(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-08
(45)【発行日】2023-12-18
(54)【発明の名称】二次電池用負極合剤、これを含む負極および二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/62 20060101AFI20231211BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20231211BHJP
H01M 4/133 20100101ALI20231211BHJP
H01M 4/139 20100101ALI20231211BHJP
H01M 4/587 20100101ALI20231211BHJP
【FI】
H01M4/62 Z
H01M4/13
H01M4/133
H01M4/139
H01M4/587
(21)【出願番号】P 2022528276
(86)(22)【出願日】2021-10-22
(86)【国際出願番号】 KR2021014869
(87)【国際公開番号】W WO2022086249
(87)【国際公開日】2022-04-28
【審査請求日】2022-05-16
(31)【優先権主張番号】10-2020-0138514
(32)【優先日】2020-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0141343
(32)【優先日】2021-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】チョルフン・チェ
(72)【発明者】
【氏名】ミン・ア・カン
(72)【発明者】
【氏名】スンジン・イ
【審査官】小森 重樹
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2020-0074889(KR,A)
【文献】特開2020-043064(JP,A)
【文献】国際公開第2019/168278(WO,A1)
【文献】特開2012-151108(JP,A)
【文献】特開2020-017504(JP,A)
【文献】特開2018-006334(JP,A)
【文献】特表2006-519280(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/62
H01M 4/13
H01M 4/133
H01M 4/139
H01M 4/587
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
負極活物質およびバインダー組成物を含む負極合剤であり、
前記バインダー組成物は、
疎水性作用基で変性されたアルカリ膨潤性エマルジョン(Hydrophobically modified alkali soluble emulsions、HASE);および
アクリルアミド(acrylamide、AAM)系第1単量体由来第1繰り返し単位、アクリル酸(acrylic Acid、AA)系第2単量体由来第2繰り返し単位およびアクリロニトリル(acrylic Nitrile、AN)系第3単量体由来第3繰り返し単位を含む共重合体;
を含み、
前記疎水性作用基で変性されたアルカリ膨潤性エマルジョン(HASE)および前記共重合体間の重量比が1:1~10であり、
前記負極合剤内の固形分の総量(100重量%)中、前記バインダー組成物の
固形分含有量が3~10重量%である、
二次電池用負極合剤。
【請求項2】
前記疎水性作用基で変性されたアルカリ膨潤性エマルジョン(HASE)は、
疎水性作用基および酸作用基を含むアクリルポリマーを含む、
請求項1に記載の二次電池用負極合剤。
【請求項3】
前記疎水性作用基および酸作用基を含むアクリルポリマーは、
下記化学式1で表される繰り返し単位および下記化学式2で表される繰り返し単位を含む共重合体である、
請求項2に記載の二次電池用負極合剤。
【化1】
(前記化学式1中、nは1~10の整数である。)
【請求項4】
前記疎水性作用基および酸作用基を含むアクリルポリマーの重量平均分子量は、
50,000~200,000g/molである、
請求項2又は3に記載の二次電池用負極合剤。
【請求項5】
前記疎水性作用基で変性されたアルカリ膨潤性エマルジョン(HASE)は、
分散媒として水をさらに含む、
請求項2~4のいずれか一項に記載の二次電池用負極合剤。
【請求項6】
前記疎水性作用基で変性されたアルカリ膨潤性エマルジョン(HASE)は、
20℃で粘度が300~5000cPである、
請求項1~5のいずれか一項に記載の二次電池用負極合剤。
【請求項7】
前記バインダー組成物の総量(100重量%)中、
前記疎水性作用基で変性されたアルカリ膨潤性エマルジョン(HASE)の含有量は、0.5~50重量%である、
請求項1~6のいずれか一項に記載の二次電池用負極合剤。
【請求項8】
前記共重合体の総量(100重量%)中、
前記第1繰り返し単位は35~90重量%含まれ、前記第2繰り返し単位は0.1~30重量%含まれ、前記第3繰り返し単位は5~40重量%含まれる、
請求項1~7のいずれか一項に記載の二次電池用負極合剤。
【請求項9】
前記負極活物質は、
人造黒鉛、天然黒鉛、ソフトカーボン、ハードカーボン、またはこれらの組み合わせである、
請求項1~
8のいずれか一項に記載の二次電池用負極合剤。
【請求項10】
導電剤をさらに含む、
請求項1~
9のいずれか一項に記載の二次電池用負極合剤。
【請求項11】
アクリルアミド(acrylamide、AAM)系第1単量体、アクリル酸(acrylic Acid、AA)系第2単量体およびアクリロニトリル(acrylic Nitrile、AN)系第3単量体を重合させて、共重合体を製造する段階;
前記共重合体と疎水性作用基で変性されたアルカリ膨潤性エマルジョン(Hydrophobically modified alkali soluble emulsions、HASE)を混合して、バインダー組成物を製造する段階;および
前記バインダー組成物と負極活物質を混合して、負極合剤を得る段階;を含み、
前記疎水性作用基で変性されたアルカリ膨潤性エマルジョン(HASE)および前記共重合体間の重量比が1:1~10であり、
前記バインダー組成物と負極活物質の混合時、前記負極合剤内の固形分の総量(100重量%)中、前記バインダー組成物の
固形分含有量が3~10重量%になるように制御する、
二次電池用負極合剤の製造方法。
【請求項12】
前記共重合体の製造時、
乳化重合を利用する、
請求項1
1に記載の二次電池用負極合剤の製造方法。
【請求項13】
負極集電体;および
前記負極集電体の一面または両面上に位置し、請求項1~1
0のいずれか一項に記載の負極合剤を含む負極合剤層を含む、
二次電池用負極。
【請求項14】
負極活物質;および
疎水性作用基で変性されたアルカリ膨潤性エマルジョン(Hydrophobically modified alkali soluble emulsions、HASE)由来ポリマー;およびアクリルアミド(acrylamide、AAM)系第1単量体由来第1繰り返し単位、アクリル酸(acrylic Acid、AA)系第2単量体由来第2繰り返し単位およびアクリロニトリル(acrylic Nitrile、AN)系第3単量体由来第3繰り返し単位を含む共重合体;を含むバインダー;を含み、
前記疎水性作用基で変性されたアルカリ膨潤性エマルジョン(HASE)由来ポリマーおよび前記共重合体間の重量比が1:1~10である、二次電池用負極。
【請求項15】
前記疎水性作用基で変性されたアルカリ膨潤性エマルジョン由来ポリマーは、
下記化学式1で表される繰り返し単位および下記化学式2で表される繰り返し単位を含むアクリルポリマーを含み、負極内に乾燥された状態の固相で存在する、
請求項1
4に記載の二次電池用負極。
【化2】
(前記化学式1中、nは1~10の整数である。)
【請求項16】
前記アクリルポリマーは、重量平均分子量が50,000~200,000g/molである、請求項1
5に記載の二次電池用負極。
【請求項17】
請求項1
3または1
4に記載の負極;電解質;および正極を含む、二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願(ら)との相互引用
本出願は、2020年10月23日付韓国特許出願第10-2020-0138514号および2021年10月21日付韓国特許出願第10-2021-0141343号に基づいた優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として組み含まれる。
【0002】
本発明は、二次電池用負極合剤、これを含む負極および二次電池に関する。
【背景技術】
【0003】
従来、小型電子デバイスに限定されていた二次電池の応用分野が自動車、電力貯蔵などの多様な分野に拡大しつつ、二次電池の性能を改善するための多様な努力が行われている。
【0004】
一例として、負極活物質の含有量が高い負極を利用して、二次電池の容量および効率を上げる方法が提案されている。ただし、負極活物質の含有量を高めるほど、負極合剤のスラリー相を不安定にし、後工程での欠陥を起こることがある。
【0005】
通常、溶媒内で負極活物質および負極バインダーを混合してスラリー相の負極合剤を製造し、負極バインダーとしてはSBL(スチレンブタジエンラテックス:Styrene Butadiene Latex)を使用し、分散剤であると共に増粘剤の役割を果たすCMC(カルボキシメチルセルロースナトリウム:Sodium Carboxymethyl Cellulose)を添加して負極合剤の粘度を調節する。
【0006】
ここで、SBLは、接着力が低く、CMCの脆性があるため、負極合剤内のSBLおよびCMCが十分に含まれる必要がある。しかし、二次電池の高容量化および高効率化のために負極活物質の含有量を高めると、SBLおよびCMCの含有量は不可避に減少しなければならない。
【0007】
負極合剤内の負極活物質の含有量が増加し、SBLおよびCMCの含有量が減少するほど、負極合剤のスラリー相が不安定になり、後工程(例えば、負極合剤を負極集電体上に塗布および乾燥した後に圧延する過程)で負極活物質の脱離および圧延ロールの汚染を招き得る。
【0008】
したがって、負極合剤のスラリー相の安定性を確保しながら、後工程での欠陥を減らすためには、今までとは異なる組成の負極合剤を研究する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本明細書は、SBLおよびCMCを代替する新たな組成のバインダー組成物を適用した負極合剤およびその製造方法、負極合剤を含む負極および二次電池を提供することにある。
【0010】
また、本明細書は、前記負極合剤を含む二次電池用負極および二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
具体的に、本発明の一実施形態では、負極活物質およびバインダー組成物を含む負極合剤であり、
前記バインダー組成物は、
疎水性作用基で変性されたアルカリ膨潤性エマルジョン(Hydrophobically modified alkali soluble emulsions、HASE);および
アクリルアミド(acrylamide、AAM)系第1単量体由来第1繰り返し単位、アクリル酸(acrylic Acid、AA)系第2単量体由来第2繰り返し単位およびアクリロニトリル(acrylic Nitrile、AN)系第3単量体由来第3繰り返し単位を含む共重合体;
を含み、
前記負極合剤内の固形分の総量(100重量%)中、前記バインダー組成物の含有量が3~10重量%である、
二次電池用負極合剤を提供する。
【0012】
本発明の他の一実施形態では、
アクリルアミド(acrylamide、AAM)系第1単量体、アクリル酸(acrylic Acid、AA)系第2単量体およびアクリロニトリル(acrylic Nitrile、AN)系第3単量体を重合させて、共重合体を製造する段階;
前記共重合体と疎水性作用基で変性されたアルカリ膨潤性エマルジョン(Hydrophobically modified alkali soluble emulsions、HASE)を混合して、バインダー組成物を製造する段階;および
前記バインダー組成物と負極活物質を混合して、負極合剤を得る段階;を含み、
前記バインダー組成物と負極活物質の混合時、前記負極合剤内の固形分の総量(100重量%)中、前記バインダー組成物の含有量が3~10重量%になるように制御する、
二次電池用負極合剤の製造方法を提供する。
【0013】
また、本発明のまた他の一実施形態では、負極集電体;および
前記負極集電体の一面または両面上に位置し、前記負極合剤を含む負極合剤層を含む、二次電池用負極を提供する。
【0014】
本発明のまた他の一実施形態では、負極活物質;および
疎水性作用基で変性されたアルカリ膨潤性エマルジョン(Hydrophobically modified alkali soluble emulsions、HASE)由来ポリマー;およびアクリルアミド(acrylamide、AAM)系第1単量体由来第1繰り返し単位、アクリル酸(acrylic Acid、AA)系第2単量体由来第2繰り返し単位およびアクリロニトリル(acrylic Nitrile、AN)系第3単量体由来第3繰り返し単位を含む共重合体;を含むバインダー;を含み、
前記疎水性作用基で変性されたアルカリ膨潤性エマルジョン(HASE)由来ポリマーおよび前記共重合体間の重量比が1:1~10である、二次電池用負極が提供され得る。
【0015】
また、本発明の一側面による一実施形態では、前記負極;電解質;および正極を含む、二次電池を提供する。
【発明の効果】
【0016】
前記一実施形態の二次電池用負極合剤は、AAM/AA/AN共重合体と共にHASEの混合物であるバインダー組成物を特定の固形分の含有量範囲で含むことによって、一つのバインダー組成物からバインダーおよび増粘剤の機能を全て実現することができる。
【0017】
特に、前記バインダー組成物が特定の含有量範囲で含まれている負極合剤は、負極の高い初期接着力を確保し、負極スリッティング時の脱離面積を低減し、負極の初期抵抗を低めて、究極的には二次電池の寿命を改善することができる。
【0018】
したがって、前記バインダー組成物が特定の含有量範囲で含まれている負極合剤は、SBLおよびCMCを含む負極合剤を代替することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明において、第1、第2などの用語は、多様な構成要素を説明することに使用され、前記用語は一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的のみで使用される。
【0020】
また、本明細書で使用される用語は、単に例示的な実施例を説明するために使用されたものであって、本発明を限定しようとする意図ではない。単数の表現は、文脈上明白に異なって意味しない限り、複数の表現を含む。本明細書において、「含む」、「備える」または「有する」などの用語は、実施された特徴、数字、段階、構成要素またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであり、一つまたはそれ以上の他の特徴や数字、段階、構成要素、またはこれらを組み合わせたものの存在または付加可能性を予め排除しないものと理解されなければならない。
【0021】
また本発明において、各層または要素が各層または要素の「上に」に形成されるものと言及される場合には、各層または要素が直接各層または要素の上に形成されることを意味したり、他の層または要素が各層の間、対象体、基材上に追加的に形成され得ることを意味する。
【0022】
本発明は、多様な変更を加えることができ、様々な形態を有することができるところ、特定の実施例を例示して下記で詳細に説明する。しかし、これは本発明を特定の開示形態に対して限定しようとするものではなく、本発明の思想および技術範囲に含まれる全ての変更、均等物乃至代替物を含むものと理解されなければならない。
【0023】
本明細書において、重量平均分子量は、GPC法により測定したポリスチレン換算の重量平均分子量を意味する。前記GPC法により測定したポリスチレン換算の重量平均分子量を測定する過程では、通常知られた分析装置と示差屈折検出器(Refractive Index Detector)などの検出器および分析用カラムを使用することができ、通常適用される温度条件、溶媒、流速(flow rate)を適用することができる。前記測定条件の具体的な例を挙げると、Polymer Laboratories PLgel MIX-B 300mm長さのカラムを利用し、Waters PL-GPC220機器を利用し、評価温度は160℃であり、1,2,4-トリクロロベンゼンを溶媒として使用し、流速は1mL/分の速度で、サンプルは10mg/10mLの濃度に調製した後、200μLの量で供給し、ポリスチレン標準を利用して形成された検定曲線を利用してMwの値を求めることができる。ポリスチレン標準品の分子量は、2,000/10,000/30,000/70,000/200,000/700,000/2,000,000/4,000,000/10,000,000の9種を使用した。
【0024】
二次電池用負極合剤
本発明の一実施形態では、負極活物質およびバインダー組成物を含む負極合剤を提供する。
【0025】
前記バインダー組成物は、疎水性作用基で変性されたアルカリ膨潤性エマルジョン(Hydrophobically modified alkali soluble emulsions、HASE);およびアクリルアミド(acrylamide、AAM)系第1単量体由来第1繰り返し単位、アクリル酸(acrylic Acid、AA)系第2単量体由来第2繰り返し単位およびアクリロニトリル(acrylic Nitrile、AN)系第3単量体由来第3繰り返し単位を含む共重合体(以下、場合によっては前記共重合体を「AAM/AA/AN共重合体」と称する);を含む。
【0026】
また、前記負極合剤内の固形分の総量(100重量%)中、前記バインダー組成物の含有量は3~10重量%または4~10重量%の特定範囲に制限されることを特徴とする。
【0027】
前記疎水性作用基で変性されたアルカリ膨潤性エマルジョン(HASE)は、陰イオン基、疎水性基および非イオン基を含有する共重合体であって、水に不溶性であり、ラテックス形態で存在することができる。
【0028】
前記ラテックス形態のHASEは、粘度が非常に高いため(粘度:300~5000cP@20℃)、水溶液の粘度を高めるのに使用することができる。
【0029】
一方、前記共重合体において、それぞれの繰り返し単位は単量体に由来する。例えば、前記第1繰り返し単位は第1単量体から形成された構造単位に該当する。
【0030】
前記第1単量体はアクリルアミド(acrylamide、AAM)であり、前記第2単量体はアクリル酸(acrylic Acid、AA)であり、前記第3単量体はアクリロニトリル(acrylic Nitrile、AN)であり得る。
【0031】
前記AAM/AA/AN共重合体において、AAM系第1繰り返し単位は高いTgにより二次電池の寿命特性を向上させることができ;AA系第2繰り返し単位はその親水性(hydrophilic)に基づいて電極の接着力を向上させることができ;AN系第3繰り返し単位はその疎水性(hydrophobic)に基づいて電解液の耐薬品性を高め、二次電池の寿命特性を向上させることができる。
【0032】
前記HASEおよび前記AAM/AA/AN共重合体を含むバインダー組成物は、一つのバインダー組成物からバインダーおよび増粘剤の機能を全て実現することができる。このような意味から、前記バインダー組成物は「バインダーおよび増粘剤の機能が一つのバインダー組成物から実現される一液形バインダー」、略称して「一液形バインダー」といえる。
【0033】
つまり、本明細書では、負極活物質、疎水性作用基で変性されたアルカリ膨潤性エマルジョン(HASE)およびバインダーをそれぞれ別途に混合して使用するのではなく、疎水性作用基で変性されたアルカリ膨潤性エマルジョン(HASE)と特定の3個の繰り返し単位を含むAAM/AA/AN共重合体とを予め混合した一液形バインダーを使用して、負極活物質と混合することを特徴とする。
【0034】
また、本明細書によるバインダーは、一般に使用されるバインダーではなく、AAM/AA/AN共重合体を使用する。
【0035】
さらに、本明細書によれば、前記疎水性作用基で変性されたアルカリ膨潤性エマルジョン(HASE)とAAM/AA/AN共重合体を含む一液形バインダー組成物を使用時、その固形分の含有量範囲を特定の含有量範囲で含むことによって、負極合剤の特性向上を最適化させることができる。したがって、本明細書による負極合剤を使用すると、負極の高い初期接着力を確保し、負極スリッティング時の脱離面積を低減し、負極の初期抵抗を低めて、究極的には二次電池の寿命を改善することができる。
【0036】
前記バインダー組成物において、前記HASEおよび前記AAM/AA/AN共重合体のうちのいずれか一つでも排除される場合、前記物質の機能が調和をなすことができず、負極の初期接着力、負極スリッティング時の脱離面積、負極の初期抵抗、究極的には二次電池の寿命特性が低下することがある。
【0037】
特に、前記バインダー組成物が特定の含有量範囲で含まれている負極合剤は、負極の高い初期接着力を確保し、負極スリッティング時の脱離面積を低減し、負極の初期抵抗を低めて、究極的には二次電池の寿命を改善することができる。
【0038】
したがって、前記バインダー組成物が特定の含有量範囲で含まれている負極合剤は、SBLおよびCMCを含む負極合剤に代替することができる。
【0039】
以下、前記一実施形態の負極合剤をより詳細に説明する。
【0040】
バインダー組成物(一液形バインダー)の含有量
前述したとおり、前記HASEおよび前記AAM/AA/AN共重合体を全て含む負極合剤内の固形分の総量(100重量%)中、前記バインダー組成物の固形分含有量は3~10重量%または4~10重量%の範囲に特定されて使用する特徴がある。この時、前記バインダー組成物内の固形分の含有量範囲は、バインダー組成物総量(100重量%)中、前記HASEの含有量0.5~50重量%および残りの含有量のAAM/AA/AN共重合体になるように秤量した後に混合し、物理的混合を行いながら調節され得る。
【0041】
前記HASEおよび前記AAM/AA/AN共重合体を全て含んでも、これらを含むバインダー組成物の前記負極合剤内の固形分の総量(100重量%)中の含有量が3重量%未満である場合、その効果が微々であり、その反対に10重量%を超える場合にはむしろ負極活物質の含有量が減少して二次電池の容量および効率が減少することがある。
【0042】
したがって、前記前記負極合剤内の固形分の総量(100重量%)中、前記バインダー組成物の含有量が3~10重量%を満たす時、より良くは4~10重量%を満たす時、ようやく前記の優れた特性が実現され得る。
【0043】
ここで、「負極合剤内の固形分」は、負極活物質およびバインダー組成物を含み、導電剤など固体物質が添加される場合、これを追加的に含み、スラリー形成のために添加される溶媒は除く。
【0044】
疎水性作用基で変性されたアルカリ膨潤性エマルジョン(HASE)
前記HASEは、酸作用基を有するアクリルポリマーが水に分散された分散液であり、pH5以下の酸性雰囲気では高分子鎖がかたまって固いコイル型構造を有するが、pH7以上の塩基雰囲気では高分子鎖が広がりながら膨張する特性を有している。この時、前記酸作用基を有するアクリルポリマーは、ポリ(メタ)アクリル酸などであり得るが、これに限定されるのではない。
【0045】
本発明では前記のようなアルカリ膨潤性エマルジョンに疎水性作用基を有するモノマーを共重合して疎水性作用基を有するように変性されたアルカリ膨潤性エマルジョンを使用する。この時、前記疎水性作用基は、長鎖を有する脂肪族炭化水素であり得、例えば、炭素数5~20のアルキル基であり得る。
【0046】
具体的には、前記疎水性作用基で変性されたアルカリ膨潤性エマルジョンは、疎水性作用基および酸作用基を含むアクリルポリマーが水に分散されたものであり得、より具体的には、酸作用基を有する高分子電解質主鎖に疎水性作用基ペンダント基で結合しているアクリルポリマーが水に分散されてラテックス形態を形成したものであり得る。
【0047】
より具体的な例を挙げると、前記疎水性作用基および酸作用基を含むアクリルポリマーは、下記化学式1で表される繰り返し単位および下記化学式2で表される繰り返し単位を含む共重合体であり得、ここで下記化学式1で表される繰り返し単位は疎水性作用基であり、下記化学式2で表される繰り返し単位は酸作用基に該当する。
【0048】
【化1】
前記化学式1中、nは1~10の整数である。
【0049】
前記HASEとしては、市販される製品を購入して使用することができ、例えば、BASF社のASE、HASE、HEURなどを使用することができる。
【0050】
前記HASEは、重量平均分子量が50,000~200,000g/molであり得る。例えば、前記HASEは、重量平均分子量が50,000g/mol以上、70,000g/mol以上、90,000g/mol以上、または100,000g/mol以上であり、200,000g/mol以下、180,000g/mol以下、160,000g/mol以下、または140,000g/mol以下であり得る。このような重量平均分子量の条件を満たすHASEは、AAM/AS/AN共重合体と併用時、特定の含有量で使用されるバインダー組成物の粘度を最適化して、負極の初期接着力を向上させ、負極スリッティング時に電極脱離量が低く、負極の初期抵抗を向上させて、二次電池の寿命特性を向上させることができる負極合剤を提供することができる。
【0051】
先に言及したとおり、前記ラテックス形態のHASEは、20℃で粘度が300~5000Cpと非常に高いため、水溶液の粘度を高めるのに使用することができる。
【0052】
そこで、前記HASEを負極スラリー組成物に添加する場合、粘度が制御されてスラリー組成物の安定性が向上することができる。
【0053】
また、前記HASEは、エマルジョン状態でAAM/AA/AN共重合体を含むバインダー組成物に添加されて、負極の製造に使用することができ、前記HASEは、乾燥後に固相で負極に存在することができる。前記固相は、HASEおよびAAM/AA/AN共重合体の混合物が分散された状態を含むことができる。
【0054】
前記HASEおよび前記AAM/AA/AN共重合体を含むバインダー組成物総量(100重量%)中、前記HASEの含有量はスラリー総量で0.5~50重量%であり得る。
【0055】
ただし、前記バインダー組成物内の疎水性作用基で変性されたアルカリ膨潤性エマルジョン(HASE)の含有量が増加するほど、電極スラリー安定性が向上するが、電極接着力は減少することがあり、減少するほど、電極の接着力は上昇するが、電極スラリー安定性が低くなって相変化が発生することがある。
【0056】
このような傾向性を考慮して、前記疎水性作用基で変性されたアルカリ膨潤性エマルジョン(HASE)の含有量は、前記バインダー組成物の総量(100重量%)中、0.5重量%以上、5重量%以上、15重量%以上、または25重量%以上とし、50重量%以下、45重量%以下、40重量%以下、または35重量%以下とすることができる。一方、前記バインダー組成物の総量(100重量%)中、前記HASEの含有量を除いた残部は、AAM/AA/AN共重合体が占める。
【0057】
AAM/AA/AN共重合体
前記バインダー組成物の総量(100重量%)中の前記AAM系第1繰り返し単位は35~90重量%、具体的に40~85重量%、例えば50~80重量%含まれ;前記AA系第2繰り返し単位は0.1~30重量%、具体的に1~28重量%、例えば3~25重量%含まれ;前記AN系第3繰り返し単位は5~40重量%、具体的に10~35重量%、例えば15~30重量%含まれ得る。
【0058】
この範囲で、前記各繰り返し単位の特性が調和をなして二次電池の寿命特性を向上させることができる。
【0059】
また前記AAM/AA/AN共重合体は、前記第1~第3繰り返し単位を含む単量体と重合開始剤を利用した重合反応を通じて提供され得る。
【0060】
また、前記AAM/AA/AN共重合体は、固形分含有量が30~60重量%あるいは40~50重量%であるバインダーラテックスで形成され得る。このような前記AAM/AA/AN共重合体は、200,000~800,000Mwの重量平均分子量を有することができる。
【0061】
負極活物質
前記負極活物質は、前記負極合剤内の固形分の総量(100重量%)中、85~95.5重量%で含まれ得る。
【0062】
先に言及したとおり、前記負極活物質の含有量が増加するほど二次電池が高容量化および高効率化され得る。ただし、前記負極活物質の含有量が増加することによって、前記バインダー組成物の含有量が相対的に減少しなければならないという問題がある。
【0063】
このような傾向を考慮して前記バインダー組成物の含有量を調節することができ、これによって、前記負極活物質の含有量が決定され得る。
【0064】
前記負極活物質は、リチウムイオンを可逆的にインターカレーション/デインターカレーションすることができる物質、リチウム金属、リチウム金属の合金、リチウムをドープおよび脱ドープすることができる物質、または遷移金属酸化物を含む。
【0065】
前記リチウムイオンを可逆的にインターカレーション/デインターカレーションすることができる物質としては、炭素物質であって、リチウムイオン二次電池において一般に使用される炭素系負極活物質は如何なるものでも使用することができ、その代表的な例としては、結晶質炭素、非晶質炭素またはこれらの組み合わせを使用することができる。前記結晶質炭素の例としては、無定形、板状、鱗片状(flake)、球状または繊維状の天然黒鉛または人造黒鉛のような黒鉛が挙げられ、前記非晶質炭素の例としては、ソフトカーボン(soft carbon:低温焼成炭素)またはハードカーボン(hard carbon)、メソフェーズピッチ炭化物、焼成されたコークスなどが挙げられる。
【0066】
前記リチウム金属の合金としては、リチウムとNa、K、Rb、Cs、Fr、Be、Mg、Ca、Sr、Si、Sb、Pb、In、Zn、Ba、Ra、Ge、AlまたはSnの金属との合金を使用することができる。
【0067】
前記リチウムをドープおよび脱ドープすることができる物質としては、Si、SiOx(0<x<2)、Si-C複合体、Si-Q合金(前記Qは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、第13族~第16族元素、遷移金属、希土類元素またはこれらの組み合わせであり、Siではない。)、Sn、SnO2、Sn-C複合体、Sn-R(前記Rは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、第13族~第16族元素、遷移金属、希土類元素またはこれらの組み合わせであり、Snではない。)などが挙げられる。前記QおよびRの具体的な元素としては、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra、Sc、Y、Ti、Zr、Hf、Rf、V、Nb、Ta、Db、Cr、Mo、W、Sg、Tc、Re、Bh、Fe、Pb、Ru、Os、Hs、Rh、Ir、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、B、Al、Ga、Sn、In、Ti、Ge、P、As、Sb、Bi、S、Se、Te、Poまたはこれらの組み合が挙げられる。
【0068】
前記遷移金属酸化物としては、バナジウム酸化物、リチウムバナジウム酸化物などが挙げられる。
【0069】
例えば、前記負極活物質は、人造黒鉛、天然黒鉛、ソフトカーボン、ハードカーボン、またはこれらの組み合わせである炭素系負極活物質を含むことができる。
【0070】
導電剤
一方、前記負極合剤は、導電剤をさらに含むことができる。前記導電剤は、電極に導電性を付与するために使用されるものであって、構成される電池において、化学変化を生じさせない電子伝導性材料であれば如何なるものでも使用可能であり、その例として天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素繊維などの炭素系物質;銅、ニッケル、アルミニウム、銀などの金属粉末または金属繊維などの金属系物質;ポリフェニレン誘導体などの導電性ポリマー;またはこれらの混合物を含む導電性材料を使用することができる。
【0071】
例えば、前記導電剤は、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、炭素繊維、またはこれらの混合物を含む炭素系導電剤群より選択される少なくとも一つを含むことができる。
【0072】
前記導電剤は、前記負極合剤内の固形分の総量(100重量%)中、0.5~3重量%で含まれ得る。
【0073】
二次電池用負極合剤の製造方法
本発明の他の一実施形態では、アクリルアミド(acrylamide、AAM)系第1単量体、アクリル酸(acrylic Acid、AA)系第2単量体およびアクリロニトリル(acrylic Nitrile、AN)系第3単量体を重合させて、共重合体を製造する段階;前記共重合体と疎水性作用基で変性されたアルカリ膨潤性エマルジョン(Hydrophobically modified alkali soluble emulsions、HASE)を混合して、バインダー組成物を製造する段階;および前記バインダー組成物と負極活物質を混合して、負極合剤を得る段階;を含む、二次電池用負極合剤の製造方法を提供する。
【0074】
ただし、前記バインダー組成物と負極活物質の混合時、前記負極合剤内の固形分の総量(100重量%)中、前記バインダー組成物の含有量が3~10重量%になるように制御する。
【0075】
前記製造方法は、AAM/AA/AN共重合体の製造後、HASEと前述した比率で混合してバインダー組成物(一液形バインダー)を製造し、これを負極活物質を混合する簡単な工程を通じて、前述した優れた特性の負極合剤を得ることができる方法に該当する。
【0076】
以下、前述した内容と重複する説明は省略し、前記各段階を詳細に説明する。
【0077】
AAM/AA/AN共重合体の製造工程
前記AAM/AA/AN共重合体の製造時、乳化重合を利用することができる。
【0078】
具体的に、AAM/AA/AN共重合体の組成を考慮して単量体混合物を製造し、乳化剤および重合開始剤の存在下で乳化重合して、ラテックス形態のAAM/AA/AN共重合体組成物を得ることができる。
【0079】
より具体的に、前記第1単量体35~90重量%、前記第2単量体0.1~30重量%および前記第3単量体5~40重量%を含む単量体混合物を乳化剤および重合開始剤の存在下で乳化重合することができる。
【0080】
前記単量体混合物内の各単量体の含有量に関する説明は、前記AAM/AA/AN共重合体内の各繰り返し単位の含有量に関する説明と同一である。
【0081】
前記乳化重合は、単一重合または多段重合により行われ得る。ここで、単一重合は、使用される単量体を単一反応器に入れて同時に重合させる方法を意味し、多段重合は使用される単量体を2段以上に順次に重合させる方法を意味する。
【0082】
前記乳化重合は、水性溶媒を含む溶液内で乳化剤および重合開始剤の存在下で行われ得る。
【0083】
前記乳化重合の重合温度および重合時間は、場合により適切に決定することができる。例えば、重合温度は約50℃~約200℃であり得、重合時間は約0.5時間~約20時間であり得る。
【0084】
前記乳化重合時に使用可能な重合開始剤としては、無機または有機過酸化物を使用することができ、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウムなどを含む水溶性開始剤と、クメンヒドロペルオキシド、ベンゾイルペルオキシドなどを含む油溶性開始剤を使用することができる。
【0085】
また、前記重合開始剤と共に過酸化物の反応開始を促進させるために活性化剤をさらに含むことができ、このような活性化剤としては、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、ナトリウムエチレンジアミンテトラアセテート、硫酸第一鉄、およびデキストロースからなる群より選択された1種以上を使用することができる。
【0086】
そして、前記乳化重合のための乳化剤としては、ナトリウムドデシルジフェニルエーテルジスルホネート、ナトリウムラウリルスルフェート、ナトリウムドデシルベンゼンスルホンスルホネート、ジオクチルナトリウムスルホサクシネートなどの陰イオン系乳化剤、またはポリオキシエチレンラウリルエーテルのようなポリエチレンオキシドアルキルエーテル、ポリエチレンオキシドアルキルアリールエーテル、ポリエチレンオキシドアルキルアミン、ポリエチレンオキシドアルキルエステルなどの非イオン系乳化剤を使用することができる。このような乳化剤は、親水性(hydrophilic)基と疎水性(hydrophobic)基を同時に有している物質であって、乳化重合過程で、ミセル(micelle)構造を形成し、ミセル構造内部で各単量体の重合が起こり得るようにする。好ましくは、前記陰イオン系乳化剤および前記非イオン系乳化剤を単独あるいは2種以上混合して使用することができ、陰イオン乳化剤と非イオン乳化剤を混合して使用する場合よりも効果的であり得るが、本発明が必ずしもこのような乳化剤の種類に制限されるわけではない。
【0087】
そして、前記乳化剤は、例えば、前記共重合体の製造に使用される単量体成分総100重量部に対して、約0.01~約10重量部、約1~約10重量部、または約3~約5重量部で使用することができる。
【0088】
AAM/AA/AN共重合体とHASEの混合工程(バインダー組成物の製造工程)
前記AAM/AA/AN共重合体と前記HASEを混合してバインダー組成物を製造する時、前記バインダー組成物の総量(100重量%)中、前記疎水性作用基で変性されたアルカリ膨潤性エマルジョン(HASE)の含有量が0.5~50重量%になるようにすることができる。
【0089】
前記バインダー組成物内のHASEの含有量に関する説明は前述のとおりである。
【0090】
前記AAM/AA/AN共重合体と前記HASEの混合方法は特に限定されない。
【0091】
バインダー組成物と負極活物質の混合工程(負極合剤の製造工程)
前記バインダー組成物と負極活物質の混合時、前記バインダー組成物の含有量が3~10重量%になるように制御する時、ようやく負極合剤の優れた特性を実現することができ、これに関する説明は前述のとおりである。
【0092】
前記バインダー組成物と前記負極活物質の混合方法は特に限定されない。
【0093】
例えば、負極活物質および溶媒を含むバインダーフリースラリー(binder free slurry)を製造し、選択的に前記バインダーフリースラリーに導電剤を添加した後、前記バインダーフリースラリーとバインダー組成物を混合して負極合剤スラリーを製造することができる。
【0094】
負極および二次電池
本発明の他の一実施形態では、負極集電体;および前記負極集電体の一面または両面上に位置し、前述した負極合剤を含む負極合剤層を含む、二次電池用負極を提供する。
【0095】
本発明のまた他の一実施形態では、負極活物質;および
疎水性作用基で変性されたアルカリ膨潤性エマルジョン(Hydrophobically modified alkali soluble emulsions、HASE)由来ポリマー;およびアクリルアミド(acrylamide、AAM)系第1単量体由来第1繰り返し単位、アクリル酸(acrylic Acid、AA)系第2単量体由来第2繰り返し単位およびアクリロニトリル(acrylic Nitrile、AN)系第3単量体由来第3繰り返し単位を含む共重合体;を含むバインダー;を含み、
前記疎水性作用基で変性されたアルカリ膨潤性エマルジョン(HASE)由来ポリマーおよび前記共重合体間の重量比が1:1~10である、二次電池用負極が提供され得る。このような場合、前述した負極集電体をさらに含むことができる。また、負極集電体および負極活物質は後述するとおりである。
【0096】
前記疎水性作用基で変性されたアルカリ膨潤性エマルジョン由来ポリマーは、下記化学式1で表される繰り返し単位および下記化学式2で表される繰り返し単位を含むアクリルポリマーを含み、最終の乾燥過程を経て負極内に乾燥された状態の固相で存在することができる。
【0097】
【化2】
前記化学式1中、nは1~10の整数である。
【0098】
また、前記HASEから乾燥された前記アクリルポリマーは、重量平均分子量が50,000~200,000g/molであり得る。
【0099】
前記疎水性作用基で変性されたアルカリ膨潤性エマルジョン(HASE)由来ポリマーおよび前記AAM/AA/AN共重合体間の重量比は、1:1~10または1:1.5~5または1:2~4であり得る。この時、その重量比が1:1以下であれば電極接着力が低下する問題があり、その重量比が1:10以上である場合、負極スラリーの分散性の問題がある。
【0100】
本発明のまた他の一実施形態では、前記負極を含む二次電池が提供される。このような電池は、具体的に、正極;電解質;および負極を含む形態であり得る。
【0101】
前記バインダー組成物が特定の含有量範囲で含まれている負極合剤は、負極の高い初期接着力を確保し、負極スリッティング時の脱離面積を低減し、負極の初期抵抗を低めて、究極的には二次電池の寿命を改善することができる。
【0102】
したがって、前記バインダー組成物が特定の含有量範囲で含まれている負極合剤は、SBLおよびCMCを含む負極合剤を代替することができる。
【0103】
以下、前述したものと重複する説明は省略し、前記一実施形態の負極および二次電池について詳細に説明する。
【0104】
前記二次電池は、リチウム二次電池で実現され得る。
【0105】
前記一実施形態のリチウム二次電池は、前記正極および前記負極の間に、セパレータ;をさらに含むものであり得る。
【0106】
前記リチウム二次電池は、使用する形態により円筒型、角型、コイン型、パウチ型などに分類することができ、サイズによりバルクタイプと薄膜タイプに分類することができる。これら電池の構造と製造方法は、当該分野に広く知られているので、最小限の説明を付け加える。
【0107】
前記負極は、負極集電体、および前記負極集電体の上に形成された負極活物質層を含む。
【0108】
前記負極集電体としては、銅箔、ニッケル箔、ステレンス鋼箔、チタン箔、ニッケル発泡体(foam)、銅発泡体、伝導性金属がコーティングされたポリマー基材、およびこれらの組み合わせからなる群より選択されるものを使用することができる。
【0109】
一方、前記正極は、電流集電体、および前記電流集電体に形成される正極活物質層を含む。前記正極活物質としては、リチウムの可逆的なインターカレーションおよびデインターカレーションが可能な化合物(リチウム化インターカレーション化合物)を使用することができる。具体的には、コバルト、マンガン、ニッケル、およびこれらの組み合わせから選択される金属とリチウムとの複合酸化物のうちの1種以上のものを使用することができる。より具体的な例としては、下記化学式のうちのいずれか一つで表される化合物を使用することができる。
【0110】
LiaA1-bXbD2(0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5);LiaA1-bXbO2-cDc(0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05);LiE1-bXbO2-cDc(0≦b≦0.5、0≦c≦0.05);LiE2-bXbO4-cDc(0≦b≦0.5、0≦c≦0.05);LiaNi1-b-cCobXcDα(0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α≦2);LiaNi1-b-cCobXcO2-αTα(0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α<2);LiaNi1-b-cCobXcO2-αT2(0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α<2);LiaNi1-b-cMnbXcDα(0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α≦2);LiaNi1-b-cMnbXcO2-αTα(0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α<2);LiaNi1-b-cMnbXcO2-αT2(0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α<2);LiaNibEcGdO2(0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.9、0≦c≦0.5、0.001≦d≦0.1);LiaNibCocMndGeO2(0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.9、0≦c≦0.5、0≦d≦0.5、0.001≦e≦0.1);LiaNiGbO2(0.90≦a≦1.8、0.001≦b≦0.1);LiaCoGbO2(0.90≦a≦1.8、0.001≦b≦0.1);LiaMnGbO2(0.90≦a≦1.8、0.001≦b≦0.1);LiaMn2GbO4(0.90≦a≦1.8、0.001≦b≦0.1);LiaMnGbPO4(0.90≦a≦1.8、0.001≦b≦0.1);QO2;QS2;LiQS2;V2O5;LiV2O5;LiZO2;LiNiVO4;Li(3-f)J2(PO4)3(0≦f≦2);Li(3-f)Fe2(PO4)3(0≦f≦2);LiFePO4
【0111】
前記化学式において、Aは、Ni、Co、Mn、およびこれらの組み合わせからなる群より選択され;Xは、Al、Ni、Co、Mn、Cr、Fe、Mg、Sr、V、希土類元素およびこれらの組み合わせからなる群より選択され;Dは、O、F、S、P、およびこれらの組み合わせからなる群より選択され;Eは、Co、Mn、およびこれらの組み合わせからなる群より選択され;Tは、F、S、P、およびこれらの組み合わせからなる群より選択され;Gは、Al、Cr、Mn、Fe、Mg、La、Ce、Sr、V、およびこれらの組み合わせからなる群より選択され;Qは、Ti、Mo、Mn、およびこれらの組み合わせからなる群より選択され;Zは、Cr、V、Fe、Sc、Y、およびこれらの組み合わせからなる群より選択され;Jは、V、Cr、Mn、Co、Ni、Cu、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0112】
もちろん、この化合物表面に負極合剤層を有するものも使用することができ、または前記化合物と負極合剤層を有する化合物を混合して使用することもできる。この負極合剤層は、コーティング元素のオキシド、ヒドロキシド、コーティング元素のオキシヒドロキシド、コーティング元素のオキシカーボネートおよびコーティング元素のヒドロキシカーボネートからなる群より選択される少なくとも一つのコーティング元素化合物を含むことができる。これら負極合剤層をなす化合物は、非晶質または結晶質であり得る。前記コーティング層に含まれるコーティング元素としては、Mg、Al、Co、K、Na、Ca、Si、Ti、V、Sn、Ge、Ga、B、As、Zrまたはこれらの混合物を使用することができる。負極合剤層の形成工程は、前記化合物にこのような元素を使用して正極活物質の物性に悪影響を与えない方法(例えばスプレーコーティング、浸漬法などでコーティングすることができれば如何なるコーティング方法を用いてもよく、これについては当該分野に従事する者によく理解され得る内容であるため、詳細な説明は省略する。
【0113】
前記正極活物質層はまた、正極バインダーおよび導電剤を含む。
【0114】
前記正極バインダーは、正極活物質粒子を互いに良好に付着させ、また正極活物質を電流集電体に良好に付着させる役割を果たすことができる。
【0115】
もちろん、前記正極バインダーとしてポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ジアセチルセルロース、ポリビニルクロリド、カルボキシル化ポリビニルクロリド、ポリビニルフルオライド、エチレンオキシドを含むポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレン-ブタジエンラバー、アクリル化スチレン-ブタジエンラバー、エポキシ樹脂、ナイロンなどを使用することができるが、これに限定されるのではない。
【0116】
前記導電剤は、電極に導電性を付与するために使用されるものであって、構成される電池において、化学変化を生じさせない電子伝導性材料であれば如何なるものでも使用可能であり、その例として天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素繊維、銅、ニッケル、アルミニウム、銀などの金属粉末、金属繊維などを使用することができ、また、ポリフェニレン誘導体などの導電性材料を1種または1種以上を混合して使用することができる。
【0117】
また、前記電流集電体としては、Alを使用することができるが、これに限定されるのではない。
【0118】
前記負極および前記正極は、活物質、導電剤およびバインダーを溶媒中で混合して活物質スラリーを製造し、この組成物を電流集電体に塗布してそれぞれ製造することができる。このような電極製造方法は、当該分野に広く知られた内容であるため、本明細書で詳細な説明は省略する。前記溶媒としては、N-メチルピロリドンなどを使用することができるが、これに限定されるのではない。
【0119】
一方、前記リチウム二次電池は、非水系電解質二次電池であり得、この時の非水電解質は、非水性有機溶媒とリチウム塩を含むことができる。
【0120】
前記非水性有機溶媒は、電池の電気化学的反応に関与するイオンが移動できる媒質の役割を果たす。
【0121】
また、先に言及したとおり、前記正極および前記負極の間にセパレータが存在することもできる。前記セパレータとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニリデンフルオライドまたはこれらの2層以上の多層膜を使用することができ、ポリエチレン/ポリプロピレンの2層セパレータ、ポリエチレン/ポリプロピレン/ポリエチレンの3層セパレータ、ポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレンの3層セパレータなどのような混合多層膜を使用することができることはもちろんである。
【0122】
以下、本発明の実施例を参照して説明するが、これは本発明のより容易な理解のためのものであって、本発明の範疇がそれによって限定されるのではない。
【実施例】
【0123】
HASE(Hydrophobically modified alkali soluble emulsion)
疎水性改質されたアルカリ膨潤性エマルジョン(Hydrophobically modified alkali-swellable emulsion、HASE)としては、ROHM and HAAS社のACRYSOLTT-935を使用した。
【0124】
その重量平均分子量値は約120,000g/molである。
【0125】
製造例1:AAM(70重量部)/AA(5重量部)/AN(25重量部)共重合体
圧力攪拌機に蒸溜水250重量部、アクリルアミド70重量部、アクリル酸5重量部、アクリロニトリル25重量部、乳化剤としてナトリウムラウリルスルフェート0.4重量部、および重合開始剤として過硫酸カリウム0.5重量部を入れて反応を開始した後、十分に攪拌しながら、10時間にかけて70℃を維持しながら反応させて固形分量が40%であるバインダーラテックスを得た。
【0126】
製造例2:AAM(60重量部)/AA(20重量部)/AN(20重量部)共重合体
圧力攪拌機に蒸溜水250重量部、アクリルアミド60重量部、アクリル酸20重量部、アクリロニトリル20重量部、乳化剤としてナトリウムラウリルスルフェート0.4重量部、および重合開始剤として過硫酸カリウム0.5重量部を入れて反応を開始した後、十分に攪拌しながら、10時間にかけて70℃を維持しながら反応させて固形分量が40%であるバインダーラテックスを得た。
【0127】
製造例3:一液形バインダーAの製造
常温条件下で、前記HASE0.3重量部、前記製造例1のAAM/AA/AN共重合体0.7重量部を混合して、一液形バインダーAを得た。
【0128】
製造例4:一液形バインダーBの製造
一液形バインダーBは、常温条件下で、前記HASE0.3重量部、前記製造例2のAAM/AA/AN共重合体0.7重量部を混合して製造したものである。
【0129】
比較例1:一液形バインダーAを1.0重量%含む負極合剤
(1)負極合剤スラリーの製造
まず、製造例3の一液形バインダーAの5重量部(固形分20重量%)を、溶媒である脱イオン水50重量部と導電剤(SuperC65)1重量部を添加してホモディスパーを通じて攪拌しながら溶液として製造し、前記の内容物が分散された分散液を製造した。
【0130】
前記分散液に負極活物質(天然黒鉛)98重量部を混合して負極ミキサーを使用してスラリーを製造し、このスラリーに希釈剤として脱イオン水50重量部を添加してスラリーの粘度を約5,000cPに調節された負極スラリー組成物を製造した。
【0131】
これによって、比較例1の負極合剤スラリーの固形分総100重量%中には、一液形バインダーAが1.0重量%含まれる。
【0132】
(2)負極の製造
20μm厚さの銅箔を準備してこれを負極集電体とした。コンマコーター(comma coater)を利用して、比較例1の負極合剤スラリーを前記負極集電体の一面当たり4.0mg/cm2のローディング(loading)量として両面に塗布し、80℃のオーブン(oven)で10分間熱風乾燥した後、ロール-プレス(roll-press)して負極合剤層を形成した。
【0133】
これによって、比較例1の負極(総厚さ:80μm)を得た。
【0134】
(3)二次電池の製造
正極活物質としてLi1.03Ni0.6Co0.6Mn0.2O2 90重量部、導電剤としてアセチレンブラック5重量部、およびバインダーとしてポリビニリデンフルオライド(PVdF)50重量部(10%固形分)を使用し、これらを溶媒であるNMP内で1時間攪拌して混合した。この時、固形分全体の含有量が70重量%になるようにスラリー相を調節して、比較例1の正極合剤を得た。
【0135】
20μm厚さのアルミニウム箔を準備してこれを正極集電体とした。コンマコーター(comma coater)を利用して、前記比較例1の正極合剤を前記負極集電体の一面当たり15.6mg/cm2のローディング(loading)量として両面に塗布し、80℃のオーブン(oven)で10分間熱風乾燥した後、総厚さが190μmになるようにロール-プレス(roll-press)した。これによって、比較例1の正極を得た。
【0136】
比較例1の負極および正極の間に分離膜を挿入して組み立てた後、電解液を注入し、当業界に通常知られた方法によりリチウムイオン電池を完成した。
【0137】
前記電解液としては、エチレンカーボネート(ethylene carbonate、EC)、プロピレンカルボナト(propylene carbonate、PC)とジエチルカーボネート(diethyl carbonate、DEC)の混合溶媒(EC:PC:DEC=3:2:5の重量比)にLiPF6が1.3Mの濃度になるように溶解させ、電解液総重量中の10重量%を占めるようにフルオロエチレンカーボネート(fluoroethylene carbonate、FEC)を添加させたものを使用した。
【0138】
実施例1:一液形バインダーAを3.0重量%含む負極合剤
負極合剤スラリーの固形分総100重量%中、製造例3の一液形バインダーAの含有量を3.0重量%に変更した点を除き、比較例1と同様な方法で負極合剤スラリー、負極および二次電池を製造した。
【0139】
具体的に、実施例1では、バインダーフリースラリー97重量部に、一液形バインダーAを3重量部添加した。
【0140】
実施例2:一液形バインダーAを4.0重量%含む負極合剤
負極合剤スラリーの固形分総100重量%中、製造例3の一液形バインダーAの含有量を4.0重量%に変更した点を除き、比較例1と同様な方法で負極合剤スラリー、負極および二次電池を製造した。
【0141】
具体的に、実施例2では、バインダーフリースラリー96重量部に、一液形バインダーAを4重量部添加した。
【0142】
実施例3:一液形バインダーAを5.0重量%含む負極合剤
負極合剤スラリーの固形分総100重量%中、製造例3の一液形バインダーAの含有量を5.0重量%に変更した点を除き、比較例1と同様な方法で負極合剤スラリー、負極および二次電池を製造した。
【0143】
具体的に、実施例3では、バインダーフリースラリー95重量部に、一液形バインダーAを5重量部添加した。
【0144】
実施例4:一液形バインダーAを7.0重量%含む負極合剤
負極合剤スラリーの固形分総100重量%中、製造例3の一液形バインダーAの含有量を7.0重量%に変更した点を除き、比較例1と同様な方法で負極合剤スラリー、負極および二次電池を製造した。
【0145】
具体的に、実施例4では、バインダーフリースラリー93重量部に、一液形バインダーAを7重量部添加した。
【0146】
実施例5:一液形バインダーAを10.0重量%含む負極合剤
負極合剤スラリーの固形分総100重量%中、製造例3の一液形バインダーAの含有量を10.0重量%に変更した点を除き、比較例1と同様な方法で負極合剤スラリー、負極および二次電池を製造した。
【0147】
具体的に、実施例5では、バインダーフリースラリー90重量部に、一液形バインダーAを10重量部添加した。
【0148】
比較例2:一液形バインダーBを1.0重量%含む負極合剤
一液形バインダーAの代わりに製造例4の一液形バインダーBを使用した点を除き、比較例1と同様な方法で負極合剤スラリー、負極および二次電池を製造した。
【0149】
実施例6:一液形バインダーAを3.0重量%含む負極合剤
負極合剤スラリーの固形分総100重量%中、製造例4の一液形バインダーBの含有量を3.0重量%に変更した点を除き、比較例2と同様な方法で負極合剤スラリー、負極および二次電池を製造した。
【0150】
具体的に、実施例64では、バインダーフリースラリー97重量部に、一液形バインダーBを3重量部添加した。
【0151】
実施例7:一液形バインダーAを4.0重量%含む負極合剤
負極合剤スラリーの固形分総100重量%中、製造例4の一液形バインダーBの含有量を4.0重量%に変更した点を除き、比較例2と同様な方法で負極合剤スラリー、負極および二次電池を製造した。
【0152】
具体的に、実施例7では、バインダーフリースラリー96重量部に、一液形バインダーBを4重量部添加した。
【0153】
実施例8:一液形バインダーBを5.0重量%含む負極合剤
負極合剤スラリーの固形分総100重量%中、製造例4の一液形バインダーBの含有量を5.0重量%に変更した点を除き、比較例2と同様な方法で負極合剤スラリー、負極および二次電池を製造した。
【0154】
具体的に、実施例8では、バインダーフリースラリー95重量部に、一液形バインダーBを5重量部添加した。
【0155】
実施例9:一液形バインダーBを7.0重量%含む負極合剤
負極合剤スラリーの固形分総100重量%中、製造例4の一液形バインダーBの含有量を7.0重量%に変更した点を除き、比較例2と同様な方法で負極合剤スラリー、負極および二次電池を製造した。
【0156】
具体的に、実施例9では、バインダーフリースラリー93重量部に、一液形バインダーBを7重量部添加した。
【0157】
実施例10:一液形バインダーBを10.0重量%含む負極合剤
負極合剤スラリーの固形分総100重量%中、製造例4の一液形バインダーBの含有量を10.0重量%に変更した点を除き、比較例2と同様な方法で負極合剤スラリー、負極および二次電池を製造した。
【0158】
具体的に、実施例10では、バインダーフリースラリー90重量部に、一液形バインダーBを10重量部添加した。
【0159】
比較例3:バインダーSBLを1重量%およびCMCを1.0重量%含む負極合剤
(1)バインダー(SB latex)
圧力攪拌機に蒸溜水250重量部、1,3-ブタジエン50重量部、スチレン34重量部、メチルメタクリレート10重量部、アクリル酸4重量部、ナトリウムアクリレート2重量部、乳化剤としてナトリウムラウリルスルフェート0.4重量部、および重合開始剤として過硫酸カリウム0.5重量部を入れて反応を開始した後、十分に攪拌しながら、10時間にかけて70℃を維持しながら反応させて固形分量が40%であるSBLバインダーAラテックスを得た。
【0160】
(2)負極合剤スラリーの製造
分散剤として1重量%のCMCが溶解されたCMC水溶液100重量部および導電剤(SuperC65)1重量部を添加し、0.2時間攪拌して導電剤分散液を製造した。
【0161】
前記導電剤分散液101重量部に、負極活物質として人造黒鉛(D50:15um)98重量部;および溶媒として蒸溜水50重量部を追加し、0.8時間攪拌してバインダーフリースラリーを準備した。
【0162】
前記バインダーフリースラリー250重量部に、SBLバインダーAラテックスを2.5重量部添加し、20分間攪拌して、比較例3の負極合剤スラリーを得た。
【0163】
これによって、比較例3の負極合剤スラリーの固形分総100重量%中には、SBLは1.0重量%、CMCは1.0重量%含まれる。
【0164】
(3)負極および二次電池の製造
比較例1の負極合剤スラリーの代わりに比較例3の負極合剤スラリーを使用した点を除き、比較例1と同様な方法で負極および二次電池を製造した。
【0165】
比較例4:バインダーSBLを3重量%およびCMCを1.0重量%含む負極合剤
(1)バインダー
前記比較例3と同様にSBLバインダーAラテックスを製造して使用した。
【0166】
(2)負極合剤スラリーの製造
分散剤として1重量%のCMCが溶解されたCMC水溶液100重量部および導電剤として(SuperC65)1重量部を添加し、0.2時間攪拌して導電剤分散液を製造した。
【0167】
前記導電剤分散液101重量部に、負極活物質として人造黒鉛(D50:15um)98重量部;および溶媒として蒸溜水50重量部を追加し、0.8時間攪拌してバインダーフリースラリーを準備した。
【0168】
前記バインダーフリースラリー245重量部に、SBLバインダーAラテックスを7.5重量部添加し、20分間攪拌して、比較例4の負極合剤スラリーを得た。
【0169】
これによって、比較例4の負極合剤スラリーの固形分総100重量%中には、SBLは3.0重量%、CMCは1.0重量%含まれる。
【0170】
(3)負極および二次電池の製造
比較例1の負極合剤スラリーの代わりに比較例4の負極合剤スラリーを使用した点を除き、比較例1と同様な方法で負極および二次電池を製造した。
【0171】
比較例5:一液形バインダーCを4.0重量%含む負極合剤
一液形バインダーAの代わりに一液形バインダーCを使用した点を除き、実施例7と同様な方法で負極合剤スラリー、負極および二次電池を製造した。
【0172】
具体的に、一液形バインダーCは、常温条件下で、前記HASE1重量部と共に、PAAM(重量平均分子量:Aladdin、Mw=2,000,000)3重量部を混合して製造した。
【0173】
比較例6:一液形バインダーDを4.0重量%含む負極合剤
一液形バインダーAの代わりに一液形バインダーDを使用した点を除き、実施例7と同様な方法で負極合剤スラリー、負極および二次電池を製造した。
【0174】
具体的に、一液形バインダーDは、常温条件下で、前記HASE1重量部と共に、PAA(重量平均分子量:Aladdin、Mv=1,250,000)3重量部を混合して製造した。
【0175】
比較例7:一液形バインダーEを4.0重量%含む負極合剤
一液形バインダーAの代わりに一液形バインダーEを使用した点を除き、実施例7と同様な方法で負極合剤スラリー、負極および二次電池を製造した。
【0176】
具体的に、一液形バインダーEは、常温条件下で、前記HASE1重量部と共に、PAN(重量平均分子量:Mw=150,000)3重量部を混合して製造した。
【0177】
比較例8:PAAM+PAA混合物を4.0重量%含む負極合剤
一液形バインダーAの代わりにPAAMおよびPAAの混合バインダーを使用した点を除き、実施例7と同様な方法で負極合剤スラリー、負極および二次電池を製造した。
【0178】
具体的に、PAAMおよびPAAの混合バインダーは、常温条件下で、PAA(Aladdin、Mv=1,250,000)およびPAM(Aladdin、Mw=2,000,000)を1:1の重量比で混合して製造した。
【0179】
比較例9:VDF/HFP/AA共重合体を4.0重量%含む負極合剤
一液形バインダーAの代わりにVDF、HFP、およびAAの共重合体バインダーを使用した点を除き、実施例7と同様な方法で負極合剤スラリー、負極および二次電池を製造した。
【0180】
具体的に、PAAMおよびPAAの混合バインダーを製造するために、1Lオートクレーブ反応器に脱塩水1295重量部、メチルセルロース0.75重量部、プロピルペルオキシジカルボネート4.0g、ビニリデンフルオライド(VDF)467.8g、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)24.8重量部、アクリル酸(AA)7.4重量部を投入し、28℃で60時間懸濁重合した。重合完了後、懸濁液を脱気処理して重合体スラリーを脱水、水洗および脱水した後、80℃オーブンで24時間乾燥して共重合体を得た。
【0181】
得られた共重合体の重量平均分子量は1,120,000g/molであった。
【0182】
比較例10:一液形バインダーAを20.0重量%含む負極合剤
負極合剤スラリー総100重量%中、一液形バインダーAの含有量を20.0重量%に変更した点を除き、比較例1と同様な方法で負極合剤スラリー、負極および二次電池を製造した。
【0183】
具体的に、比較例10では、バインダーフリースラリー79重量部に、一液形バインダーAを20重量部添加した。
【0184】
比較例11:一液形バインダーBを20.0重量%含む負極合剤
負極合剤スラリー総100重量%中、一液形バインダーBの含有量を20.0重量%に変更した点を除き、比較例2と同様な方法で負極合剤スラリー、負極および二次電池を製造した。
【0185】
具体的に、比較例11では、バインダーフリースラリー79重量部に、一液形バインダーBを20重量部添加した。
【0186】
比較例12:一液形バインダーの代わりに各成分を別途に混合した負極合剤
負極活物質:HASE:比較例3のSBLバインダーAラテックス:導電剤(SuperC65)を95:1:3:1の重量比で一度に混合した後に水に溶解して負極スラリーを製造した。
【0187】
その後、比較例1と同様な方法で負極および二次電池を製造した。
【0188】
比較例13:一液形バインダーFを3重量%含む負極合剤
負極合剤スラリー総100重量%中、一液形バインダーAの代わりに一液形バインダーFを3重量%使用した点を除き、比較例1と同様な方法で負極合剤スラリー、負極および二次電池を製造した。
【0189】
具体的に、一液形バインダーFは、常温条件下で、前記HASE0.6重量部、前記製造例2のAAM/AA/AN共重合体0.4重量部を混合して製造したものである。
【0190】
比較例13では、バインダーフリースラリー96重量部に、一液形バインダーFを3重量部添加した。
【0191】
実施例1~10および比較例1~13の各負極合剤スラリーの固形分総量(100重量%)中の負極活物質の含有量、バインダーの種類およびその含有量、CMCの含有量を下記表1に整理した。
【0192】
【0193】
実験例1:負極合剤スラリーの安定性評価
保管中の安定性を評価するために、実施例1~6および比較例1~9の各負極合剤スラリーの製造直後の粘度を測定し、24時間経過後の粘度を測定した。
【0194】
各時点で、粘度測定はブルックフィールド(Brookfield)粘度計RV typeとspindle#4を使用し、粘度値は10rpmで1分以上経過後に安定した値を取った。そして、スラリーの保管は密閉されたプラネタリー(planetary)ミキサーで15rpmの低い速度で粘度測定直前まで攪拌しながら行われた。
【0195】
下記式1により初期粘度に対する24hr後の粘度を百分率(粘度変化率)で計算して、下記表2に記載した。
[式1]粘度変化率=100*(24hr後粘度)/(初期粘度)
【0196】
【0197】
実験例2:負極および二次電池の評価
実施例1~10および比較例1~13に対して、それぞれ次のような条件で負極およびリチウム二次電池を評価し、その結果を下記表3に記録した。
【0198】
負極初期接着力:各負極の製造直後、5回以上引き剥がし強さを測定し、その平均値を下記表3に示した。ここで、引き剥がし強さは、張力測定器(Stable Micro System社、TA-XT)を利用して、幅10mmの接着テープに負極を付着した後、180゜の剥離角度で負極からテープを引き剥がす時に必要な力(gf)を測定したものである。
【0199】
負極初期抵抗:製作した負極を正極としたコインハーフセルを製造した後、TOYO社のToscat3100充放電機を使用してコインハーフセルの容量の3倍の電流速度条件で抵抗値を測定した。
【0200】
負極スリッティング(slitting)時の脱離面積:各負極に対し、電極パンチング機を使用して20*1000mm条件でスリッティングした。その結果、負極集電体から脱離された負極合剤層の面積を面積(100sq%)から測定し、その測定値を下記表3に示した。
【0201】
二次電池の300サイクル後の容量維持率:25℃の恒温チャンバー内で、前記各リチウム二次電池を0.2Cで0.005Vに至るまでCC/CVモード(mode)で放電した後、0.2Cで1.5Vに至るまでCCモードで充電することを1回のサイクル(cycle)とするものの、前記充電および前記放電の間に20分間休止期を置き、総300回のサイクルを進行した。
【0202】
下記式2のように、最初のサイクルで測定された放電容量に対する、300番目のサイクルで測定された放電容量の比率を計算した。
[式2]
300回サイクル後の容量維持率(%)=100*(300番目の充電容量)/(1番目の充電容量)
【0203】
【0204】
前記表3によれば、実施例1~10は、比較例1~13に比べて、負極の初期接着力および負極の初期抵抗を確保しながらも、負極スリッティング時の負極合剤層の脱離面積が非常に狭く、300サイクル後の二次電池の容量維持率が少なくとも65%以上、最大93%まで確保されることが分かる。つまり、実施例1~10による負極の場合、負極内の前記疎水性作用基で変性されたアルカリ膨潤性エマルジョン(HASE)由来ポリマーおよび前記共重合体間の重量比が約1:2~3の範囲を満たすバインダー成分を含んで、比較例より負極の高い初期接着力を確保し、負極スリッティング時の脱離面積を低減し、負極の初期抵抗を低めることができ、300サイクル後の二次電池の容量維持率が少なくとも65%以上を満たして優れている。したがって、本明細書による負極を含む場合、究極的には二次電池の寿命を改善することができる。
【0205】
具体的に、比較例1および2で、たとえAAM/AA/ANの共重合体とHASEの混合物である一液形バインダー(一液形バインダーAおよびB)を適用しているが、その含有量がそれぞれ1重量%使用されて、負極の製造直後には3gf/inch以上の接着力、5.0mΩ以下の抵抗と、ある程度の負極スリッティング時の脱離面積が確保されたが、300サイクル後の二次電池の容量維持率が60%以下に実施例1~10より低かった。
【0206】
また、通常の負極バインダーとしてSBL(スチレンブタジエンラテックス;Styrene Butadiene Latex)と共に、分散剤であると共に増粘剤の役割を果たすCMC(ナトリウムカルボキシメチルセルロース;Sodium Carboxymethyl Cellulose)を混合した比較例3および4は、負極の製造直後には3gf/inch以上の接着力および5.0mΩ以下の抵抗が確保されたが、負極スリッティング時の脱離面積が3cm2以上に非常に広く、300サイクル後の二次電池の容量維持率は30%未満に非常に低い。
【0207】
これは、CMCの脆性特性とSBLの低い接着性により、負極スリッティング時に負極合剤層の脱離が激しく、二次電池の駆動中に漸次に負極接着力が弱まることを意味する。
【0208】
一方、CMCを使用せず、バインダーとしてPAAM、PAAおよびPANのうちのいずれか一つとHASEの混合物(一液形バインダーC~E)を適用した比較例5~7では、比較例3および4よりは試験結果が改善された。ただし、依然として負極スリッティング時の脱離面積が0.8cm2以上に広く、300サイクル後の二次電池の容量維持率が80%未満に低かった。また、比較例5~7場合、5.0mΩ以下の抵抗を示してはいるが、一液形バインダーAまたはBを使用した類似の固形分含有量(3~4重量%)を有する実施例1、2、6、7に比べては負極の初期抵抗が高くて前記実施例より効果的ではなかった。
【0209】
増粘剤(CMC)を使用せず、バインダーとしてPAAMおよびPAAの混合物を適用した比較例8では、比較例3および4よりは試験結果が改善された。ただし、依然として負極スリッティング時の脱離面積が1.2cm2以上に広く、300サイクル後の二次電池の容量維持率が80%未満に低かった。
【0210】
増粘剤(CMC)を使用せず、バインダーとしてVDF-HFP-AA共重合体を適用した比較例9では、むしろ比較例3および4より試験結果が劣等であった。
【0211】
一液形バインダーAおよびBをそれぞれ20%適用した比較例10および11では、負極の製造直後には3gf/inch以上の接着力、300サイクル後の二次電池の容量維持率は80%以上、負極スリッティング時の脱離面積3cm2以下が確保されたが、5.0mΩ以上の抵抗を示した。
【0212】
比較例12では、HASEを使用しても、一液形バインダーを使用したのではなく、各成分を一度に混合した負極スラリーを利用して負極を製造し、特に比較例3、4のようにSBLバインダーラテックスを使用することによって、負極スリッティング時の脱離面積が7cm2以上に非常に広く、300サイクル後の二次電池の容量維持率は25%未満に非常に低かった。また比較例12の場合、負極の初期接着力と負極の初期抵抗も実施例より不良であった。
【0213】
比較例13では、HASEに対するAAM/AA/AN共重合体の含有量の比率が1:0.7程度に前記共重合体の比率が少ないため、負極の製造直後3gf/inch以上の接着力が確保されたが、負極スリッティング時の脱離面積が6cm2以上に非常に広く、300サイクル後の二次電池の容量維持率も20%未満に非常に低かった。
【0214】
反面、実施例1~10は、AAM/AA/ANの共重合体とHASEの混合物である一液形バインダー(一液形バインダーAおよびB)を適用しながら、負極合剤スラリーの固形分(100重量%)中の一液形バインダー含有量を3~10重量%の特定範囲に制限している。
【0215】
これによって、実施例1~10は、負極の製造直後30gf/inch以上の接着力および9.0mΩ以下の抵抗を確保しながら、負極スリッティング時の脱離面積が2.0cm2以下に非常に狭く、300サイクル後の二次電池の容量維持率が65%以上に確保されることができた。
【0216】
実施例1~10においては、AAM/AA/ANの重合比、これらとHASEの混合比などにより、負極の初期接着力および抵抗、負極スリッティング時の脱離面積および二次電池の寿命特性が変わることが確認される。
【0217】
したがって、AAM/AA/ANの共重合体とHASEの混合物である一液形バインダーを適用しながら、その負極合剤スラリー内の含有量を特定範囲に制限する以上、優れた特性の負極および二次電池を実現することができ、AAM/AA/ANの重合比、これらとHASEの混合比などを調節することによって負極および二次電池の特性を制御可能であることが分かる。