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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】高圧ガス容器
(51)【国際特許分類】
   F17C 13/02 20060101AFI20231212BHJP
   F16K 37/00 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
F17C13/02 301Z
F16K37/00 D
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019214161
(22)【出願日】2019-11-27
(65)【公開番号】P2021085457
(43)【公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-11-21
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100108187
【弁理士】
【氏名又は名称】横山 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 雅博
【審査官】矢澤 周一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-117247(JP,A)
【文献】特開2013-200019(JP,A)
【文献】特開2005-172557(JP,A)
【文献】実開平02-120045(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 13/02
F16K 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧ガスの残量を測定するガス残量センサと、
前記高圧ガスの流出を開閉制御する弁であって、制御器による制御によって開閉される第1の弁と、手動操作によって開閉される第2の弁とが直列に接続された弁と、
前記第2の弁の開閉状態を測定する開閉センサと、を備え、
前記制御器は、測定された前記高圧ガスの残量の変化が、高圧ガスを使用可能な範囲として設定された基準範囲に無い場合に、前記第1の弁を閉じ、測定された前記高圧ガスの残量の変化が前記基準範囲にある場合であって、かつ前記第2の弁が閉状態である場合に、前記第1の弁を開くように制御する、
高圧ガス容器。
【請求項2】
高圧ガスの残量を測定するガス残量センサと、
前記高圧ガスの流出を開閉制御する弁と、
前記ガス残量センサに電力を供給する電池と、
前記電池の残量を測定する電池残量センサと、
測定された前記高圧ガスの残量の変化が、高圧ガスを使用可能な範囲として設定された基準範囲に無い場合に、前記弁を閉じるように制御し、測定された前記電池の残量が設定された閾値以上である場合にのみ、前記弁を手動操作によって開可能な状態に制御する制御器と、を備える、
高圧ガス容器。
【請求項3】
高圧ガス容器であって、
高圧ガスの残量を測定するガス残量センサと、
前記高圧ガスの流出を開閉制御する弁と、
前記高圧ガス容器の速度を測定する速度センサまたは加速度を測定する加速度センサと、
測定された前記高圧ガスの残量の変化が、高圧ガスを使用可能な範囲として設定された基準範囲に無い場合に、前記弁を閉じるように制御し、測定された前記高圧ガス容器の前記速度または前記加速度が、設定された条件を満たす場合にのみ、前記弁を手動操作によって開可能な状態に制御する制御器と、を備える、
高圧ガス容器。
【請求項4】
前記弁は、直列に接続された第1の弁と第2の弁とを含み、
前記第1の弁は、前記制御器による制御によって開閉され、
前記第2の弁は、手動操作によって開閉され、
前記制御器は、測定された前記高圧ガスの残量の変化が前記基準範囲にある場合に、前記第1の弁を開く、
請求項またはに記載の高圧ガス容器。
【請求項5】
前記制御器は、測定された前記高圧ガスの残量の変化する速度が、前記基準範囲として設定された閾値以下でない場合に、前記弁を閉じるように制御する、
請求項1から4のいずれか1項に記載の高圧ガス容器。
【請求項6】
前記ガス残量センサに供給する電力を外部から受ける受電端子をさらに備える、
請求項1からのいずれか1項に記載の高圧ガス容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧ガス容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、高圧ガス容器を管理する技術が開発されている。例えば、特許文献1には、所在情報等のガス容器に付属する情報を各種センサで測定し、測定結果を通信して集中的に管理するシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6356472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
高圧ガス容器に充填される高圧ガスには、高価なものや入手困難なものも含まれるため、誤ったラインへの高圧ガス容器の取付等による内容物の異常な流出を防止することが望まれている。異常な流出が生じる場合は種々あるが、例えば、同種のガスの場合、消費量の多い低純度ガス配管に、本来消費量の少ない高純度ガスの高圧ガス容器を誤って取付ても、配管側のシステムで異常を検知するのは難しい。
【0005】
このような問題に対して、特許文献1に開示された技術を適用しても、従来の高圧ガス容器では、高圧ガスの異常な流出を防止することが困難であった。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてこれを解決すべくなされたものであり、高圧ガスの異常な流出を防止することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下に示す構成を備える。
[1] 高圧ガスの残量を測定するガス残量センサと、
前記高圧ガスの流出を開閉制御する弁と、
測定された前記高圧ガスの残量の変化が、高圧ガスを使用可能な範囲として設定された基準範囲に無い場合に、前記弁を閉じるように制御する制御器と、を備える、
高圧ガス容器。
[2] 前記制御器は、測定された前記高圧ガスの残量の変化する速度が、前記基準範囲として設定された閾値以下でない場合に、前記弁を閉じるように制御する、
[1]に記載の高圧ガス容器。
[3] 前記弁は、直列に接続された第1の弁と第2の弁とを含み、
前記第1の弁は、前記制御器による制御によって開閉され、
前記第2の弁は、手動操作によって開閉され、
前記制御器は、測定された前記高圧ガスの残量の変化が前記基準範囲にある場合に、前記第1の弁を開く、
[1]または[2]に記載の高圧ガス容器。
[4] 前記第2の弁の開閉状態を測定する開閉センサをさらに備え、
前記制御器は、測定された前記高圧ガスの残量の変化が前記基準範囲にある場合であって、かつ前記第2の弁が閉状態である場合に、前記第1の弁を開く、
[3]に記載の高圧ガス容器。
[5] 前記ガス残量センサに電力を供給する電池と、
前記電池の残量を測定する電池残量センサと、をさらに備え、
前記制御器は、測定された前記電池の残量が設定された閾値以上である場合にのみ、前記弁を手動操作によって開可能な状態に制御する、
[1]から[4]のいずれか1つに記載の高圧ガス容器。
[6] 前記ガス残量センサに供給する電力を外部から受ける受電端子をさらに備える、
[1]から[4]のいずれか1つに記載の高圧ガス容器。
[7] 前記高圧ガス容器の速度を測定する速度センサまたは加速度を測定する加速度センサをさらに備え、
前記制御器は、測定された前記高圧ガス容器の前記速度または前記加速度が、設定された条件を満たす場合にのみ、前記弁を手動操作によって開可能な状態に制御する、
[1]から[6]のいずれか1つに記載の高圧ガス容器。
[8] 高圧ガス容器と制御装置とを備える制御システムであって、
前記高圧ガス容器は、
高圧ガスの残量を測定するガス残量センサと、
前記高圧ガスの流出を開閉制御する弁と、
前記ガス残量センサが測定した前記高圧ガスの残量を示すデータを送信し、前記弁の制御内容を示すデータを受信する通信器と、を備え、
前記制御装置は、
前記高圧ガスの残量を示すデータを取得する残量データ取得部と、
取得した前記データの示す前記高圧ガスの残量の変化が、高圧ガスを使用可能な範囲として設定された基準範囲に無い場合に、前記弁を閉じる制御内容を示すデータを送信する弁制御データ送信部と、を備える、
制御システム。
[9] 高圧ガスの残量を示すデータを取得する残量データ取得部と、
取得した前記データの示す前記高圧ガスの残量の変化が、高圧ガスを使用可能な範囲として設定された基準範囲に無い場合に、高圧ガス容器の弁を閉じる制御内容を示すデータを送信する弁制御データ送信部と、を備える、
制御装置。
[10] 高圧ガスの残量を測定し、
測定した前記高圧ガスの残量の変化が、高圧ガスを使用可能な範囲として設定された基準範囲に無い場合に、高圧ガス容器の弁を閉じる、
制御方法。
[11] コンピュータに、
高圧ガスの残量を示すデータを取得するステップと、
取得した前記データの示す前記高圧ガスの残量の変化が、高圧ガスを使用可能な範囲として設定された基準範囲に無い場合に、高圧ガス容器の弁を閉じる制御内容を示すデータを送信するステップと、
を実行させるためのプログラム。
【発明の効果】
【0008】
高圧ガスの異常な流出を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第一の実施形態に係る高圧ガス容器の外観側面の一例を示す図である。
図2】第一の実施形態に係る電磁弁と手動弁との関係の一例を示す図である。
図3】第一の実施形態に係る電磁弁の開閉制御の一例を示す図である。
図4】第一の実施形態に係る電気系統のハードウェア構成の一例を示す図である。
図5】第一の実施形態に係る制御器のハードウェア構成の一例を示す図である。
図6】第一の実施形態に係る制御器の機能の一例を示す図である。
図7】第一の実施形態に係る電磁弁の制御処理の一例を示すフローチャートである。
図8】第二の実施形態に係る電気系統のハードウェア構成の一例を示す図である。
図9】第二の実施形態に係る電磁弁の制御処理の一例を示すフローチャートである。
図10】第三の実施形態に係る手動操作電磁弁の一例を示す図である。
図11】第三の実施形態に係る電気系統のハードウェア構成の一例を示す図である。
図12】第三の実施形態に係る手動操作電磁弁の制御処理の一例を示すフローチャートである。
図13】第四の実施形態に係る高圧ガス容器の制御システムの概念図である。
図14】第四の実施形態に係る制御装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
図15】第四の実施形態に係る制御装置の機能の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第一の実施形態)
以下に、図面を参照して、本発明に係る高圧ガス容器の実施の形態について説明する。
【0011】
図1は、第一の実施形態に係る高圧ガス容器の外観側面の一例を示す図である。
【0012】
高圧ガス容器1は、高圧ガスを内部に充填するための容器である。容器の種類は、継目なし容器、溶接容器、ろう付け容器、繊維強化プラスチック複合容器(FRP(Fiber Reinforced Plastics)容器)等のいずれであっても良い。また、容器の形状は、シリンダ、カードル、タンクコンテナ等のいずれであっても良い。また、高純度の半導体製造用ガスや反応性の高いガスなど、ガスの種類に合わせ高圧ガス容器を種々選択することができる。
【0013】
具体的には、高圧ガス容器1は、電磁弁10と、手動弁20と、電池30と、ガス残量センサ40と、制御器50と、プロテクタ60と、スカート70と、を備える。
【0014】
電磁弁10は、内部に充填された高圧ガスの流出を電気的に開閉制御する弁(第1の弁)である。電磁弁10は、制御器50によって開閉制御される。
【0015】
手動弁20は、内部に充填された高圧ガスの流出を手動操作によって開閉制御する弁(第2の弁)である。
【0016】
電磁弁10と手動弁20とは、直列に接続されていて、ともに開状態となると高圧ガス容器1の内部のガスが外部に流出する。
【0017】
電池30は、ガス残量センサ40、制御器50等に電力を供給するための電池である。
【0018】
ガス残量センサ40は、高圧ガスの残量を測定するセンサである。具体的には、高圧ガス容器1の内容物に液体が含まれない場合には、ガス残量センサ40は、高圧ガス容器1の内部の圧力を計測して、高圧ガスの残量を取得する。
【0019】
また、高圧ガス容器1の内容物に液体が含まれる場合には、ガス残量センサ40は、液面レベルを測定して、高圧ガスの残量を取得しても良い。ガス残量センサ40として音波によって液面レベルを測定するセンサは、高圧ガス容器1の外側に配置できるため、ガス残量センサ40が腐食し難く、内容物が汚染し難いため、より好ましい。
【0020】
なお、圧力または液面レベルと、高圧ガスの残量との関係は、高圧ガス容器の形状、大きさに関連するパラメータとして、ガス残量センサ40にあらかじめ設定される。これによって、ガス残量センサ40は、測定した圧力または液面レベルを、高圧ガスの残量に変換する。
【0021】
制御器50は、電磁弁10の開閉を制御する機器である。制御器50についての詳細は、後述する。
【0022】
プロテクタ60は、電磁弁10、手動弁20等の高圧ガス容器の射出箇所を保護する保護材である。プロテクタ60の内側の面に、電池30および制御器50が取り付けられている。
【0023】
スカート70は、高圧ガス容器1の設置状態において、地面と接触する部分の腐食を防ぐための保護部品である。なお、ガスの射出箇所が設置状態において下側の場合には、スカート70の内側の面に、電池30および制御器50が取り付けられていても良い。
【0024】
また、電池30、制御器50、電磁弁10、ガス残量センサ40、それらを結ぶ電線等は、改造されにくくするために、高圧ガス容器1の外壁面から内側に埋没して配置されていても良い。
【0025】
図2は、第一の実施形態に係る電磁弁と手動弁との関係の一例を示す図である。図3は、第一の実施形態に係る電磁弁の開閉制御の一例を示す図である。
【0026】
電磁弁10は、アクチュエータ11と、ダイヤフラム12と、ボディ13と、を備える。
【0027】
アクチュエータ11は、ソレノイドアクチュエータ等であって、ソレノイド内に可動鉄芯が設置され、電流を流すことで発生する電磁力によって可動鉄芯を上下させて、ダイヤフラム12の押圧と解放を制御する。
【0028】
ダイヤフラム12は、Ni-Co合金やPTFE(polytetrafluoroethylene)等の金属や樹脂から形成された膜である。ダイヤフラム12は、アクチュエータ11によって押圧と解放を制御され、ボディ13に流れるガスの流出を制御する。
【0029】
ボディ13の内部にガスが流れ、電磁弁10が開状態となると、高圧ガス容器1に充填されたガスがボディ13の内部を通り、手動弁20に流出する。
【0030】
手動弁20は、ハンドル21と、ダイヤフラム22と、ボディ23と、を備える。
【0031】
ハンドル21は、ユーザの操作を受けて、ダイヤフラム22の押圧と解放を制御する。
【0032】
ダイヤフラム22は、Ni-Co合金やPTFE(polytetrafluoroethylene)等の金属や樹脂から形成された膜である。ダイヤフラム22は、ハンドル21によって押圧と解放を制御され、ボディ23に流れるガスの流出を制御する。
【0033】
ボディ23の内部にガスが流れ、電磁弁10が開状態になって、ボディ13の内部を通過して流出したガスは、手動弁20が開状態になると、高圧ガス容器1の外部に流出する。
【0034】
図3に示すように、電磁弁10が制御器50の制御によって(a)閉状態となると、アクチュエータ11の可動鉄芯がダイヤフラム12をボディ13に固定されたポリクロロトリフルオロエチレンやポリイミド等の樹脂製のシート14に押圧される。これによって、ガスの流出が抑制される。
【0035】
また、電磁弁10が制御器50の制御によって(b)開状態となると、シート14への押圧が解放されてダイヤフラム12の中心付近が持ち上がる。これによって、高圧ガス容器1に充填されていたガスが、手動弁20を介して外部に流出する。
【0036】
手動弁20についても、ハンドル21の操作によって、同様の仕組みでダイヤフラム22が制御される。
【0037】
図4は、第一の実施形態に係る電気系統のハードウェア構成の一例を示す図である。
【0038】
電池30は、ガス残量センサ40等と電線によって接続されている。電池30は、ガス残量センサ40等に電力を供給する。
【0039】
ガス残量センサ40は、制御器50と通信可能に接続されている。ガス残量センサ40は、測定して取得した高圧ガス容器1の残量データを制御器50に送信する。
【0040】
制御器50は、ガス残量センサ40および電磁弁10と通信可能に接続されている。制御器50は、ガス残量センサ40から取得した残量データに基づいて、電磁弁10の開閉を制御する。
【0041】
電磁弁10は、制御器50と通信可能に接続されている。電磁弁10は、制御器50による制御によって開閉する。
【0042】
図5は、第一の実施形態に係る制御器のハードウェア構成の一例を示す図である。
【0043】
制御器50は、プロセッサ501と、メモリ502と、インタフェース503と、を備える。
【0044】
プロセッサ501は、演算装置である。プロセッサ501は、メモリ502に格納されたプログラムを読み出して、読み出されたプログラムに規定された処理を実行することで、後述する各種の機能を実現する。
【0045】
メモリ502は、記憶装置である。メモリ502は、プロセッサ501の実行する処理に必要なデータを格納する。
【0046】
インタフェース503は、電磁弁10およびガス残量センサ40との間で通信するための通信器である。
【0047】
図6は、第一の実施形態に係る制御器の機能の一例を示す図である。
【0048】
制御器50は、記憶部51と、残量データ取得部52と、判定部53と、弁制御部54と、を備える。
【0049】
記憶部51は、制御器50の制御に必要な各種データを記憶する。具体的には、記憶部51は、使用可能範囲データ55を記憶する。
【0050】
使用可能範囲データ55は、ガスを使用可能な範囲として設定された基準範囲を示すデータである。具体的には、使用可能範囲データ55は、高圧ガスを使用可能な残量の変化の範囲を示すデータである。例えば、使用可能範囲データ55は、使用可能な残量の変化する速度の範囲によって示すデータであっても良い。
【0051】
残量データ取得部52は、ガス残量センサ40から残量データを取得する。
【0052】
判定部53は、残量データ取得部52が取得した残量データと、使用可能範囲データ55と、に基づいて、電磁弁10の開閉状態を判定する。
【0053】
弁制御部54は、判定部53の判定結果にしたがって、電磁弁10を開閉制御する。
【0054】
次に、高圧ガス容器1の動作について、図面を参照して説明する。
【0055】
図7は、第一の実施形態に係る電磁弁の制御処理の一例を示すフローチャートである。
【0056】
高圧ガス容器1の制御器50は、定期的に、例えば1分ごとに、電磁弁の制御処理を実行する。
【0057】
制御器50の残量データ取得部52は、高圧ガスの残量を示す残量データを取得する(ステップS11)。具体的には、残量データ取得部52は、ガス残量センサ40から残量データを受信する。
【0058】
ここで、ガス残量センサ40が、定期的に、例えば10秒ごとに残量データを制御器50に送信しても良いし、残量データ取得部52がガス残量センサ40に残量データの送信を要求する信号を送信し、その応答として、ガス残量センサ40が残量データを制御器50に送信しても良い。
【0059】
なお、残量データ取得部52は、例えば10秒ごとに残量データを取得する場合には、取得した複数の残量データに含まれる高圧ガスの残量を平均した値を、高圧ガスの残量としても良い。
【0060】
次に、判定部53は、残量データを取得できたか否かを判定する(ステップS12)。判定部53は、残量データを取得できなかったと判定すると(ステップS12:No)、弁制御部54は、電磁弁10を閉じる(ステップS15)。
【0061】
また、判定部53は、残量データを取得できたと判定すると(ステップS12:Yes)、高圧ガスの残量の変化が使用可能範囲内であるか否かをさらに判定する(ステップS13)。
【0062】
判定部53は、具体的には、継続して取得した残量データに基づいて、高圧ガスの残量の変化する速度を算出する。そして、判定部53は、記憶部51に格納された使用可能範囲データ55を取得して、高圧ガスの残量の変化が使用可能範囲データ55に規定された範囲内であるか否かを判定する。
【0063】
判定部53が、高圧ガスの残量の変化する速度を算出する対象の期間は、記憶部51にあらかじめ設定される。すなわち、判定部53は、残量の変化する速度をあらかじめ設定された期間の速度の平均値を算出する。設定された期間が短い場合、瞬間的な排出量を確認できるため、一気に高圧ガスが抜けるような異常状態を検知するのに適している。また、設定された期間が長い場合、記憶部51の記憶量等を節約できる。
【0064】
なお、設定された期間に合わせて、電磁弁の制御処理の実行間隔が調整されることが好ましい。例えば、設定された期間が1分である場合には、電磁弁の制御処理を1分ごとに実行することが好ましい。また、設定された期間が1時間である場合には、電磁弁の制御処理を1時間ごとに実行することが好ましい。ただし、設定された期間と、電磁弁の制御処理の実行間隔が同じである必要は無く、異なっていても良い。
【0065】
例えば、使用可能範囲データ55に、0.1(m/h)以下の速度と規定されている場合、高圧ガスの残量の変化する速度が0.08(m/h)である場合には、判定部53は、高圧ガスの残量の変化が使用可能範囲内であると判定する。
【0066】
また、高圧ガスの残量の変化する速度が0.12(m/h)の場合には、判定部53は、高圧ガスの残量の変化が使用可能範囲内でないと判定する。
【0067】
ここで、使用可能範囲データ55は、例えば、上限の速度を含んでも良く、複数の範囲の組み合わせであっても良い。また、特定の範囲を使用可能範囲から除外する指定を含んでいても良い。
【0068】
判定部53は、高圧ガスの残量の変化が使用可能範囲内でないと判定すると(ステップS13:No)、弁制御部54は、電磁弁10を閉じる(ステップS15)。
【0069】
具体的には、弁制御部54は、電磁弁10に閉信号を送信して、アクチュエータ11に電磁力を発生させて、ダイヤフラム12をシート14に押圧させる。これによって、高圧ガス容器1の内部のガスは、手動弁20に到達しない状態になる。
【0070】
また、判定部53が、高圧ガスの残量の変化が使用可能範囲内であると判定すると(ステップS13:Yes)、弁制御部54は、電磁弁10を開く(ステップS14)。
【0071】
具体的には、弁制御部54は、電磁弁10に開信号を送信して、アクチュエータ11に電磁力を発生させて、ダイヤフラム12にシート14への押圧を解放させる。これによって、高圧ガス容器1の内部のガスは、ボディ13を通過して、手動弁20に到達する。
【0072】
その後、手動弁20がユーザの操作によって開状態となると、手動弁20に到達していたガスが射出口から流出する。
【0073】
本実施形態に係る高圧ガス容器1によれば、高圧ガスの残量の変化が使用可能範囲内の場合には、手動弁20の操作によってガスが流出するのに対して、高圧ガスの残量の変化が使用可能範囲外の場合には、手動弁20の操作によっても電磁弁10が閉状態となるためにガスが流出しない。前述の高圧ガス容器1の誤ったガス配管への取り付けや、さらに高圧ガス容器1の内容物の盗難などにおいては、規定以上の速度で高圧ガスが排出されることが想定されるため、使用可能範囲を想定される速度に合わせることによって、そのような高圧ガスの異常な流出を防止することができる。
【0074】
本実施形態に係る高圧ガス容器1は、電磁弁10および手動弁20の組み合わせを複数備えていても良い。その場合、弁制御部54は、上述した電磁弁の制御処理のステップS14において電磁弁10を開く際には、すべての電磁弁10を開くように制御する。これによって、複数の電磁弁10のいずれかに不具合が生じて開かなくなっても、他の電磁弁10で代用可能である。
【0075】
(第二の実施形態)
以下に図面を参照して、第二の実施形態について説明する。第二の実施形態では、手動弁20が開状態の際には電磁弁10が開かないように制御する点が、第一の実施形態と相違する。以下の第二の実施形態の説明では、第一の実施形態との相違点について説明し、第一の実施形態と同様の機能構成を有するものには、第一の実施形態の説明で用いた符号と同様の符号を付与し、その説明を省略する。
【0076】
本実施形態に係る高圧ガス容器1は、開閉センサ80をさらに備える。開閉センサ80は、手動弁20の開閉状態を測定する機器である。
【0077】
図8は、第二の実施形態に係る電気系統のハードウェア構成の一例を示す図である。
【0078】
開閉センサ80は、電池30と電線によって接続されている。また、開閉センサ80は、制御器50と通信可能に接続されている。
【0079】
開閉センサ80は、電池30から電力の供給を受けて、手動弁20の開閉状態を測定する。そして、開閉センサ80は、測定結果を制御器50に送信する。具体的には、開閉センサ80は、定期的に、例えば10秒ごとに、手動弁の開閉状態を示す開閉データを制御器50に送信する。
【0080】
図9は、第二の実施形態に係る電磁弁の制御処理の一例を示すフローチャートである。
【0081】
本実施形態に係る電磁弁10の制御処理のステップS21からステップS23までは、第一の実施形態に係る電磁弁10の制御処理のステップS11からステップS13までと同じである。
【0082】
判定部53が、残量データを取得できなかったと判定した場合(ステップS22:No)、または高圧ガスの残量の変化が使用可能範囲内でないと判定した場合(ステップS23:No)、弁制御部54は、電磁弁10を閉じる(ステップS27)。
【0083】
判定部53は、高圧ガスの残量の変化が使用可能範囲内であると判定すると(ステップS23:Yes)、手動弁20の開閉状態を示す開閉データを取得する(ステップ24)。具体的には、開閉データが例えば10秒ごとに送信される場合には、判定部53は、最新の開閉データを取得する。
【0084】
次に、判定部53は、手動弁20が閉状態であるか否かを判定する(ステップS25)。判定部53は、手動弁20が閉状態でないと判定すると(ステップS25:No)、処理を終了する。
【0085】
また、判定部53が、手動弁20が閉状態であると判定すると(ステップS25:Yes)、弁制御部54は、電磁弁10を開く(ステップS26)。
【0086】
本実施形態に係る高圧ガス容器1によれば、手動弁20が開状態の時には、高圧ガスの残量の変化が使用可能範囲内でも電磁弁10は開かない。これによって、誤って手動弁20が開いている時に、電磁弁10が開くことによって、ユーザの予期しないタイミングでガスが流出するといった事態を回避することができる。
【0087】
また、高圧ガス容器1が高圧ガスの残量の変化が使用可能範囲内にある場合に、ユーザの操作によって手動弁20が開状態から閉状態になると、電磁弁10が開く。これによって、ユーザは、誤って手動弁20が開いている時であっても、手動弁20を閉めてから再び開くことによって、ガスを使用することができる。
【0088】
(第三の実施形態)
以下に図面を参照して、第三の実施形態について説明する。第三の実施形態では、電磁弁10と手動弁20の代わりに、手動操作電磁弁を備える点が、第一の実施形態と相違する。以下の第三の実施形態の説明では、第一の実施形態との相違点について説明し、第一の実施形態と同様の機能構成を有するものには、第一の実施形態の説明で用いた符号と同様の符号を付与し、その説明を省略する。
【0089】
本実施形態に係る高圧ガス容器1は、電磁弁10と手動弁20の代わりに、手動操作電磁弁90を備える。
【0090】
図10は、第三の実施形態に係る手動操作電磁弁の一例を示す図である。
【0091】
手動操作電磁弁90は、手動操作が可能な電磁弁である。具体的には、手動操作電磁弁90は、ハンドル91と、アクチュエータ92と、ダイヤフラム93と、ボディ94と、を備える。
【0092】
ハンドル91は、ユーザの操作を受けて、ダイヤフラム93の押圧と解放を制御する。
【0093】
アクチュエータ92は、ソレノイドアクチュエータ等であって、ソレノイド内に可動鉄芯が設置され、電流を流すことで発生する電磁力によって可動鉄芯を上下させて、ダイヤフラム93の押圧と解放を制御する。
【0094】
ダイヤフラム93は、Ni-Co合金やPTFE(polytetrafluoroethylene)等の金属や樹脂から形成された膜である。ダイヤフラム93は、ハンドル91およびアクチュエータ92によって押圧と解放を制御され、ボディ94に流れるガスの流出を制御する。
【0095】
より詳細には、ダイヤフラム93は、ハンドル91とアクチュエータ92の両方からの押圧を受けている。したがって、ハンドル91とアクチュエータ92のいずれかが押圧している間は、ダイヤフラム93は解放されず、ガスは流出しない。
【0096】
ハンドル91とアクチュエータ92のいずれも解放すると、ダイヤフラム93は解放され、ガスが流出する。
【0097】
したがって、手動操作電磁弁90は、制御器50によって開可能となった後に、ユーザによるハンドル91の操作によって、開状態となる。
【0098】
図11は、第三の実施形態に係る電気系統のハードウェア構成の一例を示す図である。
【0099】
手動操作電磁弁90は、制御器50と通信可能に接続されている。制御器50の制御によって、手動操作電磁弁90は、開不能な状態から、手動操作によって開可能な状態に移行する。
【0100】
図12は、第三の実施形態に係る手動操作電磁弁の制御処理の一例を示すフローチャートである。
【0101】
本実施形態に係る手動操作電磁弁90の制御処理のステップS31からステップS33までは、第一の実施形態に係る電磁弁10の制御処理のステップS11からステップS13までと同じである。
【0102】
判定部53が、残量データを取得できなかったと判定した場合(ステップS32:No)、または高圧ガスの残量の変化が使用可能範囲内でないと判定した場合(ステップS33:No)、弁制御部54は、手動操作電磁弁90を閉じる(ステップS35)。
【0103】
判定部53は、高圧ガスの残量の変化が使用可能範囲内であると判定すると(ステップS33:Yes)、弁制御部54は、手動操作電磁弁90を開可能にする(ステップS34)。
【0104】
本実施形態に係る高圧ガス容器1によれば、高圧ガスの残量の変化が使用可能範囲内の場合には、手動操作電磁弁90の操作によってガスが流出するのに対して、高圧ガスの残量の変化が使用可能範囲外の場合には、手動操作電磁弁90の操作によってもガスが流出しない。前述の高圧ガス容器1の誤ったガス配管への取り付けや、さらに高圧ガス容器1の内容物の盗難などにおいては、規定以上の速度で高圧ガスが排出されることが想定されるため、使用可能範囲を想定される速度に合わせることによって、そのような高圧ガスの異常な流出を防止することができる。
【0105】
また、手動操作電磁弁90は、手動操作が行われない限りは開かれない。したがって、例えば、高圧ガスの残量の変化が使用可能範囲内であっても、手動操作が行われない限りは、複数の弁の間にガスが流出することが無い。
【0106】
手動操作電磁弁90は、制御器50によって開可能とならなければ、手動操作によっても開かない例を示した。さらに、制御器50によって操作可能とならなければ、手動操作ができない、すなわちハンドル91が回転しないようにしても良い。このようにすれば、誤ってハンドル91によるダイヤフラム93の押圧を解放してしまうことが無い。
【0107】
(第四の実施形態)
以下に図面を参照して、第四の実施形態について説明する。第四の実施形態では、外部から電磁弁10が制御される点が、第一の実施形態と相違する。以下の第四の実施形態の説明では、第一の実施形態との相違点について説明し、第一の実施形態と同様の機能構成を有するものには、第一の実施形態の説明で用いた符号と同様の符号を付与し、その説明を省略する。
【0108】
図13は、第四の実施形態に係る高圧ガス容器の制御システムの概念図である。
【0109】
制御システム5は、無線LAN(Local Area Network)アクセスポイント2と、制御装置3と、ネットワーク4と、を備える。
【0110】
本実施形態に係る高圧ガス容器1は、無線機100をさらに備える。無線機100は、無線LANアクセスポイント2と無線通信を行う通信器である。また、無線LANアクセスポイント2は、ネットワーク4を介して制御装置3と通信可能に接続されている。
【0111】
無線LANアクセスポイント2は、無線LANを設定して、ネットワーク4に接続された機器と無線機100との間の通信を仲介する通信中継装置である。
【0112】
制御装置3は、残量データに基づいて、電磁弁10の制御内容を決定し、決定した制御内容を示す制御信号を、ネットワーク4および無線LANアクセスポイント2を介して高圧ガス容器1に送信する。
【0113】
図14は、第四の実施形態に係る制御装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【0114】
制御装置3は、CPU(Central Processing Unit)301、主記憶装置302、補助記憶装置303、入力装置304、表示装置305、通信インタフェース装置306、ドライブ装置307を備える。これらの各装置は、バスで接続されている。
【0115】
CPU301は、制御装置3の動作を制御する主制御部であり、主記憶装置302に格納されたプログラムを読み出して実行することで、後述する各種の機能を実現する。
【0116】
主記憶装置302は、制御装置3の起動時に補助記憶装置303からプログラムを読み出して格納する。補助記憶装置303は、インストールされたプログラムを格納すると共に、後述する各種機能に必要なファイル、データ等を格納する。
【0117】
入力装置304は、各種の情報の入力を行うための装置であり、例えばキーボードやポインティングデバイス等により実現される。表示装置305は、各種の情報の表示を行うためものであり、例えばディスプレイ等により実現される。通信インタフェース装置306は、LANカード等を含み、ネットワークに接続する為に用いられる。
【0118】
本実施形態に係るプログラムは、制御装置3を制御する各種プログラムの少なくとも一部である。プログラムは、例えば記憶媒体308の配布やネットワークからのダウンロード等によって提供される。プログラムを記録した記憶媒体308は、CD-ROM、フレキシブルディスク、光磁気ディスク等の様に情報を光学的、電気的或いは磁気的に記録する記憶媒体、ROM、フラッシュメモリ等の様に情報を電気的に記録する半導体メモリ等、様々なタイプの記憶媒体を用いることができる。
【0119】
また、プログラムは、プログラムを記録した記憶媒体308がドライブ装置307にセットされると、記憶媒体308からドライブ装置307を介して補助記憶装置303にインストールされる。ネットワークからダウンロードされたプログラムは、通信インタフェース装置306を介して補助記憶装置303にインストールされる。
【0120】
図15は、第四の実施形態に係る制御装置の機能の一例を示す図である。
【0121】
制御装置3は、記憶部31と、残量データ取得部32と、判定部33と、弁制御データ送信部34と、を備える。
【0122】
記憶部31は、制御装置3の制御に必要な各種データを記憶する。具体的には、記憶部31は、使用可能範囲データ35を記憶する。
【0123】
使用可能範囲データ35は、ガスを使用可能な範囲として設定された基準範囲を示すデータである。具体的には、使用可能範囲データ35は、高圧ガスを使用可能な残量の変化の範囲を示すデータである。例えば、使用可能範囲データ35は、使用可能な残量の変化する速度の範囲によって示すデータであっても良い。
【0124】
残量データ取得部32は、高圧ガス容器1のガス残量センサ40から残量データを取得する。
【0125】
判定部33は、残量データ取得部32が取得した残量データと、使用可能範囲データ35と、に基づいて、電磁弁10の開閉状態を判定する。
【0126】
弁制御データ送信部34は、判定部33の判定結果にしたがって、電磁弁10の開閉制御する制御内容を示す制御データを、高圧ガス容器1に送信する。
【0127】
本実施形態に係る制御装置3の動作は、第一の実施形態に係る電磁弁10の制御処理と同様である。したがって、第一の実施形態と同様に、本実施形態に係る高圧ガス容器1によれば、高圧ガスの残量の変化が使用可能範囲内の場合には、手動弁20の操作によってガスが流出するのに対して、高圧ガスの残量の変化が使用可能範囲外の場合には、手動弁20の操作によっても電磁弁10が閉状態であるためにガスが流出しない。前述の高圧ガス容器1の誤ったガス配管への取り付けや、さらに高圧ガス容器1の内容物の盗難などにおいては、規定以上の速度で高圧ガスが排出されることが想定されるため、使用可能範囲を想定される速度に合わせることによって、そのような高圧ガスの異常な流出を防止することができる。
【0128】
本実施形態に係る制御システム5によれば、複数の高圧ガス容器1の弁の制御を1つの制御装置3で実行することができる。したがって、使用可能範囲データ35および判定部33等の処理内容を規定したプログラムの作成、変更等のメンテナンスを制御装置3に行えば、高圧ガス容器1のメンテナンスを行うことなく、使用可能な場所の設定および変更が可能である。
【0129】
また、使用可能範囲データ35は、高圧ガス容器1を識別するための識別子を含み、識別子ごとに使用可能な範囲が異なっていても良い。このようにすれば、複数の高圧ガス容器1について、それぞれの使用可能な場所を、制御装置3において集中して管理することができる。
【0130】
上述した各実施形態において、高圧ガス容器1が種々のセンサを備え、ガス残量センサ40または開閉センサ80に加えて、他のセンサの測定結果に応じて、電磁弁10または手動操作電磁弁90の制御内容を決定しても良い。
【0131】
例えば、高圧ガス容器1は、電池残量センサ、速度センサ、加速度センサ等を備えても良い。
【0132】
電池残量センサは、電池30の残量を計測する。そして、電池30の残量があらかじめ設定された閾値以下の場合には、制御器50または制御装置3は、他のセンサの状態にかかわらず、電磁弁10を開く制御または手動操作電磁弁90を開可能とする制御を行わない。
【0133】
電池残量センサを併用して、電池30の残量があらかじめ設定された条件を満たす場合にのみ、電磁弁10を開く制御または手動操作電磁弁90を開可能とする制御を行うことによって、電池30の残量がなくなって、各センサが動作しない場合において、あやまって弁が開くことを防止することができる。
【0134】
また、速度センサは、高圧ガス容器1の速度を計測する。そして、加速度センサは、高圧ガス容器1の加速度を計測する。高圧ガス容器1の速度または加速度があらかじめ設定された閾値以上の場合には、制御器50または制御装置3は、他のセンサの状態にかかわらず、電磁弁10を開く制御または手動操作電磁弁90を開可能とする制御を行わない。
【0135】
速度センサまたは加速度センサを併用して、高圧ガス容器1の速度または加速度が設定された条件を満たす場合にのみ、電磁弁10を開く制御または手動操作電磁弁90を開可能とする制御を行うことによって、高圧ガス容器1の輸送中に、あやまって弁が開くことを防止することができる。
【0136】
上述した各実施形態において、高圧ガス容器1は、USB(Universal Serial Bus)端子等の充電端子をさらに備えても良い。これによって、電池30に充電することができる。
【0137】
上述した各実施形態において、高圧ガス容器1が電池30を備える代わりに、USB端子等の受電端子を備えても良い。この場合、ユーザは、外部から高圧ガス容器1に、受電端子を介して電力を供給して、高圧ガスを使用する。また、受電端子から電力が供給されていない場合には、制御器50または制御装置3は、他のセンサの状態にかかわらず、電磁弁10を開く制御または手動操作電磁弁90を開可能とする制御を行わないものとしても良い。
【0138】
上述した各実施形態における電池30、制御器50等は、専用のハードウェアでなく、汎用のコンピュータ等によって実現されても良い。例えば、これらはスマートフォンによっても代用可能である。スマートフォンにアプリケーションをインストールすることによって、スマートフォンが、制御器50の各種の処理を実行することができる。
【0139】
上述した各実施形態における電磁弁10と手動弁20との組み合わせは、1つの弁とみなすことができる。この場合、弁は、電磁弁10が開かれると、手動弁20の操作によって弁が開状態になる。したがって、電磁弁10が開かれることによって、弁は、手動操作によって開可能な状態となる。
【0140】
上述した各実施形態における電磁弁10または手動操作電磁弁90は、電気的な制御が可能な弁の一例である。これらをソレノイドアクチュエータによって制御する例を示したが、本発明の範囲はこれに限られない。例えば、空気圧による制御が可能な弁であっても良い。この場合、空気圧を電気的に制御することによって、間接的に弁の開閉が電気的に制御され得る。
【0141】
上述した各実施形態は、適宜組み合わせが可能である。例えば、第二の実施形態と、第四の実施形態と、を組み合わせることができる。具体的には、開閉センサ80の測定結果を示すデータを、制御装置3が受信する。そして、制御装置3は、第二の実施形態に係る電磁弁10の制御処理と同様の処理によって、電磁弁10の制御内容を示す制御データを、高圧ガス容器1に送信する。
【0142】
また、第三の実施形態と、第四の実施形態と、を組み合わせることができる。具体的には、制御装置3は、第三の実施形態に係る手動操作電磁弁90の制御処理と同様の処理によって、手動操作電磁弁90の制御内容を示す制御データを、高圧ガス容器1に送信する。
【0143】
以上、各実施形態に基づき本発明の説明を行ってきたが、上記実施形態に示した要件に本発明が限定されるものではない。これらの点に関しては、本発明の主旨をそこなわない範囲で変更することができ、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0144】
1 高圧ガス容器
2 無線LANアクセスポイント
3 制御装置
4 ネットワーク
5 制御システム
10 電磁弁
11,92 アクチュエータ
12,22,93 ダイヤフラム
13,23,94 ボディ
14 シート
20 手動弁
21 ハンドル
30 電池
31,51 記憶部
32,52 残量データ取得部
33,53 判定部
34 弁制御データ送信部
35,55 使用可能範囲データ
40 ガス残量センサ
50 制御器
54 弁制御部
60 プロテクタ
70 スカート
80 開閉センサ
90 手動操作電磁弁
100 無線機
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15