(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】識別部材、識別部材を用いた自律走行装置と搬送対象物の連結システム及び識別部材を用いた自律走行装置と搬送対象物の連結方法
(51)【国際特許分類】
G05D 1/02 20200101AFI20231212BHJP
【FI】
G05D1/02 Z
(21)【出願番号】P 2019183969
(22)【出願日】2019-10-04
【審査請求日】2022-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 伸五
(72)【発明者】
【氏名】岡本 敏弘
(72)【発明者】
【氏名】工藤 宏一
(72)【発明者】
【氏名】片山 紘
【審査官】牧 初
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-015027(JP,A)
【文献】特開2011-015026(JP,A)
【文献】特開2010-128937(JP,A)
【文献】登録実用新案第3135697(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/00-1/12
B65G 1/00-1/133
B65G 1/14-1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自律走行装置が搬送対象物と自動連結する際に用いる識別部材であって、
前記自律走行装置は、
検出領域に光を射出することで前記検出領域を光走査し、射出された前記光が前記検出領域に存在する物体により反射された反射光を受光するセンサにより、前記検出領域に存在する前記識別部材を検出する検出手段と、
前記搬送対象物と連結する連結手段と、
を有し、
前記搬送対象物は、
複数の横フレームと少なくとも3本以上の縦フレームとを組み合わせたカゴ部と、
前記連結手段が連結する被連結部と、
を有し、
前記自律走行装置は、前記検出手段が検出した前記識別部材の位置に基づき、前記被連結部の位置を判断して、前記連結手段と前記被連結部とを連結するものであり、
前記識別部材は、
前記センサにより光走査される検出面と、
前記カゴ部に装着するための装着部材が設けられた装着面と、
を有し、
前記検出面と前記装着面の配置関係は表裏の関係であり、
前記装着部材は、第一の位置決め部と、第二の位置決め部と、少なくとも一つの取付部と、を有し、
三次元直交座標系において前記カゴ部の幅方向をX軸方向、高さ方向をY軸方向、奥行き方向をZ軸方向と定義すると、
前記横フレームは前記X軸方向に延在し、前記縦フレームは前記Y軸方向に延在し、
当該識別部材は、前記カゴ部のXY平面上に装着され、
前記検出面には、当該識別部材の前記X軸方向の長さを判断するための認識部が設けられ、
前記3本以上の縦フレームのうち、前記X軸方向において最も中央に位置する3本の縦フレームを、前記X軸方向の一方の側から他方の側へ向かって順番に、第一の縦フレーム、第二の縦フレーム、第三の縦フレームと定義すると、
当該識別部材を前記カゴ部に装着する際に、前記第一の位置決め部は、前記第一の縦フレームと前記第二の縦フレームとの間に配置され、前記第二の位置決め部は前記第二の縦フレームと前記第三の縦フレームとの間に配置されるものであり、
前記第一の位置決め部と前記第二の位置決め部との前記X軸方向の間隔は前記縦フレームの太さよりも広く、この間隔をL1、
前記3本以上の縦フレームの間隔をW、
前記第一の位置決め部の前記X軸方向の長さをL2a、
前記第二の位置決め部の前記X軸方向の長さをL2b、
と定義すると、
(W―L1)/2<L2a<W
(W―L1)/2<L2b<W
を満足すること
を特徴とする識別部材。
【請求項2】
前記取付部は、前記横フレームに懸かるフックであること
を特徴とする請求項1に記載の識別部材。
【請求項3】
前記取付部は、前記縦フレームまたは前記横フレームを挟み込むクランプであること
を特徴とする請求項1に記載の識別部材。
【請求項4】
前記第一の位置決め部と前記第二の位置決め部とは一体であり、前記第一の位置決め部と前記第二の位置決め部との前記X軸方向の間隔は切り欠きにより形成されていること
を特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の識別部材。
【請求項5】
自律走行装置が搬送対象物と自動連結する際に用いる識別部材であって、
前記自律走行装置は、
検出領域に光を射出することで前記検出領域を光走査し、射出された前記光が前記検出領域に存在する物体により反射された反射光を受光するセンサにより、前記検出領域に存在する前記識別部材を検出する検出手段と、
前記搬送対象物と連結する連結手段と、
を有し、
前記搬送対象物は、
複数の横フレームと少なくとも3本以上の縦フレームとを組み合わせたカゴ部と、
前記連結手段が連結する被連結部と、
を有し、
前記自律走行装置は、前記検出手段が検出した前記識別部材の位置に基づき、前記被連結部の位置を判断して、前記連結手段と前記被連結部とを連結するものであり、
前記識別部材は、
前記センサにより光走査される検出面と、
前記カゴ部に装着するための装着部材が設けられた装着面と、
を有し、
前記検出面と前記装着面の配置関係は表裏の関係であり、
前記装着部材は、前記縦フレームを挟み込む少なくとも一つの縦クランプ部と前記横フレームを挟み込む第一の横クランプ部と第二の横クランプ部と、を有し、
三次元直交座標系において前記カゴ部の幅方向をX軸方向、高さ方向をY軸方向、奥行き方向をZ軸方向と定義すると、
前記縦クランプ部は、前記縦クランプ部を延長した線分が前記Y軸方向と平行となるように配置され、前記横クランプ部は、前記横クランプ部を延長した線分が前記X軸方向と平行となるように配置され、
前記横フレームは前記X軸方向に延在し、前記縦フレームは前記Y軸方向に延在し、
当該識別部材は、前記カゴ部のXY平面上に装着され、
前記検出面には、当該識別部材の前記X軸方向の長さを判断するための認識部が設けられ、
前記3本以上の縦フレームのうち、前記X軸方向において最も中央に位置する3本の縦フレームを、前記X軸方向の一方の側から他方の側へ向かって順番に、第一の縦フレーム、第二の縦フレーム、第三の縦フレームと定義すると、
前記縦クランプ部は前記第二の縦フレームを挟み込み、
前記第一の横クランプ部と前記第二の横クランプ部との前記X軸方向の間隔は前記縦フレームの太さよりも広く、この間隔をL11、
前記3本以上の縦フレームの間隔をW、
前記第一の横クランプ部の前記X軸方向の長さをL12a
、
前記第二の横クランプ部の前記X軸方向の長さをL12b
、
と定義すると、
(W―L11)/2<L12a<W
(W―L11)/2<L12b<W
を満足すること
を特徴とする識別部材。
【請求項6】
前記認識部は、前記検出面において、当該識別部材の前記X軸方向の中心から線対称の位置に前記Y軸方向に延在して設けられており、
前記検出手段が光走査した際の反射率が、前記検出面における前記認識部以外の領域と前記認識部とで異なるように構成されていること
を特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の識別部材。
【請求項7】
自律走行装置と搬送対象物と前記搬送対象物に装着される識別部材とで構成される連結システムであって、
前記自律走行装置は、
検出領域に光を射出することで前記検出領域を光走査し、射出された前記光が前記検出領域に存在する物体により反射された反射光を受光するセンサにより、前記検出領域に存在する前記識別部材を検出する検出手段と、
前記搬送対象物と連結する連結手段と、
を有し、
前記搬送対象物は、
複数の横フレームと少なくとも3本以上の縦フレームとを組み合わせたカゴ部と、
前記連結手段が連結する被連結部と、
を有し、
前記識別部材は、
前記センサにより光走査される検出面と、
前記カゴ部に装着するための装着部材が設けられた装着面と、
を有し、
前記検出面と前記装着面の配置関係は表裏の関係であり、
前記装着部材は、第一の位置決め部と、第二の位置決め部と、少なくとも一つの取付部と、を有し、
三次元直交座標系において前記カゴ部の幅方向をX軸方向、高さ方向をY軸方向、奥行き方向をZ軸方向と定義すると、
前記横フレームは前記X軸方向に延在し、前記縦フレームは前記Y軸方向に延在し、
当該識別部材は、前記カゴ部のXY平面上に装着され、
前記検出面には、当該識別部材の前記X軸方向の長さを判断するための認識部が設けられ、
前記3本以上の縦フレームのうち、前記X軸方向において最も中央に位置する3本の縦フレームを、前記X軸方向の一方の側から他方の側へ向かって順番に、第一の縦フレーム、第二の縦フレーム、第三の縦フレームと定義すると、
当該識別部材を前記カゴ部に装着する際に、前記第一の位置決め部は、前記第一の縦フレームと前記第二の縦フレームとの間に配置され、前記第二の位置決め部は前記第二の縦フレームと前記第三の縦フレームとの間に配置されるものであり、
前記第一の位置決め部と前記第二の位置決め部との前記X軸方向の間隔は前記縦フレームの太さよりも広く、この間隔をL1、
前記3本以上の縦フレームの間隔をW、
前記第一の位置決め部の前記X軸方向の長さをL2a、
前記第二の位置決め部の前記X軸方向の長さをL2b、
と定義すると、
(W―L1)/2<L2a<W
(W―L1)/2<L2b<W
を満足し、
前記自律走行装置は、前記検出手段が検出した前記識別部材の位置に基づき、前記被連結部の位置を判断して、前記連結手段と前記被連結部とを連結すること
を特徴とする連結システム。
【請求項8】
搬送対象物に装着される識別部材を用いた自律走行装置と前記搬送対象物との連結方法であって、
前記自律走行装置は、
検出領域に光を射出することで前記検出領域を光走査し、射出された前記光が前記検出領域に存在する物体により反射された反射光を受光するセンサにより、前記検出領域に存在する前記識別部材を検出する検出手段と、
前記搬送対象物と連結する連結手段と、
を有し、
前記搬送対象物は、
複数の横フレームと少なくとも3本以上の縦フレームとを組み合わせたカゴ部と、
前記連結手段が連結する被連結部と、
を有し、
前記識別部材は、
前記センサにより光走査される検出面と、
前記カゴ部に装着するための装着部材が設けられた装着面と、
を有し、
前記検出面と前記装着面の配置関係は表裏の関係であり、
前記装着部材は、第一の位置決め部と、第二の位置決め部と、少なくとも一つの取付部と、を有し、
三次元直交座標系において前記カゴ部の幅方向をX軸方向、高さ方向をY軸方向、奥行き方向をZ軸方向と定義すると、
前記横フレームは前記X軸方向に延在し、前記縦フレームは前記Y軸方向に延在し、
当該識別部材は、前記カゴ部のXY平面上に装着され、
前記検出面には、当該識別部材の前記X軸方向の長さを判断するための認識部が設けられ、
前記3本以上の縦フレームのうち、前記X軸方向において最も中央に位置する3本の縦フレームを、前記X軸方向の一方の側から他方の側へ向かって順番に、第一の縦フレーム、第二の縦フレーム、第三の縦フレームと定義すると、
当該識別部材を前記カゴ部に装着する際に、前記第一の位置決め部は、前記第一の縦フレームと前記第二の縦フレームとの間に配置され、前記第二の位置決め部は前記第二の縦フレームと前記第三の縦フレームとの間に配置されるものであり、
前記第一の位置決め部と前記第二の位置決め部との前記X軸方向の間隔は前記縦フレームの太さよりも広く、この間隔をL1、
前記3本以上の縦フレームの間隔をW、
前記第一の位置決め部の前記X軸方向の長さをL2a、
前記第二の位置決め部の前記X軸方向の長さをL2b、
と定義すると、
(W―L1)/2<L2a<W
(W―L1)/2<L2b<W
を満足し、
前記自律走行装置は、前記検出手段が検出した前記識別部材の位置に基づき、前記被連結部の位置を判断して、前記連結手段と前記被連結部とを連結すること
を特徴とする連結方法。
【請求項9】
自律走行装置と搬送対象物と前記搬送対象物に装着される識別部材とで構成される連結システムであって、
前記自律走行装置は、
検出領域に光を射出することで前記検出領域を光走査し、射出された前記光が前記検出領域に存在する物体により反射された反射光を受光するセンサにより、前記検出領域に存在する前記識別部材を検出する検出手段と、
前記搬送対象物と連結する連結手段と、
を有し、
前記搬送対象物は、
複数の横フレームと少なくとも3本以上の縦フレームとを組み合わせたカゴ部と、
前記連結手段が連結する被連結部と、
を有し、
前記識別部材は、
前記センサにより光走査される検出面と、
前記カゴ部に装着するための装着部材が設けられた装着面と、
を有し、
前記検出面と前記装着面の配置関係は表裏の関係であり、
前記装着部材は、前記縦フレームを挟み込む少なくとも一つの縦クランプ部と前記横フレームを挟み込む第一の横クランプ部と第二の横クランプ部と、を有し、
三次元直交座標系において前記カゴ部の幅方向をX軸方向、高さ方向をY軸方向、奥行き方向をZ軸方向と定義すると、
前記縦クランプ部は、前記縦クランプ部を延長した線分が前記Y軸方向と平行となるように配置され、前記横クランプ部は、前記横クランプ部を延長した線分が前記X軸方向と平行となるように配置され、
前記横フレームは前記X軸方向に延在し、前記縦フレームは前記Y軸方向に延在し、
当該識別部材は、前記カゴ部のXY平面上に装着され、
前記検出面には、当該識別部材の前記X軸方向の長さを判断するための認識部が設けられ、
前記3本以上の縦フレームのうち、前記X軸方向において最も中央に位置する3本の縦フレームを、前記X軸方向の一方の側から他方の側へ向かって順番に、第一の縦フレーム、第二の縦フレーム、第三の縦フレームと定義すると、
前記縦クランプ部は前記第二の縦フレームを挟み込み、
前記第一の横クランプ部と前記第二の横クランプ部との前記X軸方向の間隔は前記縦フレームの太さよりも広く、この間隔をL11、
前記3本以上の縦フレームの間隔をW、
前記第一の横クランプ部の前記X軸方向の長さをL12a
、
前記第二の横クランプ部の前記X軸方向の長さをL12b
、
と定義すると、
(W―L11)/2<L12a<W
(W―L11)/2<L12b<W
を満足し、
前記自律走行装置は、前記検出手段が検出した前記識別部材の位置に基づき、前記被連結部の位置を判断して、前記連結手段と前記被連結部とを連結すること
を特徴とする連結システム。
【請求項10】
搬送対象物に装着される識別部材を用いた自律走行装置と前記搬送対象物との連結方法であって、
前記自律走行装置は、
検出領域に光を射出することで前記検出領域を光走査し、射出された前記光が前記検出領域に存在する物体により反射された反射光を受光するセンサにより、前記検出領域に存在する前記識別部材を検出する検出手段と、
前記搬送対象物と連結する連結手段と、
を有し、
前記搬送対象物は、
複数の横フレームと少なくとも3本以上の縦フレームとを組み合わせたカゴ部と、
前記連結手段が連結する被連結部と、
を有し、
前記識別部材は、
前記センサにより光走査される検出面と、
前記カゴ部に装着するための装着部材が設けられた装着面と、
を有し、
前記検出面と前記装着面の配置関係は表裏の関係であり、
前記装着部材は、前記縦フレームを挟み込む少なくとも一つの縦クランプ部と前記横フレームを挟み込む第一の横クランプ部と第二の横クランプ部と、を有し、
三次元直交座標系において前記カゴ部の幅方向をX軸方向、高さ方向をY軸方向、奥行き方向をZ軸方向と定義すると、
前記縦クランプ部は、前記縦クランプ部を延長した線分が前記Y軸方向と平行となるように配置され、前記横クランプ部は、前記横クランプ部を延長した線分が前記X軸方向と平行となるように配置され、
前記横フレームは前記X軸方向に延在し、前記縦フレームは前記Y軸方向に延在し、
当該識別部材は、前記カゴ部のXY平面上に装着され、
前記検出面には、当該識別部材の前記X軸方向の長さを判断するための認識部が設けられ、
前記3本以上の縦フレームのうち、前記X軸方向において最も中央に位置する3本の縦フレームを、前記X軸方向の一方の側から他方の側へ向かって順番に、第一の縦フレーム、第二の縦フレーム、第三の縦フレームと定義すると、
前記縦クランプ部は前記第二の縦フレームを挟み込み、
前記第一の横クランプ部と前記第二の横クランプ部との前記X軸方向の間隔は前記縦フレームの太さよりも広く、この間隔をL11、
前記3本以上の縦フレームの間隔をW、
前記第一の横クランプ部の前記X軸方向の長さをL12a
、
前記第二の横クランプ部の前記X軸方向の長さをL12b
、
と定義すると、
(W―L11)/2<L12a<W
(W―L11)/2<L12b<W
を満足し、
前記自律走行装置は、前記検出手段が検出した前記識別部材の位置に基づき、前記被連結部の位置を判断して、前記連結手段と前記被連結部とを連結すること
を特徴とする連結方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、識別部材、識別部材を用いた自律走行装置と搬送対象物の連結システム及び識別部材を用いた自律走行装置と搬送対象物の連結方法に関する。
【背景技術】
【0002】
搬送物等を搬送する自律移動装置が移動経路を自律走行する際に、自律移動装置が自己の位置を認識するための標識を移動経路に設ける技術が知られている(特許文献1~3)。
【0003】
また、自律移動装置により搬送されるカゴ台車等の搬送対象物に、搬送対象物の識別番号情報、搬送先情報、搬送の優先度情報等がコード化された認識用のマーカーが表示された識別部材となるIDパネルを装着することが知られている(特許文献4)。
【0004】
ところで、近年では、自律移動装置が搬送対象物と自動連結することが検討されている。自律移動装置が搬送対象物と自動連結するためには、自律移動装置が連結する搬送対象物を識別する必要がある。
そこで、識別部材を搬送対象物に装着し、この識別部材を利用して、自律移動装置は搬送対象物と自動連結することが考えられる。
【0005】
引用文献1~3に開示されている標識は、自律移動装置が、自己の位置を判断するために移動経路に設けられた標識であり、搬送対象物に装着するという技術思想は開示されていない。
【0006】
また、引用文献4に記載されている識別部材は、カゴ台車等の搬送対象物に装着するためのものであるが、搬送対象物に装着された識別部材の位置に基づき、自律移動装置が搬送対象物を自動連結することは開示されてはいない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
識別部材を搬送対象物に装着し、自律移動装置がこの識別部材を利用して搬送対象物と自動連結する場合、搬送対象物に装着された識別部材を連結する際の目標位置として、自律移動装置に設けられた連結装置にて連結することが考えられる。この場合、識別部材は、自律移動装置が連結する位置を示すために、搬送対象物における所望な位置に装着される必要がある。例えば、識別部材がカゴ台車等の搬送対象物の所望の位置に装着されていないと、自律移動装置と搬送対象物との適切な連結をすることができない。また、仮に自律移動装置と搬送対象物とを連結することができたとしても、自律移動装置が搬送対象物を搬送する際に、バランスが崩れてふらついて走行することが懸念される。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、自律移動装置が搬送対象物と連結する際に、搬送対象物における連結位置の目標となる所望の位置に容易に装着でき、かつ搬送対象物における連結位置の目標として適切ではない位置には、装着することのできない識別部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本実施の形態の一観点によれば、
自律走行装置が搬送対象物と自動連結する際に用いる識別部材であって、
前記自律走行装置は、
検出領域に光を射出することで前記検出領域を光走査し、射出された前記光が前記検出領域に存在する物体により反射された反射光を受光するセンサにより、前記検出領域に存在する前記識別部材を検出する検出手段と、
前記搬送対象物と連結する連結手段と、
を有し、
前記搬送対象物は、
複数の横フレームと少なくとも3本以上の縦フレームとを組み合わせたカゴ部と、
前記連結手段が連結する被連結部と、
を有し、
前記自律走行装置は、前記検出手段が検出した前記識別部材の位置に基づき、前記被連結部の位置を判断して、前記連結手段と前記被連結部とを連結するものであり、
前記識別部材は、
前記センサにより光走査される検出面と、
前記カゴ部に装着するための装着部材が設けられた装着面と、
を有し、
前記検出面と前記装着面の配置関係は表裏の関係であり、
前記装着部材は、第一の位置決め部と、第二の位置決め部と、少なくとも一つの取付部と、を有し、
三次元直交座標系において前記カゴ部の幅方向をX軸方向、高さ方向をY軸方向、奥行き方向をZ軸方向と定義すると、
前記横フレームは前記X軸方向に延在し、前記縦フレームは前記Y軸方向に延在し、
当該識別部材は、前記カゴ部のXY平面上に装着され、
前記検出面には、当該識別部材の前記X軸方向の長さを判断するための認識部が設けられ、
前記3本以上の縦フレームのうち、前記X軸方向において最も中央に位置する3本の縦フレームを、前記X軸方向の一方の側から他方の側へ向かって順番に、第一の縦フレーム、第二の縦フレーム、第三の縦フレームと定義すると、
当該識別部材を前記カゴ部に装着する際に、前記第一の位置決め部は、前記第一の縦フレームと前記第二の縦フレームとの間に配置され、前記第二の位置決め部は前記第二の縦フレームと前記第三の縦フレームとの間に配置されるものであり、
前記第一の位置決め部と前記第二の位置決め部との前記X軸方向の間隔は前記縦フレームの太さよりも広く、この間隔をL1、
前記3本以上の縦フレームの間隔をW、
前記第一の位置決め部の前記X軸方向の長さをL2a、
前記第二の位置決め部の前記X軸方向の長さをL2b、
と定義すると、
(W―L1)/2<L2a<W
(W―L1)/2<L2b<W
を満足すること
を特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本開示の識別部材によれば、自律移動装置が搬送対象物と連結する際に、搬送対象物における連結位置の目標となる所望の位置に容易に装着でき、かつ搬送対象物における連結位置の目標として適切ではない位置には、装着することのできない識別部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1の実施の形態における搬送システムにおける自走ロボットとカゴ台車とを示す説明図
【
図2】カゴ台車にIDパネルが配置された例を示す斜視図
【
図5】自走ロボットのコントローラのハードウェア構成の一例を示すブロック図
【
図6】自走ロボットのコントローラが発揮する機能的構成例を示すブロック図
【
図7】自走ロボットが仮置きエリアから保管エリアにカゴ台車を搬送する動作の流れを示すフローチャート
【
図8】IDパネルの検出処理の流れを概略的に示すフローチャート
【
図9】IDパネルの検出におけるピーク値検出状態を示す図
【
図10】ピーク値を検出する手法について説明する図
【
図11】IDパネルの検出における距離情報値検出状態を示す図
【
図12】自走ロボットとカゴ台車とが接続可能な範囲を示す図
【
図14】連結装置における回動部材とともに固定板材に対して回動する部分の説明図
【
図15】回動部材に対する磁石の固定方法の説明する連結装置の断面説明図
【
図16】連結爪の動作を説明する連結装置の断面説明図
【
図18】第1の実施の形態におけるIDパネルの背面図
【
図19】第1の実施の形態におけるIDパネルがカゴ台車に装着された状態の説明図
【
図20】第1の実施の形態におけるIDパネルの説明図(1)
【
図21】第1の実施の形態におけるIDパネルの説明図(2)
【
図22】第1の実施の形態と比較のために用いたIDパネルの構造図(1)
【
図23】第1の実施の形態と比較のために用いたIDパネルの説明図(1)
【
図24】第1の実施の形態と比較のために用いたIDパネルの構造図(2)
【
図25】第1の実施の形態と比較のために用いたIDパネルの説明図(2)
【
図26】第1の実施の形態と比較のために用いたIDパネルの構造図(3)
【
図27】第1の実施の形態と比較のために用いたIDパネルの構造図(4)
【
図28】第1の実施の形態におけるIDパネルの他の構成の説明図(1)
【
図29】第1の実施の形態におけるIDパネルの他の構成の説明図(2)
【
図31】第1の実施の形態における変形例1のIDパネルの斜視図
【
図32】第1の実施の形態における変形例1のIDパネルの説明図(1)
【
図33】第1の実施の形態における変形例1のIDパネルの説明図(2)
【
図34】第1の実施の形態における変形例1のIDパネルの説明図(3)
【
図35】第1の実施の形態における変形例2のIDパネルの説明図(1)
【
図36】第1の実施の形態における変形例2のIDパネルの説明図(2)
【
図37】第1の実施の形態における変形例2のIDパネルの説明図(3)
【
図38】第1の実施の形態における変形例2の他のIDパネルの説明図(1)
【
図39】第1の実施の形態における変形例2の他のIDパネルの説明図(2)
【
図40】第1の実施の形態における変形例2の他のIDパネルの説明図(3)
【
図41】他のカゴ台車にIDパネルが装着された状態の説明図(1)
【
図42】他のカゴ台車にIDパネルが装着された状態の説明図(2)
【
図43】他のカゴ台車にIDパネルが装着された状態の説明図(3)
【
図44】第2の実施の形態におけるIDパネルの背面図
【
図45】第2の実施の形態におけるIDパネルの側面図
【
図46】第2の実施の形態におけるIDパネルの説明図
【
図47】第2の実施の形態における変形例のIDパネルの背面図
【
図48】第2の実施の形態における変形例のIDパネルの説明図
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施するための形態について、以下に説明する。尚、同じ部材等については、同一の符号を付して説明を省略する。また、本願においては、後述するIDパネル21等の識別部材を正面から見た場合において、横(幅)方向をX軸方向、縦(高さ)方向をY軸方向、識別部材の奥行き方向をZ軸方向とする。
【0013】
〔第1の実施の形態〕
(搬送システム)
図1は、第1の実施の形態における搬送システムにおける自走ロボット1とカゴ台車2とを示す説明図である。本実施の形態は、搬送対象物であるカゴ台車2のような被牽引台車に自動で接続して牽引することで、カゴ台車2を所望の搬送先へ自動搬送する無人搬送車(AGV:Automated Guided Vehicle)としての自走ロボット1を、自律移動装置として適用した搬送システムの例である。本願においては、搬送対象物を搬送対象または搬送対象物と記載する場合がある。
【0014】
自走ロボット1は、搬送物を積載するカゴ台車2に自動で連結する機能を持った自律移動装置である。これにより、自走ロボット1には積載が可能な構成を持たせることなく、簡易な移動装置によってカゴ台車2を牽引させることで、カゴ台車2に積載された多数の搬送物を搬送させることができる。
【0015】
図1に示すように、自走ロボット1は、装置本体であるロボット本体部100、磁気センサ3、検出装置であるコントローラ4、電力源(バッテリー)6、動力モータ7、モータドライバ8、測域センサ9、連結装置10、駆動車輪71及び従動車輪72等を備える。検出部となる測域センサ9は、自走ロボット1の周辺環境を認識する。
【0016】
本実施の形態の搬送システムでは、自走ロボット1の走行可能な経路の床面に磁気テープを設置し、磁気センサ3を用いて磁気テープを検出することにより自走ロボット1が走行可能な経路上に位置していることを認識することができる。床面にテープを設置する誘導方式としては、磁気テープを用いる構成(磁気式)に限らず、光学テープを用いる構成(光学式)としてもよい。光学テープを用いる場合は、磁気センサ3の代わりに反射センサやイメージセンサなどが利用できる。
【0017】
また、本実施の形態の搬送システムでは、二次元あるいは三次元地図と測域センサ9の検出結果との照合によって自己位置を認識する自律走行を行うことができる。測域センサ9は、物体にレーザ光を照射してその反射光から物体までの距離を測定する走査式のレーザ距離センサ(レーザレンジファインダ(LRF))である。以降において、測域センサ9をLRF9と表記する場合がある。
【0018】
なお、検出結果と二次元あるいは三次元地図との照合によって自己位置の認識に用いるセンサとしては、ステレオカメラやデプスカメラなども利用できる。
【0019】
自走ロボット1は、磁気センサ3や測域センサ9の検出結果に基づいてコントローラ4がモータドライバ8を介して動力モータ7の駆動を制御し、動力モータ7が駆動車輪71を回動駆動することで自走ロボット1が自律走行を行う。
【0020】
図1に示すように、カゴ台車2は、カゴ部20を保持する底板22と、四角形状の底板22の四隅に配置されたキャスター23と、カゴ部20の側面に配置された識別部材であるIDパネル21とを備える。
【0021】
所定の場所に置かれたカゴ台車2には、認識用のマーカーが表示されたIDパネル21が装着されている。即ち、カゴ台車2にはIDパネル21が装着されている。マーカーは、帯状部材の再帰反射テープ21b(
図3参照)等を用いて、カゴ台車2の識別番号情報(ID情報)、搬送位置などの搬送先情報、搬送の優先度情報がコード化されている。カゴ台車2の識別番号情報(ID情報)は、テーブル参照などによって認識することができる。
【0022】
自走ロボット1には、マーカー読取装置が設置されている。マーカー読取装置はID認識手段である測域センサ9と復号部とからなる。本実施の形態ではコントローラ4が復号部としての機能を有する。コントローラ4は、測域センサ9の検出結果からマーカーのコードを認識する。コントローラ4の復号部では認識したマーカーのコード情報をデコードすることで、カゴ台車2の認識番号情報、搬送先情報、優先度情報を得る。
【0023】
本実施の形態では、詳細は後述するが、カゴ台車2に設置されたマーカーとして再帰反射テープ21bを用いている。自走ロボット1は、周辺環境との距離を取得するレーザレンジファインダ(LRF)等の測域センサ9を用いて読み取る。コントローラ4は、測域センサ9によって位置を認識したIDパネル21と測域センサ9との距離情報からIDパネル21の位置座標を算出する。算出したIDパネル21の位置座標を用いて、コントローラ4が動力モータ7の駆動制御を行うことで、自走ロボット1をカゴ台車2におけるIDパネル21正面の所定の位置に位置決めする。
【0024】
次に、IDパネル21について詳述する。
【0025】
ここで、
図2はカゴ台車2にIDパネル21が配置された例を示す斜視図である。
図2に示すように、カゴ台車2は、底板22に略平行な横フレーム24と、横フレーム24に略垂直な縦フレーム25を有しており、底板22の周囲には、上側に凸となる下部フレーム26が設けられている。
【0026】
また、IDパネル21は、カゴ台車2の正面において横方向の略中央部に配置される。より詳細には、IDパネル21は、自走ロボット1の測域センサ9に対して対向する位置に配置される(
図1参照)。IDパネル21は、カゴ台車2に着脱可能であって、カゴ台車2の中央の横フレーム24等の所定の位置に作業者によって設置される。なお、IDパネル21の角度は、カゴ台車2の角度と同義となるので、カゴ台車2の正面部分に対して平行になるように設置する。このため、本実施の形態における識別部材であるIDパネル21は、カゴ台車2の横フレーム24の所定の位置に装着することができるように、IDパネル21の裏面には、後述する装着部材が設けられている。
【0027】
自走ロボット1がカゴ台車2を連結するために、自走ロボット1は、カゴ台車2と自走ロボット1との距離と角度を検出して、カゴ台車2に向かって走行を行う必要がある。しかしながら、測域センサ9でカゴ台車2の形状を認識する場合、カゴ台車2の積載状況により認識すべき形状が変化することから、カゴ台車2との距離と角度を正確に検出することは難しい。そこで、本実施の形態においては、カゴ台車2にIDパネル21を装着して、自走ロボット1に搭載した測域センサ9でIDパネル21を検出する。
【0028】
ここで、識別部材であるIDパネル21を技術的に説明する。IDパネル21はレーザレンジファインダ(LRF)等の電磁波等を用いた検出装置により、検出対象の検出や識別を行うための識別部材である。電磁波等で検出するために、電磁波等が検出する検出面(例えば、IDパネル21の表面)を幾何学的に第一の方向において少なくとも3つの領域に分割し、分割された複数の領域において、少なくとも隣り合う領域の電磁波等に対する反射率が異なるように設定されている。
【0029】
この第一の方向は、検出装置による走査方向と平行する方向である。
図3に示すIDパネル21の例では、紙面横方向(水平方向)において領域が分割されており、検出装置の走査方向は紙面横方向(水平方向)となる。
【0030】
そして、検出装置は、電磁波等を照射した際の反射信号の強度の違いを利用して特定のパターン(信号)を検出することで、検出対象の検出や識別を行う。
【0031】
図3は、IDパネル21の例を示す図である。
図3に示すように、本実施の形態においては、例えばA4サイズの厚紙のような板状部材を識別部材であるIDパネル21とする。該板状部材の表面21aに対して、該板状部材の表面21aの両端やその間に、再帰反射テープ21bを貼ることにより、IDを表示するマーカーを形成する。また、板状部材の表面21aと再帰反射テープ21bにより、検出面21cを構成する。
【0032】
板状部材の表面21aと再帰反射テープ21bとは電磁波等に対する反射率が異なるので、このように構成することで、上記した電磁波等が検出する検出面を幾何学的に第一の方向において少なくとも3つの領域a,b,cに分割し、分割された複数の領域a,b,cにおいて、少なくとも隣り合う領域の電磁波等に対する反射率が異なるように設定することを実現する。
【0033】
図3(a)に示すように、分割された少なくとも3つの領域は、第一の方向における検出面21cの一端側から他端側に向かって、第一領域aである再帰反射テープ21b、第二領域bである板状部材の表面21a、第三領域cである再帰反射テープ21bであり、第一領域aの反射率と第二領域bの反射率は異なり、第三領域cの反射率と第二領域bの反射率は異なるように構成される。認識部となる再帰反射テープ21bは、検出面21cにおいて、IDパネル21のX軸方向の中心から線対称の位置にY軸方向に延在して設けられている。
【0034】
ここで、第一領域aと第三領域cとに異なる反射率の再帰反射テープ21bを貼ることで、第一領域aの反射率と、第二領域bの反射率と、第三領域cの反射率と、を異ならせることを実現できる。また、第一領域aと第三領域cとに同じ反射率の再帰反射テープ21bを貼ることで、第一領域aの反射率と第三領域cの反射率とが等しくなるように構成してもよい。
【0035】
また、第一領域aの反射率と第三領域cとは、第二領域bの反射率よりも高い必要はなく、第一領域aの反射率と第三領域cとの少なくとも一方が、第二領域bの反射率より低くてもよい。
【0036】
また、識別部材であるIDパネル21は、一つの板状部材で構成されなくてもよく、例えば2つの板状部材を並べることで検出面21cを構成してもよい。
【0037】
測域センサ9により、第一領域aで反射された第一受光量と、第二領域bで反射された第二受光量と、第三領域cで反射された第三受光量と、測域センサ9から第一領域aまでの第一距離と、測域センサ9から第二領域bまでの第二距離と、測域センサ9から第三領域cまでの第三距離と、が検出される。
【0038】
詳細は後述するが、IDパネル21は、第一受光量と、第二受光量と、第三受光量と、第一距離と、第二距離と、第三距離と、に基づいて識別される。
【0039】
IDパネル21の両端の再帰反射テープ21bは、スタートビットおよびストップビットを表すものであり、認識領域を規定する。このスタートビットおよびストップビットを表す両端の再帰反射テープ21bの間に貼られたパターンを構成する再帰反射テープ21bの位置に応じて、IDパネル21が保有する情報(カゴ台車2の認識番号情報、搬送先情報、優先度情報)が表される。なお、パターンを構成する再帰反射テープ21bは、検出面21cの板状部材の表面21aの両端に配置された2つの再帰反射テープ21bに比べて、水平方向の長さが短く(すなわち、細く)なっていてもよい。すなわち、第二領域bに配置される再帰反射テープ21bは、情報を有するパターンである。
【0040】
図3に示したIDパネル21の例では、板状部材の表面21aに対して再帰反射テープ21bを貼ることで、IDパネル21の表面である検出面を矩形形状の領域に分割しているが、分割される領域の形状は矩形に限定されるものではなく、幾何学的な形状であればよい。なお、この
図3に示したIDパネル21の例は、再帰反射テープ21bを貼っているので、簡単で安価に識別部材を製造することが可能となる。
【0041】
測域センサ9から照射されたレーザは、検出面21cを構成するIDパネル21の再帰反射テープ21bおよび板状部材の表面21aに当たった後、(反射率や入射角などに応じた強度で)反射し、測域センサ9内部のディテクタで検出される。測域センサ9の内部では、レーザの往復にかかった時間から距離を算出し、検出したレーザ光の強度値から反射強度を算出し、結果をコントローラ4に送信する。
【0042】
図3(a)に示すIDパネル21の例によれば、Amm、Bmmのそれぞれの距離(幅)に応じて、IDパネル21が保有する情報(カゴ台車2の認識番号情報、搬送先情報、優先度情報)が識別される。また、
図3(b)に示すIDパネル21の例によれば、Cmm、Dmm、Emmのそれぞれの距離(幅)に応じて、IDパネル21が保有する情報(カゴ台車2の認識番号情報、搬送先情報、優先度情報)が識別される。
【0043】
なお、IDパネル21に貼り付ける再帰反射テープ21bは、IDパネル21の板状部材の表面21aに対して反射(輝度差の絶対値)に差があればよい。したがって、IDパネル21に貼り付ける部材は、光の再帰反射に限るものではなく、光を吸収するものであってもよい。
【0044】
マーカーが再帰反射テープ21bとすることで、レーザレンジファインダ(LRF)である測域センサ9を用いた読み取りに好適となる。再帰反射テープ21bを用いる構成では、コントローラ4は、測域センサ9から得たIDパネル21の両端の再帰反射テープ21bまでの距離、反射強度を得て、距離および反射強度からカゴ台車2と自走ロボット1との距離と角度を計算する。
【0045】
ここで、反射強度とは、測域センサ9の内部の受光素子で受光した光の強さに応じた電圧を数値化したものである。IDパネル21に貼り付ける再帰反射テープ21bは反射強度の値が高くでるので、位置を正確に識別し、連結時の自走ロボット1の位置決めに用いるフィードバック情報として用いることができる。
【0046】
自走ロボット1を用いた本実施の形態の搬送システムは、物流倉庫などにおける、カゴ台車2などのキャスター付き搬送対象を搬送する作業を自動化するものである。自走ロボット1による搬送動作は、次の(1)~(3)の三つの作業に分割される。
【0047】
(1)仮置きエリアでの搬送対象の探索および連結
(2)走行エリアの走行
(3)保管エリアでの保管場所探索と荷卸し
【0048】
図4は、搬送システムを適用することが想定される物流倉庫1000の一例を示す説明図である。
図4は、物流倉庫1000を天井側から見た床面を平面図として示している。
図4に示す物流倉庫1000において、上記(1)の仮置きエリアA1は、荷卸しされた荷物を整列しておく場所が想定される。上記(3)の保管エリアA2は、エレベータなどで他階へ移送する場合のエレベータ前エリアが想定される。また、上記(2)の走行エリアA3は
図4中の矢印によって仮置きエリアA1と保管エリアA2との往復経路を示す場所が想定される。
【0049】
自走ロボット1は、床面に設置された磁気テープのラインをセンサで認識するライン認識による誘導方式で移動する。また、ラインの横にあるエリアマーク52を検出してエリアを判断する。また、IDパネル21には、搬送先となる保管エリアA2の情報と優先順位の情報が含まれている。
【0050】
図4に示すように、走行エリアA3には自走ロボット1の誘導用の磁気テープがライン状に設けられ、自走ロボット1が走行する走行ライン51が設けられている。また、走行エリアA3における仮置きエリアA1、保管エリアA2の入り口には、走行ライン51の近傍にエリアマーク52が配置されており、どのエリアに来たかを認識できるようになっている。
【0051】
後述する自走ロボット1が実行するプログラムでは、エリアごとに動作を指定できるようになっている。自走ロボット1は、仮置きエリアA1では接続動作、保管エリアA2では車庫入れ動作を行う。
【0052】
本実施の形態においては、仮置きエリアA1と保管エリアA2とが走行ライン51のすぐ横にある構成である。自走ロボット1は、走行ライン51を走行したまま、仮置きエリアA1や保管エリアA2のエリア内の探索を行う。仮置きエリアA1内に搬送対象となるカゴ台車2を見つけたら、走行ライン51上からカゴ台車2への連結動作に移行する。また、保管エリアA2に対しても、走行ライン51上から空き番地を探索して、車庫入れ動作を行う。
【0053】
加えて、
図4に示す物流倉庫1000において、保管エリアA2に対して走行ライン51を挟んだ向かい側には、複数の再帰反射テープ53が設置されている。複数の再帰反射テープ53は、自走ロボット1の測域センサ9が検出できる位置に設置されている。自走ロボット1は、複数の再帰反射テープ53の設置情報をもとに、自己位置推定を行う。
【0054】
次に、自走ロボット1のコントローラ4について説明する。
【0055】
ここで、
図5は自走ロボット1のコントローラ4のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。コントローラ4は、
図5に示すように、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)などの制御装置411と、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)などの主記憶装置412と、SSD(Solid State Drive)などの補助記憶装置413と、ディスプレイなどの表示装置414と、キーボードなどの入力装置415と、無線通信インタフェイスなどの通信装置416と、を備えており、通常のコンピュータを利用したハードウェア構成となっている。
【0056】
制御部となる制御装置411は、主記憶装置412や補助記憶装置413に記憶されている各種プログラムを実行することで、コントローラ4(自走ロボット1)全体の動作を制御し、後述する各種機能部を実現する。
【0057】
自走ロボット1のコントローラ4で実行されるプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD-ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD-R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して提供するように構成してもよい。
【0058】
さらに、自走ロボット1のコントローラ4で実行されるプログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成しても良い。また、自走ロボット1のコントローラ4で実行されるプログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成しても良い。
【0059】
次に、自走ロボット1のコントローラ4の制御装置411が主記憶装置412や補助記憶装置413に記憶されたプログラムを実行することによって、自走ロボット1のコントローラ4が発揮する機能について説明する。なお、ここでは従来から知られている機能については説明を省略し、本実施の形態の自走ロボット1のコントローラ4が発揮する特徴的な機能について詳述する。
【0060】
なお、自走ロボット1のコントローラ4が発揮する機能の一部または全部をIC(Integrated Circuit)などの専用の処理回路を用いて構成してもよい。
【0061】
図6は、自走ロボット1のコントローラ4が発揮する機能的構成例を示すブロック図である。
図6に示すように、自走ロボット1のコントローラ4は、検出手段401と、算出手段402と、移動制御手段403と、を備える。
【0062】
検出手段401は、測域センサ9を介して、IDパネル21における再帰反射テープ21b間の距離と再帰反射テープ21bのそれぞれの位置とに基づいてIDパネル21を検出する。
【0063】
算出手段402は、検出手段401により検出されたIDパネル21までの距離および角度を算出する。
【0064】
移動制御手段403は、算出手段402により算出したIDパネル21までの距離および角度に従った目標位置への移動を制御する。
【0065】
(自走ロボットによるカゴ台車の搬送の概要)
図7は、自走ロボット1が仮置きエリアA1から保管エリアA2にカゴ台車2を搬送する動作の流れを示すフローチャートである。
【0066】
まず、走行ライン51上に、移動体である自走ロボット1を配置してライン認識できている状態でスタートさせることで、自走ロボット1は走行ライン51に沿った走行を開始する(ステップS1)。走行ライン51を走行中はラインの位置を見て指定速度で走行する。仮置きエリアA1のエリアマーク52を探索しながら走行し、仮置きエリアA1のエリアマーク52を検出したら(ステップS2で「Yes」)停止する。
【0067】
仮置きエリアA1のエリアマーク52を検出して(ステップS2で「Yes」)停止すると、仮置きエリアA1への進入動作を開始する(ステップS3)。
【0068】
自走ロボット1は、走行ライン51が設けられた走行エリア50から仮置きエリアA1に進入すると、走行しながら、仮置きされているカゴ台車2のIDパネル21のマーカーを読み取り、カゴ台車2のリストを生成する。このとき、IDと位置座標、搬送先、および優先順位があれば一緒に記録する。そして、仮置きエリアA1の終端の番地マークで走行停止し、生成したカゴ台車2のリストから搬送対象を選定し(ステップS4)、選定した搬送対象のカゴ台車2との連結動作を開始する(ステップS5)。
【0069】
連結動作では、リスト上の位置座標を元に指定されたカゴ台車2の列まで移動する。IDパネル21との相対位置情報を使って、カゴ台車2の手前まで移動する。その後、カゴ台車2に近接したら連結装置10によってカゴ台車2と連結する。搬送対象のカゴ台車2との連結を検知すると(ステップS6で「Yes」)、走行ライン51に戻り(ステップS7)、走行ライン51を走行し(ステップS8)、搬送中のカゴ台車2を保管する保管エリアA2のエリアマーク52を検出したら(ステップS9で「Yes」)停止する。
【0070】
保管エリアA2のエリアマーク52を検出して(ステップS9で「Yes」)停止すると、保管エリアA2への進入動作を開始する(ステップS10)。
【0071】
自走ロボット1は、走行ライン51が設けられた走行エリア50から保管エリアA2に進入すると、走行しながら、保管されているカゴ台車2のIDパネル21のマーカーを読み取り、カゴ台車2のリストを生成する。このとき、IDと位置座標、搬送先、および優先順位があれば一緒に記録する。次に、保管エリアA2の終端の番地マークで走行停止し、生成したカゴ台車2のリストから空き番地を探す(ステップS11)。そして、空き番地の中から搬送中のカゴ台車2を車庫入れする番地を選定し(ステップS12)、選定した空き番地への車庫入れ動作を開始する(ステップS13)。
【0072】
車庫入れ動作では、リスト上の位置座標を元に指定された空き番地の車庫の列まで移動する。その後、指定された空き番地に着いたら搬送中のカゴ台車2との連結を解除する。
【0073】
連結を解除したら保管エリアA2から走行ライン51に戻り、再び仮置きエリアA1の探索を開始する(ステップS14)。
【0074】
(IDパネル21の検出処理)
次に、自走ロボット1におけるカゴ台車2に設けられたIDパネル21の検出処理について詳述する。
【0075】
ここで、
図8はIDパネル21の検出処理の流れを概略的に示すフローチャートである。
図8に示すように、自走ロボット1のコントローラ4(検出手段401)は、測域センサ9の反射強度値からピークを検出する(ステップS21)。
【0076】
図9は、IDパネル21の検出におけるピーク値検出状態を示す図である。
図9に示すように、自走ロボット1のコントローラ4(検出手段401)は、測域センサ9の値を確認しながら、走行エリアA3における走行ライン51上を走行する。なお、
図9(a)に示している測域センサ9の検出範囲は、本実施の形態においては約270度である。
【0077】
そして、
図9(b)に示すように、自走ロボット1のコントローラ4(検出手段401)は、測域センサ9からの反射強度のピーク値を検出する。
【0078】
図10は、ピーク値を検出する手法について説明する図である。
図10(a)に示すように、反射する部材までの距離が長い場合、測域センサ9が出力する反射強度値は低くなる。なお、一定の材質に対して、距離に応じた反射強度値の対応式を事前に算出しておく。そして、
図10(b)に示すように、対応式を用いて正規化した後の値について、比率が一定値以上(この場合は80%)の値をピークとみなす。
【0079】
図8に戻り、自走ロボット1のコントローラ4(検出手段401)は、測域センサ9の反射強度値からピークを検出すると(ステップS21)、検出したピーク間距離(幅)がIDパネル21の再帰反射テープ21b間の距離(幅)と該当するかを判断する(ステップS22)。
【0080】
具体的には、
図9(b)に示すように、自走ロボット1のコントローラ4(検出手段401)は、検出したピーク間の距離(幅)を計算し、IDパネル21の再帰反射テープ21b間距離と比較する。
【0081】
自走ロボット1のコントローラ4(検出手段401)は、検出したピーク間距離がIDパネル21の再帰反射テープ21b間の距離(幅)と該当すると判断した場合(ステップS22の「Yes」)、IDパネル21の候補とし、ステップS23に進む。
【0082】
一方、自走ロボット1のコントローラ4(検出手段401)は、検出したピーク間距離がIDパネル21の再帰反射テープ21b間の距離(幅)と該当しないと判断した場合(ステップS22の「No」)、IDパネル21の候補とせず、ステップS21に戻る。
【0083】
次いで、自走ロボット1のコントローラ4(検出手段401)は、ピークを含めたピーク間における測域センサ9の距離情報値を、後述するように判断する(ステップS23)。
【0084】
ここで、
図11はIDパネル21の検出における距離情報値検出状態を示す図である。
図11において、カゴ台車2は天井側から見た平面図として示している。
図11に示すように、ステップS22で候補とされたIDパネル21のエリアについて、測域センサ9からIDパネル21までの距離を求める。なお、測域センサ9からの距離は、レーザが戻ってくる時間によって求めることが可能である。そして、測域センサ9により距離情報値に基づき、検出範囲内にある物体の測域センサ9から見た形状を検出することが可能となる。検出範囲内にIDパネル21が存在する場合は、測域センサ9から見たIDパネル21の検出面21cの形状(面形状)を検出することが可能となる。
【0085】
例えば、測域センサ9の走査方向におけるIDパネル21の検出面21cの中心に対して正面からIDパネル21の検出面21cに正対して測域センサ9で検出動作を行った場合(測域センサ9とIDパネル21の検出面21cとの位置関係が
図11(a)の場合)、測域センサ9が検出するIDパネル21までの距離情報値はほぼ同じ値となる(厳密にいえば、両端部が遠距離となるが、簡潔に説明するために、ここでは距離情報値はほぼ同じ値として説明する)ので、検出範囲内に測域センサ9から見た形状が平面の物体が存在する、と判断することができる。
【0086】
また、IDパネル21の検出面21cが測域センサ9に対して斜めになっている場合は、測域センサ9が検出するIDパネル21までの距離情報値は、測域センサ9の走査方向における一方から他方に向かって一定の割合で変化するので、検出範囲内に測域センサ9から見た形状平面の物体が存在する、と判断することができる。
【0087】
また、IDパネル21の検出面21cが曲面の場合は、測域センサ9が検出するIDパネル21までの距離情報値が、測域センサ9とIDパネル21の検出面21cとの位置関係、及び検出面21cの曲率とに応じて変化しているか否かを判断することで、検出範囲内に測域センサ9から見た形状が曲面の物体が存在する、と判断することができる。
【0088】
図11(a)のグラフに示すように、測域センサ9の走査方向におけるIDパネル21の検出面21cの中心に対して正面からIDパネル21の検出面21cに正対して測域センサ9で検出動作を行った場合、反射強度のピークを含めたピーク間における測域センサ9が検出する距離情報値は、ほぼ同じ値となる。この場合、IDパネル21の候補とする。
【0089】
このように、ピークを含めたピーク間の距離情報値、換言すると、第一領域a、第二領域b、第三領域cまでの距離情報値に基づき、IDパネル21の候補を検出する。
【0090】
図11(b)に示すように、カゴ台車2のフレームも反射強度の値が高くでることが分かっている。そのため、反射強度比率のピーク値を見るだけでは、カゴ台車2のフレームをIDパネル21と勘違いする可能性がある。そこで、測域センサ9が検出した反射強度のピークを含めたピーク間の距離情報値に基づいて判断することで、IDパネル21の候補を検出する。カゴ台車2のフレームを検出している場合は、IDパネル21とフレームとで距離が異なるので、測域センサ9が検出した反射強度のピークを含めたピーク間の距離情報値に基づいて、IDパネル21の候補から除外されるようにしたものである。
【0091】
このように測域センサ9で測定した距離情報により、カゴ台車2のフレームのような高反射を生じる小さな細いものをIDパネル21の再帰反射テープ21bとして誤認識しないようにすることができる。これは、カゴ台車2に荷物が載っていても同様である。
【0092】
自走ロボット1のコントローラ4(検出手段401)は、IDパネルの検出面21cに該当すると判断した場合(ステップS23の「Yes」)、IDパネル21の候補とし、ステップS24に進む。
【0093】
一方、自走ロボット1のコントローラ4(検出手段401)は、IDパネルの検出面21cに該当しないと判断した場合(ステップS23の「No」)、IDパネル21の候補とせず、ステップS21に戻る。
【0094】
以上により、自走ロボット1のコントローラ4(検出手段401)は、現在の測域センサ9の測定値をIDパネル21の候補とする(ステップS24)。
【0095】
次に、自走ロボット1のコントローラ4(検出手段401)は、IDパネル21の候補について、測域センサ9の走査角度におけるピーク間位置の角度(IDパネル21の候補を検出した際の走査角度)が、自走ロボット1とカゴ台車2とが接続可能な範囲に入っているか、を判断することで、自走ロボット1とカゴ台車2とが接続可能な位置関係にあるか否か、を判断する(ステップS25)。
【0096】
ここで、
図12は自走ロボット1とカゴ台車2とが接続可能な範囲を示す図である。
図12に示すように、自走ロボット1とカゴ台車2とが接続可能な範囲(角度)が決められている。
【0097】
図12(a)は、自走ロボット1の接続可能な範囲にカゴ台車2が存在しない場合を示す図である。
図12(a)に示すように、測域センサ9の走査角度におけるピーク間位置の角度(IDパネル21の候補を検出した際の走査角度)が接続可能な範囲(角度)内にない場合には、自走ロボット1とカゴ台車2とが接続可能な位置関係でないと判断する。
【0098】
一方、
図12(b)は、自走ロボット1の接続可能な範囲にカゴ台車2が存在する場合を示す図である。
図12(b)に示すように、測域センサ9の走査角度におけるピーク間位置の角度(IDパネル21の候補を検出した際の走査角度)が接続可能な範囲(角度)内にある場合には、自走ロボット1とカゴ台車2とが接続可能な位置関係にあると判断する。
【0099】
自走ロボット1のコントローラ4(検出手段401)は、IDパネル21の候補について、測域センサ9の走査角度におけるピーク間位置の角度(IDパネル21の候補を検出した際の走査角度)が、自走ロボット1とカゴ台車2とが接続可能な位置関係にあると判断した場合(ステップS25の「Yes」)、ステップS26に進む。
【0100】
一方、自走ロボット1のコントローラ4(検出手段401)は、IDパネル21の候補について、測域センサ9の走査角度におけるピーク間位置の角度(IDパネル21の候補を検出した際の走査角度)が、自走ロボット1とカゴ台車2とが接続可能な位置関係でないと判断した場合(ステップS25の「No」)、ステップS21に戻る。
【0101】
そして、自走ロボット1のコントローラ4(検出手段401)は、IDパネル21の検出処理を完了する(ステップS26)。
【0102】
次に、自走ロボット1とカゴ台車2との連結について説明する。上記のように、物流倉庫や工場では、搬送物を積載する台車として、カゴ台車と呼ばれる四輪が自在キャスターで構成される汎用の台車がよく用いられる。一般に、自律移動装置による自動連結は、連結位置の認識と自律移動装置の位置決めとによって行われる。
【0103】
具体的には、連結する対象にマーカーを取り付けて、自律移動装置に取り付けた距離情報の取得装置によってマーカーを認識し、マーカーの位置座標を算出することで、連結位置の認識を行う。そして、認識した連結位置で停止するように、自律移動装置の駆動を制御して位置決めを行う。その後、アームのような連結機構を動作させて連結する。
【0104】
(連結装置)
自走ロボット1には、搬送対象物であるカゴ台車2を保持するための連結装置10が取り付けられている。以下、自走ロボット1が備える連結装置10の詳細について説明する。
【0105】
図13は、連結装置10の説明図であり、
図13(a)は連結爪12が開いた状態の連結装置10の斜視図であり、
図13(b)は連結爪12が閉じた状態の連結装置10の斜視図であり、
図13(c)は連結装置10の上面図である。
【0106】
連結装置10は、固定板材30、回動部材11、引掛け部材である連結爪12及び吸着部材である磁石13等を備える。固定板材30は自走ロボット1のロボット本体部100に対して連結装置10を固定する部材であり、固定ネジ穴30aでロボット本体部100のフレームにネジ止めすることで固定する。
【0107】
回動部材11は、上下方向に延在する回動軸111を中心に固定板材30に対して回動可能な部材である。
図14は、
図13に示す連結装置10について、回動部材11に固定され、回動部材11とともに固定板材30に対して回動する部分に斜線を付した連結装置10の説明図である。
図14(a)は斜視図であり、
図14(b)は上面図である。回動部材11は、
図14(b)中の矢印「G」で示すように回動軸111を中心に回動可能である。固定板材30は回動範囲規制部材32を備え、回動する回動部材11の前端(自走ロボット1の前後方向についての回動部材11の前側端)である回動部材前端部11eが回動範囲規制部材32に突き当たる位置で、回動部材11の回動範囲を規制する。
【0108】
本実施の形態では仮保持する機構として磁石13の磁力を利用して仮保持した後に、連結爪12による本固定を行う。また、磁石13を回動部材11に配置して磁石13を用いた仮固定機構が回動可能な構成となっている。この構成によって、自走ロボット1がカゴ台車2に対して傾いた状態で近接した場合にも、回動部材11が回動して、二つの連結爪12をカゴ台車2の下部フレーム26に対して平行にすることができる。これにより、連結爪12とカゴ台車2の下部フレーム26との位置関係を連結可能な位置関係とすることが容易となる。
【0109】
固定板材30は板金からなり、回動軸111を保持する軸保持部31を備える。固定板材30をロボット本体部100に固定することで、回動部材11は回動軸111を中心にロボット本体部100に対して回動可能となっている。連結爪12及び磁石13は、回動部材11に取り付けられている。連結爪12は、カゴ台車2の下部フレーム26に引掛けて固定するためのものである。磁石13はカゴ台車2の下部フレーム26に吸着させるためのものである。従って、連結爪12が、カゴ台車2の下部フレーム26に懸かることで、自走ロボット1とカゴ台車2とが連結されるため、本願においては、下部フレーム26が被連結部となる。
【0110】
一般的にカゴ台車2のフレームはスチール材でできており、本実施の形態で用いるカゴ台車2は、スチール材のように磁石13が付くことができるものからなる。連結爪12は、連結していない状態では、連結動作の際にカゴ台車2の下部フレーム26に引掛らないように、
図13(a)に示すように上方に退避させてある。
【0111】
連結爪12と磁石13との両方を用いるのは、以下の理由による。
【0112】
すなわち、連結爪12だけでは連結動作のタイミングが計れずに自走ロボット1の高精度な位置決めが必要になり、磁石13だけでは搬送対象であるカゴ台車2の重量が大きい場合に搬送中に離れることがあるためである。
【0113】
カゴ台車2のIDパネル21の正面の所定の位置への自走ロボット1の位置決めと連結動作は、次の三つのステップによって行う。
【0114】
第一のステップとして、自走ロボット1をカゴ台車2に対して一定の距離でかつ略正対した姿勢になるように駆動する。
【0115】
第二のステップとして、略正対した姿勢のままでカゴ台車に向かって速度を落として進む。
【0116】
第三のステップとして、カゴ台車2の下部フレーム26に対する磁石13の吸着が確認された後に自走ロボット1を停止させると共に、連結爪12を動作させて固定する。
【0117】
自走ロボット1は、磁石13が下部フレーム26に吸着した際に下部フレーム26と接触する磁石13の表面と同一平面に物体が接触したことを検知することが可能な接触式スイッチであるマイクロスイッチ14を備えている。このマイクロスイッチ14によってカゴ台車2の下部フレーム26に対する磁石13の吸着を確認することができる。
【0118】
IDパネル21の位置座標を求めるためのマーカーの読取においては、測域センサ9による検出の誤差及び算出の誤差が含まれる。また、自走ロボット1を駆動する際の車輪のスリップ等による誤差も生じる。このため、自走ロボット1がカゴ台車2に対して傾きと位置ずれを持った状態になることが通常で、完全に正対させることは困難である。
【0119】
本実施の形態では、第二のステップで磁石13がカゴ台車2に吸着するときに、速度を落として進むだけで良いので、自走ロボット1をカゴ台車2との接続位置で精度良く停止させるような高精度な位置決め動作が不要になる。このため、位置ずれに対して寛容となる。また、自走ロボット1がカゴ台車2に対して傾きを持って近づいた場合でも、回動部材11が回動することによって磁石13をカゴ台車2のフレーム面に対して平行にすることができ、確実に吸着させることができる。このような構成によって、高精度な位置決めを必要とすることなく、自走ロボット1とカゴ台車2とを確実に連結することが可能となる。
【0120】
磁石13としては、電磁石を用いることが好ましい。電磁石は電力の供給によりON―OFFの制御を行うため、吸着と解除とが自在である。このため、上述した位置決めと連結動作とを行う上記第二のステップのときに電力を「ON」とするなど、必要なときにだけ吸着させることができる。
【0121】
電磁石としては永電磁式の電磁石を用いることもできる。永電磁式の電磁石は、電力がOFFのときは永久磁石として吸着でき、電力がONのときに解除を行うことができる。永電磁式の電磁石を用いると、停電や断線が生じた場合でも磁力が無くならないため、より確実にカゴ台車2の保持を行うことができる。いずれの電磁石を用いた場合も、自走ロボット1によって所定の場所に搬送したカゴ台車2を、簡単な操作で自動的に切り離し解除するようなシステムとして運用することが可能となる。
【0122】
磁石13として、永久磁石を用いる構成の場合、所定の場所に搬送したカゴ台車2を切り離すために、カゴ台車2を押圧して、自走ロボット1から離間させる離間機構を設けても良い。
【0123】
次に、回動部材11に取り付ける磁石13について説明する。
【0124】
磁石13としては、回動部材11に複数個配置することが好ましい。これは以下の理由による。
【0125】
すなわち、カゴ台車2における連結対象となる下部フレーム26は、一般的に高さ方向に短く、幅方向に長い。これに対し汎用の磁石は円筒型また角型のものが多いので、例えば小型の磁石を二個横方向に並べて使うことで、横長の下部フレーム26に対して磁力を作用させる面を大きくでき、大型の磁石を一個用いるよりも安価で確実に吸着させることができる。
【0126】
図15は、回動部材11に対する磁石13の固定方法の説明する連結装置10の断面説明図である。
図15は、
図13(c)中のE―E断面における断面図である。
【0127】
図15に示す断面では、回動部材11はL字型の断面となっており、水平方向に延在する回動部材11の後側(連結時の連結対象側、
図15中の右側)の端部で折れ曲がり、鉛直下方に延在する回動部材磁石取付部11aを形成している。
【0128】
回動部材磁石取付部11aは、
図15中の左右方向に貫通する貫通孔を備える。連結装置10は、磁石13を保持する磁石保持部材131を備える。磁石保持部材131は、回動部材磁石取付部11aの貫通孔を貫通する磁石保持シャフト131bと、磁石保持シャフト131bを挟んで磁石13とは反対側に配置され、後述する第一バネ132が突き当たる磁石保持突き当て部131aとを備える。
【0129】
連結装置10は、磁石保持シャフト131bが内側に位置するように配置された第一バネ132と第二バネ133とを備える。第一バネ132は回動部材磁石取付部11aの前側(連結時の連結対象とは反対側、
図15中の左側)の面と、磁石保持突き当て部131aの後側(連結時の連結対象側、
図15中の右側)の面とに突き当たるように配置されている。第二バネ133は回動部材磁石取付部11aの後側(連結時の連結対象側、
図15中の右側)の面と、磁石13の前側(連結時の連結対象とは反対側、
図15中の左側)の面とに突き当たるように配置されている。
【0130】
また、連結装置10は、磁石保持シャフト131bを介して回動部材磁石取付部11aに保持された磁石13が下方に移動して磁石保持シャフト131bが傾くことを防止する構成として磁石13の下面を保持する磁石下面保持部を備える。
【0131】
このような構成により、磁石保持突き当て部131aと回動部材磁石取付部11aとの間、及び、回動部材磁石取付部11aと磁石13との間を第一バネ132及び第二バネ133等の弾性部材を用いて接続することができる。
【0132】
自走ロボット1がカゴ台車2に対して傾いた状態で連結しようとしている場合に、磁石13の吸着力によって回動部材11が回動する前に、磁石13の角が片当たりすることでカゴ台車2の下部フレーム26を突いてしまうおそれがある。これに対して、本実施の形態の連結では、弾性部材によって片当たりした磁石13の向きを変えることができるので、より確実に吸着させることができる。
【0133】
カゴ台車2の下部フレーム26に引掛けて保持した状態の連結爪12は、磁石13よりもカゴ台車2側へ突き出た構成であるため、
図15に示すように、磁石13と連結爪12との間には隙間がある。自走ロボット1によるカゴ台車2の牽引時は、主に連結爪12によってカゴ台車を牽引する。このとき、上述した第一バネ132が収縮し、第二バネ133が伸びることで牽引中も磁石13がカゴ台車2の下部フレーム26から離れないようにすることができる。これによって搬送中に磁石13がカゴ台車2の下部フレーム26に対して吸着したり、離間したりすることに起因して搬送が不安定になることを防ぐことが可能となる。
【0134】
図16は、連結爪12の動作を説明する連結装置10の断面説明図である。
図16は、
図13(c)中のF―F断面における断面図である。
【0135】
図16(a)は、連結後の連結爪12が閉じた状態(
図13(b)の状態)を示し、
図16(b)は、連結前の連結爪12が開いた状態(
図13(a)の状態)を示している。
【0136】
連結爪12の動作を行う構成としては、カゴ台車2の下部フレーム26等のカゴ台車2の一部に引掛けて、カゴ台車2を牽引または押圧することができる構成であればよい。本実施の形態の連結装置10では、連結爪12の動作を行う構成として、直動シリンダによる機構を用いる。
【0137】
回動部材11上に連結爪回動軸保持部材であるベアリングホルダ113を設置して、連結爪12が固定された連結爪シャフト120を保持する。連結爪12は、連結爪シャフト120の回動動作によって、連結爪12の先端(
図16中の右側端部)が上下動するような回動動作が行われる。
【0138】
連結動作を行う際には、まず、連結爪12の先端がカゴ台車2の下部フレーム26に引掛らないように上方に退避させておき、磁石13による吸着後に連結爪シャフト120の回動によって連結爪12の先端がカゴ台車2の下部フレーム26高さに掛かるように下ろす。
【0139】
連結を解除する動作を行う際には、同様に連結爪シャフト120を連結動作とは逆方向に回動させることで連結爪12の先端を上げる。
【0140】
直動シリンダとしては、汎用の電動シリンダ121を用い、電動シリンダ121の非移動部は回動部材11に設けた直動シリンダ保持部材122上に固定される。
【0141】
電動シリンダ121における移動部であって、電動シリンダ121の駆動によって上下方向に移動するシリンダ部123の先端は
図16中の下側端部であり、シリンダ部123は所定の長さの範囲で伸縮させることができる。
【0142】
シリンダ部123の先端には上下動接続部材124が固定されており、上下動接続部材124の下端には、シリンダ部123の上下動を連結爪シャフト120に伝達する上下動伝達部材125を備える。本実施の形態の上下動伝達部材125は
図16中の紙面に直交する回動軸を中心に回動可能なローラ状の部材である。
【0143】
連結爪シャフト120には、上下動伝達部材125の下端部が接触し、上下動伝達部材125の上下動が伝達される上下動伝達板材127が固定されている。さらに、上下動伝達板材127の上には、凸形状の内壁面に上下動伝達部材125の上端部が接触するように配置された凸状板材126が固定されている。
【0144】
図16(a)に示す状態から電動シリンダ121の駆動によりシリンダ部123が縮むと、上下動伝達部材125が上方に移動し、その上端が接触する凸状板材126を上方に押し上げる。これにより、凸状板材126が固定された上下動伝達板材127が上方に引き上げられ、上下動伝達板材127が固定された連結爪シャフト120が
図16中の反時計回り方向に回転する。この回転によって連結爪シャフト120に固定された連結爪12も連結爪シャフト120を中心に
図16中の反時計回り方向に回転して、
図16(b)に示すように連結爪12が開いた状態となる。
【0145】
図16(b)に示す状態から電動シリンダ121の駆動によりシリンダ部123が伸びると、上下動伝達部材125が下方に移動し、その下端が接触する上下動伝達板材127を下方に押し下げる。これにより、上下動伝達板材127が固定された連結爪シャフト120が
図16中の時計回り方向に回転する。この回転によって連結爪シャフト120に固定された連結爪12も連結爪シャフト120を中心に
図16中の時計回り方向に回転して、
図16(a)に示すように連結爪12が閉じた状態となる。
【0146】
このように、簡易な構成によって直動シリンダである電動シリンダ121の伸縮駆動を連結爪12の回動運動に変換することが出来る。このような直動シリンダによる連結爪12の動作機構を用いることで、カゴ台車2の共通の形である跳ね上げ式の底板22とフレームとの間に連結爪12(引掛け部材)を差し込めるので、幅広い種類のカゴ台車2に対して無改造で対応することが可能である。
【0147】
次に、連結爪12の先端形状について説明する。
【0148】
図17は、連結爪12の先端形状の説明図であり、
図17(a)は上述した実施の形態の連結装置10で用いた先端の曲がった部分が一枚の形状の説明図であり、
図17(b)は先端の曲がった部分が二枚の形状の説明図である。
【0149】
図17(a)のように、先端の曲がった部分が一枚の形状では、自走ロボット1が連結爪12によってカゴ台車2を主に牽引によって引っ張る場合に十分な構成である。
【0150】
一方、
図17(b)に示す先端の曲がった部分が二枚の形状では、二枚の曲がった部分の間にカゴ台車2の下部フレーム26を挟み込んで保持することができる。このため、自走ロボット1がカゴ台車2を牽引する場合だけでなく、自走ロボット1がカゴ台車2を所定の位置に押し入れるような動作を伴う場合に、より安定した動作を行うのに適した構成である。
【0151】
引掛け部材としては連結爪12のような爪部材に限るものではない。本実施の形態では、先端が直角に曲がった爪部材という簡易な構成で連結対象と連結する構成を実現することが出来る。
【0152】
固定板材30に設けられた回動範囲規制部材32は、回動部材11が自走ロボット1のロボット本体部100に対して回転し過ぎないように、回動範囲を限定するためのものである。これによって、連結時やカゴ台車2の牽引時に、回動部材11とロボット本体部100、カゴ台車2と自走ロボット1との接触を防止することが可能となり、接触に起因する損傷を防ぐことが可能となる。
【0153】
また、本実施の形態の自走ロボット1は、ロボット本体部100に対して、バンパー固定部41を設け、このバンパー固定部41から自走ロボット1の後方(
図13(c)中の上方)に向けて延在するバンパー40を備える。バンパー40は、バンパー固定部41に一端が固定された棒状のバンパーシャフト40bと、バンパーシャフト40bの他端側に固定されたバンパー突当てゴム40aとを有する。
【0154】
バンパー40の先端にバンパー突当てゴム40aのようなゴム材等の弾性部材を用いることで、カゴ台車2の牽引搬送時に、カゴ台車2とバンパー40とが接触することに起因する音の発生やカゴ台車2の下部フレーム26の損傷を防ぐことができる。
【0155】
本実施の形態では、連結時にバンパー40の先端が磁石13よりも先にカゴ台車2に接触しないように、磁石13よりもバンパー40が出っ張らない配置としている。また、連結爪12によるカゴ台車2との連結後に、バンパー40を伸ばすように駆動する構成としても良い。これにより、自走ロボット1による牽引搬送中のカゴ台車2の挙動をより安定させることができる。
【0156】
このようなバンパー40を配置することで、カゴ台車2と自走ロボット1との接触を防止し、接触に起因する損傷を防ぐことが可能となる。
【0157】
図13に示すように、本実施の形態の連結装置10では、横方向における外側からバンパー40、連結爪12、磁石13の順に配置している。すなわち、横方向の中心から外側に向けて二つ磁石13を配置し、その外側に二つの連結爪12、さらに外側に二つのバンパー40を配置する構成である。これら三つの横方向の配置の順番としてはどのような順番であってもよい。
【0158】
図1及び
図2に示すように、カゴ台車2のカゴ部20は、複数の横フレームと複数の縦フレームとを組み合わせたカゴ状であり、連結装置10は、連結爪12をカゴ部20の下部フレーム26に引掛ける構成である。
【0159】
このため、連結装置10の連結爪12としては、カゴ台車2の連結面の中心に対して、二つの連結爪12がカゴ部20の縦フレームに干渉しない間隔となるように配置する。そして、上述したIDパネル21をカゴ台車2の連結面における横方向の中心となる位置に設置し、このIDパネル21の位置を測域センサ9を用いて認識することで、二つの連結爪12を縦フレームに干渉させずに連結させることが可能となる。
【0160】
(識別部材)
ところで、カゴ台車2は、
図2や後述する
図19に示されるように、複数の横フレーム24と縦フレーム25とにより形成されている。ここで、IDパネルの裏面にフックのみしか設けられていない場合等では、横フレーム24にフックにより懸けることによりIDパネルは装着されるため、所望の位置とは異なる適切ではない位置にIDパネルが装着される場合がある。カゴ台車2の横フレーム24の適切ではない位置にIDパネルが装着されると、IDパネルの位置を基準として自走ロボット1の連結爪12によりカゴ台車2と連結する際に、縦フレーム25と連結爪12とがぶつかって連結できない場合がある。また、仮に自走ロボット1とカゴ台車2とを連結することができたとしても、自走ロボット1がカゴ台車2を搬送する際に、バランスが崩れてふらついて走行することが懸念される。
【0161】
本実施の形態における識別部材は、自走ロボット1がカゴ台車2と連結する際に、連結位置の目標となるカゴ台車2の横フレーム24の所望の位置に装着することができ、カゴ台車2の連結位置の目標として適切ではない位置には、装着することができない。これにより、IDパネルの位置を基準として自走ロボット1の連結爪12によりカゴ台車2と連結する際に、縦フレーム25と連結爪12とがぶつかって連結できなくなることを防ぐことができる。また、仮に自走ロボット1とカゴ台車2とを連結することができたとしても、自走ロボット1がカゴ台車2を搬送する際に、バランスが崩れてふらついて走行することを防ぐことができる。
【0162】
以下、本実施の形態における識別部材について説明する。本実施の形態における識別部材であるIDパネル21は、表面には、
図3に示されるように、再帰反射テープ21bが貼られており、裏面には、
図18に示されるように、カゴ台車2の横フレーム24に装着するための装着部材211が設けられている。装着部材211は、横フレーム24に懸けるための2つのフック211aと、各々のフック211aの上側に設けられた位置決め部211bとを有している。装着部材211は、金属または樹脂材料等により形成されている。尚、本実施の形態における連結システムは、自走ロボット1と、本実施の形態におけるIDパネル21が装着されたカゴ台車2により構成される。尚、識別部材であるIDパネル21に装着部材211が設けられている面となる裏面が、装着面である。
【0163】
フック211aは、IDパネル21の裏面に貼り付けられている状態で、下側が開いたU字状となっており、このU字状の部分に横フレーム24を入れることにより、横フレーム24に懸けて、IDパネル21を装着することができる。2つのフック211aは、2つの位置決め部211bの間の隙間211cが、IDパネル21の横方向(X軸方向)の中央の位置となるように形成されている。
【0164】
2つの位置決め部211bの間隔L1は、縦フレーム25の幅または直径よりも若干広く形成されており、縦フレーム25の幅または直径が約8mmである場合には、2つの位置決め部211bの間隔L1は、例えば、約10mmである。位置決め部211bは、相互のフック211aより離れる方向に延びるように形成されており、2つのフック211aの間となる部分には、位置決め部211bは形成されてはいない。
【0165】
即ち、
図18において、右側の位置決め部211bは、右側のフック211aの上から右側に延びるように形成されており、左側の位置決め部211bは、左側のフック211aの上から左側に延びるように形成されている。各々の位置決め部211bの横方向(X軸方向)の長さL2は、カゴ台車2の縦フレーム25の間隔をWとした場合に、(W―L1)/2<L2<Wとなるように形成されている。尚、フック211aの横方向(X軸方向)の長さL3は約5mmであり、縦方向の長さL4は約20mmである。尚、実際には、縦フレーム25の幅または直径と、2つの位置決め部211bの間隔L1との間で僅かなずれが生じる場合がある。
【0166】
次に、本実施の形態における識別部材であるIDパネル21のカゴ台車2への装着について説明する。
図19は、カゴ台車2の正常な位置にIDパネル21が装着されている状態を示す。具体的には、IDパネル21を正面から見た場合、カゴ台車2の縦フレーム25のうち中央の縦フレーム25aと、IDパネル21の横方向(X軸方向)の中央の位置21dとが一致している状態で、カゴ台車2にIDパネル21が装着されている。
【0167】
本実施の形態においては、識別部材であるIDパネル21が搬送対象車であるカゴ台車2の中央部分に装着されていることに基づき、IDパネル21の横方向の中心を連結時の横方向の目標位置として、2つの連結爪12を下部フレーム26に懸ける。このため、2つの連結爪12を縦フレーム25と干渉することなく懸けるためには、一方の連結爪12の外側から他方の連結爪12の外側までの寸法となる幅Laが、カゴ台車2の縦フレーム25の間隔Wの2倍以内である必要がある。
【0168】
自走ロボット1は、カゴ台車2に装着されているIDパネル21を検出すると、IDパネル21の横方向(X軸方向)の両端に貼られている再帰反射テープ21bより、IDパネル21の横方向(X軸方向)の中央の位置21dを検知する。
図9(b)に示されるように、測域センサ9によりIDパネル21のピークが認識されるが、
図3等に示されるようにIDパネル21は、IDパネル21の横方向(X軸方向)の両側の端部には、再帰反射テープ21bが貼られており、この部分の反射率が高くなる。よって、IDパネル21の横方向の両側の端部に貼られている再帰反射テープ21bのピークに基づき、IDパネル21の横方向(X軸方向)の両側の端部に貼られている再帰反射テープ21bのX軸方向における位置を特定することができる。これにより、特定されたIDパネル21の両側の端部の再帰反射テープ21bの位置より、IDパネル21の横方向(X軸方向)の中央の位置21dを検出することができる。自走ロボット1は、検知したIDパネル21の横方向(X軸方向)の中央の位置21dを基準として、カゴ台車2と連結される位置を決定し、連結装置10の2つの連結爪12をカゴ台車2の下部フレーム26に懸ける。これにより、自走ロボット1とカゴ台車2とが連結される。IDパネル21の横方向(X軸方向)の中央の位置21dには、カゴ台車2の中央の縦フレーム25aが存在しているため、自走ロボット1の2つの連結爪12は、この位置を避けてカゴ台車2の下部フレーム26に接続される。
【0169】
具体的には、カゴ台車2の中央の縦フレーム25aから各々の連結爪12までの距離が略同じとなる位置に、カゴ台車2の下部フレーム26が接続されて連結される。従って、カゴ台車2の縦フレーム25と連結爪12とがぶつかり、自走ロボット1とカゴ台車2とが連結されない場合や、自律移動装置が搬送対象物を搬送する際に、バランスが崩れてふらついて走行することを防ぐことができる。尚、カゴ台車2の中央の縦フレーム25aから各々の連結爪12までの距離は、カゴ台車2の縦フレーム25の間隔Wよりも短いものとする。
【0170】
本実施の形態における識別部材であるIDパネル21をカゴ台車2に装着する際には、
図20に示されるように、2つの位置決め部211bの隙間211cに、カゴ台車2の中央の縦フレーム25aが入るように装着する。フック211aの上側に設けられた位置決め部211bの横方向(X軸方向)の長さは、カゴ台車2の縦フレーム25の間隔よりも短いため、位置決め部211bは、カゴ台車2の隣り合う2本の縦フレーム25の間に入る。よって、IDパネル21の裏面の2つのフック211aをカゴ台車2の横フレーム24に懸けることができる。このようにして、正面から見て、カゴ台車2の中央の縦フレーム25aとIDパネル21の中央の位置21dとが一致するようにIDパネル21を装着することができる。
【0171】
カゴ台車2の縦フレーム25の間隔Wを150mmとし、2つの連結爪12の間の中央より、各々の2つの連結爪12の両側の端までの長さを130mmとする。この場合、カゴ台車2の中央の縦フレーム25aと、自走ロボット1の2つの連結爪12の間の中央とが一致するように位置を合わせる。これにより、2つの連結爪12は、中央の縦フレーム25aの隣の縦フレーム25に接触することなく、連結爪12を下部フレーム26に懸けて接続することができ、自走ロボット1とカゴ台車2とが連結することができる。即ち、縦フレーム25の幅または直径が8mmであって、カゴ台車2の中央の縦フレーム25aと、自走ロボット1の2つの連結爪12の間の中央とが一致するように位置合わせをする場合について考える。この場合、中央の縦フレーム25aの中心から、各々隣の縦フレーム25までの距離は約154mmである。よって、2つの連結爪12の間の中央より、各々の2つの連結爪12の両側の端までの長さが154mm未満であれば、2つの連結爪12は、縦フレーム25に接触することなく、連結爪12を下部フレーム26に懸けて接続することができる。これにより、自走ロボット1とカゴ台車2とが連結することができる。尚、
図20(a)は、この状態を上面側から見た図であり、
図20(b)は、
図20(a)における一点鎖線20A-20Bにおいて切断した断面図であり、
図20(c)は、
図20(a)における一点鎖線20C-20Dにおいて切断した断面図である。
【0172】
カゴ台車2の中央の縦フレーム25aとIDパネル21の中央の位置21dとが一致していない場合には、
図21に示されるように、IDパネル21をカゴ台車2に装着することができない。この場合、2つの位置決め部211bの隙間211cと、カゴ台車2の中央の縦フレーム25aの位置とが一致していない。このため、
図21(a)及び(c)に示されるように、IDパネル21の裏面の位置決め部211bとカゴ台車2の縦フレーム25とがぶつかってしまう。よって、フック211aが横フレーム24よりも奥まで入り込まないため、フック211aを横フレーム24に懸けることができず、IDパネル21を装着することができない。尚、
図21(a)は、この状態を上面側から見た図であり、
図21(b)は、
図21(a)における一点鎖線21A-21Bにおいて切断した断面図であり、
図21(c)は、
図21(a)における一点鎖線21C-21Dにおいて切断した断面図である。
【0173】
ここで、本実施の形態とは異なり、
図22に示されるように、IDパネル91の裏面には、位置決め部は設けられてはおらず、2つのフック911aのみが設けられている場合について考える。このフック911aは、フック211aと同様のものである。この場合には、
図23(a)に示されるように、カゴ台車2の中央の縦フレーム25aとIDパネル91の中央91dの位置とが一致している状態で装着される場合と、
図23(b)に示されるように、一致していない状態で装着される場合とがある。
図23(a)に示されるように、カゴ台車2の中央の縦フレーム25aとIDパネル91の中央91dの位置とが一致している状態で装着されている場合には、正常にカゴ台車2を搬送することができる。
【0174】
しかしながら、
図23(b)に示されるように、2本の縦フレーム25の間に2つのフック911aが入るように装着されている場合には、カゴ台車2の中央の縦フレーム25aとIDパネル91の中央91dの位置とが一致していない。このような状態で、カゴ台車2にIDパネル91が装着されると、カゴ台車2の縦フレーム25と自走ロボット1の2つの連結爪12とがぶつかって、自走ロボット1とカゴ台車2とが連結することができない場合がある。また、自走ロボット1とカゴ台車2とが連結されたとしても、自走ロボット1がカゴ台車2を搬送する際に、バランスが崩れてふらついて走行する場合がある。
【0175】
また、
図24に示されるように、位置決め部911bの横方向(X軸方向)の長さが、短すぎる場合について考える。この場合には、
図25(a)に示されるように、カゴ台車2の中央の縦フレーム25aとIDパネル91の中央91dの位置とが一致している状態で装着される場合と、
図25(b)に示されるように、一致していない状態で装着される場合とがある。
図25(a)に示されるように、カゴ台車2の中央の縦フレーム25aとIDパネル91の中央91dの位置とが一致している状態で装着されている場合には、正常にカゴ台車2を搬送することができる。
【0176】
しかしながら、
図25(b)に示されるように、2本の縦フレーム25の間に2つのフック911a及び位置決め部911bが入るように装着されると、カゴ台車2の中央の縦フレーム25aとIDパネル91の中央91dの位置とは一致しない。この場合にも、
図23(b)に示される場合と同様に、カゴ台車2の縦フレーム25と自走ロボット1の2つの連結爪12とがぶつかって、自走ロボット1とカゴ台車2とが連結することができない場合がある。また、自走ロボット1とカゴ台車2とが連結されたとしても、自走ロボット1がカゴ台車2を搬送する際に、バランスが崩れてふらついて走行する場合がある。
【0177】
よって、本実施の形態においては、位置決め部211bの横方向(X軸方向)の長さL2は、カゴ台車2の縦フレーム25の間隔をWとした場合に、上記のように(W―L1)/2<L2<Wとなるように形成されている。これにより、
図25(b)に示されるような状態で装着されることを防ぐことができる。尚、L2<Wは、位置決め部211bの横方向(X軸方向)の長さL2は、縦フレーム25の間隔Wよりも短くないと、2本の縦フレーム25の間に、位置決め部211bが入らないからである。
【0178】
また、
図26に示されるように、位置決め部911cがフック911aと同じ高さ位置である場合や、
図27に示されるように、位置決め部911cがフック911aよりも下である場合には、カゴ台車2にフック911aを懸けることができない。このため、本実施の形態におけるIDパネル21は、
図18に示されるように、位置決め部211bはフック211aの上側に設けられている。
【0179】
尚、
図28に示されるように、位置決め部211bがフック211aよりも下に設けられていても、位置決め部211bとフック211aとの間隔L5が、横フレーム24の幅よりも広い場合には、IDパネル21をカゴ台車2に装着することができる。例えば、カゴ台車2の横フレーム24の幅が20mmである場合には、間隔L5が20mmを超えていれば、カゴ台車2の所望の位置にIDパネル21を装着することができる。具体的には、
図29(a)に示されるように、IDパネル21の裏面の位置決め部211bとフック211aとの隙間に、横フレーム24を入れ、自重等により、IDパネル21を下ろす。これにより、
図29(b)に示されるように、横フレーム24にフック211aを懸けることができ、カゴ台車2にIDパネル21を装着することができる。
【0180】
本実施の形態における識別部材であるIDパネル21のフック211aは、例えば、
図30に示されるように、横フレーム24の入口となる下側の開口部分が、奥よりも広く形成されているものであってもよい。
【0181】
以上より、本実施の形態における識別部材であるIDパネル21は、2つの位置決め部211bの間の隙間211cと、カゴ台車2の中央の縦フレーム25aの位置とが一致していない場合には、IDパネル21をカゴ台車2に装着することができない。このため、自走ロボット1とカゴ台車2との連結が出来なくなることや自走ロボット1がカゴ台車2を搬送する際に、バランスが崩れてふらついて走行することを防ぐことができる。
【0182】
即ち、本実施の形態における識別部材であるIDパネル21は、表面には、
図3に示されるように、再帰反射テープ21bが貼られており、裏面には、2つのフック211aと、各々のフック211aの上側に設けられた位置決め部211bとを有している。各々のフック211aは、位置決め部211bが設けられている横方向(X軸方向)の範囲内に設けられている。
【0183】
2つの位置決め部211bの間には、カゴ台車2の縦フレーム25が入る隙間211cが設けられている。言い換えるならば、カゴ台車2の縦フレーム25からの「逃げ」となる隙間211cが2つの位置決め部211bの間に設けられている。
【0184】
ここで、隙間211cを基準として、一方の側の位置決め部211bを第一の位置決め部とし、X軸方向における長さをL2aとする。他方の側の位置決め部211bを第二の位置決め部とし、X軸方向における長さをL2bとする。また、2つの位置決め部211bの間の隙間211cのX軸方向における長さをL1とし、カゴ台車2の縦フレーム25の間隔をWとする。
【0185】
この場合、
(W―L1)/2<L2a<W
(W―L1)/2<L2b<W
となるように形成されている。尚、一方の側の位置決め部211bである第一の位置決め部のX軸方向における長さL2aと、他方の側の位置決め部211bである第二の位置決め部のX軸方向における長さL2bは同じである必要はなく、異なっていてもよい。
【0186】
カゴ台車2の複数の縦フレーム25のうち、横方向における中央付近に位置する縦フレーム25が、本実施の形態における識別部材であるIDパネル21の裏面の2つの位置決め部211bの間の隙間211cに入るようにカゴ台車2に装着する。これにより、位置決め部211bにより横方向(X軸方向)が規定され、カゴ台車2の横方向の中央付近にIDパネル21を装着することができる。
【0187】
尚、上記においては、2つの位置決め部211bは、横方向(X軸方向)において同一線上に配置されている場合について例示したが、2つの位置決め部211bは、横方向(X軸方向)において同一線上に配置されている必要はない。即ち、カゴ台車2の横フレーム24及び縦フレーム25と干渉しない範囲において、2つの位置決め部211bは、縦方向(Y軸方向)において異なった位置に配置されていてもよい。
【0188】
(変形例)
次に、本実施の形態における識別部材の変形例について説明する。本実施の形態における識別部材は、
図31に示されるように、IDパネル220の上側を折り返すことにより下側が開口したU字状の装着部材221が形成されているものであってもよい。装着部材221の中央部分には、装着部材221の一部を切り欠いた切り欠き部221aが設けられている。よって、本実施の形態においては、切り欠き部221aの両側の装着部材221が、カゴ台車2の横フレーム24に懸けるためのフックと、カゴ台車2に装着されるIDパネル220の位置を規制する位置決め部としての機能を有している。よって、2つの装着部材221の間の切り欠き部221aが設けられている部分が隙間となる。
【0189】
図32及び
図33に示されるように、IDパネル220は、2つの装着部材221の間の隙間となる切り欠き部221aに、カゴ台車2の中央の縦フレーム25aを入れて、両側の2つの装着部材221をカゴ台車2の横フレーム24に懸ける。これにより、カゴ台車2の中央の縦フレーム25aの位置と、IDパネル220の横方向(X軸方向)の中央の位置とが一致した状態で、カゴ台車2にIDパネル220を装着することができる。
【0190】
尚、本変形例では、位置決め部と取付部は別々の部材である必要はなく、一体としてもよい。また、装着部材221の横方向(X軸方向)の方向の長さについて、装着部材221の隙間211c側の端部から他方の端部までの長さの部分で位置決め部としての機能を果たし、装着部材221が横フレーム24に懸かる形状となっていることで取付部としての機能を果たしている。
【0191】
この変形例においても、切り欠き部221aの両側における各々の装着部材221の横方向(X軸方向)の長さは、位置決め部の長さと考えることができる。よって、装着部材221の横方向(X軸方向)の長さは、(W―L1)/2よりも大きく、W未満となるように形成されている。
【0192】
尚、図示はしないが、IDパネル220の2つの装着部材221の間の切り欠き部221aの位置と、カゴ台車2の中央の縦フレーム25aの位置とが一致していない場合には、装着部材221と中央の縦フレーム25aとがぶつかる。このため、横フレーム24の奥まで装着部材221が入らず、装着部材221を横フレーム24に懸けることはできないため、IDパネル220をカゴ台車2に装着することはできない。
【0193】
また、本実施の形態における識別部材は、
図34に示されるように、IDパネル220の標識となる本体部222は、装着部材221よりも横方向(X軸方向)の長さが長くなるように形成されていてもよい。
【0194】
また、本実施の形態の識別部材であるIDパネル230は、
図35及び
図36に示されるように、IDパネル230の裏面の横方向の中央部分に、フック211aに代えて、縦フレーム25を挟み込むクランプ231が設けられているものであってもよい。クランプ231は金属又は樹脂材料であって弾性を有する材料により形成されている。このIDパネル230は、
図37に示されるように、クランプ231の開口部231aにカゴ台車2の中央の縦フレーム25aが入れられることにより、カゴ台車2にIDパネル230を装着することができる。尚、カゴ台車2にIDパネル230が取り付けられている状態では、IDパネル230の下端が横フレーム24と接触している。
【0195】
クランプ231は、
図35から
図37に示されるように、位置決め部211bの上側に設けられているものであってもよく、また、
図38及び
図39に示されるように、位置決め部211bの下側に設けられているものであってもよい。クランプ231が、位置決め部211bの下側に設けられているIDパネル230であっても、
図40に示されるように、クランプ231の開口部231aにカゴ台車2の中央の縦フレーム25aが入れられることにより、カゴ台車2にIDパネル230を装着することができる。
【0196】
(横方向の中心からずれた位置に縦フレームが存在しているカゴ台車)
ところで、カゴ台車2には、使用しないときには、折りたたんで収納することができるような構造となっているものがある。例えば、
図41に示されるように、カゴ台車2の縦フレーム25のうち、左から1本目と2本目の間隔が、2本目と3本目、3本目と4本目、4本目と5本目、5本目と6本目の間隔よりも短くなっている場合がある。この場合、カゴ台車2の横方向の中央の位置に最も近い縦フレーム25である左から4本目の縦フレーム25の位置は、カゴ台車2の横方向の中央の位置よりも若干ずれた位置となる。よって、カゴ台車2の横方向の中央の位置と、IDパネル21の横方向の中央の位置とが若干ずれる。
【0197】
例えば、左から1本目と2本目の縦フレーム25との距離Waを60mmとする。また、左から2本目と3本目の縦フレーム25、3本目と4本目の縦フレーム25、4本目と5本目の縦フレーム25、5本目と6本目の縦フレーム25の距離Wbを150mmとする。この場合には、カゴ台車2の横方向の中央の位置に最も近い縦フレームとなる左から4本目の縦フレーム25の位置は、カゴ台車2の横方向の中央の位置に対し、ずれ量Lzが約30mmだけずれている。
【0198】
この場合、左から4本目の縦フレーム25とIDパネル21の横方向の中央の位置21dとが一致するように、IDパネル21をカゴ台車2に装着したとしても、カゴ台車2の縦フレーム25と2つの連結爪12とがぶつからない限り、問題になることはない。例えば、自走ロボット1の2つの連結爪12の幅Laが約260mmである場合には、カゴ台車2の縦フレーム25と2つの連結爪12とがぶつかることはない。また、カゴ台車2の横方向の長さが約660mmであるのに対し、ずれ量Lzが約30mmと小さいため、自走ロボット1がカゴ台車2を搬送する際に、バランスが崩れてふらついて走行することもない。
【0199】
しかしながら、
図42に示されるように、自走ロボット1の2つの連結爪12の幅Lbが約300mmである場合には、カゴ台車2の縦フレーム25と2つの連結爪12とがぶつかるため、自走ロボット1とカゴ台車2とを連結することはできない。この場合には、
図43に示されるように、自走ロボット1は、IDパネル21の横方向の中央の位置より若干シフトさせて、縦フレーム25が存在しない位置の下部フレーム26に2つの連結爪12を懸け、自走ロボット1とカゴ台車2とを連結する。このシフト量は、例えば、ずれ量Lzと同じ約30mmである。尚、2つの連結爪12の距離や、縦フレーム25の間の距離Wa及びWbは、予め解っているため、これらの値に基づき2つの連結爪12を懸けるシフト位置を設定しておいてもよい。このようなシフト量の制御は、制御部となる制御装置411において行われる。
【0200】
〔第2の実施の形態〕
次に、第2の実施の形態について説明する。本実施の形態における識別部材であるIDパネル240では、
図44及び
図45に示されるように、IDパネル240の裏面に設けられた装着部材241は、縦フレーム25及び横フレーム24を挟み込むクランプが、十字に交差するように配置されている。装着部材241は、カゴ台車2の中央の縦フレーム25aを挟み込む2つの縦クランプ部241aと、横フレーム24を挟み込む2つの横クランプ部241bとを有しており、縦クランプ部241a及び横クランプ部241bが十字に交差するように配置されている。縦クランプ部241aは縦方向(Y軸方向)の同一線上に配置されており、横クランプ部241bは横方向(X軸方向)の同一線上に配置されており、中央部分が開口し開口部241cが形成されている。従って、横クランプ部241bは、位置決め部と取付部の両方の機能を備えている。尚、本実施の形態においては、縦クランプ部241aは1つ設けられていればよい。
【0201】
本実施の形態では、
図46に示されるように、十字に配置された2つの縦クランプ部241aと2つの横クランプ部241bの間の開口部241cに、カゴ台車2の中央の縦フレーム25aと横フレーム24とが交差する部分を入れ、IDパネル240を装着する。装着部材241は金属又は樹脂材料であって弾性を有する材料により形成されいる。カゴ台車2にIDパネル240が装着されている状態では、カゴ台車2の中央の縦フレーム25aが、装着部材241の縦クランプ部241aに挟み込まれ、横フレーム24が、装着部材241の横クランプ部241bに挟み込まれている。
【0202】
即ち、本実施の形態における識別部材であるIDパネルは、表面には、
図3に示されるように、横方向(X軸方向)の両側の端部には再帰反射テープ21bが貼られている。また、裏面には、カゴ台車2の中央の縦フレーム25aを挟み込む2つの縦クランプ部241aと、横フレーム24を挟み込む2つの横クランプ部241bとを有している。縦クランプ部241aは縦方向(Y軸方向)の同一線上に配置されており、横クランプ部241bは横方向(X軸方向)の同一線上に配置されており、十字に交差するように配置されており、X軸方向とY軸方向とは直交している。
【0203】
交差している中央部分は開口しており開口部241cが形成されている。2つの横クランプ部241bの間の開口部241cの横方向(X軸方向)の長さをL11とする。また、開口部241cを基準として、一方の側の横クランプ部241bを第一の横クランプ部とし、X軸方向における長さをL12aとし、他方の側の横クランプ部241bを第二の横クランプ部とし、X軸方向における長さをL12bとする。
【0204】
この場合、
(W―L11)/2<L12a<W
(W―L11)/2<L12b<W
となるように形成されている。
【0205】
尚、一方の側の横クランプ部241bである第一の横クランプ部のX軸方向における長さL12aと、他方の側の横クランプ部241bである第二の横クランプ部のX軸方向における長さL12bは同じである必要はなく、異なっていてもよい。
【0206】
(変形例)
本実施の形態の識別部材であるIDパネル250は、
図47に示されるように、カゴ台車2の中央の縦フレーム25aと横フレーム24とが交差する部分の形状に対応した十字の開口部251aを有する装着部材251が裏面に設けられているものであってもよい。この場合、
図48に示されるように、IDパネル250の裏面の装着部材251に設けられた十字に開口部251aに、カゴ台車2の中央の縦フレーム25aと横フレーム24とが交差する部分を入れて、カゴ台車2にIDパネル250を装着する。
【0207】
なお、各実施の形態においては、搬送対象物であるカゴ台車2のような被牽引台車に自動で接続して牽引することで、カゴ台車2を所望の搬送先へ自動搬送する無人搬送車(AGV)としての自走ロボット1を、自律移動装置に適用した例について説明したが、これに限るものではなく、各種の自律移動装置に適用可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0208】
1 自走ロボット(自律移動装置)
2 カゴ台車
4 コントローラ
9 測域センサ
10 連結装置
12 連結爪
21 識別部材(IDパネル、板状部材)
21a 板状部材の表面
21b 再帰反射テープ
22 底板
23 キャスター
24 横フレーム
25 縦フレーム
25a 中央の縦フレーム
26 下部フレーム
211 装着部材
211a フック
211b 位置決め部
211c 隙間
401 検出手段
402 算出手段
403 移動制御手段
【先行技術文献】
【特許文献】
【0209】
【文献】特開2001-166830号公報
【文献】特許第5983088号公報
【文献】特許第4962742号公報
【文献】特開2018-090084号公報