(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】粘着剤組成物、粘着剤、偏光板用粘着剤、ならびに画像表示装置
(51)【国際特許分類】
C09J 133/04 20060101AFI20231212BHJP
C09J 11/08 20060101ALI20231212BHJP
G02B 5/30 20060101ALI20231212BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20231212BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
C09J133/04
C09J11/08
G02B5/30
B32B27/00 D
B32B27/30 A
(21)【出願番号】P 2019211621
(22)【出願日】2019-11-22
【審査請求日】2022-09-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079382
【氏名又は名称】西藤 征彦
(74)【代理人】
【識別番号】100123928
【氏名又は名称】井▲崎▼ 愛佳
(74)【代理人】
【識別番号】100136308
【氏名又は名称】西藤 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100207295
【氏名又は名称】寺尾 茂泰
(72)【発明者】
【氏名】浅野 鉄也
(72)【発明者】
【氏名】三ツ谷 直也
(72)【発明者】
【氏名】野原 一樹
【審査官】澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/141382(WO,A1)
【文献】特開平07-331206(JP,A)
【文献】特開2019-119852(JP,A)
【文献】国際公開第2018/034231(WO,A1)
【文献】特開2000-103938(JP,A)
【文献】特開2014-114334(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
G02B 5/30
B32B 27/00,27/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル系樹脂(A)およびシランカップリング剤(B)を含有する粘着剤組成物であって、アクリル系樹脂(A)が、水酸基含有モノマー(a1)および重合性マクロモノマー(a2)を含有する重合成分を重合してなり、重合成分に対する水酸基含有モノマー(a1)の含有割合が3~20重量%であるアクリル系樹脂であり、
上記重合性マクロモノマー(a2)の数平均分子量が4000以上であり、
シランカップリング剤(B)が、重量平均分子量3000以上のオリゴマー型シランカップリング剤(b1)
及び重量平均分子量3000未満のオリゴマー型シランカップリング剤(b2)を含有することを特徴とする粘着剤組成物。
【請求項2】
更に、架橋剤(C)を含有することを特徴とする請求項1
に記載の粘着剤組成物。
【請求項3】
更に、イオン性化合物(D)を含有することを特徴とする請求項1
または2に記載の粘着剤組成物。
【請求項4】
請求項1~
3のいずれか一項に記載の粘着剤組成物が、架橋されてなることを特徴とする粘着剤。
【請求項5】
請求項
4記載の粘着剤を用いてなることを特徴とする偏光板用粘着剤。
【請求項6】
請求項
4記載の粘着剤で、偏光板と液晶セルを貼り合わせてなることを特徴とする画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤組成物、粘着剤、偏光板用粘着剤、ならびに画像表示装置に関し、更に詳しくは、高温環境下においても耐久性に優れ、更に、リワーク性および偏光板の反り抑制を両立できる粘着剤を形成する粘着剤組成物、粘着剤、偏光板用粘着剤、ならびに画像表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、偏光性が付与されたポリビニルアルコール系フィルム等からなる偏光子の両面が保護フィルムで被覆された偏光板を、2枚のガラス板の間に配向した液晶成分を挟持させた液晶セルの表面に積層してなる、液晶表示装置が製造されている。この液晶セルの表面への偏光板の積層は、偏光板表面に設けた粘着剤層を上記液晶セルの表面に当接し、押し付けることにより行われるのが通常である。
【0003】
かかる偏光板(保護フィルム)と液晶セル(ガラス板)との貼り合わせに用いられる粘着剤には、例えば、高温環境下や高温高湿環境下において、液晶セル(ガラス板)から偏光板が浮いたり、剥がれたりしないという耐久性が求められている。
【0004】
また、偏光板の接着時に、異物の混入や位置ズレなどの不具合が生じた場合には、偏光板を液晶セルから剥離させて再度接着させる必要がある。偏光板を液晶セルから剥離する際には、液晶セルのギャップ変化や破断等の損傷を与えることなく、偏光板を液晶セルから容易に剥離できるリワーク性(再剥離性)が必要とされる。
【0005】
更に、偏光板は、高温・高湿熱環境下において、熱収縮しやすいことから寸法安定性に欠け、偏光板に反りが発生することがあり、近年、液晶セルの薄型化(例:液晶セルを構成する基板の薄型化)および偏光板の薄型化に伴い、高温・高湿熱環境下での液晶セルの反りがより大きな問題となっている。液晶セルの反りの原因としては、例えば、偏光板の熱収縮(寸法変化)に粘着剤層が追従することができないこと、粘着剤層の応力緩和特性が低いことが挙げられる。
このように、偏光板と液晶セルの貼り合わせなどに用いられる粘着剤には、耐久性に加え、リワーク性および反り抑制が求められる。
【0006】
このようなリワーク性を改善させる方法としては、例えば、(メタ)アクリレート系モノマー94質量部を越えて98.9質量部以下、マクロモノマー1質量部以上5質量部以下、およびカルボキシル基、アミノ基、アミド基、ヒドロキシ基、アセトアセトキシ基よりなる群から選択される少なくとも1つの架橋性官能基を含有する(メタ)アクリレート系モノマー0.1質量部以上1質量部未満を重合してなる(メタ)アクリル系ポリマーを含有する粘着剤組成物が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
また、反り抑制を改善する方法としては、例えば、アルキル基の炭素数が4~18の(メタ)アクリル酸アルキルエステルおよび重合性マクロモノマーを含む共重合成分を共重合して得られる(メタ)アクリル系共重合体を含有する偏光板用粘着剤組成物が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2010-150400号公報
【文献】国際公開第2015/141382号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1および2の開示技術では一長一短があり、特許文献1ではリワーク性の改善はみられるとしても反り抑制については考慮されておらず、一方、特許文献2では反り抑制の改善はあるもののゲル分率が低いためリワーク性は満足しないものである。
反り抑制のためには応力緩和性が必要であり、応力緩和性を得るためには、粘着剤の架橋度を下げることが一般的であるが、架橋度を下げるとリワーク性が悪化する傾向にあるため、反り抑制とリワーク性の両立は難しいものであるところ、偏光板用粘着剤としては、これら性能の両立が求められている。
【0009】
そこで、本発明ではこのような背景下において、例えば、液晶セルに使用されるガラス板や導電層等の金属を被着体とした際に、高温環境下においても耐久性に優れ、更に、リワーク性および偏光板の反り抑制を両立できる粘着剤を形成する粘着剤組成物、粘着剤、偏光板用粘着剤、ならびに画像表示装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
しかるに、本発明者らはかかる事情に鑑み鋭意研究を重ねた結果、アクリル系樹脂およびシランカップリング剤を含有する粘着剤組成物においては、アクリル系樹脂の重合成分として、比較的多めの水酸基含有モノマーと重合性マクロモノマーを含む重合成分が共重合されたアクリル系樹脂を用い、更に、オリゴマー型のシランカップリング剤を含有させることにより、高温環境下での耐久性に優れるうえに、リワーク性および反り抑制の両方に優れた効果を有する粘着剤が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0011】
即ち、本発明は、アクリル系樹脂(A)およびシランカップリング剤(B)を含有する粘着剤組成物であって、アクリル系樹脂(A)が、水酸基含有モノマー(a1)および重合性マクロモノマー(a2)を含有する重合成分を重合してなり、重合成分に対する水酸基含有モノマー(a1)の含有割合が3~20重量%であるアクリル系樹脂であり、シランカップリング剤(B)が、重量平均分子量3000以上のオリゴマー型シランカップリング剤(b1)を含有する粘着剤組成物を第1の要旨とするものである。
【0012】
また、本発明は、上記第1の要旨の粘着剤組成物が、架橋されてなる粘着剤を第2の要旨とし、上記第2の要旨の粘着剤を用いてなる偏光板用粘着剤を第3の要旨とする。更に上記第2の要旨の粘着剤で、偏光板と液晶セルとを貼り合わせてなる画像表示装置を第4の要旨とする。
【0013】
アクリル系樹脂を含有する粘着剤組成物において、耐久性を改善する目的で、共重合成分として重合性マクロモノマーを用いたアクリル系樹脂を用いたり、モノマー型のシランカップリング剤を配合したりすることが行われるが、これらの方法では、上記偏光板の反り改善までは得られないものであった。
本発明においては、重合性マクロモノマーを共重合成分として含むアクリル系樹脂を用いて、かつ、モノマー型シランカップリング剤ではなくオリゴマー型シランカップリング剤を含有させるものである。
オリゴマー型シランカップリング剤は加水分解性基が多く環境中の水分により物性が変化してしまい不具合が生じることなどが懸念されるところ、この従来技術を打破し、あえてオリゴマー型シランカップリング剤をマクロモノマーを共重合したアクリル系樹脂の組成物中に含有させると、オリゴマー型シランカップリング剤とアクリル系樹脂のマクロモノマー由来の側鎖部分によって、応力緩和と耐久性が両立できるものとなり、耐久性に加え、リワーク性と反り抑制の両立に優れた粘着剤となることを見出したのである。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、アクリル系樹脂(A)およびシランカップリング剤(B)を含有する粘着剤組成物であって、アクリル系樹脂(A)が、水酸基含有モノマー(a1)および重合性マクロモノマー(a2)を含有する重合成分を重合してなり、重合成分に対する水酸基含有モノマー(a1)の含有割合が3~20重量%であるアクリル系樹脂であり、シランカップリング剤(B)が、重量平均分子量3000以上のオリゴマー型シランカップリング剤(b1)を含有するものである。そのため、上記粘着剤組成物を用いて得られる粘着剤は、高温環境下においても高い耐久性を示し、更にリワーク性と反り抑制を両立できるものである。そして、本発明の粘着剤組成物は、種々の用途、とりわけ偏光板用に好適な粘着剤を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明を詳細に説明する。
なお、本発明において、「(メタ)アクリル」とはアクリルあるいはメタクリルを、「(メタ)アクリロイル」とはアクリロイルあるいはメタクリロイルを、「(メタ)アクリレート」とはアクリレートあるいはメタクリレートをそれぞれ意味するものである。また、「アクリル系樹脂」とは、少なくとも1種の(メタ)アクリレート系モノマーを含む重合成分を重合して得られる樹脂である。
【0016】
本発明の粘着剤組成物は、アクリル系樹脂(A)およびシランカップリング剤(B)を含有するものである。以下、上記粘着剤組成物に含まれる各成分について説明する。
【0017】
<アクリル系樹脂(A)>
本発明で用いられるアクリル系樹脂(A)は、上述のとおり、水酸基含有モノマー(a1)および重合性マクロモノマー(a2)を含有する重合成分を重合してなるものである。また、上記アクリル系樹脂(A)は、重合成分として、上記水酸基含有モノマー(a1)および重合性マクロモノマー(a2)の他に、アルキル(メタ)アクリレート(a3)を含有し、好ましくは官能基含有モノマー(a4)、必要に応じて、その他の共重合性モノマー(a5)を含有するものである。
【0018】
[水酸基含有モノマー(a1)]
上記水酸基含有モノマー(a1)としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、5-ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート等のアクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、カプロラクトン変性2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等のカプロラクトン変性モノマー、ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のオキシアルキレン変性モノマー;2-アクリロイロキシエチル-2-ヒドロキシエチルフタル酸、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリルアミド等の1級水酸基含有モノマー;2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-クロロ2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の2級水酸基含有モノマー;2,2-ジメチル2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0019】
上記水酸基含有モノマー(a1)のなかでも、後述する架橋剤(C)との反応性に優れる点で1級水酸基含有モノマーが好ましく、重合時の安定性の点で2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが好ましく、架橋剤(C)との反応性が速くエージングが短くなる点で4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートを使用することが好ましい。更には2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートは、モノマー調製時にジ(メタ)アクリレート等の不純物が少なく、純度が高いものが得られ製造しやすい点で好ましい。
【0020】
なお、上記水酸基含有モノマーを調製して用いる場合、あるいは市販品を用いる場合、不純物であるジ(メタ)アクリレートの含有量が、0.5重量%以下のものを用いることも好ましく、特に好ましくは0.2重量%以下、更に好ましくは0.1重量%以下であり、具体的には、上述のように不純物の含有量が少ない2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートを用いることが殊に好ましい。
【0021】
本発明で用いるアクリル系樹脂(A)は、比較的多く水酸基を有するものであり、重合成分に対する水酸基含有モノマー(a1)の含有割合は、3~20重量%である。好ましくは、耐久性とリワーク性の点で3.5~15重量%が好ましく、更には4~12重量%、特には4.5~10重量%が好ましい。水酸基含有モノマー(a1)の含有量が少なすぎると、耐久性が低下し、含有量が多すぎると、反り性が低下することとなる。
【0022】
[重合性マクロモノマー(a2)]
重合性マクロモノマーとは、重合可能な官能基を持つ高分子量のモノマーをいい、とりわけ、本発明で用いる重合性マクロモノマー(a2)としては、重合体鎖の末端に重合性不飽和基を有することが好ましい。
【0023】
上記重合性マクロモノマー(a2)の数平均分子量(Mn)は、得られる粘着剤の機械物性および耐久性の点で3000以上が好ましく、4000以上がより好ましく、6000以上が特に好ましい。また、重合性マクロモノマー(a2)のMnの上限値は、100000が好ましく、50000が更に好ましく、20000が特に好ましい。Mnが下限値以上であればアクリル系樹脂(A)とした際の凝集力が向上しやすく、耐久性に優れる傾向があり好ましい。一方でMnが上限値以下であれば樹脂溶液の塗工適正が良好となり均一な塗膜を得やすい傾向にある。
【0024】
上記数平均分子量(Mn)は、標準ポリスチレン分子量換算による数平均分子量であり、高速液体クロマトグラフ(Waters社製、「ACQUITY APCシステム」)に、カラム:ACQUITY APC XT 450(分子量範囲:20000~400000)を1本、ACQUITY APC XT 200(分子量範囲:3000~70000)を1本、ACQUITY APC XT 45(分子量範囲:200~5000)を2本の計4本を直列にして用いることにより測定されるものであり、重量平均分子量も同様の方法で測定される。また、数平均分子量と重量平均分子量より分散度(重量平均分子量/数平均分子量)が求められる。
【0025】
上記重合性マクロモノマー(a2)のガラス転移温度(Tg)は、耐久性の観点から、通常40℃以上であり、好ましくは50℃以上、より好ましくは60℃以上である。また、ガラス転移温度の上限は、通常150℃、好ましくは130℃である。ガラス転移温度が低すぎると、耐久性、リワーク性が低下する傾向があり、ガラス転移温度が高すぎると、反りを抑制する効果が低下する傾向がある。
上記重合性マクロモノマー(a2)のガラス転移温度(Tg)は、例えば、重合性マクロモノマー(a2)を構成するモノマー単位およびその含有割合から、後述するFoxの式により算定することができる。
【0026】
上記重合性マクロモノマー(a2)は、通常、アルキル(メタ)アクリレートを含む重合成分を重合させることにより得られるものである。
【0027】
上記アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、アルキル基の炭素数が1~30、好ましくは1~26の(メタ)アクリレートが挙げられ、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、i-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、i-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、n-へキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、n-ラウリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、n-ステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いてもよい。なかでもアルキル基の炭素数が1~12の(メタ)アクリレートが好ましく、より好ましくは1~6の(メタ)アクリレートであり、特に好ましくは1~4の(メタ)アクリレートであり、殊に好ましくはメチル(メタ)アクリレートである。
【0028】
上記アルキル(メタ)アクリレートのホモポリマーとしたときのガラス転移温度〔以下、アルキル(メタ)アクリレートのガラス転移温度と略記することがある。〕は、80℃以上であり、好ましくは90℃以上、より好ましくは100℃以上である。また、ガラス転移温度の上限は、通常150℃、好ましくは130℃である。かかるガラス転移温度が低すぎると、耐久性、リワーク性が低下する傾向があり、ガラス転移温度が高すぎると、反りを抑制する効果が低下する傾向がある。
【0029】
上記重合性マクロモノマー(a2)は、上記アルキル(メタ)アクリレートの単独重合体であってもよく、また、上記アルキル(メタ)アクリレートの共重合体であってもよい。なかでも本発明の効果をより発揮する点から、上記重合性マクロモノマー(a2)は、上記アルキル(メタ)アクリレートの単独重合体であることが好ましい。
【0030】
また、重合性マクロモノマー(a2)を得るための重合成分としては、本発明の効果を阻害しない範囲(例えば、重合成分の10重量%以下の範囲)で、上記アルキル(メタ)アクリレート以外のその他のモノマーが含まれていてもよい。
【0031】
上記その他のモノマーとしては、例えば、
2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレート;
(メタ)アクリル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルマレイン酸、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルマレイン酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルコハク酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、マレイン酸モノメチル、イタコン酸モノメチル等のカルボキシ基含有ビニル系単量体;
無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物基含有ビニル系単量体;
グリジシル(メタ)アクリレート、グリジシルα-エチルアクリレート、3,4-エポキシブチル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有ビニル系単量体;
ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有(メタ)アクリレート系のビニル系単量体;
(メタ)アクリルアミド、N-t-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、マレイン酸アミド、マレイミド等のアミド基を含有するビニル系単量体;
スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、(メタ)アクリロニトリル、塩化ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニル系単量体;
ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、
等が挙げられる。
上記その他のモノマーは、単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0032】
耐久性の観点からは、重合性マクロモノマー(a2)の側鎖に極性基を持たせることが好ましく、かかる側鎖に極性基を持たせることができる原料モノマーとしては、例えば、水酸基含有(メタ)アクリレート、カルボキシ基含有ビニル系単量体、酸無水物基含有ビニル系単量体、アミノ基含有(メタ)アクリレート系のビニル系単量体、アミド基を含有するビニル系単量体からなる群から選ばれる少なくとも一つの極性基含有モノマーが用いられるが、極性基含有モノマーのなかでも水酸基含有(メタ)アクリレートが耐久性の点から好ましい。
【0033】
本発明で用いる重合性マクロモノマー(a2)は、上記アルキル(メタ)アクリレート、必要に応じて上記その他のモノマーを適宜選択し、これらを、後述するアクリル系樹脂(A)と同様の方法により共重合させることにより得ることができる。
【0034】
重合性マクロモノマー(a2)の含有量としては、アクリル系樹脂(A)を構成する重合成分に対して0.1~20重量%であることが好ましく、特に好ましくは0.2~10重量%、更に好ましくは0.5~5重量%である。かかる含有量の範囲内では、高い耐久性を示し、リワーク性と反りの抑制がより良好となる。
【0035】
[アルキル(メタ)アクリレート(a3)]
前記アルキル(メタ)アクリレート(a3)としては、例えば、アルキル基の炭素数が通常1~20(好ましくは1~18、特に好ましくは1~12、更に好ましくは1~8)のもの、好ましくは脂肪族系のアルキル(メタ)アクリレートが挙げられ、具体的には、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、i-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
【0036】
これらアルキル(メタ)アクリレート(a3)のなかでも粘着物性に優れる点、重合時の安定性に優れる点でメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートが好ましく、特にn-ブチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0037】
上記アルキル(メタ)アクリレート(a3)の含有量としては、アクリル系樹脂(A)を構成する重合成分に対して10重量%以上であることが好ましく、特に好ましくは30~99.9重量%であり、更に好ましくは50~98重量%、特に好ましくは60~95重量%である。かかる含有量が少なすぎると、粘着物性や耐久性が低下する傾向にある。
【0038】
また、後述するイオン性化合物(D)との相溶性に優れる点で、アクリル系樹脂(A)を構成する重合成分として、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレートの少なくとも1種、好ましくはn-ブチル(メタ)アクリレートを含有していることが好ましく、特に好ましくは、これらの含有量がアクリル系樹脂(A)を構成する重合成分に対して10重量%以上であり、更に好ましくは30重量%以上であり、殊に好ましくは40~99.9重量%である。
【0039】
[官能基含有モノマー(a4)]
次に、官能基含有モノマー(a4)について説明する。
本発明における官能基含有モノマー(a4)とは、カルボキシ基含有モノマー、窒素原子含有モノマー等の共重合可能なエチレン性不飽和モノマーを指すものであり、これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。なお、上記官能基含有モノマー(a3)としては、前記水酸基含有モノマー(a1)および重合性マクロモノマー(a2)を除くものである。
【0040】
上記カルボキシ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、β-カルボキシエチルアクリレート等のアクリル酸のダイマー酸等が挙げられ、なかでも耐熱性の点、重合時の安定性の点で(メタ)アクリル酸が好ましい。
【0041】
上記窒素原子含有モノマーとしては、例えば、アミノ基含有モノマー、アミド基含有モノマー、その他の窒素原子含有モノマー等が挙げられる。
【0042】
上記アミノ基含有モノマーとしては、例えば、アミノメチル(メタ)アクリレート、アミノエチル(メタ)アクリレート等の1級アミノ基含有モノマー、t-ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の2級アミノ基含有モノマー、エチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の3級アミノ基含有モノマー等が挙げられる。
上記アミノ基含有モノマーのなかでも、架橋促進効果が高い点、樹脂の保存安定性が高い点で3級アミノ基含有モノマーが好ましい。
【0043】
上記アミド基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリルアミド;メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、プロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、イソプロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、n-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等のアルコキシアルキル(メタ)アクリルアミド系モノマー;ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジエチル(メタ)アクリルアミド等のジアルキル(メタ)アクリルアミド系モノマー;N-(ヒドロキシメチル)アクリルアミド等の水酸基含有アミドモノマー;(メタ)アクリロイルモルホリン等の複素環式アミドモノマー;等が挙げられる。
【0044】
上記アミド基含有モノマーのなかでも、樹脂溶液の安定性の点や、後述するイオン性化合物(D)の移行を抑制する点で(メタ)アクリロイルモルホリン、アルコキシアルキル(メタ)アクリルアミド系モノマー、ジアルキル(メタ)アクリルアミド系モノマーが好ましい。
【0045】
なかでも上記の官能基含有モノマー(a4)としては、カルボキシ基含有モノマーが、架橋剤(C)との反応性に優れる点で好ましい。
【0046】
上記官能基含有モノマー(a4)の分子量は、500以下であることが架橋反応のしやすさの点から好ましい。分子量の下限値は通常50である。
【0047】
上記官能基含有モノマー(a4)は、アクリル系樹脂(A)を構成する重合成分に対して30重量%以下の範囲で含有させることが好ましい。
【0048】
上記官能基含有モノマー(a4)のなかでも、特にカルボキシ基含有モノマーを用いる場合、その含有量は、耐久性とリワーク性の点でアクリル系樹脂(A)を構成する重合成分に対して0.01~10重量%が好ましく、更には0.1~5重量%が好ましい。また、耐腐食性、基材や被着体の加水分解を抑制する点ではアクリル系樹脂(A)を構成する重合成分に対して0.5重量%以下であることが好ましく、更には0.2重量%以下、特には0.1重量%以下が好ましい。
【0049】
上記官能基含有モノマー(a4)のなかでも、特に窒素原子含有モノマーを用いる場合、その含有量は、耐久性や加水分解抑制の点でアクリル系樹脂(A)を構成する重合成分に対して0.1~10重量%が好ましく、更には0.5~5重量%が好ましい。
【0050】
[その他の共重合性モノマー(a5)]
上記その他の共重合性モノマー(a5)とは、共重合可能なエチレン性不飽和モノマーであり、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、オルトフェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート等の芳香環含有モノマー;シクロへキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルオキシアルキル(メタ)アクリレート、t-ブチルシクロヘキシルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート等の脂環含有モノマー;2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、3-メトキシブチル(メタ)アクリレート、2-ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2-ブトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール-モノ(メタ)アクリレート、ラウロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ステアロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のエーテル鎖含有モノマー等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
【0051】
これらのなかでも、屈折率および複屈折を調整しやすい点、耐光漏れ性(耐光漏れ性とは偏光板を液晶セル等に貼り合わせるための粘着剤として使用した際に、高温や湿熱試験後にバックライトの光が漏れるのを防ぐ性能のことである。)に優れる点では、芳香環含有モノマーが好ましく、特に好ましくはベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシ(メタ)エチルアクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレートが好ましく、屈折率および複屈折を調整しやすく、低極性被着体(例えば、シクロオレフィン等)への接着性に優れる点では、脂環含有モノマーが好ましい。
【0052】
上記その他の共重合性モノマー(a5)の含有量は、本発明の効果を損なわないためにもアクリル系樹脂(A)を構成する重合成分に対して、25重量%以下が好ましい。
【0053】
本発明で用いられるアクリル系樹脂(A)は、水酸基含有モノマー(a1)、重合性マクロモノマー(a2)、好ましくは更にアルキル(メタ)アクリレート(a3)、官能基含有モノマー(a4)、必要に応じて、その他の共重合性モノマー(a5)を適宜選択して組み合わせた重合成分を用いて、例えば、有機溶媒中に、かかる重合成分、重合開始剤を混合あるいは滴下して、重合することにより製造することができる。
【0054】
上記重合反応は、溶液ラジカル重合、懸濁重合、塊状重合、乳化重合等の従来公知の重合方法により行うことができるが、これらのなかでも、溶液ラジカル重合、塊状重合が好ましく、特に好ましくは溶液ラジカル重合である。
【0055】
上記重合反応に用いられる有機溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ヘキサン等の脂肪族炭化水素類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の脂肪族アルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類等が挙げられる。
【0056】
これらの有機溶媒のなかでも、重合反応のしやすさや連鎖移動の効果や粘着剤塗工時の乾燥のしやすさ、安全性の高さから、酢酸エチル、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸ブチル、トルエン、メチルイソブチルケトンが好ましく用いられ、特に好ましくは、酢酸エチル、アセトン、メチルエチルケトンである。これら有機溶媒は、単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
そして、これらの有機溶媒の使用量は、通常、アクリル系樹脂(A)を構成する重合成分100重量部に対して10~900重量部である。
【0057】
また、かかる溶液ラジカル重合に用いられる重合開始剤としては、例えば、通常のラジカル重合開始剤である2,2'-アゾビスイソブチロニトリル、2,2'-アゾビス-2-メチルブチロニトリル、4,4'-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、2,2'-アゾビス(メチルプロピオン酸)等のアゾ系開始剤、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物等が挙げられ、使用するモノマーに合わせて適宜選択して用いることができる。これらの重合開始剤は、単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
そして、これらの重合開始剤の使用量は、通常、重合成分に対して0.01~5重量%である。
【0058】
かくして得られる上記アクリル系樹脂(A)の酸価は、熱安定性の点、金属腐食性が低い点、帯電防止性能に優れる点から、30mgKOH/g以下であることが好ましく、より好ましくは15mgKOH/g以下、特に好ましくは10mgKOH/g以下、更に好ましくは7mgKOH/g以下である。
【0059】
ここで、本発明における酸価は、水酸化カリウムを用いた中和滴定法または電位差測定法により求められる。
【0060】
また、アクリル系樹脂(A)の重量平均分子量は、20万~300万であることが好ましく、特に好ましくは40万~200万、更に好ましくは60万~180万、殊に好ましくは80万~160万である。かかる重量平均分子量が小さすぎると耐久性が低下する傾向があり、大きすぎると製造時に希釈溶媒が大量に必要となり、乾燥性が低下し、粘着剤層中に残溶媒が多くなり耐久性が低下する傾向がある。
【0061】
上記アクリル系樹脂(A)の分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は、20以下であることが好ましく、特に好ましくは15以下、更に好ましくは10以下である。
かかる分散度が高すぎるとリワーク性や耐久性が低下する傾向がある。なお、かかる分散度の下限は通常1である。
【0062】
上記重量平均分子量(Mw)は、標準ポリスチレン分子量換算による重量平均分子量であり、高速液体クロマトグラフ(Waters社製、「Waters 2695(本体)」と「Waters 2414(検出器)」)に、カラム:Shodex GPC KF-806L(排除限界分子量:2×107、分離範囲:100~2×107、理論段数:10,000段/本、充填剤材質:スチレン-ジビニルベンゼン共重合体、充填剤粒径:10μm)の3本を直列にして用いることにより測定される。また、数平均分子量も同様の方法で測定され、数平均分子量と重量平均分子量より分散度(重量平均分子量/数平均分子量)が求められる。
【0063】
上記アクリル系樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)は、-100~0℃であることが好ましく、特に好ましくは-70~-20℃、更に好ましくは-65~-30℃である。かかるガラス転移温度が高すぎると、反り抑制が低下する傾向があり、低すぎると後述する帯電防止剤であるイオン性化合物(D)が動きやすくブリードして耐久性が低下する傾向がある。
【0064】
なお、上記ガラス転移温度(Tg)は下記のFoxの式より算出されるものである。
【数1】
【0065】
即ち、アクリル系樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)とは、アクリル系樹脂(A)を構成するそれぞれのモノマーをホモポリマーとした際のガラス転移温度および重量分率をFoxの式に当てはめて算出した値である。
なお、アクリル系樹脂(A)を構成するモノマーのホモポリマーとした際のガラス転移温度は、通常、示差走査熱量計(DSC)により測定されるものであり、JIS K7121-1987や、JIS K 6240に準拠した方法で測定することができる。
【0066】
アクリル系樹脂(A)は溶媒等により粘度調整され、アクリル系樹脂(A)溶液として、本発明の粘着剤組成物に用いられる。かかるアクリル系樹脂(A)溶液の粘度としては、取扱い易さの点から500~20000mPa・sであることが好ましく、特に好ましくは1000~18000mPa・s、更に好ましくは2000~15000mPa・sである。
かかる粘度が高すぎると流動性が低下して取り扱いにくくなる傾向にあり、低すぎると粘着剤としたときに塗工が困難となる傾向がある。
【0067】
上記アクリル系樹脂(A)溶液の粘度は、25℃に調温した樹脂溶液を、B型粘度計を用いた回転粘度系法により測定する。
【0068】
本発明の粘着剤組成物は、上記アクリル系樹脂(A)に、シランカップリング剤(B)を含有するものである。
【0069】
<シランカップリング剤(B)>
シランカップリング剤(B)は、構造中に、反応性官能基と、ケイ素原子と結合したアルコキシ基とをそれぞれ1つ以上含有する有機ケイ素化合物である。
【0070】
上記シランカップリング剤(B)中の反応性官能基としては、例えば、エポキシ基、(メタ)アクリロイル基、メルカプト基、水酸基、カルボキシ基、アミノ基、アミド基、イソシアネート基等が挙げられ、これらのなかでも、耐久性やリワーク性に優れる点からエポキシ基、メルカプト基が好ましく、エポキシ基が特に好ましい。
【0071】
上記シランカップリング剤(B)中の反応性官能基の含有割合としては、3000g/mol以下であることが好ましく、1500g/mol以下がより好ましく、800g/mol以下が更に好ましい。上記範囲であれば、耐久性およびリワーク性のバランスに優れる傾向にある。
【0072】
上記シランカップリング剤(B)中のアルコキシ基としては、耐久性と保存安定性の点から炭素数1~8のアルコキシ基を含有することが好ましく、なかでもメトキシ基、エトキシ基を含有することが特に好ましく、メトキシ基を含有することが殊に好ましい。
【0073】
なお、上記シランカップリング剤(B)は、反応性官能基およびケイ素原子と結合したアルコキシ基以外の有機官能基、例えば、アルキル基、フェニル基等を有していてもよい。
【0074】
上記シランカップリング剤(B)は、リワーク性および耐久性の点から重量平均分子量500以上のものが好ましく、更には1000~30000、特には1500~20000のものが好ましい。かかる重量平均分子量が上記範囲にあるとリワーク性と耐久性のバランスに優れる傾向にある。
【0075】
なお、上記シランカップリング剤(B)の重量平均分子量は、標準ポリスチレン分子量換算による重量平均分子量であり、下記の方法により測定できる。
・装置:ゲル浸透クロマトグラフ
・検出器:示差屈折率検出器RI(東ソー社製、RI-8020型、感度32)
・カラム:TSKgel guardcolumn HHR-H(1本)(東ソー社製、φ6mm×4cm)、TSKgel GMHHR-N(2本)(東ソー社製、φ7.8mm×30cm)
・溶媒:テトラヒドロフラン(THF)
・カラム温度:23℃
・流速:1.0mL/分
【0076】
本発明の粘着剤組成物においては、シランカップリング剤(B)として、重量平均分子量が3000以上のオリゴマー型シランカップリング剤(b1)を含有するものである。
【0077】
本発明において、上記「オリゴマー型シランカップリング剤」とは、有機ケイ素化合物の一部が加水分解して重縮合した2量体、3量体等のオリゴマー型の有機ケイ素化合物(オルガノシロキサン化合物)を意味し、オリゴマー型シランカップリング剤を用いることで、リワーク性および耐久性に優れたものとなる。
【0078】
上記オリゴマー型シランカップリング剤としては、例えば、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン等のメルカプト基含有シラン化合物の一部が加水分解し重縮合したメルカプト基含有オリゴマー型シランカップリング剤、上記メルカプト基含有シラン化合物と、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン等のアルキル基含有シラン化合物との共縮合物であるメルカプト基含有オリゴマー型シランカップリング剤;
γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、メチルトリ(グリシジル)シラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ基含有シラン化合物の一部が加水分解し重縮合したエポキシ基含有オリゴマー型シランカップリング剤;
上記エポキシ基含有シラン化合物と、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン等のアルキル基含有シラン化合物との共縮合物であるエポキシ基含有オリゴマー型シランカップリング剤;これらエポキシ基含有オリゴマー型シランカップリング剤の一部をエーテル変性したエポキシ基含有オリゴマー型シランカップリング剤;
等が挙げられる。
これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0079】
上記オリゴマー型シランカップリング剤(b1)の重量平均分子量は、高温高湿環境下における耐久性、リワーク性および反り抑制に優れる点から、3000以上であり、好ましくは4000~50000、より好ましくは5000~20000である。オリゴマー型シランカップリング剤(b1)の重量平均分子量が小さすぎると、リワーク性が低下し、重量平均分子量が大きすぎると、樹脂との相溶性が低下することで耐久性が低下する。
【0080】
上記オリゴマー型シランカップリング剤(b1)としては、アルコキシ基含有量が1~50重量%であることが好ましく、特には3~30重量%が好ましく、更には5~15重量%であることが耐久性およびリワーク性のバランスに優れる点で好ましい。
【0081】
上記オリゴマー型シランカップリング剤(b1)としては、具体的には、市販品である信越化学工業社製のシランカップリング剤「X-24-9590」、「X-41-1805」、「X-24-9589」等が挙げられる。
【0082】
また、本発明においては、上記重量平均分子量3000以上のオリゴマー型シランカップリング剤(b1)と重量平均分子量3000未満のオリゴマー型シランカップリング剤(b2)とを併用することが、貼り合わせ直後の粘着力、高温高湿環境下における耐久性、リワーク性および反り抑制に優れる点から好ましい。
【0083】
上記オリゴマー型シランカップリング剤(b2)の重量平均分子量は、3000未満が好ましく、より好ましくは1000~2800、特に好ましくは1500~2500である。オリゴマー型シランカップリング剤(b2)の重量平均分子量が大きすぎると、初期粘着力とリワークのバランスが崩れる傾向があり、重量平均分子量が小さすぎるとリワーク性が低下する傾向がある。
【0084】
上記オリゴマー型シランカップリング剤(b2)としては、具体的には、市販品である信越化学工業社製のシランカップリング剤「X-41-1059A」、「X-41-1818」、「X-41-1810」等が挙げられる。
【0085】
上記シランカップリング剤(B)の含有量は、アクリル系樹脂(A)100重量部に対して、0.001~3重量部であることが好ましく、特に好ましくは0.005~1重量部、更に好ましくは0.01~0.5重量部、殊に好ましくは0.015~0.3重量部である。かかる含有量が少なすぎるとリワーク性が低下する傾向があり、多すぎるとシランカップリング剤(B)がブリードして耐久性が低下する傾向がある。
【0086】
上記オリゴマー型シランカップリング剤(b1)の含有量は、アクリル系樹脂(A)100重量部に対して、0.001~3重量部であることが好ましく、特に好ましくは0.005~0.5重量部、更に好ましくは0.01~0.4重量部、殊に好ましくは0.015~0.2重量部である。かかる含有量が少なすぎるとリワーク性が低下する傾向があり、多すぎるとオリゴマー型シランカップリング剤(b1)がブリードして耐久性が低下する傾向がある。
【0087】
上記オリゴマー型シランカップリング剤(b2)の含有量は、アクリル系樹脂(A)100重量部に対して、0.001~1重量部であることが好ましく、特に好ましくは0.005~0.5重量部、更に好ましくは0.01~0.3重量部、殊に好ましくは0.015~0.1重量部である。かかる含有量が少なすぎるとリワーク性が低下する傾向があり、多すぎるとオリゴマー型シランカップリング剤(b2)がブリードして耐久性が低下する傾向がある。
【0088】
また、上記オリゴマー型シランカップリング剤(b1)とオリゴマー型シランカップリング剤(b2)とを併用する場合の重量配合比率〔(b1)/(b2)〕は、通常99/1~1/99であり、好ましくは80/20~40/60、より好ましくは70/30~50/50である。
【0089】
<架橋剤(C)>
本発明の粘着剤組成物には、基材との密着性を向上させたり、粘着剤の耐久性を向上させたりする点で更に、架橋剤(C)を含有することが好ましい。
【0090】
上記架橋剤(C)とは、アクリル系樹脂(A)中の官能基と反応し、架橋構造を形成させるものであり、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤、メラミン系架橋剤、アルデヒド系架橋剤、アミン系架橋剤、金属キレート系架橋剤等が挙げられる。これらのなかでも基材との密着性を向上させる点やアクリル系樹脂(A)との反応性に優れる点で、イソシアネート系架橋剤を用いることが好ましい。
上記架橋剤(C)は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0091】
上記イソシアネート系架橋剤としては、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート等のトリレンジイソシアネート系架橋剤、1,3-キシリレンジイソシアネート等のキシリレンジイソシアネート系架橋剤、ジフェニルメタン-4,4-ジイソシアネート等のジフェニルメタン系架橋剤、1,5-ナフタレンジイソシアネート等のナフタレンジイソシアネート系架橋剤等の芳香族系イソシアネート系架橋剤;イソホロンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、4,4'-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソプロピリデンジシクロヘキシル-4,4'-ジイソシアネート、1,3-ジイソシアナトメチルシクロヘキサン、ノルボルナンジイソシアネート等の脂環族系イソシアネート系架橋剤;ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族系イソシアネート系架橋剤;および上記イソシアネート系化合物のアダクト体、ビュレット体、イソシアヌレート体等が挙げられる。
【0092】
これらイソシアネート系架橋剤のなかでも、トリレンジイソシアネート系架橋剤がポットライフと耐久性の点で好ましく、キシリレンジイソシアネート系架橋剤またはイソシアヌレート骨格含有イソシアネート系架橋剤がエージング時間短縮の点で好ましく、芳香環非含有イソシアネート系架橋剤が耐黄変性の点で好ましい。これらの中で具体的には、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンのアダクト体、およびヌレート体が、耐久性、ポットライフ、架橋速度のバランスに優れている点で好ましい。
【0093】
上記エポキシ系架橋剤としては、例えば、ビスフェノールA・エピクロルヒドリン型のエポキシ樹脂、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエリスリトール、ジグリセロールポリグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0094】
上記アジリジン系架橋剤としては、例えば、テトラメチロールメタン-トリ-β-アジリジニルプロピオネート、トリメチロールプロパン-トリ-β-アジリジニルプロピオネート、N,N'-ジフェニルメタン-4,4'-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)、N,N'-ヘキサメチレン-1,6-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)等が挙げられる。
【0095】
上記メラミン系架橋剤としては、例えば、へキサメトキシメチルメラミン、ヘキサエトキシメチルメラミン、ヘキサプロポキシメチルメラミン、ヘキサプトキシメチルメラミン、ヘキサペンチルオキシメチルメラミン、ヘキサヘキシルオキシメチルメラミン、メラミン樹脂等が挙げられる。
【0096】
上記アルデヒド系架橋剤としては、例えば、グリオキザール、マロンジアルデヒド、スクシンジアルデヒド、マレインジアルデヒド、グルタルジアルデヒド、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド等が挙げられる。
【0097】
上記アミン系架橋剤としては、例えば、ヘキサメチレンジアミン、トリエチルジアミン、ポリエチレンイミン、ヘキサメチレンテトラアミン、ジエチレントリアミン、トリエチルテトラアミン、イソホロンジアミン、アミノ樹脂、ポリアミド等が挙げられる。
【0098】
上記金属キレート系架橋剤としては、例えば、アルミニウム、鉄、銅、亜鉛、スズ、チタン、ニッケル、アンチモン、マグネシウム、パナジウム、クロム、ジルコニウム等の多価金属とアセチルアセトンやアセトアセチルエステルとの配位化合物等が挙げられる。
【0099】
このような上記架橋剤(C)を用いる場合、その含有量は、アクリル系樹脂(A)100重量部に対して、0.005~30重量部であることが好ましく、特に好ましくは0.01~10重量部、更に好ましくは0.03~5重量部、殊に好ましくは0.05~3重量部である。かかる含有量が少なすぎると、耐久性が低下しやすい傾向があり、多すぎると応力緩和性が低下して基板が反りやすくなったり、長時間のエージングが必要となったりする傾向がある。
【0100】
<イオン性化合物(D)>
本発明の粘着剤組成物は、静電気対策の点から、更にイオン性化合物(D)を含有することが好ましい。
イオン性化合物(D)はカチオン成分とアニオン成分とからなる化合物であり、カチオン成分として有機カチオンまたは無機カチオン、アニオン成分として有機アニオンまたは無機アニオンの組み合わせからなる化合物である。上記イオン性化合物(D)は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0101】
有機カチオンとしては、例えば、ピリジニウムカチオン、ピペリジニウムカチオン、ピロリジニウムカチオン、ピロリン骨格を有するカチオン、ピロール骨格を有するカチオン、イミダゾリウムカチオン、テトラヒドロピリミジニウムカチオン、ジヒドロピリミジニウムカチオン、ピラゾリウムカチオン、ピラゾリニウムカチオン、テトラアルキルアンモニウムカチオン、トリアルキルスルホニウムカチオン、テトラアルキルホスホニウムカチオン等が挙げられる。
無機カチオンとしては、アルカリ金属カチオンが帯電防止性能の点で好ましく、特にはリチウムカチオンが好ましい。
カチオン成分のなかでも有機カチオンが好ましく、特に樹脂との相溶性の点で窒素含有有機カチオンが好ましく、アクリル系樹脂(A)との相溶性の点でテトラアルキルアンモニウムカチオン、ピリジニウムカチオン、イミダゾリウムカチオンが好ましい。
【0102】
アニオン成分としては、例えば、Cl-、Br-、I-、AlCl4
-、Al2Cl7
-、BF4
-、PF6
-、ClO4
-、NO3
-、CH3COO-、CF3COO-、CH3SO3
-、CF3SO3
-、(CF3SO2)3C-、AsF6
-、SbF6
-、NbF6
-、TaF6
-、(C2O4)2B-、SCN-、(CN)2N-、C4F9SO3
-、C3F7COO-、(CF3SO2)(CF3CO)N-、や下記一般式(1)~(4)で表わされるもの等が用いられる。
(1):(CnF2n+1SO2)2N- (但し、nは1~10の整数)
(2):CF2(CmF2mSO2)2N- (但し、mは1~10の整数)
(3):O3S(CF2)lSO3
- (但し、lは1~10の整数)
(4):(CpF2p+1SO2)N-(CqF2q+1SO2)(但し、p、qは1~10の整数)
上記のなかでも特に、フッ素原子を含むアニオンが好ましく、更にはフッ素含有スルホニウムアニオン、フッ素含有イミドアニオン、フッ素含有スルホニルイミドアニオンが帯電防止性能や耐久性、アクリル系樹脂(A)との相溶性の点で好ましい。
【0103】
本発明で用いるイオン性化合物(D)としては、アクリル系樹脂(A)との相溶性の点から窒素含有オニウム塩が好ましく、耐熱性に優れる点からアルカリ金属塩が好ましく挙げられるが、このような塩を構成するカチオン成分およびアニオン成分としては、上記カチオン成分と上記アニオン成分との組み合わせから適宜選択して用いられる。
【0104】
上記イオン性化合物(D)として第四級アンモニウム塩が好ましく、第四級アンモニウム塩の具体例としては、例えば、トリブチルメチルアンモニウムN,N-ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、テトラブチルアンモニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラペンチルアンモニウムブロミド、テトラオクチルアンモニウムブロミド、エチルジメチルプロピルアンモニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、n-ブチルトリメチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、メチルトリオクチルアンモニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、トリブチルメチルアンモニウムメチルスルフェート、トリブチルメチルアンモニウムメチルサルフェート、テトラブチルアンモニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、テトラエチルアンモニウムトリフルオロメタンスルホネート、テトラブチルアンモニウムベンゾエート、テトラブチルアンモニウムメタンスルフェート、テトラブチルアンモニウムノナフルオロブタンスルホネート、テトラ-n-ブチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェート、テトラブチルアンモニウムトリフルオロアセテート、テトラヘキシルアンモニウムテトラフルオロボレート、テトラヘキシルアンモニウムブロミド等が挙げられる。
【0105】
帯電防止性能と耐久性のバランスの点からは、上記イオン性化合物(D)のアニオン成分がフッ素含有アニオンであるイオン性化合物が好ましく、なかでも特に、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(東京化成工業社製)、リチウムN,N-ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(三光化学社製)、トリブチルメチルアンモニウムN,N-ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(スリーエム社製)が好ましく用いられ、特にはトリブチルメチルアンモニウムN,N-ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドが好ましく用いられる。
【0106】
また、イオン性化合物(D)のカチオン成分が、アンモニウム系イオン性化合物の場合、アルキルアンモニウムカチオンであることが好ましく、アクリル系樹脂(A)との相溶性に優れる点で、アルキル鎖の炭素数が1~6のアルキル基を有するアルキルアンモニウムカチオンが、特に好ましい。一方、上記カチオン成分が、アルカリ金属塩の場合、リチウムカチオン、ナトリウムカチオン、カリウムカチオン等であることが好ましく、耐湿熱性に特に優れる点でリチウムカチオンが特に好ましい。
【0107】
また、上記イオン性化合物(D)の融点としては、0℃以上であり、より好ましくは10℃~550℃、特に好ましくは20℃~500℃、更に好ましくは25℃~450℃である。かかる範囲の融点であれば、高温時に重合性マクロモノマー(a2)によるアクリルポリマーの分子鎖の拘束を低下させにくく耐久性が良好となる。
【0108】
上記イオン性化合物(D)を用いる場合、その含有量は、アクリル系樹脂(A)100重量部に対して1~20重量部であり、特に好ましくは1.5~15重量部、更に好ましくは2~12重量部である。
かかるイオン性化合物(D)の含有量が少なすぎると、帯電防止性能が低くなり静電気によるタッチパネルの誤作動や液晶セルの表示ムラが発生しやすくなる傾向があり、多すぎると粘着剤層が可塑化したり、ブリードしたりして耐久性が低下する傾向がある。
【0109】
<その他の任意成分>
更に、本発明の粘着剤組成物には、本発明の効果を損なわない範囲において、その他の任意成分として、樹脂成分、アクリルモノマー、重合禁止剤、腐食防止剤、架橋促進剤、ラジカル発生剤、過酸化物、ラジカル捕捉剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、可塑剤、顔料、安定化剤、充填剤等の各種添加剤、金属および樹脂粒子等を配合することができる。また、上記の他にも、粘着剤組成物の構成成分の製造原料等に含まれる不純物等が少量含有されたものであってもよい。
【0110】
上記その他の任意成分を用いる場合、その含有量は、アクリル系樹脂(A)100重量部に対して、5重量部以下であることが好ましく、特に好ましくは1重量部以下、更に好ましくは0.5重量部以下である。かかる含有量が多すぎるとアクリル系樹脂(A)との相溶性が低下し耐久性が低下する傾向にある。
【0111】
かくしてアクリル系樹脂(A)、シランカップリング剤(B)、好ましくは更に、架橋剤(C)、イオン性化合物(D)、更に必要に応じてその他の任意成分を混合することにより、本発明の粘着剤組成物を得ることができる。
【0112】
なお、混合方法については、特に限定されるものではなく、各成分を一括で混合する方法や、任意の成分を混合した後、残りの成分を一括または順次混合する方法等、種々の方法を採用することができる。
【0113】
本発明の粘着剤組成物は、硬化(架橋)させることにより粘着剤とすることができ、更に、かかる粘着剤からなる粘着剤層を光学部材(光学積層体)上に積層形成することにより、粘着剤層付き光学部材を得ることができる。
上記粘着剤層付き光学部材には、粘着剤層の光学部材面とは逆の面に、更に離型シートを設けることが好ましい。
【0114】
上記粘着剤層付き光学部材の製造方法としては、例えば、下記の〔1〕、〔2〕の方法等が挙げられる。
〔1〕光学部材上に、粘着剤組成物を塗工、乾燥した後、離型シートを貼合し、常温(23℃)または加温状態の少なくとも一方でのエージングによる処理を行う方法。
〔2〕離型シート上に、粘着剤組成物を塗工、乾燥した後、光学部材を貼合し、常温または加温状態の少なくとも一方でのエージングによる処理を行う方法。
これらのなかでも、〔2〕の方法で、常温状態でエージングする方法が、光学部材を傷めない点、光学部材との接着性に優れる点で好ましい。
なお、上記において、光学部材としては、偏光板である場合に特に有効であるが、光学部材以外の被着体に粘着剤層を形成する場合にも上記方法を用いることができる。
【0115】
かかるエージング処理は、粘着剤の化学架橋の反応時間として、粘着物性のバランスをとるために行うものであり、エージングの条件としては、温度は20~70℃、時間は通常1~30日間であり、具体的には、例えば23℃で1~20日間、23℃で3~10日間、40℃で1~7日間等の条件で行えばよい。
【0116】
上記粘着剤組成物の塗工に際しては、この粘着剤組成物を溶媒に希釈して塗工することが好ましく、希釈濃度としては、固形分濃度が、好ましくは5~60重量%、特に好ましくは10~30重量%である。
【0117】
また、上記溶媒としては、粘着剤組成物を溶解させるものであれば特に限定されることなく、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル等のエステル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒、メタノール、エタノール、プロピルアルコール等のアルコール系溶媒を用いることができる。これらのなかでも、溶解性、乾燥性、価格等の点から酢酸エチル、メチルエチルケトンが好適に用いられる。
これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0118】
また、上記粘着剤組成物の塗工に関しては、ロールコーティング、ダイコーティング、グラビアコーティング、コンマコーティング、スクリーン印刷等の慣用の方法により行われる。
【0119】
上記方法により製造される粘着剤層のゲル分率については、耐久性能と偏光度低下抑制の点から30~98重量%であることが好ましく、特に好ましくは35~95重量%、更に好ましくは50~90重量%である。ゲル分率が低すぎると高温環境下で粘着剤層に発泡が生じる傾向にあり、高すぎると浮きや剥がれが生じやすくなる傾向にある。
【0120】
上記ゲル分率は、架橋度(硬化度合い)の目安となるもので、例えば、以下の方法にて算出される。すなわち、光学部材、とりわけ偏光板等の基材に粘着剤層が形成されてなる粘着フィルムから粘着剤をピッキングにより採取し、粘着剤を200メッシュのSUS製金網で包み、23℃に調整した酢酸エチル中に24時間浸漬することにより、酢酸エチル浸漬前の粘着剤の重量に対する、金網中に残存した不溶解の粘着剤成分の重量百分率をゲル分率(%)とする。
【0121】
上記方法により製造される粘着剤層は、指で触れたときに程好いタック感があった方が、実際に被着体に貼る際に濡れ性がよいため、作業性が上がる傾向があり好ましい。
【0122】
本発明の粘着剤組成物を用いて得られる粘着剤層の電気特性としては、表面抵抗率が低いことが静電気対策として好ましく、より好ましくは1.0×1010Ω/cm2以下、特に好ましくは8.0×109Ω/cm2以下、更に好ましくは5.0×109Ω/cm2以下、殊に好ましくは4.0×109Ω/cm2以下である。かかる表面抵抗率が、高すぎると、粘着剤が帯電しやすく液晶表示用途として使用した際に静電気による表示ムラが発生しやすくなる傾向にある。
【0123】
本発明において、粘着剤層付き光学部材、とりわけ粘着剤層付き偏光板は、直接、あるいは離型シートを有するものは離型シートを剥がした後、粘着剤層面をガラス基板に貼合して、例えば液晶表示板に供されるものである。
【0124】
本発明の粘着剤組成物は、高温環境下においても高い耐久性を示し、更にリワーク性と反り抑制を両立できる粘着剤を得ることができるものであり、光学部材用粘着剤、特には偏光板とガラス基板等を貼り合わせる偏光板用粘着剤として有用である。
【0125】
偏光板を構成する保護フィルムとしては、トリアセチルセルロース系フィルム、アクリル系フィルム、ポリエチレン系フィルム、ポリプロピレン系フィルム、シクロオレフィン系フィルム等が挙げられ、本発明はいずれの保護フィルムを用いた偏光板に対しても好適に用いられるが、特には、シクロオレフィン系フィルムを用いて積層された偏光板が本発明の効果が得られやすい点で好ましい。
【0126】
また、上記粘着剤を用いることにより、偏光板と液晶セルとを貼り合わせて液晶表示装置等の画像表示装置を作製することができ、得られる画像表示装置は、精度よく作製でき、耐久性に優れるようになる。
【実施例】
【0127】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。なお、例中、「部」、「%」とあるのは、重量基準を意味する。
【0128】
[重合性マクロモノマー]
実施例に先立って重合性マクロモノマーとして、以下のものを用意した。
なお、重合性マクロモノマーの数平均分子量、分散度に関しては、前述の方法に従って測定した。
【0129】
また、ガラス転移温度を算出する際の、各モノマーのホモポリマーとした時のガラス転移温度は下記値を用いた。
・メチルメタクリレート(MMA)・・・105℃
【0130】
(重合性マクロモノマー1)
ポリメチルメタクリレートを成分とするアクリル系マクロモノマー(三菱ケミカル社製、PMMA=100%、数平均分子量8900、分散度1.86、計算ガラス転移温度105℃)
【0131】
(重合性マクロモノマー2)
ポリメチルメタクリレートを成分とするアクリル系マクロモノマー(三菱ケミカル社製、PMMA=100%、数平均分子量3700、分散度1.73、計算ガラス転移温度105℃)
【0132】
<アクリル系樹脂>
次に下記の製造方法に従いアクリル系樹脂(A)または(A’)を製造した。各アクリル系樹脂の組成を後記の表1に示す。なお、アクリル系樹脂(A)または(A’)の重量平均分子量、分散度、ガラス転移温度に関しては、前述の方法に従って測定した。
また、粘度の測定に関しては、JIS K5400(1990)の4.5.3回転粘度計法に準じて測定した。
【0133】
〔アクリル系樹脂(A-1)の製造〕
還流冷却器、撹拌器、窒素ガスの吹き込み口および温度計を備えた4ツ口丸底フラスコに、2-ヒドロキシエチルアクリレート(a1)8部、上記用意した重合性マクロモノマー1(a2)1部、n-ブチルアクリレート(a3)90.3部、アクリル酸(a4)0.7部、酢酸エチル30部、アセトン42部、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.01部を仕込み、内温を沸点まで上昇させて反応を開始させた。次いでAIBNを0.04%含む酢酸エチル溶液を30部滴下しながら還流温度で3.25時間反応させた後、酢酸エチルにて希釈してアクリル系樹脂(A-1)溶液(固形分24.9%、粘度12050mPa・s/25℃、アクリル系樹脂(A-1):重量平均分子量135万、分散度3.03)を得た。
【0134】
〔アクリル系樹脂(A-2)の製造〕
上記アクリル系樹脂(A-1)の製造方法において、2-ヒドロキシエチルアクリレート(a1)8部、上記用意した重合性マクロモノマー1(a2)2部、n-ブチルアクリレート(a3)89.3部、アクリル酸(a4)0.7部に変更した以外は同様に行い、アクリル系樹脂(A-2)溶液(固形分23.2%、粘度6620mPa・s/25℃、アクリル系樹脂(A-2):重量平均分子量127万、分散度3.55)を得た。
【0135】
〔アクリル系樹脂(A-3)の製造〕
上記アクリル系樹脂(A-1)の製造方法において、2-ヒドロキシエチルアクリレート(a1)8部、上記用意した重合性マクロモノマー2(a2)1部、n-ブチルアクリレート(a3)90.3部、アクリル酸(a4)0.7部に変更した以外は同様に行い、アクリル系樹脂(A-3)溶液(固形分23.7%、粘度4570mPa・s/25℃、アクリル系樹脂(A-3):重量平均分子量125万、分散度2.69)を得た。
【0136】
〔アクリル系樹脂(A’-1)の製造〕
上記アクリル系樹脂(A-1)の製造方法において、2-ヒドロキシエチルアクリレート(a1)8部、n-ブチルアクリレート(a3)91.3部、アクリル酸(a4)0.7部に変更した以外は同様に行い、アクリル系樹脂(A’-1)溶液(固形分20.5%、粘度5080mPa・s/25℃、アクリル系樹脂(A’-1):重量平均分子量133万、分散度4.30)を得た。
【0137】
上記で使用したモノマーは、下記メーカーのものを使用した。
・2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)(大阪有機化学社製、Tg-15℃)
・n-ブチルアクリレート(BA)(三菱ケミカル社製、Tg-56℃)
・アクリル酸(AAc)(三菱ケミカル社製、Tg106℃)
また、上記Tgは各モノマーのホモポリマーのTgである。
【0138】
【0139】
<シランカップリング剤(B)>
シランカップリング剤(B)として以下のものを用意した。
なお、シランカップリング剤(B)の重量平均分子量に関しては、前述の方法に従って測定した。また、アルコキシ基含有量、反応性官能基、エポキシ当量またはメルカプト当量、含有アルコキシ基については、断りのない限りカタログ値を採用した。
【0140】
(b1-1):「X-24-9590」:信越化学工業社製、含有反応性官能基:エポキシ基、官能基当量:592g/mol、含有アルコキシ基:メトキシ基、アルコキシ基含有量:9.5%、重量平均分子量:13700、分散度:3.44
(b2-1):「X-41-1059A」:信越化学工業社製、含有反応性官能基:エポキシ基、反応性官能基当量:350g/mol、含有アルコキシ基:メトキシ基およびエトキシ基、アルコキシ基含有量:42%、重量平均分子量:2270、分散度:1.86
【0141】
<架橋剤(C)>
架橋剤(C)として以下のものを用意した。
(C-1):トリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンのアダクト体(東ソー社製、コロネートL55E)
【0142】
<イオン性化合物(D)>
イオン性化合物(D)として以下のものを用意した。
(D-1):トリブチルメチルアンモニウムN,N-ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(スリーエム社製、FC-4400)
【0143】
<実施例1、2、および比較例1、2>
上記の成分を下記の表2の通りに配合し、酢酸エチルにて固形分濃度を15%に調整し、粘着剤組成物を得た。得られた各粘着剤組成物のゲル分率を下記の方法で測定した。結果を併せて下記の表2に示す。なお、表2において( )内の数値は、配合部を示す。
【0144】
<ゲル分率>
得られた粘着剤組成物を厚み38μmのポリエステル系離型シート(東レ社製、セラピールWZ)に乾燥後の厚みが20μmとなるように塗布し、100℃で3分間乾燥したのち、新たな厚み38μmのポリエステル系離型シートに貼り合せ、更に23℃×50%RHの環境下で7日間エージングすることで、基材レス両面粘着シートを得た。得られた基材レス両面粘着シートを40mm×40mmの大きさに裁断した後、一方の離型シートを剥がし、粘着剤層側を50mm×100mmの大きさのSUSメッシュシート(200メッシュ)に貼合した後、もう一方の離型シートを剥離し、SUSメッシュシートの長手方向に対して中央部より折り返してサンプルを包み込んだ後、酢酸エチル250gの入った密封容器にて24時間浸漬して、酢酸エチル浸漬前の粘着剤層の重量に対する、SUSメッシュシートに残存した不溶解の粘着剤層の重量百分率をゲル分率(%)とした。
【0145】
【0146】
上記で得られた粘着剤組成物を用いて、下記に従い粘着剤層付き偏光板を作製し、性能を評価した。評価結果を後記の表3に示す。
【0147】
〔粘着剤層付き偏光板[I]の作製〕
得られた粘着剤組成物を厚み38μmの離型シート(東レ社製、セラピールWZ)に乾燥後の厚みが20μmとなるように塗布し、100℃で3分間乾燥したのち、トリアセチルセルロース(TAC)系フィルムを両面に積層した偏光板の一方のTAC系フィルム表面に、離型シートと反対側の粘着剤層面を貼り合わせ、23℃×50%RHの環境下で7日間エージングし、粘着剤層付き偏光板[I]を得た〔層構成:離型シート/粘着剤層/TAC系フィルム1/偏光子/TAC系フィルム2〕。
なお、上記のTAC系フィルムはトリアセチルセルロース系フィルムであり、TAC系フィルム1の厚みは40μm、TAC系フィルム2の厚みは40μmである。
粘着剤層付偏光板[I]を用いて以下の評価を行った。
【0148】
<耐久性>
得られた粘着剤層付き偏光板[I]を165mm×97mmにカットし、離型シートを剥離して粘着剤層面を無アルカリガラス(コーニング社製、イーグルXG、厚み1.1mm)に押しつけ2kgローラーにて2往復して貼り合わせたのち、オートクレーブ処理(0.5MPa×50℃×20分間)を行い、耐久性試験用のサンプルを作製した。
【0149】
〔耐熱試験〕
得られたサンプルについて、耐熱性(85℃×300時間)の条件で暴露した後の偏光板について、以下の評価を行った。
(評価基準)
○・・・偏光板の全面に発泡もしくは端部に浮きが見られない
×・・・偏光板の全面に発泡もしくは端部に浮きが見られる
【0150】
<粘着力>
得られた粘着剤層付き偏光板[I]を25mm×100mmにカットし離型シートを剥離して、粘着剤層側を無アルカリガラス(コーニング社製「イーグルXG」、厚み1.1mm)に貼り合わせたのち、オートクレーブ処理(0.5MPa×50℃×20分間)を行い、23℃、50%RHの雰囲気下で24時間静置した後、剥離速度300mm/minで90度剥離強度(N/25mm)を測定した。
【0151】
<リワーク性>
得られた粘着剤層付き偏光板[I]を25mm×100mmにカットし離型シートを剥離して、粘着剤層側を無アルカリガラス(コーニング社製「イーグルXG」、厚み1.1mm)に貼り合わせたのち、オートクレーブ処理(0.5MPa×50℃×20分間)を行い、23℃、50%RHの雰囲気下で24時間静置した。
【0152】
(23℃×20日)
上記にて静置したサンプルを更に23℃、50%RHの雰囲気下で456時間静置した後、剥離速度300mm/minで90度剥離強度(N/25mm)を測定した。
(50℃×1日)
上記にて静置したサンプルを更に50℃の雰囲気下で24時間静置した後、23℃、50%RHの雰囲気下で剥離速度300mm/minで90度剥離強度(N/25mm)を測定した。
【0153】
<反り評価>
得られた粘着剤層付き偏光板[I]を165mm×97mmにカットし、離型シートを剥離して粘着剤層面をソーダガラス(日本テストパネル社製、厚み0.4mm)に貼り合わせたのち、オートクレーブ処理(0.5MPa×50℃×20分間)を行い、偏光板ソリ試験用のサンプルを作製した。
得られたサンプルについて、耐熱性(85℃×300時間)の条件で暴露した後、23℃、50%RHの雰囲気下で静置し、1時間後に平坦なガラス板上にサンプルを置き、サンプルの短辺の片側をガラス板に密着するように押さえ、押さえていない方のサンプルの先端とガラス板の間の距離を測定した。
【0154】
【0155】
上記結果より、重合性マクロモノマーが共重合されたアクリル系樹脂と所定のオリゴマー型シランカップリング剤を用いた実施例1、2では両立が難しかったリワーク性と反り抑制についてともに良好な結果となっているのに対して、オリゴマー型シランカップリング剤を含有していない比較例では実施例に比べて反り抑制も劣るものであるうえに、リワーク性も更に劣る結果となり、リワーク性と反り抑制を両立することができなかった。
【産業上の利用可能性】
【0156】
本発明の粘着剤組成物は、液晶表示装置の製造時に、偏光板(保護フィルム)と液晶セル(ガラス板)や導電層等の金属面との貼り合わせに用いる粘着剤として使用した際に、高温環境下においても耐久性に優れ、更に、リワーク性および偏光板の反り抑制に優れるため、ディスプレイやそれを構成する光学部品を貼り合わせるための光学部材用粘着剤、特に、偏光板と液晶セルのガラス基板、導電層を備えた基板等を貼り合わせるための偏光板用粘着剤として有用である。