(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】不飽和ポリエステル樹脂組成物、及びその硬化物
(51)【国際特許分類】
C08F 283/01 20060101AFI20231212BHJP
H01L 23/29 20060101ALI20231212BHJP
H01L 23/31 20060101ALI20231212BHJP
H01L 21/56 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
C08F283/01
H01L23/30 R
H01L21/56 T
(21)【出願番号】P 2019155966
(22)【出願日】2019-08-28
【審査請求日】2022-05-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【氏名又は名称】高橋 正俊
(74)【代理人】
【識別番号】100202418
【氏名又は名称】河原 肇
(72)【発明者】
【氏名】西島 大輔
(72)【発明者】
【氏名】石内 隆仁
【審査官】中村 英司
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-173813(JP,A)
【文献】特開平10-095904(JP,A)
【文献】特開2019-131736(JP,A)
【文献】国際公開第2018/193735(WO,A1)
【文献】特開2001-089585(JP,A)
【文献】特開2006-008867(JP,A)
【文献】特開2006-225648(JP,A)
【文献】特開2007-177126(JP,A)
【文献】特開2007-177127(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 283/01
H01L 23/30
H01L 21/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)不飽和ポリエステル樹脂、
(B)エチレン性不飽和単量体、
(C)飽和ポリエステル樹脂、及び
(D)水酸化アルミニウム粒子
を含み、前記(A)不飽和ポリエステル樹脂及び前記(B)エチレン性不飽和単量体の合計100質量部に対して前記(C)飽和ポリエステル樹脂を3~30質量部含み、前記(D)水酸化アルミニウム粒子を190~300質量部含み、
さらに(E)無機充填材を前記(A)不飽和ポリエステル樹脂及び前記(B)エチレン性不飽和単量体の合計100質量部に対して180~250質量部含む不飽和ポリエステル樹脂組成物
であって、
前記(C)飽和ポリエステル樹脂が、アルキレングリコールと芳香族飽和多塩基酸と脂肪族飽和多塩基酸との重縮合体であり、
前記(E)無機充填材が、水酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウム及びガラス繊維に該当しない無機物である、不飽和ポリエステル樹脂組成物。
【請求項2】
前記(C)飽和ポリエステル樹脂が、アジピン酸とイソフタル酸とエチレングリコールとプロピレングリコールとの重縮合体である請求項1に記載の不飽和ポリエステル樹脂組成物。
【請求項3】
前記(E)無機充填材が、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、カオリン、炭酸マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化ベリリウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化チタン、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化チタン、及びホウ化チタンから選択される一種以上である請求項1又は2に記載の不飽和ポリエステル樹脂組成物。
【請求項4】
前記(D)水酸化アルミニウム粒子の平均粒子径が0.5~30μmである請求項1
~3のいずれか一項に記載の不飽和ポリエステル樹脂組成物。
【請求項5】
さらに(F)離型剤を含む請求項1
~4のいずれか一項に記載の不飽和ポリエステル樹脂組成物。
【請求項6】
さらに(G)ガラス繊維を含む請求項1~
5のいずれか一項に記載の不飽和ポリエステル樹脂組成物。
【請求項7】
さらに(H)硬化剤を含む請求項1~
6のいずれか一項に記載の不飽和ポリエステル樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1~
7のいずれか一項に記載の不飽和ポリエステル樹脂組成物の硬化物。
【請求項9】
請求項
8に記載の不飽和ポリエステル樹脂組成物の硬化物が金属筐体と基板との間隙に充填されている電子機器。
【請求項10】
請求項
8に記載の不飽和ポリエステル樹脂組成物の硬化物により、金属と基板とが一体成形されている電子機器。
【請求項11】
請求項1~
7のいずれか一項に記載の不飽和ポリエステル樹脂組成物により基板を封止し、前記不飽和ポリエステル樹脂組成物を硬化させることを含む電子機器の製造方法。
【請求項12】
請求項1~
7のいずれか一項に記載の不飽和ポリエステル樹脂組成物を、金属筐体と基板との間隙に充填し、硬化させることを含む電子機器の製造方法。
【請求項13】
前記封止又は充填及び硬化が、トランスファー成形又は射出成形により行われる、請求項
11又は1
2に記載の電子機器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、不飽和ポリエステル樹脂組成物及びその硬化物、並びに電子機器及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等に搭載されるエレクトロニックコントロールユニット等の電子機器では、配線基板及びその配線基板上に実装された電子部品等を保護するために、水や腐食性ガス等の侵入を防止する構成が求められる。
【0003】
例えば、特許文献1には、QFP型パッケージと配線基板との間のギャップを、エポキシ樹脂と硬化剤と無機充填材とを含むエポキシ樹脂組成物で一括封止することが開示されている。また、特許文献2には、熱硬化性樹脂と硬化剤と多面体形状の複合化金属水酸化物とを含む半導体封止用樹脂組成物を用いて半導体素子を封止することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-148586号公報
【文献】特開2003-82243号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1で用いているようなエポキシ樹脂は原料単価が樹脂の中では比較的高価であるため、大型品には使用しにくいという問題があった。さらに、エポキシ樹脂組成物は、その成形温度が170~180℃と高温であるため、電子機器の信頼性、生産性及びコスト面からみて改善の必要があった。また、特許文献2に開示される半導体封止用樹脂組成物は、耐熱性が不十分であり、温度変化による膨張収縮によりクラックが生じるという問題があった。
【0006】
本発明は、上記のような問題を解決するためになされたものであり、低コストであり、かつ成形性に優れ、硬化物の難燃性及び耐熱性に優れる不飽和ポリエステル樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記の問題を解決するべく鋭意研究した結果、不飽和ポリエステル樹脂と、エチレン性不飽和単量体と、飽和ポリエステル樹脂と、水酸化アルミニウム粒子とを特定の配合割合で組み合わせて用いることにより、低コストであり、かつ成形性に優れ、硬化物の難燃性及び耐熱性に優れる不飽和ポリエステル樹脂組成物を提供できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の[1]~[12]を含む。
[1]
(A)不飽和ポリエステル樹脂、
(B)エチレン性不飽和単量体、
(C)飽和ポリエステル樹脂、及び
(D)水酸化アルミニウム粒子
を含み、前記(A)不飽和ポリエステル樹脂及び前記(B)エチレン性不飽和単量体の合計100質量部に対して前記(C)飽和ポリエステル樹脂を3~30質量部含み、前記(D)水酸化アルミニウム粒子を190~300質量部含む不飽和ポリエステル樹脂組成物。
[2]
前記(D)水酸化アルミニウム粒子の平均粒子径が0.5~30μmである[1]に記載の不飽和ポリエステル樹脂組成物。
[3]
さらに(E)無機充填材を前記(A)不飽和ポリエステル樹脂及び前記(B)エチレン性不飽和単量体の合計100質量部に対して180~250質量部含む[1]又は[2]に記載の不飽和ポリエステル樹脂組成物。
[4]
さらに(F)離型剤を含む[1]~[3]のいずれかに記載の不飽和ポリエステル樹脂組成物。
[5]
さらに(G)ガラス繊維を含む[1]~[4]のいずれかに記載の不飽和ポリエステル樹脂組成物。
[6]
さらに(H)硬化剤を含む[1]~[5]のいずれかに記載の不飽和ポリエステル樹脂組成物。
[7]
[1]~[6]のいずれかに記載の不飽和ポリエステル樹脂組成物の硬化物。
[8]
[7]に記載の不飽和ポリエステル樹脂組成物の硬化物が金属筐体と基板との間隙に充填されている電子機器。
[9]
[7]に記載の不飽和ポリエステル樹脂組成物の硬化物により、金属と基板とが一体成形されている電子機器。
[10]
[1]~[6]のいずれかに記載の不飽和ポリエステル樹脂組成物により基板を封止し、前記不飽和ポリエステル樹脂組成物を硬化させることを含む電子機器の製造方法。
[11]
[1]~[6]のいずれかに記載の不飽和ポリエステル樹脂組成物を、金属筐体と基板との間隙に充填し、硬化させることを含む電子機器の製造方法。
[12]
前記封止又は充填及び硬化が、トランスファー成形又は射出成形により行われる、[10]又は[11]に記載の電子機器の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、低コストであり、かつ成形性に優れ、硬化物の難燃性及び耐熱性に優れる不飽和ポリエステル樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の不飽和ポリステル樹脂組成物について説明する。なお、本発明は、以下に示す実施形態のみに限定されるものではない。
【0011】
本明細書において、「(メタ)アクリル酸」は、メタクリル酸及びアクリル酸から選ばれる少なくとも1種を意味し、また、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及びメタクリレートから選ばれる少なくとも1種を意味する。
【0012】
「エチレン性不飽和結合」とは、芳香環を形成する炭素原子を除く炭素原子間で形成される二重結合を意味し、「エチレン性不飽和単量体」とは、エチレン性不飽和結合を有する単量体を意味する。
【0013】
「平均粒子径」とはレーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置(マイクロトラック・ベル株式会製、FRA)で測定したメジアン径である。
【0014】
[不飽和ポリエステル樹脂組成物]
不飽和ポリエステル樹脂組成物は、(A)不飽和ポリエステル樹脂、(B)エチレン性不飽和単量体、(C)飽和ポリエステル樹脂、及び(D)水酸化アルミニウム粒子を含む。
【0015】
(A)不飽和ポリエステル樹脂
(A)不飽和ポリエステル樹脂は、多価アルコールと不飽和多塩基酸との重縮合体、又は多価アルコールと不飽和多塩基酸と飽和多塩基酸との重縮合体であり、特に限定されない。不飽和多塩基酸とは、エチレン性不飽和結合を有する多塩基酸であり、飽和多塩基酸とは、エチレン性不飽和結合を有さない多塩基酸である。(A)不飽和ポリエステル樹脂は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0016】
(A)不飽和ポリエステル樹脂を用いることにより、機械的強度及び耐熱性に優れる硬化物を得ることができる。
【0017】
(A)不飽和ポリエステル樹脂の合成に用いられる多価アルコールは、2個以上の水酸基を有する化合物であれば特に制限はない。中でも、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンタンジオール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、1,4-シクロヘキサン-ジメタノール、水素化ビスフェノールA等のアルキレングリコール;ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物等のアルキレンオキサイド変性ビスフェノールA;ビスフェノールA、グリセリンが好ましく、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、水素化ビスフェノールA、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物がより好ましい。多価アルコールは、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0018】
(A)不飽和ポリエステル樹脂の合成に用いられる不飽和多塩基酸は、エチレン性不飽和結合を有し、かつ、2個以上のカルボキシ基を有する化合物又はその酸無水物であれば特に限定されず、公知ものを用いることができる。特に、炭素原子数4~6の不飽和多塩基酸又はその酸無水物がより低コストであり、かつ硬化物の機械的強度及び耐熱性により優れる不飽和ポリエステル樹脂組成物が得られるため好ましい。不飽和多塩基酸としては、例えば、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、クロロマレイン酸等が挙げられる。より好ましくは、フマル酸、マレイン酸、及びイタコン酸から選ばれる不飽和多塩基酸である。不飽和多塩基酸は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0019】
多価アルコールと不飽和多塩基酸との好ましい組み合わせとしては、例えば、フマル酸とネオペンチルグリコールとの組み合わせ、マレイン酸とジプロピレングリコールとの組み合わせ、フマル酸とプロピレングリコールとの組み合わせ、フマル酸と水素化ビスフェノールAとプロピレングリコールとの組み合わせ等が挙げられる。これらの中でも、フマル酸とプロピレングリコールとの組み合わせ、フマル酸と水素化ビスフェノールAとプロピレングリコールとの組み合わせは、より低コストであり、かつ硬化物の熱変形温度がより高く、機械的強度及び耐熱性により優れる不飽和ポリエステル樹脂組成物が得られるため好ましい。
【0020】
(A)不飽和ポリエステル樹脂の合成に用いられる飽和多塩基酸は、エチレン性不飽和結合を有さず、かつ、2個以上のカルボキシ基を有する化合物又はその酸無水物であれば特に限定されず、公知ものを用いることができる。飽和多塩基酸としては、例えば、フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラクロロ無水フタル酸、テトラブロモ無水フタル酸、ニトロフタル酸、ハロゲン化無水フタル酸等の芳香族飽和多塩基酸又はその酸無水物;コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、シュウ酸、マロン酸、アゼライン酸、グルタル酸等の脂肪族飽和多塩基酸;ヘキサヒドロ無水フタル酸が挙げられる。飽和多塩基酸は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0021】
(A)不飽和ポリエステル樹脂は、上記の原料を用いて、公知の方法で合成することができる。不飽和ポリエステル樹脂の合成における各種条件は、使用する原料やその量に応じて適宜設定される。一般的に、窒素ガス等の不活性ガス気流中、140℃~230℃の温度にて加圧又は減圧下でのエステル化反応を用いることができる。エステル化反応では、必要に応じて、触媒を用いることができる。エステル化触媒の例としては、酢酸マンガン、ジブチル錫オキサイド、シュウ酸第一錫、酢酸亜鉛、酢酸コバルト等の公知の触媒が挙げられる。エステル化触媒は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0022】
(A)不飽和ポリエステル樹脂の重量平均分子量(MW)は、特に限定されない。(A)不飽和ポリエステル樹脂の重量平均分子量は、2000~50000であることが好ましく、より好ましくは2000~30000であり、最も好ましくは3000~25000である。(A)不飽和ポリエステル樹脂の重量平均分子量が2000~50000であれば、硬化物の機械的強度及び電気特性に特に優れる不飽和ポリエステル樹脂組成物を得ることができる。
【0023】
なお、本開示において「重量平均分子量」は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC:gel permeation chromatography)によって測定される標準ポリスチレン換算値とする。
【0024】
(B)エチレン性不飽和単量体
不飽和ポリエステル樹脂組成物は、(B)エチレン性不飽和単量体を含む。(B)エチレン性不飽和単量体は、エチレン性不飽和基を有するモノマー化合物であれば特に制限はない。エチレン性不飽和基は1つでも複数でもよい。
【0025】
(B)エチレン性不飽和単量体としては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、ビニルベンゼン等の芳香族系モノマー;メチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等のアクリル系モノマー;トリアリルイソシアヌレート、ジアリルフタレート、ジアリルフタレートプレポリマー等が挙げられる。中でも、(A)不飽和ポリエステルとの反応性の観点から、スチレンおよびメタクリル酸メチルが好ましく、スチレンがより好ましい。(B)エチレン性不飽和単量体は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0026】
(B)エチレン性不飽和単量体の含有量は、(A)不飽和ポリエステル樹脂及び(B)エチレン性不飽和単量体の合計に対して、10~90質量%であることが好ましく、20~70質量%であることがより好ましく、20~40質量%であることが最も好ましい。(B)エチレン性不飽和単量体の含有量が上記範囲内であれば、成形時の作業性及び成形性がより良好であり、硬化物の特性をより高めることができる。
【0027】
(C)飽和ポリエステル樹脂
(C)飽和ポリエステル樹脂は、多価アルコールと飽和多塩基酸との重縮合体であり、公知のものを用いればよく、特に制限されない。多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルキレングリコールが挙げられる。飽和多塩基酸としては、例えば、イソフタル酸等の芳香族飽和多塩基酸、アジピン酸等の脂肪族飽和多塩基酸が挙げられる。(C)飽和ポリエステル樹脂の具体的としては、例えば、アジピン酸とイソフタル酸とエチレングリコールとプロピレングリコールとの重縮合体、プロピレングリコールとアジピン酸との重縮合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等が挙げられる。
【0028】
(C)飽和ポリエステル樹脂の重量平均分子量(MW)は、特に限定されない。(C)飽和ポリエステル樹脂の重量平均分子量は、7000~30000であることが好ましく、より好ましくは9000~16000であり、最も好ましくは10000~13000である。(C)飽和ポリエステル樹脂の重量平均分子量が7000~30000であれば、得られる不飽和ポリエステル樹脂組成物の硬化物の線膨張係数をより小さくすることができる。
【0029】
(C)飽和ポリエステル樹脂の含有量は、(A)不飽和ポリエステル樹脂及び(B)エチレン性不飽和単量体の合計100質量部に対し、3~30質量部であり、好ましくは5~25質量部であり、より好ましくは5~20質量部である。(C)飽和ポリエステル樹脂の含有量が、(A)不飽和ポリエステル樹脂と、(B)エチレン性不飽和単量体の合計100質量部に対して3質量部以上であれば得られる不飽和ポリエステル樹脂組成物の硬化物の線膨張係数をより小さくすることができ、30質量部以下であれば、材料粘度がより良好である。
【0030】
(D)水酸化アルミニウム粒子
不飽和ポリエステル樹脂組成物は、(D)水酸化アルミニウム粒子を含む。(D)水酸化アルミニウム粒子の含有量は、(A)不飽和ポリエステル樹脂及び(B)エチレン性不飽和単量体の合計100質量部に対して190~300質量部であり、好ましくは190~260質量部、より好ましくは190~230質量部である。(D)水酸化アルミニウム粒子の含有量が190質量部以上であれば、得られる不飽和ポリエステル樹脂組成物は十分な難燃性を有し、300質量部以下であれば、得られる不飽和ポリエステル樹脂組成物は適切な混練性を有する。
【0031】
(D)水酸化アルミニウム粒子の平均粒子径は、好ましくは0.5~30μm、より好ましくは0.5~20μm、さらに好ましくは1~10μmである。水酸化アルミニウム粒子の平均粒子径が0.5~30μmの範囲であれば、より適切な流動性を有する不飽和ポリエステル樹脂組成物を得ることができる。
【0032】
(D)水酸化アルミニウム粒子の形状は、特に制限されない。(D)水酸化アルミニウム粒子の形状としては、例えば、略真球、楕円体、鱗片状、無定形等が挙げられる。
【0033】
(E)無機充填材
不飽和ポリエステル樹脂組成物は、(E)無機充填材を含むことができる。(E)無機充填材は、(D)水酸化アルミニウム粒子及び後述の(J)増粘剤に該当しない無機物であり、例えば、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、カオリン、炭酸マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化ベリリウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化チタン、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化チタン、ホウ化チタン等が挙げられる。これらの中でも、不飽和ポリエステル樹脂組成物の混練性、成形性及びコストの観点から、炭酸カルシウム及び酸化アルミニウムが好ましい。(E)無機充填材は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0034】
(E)無機充填材の含有量は、(A)不飽和ポリエステル樹脂及び(B)エチレン性不飽和単量体の合計100質量部に対して好ましくは180~250質量部、より好ましくは185~240質量部、さらに好ましくは190~235質量部である。(E)無機充填材の含有量が180質量部以上であれば、得られる不飽和ポリエステル樹脂組成物はより適切な流動性を有し、250質量部以下であれば、得られる不飽和ポリエステル樹脂組成物の硬化物は難燃性により優れる。
【0035】
(F)離型剤
不飽和ポリエステル樹脂組成物は、(F)離型剤を含むことができる。(F)離型剤としては、例えば、ステアリン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸マグネシウム等のステアリン酸塩、界面活性剤とコポリマーからなる成形時フィラー吸着型の内部離型剤(ビッグケミー・ジャパン株式会社製、商品名:BYK-P9050)、カルナバワックス等が挙げられる。これら離型剤の中でも、ステアリン酸亜鉛が好ましい。(F)離型剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0036】
(F)離型剤の含有量は、(A)不飽和ポリエステル樹脂及び(B)エチレン性不飽和単量体の合計100質量部に対し、1~15質量部であることが好ましく、2~13質量部であることがより好ましく、3~10質量部であることが最も好ましい。(F)離型剤の含有量が1~15質量部であれば、成形金型から硬化物を容易に離型することができる。
【0037】
(G)ガラス繊維
不飽和ポリエステル樹脂組成物は、(G)ガラス繊維を含むことができる。(G)ガラス繊維の繊維長は、0.01~13mmであることが好ましく、0.01~6mmであることがより好ましく、0.01~3mmであることが最も好ましい。(G)ガラス繊維の繊維長が0.01~13mmであれば、不飽和ポリエステル樹脂組成物の型内における流動性がより良好となる。(G)ガラス繊維の繊維径は、5~20μmであることが好ましく、8~17μmであることがより好ましく、10~15μmであることが最も好ましい。(G)ガラス繊維の繊維径が5~20μmであれば、不飽和ポリエステル樹脂組成物の型内における流動性がより良好となる。
【0038】
(G)ガラス繊維の含有量は、(A)不飽和ポリエステル樹脂及び(B)エチレン性不飽和単量体の合計100質量部に対し、0.1~60質量部であることが好ましく、3~50質量部であることがより好ましく、3~40質量部であることがさらに好ましい。(G)ガラス繊維の含有量が0.1~60質量部であれば、硬化物の機械的強度が良好であり、不飽和ポリエステル樹脂組成物の流動性も適切で成形性により優れる。
【0039】
(H)硬化剤
不飽和ポリエステル樹脂組成物は、(H)硬化剤を含むことができる。(H)硬化剤としては、特に限定されないが、本発明の技術分野において公知の有機過酸化物が挙げられる。そのような有機過酸化物としては、例えば、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサネート、ベンゾイルパーオキサイド、1,1-ジ-t-ブチルパーオキシシクロヘキサン、1,1-ビス(t-アミルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1-ジ-t-ヘキシルパーオキシシクロヘキサン、1,1-ジ-t-ブチルパーオキシ-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t-ヘキシルパーオキシイソプロピルカーボネート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、t-ヘキシルパーオキシベンゾエート、1,6-ビス(t-ブチルパーオキシカルボニロキシ)ヘキサン、ジクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド等が挙げられる。これらの硬化剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0040】
(H)硬化剤の含有量は、(A)不飽和ポリエステル樹脂及び(B)エチレン性不飽和単量体の合計100質量部に対し、0.1~15質量部であることが好ましく、1~10質量部であることがより好ましく、1~5質量部であることがさらに好ましい。(H)硬化剤の含有量が0.1質量部以上であれば、不飽和ポリエステル樹脂組成物の硬化が促進され、より高い硬度を有する硬化物を得ることができる。一方、(H)硬化剤の含有量が15質量部以下であれば、不飽和ポリエステル樹脂組成物の貯蔵安定性が良好となる。
【0041】
不飽和ポリエステル樹脂組成物は、各種物性を改良する観点から、必要に応じて、(C)飽和ポリエステル樹脂以外の低収縮剤、(I)カップリング剤(J)増粘剤、(K)顔料、(L)重合禁止剤等の任意成分を含有することができる。
【0042】
(C)飽和ポリエステル樹脂以外の低収縮剤
(C)飽和ポリエステル樹脂以外の低収縮剤としては、例えば、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリ酢酸ビニル、スチレン-ブタジエンゴム等が挙げられる。これら低収縮剤の中でも、低収縮化の観点から、ポリスチレンが好ましい。飽和ポリエステル樹脂(C)以外の低収縮剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0043】
(C)飽和ポリエステル樹脂以外の低収縮剤の含有量は、(A)不飽和ポリエステル樹脂及び(B)エチレン性不飽和単量体の合計100質量部に対し、5~50質量部であることが好ましく、8~40質量部であることがより好ましく、10~30質量部であることがさらに好ましい。(C)飽和ポリエステル樹脂以外の低収縮剤の含有量が5~50質量部であれば、硬化物の成形収縮率を小さくすることができる。
【0044】
(I)カップリング剤
(I)カップリング剤としては、例えば、(メタ)アクリロイルオキシ基、エポキシ基、ビニル基、アミノ基、酸無水物基、イソシアナト基、スチリル基、イソシアヌレート基、ウレイド基、メルカプト基、長鎖アルキル基等の官能基とアルコキシ基とを有するシラン系カップリング剤等が挙げられる。シラン系カップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、トリス-(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、3-ウレイドプロピルトリアルコキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。これらカップリング剤の中でも、不飽和ポリエステル樹脂組成物の硬化物と基板や金属との密着性及びコストの観点から、(メタ)アクリロイルオキシ基とアルコキシ基を有するシラン化合物が好ましく、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランがより好ましい。(I)カップリング剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0045】
(J)増粘剤
(J)増粘剤は、無機増粘剤と有機増粘剤に分類される。無機増粘剤は、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム及び酸化カルシウムである。有機増粘剤としては特に限定されないが、イソシアネート化合物が挙げられる。(J)増粘剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0046】
(K)顔料
(K)顔料としては、特に限定されないが、例えば、C.I.ピグメントイエロー1、3、12、13、14、15、16、17、20、24、31、53、83、86、93、94、109、110、117、125、128、137、138、139、147、148、150、153、154、166、173、194、214等の黄色顔料;C.I.ピグメントオレンジ13、31、36、38、40、42、43、51、55、59、61、64、65、71、73等の橙色顔料;C.I.ピグメントレッド9、97、105、122、123、144、149、166、168、176、177、180、192、209、215、216、224、242、254、255、264、265等の赤色顔料;C.I.ピグメントブルー15、15:3、15:4、15:6、60等の青色顔料;C.I.ピグメントバイオレット1、19、23、29、32、36、38等のバイオレット色顔料;C.I.ピグメントグリーン7、36、58等の緑色顔料;C.I.ピグメントブラウン23、25等の茶色顔料;C.I.ピグメントブラック1、7、カーボンブラック、チタンブラック、酸化鉄等の黒色顔料等が挙げられる。顔料は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0047】
(L)重合禁止剤
重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、トリメチルハイドロキノン、p-ベンゾキノン、ナフトキノン、t-ブチルハイドロキノン、カテコール、p-t-ブチルカテコール、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、ハイドロキノンモノメチルエーテルなどが挙げられる。重合禁止剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0048】
なお、(I)カップリング剤、(J)増粘剤、(K)顔料及び(L)重合禁止剤の含有量は、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、特に限定されない。
【0049】
[不飽和ポリエステル樹脂組成物の硬化物]
不飽和ポリエステル樹脂組成物の硬化物は、不飽和ポリエステル樹脂組成物を加熱等により硬化させることにより得られる。
【0050】
[電子機器及びその製造方法]
電子機器は、例えば、金属筐体、基板及び不飽和ポリエステル樹脂組成物の硬化物を含む。電子機器は、好ましくは金属筐体と、基板と、その間に充填された不飽和ポリエステル樹脂組成物の硬化物とを含む。電子機器は、好ましくは金属筐体、基板及び不飽和ポリエステル樹脂組成物の硬化物を含む一体成形品である。
【0051】
電子機器は、例えば、不飽和ポリエステル樹脂組成物により基板を封止し、該不飽和ポリエステル樹脂組成物を硬化させることを含む方法、不飽和ポリエステル樹脂組成物を、金属筐体と基板との間隙に充填し、硬化させることを含む方法等により製造することができる。不飽和ポリエステル樹脂組成物による封止及びその硬化、並びに不飽和ポリエステル樹脂組成物の充填及び硬化の方法としては、特に限定されないが、トランスファー成形及び射出成形が挙げられる。成形条件は、用いる材料によって適宜設定することができ、好ましい条件の一例としては、温度120~170℃、及び成形時間1~30分である。
【0052】
[不飽和ポリエステル樹脂組成物の製造方法]
不飽和ポリエステル樹脂組成物は、例えば、上記した(A)~(D)の各成分、及び必要に応じて任意成分を混合することにより製造できる。混合方法としては、特に制限はなく、例えば、双腕式ニーダ、加圧式ニーダ、プラネタリーミキサー等を用いることができる。混合温度は、20℃~50℃が好ましく、30~50℃がより好ましい。混合温度が20℃以上であると、混合しやすいため好ましい。混合温度が50℃以下であると、樹脂組成物の硬化反応を抑制することができるため好ましい。
【0053】
不飽和ポリエステル樹脂組成物を製造する際の各成分を混合する順番については特に制限はない。例えば、(A)不飽和ポリエステル樹脂と(B)エチレン性不飽和単量体の一部又は全部とを混合してから、他の成分を混合すると、組成の均一な不飽和ポリエステル樹脂組成物が得られやすいため好ましい。
【0054】
[硬化物の製造方法]
不飽和ポリエステル樹脂組成物は、必要に応じて加熱することにより硬化させることができる。不飽和ポリエステル樹脂組成物を硬化させる条件は、用いる材料によって適宜設定することができ、好ましい条件の一例としては、温度120~170℃、及び硬化時間1~30分である。
【0055】
[不飽和ポリエステル樹脂組成物の使用方法]
不飽和ポリエステル樹脂組成物の使用方法は、特に限定されない。例えば、電子部品の封止材として好ましく用いられる。
【実施例】
【0056】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は、実施例により制限されるものではない。
【0057】
[(A)不飽和ポリエステル樹脂の重量平均分子量の測定方法]
(A)不飽和ポリエステル樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(昭和電工株式会社製Shodex(登録商標)GPC-101)を用いて下記条件にて測定し、標準ポリスチレン検量線を用いて求める。
カラム:昭和電工株式会社製LF-804
カラム温度:40℃
試料:不飽和ポリエステル樹脂の0.2質量%テトラヒドロフラン溶液
流量:1mL/分
溶離液:テトラヒドロフラン
検出器:RI-71S
【0058】
[不飽和ポリエステル樹脂組成物の製造]
各組成成分として、以下に示すものを用い、不飽和ポリエステル樹脂組成物を製造した。
【0059】
<(A)不飽和ポリエステル樹脂>
(不飽和ポリエステル樹脂の合成)
・不飽和ポリエステル樹脂1
撹拌機、分留コンデンサー、温度計及び窒素ガス導入管を付した1Lのフラスコにプロピレングリコール372gとフマル酸519gを仕込み、窒素ガス気流下、200℃で加熱撹拌し、酸価が43.0mgKOH/gになった時点で冷却し、スチレン270gとハイドロキノン0.02gをさらに添加することで、不飽和ポリエステル樹脂1(重量平均分子量3,200)とエチレン性不飽和単量体との混合物である不飽和ポリエステル樹脂液1(不飽和ポリエステル樹脂1 77質量%)を得た。
【0060】
・不飽和ポリエステル樹脂2
撹拌機、分留コンデンサー、温度計及び窒素ガス導入管を付した1Lのフラスコにプロピレングリコール122gとフマル酸232g、水素化ビスフェノールA96gを仕込み、窒素ガス気流下、205℃で加熱撹拌し、酸価が35.0mgKOH/gになった時点で冷却し、スチレン346gとハイドロキノン0.02gをさらに添加することで、不飽和ポリエステル樹脂2(重量平均分子量10,000)とエチレン性不飽和単量体との混合物である不飽和ポリエステル樹脂液2(不飽和ポリエステル樹脂2 57質量%)を得た。
【0061】
<(C)飽和ポリエステル樹脂>
(飽和ポリエステル樹脂の合成)
・飽和ポリエステル樹脂a
撹拌機、分留コンデンサー、温度計及び窒素ガス導入管を付した1Lのフラスコにアジピン酸220g、イソフタル酸250g、エチレングリコール93g及びプロピレングリコール114gを仕込み、窒素ガス気流下、215℃で加熱撹拌し、酸価が12.0mgKOH/gになった時点で冷却し、スチレン290gとハイドロキノン0.02gをさらに添加することで、飽和ポリエステル樹脂a(重量平均分子量11000)とエチレン性不飽和単量体との混合物である飽和ポリエステル樹脂液aを得た。
【0062】
・飽和ポリエステル樹脂b
撹拌機、分留コンデンサー、温度計及び窒素ガス導入管を付した1Lのフラスコにプロピレングリコール380gとアジピン酸730gを仕込み、窒素ガス気流下、230℃で加熱撹拌し、酸価が10.0mgKOH/gになった時点で冷却し、飽和ポリエステル樹脂b(重量平均分子量12400)を得た。
【0063】
<(B)エチレン性不飽和単量体>
スチレン
<(D)水酸化アルミニウム粒子>
日本軽金属株式会社製B103(平均粒子径7μm)
<(E)無機充填材>
炭酸カルシウム
<(G)ガラス繊維>
日本電気硝子株式会社製ECS―03B173/P9(繊維径13μm、繊維長3mm)
<(H)硬化剤>
1,1-ビス(tert-アミルペルオキシ)シクロヘキサン(アルケマ吉富株式会社製ルペロックス531M80)
<(C)飽和ポリエステル樹脂以外の低収縮剤>
ポリスチレン(積水化成品工業株式会社製PS MS-200)
【0064】
表1に示す配合成分及び配合量に従って、(H)ガラス繊維以外の成分を双腕型ニーダを用いて35℃で30分混練し、その後(H)ガラス繊維を追加して11分混錬して、実施例1~6、参考例7及び比較例1~4の不飽和ポリエステル樹脂組成物を調製した。なお、表1各配合成分の配合量の単位は質量部である。表1のスチレンは、不飽和ポリエステル樹脂液1、2及び飽和ポリエステル樹脂液aに含まれるスチレンを含む。
【0065】
(評価)
実施例1~6、参考例7及び比較例1~4の樹脂組成物について、以下に示す方法により評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0066】
[線膨張係数]
成形温度150℃、成形圧力10MPa、成形時間5分で圧縮成形により90mm×10mm×厚さ4mmの平板を成形し、20mm×4mm×4mmのテストピースを切り出し、TMA法(測定機:株式会社リガク製TMA8310)により線膨張係数を測定した。昇温速度を3℃/分、荷重を98mNとし、測定温度の範囲は40~150℃とした。線膨張係数が20ppm/K未満であれば耐熱性は良好である。
【0067】
[材料粘度]
フローテスター粘度測定機(測定機:株式会社島津製作所製CFT-500)にて材料粘度を測定した。直径2.0mmのダイスを備え、40℃に加熱したシリンダー試料挿入孔に試料を入れ、60秒の予備加熱後に5MPaの圧力でピストンを加圧し、材料をダイのノズルから流出させた。時間とストロークの関係について直線性が良好な個所から材料粘度を求めた。材料粘度が100~8000dPa・sであれば材料粘度は良好である。
【0068】
[難燃性]
成形温度150℃、成形圧力10MPa、成形時間5分で圧縮成形により330mm×220mm×厚さ2mmの平板を成形し、125mm×13mm×2mmのテストピースを切り出し、UL-94規格に準拠して燃焼試験を行った。表1において、V-0規格を満たすものを可、満たさないものを不可として記載した。
【0069】
【0070】
実施例1~6及び参考例7の不飽和ポリエステル樹脂組成物は、150℃の成形温度で成形することができ、表1に示すように耐熱性、材料粘度、難燃性がいずれも良好であることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0071】
上記構成によれば、低コストであり、かつ成形性に優れ、硬化物が難燃性及び耐熱性に優れる不飽和ポリエステル樹脂組成物を提供することができる。