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特許7399576アライメントマークの設定方法及び加工装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-08
(45)【発行日】2023-12-18
(54)【発明の名称】アライメントマークの設定方法及び加工装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20231211BHJP
【FI】
H01L21/78 C
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020067834
(22)【出願日】2020-04-03
(65)【公開番号】P2021163951
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2023-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【弁理士】
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 貴之
(72)【発明者】
【氏名】大森 崇史
【審査官】宮久保 博幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-017654(JP,A)
【文献】特開平07-321181(JP,A)
【文献】特開2014-203836(JP,A)
【文献】特開2017-059585(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面側に複数のマークが形成されたウェーハを加工する加工装置において、オペレータが指定した1つ以上のマークを含む領域をアライメントマークとして設定するアライメントマークの設定方法であって、
撮像ユニットで、該ウェーハに形成された該1つ以上のマークを撮像する撮像ステップと、
該撮像ステップで撮像された該1つ以上のマークに対して、該1つ以上のマークのそれぞれの外接矩形を構成する情報を取得する情報取得ステップと、
該情報取得ステップの後、該1つ以上のマークのうち1つのマーク又は複数のマークが指定されたことに応じて、該1つのマーク又は該複数のマークの全体の該外接矩形の中心が、アライメントマークとして該加工装置に設定するときに利用される四角形の枠線の中心に移動して、該外接矩形が該枠線内に収まり、該外接矩形と、該枠線との間隔が予め定められた距離に調整されるように、該外接矩形に対する該枠線の位置及び大きさを自動的に調整する枠線調整ステップと、
大きさが調整された該枠線の内側における該1つのマーク又は該複数のマークを含む領域を、アライメントマークとして該加工装置に登録する登録ステップと、
を備えることを特徴とするアライメントマークの設定方法。
【請求項2】
表面側に複数のマークが形成されたウェーハを加工するときに、オペレータが指定した1つ以上のマークを含む領域をアライメントマークとして設定可能な加工装置であって、
該ウェーハを吸引保持するチャックテーブルと、
撮像素子を有し、該チャックテーブルの上方に配置され且つ該チャックテーブルで吸引保持された該ウェーハを撮像する撮像ユニットと、
該撮像ユニットで取得された画像を表示する表示装置と、
プロセッサを有し、該チャックテーブル、該撮像ユニット及び該表示装置の動作を制御する制御ユニットと、
オペレータの指示を該制御ユニットへ入力する入力装置と、を備え、
該制御ユニットは、
該撮像ユニットで撮像された該1つ以上のマークに対して、該1つ以上のマークのそれぞれの外接矩形を構成する情報を取得する情報取得部と、
該1つ以上のマークのうち1つのマーク又は複数のマークが該入力装置を介して指定されたことに応じて、該1つのマーク又は該複数のマークの全体の該外接矩形の中心が、アライメントマークとして該加工装置に設定するときに利用される四角形の枠線の中心に移動して、該外接矩形が該枠線内に収まり、該外接矩形と、該枠線との間隔が予め定められた距離に調整されるように、該外接矩形に対する該枠線の位置及び大きさを自動的に調整する枠線調整部と、
大きさが調整された該枠線の内側における該1つのマーク又は該複数のマークを含む領域を、アライメントマークとして登録するアライメントマーク登録部と、を含むことを特徴とする加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面側に複数のマークが形成されたウェーハを加工する加工装置において、オペレータが指定した1つ以上のマークを含む領域をアライメントマークとして設定するアライメントマークの設定方法と、当該領域をアライメントマークとして設定可能な加工装置とに関する。
【背景技術】
【0002】
表面側において格子状に設定された複数の分割予定ラインで区画される各領域にIC(Integrated Circuit)等のデバイスが形成されたウェーハは、所定の厚さとなるまで裏面側が研削された後、加工装置によって分割予定ラインに沿って加工され複数のデバイスチップに分割される。
【0003】
ウェーハを分割予定ラインに沿って加工する加工装置としては、例えば、切削装置が用いられる。切削装置は、ウェーハを吸引保持するためのチャックテーブルを備える。チャックテーブルは、所定の回転軸の周りに回転可能である。このチャックテーブルの上方には、カメラと、切削ブレードを含む切削ユニットと、が設けられている。
【0004】
切削装置でウェーハを切削する前には、切削ブレードを分割予定ラインの延長線上に位置付けるためのアライメント工程が行われる(例えば、特許文献1参照)。アライメント工程では、チャックテーブルでウェーハの裏面側を吸引保持した状態で、ウェーハの表面側に形成されている所定の形状のマークを撮像して、このマークをアライメントマークとして切削装置に設定する(ティーチ工程)。
【0005】
その後、画像におけるパターンマッチングを利用して、離れた二箇所に存在する同じ形状のアライメントマークを特定する。そして、この二箇所のアライメントマークの座標を利用してチャックテーブルを所定の角度だけ回転させることにより、分割予定ラインが切削装置のX軸と平行になる様にウェーハの向きを調整する。
【0006】
この様に、アライメント工程では、まず、ティーチ工程が行われる。ティーチ工程では、カメラで撮像されたウェーハの表面側の画像を表示装置に表示させた状態で、オペレータが、アライメントマークを探索し、どのマークをアライメントマークとして使用するかを決める。
【0007】
ティーチ工程において、画像の中央部には、十字線と、この十字線の周囲を囲む正方形の枠と、から成る枠線が表示されており、オペレータは、操作キーを使用して、枠線の位置をX軸方向及びY軸方向で調整したり、枠線の大きさを拡大・縮小したりする。
【0008】
そして、アライメントマークとして使用するマークを枠線の内側に収めた状態で、当該マークと、枠線により囲まれた当該マークの周囲の領域と、をアライメントマークとして登録する。しかし、枠線の位置及び大きさの調整は、通常、オペレータの手作業により感覚的に行われるので、アライメントマークの設定の度に、又は、異なるオペレータがアライメントマークを設定する度に、枠線の大きさが異なる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開平7-106405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
枠線の大きさが設定の度に異なると、同一の形状のマークをアライメントマークとして設定するにもかかわらず、アライメントマークとして設定されるマークの範囲が異なる場合や、マークの周囲の領域の面積が異なる場合がある。つまり、同一の形状のマークを対象としているが、異なる形状及び大きさのアライメントマークが設定される可能性がある。
【0011】
本発明は係る問題点に鑑みてなされたものであり、指定されたマークに対して自動的に範囲を調整してアライメントマークを設定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様によれば、表面側に複数のマークが形成されたウェーハを加工する加工装置において、オペレータが指定した1つ以上のマークを含む領域をアライメントマークとして設定するアライメントマークの設定方法であって、撮像ユニットで、該ウェーハに形成された該1つ以上のマークを撮像する撮像ステップと、該撮像ステップで撮像された該1つ以上のマークに対して、該1つ以上のマークのそれぞれの外接矩形を構成する情報を取得する情報取得ステップと、該情報取得ステップの後、該1つ以上のマークのうち1つのマーク又は複数のマークが指定されたことに応じて、該1つのマーク又は該複数のマークの全体の該外接矩形の中心が、アライメントマークとして該加工装置に設定するときに利用される四角形の枠線の中心に移動して、該外接矩形が該枠線内に収まり、該外接矩形と、該枠線との間隔が予め定められた距離に調整されるように、該外接矩形に対する該枠線の位置及び大きさを自動的に調整する枠線調整ステップと、大きさが調整された該枠線の内側における該1つのマーク又は該複数のマークを含む領域を、アライメントマークとして該加工装置に登録する登録ステップと、を備えるアライメントマークの設定方法が提供される。
【0013】
本発明の他の態様によれば、表面側に複数のマークが形成されたウェーハを加工するときに、オペレータが指定した1つ以上のマークを含む領域をアライメントマークとして設定可能な加工装置であって、該ウェーハを吸引保持するチャックテーブルと、撮像素子を有し、該チャックテーブルの上方に配置され且つ該チャックテーブルで吸引保持された該ウェーハを撮像する撮像ユニットと、該撮像ユニットで取得された画像を表示する表示装置と、プロセッサを有し、該チャックテーブル、該撮像ユニット及び該表示装置の動作を制御する制御ユニットと、オペレータの指示を該制御ユニットへ入力する入力装置と、を備え、該制御ユニットは、該撮像ユニットで撮像された該1つ以上のマークに対して、該1つ以上のマークのそれぞれの外接矩形を構成する情報を取得する情報取得部と、該1つ以上のマークのうち1つのマーク又は複数のマークが該入力装置を介して指定されたことに応じて、該1つのマーク又は該複数のマークの全体の該外接矩形の中心が、アライメントマークとして該加工装置に設定するときに利用される四角形の枠線の中心に移動して、該外接矩形が該枠線内に収まり、該外接矩形と、該枠線との間隔が予め定められた距離に調整されるように、該外接矩形に対する該枠線の位置及び大きさを自動的に調整する枠線調整部と、大きさが調整された該枠線の内側における該1つのマーク又は該複数のマークを含む領域を、アライメントマークとして登録するアライメントマーク登録部と、を含む加工装置が提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一態様に係るアライメントマークの設定方法では、まず、撮像された1つ以上のマークに対して、1つ以上のマークの外接矩形を構成する情報を取得する(情報取得ステップ)。そして、情報取得ステップの後、1つ以上のマークのうち1つ又は複数のマークをオペレータが指定する。
【0015】
このオペレータの指定に応じて、1つのマーク又は複数のマークの全体の外接矩形の中心が、四角形の枠線の中心に移動して、外接矩形が枠線内に収まり、外接矩形と、枠線との間隔が予め定められた間隔に調整されるように、外接矩形に対する枠線の位置及び大きさが自動的に調整される(枠線調整ステップ)。
【0016】
その後、大きさが調整された枠線の内側における1つのマーク又は複数のマークを含む領域が、アライメントマークとして加工装置に登録される(登録ステップ)。それゆえ、オペレータの感覚に依る設定ではなく、マークの形状及び大きさに応じて自動的に所定の範囲に、アライメントマークを設定できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】切削装置の斜視図である。
図2】ウェーハ等の上面図である。
図3】ウェーハの表面側の部分拡大図である。
図4】制御ユニットの構成を説明する図である。
図5】ラベリング処理の一例を示す図である。
図6】各マークの外接矩形が表示された画面の一例を示す図である。
図7】オペレータがマークを指定する様子を示す図である。
図8図8(A)は位置及び大きさが調整された枠線を示す図であり、図8(B)はアライメントマークを示す図である。
図9】アライメントマークの設定方法のフロー図である。
図10図10(A)は複数のマークに囲まれた任意の位置をオペレータが指定する様子を示す図であり、図10(B)は枠線調整ステップ後の枠線を示す図である。
図11図11(A)はマークの右下の角部の近傍に対応する表示領域をオペレータが指で触れる様子を示す図であり、図11(B)は枠線調整ステップ後の枠線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
添付図面を参照して、本発明の一態様に係る実施形態について説明する。図1は、切削装置(加工装置)2の斜視図である。図1にそれぞれ示す、X軸方向(加工送り方向)、Y軸方向(割り出し送り方向)及びZ軸方向(鉛直方向、高さ方向)は互いに直交する。
【0019】
なお、図1では構成要素の一部を機能ブロックで示す。切削装置2は、各構造を支持する基台4を備える。基台4の上方には、基台4を覆うカバー6が設けられる。カバー6の内側には、所定の空間が形成されている。
【0020】
この所定の空間には、ウェーハ11を切削(加工)するための切削ユニット(加工ユニット)8が配置されている。切削ユニット8は、不図示のY軸Z軸方向移動機構によってY軸方向及びZ軸方向に移動可能である。
【0021】
Y軸Z軸方向移動機構は、例えば、Y軸方向に沿ってY軸移動板(不図示)を移動させるボールネジ式のY軸方向機構(不図示)と、Y軸移動板に設けられ、切削ユニット8をZ軸方向に沿って移動させるボールネジ式のZ軸方向移動機構(不図示)と、を有する。
【0022】
切削ユニット8は、長手方向がY軸方向と略平行に配置された角柱状のスピンドルハウジングを有する。スピンドルハウジング内には、円柱状のスピンドル(不図示)の一部が回転可能な態様で収容されている。
【0023】
スピンドルの一端部にはモーター等の回転駆動源(不図示)が連結されており、スピンドルの他端部には円環状の切り刃を有する切削ブレードが装着されている。スピンドルハウジングにおけるX軸方向の一方側の側面には、カメラユニット(撮像ユニット)10の一部が固定されている。
【0024】
カメラユニット10は、LED等の光源(不図示)と、集光レンズ(不図示)等を含む光学系と、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサ又はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサ等の撮像素子と、を有する。
【0025】
切削ユニット8の下方には、ウェーハ11を吸引保持するためのチャックテーブル12が設けられている。チャックテーブル12は、金属で形成された略円盤状の枠体を有する。枠体には、円盤状の空間から成る凹部が形成されている。
【0026】
凹部の底面には、吸引路(不図示)の一端部が露出しており、吸引路の他端部にはバキュームポンプ、エジェクタ等の吸引源(不図示)が接続されている。凹部には、円盤状のポーラス板が固定されている。
【0027】
吸引源を動作させると、吸引路を通じてポーラス板の上面(保持面12a)には負圧が生じる。チャックテーブル12の下方には、モーター等の回転駆動源(不図示)が連結されている。
【0028】
回転駆動源は、Z軸方向に略平行な所定の回転軸の周りにチャックテーブル12を回転させる。回転駆動源の下方には、チャックテーブル12及び回転駆動源をX軸方向に沿って移動させるためのボールネジ式のX軸方向移動機構(不図示)が設けられている。
【0029】
チャックテーブル12の保持面12aには、円盤状のウェーハ11等が載置される。図2は、ウェーハ11等の上面図である。ウェーハ11は、例えば、シリコン等の半導体で形成されている。但し、ウェーハ11の材質、形状、構造、大きさ等に制限はない。
【0030】
ウェーハ11の表面11aは、格子状に配列された分割予定ライン(ストリート)13で複数の領域に区画されている。各領域には、IC(Integrated Circuit)、LSI(Large-Scale Integration)等のデバイス15が形成されている。なお、デバイス15の種類、数量、形状、構造、大きさ、配置等にも制限はない。
【0031】
分割予定ライン13の近傍には、所定の形状を有する複数のマーク17(図3参照)が形成されている。マーク17は、ウェーハ11のアライメントを行う際の基準となるアライメントマーク29(図8(B)参照)として利用される。
【0032】
マーク17は、例えば、半導体素子を構成する活性領域上に形成された回路層の最表面の一部をエッチング等により除去することで形成される。表面11a側をカメラユニット10で撮像すれば、マーク17の画像が取得される。図3は、ウェーハ11の表面11a側の部分拡大図である。
【0033】
図3では、1つの分割予定ライン13を挟んで配置された2つのデバイス15を示す。図3に示す1つのデバイス15の分割予定ライン13の近傍には、略L字形状のマーク17a、略円形のマーク17b、略正方形のマーク17c及び略十字形状のマーク17dが形成されている。
【0034】
図2に示す様に、切削前のウェーハ11の裏面11b側には、樹脂で形成されている円形の基材層と、基材層の一面に設けられた樹脂製の粘着層(糊層)と、で構成される粘着テープ(ダイシングテープ)19が貼り付けられる。
【0035】
ウェーハ11は粘着テープ19の中央部に貼り付けられ、粘着テープ19の外周部には、金属製の環状のフレーム21が貼り付けられる。これにより、ウェーハ11が粘着テープ19を介してフレーム21で支持された、ウェーハユニット23が形成される。
【0036】
図1に示す様に、切削装置2のカバー6の前面6aには、タッチパネル14が設けられている。タッチパネル14は、例えば、タッチパネル式の液晶ディスプレイであり、オペレータが制御ユニット16(後述)へ指示を入力するための入力装置と、カメラユニット10で取得された画像や、種々の加工条件等を表示するための表示装置とを兼ねる。
【0037】
なお、タッチパネル14に代えて、表示装置のみの機能を有するモニター、ディスプレイ等が設けられてもよい。但し、この場合、キーボード、マウス、トラックボール、ジョイ・スティック等のユーザーインターフェースが入力装置として別途設けられる。
【0038】
切削装置2には、各構成要素の動作を制御するための制御ユニット16が設けられている。制御ユニット16は、例えば、切削ユニット8、カメラユニット10、チャックテーブル12、タッチパネル14、X軸方向移動機構、Y軸Z軸方向移動機構の動作を制御する。
【0039】
制御ユニット16は、例えば、CPU(Central Processing Unit)に代表されるプロセッサ等の処理装置と、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等の主記憶装置と、フラッシュメモリ、ハードディスクドライブ、ソリッドステートドライブ等の補助記憶装置と、を含むコンピュータによって構成されている。
【0040】
補助記憶装置には、所定のプログラムを含むソフトウェアが記憶されている。このソフトウェアに従い処理装置等を動作させることによって、制御ユニット16の機能が実現される。図4は、制御ユニット16の構成を説明する図である。
【0041】
図4に示す様に、制御ユニット16は、カメラユニット10で撮像された画像に対して種々の処理を施す機能ブロックを備える。機能ブロックの1つは、情報取得部16aであり、情報取得部16aは、1つ又は複数のマーク17を含む二値化画像に対して既知のラベリング処理を施す。
【0042】
例えば、情報取得部16aは、マーク17aの境界線上と、境界線の内側と、に位置する各画素にラベル番号1を付与し、マーク17aの境界線よりも外側に位置する各画素にラベル番号0を付与する。この様にして、情報取得部16aは、各画素に対応する座標及びラベル番号の情報を取得する。
【0043】
図5は、1つのマーク17aに対するラベリング処理の一例を示す図である。図5では、便宜上、1つの画素を丸で示す。図5では、マーク17aが、縦横方向において29個×29個の画素で構成される例を示すが、マーク17aを構成する画素の数は、この例に限定されるものではない。
【0044】
情報取得部16aは、各々ラベル番号1を有する画素のうち、縦方向及び横方向の端部の位置を特定する。具体的には、情報取得部16aは、上端位置Y及び下端位置Yと、左端位置X及び右端位置Xと、を特定する。
【0045】
図5では、説明の便宜上、座標に対してラベル番号を加えた、(X,Y,ラベル番号)を示している。また、図5では、上端に位置する複数の座標(X,Y)のうち2つを代表的に示している。同様に、下端に位置する2つの座標(X,Y)、左端に位置する2つの座標(X,Y)、及び、右端に位置する2つの座標(X,Y)を、それぞれ代表的に示している。
【0046】
情報取得部16aは、1つ又は複数のマーク17の縦方向及び横方向の中心に位置する中心座標(X,Y)を特定する。例えば、情報取得部16aは、上端位置Y及び下端位置Yの平均から縦方向の中心位置Yを算出し、左端位置X及び右端位置Xの平均から横方向の中心位置Xを算出する。
【0047】
上端位置Y、下端位置Y、左端位置X、右端位置X及び中心座標(X,Y)は、マーク17の外接矩形25(図6参照)を構成する情報となる。ところで、本実施形態では、理解を容易にするために、外接矩形25がタッチパネル14の画面に表示される例を説明するが、外接矩形25は必ずしも画面に表示されなくてもよい。
【0048】
図6に示す様に、カメラユニット10の撮像領域における中央部には、十字線と、この十字線の周囲を囲む正方形の外枠と、から成る四角形の枠線27が表示される。枠線調整部16bは、外接矩形25が枠線27内に収まる様に、外接矩形25に対する枠線27の位置及び大きさを自動的に調整する。
【0049】
具体的には、枠線調整部16bは、まず、X軸方向移動機構及びY軸Z軸方向移動機構を動作させて、1つのマーク17の外接矩形25の中心座標(X,Y)が枠線27の中心(即ち、十字線の交点)に移動する様に、カメラユニット10の撮像領域を移動させる。
【0050】
次に、枠線調整部16bは、枠線27と、枠線27内に位置する外接矩形25と、の間隔が予め定められた間隔となる様に、外接矩形25に対する相対的な枠線27の大きさを調整する。
【0051】
枠線27と外接矩形25との間隔は、例えば、10画素に対応する距離となる様に、調整されるが、当該間隔は、10画素に対応する距離に限定されるものではなく、任意の距離に設定されてよい。大きさが調整された枠線27は、確認用にタッチパネル14に表示される。
【0052】
制御ユニット16は、アライメントマーク登録部16c(図4参照)を有する。アライメントマーク登録部16cは、大きさが調整された枠線27と、枠線27の内側における1つ又は複数のマーク17を含む領域とを、アライメントマーク29(図8(B)参照)として制御ユニット16の所定のメモリ領域に登録する。この様にして、アライメントマーク29が切削装置2に設定される。
【0053】
本実施形態の制御ユニット16は、枠線27の位置及び大きさを、マーク17に応じて自動的に調整する。これにより、オペレータの感覚に依るのではなく、マーク17の形状及び大きさ等に応じて自動的に所定の範囲に、アライメントマーク29を設定できる。
【0054】
次に、図4から図9を参照して、第1の実施形態に係るアライメントマーク29の設定方法(即ち、ティーチ工程を行う方法)について説明する。第1の実施形態では、1つのマーク17をアライメントマーク29として登録する。図9は、アライメントマーク29の設定方法のフロー図である。
【0055】
まず、粘着テープ19を介してウェーハ11の裏面11b側を保持面12aで保持する。そして、オペレータが、カメラユニット10を介して表面11a側を観察し、アライメントマーク29として使用する可能性のある1つ以上のマーク17を撮像する(撮像ステップS10)(図4参照)。
【0056】
次に、情報取得部16aが、撮像ステップS10で撮像された1つ以上のマーク17のそれぞれの外接矩形25を構成する情報(即ち、図5の上端位置Y、下端位置Y、左端位置X、右端位置X及び中心座標(X,Y))を取得する(情報取得ステップS20)。
【0057】
図6は、各マーク17の外接矩形25が表示された画面の一例を示す図である。図6では、マーク17aの外接矩形25a、マーク17bの外接矩形25b、マーク17cの外接矩形25c、及び、マーク17dの外接矩形25dを示す。
【0058】
第1の実施形態では、情報取得ステップS20の後、オペレータが、1つのマーク17の表示領域を指で触れることで、タッチパネル14を介して1つのマーク17を指定する。図7は、オペレータが1つのマーク17aを指定する様子を示す図である。なお、図7では、オペレータの指及び手を便宜的にピクトグラムで示す。
【0059】
1つのマーク17aが指定されたことに応じて、枠線調整部16bは、外接矩形25aの中心が枠線27の中心に移動する様に撮像領域を移動させる(図7の破線矢印)。そして、枠線調整部16bは、外接矩形25aと枠線27との間隔が予め定められた間隔となる様に、枠線27の大きさを調整する(枠線調整ステップS30)。
【0060】
図8(A)は、位置及び大きさが調整された枠線27を示す図である。図8では、マーク17aの範囲を明示するために、説明の便宜上、マーク17aに模様を付しているが、実際の画面では、模様は表示されない。
【0061】
枠線調整ステップS30の後、アライメントマーク登録部16cは、大きさが調整された枠線27と、枠線27の内側におけるマーク17aを含む領域と、をアライメントマーク29として制御ユニット16の所定のメモリ領域に登録する(登録ステップS40)。
【0062】
図8(B)は、S10からS40を経て切削装置2に設定されたアライメントマーク29を示す図である。なお、図8(B)では、アライメントマーク29の外周端部を明確にすることを目的として、枠線27の正方形に対応する部分を破線で示すが、実際のアライメントマーク29には、この破線は表示されない。
【0063】
本実施形態では、枠線27の位置及び大きさを、マーク17aに応じて自動的に調整する。これにより、オペレータの感覚に依るのではなく、マーク17aの形状及び大きさ等に応じて自動的に所定の範囲に、アライメントマーク29を設定できる。
【0064】
次に、第2の実施形態について説明する。第2の実施形態では、切削装置2を用いて複数のマーク17を含む領域をアライメントマーク29として設定する。まず、アライメントマーク29として使用する可能性のあるマーク17a、17b、17c及び17dを撮像する(撮像ステップS10)。
【0065】
次に、情報取得部16aが、マーク17a、17b、17c及び17dのそれぞれの上端位置Y、下端位置Y、左端位置X、右端位置X及び中心座標(X,Y)を取得する(情報取得ステップS20)。即ち、4つのマーク17のそれぞれの外接矩形25を構成する情報を取得する。
【0066】
第2の実施形態では、情報取得ステップS20の後、オペレータが、マーク17a、17b、17c及び17dに囲まれた任意の領域に対応する表示領域を指で触れる。図10(A)は、複数のマーク17に囲まれた任意の領域31をオペレータが指定する様子を示す図である。
【0067】
第2の実施形態の情報取得部16aは、オペレータの指定に応じて、領域31を中心とする予め定められた大きさの矩形33の範囲内に少なくとも一部が位置する全てのマーク17を特定し、当該全てのマーク17を、オペレータが指定したと判断する。
【0068】
図10(A)に示す例では、4つのマーク17a、17b、17c及び17dの各一部が矩形33内に位置するので、情報取得部16aは、4つのマーク17a、17b、17c及び17dをオペレータが指定したと判断する。
【0069】
情報取得部16aは、複数のマーク17が指定された場合、複数のマーク17の全体に外接する外接矩形35を構成する情報を取得する。例えば、情報取得部16aは、4つのマーク17のそれぞれの外接矩形25を構成する情報から、4つのマーク17の全体に外接する外接矩形35を構成する情報を、取得する。
【0070】
図10(A)の例において、情報取得部16aは、マーク17a又は17bの上端位置Y、マーク17dの下端位置Y、マーク17bの左端位置X、及び、マーク17a又は17dの右端位置Xから、外接矩形35の上端位置Y、下端位置Y、左端位置X及び右端位置Xの情報を取得する。
【0071】
また、情報取得部16aは、外接矩形35の上端位置Y及び下端位置Yの平均から外接矩形35の縦方向の中心位置Yを算出し、外接矩形35の左端位置X及び右端位置Xの平均から外接矩形35の横方向の中心位置Xを算出する。これにより、外接矩形35の中心座標(X,Y)を取得する。
【0072】
その後、4つのマーク17が指定されたことに応じて、枠線調整部16bは、外接矩形35の中心が枠線27の中心に移動する様に撮像領域を移動させる。そして、外接矩形35が枠線27内に収まり、外接矩形35と枠線27との間隔が予め定められた間隔となる様に、枠線27の大きさを調整する(枠線調整ステップS30)。
【0073】
図10(B)は、枠線調整ステップS30後の枠線27を示す図である。枠線調整ステップS30の後、アライメントマーク登録部16cは、大きさが調整された枠線27と、枠線27の内側におけるマーク17a、17b、17c及び17dを含む領域とを、アライメントマーク29として登録する(登録ステップS40)。
【0074】
本実施形態では、4つのマーク17の形状、大きさ及び配置に応じて、枠線27の大きさを自動的に調整する。それゆえ、オペレータの感覚に依るのではなく、複数のマーク17の形状、大きさ及び配置に応じて自動的に所定の範囲に、アライメントマーク29を設定できる。
【0075】
次に、第3の実施形態について説明する。第3の実施形態では、第2の実施形態と同様に、撮像ステップS10及び情報取得ステップS20を行う。但し、第3の実施形態では、オペレータは、矩形33内に位置するマーク17が1つだけとなる様に、1つのマーク17の角部の近傍に対応する表示領域を指で触れる。
【0076】
図11(A)は、マーク17dの右下の角部の近傍に対応する表示領域を、オペレータが指で触れる様子を示す図である。この様にして、マーク17dの右下の領域31を中心とする矩形33内に一部が位置するマーク17dのみが、オペレータにより指定される。
【0077】
オペレータの指定に応じて、外接矩形25dの中心が枠線27の中心に移動する様に撮像領域が移動し、外接矩形25dと枠線27との間隔が予め定められた間隔となる様に、枠線27の大きさが調整される(枠線調整ステップS30)。
【0078】
図11(B)は、枠線調整ステップS30後の枠線27を示す図である。本実施形態では、矩形33が1つのマーク17dの一部を含む様に、マーク17dの表示領域の近傍を指定することで、マーク17dを選択できる。また、選択されたマーク17dの形状及び大きさに応じて自動的に所定の範囲に、アライメントマーク29を設定できる。
【0079】
その他、上記実施形態に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。マーク17は、上述の実施形態の様にデバイス15に形成されてもよく、分割予定ライン13に形成されてもよい。また、マーク17は幾何学的な形状に限定されず、文字、数字等であってもよい。
【0080】
ところで、上述の実施形態では、加工装置として切削装置2の例を説明したが、加工装置は、レーザービームでウェーハ11を加工するレーザー加工装置(不図示)であってもよい。レーザー加工装置には、切削ユニット8に代えて、レーザー加工ユニットが配置される。レーザー加工ユニットは、パルス状のレーザービームを生じさせるレーザー発振器や、レーザービームを集光させるための集光レンズ等を含む。
【0081】
レーザービームは、ウェーハ11を透過する波長を有してもよい。この場合、パルス状のレーザービームの集光点をウェーハ11の内部に位置付けて、多光子吸収によりウェーハ11が加工される(所謂、ステルスダイシング)。レーザービームは、ウェーハ11に吸収される波長を有してもよい。この場合、パルス状のレーザービームにより、ウェーハ11はアブレーション加工される。
【符号の説明】
【0082】
2:切削装置、4:基台
6:カバー、6a:前面
8:切削ユニット
10:カメラユニット
12:チャックテーブル、12a:保持面
14:タッチパネル
16:制御ユニット、16a:情報取得部
16b:枠線調整部、16c:アライメントマーク登録部
11:ウェーハ、11a:表面、11b:裏面
13:分割予定ライン
15:デバイス
17、17a、17b、17c、17d:マーク
19:粘着テープ
21:フレーム
23:ウェーハユニット
25、25a、25b、25c、25d、35:外接矩形
27:枠線、29:アライメントマーク
31:領域、33:矩形
図1
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