記電解質は、有機溶媒及びリチウム塩を含んでよい。
【0102】
前記有機溶媒としては、電池の電気化学的反応に関与するイオンが移動できる媒質の役割をするものであれば、特別な制限なしに使用可能である。具体的には、前記有機溶媒としては、メチルアセテート(methyl acetate)、エチルアセテート(ethyl acetate)、γ-ブチロラクトン(γ-butyrolactone)、ε-カプロラクトン(ε-caprolactone)などのエステル系溶媒;ジブチルエーテル(dibutyl ether)又はテトラヒドロフラン(tetrahydrofuran)などのエーテル系溶媒;シクロヘキサノン(cyclohexanone)などのケトン系溶媒;ベンゼン(benzene)、フルオロベンゼン(fluorobenzene)などの芳香族炭化水素系溶媒;ジメチルカーボネート(dimethylcarbonate、DMC)、ジエチルカーボネート(diethylcarbonate、DEC)、メチルエチルカーボネート(methylethylcarbonate、MEC)、エチルメチルカーボネート(ethylmethylcarbonate、EMC)、エチレンカーボネート(ethylene carbonate、EC)、プロピレンカーボネート(propylene carbonate、PC)などのカーボネート系溶媒;エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどのアルコール系溶媒;R-CN(Rは、炭素数2~20の直鎖状、分岐状又は環構造の炭化水素基であり、二重結合芳香環又はエーテル結合を含んでよい)などのニトリル類;ジメチルホルムアミドなどのアミド類;1,3-ジオキソランなどのジオキソラン類;又はスルホラン(sulfolane)類などが使用されてよい。この中でも、カーボネート系溶媒が好ましく、電池の充放電性能を高めることができる高いイオン伝導度及び高誘電率を有する環状カーボネート(例えば、エチレンカーボネート又はプロピレンカーボネートなど)と、低粘度の線状カーボネート系化合物(例えば、エチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネート又はジエチルカーボネートなど)の混合物がより好ましい。この場合、環状カーボネートと鎖状カーボネートは、約1:1~約1:9の体積比で混合して使用することが、電解液の性能が優れて示され得る。
【0103】
前記リチウム塩は、リチウム二次電池で使用されるリチウムイオンを提供することができる化合物であれば、特別な制限なしに使用可能である。具体的には、前記リチウム塩は、LiPF6、LiClO4、LiAsF6、LiBF4、LiSbF6、LiAlO4、LiAlCl4、LiCF3SO3、LiC4F9SO3、LiN(C2F5SO3)2、LiN(C2F5SO2)2、LiN(CF3SO2)2、LiCl、LiI、又はLiB(C2O4)2などが使用されてよい。前記リチウム塩の濃度は、0.1M~2.0Mの範囲内で使用することが好ましい。リチウム塩の濃度が前記範囲に含まれると、電解質が適切な伝導度及び粘度を有するので、優れた電解質性能を示すことができ、リチウムイオンが効果的に移動することができる。
【0104】
前記電解質には、前記電解質の構成成分の他にも、電池の寿命特性の向上、電池容量減少の抑制、電池の放電容量の向上などを目的として、例えば、ジフルオロエチレンカーボネートなどのようなハロアルキレンカーボネート系化合物、ピリジン、トリエチルホスファイト、トリエタノールアミン、環状エーテル、エチレンジアミン、n-グライム(glyme)、ヘキサリン酸トリアミド、ニトロベンゼン誘導体、硫黄、キノンイミン染料、N-置換オキサゾリジノン、N,N-置換イミダゾリジン、エチレングリコールジアルキルエーテル、アンモニウム塩、ピロール、2-メトキシエタノール又は三塩化アルミニウムなどの添加剤が1種以上さらに含まれてもよい。この際、前記添加剤は、電解質の総重量に対して0.1重量%~5重量%で含まれてよい。
【0105】
前記のように、本発明に係る正極活物質を含むリチウム二次電池は、優れた放電容量、出力特性及び寿命特性を安定的に示すので、携帯電話、ノートパソコン、デジタルカメラなどの携帯用機器、及びハイブリッド電気自動車(hybrid electric vehicle、HEV)などの電気自動車分野などに有用である。
【0106】
これにより、本発明の他の一具現例によれば、前記リチウム二次電池を単位セルとして含む電池モジュール及びこれを含む電池パックが提供される。
【0107】
前記電池モジュール又は電池パックは、パワーツール(Power Tool);電気自動車(Electric Vehicle、EV)、ハイブリッド電気自動車、及びプラグインハイブリッド電気自動車(Plug-in Hybrid Electric Vehicle、PHEV)を含む電気車;又は電力貯蔵用システムのうち何れか一つ以上の中大型デバイスの電源として用いられてよい。
【0108】
本発明のリチウム二次電池の外形は、特別な制限がないが、缶を使用した円筒形、角形、パウチ(pouch)型又はコイン(coin)型などになり得る。
【0109】
本発明に係るリチウム二次電池は、小型デバイスの電源として使用される電池セルに使用され得ると共に、多数の電池セルを含む中大型電池モジュールに単位電池としても好ましく使用され得る。
【0110】
以下、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように、本発明の実施例に対して詳細に説明する。しかし、本発明は、様々な異なる形態で具現され得、ここで説明する実施例に限定されない。
【0111】
実施例及び比較例
下記実施例及び比較例で使用された遷移金属含有溶液、アンモニウムイオン含有溶液及び塩基性水溶液は、以下の通りである。
【0112】
(A)遷移金属含有溶液
NiSO4、CoSO4及びMnSO4を、ニッケル:コバルト:マンガンのモル比が0.88:0.05:0.07になるようにする量で蒸留水に溶解して製造した2Mの濃度の遷移金属含有溶液
(B)アンモニウムイオン含有溶液
15重量%の濃度のNH4OH水溶液
(C)塩基性水溶液
25重量%の濃度のNaOH水溶液
【0113】
実施例1
フィルター及びポンプが備えられた反応器の総体積の20%を蒸留水で満たし、窒素ガスを反応器に10L/分の速度でパージングして水中の溶存酸素を除去した。その後、NH4OH水溶液を蒸留水100重量部に対して5重量部の含量で投入し、NaOH水溶液を投入してpHを12.2に維持し、連続反応器の内部温度を50℃に維持し、250rpmの撹拌速度で撹拌した。
【0114】
その後、前記反応器に遷移金属含有溶液を250ml/min、NH4OH水溶液を40ml/min、NaOH水溶液を反応溶液がpH12.2を維持するようにする速度でそれぞれ反応器に連続的に供給して撹拌しながら2時間共沈反応を行って、正極活物質用前駆体粒子核を形成した。
【0115】
前記共沈反応過程で、反応溶液が満液に達した時、フィルターを作動させて濾液を連続的に排出することにより、反応溶液の水位が一定に維持され得るようにした。
【0116】
その後、NaOH水溶液及びNH4OH水溶液を追加で投入して、反応溶液のpHを11.6になるように調節し、共沈反応を追加で86時間進行して、正極活物質用前駆体粒子を成長させた。
【0117】
前記追加共沈反応時に、前記反応器内で形成される正極活物質用前駆体粒子の粒径が14.5μmに達した時、ポンプを作動させて正極活物質用前駆体粒子を含む反応溶液を1L/hrの速度で反応終了時点まで集水槽で抽出することにより、反応溶液内の固形分濃度を85%以下に維持させた。
【0118】
その後、形成された正極活物質用前駆体粒子を反応溶液から分離して水洗した後、130℃の乾燥器で24時間乾燥させて、組成式Ni0.88Co0.05Mn0.07(OH)2である正極活物質用前駆体を得た。
【0119】
前記のように製造された正極活物質用前駆体に対して、LiOH・H2Oが1.03当量になるように、前駆体20kg、LiOH・H2O 9.541kg及びAl(OH)3 225gを混合した後、酸素雰囲気下において765℃で13.5時間焼成して、組成式Li[Ni0.86Co0.05Mn0.07Al0.02]O2であるリチウム遷移金属酸化物を製造した。
【0120】
前記のように製造されたリチウム遷移金属酸化物を水洗した後、B(OH)3粉末を、リチウム遷移金属酸化物に対して1000ppmの含量になるように混合し、295℃で5時間熱処理してリチウム遷移金属酸化物の表面にコーティング層が形成された正極活物質を製造した。
【0121】
実施例2
正極活物質用前駆体粒子核の形成時、共沈反応時間を1時間に調節し、追加共沈反応時に前記反応器内で形成される正極活物質用前駆体粒子の粒径が9.5μmに達した時、ポンプを作動させて正極活物質用前駆体粒子を含む反応溶液を抽出したことを除き、前記実施例1と同様の方法で正極活物質を製造した。
【0122】
比較例1
Zoomwe社から、平均粒径(D50)が15μmであり、Ni0.88Co0.05Mn0.07(OH)2で表される前駆体を購買して使用することを除き、実施例1と同様の方法で正極活物質を製造した。
【0123】
実験例
実験例1:正極活物質用前駆体のシェル部を形成する1次粒子の(001)面における結晶粒の大きさに対する(100)面における結晶粒の大きさの比の確認
実施例1、2及び比較例1の正極活物質用前駆体のそれぞれをXRDで測定した後、XRDデータ(100)ピークの半価幅値を使用して得た結晶粒の大きさを、(001)ピークの半価幅値を使用して得た結晶粒の大きさで割って、シェル部を形成する1次粒子の(001)面における結晶粒の大きさに対する(100)面における結晶粒の大きさの比を表1に示し、これを配向性の尺度として使用した。
【0124】
コア部を囲んで粒子中心から外部方向に配向した1次粒子で形成されるシェル部において、前記シェル部を形成する1次粒子の(001)面における結晶粒の大きさに対する(100)面における結晶粒の大きさの比が3以上である場合、配向性が大きいと言える。
【0125】
【0126】
実験例2:正極活物質用前駆体及び正極活物質の物性の確認
(1)平均粒径(D50)
粒度分布測定装置(Microtrac社のS-3500)を用いて、実施例1、2及び比較例1の正極活物質用前駆体と正極活物質の平均粒径を測定し、その結果を下記表2に示した。
【0127】
(2)粒子強度
実施例1、2及び比較例1の正極活物質サンプルを採取した後、採取されたサンプルに徐々に圧力を増加させ、正極活物質粒子にクラックが発生する時点を測定して圧力単位(MPa)に換算し、その結果を下記表2に示した。
【0128】
【0129】
前記表1及び2を参照すれば、実施例1及び2の正極活物質は、シェル部を形成する1次粒子の(001)面における結晶粒の大きさに対する(100)面における結晶粒の大きさの比が3以上であって、1次粒子が粒子中心部から外部方向に大きい配向性を有するシェル部を含む正極活物質用前駆体から製造され、比較例1の正極活物質に比べて粒子強度が顕著に優れていることを確認することができる。
【0130】
一方、実施例1及び2の正極活物質の場合には、正極活物質(リチウム遷移金属酸化物)の平均粒径が、正極活物質用前駆体の平均粒径に比べてそれぞれ3.3%、4.0%収縮されたのに対し、比較例1の正極活物質の場合には、正極活物質の平均粒径が、正極活物質用前駆体の平均粒径と同一であることを確認することができる。すなわち、本発明の製造方法により正極活物質を製造すると、粒子の収縮が発生して、粒子の緻密度に優れていることを確認することができる。
【0131】
実験例3:正極活物質用前駆体のコア部の直径に対するシェル部の厚さの比の確認
実施例1、2及び比較例1の正極活物質用前駆体の断面を走査電子顕微鏡で撮影してコア部の直径とシェル部の厚さとを確認して、コア部の直径に対するシェル部の厚さの比を下記表3に示した。
【0132】
【0133】
実験例4:電池特性の評価
実施例1、2及び比較例1で製造した正極活物質を用いてリチウム二次電池を製造し、リチウム二次電池のそれぞれに対して容量を評価した。
【0134】
具体的には、実施例1、2及び比較例1で製造した正極活物質のそれぞれと、FX35導電材及びKF9700/BM730Hバインダーを97.5:1:1.35:0.15の重量比でNMP溶媒中で混合して正極スラリーを製造した。前記正極スラリーをアルミニウム集電体の片面に塗布し、130℃で乾燥した後、圧延して正極を製造した。一方、負極活物質としてLi金属ディスク(Li metal disk)を使用した。前記で製造した正極と負極との間に分離膜を介在して電極組立体を製造した後、これを電池ケースの内部に位置させた後、前記ケースの内部に電解液を注入してリチウム二次電池を製造した。この際、電解液として、EC/EMC/DEC(3/3/4、vol%)有機溶媒に1MのLiPF6を溶解させた電解液を注入して、リチウム二次電池を製造した。
【0135】
前記のように製造されたリチウム二次電池を、25℃で0.1Cの定電流で電圧が4.25Vになるまで充電し、4.25Vの定電流で0.05Cになるまで充電した。その後、電圧が3.0Vに至るまで、0.1C定電流で放電した。充電容量及び放電容量の値を表4に示した。
【0136】
また、45℃ 3.0~4.25Vの範囲で、0.33Cの定電流で充放電サイクルを30回繰り返し実施してリチウム二次電池の容量を測定し、特に1回目のサイクル容量に対する30回目のサイクル容量の維持率を下記表4に示した。また、各サイクルでの放電開始後、60秒間の電圧降下を測定し、これを印加された電流値で割って高温での抵抗を測定したが、特に1回目のサイクル抵抗値に対する30回目のサイクル抵抗値の増加率を表4に示した。
【0137】
【0138】
前記表1~4により、シェル部を形成する1次粒子の(001)面における結晶粒の大きさに対する(100)面における結晶粒の大きさの比が3以上である正極活物質用前駆体を用いて製造された実施例1及び2の正極活物質を適用した二次電池は、シェル部を形成する1次粒子の(001)面における結晶粒の大きさに対する(100)面における結晶粒の大きさの比が3未満である正極活物質用前駆体を用いて製造された比較例1の正極活物質を適用した二次電池に比べて、優れた充電/放電容量特性を有することを確認することができる。これに加えて、電池の効率も優れていることを確認することができる。
【0139】
また、実施例1及び2の正極活物質を適用した二次電池の場合、比較例1の正極活物質を適用した二次電池に比べて、1回目のサイクル抵抗値に対する30回目のサイクル抵抗値の増加率が顕著に低いことから、抵抗特性改善の効果が優れていることを確認することができる。
【0140】
したがって、1次粒子がランダムに凝集したコア部;及び前記コア部を囲んで粒子中心から外部方向に配向した1次粒子で形成されるシェル部;を含み、前記コア部の直径に対するシェル部の厚さの比が1以上であり、前記シェル部を形成する1次粒子の(001)面における結晶粒の大きさに対する(100)面における結晶粒の大きさの比が3以上である正極活物質用前駆体を用いて正極活物質を製造することにより、リチウム遷移金属酸化物粒子が正極活物質用前駆体粒子に対して特定の割合で収縮されることから、粒子の緻密度が高くなるため、正極活物質の機械的強度を改善することができ、これを二次電池に適用する際に、電池の容量特性などが改善する効果を得ることができることを確認することができる。