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特許7399626非水系電解液及びそれを用いたエネルギーデバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-08
(45)【発行日】2023-12-18
(54)【発明の名称】非水系電解液及びそれを用いたエネルギーデバイス
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0569 20100101AFI20231211BHJP
   H01M 10/0567 20100101ALI20231211BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20231211BHJP
   H01M 4/485 20100101ALI20231211BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20231211BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20231211BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20231211BHJP
   H01M 6/16 20060101ALI20231211BHJP
   H01G 11/64 20130101ALI20231211BHJP
   H01G 11/46 20130101ALI20231211BHJP
【FI】
H01M10/0569
H01M10/0567
H01M4/38 Z
H01M4/485
H01M4/505
H01M4/525
H01M10/052
H01M6/16 A
H01G11/64
H01G11/46
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019070347
(22)【出願日】2019-04-02
(65)【公開番号】P2019192639
(43)【公開日】2019-10-31
【審査請求日】2022-03-14
(31)【優先権主張番号】P 2018082080
(32)【優先日】2018-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】320011605
【氏名又は名称】MUアイオニックソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】澤 脩平
(72)【発明者】
【氏名】川上 大輔
【審査官】川村 裕二
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-006046(JP,A)
【文献】特開2009-158464(JP,A)
【文献】国際公開第2017/173743(WO,A1)
【文献】特開2010-073367(JP,A)
【文献】特開2018-163867(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/00 -10/0587
H01M 4/00 - 4/62
H01M 6/00 - 6/48
H01G 11/00 -11/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極及び負極を備えるエネルギーデバイス用の非水系電解液であって、該非水系電解液が電解質及び非水溶媒とともに、
(A)カルボン酸エステル、および
(B)式(1)で表される化合物を含有し、かつ、前記(A)群と前記(B)群の合計含有量に対する前記(A)群の含有量が50質量%以上99.5質量%以下であり、
前記式(1)で表される化合物の非水系電解液全量に対する含有量が、0.1質量%以上質量%以下であり、
前記カルボン酸エステルの非水系電解液全量に対する含有量が0.6質量%以上70質量%以下であることを特徴とする非水系電解液(但し、式(0)で表される化合物を含む態様を除く)
【化1】

【化2】

(式中、Rは少なくとも1つの炭素-炭素不飽和結合を有する、置換基を有していてもよい炭素数3~12の不飽和炭化水素基であり、該不飽和炭化水素基が、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有し、は炭素数2以上10以下の脂肪族炭化水素基である。 03 、R 04 及びR 05 はそれぞれ独立して炭素数1以上4以下のヒドロカルビル基であり、R 03 、R 04 及びR 05 のうち、少なくとも一つは三重結合を有する不飽和ヒドロカルビル基である。
【請求項2】
前記式(1)中、Rの不飽和炭化水素基が、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有する脂肪族不飽和炭化水素基である、請求項に記載の非水系電解液。
【請求項3】
前記式(1)中、Rが炭素数2以上10以下のアルキレン基である、請求項1または2に記載の非水系電解液。
【請求項4】
前記式(1)で表される化合物の非水系電解液全量に対する含有量が、0.3質量%以上質量%以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の非水系電解液。
【請求項5】
前記カルボン酸エステルがプロピオン酸エステルである、請求項1~4のいずれか1項に記載の非水系電解液。
【請求項6】
更に、炭素-炭素不飽和結合を有する環状カーボネート、フッ素含有環状カーボネート、硫黄含有有機化合物、リン含有有機化合物、前記式(1)以外のシアノ基を有する有機化合物、イソシアネート基を有する有機化合物、ケイ素含有化合物、モノフルオロリン酸塩、ジフルオロリン酸塩、ホウ酸塩、シュウ酸塩及びフルオロスルホン酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の非水系電解液。
【請求項7】
炭素-炭素不飽和結合を有する環状カーボネート、フッ素含有環状カーボネート、硫黄含有有機化合物、リン含有有機化合物、前記式(1)以外のシアノ基を有する有機化合物、イソシアネート基を有する有機化合物、ケイ素含有化合物、モノフルオロリン酸塩、ジフルオロリン酸塩、ホウ酸塩、シュウ酸塩及びフルオロスルホン酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物の非水系電解液全量に対する合計含有量が、0.001質量%以上50質量%以下である、請求項に記載の非水系電解液。
【請求項8】
負極、正極及び請求項1~7のいずれか1項に記載の非水系電解液を含む、エネルギーデバイス。
【請求項9】
前記負極は、集電体上に負極活物質層を有し、前記負極活物質層は、ケイ素の単体金属、合金及び化合物、スズの単体金属、合金及び化合物、炭素質材料、並びにリチウムチタン複合酸化物からなる群より選択される少なくとも一種を含有する、請求項に記載のエ
ネルギーデバイス。
【請求項10】
前記正極は、集電体上に正極活物質層を有し、前記正極活物質層は、リチウム・コバルト複合酸化物、リチウム・コバルト・ニッケル複合酸化物、リチウム・マンガン複合酸化物、リチウム・コバルト・マンガン複合酸化物、リチウム・ニッケル複合酸化物、リチウム・ニッケル・マンガン複合酸化物、及びリチウム・コバルト・ニッケル・マンガン複合酸化物からなる群より選択される少なくとも一種を含有する、請求項8または9に記載のエネルギーデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水系電解液及びそれを用いたエネルギーデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機、ノート型パーソナルコンピュータ等の携帯用電子機器の急速な進歩に伴い
、その主電源やバックアップ電源に用いられる電池に対する高容量化への要求が高くなっ
ており、ニッケル・カドミウム電池やニッケル・水素電池に比べてエネルギー密度の高い
リチウムイオン二次電池等のエネルギーデバイスが注目されている。
リチウムイオン二次電池の電解液としては、LiPF、LiBF、LiN(CF
SO、LiCF(CFSO等の電解質を、エチレンカーボネート、プロ
ピレンカーボネート等の高誘電率溶媒と、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート
、エチルメチルカーボネート等の低粘度溶媒との混合溶媒に溶解させた非水系電解液が代
表例として挙げられる。
【0003】
また、リチウムイオン二次電池の負極活物質としては主にリチウムイオンを吸蔵・放出
することができる炭素質材料が用いられており、天然黒鉛、人造黒鉛、非晶質炭素等がそ
の代表例として挙げられる。更に高容量化を目指してシリコンやスズ等を用いた金属又は
合金系の負極も知られている。正極活物質としては主にリチウムイオンを吸蔵・放出する
ことができる遷移金属複合酸化物が用いられており、前記遷移金属の代表例としてはコバ
ルト、ニッケル、マンガン、鉄等が挙げられる。
【0004】
このようなリチウムイオン二次電池は、活性の高い正極と負極を使用しているため、電
極と電解液との副反応により、充放電容量が低下することが知られており、電池特性を改
良するために、非水系有機溶媒や電解質について種々の検討がなされている。
特許文献1には、アルキルニトリルを添加した電解液を用いることにより、電池の高温
保存特性を向上させる技術が提案されている。
【0005】
特許文献2には、炭素‐炭素不飽和結合を有するニトリル化合物を添加した電解液を用
いることにより、負極上での電解液の分解反応が抑制されることによって電池の充放電効
率を向上させる技術が提案されている。
特許文献3および4には、炭素‐炭素不飽和結合を有するニトリル化合物を添加した電
解液を用いることにより、電池高温保存時の膨れを抑制させる技術が提案されている。
【0006】
特許文献5には、シアノエトキシ基を有する化合物を添加した電解液を用いることによ
り、黒鉛などの高結晶性炭素を負極に用いた場合に起こる溶媒の還元分解反応を抑制する
技術が提案されている。
特許文献6および7には、特定の不飽和炭化水素基を有するニトリル化合物を添加した
電解液を用いることにより、高温保存時の電池膨れおよび容量劣化を抑制する技術が提案
されている。
【0007】
特許文献8には、シアノ基を3つ以上有する脂肪族シアノ化合物を添加した電解液を用
いることにより、高温保存時の化およびサイクル試験時の容量劣化を抑制する技術が提案
されている
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開平10-189008号公報
【文献】特開2003-86248号公報
【文献】中国特許出願公開第102738511号明細書
【文献】米国特許出願公開第2014/0356734号明細書
【文献】特開2000-243444号公報
【文献】中国特許出願公開第105428717号明細書
【文献】中国特許出願公開第105742707号明細書
【文献】特開2010-073367号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1~8に記載されているニトリル化合物は、負極上で還元副反応も進行し、電
池特性の改善効果が不十分であるという問題点があった。また、それらの正極での作用の
効果は弱く、電池の高温保存耐久試験における耐久特性改善効果が不十分であるという問
題点があった。
本発明は、上記の問題を解決すべくなされたものであり、エネルギーデバイスにおいて
、初期容量と高温保存耐久試験後のレート特性を同時に向上することができる非水系電解
液と、この非水系電解液を用いたエネルギーデバイスを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記目的を達成するために種々の検討を重ねた結果、カルボン酸エステ
ルと特定のニトリルを特定の割合で電解液中に含有させることによって、上記課題を解決
できることを見出し、本発明を完成させるに至った。本発明の態様の要旨は、以下に示す
とおりである。
(a)正極及び負極を備えるエネルギーデバイス用の非水系電解液であって、該非水系電
解液が電解質及び非水溶媒とともに、
(A)カルボン酸エステル、および
(B)式(1)および式(2)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1
種の化合物を含有し、かつ、前記(A)群と前記(B)群の合計含有量に対する前記(A
)群の含有量が50質量%以上99.5質量%以下であることを特徴とする非水系電解液
【0011】
【化1】
【0012】
【化2】
【0013】
(式中、Rは少なくとも1つの炭素-炭素不飽和結合を有する置換基を有していてもよ
い炭素数3~12の不飽和炭化水素基であり、Rは炭素数2以上10以下の脂肪族炭化
水素基である。Rは炭素数1以上10以下の脂肪族炭化水素基であり、aは0または1
である。但し、複数存在するRは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。)
【0014】
(b)前記式(1)中、Rの不飽和炭化水素基が、少なくとも1つの炭素-炭素二重結
合を有する、(a)に記載の非水系電解液。
(c)前記式(1)中、Rの不飽和炭化水素基が、少なくとも1つの炭素-炭素二重結
合を有する脂肪族不飽和炭化水素基である、(a)または(b)に記載の非水系電解液。
(d)前記式(1)中、Rが炭素数2以上10以下のアルキレン基である、(a)~(
c)のいずれか1つに記載の非水系電解液。
【0015】
(e)前記式(2)中、Rが炭素数2以上10以下のアルキレン基である、(a)に記
載の非水系電解液。
(f)前記式(2)中、aが0である、(a)または(e)に記載の非水系電解液。
(g)前記非水系電解液が、前期式(1)で表される化合物および/または前記式(2)
で表される化合物を、0.001質量%以上10質量%以下で含有する、(a)~(f)
のいずれか1つに記載の非水系電解液。
【0016】
(h)前記カルボン酸エステルの非水系電解液全量に対する含有量が0.001質量%以
上70質量%以下である、(a)~(g)のいずれか1つに記載の非水系電解液。
(i)前記カルボン酸エステルがプロピオン酸エステルである、(a)~(h)のいずれ
か1つに記載の非水系電解液。
(j)更に、炭素-炭素不飽和結合を有する環状カーボネート、フッ素含有環状カーボネ
ート、硫黄含有有機化合物、リン含有有機化合物、前記式(1)および(2)以外のシア
ノ基を有する有機化合物、イソシアネート基を有する有機化合物、ケイ素含有化合物、モ
ノフルオロリン酸塩、ジフルオロリン酸塩、ホウ酸塩、シュウ酸塩及びフルオロスルホン
酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含有する、(a)~(i)のいず
れか1つに記載の非水系電解液。
【0017】
(k)炭素-炭素不飽和結合を有する環状カーボネート、フッ素含有環状カーボネート、
硫黄含有有機化合物、リン含有有機化合物、前記式(1)および(2)以外のシアノ基を
有する有機化合物、イソシアネート基を有する有機化合物、ケイ素含有化合物、モノフル
オロリン酸塩、ジフルオロリン酸塩、ホウ酸塩、シュウ酸塩及びフルオロスルホン酸塩か
らなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物の非水系電解液全量に対する合計含有量が
、0.001質量%以上50質量%以下である、(j)に記載の非水系電解液。
(l)負極、正極及び(a)~(k)のいずれか1つに記載の非水系電解液を含む、エネ
ルギーデバイス。
【0018】
(m)前記負極は、集電体上に負極活物質層を有し、前記負極活物質層は、ケイ素の単体
金属、合金及び化合物、スズの単体金属、合金及び化合物、炭素質材料、並びにリチウム
チタン複合酸化物からなる群より選択される少なくとも一種を含有する、(l)に記載の
エネルギーデバイス。
(n)前記正極は、集電体上に正極活物質層を有し、前記正極活物質層は、リチウム・コ
バルト複合酸化物、リチウム・コバルト・ニッケル複合酸化物、
リチウム・マンガン複合酸化物、リチウム・コバルト・マンガン複合酸化物、リチウム・
ニッケル複合酸化物、リチウム・ニッケル・マンガン複合酸化物、
及びリチウム・コバルト・ニッケル・マンガン複合酸化物からなる群より選択される少な
くとも一種を含有する、(l)または(m)に記載のエネルギーデバイス。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、初期容量と高温保存耐久試験後のレート特性を同時に向上したエネル
ギーデバイスを実現するための、非水系電解液を提供できる。これにより、エネルギーデ
バイスの小型化、高性能化及び高安全化を達成することができる。
本発明の非水系電解液を用いて作製されたエネルギーデバイスにおいて、初期容量と高
温保存耐久試験後のレート特性が改善される作用・原理は明確ではないが、以下のように
考えられる。ただし、本発明は、以下に記述する作用・原理に限定されるものではない。
【0020】
通常、前記特許文献1に代表されるニトリル化合物は、シアノ基が正極活物質中の金属
酸化物に配位することで、非水系電解液の酸化分解を抑制し、高温保存耐久試験後のガス
発生を低減するといった改善効果をもたらす。ただし、これらのニトリル化合物は金属酸
化物への結合エネルギーが小さく、耐久試験時に容易に結合が外れてしまうため、非水系
電解液の酸化反応を抑制する効果は小さかった。さらに、シアノ基を有する化合物は耐還
元性が低いため、負極上で還元副反応が顕著に進行する。その結果、耐久試験後の充放電
効率が低下し、エネルギーデバイスの容量ロスにつながる。
【0021】
また、特許文献2に代表されるシアノ基に対してα位に炭素-炭素不飽和結合を有する
化合物は、シアノ基が正極活物質中の金属酸化物に配位することで、電池特性の向上をも
たらす。しかし、炭素-炭素不飽和結合と電子求引性であるシアノ基が分子内で近接して
いるため、負極での耐還元性が低くなり、負極上での還元副反応が顕著に進行してしまう
。その結果、耐久試験後の充放電効率が低下し、エネルギーデバイスの容量ロスにつなが
る。
【0022】
さらに、特許文献3及び4に代表される炭素-炭素不飽和結合を有するニトリル化合物
は、シアノ基が正極活物質中の金属酸化物に作用することで、上記アルキルニトリルと同
様にガスの副生を抑制し、電池特性の向上をもたらす。また、炭素-炭素不飽和結合の反
応により、負極保護被膜を形成し電池特性の向上をもたらす。しかし、ニトリル基の電子
求引効果により炭素-炭素不飽和結合の還元反応性が高くなっているため、負極上での還
元副反応を抑制することができず、その結果、耐久試験後の充放電効率が低下し、エネル
ギーデバイスの容量ロスにつながる。
【0023】
また、特許文献5~8に示されるエーテル基を有するニトリル化合物は、負極上での還
元分解反応が顕著であり、また、正極上でエーテル酸素の酸化により高抵抗な被膜が形成
される為、耐久試験後のレート特性が低下してしまう。
本発明の非水系電解液において、式(1)で表される化合物および式(2)で表される
化合物は、エーテル酸素とシアノ基が脂肪族炭化水素基を介して存在する。その為、エー
テル酸素とシアノ基を用いて、正極の金属酸化物にキレート配位をすることができ、金属
酸化物との結合エネルギーが大きくなる。その結果、正極の金属酸化物に安定に作用する
ことができる。一方、カルボン酸エステルは、負極で還元されることによってアニオン性
化合物を副生し、その物質が正極上で酸化されることで正極劣化が起きる。しかし、式(
1)で表される化合物および式(2)で表される化合物は、それぞれ不飽和炭化水素基も
しくは複数のシアノエトシキ基を有している為、アニオン性化合物の酸化反応中間体をト
ラップすることができる。結果として、アニオン性化合物が引き起こす正極劣化を抑制す
ることができる。一方、式(1)で表される化合物および式(2)で表される化合物は、
エーテル酸素部位が系中の金属カチオンに強く作用することで負極最表面近傍まで接近し
、容易にCN基起因の還元副反応を起こす。しかし、ここで生成する副反応中間体とカル
ボン酸エステルが反応することで、後続の負極劣化副反応が抑制される。さらに反応生成
物は、エーテル酸素を取り込んでいる為、金属カチオン伝導性に優れた良質な絶縁被膜を
形成する。故に、初期容量と高温保存耐久試験後のレート特性を同時に向上させることが
できる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明はこれらの形態に限定されず、
本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施することができる。
【0025】
1.非水系電解液
本発明の非水系電解液は、正極及び負極を備えるエネルギーデバイス用の非水系電解液
であり、該非水系電解液が電解質及び非水溶媒とともに、カルボン酸エステルと、式(1
)または式(2)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物とを
含有することを特徴とする。
1-1.カルボン酸エステルと、式(1)または式(2)で表される化合物からなる群
より選ばれる少なくとも1種の化合物
【0026】
1-1-1.カルボン酸エステル
本発明の非水系電解液は、カルボン酸エステルを含有する。本発明の非水系電解液にお
いて、後述する式(1)または式(2)で表される化合物とカルボン酸エステルを併用す
ることにより、相乗効果によりエネルギーデバイス特性を改善することができる。カルボ
ン酸エステルの構造は特に制限されないが、好ましくはフッ素非含有の鎖状カルボン酸エ
ステルであり、より好ましくはフッ素非含有の飽和鎖状カルボン酸エステルである。カル
ボン酸エステルの総炭素数は、好ましくは3以上、より好ましくは4以上、更に好ましく
は5以上であり、好ましくは7以下、より好ましくは6以下、更に好ましくは5以下であ
る。
【0027】
本発明に係るカルボン酸エステルとしては、以下が挙げられる。
酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル、酢
酸イソブチル、酢酸-tert-ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プ
ロピオン酸n-プロピル、プロピオン酸イソプロピル、プロピオン酸n-ブチル、プロピ
オン酸イソブチル、プロピオン酸-tert-ブチル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸n
-プロピル、酪酸イソプロピル、酪酸n-ブチル、酪酸イソブチル、酪酸-tert-ブ
チル、イソ酪酸メチル、イソ酪酸エチル、イソ酪酸n-プロピル、イソ酪酸イソプロピル
、イソ酪酸n-ブチル、イソ酪酸イソブチル、イソ酪酸-tert-ブチル、吉草酸メチ
ル、吉草酸エチル、吉草酸n-プロピル、吉草酸イソプロピル、吉草酸n-ブチル、吉草
酸イソブチル、吉草酸-tert-ブチル、ヒドロアンゲリカ酸メチル、ヒドロアンゲリ
カ酸エチル、ヒドロアンゲリカ酸n-プロピル、ヒドロアンゲリカ酸イソプロピル、ヒド
ロアンゲリカ酸n-ブチル、ヒドロアンゲリカ酸イソブチル、ヒドロアンゲリカ酸-te
rt-ブチル、イソ吉草酸メチル、イソ吉草酸エチル、イソ吉草酸n-プロピル、イソ吉
草酸イソプロピル、イソ吉草酸n-ブチル、イソ吉草酸イソブチル、イソ吉草酸-ter
t-ブチル、ピバル酸メチル、ピバル酸エチル、ピバル酸n-プロピル、ピバル酸イソプ
ロピル、ピバル酸n-ブチル、ピバル酸イソブチル、ピバル酸-tert-ブチル等の飽
和鎖状カルボン酸エステル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロ
ピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリ
ル酸-tert-ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-
プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸イソブチ
ル、メタクリル酸-tert-ブチル、クロトン酸メチル、クロトン酸エチル、クロトン
酸n-プロピル、クロトン酸イソプロピル、クロトン酸n-ブチル、クロトン酸イソブチ
ル、クロトン酸-tert-ブチル、3-ブテン酸メチル、3-ブテン酸エチル、3-ブ
テン酸n-プロピル、3-ブテン酸イソプロピル、3-ブテン酸n-ブチル、3-ブテン
酸イソブチル、3-ブテン酸-tert-ブチル、4-ペンテン酸メチル、4-ペンテン
酸エチル、4-ペンテン酸n-プロピル、4-ペンテン酸イソプロピル、4-ペンテン酸
n-ブチル、4-ペンテン酸イソブチル、4-ペンテン酸-tert-ブチル、3-ペン
テン酸メチル、3-ペンテン酸エチル、3-ペンテン酸n-プロピル、3-ペンテン酸イ
ソプロピル、3-ペンテン酸n-ブチル、3-ペンテン酸イソブチル、3-ペンテン酸-
tert-ブチル、2-ペンテン酸メチル、2-ペンテン酸エチル、2-ペンテン酸n-
プロピル、2-ペンテン酸イソプロピル、2-ペンテン酸n-ブチル、2-ペンテン酸イ
ソブチル、2-ペンテン酸-tert-ブチル、2-プロピン酸メチル、2-プロピン酸
エチル、2-プロピン酸n-プロピル、2-プロピン酸イソプロピル、2-プロピン酸n
-ブチル、2-プロピン酸イソブチル、2-プロピン酸-tert-ブチル、3-ブチン
酸メチル、3-ブチン酸エチル、3-ブチン酸n-プロピル、3-ブチン酸イソプロピル
、3-ブチン酸n-ブチル、3-ブチン酸イソブチル、3-ブチン酸-tert-ブチル
、2-ブチン酸メチル、2-ブチン酸エチル、2-ブチン酸n-プロピル、2-ブチン酸
イソプロピル、2-ブチン酸n-ブチル、2-ブチン酸イソブチル、2-ブチン酸-te
rt-ブチル、4-ペンチン酸メチル、4-ペンチン酸エチル、4-ペンチン酸n-プロ
ピル、4-ペンチン酸イソプロピル、4-ペンチン酸n-ブチル、4-ペンチン酸イソブ
チル、4-ペンチン酸-tert-ブチル、3-ペンチン酸メチル、3-ペンチン酸エチ
ル、3-ペンチン酸n-プロピル、3-ペンチン酸イソプロピル、3-ペンチン酸n-ブ
チル、3-ペンチン酸イソブチル、3-ペンチン酸-tert-ブチル、2-ペンチン酸
メチル、2-ペンチン酸エチル、2-ペンチン酸n-プロピル、2-ペンチン酸イソプロ
ピル、2-ペンチン酸n-ブチル、2-ペンチン酸イソブチル、2-ペンチン酸-ter
t-ブチル等の不飽和鎖状カルボン酸エステル。
【0028】
これらのうち、負極での副反応が少ない点から、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-プ
ロピル、酢酸n-ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n-
プロピル、プロピオン酸n-ブチル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸n-プロピル、酪酸
n-ブチル、吉草酸メチル、吉草酸エチル、吉草酸n-プロピル、吉草酸n-ブチル、ピ
バル酸メチル、ピバル酸エチル、ピバル酸n-プロピル又はピバル酸n-ブチルが好まし
く、電解液粘度低下によるイオン伝導度の向上の点から、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸
n-プロピル、酢酸n-ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン
酸n-プロピル又はプロピオン酸n-ブチルがより好ましく、プロピオン酸メチル、プロ
ピオン酸エチル、プロピオン酸n-プロピル又はプロピオン酸n-ブチルが更に好ましく
、プロピオン酸エチル又はプロピオン酸n-プロピルが特に好ましい。
【0029】
カルボン酸エステルは、一種を単独で用いてもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び
比率で併用してもよい。
カルボン酸エステルの量(二種以上の場合は合計量)は、非水系電解液100質量%中
、通常0.001質量%以上、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質
量%以上、更に好ましくは0.3質量%以上、特に好ましくは0.6質量%以上であり、
また、通常70質量%以下、好ましくは30質量%以下、より好ましくは15質量%以下
、更に好ましくは5質量%以下、特に好ましくは3質量%以下である。このような範囲で
あれば、負極抵抗の増大を抑制し、出力特性、負荷特性、低温特性、サイクル特性、高温
保存特性を制御しやすい。
【0030】
1-1-2.式(1)で表される化合物
本発明の非水系電解液は、下記式(1)で表される化合物を含有することが好ましい。
なお、式(1)で表される化合物においては、シス-トランス異性体及び光学異性体の区
別はつけないものとし、いずれかの異性体単独又はこれらの混合として適用することもで
きる。
【0031】
【化3】
【0032】
式中、Rは少なくとも1つの炭素-炭素不飽和結合を有する、置換基を有していても
よい炭素数3~12の不飽和炭化水素基であり、Rは炭素数2以上10以下の脂肪族炭
化水素基である。
式(1)中のRは少なくとも1つの炭素-炭素不飽和結合を有し、炭素数3~12の
不飽和炭化水素基であれば特に制限はなく、置換基を有するものであってもよい。このR
は、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有する不飽和炭化水素基又は、少なくとも
1つの炭素-炭素三重結合を有する不飽和炭化水素基であるが、好ましいのは、少なくと
も1つの炭素-炭素二重結合を有する不飽和炭化水素基である。
【0033】
としてより具体的には、不飽和炭化水素基として、炭素-炭素二重結合を少なくと
も1つ有する脂肪族不飽和鎖状炭化水素基、炭素-炭素三重結合を少なくとも1つ有する
脂肪族不飽和鎖状炭化水素基、芳香環を少なくとも1つ有する芳香族炭化水素基が好まし
く、炭素-炭素二重結合を少なくとも1つ有する脂肪族不飽和炭化水素基、芳香環を少な
くとも1つ有する芳香族炭化水素基がより好ましく、炭素-炭素二重結合を少なくとも1
つ有する脂肪族不飽和炭化水素基がさらに好ましい。Rがこれらの不飽和炭化水素基で
あると、効果的に負極保護被膜を形成することができ、余剰の負極反応を抑制することが
できるために好ましい。
【0034】
さらに、式(1)中のRの不飽和炭化水素基は、炭化水素基以外の置換基を持たない
不飽和炭化水素基、一部のHがFで置換された不飽和炭化水素基が好ましく、炭化水素基
以外の置換基を持たない不飽和炭化水素基がより好ましい。Rがこれらのような基であ
ると、エーテル酸素とシアノ基を用いた正極金属酸化物へのキレート配位が阻害されない
ため、より効果的に正極へ配位することができ、高温保存耐久試験後のガス発生の低減と
いった本発明の効果を得やすく、また、カチオンとの相互作用も阻害されないためレート
特性の向上効果も得やすく、さらに負極での余剰反応も抑制されるため充放電効率も改善
することができるために好ましい。
【0035】
また、式(1)中のRの不飽和炭化水素基における炭素数は、3~12が好ましく、
3~9がより好ましく、3~7がさらに好ましい。炭素数がこの範囲であれば、式(1)
で表される化合物の電解液に対する溶解性に優れる。
式(1)中のRの具体例としては、以下のものが挙げられる。
≪炭素-炭素二重結合を少なくとも1つ有する脂肪族不飽和鎖状炭化水素基≫
【0036】
【化4】
【0037】
なお、*はエーテル酸素との結合部位を表す。以下も同様である。
≪炭素-炭素三重結合を少なくとも1つ有する脂肪族不飽和鎖状炭化水素基≫
【0038】
【化5】
【0039】
≪芳香環を少なくとも1つ有する芳香族炭化水素基≫
【0040】
【化6】
【0041】
式(1)中のRは、炭素数2以上10以下の脂肪族炭化水素基であれば特に制限はな
いが、置換基を持たないアルキレン基、アルキレンの一部のHがFで置換されたアルキレ
ン基が好ましく、置換基を持たないアルキレン基がより好ましい。Rがこれらのような
基であると、エーテル酸素とシアノ基を用いた正極金属酸化物へのキレート配位が阻害さ
れないため、より効果的に正極へ配位することができるため好ましい。また、炭素数は通
常2以上であり、通常10以下、好ましくは5以下、さらに好ましくは3以下である。こ
の範囲であればよりキレート構造による安定化効果が得られる為、好ましい。式(1)で
表される化合物としては、以下の化合物が挙げられる。
【0042】
≪Rが、炭素-炭素二重結合を少なくとも1つ有する脂肪族不飽和鎖状炭化水素基で
ある場合≫
【0043】
【化7】
【0044】
≪Rが、炭素-炭素三重結合を少なくとも1つ有する脂肪族不飽和鎖状炭化水素基で
ある場合≫
【0045】
【化8】
【0046】
≪Rが、芳香環を少なくとも1つ有する芳香族炭化水素基である場合≫
【0047】
【化9】
【0048】
これらのうち、電解液への溶解性、及び製造の容易さから、以下の化合物が好ましい。
【0049】
【化10】
【0050】
【化11】
【0051】
【化12】
【0052】
これらのうち、正極金属への配位のし易さ及び配位結合エネルギーの高さから、以下の
化合物がより好ましい。
【0053】
【化13】
【0054】
これらのうち、エネルギーデバイス中での副反応の低さから、以下の化合物が最も好ま
しい。
【0055】
【化14】
【0056】
式(1)で表される化合物は、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。非水系電
解液全量(100質量%)中、式(1)で表される化合物の量(2種以上の場合は合計量
)は、本発明の効果を発現するためには特に制限はないが、好ましくは0.001質量%
以上、より好ましくは0.01質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上、特に好ま
しいのは0.3質量%以上、最も好ましいのは0.6質量%以上であり、また、好ましく
は10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは3質量%以下、特に好
ましくは1.5質量%以下、最も好ましいのは1.0質量%以下である。この範囲にある
と、耐久試験後の充放電効率、レート特性、ガス発生やレート特性、さらには初期の充放
電効率やレート特性、連続充電容量、低温特性、サイクル特性等を制御しやすい。
【0057】
1-1-3.式(2)で表される化合物
本発明の非水系電解液は、式(2)で表される化合物を含有することが好ましい。なお
、式(2)で表される化合物においては、シス-トランス異性体及び光学異性体の区別は
つけないものとし、いずれかの異性体単独又はこれらの混合として適用することもできる
【0058】
【化15】
【0059】
式中、Rは炭素数1以上10以下の脂肪族炭化水素基であり、aは0または1である
。但し、複数存在するRは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
式(2)中のRは炭素数2以上10以下の脂肪族炭化水素基であれば特に制限はない
が、置換基を持たないアルキレン基、アルキレンの一部のHがFで置換されたアルキレン
基が好ましく、置換基を持たないアルキレン基がより好ましい。Rがこれらのような基
であると、エーテル酸素とシアノ基を用いた正極金属酸化物へのキレート配位が阻害され
ないため、より効果的に正極へ配位することができるため好ましい。また、炭素数は通常
2以上であり、通常10以下、好ましくは5以下、さらに好ましくは3以下である。この
範囲であればよりキレート構造による安定化効果が得られる為、好ましい。また、複数存
在するRは、それぞれ同一であることが好ましい。
【0060】
式(2)において、aは0または1であるが、化合物の溶解性の点で好ましくは1であ
る。
式(2)で表される化合物としては、以下の化合物が挙げられる。
≪aが0の場合≫
【0061】
【化16】
【0062】
≪aが1の場合≫
【0063】
【化17】
【0064】
これらのうち、正極金属への配位のし易さ及び配位結合エネルギーの高さから、以下の
化合物がより好ましい。
【0065】
【化18】
【0066】
これらのうち、エネルギーデバイス中での副反応の低さから、以下の化合物が最も好ま
しい。
【0067】
【化19】
【0068】
【化20】
【0069】
式(2)で表される化合物は、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。非水系電
解液全量(100質量%)中、式(2)で表される化合物の量(2種以上の場合は合計量
)は、本発明の効果を発現するためには特に制限はないが、好ましくは0.001質量%
以上、より好ましくは0.01質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上、特に好ま
しいのは0.3質量%以上、最も好ましいのは0.6質量%以上であり、また、好ましく
は10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは3質量%以下、特に好
ましくは1.5質量%以下、最も好ましいのは1.0質量%以下である。この範囲にある
と、耐久試験後の充放電効率、レート特性、ガス発生やレート特性、さらには初期の充放
電効率やレート特性、連続充電容量、低温特性、サイクル特性等を制御しやすい。
【0070】
上記カルボン酸エステル(以下(A)群と称する場合がある)と式(1)または式(2
)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物(以下(B)群と称
する場合がある)の合計含有量に対する前記(A)群の含有量は、通常50質量%以上9
9.5質量%以下であるが、好ましくは75質量%以上、より好ましくは90質量%以上
、さらに好ましくは95質量%以上、特に好ましくは98質量%以上である。この範囲で
あると、(A)群の化合物と(B)群の化合物による相乗効果が得られやすい。
【0071】
1-2.炭素-炭素不飽和結合を有する環状カーボネート、フッ素含有環状カーボネー
ト、硫黄含有有機化合物、リン含有有機化合物、前記式(1)および(2)以外のシアノ
基を有する有機化合物、イソシアネート基を有する有機化合物、ケイ素含有化合物、モノ
フルオロリン酸塩、ジフルオロリン酸塩、ホウ酸塩、シュウ酸塩及びフルオロスルホン酸

本発明の態様は、前記(A)群および(B)群の化合物とともに、炭素-炭素不飽和結
合を有する環状カーボネート、フッ素含有環状カーボネート、硫黄含有有機化合物、リン
含有有機化合物、前記式(1)および(2)以外のシアノ基を有する有機化合物、イソシ
アネート基を有する有機化合物、ケイ素含有化合物、モノフルオロリン酸塩、ジフルオロ
リン酸塩、ホウ酸塩、シュウ酸塩及びフルオロスルホン酸塩からなる群より選ばれる少な
くとも1種の化合物(以下併用添加剤と称する場合があり)を含むことが好ましい。これ
らを併用することで、(A)群と(B)群の化合物が引き起こし得る正負極上での副反応
を効率よく抑制できるためである。
【0072】
中でも、炭素-炭素不飽和結合を有する環状カーボネート、フッ素含有環状カーボネー
ト、硫黄含有有機化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物は、負極上に良
質な複合被膜を形成し、初期の電池特性と耐久試験後の電池特性がバランスよく向上する
ため好ましく、炭素-炭素不飽和結合を有する環状カーボネートおよびフッ素含有環状カ
ーボネートからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物がより好ましい。理由として
は、比較的低分子量の被膜を負極上に形成するこれら化合物は、形成される負極被膜が緻
密であることから、効率良く(A)群と(B)群の化合物の副反応による劣化を抑制し得
ることが挙げられる。このように副反応を効果的に抑制することで、初期容量と高温保存
耐久試験後のレート特性を同時に向上させることができる。
【0073】
本発明の電解液に、併用添加剤を配合する方法は、特に制限されない。上記化合物を直
接電解液に添加する方法の他に、電池内又は電解液中において併用添加剤を発生させる方
法が挙げられる。併用添加剤を発生させる方法としては、併用添加剤以外の化合物を添加
し、電解液等の電池構成要素を酸化又は加水分解等して発生させる方法が挙げられる。更
には、電池を作製して、充放電等の電気的な負荷をかけることによって、発生させる方法
も挙げられる。
【0074】
また、併用添加剤は、非水系電解液に含有させ実際にエネルギーデバイスの作製に供す
ると、その電池を解体して再び非水系電解液を抜き出しても、その中の含有量が著しく低
下している場合が多い。従って、電池から抜き出した非水系電解液から、併用添加剤が極
少量でも検出できるものは本発明に含まれるとみなされる。また、併用添加剤は、非水系
電解液として実際にエネルギーデバイスの作製に供すると、その電池を解体して再び抜き
出した非水系電解液には併用添加剤が極少量しか含有されていなかった場合であっても、
エネルギーデバイスの他の構成部材である正極、負極若しくはセパレータ上で検出される
場合も多い。従って、正極、負極、セパレータから併用添加剤が検出された場合は、その
合計量を非水系電解液に含まれていたと仮定することができる。この仮定の下、併用添加
剤は後述で述べる範囲になるように含まれていることが好ましい。
【0075】
以下に、併用添加剤について説明をする。ただし、モノフルオロリン酸塩、ジフルオロ
リン酸塩、ホウ酸塩、シュウ酸塩及びフルオロスルホン酸塩に関しては、「1-3.電解
質」における説明が適用される。また、上記化合物と組み合わせるカルボン酸エステルお
よび式(1)または式(2)で表される化合物に関しては、先の記載が例示及び好ましい
例も含めて適用される。また、ある化合物を含む態様において、前記化合物におけるそれ
以外の化合物が含まれていてもよい。
【0076】
1-2-1.炭素-炭素不飽和結合を有する環状カーボネート
本発明に係る炭素-炭素不飽和結合を有する環状カーボネート(以下、「不飽和環状カ
ーボネート」ともいう)としては、炭素-炭素二重結合又は炭素-炭素三重結合を有する
環状カーボネートであれば、特に制限はない。芳香環を有する環状カーボネートも、不飽
和環状カーボネートに包含されることとする。
【0077】
不飽和環状カーボネートとしては、ビニレンカーボネート類、芳香環、炭素-炭素二重
結合又は炭素-炭素三重結合を有する置換基で置換されたエチレンカーボネート類、フェ
ニルカーボネート類、ビニルカーボネート類、アリルカーボネート類、カテコールカーボ
ネート類等が挙げられる。中でもビニレンカーボネート類、または芳香環もしくは炭素-
炭素二重結合又は炭素-炭素三重結合を有する置換基で置換されたエチレンカーボネート
類が好ましい。
不飽和環状カーボネートの具体例としては、ビニレンカーボネート、メチルビニレンカ
ーボネート、4,5-ジメチルビニレンカーボネート、フェニルビニレンカーボネート、
4,5-ジフェニルビニレンカーボネート、ビニルビニレンカーボネート、4,5-ビニ
ルビニレンカーボネート、アリルビニレンカーボネート、4,5-ジアリルビニレンカー
ボネート等のビニレンカーボネート類;
ビニルエチレンカーボネート、4,5-ジビニルエチレンカーボネート、4-メチル-5
-ビニルエチレンカーボネート、4-アリル-5-ビニルエチレンカーボネート、エチニ
ルエチレンカーボネート、4,5-ジエチニルエチレンカーボネート、4-メチル-5-
エチニルエチレンカーボネート、4-ビニル-5-エチニルエチレンカーボネート、4-
アリル-5-エチニルエチレンカーボネート、フェニルエチレンカーボネート、4,5-
ジフェニルエチレンカーボネート、4-フェニル-5-ビニルエチレンカーボネート、4
-アリル-5-フェニルエチレンカーボネート、アリルエチレンカーボネート、4,5-
ジアリルエチレンカーボネート、4-メチル-5-アリルエチレンカーボネート等の芳香
環もしくは炭素-炭素二重結合又は炭素-炭素三重結合を有する置換基で置換されたエチ
レンカーボネート類;
等が挙げられる。中でも、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、エチニ
ルエチレンカーボネートは更に安定な界面保護被膜を形成するので好ましく、ビニレンカ
ーボネート、ビニルエチレンカーボネーがより好ましく、ビニレンカーボネートがさらに
好ましい。
【0078】
不飽和環状カーボネートは、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び
比率で併有してもよい。不飽和環状カーボネートの量(2種以上の場合は合計量)は、電
解液100質量%中、0.001質量%以上であることができ、好ましくは0.01質量
%以上、より好ましくは0.1質量%以上であり、また、好ましくは5質量%であること
ができ、好ましくは4質量%以下、より好ましくは3質量%以下である。この範囲内であ
れば、非水系電解液電池が十分なサイクル特性向上効果を発現しやすく、また、高温保存
特性が低下し、ガス発生量が多くなり、放電容量維持率が低下するといった事態を回避し
やすい。
【0079】
上記式(1)または式(2)表される化合物と不飽和環状カーボネート(2種以上の場
合は合計量)の質量比は、式(1)または式(2)表される化合物:不飽和環状カーボネ
ートが、通常1:100以上であり、好ましくは10:100以上、より好ましくは20
:100以上、更に好ましくは25:100以上であり、通常10000:100以下で
あり、好ましくは500:100以下、より好ましくは300:100以下、さらに好ま
しくは100:100以下、特に好ましくは75:100以下、最も好ましくは50:1
00以下である。この範囲であれば、電池特性、特に耐久特性を著しく向上させることが
できる。この原理については定かではないが、この比率で混合させることで、電極上での
添加剤の副反応を最小限に抑えられるためと考えられる。
【0080】
1-2-2.フッ素含有環状カーボネート
本発明に係るフッ素含有環状カーボネートは、環状のカーボネート構造を有し、かつフ
ッ素原子を含有するものであれば特に制限されない。
フッ素含有環状カーボネートとしては、炭素数2以上6以下のアルキレン基を有する環
状カーボネートのフッ素化物、及びその誘導体が挙げられ、例えばエチレンカーボネート
のフッ素化物(以下、「フッ素化エチレンカーボネート」と記載する場合がある)、及び
その誘導体が挙げられる。エチレンカーボネートのフッ素化物の誘導体としては、アルキ
ル基(例えば、炭素数1以上4以下のアルキル基)で置換されたエチレンカーボネートの
フッ素化物が挙げられる。中でもフッ素数1以上8以下のフッ素化エチレンカーボネート
、及びその誘導体が好ましい。
【0081】
フッ素数1以上8以下のフッ素化エチレンカーボネート及びその誘導体としては、モノ
フルオロエチレンカーボネート、4,4-ジフルオロエチレンカーボネート、4,5-ジ
フルオロエチレンカーボネート、4-フルオロ-4-メチルエチレンカーボネート、4,
5-ジフルオロ-4-メチルエチレンカーボネート、4-フルオロ-5-メチルエチレン
カーボネート、4,4-ジフルオロ-5-メチルエチレンカーボネート、4-(フルオロ
メチル)-エチレンカーボネート、4-(ジフルオロメチル)-エチレンカーボネート、
4-(トリフルオロメチル)-エチレンカーボネート、4-(フルオロメチル)-4-フ
ルオロエチレンカーボネート、4-(フルオロメチル)-5-フルオロエチレンカーボネ
ート、4-フルオロ-4,5-ジメチルエチレンカーボネート、4,5-ジフルオロ-4
,5-ジメチルエチレンカーボネート、4,4-ジフルオロ-5,5-ジメチルエチレン
カーボネート等が挙げられる。中でも、モノフルオロエチレンカーボネート、4,4-ジ
フルオロエチレンカーボネート、4,5-ジフルオロエチレンカーボネートが、電解液に
高イオン伝導性を与え、かつ安定な界面保護被膜を容易に形成しやすい点で好ましい。
【0082】
フッ素化環状カーボネートは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わ
せ及び比率で併用してもよい。フッ素化環状カーボネートの量(2種以上の場合は合計量
)は、電解液100質量%中、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.0
1質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上、更により好ましくは0.5質量%以上
、特に好ましくは1質量%以上、最も好ましくは1.2質量%以上であり、また、好まし
くは10質量%以下、より好ましくは7質量%以下、更に好ましくは5質量%以下、特に
好ましくは3質量%以下、最も好ましくは2質量%以下である。また、フッ素化環状カー
ボネートを非水溶媒として用いる場合の配合量は、非水溶媒100体積%中、好ましくは
1体積%以上、より好ましくは5体積%以上、更に好ましくは10体積%以上であり、ま
た、好ましくは50体積%以下、より好ましくは35体積%以下、更に好ましくは25体
積%以下である。
【0083】
上記式(1)または式(2)表される化合物とフッ素化環状カーボネート(2種以上の
場合は合計量)の質量比は、式(1)または式(2)表される化合物:フッ素化環状カー
ボネートが、通常1:100以上であり、好ましくは10:100以上、より好ましくは
20:100以上、更に好ましくは25:100以上であり、通常10000:100以
下であり、好ましくは500:100以下、より好ましくは300:100以下、さらに
好ましくは100:100以下、特に好ましくは75:100以下、最も好ましくは50
:100以下である。この範囲であれば、電池特性、特に耐久特性を著しく向上させるこ
とができる。この原理については定かではないが、この比率で混合させることで、電極上
での添加剤の副反応を最小限に抑えられるためと考えられる。
【0084】
1-2-3.硫黄含有有機化合物
本発明に係る硫黄含有有機化合物としては、分子内に硫黄原子を少なくとも1つ有して
いる有機化合物であれば、特に制限されない。
硫黄含有有機化合物は好ましくは分子内にS=O基を有している有機化合物であり、鎖
状スルホン酸エステル、環状スルホン酸エステル、鎖状硫酸エステル、環状硫酸エステル
、鎖状亜硫酸エステル及び環状亜硫酸エステル等が挙げられる。ただしフルオロスルホン
酸塩に該当するものは、「1-2-3.硫黄含有有機化合物」ではなく、後述する電解質
である「フルオロスルホン酸塩」に包含されるものとする。中でも、鎖状スルホン酸エス
テル、環状スルホン酸エステル、鎖状硫酸エステル、環状硫酸エステル、鎖状亜硫酸エス
テル及び環状亜硫酸エステルが好ましく、より好ましくはS(=O)基を有する化合物
であり、さらに好ましくは鎖状スルホン酸エステル及び環状スルホン酸エステルであり、
特に好ましくは環状スルホン酸エステルである。硫黄含有有機化合物を併用した本発明の
電解液を用いた電池は、耐久特性を改善することができる。
硫黄含有有機化合物の具体例としては、以下を挙げることができる。
【0085】
≪鎖状スルホン酸エステル≫
フルオロスルホン酸メチル及びフルオロスルホン酸エチル等のフルオロスルホン酸エス
テル;
メタンスルホン酸メチル、メタンスルホン酸エチル、メタンスルホン酸2-プロピニル
、メタンスルホン酸3-ブチニル、ブスルファン、2-(メタンスルホニルオキシ)プロ
ピオン酸メチル、2-(メタンスルホニルオキシ)プロピオン酸エチル、2-(メタンス
ルホニルオキシ)プロピオン酸2-プロピニル、2-(メタンスルホニルオキシ)プロピ
オン酸3-ブチニル、メタンスルホニルオキシ酢酸メチル、メタンスルホニルオキシ酢酸
エチル、メタンスルホニルオキシ酢酸2-プロピニル及びメタンスルホニルオキシ酢酸3
-ブチニル等のメタンスルホン酸エステル;
ビニルスルホン酸メチル、ビニルスルホン酸エチル、ビニルスルホン酸アリル、ビニル
スルホン酸プロパルギル、アリルスルホン酸メチル、アリルスルホン酸エチル、アリルス
ルホン酸アリル、アリルスルホン酸プロパルギル及び1,2-ビス(ビニルスルホニロキ
シ)エタン等のアルケニルスルホン酸エステル;
メタンジスルホン酸メトキシカルボニルメチル、メタンジスルホン酸エトキシカルボニ
ルメチル、メタンジスルホン酸1-メトキシカルボニルエチル、メタンジスルホン酸1-
エトキシカルボニルエチル、1,2-エタンジスルホン酸メトキシカルボニルメチル、1
,2-エタンジスルホン酸エトキシカルボニルメチル、1,2-エタンジスルホン酸1-
メトキシカルボニルエチル、1,2-エタンジスルホン酸1-エトキシカルボニルエチル
、1,3-プロパンジスルホン酸メトキシカルボニルメチル、1,3-プロパンジスルホ
ン酸エトキシカルボニルメチル、1,3-プロパンジスルホン酸1-メトキシカルボニル
エチル、1,3-プロパンジスルホン酸1-エトキシカルボニルエチル、1,3-ブタン
ジスルホン酸メトキシカルボニルメチル、1,3-ブタンジスルホン酸エトキシカルボニ
ルメチル、1,3-ブタンジスルホン酸1-メトキシカルボニルエチル、1,3-ブタン
ジスルホン酸1-エトキシカルボニルエチル等のアルキルジスルホン酸エステル;
【0086】
≪環状スルホン酸エステル≫
1,3-プロパンスルトン、1-フルオロ-1,3-プロパンスルトン、2-フルオロ
-1,3-プロパンスルトン、3-フルオロ-1,3-プロパンスルトン、1-メチル-
1,3-プロパンスルトン、2-メチル-1,3-プロパンスルトン、3-メチル-1,
3-プロパンスルトン、1-プロペン-1,3-スルトン、2-プロペン-1,3-スル
トン、1-フルオロ-1-プロペン-1,3-スルトン、2-フルオロ-1-プロペン-
1,3-スルトン、3-フルオロ-1-プロペン-1,3-スルトン、1-フルオロ-2
-プロペン-1,3-スルトン、2-フルオロ-2-プロペン-1,3-スルトン、3-
フルオロ-2-プロペン-1,3-スルトン、1-メチル-1-プロペン-1,3-スル
トン、2-メチル-1-プロペン-1,3-スルトン、3-メチル-1-プロペン-1,
3-スルトン、1-メチル-2-プロペン-1,3-スルトン、2-メチル-2-プロペ
ン-1,3-スルトン、3-メチル-2-プロペン-1,3-スルトン、1,4-ブタン
スルトン及び1,5-ペンタンスルトン等のスルトン化合物;
メチレンメタンジスルホネート、エチレンメタンジスルホネート等の環状ジスルホネー
ト化合物;
【0087】
≪鎖状硫酸エステル≫
ジメチルスルフェート、エチルメチルスルフェート及びジエチルスルフェート等のジア
ルキルスルフェート化合物。
【0088】
≪環状硫酸エステル≫
1,2-エチレンスルフェート、1,2-プロピレンスルフェート、1,3-プロピレ
ンスルフェート、1,2-ブチレンスルフェート、1,3-ブチレンスルフェート、1,
4-ブチレンスルフェート、1,2-ペンチレンスルフェート、1,3-ペンチレンスル
フェート、1,4-ペンチレンスルフェート及び1,5-ペンチレンスルフェート等のア
ルキレンスルフェート化合物。
【0089】
≪鎖状亜硫酸エステル≫
ジメチルスルファイト、エチルメチルスルファイト及びジエチルスルファイト等のジア
ルキルスルファイト化合物。
【0090】
≪環状亜硫酸エステル≫
1,2-エチレンスルファイト、1,2-プロピレンスルファイト、1,3-プロピレ
ンスルファイト、1,2-ブチレンスルファイト、1,3-ブチレンスルファイト、1,
4-ブチレンスルファイト、1,2-ペンチレンスルファイト、1,3-ペンチレンスル
ファイト、1,4-ペンチレンスルファイト及び1,5-ペンチレンスルファイト等のア
ルキレンスルファイト化合物。
【0091】
これらのうち、2-(メタンスルホニルオキシ)プロピオン酸メチル、2-(メタンス
ルホニルオキシ)プロピオン酸エチル、2-(メタンスルホニルオキシ)プロピオン酸2
-プロピニル、プロパンジスルホン酸1-メトキシカルボニルエチル、プロパンジスルホ
ン酸1-エトキシカルボニルエチル、ブタンジスルホン酸1-メトキシカルボニルエチル
、ブタンジスルホン酸1-エトキシカルボニルエチル、1,3-プロパンスルトン、1-
プロペン-1,3-スルトン、1,4-ブタンスルトン、1,2-エチレンスルフェート
、1,2-エチレンスルファイト、メタンスルホン酸メチル及びメタンスルホン酸エチル
が初期効率向上の点から好ましく、プロパンジスルホン酸1-メトキシカルボニルエチル
、プロパンジスルホン酸1-エトキシカルボニルエチル、ブタンジスルホン酸1-メトキ
シカルボニルエチル、ブタンジスルホン酸1-エトキシカルボニルエチル、1,3-プロ
パンスルトン、1-プロペン-1,3-スルトン、1,2-エチレンスルフェート、1,
2-エチレンスルファイトがより好ましく、1,3-プロパンスルトン、1-プロペン-
1,3-スルトンが更に好ましい。
【0092】
硫黄含有有機化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び
比率で併有してもよい。硫黄含有有機化合物の含有量(2種以上の場合は合計量)は、電
解液100質量%中、通常0.001質量%以上であり、好ましくは0.01質量%以上
、より好ましくは0.1質量%以上、特に好ましくは0.3質量%以上であり、特に好ま
しくは0.6質量%以上であり、また、通常10質量%以下であり、好ましくは5質量%
以下、より好ましくは3質量%以下、更に好ましくは2質量%以下、特に好ましくは1.
5質量%以下、最も好ましくは1.0質量%以下である。この範囲にあると、出力特性、
負荷特性、低温特性、サイクル特性、高温保存特性等を制御しやすい。
【0093】
1-2-4.リン含有有機化合物
本発明に係るリン含有有機化合物としては、分子内に少なくとも一つリン原子を有して
いる有機化合物であれば、特に制限されない。リン含有有機化合物を併用した本発明の電
解液を用いた電池は、耐久特性を改善することができる。
リン含有有機化合物としては、リン酸エステル、ホスホン酸エステル、ホスフィン酸エ
ステル、亜リン酸エステルが好ましく、より好ましくはリン酸エステル及びホスホン酸エ
ステルであり、更に好ましくはホスホン酸エステルである。
リン含有有機化合物としては、以下を挙げることができる。
【0094】
≪リン酸エステル≫
ジメチルビニルホスフェート、ジエチルビニルホスフェート、ジプロピルビニルホスフ
ェート、ジブチルビニルホスフェート、ジペンチルビニルホスフェート、メチルジビニル
ホスフェート、エチルジビニルホスフェート、プロピルジビニルホスフェート、ブチルジ
ビニルホスフェート、ペンチルジビニルホスフェート及びトリビニルホスフェート等のビ
ニル基を有する化合物;
【0095】
アリルジメチルホスフェート、アリルジエチルホスフェート、アリルジプロピルホスフ
ェート、アリルジブチルホスフェート、アリルジペンチルホスフェート、ジアリルメチル
ホスフェート、ジアリルエチルホスフェート、ジアリルプロピルホスフェート、ジアリル
ブチルホスフェート、ジアリルペンチルホスフェート及びトリアリルホスフェート等のア
リル基を有する化合物;
【0096】
プロパルギルジメチルホスフェート、プロパルギルジエチルホスフェート、プロパルギ
ルジプロピルホスフェート、プロパルギルジブチルホスフェート、プロパルギルジペンチ
ルホスフェート、ジプロパルギルメチルホスフェート、ジプロパルギルエチルホスフェー
ト、ジプロパルギルプロピルホスフェート、ジプロパルギルブチルホスフェート、ジプロ
パルギルペンチルホスフェート及びトリプロパルギルホスフェート等のプロパルギル基を
有する化合物;
【0097】
2-アクリロイルオキシメチルジメチルホスフェート、2-アクリロイルオキシメチル
ジエチルホスフェート、2-アクリロイルオキシメチルジプロピルホスフェート、2-ア
クリロイルオキシメチルジブチルホスフェート、2-アクリロイルオキシメチルジペンチ
ルホスフェート、ビス(2-アクリロイルオキシメチル)メチルホスフェート、ビス(2
-アクリロイルオキシメチル)エチルホスフェート、ビス(2-アクリロイルオキシメチ
ル)プロピルホスフェート、ビス(2-アクリロイルオキシメチル)ブチルホスフェート
、ビス(2-アクリロイルオキシメチル)ペンチルホスフェート及びトリス(2-アクリ
ロイルオキシメチル)ホスフェートの2-アクリロイルオキシメチル基を有する化合物;
【0098】
2-アクリロイルオキシエチルジメチルホスフェート、2-アクリロイルオキシエチル
ジエチルホスフェート、2-アクリロイルオキシエチルジプロピルホスフェート、2-ア
クリロイルオキシエチルジブチルホスフェート、2-アクリロイルオキシエチルジペンチ
ルホスフェート、ビス(2-アクリロイルオキシエチル)メチルホスフェート、ビス(2
-アクリロイルオキシエチル)エチルホスフェート、ビス(2-アクリロイルオキシエチ
ル)プロピルホスフェート、ビス(2-アクリロイルオキシエチル)ブチルホスフェート
及びビス(2-アクリロイルオキシエチル)ペンチルホスフェート及びトリス(2-アク
リロイルオキシエチル)ホスフェート
【0099】
≪ホスホン酸エステル≫
トリメチル ホスホノフォルメート、メチル ジエチルホスホノフォルメート、メチル
ジプロピルホスホノフォルメート、メチル ジブチルホスホノフォルメート、トリエチル
ホスホノフォルメート、エチル ジメチルホスホノフォルメート、エチル ジプロピルホ
スホノフォルメート、エチル ジブチルホスホノフォルメート、トリプロピル ホスホノ
フォルメート、プロピル ジメチルホスホノフォルメート、プロピル ジエチルホスホノ
フォルメート、プロピル ジブチルホスホノフォルメート、トリブチル ホスホノフォル
メート、ブチル ジメチルホスホノフォルメート、ブチル ジエチルホスホノフォルメー
ト、ブチル ジプロピルホスホノフォルメート、メチル ビス(2,2,2-トリフルオ
ロエチル)ホスホノフォルメート、エチル ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)ホ
スホノフォルメート、プロピル ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)ホスホノフォ
ルメート、ブチル ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)ホスホノフォルメート、ト
リメチル ホスホノアセテート、メチル ジエチルホスホノアセテート、メチル ジプロ
ピルホスホノアセテート、メチル ジブチルホスホノアセテート、トリエチル ホスホノ
アセテート、エチル ジメチルホスホノアセテート、エチル ジプロピルホスホノアセテ
ート、エチル ジブチルホスホノアセテート、トリプロピル ホスホノアセテート、プロ
ピル ジメチルホスホノアセテート、プロピル ジエチルホスホノアセテート、プロピル
ジブチルホスホノアセテート、トリブチル ホスホノアセテート、ブチル ジメチルホ
スホノアセテート、ブチル ジエチルホスホノアセテート、ブチル ジプロピルホスホノ
アセテート、メチル ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)ホスホノアセテート、エ
チル ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)ホスホノアセテート、プロピル ビス(
2,2,2-トリフルオロエチル)ホスホノアセテート、ブチル ビス(2,2,2-ト
リフルオロエチル)ホスホノアセテート、アリル ジメチルホスホノアセテート、アリル
ジエチルホスホノアセテート、2-プロピニル ジメチルホスホノアセテート、2-プ
ロピニル ジエチルホスホノアセテート、トリメチル 3-ホスホノプロピオネート、メ
チル 3-(ジエチルホスホノ)プロピオネート、メチル 3-(ジプロピルホスホノ)
プロピオネート、メチル 3-(ジブチルホスホノ)プロピオネート、トリエチル 3-
ホスホノプロピオネート、エチル 3-(ジメチルホスホノ)プロピオネート、エチル
3-(ジプロピルホスホノ)プロピオネート、エチル 3-(ジブチルホスホノ)プロピ
オネート、トリプロピル 3-ホスホノプロピオネート、プロピル 3-(ジメチルホス
ホノ)プロピオネート、プロピル 3-(ジエチルホスホノ)プロピオネート、プロピル
3-(ジブチルホスホノ)プロピオネート、トリブチル 3-ホスホノプロピオネート
、ブチル 3-(ジメチルホスホノ)プロピオネート、ブチル 3-(ジエチルホスホノ
)プロピオネート、ブチル 3-(ジプロピルホスホノ)プロピオネート、メチル 3-
(ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)ホスホノ)プロピオネート、エチル 3-(
ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)ホスホノ)プロピオネート、プロピル 3-(
ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)ホスホノ)プロピオネート、ブチル 3-(ビ
ス(2,2,2-トリフルオロエチル)ホスホノ)プロピオネート、トリメチル 4-ホ
スホノブチレート、メチル 4-(ジエチルホスホノ)ブチレート、メチル 4-(ジプ
ロピルホスホノ)ブチレート、メチル 4-(ジブチルホスホノ)ブチレート、トリエチ
ル 4-ホスホノブチレート、エチル 4-(ジメチルホスホノ)ブチレート、エチル
4-(ジプロピルホスホノ)ブチレート、エチル 4-(ジブチルホスホノ)ブチレート
、トリプロピル 4-ホスホノブチレート、プロピル 4-(ジメチルホスホノ)ブチレ
ート、プロピル 4-(ジエチルホスホノ)ブチレート、プロピル 4-(ジブチルホス
ホノ)ブチレート、トリブチル 4-ホスホノブチレート、ブチル 4-(ジメチルホス
ホノ)ブチレート、ブチル 4-(ジエチルホスホノ)ブチレート、ブチル 4-(ジプ
ロピルホスホノ)ブチレート等。
【0100】
これらのうち、電池特性向上の観点から、トリアリルホスフェート及びトリス(2-ア
クリロイルオキシエチル)ホスフェート、トリメチル ホスホノアセテート、トリエチル
ホスホノアセテート、2-プロピニル ジメチルホスホノアセテート、2-プロピニル
ジエチルホスホノアセテートが好ましい。
リン含有有機化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び
比率で併有してもよい。リン含有有機化合物の含有量(2種以上の場合は合計量)は、電
解液100質量%中、通常0.001質量%以上であり、好ましくは0.01質量%以上
、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.4質量%以上、特に好ましくは
0.6質量%以上であり、また、通常10質量%以下であり、好ましくは5質量%以下、
より好ましくは3質量%以下、更に好ましくは2質量%以下、特に好ましくは1.2質量
%以下、最も好ましくは0.9質量%以下である。この範囲であると、出力特性、負荷特
性、低温特性、サイクル特性、高温保存特性等を制御しやすい。
【0101】
1-2-5.前記式(1)および(2)以外のシアノ基を有する有機化合物
本発明に係る前記式(1)および(2)以外のシアノ基を有する有機化合物としては、
分子内にシアノ基を少なくとも1つ有している前記式(1)および(2)以外のシアノ基
を有する有機化合物であれば、特に制限されない。中でも、2つまたは3つのシアノ基を
有する前記式(1)および(2)以外のシアノ基を有する有機化合物が好ましい。式(1
)および(2)以外のシアノ基を有する有機化合物を含有する本発明の電解液を用いた電
池は、耐久特性を改善することができる。
前記式(1)および(2)以外のシアノ基を有する有機化合物の具体例としては、以下
を挙げることができる。
【0102】
≪1つのシアノ基を有する化合物≫
プロピオニトリル、ブチロニトリル、ペンタンニトリル、ヘキサンニトリル、ヘプタン
ニトリル、オクタンニトリル、ペラルゴノニトリル、デカンニトリル、ウンデカンニトリ
ル、ドデカンニトリル、シクロペンタンカルボニトリル、シクロヘキサンカルボニトリル
、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、クロトノニトリル、3-メチルクロトノニト
リル、2-メチル-2-ブテン二トリル、2-ペンテンニトリル、2-メチル-2-ペン
テンニトリル、3-メチル-2-ペンテンニトリル及び2-ヘキセンニトリル;
【0103】
≪2つのシアノ基を有する化合物≫
マロノニトリル、スクシノニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、ピメロニト
リル、スベロニトリル、アゼラニトリル、セバコニトリル、ウンデカンジニトリル、ドデ
カンジニトリル、メチルマロノニトリル、エチルマロノニトリル、イソプロピルマロノニ
トリル、tert-ブチルマロノニトリル、メチルスクシノニトリル、2,2-ジメチル
スクシノニトリル、2,3-ジメチルスクシノニトリル、2,3,3-トリメチルスクシ
ノニトリル、2,2,3,3-テトラメチルスクシノニトリル、2,3-ジエチル-2,
3-ジメチルスクシノニトリル、2,2-ジエチル-3,3-ジメチルスクシノニトリル
、ビシクロヘキシル-1,1-ジカルボニトリル、ビシクロヘキシル-2,2-ジカルボ
ニトリル、ビシクロヘキシル-3,3-ジカルボニトリル、2,5-ジメチル-2,5-
ヘキサンジカルボニトリル、2,3-ジイソブチル-2,3-ジメチルスクシノニトリル
、2,2-ジイソブチル-3,3-ジメチルスクシノニトリル、2-メチルグルタロニト
リル、2,3-ジメチルグルタロニトリル、2,4-ジメチルグルタロニトリル、2,2
,3,3-テトラメチルグルタロニトリル、2,2,4,4-テトラメチルグルタロニト
リル、2,2,3,4-テトラメチルグルタロニトリル、2,3,3,4-テトラメチル
グルタロニトリル、マレオニトリル、フマロニトリル、1,4-ジシアノペンタン、2,
6-ジシアノヘプタン、2,7-ジシアノオクタン、2,8-ジシアノノナン、1,6-
ジシアノデカン、1,2-ジジアノベンゼン、1,3-ジシアノベンゼン、1,4-ジシ
アノベンゼン、3,3’-(エチレンジオキシ)ジプロピオニトリル、3,3’-(エチ
レンジチオ)ジプロピオニトリル及び3,9-ビス(2-シアノエチル)-2,4,8,
10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン;
【0104】
≪3つのシアノ基を有する化合物≫
トリス(2-シアノエチル)アミン、1,2,3-プロパントリカルボニトル、1,2
,3-ブタントリカルボニトル、1,2,3-ペンタントリカルボニトル、1,3,4-
ペンタントリカルボニトル、1,3,5-ペンタントリカルボニトル、1,3,6-ペン
タントリカルボニトル;
これらのうち、マロノニトリル、スクシノニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリ
ル、ピメロニトリル、スベロニトリル、アゼラニトリル、セバコニトリル、ウンデカンジ
ニトリル、ドデカンジニトリル及び3,9-ビス(2-シアノエチル)-2,4,8,1
0-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、フマロニトリル、1,3,5-ペンタン
トリカルボニトルが高温保存耐久特性向上の点から好ましい。更に、スクシノニトリル、
グルタロニトリル、アジポニトリル、ピメロニトリル、スベロニトリル、グルタロニトリ
ル、3,9-ビス(2-シアノエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,
5]ウンデカンおよび1,3,5-ペンタントリカルボニトルは、高温保存耐久特性向上
効果が特に優れ、また電極での副反応による劣化が少ないためにより好ましい。
【0105】
式(1)および(2)以外のシアノ基を有する有機化合物は、1種を単独で用いてもよ
く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併有してもよい。式(1)および(2)以外
のシアノ基を有する有機化合物の含有量(2種以上の場合は合計量)は、電解液100質
量%中、通常0.001質量%以上であり、好ましくは0.01質量%以上、より好まし
くは0.1質量%以上、更に好ましくは0.4質量%以上、特に好ましくは0.6質量%
以上であり、また、通常10質量%以下であり、好ましくは5質量%以下、より好ましく
は3質量%以下、更に好ましくは2質量%以下、特に好ましくは1.2質量%以下、最も
好ましくは0.9質量%以下である。この範囲であると、出力特性、負荷特性、低温特性
、サイクル特性、高温保存特性等を制御しやすい。
【0106】
1-2-6.イソシアネート基を有する有機化合物
本発明に係るイソシアネート基を有する有機化合物としては、分子内に少なくとも1つ
のイソシアネート基を有する有機化合物であれば、特に制限されないが、イソシアネート
基の数は、一分子中、好ましくは1以上4以下、より好ましくは2以上3以下、更に好ま
しくは2である。イソシアネート基を有する有機化合物を併用した本発明の電解液を用い
た電池は、耐久特性を改善することができる。
【0107】
イソシアネート基を有する有機化合物としては、以下を挙げることができる。
メチルイソシアネート、エチルイソシアネート、プロピルイソシアネート、イソプロピル
イソシアネート、ブチルイソシアネート、ターシャルブチルイソシアネート、ペンチルイ
ソシアネートヘキシルイソシアネート、シクロヘキシルイソシアネート、ビニルイソシア
ネート、アリルイソシアネート、エチニルイソシアネート、プロパルギルイソシアネート
、フェニルイソシアネート、フロロフェニルイソシアネート等のイソシアネート基を1個
有する有機化合物;
【0108】
モノメチレンジイソシアネート、ジメチレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシ
アネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサ
メチレンジイソシアネート、ヘプタメチレンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシ
アネート、ノナメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、ドデカメチ
レンジイソシアネート、1,3-ジイソシアナトプロパン、1,4-ジイソシアナト-2
-ブテン、1,4-ジイソシアナト-2-フルオロブタン、1,4-ジイソシアナト-2
,3-ジフルオロブタン、1,5-ジイソシアナト-2-ペンテン、1,5-ジイソシア
ナト-2-メチルペンタン、1,6-ジイソシアナト-2-ヘキセン、1,6-ジイソシ
アナト-3-ヘキセン、1,6-ジイソシアナト-3-フルオロヘキサン、1,6-ジイ
ソシアナト-3,4-ジフルオロヘキサン、トルエンジイソシアネート、キシレンジイソ
シアネート、トリレンジイソシアネート、1,2-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘ
キサン、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(イソシア
ナトメチル)シクロヘキサン、1,2-ジイソシアナトシクロヘキサン、1,3-ジイソ
シアナトシクロヘキサン、1,4-ジイソシアナトシクロヘキサン、ジシクロヘキシルメ
タン-1,1’-ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-2,2’-ジイソシアネ
ート、ジシクロヘキシルメタン-3,3’-ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン
-4,4’-ジイソシアネート、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,5-ジイルビス
(メチルイソシアネート)、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,6-ジイルビス(メ
チルイソシアネート)、ジイソシアン酸イソホロン、カルボニルジイソシアネート、1,
4-ジイソシアナトブタン-1,4-ジオン、1,5-ジイソシアナトペンタン-1,5
-ジオン、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアナート、2,4,4-トリ
メチルヘキサメチレンジイソシアナート等のイソシアネート基を2個有する有機化合物;
等が挙げられる。
【0109】
これらのうち、モノメチレンジイソシアネート、ジメチレンジイソシアネート、トリメ
チレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシア
ネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘプタメチレンジイソシアネート、オクタメ
チレンジイソシアネート、ノナメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネー
ト、ドデカメチレンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキ
サン、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、ビシクロ[2.2.1]
ヘプタン-2,5-ジイルビス(メチルイソシアネート)、ビシクロ[2.2.1]ヘプ
タン-2,6-ジイルビス(メチルイソシアネート)、ジイソシアン酸イソホロン、2,
2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアナート、2,4,4-トリメチルヘキサメ
チレンジイソシアナート等のイソシアネート基を2個有する有機化合物が保存特性向上の
点から好ましく、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル
)シクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、ビシクロ[
2.2.1]ヘプタン-2,5-ジイルビス(メチルイソシアネート)、ビシクロ[2.
2.1]ヘプタン-2,6-ジイルビス(メチルイソシアネート)、ジイソシアン酸イソ
ホロン、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアナート、2,4,4-トリメ
チルヘキサメチレンジイソシアナートがより好ましく、1,3-ビス(イソシアナトメチ
ル)シクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、ビシクロ
[2.2.1]ヘプタン-2,5-ジイルビス(メチルイソシアネート)、ビシクロ[2
.2.1]ヘプタン-2,6-ジイルビス(メチルイソシアネート)が更に好ましい。
【0110】
イソシアネート基を有する有機化合物は、分子内に少なくとも2個のイソシアネート基
を有する化合物から誘導される三量体化合物、又はそれに多価アルコールを付加した脂肪
族ポリイソシアネートであってもよい。例えば、以下に示す式(2-6-1)~(2-6
-4)の基本構造で示されるビウレット、イソシアヌレート、アダクト及び二官能のタイ
プの変性ポリイソシアネート等が挙げられる。
【0111】
【化21】
【0112】
【化22】
【0113】
【化23】
【0114】
【化24】
【0115】
式(2-6-1)~(2-6-4)中、R及びR’はそれぞれ独立して任意の2価また
は3価の炭化水素基である(例えば、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基)である。)
分子内に少なくとも2個のイソシアネート基を有する有機化合物には、ブロック剤でブ
ロックして保存安定性を高めた、いわゆるブロックイソシアネートも含まれる。ブロック
剤には、アルコール類、フェノール類、有機アミン類、オキシム類、ラクタム類を挙げる
ことができ、具体的には、n-ブタノール、フェノール、トリブチルアミン、ジエチルエ
タノールアミン、メチルエチルケトキシム、ε-カプロラクタム等を挙げることができる
【0116】
イソシアネート基を有する有機化合物に基づく反応を促進し、より高い効果を得る目的
で、ジブチルスズジラウレート等のような金属触媒や、1,8-ジアザビシクロ[5.4
.0]ウンデセン-7のようなアミン系触媒等を併用することも好ましい。
イソシアネート基を有する有機化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意
の組み合わせ及び比率で併有してもよい。イソシアネート基を有する有機化合物の含有量
(2種以上の場合は合計量)は、電解液100質量%中、0.001質量%以上であるこ
とができ、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上であり、また
、10質量%以下であることができ、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%
以下である。この範囲であれば、出力特性、負荷特性、低温特性、サイクル特性、高温保
存特性等を制御しやすい。
【0117】
1-2-7.ケイ素含有化合物
本発明に係るケイ素含有化合物としては、分子内に少なくとも1つのケイ素原子を有す
る化合物であれば、特に制限されない。ケイ素含有化合物を併用した本発明の電解液を用
いた電池は、耐久特性を改善することができる。
ケイ素含有化合物としては、以下の化合物が挙げられる。
【0118】
ホウ酸トリス(トリメチルシリル)、ホウ酸トリス(トリメトキシシリル)、ホウ酸ト
リス(トリエチルシリル)、ホウ酸トリス(トリエトキシシリル)、ホウ酸トリス(ジメ
チルビニルシリル)及びホウ酸トリス(ジエチルビニルシリル)等のホウ酸化合物; リ
ン酸トリス(トリメチルシリル)、リン酸トリス(トリエチルシリル)、リン酸トリス(
トリプロピルシリル)、リン酸トリス(トリフェニルシリル)、リン酸トリス(トリメト
キシシリル)、リン酸トリス(トリエトキシシリル)、リン酸トリス(トリフエノキシシ
リル)、リン酸トリス(ジメチルビニルシリル)及びリン酸トリス(ジエチルビニルシリ
ル)等のリン酸化合物;
【0119】
亜リン酸トリス(トリメチルシリル)、亜リン酸トリス(トリエチルシリル)、亜リン
酸トリス(トリプロピルシリル)、亜リン酸トリス(トリフェニルシリル)、亜リン酸ト
リス(トリメトキシシリル)、亜リン酸トリス(トリエトキシシリル)、亜リン酸トリス
(トリフエノキシシリル)、亜リン酸トリス(ジメチルビニルシリル)及び亜リン酸トリ
ス(ジエチルビニルシリル)等の亜リン酸化合物;メタンスルホン酸トリメチルシリル、
テトラフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリル等のスルホン酸化合物;
ヘキサメチルジシラン、ヘキサエチルジシラン、1,1,2,2-テトラメチルジシラ
ン、1,1,2,2-テトラエチルジシラン、1,2-ジフェニルテトラメチルジシラン
及び1,1,2,2-テトラフェニルジシラン等のジシラン化合物;
等が挙げられる。
【0120】
これらのうち、ホウ酸トリス(トリメチルシリル)、リン酸トリス(トリメチルシリル
)、亜リン酸トリス(トリメチルシリル)、メタンスルホン酸トリメチルシリル、テトラ
フルオロメタンスルホン酸トリメチルシリル、ヘキサメチルジシラン、ヘキサエチルジシ
ラン、1,2-ジフェニルテトラメチルジシラン及び1,1,2,2-テトラフェニルジ
シランが好ましく、ホウ酸トリス(トリメチルシリル)、リン酸トリス(トリメチルシリ
ル)、亜リン酸トリス(トリメチルシリル)及びヘキサメチルジシランがより好ましい。
【0121】
ケイ素含有化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比
率で併用してもよい。ケイ素含有化合物(2種以上の場合は合計量)は、電解液100質
量%中、通常0.001質量%以上であり、好ましくは0.1質量%以上、より好ましく
は0.3質量%以上であり、また、通常10質量%以下であり、好ましくは5質量%以下
、より好ましくは3質量%以下である。この範囲であれば、出力特性、負荷特性、低温特
性、サイクル特性、高温保存特性等を制御しやすい。
【0122】
1-3.電解質
本発明に係る電解質は特に制限なく、電解質として公知のものを任意に用いることがで
きる。リチウム二次電池の場合は、通常リチウム塩が用いられる。具体的には、LiPF
、LiBF4、LiClO、LiAlF、LiSbF、LiTaF、LiWF
等の無機リチウム塩;LiWOF等のタングステン酸リチウム類;HCOLi、C
COLi、CHFCOLi、CHFCOLi、CFCOLi、CF
CHCOLi、CFCFCOLi、CFCFCFCOLi、CF
CFCFCOLi等のカルボン酸リチウム塩類;FSOLi、CHSO
Li、CHFSOLi、CHFSOLi、CFSOLi、CFCFSO
Li、CFCFCFSOLi、CFCFCFCFSOLi等のスル
ホン酸リチウム塩類;LiN(FCO)、LiN(FCO)(FSO)、LiN(F
SO、LiN(FSO)(CFSO)、LiN(CFSO、LiN
(CSO、リチウム環状1,2-パーフルオロエタンジスルホニルイミド、
リチウム環状1,3-パーフルオロプロパンジスルホニルイミド、LiN(CFSO
)(CSO)等のリチウムイミド塩類;LiC(FSO、LiC(CF
SO、LiC(CSO等のリチウムメチド塩類;リチウムビス(マロ
ナト)ボレート、リチウムジフルオロ(マロナト)ボレート等のリチウム(マロナト)ボ
レート塩類;リチウムトリス(マロナト)ホスフェート、リチウムジフルオロビス(マロ
ナト)ホスフェート、リチウムテトラフルオロ(マロナト)ホスフェート等のリチウム(
マロナト)ホスフェート塩類;その他、LiPF(CF、LiPF(C
、LiPF(CFSO、LiPF(CSO、LiBF
、LiBF、LiBF、LiBF(CF、LiBF
(C、LiBF(CFSO、LiBF(CSO等の
含フッ素有機リチウム塩類;リチウムジフルオロオキサラトボレート、リチウムビス(オ
キサラト)ボレート等のリチウムオキサラトボレート塩類;
リチウムテトラフルオロオキサラトホスフェート、リチウムジフルオロビス(オキサラ
ト)ホスフェート、リチウムトリス(オキサラト)ホスフェート等のリチウムオキサラト
ホスフェート塩類;等が挙げられる。
【0123】
これらの中でも、LiPF、LiSbF、LiTaF、FSOLi、CF
Li、LiN(FSO、LiN(FSO)(CFSO)、LiN(CF
SO、LiN(CSO、リチウム環状1,2-パーフルオロエタン
ジスルホニルイミド、リチウム環状1,3-パーフルオロプロパンジスルホニルイミド、
LiC(FSO、LiC(CFSO、LiC(CSO、Li
BFCF、LiBF、LiPF(CF、LiPF(C
3、リチウムジフルオロオキサラトボレート、リチウムビス(オキサラト)ボレート、リ
チウムジフルオロビス(オキサラト)ホスフェート、等が出力特性やハイレート充放電特
性、高温保存特性、サイクル特性等を向上させる効果がある点から好ましい。また、Li
PF、FSOLi、LiN(FSO、LiN(CFSO、リチウムジ
フルオロオキサラトボレート、リチウムビス(オキサラト)ボレート、リチウムジフルオ
ロビス(オキサラト)ホスフェートがより好ましく、LiPF、FSOLi、LiN
(FSO、リチウムビス(オキサラト)ボレートが出力特性やハイレート充放電特
性、高温保存特性、サイクル特性等をさらに向上させる効果がある点からさらに好ましく
、電解質の耐酸化還元安定性の観点からLiPFが最も好ましい。
【0124】
非水系電解液中に含まれる電解質のモル含有量に対する式(1)または式(2)表され
る化合物のモル含有量の比は、本発明の効果を発現するためには特に制限はないが、通常
0.043以上、好ましくは0.050以上、より好ましくは0.075以上、更に好ま
しくは0.080以上、特に好ましくは0.100以上であり、通常0.935以下であ
り、好ましくは0.850以下、より好ましくは0.760以下、更に好ましくは0.3
00以下、特に好ましくは0.200以下である。この範囲であれば、電池特性、特に連
続充電耐久特性を著しく向上させることができる。この原理については定かではないが、
この比率で混合させることで、電解質の分解生成物と効率よく錯形成しやすいためと考え
られる。なお、電解質のモル含有量に対する式(1)または式(2)表される化合物のモ
ル含有量の比とは、式(1)または式(2)表される化合物のモル含有量を電解質のモル
含有量で除した値を表し、電解質一分子に対する式(1)または式(2)表される化合物
の分子数を表す指標である。
【0125】
非水系電解液中のこれらの電解質の濃度は、本発明の効果を損なわない限り、その含有
量は特に制限されないが、電解液の電気伝導率を良好な範囲とし、良好な電池性能を確保
する点から、非水系電解液中のリチウムの総モル濃度は、好ましくは0.25mol/L
以上、より好ましくは0.5mol/L以上、更に好ましくは1.1mol/L以上であ
り、また、好ましくは3.0mol/L以下、より好ましくは2.5mol/L以下、更
に好ましくは2.0mol/L以下である。この範囲であれば、荷電粒子であるリチウム
が少なすぎず、また粘度を適切な範囲とすることができるため、良好な電気伝導度を確保
しやすくなる。
【0126】
2種以上の電解質を併用する場合、少なくとも1種は、モノフルオロリン酸塩、ジフル
オロリン酸塩、ホウ酸塩、シュウ酸塩及びフルオロスルホン酸塩からなる群より選ばれる
塩であることも好まく、モノフルオロリン酸塩、ジフルオロリン酸塩、シュウ酸塩及びフ
ルオロスルホン酸塩からなる群より選ばれる塩であることもより好ましい。これらのうち
リチウム塩が好ましい。モノフルオロリン酸塩、ジフルオロリン酸塩、ホウ酸塩、シュウ
酸塩及びフルオロスルホン酸塩からなる群より選ばれる塩は、0.01質量%以上である
ことができ、好ましくは0.1質量%以上であり、また、20質量%以下であることがで
き、好ましくは10質量%以下である。
【0127】
電解質として、モノフルオロリン酸塩、ジフルオロリン酸塩、ホウ酸塩、シュウ酸塩及
びフルオロスルホン酸塩からなる群より選ばれる1種以上と、それ以外の塩の1種以上を
含むことが好ましい。それ以外の塩としては、上記で例示したリチウム塩が挙げられ、特
に、LiPF、LiN(FSO)(CFSO)、LiN(CFSO、L
iN(CSO、リチウム環状1,2-パーフルオロエタンジスルホニルイミ
ド、リチウム環状1,3-パーフルオロプロパンジスルホニルイミド、LiC(FSO
、LiC(CFSO、LiC(CSO、LiBFCF、L
iBF、LiPF(CF、LiPF(Cが好ましく、L
iPFが更に好ましい。それ以外の塩は、電解液の電導度と粘度の適切なバランスを確
保する観点から0.01質量%以上であることができ、好ましくは0.1質量%以上であ
り、また、20質量%以下であることができ、好ましくは15質量%以下、より好ましく
は10質量%以下である。
【0128】
1-3-1.モノフルオロリン酸塩、ジフルオロリン酸塩
本発明に係るモノフルオロリン酸塩及びジフルオロリン酸塩は、それぞれ、分子内に少
なくとも1つのモノフルオロリン酸又はジフルオロリン酸構造を有する塩であれば、特に
制限されない。本発明の電解液において、上記式(1)または式(2)表される化合物と
モノフルオロリン酸塩及びジフルオロリン酸塩から選ばれる1種以上とを併用することに
より、この電解液を用いた電池において、耐久特性を改善することができる。
【0129】
モノフルオロリン酸塩及びジフルオロリン酸塩におけるカウンターカチオンは、特に制
限されず、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、NR121
122123124(式中、R121~R124は、独立して、水素原子又は炭素数
1以上12以下の有機基である)で表されるアンモニウム等が挙げられる。上記アンモニ
ウムのR121~R124で表わされる炭素数1以上12以下の有機基は特に制限されず
、例えば、フッ素原子で置換されていてもよいアルキル基、ハロゲン原子又はアルキル基
で置換されていてもよいシクロアルキル基、ハロゲン原子又はアルキル基で置換されてい
てもよいアリール基、置換基を有していてもよい窒素原子含有複素環基等が挙げられる。
中でもR121~R124は、独立して、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基又は
窒素原子含有複素環基等が好ましい。カウンターカチオンとしては、リチウム、ナトリウ
ム、カリウムが好ましく、中でもリチウムが好ましい。
【0130】
モノフルオロリン酸塩及びジフルオロリン酸塩としては、モノフルオロリン酸リチウム
、モノフルオロリン酸ナトリウム、モノフルオロリン酸カリウム、ジフルオロリン酸リチ
ウム、ジフルオロリン酸ナトリウム、ジフルオロリン酸カリウム等が挙げられ、モノフル
オロリン酸リチウム、ジフルオロリン酸リチウムが好ましく、ジフルオロリン酸リチウム
がより好ましい。モノフルオロリン酸塩及びジフルオロリン酸塩は、1種を単独で用いて
もよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0131】
モノフルオロリン酸塩及びジフルオロリン酸塩から選ばれる1種以上の量(2種以上の
場合は合計量)は、通常0.001質量%以上であり、好ましくは0.01質量%以上、
より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.2質量%以上、特に好ましくは0
.3質量%以上であり、また、通常5質量%以下であり、好ましくは3質量%以下、より
好ましくは2質量%以下、更に好ましくは1.5質量%以下、特に好ましくは1質量%以
下である。この範囲内であると、初期不可逆容量向上の効果が顕著に発現される。
【0132】
1-3-2.ホウ酸塩
本発明に係るホウ酸塩は、分子内にホウ素原子を少なくとも1つ有している塩であれば
、特に制限されない。ただしシュウ酸塩に該当するものは、1-3-2.ホウ酸塩ではな
く、後述する1-3-3.シュウ酸塩に包含されるものとする。本発明の電解液において
、式(1)または式(2)表される化合物とホウ酸塩とを併用することによって、この電
解液を用いた電池において、耐久特性を改善することができる。
【0133】
ホウ酸塩におけるカウンターカチオンとしては、リチウム、ナトリウム、カリウム、マ
グネシウム、カルシウム、ルビジウム、セシウム、バリウム等が挙げられ、中でもリチウ
ムが好ましい。
ホウ酸塩としては、リチウム塩が好ましく、含ホウ酸リチウム塩も好適に使用すること
ができる。例えばLiBF、LiBFCF、LiBF、LiBF
、LiBF(CF、LiBF(C、LiBF(CFSO
、LiBF(CSO等が挙げられる。中でも、LiBFが初期充放
電効率と高温サイクル特性等を向上させる効果がある点からより好ましい。ホウ酸塩は、
1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0134】
ホウ酸塩の量(2種以上の場合は合計量)は、通常0.05質量%以上であり、好まし
くは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、更に好ましくは0.3質量%
以上、特に好ましくは0.4質量%以上であり、また、通常10.0質量%以下であり、
好ましくは5.0質量%以下、より好ましくは3.0質量%以下、更に好ましくは2.0
質量%以下、特に好ましくは1.0質量%以下である。この範囲内であると、電池負極の
副反応が抑制され抵抗を上昇させにくい。
【0135】
1-3-3.シュウ酸塩
本発明に係るシュウ酸塩は、分子内に少なくとも1つのシュウ酸構造を有する化合物で
あれば、特に制限されない。本発明の電解液において、式(1)または式(2)表される
化合物とシュウ酸塩とを併用することによって、この電解液を用いた電池において、耐久
特性を改善することができる。
シュウ酸塩としては、以下に示す式(9)で表される金属塩が好ましい。この塩は、オ
キサラト錯体をアニオンとする塩である。
【0136】
【化25】
【0137】
(式中、Mは、周期表における1族、2族及びアルミニウム(Al)からなる群より選
ばれる元素であり、Mは、遷移金属、周期表の13族、14族及び15族からなる群よ
り選ばれる元素であり、R91は、ハロゲン、炭素数1以上11以下のアルキル基及び炭
素数1以上11以下のハロゲン置換アルキル基からなる群より選ばれる基であり、a及び
bは正の整数であり、cは0又は正の整数であり、dは1~3の整数である。)
は、本発明の電解液をリチウム二次電池に用いたときの電池特性の点から、リチウ
ム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムが好ましく、リチウムが特に好ま
しい。
【0138】
は、リチウム二次電池に用いる場合の電気化学的安定性の点で、ホウ素及びリンが
特に好ましい。
91としては、フッ素、塩素、メチル基、トリフルオロメチル基、エチル基、ペンタ
フルオロエチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec-ブチル基、ter
t-ブチル基等が挙げられ、フッ素、トリフルオロメチル基が好ましい。
【0139】
式(9)で表される金属塩としては、以下が挙げられる。
リチウムジフルオロオキサラトボレート及びリチウムビス(オキサラト)ボレート等の
リチウムオキサラトボレート塩類;
リチウムテトラフルオロオキサラトホスフェート、リチウムジフルオロビス(オキサラ
ト)ホスフェート、リチウムトリス(オキサラト)ホスフェート等のリチウムオキサラト
ホスフェート塩類;
これらのうち、リチウムビス(オキサラト)ボレート及びリチウムジフルオロビス(オ
キサラト)ホスフェートが好ましく、リチウムビス(オキサラト)ボレートがより好まし
い。
【0140】
シュウ酸塩は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併
用してもよい。
シュウ酸塩の量(2種以上の場合は合計量)は、通常0.001質量%以上であり、好
ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、特に好ましくは0.3
質量%以上であり、また、通常10質量%以下であり、好ましくは5質量%以下、より好
ましくは3質量%以下、更に好ましくは2質量%以下、特に好ましくは1質量%以下であ
る。この範囲にあると、出力特性、負荷特性、低温特性、サイクル特性、高温保存特性等
を制御しやすい。
【0141】
1-3-4.フルオロスルホン酸塩
本発明に係るフルオロスルホン酸塩としては、分子内に少なくとも1つのフルオロスル
ホン酸構造を有している塩であれば、特に制限されない。本発明の電解液において、上記
式(1)または式(2)表される化合物とフルオロスルホン酸塩とを併用することにより
、この電解液を用いた電池において、耐久特性を改善することができる。
【0142】
フルオロスルホン酸塩におけるカウンターカチオンは、特に制限されず、リチウム、ナ
トリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム及び
、NR131132133134(式中、R131~R134は、各々独立に、水
素原子又は炭素数1以上12以下の有機基である)で表されるアンモニウム等が挙げられ
る。上記アンモニウムのR131~R134で表わされる炭素数1以上12以下の有機基
は特に制限されず、例えば、フッ素原子で置換されていてもよいアルキル基、ハロゲン原
子又はアルキル基で置換されていてもよいシクロアルキル基、ハロゲン原子又はアルキル
基で置換されていてもよいアリール基、置換基を有していてもよい窒素原子含有複素環基
等が挙げられる。中でもR131~R134は、独立して、水素原子、アルキル基、シク
ロアルキル基又は窒素原子含有複素環基等が好ましい。カウンターカチオンとしては、リ
チウム、ナトリウム、カリウムが好ましく、中でもリチウムが好ましい。
【0143】
フルオロスルホン酸塩としては、フルオロスルホン酸リチウム、フルオロスルホン酸ナ
トリウム、フルオロスルホン酸カリウム、フルオロスルホン酸ルビジウム、フルオロスル
ホン酸セシウム等が挙げられ、フルオロスルホン酸リチウムが好ましい。リチウムビス(
フルオロスルホニル)イミド等のフルオロスルホン酸構造を有するイミド塩もフルオロス
ルホン酸塩として使用することができる。
【0144】
フルオロスルホン酸塩は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及
び比率で併用してもよい。
フルオロスルホン酸塩の含有量(2種以上の場合は合計量)は、通常0.05質量%以
上であり、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、更に好まし
くは0.3質量%以上、特に好ましくは0.4質量%以上であり、また、通常10質量%
以下であり、好ましくは8質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは2
質量%以下、特に好ましくは1質量%以下である。この範囲内であると、電池中での副反
応が少なく、抵抗を上昇させにくい。
【0145】
1-4.非水溶媒
本発明における非水溶媒について特に制限はなく、公知の有機溶媒を用いることが可能
である。具体的には、環状カーボネート(ただし、フッ素含有環状カーボネートを除く。
)、鎖状カーボネート、環状及び鎖状カルボン酸エステル、エーテル系化合物、スルホン
系化合物等が挙げられる。
また、本明細書において、非水溶媒の体積は25℃での測定値であるが、エチレンカー
ボネートのように25℃で固体のものは融点での測定値を用いる。
【0146】
1-4-1.環状カーボネート(ただし、フッ素含有環状カーボネートを除く。)
本発明に係る環状カーボネートとしては、炭素数2~4のアルキレン基を有する環状カ
ーボネートが挙げられる。
炭素数2~4のアルキレン基を有する、環状カーボネートの具体的な例としては、エチ
レンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネートが挙げられる。中で
も、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートがリチウムイオン解離度の向上に由
来する電池特性向上の点から特に好ましい。
環状カーボネートは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比
率で併用してもよい。
【0147】
環状カーボネートの配合量は、特に制限されず、本発明の効果を著しく損なわない限り
任意であるが、1種を単独で用いる場合の配合量は、非水溶媒100体積%中、5体積%
以上、より好ましくは10体積%以上である。この範囲とすることで、非水系電解液の誘
電率の低下に由来する電気伝導率の低下を回避し、エネルギーデバイスの大電流放電特性
、負極に対する安定性、サイクル特性を良好な範囲としやすくなる。また、95体積%以
下、より好ましくは90体積%以下、更に好ましくは85体積%以下である。この範囲と
することで、非水系電解液の粘度を適切な範囲とし、イオン伝導度の低下を抑制し、ひい
てはエネルギーデバイスの負荷特性を良好な範囲としやすくなる。
【0148】
1-4-2.鎖状カーボネート
本発明に係る鎖状カーボネートとしては、炭素数3~7の鎖状カーボネートが好ましく
、炭素数3~7のジアルキルカーボネートがより好ましい。
鎖状カーボネートとしては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ-n-
プロピルカーボネート、ジイソプロピルカーボネート、n-プロピルイソプロピルカーボ
ネート、エチルメチルカーボネート、メチル-n-プロピルカーボネート、n-ブチルメ
チルカーボネート、イソブチルメチルカーボネート、tert-ブチルメチルカーボネー
ト、エチル-n-プロピルカーボネート、n-ブチルエチルカーボネート、イソブチルエ
チルカーボネート、tert-ブチルエチルカーボネート等が挙げられる。
【0149】
中でも、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ-n-プロピルカーボネー
ト、ジイソプロピルカーボネート、n-プロピルイソプロピルカーボネート、エチルメチ
ルカーボネート、メチル-n-プロピルカーボネートが好ましく、特に好ましくはジメチ
ルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネートである。
また、フッ素原子を有する鎖状カーボネート類(以下、「フッ素化鎖状カーボネート」
と記載する場合がある)も好適に用いることができる。
【0150】
フッ素化鎖状カーボネートが有するフッ素原子の数は、1以上であれば特に制限されな
いが、通常6以下であり、好ましくは4以下である。フッ素化鎖状カーボネートが複数の
フッ素原子を有する場合、それらは互いに同一の炭素に結合していてもよく、異なる炭素
に結合していてもよい。
フッ素化鎖状カーボネートとしては、フッ素化ジメチルカーボネート及びその誘導体、
フッ素化エチルメチルカーボネート及びその誘導体、フッ素化ジエチルカーボネート及び
その誘導体等が挙げられる。
【0151】
フッ素化ジメチルカーボネート及びその誘導体としては、フルオロメチルメチルカーボ
ネート、ジフルオロメチルメチルカーボネート、トリフルオロメチルメチルカーボネート
、ビス(フルオロメチル)カーボネート、ビス(ジフルオロ)メチルカーボネート、ビス
(トリフルオロメチル)カーボネート等が挙げられる。
フッ素化エチルメチルカーボネート及びその誘導体としては、2-フルオロエチルメチ
ルカーボネート、エチルフルオロメチルカーボネート、2,2-ジフルオロエチルメチル
カーボネート、2-フルオロエチルフルオロメチルカーボネート、エチルジフルオロメチ
ルカーボネート、2,2,2-トリフルオロエチルメチルカーボネート、2,2-ジフル
オロエチルフルオロメチルカーボネート、2-フルオロエチルジフルオロメチルカーボネ
ート、エチルトリフルオロメチルカーボネート等が挙げられる。
【0152】
フッ素化ジエチルカーボネート及びその誘導体としては、エチル-(2-フルオロエチ
ル)カーボネート、エチル-(2,2-ジフルオロエチル)カーボネート、ビス(2-フ
ルオロエチル)カーボネート、エチル-(2,2,2-トリフルオロエチル)カーボネー
ト、2,2-ジフルオロエチル-2’-フルオロエチルカーボネート、ビス(2,2-ジ
フルオロエチル)カーボネート、2,2,2-トリフルオロエチル-2’-フルオロエチ
ルカーボネート、2,2,2-トリフルオロエチル-2’,2’-ジフルオロエチルカー
ボネート、ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)カーボネート等が挙げられる。
【0153】
鎖状カーボネートは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比
率で併用してもよい。鎖状カーボネートの配合量は、非水溶媒100体積%中、好ましく
は5体積%以上、より好ましくは10体積%以上、更に好ましくは15体積%以上である
。このように下限を設定することにより、非水系電解液の粘度を適切な範囲とし、イオン
伝導度の低下を抑制し、ひいてはエネルギーデバイスの大電流放電特性を良好な範囲とし
やすくなる。また、鎖状カーボネートは、非水溶媒100体積%中、90体積%以下、よ
り好ましくは85体積%以下であることが好ましい。このように上限を設定することによ
り、非水系電解液の誘電率の低下に由来する電気伝導率の低下を回避し、エネルギーデバ
イスの大電流放電特性を良好な範囲としやすくなる。
【0154】
1-4-3.環状及び鎖状カルボン酸エステル
本発明に係る環状カルボン酸エステルとしては、炭素数が3~12のものが好ましい。
具体的には、ガンマブチロラクトン、ガンマバレロラクトン、ガンマカプロラクトン、
イプシロンカプロラクトン等が挙げられる。中でも、ガンマブチロラクトンがリチウムイ
オン解離度の向上に由来する電池特性向上の点から特に好ましい。
【0155】
環状カルボン酸エステルは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ
及び比率で併用してもよい。
環状カルボン酸エステルの配合量は、通常、非水溶媒100体積%中、好ましくは5体
積%以上、より好ましくは10体積%以上である。この範囲であれば、非水系電解液の電
気伝導率を改善し、エネルギーデバイスの大電流放電特性を向上させやすくなる。また、
環状カルボン酸エステルの配合量は、好ましくは50体積%以下、より好ましくは40体
積%以下である。このように上限を設定することにより、非水系電解液の粘度を適切な範
囲とし、電気伝導率の低下を回避し、負極抵抗の増大を抑制し、エネルギーデバイスの大
電流放電特性を良好な範囲としやすくなる。
【0156】
鎖状カルボン酸エステルとしては、「1-1-1.カルボン酸エステル」で示したもの
が挙げられる。
鎖状カルボン酸エステルを非水溶媒として用いる場合の配合量は、非水溶媒100体積
%中、好ましくは1体積%以上、より好ましくは5体積%以上、更に好ましくは10体積
%以上、更により好ましくは20体積%以上であり、また、50体積%以下で含有させる
ことができ、より好ましくは45体積%以下、更に好ましくは40体積%以下である。鎖
状カルボン酸エステルの含有量を前記範囲とすると、非水系電解液の電気伝導率を改善し
、非水系電解液二次電池の入出力特性や充放電レート特性を向上させやすくなる。また、
負極抵抗の増大を抑制し、非水系電解液二次電池の入出力特性や充放電レート特性を良好
な範囲としやすくなる。
【0157】
尚、鎖状カルボン酸エステルを非水溶媒として用いる場合は、好ましくは環状カーボネ
ートとの併用であり、更に好ましくは環状カーボネートと鎖状カーボネートの併用である

例えば、環状カーボネートと鎖状カルボン酸エステルを併用した場合、環状カーボネー
トの含有量は、特に制限されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通
常15体積%以上、好ましくは20体積%、また通常45体積%以下、好ましくは40体
積%以下であり、鎖状カルボン酸エステルの含有量は、通常20体積%以上、好ましくは
30体積%以上、また通常55体積%以下、好ましくは50体積%以下である。また、環
状カーボネートと鎖状カーボネートと鎖状カルボン酸エステルを併用した場合、環状カー
ボネートの含有量は、特に制限されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である
が、通常15体積%以上、好ましくは20体積%、また通常45体積%以下、好ましくは
40体積%以下であり、鎖状カーボネートの含有量は、通常25体積%以上、好ましくは
30体積%以上、また通常84体積%以下、好ましくは80体積%以下である。含有量を
上記範囲内とすることで、電解質の低温析出温度を低下させながら、非水系電解液の粘度
も低下させてイオン伝導度を向上させ、低温でも更に高い入出力を得ることができ、また
電池膨れを更に低下させる観点で好ましい。
【0158】
1-4-4.エーテル系化合物
本発明に係るエーテル系化合物としては、一部の水素がフッ素にて置換されていてもよ
い炭素数3~10の鎖状エーテル、及び炭素数3~6の環状エーテルが好ましい。
炭素数3~10の鎖状エーテルとしては、
ジエチルエーテル、ジ(2-フルオロエチル)エーテル、ジ(2,2-ジフルオロエチ
ル)エーテル、ジ(2,2,2-トリフルオロエチル)エーテル、エチル(2-フルオロ
エチル)エーテル、エチル(2,2,2-トリフルオロエチル)エーテル、エチル(1,
1,2,2-テトラフルオロエチル)エーテル、(2-フルオロエチル)(2,2,2-
トリフルオロエチル)エーテル、(2-フルオロエチル)(1,1,2,2-テトラフル
オロエチル)エーテル、(2,2,2-トリフルオロエチル)(1,1,2,2-テトラ
フルオロエチル)エーテル、エチル-n-プロピルエーテル、エチル(3-フルオロ-n
-プロピル)エーテル、エチル(3,3,3-トリフルオロ-n-プロピル)エーテル、
エチル(2,2,3,3-テトラフルオロ-n-プロピル)エーテル、エチル(2,2,
3,3,3-ペンタフルオロ-n-プロピル)エーテル、2-フルオロエチル-n-プロ
ピルエーテル、(2-フルオロエチル)(3-フルオロ-n-プロピル)エーテル、(2
-フルオロエチル)(3,3,3-トリフルオロ-n-プロピル)エーテル、(2-フル
オロエチル)(2,2,3,3-テトラフルオロ-n-プロピル)エーテル、(2-フル
オロエチル)(2,2,3,3,3-ペンタフルオロ-n-プロピル)エーテル、2,2
,2-トリフルオロエチル-n-プロピルエーテル、(2,2,2-トリフルオロエチル
)(3-フルオロ-n-プロピル)エーテル、(2,2,2-トリフルオロエチル)(3
,3,3-トリフルオロ-n-プロピル)エーテル、(2,2,2-トリフルオロエチル
)(2,2,3,3-テトラフルオロ-n-プロピル)エーテル、(2,2,2-トリフ
ルオロエチル)(2,2,3,3,3-ペンタフルオロ-n-プロピル)エーテル、1,
1,2,2-テトラフルオロエチル-n-プロピルエーテル、(1,1,2,2-テトラ
フルオロエチル)(3-フルオロ-n-プロピル)エーテル、(1,1,2,2-テトラ
フルオロエチル)(3,3,3-トリフルオロ-n-プロピル)エーテル、(1,1,2
,2-テトラフルオロエチル)(2,2,3,3-テトラフルオロ-n-プロピル)エー
テル、(1,1,2,2-テトラフルオロエチル)(2,2,3,3,3-ペンタフルオ
ロ-n-プロピル)エーテル、ジ-n-プロピルエーテル、(n-プロピル)(3-フル
オロ-n-プロピル)エーテル、(n-プロピル)(3,3,3-トリフルオロ-n-プ
ロピル)エーテル、(n-プロピル)(2,2,3,3-テトラフルオロ-n-プロピル
)エーテル、(n-プロピル)(2,2,3,3,3-ペンタフルオロ-n-プロピル)
エーテル、ジ(3-フルオロ-n-プロピル)エーテル、(3-フルオロ-n-プロピル
)(3,3,3-トリフルオロ-n-プロピル)エーテル、(3-フルオロ-n-プロピ
ル)(2,2,3,3-テトラフルオロ-n-プロピル)エーテル、(3-フルオロ-n
-プロピル)(2,2,3,3,3-ペンタフルオロ-n-プロピル)エーテル、ジ(3
,3,3-トリフルオロ-n-プロピル)エーテル、(3,3,3-トリフルオロ-n-
プロピル)(2,2,3,3-テトラフルオロ-n-プロピル)エーテル、(3,3,3
-トリフルオロ-n-プロピル)(2,2,3,3,3-ペンタフルオロ-n-プロピル
)エーテル、ジ(2,2,3,3-テトラフルオロ-n-プロピル)エーテル、(2,2
,3,3-テトラフルオロ-n-プロピル)(2,2,3,3,3-ペンタフルオロ-n
-プロピル)エーテル、ジ(2,2,3,3,3-ペンタフルオロ-n-プロピル)エー
テル、ジ-n-ブチルエーテル、ジメトキシメタン、メトキシエトキシメタン、メトキシ
(2-フルオロエトキシ)メタン、メトキシ(2,2,2-トリフルオロエトキシ)メタ
ンメトキシ(1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ)メタン、ジエトキシメタン、エ
トキシ(2-フルオロエトキシ)メタン、エトキシ(2,2,2-トリフルオロエトキシ
)メタン、エトキシ(1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ)メタン、ジ(2-フル
オロエトキシ)メタン、(2-フルオロエトキシ)(2,2,2-トリフルオロエトキシ
)メタン、(2-フルオロエトキシ)(1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ)メタ
ンジ(2,2,2-トリフルオロエトキシ)メタン、(2,2,2-トリフルオロエトキ
シ)(1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ)メタン、ジ(1,1,2,2-テトラ
フルオロエトキシ)メタン、ジメトキシエタン、メトキシエトキシエタン、メトキシ(2
-フルオロエトキシ)エタン、メトキシ(2,2,2-トリフルオロエトキシ)エタン、
メトキシ(1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ)エタン、ジエトキシエタン、エト
キシ(2-フルオロエトキシ)エタン、エトキシ(2,2,2-トリフルオロエトキシ)
エタン、エトキシ(1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ)エタン、ジ(2-フルオ
ロエトキシ)エタン、(2-フルオロエトキシ)(2,2,2-トリフルオロエトキシ)
エタン、(2-フルオロエトキシ)(1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ)エタン
、ジ(2,2,2-トリフルオロエトキシ)エタン、(2,2,2-トリフルオロエトキ
シ)(1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ)エタン、ジ(1,1,2,2-テトラ
フルオロエトキシ)エタン、エチレングリコールジ-n-プロピルエーテル、エチレング
リコールジ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等が挙げられ
る。
【0159】
炭素数3~6の環状エーテルとしては、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロ
フラン、3-メチルテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等、及びこれらのフッ素化
化合物が挙げられる。
中でも、ジメトキシメタン、ジエトキシメタン、エトキシメトキシメタン、エチレング
リコールジ-n-プロピルエーテル、エチレングリコールジ-n-ブチルエーテル、ジエ
チレングリコールジメチルエーテルが、リチウムイオンへの溶媒和能力が高く、イオン解
離性を向上させる点で好ましく、特に好ましくは、粘性が低く、高いイオン伝導度を与え
ることから、ジメトキシメタン、ジエトキシメタン、エトキシメトキシメタンである。
【0160】
エーテル系化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比
率で併用してもよい。
エーテル系化合物の配合量は、通常、非水溶媒100体積%中、好ましくは5体積%以
上、より好ましくは10体積%以上、更に好ましくは15体積%以上、また、好ましくは
70体積%以下、より好ましくは60体積%以下、更に好ましくは50体積%以下である
。この範囲であれば、鎖状エーテルのリチウムイオン解離度の向上と粘度低下に由来する
イオン伝導度の向上効果を確保しやすく、負極活物質が炭素質材料の場合、鎖状エーテル
がリチウムイオンと共に共挿入されて容量が低下するといった事態を回避しやすい。
【0161】
1-4-5.スルホン系化合物
本発明に係るスルホン系化合物としては、炭素数3~6の環状スルホン、及び炭素数2
~6の鎖状スルホンが好ましい。1分子中のスルホニル基の数は、1又は2であることが
好ましい。
炭素数3~6の環状スルホンとしては、モノスルホン化合物であるトリメチレンスルホ
ン類、テトラメチレンスルホン類、ヘキサメチレンスルホン類;
ジスルホン化合物であるトリメチレンジスルホン類、テトラメチレンジスルホン類、ヘ
キサメチレンジスルホン類等が挙げられる。
【0162】
中でも誘電率と粘性の観点から、テトラメチレンスルホン類、テトラメチレンジスルホ
ン類、ヘキサメチレンスルホン類、ヘキサメチレンジスルホン類がより好ましく、テトラ
メチレンスルホン類(スルホラン類)が特に好ましい。
スルホラン類としては、スルホラン及び/又はスルホラン誘導体(以下、スルホランも
含めて「スルホラン類」と記載する場合がある)が好ましい。スルホラン誘導体としては
、スルホラン環を構成する炭素原子上に結合した水素原子の1以上がフッ素原子やアルキ
ル基で置換されたものが好ましい。
【0163】
中でも、2-メチルスルホラン、3-メチルスルホラン、2-フルオロスルホラン、3
-フルオロスルホラン、2,2-ジフルオロスルホラン、2,3-ジフルオロスルホラン
、2,4-ジフルオロスルホラン、2,5-ジフルオロスルホラン、3,4-ジフルオロ
スルホラン、2-フルオロ-3-メチルスルホラン、2-フルオロ-2-メチルスルホラ
ン、3-フルオロ-3-メチルスルホラン、3-フルオロ-2-メチルスルホラン、4-
フルオロ-3-メチルスルホラン、4-フルオロ-2-メチルスルホラン、5-フルオロ
-3-メチルスルホラン、5-フルオロ-2-メチルスルホラン、2-フルオロメチルス
ルホラン、3-フルオロメチルスルホラン、2-ジフルオロメチルスルホラン、3-ジフ
ルオロメチルスルホラン、2-トリフルオロメチルスルホラン、3-トリフルオロメチル
スルホラン、2-フルオロ-3-(トリフルオロメチル)スルホラン、3-フルオロ-3
-(トリフルオロメチル)スルホラン、4-フルオロ-3-(トリフルオロメチル)スル
ホラン、5-フルオロ-3-(トリフルオロメチル)スルホラン等が、イオン伝導度が高
く、入出力特性が高い点で好ましい。
【0164】
また、炭素数2~6の鎖状スルホンとしては、
ジメチルスルホン、エチルメチルスルホン、ジエチルスルホン、n-プロピルメチルス
ルホン、n-プロピルエチルスルホン、ジ-n-プロピルスルホン、イソプロピルメチル
スルホン、イソプロピルエチルスルホン、ジイソプロピルスルホン、n-ブチルメチルス
ルホン、n-ブチルエチルスルホン、tert-ブチルメチルスルホン、tert-ブチ
ルエチルスルホン、モノフルオロメチルメチルスルホン、ジフルオロメチルメチルスルホ
ン、トリフルオロメチルメチルスルホン、モノフルオロエチルメチルスルホン、ジフルオ
ロエチルメチルスルホン、トリフルオロエチルメチルスルホン、ペンタフルオロエチルメ
チルスルホン、エチルモノフルオロメチルスルホン、エチルジフルオロメチルスルホン、
エチルトリフルオロメチルスルホン、パーフルオロエチルメチルスルホン、エチルトリフ
ルオロエチルスルホン、エチルペンタフルオロエチルスルホン、ジ(トリフルオロエチル
)スルホン、パーフルオロジエチルスルホン、フルオロメチル-n-プロピルスルホン、
ジフルオロメチル-n-プロピルスルホン、トリフルオロメチル-n-プロピルスルホン
、フルオロメチルイソプロピルスルホン、ジフルオロメチルイソプロピルスルホン、トリ
フルオロメチルイソプロピルスルホン、トリフルオロエチル-n-プロピルスルホン、ト
リフルオロエチルイソプロピルスルホン、ペンタフルオロエチル-n-プロピルスルホン
、ペンタフルオロエチルイソプロピルスルホン、トリフルオロエチル-n-ブチルスルホ
ン、トリフルオロエチル-tert-ブチルスルホン、ペンタフルオロエチル-n-ブチ
ルスルホン、ペンタフルオロエチル-tert-ブチルスルホン等が挙げられる。
【0165】
中でも、ジメチルスルホン、エチルメチルスルホン、ジエチルスルホン、n-プロピル
メチルスルホン、イソプロピルメチルスルホン、n-ブチルメチルスルホン、tert-
ブチルメチルスルホン、モノフルオロメチルメチルスルホン、ジフルオロメチルメチルス
ルホン、トリフルオロメチルメチルスルホン、モノフルオロエチルメチルスルホン、ジフ
ルオロエチルメチルスルホン、トリフルオロエチルメチルスルホン、ペンタフルオロエチ
ルメチルスルホン、エチルモノフルオロメチルスルホン、エチルジフルオロメチルスルホ
ン、エチルトリフルオロメチルスルホン、エチルトリフルオロエチルスルホン、エチルペ
ンタフルオロエチルスルホン、トリフルオロメチル-n-プロピルスルホン、トリフルオ
ロメチルイソプロピルスルホン、トリフルオロエチル-n-ブチルスルホン、トリフルオ
ロエチル-tert-ブチルスルホン、トリフルオロメチル-n-ブチルスルホン、トリ
フルオロメチル-tert-ブチルスルホン等はイオン伝導度が高く、入出力特性が高い
点で好ましい。
【0166】
スルホン系化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比
率で併用してもよい。
スルホン系化合物の配合量は、通常、非水溶媒100体積%中、好ましくは0.3体積
%以上、より好ましくは1体積%以上、更に好ましくは5体積%以上であり、また、好ま
しくは40体積%以下、より好ましくは35体積%以下、更に好ましくは30体積%以下
である。この範囲であれば、サイクル特性や保存特性等の耐久性の向上効果が得られやす
く、また、非水系電解液の粘度を適切な範囲とし、電気伝導率の低下を回避することがで
き、エネルギーデバイスの充放電を高電流密度で行う場合に、充放電容量維持率が低下す
るといった事態を回避しやすい。
【0167】
1-4-6.非水溶媒の組成
本発明の非水溶媒として、上記例示した非水溶媒1種を単独で用いてもよく、2種以上
を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
例えば、非水溶媒の好ましい組合せの1つとして、環状カーボネート(ただし、フッ素
含有環状カーボネートを除く。)と鎖状カーボネートを主体とする組合せが挙げられる。
【0168】
中でも、非水溶媒に占める環状カーボネートと鎖状カーボネートとの合計が、好ましく
は70体積%以上、より好ましくは80体積%以上、更に好ましくは90体積%以上であ
り、かつ環状カーボネートと鎖状カーボネートとの合計に対する環状カーボネートの割合
が好ましくは5体積%以上、より好ましくは10体積%以上、更に好ましくは15体積%
以上であり、また、好ましくは50体積%以下、より好ましくは35体積%以下、更に好
ましくは30体積%以下、特に好ましくは25体積%以下である。
【0169】
これらの非水溶媒の組み合わせを用いると、これを用いて作製された電池のサイクル特
性と高温保存特性(特に、高温保存後の残存容量及び高負荷放電容量)のバランスが良く
なることがある。
例えば、環状カーボネートと鎖状カーボネートの好ましい組み合わせとしては、
エチレンカーボネートとジメチルカーボネート、エチレンカーボネートとジエチルカー
ボネート、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネート、エチレンカーボネートと
ジメチルカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとジメチルカーボ
ネートとエチルメチルカーボネート、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとエ
チルメチルカーボネート、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカー
ボネートとエチルメチルカーボネート等が挙げられる。
【0170】
環状カーボネートと鎖状カーボネートとの組み合わせの中で、鎖状カーボネートとして
非対称鎖状アルキルカーボネート類を含有するものが更に好ましく、特に、エチレンカー
ボネートとジメチルカーボネートとエチルメチルカーボネート、エチレンカーボネートと
ジエチルカーボネートとエチルメチルカーボネート、エチレンカーボネートとジメチルカ
ーボネートとジエチルカーボネートとエチルメチルカーボネートといったエチレンカーボ
ネートと対称鎖状カーボネート類と非対称鎖状カーボネート類を含有するものが、サイク
ル特性と大電流放電特性のバランスが良いので好ましい。
【0171】
これらの中でも、非対称鎖状カーボネート類がエチルメチルカーボネートであるのが好
ましく、又、鎖状カーボネートのアルキル基は炭素数1~2が好ましい。
これらのエチレンカーボネートと鎖状カーボネート類との組み合わせに、更にプロピレ
ンカーボネートを加えた組み合わせも、好ましい組み合わせとして挙げられる。
プロピレンカーボネートを含有する場合には、エチレンカーボネートとプロピレンカー
ボネートの体積比は、99:1~40:60が好ましく、特に好ましくは95:5~50
:50である。更に、非水溶媒全体に占めるプロピレンカーボネートの割合は、好ましく
は0.1体積%以上、より好ましくは1体積%以上、更に好ましくは2体積%以上、また
、好ましくは20体積%以下、より好ましくは8体積%以下、更に好ましくは5体積%以
下である。
【0172】
この濃度範囲でプロピレンカーボネートを含有すると、エチレンカーボネートと鎖状カ
ーボネートとの組み合わせの特性を維持したまま、更に低温特性が優れることがあるので
好ましい。
非水溶媒中にジメチルカーボネートを含有する場合は、全非水溶媒中に占めるジメチル
カーボネートの割合が、好ましくは10体積%以上、より好ましくは20体積%以上、更
に好ましくは25体積%以上、特に好ましくは30体積%以上であり、また、好ましくは
90体積%以下、より好ましくは80体積%以下、更に好ましくは75体積%以下、特に
好ましくは、70体積%以下となる範囲で含有させると、電池の負荷特性が向上すること
がある。
【0173】
これらの中でも、ジメチルカーボネートとエチルメチルカーボネートを含有し、ジメチ
ルカーボネートの含有割合をエチルメチルカーボネートの含有割合よりも多くすることに
より、電解液の電気伝導度を維持できながら、高温保存後の電池特性が向上することがあ
り好ましい。
全非水溶媒中に占めるジメチルカーボネートのエチルメチルカーボネートに対する体積
比(ジメチルカーボネート/エチルメチルカーボネート)は、電解液の電気伝導度の向上
と保存後の電池特性を向上させる点で、1.1以上が好ましく、1.5以上がより好まし
く、2.5以上が更に好ましい。上記体積比(ジメチルカーボネート/エチルメチルカー
ボネート)は、低温での電池特性を向上の点で、40以下が好ましく、20以下がより好
ましく、10以下が更に好ましく、8以下が特に好ましい。
【0174】
上記環状カーボネート(ただし、フッ素含有環状カーボネートを除く。)と鎖状カーボ
ネートを主体とする組合せにおいては、環状カルボン酸エステル類、鎖状カルボン酸エス
テル類、環状エーテル類、鎖状エーテル類、含硫黄有機溶媒、含燐有機溶媒、芳香族含フ
ッ素溶媒等、他の溶媒を混合してもよい。
【0175】
1-5.助剤
本発明の非水系電解液において、上記化合物以外に、目的に応じて適宜助剤を用いても
よい。助剤としては、以下に示されるその他の助剤等が挙げられる。
【0176】
1-5-1.その他の助剤
本発明の非水系電解液には、公知のその他の助剤を用いることができる。その他の助剤
としては、エリスリタンカーボネート、スピロ-ビス-ジメチレンカーボネート、メトキ
シエチル-メチルカーボネート等のカーボネート化合物;無水コハク酸、無水グルタル酸
、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水グルタコン酸、無水イタコン酸、無水ジグリ
コール酸、シクロヘキサンジカルボン酸無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水
物及びフェニルコハク酸無水物等のカルボン酸無水物;3,9-ジビニル-2,4,8,
10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン等のスピロ化合物;N,N-ジメチルメ
タンスルホンアミド、N,N-ジエチルメタンスルホンアミド等の含硫黄化合物;亜リン
酸トリメチル、亜リン酸トリエチル、亜リン酸トリフェニル、リン酸トリメチル、リン酸
トリエチル、リン酸トリフェニル、ジメチルホスフィン酸メチル、ジエチルホスフィン酸
エチル、トリメチルホスフィンオキシド、トリエチルホスフィンオキシド等の含燐化合物
;1-メチル-2-ピロリジノン、1-メチル-2-ピペリドン、3-メチル-2-オキ
サゾリジノン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン及びN-メチルスクシンイミド
等の含窒素化合物;ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、シクロヘプタン等の炭化水素
化合物;2-プロピニル 2-(ジエトキシホスホリル)アセテート、1-メチル-2-
プロピニル 2-(ジエトキシホスホリル)アセテート、1,1-ジメチル-2-プロピ
ニル 2-(ジエトキシホスホリル)アセテート、ペンタフルオロフェニルメタンスルホ
ネート、ペンタフルオロフェニルトリフルオロメタンスルホネート、酢酸ペンタフルオロ
フェニル、トリフルオロ酢酸ペンタフルオロフェニル、メチルペンタフルオロフェニルカ
ーボネート、2-(メタンスルホニルオキシ)プロピオン酸2-プロピニル、2-(メタ
ンスルホニルオキシ)プロピオン酸2-メチル、2-(メタンスルホニルオキシ)プロピ
オン酸2-エチル、メタンスルホニルオキシ酢酸2-プロピニル、メタンスルホニルオキ
シ酢酸2-メチル、メタンスルホニルオキシ酢酸2-エチル、リチウム エチル メチル
オキシカルボニルホスホネート、リチウム エチル エチルオキシカルボニルホスホネー
ト、リチウム エチル 2-プロピニルオキシカルボニルホスホネート、リチウム エチ
ル 1-メチル-2-プロピニルオキシカルボニルホスホネート、リチウム エチル 1
,1-ジメチル-2-プロピニルオキシカルボニルホスホネート、リチウム メチル ス
ルフェート、リチウム エチル スルフェート、リチウム 2-プロピニル スルフェー
ト、リチウム 1-メチル-2-プロピニル スルフェート、リチウム 1,1-ジメチ
ル-2-プロピニル スルフェート、リチウム 2,2,2-トリフルオロエチル スル
フェート、メチル トリメチルシリル スルフェート、エチル トリメチルシリル スル
フェート、2-プロピニル トリメチルシリル スルフェート、ジリチウム エチレン
ジスルフェート、2-ブチン-1,4-ジイル ジメタンスルホネート、2-ブチン-1
,4-ジイル ジエタンスルホネート、2-ブチン-1,4-ジイル ジホルメート、2
-ブチン-1,4-ジイル ジアセテート、2-ブチン-1,4-ジイル ジプロピオネ
ート、4-ヘキサジイン-1,6-ジイル ジメタンスルホネート、2-プロピニル メ
タンスルホネート、1-メチル-2-プロピニル メタンスルホネート、1,1-ジメチ
ル-2-プロピニル メタンスルホネート、2-プロピニル エタンスルホネート、2-
プロピニル ビニルスルホネート、メチル 2-プロピニル カーボネート、エチル 2
-プロピニル カーボネート、ビス(2-プロピニル) カーボネート、メチル 2-プ
ロピニル オギザレート、エチル 2-プロピニル オギザレート、ビス(2-プロピニ
ル)オギザレート、2-プロピニル アセテート、2-プロピニル ホルメート、2-プ
ロピニル メタクリレート、ジ(2-プロピニル) グルタレート、2,2-ジオキシド
-1,2-オキサチオラン-4-イル アセテート、2,2-ジオキシド-1,2-オキ
サチオラン-4-イル プロピオネート、5-メチル-1,2-オキサチオラン-4-オ
ン 2,2-ジオキシド、5、5-ジメチル-1,2-オキサチオラン-4-オン 2,
2-ジオキシド、2-イソシアナトエチル アクリレート、2-イソシアナトエチル メ
タクリレート、2-イソシアナトエチル クロトネート、2-(2-イソシアナトエトキ
シ)エチル アクリレート、2-(2-イソシアナトエトキシ)エチル メタクリレート
、2-(2-イソシアナトエトキシ)エチル クロトネート、2-アリル無水こはく酸、
2-(1-ペンテン-3-イル)無水こはく酸、2-(1-ヘキセン-3-イル)無水こ
はく酸、2-(1-ヘプテン-3-イル)無水こはく酸、2-(1-オクテン-3-イル
)無水こはく酸、2-(1-ノネン-3-イル)無水こはく酸、2-(3-ブテン-2-
イル)無水こはく酸、2-(2-メチルアリル)無水こはく酸、2-(3-メチル-3-
ブテン-2-イル)無水こはく酸等が挙げられる。これらは1種を単独で用いても、2種
以上を併用してもよい。これらの助剤を添加することにより、高温保存後の容量維持特性
やサイクル特性を向上させることができる。
【0177】
その他の助剤の配合量は、特に制限されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意
である。その他の助剤は、非水系電解液100質量%中、好ましくは、0.01質量%以
上であり、また、5質量%以下である。この範囲であれば、その他助剤の効果が十分に発
現させやすく、高負荷放電特性等の電池の特性が低下するといった事態も回避しやすい。
その他の助剤の配合量は、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.2質量
%以上であり、また、より好ましくは3質量%以下、更に好ましくは1質量%以下である
【0178】
2.非水系電解液を用いたエネルギーデバイス
本発明の非水系電解液を用いたエネルギーデバイスは、正極と、負極と、該非水系電解
液が電解質及び非水溶媒とともに、フッ素含有環状カーボネートと、式(1)で表される
化合物とを含有することを特徴とする。
本発明の非水系電解液を用いたエネルギーデバイスは、リチウム電池、多価カチオン電
池、金属空気二次電池、上記以外のs-ブロック金属を用いた二次電池、リチウムイオン
キャパシタ、電気二重層キャパシタが好ましく、リチウム電池とリチウムイオンキャパシ
タがより好ましく、リチウム電池が更に好ましい。尚、これらのエネルギーデバイスに用
いられる非水系電解液は、高分子やフィラー等で疑似的に固体化された、所謂ゲル電解質
であることも好ましい。
【0179】
2-1.リチウム電池
本発明の非水系電解液を用いたリチウム電池は、集電体及び該集電体上に設けられた正
極活物質層を有する正極と、集電体及び該集電体上に設けられた負極活物質層を有しかつ
イオンを吸蔵及び放出し得る負極と、上述した本発明の非水系電解液とを備えるものであ
る。尚、本発明におけるリチウム電池とは、リチウム一次電池とリチウム二次電池の総称
である。
【0180】
2-1-1.電池構成
本発明のリチウム電池は、上述した本発明の非水系電解液以外の構成については、従来
公知のリチウム電池と同様である。通常は、本発明の非水系電解液が含浸されている多孔
膜(セパレータ)を介して正極と負極とが積層され、これらがケース(外装体)に収納さ
れた形態を有する。従って、本発明のリチウム電池の形状は特に制限されるものではなく
、円筒型、角形、ラミネート型、コイン型、大型等の何れであってもよい。
【0181】
2-1-2.非水系電解液
非水系電解液としては、上述の本発明の非水系電解液を用いる。なお、本発明の趣旨を
逸脱しない範囲において、本発明の非水系電解液に対し、その他の非水系電解液を配合し
て用いることも可能である。
【0182】
2-1-3.負極
本発明に係る負極は、集電体上に負極活物質層を有するものであり、負極活物質層は負
極活物質を含有する。以下、負極活物質について述べる。
負極活物質は電気化学的に金属イオンを放出可能なものであれば、特に制限はない。リ
チウム一次電池に用いられる負極活物質としては、電気化学的にリチウムイオンを放出可
能なものであれば特に制限はない。その具体例としては金属リチウムが挙げられる。リチ
ウム二次電池に用いられる負極活物質としては、電気化学的に金属イオン(例えば、リチ
ウムイオン)を吸蔵・放出可能なものであれば、特に制限はない。リチウムイオンを放出
可能な負極活物質の具体例としては、炭素質材料、合金系材料、リチウム含有金属複合酸
化物材料等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、また2種以上を任意に組
み合わせて併用してもよい。
【0183】
<負極活物質>
負極活物質としては、炭素質材料、合金系材料、リチウム含有金属複合酸化物材料等が
挙げられる。
負極活物質として用いられる炭素質材料としては、
(1)天然黒鉛、
(2)人造炭素質物質及び人造黒鉛質物質を400~3200℃の範囲で1回以上熱処理
した炭素質材料、
(3)負極活物質層が少なくとも2種以上の異なる結晶性を有する炭素質からなり、かつ
/又はその異なる結晶性の炭素質が接する界面を有している炭素質材料、
(4)負極活物質層が少なくとも2種以上の異なる配向性を有する炭素質からなり、かつ
/又はその異なる配向性の炭素質が接する界面を有している炭素質材料、
から選ばれるものが、初期不可逆容量、高電流密度充放電特性のバランスがよく好ましい
。また、(1)~(4)の炭素質材料は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の
組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0184】
上記(2)の人造炭素質物質及び人造黒鉛質物質としては、天然黒鉛、石炭系コークス
、石油系コークス、石炭系ピッチ、石油系ピッチ及びこれらピッチを酸化処理したもの、
ニードルコークス、ピッチコークス及びこれらを一部黒鉛化した炭素材、ファーネスブラ
ック、アセチレンブラック、ピッチ系炭素繊維等の有機物の熱分解物、炭化可能な有機物
及びこれらの炭化物、又は炭化可能な有機物をベンゼン、トルエン、キシレン、キノリン
、n-へキサン等の低分子有機溶媒に溶解させた溶液及びこれらの炭化物等が挙げられる
【0185】
負極活物質として用いられる合金系材料としては、リチウムを吸蔵・放出可能であれば
、リチウム単体、リチウム合金を形成する単体金属及び合金、又はそれらの酸化物、炭化
物、窒化物、ケイ化物、硫化物若しくはリン化物等の化合物のいずれであってもよく、特
に制限されない。リチウム合金を形成する単体金属及び合金としては、13族及び14族
の金属・半金属元素(即ち炭素を除く)を含む材料であることが好ましく、より好ましく
はアルミニウム、ケイ素及びスズ(以下、「特定金属元素」と略記する場合がある)の単
体金属及びこれら原子を含む合金又は化合物である。これらは、1種を単独で用いてもよ
く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0186】
特定金属元素から選ばれる少なくとも1種の原子を有する負極活物質としては、いずれ
か1種の特定金属元素の金属単体、2種以上の特定金属元素からなる合金、1種又は2種
以上の特定金属元素とその他の1種又は2種以上の金属元素とからなる合金、ならびに、
1種又は2種以上の特定金属元素を含有する化合物、及びその化合物の酸化物、炭化物、
窒化物、ケイ化物、硫化物若しくはリン化物等の複合化合物が挙げられる。負極活物質と
してこれらの金属単体、合金又は金属化合物を用いることで、電池の高容量化が可能であ
る。
【0187】
また、これらの複合化合物が、金属単体、合金又は非金属元素等の数種の元素と複雑に
結合した化合物も挙げられる。具体的には、例えばケイ素やスズでは、これらの元素と負
極として動作しない金属との合金を用いることができる。例えば、スズの場合、スズとケ
イ素以外で負極として作用する金属と、更に負極として動作しない金属と、非金属元素と
の組み合わせで5~6種の元素を含むような複雑な化合物も用いることができる。
【0188】
これらの負極活物質の中でも、電池にしたときに単位質量当りの容量が大きいことから
、いずれか1種の特定金属元素の金属単体、2種以上の特定金属元素の合金、特定金属元
素の酸化物、炭化物、窒化物等が好ましく、特に、ケイ素及び/又はスズの金属単体、合
金、酸化物や炭化物、窒化物等が、単位質量当りの容量及び環境負荷の観点から好ましい
【0189】
負極活物質として用いられるリチウム含有金属複合酸化物材料としては、リチウムを吸
蔵・放出可能であれば、特に制限されないが、高電流密度充放電特性の点からチタン及び
リチウムを含有する材料が好ましく、より好ましくはチタンを含むリチウム含有複合金属
酸化物材料が好ましく、更にリチウムとチタンの複合酸化物(以下、「リチウムチタン複
合酸化物」と略記する場合がある)である。即ちスピネル構造を有するリチウムチタン複
合酸化物を、エネルギーデバイス用負極活物質に含有させて用いると、出力抵抗が大きく
低減するので特に好ましい。
【0190】
また、リチウムチタン複合酸化物のリチウムやチタンが、他の金属元素、例えば、Na
、K、Co、Al、Fe、Ti、Mg、Cr、Ga、Cu、Zn及びNbからなる群より
選ばれる少なくとも1種の元素で置換されているものも好ましい。
上記金属酸化物が、式(A)で表されるリチウムチタン複合酸化物であり、式(A)中
、0.7≦x≦1.5、1.5≦y≦2.3、0≦z≦1.6であることが、リチウムイ
オンのドープ・脱ドープの際の構造が安定であることから好ましい。
【0191】
LiTi (A)
[式(A)中、Mは、Na、K、Co、Al、Fe、Ti、Mg、Cr、Ga、Cu、Z
n及びNbからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を表わす。]
上記の式(A)で表される組成の中でも、
(a)1.2≦x≦1.4、1.5≦y≦1.7、z=0
(b)0.9≦x≦1.1、1.9≦y≦2.1、z=0
(c)0.7≦x≦0.9、2.1≦y≦2.3、z=0
の構造が、電池性能のバランスが良好なため特に好ましい。
上記化合物の特に好ましい代表的な組成は、(a)ではLi4/3Ti5/3、(
b)ではLiTi、(c)ではLi4/5Ti11/5である。また、Z≠
0の構造については、例えば、Li4/3Ti4/3Al1/3が好ましいものとし
て挙げられる。
【0192】
<負極の構成と作製法>
電極の製造は、本発明の効果を著しく損なわない限り、公知のいずれの方法を用いるこ
とができる。例えば、負極活物質に、バインダー、溶媒、必要に応じて、増粘剤、導電材
、充填材等を加えてスラリーとし、これを集電体に塗布、乾燥した後にプレスすることに
よって形成することができる。
また、合金系材料を用いる場合には、蒸着法、スパッタ法、メッキ法等の手法により、
上述の負極活物質を含有する薄膜層(負極活物質層)を形成する方法も用いられる。
【0193】
(集電体)
負極活物質を保持させる集電体としては、公知のものを任意に用いることができる。負
極の集電体としては、アルミニウム、銅、ニッケル、ステンレス鋼、ニッケルメッキ鋼等
の金属材料が挙げられるが、加工し易さとコストの点から特に銅が好ましい。
【0194】
また、集電体の形状は、集電体が金属材料の場合は、例えば、金属箔、金属円柱、金属
コイル、金属板、金属薄膜、エキスパンドメタル、パンチメタル、発泡メタル等が挙げら
れる。中でも、好ましくは金属薄膜、より好ましくは銅箔であり、更に好ましくは圧延法
による圧延銅箔と、電解法による電解銅箔があり、どちらも集電体として用いることがで
きる。
集電体の厚さは、電池容量の確保、取扱い性の観点から、通常1μm以上、好ましくは
5μm以上であり、通常100μm以下、好ましくは50μm以下である。
【0195】
(集電体と負極活物質層との厚さの比)
集電体と負極活物質層の厚さの比は特に制限されないが、「(非水系電解液注液直前の
片面の負極活物質層厚さ)/(集電体の厚さ)」の値が、150以下が好ましく、20以
下が更に好ましく、10以下が特に好ましく、また、0.1以上が好ましく、0.4以上
が更に好ましく、1以上が特に好ましい。集電体と負極活物質層の厚さの比が、上記範囲
であると、電池容量を確保することができるとともに、高電流密度充放電時における集電
体の発熱を抑制することができる。
【0196】
(結着剤)
負極活物質を結着するバインダーとしては、非水系電解液や電極製造時に用いる溶媒に
対して安定な材料であれば、特に制限されない。
具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ
メチルメタクリレート、芳香族ポリアミド、ポリイミド、セルロース、ニトロセルロース
等の樹脂系高分子;SBR(スチレンブタジエンゴム)、イソプレンゴム、ブタジエンゴ
ム、フッ素ゴム、NBR(アクリロニトリル・ブタジエンゴム)、エチレン・プロピレン
ゴム等のゴム状高分子;スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体又はその水素
添加物;EPDM(エチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体)、スチレン・エチレン
・ブタジエン・スチレン共重合体、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体又
はその水素添加物等の熱可塑性エラストマー状高分子;シンジオタクチック-1,2-ポ
リブタジエン、ポリ酢酸ビニル、エチレン・酢酸ビニル共重合体、プロピレン・α-オレ
フィン共重合体等の軟質樹脂状高分子;ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチ
レン、フッ素化ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン・エチレン共重合体
等のフッ素系高分子;アルカリ金属イオン(特にリチウムイオン)のイオン伝導性を有す
る高分子組成物等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組
み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0197】
負極活物質に対するバインダーの割合は、0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%
以上が更に好ましく、0.6質量%以上が特に好ましく、また、20質量%以下が好まし
く、15質量%以下がより好ましく、10質量%以下が更に好ましく、8質量%以下が特
に好ましい。負極活物質に対するバインダーの割合が、上記範囲であると、電池容量と負
極電極の強度を十分に確保することができる。
【0198】
特に、SBRに代表されるゴム状高分子を主要成分に含有する場合には、負極活物質に
対するバインダーの割合は、通常0.1質量%以上であり、0.5質量%以上が好ましく
、0.6質量%以上が更に好ましく、また、通常5質量%以下であり、3質量%以下が好
ましく、2質量%以下が更に好ましい。また、ポリフッ化ビニリデンに代表されるフッ素
系高分子を主要成分に含有する場合には負極活物質に対する割合は、通常1質量%以上で
あり、2質量%以上が好ましく、3質量%以上が更に好ましく、また、通常15質量%以
下であり、10質量%以下が好ましく、8質量%以下が更に好ましい。
【0199】
(スラリー形成溶媒)
スラリーを形成するための溶媒としては、負極活物質、バインダー、ならびに必要に応
じて使用される増粘剤及び導電材を溶解又は分散することが可能な溶媒であれば、その種
類に特に制限はなく、水系溶媒と有機系溶媒のどちらを用いてもよい。
水系溶媒としては、水、アルコール等が挙げられ、有機系溶媒としてはN-メチルピロ
リドン(NMP)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン
、シクロヘキサノン、酢酸メチル、アクリル酸メチル、ジエチルトリアミン、N,N-ジ
メチルアミノプロピルアミン、テトラヒドロフラン(THF)、トルエン、アセトン、ジ
エチルエーテル、ヘキサメチルホスファルアミド、ジメチルスルホキシド、ベンゼン、キ
シレン、キノリン、ピリジン、メチルナフタレン、ヘキサン等が挙げられる。
特に水系溶媒を用いる場合、増粘剤に併せて分散剤等を含有させ、SBR等のラテック
スを用いてスラリー化することが好ましい。なお、これらの溶媒は、1種を単独で用いて
も、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0200】
(増粘剤)
増粘剤は、通常、スラリーの粘度を調製するために使用される。増粘剤としては、特に
制限されないが、具体的には、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロ
キシメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、酸化スターチ、リン
酸化スターチ、カゼイン及びこれらの塩等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いて
も、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0201】
更に増粘剤を用いる場合には、負極活物質に対する増粘剤の割合は、通常0.1質量%
以上であり、0.5質量%以上が好ましく、0.6質量%以上が更に好ましく、また、通
常5質量%以下であり、3質量%以下が好ましく、2質量%以下が更に好ましい。負極活
物質に対する増粘剤の割合が、上記範囲であると、電池容量の低下や抵抗の増大を抑制で
きるとともに、良好な塗布性を確保することができる。
【0202】
(電極密度)
負極活物質を電極化した際の電極構造は特に制限されないが、集電体上に存在している
負極活物質の密度は、1g・cm-3以上が好ましく、1.2g・cm-3以上が更に好
ましく、1.3g・cm-3以上が特に好ましく、また、2.2g・cm-3以下が好ま
しく、2.1g・cm-3以下がより好ましく、2.0g・cm-3以下が更に好ましく
、1.9g・cm-3以下が特に好ましい。集電体上に存在している負極活物質の密度が
、上記範囲であると、負極活物質粒子の破壊を防止して、初期不可逆容量の増加や、集電
体/負極活物質界面付近への非水系電解液の浸透性低下による高電流密度充放電特性悪化
を抑制することができる一方、電池容量の低下や抵抗の増大を抑制することができる。
【0203】
(負極板の厚さ)
負極板の厚さは用いられる正極板に合わせて設計されるものであり、特に制限されない
が、芯材の金属箔厚さを差し引いた合材層の厚さは通常15μm以上、好ましくは20μ
m以上、より好ましくは30μm以上、また、通常300μm以下、好ましくは280μ
m以下、より好ましくは250μm以下が望ましい。
【0204】
(負極板の表面被覆)
また、上記負極板の表面に、これとは異なる組成の物質が付着したものを用いてもよい
。表面付着物質としては酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ジルコニウム
、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ホウ素、酸化アンチモン、酸化ビスマス等の
酸化物、硫酸リチウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシ
ウム、硫酸アルミニウム等の硫酸塩、炭酸リチウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム
等の炭酸塩等が挙げられる。
【0205】
2-1-4.正極
本発明に係る正極は、集電体上に正極活物質層を有するものであり、正極活物質層は正
極活物質を含有する。以下、正極活物質について述べる。
【0206】
<正極活物質>
(組成)
正極活物質は電気化学的に金属イオンを吸蔵可能なものであれば、特に制限はない。リ
チウム一次電池に用いられる正極活物質としては、電気化学的にリチウムイオンを吸蔵可
能なものであれば特に制限はない。その具体例としてはフッ化黒鉛、二酸化マンガン、塩
化チオニル、二硫化鉄、酸化銅が挙げられる。
【0207】
リチウム二次電池に用いられる正極活物質としては、電気化学的に金属イオン(例えば
、リチウムイオン)を吸蔵・放出可能なものであれば特に制限されないが、例えば、リチ
ウムと少なくとも1種の遷移金属を含有する物質が好ましい。具体例としては、リチウム
遷移金属複合酸化物、リチウム含有遷移金属リン酸化合物が挙げられる。これらは1種を
単独で用いてもよく、また2種以上を任意に組み合わせて併用してもよい。
【0208】
リチウム遷移金属複合酸化物の遷移金属としてはV、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、
Ni、Cu等が好ましく、具体例としては、LiCoO等のリチウム・コバルト複合酸
化物、LiNiO等のリチウム・ニッケル複合酸化物、LiMnO、LiMn
、LiMnO等のリチウム・マンガン複合酸化物、LiNi1/3Mn1/3Co
/3、LiNi0.5Mn0.3Co0.2等のリチウム・ニッケル・マンガン
・コバルト複合酸化物、これらのリチウム遷移金属複合酸化物の主体となる遷移金属原子
の一部をNa、K、B、F、Al、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Li、Ni、C
u、Zn、Mg、Ga、Zr、Si、Nb、Mo、Sn、W等の他の元素で置換したもの
等が挙げられる。置換されたものとしては、LiNi0.5Mn0.5、LiNi
.85Co0.10Al0.05、LiNi0.33Co0.33Mn0.33
、LiNi0.45Co0.10Al0.45、LiMn1.8Al0.2、L
iMn1.5Ni0.5等が挙げられる。
【0209】
リチウム含有遷移金属リン酸化合物の遷移金属としては、V、Ti、Cr、Mn、Fe
、Co、Ni、Cu等が好ましく、具体例としては、LiFePO、LiFe(P
、LiFeP等のリン酸鉄類、LiCoPO等のリン酸コバルト類、こ
れらのリチウム遷移金属リン酸化合物の主体となる遷移金属原子の一部をAl、Ti、V
、Cr、Mn、Fe、Co、Li、Ni、Cu、Zn、Mg、Ga、Zr、Nb、Si等
の他の元素で置換したもの等が挙げられる。
【0210】
また、正極活物質にリン酸リチウムを含ませると、連続充電特性が向上するので好まし
い。リン酸リチウムの使用に制限はないが、上記の正極活物質とリン酸リチウムを混合し
て用いることが好ましい。使用するリン酸リチウムの量は上記正極活物質とリン酸リチウ
ムの合計に対し、下限が、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以
上、更に好ましくは0.5質量%以上であり、上限が、好ましくは10質量%以下、より
好ましくは8質量%以下、更に好ましくは5質量%以下である。
【0211】
(表面被覆)
また、上記正極活物質の表面に、これとは異なる組成の物質が付着したものを用いても
よい。表面付着物質としては酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ジルコニ
ウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ホウ素、酸化アンチモン、酸化ビスマス
等の酸化物、硫酸リチウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カ
ルシウム、硫酸アルミニウム等の硫酸塩、炭酸リチウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシ
ウム等の炭酸塩、炭素等が挙げられる。
【0212】
これら表面付着物質は、例えば、溶媒に溶解又は懸濁させて該正極活物質に含浸添加、
乾燥する方法、表面付着物質前駆体を溶媒に溶解又は懸濁させて該正極活物質に含浸添加
後、加熱等により反応させる方法、正極活物質前駆体に添加して同時に焼成する方法等に
より該正極活物質表面に付着させることができる。なお、炭素を付着させる場合には、炭
素質を、例えば、活性炭等の形で後から機械的に付着させる方法も用いることもできる。
【0213】
表面付着物質の量としては、該正極活物質に対して質量で、下限として好ましくは0.
1ppm以上、より好ましくは1ppm以上、更に好ましくは10ppm以上、上限とし
て、好ましくは20%以下、より好ましくは10%以下、更に好ましくは5%以下で用い
られる。表面付着物質により、正極活物質表面での電解液の酸化反応を抑制することがで
き、電池寿命を向上させることができるが、その付着量が少なすぎる場合その効果は十分
に発現せず、多すぎる場合には、リチウムイオンの出入りを阻害するため抵抗が増加する
場合がある。
本発明においては、正極活物質の表面に、これとは異なる組成の物質が付着したものも
「正極活物質」ともいう。
【0214】
(形状)
正極活物質の粒子の形状は、従来用いられるような、塊状、多面体状、球状、楕円球状
、板状、針状、柱状等が挙げられる。また、一次粒子が凝集して、二次粒子を形成してい
てもよい。
【0215】
(正極活物質の製造法)
正極活物質の製造法としては、無機化合物の製造法として一般的な方法が用いられる。
特に球状ないし楕円球状の活物質を作製するには種々の方法が考えられるが、例えば、遷
移金属の原料物質を水等の溶媒中に溶解ないし粉砕分散して、攪拌をしながらpHを調節
して球状の前駆体を作製回収し、これを必要に応じて乾燥した後、LiOH、LiCO
、LiNO等のLi源を加えて高温で焼成して活物質を得る方法等が挙げられる。
【0216】
正極の製造のために、上記の正極活物質を単独で用いてもよく、異なる組成の1種以上
を、任意の組み合わせ又は比率で併用してもよい。この場合の好ましい組み合わせとして
は、LiCoOとLiNi0.33Co0.33Mn0.33等のLiMn
若しくはこのMnの一部を他の遷移金属等で置換したものとの組み合わせ、あるいは、L
iCoO若しくはこのCoの一部を他の遷移金属等で置換したものとの組み合わせが挙
げられる。
【0217】
<正極の構成と作製法>
以下に、正極の構成について述べる。本発明において、正極は、正極活物質と結着剤と
を含有する正極活物質層を、集電体上に形成して作製することができる。正極活物質を用
いる正極の製造は、常法により行うことができる。即ち、正極活物質と結着剤、ならびに
必要に応じて導電材及び増粘剤等を乾式で混合してシート状にしたものを正極集電体に圧
着するか、又はこれらの材料を液体媒体に溶解又は分散させてスラリーとして、これを正
極集電体に塗布し、乾燥することにより、正極活物質層を集電体上に形成されることによ
り正極を得ることができる。
【0218】
正極活物質の、正極活物質層中の含有量は、好ましくは80質量%以上、より好ましく
は82質量%以上、特に好ましくは84質量%以上である。また上限は、好ましくは99
質量%以下、より好ましくは98質量%以下である。上記範囲であると、正極活物質層中
の正極活物質の電気容量を確保できるとともに、正極の強度を保つことができる。塗布、
乾燥によって得られた正極活物質層は、正極活物質の充填密度を上げるために、ハンドプ
レス、ローラープレス等により圧密化することが好ましい。正極活物質層の密度は、下限
として好ましくは1.5g/cm以上、より好ましくは2g/cm、更に好ましくは
2.2g/cm以上であり、上限としては、好ましくは5g/cm以下、より好まし
くは4.5g/cm以下、更に好ましくは4g/cm以下の範囲である。上記範囲で
あると、良好な充放電特性が得られるとともに、電気抵抗の増大を抑制することができる
【0219】
(導電材)
導電材としては、公知の導電材を任意に用いることができる。具体例としては、銅、ニ
ッケル等の金属材料;天然黒鉛、人造黒鉛等の黒鉛(グラファイト);アセチレンブラッ
ク等のカーボンブラック;ニードルコークス等の無定形炭素等の炭素材料等が挙げられる
。なお、これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で
併用してもよい。導電材は、正極活物質層中に、通常0.01質量%以上、好ましくは0
.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上であり、また上限は、通常50質量%以下
、好ましくは30質量%以下、より好ましくは15質量%以下含有するように用いられる
。上記範囲であると、十分な導電性と電池容量を確保することができる。
【0220】
(結着剤)
正極活物質層の製造に用いる結着剤としては、特に限定されず、塗布法の場合は、電極
製造時に用いる液体媒体に対して溶解又は分散される材料であればよいが、具体例として
は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリ
レート、ポリイミド、芳香族ポリアミド、セルロース、ニトロセルロース等の樹脂系高分
子;SBR(スチレン-ブタジエンゴム)、NBR(アクリロニトリル-ブタジエンゴム
)、フッ素ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、エチレン-プロピレンゴム等のゴム
状高分子;スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体又はその水素添加物、EP
DM(エチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体)、スチレン・エチレン・ブタジエン
・エチレン共重合体、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体又はその水素添
加物等の熱可塑性エラストマー状高分子;シンジオタクチック-1,2-ポリブタジエン
、ポリ酢酸ビニル、エチレン・酢酸ビニル共重合体、プロピレン・α-オレフィン共重合
体等の軟質樹脂状高分子;ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチ
レン、フッ素化ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン・エチレン共重合体
等のフッ素系高分子;アルカリ金属イオン(特にリチウムイオン)のイオン伝導性を有す
る高分子組成物等が挙げられる。なお、これらの物質は、1種を単独で用いてもよく、2
種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0221】
正極活物質層中の結着剤の割合は、通常0.1質量%以上、好ましくは1質量%以上、
更に好ましくは1.5質量%以上であり、上限は、通常80質量%以下、好ましくは60
質量%以下、更に好ましくは40質量%以下、最も好ましくは10質量%以下である。結
着剤の割合が低すぎると、正極活物質を十分保持できずに正極の機械的強度が不足し、サ
イクル特性等の電池性能を悪化させてしまう場合がある。一方で、高すぎると、電池容量
や導電性の低下につながる場合がある。
【0222】
(スラリー形成溶媒)
スラリーを形成するための溶媒としては、正極活物質、導電材、結着剤及び必要に応じ
て使用される増粘剤を溶解又は分散することが可能な溶媒であれば、その種類に特に制限
はなく、水系溶媒と有機系溶媒のどちらを用いてもよい。水系媒体としては、水、アルコ
ールと水との混合媒等が挙げられる。有機系媒体としては、ヘキサン等の脂肪族炭化水素
類;ベンゼン、トルエン、キシレン、メチルナフタレン等の芳香族炭化水素類;キノリン
、ピリジン等の複素環化合物;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケ
トン類;酢酸メチル、アクリル酸メチル等のエステル類;ジエチレントリアミン、N,N
-ジメチルアミノプロピルアミン等のアミン類;ジエチルエーテル、プロピレンオキシド
、テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル類;N-メチルピロリドン(NMP)、ジ
メチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;ヘキサメチルホスファルアミ
ド、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒等が挙げられる。
【0223】
特に水系媒体を用いる場合、増粘剤と、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)等のラテ
ックスを用いてスラリー化するのが好ましい。増粘剤は、通常、スラリーの粘度を調製す
るために使用される。増粘剤としては、特に制限はないが、具体的には、カルボキシメチ
ルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、エチルセルロース、ポ
リビニルアルコール、酸化スターチ、リン酸化スターチ、カゼイン及びこれらの塩等が挙
げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併
用してもよい。更に増粘剤を添加する場合には、活物質に対する増粘剤の割合は、0.1
質量%以上、好ましくは0.2質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上であり、ま
た、上限としては5質量%以下、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2質量%以下
の範囲である。上記範囲であると、良好な塗布性が得られるとともに、電池容量の低下や
抵抗の増大を抑制することができる。
【0224】
(集電体)
正極集電体の材質としては特に制限されず、公知のものを任意に用いることができる。
具体例としては、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケルメッキ、チタン、タンタル等の
金属材料;カーボンクロス、カーボンペーパー等の炭素材料が挙げられる。中でも金属材
料、特にアルミニウムが好ましい。
【0225】
集電体の形状としては、金属材料の場合、金属箔、金属円柱、金属コイル、金属板、金
属薄膜、エキスパンドメタル、パンチメタル、発泡メタル等が挙げられ、炭素材料の場合
、炭素板、炭素薄膜、炭素円柱等が挙げられる。これらのうち、金属薄膜が好ましい。な
お、薄膜は適宜メッシュ状に形成してもよい。薄膜の厚さは任意であるが、集電体として
の強度及び取扱い性の観点から、通常1μm以上、好ましくは3μm以上、より好ましく
は5μm以上、また上限は、通常1mm以下、好ましくは100μm以下、より好ましく
は50μm以下である。
【0226】
また、集電体の表面に導電助剤が塗布されていることも、集電体と正極活物質層の電子
接触抵抗を低下させる観点で好ましい。導電助剤としては、炭素や、金、白金、銀等の貴
金属類が挙げられる。
集電体と正極活物質層の厚さの比は特には限定されないが、(電解液注液直前の片面の
正極活物質層の厚さ)/(集電体の厚さ)の値が20以下であることが好ましく、より好
ましくは15以下、最も好ましくは10以下であり、下限は、0.5以上が好ましく、よ
り好ましくは0.8以上、最も好ましくは1以上の範囲である。この範囲を上回ると、高
電流密度充放電時に集電体がジュール熱による発熱を生じる場合がある。上記範囲である
と、高電流密度充放電時の集電体の発熱を抑制し、電池容量を確保することができる。
【0227】
(電極面積)
本発明の電解液を用いる場合、高出力かつ高温時の安定性を高める観点から、正極活物
質層の面積は、電池外装ケースの外表面積に対して大きくすることが好ましい。具体的に
は、二次電池の外装の表面積に対する正極の電極面積の総和が面積比で15倍以上とする
ことが好ましく、更に40倍以上とすることがより好ましい。外装ケースの外表面積とは
、有底角型形状の場合には、端子の突起部分を除いた発電要素が充填されたケース部分の
縦と横と厚さの寸法から計算で求める総面積をいう。有底円筒形状の場合には、端子の突
起部分を除いた発電要素が充填されたケース部分を円筒として近似する幾何表面積である
。正極の電極面積の総和とは、負極活物質を含む合材層に対向する正極合材層の幾何表面
積であり、集電体箔を介して両面に正極合材層を形成してなる構造では、それぞれの面を
別々に算出する面積の総和をいう。
【0228】
(正極板の厚さ)
正極板の厚さは特に限定されないが、高容量かつ高出力の観点から、芯材の金属箔厚さ
を差し引いた合材層の厚さは、集電体の片面に対して下限として、好ましくは10μm以
上、より好ましくは20μm以上で、上限としては、好ましくは500μm以下、より好
ましくは450μm以下である。
【0229】
(正極板の表面被覆)
また、上記正極板の表面に、これとは異なる組成の物質が付着したものを用いてもよい
。表面付着物質としては酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ジルコニウム
、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ホウ素、酸化アンチモン、酸化ビスマス等の
酸化物、硫酸リチウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシ
ウム、硫酸アルミニウム等の硫酸塩、炭酸リチウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム
等の炭酸塩、炭素等が挙げられる。
【0230】
2-1-5.セパレータ
正極と負極との間には、短絡を防止するために、通常はセパレータを介在させる。この
場合、本発明の電解液は、通常はこのセパレータに含浸させて用いる。
セパレータの材料や形状については特に制限されず、本発明の効果を著しく損なわない
限り、公知のものを任意に採用することができる。中でも、本発明の電解液に対し安定な
材料で形成された、樹脂、ガラス繊維、無機物等が用いられ、保液性に優れた多孔性シー
ト又は不織布状の形態の物等を用いるのが好ましい。
【0231】
樹脂、ガラス繊維セパレータの材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリ
オレフィン、芳香族ポリアミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテルスルホン、
ガラスフィルター等を用いることができる。中でも好ましくはガラスフィルター、ポリオ
レフィンであり、更に好ましくはポリオレフィン、特に好ましくはポリプロピレンである
。これらの材料は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併
用したり、積層されたものを使用してもよい。2種以上を任意の組み合わせで積層したも
のの具体例としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリプロピレンの順で積層された
三層セパレータ等が挙げられる。
【0232】
セパレータの厚さは任意であるが、通常1μm以上であり、5μm以上が好ましく、8
μm以上が更に好ましく、また、通常50μm以下であり、40μm以下が好ましく、3
0μm以下が更に好ましい。上記範囲であると、絶縁性及び機械的強度を確保できる一方
、レート特性等の電池性能及びエネルギー密度を確保することができる。
更に、セパレータとして多孔性シートや不織布等の多孔質のものを用いる場合、セパレ
ータの空孔率は任意であるが、通常20%以上であり、35%以上が好ましく、45%以
上が更に好ましく、また、通常90%以下であり、85%以下が好ましく、75%以下が
更に好ましい。空孔率が、上記範囲であると、絶縁性及び機械的強度を確保できる一方、
膜抵抗を抑え良好なレート特性を得ることができる。
【0233】
また、セパレータの平均孔径も任意であるが、通常0.5μm以下であり、0.2μm
以下が好ましく、また、通常0.05μm以上である。平均孔径が、上記範囲を上回ると
、短絡が生じ易くなる。平均孔径が、上記範囲であると、短絡を防止ししつつ、膜抵抗を
抑え良好なレート特性を得ることができる。一方、無機物の材料としては、アルミナや二
酸化ケイ素等の酸化物、窒化アルミや窒化ケイ素等の窒化物、硫酸バリウムや硫酸カルシ
ウム等の硫酸塩が用いられ、粒子形状もしくは繊維形状のものが用いられる。
【0234】
形態としては、不織布、織布、微多孔性フィルム等の薄膜形状のものが用いられる。薄
膜形状では、孔径が0.01~1μm、厚さが5~50μmのものが好適に用いられる。
上記の独立した薄膜形状以外に、樹脂製の結着剤を用いて上記無機物の粒子を含有する複
合多孔層を正極及び/又は負極の表層に形成させてなるセパレータを用いることができる
。例えば、正極の両面に90%粒径が1μm未満のアルミナ粒子を、フッ素樹脂を結着剤
として多孔層を形成させることが挙げられる。
【0235】
2-1-6.電池設計
<電極群>
電極群は、上記の正極板と負極板とを上記のセパレータを介してなる積層構造のもの、
及び上記の正極板と負極板とを上記のセパレータを介して渦巻き状に捲回した構造のもの
のいずれでもよい。電極群の質量が電池内容積に占める割合(以下、電極群占有率と称す
る)は、通常40%以上であり、50%以上が好ましく、また、通常90%以下であり、
80%以下が好ましい。電極群占有率が、上記範囲であると、電池容量を確保できるとと
もに内部圧力の上昇に伴う充放電繰り返し性能や高温保存等の特性低下を抑制し、更には
ガス放出弁の作動を防止することができる。
【0236】
<集電構造>
集電構造は、特に制限されないが、配線部分や接合部分の抵抗を低減する構造にするこ
とが好ましい。電極群が上記の積層構造のものでは、各電極層の金属芯部分を束ねて端子
に溶接して形成される構造が好適に用いられる。一枚の電極面積が大きくなる場合には、
内部抵抗が大きくなるので、電極内に複数の端子を設けて抵抗を低減することも好適に用
いられる。電極群が上記の捲回構造のものでは、正極及び負極にそれぞれ複数のリード構
造を設け、端子に束ねることにより、内部抵抗を低くすることができる。
【0237】
<外装ケース>
外装ケースの材質は用いられる非水系電解液に対して安定な物質であれば特に制限され
ない。具体的には、ニッケルめっき鋼板、ステンレス、アルミニウム又はアルミニウム合
金、マグネシウム合金等の金属類、又は、樹脂とアルミ箔との積層フィルム(ラミネート
フィルム)が用いられる。軽量化の観点から、アルミニウム又はアルミニウム合金の金属
、ラミネートフィルムが好適に用いられる。
【0238】
金属類を用いる外装ケースでは、レーザー溶接、抵抗溶接、超音波溶接により金属同士
を溶着して封止密閉構造とするもの、若しくは、樹脂製ガスケットを介して上記金属類を
用いてかしめ構造とするものが挙げられる。上記ラミネートフィルムを用いる外装ケース
では、樹脂層同士を熱融着することにより封止密閉構造とするもの等が挙げられる。シー
ル性を上げるために、上記樹脂層の間にラミネートフィルムに用いられる樹脂と異なる樹
脂を介在させてもよい。特に、集電端子を介して樹脂層を熱融着して密閉構造とする場合
には、金属と樹脂との接合になるので、介在する樹脂として極性基を有する樹脂や極性基
を導入した変成樹脂が好適に用いられる。また、外装体の形状も任意であり、例えば円筒
型、角形、ラミネート型、コイン型、大型等のいずれであってもよい。
【0239】
<保護素子>
保護素子として、異常発熱や過大電流が流れた時に抵抗が増大するPTC(Posit
iveTemperature Coefficient)、温度ヒューズ、サーミスタ
ー、異常発熱時に電池内部圧力や内部温度の急激な上昇により回路に流れる電流を遮断す
る弁(電流遮断弁)等を使用することができる。上記保護素子は高電流の通常使用で作動
しない条件のものを選択することが好ましく、保護素子がなくても異常発熱や熱暴走に至
らない設計にすることがより好ましい。
【0240】
<2-2.多価カチオン電池>
正極に酸化物材料等を用い、負極にマグネシウム、カルシウム、アルミニウム等の金属
や、これらの金属を含む化合物等を用いる。電解質には、負極の反応活物質種と同じ元素
、すなわちマグネシウムイオンやカルシウムイオン、アルミニウムイオンを与えるように
、マグネシウム塩やカルシウム塩、アルミニウム塩等を非水溶媒に溶解させた非水系電解
液を用い、そこに
(A)カルボン酸エステルおよび
(B)式(1)および式(2)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1
種の化合物を含有し、かつ、前記(A)群と前記(B)群の合計含有量に対する前記(A
)群の含有量が50質量%以上99.5質量%以下で溶解させることにより、多価カチオ
ン電池用非水系電解液を調製することができる。
【0241】
<2-3.金属空気電池>
負極に亜鉛、リチウム、ナトリウム、マグネシウム、アルミニウム、カルシウムなどの
金属や、これらの金属を含む化合物等を用いる。正極活物質は酸素であるため、正極は多
孔質のガス拡散電極を用いる。多孔質材料は炭素が好ましい。電解質には、負極活物質種
と同じ元素、すなわちリチウム、ナトリウム、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム
などを与えるように、リチウム塩やナトリウム塩、マグネシウム塩、アルミニウム塩、カ
ルシウム塩等を非水溶媒に溶解させた非水系電解液を用い、そこに
(A)カルボン酸エステルおよび
(B)式(1)および式(2)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1
種の化合物を含有し、かつ、前記(A)群と前記(B)群の合計含有量に対する前記(A
)群の含有量が50質量%以上99.5質量%以下で溶解させることにより、金属空気電
池用非水系電解液を調製することができる。
【0242】
<2-4.上記以外のs-ブロック金属を用いた二次電池>
s-ブロック元素とは、第1 族元素(水素、アルカリ金属)、第2 族元素(ベリリ
ウム、マグネシウム及びアルカリ土類金属)及びヘリウムのことで、s-ブロック金属二
次電池とは、前記s-ブロック金属を負極及び又は電解質に用いた二次電池をあらわす。
上記以外のs-ブロック金属二次電池は、具体的には、正極に硫黄を用いたリチウム硫黄
電池やナトリウム硫黄電池、またナトリウムイオン電池等が挙げられる。
【0243】
<2-5.リチウムイオンキャパシタ>
正極に電気二重層を形成できる材料を用い、負極にリチウムイオンを吸蔵・放出可能な
材料を用いる。正極材料としては活性炭が好ましい。また負極材料としては、炭素質材料
が好ましい。非水系電解液には、炭素-炭素不飽和結合を有する環状カーボネートとフッ
素含有環状カーボネートからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、式(1)で
表される化合物とを含有した非水系電解液を用いる。
【0244】
<2-6.電気二重層キャパシタ>
正極および負極に電気二重層を形成できる材料を用いる。正極材料および負極材料とし
ては活性炭が好ましい。非水系電解液には、
(A)カルボン酸エステルおよび
(B)式(1)および式(2)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1
種の化合物を含有し、かつ、前記(A)群と前記(B)群の合計含有量に対する前記(A
)群の含有量が50質量%以上99.5質量%以下である非水系電解液を用いる。
【実施例
【0245】
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、これ
らの実施例に限定されるものではない。
本実施例に使用した(A)群の化合物の構造を以下に示す。
【0246】
【化26】
【0247】
本実施例に使用した(B)群の化合物の構造を以下に示す。
【0248】
【化27】
【0249】
【化28】
【0250】
また、比較例に使用した化合物の構造を以下に示す。
【0251】
【化29】
【0252】
【化30】
【0253】
<実施例1-1~1-2及び比較例1-1~1-6>
[実施例1-1]
[非水系電解液の調製]
乾燥アルゴン雰囲気下、エチレンカーボネート(以下ECと記載)、エチルメチルカー
ボネート(以下EMCと記載)、化合物(A-1)及びジエチルカーボネート(以下DE
Cと記載)からなる混合溶媒に、電解質であるLiPFを溶解させた。そして、モノフ
ルオロエチレンカーボネート(以下MFECと記載)を配合させて基本電解液1とした。
更に、上記基本電解液1に対して化合物(B-1)0.50質量%を配合して実施例1-
1の非水系電解液を調製した。この非水系電解液中には、LiPFが14.30質量%
、ECが29.76質量%、EMCが14.97質量%、化合物(A-1)が13.69
質量%、DECが22.04質量%、MFECが4.74質量%、化合物(B-1)が0
.50質量%含まれる。(A)群と(B)群の合計含有量に対する(A)群の含有量は9
6.5質量%である。
【0254】
[正極の作製]
正極活物質としてコバルト酸リチウム(LiCoO)97質量%と、導電材としてア
セチレンブラック1.5質量%と、結着材としてポリフッ化ビニリデン(PVdF)1.
5質量%とを、N-メチルピロリドン溶媒中で、ディスパーザーで混合してスラリー化し
た。これを厚さ15μmのアルミニウム箔の両面に均一に塗布、乾燥した後、プレスして
正極とした。
【0255】
[負極の作製]
負極活物質として天然黒鉛粉末、増粘剤としてカルボキシメチルセルロースナトリウム
の水性ディスパージョン(カルボキシメチルセルロースナトリウムの濃度1質量%)、結
着材としてスチレンブタジエンゴムの水性ディスパージョン(スチレンブタジエンゴムの
濃度50質量%)を加え、ディスパーザーで混合してスラリー化した。このスラリーを厚
さ10μmの銅箔の片面に均一に塗布、乾燥した後、プレスして負極とした。なお、乾燥
後の負極において、天然黒鉛:カルボキシメチルセルロースナトリウム:スチレンブタジ
エンゴム=98:1:1の質量比となるように作製した。
【0256】
[リチウム二次電池の作製]
上記の正極、負極、及びポリプロピレン製のセパレータを、負極、セパレータ、正極、
セパレータ、負極の順に積層して電池要素を作製した。この電池要素をアルミニウム(厚
さ40μm)の両面を樹脂層で被覆したラミネートフィルムからなる袋内に正・負極の端
子を突設させながら挿入した後、非水系電解液を袋内に注入し、真空封止を行ない、シー
ト状のリチウム二次電池を作製した。
【0257】
[初期充放電試験]
リチウム二次電池をガラス板で挟んで加圧した状態で、25℃において、0.05Cに
相当する電流で6時間定電流充電した後、0.2Cで3.0Vまで定電流放電した。更に
、0.2Cに相当する電流で4.1Vまで定電流―定電圧充電(「CC-CV充電」とも
いう)(0.05Cカット)した後、0.2Cの定電流で3.0Vまで放電した。次いで
、0.2Cで4.4VまでCC-CV充電(0.05Cカット)した後、0.2Cで3.
0Vまで再度放電し、初期の電池特性を安定させた。その後、0.2Cで4.4VまでC
C-CV充電(0.05Cカット)した後、0.2Cで3.0Vまで再度放電し、これを
初期容量とした。
ここで、1Cとは電池の基準容量を1時間で放電する電流値を表し、例えば、0.2C
とはその1/5の電流値を表す。以下同様である。
【0258】
[高温保存耐久試験(保存後レート特性)]
初期充放電を実施したリチウム二次電池を、25℃において、0.2Cで4.4Vまで
CC-CV充電(0.05Cカット)した後、85℃、1日間の条件で高温保存を行った
。次いで、25℃において、0.2Cで3.0Vまで定電流放電させた。その後、25℃
において0.2Cの定電流で4.4VまでCC-CV充電(0.05Cカット)した後、
0.5Cで3.0Vまで再度放電し、これを保存後容量とした。更に、0.2Cで4.4
VまでCC-CV充電(0.05Cカット)した後、1.0Cで3.0Vまで放電し、こ
れを保存後ハイレート容量とした。この時の、保存後容量に対する保存後ハイレート容量
の割合を求め、これを保存後レート特性(%)とした。なお、保存後レート特性が向上す
ることは、リチウム二次電池中の非水系電解液の安定性に優れ、かつ、高耐久で低抵抗な
良質被膜が形成されていることを表す。
上記作製したリチウム二次電池を用いて、初期充放電試験及び高温保存耐久試験を実施
した。評価結果を、後述する比較例1-1を100.0%としたときの相対値で表1に示
す。以下の実施例1-2、比較例1-2~1-6も同様とする。
【0259】
[実施例1-2]
実施例1-1の非水系電解液において、LiPFを14.59質量%、ECを30.
33質量%、化合物(A-1)を27.38質量%、DECを22.47質量%、MFE
Cを4.74質量%、化合物(B-1)を0.50質量%含む非水系電解液を用いた以外
、実施例1-1と同様にしてリチウム二次電池を作製し、上記の評価を実施した。実施例
1-2の非水系電解液における、(A)群と(B)群の合計含有量に対する(A)群の含
有量は98.2質量%である。
【0260】
[比較例1-1]
実施例1-1の非水系電解液において、化合物(A-1)および化合物(B-1)を含
まない非水系電解液を用いた以外、実施例1-1と同様にしてリチウム二次電池を作製し
、上記の評価を実施した。この非水系電解液中には、LiPFが14.08質量%、E
Cが29.33質量%、EMCが30.10質量%、DECが21.73質量%、MFE
Cが4.76質量%含まれる。
【0261】
[比較例1-2]
実施例1-1の非水系電解液において、化合物(A-1)を含まない非水系電解液を用
いた以外、実施例例1-1と同様にしてリチウム二次電池を作製し、上記の評価を実施し
た。この非水系電解液中には、LiPFが14.01質量%、ECが29.18質量%
、EMCが29.95質量%、DECが21.62質量%、MFECが4.74質量%、
化合物(B-1)が0.50質量%含まれる。比較例1-2の非水系電解液における、(
A)群と(B)群の合計含有量に対する(A)群の含有量は0.0質量%である。
【0262】
[比較例1-3]
実施例1-1の非水系電解液において、化合物(B-1)を含まない非水系電解液を用
いた以外、実施例1-1と同様にしてリチウム二次電池を作製し、上記の評価を実施した
。この非水系電解液中には、LiPFが14.37質量%、ECが29.91質量%、
EMCが15.05質量%、化合物(A-1)が13.76質量%、DECが22.16
質量%、MFECが4.76質量%含まれる。比較例1-3の非水系電解液における、(
A)群と(B)群の合計含有量に対する(A)群の含有量は100.0質量%である。
【0263】
[比較例1-4]
実施例1-2の非水系電解液において、化合物(B-1)を含まない非水系電解液を用
いた以外、実施例1-2と同様にしてリチウム二次電池を作製し、上記の評価を実施した
。この非水系電解液中には、LiPFが14.66質量%、ECが30.48質量%、
化合物(A-1)が27.52質量%、DECが22.58質量%、MFECが4.76
質量%含まれる。比較例1-4の非水系電解液における、(A)群と(B)群の合計含有
量に対する(A)群の含有量は100.0質量%である。
【0264】
[比較例1-5]
実施例1-1の非水系電解液において、化合物(B-1)の代わりに化合物(C-1)
を0.50質量%用いた以外、実施例1-1と同様にしてリチウム二次電池を作製し、上
記の評価を実施した。この非水系電解液中には、LiPFが14.30質量%、ECが
29.76質量%、EMCが14.97質量%、化合物(A-1)が13.69質量%、
DECが22.04質量%、MFECが4.74質量%、化合物(C-1)が0.50質
量%含まれる。比較例1-5の非水系電解液における、(A)群と(B)群の合計含有量
に対する(A)群の含有量は100.0質量%である。
【0265】
[比較例1-6]
実施例1-2の非水系電解液において、化合物(B-1)の代わりに化合物(C-1)
を0.50質量%用いた以外、実施例1-2と同様にしてリチウム二次電池を作製し、上
記の評価を実施した。この非水系電解液中には、LiPFが14.59質量%、ECが
30.33質量%、化合物(A-1)が27.38質量%、DECが22.47質量%、
MFECが4.74質量%、化合物(C-1)が0.50質量%含まれる。比較例1-6
の非水系電解液における、(A)群と(B)群の合計含有量に対する(A)群の含有量は
100.0質量%である。
【0266】
【表1】
【0267】
表1より、本発明にかかる実施例1-1および1-2の非水系電解液を用いると、(A
)群の化合物および(B)群の化合物がいずれも添加されていない場合(比較例1-1)
に比べ、初期容量および保存後レート特性が向上する。また、(A)群または(B)群の
化合物を単独で用いた場合(比較例1-2~1-4)、初期容量および保存後レート特性
ともに低下する。すなわち、(A)群の化合物と(B)群の化合物を同時に添加すること
により、それぞれの化合物が引き起こす分解反応が抑制されることで初期容量が向上し、
かつ、電極上に生成する良質な被膜により、保存後のレート特性が改善されていることが
示唆された。
なお、(A)群の化合物を含むものの(B)群の範囲に含まれない化合物を用いた場合
(比較例1-5および1-6)、初期容量は増加するがその改善効果は小さく、さらに、
保存後レート特性は比較例1-1に比べて劣る。よって、本発明にかかる非水系電解液を
用いたリチウム二次電池の方が優れた特性であることは明らかである。
【0268】
<実施例2-1及び比較例2-1~2-2>
[実施例2-1]
[非水系電解液の調製]
乾燥アルゴン雰囲気下、EC、化合物(A-1)及びDECからなる混合溶媒に、電解
質であるLiPFを溶解させた。そして、MFECを配合させて基本電解液2とした。
更に、基本電解液2に対して化合物(B-2)0.24質量%を配合して実施例2-1の
非水系電解液を調製した。この非水系電解液中には、LiPFが14.62質量%、E
Cが30.41質量%、化合物(A-1)が27.45質量%、DECが22.53質量
%、MFECが4.75質量%、化合物(B-2)が0.24質量%含まれる。(A)群
と(B)群の合計含有量に対する(A)群の含有量は99.1質量%である。
【0269】
[正極の作製]
実施例1-1と同様にして作製した。
[負極の作製]
実施例1-1と同様にして作製した。
[リチウム二次電池の作製]
実施例2-1で調製した非水系電解液を用いたこと以外は、実施例1-1と同様にして
作製した。
【0270】
[初期充放電試験]
リチウム二次電池をガラス板で挟んで加圧した状態で、25℃において、0.05Cに
相当する電流で6時間定電流充電した後、0.2Cで3.0Vまで定電流放電した。更に
、0.2Cに相当する電流で4.1Vまで定電流―定電圧充電(「CC-CV充電」とも
いう)(0.05Cカット)した後、45℃、72時間の条件下で放置した。その後、0
.2Cの定電流で3.0Vまで放電した。次いで、0.2Cで4.4VまでCC-CV充
電(0.05Cカット)した後、0.2Cで3.0Vまで再度放電し、初期の電池特性を
安定させた。その後、0.2Cで4.4VまでCC-CV充電(0.05Cカット)した
後、0.2Cで3.0Vまで再度放電し、これを初期容量とした。
【0271】
[高温保存耐久試験(保存後レート特性)]
実施例1-1と同様にして評価した。
上記作製したリチウム二次電池を用いて、初期充放電試験及び高温保存耐久試験を実施
した。評価結果を、後述する比較例2-1を100.0%としたときの相対値で表2に示
す。以下の比較例2-2も同様とする。
【0272】
[比較例2-1]
実施例2-1の非水系電解液において、化合物(B-2)を含まない非水系電解液を用
いた以外、実施例2-1と同様にしてリチウム二次電池を作製し、上記の評価を実施した
。この非水系電解液中には、LiPFが14.66質量%、ECが30.49質量%、
化合物(A-1)が27.51質量%、DECが22.58質量%、MFECが4.76
質量%含まれる。比較例2-1の非水系電解液における、(A)群と(B)群の合計含有
量に対する(A)群の含有量は100.0質量%である。
【0273】
[比較例2-2]
実施例2-1の非水系電解液において、化合物(B-2)の代わりに化合物(C-2)
を0.24質量%用いた以外、実施例2-1と同様にしてリチウム二次電池を作製し、上
記の評価を実施した。この非水系電解液中には、LiPFが14.62質量%、ECが
30.41質量%、化合物(A-1)が27.45質量%、DECが22.53質量%、
MFECが4.75質量%、化合物(C-2)が0.24質量%含まれる。比較例2-2
の非水系電解液における、(A)群と(B)群の合計含有量に対する(A)群の含有量は
100.0質量%である。
【0274】
【表2】
【0275】
表2より、本発明にかかる実施例2-1の非水系電解液を用いると、(A)群の化合物
を単独で用いた場合(比較例2-1)に比べ、初期容量および保存後レート特性が向上す
る。すなわち、(A)群の化合物と(B)群の化合物を同時に添加することにより、それ
ぞれの化合物が引き起こす分解反応が抑制されることで初期容量が向上し、かつ、電極上
に生成する良質な被膜により、保存後のレート特性が改善されていることが示唆された。
【0276】
なお、(A)群の化合物を含むものの(B)群の範囲に含まれない化合物を用いた場合
(比較例2-2)、保存後レート特性は向上するがその改善効果は小さく、さらに、初期
容量は比較例2-1に比べて劣る。よって、本発明にかかる非水系電解液を用いた電池の
方が優れた特性であることは明らかである。
【0277】
<実施例3-1~3-2及び比較例3-1~3-6>
[実施例3-1]
[非水系電解液の調製]
乾燥アルゴン雰囲気下、EC、EMC及びジエチルカーボネート(以下DECと記載)
からなる混合溶媒(混合体積比EC:EMC:DEC=3:4:3)に、電解質であるL
iPFを1.2mol/Lの割合で溶解させた。そして、ビニレンカーボネート(以下
VCと記載)2.0質量%ならびにMFEC 2.0質量%を配合させて基本電解液3と
した。更に、基本電解液3に対して化合物(A-2)9.00質量%ならびに化合物(B
-2)0.30質量%を配合して実施例3-1の非水系電解液を調製した。この非水系電
解液中には、LiPFが12.87質量%、ECが26.81質量%、EMCが27.
52質量%、DECが19.87質量%、VCが1.81質量%、MFECが1.81質
量%、化合物(A-2)が9.00質量%、化合物(B-2)が0.30質量%含まれる
。(A)群と(B)群の合計含有量に対する(A)群の含有量は96.8質量%である。
【0278】
[正極の作製]
実施例1-1と同様にして作製した。
[負極の作製]
実施例1-1と同様にして作製した。
[リチウム二次電池の作製]
実施例3-1で調製した非水系電解液を用いたこと以外は、実施例1-1と同様にして
作製した。
【0279】
[初期充放電試験]
リチウム二次電池をガラス板で挟んで加圧した状態で、25℃において、0.05Cに
相当する電流で6時間定電流充電した後、0.2Cで3.0Vまで定電流放電し、これを
初期容量とした。
【0280】
[高温保存耐久試験(保存後レート特性)]
初期充放電を実施したリチウム二次電池を、25℃において、0.2Cで4.4Vまで
CC-CV充電(0.05Cカット)した後、85℃、1日間の条件で高温保存を行った
。次いで、25℃において、0.2Cで3.0Vまで定電流放電させた。その後、25℃
において0.2Cの定電流で4.4VまでCC-CV充電(0.05Cカット)した後、
0.5Cで3.0Vまで再度放電し、これを保存後容量とした。更に、0.2Cで4.4
VまでCC-CV充電(0.05Cカット)した後、1.0Cで3.0Vまで放電し、こ
れを保存後ハイレート容量とした。この時の、保存後容量に対する保存後ハイレート容量
の割合を求め、これを保存後レート特性(%)とした。なお、保存後レート特性が向上す
ることは、リチウム二次電池中の非水系電解液の安定性に優れ、かつ、高耐久で低抵抗な
良質被膜が形成されていることを表す。
上記作製したリチウム二次電池を用いて、初期充放電試験及び高温保存耐久試験を実施
した。評価結果を、後述する比較例3-1を100.0%としたときの相対値で表3に示
す。以下の実施例3-2、比較例3-2~3-6も同様とする。
【0281】
[実施例3-2]
実施例3-1の非水系電解液において、LiPFを12.77質量%、ECを26.
61質量%、EMCを27.31質量%、DECを19.71質量%、VCを1.80質
量%、MFECを1.80質量%、化合物(A-2)を9.00質量%、化合物(B-2
)を1.00質量%含む非水系電解液を用いた以外、実施例3-1と同様にしてリチウム
二次電池を作製し、上記の評価を実施した。実施例3-2の非水系電解液における、(A
)群と(B)群の合計含有量に対する(A)群の含有量は90.0質量%である。
【0282】
[比較例3-1]
実施例3-1の非水系電解液において、化合物(A-2)および化合物(B-2)を含
まない非水系電解液を用いた以外、実施例3-1と同様にしてリチウム二次電池を作製し
、上記の評価を実施した。この非水系電解液中には、
LiPFが14.19質量%、ECが29.56質量%、EMCが30.34質量%、
DECが21.90質量%、VCが2.00質量%、MFECが2.00質量%含まれる
【0283】
[比較例3-2]
実施例3-1の非水系電解液において、化合物(A-2)を含まない非水系電解液を用
いた以外、実施例3-1と同様にしてリチウム二次電池を作製し、上記の評価を実施した
。この非水系電解液中には、LiPFが14.15質量%、ECが29.47質量%、
EMCが30.25質量%、DECが21.84質量%、VCが1.99質量%、MFE
Cが1.99質量%、化合物(B-2)が0.30質量%含まれる。比較例3-2の非水
系電解液における、(A)群と(B)群の合計含有量に対する(A)群の含有量は0.0
質量%である。
【0284】
[比較例3-3]
実施例3-2の非水系電解液において、化合物(A-2)を含まない非水系電解液を用
いた以外、実施例3-1と同様にしてリチウム二次電池を作製し、上記の評価を実施した
。この非水系電解液中には、LiPFが14.05質量%、ECが29.27質量%、
EMCが30.04質量%、DECが21.68質量%、VCが1.98質量%、MFE
Cが1.98質量%、化合物(B-2)が1.00質量%含まれる。比較例3-3の非水
系電解液における、(A)群と(B)群の合計含有量に対する(A)群の含有量は0.0
質量%である。
【0285】
[比較例3-4]
比較例3-3の非水系電解液において、化合物(B-2)1.00質量%の代わりに化
合物(B-2)27.00質量%を含む非水系電解液を用いた以外、比較例3-3と同様
にしてリチウム二次電池を作製し、上記の評価を実施した。この非水系電解液中には、L
iPFが10.36質量%、ECが21.58質量%、EMCが22.15質量%、D
ECが15.99質量%、VCが1.46質量%、MFECが1.46質量%、化合物(
B-2)が27.00質量%含まれる。比較例3-4の非水系電解液における、(A)群
と(B)群の合計含有量に対する(A)群の含有量は0.0質量%である。
【0286】
[比較例3-5]
実施例3-1の非水系電解液において、化合物(B-2)を含まない非水系電解液を用
いた以外、実施例3-1と同様にしてリチウム二次電池を作製し、上記の評価を実施した
。この非水系電解液中には、LiPFが12.92質量%、ECが26.90質量%、
EMCが27.61質量%、DECが19.93質量%、VCが1.82質量%、MFE
Cが1.82質量%、化合物(A-2)が9.00質量%含まれる。比較例3-5の非水
系電解液における、(A)群と(B)群の合計含有量に対する(A)群の含有量は100
.0質量%である。
【0287】
[比較例3-6]
実施例3-1の非水系電解液において、化合物(B-2)0.30質量%の代わりに化
合物(B-2)27.00質量%を含む非水系電解液を用いた以外、実施例3-1と同様
にしてリチウム二次電池を作製し、上記の評価を実施した。この非水系電解液中には、L
iPFが9.08質量%、ECが18.92質量%、EMCが19.42質量%、DE
Cが14.02質量%、VCが1.28質量%、MFECが1.28質量%、化合物(A
-2)が9.00質量%、化合物(B-2)が27.00質量%含まれる。比較例3-6
の非水系電解液における、(A)群と(B)群の合計含有量に対する(A)群の含有量は
25.0質量%である。
【0288】
【表3】
【0289】
表3より、本発明にかかる実施例3-1および3-2の非水系電解液を用いると、(A
)群の化合物および(B)群の化合物がいずれも添加されていない場合(比較例3-1)
に比べ、初期容量および保存後レート特性が向上する。また、(A)群または(B)群の
化合物を単独で用いた場合(比較例3-2~3-5)、保存後レート特性が低下する。す
なわち、(A)群の化合物と(B)群の化合物をある特定比率で同時に添加することによ
り、それぞれの化合物が引き起こす分解反応が抑制されることで初期容量が向上し、かつ
、電極上に生成する良質な被膜により、保存後のレート特性が改善されていることが示唆
された。
【0290】
なお、(A)群の化合物および(B)群の化合物が本発明の特定の範囲から外れた場合
(比較例3-6)、(A)群の化合物および(B)群の化合物がいずれも添加されていな
い場合(比較例3-1)に比べ、初期容量および保存後レート特性は大幅に低下する。よ
って、本発明にかかる非水系電解液を用いた電池の方が優れた特性であることは明らかで
ある。
【産業上の利用可能性】
【0291】
本発明の非水系電解液によれば、非水系電解液を含むエネルギーデバイスの高温保存耐
久試験後の充放電効率やレート特性を改善し、さらに高温保存耐久試験後のガス発生を低
減でき、有用である。そのため、本発明の非水系電解液及びエネルギーデバイスは、公知
の各種の用途に用いることが可能である。具体例としては、例えば、ノートパソコン、ペ
ン入力パソコン、モバイルパソコン、電子ブックプレーヤー、携帯電話、携帯ファックス
、携帯コピー、携帯プリンター、ヘッドフォンステレオ、ビデオムービー、液晶テレビ、
ハンディークリーナー、ポータブルCD、ミニディスク、トランシーバー、電子手帳、電
卓、メモリーカード、携帯テープレコーダー、ラジオ、バックアップ電源、モーター、自
動車、バイク、原動機付自転車、自転車、照明器具、玩具、ゲーム機器、時計、電動工具
、ストロボ、カメラ、家庭用バックアップ電源、事業所用バックアップ電源、負荷平準化
用電源、自然エネルギー貯蔵電源等が挙げられる。