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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-08
(45)【発行日】2023-12-18
(54)【発明の名称】注射デバイスにおける電力節約
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/24 20060101AFI20231211BHJP
   A61M 5/00 20060101ALI20231211BHJP
   A61M 5/315 20060101ALN20231211BHJP
【FI】
A61M5/24 500
A61M5/00 512
A61M5/315 550N
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020526177
(86)(22)【出願日】2018-11-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-04
(86)【国際出願番号】 EP2018080901
(87)【国際公開番号】W WO2019096726
(87)【国際公開日】2019-05-23
【審査請求日】2021-10-29
(31)【優先権主張番号】17306573.1
(32)【優先日】2017-11-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】504456798
【氏名又は名称】サノフイ
【氏名又は名称原語表記】SANOFI
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ディートマー・ハーメン
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・クレム
【審査官】川島 徹
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-519028(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0312430(US,A1)
【文献】特表2017-520298(JP,A)
【文献】特表2017-524399(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/24
A61M 5/00
A61M 5/315
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬物注射デバイス(102)であって:
ある体積の薬物を保持するように構成されたカートリッジ(104)と;
少なくとも有効状態およびスリープ状態で動作するように構成された1つまたはそれ以上のプロセッサ(120)であって、該1つまたはそれ以上のプロセッサ(120)が有効状態の間に、薬物注射デバイス(102)の動作を制御するように構成された、1つまたはそれ以上のプロセッサ(120)と;
カートリッジ(104)に配設された部材(115)であって、1つまたはそれ以上のプロセッサ(120)に電気的に接続された少なくとも2つの導電面(122)を含む、部材(115)と;
少なくとも2つの導電面(122)から離間した導電要素(124)を含む駆動機構(106)であって、該駆動機構(106)は、スリープ状態において部材(115)から分離して離間しており、押されて部材(115)に接触して移動するように構成された駆動機構(106)と
を備え、ここで1つまたはそれ以上のプロセッサ(120)は、駆動機構(106)が部材(115)に接触することに応答して導電要素(124)が少なくとも2つの導電面(122)に電気接触するとき、スリープ状態から有効状態に入るように構成された、前記薬物注射デバイス。
【請求項2】
部材(115)はストッパであり、導電要素(124)は、駆動機構(106)のプランジャ(107)の下面に配設される、請求項1に記載の薬物注射デバイス(102)。
【請求項3】
導電要素(124)は、駆動機構(106)の起動に応答して、部材(115)に向かって移動し、少なくとも2つの導電面(122)と電気接触するように構成された、請求項1に記載の薬物注射デバイス(102)。
【請求項4】
駆動機構(106)は、薬物注射デバイス(102)のプライミング中に起動するように構成される、請求項3に記載の薬物注射デバイス(102)。
【請求項5】
導電要素(124)が少なくとも2つの導電面(122)と電気接触することにより、1つまたはそれ以上のプロセッサ(120)のリセット回路が起動される、請求項1に記載の薬物注射デバイス(102)。
【請求項6】
薬物注射デバイス(102)の動作を1つまたはそれ以上のプロセッサ(120)に制御させるように動作可能な命令を記憶する1つまたはそれ以上の非一時的なコンピュータ読取り可能媒体(1030)をさらに含む、請求項1に記載の薬物注射デバイス(102)。
【請求項7】
1つまたはそれ以上の非一時的なコンピュータ読取り可能媒体(1030)は、連続的な電力供給なしにデータを記憶するように構成された強誘電性のランダムアクセスメモリ(FRAM)を含む、請求項6に記載の薬物注射デバイス(102)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は電力節約に関し、より詳細には、注射デバイスにおける電力節約に関する。
【背景技術】
【0002】
薬剤の注射による処置を必要とする様々な疾患が存在する。こうした注射は、注射デバイスを使用して実行することができ、これは医療従事者または患者自身のいずれかによって適用される。例として、1型および2型の糖尿病は、たとえば1日に1回または複数回、インスリン用量の注射により、患者自身によって処置することができる。たとえば、充填済みの使い捨てインスリンペンまたは自己注射器を、注射デバイスとして使用することができる。あるいは、再使用可能ペンまたは自己注射器を使用してもよい。再使用可能ペンまたは自己注射器は、空の薬剤カートリッジを新規のカートリッジに交換することが可能である。ペンまたは自己注射器のいずれのタイプにも、毎回の使用前に交換される一方向針のセットが付属していてもよい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本明細書では、注射デバイスの電力を節約するためのシステムおよび技法を説明する。患者が使用するための全機能を注射デバイスが確実に提供できるように、注射デバイスが使用されないときには、可能な限り多くの電力を蓄積することが有益なことがある。たとえば、注射デバイスの製造中および製造後、患者に使用される前に、注射デバイスを電力オンにすべき事例が存在することがある(たとえば、注射デバイスの電子機器の試験中)。しかし、注射デバイスが電力オフにされたときでも、(たとえば、待機電力損失により)電源から電力が失われる事例が存在することがある。こうした電力損失を防止するために、マイクロコントローラを、スリープ状態(たとえば、ディープスリープ状態)で動作するように構成してもよい。こうしたスリープ状態では、マイクロコントローラは、バッテリの待機電力損失を大幅に低減および/または削減することができる。たとえば、マイクロコントローラは、スリープ状態で動作している間に10ナノアンプよりはるかに少ない量を消費してもよい。いくつかの実施形態では、注射デバイスは、マイクロコントローラのスリープ状態を利用することにより、かつ/または使用されていないときにバッテリからマイクロコントローラを電気的に絶縁することにより、おおよそ4~5年の寿命を実現可能であってもよい。
【課題を解決するための手段】
【0004】
いくつかの実施形態では、薬物注射デバイスは、ある体積の薬物を保持するように構成されたカートリッジと、少なくとも有効状態およびスリープ状態で動作するように構成された1つまたはそれ以上のプロセッサとを含む。1つまたはそれ以上のプロセッサは、1つまたはそれ以上のプロセッサが有効状態の間に、薬物注射デバイスの動作を制御するように構成される。また薬物注射デバイスは、カートリッジ内に部材も含む。この部材は、1つまたはそれ以上のプロセッサに電気的に接続された少なくとも2つの導電面を含む。また薬物注射デバイスは、少なくとも2つの導電面から離間した導電要素を含む駆動機構も含む。1つまたはそれ以上のプロセッサは、導電要素が少なくとも2つの導電面に電気接触するとき、スリープ状態から有効状態に入るように構成される。いくつかの実施形態では、部材はストッパであり、導電要素は、駆動機構のプランジャの下面に配設される。
【0005】
いくつかの実施形態では、導電要素は、駆動機構の係合に応答して、部材に向かって移動し、少なくとも2つの導電面と電気接触するように構成される。駆動機構を、薬物注射デバイスのプライミング中に係合してもよい。導電要素が少なくとも2つの導電面と電気接触することにより、1つまたはそれ以上のプロセッサのリセット回路を起動することができる。
【0006】
いくつかの実施形態では、薬物注射デバイスはまた、薬物注射デバイスの動作を1つまたはそれ以上のプロセッサに制御させるように動作可能な命令を記憶する1つまたはそれ以上の非一時的なコンピュータ読取り可能媒体も含む。1つまたはそれ以上の非一時的なコンピュータ読取り可能媒体は、連続的な電力供給なしにデータを記憶するように構成された強誘電性のランダムアクセスメモリ(FRAM)を含んでもよい。
【0007】
いくつかの実施形態では、薬物注射デバイスは、ある体積の薬物を保持するように構成されたカートリッジと、少なくとも有効状態およびスリープ状態で動作するように構成された1つまたはそれ以上のプロセッサとを含む。1つまたはそれ以上のプロセッサは、1つまたはそれ以上のプロセッサが有効状態の間に、薬物注射デバイスの動作を制御するように構成される。また薬物注射デバイスは、1つまたはそれ以上のプロセッサと通信するセンサも含む。センサは、刺激に応答して、1つまたはそれ以上のプロセッサをスリープ状態から有効状態に入らせるように構成される。いくつかの実施形態では、センサは、閾値量を満足する磁場を磁気抵抗センサが検知しなくなったときに、1つまたはそれ以上のプロセッサを有効状態に入らせるように構成された磁気抵抗センサである。薬物注射デバイスは、閾値量を満足する磁場を提供する磁石を含む包装内にあるように構成され、1つまたはそれ以上のプロセッサは、薬物注射デバイスが包装から取り出されたときに有効状態に入ることができる。いくつかの実施形態では、薬物注射デバイスはまた、薬物注射デバイスのハウジングに取り付けられるように構成されたカバーも含む。カバーは、閾値量を満足する磁場を提供する磁石を含んでもよく、1つまたはそれ以上のプロセッサは、ハウジングからカバーが取り外されたときに有効状態に入ることができる。
【0008】
いくつかの実施形態では、センサは、閾値強度を満足する光をフォトダイオードまたはフォトレジスタが検知したときに、1つまたはそれ以上のプロセッサを有効状態に入らせるように構成されたフォトダイオードまたはフォトレジスタのうちの一方または両方を含む。いくつかの実施形態では、センサは、閾値を満足する温度をサーミスタが検知したときに、1つまたはそれ以上のプロセッサを有効状態に入らせるように構成されたサーミスタである。いくつかの実施形態では、センサは、X線ダイオードがX線放射を検知したときに、1つまたはそれ以上のプロセッサを有効状態に入らせるように構成されたX線ダイオードである。
【0009】
いくつかの実施形態では、センサは、Wi-FiセンサがWi-Fi放射を検知したときに、1つまたはそれ以上のプロセッサを有効状態に入らせるように構成されたWi-Fiセンサである。薬物注射デバイスは、Wi-Fi放射を遮断する包装内にあるように構成され、1つまたはそれ以上のプロセッサは、薬物注射デバイスが包装から取り出されたときに有効状態に入ることができる。
【0010】
いくつかの実施形態では、センサは、近距離無線通信(NFC)センサがコンピューティングデバイスからNFC信号を受信したときに、1つまたはそれ以上のプロセッサを有効状態に入らせるように構成されたNFCセンサである。コンピューティングデバイスはモバイルフォンであってもよい。いくつかの実施形態では、センサは、共振周波数を有する磁場を共振回路が検知したときに、1つまたはそれ以上のプロセッサを有効状態に入らせるように構成された共振回路を含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、システムは、ある体積の薬物を保持するように構成されたカートリッジと、少なくとも有効状態およびスリープ状態で動作するように構成された1つまたはそれ以上のプロセッサとを含む薬物注射デバイスを含む。1つまたはそれ以上のプロセッサは、1つまたはそれ以上のプロセッサが有効状態の間に、薬物注射デバイスの動作を制御するように構成される。また薬物注射デバイスは、1つまたはそれ以上のプロセッサと通信するWi-Fiセンサも含む。Wi-Fiセンサは、Wi-FiセンサがWi-Fi放射を検知したときに、1つまたはそれ以上のプロセッサをスリープ状態から有効状態に入らせるように構成される。またこのシステムは、製造後、患者によって最初に使用されるまで、薬物注射デバイスを収容するように構成された包装も含む。包装は、薬物注射デバイスが包装から取り出されるまで、1つまたはそれ以上のプロセッサが有効状態に入らないようにするために、Wi-Fi放射を遮断する材料を含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、薬物注射デバイスは、ある体積の薬物を保持するように構成されたカートリッジと、少なくとも有効状態およびスリープ状態で動作するように構成された1つまたはそれ以上のプロセッサとを含む。1つまたはそれ以上のプロセッサは、1つまたはそれ以上のプロセッサが有効状態の間に、薬物注射デバイスの動作を制御するように構成される。また薬物注射デバイスは、1つまたはそれ以上のプロセッサに電気的に接続された回路も含む。回路は、1つまたはそれ以上のトランジスタ、および1つまたはそれ以上のヒューズを含む。1つまたはそれ以上のトランジスタは、1つまたはそれ以上のヒューズが飛んだことに応答して、1つまたはそれ以上のプロセッサをスリープ状態から有効状態に入らせるように構成される。1つまたはそれ以上のヒューズは、レーザ光の照射に応答して飛んでもよく、レーザ光は、薬物注射デバイスとともに提供される電子デバイスによって照射される。レーザ光によって加えられた熱により、1つまたはそれ以上のヒューズが飛んでもよい。
【0013】
いくつかの実施形態では、薬物注射デバイスは、ある体積の薬物を保持するように構成されたカートリッジと、薬物注射デバイスの動作を制御するように構成された1つまたはそれ以上のプロセッサとを含む。また薬物注射デバイスは、1つまたはそれ以上のプロセッサに電気的に接続された回路も含む。回路は、バッテリ、1つまたはそれ以上のトランジスタ、および1つまたはそれ以上のヒューズを含む。1つまたはそれ以上のトランジスタは、1つまたはそれ以上のヒューズが飛んでいない状態のとき、1つまたはそれ以上のプロセッサをバッテリから電気的に絶縁し、1つまたはそれ以上のトランジスタは、1つまたはそれ以上のヒューズが飛んだとき、1つまたはそれ以上のプロセッサをバッテリに電気的に接続する。1つまたはそれ以上のヒューズは、レーザ光の照射に応答して飛んでもよく、レーザ光は、薬物注射デバイスとともに提供される電子デバイスによって照射される。レーザ光によって加えられた熱により、1つまたはそれ以上のヒューズが飛んでもよい。
【0014】
いくつかの実施形態では、薬物注射デバイスは、ある体積の薬物を保持するように構成されたカートリッジと、薬物注射デバイスの動作を制御するように構成された1つまたはそれ以上のプロセッサと、薬物注射デバイスのハウジングに取り付けられるように構成されたカバーとを含む。カバーは、電源に電気的に接続されるように構成された第1の誘導コイルを含む。また薬物注射デバイスは、1つまたはそれ以上のプロセッサに電気的に接続された回路も含む。回路は、第2の誘導コイル、およびスーパーキャパシタを含む。第2の誘導コイルは、第1の誘導コイルから電磁場を受け取り、スーパーキャパシタによって蓄えられ1つまたはそれ以上のプロセッサに提供されることになる電力を生成するように構成される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】注射デバイスの様々な例の図である。
図2】注射デバイスの様々な例の図である。
図3】注射デバイスの様々な例の図である。
図4】注射デバイスの様々な例の図である。
図5】注射デバイスの様々な例の図である。
図6】注射デバイスの様々な例の図である。
図7】注射デバイスの様々な例の図である。
図8a】注射デバイスの様々な例の図である。
図8b】注射デバイスの様々な例の図である。
図9】注射デバイスの様々な例の図である。
図10】例示的なコンピュータシステムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
様々な図面の同様の参照符号は、同様の要素を示す。
【0017】
本明細書に記載の主題は、大部分が注射デバイス(たとえば、インスリン注射デバイス)などの薬物送達デバイスを参照しながら、説明されることになる。しかし、本明細書に記載のシステムおよび技法は、こうした用途に限定されず、他の薬剤を放出する注射デバイスとともに、または他のタイプの医療デバイス(たとえばポンプ)とともに導入されることも等しく可能である。
【0018】
「薬物送達デバイス」という用語は、ある体積の薬物をヒトまたは動物の体に投薬するように構成された任意のタイプのデバイスまたはシステムを包含するものとする。その体積は、通常約1μl~約10mlの範囲とすることができる。限定することなく、薬物送達デバイスは、シリンジ、針安全システム、ペン注射器、自己注射器、大容量デバイス(LVD)、ポンプ、かん流システム、または薬物の皮下送達、筋肉内送達、もしくは血管内送達にあわせて構成された他のデバイスを含んでもよい。こうしたデバイスは、多くの場合針を含み、この針は、ある特定の実施形態では、小ゲージ針(たとえば、約24ゲージより大きく、27、29、または31ゲージを含む)とすることができる。特定の薬物との組合せで、ここに説明するデバイスを、必要なパラメータ内で動作するようにカスタマイズしてもよい。たとえば、ある特定の期間内(たとえば、注射器については約3~約20秒、LVDについては約5分~約60分)で、不快感を少なくするもしくは最小レベルに抑えて、または人的要因、保存期間、有効期限、生体適合性、環境的配慮などに関するある特定の条件内でなどである。こうした変型形態は、たとえば、粘度約3cP~約50cPの範囲の薬物など、様々な要因に起因して発生してもよい。
【0019】
薬物または薬剤は、薬物送達デバイスで使用するように適用された主要パッケージまたは「薬物容器」内に含むことができる。薬物容器は、たとえば、カートリッジ、シリンジ、リザーバ、または1つまたはそれ以上の薬学的に活性な化合物の保存(たとえば短期または長期保存)に適したチャンバを提供するように構成された他の容器とすることができる。たとえば、一部の場合、チャンバは、少なくとも1日(たとえば1日から少なくとも30日まで)の間薬物を保存するように設計することができる。一部の場合、チャンバは、約1ヶ月から約2年の間薬物を保存するように設計することができる。保存は、室温(たとえば約20℃)または冷蔵温度で行うことができる。一部の場合、薬物容器は、薬物製剤の2つまたはそれ以上の成分(たとえば薬物および希釈剤、または2つの異なるタイプの薬物)を別々に、各チャンバに1つずつ保存するように構成された二重チャンバカートリッジとすることができ、またはこれを含むことができる。そのような場合、二重チャンバカートリッジの2つのチャンバは、ヒトまたは動物の体内に投薬する前、および/または投薬中に薬物または薬剤の2つまたはそれ以上の成分間で混合することを可能にするように構成することができる。たとえば、2つのチャンバは、これらが(たとえば2つのチャンバ間の導管によって)互いに流体連通し、所望の場合、投薬の前にユーザによって2つの成分を混合することを可能にするように構成することができる。代替的に、またはこれに加えて、2つのチャンバは、成分がヒトまたは動物の体内に投薬されているときに混合することを可能にするように構成することができる。
【0020】
図1は、注射デバイス102の例を示す。注射デバイス102は、充填済みの使い捨てのまたは再使用可能な注射ペンであってもよい。注射デバイス102は、ハウジング103およびカートリッジ104を含む。カートリッジ104は、(たとえば流体の形の)ある体積の薬剤を保持するように構成される。いくつかの実施形態では、カートリッジ104は、インスリン容器などの薬剤容器である。カートリッジ104の少なくとも一部分は、注射デバイス102のハウジング103、および/またはカートリッジハウジング105の中にあり、したがって、カートリッジ104の一部または全部をすぐに見ることはできない。
【0021】
注射デバイス102は、カートリッジ104から薬剤を放出させるように構成された駆動機構106を含む。駆動機構106は、カートリッジ104内で移動可能に配設されたプランジャ107、およびピストン108(たとえば、プランジャアーム)を含む。部材115(たとえば、ストッパ)も、プランジャ107に近接してカートリッジ104に配設される。初期状態(たとえば、注射前)では、部材115は、比較的短距離(たとえば、1mm未満)だけプランジャ107から離間している。ピストン108は、カートリッジ104の近位端から部材115に向かってプランジャ107を動かすように構成される。特に、駆動機構106が係合するとき、ピストン108はプランジャ107を部材115に向かって駆動し、それによりプランジャ107と部材115が互いに物理的に接触する。次いでピストン108は、引き続きカートリッジ104を横切って、それによりプランジャ107と部材115を変位させ、カートリッジ104の遠位端に配設された針109を通して流体を投薬させる。針109は、そこを通して流体が投薬されるアパーチャを含む。いくつかの実施形態では、針109および/またはカートリッジ104は、針109をカートリッジ104にねじ込んで取付けできるように、ねじ山が付いている。針109は、内側針キャップ116および外側針キャップ117によって保護することができ、次いでそれらをカバー118によって覆うことができる。
【0022】
注射デバイス102から放出される薬剤用量(たとえば、インスリン用量など)は、投与量ノブ112を回すことによって選択することができ、選択された用量は、投与量窓113によって表示することができる。いくつかの例では、投与量窓113は、電子ディスプレイなどのディスプレイである。いくつかの例では、選択された用量は、国際単位(IU)の倍数で表示することができ、ここで1IUは、純粋な結晶性インスリン(たとえば、1/22mg)など、約45.5マイクログラムの薬剤の生物学的等価物である。投与量窓113に表示される選択された用量の例は、たとえば図1に示すように30IUとすることができる。いくつかの例では、選択された用量を、たとえば非電子ディスプレイによって、異なるやり方で表示してもよい。いくつかの例では、投与量窓113は、選択された投与量をそれを通してまたはそこで見ることができる注射デバイス102のセクションに関する。
【0023】
投与量ノブ112を回すことにより、機械的クリック音を発生させて、ユーザに聴覚的フィードバックを提供してもよい。投与量窓113に表示される数は、ハウジング103に含まれ駆動機構106と機械的に相互作用するスリーブに印刷される。針109が患者の皮膚部分に挿入され、次いで注射ボタン111が押されると、注射デバイス102から薬剤が放出される。用量の放出によっても、機械的クリック音が発生してもよい。こうした機械的クリック音は、投与量ノブ112が回されたときに生成される音とは異なってもよい。注射デバイス102は、カートリッジ104が空になるまで、または注射デバイス102の有効期限(たとえば、最初の使用から28日後)に至るまで、複数回の注射プロセスに使用することができる。
【0024】
いくつかの例では、注射デバイス102を最初に使用する前に、たとえば2単位の薬剤を選択し、針109を上にした状態で注射デバイス102を保持しながら注射ボタン111を押すことにより「空打ち」を実行して、カートリッジ104および針109から空気を除去することが必要な場合がある。
【0025】
注射デバイス102はマイクロコントローラ120を含み、これは1つまたはそれ以上のプロセッサと1つまたはそれ以上のメモリデバイスを含んでもよい。いくつかの実施形態では、1つまたはそれ以上のメモリデバイスは、1つまたはそれ以上のプロセッサに動作を実行させる(たとえば、注射デバイス102の動作を制御させる)ように動作可能な命令を記憶する1つまたはそれ以上の非一時的なコンピュータ読取り可能媒体を含む。いくつかの実施形態では、1つまたはそれ以上の非一時的なコンピュータ読取り可能媒体は、強誘電性のランダムアクセスメモリ(FRAM)を含んでもよく、これは、電力の連続的な供給なしにデータを記憶するように構成される。こうしたFRAMは、使用されていないときに注射デバイス102の電力消費をさらに低減するために使用される。1つまたはそれ以上のプロセッサにより実行することができる動作は、注射デバイス102によって投与される薬剤の量(たとえば投与量)を判定すること、投与された投与量に関する情報を記録および/または送信すること、注射デバイス102の電子ディスプレイを制御することなどを含んでもよい。図1に示すように、いくつかの実施形態では、マイクロコントローラ120は部材115に組み込まれる。また注射デバイスは、マイクロコントローラ120に給電するためのバッテリ、たとえばコイン電池バッテリなどの電源を含んでもよい。またバッテリを、マイクロコントローラ120に近接した部材115に組み込んでもよい。
【0026】
患者が使用するための全機能を注射デバイス102が確実に提供できるように、注射デバイス102が使用されないときには可能な限り多くの電力を蓄積することが有益なことがある。たとえば、注射デバイス102の製造後、患者に使用される前に、注射デバイス102を電力オンにすべき事例が存在することがある。しかし、注射デバイス102が電力オフのときでも、(たとえば、「ヴァンパイヤドロー」すなわち待機電力損失により)電源から電力が失われる事例が存在することがある。こうした電力損失を防止するために、マイクロコントローラ120を、スリープ状態(たとえば、ディープスリープ状態)で動作するように構成してもよい。こうしたスリープ状態では、マイクロコントローラ120は、バッテリの待機電力損失を大幅に低減および/または削減することができる。たとえば、マイクロコントローラ120は、スリープ状態で動作している間に10ナノアンプよりはるかに少ない量を消費してもよい。いくつかの実施形態では、注射デバイス102は、マイクロコントローラ120のスリープ状態を利用することにより、かつ/または使用されていないときにバッテリからマイクロコントローラ120を電気的に絶縁することにより、おおよそ4~5年の寿命を実現可能であってもよい。
【0027】
マイクロコントローラ120は、コマンドに応答してスリープ状態に入ってもよい。コマンドは、スリープ状態を開始すべきことを示す、マイクロコントローラ120によって受信される簡単な信号を含んでもよい。いくつかの実施形態では、コマンドは、マイクロコントローラ120の1つまたはそれ以上のピンに、入力電圧または電流を印加することを含んでもよい。スリープ状態での動作時、マイクロコントローラ120の機能は限定されることがある。たとえば、マイクロコントローラ120は、スリープ中に注射デバイス102の1つまたはそれ以上の動作を制御できないことがある。いくつかの例では、マイクロコントローラ120は、スリープ中に受け取ることができるコマンドのタイプが限定されることがある。いくつかの例では、マイクロコントローラ120は、スリープ状態から退出するためにリセットを必要とすることがある。本明細書に記載の様々な実施形態は、マイクロコントローラ120をリセットし、それによりマイクロコントローラ120がスリープ状態から退出し、有効状態に入ることができるようにするシステムおよび技法に関する。有効状態では、マイクロコントローラ120は全機能を再開できる。
【0028】
いくつかの実施形態では、マイクロコントローラ120は、特定の長さの時間にわたってリセットを無効にするように構成される。たとえば、マイクロコントローラ120は、マイクロコントローラ120が1回目にリセットされてスリープ状態から退出した後に、リセット(たとえば追加の/その後のリセット)を無効にするように構成される。こうした機能は、有効状態に入った後に、マイクロコントローラ120のリセットを防止する時間遅延を実装することにより、マイクロコントローラ120に組み込むことができる。いくつかの実装形態では、マイクロコントローラ120と通信する集積回路(たとえば、第2のマイクロコントローラ)が、こうした遅延機能を提供してもよい。
【0029】
いくつかの実施形態では、マイクロコントローラ120は、注射デバイス102の製造後、スリープ状態に入るように命令される。その後、マイクロコントローラ120は、注射デバイス102が患者によって最初に使用されるまで、スリープ状態のままでもよい。
【0030】
引き続き図1を参照すると、患者は、最初に注射デバイス102を使用する前に、(たとえば「空打ち」を実行することにより)注射デバイス102をプライミングしてもよい。空打ちにより、マイクロコントローラ120をリセットし、それによりマイクロコントローラ120がスリープ状態から退出し、全機能を再開できるようにしてもよい。上述したように、空打ちは、カートリッジ104および針109から空気を除去するために実行される。患者は、投与量ノブ112を使用して少量の投与量(たとえば、2単位の薬剤)を選択し、針109を上に向けた状態で注射デバイス102を保持しながら注射ボタン111を押してもよい。空打ちにより、ピストン108がプランジャ107を部材115に向けて駆動し、それによりプランジャ107と部材115が互いに物理的に接触する。
【0031】
部材115の上面は、マイクロコントローラ120に電気的に接続された少なくとも2つの導電面122を含む。特に、導電面122は、マイクロコントローラ120のリセット動作に関連したマイクロコントローラ120のピン(たとえば、リセット回路に接続されたピン)に接続される。部材115とプランジャ107が、空打ちによって物理的に接触したとき、導電面122は、駆動機構106に組み込まれた、特にプランジャ107の下面に配設された導電要素124に接触する。空打ちが実行される前、プランジャ107と導電要素124は、比較的短い距離(たとえば1mm未満)だけ、導電面122から離間していてもよい。電気接触により、マイクロコントローラ120のピンが電気的に接続され、それによりマイクロコントローラ120のリセットを開始するマイクロコントローラ120のリセット回路が起動される(たとえば、リセットスイッチがトリガされる)。リセット後、マイクロコントローラ120は、患者によってその後使用できるようにマイクロコントローラ120が全機能を再開できる有効状態に入ることができる。
【0032】
図1に示す注射デバイス102は、カートリッジ104に配設された部材115であって、マイクロコントローラ120をリセットするために導電要素124と接触するように構成された導電面122を含む部材115を含むものとして説明されてきたが、様々なタイプの導電面を含む様々な他のタイプの任意の部材を、代替的または追加的に使用することができる。使用できる他のタイプの部材の例は、リング形状の部材、ディスク形状の部材、ピン形状の部材などを含む。いくつかの実施形態では、導電面は、リング形状、ディスク形状であってもよく、かつ/または、導電要素に向かって延びるピンであってもよい。同様に、部材の導電面と接触するように、様々な他のタイプの任意の導電要素を代替的または追加的に使用してもよい。使用できる他のタイプの導電要素の例は、カートリッジ104および/またはプランジャ107の直径に実質的に同様の直径を有するディスク形状の導電要素、プランジャ107の直径にわたるロッド形状の導電要素、リング形状の導電要素、導電メッシュ材料から作られる導電要素などを含む。
【0033】
いくつかの実施形態では、1つまたはそれ以上の追加の技法を使用して、マイクロコントローラ120をリセットし、スリープ状態に入らせることができる。こうした技法は、図1に関して説明した技法の代替であっても追加であってもよい。
【0034】
いくつかの実施形態では、マイクロコントローラ120は、マイクロコントローラ120をリセットし、スリープ状態から有効状態に入らせる刺激を、1つまたはそれ以上のセンサから受け取るように構成される。図2は、注射デバイス202の別の例を示す。注射デバイス202は、図1の注射デバイス102と実質的に同様であるが、本明細書に述べる違いを有する。特に、部材115に組み込まれた構成要素の1つまたはそれ以上は、図1に関して説明したものとは異なる。
【0035】
注射デバイス202は、マイクロコントローラ120に電気的に接続された磁気抵抗センサ204(たとえば、巨大磁気抵抗センサ(GMRセンサ))を含む。特に、磁気抵抗センサ204は、リセット動作に関連したマイクロコントローラ120のピン(たとえば、リセット回路に接続されたピン)に接続される。磁気抵抗センサ204は、検知した外部磁場に基づき、電気信号を提供するように構成される。たとえば、閾値量を満足する磁場の存在下では、磁気抵抗センサ204は、マイクロコントローラ120に信号を提供せず、それによりマイクロコントローラ120をスリープ状態のまま保つことを可能にするように構成される。磁気抵抗センサ204が、閾値量を満足する磁場の存在下にもはやないとき、磁気抵抗センサ204は、マイクロコントローラ120をリセットし有効状態に入らせる信号をマイクロコントローラ120に提供するように構成される。すなわち、磁気抵抗センサ204が、閾値量を満足する磁場を検知しなくなると、磁気抵抗センサ204は、マイクロコントローラ120の特定のピンを電気的に接続させる信号をマイクロコントローラ120に提供し、それにより、リセットを開始するマイクロコントローラ120のリセット回路を起動し、患者によってその後使用できるようにマイクロコントローラ120が全機能を再開できる有効状態に、マイクロコントローラ120が入れるようにしてもよい。
【0036】
いくつかの実施形態では、注射デバイス202を、製造後に包装210に包装してもよい。包装210は、実質的に注射デバイス202と同様の形状を有する切抜きを含んでもよく、それにより、注射デバイス202が包装210内で所定の向きに嵌まることが可能になる。また包装210は、磁石212(たとえば、永久磁石)を含んでもよく、これは、注射デバイス202が包装210内に位置するときに磁気抵抗センサ204がある位置にまたはその近くに配設される。いくつかの実施形態では、磁石212は、包装の表面下に埋め込まれる(たとえば、包装のボール紙の形で埋め込まれる)。
【0037】
磁石212は、注射デバイス202が包装210内に位置するときに、閾値量を満足する量を有する磁場を磁気抵抗センサ204に提供するように構成される。したがって、製造後に、注射デバイス202をスリープ状態に置き、包装210に挿入してもよい。注射デバイス202が包装210内に保たれる間は、磁石212が閾値を満足する量の磁場を提供し、磁気抵抗センサ204がリセット信号をマイクロコントローラ120に提供しないようにする。
【0038】
患者が最初に使用する前に、患者は、包装210から注射デバイス202を取り出してもよい。注射デバイス202が、磁石212の近位から取り出されると、磁気抵抗センサ204によって検知される磁界はもはや閾値量を満足せず、それに応答して、磁気抵抗センサ204が、マイクロコントローラ120をリセットし有効状態に入らせる信号をマイクロコントローラ120に提供する。
【0039】
いくつかの実施形態では、磁石212を、注射デバイスの内側針キャップ116、外側針キャップ117、および/またはキャップ118のうちの1つまたはそれ以上に組み込んでもよい。こうした構成では、磁石212は、キャップ116、117、および/または118が注射デバイス202に取り付けられたときに、閾値量を満足する量を有する磁場を磁気抵抗センサ204に提供するように構成される。患者が最初に使用する前に、患者は、注射デバイス202からキャップ116、117、および/または118を取り外してもよく、それにより、磁気抵抗センサ204によって検知される磁界がもはや閾値量を満足しないようにし、それに応答して、マイクロコントローラ120をリセットし有効状態に入らせる。
【0040】
図3は、注射デバイス302の別の例を示す。部材115に組み込まれる構成要素のうちの1つまたはそれ以上が、図1に関して説明したものとは異なっていることを除き、図2の注射デバイス202と同じく、注射デバイス302は図1の注射デバイス102と実質的に同様である。
【0041】
注射デバイス302は、マイクロコントローラ120に電気的に接続された光センサ304を含む。いくつかの実施形態では、光センサ304はフォトダイオード(たとえば、リバースドリブン(reverse driven)発光ダイオード(LED))および/またはフォトレジスタであってもよい。光センサ304を、リセット動作に関連したマイクロコントローラ120のピン(たとえば、リセット回路に接続されたピン)に接続してもよい。光センサ304は、検知した光の強度に基づき、電気信号を提供するように構成される。たとえば、閾値強度を満足する光が検出されると、光センサ304は、マイクロコントローラ120をリセットし有効状態に入らせる信号をマイクロコントローラ120に提供するように構成される。特に、光センサ304は、マイクロコントローラ120の特定のピンを電気的に接続させる信号をマイクロコントローラ120に提供し、それにより、リセットを開始するマイクロコントローラ120のリセット回路を起動し、患者によってその後使用できるようにマイクロコントローラ120が全機能を再開できる有効状態に、マイクロコントローラ120が入れるようにしてもよい。
【0042】
いくつかの実施形態では、上述したように、マイクロコントローラ120は、マイクロコントローラ120がリセットされ、スリープ状態から退出し、有効状態に入った後、特定の長さの時間にわたって追加のリセットを無効にするように構成される。こうした機能により、(たとえば、周囲の検知された光が閾値強度を満足する場合に)マイクロコントローラ120が連続してリセット状態に保たれることを防止できる。
【0043】
いくつかの実施形態では、カートリッジ104および部材115は、光を透過できる透明な材料から作られ、それにより光センサ304が光を検出できるようになる。いくつかの実施形態では、カートリッジ104および部材115は、光センサ304の近位に位置する透明窓を含んでもよい。
【0044】
いくつかの実施形態では、注射デバイス302は製造後に、光センサ304に与えられる光を抑えかつ/またはなくす包装に包装される。いくつかの実施形態では、光センサ304に与えられる光を抑えかつ/またはなくす1つまたはそれ以上のステッカおよび/またはカバーを、カートリッジ104の外側表面に加えてもよい。こうして、マイクロコントローラ120は、包装内にある間、かつ/またはステッカおよび/もしくはカバーが存在する間、スリープ状態に保たれる。いくつかの実施形態では、マイクロコントローラ120にリセット信号を提供することを光センサ304に行わせるのに必要な光の閾値強度は、周囲光がリセットをトリガしないようなものとすることができる。たとえば、患者が最初に使用する前に、患者は、包装から注射デバイス302を取り出してもよく、かつ/またはステッカおよび/もしくはカバーを取り除いてもよいが、それだけでは、マイクロコントローラ120のリセットはトリガされない。十分な強度の光が光センサ304に提供されるように、注射デバイス302を光源(たとえば、ランプ)の下で保持するように患者に指示してもよい。いくつかの実施形態では、閾値強度の光が得られるように、光センサ304に(たとえば、レーザポインタから)レーザ光を照射するように患者に指示してもよい。閾値を満足する強度を有する光を検知すると、光センサ304は、マイクロコントローラ120をリセットし有効状態に入らせる信号をマイクロコントローラ120に提供する。
【0045】
いくつかの実施形態では、光を検知するように構成された光センサ304を含む注射デバイス302の代わりに、またはそれに加えて、注射デバイス302は、X線ダイオードがX線放射を検知したときにマイクロコントローラ120を有効状態に入らせるように構成されたX線ダイオードを含んでもよい。マイクロコントローラ120に関するX線ダイオードの構成は、(閾値強度を満足する光ではなく)X線放射が検知されたときにリセット信号を提供するようにX線ダイオードが構成されていることを除き、光センサ304に関して上述したものと実質的に同様であってもよい。いくつかの実施形態では、X線デバイスを使用してX線ダイオードにX線パルスを印加するように、ユーザに指示してもよい。いくつかの実施形態では、X線パルスは、(たとえば、患者が注射デバイス302を受け取る前に)医療従事者によって印加される。たとえば、マイクロコントローラ120をリセットするために使用されるX線パルスは、注射デバイス302を試験するためなど、製造後、患者によって使用される前に印加される。本明細書に記載の実施形態のうち1つまたはそれ以上では、注射デバイスの1回またはそれ以上のリセットが、試験および/または使用の異なる段階で行われてもよい(たとえば、製造後、試験/キャリブレーション中、患者が最初に使用する前、患者が最初に使用している間、患者がその後使用する際など)。
【0046】
図4は、注射デバイス402の別の例を示す。部材115に組み込まれる構成要素のうちの1つまたはそれ以上が、図1に関して説明したものとは異なっていることを除き、図2および図3の注射デバイス202、302と同じく、注射デバイス402は図1の注射デバイス102と実質的に同様である。
【0047】
注射デバイス402は、マイクロコントローラ120に電気的に接続されたサーミスタ404などの温度依存性抵抗器を含む。サーミスタ404を、リセット動作に関連したマイクロコントローラ120のピン(たとえば、リセット回路に接続されたピン)に接続してもよい。サーミスタ404は、検知した温度に基づき、電気信号を提供するように構成される。たとえば、閾値を満足する温度をサーミスタ404が検知すると、サーミスタ404は、マイクロコントローラ120をリセットし有効状態に入らせる信号をマイクロコントローラ120に提供するように構成される。特に、サーミスタ404は、マイクロコントローラ120の特定のピンを電気的に接続させる信号をマイクロコントローラ120に提供し、それにより、リセットを開始するマイクロコントローラ120のリセット回路を起動し、患者によってその後使用できるようにマイクロコントローラ120が全機能を再開できる有効状態に、マイクロコントローラ120が入れるようにしてもよい。
【0048】
いくつかの実施形態では、注射デバイス402の製造後、移送中、および患者が受け取るまで、注射デバイス402を特定の温度範囲内に維持してもよい。いくつかの実施形態では、特定の温度範囲は、おおよそ2℃~約8℃とすることができる。いくつかの実施形態では、特定の温度範囲は、おおよそ-4℃~約4℃とすることができる。適切な温度範囲は、特定の薬剤に基づき、適切な条件を確保するように選択することができる。注射デバイス402が移送中に維持される温度範囲は、閾値温度が満足されず、したがってサーミスタ404がマイクロコントローラ120にリセット信号を提供しないようなものとすることができる。患者が注射デバイス402を受け取ると、注射デバイスは、閾値温度を満足する温度(たとえば、室温)に晒される。次いで、サーミスタ404は、マイクロコントローラ120をリセットし有効状態に入らせる信号をマイクロコントローラ120に提供する。
【0049】
いくつかの実施形態では、閾値温度は相対的に高くてもよい(たとえば、室温より高くてもよい)。たとえば閾値温度は、閾値温度に到達するために患者がサーミスタ404に熱を加えることが必要なものであってもよい。いくつかの例では、注射デバイス402、特にサーミスタ404を含む注射デバイス402の部分に熱を加えるように、患者に指示してもよい。いくつかの実施形態では、閾値温度に到達するためにヒートガンおよび/またはレーザを使用してサーミスタ404に熱を加え、それによりマイクロコントローラ120にリセット信号を送信することをサーミスタ404に行わせるように、患者に指示してもよい。
【0050】
図5は、注射デバイス502の別の例を示す。部材115に組み込まれる構成要素のうちの1つまたはそれ以上が、図1に関して説明したものとは異なっていることを除き、図2図4の注射デバイス202、302、402と同じく、注射デバイス502は図1の注射デバイス102と実質的に同様である。
【0051】
注射デバイス502は、マイクロコントローラ120に電気的に接続されたWi-Fiセンサ504を含む。いくつかの実施形態では、Wi-Fiセンサ504は、セラミックアンテナである。Wi-Fiセンサ504を、リセット動作に関連したマイクロコントローラ120のピン(たとえば、リセット回路に接続されたピン)に接続してもよい。Wi-Fiセンサ504は、検知したWi-Fi放射に基づき電気信号を提供するように構成される。たとえば、Wi-Fiセンサ504によりWi-Fi放射が検出されると、Wi-Fiセンサ504は、マイクロコントローラ120をリセットし有効状態に入らせる信号をマイクロコントローラ120に提供するように構成される。特に、Wi-Fiセンサ504は、マイクロコントローラ120の特定のピンを電気的に接続させる信号をマイクロコントローラ120に提供し、それにより、リセットを開始するマイクロコントローラ120のリセット回路を起動し、患者によってその後使用できるようにマイクロコントローラ120が全機能を再開できる有効状態に、マイクロコントローラ120が入れるようにしてもよい。
【0052】
いくつかの実施形態では、Wi-Fiセンサ504によって検出されたWi-Fi放射は、周囲のWi-Fi信号から(たとえば、ワイヤレスルータ、モバイル電子デバイスなどから)発せられたものでもよい。こうしたWi-Fi信号は通常、ほとんどの家庭および職場で普及している。いくつかの実施形態では、注射デバイス502は、注射デバイス502と、注射デバイス502を収容し、Wi-Fi放射をWi-Fiセンサ504から遮断するように構成された包装510とを含むシステムの一部として、提供される。包装510は、電磁石保護層を含んでもよい。注射デバイス502を、製造後に包装してもよく、移送中、および患者によって受け取られるまで包装510内に保ってもよい。患者が注射デバイス502を受け取ると、患者はWi-Fi遮断包装510から注射デバイス502を取り出し、それによりWi-Fiセンサ504を周囲のWi-Fi放射に晒してもよい。こうしたWi-Fi放射により、Wi-Fiセンサ504がリセット信号をマイクロコントローラ120に提供する。いくつかの実施形態では、包装510は、アルミニウムなどの材料から作られるが、他の好適な材料を追加的または代替的に使用してもよい。
【0053】
いくつかの実施形態では、Wi-Fiセンサ504は、検知したWi-Fi放射が閾値量(たとえば閾値信号強度)を満足するときに、リセット信号を提供してもよい。いくつかの実施形態では、閾値量を達成するために、Wi-Fi信号源(たとえば、ワイヤレスルータ、モバイル電子デバイスなど)の近くに注射デバイス502を位置付けるよう、患者に指示してもよい。
【0054】
図6は、注射デバイス602の別の例を示す。部材115に組み込まれる構成要素のうちの1つまたはそれ以上が、図1に関して説明したものとは異なっていることを除き、図2図5の注射デバイス202、302、402、502と同じく、注射デバイス602は図1の注射デバイス102と実質的に同様である。
【0055】
注射デバイス602は、アンテナと、無線自動識別(RFID)センサなど、電磁信号(たとえば、無線信号)を受け取るように構成されたセンサとを含む。図6に示す例では、注射デバイス602は、マイクロコントローラ120に電気的に接続された近距離無線通信(NFC)センサ604(たとえば、NFCリーダおよび/またはNFCアンテナ)を含む。NFCセンサ604を、リセット動作に関連したマイクロコントローラ120のピン(たとえば、リセット回路に接続されたピン)に接続してもよい。NFCセンサ604は、コンピューティングデバイスのNFC要素612(たとえば、NFCタグ、NFCセンサ/リーダ/アンテナなど)からNFC信号を受信するように構成される。いくつかの実施形態では、コンピューティングデバイスは、モバイルフォン610(たとえば、スマートフォン)などのモバイルコンピューティングデバイスであってもよいが、電子タブレット、ラップトップコンピュータ、ウェアラブル電子デバイスなどを含むがこれらに限定されない他のコンピューティングデバイスを追加的または代替的に使用してもよい。患者が最初に使用する前に、注射デバイス602をモバイルフォン610の近位に位置付けるように、患者に指示してもよい。注射デバイス602が、モバイルフォン610の十分な距離の範囲内にあるとき、NFCセンサ604は、NFC要素612から信号を受信する。次いで、NFCセンサ604は、マイクロコントローラ120をリセットし有効状態に入らせる信号をマイクロコントローラ120に提供するように構成される。特に、NFCセンサ604は、マイクロコントローラ120の特定のピンを電気的に接続させる信号をマイクロコントローラ120に提供し、それにより、リセットを開始するマイクロコントローラ120のリセット回路を起動し、患者によってその後使用できるようにマイクロコントローラ120が全機能を再開できる有効状態に、マイクロコントローラ120が入れるようにしてもよい。
【0056】
いくつかの実施形態では、NFCセンサ604を含む注射デバイス602の代わりに、またはそれに加えて、注射デバイス602は、短距離ワイヤレス通信プロトコルを使用して通信するように構成された1つまたはそれ以上の他のセンサを含んでもよい。たとえば、注射デバイス602は、Bluetooth信号を検出するように構成されたBluetoothアンテナを含むセンサを含んでもよい。同様に、モバイルフォン610は、BluetoothアンテナにBluetooth信号を提供するように構成された(たとえばBluetoothアンテナを含む)Bluetooth要素を含んでもよい。患者が最初に使用する前に、注射デバイス602をモバイルフォン610の近位に位置付けるように、患者に指示してもよい。注射デバイス602が、モバイルフォン610の十分な距離の範囲内にあるとき、BluetoothアンテナはBluetooth要素から信号を受信し、次いでBluetoothアンテナは、マイクロコントローラ120をリセットし有効状態に入らせる信号をマイクロコントローラ120に提供する。
【0057】
図7は、注射デバイス702の別の例を示す。部材115に組み込まれる構成要素のうちの1つまたはそれ以上が、図1に関して説明したものとは異なっていることを除き、図2図6の注射デバイス202、302、402、502、602と同じく、注射デバイス702は図1の注射デバイス102と実質的に同様である。
【0058】
注射デバイス702は、マイクロコントローラ120に電気的に接続された共振回路704を含む。共振回路704を、リセット動作に関連したマイクロコントローラ120のピン(たとえば、リセット回路に接続されたピン)に接続してもよい。共振回路704は、インダクタ、キャパシタ、および整流ダイオードを含み、これらは、共振回路704が特定の周波数(たとえば、共振周波数)に同調するように特定の値を有するように配置される。共振回路704は、特定の周波数を有する磁場を検知するように構成される。共振回路704が、特定の周波数を有する磁場を検知すると、共振回路704において電圧が生成され、それにより共振回路704は、マイクロコントローラ120をリセットし有効状態に入らせる信号をマイクロコントローラ120に提供する。特に、共振回路704は、マイクロコントローラ120の特定のピンを電気的に接続させる信号をマイクロコントローラ120に提供し、それにより、リセットを開始するマイクロコントローラ120のリセット回路を起動し、患者によってその後使用できるようにマイクロコントローラ120が全機能を再開できる有効状態に、マイクロコントローラ120が入れるようにしてもよい。いくつかの実施形態では、共振周波数は、おおよそ50kHz~2MHzの範囲内(たとえば、100kHz、1MHzなど)であってもよい。いくつかの実施形態では、共振周波数は、一般的に利用可能なデバイスにより通常は生成されない周波数とすることができる。こうして、マイクロコントローラの意図しないリセットを最小限に抑えることができる。
【0059】
いくつかの実施形態では、特定の(たとえば共振)周波数を有する磁場は、別個の電子デバイスによって提供される。こうした電子デバイスを、注射デバイス702とともに患者に提供してもよい。いくつかの実施形態では、特定の周波数の磁場を生成可能なこうした電子デバイスは、安全性を向上させることができる。特に、マイクロコントローラ120をリセットするために特定の周波数を有する磁場が必要なので、こうした磁場を生成可能なデバイスにアクセスできる者だけが、マイクロコントローラ120をリセットし、マイクロコントローラ120を有効状態に入らせることができる。
【0060】
図8aおよび図8bは、注射デバイス802、803の他の例を示す。部材115に組み込まれる構成要素のうちの1つまたはそれ以上が、図1に関して説明したものとは異なっていることを除き、図2図7の注射デバイス202、302、402、502、602、702と同じく、注射デバイス802、803は図1の注射デバイス102と実質的に同様である。
【0061】
図8aを参照すると、注射デバイス802は、マイクロコントローラ120に電気的に接続された回路804を含む。回路804を、リセット動作に関連したマイクロコントローラ120のピン(たとえば、リセット回路に接続されたピン)に接続してもよい。回路804は、トランジスタ806、ヒューズ808、およびバッテリ810などの電源を含んでもよい。図示する例では、回路804は、トランジスタ806が自己導電性のN型MOS電界効果トランジスタ(FET)、(たとえば、通常開のN型MOSFET)であるように配置されるが、P型MOSFETなどの他のトランジスタを追加的または代替的に使用してもよい。回路804の初期状態では(たとえば、ヒューズ808が飛んでいないとき)、リセット信号はマイクロコントローラ120に提供されない。ヒューズ808が飛んだとき、(たとえば、入力電圧または電流の形の)リセット信号がマイクロコントローラ120に加えられるようにトランジスタ806が切り替わり、それによりマイクロコントローラ120をリセットし、スリープ状態から退出させ、有効状態に入らせる。特に、ヒューズ808が飛ぶと、トランジスタ806は、マイクロコントローラ120の特定のピンを電気的に接続させる信号をマイクロコントローラ120に提供し、それにより、リセットを開始するマイクロコントローラ120のリセット回路を起動し、患者によってその後使用できるようにマイクロコントローラ120が全機能を再開できる有効状態に、マイクロコントローラ120が入れるようにしてもよい。
【0062】
いくつかの実施形態では、回路804は、初期状態で(たとえば、ヒューズ808が飛んでいないときに)、トランジスタ806がマイクロコントローラ120をバッテリ810から電気的に絶縁するように配置される。ヒューズ808が飛んだとき、トランジスタ806がマイクロコントローラ120をバッテリ810に電気的に接続するように、トランジスタ806が切り替わる。こうして、マイクロコントローラ120は、患者によって使用できる準備ができるまで、(たとえば、スリープ状態に保たれるのではなく)電力オフの状態に保たれる。バッテリ810に接続されると、マイクロコントローラ120は、患者によってその後使用できるようにマイクロコントローラ120が全機能を再開できる有効状態に入ることができる。
【0063】
図8bを参照すると、注射デバイス803は、マイクロコントローラ120に電気的に接続された回路814を含む。回路814を、リセット動作に関連したマイクロコントローラ120のピン(たとえば、リセット回路に接続されたピン)に接続してもよい。回路814は、トランジスタ816、ヒューズ818、およびバッテリ820などの電源を含んでもよい。図示する例では、トランジスタ816が自己ロック式(self-locking)のN型MOS電界効果トランジスタ(FET)、(たとえば、通常閉のN型MOSFET)であるように回路814が配置されることを除き、回路814は、図8aに関して上述した回路804と実質的に同様のやり方で動作してもよいが、P型MOSFETなどの他のトランジスタを追加的または代替的に使用してもよい。回路814の初期状態では(たとえば、ヒューズ818が飛んでいないとき)、リセット信号はマイクロコントローラ120に提供されない。ヒューズ818が飛んだとき、(たとえば、入力電圧または電流の形の)リセット信号がマイクロコントローラ120に加えられるように、トランジスタ816が切り替わり、それによりマイクロコントローラ120をリセットし、スリープ状態から退出させ、有効状態に入らせる。特に、ヒューズ818が飛ぶと、トランジスタ816は、マイクロコントローラ120の特定のピンを電気的に接続させる信号をマイクロコントローラ120に提供し、それにより、リセットを開始するマイクロコントローラ120のリセット回路を起動し、患者によってその後使用できるようにマイクロコントローラ120が全機能を再開できる有効状態に、マイクロコントローラ120が入れるようにしてもよい。
【0064】
図8aの回路804と同じく、いくつかの実施形態では、回路814は、初期状態で(たとえば、ヒューズ818が飛んでいないときに)、トランジスタ816がマイクロコントローラ120をバッテリ820から電気的に絶縁するように配置される。ヒューズ818が飛んだとき、トランジスタ816がマイクロコントローラ120をバッテリ820に電気的に接続するように、トランジスタ816が切り替わる。こうして、マイクロコントローラ120は、患者によって使用できる準備ができるまで、(たとえば、スリープ状態に保たれるのではなく)電力オフの状態に保たれる。バッテリ820に接続されると、マイクロコントローラ120は、患者によってその後使用できるようにマイクロコントローラ120が全機能を再開できる有効状態に入ることができる。
【0065】
回路804、814は、図8aおよび図8bに示すものとは異なる構成を有してもよい。たとえば、いくつかの実施形態では、回路804、814は、1つもしくはそれ以上の追加のトランジスタ806、816、および/または1つもしくはそれ以上の追加のヒューズ808、818を含んでもよい。
【0066】
ヒューズ806、816は、光源(たとえば、レーザ光源)の照射に応答して、飛んでもよい。たとえば、レーザ光がヒューズ806、816に熱を加え、それによりヒューズ806、816が飛んでもよい。注射デバイス802、803とともに提供される別個の電子デバイスによって、レーザ光を供給してもよい。患者が最初に注射デバイス802、803を使用する前に、ヒューズ806、816を飛ばすために電子デバイスを操作してレーザ光を照射するように、患者に指示してもよい。いくつかの実施形態では、カートリッジ104および部材115は、光を透過できる透明な材料から作られ、それによりレーザ光をヒューズ806、816に照射できるようになる。いくつかの実施形態では、カートリッジ104および部材115は、ヒューズ806、816の近位に位置する透明窓を含んでもよい。
【0067】
図9は、注射デバイス902の別の例を示す。部材115に組み込まれる構成要素のうちの1つまたはそれ以上が、図1に関して説明したものとは異なっていることを除き、図2図8bの注射デバイス202、302、402、502、602、702、802、803と同じく、注射デバイス902は図1の注射デバイス102と実質的に同様である。さらに、追加の構成要素がカバー918に組み込まれる。
【0068】
図示する例では、注射デバイス902は、電源からエネルギーを取り入れるように構成され、取り入れたエネルギーを使用して、マイクロコントローラ120に給電する。特に、注射デバイス902は、カバー918(たとえば、針カバー)に組み込まれた第1の回路914から電力を受け取るように構成された第2の回路904を含む。
【0069】
第1の回路914は、電源917(たとえば、AC電源)、および第1の誘導コイル916(たとえば、一次コイル)を含む。電源917は、ACコンセントにより供給され、カバー918は、ACコンセントに差し込んで回路914にAC電力を供給するように構成された電力コードを含んでもよい。いくつかの実施形態では、カバー918は、使用していないときに注射デバイス902を支持するように構成された台(たとえば、スタンド)に組み込まれる。電源917は、第1の誘導コイル916に電力を提供して、第2の回路904が受け取ることになる電磁場を第1の誘導コイル916に生成させる。
【0070】
第2の回路904は、第1の誘導コイル916によって生成された電磁場から電力を生成する。特に、第2の回路904は第2の誘導コイル906を含み、これは、第1の誘導コイル916からの電磁場を受け取り、受け取った電磁場を使用して電力を生成するように構成される。第2の回路904は、スーパーキャパシタ907などのキャパシタも含み、これは、第2の誘導コイル906によって生成された電力を蓄えるように構成される。第2の回路904は、DCを通過可能にするダイオード908も含む。スーパーキャパシタ907は、蓄えた電力を、ダイオード908を介してマイクロコントローラ120に提供することができる。いくつかの実施形態では、スーパーキャパシタ907は、別個の電源の代わりに(たとえば、バッテリの代わりに)設けられる。こうして、注射デバイス902は、バッテリ(たとえば、再充電可能バッテリ)を必要とせずに、動作することができる。しかしいくつかの実施形態では、スーパーキャパシタ907を、再充電可能バッテリなどの別の電源(たとえば、再充電可能電源)で置き換えてもよい。
【0071】
キャップ918が、部材115の閾値範囲内にあるとき(たとえば、キャップ918が注射デバイス902のハウジング103に取り付けられたとき)、第1の誘導コイル916と第2の誘導コイル906は、誘導充電を可能にする電磁リンクを形成する。こうして、第1の誘導コイル916および第2の誘導コイル906は、スーパーキャパシタ907を充電するトランスとして作用する。キャップ918が、もはや部材115の閾値範囲内にないとき(たとえば、患者によって使用される前に、キャップ918がハウジング103から取り外されたとき)、電磁リンクは一時的に破断され、誘導充電は停止される。しかし、リンクが破断しても、スーパーキャパシタ907に蓄えられた電力を使用して、マイクロコントローラ120に給電することができる。スーパーキャパシタ907に蓄えられた電力が失われると、キャップ918をハウジング103に再び取り付け、誘導充電によってスーパーキャパシタ907を再充電することができる。
【0072】
いくつかの実施形態では、スーパーキャパシタ907は、(たとえば、従来のキャパシタに比べて)相対的に大容量の蓄電を実現する電気二重層キャパシタ(EDLC)である。スーパーキャパシタ907は、従来のキャパシタよりはるかに高い容量値を有してもよく、単位体積または単位質量あたり、電解キャパシタより10倍~100倍のエネルギーを蓄えることができる。さらに、スーパーキャパシタ907は、再充電可能バッテリによって通常提供される速度よりも大幅に高速で、電荷を受容し送達できる。
【0073】
図10は、例示的なコンピュータシステム100のブロック図である。たとえば、図1図9のマイクロコントローラ120、および/または図6のコンピューティングデバイス(たとえば、モバイルフォン610)は、コンピュータシステム1000の例とすることができる。いくつかの実装形態では、注射デバイスを、別個のコンピュータシステム1000と相互作用するように構成してもよい。システム1000は、プロセッサ1010、メモリ1020、記憶デバイス1030、および入力/出力デバイス1040を含む。構成要素1010、1020、1030、および1040のそれぞれを、たとえばシステムバス1050を使用して相互接続することができる。プロセッサ1010は、システム1000内で実行するための命令を処理することができる。プロセッサ1010は、シングルスレッドプロセッサ、マルチスレッドプロセッサ、または量子コンピュータとすることができる。プロセッサ1010は、メモリ1020または記憶デバイス1030に記憶された命令を処理することができる。プロセッサ1010は、上述した動作のうちの1つまたはそれ以上を注射デバイスに実行させることなどの動作を実行してもよい。
【0074】
メモリ1020は、システム1000内の情報を記憶する。いくつかの実施形態では、メモリ1020は、コンピュータ読取り可能媒体である。メモリ1020は、たとえば、揮発性メモリユニットまたは不揮発性メモリユニットとすることができる。いくつかの実施形態では、メモリ1020は、上述した動作に関連した情報を記憶する。
【0075】
記憶デバイス1030は、システム1000のためのマスストレージを提供することができる。いくつかの実施形態では、記憶デバイス1030は、非一時的なコンピュータ読取り可能媒体である。記憶デバイス1030は、たとえば、ハードディスクデバイス、光ディスクデバイス、ソリッドステートドライブ、フラッシュドライブ、磁気テープ、またはいくつかの他の大容量記憶デバイスを含むことができる。記憶デバイス1030は、代替的にクラウド記憶デバイス、たとえばネットワーク上に分散され、ネットワークを使用してアクセスされる複数の物理的記憶デバイスを含む論理記憶デバイスとすることができる。いくつかの実施形態では、メモリ1020に記憶される情報を、追加的または代替的に記憶デバイス1030に記憶することができる。
【0076】
入力/出力デバイス1040は、システム1000のための入力/出力動作を提供する。いくつかの実施形態では、入力/出力デバイス1040は、ネットワークインターフェースデバイス(たとえば、イーサネットカード)、シリアル通信デバイス(たとえば、RS-232ポート)、および/またはワイヤレスインターフェースデバイス(たとえば、短距離ワイヤレス通信デバイス、802.11カード、3Gワイヤレスモデム、または4Gワイヤレスモデム)のうちの1つまたはそれ以上を含む。いくつかの実施形態では、入力/出力デバイス1040は、入力データを受信し、出力データを他の入力/出力デバイス、たとえばキーボード、プリンタ、およびディスプレイデバイス(たとえば、投与量窓113など)に送信するように構成されたドライバデバイスを含む。いくつかの実施形態では、モバイルコンピューティングデバイス、モバイル通信デバイス、および他のデバイスが使用される。
【0077】
いくつかの実施形態では、システム1000は、マイクロコントローラである。マイクロコントローラは、コンピュータシステムの複数の要素を単一の電子パッケージに収容したデバイスである。たとえば、単一の電子パッケージは、プロセッサ1010、メモリ1020、記憶デバイス1030、および入力/出力デバイス1040を収容することができる。
【0078】
例示的な処理システムを図10で説明してきたが、上述した主題および機能的動作の実施形態は、本明細書に開示した構造、およびそれらの構造的等価物、またはそれらのうちの1つもしくはそれ以上の組合せを含む、他のタイプのデジタル電子回路の実施形態、またはコンピュータのソフトウェア、ファームウェア、もしくはハードウェアの実施形態とすることができる。本明細書で説明した主題の実施形態は、1つまたはそれ以上のコンピュータプログラム製品、たとえば、処理システムによって実行するため、または処理システムの動作を制御するために、有形のプログラムキャリア、たとえばコンピュータ読取り可能媒体に符号化されたコンピュータプログラム命令の1つもしくはそれ以上のモジュールとして、実装することができる。コンピュータ読取り可能媒体は、機械読取り可能記憶デバイス、機械読取り可能記憶基板、メモリデバイス、機械読取り可能伝播信号に影響を及ぼす組成物、またはこれらのうちの1つもしくはそれ以上の組合せとすることができる。
【0079】
「コンピュータシステム」という用語は、1つのプログラム可能なプロセッサ、コンピュータ、または複数のプロセッサもしくはコンピュータを例として含む、データを処理するためのすべての装置、デバイス、および機械を包含してもよい。処理システムは、ハードウェアに加えて、当該のコンピュータプログラムの実行環境を生成するコード、たとえばプロセッサファームウェア、プロトコルスタック、データベース管理システム、オペレーティングシステム、またはこれらのうちの1つもしくはそれ以上の組合せを構成するコード含むことができる。
【0080】
コンピュータプログラム(プログラム、ソフトウェア、ソフトウェアアプリケーション、スクリプト、実行可能論理またはコードとしても知られている)は、コンパイラ型もしくはインタープリタ型の言語、または宣言型もしくは手続き型の言語を含む任意の形のプログラミング言語で書くことができ、コンピュータプログラムは、スタンドアロンプログラムとして、またはモジュール、構成要素、サブルーチン、もしくはコンピューティング環境での使用に好適な他のユニットとしての形を含む任意の形で導入することができる。コンピュータプログラムは、1つのファイルシステム内の1つのファイルに必ずしも対応していない。プログラムは、他のプログラムまたはデータを保持するファイルの一部分に記憶することができ(たとえば、マークアップ言語のドキュメントに記憶された1つまたはそれ以上のスクリプト)、当該プログラム専用の単一のファイルに記憶することができ、または調整された複数のファイル(たとえば、1つまたはそれ以上のモジュール、サブプログラム、もしくはコードの一部分を記憶するファイル)に記憶することができる。コンピュータプログラムは、1つのサイトに位置付けられた、または複数のサイトにわたって分散されて通信ネットワークによって相互接続された、1つのコンピュータ上または複数のコンピュータ上で実行されるように導入することができる。
【0081】
コンピュータプログラム命令およびデータを記憶するのに好適なコンピュータ読取り可能媒体は、たとえばEPROM、EEPROM、およびフラッシュメモリデバイスなどの半導体メモリデバイス、たとえば内部ハードディスクもしくはリムーバブルディスク、または磁気テープなどの磁気ディスク;光磁気ディスク;CD-ROMおよびDVD-ROMディスクを例として含む、あらゆる形の不揮発性または揮発性のメモリ、媒体、およびメモリデバイスを含む。プロセッサおよびメモリを、特定用途の論理回路によって補完することができ、またはそれに組み込むことができる。システムの構成要素を、任意の形または媒体のデジタルデータ通信、たとえば通信ネットワークによって相互接続することができる。通信ネットワークの例は、ローカルエリアネットワーク(「LAN」)、および広域ネットワーク(「WAN」)、たとえば、インターネットを含む。
【0082】
本明細書で使用する用語「薬物」または「薬剤」は、1つまたはそれ以上の薬学的に活性な化合物を説明するために本明細書において使用される。以下に説明されるように、薬物または薬剤は、1つまたはそれ以上の疾患を処置するための、様々なタイプの製剤の少なくとも1つの低分子もしくは高分子、またはその組合せを含むことができる。例示的な薬学的に活性な化合物は、低分子;ポリペプチド、ペプチド、およびタンパク質(たとえばホルモン、成長因子、抗体、抗体フラグメント、および酵素);炭水化物および多糖類;ならびに核酸、二本鎖または一本鎖DNA(裸およびcDNAを含む)、RNA、アンチセンスDNAおよびRNAなどのアンチセンス核酸、低分子干渉RNA(siRNA)、リボザイム、遺伝子、およびオリゴヌクレオチドを含むことができる。核酸は、ベクター、プラスミド、またはリポソームなどの分子送達システムに組み込むことができる。これらの薬物の1つまたはそれ以上の混合物もまた、企図される。
【0083】
本明細書において説明される薬物送達デバイスおよび薬物は、数多くの異なるタイプの障害の処置および/または予防に使用することができる。例示的な障害は、たとえば、糖尿病、または糖尿病性網膜症などの糖尿病に伴う合併症、深部静脈血栓塞栓症または肺血栓塞栓症などの血栓塞栓症を含む。さらなる例示的な障害は、急性冠症候群(ACS)、狭心症、心筋梗塞、がん、黄斑変性症、炎症、枯草熱、アテローム性動脈硬化症および/または関節リウマチである。
【0084】
糖尿病または糖尿病に伴う合併症の処置および/または予防のための例示的な薬物は、インスリン、たとえばヒトインスリン、またはヒトインスリン類似体もしくは誘導体、グルカゴン様ペプチド(GLP-1)、GLP-1類似体もしくはGLP-1受容体アゴニスト、またはその類似体もしくは誘導体、ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP4)阻害剤、または薬学的に許容される塩もしくはその溶媒和物、またはそれらの任意の混合物を含む。本明細書において使用される用語「誘導体」は、元の物質と構造的に十分同様のものであり、それによって同様の機能または活性(たとえば治療効果性)を有することができる任意の物質を指す。
【0085】
例示的なインスリン類似体は、Gly(A21),Arg(B31),Arg(B32)ヒトインスリン(インスリングラルギン);Lys(B3),Glu(B29)ヒトインスリン;Lys(B28),Pro(B29)ヒトインスリン;Asp(B28)ヒトインスリン;B28位におけるプロリンがAsp、Lys、Leu、Val、またはAlaで置き換えられており、B29位において、LysがProで置き換えられていてもよいヒトインスリン;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28-B30)ヒトインスリン;Des(B27)ヒトインスリンおよびDes(B30)ヒトインスリンである。
【0086】
例示的なインスリン誘導体は、たとえば、B29-N-ミリストイル-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-パルミトイル-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-ミリストイルヒトインスリン;B29-N-パルミトイルヒトインスリン;B28-N-ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン;B28-N-パルミトイル-LysB28ProB29ヒトインスリン;B30-N-ミリストイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン;B30-N-パルミトイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン;B29-N-(N-パルミトイル-γ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-(N-リトコリル-γ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)-des(B30)ヒトインスリン、およびB29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンである。例示的なGLP-1、GLP-1類似体およびGLP-1受容体アゴニストは、たとえば:リキシセナチド(Lixisenatide)/AVE0010/ZP10/リキスミア(Lyxumia)、エキセナチド(Exenatide)/エクセンディン-4(Exendin-4)/バイエッタ(Byetta)/ビデュリオン(Bydureon)/ITCA650/AC-2993(アメリカドクトカゲの唾液腺によって産生される39アミノ酸ペプチド)、リラグルチド(Liraglutide)/ビクトザ(Victoza)、セマグルチド(Semaglutide)、タスポグルチド(Taspoglutide)、シンクリア(Syncria)/アルビグルチド(Albiglutide)、デュラグルチド(Dulaglutide)、rエクセンディン-4、CJC-1134-PC、PB-1023、TTP-054、ラングレナチド(Langlenatide)/HM-11260C、CM-3、GLP-1エリゲン、ORMD-0901、NN-9924、NN-9926、NN-9927、ノデキセン(Nodexen)、ビアドール(Viador)-GLP-1、CVX-096、ZYOG-1、ZYD-1、GSK-2374697、DA-3091、MAR-701、MAR709、ZP-2929、ZP-3022、TT-401、BHM-034、MOD-6030、CAM-2036、DA-15864、ARI-2651、ARI-2255、エキセナチド(Exenatide)-XTENおよびグルカゴン-Xtenである。
【0087】
例示的なオリゴヌクレオチドは、たとえば:家族性高コレステロール血症の処置のためのコレステロール低下アンチセンス治療薬である、ミポメルセン(mipomersen)/キナムロ(Kynamro)である。
【0088】
例示的なDPP4阻害剤は、ビルダグリプチン(Vildagliptin)、シタグリプチン(Sitagliptin)、デナグリプチン(Denagliptin)、サキサグリプチン(Saxagliptin)、ベルベリン(Berberine)である。
【0089】
例示的なホルモンは、ゴナドトロピン(フォリトロピン、ルトロピン、コリオンゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン(ソマトロピン)、デスモプレシン、テルリプレシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、ロイプロレリン、ブセレリン、ナファレリン、およびゴセレリンなどの、脳下垂体ホルモンまたは視床下部ホルモンまたは調節性活性ペプチドおよびそれらのアンタゴニストを含む。
【0090】
例示的な多糖類は、グルコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ヘパリン、低分子量ヘパリン、もしくは超低分子量ヘパリン、またはそれらの誘導体、または上述の多糖類の硫酸化形態、たとえば、ポリ硫酸化形態、および/または、薬学的に許容されるそれらの塩を含む。ポリ硫酸化低分子量ヘパリンの薬学的に許容される塩の例としては、エノキサパリンナトリウムがある。ヒアルロン酸誘導体の例としては、HylanG-F20/Synvisc、ヒアルロン酸ナトリウムがある。
【0091】
本明細書において使用する用語「抗体」は、免疫グロブリン分子またはその抗原結合部分を指す。免疫グロブリン分子の抗原結合部分の例は、抗原を結合する能力を保持するF(ab)およびF(ab’)2フラグメントを含む。抗体は、ポリクローナル、モノクローナル、組換え型、キメラ型、非免疫型またはヒト化、完全ヒト型、非ヒト型(たとえばマウス)、または一本鎖抗体とすることができる。いくつかの実施形態では、抗体はエフェクター機能を有し、補体を固定することができる。いくつかの実施形態では、抗体は、Fc受容体と結合する能力が低く、または結合することはできない。たとえば、抗体は、アイソタイプもしくはサブタイプ、抗体フラグメントまたは変異体とすることができ、Fc受容体との結合を支持せず、たとえば、これは、突然変異したまたは欠失したFc受容体結合領域を有する。
【0092】
用語「フラグメント」または「抗体フラグメント」は、全長抗体ポリペプチドを含まないが、抗原と結合することができる全長抗体ポリペプチドの少なくとも一部分を依然として含む、抗体ポリペプチド分子(たとえば、抗体重鎖および/または軽鎖ポリペプチド)由来のポリペプチドを指す。抗体フラグメントは、全長抗体ポリペプチドの切断された部分を含むことができるが、この用語はそのような切断されたフラグメントに限定されない。本発明に有用である抗体フラグメントは、たとえば、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、scFv(一本鎖Fv)フラグメント、直鎖抗体、二重特異性、三重特異性、および多重特異性抗体(たとえば、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ)などの単一特異性または多重特異性抗体フラグメント、ミニボディ、キレート組換え抗体、トリボディまたはバイボディ、イントラボディ、ナノボディ、小モジュラー免疫薬(SMIP)、結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質、ラクダ化抗体、およびVHH含有抗体を含む。抗原結合抗体フラグメントのさらなる例は、当技術分野で知られている。
【0093】
用語「相補性決定領域」または「CDR」は、特異的抗原認識を仲介する役割を主に担う重鎖および軽鎖両方のポリペプチドの可変領域内の短いポリペプチド配列を指す。用語「フレームワーク領域」は、CDR配列ではなく、CDR配列の正しい位置決めを維持して抗原結合を可能にする役割を主に担う重鎖および軽鎖両方のポリペプチドの可変領域内のアミノ酸配列を指す。フレームワーク領域自体は、通常、当技術分野で知られているように、抗原結合に直接的に関与しないが、特定の抗体のフレームワーク領域内の特定の残基が、抗原結合に直接的に関与することができ、またはCDR内の1つまたはそれ以上のアミノ酸が抗原と相互作用する能力に影響を与えることができる。
【0094】
例示的な抗体は、アンチPCSK-9mAb(たとえばアリロクマブ(Alirocumab))、アンチIL-6mAb(たとえばサリルマブ(Sarilumab))、およびアンチIL-4mAb(たとえばデュピルマブ(Dupilumab))である。
【0095】
本明細書において説明される化合物は、(a)化合物または薬学的に許容されるその塩、および(b)薬学的に許容される担体を含む医薬製剤において使用することができる。化合物はまた、1つまたはそれ以上の他の医薬品有効成分を含む医薬製剤、または存在する化合物またはその薬学的に許容される塩が唯一の有効成分である医薬製剤において使用することもできる。したがって、本開示の医薬製剤は、本明細書において説明される化合物および薬学的に許容される担体を混合することによって作られる任意の製剤を包含する。
【0096】
本明細書において説明される任意の薬物の薬学的に許容される塩もまた、薬物送達デバイスにおける使用に企図される。薬学的に許容される塩は、たとえば酸付加塩および塩基性塩である。酸付加塩は、たとえば、HClまたはHBr塩である。塩基性塩は、たとえば、アルカリもしくはアルカリ土類金属、たとえばNa+、もしくはK+、もしくはCa2+、またはアンモニウムイオンN+(R1)(R2)(R3)(R4)(式中、R1からR4は互いに独立して:水素、場合により置換されたC1~C6-アルキル基、場合により置換されたC2~C6-アルケニル基、場合により置換されたC6~C10-アリル基、または場合により置換されたC6~C10-ヘテロアリール基を意味する)から選択されるカチオンを有する塩である。薬学的に許容される塩のさらなる例は、当業者に知られている。
【0097】
薬学的に許容される溶媒和物は、たとえば、水和物またはメタノラート(methanolate)またはエタノラート(ethanolate)などのアルカノラート(alkanolate)である。
【0098】
本明細書に記載の物質、処方、装置、方法、システム、デバイス、および実施形態の様々な構成要素の修正(たとえば、調節、追加、または除去など)は、本発明の概念の完全な範囲および趣旨から逸脱することなく行うことができ、本発明の概念の完全な範囲および趣旨は、そうした修正およびその任意の等価物を包含することを、当業者は理解するであろう。
【0099】
本明細書に記載のシステムおよび技法の多数の実施形態を提示してきた。しかし、こうしたシステムおよび技法の趣旨および範囲から逸脱することなく、様々な修正を行ってもよいことが理解されよう。したがって、他の実施形態は、以下の特許請求の範囲に記載の範囲内にある。
【0100】
条項1:薬物注射デバイス(102)であって:
ある体積の薬物を保持するように構成されたカートリッジ(104)と;
少なくとも有効状態およびスリープ状態で動作するように構成された1つまたはそれ以上のプロセッサ(120)であって、1つまたはそれ以上のプロセッサ(120)が有効状態の間に、薬物注射デバイス(102)の動作を制御するように構成された、1つまたはそれ以上のプロセッサ(120)と;
カートリッジ(104)に配設された部材(115)であって、1つまたはそれ以上のプロセッサ(120)に電気的に接続された少なくとも2つの導電面(122)を含む、部材(115)と;
少なくとも2つの導電面(122)から離間した導電要素(124)を含む駆動機構(106)と
を備え、ここで1つまたはそれ以上のプロセッサ(120)は、導電要素(124)が少なくとも2つの導電面(122)に電気接触するとき、スリープ状態から有効状態に入るように構成された、前記薬物注射デバイス。
【0101】
条項2:部材(115)はストッパであり、導電要素(124)は、駆動機構(106)のプランジャ(107)の下面に配設される、条項1に記載の薬物注射デバイス(102)。
【0102】
条項3:導電要素(124)は、駆動機構(106)の係合に応答して、部材(115)に向かって移動し、少なくとも2つの導電面(122)と電気接触するように構成された、条項1に記載の薬物注射デバイス(102)。
【0103】
条項4:駆動機構(106)は、薬物注射デバイス(102)のプライミング中に係合される、条項3に記載の薬物注射デバイス(102)。
【0104】
条項5:導電要素(124)が少なくとも2つの導電面(122)と電気接触することにより、1つまたはそれ以上のプロセッサ(120)のリセット回路が起動される、条項1に記載の薬物注射デバイス(102)。
【0105】
条項6:薬物注射デバイス(102)の動作を1つまたはそれ以上のプロセッサ(120)に制御させるように動作可能な命令を記憶する1つまたはそれ以上の非一時的なコンピュータ読取り可能媒体(1030)をさらに含む、条項1に記載の薬物注射デバイス(102)。
【0106】
条項7:1つまたはそれ以上の非一時的なコンピュータ読取り可能媒体(1030)は、連続的な電力供給なしにデータを記憶するように構成された強誘電性のランダムアクセスメモリ(FRAM)を含む、条項6に記載の薬物注射デバイス(102)。
【0107】
条項8:薬物注射デバイス(202、302、402、502、602、702)であって:
ある体積の薬物を保持するように構成されたカートリッジ(104)と;
少なくとも有効状態およびスリープ状態で動作するように構成された1つまたはそれ以上のプロセッサ(120)であって、1つまたはそれ以上のプロセッサ(120)が有効状態の間に、薬物注射デバイス(202、302、402、502、602、702)の動作を制御するように構成された、1つまたはそれ以上のプロセッサ(120)と;
1つまたはそれ以上のプロセッサ(120)と通信するセンサであって、刺激に応答して、1つまたはそれ以上のプロセッサ(120)をスリープ状態から有効状態に入らせるように構成された、センサと
を備える、前記薬物注射デバイス。
【0108】
条項9:センサは、閾値量を満足する磁場を磁気抵抗センサ(204)が検知しなくなったときに、1つまたはそれ以上のプロセッサ(120)を有効状態に入らせるように構成された磁気抵抗センサ(204)である、条項8に記載の薬物注射デバイス(202)。
【0109】
条項10:薬物注射デバイス(202)は、閾値量を満足する磁場を提供する磁石(212)を含む包装(210)内にあるように構成され、1つまたはそれ以上のプロセッサ(120)は、薬物注射デバイス(202)が包装(210)から取り出されたときに有効状態に入る、条項9に記載の薬物注射デバイス(202)。
【0110】
条項11:薬物注射デバイス(202)のハウジング(103)に取り付けられるように構成されたキャップ(116、117、118)をさらに含み、キャップ(116、117、118)は、閾値量を満足する磁場を提供する磁石(212)を含み、ここで1つまたはそれ以上のプロセッサ(120)は、ハウジング(103)からキャップ(116、117、118)が取り外されたときに有効状態に入る、条項9に記載の薬物注射デバイス(202)。
【0111】
条項12:センサは、閾値強度を満足する光をフォトダイオードまたはフォトレジスタが検知したときに、1つまたはそれ以上のプロセッサ(120)を有効状態に入らせるように構成されたフォトダイオードまたはフォトレジスタのうちの一方または両方を含む、条項8に記載の薬物注射デバイス(302)。
【0112】
条項13:センサは、閾値を満足する温度をサーミスタ(404)が検知したときに、1つまたはそれ以上のプロセッサ(120)を有効状態に入らせるように構成されたサーミスタ(404)である、条項8に記載の薬物注射デバイス(402)。
【0113】
条項14:センサは、X線放射をX線ダイオードが検知したときに、1つまたはそれ以上のプロセッサ(120)を有効状態に入らせるように構成されたX線ダイオードである、条項8に記載の薬物注射デバイス(302)。
【0114】
条項15:センサは、Wi-Fiセンサ(504)がWi-Fi放射を検知したときに、1つまたはそれ以上のプロセッサ(120)を有効状態に入らせるように構成されたWi-Fiセンサ(504)である、条項8に記載の薬物注射デバイス(502)。
【0115】
条項16:薬物注射デバイス(502)は、Wi-Fi放射を遮断する包装(510)内にあるように構成され、1つまたはそれ以上のプロセッサ(120)は、薬物注射デバイス(502)が包装(510)から取り出されたときに有効状態に入る、条項15に記載の薬物注射デバイス(502)。
【0116】
条項17:センサは、近距離無線通信(NFC)センサ(604)がコンピューティングデバイスからNFC信号を受信したときに、1つまたはそれ以上のプロセッサ(120)を有効状態に入らせるように構成されたNFCセンサ(604)である、条項8に記載の薬物注射デバイス(602)。
【0117】
条項18:コンピューティングデバイスはモバイルフォン(610)である、条項17に記載の薬物注射デバイス(602)。
【0118】
条項19:センサは、BluetoothアンテナがコンピューティングデバイスからBluetooth信号を受信したときに、1つまたはそれ以上のプロセッサ(120)を有効状態に入らせるように構成されたBluetoothアンテナを含む、条項8に記載の薬物注射デバイス(602)。
【0119】
条項20:センサは、共振周波数を有する磁場を共振回路(704)が検知したときに、1つまたはそれ以上のプロセッサ(120)を有効状態に入らせるように構成された共振回路(704)を含む、条項8に記載の薬物注射デバイス(702)。
【0120】
条項21:薬物注射デバイス(502)であって:
ある体積の薬物を保持するように構成されたカートリッジ(104)、
少なくとも有効状態およびスリープ状態で動作するように構成された1つまたはそれ以上のプロセッサ(120)であって、1つまたはそれ以上のプロセッサ(120)が有効状態の間に、薬物注射デバイス(502)の動作を制御するように構成された、1つまたはそれ以上のプロセッサ(120)、ならびに
1つまたはそれ以上のプロセッサ(120)と通信するWi-Fiセンサ(504)であって、Wi-Fiセンサ(504)がWi-Fi放射を検知したときに、1つまたはそれ以上のプロセッサ(120)をスリープ状態から有効状態に入らせるように構成された、Wi-Fiセンサ(504)
を含む薬物注射デバイス(502)と;
製造後、患者によって最初に使用されるまで、薬物注射デバイス(502)を収容するように構成された包装(510)であって、薬物注射デバイス(502)が包装(510)から取り出されるまで、1つまたはそれ以上のプロセッサ(120)が有効状態に入らないようにするために、Wi-Fi放射を遮断する材料を含む、包装(510)と
を含むシステム。
【0121】
条項22:薬物注射デバイス(802、803)であって:
ある体積の薬物を保持するように構成されたカートリッジ(104)と:
少なくとも有効状態およびスリープ状態で動作するように構成された1つまたはそれ以上のプロセッサ(120)であって、1つまたはそれ以上のプロセッサ(120)が有効状態の間に、薬物注射デバイス(802、803)の動作を制御するように構成された、1つまたはそれ以上のプロセッサ(120)と;
1つまたはそれ以上のプロセッサ(120)に電気的に接続された回路(804、814)であって、1つまたはそれ以上のトランジスタ(806、816)、および1つまたはそれ以上のヒューズ(808、818)を含み、1つまたはそれ以上のトランジスタ(806、816)は、1つまたはそれ以上のヒューズ(808、818)が飛んだことに応答して、1つまたはそれ以上のプロセッサ(120)をスリープ状態から有効状態に入らせるように構成された、回路(804、814)と
を含む前記薬物注射デバイス。
【0122】
条項23:1つまたはそれ以上のヒューズ(806、816)は、レーザ光の照射に応答して飛ぶ、条項22に記載の薬物注射デバイス(802、803)。
【0123】
条項24:レーザ光は、薬物注射デバイス(802、803)とともに提供される電子デバイスによって照射される、条項23に記載の薬物注射デバイス(802、803)。
【0124】
条項25:レーザ光によって加えられた熱により、1つまたはそれ以上のヒューズ(806、816)が飛ぶ、条項23に記載の薬物注射デバイス(802、803)。
【0125】
条項26:薬物注射デバイス(802、803)であって:
ある体積の薬物を保持するように構成されたカートリッジ(104)と;
薬物注射デバイス(802、803)の動作を制御するように構成された1つまたはそれ以上のプロセッサ(120)と;
1つまたはそれ以上のプロセッサ(120)に電気的に接続された回路(804、814)であって、バッテリ(810、820)、1つまたはそれ以上のトランジスタ(806、816)、および1つまたはそれ以上のヒューズ(808、818)を含み、1つまたはそれ以上のトランジスタ(806、816)は、1つまたはそれ以上のヒューズ(808、818)が飛んでいない状態のときに、1つまたはそれ以上のプロセッサ(120)をバッテリ(810、820)から電気的に絶縁し、1つまたはそれ以上のトランジスタ(806、816)は、1つまたはそれ以上のヒューズ(808、818)が飛んだときに、1つまたはそれ以上のプロセッサ(120)をバッテリ(810、820)に電気的に接続する、回路(804、814)と
を含む前記薬物注射デバイス。
【0126】
条項27:1つまたはそれ以上のヒューズ(808、818)は、レーザ光の照射に応答して飛ぶ、条項26に記載の薬物注射デバイス(802、803)。
【0127】
条項28:レーザ光は、薬物注射デバイス(802、803)とともに提供される電子デバイスによって照射される、条項27に記載の薬物注射デバイス(802、803)。
【0128】
条項29:レーザ光によって加えられた熱により、1つまたはそれ以上のヒューズ(808、818)が飛ぶ、条項27に記載の薬物注射デバイス(802、803)。
【0129】
条項30:薬物注射デバイス(902)であって:
ある体積の薬物を保持するように構成されたカートリッジ(104)と;
薬物注射デバイス(902)の動作を制御するように構成された1つまたはそれ以上のプロセッサ(120)と;
薬物注射デバイス(902)のハウジング(103)に取り付けられるように構成されたカバー(918)であって、電源(917)に電気的に接続されるように構成された第1の誘導コイル(916)を含む、カバー(918)と;
1つまたはそれ以上のプロセッサ(120)に電気的に接続された回路(904)であって、第2の誘導コイル(906)およびスーパーキャパシタ(907)を含み、第2の誘導コイル(906)は、第1の誘導コイル(916)から電磁場を受け取り、スーパーキャパシタ(907)によって蓄えられ1つまたはそれ以上のプロセッサ(120)に提供されることになる電力を生成するように構成された、回路(904)と
を含む、薬物注射デバイス。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8a
図8b
図9
図10