(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-08
(45)【発行日】2023-12-18
(54)【発明の名称】カプセル剤
(51)【国際特許分類】
A61K 9/48 20060101AFI20231211BHJP
A61K 47/14 20170101ALI20231211BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20231211BHJP
A61K 47/44 20170101ALI20231211BHJP
A61K 47/42 20170101ALI20231211BHJP
A23L 5/00 20160101ALI20231211BHJP
A23L 5/20 20160101ALI20231211BHJP
【FI】
A61K9/48
A61K47/14
A61K47/10
A61K47/44
A61K47/42
A23L5/00 C
A23L5/20
(21)【出願番号】P 2018247737
(22)【出願日】2018-12-28
【審査請求日】2021-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鳥井 一宏
(72)【発明者】
【氏名】要田 涼太
(72)【発明者】
【氏名】渋谷 忠杜
(72)【発明者】
【氏名】岡野 美優
【審査官】中島 芳人
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2004/0013722(US,A1)
【文献】特表2002-502806(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-0500271(KR,B1)
【文献】国際公開第98/042316(WO,A1)
【文献】大阪市立科学館研究報告,2015年,vol.25,pp.23-26
【文献】Kobayashi Pharmaceutical, Japan, Breath Care, ,MINTEL GNPD,2001年,[online], MINTEL, [検索日 2020.02.17], 記録番号:1542407
【文献】第十四改正日本薬局方解説書,通則 製剤総則 一般試験法,東京廣川書店刊行,2001年,p.A-37-A-38
【文献】小林製薬, ブレスケア 水で飲む息清涼カプセル 詰め替え用 ミント100粒(50粒×2個),[online], 2016.5.18, [2020.02.17 検索], <URL : https://www.amazon.co.jp/ブレスケア-水で飲む息清涼カプセル-詰め替え用-100粒-50粒×2個/dp/B01FTVBBYI>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/
A61K 47/
A23L 5/
A23D 9/
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪酸トリグリセリド、メントール及びパセリ種子油を含有する内容物が、ゼラチンを含む皮膜に内包されているカプセル剤、ここで、該内容物中、脂肪酸トリグリセリドの含有量は
54~
79質量%
であり、メントールの含有量は1.5~20質量%
であり且つ脂肪酸トリグリセリド100質量部に対してメントールが2000/79~36質量部であり、パセリ種子油の含有量は1~20質量%である。
【請求項2】
前記脂肪酸トリグリセリドが炭素数8~22の脂肪酸グリセリドである、請求項1に記載のカプセル剤。
【請求項3】
前記内容物中、脂肪酸トリグリセリド100質量部に対して、パセリ種子油が0.25質量部以上である、請求項1または2に記載のカプセル剤。
【請求項4】
ソフトカプセル剤である、請求項1~
3のいずれかに記載のカプセル剤。
【請求項5】
内容物及びこれを内包する皮膜を有するカプセル剤において、脂肪酸トリグリセリド、メントール及びパセリ種子油を含有する内容物と、ゼラチンを含む皮膜とを組み合わせることを特徴とする、該皮膜の不溶化抑制及び接着抑制方法、
ここで、該内容物中、脂肪酸トリグリセリドの含有量は
54~
79質量%
であり、メントールの含有量は1.5~20質量%
であり且つ脂肪酸トリグリセリド100質量部に対してメントールが2000/79~36質量部であり、パセリ種子油の含有量は1~20質量%である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカプセル剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ゼラチンは、人体に対して毒性がなく安価であり、ゼリー形成能、増粘性等に優れている。このため、ゼラチンはカプセル剤の成分として医薬や食品等の分野において広く使用されている。
【0003】
しかし、ゼラチンをカプセル剤の皮膜として使用する場合、カプセルに充填された内容物との架橋反応等により、皮膜の溶解性が経時的に低下しやすい傾向がある。このような溶解性の低下は皮膜の不溶化をもたらし、例えば、有効成分が適切に放出されない等の不都合をもたらす。また、ゼラチンをカプセル剤の皮膜として使用する場合、夏場等の高温環境下では、保存中にカプセル剤同士がくっつくといった問題が生じることがある。このため、皮膜の不溶化やカプセル同士の接着は、カプセル剤において品質低下等の深刻な問題につながる。
【0004】
これまでに、ゼラチンの不溶化を抑制する手段として、イノシトールリン酸をゼラチンに配合して皮膜用組成物を作製し、これをカプセル剤の皮膜として使用する方法が知られている(特許文献1)。このような方法が従来知られているものの、ゼラチンの不溶化を抑制でき、また、カプセル剤同士の接着を抑制できる新たな手段を更に提供することは重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
不快な口臭等を抑制することを目的とした口中清涼剤では、従来、例えばメントールが頻用されている。そこで、本発明者らは、これに着目してゼラチンを含む皮膜でメントールを内包したカプセル剤を製造したところ、ゼラチンを含む皮膜の不溶化とカプセル剤同士の接着の両方を十分に抑制できるカプセル剤の製造が困難であることに気付いた。
【0007】
そこで、本発明は、ゼラチンを含む皮膜の不溶化とカプセル剤同士の接着の両方を抑制できる新たな手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題に鑑み鋭意検討を行ったところ、40~99質量%の脂肪酸トリグリセリド、0.5~20質量%のメントール、20質量%以下のパセリ種子油を含む内容物を、ゼラチンを含む皮膜に内包して得たカプセル剤において、ゼラチンの不溶化とカプセル剤同士の接着の両方を効果的に抑制できることを見出した。本発明は該知見に基づき更に検討を重ねた結果完成されたものであり、次に掲げるものである。
【0009】
項1.脂肪酸トリグリセリド、メントール及びパセリ種子油を含有する内容物が、ゼラチンを含む皮膜に内包されているカプセル剤、ここで、該内容物中、脂肪酸トリグリセリドの含有量は40~99質量%、メントールの含有量は0.5~20質量%、パセリ種子油の含有量は20質量%以下である。
項2.前記脂肪酸トリグリセリドが炭素数8~22の脂肪酸グリセリドである、項1に記載のカプセル剤。
項3.前記内容物中、脂肪酸トリグリセリド100質量部に対して、パセリ種子油が0.25質量部以上である、項1または2に記載のカプセル剤。
項4.前記内容物中、脂肪酸トリグリセリド100質量部に対して、メントールが1質量部以上である、項1~3のいずれかに記載のカプセル剤。
項5.ソフトカプセル剤である、項1~4のいずれかに記載のカプセル剤。
項6.内容物及びこれを内包する皮膜を有するカプセル剤において、脂肪酸トリグリセリド、メントール及びパセリ種子油を含有する内容物と、ゼラチンを含む皮膜とを組み合わせることを特徴とする、該皮膜の不溶化抑制及び接着抑制方法、ここで、該内容物中、脂肪酸トリグリセリドの含有量は40~99質量%、メントールの含有量は0.5~20質量%、パセリ種子油の含有量は20質量%以下である。
【発明の効果】
【0010】
本発明のカプセル剤や方法によれば、ゼラチンを含む皮膜の不溶化を抑制することができ、また、皮膜同士の接着を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、脂肪酸トリグリセリド、メントール及びパセリ種子油を含有する内容物が、ゼラチンを含む皮膜に内包されており、該内容物中、脂肪酸トリグリセリドの含有量が40~99質量%、メントールの含有量が0.5~20質量%、パセリ種子油の含有量が20質量%以下である、カプセル剤を提供する。
【0012】
内容物
本発明のカプセル剤において、内容物は、40~99質量%の脂肪酸トリグリセリド、0.5~20質量%のメントール、20質量%以下のパセリ種子油を含有する。
【0013】
脂肪酸トリグリセリドは、1つのグリセロールに3つの脂肪酸がエステル結合した構造を有する化合物である。グリセロールにエステル結合する脂肪酸は、飽和脂肪酸であっても不飽和脂肪酸であってもよく、また、直鎖脂肪酸であっても分岐鎖脂肪酸であってもよい。該脂肪酸の炭素数も制限されないが、好ましくは炭素数8~22、より好ましくは炭素数10~21、更に好ましくは12~20の脂肪酸が例示される。この限りにおいて制限されないが、脂肪酸として、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸等が例示される。1つのグリセロールに結合する3つの脂肪酸は、それぞれ同じであってもよく、2種のみが同じであってもよく、互いに異なってもよい。脂肪酸トリグリセリドは、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0014】
脂肪酸トリグリセリドは、例えば、ヒマワリ油、サフラワー油、菜種油、オリーブ油、綿実油、大豆油、ゴマ油、トウモロコシ油、落花生油、ブドウ油、ヤシ油等の植物油、ラード、魚油、牛脂等の動物油等にも多く含有されている。このため、内容物にはこれらの植物油、動物油等を用いてもよい。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0015】
内容物中、脂肪酸トリグリセリドの含有量は40~99質量%であり、好ましくは50~98.5質量%、より好ましくは54~98質量%が例示される。
【0016】
メントールは、公知の成分であり、l-メントール、dl-メントール、d-メントールのいずれであってもよい。また、メントールは、例えばペパーミント油、スペアミント油、ハッカ油といった精油等にも含有されている。このため、内容物においてメントールは精油等の状態で含有されていてもよく、この場合、メントールの含有量は、該精油等に含まれるメントール量に換算した値である。これらは1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0017】
内容物中、メントールの含有量は0.5~20質量%であり、好ましくは1~20質量%、より好ましくは1.5~15質量%、更に好ましくは2~10質量%が例示される。
【0018】
パセリ種子油は、パセリの種子から得られる精油であり、CAS No.8000-68-8としても知られている。パセリ種子油は商業的に入手可能であり、例えば、パセリ種子油(香栄興業株式会社製)等として市販されている。
【0019】
内容物中、パセリ種子油の含有量は20質量%以下であり、好ましくは0.05~15質量%、より好ましくは0.1~10質量%が例示される。
【0020】
また、本発明を制限するものではないが、内容物中、脂肪酸トリグリセリド100質量部に対して、メントールは、好ましくは1質量部以上、より好ましくは1~40質量部、更に好ましくは2~38質量部、特に好ましくは2~36質量部が例示される。
【0021】
また、本発明を制限するものではないが、内容物中、脂肪酸トリグリセリド100質量部に対して、パセリ種子油は、好ましくは0.25質量部以上、より好ましくは0.25~40質量部、更に好ましくは0.25~38質量部、特に好ましくは2~36質量部が例示される。
【0022】
内容物には、本発明の効果を損なわない範囲で必要に応じて、薬学的に許容される成分、香粧学的に許容される成分、可食性の成分といった任意の成分を更に含有してもよい。該成分として好ましくは可食可能な成分が挙げられる。
【0023】
該任意の成分として、水、可塑剤、着色料、アミノ酸、ビタミン類、酵素、甘味料、香料、賦形剤、崩壊剤、流動化剤、界面活性剤、矯味剤、矯臭剤、懸濁剤、湿潤剤、乳化剤、可溶化剤、分散剤、緩衝剤、結合剤、浸透促進剤、安定剤、増量剤、防腐剤、増粘剤、pH調整剤、コーティング剤、吸収促進剤、酸化防止剤、抗炎症剤、蝋、メントール以外の清涼剤、各種有用成分等が例示される。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよく、その含有量も本発明の効果を損なわない限り適宜決定すればよい。
【0024】
内容物の形態は制限されず、固形状(粉末状、顆粒状等)、半固形状(ゲル状(ゼリー状)、クリーム状、ペースト状等)、液状等のいずれであってもよい。内容物の形態として、好ましくは半固形状または液状が例示される。
【0025】
内容物は、従来公知のカプセル剤に内包される内容物の製造手順に従い製造すればよく、例えば、脂肪酸トリグリセリド、メントール、パセリ種子油、必要に応じて前記任意の成分を適宜混合等して調製すればよい。
【0026】
皮膜
本発明のカプセル剤において、皮膜はゼラチンを含有する。
【0027】
ゼラチンは、食品、医薬品、医薬部外品等の分野において従来使用されているゼラチンであればよく、好ましくは可食性のゼラチンが例示される。この限りにおいて制限されないが、該ゼラチンとして、豚、牛、魚等の皮、骨、腱、靭帯、鱗等を原料とした、酸及び/またはアルカリ処理ゼラチン、アシル化ゼラチン等の化学修飾ゼラチン、ゼラチンの加水分解物等のゼラチンが例示される。これらのゼラチンは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。ゼラチンは商業的に入手可能であり、例えば株式会社ニッピ、新田ゼラチン株式会社、ゼライス株式会社、Rousselot社、Weishardt社等から市販されている。
【0028】
ゼラチンは、この限りにおいて制限されないが、該ゼラチンのゼリー強度(ブルーム値)を適宜選択して使用してもよい。本発明を制限するものではないが、ゼラチンのゼリー強度は、好ましくは50~350g、より好ましくは80~300gの範囲が例示される。ゼラチンのゼリー強度はJIS K-6503(2001)に準じて測定され、具体的には、6.67質量%のゼラチン水溶液を、10℃で17時間冷却して調製したゼリーの表面を2分の1インチ(12.7mm)径のプランジャーで4mm押し下げるのに必要な荷重(g)をゼリー強度とする。
【0029】
皮膜中、ゼラチンの含有量は制限されないが、好ましくは15~85質量%、より好ましくは20~80質量%、更に好ましくは25~75質量%が例示される。
【0030】
また、本発明を制限するものではないが、ゼラチン100質量部に対して、脂肪酸トリグリセリド、メントール及びパセリ種子油が総量で、好ましくは1~50質量部、より好ましくは20~48質量部、更に好ましくは35~45質量部が例示される。
【0031】
皮膜には、本発明の効果を損なわない範囲で必要に応じて、薬学的に許容される成分、香粧学的に許容される成分、可食性の成分といった任意の成分を更に含有してもよい。該成分として好ましくは可食可能な成分が挙げられる。
【0032】
該任意の成分として、水、可塑剤、賦形剤、崩壊剤、流動化剤、界面活性剤、滑沢剤、香料、着色料、甘味料、矯味剤、矯臭剤、懸濁剤、湿潤剤、乳化剤、可溶化剤、分散剤、緩衝剤、結合剤、浸透促進剤、安定剤、増量剤、防腐剤、増粘剤、油性基剤、pH調整剤、コーティング剤、吸収促進剤、酸化防止剤、抗炎症剤、清涼剤、アミノ酸、ビタミン類、酵素、各種有用成分等が例示される。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよく、その含有量も本発明の効果を損なわない限り適宜決定すればよい。
【0033】
本発明を制限するものではないが、該任意の成分の一例として可塑剤について説明すると、可塑剤としてグリセリン;プロピレングルコールやポリエチレングリコール等のグリコール類;スクロース、フルクトース、ソルビトール、マンニトール、コーンシロップ等の液状糖類;結晶セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース等の水不溶性セルロース等が例示される。これらはいずれも1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、皮膜中の可塑剤の含有量は制限されないが、好ましくは1~40質量%、より好ましくは5~30質量%、更に好ましくは10~25質量%が例示される。
【0034】
皮膜は、従来公知のカプセル剤に使用される皮膜の製造手順に従い製造すればよく、例えば、ゼラチンと必要に応じて前記任意の成分を適宜混合等して調製すればよい。
【0035】
カプセル剤
本発明においてカプセル剤は、前述の内容物が、前述の皮膜に内包されている。カプセル剤は、従来公知のカプセル剤の製造手順に従い製造すればよく、例えば、脂肪酸トリグリセリド、メントール、パセリ種子油、必要に応じて前記任意の成分を適宜混合等して、40~99質量%の脂肪酸トリグリセリド、0.5~20質量%のメントール、20質量%以下のパセリ種子油となるように調製した内容物を、ゼラチンと必要に応じて前記任意の成分とを適宜混合等して調製した皮膜(カプセル)に内包することにより製造される。本発明のカプセル剤は、皮膜内に内容物を充填したり、皮膜で内容物を被包するなど、従来公知のカプセル剤の製造手順に従って皮膜に内容物を内包することにより製造すればよい。
【0036】
本発明のカプセル剤は、ソフトカプセル剤であってもハードカプセル剤であってもよい。また、本発明を制限するものではないが、カプセル剤の形状としてオーバール(フットボール)型、オブロング(長楕円)型、ラウンド(球状)型、涙型、三角形等が例示され、その大きさも好ましくは服用可能な限り制限されず、例えばオーバール型の場合は、好ましくは長径6~20mm、短径4~15mm、より好ましくは長径6~15mm、短径4~10mmが挙げられる。
【0037】
本発明のカプセル剤は経口、非経口のいずれで使用してもよく、好ましくは経口で使用される。カプセル剤の使用態様は制限されず、目的に応じて適宜設定すればよい。該使用態様として経口で使用する場合を例示すると、食品組成物(飲料を含む、保健機能食品(特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品、サプリメント等を含む)、健康補助食品、病者用食品を含む)、医薬組成物、医薬部外品組成物、飼料組成物、また、食品組成物、医薬組成物、医薬部外品組成物、飼料等への添加剤等として使用することができる。本発明のカプセル剤は、例えば、速やかに飲み込むものであってもよく、口腔内に一定時間とどめておき、その後飲み込むものであってもよい。
【0038】
本発明のカプセル剤を適用(摂取、投与等)する対象者も制限されず、ヒト、ヒト以外の哺乳動物が例示される。ヒト以外の哺乳動物としては、モルモット、ウサギ、イヌ、ネコ、サル、チンパンジー等の動物が例示される。
【0039】
本発明のカプセル剤によれば、40~99質量%の脂肪酸トリグリセリド、0.5~20質量%のメントール、20質量%以下のパセリ種子油を含有する内容物を用いることにより、ゼラチンを含有する皮膜の不溶化と接着とを効果的に抑制することができる。
【0040】
このことから、本発明はまた、内容物及びこれを内包する皮膜を有するカプセル剤において、40~99質量%の脂肪酸トリグリセリド、0.5~20質量%のメントール、20質量%以下のパセリ種子油を含有する内容物と、ゼラチンを含有する皮膜とを組み合わせることを特徴とする、該皮膜の不溶化抑制及び接着抑制方法を提供するといえる。該方法において、脂肪酸トリグリセリド、メントール、パセリ種子油、ゼラチン、内容物、皮膜、カプセル剤等については、前述と同様にして説明される。このことから、該方法は、40~99質量%の脂肪酸トリグリセリド、0.5~20質量%のメントール、20質量%以下のパセリ種子油を含有する内容物を、ゼラチンを含有する皮膜に内包することにより実施できるといえる。
【0041】
本発明によれば、このように、ゼラチンを含む皮膜(カプセル皮膜)の不溶化及び接着を抑制することができ、ひいては、カプセル剤に含まれる有効成分のより適切な放出を可能し、また、カプセル剤同士の接着に伴う不都合を抑制することができる。
【実施例】
【0042】
以下、実施例を示して本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0043】
試験例
内容物及び皮膜の調製
次の表1及び2の組成に従って内容物を調製した。具体的には、表1及び2に従って脂肪酸トリグリセリド、メントール、パセリ種子油、レモン香料、グレープフルーツ香料、ピーチ香料を80℃で混合し、内容物(実施例1~6、比較例1~10、参考例)を調製した。内容物はいずれも液状であった。
【0044】
別途、ゼラチン10g、水20g及びグリセリン4gを混合して、ゼラチンを加熱溶解(80℃)し、次いで冷却(25℃)して、冷却物を、1枚あたり1.5cm×1.5cm(重さ80mg)のシートになるように裁断し、ゼラチンを含む皮膜片(ゼラチン皮膜片)を作製した。
【0045】
本試験例において、脂肪酸トリグリセリドはひまわり油(商品名Jひまわり白絞油、株式会社Jオイルミルズ社製)、メントールはl-メントール(商品名薄荷脳、長岡実業株式会社社製)、パセリ種子油は商品名パセリ種子油(香栄興業株式会社製)、レモン香料は商品名レモンオイル(小川香料株式会社製)、グレープフルーツ香料は商品名グレープフルーツオイル(シムライズ株式会社製)、ピーチ香料は商品名ピーチオイル(高田香料株式会社製)、ゼラチンは豚由来ゼラチン(商品名KKSC(製造社により記載のゼリー強度(以下同様)250~280g)を使用した。なお、ひまわり油は、一般的に、脂肪酸トリグリセリドを約95~100質量%含有し、主な構成脂肪酸としてオレイン酸及びリノール酸を含む脂肪酸トリグリセリドを含有する。ゼラチンのゼリー強度は、JIS K-6503(2001)に準じて測定された値であり、具体的には、6.67質量%のゼラチン水溶液を、10℃で17時間冷却して調製したゼリーの表面を2分の1インチ(12.7mm)径のプランジャーで4mm押し下げるのに必要な荷重(g)であった。
【0046】
作製したゼラチン皮膜片について、以下の不溶化試験、接着試験をそれぞれ行った。
不溶化試験
前述のようにして作製したゼラチン皮膜片1枚を、実施例1~6、比較例1~10、参考例の各内容物2.3g(50℃)に1週間、静置で完全に浸漬した。次いで、ゼラチン皮膜片を内容物から取り出し、ヘキサンで洗浄後、ゼラチン皮膜片を60℃の水に50mL完全に浸漬し(50mLのビーカー使用)、5分間、スターラーを用いて撹拌(回転数670rpm)した。次いで、静止状態で目視観察し、ゼラチン皮膜片の不溶化の評価を次のようにして行った。なお、ヘキサンで洗浄後の(水浸漬前の)ゼラチン皮膜片はいずれも、内容物に浸漬前の形状を維持していた。
【0047】
<評価>
◎:ゼラチン皮膜片が完全に溶解し、不溶物が全く認められなかった。
○:ゼラチン皮膜片は溶解するが、不溶物が若干(水浸漬直前のゼラチン皮膜の質量と比較して10質量%以下の不溶物)認められた。
△:ゼラチン皮膜片は溶解するが、不溶物が多く(水浸漬直前のゼラチン皮膜の質量と比較して10質量%より多く50質量%以下の不溶物)認められた。
×:ゼラチン皮膜片がほとんど溶解せず、不溶物が非常に多く(水浸漬直前のゼラチン皮膜の質量と比較して50質量%より多くの不溶物)認められた。
【0048】
接着試験
前述のようにして作製したゼラチン皮膜片を2枚重ねて、これを実施例1~6、比較例1~10、参考例の各内容物2.3g(50℃)に1週間、静置で完全に浸漬した。浸漬後、2枚のゼラチン皮膜片の接着の有無を観察し、2枚のゼラチン皮膜片が引っ付いていなかった試料以外については、そのまま浸漬させた状態で振動を与え、2枚のゼラチン皮膜片が分離するかどうかについて試験を行った。
【0049】
観察、振動処理後、接着の評価を次のようにして行った。ゼラチン皮膜片が引っ付いていないか、あるいは、ゼラチン皮膜片が速やかに分離するほど、高温環境下であっても、カプセル剤同士の接着が抑制されたことを示す。
【0050】
<評価>
◎:内容物から取り出した際、2枚のゼラチン皮膜片が引っ付いていなかった
〇:僅かな振動で、2枚のゼラチン皮膜片が分離した。
△:中程度の振動で、2枚のゼラチン皮膜片が分離した。
×:物理的に剥がさないと、2枚のゼラチン皮膜片が分離しなかった。
【0051】
なお、振動は、ボルテックスミキサーVORTEX-GENIE 2(サイエンティフィックインダストリーズ社)を使用し、600rpm(min値)で5秒間振動させたものを僅かな振動、10秒間振動させたものを中程度の振動とした。
【0052】
結果
結果を表1及び2に示す。
【0053】
【0054】
【0055】
表1の参考例に示す通り、ゼラチン皮膜片を脂肪酸トリグリセリドに浸漬させてもゼラチン皮膜片の不溶化はほとんど認められず、また、ゼラチン皮膜片同士の接着も認められなかった。これに対して、表1の比較例1~5に示す通り、脂肪酸トリグリセリドとメントールとを混合した場合は、ゼラチン皮膜片の不溶化はほとんど認められなかったものの、ゼラチン皮膜片同士の接着が認められた。また、表1の比較例6~8に示す通り、内容物として、脂肪酸トリグリセリドとメントールと共にレモン香料(比較例6)、グレープフルーツ香料(比較例7)、ピーチ香料(比較例8)を用いた場合は、いずれにおいても、不溶化が認められるか(比較例6及び7)、接着が認められた(比較例8)。
【0056】
これに対して、表2に示す通り、脂肪酸トリグリセリドとメントールと共に、パセリ種子油を20質量%以下で組み合わせた実施例1~6では、ゼラチン皮膜片の不溶化はほとんど認められず、また、ゼラチン皮膜片同士の接着も認められなかった。一方、脂肪酸トリグリセリドとメントールと共に、パセリ種子油を用いた場合であっても、多量のパセリ種子油を組み合わせた比較例9及び10では、所望の接着抑制は達成できるものの、不溶化抑制の程度は劣っていた。
【0057】
このことから、カプセル剤の内容物として脂肪酸トリグリセリド、メタノール及びパセリ種子油を特定の範囲で組み合わせた場合に、ゼラチンを皮膜として使用するカプセル剤において所望の不溶化抑制及び接着抑制が達成できることが確認された。