(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】FRP前駆体の製造方法、FRP前駆体、積層板、多層プリント配線板及び半導体パッケージ
(51)【国際特許分類】
B29B 11/16 20060101AFI20231212BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20231212BHJP
B32B 5/00 20060101ALI20231212BHJP
B29K 101/10 20060101ALN20231212BHJP
【FI】
B29B11/16
H05K1/03 610G
H05K1/03 610T
B32B5/00 A
B29K101:10
(21)【出願番号】P 2019147588
(22)【出願日】2019-08-09
【審査請求日】2022-07-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 亮太
(72)【発明者】
【氏名】中村 幸雄
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 猛
【審査官】大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2004/009314(WO,A1)
【文献】特開2018-165339(JP,A)
【文献】特開2009-126917(JP,A)
【文献】特開2004-268440(JP,A)
【文献】特開2007-291283(JP,A)
【文献】特開2004-182923(JP,A)
【文献】特開2017-036527(JP,A)
【文献】特開2008-081556(JP,A)
【文献】特開2014-070098(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B 11/16;15/08-15/14
C08J 5/04-5/10;5/24
H05K 1/03
B29K 101/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状骨材に熱硬化性樹脂フィルムを加熱して圧接含浸させるFRP前駆体の製造方法であって、前記熱硬化性樹脂フィルムの圧接含浸を、前記シート状骨材の一方の面のみから行う工程を含
み、
前記熱硬化性樹脂フィルムの最低溶融粘度が、500~3,000mPa・sであり、
前記シート状骨材の通気度が、110cc/cm
2
/sec以上である、FRP前駆体の製造方法。
【請求項2】
前記熱硬化性樹脂フィルムの圧接含浸を、ラミネートによって行う、請求項1に記載のFRP前駆体の製造方法。
【請求項3】
前記ラミネートを、一対の加熱圧縮ローラを用いて行う、請求項
2に記載のFRP前駆体の製造方法。
【請求項4】
前記加熱圧縮ローラの温度が、前記熱硬化性樹脂フィルムの最低溶融粘度温度の+2~30℃の範囲である、請求項3に記載のFRP前駆体の製造方法。
【請求項5】
前記シート状骨材の通気度が、
200cc/cm
2/sec以上である、請求項1~
4のいずれか1項に記載のFRP前駆体の製造方法。
【請求項6】
前記熱硬化性樹脂フィルムの厚さと前記シート状骨材の厚さとの比[熱硬化性樹脂フィルム/シート状骨材]が、1.1~2.5である、請求項1~5のいずれか1項に記載のFRP前駆体の製造方法。
【請求項7】
前記熱硬化性樹脂フィルムが、一方の面に第一の支持体を有する第一の支持体付き熱硬化性樹脂フィルムであり、
前記第一の支持体付き熱硬化性樹脂フィルムを、熱硬化性樹脂フィルムが前記シート状骨材の前記一方の面側となるように、前記シート状骨材の前記一方の面上に配し、
前記シート状骨材の他方の面上に、第二の支持体を配した状態で、
前記熱硬化性樹脂フィルムの圧接含浸を行う、請求項1~6のいずれか1項に記載のFRP前駆体の製造方法。
【請求項8】
前記第一の支持体の材質と前記第二の支持体の材質とが同じである、請求項7に記載のFRP前駆体の製造方法。
【請求項9】
請求項
1~8のいずれか1項に記載のFRP前駆体
の製造方法によって製造されたFRP前駆体を積層成形
する積層板
の製造方法。
【請求項10】
請求項
9に記載の積層板
の製造方法によって製造された積層板を用い
る多層プリント配線板
の製造方法。
【請求項11】
請求項
10に記載の多層プリント配線板
の製造方法によって製造された多層プリント配線板に半導体を搭載
する半導体パッケージ
の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、FRP前駆体の製造方法、FRP前駆体、積層板、多層プリント配線板及び半導体パッケージの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
FRP(Fiber Reinforced Plastics;繊維強化プラスチック)は、ファイバー等の弾性率が高い繊維材料を骨材とし、この骨材を、プラスチック等の母材(マトリックス)の中に入れて強度を向上させた複合材料であり、耐候性、耐熱性、耐薬品性及び軽量性を生かした、安価かつ軽量で耐久性に優れる材料である。
これらの性能を生かして、FRPは幅広い分野で使用されている。例えば、FRPは、造型性及び高い強度を有することから、住宅機器、船舶、車両、航空機等の構造材として使用されている。また、絶縁性を生かして、電気装置、プリント配線板等の電子部品分野でも使用されている。
【0003】
FRPをプリント配線板に用いる場合、FRPの厚さは、他の用途のFRPの厚さと比較して薄くすることが要求される。また、プリント配線板用のFRPには、成型後の厚さばらつき範囲が狭いこと、ボイドが無いことなど、高いスペックが要求される。
そのため、プリント配線板用のFRPの多くが、ハンドレイアップ(Hand Lay-up;HLU)法で製造されている。ハンドレイアップ法は、塗工機等を用いて、骨材に、樹脂を溶剤に溶解したワニスを塗布し、加熱乾燥して、溶剤除去及び樹脂を熱硬化させる製造方法である(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかし、骨材としてカレンダー処理の無いアラミド不織布、薄いガラスペーパー、薄い織布等を用いる場合、これらの骨材は強度が低いため、塗布する樹脂量を調整するためにコーターのギャップを狭くした際に千切れてしまったり、塗布後に乾燥、熱硬化等を行う際に自重が骨材の耐荷重を上回り切れてしまったりすることがあり、作業性が悪い。
また、プリント配線板用のFRPでは、積層後の厚さの高精度性と、内層回路パターンへの樹脂の充填性(成型性)とを両立させる必要がある。そのため、骨材に付着させた樹脂量が数質量%異なるもの、熱硬化性樹脂の硬化時間を変えたもの、それらを組合せたものなど、1種類の骨材で複数種類のFRP前駆体を製造しなければならず、煩雑である。さらに、各々塗工条件を変えて製造するために、製造に用いる材料のロスも大きい。
【0005】
そこで、骨材に熱硬化性樹脂を直接塗布するのではなく、予め熱硬化性樹脂をフィルム状にした樹脂フィルムを作製しておき、シート状の骨材と樹脂フィルムとを加熱及び加圧して圧接含浸させるFRP前駆体の製造方法が検討されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平01-272416号公報
【文献】特開2011-132535号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
樹脂フィルムを骨材に圧接含浸させる方法においては、一対の樹脂フィルムをシート状骨材の両面から圧接含浸させる方法(以下、「両面圧接含浸法」ともいう)が主流である。
しかしながら、両面圧接含浸法によると、両面に圧接させる樹脂フィルムとして、最終的に必要な樹脂量の半分量で作製した2枚の樹脂フィルムが必要となる。すなわち、作製するFRP前駆体の2倍長さの樹脂フィルムの準備が必要であり、生産性及び歩留まりに劣る。また、少ない樹脂量で樹脂フィルムを作製する場合、乾燥時の熱が樹脂に伝わり易く硬化が進み易いため、塗布したワニスの乾燥条件を厳密にコントロールしなければならず、作業が煩雑となる。
【0008】
樹脂フィルムは、通常、熱硬化性樹脂を有機溶剤に溶解させたワニスを支持体に塗布した後、乾燥して製造する。このとき、FRP前駆体の生産性を向上させるためには、溶剤の沸点よりも高温で乾燥させて、乾燥を短時間で行うことが望ましい。一方、骨材への含浸性の観点からは、ワニスの乾燥を低温で行い、樹脂フィルムの硬化の進行を適度に抑えて最低溶融粘度を低く維持することが望ましい。すなわち、FRP前駆体の生産性を向上させるためには、得られる樹脂フィルムの最低溶融粘度を低く抑えることと、乾燥時に溶剤を迅速に除去させることを両立する必要があるが、これらを達成するために必要な加熱条件は相反しており、その達成は困難である。
【0009】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、生産性に優れるFRP前駆体の製造方法、該製造方法で製造されたFRP前駆体、並びに該FRP前駆体を用いた積層板、多層プリント配線板及び半導体パッケージを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、下記の本発明によって、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、下記の[1]~[12]に関する。
[1]シート状骨材に熱硬化性樹脂フィルムを加熱して圧接含浸させるFRP前駆体の製造方法であって、前記熱硬化性樹脂フィルムの圧接含浸を、前記シート状骨材の一方の面のみから行う工程を含む、FRP前駆体の製造方法。
[2]前記熱硬化性樹脂フィルムの圧接含浸を、ラミネートによって行う、上記[1]に記載のFRP前駆体の製造方法。
[3]前記熱硬化性樹脂フィルムの最低溶融粘度が、500~,000mPa・sである、上記[1]又は[2]に記載のFRP前駆体の製造方法。
[4]前記骨材の通気度が、110cc/cm2/sec以上である、上記[1]~[3]のいずれかに記載のFRP前駆体の製造方法。
[5]前記熱硬化性樹脂フィルムを、線圧0.1~1MPaで前記シート状骨材に圧接含浸させる、上記[1]~[4]のいずれかに記載のFRP前駆体の製造方法。
[6]前記熱硬化性樹脂フィルムの厚さと前記シート状骨材の厚さとの比上記[熱硬化性樹脂フィルム/シート状骨材]が、1.1~2.5である、上記[1]~[5]のいずれかに記載のFRP前駆体の製造方法。
[7]前記熱硬化性樹脂フィルムが、一方の面に第一の支持体を有する第一の支持体付き熱硬化性樹脂フィルムであり、
前記第一の支持体付き熱硬化性樹脂フィルムを、熱硬化性樹脂フィルムが前記シート状骨材の前記一方の面側となるように、前記シート状骨材の前記一方の面上に配し、
前記シート状骨材の他方の面上に、第二の支持体を配した状態で、
前記熱硬化性樹脂フィルムの圧接含浸を行う、上記[1]~[6]のいずれかに記載のFRP前駆体の製造方法。
[8]前記第一の支持体の材質と前記第二の支持体の材質とが同じである、上記[7]に記載のFRP前駆体の製造方法。
[9]上記[1]~[8]のいずれかに記載のFRP前駆体の製造方法で製造されたFRP前駆体。
[10]上記[9]に記載のFRP前駆体を積層成形して得られる積層板。
[11]上記[10]に記載の積層板を用いて製造された多層プリント配線板。
[12]上記[11]に記載の多層プリント配線板に半導体を搭載してなる半導体パッケージ。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、生産性に優れるFRP前駆体の製造方法、該製造方法で製造されたFRP前駆体、並びに該FRP前駆体を用いた積層板、多層プリント配線板及び半導体パッケージを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係るFRP前駆体の製造方法及びFRP前駆体の製造装置の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[FRP前駆体の製造方法]
本実施形態のFRP前駆体の製造方法は、シート状骨材に熱硬化性樹脂フィルムを圧接含浸させるFRP前駆体の製造方法であって、前記熱硬化性樹脂フィルムの圧接含浸を、前記シート状骨材の一方の面のみから行う、FRP前駆体の製造方法である。
以下、シート状骨材を単に「骨材」と省略する場合があり、熱硬化性樹脂フィルムを単に「樹脂フィルム」と省略する場合がある。「樹脂フィルム」は、後述する保護フィルム及び支持体を含まない。
また、熱硬化性樹脂フィルムの圧接含浸を、シート状骨材の一方の面のみから行う方法を「片面圧接含浸法」と称する場合がある。
また、本発明において「圧接」とは、接した状態で圧力を付加することを意味する。
【0014】
本実施形態のFRP前駆体の製造方法は、前記熱硬化性樹脂フィルムが、一方の面に第一の支持体を有する第一の支持体付き熱硬化性樹脂フィルムであり、
前記第一の支持体付き熱硬化性樹脂フィルムを、熱硬化性樹脂フィルムが前記シート状骨材の前記一方の面側となるように、前記シート状骨材の前記一方の面上に配し、
前記シート状骨材の他方の面上に、第二の支持体を配した状態で、
前記熱硬化性樹脂フィルムの圧接含浸を行うものであることが好ましい。
以下、
図1を参照しながら、本実施形態のFRP前駆体の製造方法について説明する。
【0015】
FRP前駆体の製造装置1は、樹脂フィルム54を、骨材40の一方の面から圧接含浸させ、第二の支持体56を骨材40の他方の面から圧接させるものである。
第二の支持体56は、樹脂フィルム54を圧接含浸させる際に、骨材40の樹脂フィルム54が配されていない側の面から樹脂が染み出すことを防止する目的、及び得られるFRP前駆体の表面状態を安定化させる目的で使用されるものである。
FRP前駆体の製造装置1は、常圧下におかれる。本実施形態のFRP前駆体の製造方法は、FRP前駆体の製造装置1で行うことができる。
【0016】
FRP前駆体の製造装置1は、骨材送出装置2と、樹脂フィルム送出装置3と、第二の支持体送出装置3’と、シート加熱加圧装置6と、シート加圧冷却装置7と、FRP前駆体巻取装置8と、を備える。FRP前駆体の製造装置1は、さらに、保護フィルム剥がし機構4と、保護フィルム巻取装置5と、を備えることが好ましい。また、FRP前駆体の製造装置1は、シート加熱加圧装置6に送られる前に骨材を加熱するための骨材加熱装置(図示せず)、シート加熱加圧装置6に送られる前に樹脂フィルムを加熱するための樹脂フィルム加熱装置(図示せず)を有していてもよい。
【0017】
骨材送出装置2は、シート状骨材40が巻かれたロールを巻き方向とは反対方向に回転させて、ロールに巻かれた骨材40を送り出す装置である。
図1において、骨材送出装置2は、骨材40をローラの下側からシート加熱加圧装置6に向けて送り出している。
【0018】
樹脂フィルム送出装置3は、第一の支持体及び保護フィルム付き樹脂フィルム50(以下、単に「多層フィルム50」ともいう)が巻かれたロールと、送り出される多層フィルム50に所定の張力を付与させながらロールを回転可能に支持する支持機構とを有し、多層フィルム50が巻かれたロールを巻き方向とは反対方向に回転させて、ロールに巻かれた多層フィルム50を送り出す装置である。多層フィルム50は、樹脂フィルム54と、樹脂フィルム54の両表面のうち、骨材40側の表面54aに積層された保護フィルム52と、骨材40と反対側の表面54bに積層された第一の支持体53とを含むシート状の多層フィルムである。
樹脂フィルム送出装置3は、送り出された骨材40の表面40a側に位置し、保護フィルム52が、送り出された骨材40側になるように、多層フィルム50をローラの下側から一方の保護フィルム剥がし機構4に向けて送り出す装置である。
【0019】
第二の支持体送出装置3’は、第二の支持体56が巻かれたロールと、送り出される第二の支持体56に所定の張力を付与させながらロールを回転可能に支持する支持機構とを有し、第二の支持体56が巻かれたロールを巻き方向とは反対方向に回転させて、ロールに巻かれた第二の支持体56を送り出す装置である。
第二の支持体送出装置3’は、送り出された骨材40の裏面40b側に位置し、第二の支持体56をローラの上側からシート加熱加圧装置6に向けて送り出す装置である。
【0020】
保護フィルム剥がし機構4は、送り出された骨材40の表面40a側に位置する転向ローラである。保護フィルム剥がし機構4は、樹脂フィルム送出装置3から送り出され、保護フィルム剥がし機構4に向けて進む多層フィルム50を、回転する転向ローラの表面で受ける。さらに、多層フィルム50のうち第一の支持体付き樹脂フィルム55をシート加熱加圧装置6に向けて進ませると共に、保護フィルム52を保護フィルム巻取装置5に向けて進ませることにより、多層フィルム50から保護フィルム52を剥がす機構である。これにより、樹脂フィルム54の骨材側フィルム表面54aが露出する。
【0021】
保護フィルム巻取装置5は、送り出された骨材40の表面40a側に位置し、保護フィルム剥がし機構4で剥がされた保護フィルム52を巻き取る巻取装置である。
【0022】
シート加熱加圧装置6は、一対の加熱圧縮ローラと、一対の加熱圧縮ローラに圧縮力を付与する圧縮力付与機構(図示せず)とを有する。一対の加熱圧縮ローラは、所定の設定された温度で加熱ができるよう、内部に加熱体を有する。
シート加熱加圧装置6は、骨材40に、樹脂フィルム54を、回転する一対の加熱圧縮ローラで圧接含浸させてシート状のFRP前駆体60を形成する(フィルム圧接工程)と共に、FRP前駆体60をシート加圧冷却装置7に向けて送り出す。
このとき、樹脂フィルム54の骨材側フィルム表面54a側が骨材40の表面40a側に接着するように、第一の支持体付き樹脂フィルム55が骨材40に積層し、また、第二の支持体56が骨材40の裏面40b側に接着するように骨材40に積層して、FRP前駆体60が形成される。
加熱圧接ローラの温度は、使用する樹脂フィルムの最低溶融粘度温度の+2~30℃の範囲が好ましく、+4~20℃の範囲であることがより好ましい。樹脂フィルムの最低溶融粘度温度の測定方法は後述の通りである。
また、樹脂フィルムを、シート状骨材に圧接含浸させる時の線圧は、0.1~1MPaが好ましく、0.2~0.7MPaがより好ましく、0.3~0.5MPaがさらに好ましい。
シート加熱加圧装置6から送り出されたFRP前駆体60は高温状態である。
【0023】
シート加圧冷却装置7は、一対の冷却圧縮ローラと、一対の冷却圧縮ローラに圧縮力を付与する圧縮力付与機構(図示せず)とを有する。一対の冷却圧縮ローラは、シート加熱加圧装置6から送り出された、高温のFRP前駆体60を回転する一対の冷却圧縮ローラで圧縮すると共に冷却し、FRP前駆体巻取装置8に送り出す。
【0024】
FRP前駆体巻取装置8は、シート加圧冷却装置7から送り出されたシート状のFRP前駆体60を巻き取るロールと、ロールを回転させる駆動機構(図示せず)とを有する。
【0025】
以上のFRP前駆体の製造装置1は、以下のように動作する。
【0026】
先ず、骨材送出装置2からシート状骨材40を、シート加熱加圧装置6に向けて送り出す。このとき、骨材40の表面40a及び裏面40bは、露出している。
送り出された骨材40の表面40a及び裏面40bは、それぞれ、常圧下において、骨材加熱装置(図示せず)によって加熱されてもよい。
【0027】
他方、樹脂フィルム送出装置3は、第一の支持体及び保護フィルム付き樹脂フィルム50(多層フィルム50)を、保護フィルム52が送り出された骨材40側になるように、ローラの下側から保護フィルム剥がし機構4に向けて送り出している。
また、第二の支持体送出装置3’は、第二の支持体56を、ローラの上側からシート加熱加圧装置6に向けて送り出している。
【0028】
送り出された多層フィルム50は、保護フィルム剥がし機構4である転向ローラに架けられ転向する際に、骨材側フィルム表面54aが露出するように、保護フィルム52を剥がされる。剥がされた保護フィルム52は保護フィルム巻取装置5で巻き取られる。保護フィルム52を剥がされた第一の支持体付き樹脂フィルム55は、シート加熱加圧装置6に向けて送り出される。
【0029】
骨材送出装置2から送り出された骨材40と、保護フィルム剥がし機構4から送り出された第一の支持体付き樹脂フィルム55と、第二の支持体56とは、シート加熱加圧装置6が備える一対の加熱圧縮ローラの間に入り込む。このとき、第一の支持体付き樹脂フィルム55のうち、樹脂フィルム54の骨材側フィルム表面54aが骨材40の表面40aに積層し、第二の支持体56が骨材40の裏面40bに積層する。
そして、常圧下において、樹脂フィルム54を骨材40に、シート加熱加圧装置6で圧接含浸させてFRP前駆体60を得る。このとき、一対の加熱圧縮ローラの内部にある加熱体の温度制御をすることにより、一対の加熱圧縮ローラを所定の温度に維持し、フィルム圧接工程をする際に加熱しながら加圧をする。
上記の実施形態によって、第一の支持体53とFRP前駆体60と第二の支持体56とが、この順で積層された、両面に支持体を有するFRP前駆体60が得られる。
【0030】
シート加熱加圧装置6から送り出されたFRP前駆体60を、シート加圧冷却装置7により、さらに加圧し、また、冷却する。
シート加圧冷却装置7から送り出されたFRP前駆体60を、FRP前駆体巻取装置8により、巻き取る。
【0031】
上記の例では、1枚の樹脂フィルムを骨材にラミネートする例を示したが、2枚以上の樹脂フィルムを、骨材にラミネートしてもよい。このとき、2枚以上の樹脂フィルムは、熱硬化度、配合組成等が異なるものを組み合わせて使用してもよい。
【0032】
得られたFRP前駆体は、任意のサイズに切断し所定の物と接着、熱硬化を行ってもよい。また、FRP前駆体は、ロールtoロールで使用してもよい。
【0033】
FRP前駆体の製造装置1で製造されるFRP前駆体について説明する。
【0034】
<シート状骨材>
本実施形態の製造方法に用いられる骨材としては、各種の電気絶縁材料用積層板に用いられている周知のものが使用できる。骨材は繊維基材であることが好ましく、繊維基材の材質としては、紙、コットンリンター等の天然繊維;ガラス繊維、アスベスト等の無機物繊維;アラミド、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリエステル、テトラフルオロエチレン、アクリル等の有機繊維;これらの混合物などが挙げられる。これらの中でも、難燃性の観点から、ガラスクロスが好ましい。ガラスクロスとしては、Eガラス、Cガラス、Dガラス、Sガラス等を用いたガラスクロス又は短繊維を有機バインダーで接着したガラスクロス;ガラス繊維とセルロース繊維とを混沙したもの等が挙げられる。
これらの繊維基材は、織布、不織布、ロービンク、チョップドストランドマット又はサーフェシングマット等の形状を有する。なお、骨材の材質及び形状は、目的とする成形物の用途及び性能により選択され、1種を単独で使用してもよいし、必要に応じて、2種以上の材質及び形状を組み合わせてもよい。
【0035】
シート状骨材の厚さは、プリント配線板の薄型化の観点及び得られるFRP前駆体の強度の観点から、3~50μmが好ましく、5~20μmがより好ましく、7~15μmがさらに好ましい。
【0036】
シート状骨材の通気度(cc/cm2/sec)は、樹脂フィルムの含浸性の観点から、110cc/cm2/sec以上が好ましく、200cc/cm2/sec以上がより好ましく、260cc/cm2/sec以上がさらに好ましい。また、得られるFRP前駆体の強度の観点からは、500cc/cm2/sec以下であってもよい。
なお、シート状骨材の通気度は、300mm×1260mmのシート状骨材をサンプルとし、株式会社東洋精機製作所製フラジール型通気度試験機により測定される。
【0037】
<熱硬化性樹脂フィルム>
本実施形態のFRP前駆体の製造方法に用いられる熱硬化性樹脂フィルムは、熱硬化性樹脂を含むフィルムであり、熱硬化性樹脂又は熱硬化性樹脂を含む組成物(以下、「熱硬化性樹脂組成物」ともいう)をフィルム状にしたものである。
【0038】
熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、フラン樹脂等が挙げられる。これらの中でも、作業性、取り扱い性及び価格の観点から、エポキシ樹脂が好ましい。熱硬化性樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
エポキシ樹脂としては、2官能以上のエポキシ樹脂が好ましい。2官能以上のエポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;脂環式エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、アラルキルノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;多官能フェノールのジグリシジルエーテル化物;これらの水素添加物などが挙げられる。
【0039】
熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を使用する場合、エポキシ樹脂硬化剤を使用してもよい。エポキシ樹脂硬化剤は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
エポキシ樹脂硬化剤としては、フェノール樹脂、アミン化合物、酸無水物、3フッ化ホウ素モノエチルアミン、イソシアネート、ジシアンジアミド、ユリア樹脂等が挙げられ、これらの中でも、フェノール樹脂が好ましい。
フェノール樹脂としては、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂;ナフタレン型フェノール樹脂、ハイオルソ型ノボラックフェノール樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、テルペンフェノール変性フェノール樹脂、アラルキル型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、サリチルアルデヒド型フェノール樹脂、ベンズアルデヒド型フェノール樹脂などが挙げられる。
エポキシ樹脂硬化剤の配合量は、エポキシ樹脂のエポキシ当量1に対して、硬化剤の反応基当量比が0.3~1.5当量となる量が好ましい。エポキシ樹脂硬化剤の配合量が前記範囲内であると、硬化度の制御が容易であり、生産性が良好になる。
【0040】
樹脂フィルムの形成に用いる熱硬化性樹脂組成物は、さらに、硬化促進剤を含有していてもよい。硬化促進剤は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
硬化促進剤としては、イミダゾール化合物、有機リン化合物、第3級アミン、第4級アンモニウム塩などが挙げられる。イミダゾール化合物は、イミダゾールの2級アミノ基をアクリロニトリル、イソシアネート、メラミン、アクリレートなどでマスク化して潜在性を持たしたイミダゾール化合物であってもよい。ここで用いられるイミダゾール化合物としては、イミダゾール、2-メチルイミダゾール、4-エチル-2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、4,5-ジフェニルイミダゾール、2-メチルイミダゾリン、2-エチル-4-メチルイミダゾリン、2-ウンデシルイミダゾリン、2-フェニル-4-メチルイミダゾリンなどが挙げられる。また、光分解によりラジカル、アニオン又はカチオンを生成し硬化開始する光開始剤を使用してもよい。
硬化促進剤の配合量は、熱硬化性樹脂100質量部に対して、0.01~20質量部が好ましい。0.01質量部以上であると、十分な硬化促進効果が得られ、20質量部以下であると、熱硬化性樹脂組成物の保存性及び硬化物の物性に優れ、経済性にも優れる。
【0041】
熱硬化性樹脂組成物は、さらに、不透過性及び耐摩耗性の向上並びに増量のために、充填材を含有していてもよい。充填材は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
充填材としては、シリカ、酸化アルミニウム、ジルコニア、ムライト、マグネシア等の酸化物;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ハイドロタルサイト等の水酸化物;窒化アルミニウム、窒化珪素、窒化ホウ素等の窒化系セラミックス;タルク、モンモリロナイト、サポナイト等の天然鉱物;金属粒子、カーボン粒子などが挙げられる。
【0042】
充填材は樹脂と比較して比重が小さい物から大きい物まで幅広いため、充填材の添加量は質量部ではなく体積率で考えることが好ましい。
充填材の配合量は添加目的により大きく異なるが、熱硬化性樹脂組成物の固形分体積中、0.1~65体積%範囲が好ましい。0.1体積%以上であると、着色及び不透化目的で添加する場合に十分効果を発揮する。また、65体積%以下であると、粘度の増加を抑制し、作業性及び接着性を悪化させることなく増量することができる。
ここで、本明細書における固形分とは、水分、後述する有機溶剤等の揮発する物質以外の組成物中の成分のことをいう。すなわち、固形分は、25℃付近の室温で液状、水飴状及びワックス状のものも含み、必ずしも固体であることを意味するものではない。
【0043】
熱硬化性樹脂組成物は、上記成分以外にも、本発明の効果を阻害しない範囲で必要に応じて他の成分を含有していてもよい。例えば、樹脂硬化物に樹脂のタック性を付与し、接着時の密着性を良くするために、可とう性材料を添加してもよい。可とう性材料としては、ポリスチレン、ポリオレフィン、ポリウレタン、アクリル樹脂、アクリルニトリルゴム、ポリビニルアルコール、それらを硬化系内に取り込むためエポキシ又はカルボキシ基等で変性した物、エポキシ樹脂を予め反応させ大分子化したフェノキシなどが挙げられる。
【0044】
熱硬化性樹脂組成物は、均一化を図るため、有機溶剤に溶解及び/又は分散させたワニスの形態とすることが好ましい。有機溶剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
有機溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、トルエン、キシレン、シクロヘキサノン、4-メチル-2-ペンタノン、酢酸エチル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等が挙げられる。
【0045】
樹脂フィルムは、上記各成分を配合で得られた熱硬化性樹脂組成物を支持体に塗布し、不要な有機溶剤を除去し、熱硬化させることで製造することができる。
なお、ここでの熱硬化は、熱硬化性樹脂組成物をいわゆる半硬化(Bステージ化)状態とすることを目的とするものであり、ラミネートの作業性が良い粘度になるように、熱硬化性樹脂組成物を半硬化させることが好ましい。
樹脂フィルムの最低溶融粘度は、樹脂フィルムの含浸性を良好にする観点から、500~3,000mPa・sが好ましく、600~2,000mPa・sがより好ましく、700~1,000mPa・sがさらに好ましい。
樹脂フィルムの最低溶融粘度温度は、FRP前駆体の生産性の観点から、60~150℃が好ましく、80~130℃がより好ましく、100~120℃がさらに好ましい。
なお、最低溶融粘度及び最低溶融粘度温度は、実施例に記載の方法によって測定することができる。
【0046】
樹脂フィルムの厚さは、プリント配線板の薄型化の観点及び得られるFRP前駆体の強度の観点から、5~40μmが好ましく、10~30μmがより好ましく、15~25μmがさらに好ましい。
【0047】
樹脂フィルムと骨材をラミネートする際、樹脂フィルムの厚さは、FRP前駆体の目標厚さとプレス成形時の成形性を考慮し、骨材の厚さより厚くすることが好ましい。樹脂フィルムの厚さと骨材の厚さとの比[熱硬化性樹脂フィルム/シート状骨材]は、成形性の観点から、1.1~2.5が好ましく、1.3~2.2がより好ましく、1.5~2.0がさらに好ましい。
【0048】
<支持体>
樹脂フィルムの支持体(第一の支持体)としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)、ポリエチレン、ポリビニルフルオレート、ポリイミド等の有機フィルム;銅、アルミニウム、これら金属の合金のフィルム;これらの有機フィルム又は金属フィルムの表面に離型剤で離型処理を行ったフィルムなどが挙げられる。
【0049】
第二の支持体としては、上記した第一の支持体と同じものが挙げられる。
第一の支持体と、第二の支持体とは、同じ材質であることが好ましい。第一の支持体と、第二の支持体の材質が同じであると、熱圧着時の挙動がFRP前駆体の表裏で均一となり、熱圧着時の支持体等の熱収縮及び寸法変化率の差から製品への残留応力増大、しわ等の外観不具合が発生することを抑制することができる。
【0050】
[積層板]
本実施形態の積層板は、本実施形態のFRP前駆体の製造方法で得られたFRP前駆体を積層成形して得られる積層板である。
本実施形態の積層板としては、前記FRP前駆体又は該FRP前駆体を硬化してなるFRPを含有してなる積層板と共に、該積層板上に金属箔を有する金属張積層板も挙げられる。FRP前駆体を硬化してなるFRPとは、B-ステージ化(半硬化)された状態であるFRP前駆体をC-ステージ化(硬化)させて得られるFRPであり、本発明は当該FRPも提供する。
【0051】
具体的には、前記FRP前駆体1枚を又は2枚以上(好ましくは2~20枚)重ねた状態で、所定条件下で積層成形することにより、本実施形態の積層板を製造することができる。FRP前駆体の間に内層回路加工を行ってある基板を挟んでもよい。当該積層成形により、FRP前駆体は硬化(Cステージ化)されてFRPとなる。
また、前記FRP前駆体1枚を又は2枚以上(好ましくは2~20枚)重ね、その片面又は両面、好ましくは両面に、金属箔を配置した構成で積層成形することにより、金属張積層板を製造することができる。
【0052】
前記積層条件としては、プリント配線板に使われる積層板の製造に利用される公知の条件を採用することができる。例えば、多段プレス、多段真空プレス、連続成形、オートクレーブ成形機等を使用し、温度100~250℃、圧力0.2~10MPa、加熱時間0.1~5時間で積層する条件を採用できる。
【0053】
金属箔の厚さは、40μm以下が好ましく、1~40μmがより好ましく、5~40μmがさらに好ましく、5~35μmがよりさらに好ましく、5~25μmが特に好ましく、5~17μmが最も好ましい。
【0054】
金属箔の金属としては、導電性の観点から、銅、金、銀、ニッケル、白金、モリブデン、ルテニウム、アルミニウム、タングステン、鉄、チタン、クロム、又はこれらの金属元素のうちの少なくとも1種を含む合金であることが好ましい。合金としては、銅系合金、アルミニウム系合金、鉄系合金が好ましい。銅系合金としては、銅-ニッケル合金等が挙げられる。鉄系合金としては、鉄-ニッケル合金(42アロイ)等が挙げられる。これらの中でも、金属としては、銅、ニッケル、42アロイがより好ましく、入手容易性及びコストの観点からは、銅がさらに好ましい。
【0055】
[プリント配線板]
本実施形態のプリント配線板は、本実施形態の積層板を用いて製造されたプリント配線板である。
本実施形態のプリント配線板は、例えば、本実施形態の積層板に配線パターンを形成することによって製造することができる。配線パターンの形成方法としては、例えば、サブトラクティブ法、フルアディティブ法、セミアディティブ法(SAP:Semi Additive Process)又はモディファイドセミアディティブ法(m-SAP:modified Semi Additive Process)等の公知の方法が挙げられる。
【0056】
[半導体パッケージ]
本実施形態の半導体パッケージは、本実施形態のプリント配線板に半導体を搭載してなる半導体パッケージである。
本実施形態の半導体パッケージは、本実施形態のプリント配線板の所定の位置に半導体チップ、メモリ等の半導体素子を搭載し、封止樹脂等によって半導体素子を封止することによって製造できる。
【実施例】
【0057】
次に、下記の実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、これらの実施例は本発明を制限するものではない。
なお、各例で製造した熱硬化性樹脂及びFRP前駆体は、以下の方法で性能を測定した。
【0058】
[樹脂フィルムの最低溶融粘度]
各例で得られた樹脂フィルムを測定試料として、下記条件にて最低溶融粘度及び最低溶融粘度温度を測定した。
・測定機器:AR2000ex(TA Instruments製)
・測定温度範囲:50~200℃
・昇温速度:3℃/min
・試験片:樹脂付フィルムの樹脂を圧縮した20mmの円形タブレット
・荷重:0.20N
【0059】
[骨材への熱硬化性樹脂の含浸性]
各例で得られたFRP前駆体の表面を、光学顕微鏡を用いて100倍で観察し、以下の基準に基づいて含浸性を評価した。
(評価基準)
A:骨材の中に樹脂未含浸部分がない。
B:骨材の中に樹脂未含浸部分が極僅かにある。
C:骨材の中に樹脂未含浸部分が僅かにある。
D:骨材の中に樹脂未含浸部分が多くある、又は骨材の中に樹脂が含浸していない、若しくは骨材が露出している。
【0060】
[FRP前駆体の外観]
各例で得られたFRP前駆体の表面を、光学顕微鏡を用いて100倍で観察し、以下の基準に基づいて外観を評価した。
(評価基準)
A:外観異常がない。
B:外観異常が僅かにある。
C:外観異常が多くある。
【0061】
[熱硬化性樹脂ワニスの調製]
調製例1
フェノールノボラック型エポキシ樹脂(N-660;DIC株式会社製)100質量部、クレゾールノボラック樹脂(KA-1165;DIC株式会社製)60質量部に、シクロヘキサン15質量部、メチルエチルケトン130質量部を加え、撹拌して溶解した。そこに、無機充填材として水酸化アルミニウム(CL-303;住友化学株式会社製)180質量部、カップリング剤(A-187;モメンティブ パフォーマンス マテリアルズ社製)1質量部、硬化促進剤としてイソシアネートマスクイミダゾール(G8009L;第一工業製薬株式会社製)2.5質量部を加え、撹拌して溶解及び分散を行い、固形分濃度70質量%の熱硬化性樹脂ワニスを得た。
【0062】
[FRP前駆体の製造1]
実施例1~9
(1)樹脂フィルムA~Cの作製
上記で得た熱硬化性樹脂ワニスを、支持体である580mm幅のPETフィルム(G-2;帝人デュポンフィルム株式会社製)に、塗布幅540mmで、乾燥後の樹脂フィルムの厚さが20μmになるように塗布した後、所定条件で乾燥を行い、支持体付き樹脂フィルムA~Cを作製した。
なお、乾燥は、樹脂フィルム中の残存溶剤量が1.0質量%以下となるまで行い、樹脂フィルムAの最低溶融粘度は1,500mPa・s、樹脂フィルムBの最低溶融粘度は700mPa・s、樹脂フィルムCの最低溶融粘度は2,500mPa・sになるように乾燥条件を調整した。
【0063】
(2)骨材への圧接含浸工程
次に、上記で得られた樹脂フィルムを、表1に示す組み合わせで、ガラスクロス(通気度:表1に示す通り、坪量10.2g/m2、IPC#1010、幅550mm、厚さ11μm、ユニチカ株式会社製)の一方の面のみに当て、ガラスクロスの他方の面には上記した支持体と同じ支持体を当てた状態で、加熱加圧ロールに挟み込み、表1に示すラミネート条件にてガラスクロスに樹脂フィルムを加圧含浸させた。その後、冷却ロールで冷却し、巻取りを行い、FRP前駆体を得た。なお、ラミネートはロールtoロールで行い、ライン速度は1.0m/minで一定とした。
【0064】
各例で得られたFRP前駆体の評価結果を表1に示す。
【0065】
【0066】
表1の実施例1~3から、最低溶融粘度が2,500mPa・sである樹脂フィルムを用いた実施例3より、1,500mPa・s又は750mPa・sである樹脂フィルムを用いた実施例1及び2の方が骨材への含浸性に優れていることが分かる。
また、表1の実施例4~7から、圧接時の圧力が0.15MPaである実施例4よりも、0.3~0.7MPaである実施例5~7の方が骨材への含浸性に優れており、その中でも、圧接時の圧力が0.3MPaである実施例5、0.5MPaである実施例6が、FRP前駆体の外観にも優れていることが分かる。
さらに、表1の実施例1、8及び9から、骨材の通気度が110cc/cm2/secである実施例8よりも、200cc/cm2/secである実施例9、さらには260cc/cm2/secである実施例1の方が、骨材への含浸性に優れていることが分かる。
【0067】
次に、本実施形態の製造方法によるFRP前駆体の生産性について評価を行った。
【0068】
[FRP前駆体の製造2]
実施例10~13
(1)樹脂フィルムD~Gの作製
調製例1で調製した熱硬化性樹脂ワニスを580mm幅のPETフィルム(G-2;帝人デュポンフィルム株式会社製)に、塗布幅540mmで、乾燥後の樹脂フィルムの厚さが20μm又は10μmになるように塗布し、表2に示す条件にて乾燥を行い、樹脂フィルムD~Gを得た。
(2)骨材への圧接含浸工程
上記で得た樹脂フィルムD~Gを、ガラスクロス(通気度:260cc/cm2/sec、坪量10.2g/m2、IPC#1010、幅550mm、厚さ11μm、ユニチカ株式会社製)の一方の面のみに当て、ガラスクロスの他方の面には上記した支持体と同じ支持体を当てた状態で、加熱加圧ロールに挟み込み、圧接時の圧力0.4MPa、加熱ロール温度140℃の条件でラミネートして、ガラスクロスに樹脂フィルムを加圧含浸させた。その後、冷却ロールで冷却し、巻取りを行い、FRP前駆体を得た。なお、ラミネートはロールtoロールで行い、ライン速度は1.0m/minで一定とした。
【0069】
各例で得られたFRP前駆体の評価結果を表2に示す。
【0070】
【0071】
表2において、実施例10から、厚さが20μmである樹脂フィルムは、150℃、2分間という高温、短時間の乾燥条件で、十分に溶剤を乾燥除去すると共に、最低溶融粘度を低く抑え、骨材への優れた含浸性が得られるということが分かる。
一方、実施例11から、厚さが10μmである樹脂フィルムは、150℃、2分間という高温、短時間の乾燥条件では、最低溶融粘度が高くなり、骨材への含浸性が相対的に低くなっている。また、実施例13から、厚さが10μmである樹脂フィルムは、120℃の低温条件とすると、残存溶剤量を所定の値にするには5分間の乾燥が必要であり、厚さが20μmである樹脂フィルムと比べると、樹脂フィルムの作製に時間がかかることが分かる。
このことから、樹脂フィルムの圧接含浸を骨材の一方の面のみから行う場合と、樹脂フィルムの圧接含浸を骨材の両面から行う場合とでは、一方の面のみから行う場合の方が、樹脂フィルムの厚さを厚くできるため、短時間で骨材への含浸性に優れる樹脂フィルムを作製でき、生産性に優れることが分かる。
【0072】
[FRP前駆体の製造3]
実施例14、比較例1
次に、上記で得た樹脂フィルムDを用いて、樹脂フィルムの圧接含浸を骨材の一方の面のみから行ってFRP前駆体を作製する場合の生産時間と、上記で得た樹脂フィルムFを用いて、樹脂フィルムの圧接含浸を骨材の両面から行ってFRP前駆体を作製する場合の生産時間とを対比した。ここで用いたガラスクロス、ラミネート条件等は、実施例1におけるものと同じである。結果を表3に示す。
【0073】
【0074】
表3から、本実施形態の片面圧接含浸法は、従来の両面圧接含浸法と比べると、樹脂フィルムの作製時の塗工に要した時間が短く、FRP前駆体の生産時間を大幅に短縮できることが分かる。
【符号の説明】
【0075】
1 FRP前駆体の製造装置
2 骨材送出装置
3 樹脂フィルム送出装置
3’ 第二の支持体送出装置
4 保護フィルム剥がし機構
5 保護フィルム巻取装置
6 シート加熱加圧装置(フィルム圧接手段)
7 シート加圧冷却装置
8 FRP前駆体巻取装置
40 骨材
40a 骨材の表面(骨材の一方の表面、骨材両表面の一方)
40b 骨材の裏面(骨材の他方の表面、骨材両表面の他方)
50 第一の支持体及び保護フィルム付き樹脂フィルム(多層フィルム)
52 保護フィルム
53 第一の支持体
54 樹脂フィルム
54a 樹脂フィルムの骨材側の表面(骨材側フィルム表面)
55 第一の支持体付き樹脂フィルム
56 第二の支持体
60 FRP前駆体