(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】三次元測定システム及び三次元測定方法
(51)【国際特許分類】
G01B 21/00 20060101AFI20231212BHJP
G01B 5/00 20060101ALI20231212BHJP
G01B 5/008 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
G01B21/00 L
G01B5/00 L
G01B5/008
G01B21/00 E
G01B21/00 H
(21)【出願番号】P 2020037115
(22)【出願日】2020-03-04
【審査請求日】2023-02-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【氏名又は名称】松浦 憲三
(74)【代理人】
【識別番号】100170069
【氏名又は名称】大原 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【氏名又は名称】松村 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【氏名又は名称】松浦 憲政
(72)【発明者】
【氏名】田村 仁
(72)【発明者】
【氏名】栗原 健人
(72)【発明者】
【氏名】山形 智生
(72)【発明者】
【氏名】外川 陽一
【審査官】國田 正久
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-100904(JP,A)
【文献】特開2008-249352(JP,A)
【文献】特開2016-109630(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 21/00 - 21/32
G01B 5/00 - 5/30
B25J 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
定盤と、
測定対象であるワークを保持し、前記ワークの姿勢を可変なロボットアームと、
前記定盤に対して相対移動可能に構成されたプローブであって、前記ロボットアームにより保持されている前記ワークの三次元測定を行うプローブと、
前記定盤と前記ロボットアームとの相対位置の変化を検出する相対位置変化検出手段と、
前記相対位置変化検出手段の検出結果に基づいて前記プローブによる前記ワークの測定結果を補正する補正手段と、
を備え、
前記相対位置変化検出手段は、
リフレクタと、
前記リフレクタに対してレーザ光を照射し、前記リフレクタからの前記レーザ光の反射光を受光して、前記リフレクタの変位を取得するレーザトラッカ本体と、
を有するレーザトラッカを備える、
三次元測定システム。
【請求項2】
前記相対位置変化検出手段は、前記ロボットアームの振動を検出するアーム振動検出手段を含む、
請求項1に記載の三次元測定システム。
【請求項3】
前記アーム振動検出手段は、前記ロボットアームの先端部近傍における振動を検出する、
請求項2に記載の三次元測定システム。
【請求項4】
前記相対位置変化検出手段は、前記定盤の振動を検出する定盤振動検出手段を含む、
請求項1から3のいずれか1項に記載の三次元測定システム。
【請求項5】
前記相対位置変化検出手段は、水平方向に対する前記定盤の傾斜を検出する傾斜検出手段を含む、
請求項1から4のいずれか1項に記載の三次元測定システム。
【請求項6】
前記相対位置変化検出手段は、水平方向及び垂直方向のそれぞれについて相対位置の変化量を検出し、
前記補正手段は、前記水平方向及び垂直方向のそれぞれについて、前記プローブによる前記ワークの測定結果に対して前記相対位置の変化量を加算又は減算する、
請求項1から5のいずれか1項に記載の三次元測定システム。
【請求項7】
前記相対位置変化検出手段は、前記相対位置の変化をリアルタイムに検出し、
前記補正手段は、リアルタイムに検出された前記相対位置の変化に基づいて前記プローブによる前記ワークの測定結果をリアルタイムに補正する、
請求項1から6のいずれか1項に記載の三次元測定システム。
【請求項8】
前記リフレクタは前記ロボットアームに配置される、
請求項1から7のいずれか1項に記載の三次元測定システム。
【請求項9】
前記ロボットアームを支持するロボット基台は前記定盤の外に設けられる、
請求項1から8のいずれか1項に記載の三次元測定システム。
【請求項10】
前記ロボットアームを支持するロボット基台は前記定盤上に設けられる、
請求項1から8のいずれか1項に記載の三次元測定システム。
【請求項11】
前記ロボットアームは、前記プローブにより前記ワークを測定する場合に、前記定盤に直接的又は間接的に当接する当接部を有する、
請求項1から10のいずれか1項に記載の三次元測定システム。
【請求項12】
前記定盤上には制振部材が設けられ、
前記ロボットアームの当接部は前記制振部材を介して前記定盤に間接的に当接する、
請求項11に記載の三次元測定システム。
【請求項13】
前記ロボットアームは、複数のアームと、前記複数のアームを回転可能に連結する複数の関節部とを備え、
前記ロボットアームの当接部は前記複数の関節部の1つである、
請求項11又は12に記載の三次元測定システム。
【請求項14】
前記ロボットアームの当接部は、前記複数の関節部のうち最もエンドエフェクタ側にある前記関節部である、
請求項13に記載の三次元測定システム。
【請求項15】
測定対象であるワークをロボットアームにより運搬する運搬ステップと、
前記ロボットアームにより前記ワークを保持した状態で、定盤に対して相対移動可能に構成されたプローブにより前記ワークの三次元測定を行う測定ステップと、
前記定盤と前記ロボットアームとの相対位置の変化を検出する相対位置変化検出ステップと、
前記相対位置変化検出ステップによる検出結果に基づいて前記測定ステップによる前記ワークの測定結果を補正する補正ステップと、
を含み、
前記相対位置変化検出ステップは、前記ロボットアーム又は前記定盤に設けられたリフレクタに向けてレーザ光を照射し、前記リフレクタからの反射されたレーザ光を受光して、前記相対位置の変化を検出することを含む、
三次元測定方法。
【請求項16】
前記相対位置変化検出ステップは前記ロボットアームの振動を検出するステップを含む、
請求項15に記載の三次元測定方法。
【請求項17】
前記相対位置変化検出ステップは前記定盤の振動を検出するステップを含む、
請求項15又は16に記載の三次元測定方法。
【請求項18】
前記相対位置変化検出ステップは、水平方向に対する前記定盤の傾斜を検出するステップを含む、
請求項15から17のいずれか1項に記載の三次元測定方法。
【請求項19】
前記相対位置変化検出ステップは、水平方向及び垂直方向のそれぞれについて前記相対位置の変化量を検出するステップを含み、
前記補正ステップは、前記水平方向及び垂直方向のそれぞれについて、前記プローブによる前記ワークの測定結果に対して前記相対位置の変化量を加算又は減算するステップを含む、
請求項15から18のいずれか1項に記載の三次元測定方法。
【請求項20】
前記相対位置変化検出ステップは、前記相対位置の変化をリアルタイムに検出し、
前記補正ステップは、リアルタイムに検出された前記相対位置の変化に基づいて前記プローブによる前記ワークの測定結果をリアルタイムに補正する、
請求項15から19のいずれか1項に記載の三次元測定方法。
【請求項21】
前記ロボットアームにより前記ワークを保持した状態で、前記ロボットアームの当接部を、前記定盤に直接的又は間接的に当接させる当接ステップ、
を含む請求項15から20のいずれか1項に記載の三次元測定方法。
【請求項22】
前記定盤上には制振部材が設けられており、
前記当接ステップにおいて、前記ロボットアームの当接部は前記制振部材を介して前記定盤に間接的に当接する、
請求項21に記載の三次元測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は三次元測定システム及び方法に関し、特に三次元測定機とロボットアームとを使用した三次元測定システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、三次元測定機で測定対象であるワークを測定する際のワークの設置に関して様々な技術が提案されてきた。
【0003】
例えば、特許文献1では、定盤上にワークを設置する際に用いられる測定治具が提案されている。特許文献1に記載された測定治具では、板材のパレット上に適宜ブロックを設置することができ、このブロックにより立体形状を有するワークを固定することができる。そして、予めワークを固定した複数のパレットを用意しておき、パレットを交換することにより、自動的にワークを定盤上にセットすることを目的としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、測定を行うワークの姿勢は、必ずしも一種類ではなく複数種類に及ぶことがある。このように、一つのワークにおいて複数の姿勢で測定を行う場合には、ワークの姿勢毎にその姿勢に合った測定治具が必要となり、測定治具の設計の工数、及び費用が発生する。また、測定の姿勢毎にワークを測定治具に設置しなければならず、測定の準備に時間を要してしまう。
【0006】
上述した特許文献1に記載された測定治具を使用する場合においても、同一のワークに対して複数の姿勢の測定を行う場合には、ワークの姿勢毎に異なるパレットを生成しなければならず、また、測定の姿勢毎にワークを異なる測定治具に設置しなければならない。従って、特許文献1に記載された測定治具を使用した場合であっても、測定治具の設計の工数、費用の発生、測定の準備に時間を要してしまうという問題がある。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、測定治具を必要とせずに様々な測定姿勢に簡便に変更させることが可能な三次元測定システム及び三次元測定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の第1の態様に係る三次元測定システムは、定盤と、測定対象であるワークを保持し、ワークの姿勢を可変なロボットアームと、定盤に対して相対移動可能に構成されたプローブであって、ロボットアームにより保持されているワークの三次元測定を行うプローブと、定盤とロボットアームとの相対位置の変化を検出する相対位置変化検出手段と、相対位置変化検出手段の検出結果に基づいてプローブによるワークの測定結果を補正する補正手段と、を備える。
【0009】
第1の態様に係る三次元測定システムによれば、ロボットアームのエンドエフェクタによりワークを保持した状態で、プローブよりワークの三次元測定を行うので、ワークの姿勢を簡便に変更することができる。更に、定盤とロボットアームとの相対位置の変化を検出し、その検出結果に基づいてプローブによるワークの測定結果を補正するため、ワークの三次元測定の精度を一層向上させることができる。
【0010】
第1の態様に係る三次元測定システムにおいて、好ましくは、相対位置変化検出手段は、ロボットアームの振動を検出するアーム振動検出手段を含む。これにより、ロボットアームの振動の影響を低減し、三次元測定の精度を一層向上させることができる。
【0011】
第1の態様に係る三次元測定システムにおいて、好ましくは、相対位置変化検出手段は、定盤の振動を検出する定盤振動検出手段、及び/又は、水平方向に対する定盤の傾斜を検出する傾斜検出手段を含む。これにより、定盤の振動、及び/又は傾斜の影響を低減し、三次元測定の精度を一層向上させることができる。
【0012】
第1の態様に係る三次元測定システムにおいて、好ましくは、相対位置変化検出手段は、水平方向及び垂直方向のそれぞれについて相対位置の変化量を検出し、補正手段は、水平方向及び垂直方向それぞれについて、プローブによるワークの測定結果に対して相対位置の変化量を加算又は減算する。
【0013】
第1の態様に係る三次元測定システムにおいて、好ましくは、相対位置変化検出手段は、相対位置の変化をリアルタイムに検出し、補正手段は、リアルタイムに検出された相対位置の変化に基づいてプローブによるワークの測定結果をリアルタイムに補正する。
【0014】
第1の態様に係る三次元測定システムにおいて、好ましくは、相対位置変化検出手段は、リフレクタと、リフレクタに対してレーザ光を照射し、リフレクタからのレーザ光の反射光を受光して、リフレクタの変位を取得するレーザトラッカ本体と、を有するレーザトラッカを備える。
【0015】
好ましくは、リフレクタはロボットアームに配置される。リフレクタをロボットアームに配置することにより、ロボットアーム自体の振動がワークWに及ぼす影響をより正確に検出することが可能となる。
【0016】
第1の態様に係る三次元測定システムにおいて、好ましくは、ロボットアームを支持するロボット基台は定盤の外に設けられる。定盤の外にロボット基台を設けるため、比較的大型のロボットアームを用いることができる。
【0017】
第1の態様に係る三次元測定システムにおいて、好ましくは、ロボットアームを支持するロボット基台は定盤上に設けられる。定盤上にロボット基台を設けるため、ロボットアームの振動系は定盤の振動系と同じになる。これにより、外部環境の振動による影響を低減させ、ワークWの三次元測定の精度を向上させることができる。また、定盤の姿勢が変化した場合でも、定盤の姿勢の変化に伴って定盤とワークWとの相対的な位置は大きく変化しないため、三次元測定の精度を維持することができる。
【0018】
第1の態様に係る三次元測定システムにおいて、好ましくは、ロボットアームは、プローブによりワークを測定する場合に、定盤に直接的又は間接的に当接する当接部を有する。ロボットアームの当接部が定盤に直接的又は間接的に当接するため、ロボットアーム自体の振動を低減させることができ、延いては、三次元測定の精度を一層向上させることができる。
【0019】
第1の態様に係る三次元測定システムにおいて、定盤上には制振部材が設けられ、ロボットアームの当接部は制振部材を介して定盤に間接的に当接する。ロボットアームの当接部を間接的に定盤に当接させるため、測定時におけるロボットアームの姿勢の自由度を向上させることができる。また、ロボットアームと定盤との間に垂直方向(Z方向)の間隙を確保することができるため、垂直方向の長さが比較的長いワークを定盤に接触しないように保持して測定を行うことができる。
【0020】
第1の態様に係る三次元測定システムにおいて、好ましくは、ロボットアームは、複数のアームと、複数のアームを回転可能に連結する複数の関節部とを備え、ロボットアームの当接部は複数の関節部の1つである。より好ましくは、ロボットアームの当接部は、複数の関節部のうち最もエンドエフェクタ側にある関節部である。
【0021】
また、上記目的を達成するために、本発明の第2の態様に係る三次元測定方法は、測定対象であるワークをロボットアームにより運搬する運搬ステップと、ロボットアームによりワークを保持した状態で、定盤に対して相対移動可能に構成されたプローブによりワークの三次元測定を行う測定ステップと、定盤とロボットアームとの相対位置の変化を検出する相対位置変化検出ステップと、相対位置変化検出ステップによる検出結果に基づいて測定ステップによるワークの測定結果を補正する補正ステップと、を含む。第2の態様に係る三次元測定方法によっても、第1の態様に係る三次元測定システムと同様の効果を得ることができる。
【0022】
本発明の第2の態様に係る三次元測定方法において、好ましくは、相対位置変化検出ステップはロボットアームの振動を検出するステップを含む。また、好ましくは、相対位置変化検出ステップは定盤の振動を検出するステップを含む。また、好ましくは、相対位置変化検出ステップは定盤の傾斜を検出するステップを含む。
【0023】
本発明の第2の態様に係る三次元測定方法において、好ましくは、相対位置変化検出ステップは、水平方向及び垂直方向のそれぞれについて相対位置の変化量を検出するステップを含み、補正ステップは、水平方向及び垂直方向のそれぞれについて、プローブによるワークの測定結果に対して相対位置の変化量を加算又は減算するステップを含む。
【0024】
本発明の第2の態様に係る三次元測定方法において、好ましくは、相対位置変化検出ステップは、相対位置の変化をリアルタイムに検出し、補正ステップは、リアルタイムに検出された相対位置の変化に基づいてプローブによるワークの測定結果をリアルタイムに補正する。
【0025】
本発明の第2の態様に係る三次元測定方法は、好ましくは、ロボットアームによりワークを保持した状態で、ロボットアームの当接部を、定盤に直接的又は間接的に当接させる当接ステップを含む。ロボットアームの当接部を定盤に直接的又は間接的に当接させるため、ロボットアーム自体の振動を低減させることができ、延いては、三次元測定の精度を一層向上させることができる。
【0026】
また、好ましくは、定盤上には制振部材が設けられており、当接ステップにおいてロボットアームの当接部は制振部材を介して定盤に間接的に当接する。ロボットアームの当接部を間接的に定盤に当接させるため、測定時におけるロボットアームの姿勢の自由度を向上させることができる。また、ロボットアームと定盤との間に垂直方向(Z方向)の間隙を確保することができるため、垂直方向の長さが比較的長いワークを定盤に接触しないように保持して測定を行うことができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、ロボットアームによりワークを保持した状態でワークの三次元測定を行うので、ワークの姿勢を簡便に変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】第1実施形態に係る三次元測定システムの概略構成図である。
【
図4】第1実施形態に係る三次元測定システムの機能ブロック図である。
【
図5】定盤上にロボット基台を配置する利点を説明する図である。
【
図6】第1実施形態に係る三次元測定方法を示すフローチャートである。
【
図7】相対位置喧嘩検出手段により検出される相対位置の時間変化を示すグラフの一例である。
【
図8】第1実施形態の変形例1に係る三次元測定システムの概略構成図である。
【
図9】第1実施形態の変形例2に係る三次元測定方法を示すフローチャートである。
【
図10】第1実施形態の変形例2における当接ステップを説明する図である。
【
図11】第2実施形態に係る三次元測定システムの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、添付図面に従って本発明に係る測定方法の実施形態について説明する。なお、図面において基本的に同じ構成要素には同じ参照符号を付している。
【0030】
<第1実施形態>
図1は本実施形態に係る三次元測定システム1000の概略構成図である。
図1及び他のいくつかの図では、ロボットアーム装置100を図示するために三次元測定機1のコラム16の一部の図示が省略されている。三次元測定システム1000は、三次元測定機1、ロボットアーム装置100、アーム振動検出手段55(相対位置変化検出手段)、及び、統括制御装置70を備える。
【0031】
図1に示すように、本実施形態では、ロボットアーム50のロボット基台53は三次元測定機1の定盤18の上に配置されている。ロボット基台53を定盤18に配置する関係上、ロボットアーム装置100は比較的小型であることが望ましい。
【0032】
ロボット基台53は、ワークWの形状及び周辺設備を考慮して定盤18上の任意の位置に配置可能である。好ましくは、ロボット基台53は、ユーザから見て定盤18上の手前側又は奥側に配置される。この配置により、定盤18の広さを効率よく利用し、且つ、ユーザの使い勝手を良くすることが可能になる。
【0033】
三次元測定機1は、測定機本体10と、データ処理装置30と、測定機コントローラ40とを備える。
図2は、三次元測定機1の測定機本体10の一例を示す図である。なお、以下の説明では、三次元直交座標系を用いて説明する。
【0034】
以下の説明では、三次元測定機1として接触式プローブを備える接触式三次元測定機について説明する。当然ながら、三次元測定機1は非接触式三次元測定機でもよい。三次元測定機1が非接触式三次元測定機である場合、例えば、下記の接触式のプローブ22に代えてレーザプローブを用いてもよい。
【0035】
測定機本体10は、プローブ22(スタイラス24を含む。)の先端に形成された測定子26を、測定対象であるワークWに接触させて走査させることにより、ワークWの形状(輪郭)及び寸法等を測定する。
【0036】
図2に示すように、測定機本体10は、基台20と、基台20上に設けられた定盤18とを含む。定盤18の表面は、X-Y平面に平行な平面状に形成されている。
【0037】
定盤18には、定盤18の表面から図中上側(+Z方向)に伸びる一対のコラム(支柱)16が取り付けられている。コラム16の上端部(+Z側の端部)には、ビーム(梁)14が架け渡されている。一対のコラム16は、定盤18上をY方向に同期して移動可能となっており、ビーム14は、X方向に平行な状態で、Y方向に移動可能となっている。コラム16を定盤18に対して移動させるための駆動手段としては、モータを使用することができる。なお、ビーム14及びコラム16により門が構成される門型の三次元測定機1である。
【0038】
ビーム14には、Z方向に伸びるヘッド12が取り付けられている。ヘッド12は、ビーム14の長さ方向(X方向)に沿って移動可能となっている。ヘッド12をビーム14に対して移動させるための駆動手段としては、モータを使用することができる。
【0039】
ヘッド12の下端部(-Z側の端部)には、プローブ22が図中上下方向(Z方向)に移動可能に取り付けられている。プローブ22を上下方向に移動させるための駆動手段としては、モータを使用することができる。
【0040】
測定機本体10は、コラム16、ヘッド12及びプローブ22のそれぞれの移動量を測定するための移動量測定部(例えば、リニアエンコーダ。不図示)を含んでいる。
【0041】
プローブ22は、剛性が高い軸状の部材(スタイラス24)を含んでいる。このスタイラス24の材料としては、例えば、超硬質合金、チタン、ステンレス、セラミック、カーボンファイバー等を使用することができる。
【0042】
プローブ22のスタイラス24の先端部には、測定子26が設けられている。測定子26は、硬度が高く、耐摩耗性に優れた球状の部材である。測定子26の材料としては、例えば、ルビー、窒化珪素、ジルコニア、セラミック等を使用することができる。測定子26の直径(以下、スタイラス径という。)は一例で4.0mmである。
【0043】
ワークWの測定を行う場合には、コラム16、ヘッド12及びプローブ22をXYZ方向に移動させて測定子26をワークWに接触させる。そして、測定子26をワークWの外形に沿って走査させながら、測定子26の変位量等を測定する。この変位量の測定値等のデータはデータ処理装置30に送信される。データ処理装置30は、汎用測定プログラムを使用してこのデータを処理することにより、ワークWの形状(輪郭)及び寸法等を求めることが可能となっている。
【0044】
測定機コントローラ40は、測定機本体10との間で通信を行うための手段であり、測定機本体10との間で送受信するデータの変換処理を行う。測定機コントローラ40は、データ処理装置30から測定機本体10に送信されるデジタルの指令をアナログ信号に変換するためのD/A(digital-to-analog)変換器と、測定機本体10からデータ処理装置30に送られる測定値等のデータをデジタルデータに変換するためのA/D(analog-to-digital)変換器とを含んでいてもよい。
【0045】
ロボットアーム装置100は、ロボットアーム50とロボットアームコントローラ60とを備える。
図3は、ロボットアーム50の一例を示す図である。
【0046】
ロボットアーム50は、複数の可動部と、複数の可動部をそれぞれ駆動する複数のモータとを備える。ロボットアームコントローラ60は、ロボットアーム50に備えられているモータ等を制御することにより、ロボットアーム50を作動させる。ロボットアームコントローラ60は、例えば、コンピュータで構成され、ユーザの操作又は専用のプログラムにより自動で、ロボットアーム50を作動させる。
【0047】
ロボットアーム50は、ワークWを保持することが可能に設計されている。具体的には、ロボットアーム50は、第1関節部(手首部分)J1に接続されるエンドエフェクタEEによりワークWを保持(把持)する。また、エンドエフェクタEEは、ワークWの姿勢を自由に変更することができる。例えば、エンドエフェクタEEはY-Z平面と平行に回転し、またはX-Y平面に平行に回転することにより、ワークWの姿勢を変更することができる。
【0048】
図3に示すように、ロボットアーム50は、例えば、4つの関節部(第1関節部J1~第4関節部J4)、これらの関節によって順次連結される3つのアーム(第1アームA1~第3アームA3)、及びロボット基台53を有する多関節アームである。具体的には、第1関節部J1は、エンドエフェクタEEと第1アームA1とを連結し、エンドエフェクタEEは第1アームA1に対して相対的に回転可能である。第2関節部J2は第1アームA1と第2アームA2とを連結し、第1アームA1の長手方向に伸びる軸回りに第1アームA1は回転可能である。第3関節部J3は第2アームA2と第3アームA3とを連結し、第2アームA2は第3アームA3に対して水平方向に伸びる軸回りに回転可能である。第4関節部J4は第3アームA3とロボット基台53の先端部53aとを連結し、第3アームA3はロボット基台53に対して水平方向に伸びる軸回りに回転可能である。なお、
図3に示すロボットアーム装置100は一例であり、他の形態の公知のロボットアーム装置が使用されてもよい。
【0049】
相対位置変化検出手段は、定盤18とロボットアーム50との相対位置の変化を検出する。相対位置変化検出手段は、ロボットアーム50側で相対位置の変化を検出してもよいし、定盤18側で相対位置の変化を検出してもよい。あるいは、相対位置変化検出手段はロボットアーム50側と定盤18側との両方で相対位置の変化を検出してもよい。
【0050】
図1において、相対位置変化検出手段の一例として、ロボットアーム50側で相対位置の変化として振動を検出するアーム振動検出手段55を示す。ワークWをエンドエフェクタEEで保持した状態で、アーム振動検出手段55はロボットアーム50のモータの駆動系等によるロボットアーム50自体の水平方向(X方向及びY方向)及び垂直方向(Z方向)の振動を相対位置の変化として例えばリアルタイムに検出し、補正手段71(
図4参照)に出力する。
【0051】
リアルタイムとは、振動(相対位置の変化)の検出が必要な時間(ワークWの三次元測定が行われている時間)内において常時あるいは一定間隔で振動が検出されることを意味する。また、一定時間間隔に限らず、不等時間間隔で振動を検出してもよい。更に、リアルタイムに振動検出する場合に限らず、外部から振動に関するデータを受信することにしてもよい。
【0052】
(検出手段55の例示を明細書の最後に移動)
アーム振動検出手段55はワークWを保持するエンドエフェクタEEの近傍に設けられることが好ましい。これにより、ロボットアーム50自体の振動がワークWに及ぼす影響をより正確に検出することが可能となる。
【0053】
図1は、アーム振動検出手段55の一例としてレーザトラッカを用いた三次元測定システムを示す。
図1に示すように、レーザトラッカ55は、リフレクタ55Rとレーザトラッカ本体55Mとを備える。リフレクタ55Rは例えば、エンドエフェクタEEに設けられ、レーザトラッカ本体55Mは、例えば三次元測定機1に設けられる。
【0054】
図1においてレーザトラッカ本体55Mは定盤18上に配置されているが、当然ながら、レーザトラッカ本体55Mは定盤18の外に配置されてもよい。
【0055】
レーザトラッカ本体55Mはリフレクタ55Rに対向して配置される。レーザトラッカ本体55Mは、リフレクタ55Rに向けてレーザ光を照射し、リフレクタ55Rからの反射されたレーザ光(反射光)を受光して、エンドエフェクタEEと定盤18との相対位置の変化(リフレクタ55Rの変位)を検出する。レーザトラッカの原理及び構成については公知であるため、詳しい説明を省略する。
【0056】
図4は、三次元測定システム1000の機能ブロック図である。
図4に示すように、統括制御装置70は、データ処理装置30、測定機コントローラ40、相対位置変化検出手段(アーム振動検出手段55、及び後述の定盤振動検出手段56)及びロボットアームコントローラ60と接続され、これらとの間でデータ及び信号を通信することによりこれらを統括して制御する。
【0057】
更に、統括制御装置70は補正手段71を備える。補正手段71は相対位置検出手段により検出された定盤18とロボットアーム50(エンドエフェクタEE)との相対位置の変化に基づいて三次元測定機1による測定値を補正する。
【0058】
統括制御装置70、データ処理装置30、測定機コントローラ40、ロボットアームコントローラ60及び補正手段71は、プロセッサを備えるコンピュータを用いて実現することができる。プロセッサとして、CPU(Central Processing Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などが挙げられる。
【0059】
コンピュータとして例えば、パソコン、マイクロコンピュータ、PLC(Programmable Logic Controller)等が挙げられる。コンピュータは、ROMやRAMなどのメモリ、ハードディスクなどの外部記録装置、入力装置、出力装置、ネットワーク接続装置などを備えてもよい。メモリには、各装置及び手段を制御するためのプログラムが記憶されており、このプログラムをプロセッサが読み出し実行することにより、各種の演算処理や制御処理が実行される。
【0060】
例えば、ロボットアームコントローラ60のメモリには、ロボットアーム50を動かすためのプログラムが記憶されており、このプログラムをプロセッサが読み出し実行することにより、ワークWの運搬及び姿勢の変更が自動で行われてもよい。更に、データ処理装置30とロボットアームコントローラ60とを連携させることにより、三次元測定全般が自動的に行われるようにしてもよい。
【0061】
[定盤上にロボット基台を配置する利点]
第1実施形態に係る三次元測定システム1000では、ロボット基台53が定盤18上に配置されているため、ロボットアーム装置100の振動系は三次元測定機1の水平方向(X方向及びY方向)及び垂直方向(Z方向)の振動系と同じになり、ロボットアーム装置100は外部環境の振動(例えば、地面の振動)から影響を受けづらくなる。よって、外部環境の振動による影響を低減させ、ワークWの三次元測定の精度を向上させることができる。
【0062】
次に、
図5を用いて第1実施形態に係る三次元測定システム1000において定盤18の姿勢の変化が測定精度に与える影響について説明する。
図5の符号5Aは、ロボットアーム50が定盤18の外に配置されたロボット基台52を備える場合を示す。
【0063】
三次元測定機1の門が移動する前は、定盤18はX-Y平面に平行であり、ワークWの中心軸はZ方向に平行であるとする。符号5Aに示すように、三次元測定機1の門がY軸の正方向に移動して、三次元測定機1の門の位置が二点鎖線で示す位置から実線で示す位置に変化した結果、門の重さの影響によって定盤18が水平方向に対して傾斜するように定盤18の姿勢が変化したと仮定する。
【0064】
すると、定盤18の姿勢の変化に伴って三次元測定機1の測定空間Gも変化する。ロボット基台52は定盤18の外に配置されているため、エンドエフェクタEEにより保持されているワークWの位置(中心軸L1)は定盤18の姿勢の変化に追従しない。その結果、門の移動により定盤18の姿勢が変化すると、定盤18(及び測定空間G)とワークWとの相対的な位置関係が変化してしまい、三次元測定機1の測定精度に悪影響を与えうる。
【0065】
図5の符号5Bは、ロボットアーム50が定盤18の上に配置されたロボット基台53を備える場合に、三次元測定機1の門が符号5Aと同様に移動した場合を示す。符号5Bに示すように、ロボット基台53は定盤18上に配置されているため、エンドエフェクタEEに保持されているワークWの位置は定盤18の姿勢の変化に追従することができる。
【0066】
その結果、門の移動により定盤18の姿勢が変化した場合でも、定盤18の姿勢の変化に伴って定盤18(及び測定空間G)とワークWとの相対的な位置は大きく変化せず、三次元測定の精度が維持される。このように、第1実施形態に係る三次元測定システム1000によれば、ロボットアーム装置100は定盤18の姿勢の変化に追従することができるため、定盤18の姿勢の変化による影響を低減させ、精度良くワークWの三次元測定を行うことができる。
【0067】
[測定方法]
次に、本実施形態に係る三次元測定方法について説明する。
図6は、本実施形態に係る三次元測定方法を示すフローチャートである。
【0068】
ロボットアーム装置100は、三次元測定機1の測定空間Gの外にあるワークWをエンドエフェクタEEで保持し(ステップS10)、ワークWを三次元測定機1の測定空間G内に運搬し、ワークWを所定の姿勢に設定する(ステップS11:運搬ステップ)。運搬が完了すると、ロボットアーム50から相対位置変化検出手段にワークWの運搬が完了した旨の通知が出力される(不図示)。ワークが測定空間G内に運搬されると、相対位置変化検出手段(アーム振動検出手段55)は定盤18とロボットアーム50との相対位置の変化の検出を開始する(ステップS18:相対位置変化検出ステップ)。
【0069】
続いて、エンドエフェクタEEでワークWを保持した状態で、三次元測定機1によりワークWの測定を行う(ステップS12:測定ステップ)。補正手段71は、相対位置変化検出手段による検出結果に基づいて三次元測定機1の測定値を補正する(ステップS13:補正ステップ)。なお、相対位置変化検出手段がリアルタイムに相対位置の変化を検出する場合、補正手段71は三次元測定の測定値をリアルタイムに補正することとしてもよい。
【0070】
上述のように、本実施形態ではロボット基台53が定盤18上に配置されているため、ロボットアーム装置100は外部環境の振動に影響を受けづらい。また、門の移動により定盤18の姿勢が変化した場合でも、ロボットアーム装置は定盤18の姿勢の変化に追従することができる。しかし、それでも、エンドエフェクタEEによりワークWを保持した状態で三次元測定を行うため、ロボットアーム50自体の振動が三次元測定の測定値に影響を与えうる。
【0071】
そこで、ステップS13において定盤18とロボットアーム50との相対位置の変化に基づいて三次元測定の測定結果を補正することにより、このようなロボットアーム50自体の振動の影響を抑制する。延いては、三次元測定の精度を一層向上させることができる。
【0072】
ここで、相対位置の変化の検出結果に基づく三次元測定の測定値の補正についてより詳しく説明する。説明のために、例えば、相対位置変化検出手段によりロボットアーム50のX方向、Y方向及びZ方向の相対位置の時間変化を検出すると仮定する。すると、
図7に示すような波形がX方向、Y方向及びZ方向の各方向について得られる。
図7は、相対位置変化検出手段により検出された一方向における相対位置の時間変化を示すグラフの一例であり、横軸が時間を示し、縦軸が相対位置の変化量(振幅)を示す。
【0073】
補正手段71は、
図7に示す波形に基づいて各方向の振幅を算出し、算出された振幅に基づいてワークWの三次元測定の測定値を補正する。より具体的には、相対位置の変化による影響を打ち消すように、補正手段71は、X方向、Y方向及びZ方向の各方向の三次元測定の測定値(測定された座標)に、相対位置変化検出手段により検出された振幅に相当する値を加算するか、又は三次元測定の測定値から振幅に相当する値を減算する。加算及び減算のいずれを行うのかは、相対位置が変化した方向に基づいて決定される。
【0074】
これにより、三次元測定を行う際にロボットアーム50の振動によって生じた測定点のずれを補正することができる。従って、三次元測定の精度を一層向上させることができる。
【0075】
ステップS11で設定した姿勢での測定が終わると、ワークWを保持した状態のままで、ロボットアーム装置100はエンドエフェクタEEを作動させて、ワークWの姿勢の変更を行う(ステップS14:変更ステップ)。例えば、エンドエフェクタEEをX-Z平面と平行に回転させることにより、ワークWの姿勢を変更する。
【0076】
このように、ロボットアーム50のエンドエフェクタEEでワークを保持した状態で三次元測定を行うため、ワークの姿勢を簡便に変更することができる。ワークWの姿勢毎に測定治具を用意する必要はない。延いては、三次元測定の効率を向上させることができる。
【0077】
続いて、三次元測定機1により姿勢を変更した後のワークWの測定を行う(ステップS15:測定ステップ)。更に、ステップS13と同様に、補正手段71は相対位置変化検出手段による検出結果に基づいて三次元測定の測定値を補正する(ステップS16:補正ステップ)。ワークWについての三次元測定が終了すると、他に測定すべきワークWがある場合は(ステップS17:YES)、ステップS10に戻り、他のワークWについて同様の処理を繰り返す。次に測定すべきワークがない場合(ステップS17:NO)、処理は完了する。
【0078】
<第1実施形態の変形例1>
第1実施形態では相対位置変化検出手段としてロボットアーム50側で相対位置の変化として振動を検出するアーム振動検出手段55を設ける。第1実施形態の変形例1では、相対位置変化検出手段として定盤18側で相対位置の変化としての振動を検出する定盤振動検出手段56を設ける。あるいは、相対位置変化検出手段として、アーム振動検出手段55と定盤振動検出手段56とを、設けてもよい。
【0079】
第1実施形態の変形例1に係る三次元測定システム1001の一例として、
図8にアーム振動検出手段55と定盤振動検出手段56とを備える三次元測定システムを示す。
【0080】
定盤18上にはロボット基台53が配置されているため、定盤18は三次元測定機1の駆動系(モータ等)の振動だけでなく、ロボットアーム50の振動によっても影響を受け得る。三次元測定機1において、ワークWをエンドエフェクタEEで保持した状態で、定盤振動検出手段56は水平方向(X方向及びY方向)及び垂直方向(Z方向)における定盤18の相対位置の変化を、例えばリアルタイムに検出する。定盤振動検出手段56は、好ましくは定盤18の近傍、より好ましくは定盤18に備えられる。定盤振動検出手段56アーム振動検出手段55と同様の種々の装置を用いることができるため、定盤振動検出手段56の具体的例示を省略する。
【0081】
図8は、定盤振動検出手段56として複数のレーザトラッカを用いる三次元測定システム1001を例示する。
図8では、定盤振動検出手段56は、定盤18のX方向及びY方向の側面に設けられた複数のリフレクタ56Rと、複数のリフレクタ56Rのそれぞれに対向して配置された複数のレーザトラッカ本体56Mとを含む。好ましくは、レーザトラッカ本体56Mは定盤18の外に配置される。
【0082】
各レーザトラッカ本体56Mは、対向するリフレクタ56Rに向けてレーザ光を照射し、リフレクタ56Rからの反射されたレーザ光(反射光)を受光して、エンドエフェクタEEと定盤18との相対位置の変化(リフレクタ56Rの変位)を検出する。
【0083】
レーザトラッカの数は1つでもよいが、定盤18が比較的大型である場合、複数のレーザトラッカにより定盤18の相対位置の変化(リフレクタ56Rの変位)を検出することが好ましい。
【0084】
第1実施形態の変形例1では、補正手段71は、定盤振動検出手段56(及びアーム振動検出手段55)により検出された相対位置の変化に基づいて三次元測定の測定値を補正する。
【0085】
また、第1実施形態の更なる変形例として、定盤振動検出手段56に加えて、定盤18の傾斜(姿勢の変化)を検出する傾斜検出手段(不図示)を三次元測定機1に設けてもよい。傾斜検出手段として、例えば、傾斜センサ、加速度センサ、ジャイロセンサ等が挙げられる。
【0086】
補正手段71は、定盤振動検出手段56によって検出された定盤18の各方向における振動と、傾斜検出手段によって検出された定盤18の傾斜とに基づいて、ワークWの三次元測定の測定値を例えばリアルタイムに補正する。これにより、三次元測定の精度を一層向上させることができる。
【0087】
なお、定盤振動検出手段56に代えて、傾斜検出手段を設けてもよい。
【0088】
<第1実施形態の変形例2>
第1実施形態の変形例2によれば、第1実施形態及び第1実施形態の変形例1に係る三次元測定システム1000、1001において、ロボットアーム50は測定時に定盤18に当接する当接部を有する。測定時に当接部が定盤18に当接するため、測定時のロボットアーム50自体の振動を抑制することができる。
【0089】
ここで、直接的にロボットアーム50の当接部を定盤18に当接させてもよい。あるいは、三次元測定機1に制振部材B(突き当てブロック、
図10参照)を設け、制振部材Bを介してロボットアーム50の当接部を間接的に定盤18に当接させてもよい。好ましくは、制振部材Bは定盤18上に設けられる。制振部材Bの形状及び材質は特に限定されるものではない。定盤18上に設置されること、及び、ロボットアーム50の当接部に当接して振動を抑制する効果が得られことを考慮して制振部材Bの形状及び材質は、適宜選択される。
【0090】
ロボットアーム50の当接部を定盤18に直接的又は間接的に当接させる(押しつける)ため、測定時におけるロボットアーム50自体の振動を低減させることができる。ワークWを保持しているロボットアーム50自体の振動が低減された状態で三次元測定を行うことができるため、三次元測定の精度を一層向上させることができる。第1実施形態の変形例2に係る三次元測定システムの構成は基本的に第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0091】
図9に、第1実施形態の変形例2に係る三次元測定方法のフローチャートを示す。
図9に示すように、第1実施形態の変形例2に係る三次元測定方法は、
図6に示すフローチャートにおける三次元測定を行うステップS12及びステップS15の直前に、ステップS20及びステップS21を追加したものである。他のステップは第1実施形態と同じであるため、これらのステップについての説明は省略する。
【0092】
第1実施形態の変形例2では、ワークWが測定空間Gに運搬された後(ステップS11)、ロボットアーム50の当接部を定盤18に直接的又は間接的に当接させる(ステップS20:当接ステップ)。これにより、ロボットアーム50自体の振動を低減させる。そして、ロボットアーム50自体の振動が低減された状態で、三次元測定を行う(ステップS12)。
【0093】
ワークWの姿勢を変更した後も(ステップS14)、ステップS20と同様に、ロボットアーム50の一部を定盤18に直接的又は間接的に当接させることにより、ロボットアーム50自体の振動を低減させる(ステップS21:当接ステップ)。そして、ロボットアーム50自体の振動が低減された状態で、姿勢変更後のワークWについて三次元測定を行う(ステップS15)。
【0094】
図10の符号10Aは、ステップS20及びステップS21においてロボットアーム50の一部を定盤18に直接的に当接させている状態の一例を示す。符号10Aでは、ロボットアーム50の第3関節部J3が定盤18に直接的に当接しているため、第3関節部J3が当接部に相当する。
【0095】
符号10Bは、定盤18上の制振部材Bを介して間接的にロボットアーム50の一部を定盤18に当接させている状態の一例を示す。符号10Aでは、ロボットアーム50の第1関節部J1が制振部材Bを介して定盤18に間接的に当接しているため、第1関節部J1が当接部に相当する。符号10Bに示すように、制振部材Bを介して間接的にロボットアーム50の当接部を定盤18に当接させる場合には、直接的に当接させる場合と比べてロボットアーム50の姿勢の自由度が高くなる。エンドエフェクタEEと定盤18との間にZ方向の間隔を確保できるため、Z方向の長さが長いワークWでも、定盤18に接触しないように保持して測定を行うことができる。
【0096】
符号10A及び符号10Bでは例として第1関節部J1及び第3関節部J3が当接部であるが、ロボットアーム50の他の関節部でもよい。更には、当接部はロボットアーム50の一部であれば良いため、当接部はロボットアーム50の関節部に限定されない。しかし、ロボットアーム50の先端部(ワークWを保持するエンドエフェクタEE近傍)ほど、ロボットアーム50自体の振動の影響を受けやすい傾向がある。そのため、ロボットアーム50の複数の関節部(例えば、
図3に示すJ1、J2、J3、J4)を有する場合、最も先端側にある第1関節部J1を当接部とすることが好ましい。
【0097】
ここで、ステップS20及びステップS21において定盤18に当接する当接部は、ロボットアーム50の同じ位置であることが好ましい。例えば、ステップS20において第1関節部J1を当接部とした場合、ステップS21においても当接部は第1関節部J1であることが好ましい。これにより、ステップS12における三次元測定とステップS15における三次元測定とで、ロボットアーム50は同じ姿勢となるため、ステップS13とステップS15とでロボットアーム50自体の振動が三次元測定に与える影響をほぼ等しくすることができる。なお、ステップS20及びステップS21においてロボットアーム50の当接部が当接する定盤18上の位置は、同じである必要はない。
【0098】
三次元測定を行った後(ステップS12及びS15)、第1実施形態と同様に、補正手段71は相対位置変化検出手段による検出結果に基づいて三次元測定の測定値を補正する(ステップS13及びS16)。第1実施形態の変形例2では、相対位置変化検出手段による検出結果に基づいて三次元測定の測定値を振動補正するだけでなく、ロボットアーム50の当接部によりロボットアーム50自体の振動を抑制した状態で三次元測定を行う。これにより、振動の影響を一層抑制し、三次元測定の精度を向上させることができる。
【0099】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態に係る三次元測定システム2000について説明する。
図11は、第2実施形態に係る三次元測定システム2000の概略構成図である。
図11に示すように、第2実施形態に係る三次元測定システム2000は三次元測定機1及びロボットアーム装置200を備える。第1実施形態では、ロボットアーム装置100は三次元測定機1の定盤18の上に配置されたロボット基台53を備えるが、第2実施形態では、ロボットアーム装置200はロボット基台53に代えて、三次元測定機1の定盤18の外に配置されるロボット基台52を備える。
【0100】
なお、ロボット基台52の位置以外の構成は第1実施形態と基本的に同じであり、第2実施形態の構成によるワークWの測定方法も第1実施形態と基本的に同じであるため、これらについての説明を省略する。第2実施形態では定盤18に配置する必要がないため、第1実施形態と比べて大型なロボットアーム装置を用いることができるという利点がある。
【0101】
第2実施形態に係る三次元測定方法は、第1実施形態と基本的に同じであるため、説明を省略する。第2実施形態でも、ロボットアーム50のエンドエフェクタEEでワークを保持した状態で三次元測定を行うことができるので、ワークの姿勢を簡便に変更することができる。
【0102】
また、第2実施形態では、ロボット基台52が定盤18の外に配置されているため、第1実施形態におけるロボット基台53の配置によって得られる上記のような利点はない。つまり、第2実施形態では、外部環境の振動と門の移動に伴う定盤18の姿勢の変化とにより、三次元測定の精度が影響を受けやすくなる。また、ロボットアーム装置200が大型になると、ロボットアーム50の振動も大きくなる傾向がある。
【0103】
しかし、第2実施形態でも、第1実施形態と同様に相対位置変化検出手段(アーム振動補正手段55)及び補正手段71を備えるため、ロボットアーム50の振動の影響、及び、外部環境の振動と定盤18の姿勢の変化とによる影響を抑制するように、三次元測定の測定値を補正することができる。従って、三次元測定の精度を一層向上させることができる。
【0104】
<第2実施形態の変形例1>
第2実施形態では相対位置変化検出手段としてロボットアーム50側で相対位置の変化として振動を検出するアーム振動検出手段55を設ける。第2実施形態の変形例1では、第1実施形態の変形例1と同様に、相対位置変化検出手段として定盤18側で相対位置の変化として振動を検出する定盤振動検出手段56を設ける。あるいは、相対位置変化検出手段として、アーム振動検出手段55と定盤振動検出手段56とを、設けてもよい。
【0105】
第2実施形態の変形例1に係る三次元測定システムの構成は、第1実施形態の変形例1に係る三次元測定システム1001とほぼ同様である。両者の相違点は、第2実施形態の変形例1ではロボット基台53が定盤18の外に設けられていることだけである。そのため、第2実施形態の変形例1に係る三次元測定システムの構成についての説明を省略する。
【0106】
また、第2実施形態の変形例1に係る三次元測定方法においても、第1実施形態の変形例1と同様に、補正手段71は、定盤振動検出手段56(及びアーム振動検出手段55)により検出された相対位置の変化に基づいて三次元測定の測定値を補正することが可能である。
【0107】
定盤振動検出手段56に加えて、定盤18の傾斜を検出する傾斜検出手段(不図示)を三次元測定機1に設けてもよい。傾斜検出手段として、例えば、傾斜センサ、加速度センサ、ジャイロセンサ等が挙げられる。
【0108】
補正手段71は、定盤振動検出手段56によって検出された定盤18の各方向における振動と、傾斜検出手段によって検出された定盤18の傾斜とに基づいて、ワークWの三次元測定の測定値を、例えばリアルタイムに補正する。これにより、三次元測定の精度を一層向上させることができる。
【0109】
なお、定盤振動検出手段56に代えて、傾斜検出手段を設けてもよい。
【0110】
<第2実施形態の変形例2>
第2実施形態の変形例2に係る三次元測定システムでは、第1実施形態の変形例2と同様に、ロボットアーム50は、測定時に定盤18に直接的又は間接的に当接する当接部を有する。第2実施形態の変形例2に係る三次元測定システムの構成は基本的に第2実施形態及び第2実施形態の変形例1に係る三次元測定システム2000と同様であるため、説明を省略する。
【0111】
三次元測定時に当接部が定盤18に当接するため、三次元測定時のロボットアーム50自体の振動を抑制することができる。ロボットアーム装置200が大型になるとロボットアーム50の振動も大きくなるため、この効果は一層顕著になる。
【0112】
また、三次元測定システム2000ではロボット基台52が定盤18の外に配置されているため、外部環境の振動と門の移動に伴う定盤18の姿勢の変化とにより、三次元測定の精度が影響を受ける可能性が高くなる。しかし、第2実施形態の変形例2では、当接部を定盤18に当接させることによりロボットアーム50の振動系は定盤18の振動系と同じになり、また、定盤18の姿勢の変化への追従性を確保することができる。
【0113】
第2実施形態の変形例2に係る三次元測定方法は、
図9に示す第1実施形態の変形例2に係る三次元測定方法と同様であるため、その説明を省略する。第2実施形態の変形例2でも、第1実施形態の変形例2と同様に、相対位置変化検出手段による検出結果に基づいて三次元測定の測定値を振動補正するだけでなく、ロボットアーム50の当接部によりロボットアーム50自体の振動を抑制した状態で三次元測定を行う。これにより、振動の影響を一層抑制し、三次元測定の精度を向上させることができる。
【0114】
<効果>
以上で説明したように、三次元測定システム1000、1001、2000では、ワークWをエンドエフェクタEEで保持しながらワークWの測定を行うため、ワークWの姿勢を簡便に変更することができる。これにより、三次元測定の効率を向上させることができる。
【0115】
三次元測定システム1000、1001、2000では、アーム振動検出手段55及び/又は定盤振動検出手段56によりロボットアーム50及び/又は定盤18の振動を検出し、検出された振動に基づいて補正手段71によりワークWの三次元測定の測定値を補正することができる。これにより、三次元測定の精度を一層向上させることができる。
【0116】
三次元測定システム1000では、ロボット基台53を定盤18の上に配置しているため、外部環境の振動のワークWへの影響を低減し、且つ、門の移動に伴う定盤18の姿勢変化への追従性を確保できる。これにより、三次元測定の精度を一層向上させることができる。
【0117】
三次元測定システム1000、1001、2000では、ワークWをエンドエフェクタEEで保持しながら三次元測定機1の定盤18にロボットアーム50の一部を直接的又は間接的に当接させた状態でワークWの測定を行うこともできる。これにより、ロボットアーム50自体の振動が低減されるため、三次元測定の精度を一層向上させることができる。
【0118】
<その他>
上記の実施形態では、相対位置変化検出手段(アーム振動検出手段55、定盤振動検出手段)としてレーザトラッカを用いる三次元測定システムについて説明した。しかし、相対位置変化検出手段はレーザトラッカに限定されず、相対位置変化検出手段として任意の種類の装置を用いることができる。相対位置変化検出手段として、例えば、位置センサ、振動センサ、レーザトラッカ、変位測定手段等が挙げられる。また、振動センサとして加速度センサ、各種のジャイロセンサが挙げられる。また、変位測定手段として、例えば、静電容量式変位センサ、渦電流式変位センサ、レーザ干渉計等が挙げられる。
【0119】
以上で本発明の例に関して説明してきたが、本発明は上述した実施形態に限定されず、本発明の精神を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0120】
1:三次元測定機
10 :測定機本体
12 :ヘッド
14 :ビーム
16 :コラム
18 :定盤
20 :基台
22 :プローブ
24 :スタイラス
26 :測定子
30 :データ処理装置
40 :測定機コントローラ
50 :ロボットアーム
52、53 :ロボット基台
53a :先端部
55 :アーム振動検出手段
55R :リフレクタ
55M :レーザトラッカ本体
56 :定盤振動検出手段
60 :ロボットアームコントローラ
70 :統括制御装置
71 :補正手段
100、200:ロボットアーム装置
1000、1001、2000:三次元測定システム
A1 :第1アーム
A2 :第2アーム
A3 :第3アーム
B :ブロック
EE :エンドエフェクタ
J1 :第1関節部
J2 :第2関節部
J3 :第3関節部
J4 :第4関節部
W :ワーク