(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】管継手および管の取り外し方法
(51)【国際特許分類】
F16L 37/092 20060101AFI20231212BHJP
F16L 21/08 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
F16L37/092
F16L21/08 D
(21)【出願番号】P 2019172382
(22)【出願日】2019-09-23
【審査請求日】2022-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】株式会社プロテリアル
(74)【代理人】
【識別番号】100174090
【氏名又は名称】和気 光
(74)【代理人】
【識別番号】100100251
【氏名又は名称】和気 操
(74)【代理人】
【識別番号】100205383
【氏名又は名称】寺本 諭史
(72)【発明者】
【氏名】壱崎 遼
(72)【発明者】
【氏名】猪谷 崇明
【審査官】伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-122460(JP,A)
【文献】特開2006-300111(JP,A)
【文献】特開2008-138694(JP,A)
【文献】特開2012-112451(JP,A)
【文献】登録実用新案第3188643(JP,U)
【文献】実開平02-022494(JP,U)
【文献】特開平07-243572(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 37/092
F16L 21/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一端部から管が挿入され、前記管の外周面に密着するシール部材が内蔵された略円筒状のハウジングを備え、前記ハウジング内において、前記一端部から前記管の挿入方向へ向かって、前記管の外周面に係合される
複数の抜止部材を
周方向に沿って保持する保持部材と、前記保持部材および前記抜止部材を反挿入方向へ向かって付勢する弾性部材とが配置された管継手であって、
前記保持部材は略リング状部材であり、前記保持部材の径方向外側に前記ハウジングの内外を径方向に
沿って貫通する貫通孔が形成されており、
前記貫通孔は、前記ハウジングの周方向に間隔をあけて複数個形成されており、
前記管と接続された状態において、前記貫通孔を介して前記保持部材が
複数箇所の径方向外側から挿入方向に押圧されることで、前記保持部材および前記抜止部材が
ともに、前記弾性部材の付勢力に抗して移動して、前記抜止部材と前記管の係合が解除されることを特徴とする管継手。
【請求項2】
前記ハウジングは、前記シール部材が内蔵されたハウジング本体と、該ハウジング本体の一端部に装着されたナット状部材とで構成され、前記ナット状部材に前記貫通孔が形成され、該貫通孔の内側に前記保持部材が設けられており、
前記保持部材と前記ハウジング本体との間に前記弾性部材が配置されていることを特徴とする
請求項1に記載の管継手。
【請求項3】
前記ナット状部材は、前記ハウジング本体に対して前記挿入方向にスライド可能に装着されており、前記ナット状部材を前記挿入方向にスライドさせることで、前記弾性部材が圧縮され、前記保持部材の移動が制限されることを特徴とする
請求項2に記載の管継手。
【請求項4】
少なくとも一端部から管が挿入され、前記管の外周面に密着するシール部材が内蔵された略円筒状のハウジングを備え、前記ハウジング内において、前記一端部から前記管の挿入方向へ向かって、前記管の外周面に係合される抜止部材を保持する保持部材と、前記保持部材および前記抜止部材を反挿入方向へ向かって付勢する弾性部材とが配置された管継手であって、
前記保持部材の径方向外側に前記ハウジングの内外を径方向に貫通する貫通孔が形成されており、
前記管と接続された状態において、前記貫通孔を介して前記保持部材が径方向外側から挿入方向に押圧されることで、前記保持部材および前記抜止部材が前記弾性部材の付勢力に抗して移動して、前記抜止部材と前記管の係合が解除され、
前記ハウジングは、前記シール部材が内蔵されたハウジング本体と、該ハウジング本体の一端部に装着されたナット状部材とで構成され、前記ナット状部材に前記貫通孔が形成され、該貫通孔の内側に前記保持部材が設けられており、
前記保持部材と前記ハウジング本体との間に前記弾性部材が配置されており、
前記ナット状部材は、前記ハウジング本体に対して前記挿入方向にスライド可能に装着されており、前記ナット状部材を前記挿入方向にスライドさせることで、前記弾性部材が圧縮され、前記保持部材の移動が制限されることを特徴とする管継手。
【請求項5】
前記管継手は、前記保持部材を押圧するための押圧治具をさらに備え、
前記押圧治具は、周方向の一部に切欠部を有する略リング状部材であり、その内周面に、前記貫通孔に挿通可能な突起が形成されていることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の管継手。
【請求項6】
前記押圧治具の前記突起は、軸方向の一方向に向かって傾斜した傾斜面を有しており、前記傾斜面が前記保持部材に当接されて押圧されることを特徴とする請求項5に記載の管継手。
【請求項7】
押圧治具を用いて、管継手から管を取り外す管の取り外し方法であって、
前記管継手は、少なくとも一端部から管が挿入され、前記管の外周面に密着するシール部材が内蔵された略円筒状のハウジングを備え、前記ハウジング内において、前記一端部から前記管の挿入方向へ向かって、前記管の外周面に係合される
複数の抜止部材を
周方向に沿って保持する保持部材と、前記保持部材および前記抜止部材を反挿入方向へ向かって付勢する弾性部材とが配置され、
前記保持部材は略リング状部材であり、前記保持部材の径方向外側に前記ハウジングの内外を径方向に
沿って貫通する貫通孔が形成されており、
前記貫通孔は、前記ハウジングの周方向に間隔をあけて複数個形成されており、
前記押圧治具は、周方向の一部に切欠部を有する略リング状部材であり、その内周面に、前記貫通孔に挿通可能な
複数の突起が形成されており、
前記管の取り外し方法は、前記管継手と前記管とが接続された状態において、前記押圧治具を拡径させて、前記突起が前記ハウジングの貫通孔に嵌合するように前記押圧治具を装着する装着工程と、装着された前記押圧治具の前記突起を径方向内側に押圧して、前記保持部材および前記抜止部材を
ともに、前記弾性部材の付勢力に抗して移動させる押圧工程と、前記押圧工程によって前記抜止部材との係合が解除された前記管を引き抜く引き抜き工程を有することを特徴とする管の取り外し方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管が接続される管継手、および管の取り外し方法に関する。
【背景技術】
【0002】
給水または給湯用配管に使用される管としては、ステンレス鋼管に代表される耐食性に優れた薄肉鋼管が多用されている。このような管同士の接続には、管継手が用いられており、管継手に管の端部が挿入されることで接続される。近年では、工具を必要とせずに、管継手に管を差し込むだけで施工が完了できる、ワンタッチ式の管継手も実用化されている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載されているワンタッチ式の管継手は、基体の大径部の内面に設けられた2条の周溝にOリングを嵌め込み、大径部の縁端にコイルバネと、内側面にエッジ部を有する抜止部材が嵌め込まれた合成樹脂製の内カラーとが配置され、これらをテーパ付外カラーで覆うようにした構造を有する。この管継手によれば、内カラーの先端より管が挿入されると、抜止部材が内カラーの先端側に押されるが、抜止部材の外側面が外カラーのテーパ面で押圧されて内側面のエッジ部が管に食い込むことにより、管継手と管との接続が保持される。この接続状態で管に引き抜き力が作用すると、抜止部材はコイルバネの付勢力により外カラーのテーパ面側に押し付けられるとともに、そのテーパ面によって抜止部材のエッジ部が管を押圧することにより、管の引き抜きが阻止される。これにより、ワンタッチでの管の接続を容易にしながらも、管の抜け出しの防止を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、配管のメンテナンス時や交換時などには、管を管継手から取り外す必要がある場合がある。例えば、特許文献1の管継手では、接続状態において、内カラーの先端をコイルバネの付勢力に抗して押すことにより、抜止部材と外カラーの接触が解かれ、管を取り外すことができる。しかし、この取り外しの作業は、ドライバーなどの工具を管の軸方向へ沿って作用させ、内カラーを管の挿入方向に押し込む必要がある。そのため、作業時に管周囲が狭い空間などの場合には、管の取り外しが困難になるおそれがある。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、ワンタッチ式の管継手において、管周囲が狭い空間などの場合でも管の抜け出しを防止できるとともに、管を容易に取り外すことが可能な管継手および管の取り外し方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の管継手は、少なくとも一端部から管が挿入され、上記管の外周面に密着するシール部材が内蔵された略円筒状のハウジングを備え、上記ハウジング内において、上記一端部から上記管の挿入方向へ向かって、上記管の外周面に係合される抜止部材を保持する保持部材と、上記保持部材および上記抜止部材を反挿入方向へ向かって付勢する弾性部材とが配置された管継手であって、上記保持部材の径方向外側に上記ハウジングの内外を径方向に貫通する貫通孔が形成されており、上記管と接続された状態において、上記貫通孔を介して上記保持部材が径方向外側から挿入方向に押圧されることで、上記保持部材および上記抜止部材が上記弾性部材の付勢力に抗して移動して、上記抜止部材と上記管の係合が解除されることを特徴とするものである。
【0008】
本発明において、抜止部材と管の係合が解除されるとは、抜止部材と管の係合が完全に解除された状態だけでなく、管を引き抜くことが可能な程度に係合が緩められた状態も含む。また、本発明における「保持部材が挿入方向に押圧される」には、保持部材が挿入方向成分を含む斜め方向に押圧される場合も含まれる。
【0009】
また、本発明の管継手において、上記保持部材は略リング状部材であり、上記貫通孔は、上記保持部材の径方向外側であって、かつ、上記ハウジングの周方向に間隔をあけて複数個形成されている。
【0010】
また、本発明の管継手において、上記ハウジングは、上記シール部材が内蔵されたハウジング本体と、該ハウジング本体の一端部に装着されたナット状部材とで構成され、上記ナット状部材に上記貫通孔が形成され、該貫通孔の内側に上記保持部材が設けられており、上記保持部材と上記ハウジング本体との間に上記弾性部材が配置されている。
【0011】
また、本発明の管継手において、上記ナット状部材は、上記ハウジング本体に対して上記挿入方向にスライド可能に装着されており、上記ナット状部材を上記挿入方向にスライドさせることで、上記弾性部材が圧縮され、上記保持部材の移動が制限される。
【0012】
また、本発明の管継手において、上記管継手は、上記保持部材を押圧するための押圧治具をさらに備え、上記押圧治具は、周方向の一部に切欠部を有する略リング状部材であり、その内周面に、上記貫通孔に挿通可能な突起が形成されている。
【0013】
また、本発明の管継手において、上記押圧治具の上記突起は、軸方向の一方向に向かって傾斜した傾斜面を有しており、上記傾斜面が上記保持部材に当接されて押圧される。
【0014】
本発明の管の取り外し方法は、押圧治具を用いて、管継手から管を取り外す管の取り外し方法であって、上記管継手は、少なくとも一端部から管が挿入され、上記管の外周面に密着するシール部材が内蔵された略円筒状のハウジングを備え、上記ハウジング内において、上記一端部から上記管の挿入方向へ向かって、上記管の外周面に係合される抜止部材を保持する保持部材と、上記保持部材および上記抜止部材を反挿入方向へ向かって付勢する弾性部材とが配置され、上記保持部材の径方向外側に上記ハウジングの内外を径方向に貫通する貫通孔が形成されており、上記押圧治具は、周方向の一部に切欠部を有する略リング状部材であり、その内周面に、上記貫通孔に挿通可能な突起が形成されており、上記管の取り外し方法は、上記管継手と上記管とが接続された状態において、上記押圧治具を拡径させて、上記突起が上記ハウジングの貫通孔に嵌合するように上記押圧治具を装着する装着工程と、装着された上記押圧治具の上記突起を径方向内側に押圧して、上記保持部材および上記抜止部材を上記弾性部材の付勢力に抗して移動させる押圧工程と、上記押圧工程によって上記抜止部材との係合が解除された上記管を引き抜く引き抜き工程を有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の管継手は、ハウジング内において、保持部材および抜止部材が反挿入方向へ向かって付勢されており、付勢された抜止部材が管の外周面に係合されるので管の抜け出しを防止することができる。また、保持部材の径方向外側にハウジングの内外を径方向に貫通する貫通孔が形成されており、管と接続された状態において、貫通孔を介して保持部材が径方向外側から挿入方向に押圧されることで、保持部材および抜止部材が弾性部材の付勢力に抗して移動して、抜止部材と管の係合が解除されるので、管周囲が狭い空間などの場合でも管を容易に取り外すことができる。
【0016】
上記保持部材は略リング状部材であり、貫通孔は、保持部材の径方向外側であって、かつ、ハウジングの周方向に間隔をあけて複数個形成されていることで、複数の貫通孔を介して保持部材を径方向から均一に押圧できるので、保持部材の移動をスムーズに行いやすい。
【0017】
上記ハウジングは、シール部材が内蔵されたハウジング本体と、ナット状部材とで構成され、ナット状部材に貫通孔が形成され、該貫通孔の内側に保持部材が設けられており、保持部材とハウジング本体との間に弾性部材が配置されているので、ハウジング内の各部材の設置や取り外しなどが行いやすい。
【0018】
上記ナット状部材は、ハウジング本体に対して挿入方向にスライド可能に装着されており、ナット状部材を挿入方向にスライドさせることで、弾性部材が圧縮され、保持部材の移動が制限されるので、保持部材が押圧された場合であっても抜止部材と管の係合が維持される。そのため、誤操作などにより押圧部材が意図せずに押圧された場合であっても、管が抜けることを防止できる。
【0019】
上記管継手は、保持部材を押圧するための押圧治具をさらに備え、押圧治具は、周方向の一部に切欠部を有する略リング状部材であり、その内周面に、貫通孔に挿通可能な突起が形成されており、その突起は、軸方向の一方向に向かって傾斜した傾斜面を有しており、傾斜面が保持部材に当接されて押圧されるので、保持部材が傾斜面に沿うことで、保持部材および抜止部材をスムーズに移動させやすくなり、抜止部材と管の係合を容易に解除することができる。
【0020】
本発明の管の取り外し方法は、内周面に突起が形成され、周方向の一部に切欠部を有する略リング状の押圧治具を用いた方法であり、その方法は、管継手と管とが接続された状態において、押圧治具を拡径させて、突起がハウジングの貫通孔に嵌合するように押圧治具を装着する装着工程と、装着された押圧治具の突起を径方向内側に押圧して、保持部材および抜止部材を弾性部材の付勢力に抗して移動させる押圧工程と、押圧工程によって抜止部材との係合が解除された管を引き抜く引き抜き工程を有するので、管周囲が狭い空間などの場合でも管を容易に取り外すことできる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明に係る管継手の第1実施形態の断面図である。
【
図2】
図1の保持部材の斜視図およびその一部拡大図である。
【
図4】管継手と管が接続された接続状態の断面図である。
【
図5】管継手に装着される押圧治具の斜視図である。
【
図6】押圧治具を管継手に装着した状態の断面図である。
【
図7】押圧治具で保持部材を押圧した状態の断面図である。
【
図8】本発明に係る管継手の第2実施形態の片側断面図である。
【
図9】本発明に係る管継手の第3実施形態の片側断面図である。
【
図10】
図9のナット状部材をスライドさせた状態の片側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明に係る管継手の第1実施形態を
図1に基づいて説明する。
図1に示すように、管継手1は、両端部が開口した略円筒状のハウジング2を備える。ハウジング2内には、管の外周面に係合される抜止部材5と、抜止部材5を保持する保持部材4と、弾性部材6と、シールリング3とが設置されている。
図1の管継手1において、ハウジング2の一端側(図右側)の挿入口23から管が挿入され、ハウジング2の他端側(図左側)には、他の管が接続される。また、管継手1は、保持部材4を押圧するための押圧治具(例えば
図5参照)をさらに備える。
【0023】
本発明において、ハウジング2の中心軸Oに沿う方向を軸方向といい、軸方向から見た平面視で中心軸Oと直交する方向を径方向といい、該平面視で中心軸O回りに周回する方向を周方向という。また、上記軸方向のうち、管継手に対して管を挿入する方向を挿入方向といい、挿入方向と反対の方向を反挿入方向という。
【0024】
ハウジング2は、ハウジング本体21と、ハウジング本体21内に装着されたスペーサ部材22とを有する。ハウジング本体21の内壁面には、シールリング3を保持するための円周溝211が形成されている。ハウジング2は、耐食性および剛性を必要とするので、例えばSCS材や青銅材の材料を用いて精密鋳造の手法により形成することができる。
【0025】
シールリング3は、弾性変形可能なゴム製リングである。ゴムの種類としては、エチレンとプロピレンと架橋用ジエンモノマーとの3元共重合体であるEPDMや、オレフィン系ゴム、四フッ化エチレン-パーフルオロメチルビニルエーテルゴム(FFKM)などのフッ素ゴムなどを使用できる。また、
図1に示すように、シールリング3はリップ部31を有することが好ましく、リップ部31が管の外周面に密着する。これにより、所定の面圧が確保され、高いシール性が確保される。
【0026】
ハウジング2において、スペーサ部材22の内周面は、反挿入方向へ進むにしたがって縮径する傾斜面221で形成されている。弾性部材6は、ハウジング本体21の段部212と保持部材4との間に配置されている。弾性部材6が保持部材4および抜止部材5を反挿入方向へ向かって付勢することで、抜止部材5の外周面511がスペーサ部材22の傾斜面221に当接する。なお、ハウジング本体21の挿入口23側の内周面には内周溝が設けられており、スペーサ部材22が外方に抜け出すことを防止するため、該内周溝に止め輪7が嵌合されている。
【0027】
弾性部材6としては、圧縮コイルバネなどを使用することができる。
図1では、線材を一端から他端に向って外径が増大するように巻回された円錐台状のコイルバネを、大径側がハウジング本体21の段部212に当接し、小径側が保持部材4に当接するように設けられている。
【0028】
ハウジング2において、保持部材4の径方向外側にはハウジング2の内外を径方向に貫通する貫通孔24が形成されている。この貫通孔24を通じて、ハウジング2の内部に配置された保持部材4を目視することが可能である(例えば
図8参照)。貫通孔24は、ハウジング本体21の周方向に間隔をあけて複数個形成されている。貫通孔24の形状は、特に限定されるものではなく、矩形状や、円形状、楕円形状などの形状であってもよい。また、貫通孔24の大きさは、内側に位置する保持部材4を押圧可能な大きさであればよく、例えば、後述する押圧治具の突起を挿通可能な大きさである。具体的には、ハウジング21の周方向における貫通孔24の最大長さは10mm~30mm程度である。
【0029】
続いて、保持部材4による抜止部材5の保持について、
図2および
図3を用いて説明する。
図2(a)は保持部材4の斜視図であり、
図2(b)はそのA部拡大図である。
図2(a)に示すように、保持部材4は略リング状部材であり、一端に弾性部材の台座となる円環状のフランジ部41が形成されており、他端に複数の保持片42が形成されている。複数の保持片42は、円周方向に沿って並設され、各保持片42は略矩形状に切り込まれた保持溝43によって分割されている。なお、後述するように、フランジ部41には押圧治具の突起の傾斜面(
図7参照)が当接される。そのため、該突起の傾斜面との当接を行いやすくするため、フランジ部41の保持片42側端面の角部を切り欠いて、上記突起の傾斜面に対応する傾斜面とすることが好ましい。
【0030】
図2(b)に示すように、保持片42の両側面には保持溝43内に突出する略三角形状の係止部44が形成されている。この係止部44に抜止部材が嵌め込まれる。また、各保持片42の外周面には円周方向に沿った円周溝421が形成されており、この円周溝421と抜止部材を跨ぐように締結リング(図示省略)が装着される。なお、係止部44は、抜止部材の保持部材4からの脱落を防止できる構成であればよく、保持片42の一方の側面にのみ形成されていてもよい。
【0031】
図3は、抜止部材5の斜視図である。
図3に示すように、抜止部材5は、山形部51と、その山形の下部に形成された挟着部52とを有する。山形部51と挟着部52の間には段差が設けられており、
図2に示した保持部材4の係止部44に嵌め込まれるようにするため、挟着部52の幅が山形部51よりも狭くなっている。抜止部材5は、保持部材4の保持溝43に差し込まれ、山形部51と挟着部52の間の段差で係止部44に係止され、保持部材4の円周方向に沿って複数保持された状態で管継手に組込まれる。
【0032】
また、
図3の抜止部材5の内周面には、複数(
図3では4個)のエッジ部521が形成されている。エッジ部521を設けることで、管が挿入された状態で、抜止部材5のエッジ部521が管の外周面に食い込みやすくなるため、引き抜きに対する阻止力を一層向上できる。なお、抜止部材は、保持部材4に保持され、かつ、管の外周面に係合できる形状であれば、
図3の構成に限らない。例えば、挟着部52の内周面が、管の拡管部に嵌装されるようにするため、エッジ部のない円弧状に形成されていてもよい。
【0033】
次に、管継手と管の接続状態について
図4を用いて説明する。
図4において、管11は、例えばSUS304製の鋼管であり、管端部に円弧状断面を有する拡管部12が形成されている。管11を、ハウジング2の挿入口23から挿入していき、管11の先端がハウジング本体21に突き当たるまで挿入すると、拡管部12は抜止部材5のエッジ部521に嵌まり合い、ワンタッチ操作で接続が完了する。
図4の接続状態では、弾性部材6の付勢力によって、保持部材4および抜止部材5が反挿入方向に押されることで、抜止部材5の外周面511が傾斜面221に当接して、そのエッジ部521が拡管部12の外周面に密接に係合する。この接続状態において、管11に引き抜き力が作用しても、抜止部材5が管11の外周面に食い込むことで管11は抜かれない。一方で、配管のメンテナンス時や交換時などには、管11を管継手1から取り外す必要がある場合がある。
【0034】
管の取り外し機構について、本発明に係る管継手1は、貫通孔24を介して径方向外側から挿入方向に保持部材4が押圧されることで、保持部材4および抜止部材5が弾性部材6の付勢力に抗して移動して、抜止部材5と管11の係合が解除されることを特徴としている。この構成によれば、保持部材4を径方向外側から挿入方向に押圧することにより抜止部材5の係合を解除できるため、管継手の軸方向に沿って工具を作用させる必要もなく、狭い空間などでの作業性に優れる。
【0035】
保持部材4を押圧するための手段として、例えば押圧治具が用いられる。押圧治具としては、貫通孔を介して保持部材の径方向外側から作用させることができ保持部材を挿入方向に押圧できるものであれば、使用可能である。例えば、ドライバーなどの工具や所定の形状をした治具などが使用可能である。押圧治具は、管継手を構成する部材として管継手1に予め備えられていてもよい。押圧治具が具備される形態として、例えば、管継手の所定箇所に押圧治具が保持される形態や、管継手に押圧治具が同梱される形態を含む。
図5には、押圧治具の一例を示す。
図5に示すように、押圧治具8は、周方向の一部に切欠部83を有する略リング状部材である。リング本体81の内周面には、径方向内側に向かって突出した突起82が設けられている。
図5では、4個の突起82がリング周方向に等間隔に設けられている。
【0036】
押圧治具は、
図5の例に限定されるものではない。例えば、突起の数は、4個に限定されず、1個や、2個、5個以上であってもよい。また、突起が複数個の場合、リング周方向における各突起の間隔が互いに異なるようにしてもよい。また、
図5の例では、リング本体81の内周面の領域において各突起が均等に配置されているが、各突起が偏在(例えば、切欠部の対向位置側にのみ配置)されていてもよい。また、押圧治具を半円リング形状にしてもよい。
【0037】
図5において、各突起82は、軸方向断面の形状が非対称である。具体的には、軸方向の一方向に向かって傾斜した傾斜面821を有する。この傾斜面821は平面や曲面で構成され、保持部材4を押圧する押圧面となる。また、押圧治具は、例えば合成樹脂の成形体である。使用できる合成樹脂としては、例えば、ポリアミド(PA)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリアセタール(POM)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂などが挙げられる。
【0038】
図6および
図7を参照して、押圧治具を用いて管継手から管を取り外す方法を説明する。
図6は、管継手に押圧治具を装着した状態を示し、
図7は、押圧治具で保持部材を押圧した状態を示す。
図6において、押圧治具8は、弾性変形により拡径してハウジング2の貫通孔24に装着される。具体的には、押圧治具8の切欠部の開口幅を、貫通孔24が形成されたハウジング2の円周部の外径よりも大きくなるまで拡げて、各突起82を各貫通孔24の位置に合わせて嵌め込むことで、押圧治具8が装着される。この場合、突起82の傾斜面821が、挿入方向、つまり保持部材4を移動させる方向に向くように装着される。これにより、保持部材4のスムーズな移動が可能となる。
【0039】
押圧治具8を装着した状態から突起82を径方向内側に押し込むことで、突起82の傾斜面821と保持部材4のフランジ部41が当接して、保持部材4が挿入方向に沿って移動する(
図7参照)。つまり、傾斜面821が傾斜していることで、径方向への突起82の押し込み動作によって、保持部材4が挿入方向に移動する。この場合、弾性部材6によって反挿入方向へ向かって押されている保持部材4および抜止部材5が、弾性部材6の付勢力に抗して挿入方向へ移動する。この移動によって、抜止部材5がスペーサ部材22から離れ、管11に対する抜止部材5の嵌まり合いが緩むことで、抜止部材5と管11の係合が解除される。このとき、弾性部材6は圧縮された状態となっている。
【0040】
抜止部材5の係合が解除された状態で、管11に引き抜き力を作用させることで、径方向に移動可能になった抜止部材5を拡管部12が乗りこえ、管継手1から管11を取り外すことができる。
【0041】
上記第1実施形態では、ハウジング2を、ハウジング本体21とスペーサ部材22の別部材で構成したが、これらを一部材(ハウジング本体のみ)で構成してもよい。この場合、ハウジング本体21の挿入口側の内壁面を反挿入方向へ進むにしたがって縮径する傾斜面とし、その傾斜面に抜止部材が押し付けられる構成にしてもよい。
【0042】
本発明に係る管継手の第2実施形態を
図8に基づいて説明する。
図8は、管と接続された状態の管継手の片側断面図であり、上半分が断面図、下半分が側面図を表している。
図8において、ハウジング2は、ハウジング本体21と、ハウジング本体21の一端部に固定されたナット状部材25とを有する。ハウジング本体21とナット状部材25は、例えば、ハウジング本体21の外周面に設けられたおねじ部と、ナット状部材25の内周面に設けられためねじ部を螺合させることで固定される。
【0043】
ハウジング本体21にはシールリング3が内蔵され、ナット状部材25の内部には抜止部材5を保持した保持部材4が設けられている。保持部材4とハウジング本体21との間には弾性部材6が配置されており、その弾性部材6によって、保持部材4および抜止部材5が反挿入方向へ向かって付勢されている。
図8の接続状態では、抜止部材5の外周面511が傾斜面251に当接して、エッジ部521が拡管部12の外周面に密接に係合している。これにより、管11の抜け出しを防止できる。
【0044】
また、ナット状部材25において、保持部材4の径方向外側には貫通孔24が形成されている。貫通孔24は、ナット状部材25の周方向に間隔をあけて複数個(例えば、4個)設けられており、上述したような押圧治具の突起が嵌合可能となっている。
図8の管継手1においても、貫通孔24を介して、径方向外側から挿入方向に保持部材4を押圧することで、保持部材4および抜止部材5が挿入方向に沿って移動して、抜止部材5の係合を解除することができる。
【0045】
以上のように、第1実施形態および第2実施形態の管継手は、径方向外側から挿入方向に保持部材が押圧されて抜止部材の係合が解除される構成であるため、管の周囲が狭い空間などの場合でも管の取り外しを容易に行うことができる。一方、不意の接触や誤った操作などによって、意図せずに保持部材が押圧される場合も考えられる。そのような場合、抜止部材の係合が解除されて管が抜けてしまうおそれがある。
【0046】
このような対処として、
図9には、第3実施形態として、抜止部材の係合の解除をロックするロック機構を設けた管継手を示す。
図9に示すように、管継手1のハウジング2は、ハウジング本体21と、ハウジング本体21の一端部に装着されたナット状部材25とを有する。この管継手1は、
図8の管継手と異なり、ナット状部材25が、ハウジング本体21に対してスライド可能に構成されており、ナット状部材25がスライドされることによって保持部材4の移動が制限される。
図9は、ナット状部材25がスライドする前の状態を示し、
図10は、ナット状部材25がスライドした後の状態を示す。
【0047】
図9において、ナット状部材25の内壁面に2条の内周溝252、253が形成されている。2条の円周溝のうち、挿入方向下流側が内周溝252で、挿入方向上流側が内周溝253である。止め輪9の一部がナット状部材25の内周溝252に嵌入され、残りの一部がハウジング本体21の外周溝に嵌入されることで、ハウジング本体21とナット状部材25とが結合されている。また、軸方向においてハウジング本体21とナット状部材25との間には隙間が設けられている。隙間はハウジング2の周方向に沿って形成されており、上記隙間にカラー10が嵌め込まれている。
図9の状態では、上記隙間にカラー10が介在されているため、ナット状部材25は挿入方向にスライドできない。つまり、カラー10は、ナット状部材25のスライドを規制する規制部材となっている。なお、
図9の管継手1においても、貫通孔24を介して保持部材4が押圧されることで、抜止部材5の係合の解除が可能である。
【0048】
カラー10は、
図11に示すように、隙間に嵌り込む略C字状の本体部101と、作業者に把持される把持部102とを有する。カラー10は、例えば合成樹脂の成形体である。使用できる合成樹脂としては、例えば、PA樹脂、PC樹脂、POM樹脂、PBT樹脂、PPS樹脂などが挙げられる。
【0049】
図9の状態から、カラー10を引き抜き、ナット状部材25を挿入方向へ押し込んでいくと、止め輪9は、内周溝252の傾斜面(反挿入方向側の側壁面)に沿って移動して、ハウジング本体21の外周溝に押し込まれる。その後、止め輪9がナット状部材25の内周溝253に嵌まり込む(
図10参照)。
【0050】
図10に示すように、ナット状部材25がスライドした状態では、弾性部材6はハウジング2と保持部材4との間で圧縮されている。つまり、弾性部材6の圧縮代が小さくなることで、保持部材4の移動ストロークが小さくなる。その結果、この状態で保持部材4が押圧されたとしても、保持部材4の移動が制限され、抜止部材5の係合が維持される。なお、
図10では、弾性部材6が完全に圧縮されており、保持部材4が移動不可となっているが、このロック機構は、抜止部材5の係合が維持される程度に保持部材4の移動が制限される構成であればよい。
【0051】
このように、
図10の管継手1は、ナット状部材25をハウジング本体21に対して挿入方向へスライド可能に構成することで、スライド前の状態では押圧による管11の取り外しを可能としつつ、スライド後の状態では意図しない押圧による管の抜け出しを防止することができる。
【0052】
上記各実施形態では、管継手に接続される管として、管端部に拡管部が形成された管を用いたが、これに限定されない。例えば、拡管部がなく外径が一定の管を用いることもできる。また、ステンレス鋼管以外にも、樹脂製の管も使用可能である。
【0053】
また、上記各実施形態では、略円筒状のハウジングの一端部を挿入口として、一方側から管が挿入される形態を示したが、ハウジングの両側から管が挿入される形態であってもよい。また、ハウジングを有底円筒状にして、ハウジングの一端部を挿入口とし、他端部を閉塞させてもよい。このような構成の管継手は、例えば、水圧試験用のキャップとして使用される。鉄道沿線などの長い配管施工を行う場合、区間ごとの水圧試験が必要であり、その都度、末端部の管にキャップの取り付け、取り外しを行うことになるが、本発明に係る管継手をそのキャップとして使用することで取り付け、取り外しが容易となり、作業の効率化を図ることができる。
【0054】
本発明の管継手は、管の抜け出しを防止するとともに、管周囲が狭い空間などの場合でも管を容易に取り外すことができるので、管継手に広く使用でき、特に、メンテナンスや交換などの再施工が頻繁な配管における管継手に適している。
【符号の説明】
【0055】
1:管継手
2:ハウジング
21:ハウジング本体
211:円周溝
22:スペーサ部材
221:傾斜面
23:挿入口
24:貫通孔
25:ナット状部材
251:傾斜面
252:内周溝
253:内周溝
3:シールリング
31:リップ部
4:保持部材
41:フランジ部
42:保持片
421:円周溝
43:保持溝
44:係止部
5:抜止部材
51:山形部
511:外周面
52:狭着部
521:エッジ部
6:弾性部材
7:止め輪
8:押圧治具
81:リング本体
82:突起
821:傾斜面
83:切欠部
9:止め輪
10:カラー
101:カラー本体部
102:把持部
11:管
12:拡管部