(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】コアシェル型はんだ粒子、コアシェル型はんだ粒子の製造方法、異方性導電フィルム、及び異方性導電フィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01B 13/00 20060101AFI20231212BHJP
H01R 11/01 20060101ALI20231212BHJP
H01B 5/00 20060101ALI20231212BHJP
H01B 1/22 20060101ALI20231212BHJP
H01B 5/16 20060101ALI20231212BHJP
B23K 35/26 20060101ALN20231212BHJP
B23K 35/30 20060101ALN20231212BHJP
C22C 13/00 20060101ALN20231212BHJP
C22C 5/02 20060101ALN20231212BHJP
C22C 12/00 20060101ALN20231212BHJP
C22C 28/00 20060101ALN20231212BHJP
H01L 21/60 20060101ALN20231212BHJP
【FI】
H01B13/00 501Z
H01R11/01 501C
H01B5/00 C
H01B1/22 B
H01B5/16
B23K35/26 310A
B23K35/26 310C
B23K35/26 310D
B23K35/30 310A
C22C13/00
C22C5/02
C22C12/00
C22C28/00 B
H01L21/92 604H
H01L21/60 311Q
(21)【出願番号】P 2019239512
(22)【出願日】2019-12-27
【審査請求日】2022-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【氏名又は名称】平野 裕之
(72)【発明者】
【氏名】宮地 勝将
(72)【発明者】
【氏名】赤井 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】江尻 芳則
(72)【発明者】
【氏名】畠 純一
【審査官】北嶋 賢二
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-258136(JP,A)
【文献】特開2012-091208(JP,A)
【文献】特開2014-143189(JP,A)
【文献】特開昭63-212094(JP,A)
【文献】特開2019-033060(JP,A)
【文献】特開2019-214714(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 13/00
H01R 11/01
H01B 5/00
H01B 1/22
H01B 5/16
B23K 35/26
B23K 35/30
C22C 13/00
C22C 5/02
C22C 12/00
C22C 28/00
H01L 21/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の凹部を有する基体とコア粒子とはんだ微粒子とを準備する準備工程と、
前記コア粒
子と前記はんだ微粒子の少なくとも一部とを、前記凹部
内に収容する収容工程と、
前記凹部
内に収容された前記はんだ微粒子を融合させて、前記凹部
内に収容された前記コア粒子の表面上にはんだ層を形成し、前記コア粒子と前記はんだ層とを備えるコアシェル型はんだ粒子を得る融合工程と、
を含み、
前記準備工程で準備される前記はんだ微粒子のC.V.値が、20%を超え、
前記コアシェル型はんだ粒子の平均粒子径が1~30μm、前記コアシェル型はんだ粒子のC.V.値が20%以下である、コアシェル型はんだ粒子の製造方法。
【請求項2】
前記準備工程で準備される前記コア粒子のC.V.値が、25%以下である、請求項
1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記準備工程で準備される前記コア粒子が、Cu、Ni、Au及びPdからなる群より選択される少なくとも一種を含む、請求項1
又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記準備工程で準備される前記コア粒子が、芯材と該芯材の表面を覆う金属層とを有する、請求項1~
3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記金属層が、前記芯材の表面を覆う第一金属層と当該第一金属層を覆う第二金属層と、を含む、請求項
4に記載の製造方法。
【請求項6】
前記第一金属層及び前記第二金属層からなる群より選択される少なくとも一つの層が、Pdを含む、請求項
5に記載の製造方法。
【請求項7】
前記融合工程の前に、前記凹部に収容された前記はんだ微粒子を還元雰囲気下に晒す還元工程を更に含む、請求項1~
6のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項8】
前記融合工程において、前記凹部に収容された前記はんだ微粒子を還元雰囲気下で融合させる、請求項1~
7のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項9】
前記準備工程で準備される前記はんだ微粒子が、スズ、スズ合金、インジウム及びインジウム合金からなる群より選択される少なくとも一種を含む、請求項1~
8のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項10】
前記準備工程で準備される前記はんだ微粒子が、In-Bi合金、In-Sn合金、In-Sn-Ag合金、Sn-Au合金、Sn-Bi合金、Sn-Bi-Ag合金、Sn-Ag-Cu合金及びSn-Cu合金からなる群より選択される少なくとも一種を含む、請求項
9に記載の製造方法。
【請求項11】
前記コアシェル型はんだ粒子が、表面の一部に平面部を有し、
前記コアシェル型はんだ粒子の直径Bに対する前記平面部の直径Aの比(A/B)が、0.1以上0.9以下である、請求項1~10のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項12】
コア粒子と、前記コア粒子を被覆するはんだ層と、を備え
るコアシェル型はんだ粒子であって、
平均粒子径が1μm~30μmであり、C.V.値が20%以下であ
り、
表面の一部に平面部を有し、
前記コアシェル型はんだ粒子の直径Bに対する前記平面部の直径Aの比(A/B)が、0.1以上0.9以下である、コアシェル型はんだ粒子。
【請求項13】
コアシェル型はんだ粒子の投影像に外接する四角形を二対の平行線により作成した場合において、対向する辺間の距離をX及びY(但しY<X)としたときに、X及びYが下記式を満たす、請求項12に記載のコアシェル型はんだ粒子。
0.8<Y/X<1.0
【請求項14】
前記はんだ層が、スズ、スズ合金、インジウム及びインジウム合金からなる群より選択される少なくとも一種を含む、請求項12又は13に記載のコアシェル型はんだ粒子。
【請求項15】
前記はんだ層が、In-Bi合金、In-Sn合金、In-Sn-Ag合金、Sn-Au合金、Sn-Bi合金、Sn-Bi-Ag合金、Sn-Ag-Cu合金及びSn-Cu合金からなる群より選択される少なくとも一種を含む、請求項12に記載のコアシェル型はんだ粒子。
【請求項16】
異方性導電フィルムであって、
絶縁性樹脂組成物から構成される絶縁性フィルムと、
前記絶縁性フィルム中に配置されている複数のコアシェル型はんだ粒子と、を含み、
前記コアシェル型はんだ粒子が、請求項12~15のいずれか一項に記載のコアシェル型はんだ粒子であり、
前記異方性導電フィルムの縦断面において、前記コアシェル型はんだ粒子が隣接する前記コアシェル型はんだ粒子と離隔した状態で横方向に並ぶように配置されている、異方性導電フィルム。
【請求項17】
複数の凹部を有する基体とコア粒子とはんだ微粒子とを準備する準備工程と、
前記コア粒
子と前記はんだ微粒子の少なくとも一部とを、前記凹部
内に収容する収容工程と、
前記凹部
内に収容された前記はんだ微粒子を融合させて、前記凹部
内に収容された前記コア粒子の表面上にはんだ層を形成し、前記コア粒子と前記はんだ層とを備えるコアシェル型はんだ粒子を前記凹部内に形成する融合工程と、
前記コアシェル型はんだ粒子が前記凹部に収容されている前記基体の、前記凹部の開口側に絶縁性樹脂組成物を接触させて、前記コアシェル型はんだ粒子が転写された第一の樹脂層を得る転写工程と、
前記コアシェル型はんだ粒子が転写された側の前記第一の樹脂層の表面上に、絶縁性樹脂組成物から構成される第二の樹脂層を形成することにより、異方性導電フィルムを得る積層工程と、
を含み、
前記準備工程で準備される前記はんだ微粒子のC.V.値が、20%を超え、
前記融合工程で形成される前記コアシェル型はんだ粒子の平均粒子径が1~30μm、C.V.値が20%以下である、
異方性導電フィルムの製造方法。
【請求項18】
前記コアシェル型はんだ粒子が、表面の一部に平面部を有し、
前記コアシェル型はんだ粒子の直径Bに対する前記平面部の直径Aの比(A/B)が、0.1以上0.9以下である、請求項17に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コアシェル型はんだ粒子、コアシェル型はんだ粒子の製造方法、異方性導電フィルム、及び異方性導電フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子情報機器の発達及び高度なネットワークの整備による情報受発手段の飛躍的な向上に伴い、半導体チップの実装形態は直径φ760-φ300μmのはんだボールを接続材料としたBGA(Ball Grid Alley)が主流になっている。
【0003】
今後、更なる高密度化、高速化及び高性能化が要求されるにつれて、従来のはんだボールでは対応できないことが明らかになってきている。その理由の一つは、I/O端子の増加に伴う電極の狭ピッチ化で、隣接するはんだボールの間隔が非常に狭いものとなり、わずかな変形でも互いに接触し、短絡するおそれがあることである。次世代高密度パッケージでは、多ピン化及び狭ピッチ化が進み、いずれは200~120μm以下のピッチが必要となると予測されている。そうなると、実装密度の高まりにより、チップサイズパッケージ(CSP)又はベアチップ実装での電極の信頼性の確保が重大な課題となる。その際に、半導体装置の入出力端子として用いられるのが、銅コアはんだボールである。銅コアはんだボールは、フリップチップ接合時に内部の銅コアがリフロー温度で溶融することがなく、チップとプリント基板(PCB)との距離が保たれ、高い接合信頼性を得られる。このようなはんだを最外層に有するコアシェル型のはんだ粒子は、これまで各種が開発されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、Cuを主成分とする直径1~1000μmの芯ボールの周りに、Sn系被膜を被覆し、芯ボールとSn系被膜の間に結晶質のNi系下地層を形成する技術が提案されている。また、特許文献2には、金属又は樹脂の表面に、ニッケル、チタン又はクロムを主成分とする第1の金属膜を形成し、第1の金属膜の外周に銅を主成分とする第2の金属膜を形成し、さらに第2の金属膜の外周に錫を主成分とする第3の金属膜を形成する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-75856号公報
【文献】特開2013-31864号公報
【文献】国際公開第2014/112541号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のコアシェル型はんだ粒子の製造方法では、コア粒子表面にめっき法によって金属層、はんだ層等を形成することが一般的であった。しかし、コア粒子の粒子径が50μmを下回る領域では、めっき法で金属層・はんだ層を析出させる場合、粒子同士の凝集が発生やすく、粒子同士が凝集力により接触しながら金属層・はんだ層が析出してしまい、複数の粒子が塊状となるめっき凝集が発生する場合があった。塊状物が存在すると、電極間接続の際、隣接する電極同士をブリッジする等して絶縁信頼性が低下してしまう。
【0007】
また、特にコア粒子の粒子径が30μmを下回ると凝集の傾向が一層激しくなり、従来の方法では量産性を維持することが困難であった。更に、金属層・はんだ層の厚みを厚くしようとすると、必然的にめっき凝集の確率があがり、良質な単分散したコアシェル型はんだ粒子の回収率が極端に悪化する傾向があった。
【0008】
更に、めっき法では、金属層・はんだ層に対する微量金属の添加が難しく、微量金属の正確な制御が困難という課題もある。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、小さい平均粒子径と狭い粒度分布とを両立し、安定した接続特性を有するコアシェル型はんだ粒子を、簡便かつ安定的に製造することが可能なコアシェル型はんだ粒子の製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、上記製造方法によって、小さい平均粒子径と狭い粒度分布とを両立し、安定した接続特性を有するコアシェル型はんだ粒子を提供することを目的とする。更に本発明は、上記コアシェル型はんだ粒子を含む異方性導電フィルム及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一側面は、複数の凹部を有する基体とコア粒子とはんだ微粒子とを準備する準備工程と、上記コア粒子の少なくとも一部と上記はんだ微粒子の少なくとも一部とを、上記凹部に収容する収容工程と、上記凹部に収容された上記はんだ微粒子を融合させて、上記凹部に収容された上記コア粒子の表面上にはんだ層を形成し、上記コア粒子と上記はんだ層とを備えるコアシェル型はんだ粒子を得る融合工程と、を含み、上記コアシェル型はんだ粒子の平均粒子径が1~30μm、上記コアシェル型はんだ粒子のC.V.値が20%以下である、コアシェル型はんだ粒子の製造法に関する。
【0011】
上記製造方法によれば、小さい平均粒子径と狭い粒度分布とを両立し、安定した接続特性を有するコアシェル型はんだ粒子を、簡便かつ安定的に製造することができる。上記製造方法では、コア粒子とはんだ微粒子とを凹部内に収納し、はんだ微粒子を融合させることでコア粒子の表面にはんだ層を形成している。このため、凹部内に収納するコア粒子及びはんだ微粒子の種類を変更することで、コア粒子とはんだ層との組み合わせを自在に変更できる。また、上記製造方法では、基体に形成された凹部を利用することで、収納されるはんだ微粒子の量を制御しやすく、はんだ層の厚みを制御しやすい。
【0012】
一態様において、上記準備工程で準備される上記はんだ微粒子のC.V.値は、20%を超えていてよい。このようなはんだ微粒子を用いることで、凹部へのはんだ微粒子の充填性が増し、凹部内のはんだ微粒子量のばらつきが抑えられ、コア粒子表面に形成されるはんだ層の厚みのばらつきがより抑制される。
【0013】
一態様において、上記準備工程で準備される上記コア粒子のC.V.値は、25%以下であってよい。これにより凹部内の空間に占めるコア粒子の体積にばらつきが少なくなり、凹部内の残りの空間に充填されるはんだ微粒子の量が均一化され、コア粒子表面に形成されるはんだ層の厚みのばらつきがより抑制される。
【0014】
一態様において、上記準備工程で準備される上記コア粒子は、Cu、Ni、Au及びPdからなる群より選択される少なくとも一種を含んでいてよい。Cu、Ni及びAuのいずれかを含むことで、電極間の接続の際により安定した電気接続抵抗が得られる傾向がある。また、Pdを含むことで、はんだ微粒子の融合時、及び、電極への実装時に、金属拡散による脆弱な金属間化合物の生成が抑制され、より安定した接続特性が得られやすくなる。
【0015】
一態様において、上記準備工程で準備される上記コア粒子は、芯材と該芯材の表面を覆う金属層とを有していてよい。
【0016】
一態様において、上記金属層は、上記芯材の表面を覆う第一金属層と当該第一金属層を覆う第二金属層と、を含んでいてよい。
【0017】
一態様において、上記第一金属層及び上記第二金属層からなる群より選択される少なくとも一つの層は、Pdを含む層であってよい。これにより、Pdを含む層が金属拡散を抑制するバリア層として機能し、はんだ微粒子の融合時、及び、電極への実装時に、金属拡散による脆弱な金属間化合物の生成が抑制され、より安定した接続特性が得られやすくなる。
【0018】
一態様に係る製造方法は、上記融合工程の前に、上記凹部に収容された上記はんだ微粒子を還元雰囲気下に晒す還元工程を更に含んでいてよい。これにより、はんだ微粒子表面の酸化被膜が還元又は除去され、融合工程におけるはんだ微粒子同士の融合がより容易となる。
【0019】
一態様に係る製造方法は、上記融合工程において、上記凹部に収容された上記はんだ微粒子を還元雰囲気下で融合させるものであってよい。これにより、はんだ微粒子表面の酸化被膜が還元又は除去され、はんだ微粒子同士の融合がより容易となる。
【0020】
一態様において、上記準備工程で準備される上記はんだ微粒子は、スズ、スズ合金、インジウム及びインジウム合金からなる群より選択される少なくとも一種を含んでいてよい。
【0021】
一態様において、上記準備工程で準備される上記はんだ微粒子は、In-Bi合金、In-Sn合金、In-Sn-Ag合金、Sn-Au合金、Sn-Bi合金、Sn-Bi-Ag合金、Sn-Ag-Cu合金及びSn-Cu合金からなる群より選択される少なくとも一種を含んでいてよい。
【0022】
本発明の他の一側面は、コア粒子と、前記コア粒子を被覆するはんだ層と、を備え、平均粒子径が1μm~30μmであり、C.V.値が20%以下である、コアシェル型はんだ粒子に関する。
【0023】
一態様に係るコアシェル型はんだ粒子は、コアシェル型はんだ粒子の投影像に外接する四角形を二対の平行線により作成した場合において、対向する辺間の距離をX及びY(但しY<X)としたときに、X及びYが下記式を満たすものであってよい。
0.8<Y/X<1.0
【0024】
一態様において、上記はんだ層は、スズ、スズ合金、インジウム及びインジウム合金からなる群より選択される少なくとも一種を含んでいてよい。
【0025】
一態様において、上記はんだ層は、In-Bi合金、In-Sn合金、In-Sn-Ag合金、Sn-Au合金、Sn-Bi合金、Sn-Bi-Ag合金、Sn-Ag-Cu合金及びSn-Cu合金からなる群より選択される少なくとも一種を含んでいてよい。
【0026】
本発明の更に他の一側面は、異方性導電フィルムに関する。この異方性導電フィルムは、絶縁性樹脂組成物から構成される絶縁性フィルムと、上記絶縁性フィルム中に配置されている複数のコアシェル型はんだ粒子と、を含む。ここで、上記コアシェル型はんだ粒子は、上述のコアシェル型はんだ粒子である。上記異方性導電フィルムの縦断面において、上記コアシェル型はんだ粒子は、隣接する上記コアシェル型はんだ粒子と離隔した状態で横方向に並ぶように配置されている。
【0027】
本発明の更に他の一側面は、複数の凹部を有する基体とコア粒子とはんだ微粒子とを準備する準備工程と、上記コア粒子の少なくとも一部と上記はんだ微粒子の少なくとも一部とを、上記凹部に収容する収容工程と、上記凹部に収容された上記はんだ微粒子を融合させて、上記凹部に収容された上記コア粒子の表面上にはんだ層を形成し、上記コア粒子と上記はんだ層とを備えるコアシェル型はんだ粒子を前記凹部内に形成する融合工程と、上記コアシェル型はんだ粒子が上記凹部に収容されている上記基体の、上記凹部の開口側に絶縁性樹脂組成物を接触させて、上記コアシェル型はんだ粒子が転写された第一の樹脂層を得る転写工程と、上記コアシェル型はんだ粒子が転写された側の上記第一の樹脂層の表面上に、絶縁性樹脂組成物から構成される第二の樹脂層を形成することにより、異方性導電フィルムを得る積層工程と、を含む。上記融合工程で形成される上記コアシェル型はんだ粒子の平均粒子径は1~30μmであり、C.V.値は20%以下である。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、小さい平均粒子径と狭い粒度分布とを両立し、安定した接続特性を有するコアシェル型はんだ粒子を、簡便かつ安定的に製造することが可能なコアシェル型はんだ粒子の製造方法が提供される。また、本発明によれば、上記製造方法によって、小さい平均粒子径と狭い粒度分布とを両立し、安定した接続特性を有するコアシェル型はんだ粒子が提供される。更に本発明によれば、上記コアシェル型はんだ粒子を含む異方性導電フィルム及びその製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】
図1(a)は基体の一例を模式的に示す平面図であり、
図1(b)は
図1(a)のIb-Ib線における断面図である。
【
図2】
図2(a)~(h)は基体の凹部の断面形状の例を模式的に示す断面図である。
【
図3】
図3は基体の凹部にコア粒子とはんだ微粒子が収容された状態を模式的に示す断面図である。
【
図4】
図4は基体の凹部にコアシェル型はんだ粒子が形成された状態を模式的に示す断面図である。
【
図5】
図5(a)は
図4における凹部の開口部と反対側からコアシェル型はんだ粒子を見た図であり、
図5(b)はコアシェル型はんだ粒子の投影像に外接する四角形を二対の平行線により作成した場合における、対向する辺間の距離X及びY(但しY≦X)を示す図である。
【
図6】
図6は本発明に係る異方性導電フィルムの第一実施形態を模式的に示す断面図である。
【
図7】
図7(a)は
図6に示すIIa-IIa線における模式的な横断面図であり、
図7(b)は第一実施形態の変形例を模式的に示す横断面図である。
【
図8】
図8(a)~(c)は第一実施形態に係る異方性導電フィルムの製造過程の一例を模式的に示す断面図である。
【
図9】
図9(a)~(c)は第二実施形態に係る異方性導電フィルムの製造過程の一例を模式的に示す断面図である。
【
図10】
図10(a)及び
図10(b)は異方性導電フィルムの製造過程の他の一例を模式的に示す断面図である。
【
図11】
図11は本発明に係る接続構造体の一部を拡大して示す図であって、はんだによって第一の電極と第二の電極が電気的に接続された状態の第一の例を模式的に示す断面図である。
【
図12】
図12は本発明に係る接続構造体の一部を拡大して示す図であって、はんだによって第一の電極と第二の電極が電気的に接続された状態の第二の例を模式的に示す断面図である。
【
図13】
図13は本発明に係る接続構造体の一部を拡大して示す図であって、はんだによって第一の電極と第二の電極が電気的に接続された状態の第三の例を模式的に示す断面図である。
【
図14】
図14は本発明に係る接続構造体の一部を拡大して示す図であって、はんだによって第一の電極と第二の電極が電気的に接続された状態の第四の例を模式的に示す断面図である。
【
図15】
図15は本発明に係る接続構造体の一部を拡大して示す図であって、はんだによって第一の電極と第二の電極が電気的に接続された状態の第五の例を模式的に示す断面図である。
【
図16】
図16は本発明に係る接続構造体の一部を拡大して示す図であって、はんだによって第一の電極と第二の電極が電気的に接続された状態の第六の例を模式的に示す断面図である。
【
図17】
図17(a)及び
図17(b)は、本発明に係る接続構造体の製造過程の第一の例を模式的に示す断面図である。
【
図18】
図18(a)及び
図18(b)は、本発明に係る接続構造体の製造過程の第二の例を模式的に示す断面図である。
【
図19】
図19(a)及び
図19(b)は、本発明に係る接続構造体の製造過程の第三の例を模式的に示す断面図である。
【
図20】
図20は、押圧及び加熱がなされる前の異方性導電フィルムのコアシェル型はんだ粒子の位置と、バンプ(電極)の位置との関係の第一の例を模式的に示す平面図である。
【
図21】
図21は、押圧及び加熱がなされる前の異方性導電フィルムのコアシェル型はんだ粒子の位置と、バンプ(電極)の位置との関係の第二の例を模式的に示す平面図である。
【
図22】
図22は、押圧及び加熱がなされる前の異方性導電フィルムのコアシェル型はんだ粒子の位置と、バンプ(電極)の位置との関係の第三の例を模式的に示す平面図である。
【
図23】
図23は、押圧及び加熱がなされる前の異方性導電フィルムのコアシェル型はんだ粒子の位置と、バンプ(電極)との関係の第四の例を模式的に示す平面図である。
【
図24】
図24は基体の凹部の断面形状の例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態について説明する。本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。なお、以下で例示する材料は、特に断らない限り、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0031】
<コアシェル型はんだ粒子の製造方法>
本実施形態に係るコアシェル型はんだ粒子の製造方法は、複数の凹部を有する基体とコア粒子とはんだ微粒子とを準備する準備工程と、コア粒子の少なくとも一部とはんだ微粒子の少なくとも一部とを凹部に収容する収容工程と、凹部に収容されたはんだ微粒子を融合させて、凹部に収容されたコア粒子の表面上にはんだ層を形成し、コア粒子とはんだ層とを備えるコアシェル型はんだ粒子を得る融合工程と、を含む。また、本実施形態に係る製造方法によって、平均粒子径が1~30μm、C.V.値が20%以下のコアシェル型はんだ粒子が製造される。
【0032】
以下、
図1~5を参照しながら、コアシェル型はんだ粒子の製造方法について説明する。
【0033】
まず、コア粒子12とはんだ微粒子111とを収容するための基体60を準備する。
図1(a)は基体60の一例を模式的に示す平面図であり、
図1(b)は
図1(a)に示すIb-Ib線における断面図である。
図1(a)に示す基体60は、複数の凹部62を有している。複数の凹部62は所定のパターンで規則的に配置されていてよい。この場合、後述の転写工程に基体60をそのまま用いることができる。
【0034】
基体60の凹部62は、凹部62の底部62a側から基体60の表面60a側に向けて開口面積が拡大するテーパ状に形成されていることが好ましい。すなわち、
図1(a)及び
図1(b)に示すように、凹部62の底部62aの幅(
図1(a)及び
図1(b)における幅a)は、凹部62の表面60aにおける開口の幅(
図1(a)及び
図1(b)における幅b)よりも狭いことが好ましい。そして、凹部62のサイズ(幅a、幅b、容積、テーパ角度及び深さ等)は、目的とするコアシェル型はんだ粒子1のサイズに応じて設定すればよい。
【0035】
なお、凹部62の形状は
図1(a)及び
図1(b)に示す形状以外の形状であってもよい。例えば、凹部62の表面60aにおける開口の形状は、
図1(a)に示すような円形以外に、楕円形、三角形、四角形、多角形等であってよい。
【0036】
また、表面60aに対して垂直な断面における凹部62の形状は、例えば、
図2に示すような形状であってよい。
図2(a)~(h)は、基体が有する凹部の断面形状の例を模式的に示す断面図である。
図2(a)~(h)に示すいずれの断面形状も、凹部62の表面60aにおける開口の幅(幅b)が、断面形状における最大幅となっている。これにより、凹部62内に形成されたコアシェル型はんだ粒子1が取り出しやすくなり、作業性が向上する。また、表面60aに対して垂直な断面における凹部62の形状は、例えば、
図24に示すように、
図2(a)~(h)に示す断面形状における壁面を傾斜させた形状であってもよい。
図24は、
図2(b)に示す断面形状の壁面を傾斜させた形状ということができる。
【0037】
基体60を構成する材料としては、例えば、シリコン、各種セラミックス、ガラス、ステンレススチール等の金属等の無機材料、並びに、各種樹脂等の有機材料を使用することができる。これらのうち、基体60は、はんだ微粒子の溶融温度で変質しない耐熱性を有する材質からなることが好ましい。また、基体60の凹部62は、フォトリソグラフ法等の公知の方法によって形成することができる。
【0038】
コア粒子は、その形状が球状であることが好ましい。球状であれば、接続するべき電極上に配置された時に、方向を気にせず配置出来るため、コアシェル型はんだ粒子1の使用制限が少なくなる。特に、コアシェル型はんだ粒子1を絶縁樹脂中に配置して、フィルム又はペースト等として使用する場合に、電極に対するコアシェル型はんだ粒子1の方向を気にせずとも、同じ性能を発揮しやすい点で、好ましい。
【0039】
コア粒子の平均粒子径は、製造されるコアシェル型はんだ粒子1の平均粒子径が1~30μmとなる範囲であればよく、例えば30μm未満であり、好ましくは25μm以下、より好ましくは20μm以下、さらに好ましくは15μm以下である。また、コア粒子の平均粒子径は、例えば1μm以上であり、好ましくは2μm以上、より好ましくは3μm以上、さらに好ましくは5μm以上である。
【0040】
コア粒子の平均粒子径は、サイズに合わせた各種方法を用いて測定することができる。例えば、動的光散乱法、レーザ回折法、遠心沈降法、電気的検知帯法、共振式質量測定法等の方法を利用できる。さらに、光学顕微鏡、電子顕微鏡等によって得られる画像から、粒子サイズを測定する方法を利用できる。具体的な装置としては、フロー式粒子像分析装置、マイクロトラック、コールターカウンター等が挙げられる。
【0041】
コア粒子は、粒子径のバラツキを表すC.V.値が25%以下であることが好ましく、20%以下であることがさらに好ましく、15%以下であることがより好ましく、10%以下であることが特に好ましい。
【0042】
コア粒子の材質は特に限定されず、樹脂材料、無機材料及びこれらの複合体が利用できる。コア粒子は、Cu、Ni、Au及びPdからなる群より選択される少なくとも一種を含んでもよい。
【0043】
樹脂材料としては、例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート等の(メタ)アクリル樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂;ポリイソブチレン樹脂;ポリブタジエン樹脂が挙げられる。樹脂材料として、例えば、架橋(メタ)アクリル粒子、架橋ポリスチレン粒子等も使用できる。また、樹脂材料の具体例としては、アクリル樹脂、ジビニルベンゼン-スチレン共重合体等が挙げられる。樹脂材料は、一種を単独で用いてよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0044】
無機材料としては、一般的な金属及びその合金等が利用できる。無機材料に利用できる金属材料としては、例えば、Cu、Ni、Co、Pt、Rh、Ru、Au、Ag、Sn、Fe、Zn、Al、Cr、Ti、Si等が挙げられる。無機材料としては、上述の金属材料の酸化物、炭化物、窒化物等も利用でき、例えば、SiO2、Al2O3、ZrO2、TiO2、Ti3O5、Fe2O3、TiC、SiC、ZrC、W2C、VC、B4C、AlN、Si3N4、ZrN、TiN、VN、BN等が利用できる。
【0045】
本実施形態では、溶融したはんだがコア粒子の最表面に濡れ広がってはんだ層を形成するため、コア粒子は、その表面がはんだに対して濡れ性が高い材料(例えば、Cu、Ni、Au、Ag、Pt、Pd、Rh、Ru等)であることが好ましい。
【0046】
コア粒子は、最表面に金属層を有していてよい。金属層としては、上述の金属材料、金属材料の合金、金属材料の酸化物、金属材料の炭化物、金属材料の窒化物等から構成されていてよい。
【0047】
コア粒子の最表面に形成される金属層の厚みは、特に限定されず、コアシェル型はんだ粒子全体の直径に対して適宜選択されてよい。金属層の厚みは、0.03μm以上が好ましく、0.05μm以上がより好ましく、0.1μm以上がさらに好ましく、0.3μm以上が特に好ましく、0.5μm以上が最も好ましい。これにより、金属層の部分的な欠損等が生じ難くなり、はんだの濡れ拡がりがより均一となる。
【0048】
コア粒子は、芯材と、当該芯材の表面を覆う金属層とを有することが好ましい。この場合、金属層にNi、Cu、Pd、Au等を選択すると、はんだが濡れ広がりやすく、均一でムラの無いはんだ層がより得られやすくなる。また、金属層が貴金属であると、貴金属表面が酸化しづらいため、はんだの濡れ広がりがより均一となり、特に好ましい。
【0049】
コア粒子の表面の金属層は、複層であると機能を分けることが出来るため好ましい。例えば、はんだが溶融する時に、金属層又は電極材料と合金化し、合金層を形成する場合がある。この合金層がはんだ材料よりも固く脆い場合、熱衝撃、外部からの外力による衝撃等によって破壊されてしまうことがある。このような現象を抑制するためには、合金化の制御のため、金属の拡散を抑制するバリア層を形成することが有効である。この観点から、金属層は、芯材の表面を覆う第一金属層と、第一金属層を覆う第二金属層とを有することが好ましい。第一金属層及び第二金属層からなる群より選択される少なくとも一つの層をPdを含む層(Pd層)とすると、Pd層が金属の拡散を抑制するバリア層として機能し、実装後の熱衝撃及び外部衝撃による実装部の破壊が抑制され、より安定した接続特性が得られるようになる。
【0050】
例えば、第一金属層をNi層、第二金属層をPd層とすると、Ni層がPd層表面のはんだを電極に押し付けて確実な接合を実現するとともに、Pd層が、Ni層のNi、はんだの主成分であるSn、電極を構成するCu、Au等の拡散を抑制するバリア層として働き、実装後の熱衝撃及び外部衝撃による実装部の破壊が抑制され、安定した接続特性を得ることができる。この場合、第二金属層であるPd層の厚さは、0.02μm以上が好ましく、0.05μm以上がより好ましく、0.08μm以上がさらに好ましく、0.1μm以上が特に好ましい。更に、第二金属層であるPd層の厚さが0.15μm以上あると、Sn、Au、Ni、Cu等の拡散を抑制するバリア層としての機能がより高まるため好ましい。
【0051】
準備工程で準備されるはんだ微粒子は、凹部62の表面60aにおける開口の幅(幅b)より小さい粒子径の微粒子を含むものであればよく、幅bより小さい粒子径の微粒子をより多く含むことが好ましい。例えば、はんだ微粒子は、粒度分布のD10粒子径が幅bより小さいことが好ましく、粒度分布のD30粒子径が幅bより小さいことがより好ましく、粒度分布のD50粒子径が幅bより小さいことが更に好ましい。
【0052】
はんだ微粒子の粒度分布は、サイズに合わせた各種方法を用いて測定することができる。例えば、動的光散乱法、レーザ回折法、遠心沈降法、電気的検知帯法、共振式質量測定法等の方法を利用できる。さらに、光学顕微鏡、電子顕微鏡等によって得られる画像から、粒子サイズを測定する方法を利用できる。具体的な装置としては、フロー式粒子像分析装置、マイクロトラック、コールターカウンター等が挙げられる。
【0053】
準備工程で準備されるはんだ微粒子のC.V.値は特に限定されないが、大小の微粒子の組み合わせによる凹部62への充填性が向上する観点から、C.V.値は高いことが好ましい。例えば、はんだ微粒子のC.V.値は、20%を超えていてよく、好ましくは25%以上、より好ましくは30%以上である。
【0054】
はんだ微粒子のC.V.値は、前述の方法によって測定された粒子径の標準偏差を平均粒子径(D50粒子径)で割った値に100を掛けることで算出される。
【0055】
はんだ微粒子は、スズ又はスズ合金を含むものであってよい。スズ合金としては、例えば、In-Sn合金、In-Sn-Ag合金、Sn-Au合金、Sn-Bi合金、Sn-Bi-Ag合金、Sn-Ag-Cu合金、Sn-Cu合金等を用いることができる。これらのスズ合金の具体例としては、下記の例が挙げられる。
・In-Sn(In52質量%、Bi48質量% 融点118℃)
・In-Sn-Ag(In20質量%、Sn77.2質量%、Ag2.8質量% 融点175℃)
・Sn-Bi(Sn43質量%、Bi57質量% 融点138℃)
・Sn-Bi-Ag(Sn42質量%、Bi57質量%、Ag1質量% 融点139℃)・Sn-Ag-Cu(Sn96.5質量%、Ag3質量%、Cu0.5質量% 融点217℃)
・Sn-Cu(Sn99.3質量%、Cu0.7質量% 融点227℃)
・Sn-Au(Sn21.0質量%、Au79.0質量% 融点278℃)
【0056】
はんだ微粒子は、インジウム又はインジウム合金を含むものであってもよい。インジウム合金としては、例えば、In-Bi合金、In-Ag合金等を用いることができる。これらのインジウム合金の具体例としては、下記の例が挙げられる。
・In-Bi(In66.3質量%、Bi33.7質量% 融点72℃)
・In-Bi(In33.0質量%、Bi67.0質量% 融点109℃)
・In-Ag(In97.0質量%、Ag3.0質量% 融点145℃)
【0057】
コアシェル型はんだ粒子の用途(使用時の温度)等に応じて、上記スズ合金又はインジウム合金を選択することができる。例えば、低温での融着に用いるコアシェル型はんだ粒子を得たい場合、In-Sn合金、Sn-Bi合金を採用すればよく、この場合、150℃以下で融着可能なcはんだ粒子が得られる。Sn-Ag-Cu合金、Sn-Cu合金等の融点の高い材料を採用した場合、高温放置後においても高い信頼性を維持可能なコアシェル型はんだ粒子を得ることができる。
【0058】
はんだ微粒子は、Ag、Cu、Ni、Bi、Zn、Pd、Pb、Au、Sb、Ge、P及びBから選ばれる一種以上を含んでもよい。これらの元素のうち、以下の観点からAg又はCuを含んでもよい。すなわち、はんだ微粒子がAg又はCuを含むことで、得られるコアシェル型はんだ粒子のはんだ層の融点を220℃程度まで低下させることができる、電極との接合強度に優れたコアシェル型はんだ粒子が得られることによってより良好な導通信頼性を得られる、という効果が奏される。
【0059】
はんだ微粒子のCu含有率は例えば0.05~10質量%であり、0.1~5質量%又は0.2~3質量%であってもよい。Cu含有率が0.05質量%以上であると、良好なはんだ接続信頼性を達成可能なはんだ層が得られやすくなる。また、Cu含有率が10質量%以下であると、融点が低く、濡れ性に優れたはんだ層が得られやすくなり、結果としてコアシェル型はんだ粒子による接合部の接続信頼性がより良好となりやすい。
【0060】
はんだ微粒子のAg含有率は例えば0.05~10質量%であり、0.1~5質量%又は0.2~3質量%であってもよい。Ag含有率が0.05質量%以上であれば、良好なはんだ接続信頼性を達成可能なはんだ層が得られやすくなる。また、Ag含有率が10質量%以下であると、融点が低く、濡れ性に優れたはんだ層が得られやすくなり、結果としてコアシェル型はんだ粒子による接合部の接続信頼性がより良好となりやすい。
【0061】
収容工程では、基体60の凹部62のそれぞれに、準備工程で準備したコア粒子及びはんだ微粒子を収容する。収容工程では、準備工程で準備したコア粒子及びはんだ微粒子を凹部62に同時に収容してもよく、コア粒子の収容後にはんだ微粒子を収容してもよく、はんだ微粒子の収容後にコア粒子を収容してもよい。より確実に複数の凹部62内でコアシェル型はんだ粒子を形成する観点からは、コア粒子を収容した後にはんだ微粒子を収容する方が、ムラが少なくなりやすいため好ましい。また、コア粒子を収容した後にはんだ微粒子を収容する方が、凹部62に収容されるはんだ微粒子の量が複数の凹部62の間でばらつきにくく、コア粒子表面に形成されるはんだ層の厚みが、粒子毎にばらつきにくいため好ましい。また、これにより、コアシェル型はんだ粒子の平均粒子径がより均一になり、C.V.値がより低くなる。
【0062】
収容工程は、準備工程で準備したコア粒子の全部を凹部62に収容する工程であってよく、準備工程で準備したコア粒子の一部(例えば、コア粒子のうち、凹部62の開口の幅bより小さいもの)を凹部62に収容する工程であってよい。
【0063】
収容工程は、準備工程で準備したはんだ微粒子の全部を凹部62に収容する工程であってよく、準備工程で準備したはんだ微粒子の一部(例えば、はんだ微粒子のうち、凹部62の開口の幅bより小さいもの)を凹部62に収容する工程であってよい。
【0064】
図3は、基体60の凹部62にコア粒子12とはんだ微粒子111が収容された状態を模式的に示す断面図である。
図3に示すように、複数の凹部62のそれぞれに、コア粒子12と複数のはんだ微粒子111が収容される。コア粒子12は、芯材12aと金属層12bとを有している。
【0065】
凹部62に収容されたはんだ微粒子111の量は、例えば、凹部62の容積から、コア粒子12の容積を差し引いた容積に対して50%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましく、70%以上であることが更に好ましく、80%以上であることがもっとも好ましい。これにより、収容量のばらつきが抑えられ、粒子径のバラツキが小さいコアシェル型はんだ粒子1が得られやすくなる。
【0066】
コア粒子12とはんだ微粒子111を凹部62に収容する方法は特に限定されない。収容方法は、乾式、湿式のいずれであってもよい。
【0067】
コア粒子12は、例えば、準備工程で準備したコア粒子12を基体60上に配置し、スキージを用いて基体60の表面60aを擦ることで、余分なコア粒子12を除去しつつ、凹部62内に十分なコア粒子12を収容することができる。余分なコア粒子12を除去する方法として、圧縮空気を吹き付ける、不織布又は繊維の束で基体60の表面60aを擦る、等の方法も挙げられる。これらの方法は、スキージと比べて物理的な力が弱いため、変形しやすいコア粒子12を扱う上で好ましい。また、これらの方法では、凹部62の開口から飛び出ているコア粒子12を凹部内に残すこともできる。
【0068】
はんだ微粒子111、例えば、準備工程で準備したはんだ微粒子111を基体60上に配置し、スキージを用いて基体60の表面60aを擦ることで、余分なはんだ微粒子111を除去しつつ、凹部62内に十分なはんだ微粒子111を収容することができる。凹部62の開口の幅bが凹部62の深さより大きい場合、凹部62の開口からはんだ微粒子111が飛び出す場合がある。スキージを用いると、凹部62の開口から飛び出ているはんだ微粒子111は除去される。余分なはんだ微粒子111を除去する方法として、圧縮空気を吹き付ける、不織布又は繊維の束で基体60の表面60aを擦る、等の方法も挙げられる。これらの方法は、スキージと比べて物理的な力が弱いため、変形しやすいはんだ微粒子111を扱う上で好ましい。また、これらの方法では、凹部62の開口から飛び出ているはんだ微粒子111を凹部62内に残すこともできる。
【0069】
融合工程は、凹部62に収容されたはんだ微粒子111を融合させて、凹部62の内部のコア粒子12表面にはんだ層1aを形成する工程である。
図4は、基体60の凹部62にコアシェル型はんだ粒子1が形成された状態を模式的に示す断面図である。凹部62に収容されたはんだ微粒子111は、溶融することでコア粒子12表面に濡れ広がり、表面張力によってコア粒子表面を覆い、はんだ層1aを形成する。このとき、凹部62の底部62aとの接触部では、溶融したはんだが底部62aに追従して平面部11を形成する。これにより、形成されるコアシェル型はんだ粒子1は、表面の一部に平面部11を有する形状となる。
【0070】
図5(a)は、
図4における凹部62の開口部と反対側からコアシェル型はんだ粒子1を見た図である。コアシェル型はんだ粒子1は、直径Bを有する球の表面の一部に直径Aの平面部11が形成された形状を有している。なお、
図4及び
図5(a)に示すコアシェル型はんだ粒子1は、凹部62の底部62aが平面であるため平面部11を有するが、凹部62の底部62aが平面以外の形状である場合は、底部62aの形状に対応した異なる形状の面を有するものとなる。
【0071】
凹部62に収容されたはんだ微粒子111を溶融させる方法としては、はんだ微粒子111をはんだの融点以上に加熱する方法が挙げられる。はんだ微粒子111は、酸化被膜の影響で融点以上の温度で加熱しても溶融しない場合や、濡れ拡がらない場合や、合一化しない場合がある。このため、はんだ微粒子111を還元雰囲気下に晒し、はんだ微粒子111の表面酸化皮膜を除去した後に、はんだ微粒子111の融点以上の温度に加熱することで、はんだ微粒子111を溶融させ、濡れ拡がり、合一化させることができる。また、はんだ微粒子111の溶融は、還元雰囲気下で行うことが好ましい。はんだ微粒子111をはんだ微粒子111の融点以上に加熱し、かつ還元雰囲気とすることで、はんだ微粒子111の表面の酸化被膜が還元され、はんだ微粒子111の溶融、濡れ拡がり、合一化が効率的に進行しやすくなる。
【0072】
還元雰囲気にする方法は、上述の効果が得られる方法であれば特に限定されず、例えば水素ガス、水素ラジカル、ギ酸ガス等を用いる方法がある。例えば、水素還元炉、水素ラジカル還元炉、ギ酸還元炉、又はこれらのコンベアー炉若しくは連続炉を用いることで、還元雰囲気下にはんだ微粒子111を溶融させることができる。これらの装置は、炉内に、加熱装置、不活性ガス(窒素、アルゴン等)を充填するチャンバー、チャンバー内を真空にする機構等を備えていてよく、これにより還元ガスの制御がより容易となる。また、チャンバー内を真空にできると、はんだ微粒子111の溶融及び合一化の後に、減圧によってボイドの除去を行うことができ、接続安定性に一層優れるコアシェル型はんだ粒子1を得ることができる。
【0073】
はんだ微粒子111の還元、溶解条件、温度、炉内雰囲気調整などのプロファイルは、はんだ微粒子111の融点、粒度、凹部サイズ、基体60の材質などを勘案して適宜設定されてよい。例えば、コア粒子12とはんだ微粒子111が凹部に充填された基体60を、炉内に挿入し、真空引きを行った後に、還元ガスを導入して、炉内を還元ガスで満たし、はんだ微粒子111の表面酸化被膜を除去した後、真空引きにて還元ガスを除去し、その後、はんだ微粒子111の融点以上に加熱して、はんだ微粒子111を溶解及び合一化させて、凹部62内のコア粒子12表面にはんだ層1aを形成した後、窒素ガスを充填してから炉内温度を室温に戻し、コアシェル型はんだ粒子1を得ることができる。また、例えば、コア粒子12とはんだ微粒子111が凹部に充填された基体60を、炉内に挿入し、真空引きを行った後に、還元ガスを導入して、炉内を還元ガスで満たし、炉内加熱ヒーターによりはんだ微粒子111を加熱して、はんだ微粒子111の表面酸化被膜を除去した後、真空引きにて還元ガスを除去し、その後、はんだ微粒子111の融点以上に加熱して、はんだ微粒子111を溶解及び合一化させて、凹部62内のコア粒子表面にはんだ層を形成した後、窒素ガスを充填してから炉内温度を室温に戻し、コアシェル型はんだ粒子1を得ることができる。還元雰囲気下で、はんだ微粒子111を加熱することで、還元力が増し、はんだ微粒子111の表面酸化皮膜の除去が容易になる利点がある。
【0074】
さらに、例えば、コア粒子12とはんだ微粒子111が凹部に充填された基体60を、炉内に挿入し、真空引きを行った後に、還元ガスを導入して、炉内を還元ガスで満たし、炉内加熱ヒーターにより基体60をはんだ微粒子111の融点以上に加熱して、はんだ微粒子111の表面酸化被膜を還元により除去すると同時にはんだ微粒子111を溶解及び合一化させて、凹部62内のコア粒子表面にはんだ層1aを形成し、真空引きにて還元ガスを除去し、さらにはんだ層1a内のボイドを減らした後、窒素ガスを充填してから炉内温度を室温に戻し、コアシェル型はんだ粒子1を得ることができる。この場合は、炉内温度の上昇、下降の調節がそれぞれ一回で良いため、短時間で処理出来る利点がある。
【0075】
上述の凹部62内にコアシェル型はんだ粒子1を形成した後に、もう一度炉内を還元雰囲気にして、除去し切れなかった表面酸化皮膜を除去する工程を加えてもよい。これにより、融合されずに残っていたはんだ微粒子111や、融合されずに残っていた酸化皮膜の一部などの残渣を減らすことができる。
【0076】
大気圧のコンベアー炉を用いる場合は、コア粒子12とはんだ微粒子111が凹部に充填された基体60を搬送用コンベアーに載せ、複数のゾーンを連続して通過させてコアシェル型はんだ粒子1を得ることができる。例えば、コア粒子12とはんだ微粒子111が凹部に充填された基体60を、一定の速度に設定したコンベアーに載せ、コア粒子12とはんだ微粒子111の融点より低い温度の窒素やアルゴンなどの不活性ガスが充満したゾーンを通過させ、続いてはんだ微粒子111の融点より低い温度のギ酸ガスなどの還元ガスが存在するゾーンを通過させて、はんだ微粒子111の表面酸化皮膜を除去し、続いてはんだ微粒子111の融点以上の温度の窒素やアルゴンなどの不活性ガスが充満したゾーンを通過させてはんだ微粒子111を溶融、合一化させ、続いて窒素やアルゴンなどの不活性ガスが充満した冷却ゾーンを通過させて、コアシェル型はんだ粒子1を得ることができる。例えば、はんだ微粒子111が凹部に充填された基体60を、一定の速度に設定したコンベアーに載せ、はんだ微粒子111の融点以上の温度の窒素やアルゴンなどの不活性ガスが充満したゾーンを通過させ、続いてはんだ微粒子111の融点以上の温度のギ酸ガスなどの還元ガスが存在するゾーンを通過させて、はんだ微粒子111の表面酸化皮膜を除去し、溶融、合一化させコア粒子表面に濡れ広がらせて、続いて窒素やアルゴンなどの不活性ガスが充満した冷却ゾーンを通過させて、コアシェル型はんだ粒子1を得ることができる。前記のコンベアー炉は、大気圧での処理が可能であることから、フィルム状の材料をロールトゥロールで連続的に処理することもできる。例えば、コア粒子12とはんだ微粒子111が凹部に充填された基体60の連続ロール品を作製し、コンベアー炉の入り口側にロール巻きだし機、コンベアー炉の出口側にロール巻き取り機を設置して、一定の速度で基体60を搬送し、コンベアー炉内の各ゾーンを通過させることで、凹部に充填されたはんだ微粒子111を融合させ、コアシェル型はんだ粒子1を得ることができる。
【0077】
形成されたコアシェル型はんだ粒子1は、基体60の凹部62に収容された状態で運搬・保管等してよく、凹部62から取り出して回収してもよい。また、基体60の表面60a上に樹脂材料を配置して、凹部62内のコアシェル型はんだ粒子1を樹脂材料に転写させてもよい。このとき、凹部62が規則的に配置されていると、樹脂材料上にコアシェル型はんだ粒子1を規則的に配置させることができる。
【0078】
本実施形態によれば、はんだ微粒子の材質及び形状によらず、均一なサイズのコアシェル型はんだ粒子を形成することができる。例えば、インジウム系はんだは、めっきによる析出が可能であるが、粒子状に析出させることは難しく、柔らかくて扱いが難しい。しかし、上記方法では、インジウム系はんだ微粒子を原料として用いることで、均一なはんだ層を有するインジウム系コアシェル型はんだ粒子を容易に製造することができる。また、形成されたコアシェル型はんだ粒子は、基体60の凹部62に収容された状態で取り扱うことができるため、コアシェル型はんだ粒子を変形させることなく運搬・保管等することができる。さらに、形成されたコアシェル型はんだ粒子は、単に基体60の凹部62に収容された状態であるため、取り出しが容易であり、コアシェル型はんだ粒子を変形させることなく回収・表面処理等を行うことができる。
【0079】
また、はんだ微粒子は、粒度分布にばらつきが大きくても、形状がいびつであってもよく、凹部62内に収容することができれば原料として好適に用いることができる。
【0080】
また、本実施形態の製造方法において、基体60は、リソグラフィー、機械加工等によって凹部62の形状を自在に設計できる。コアシェル型はんだ粒子1のサイズは凹部62に収容されるはんだ微粒子111の量に依存するため、凹部62の設計によりコアシェル型はんだ粒子1のサイズを自在に設計できる。
【0081】
(コアシェル型はんだ粒子)
本実施形態に係るコアシェル型はんだ粒子は、コア粒子と、コア粒子を被覆するはんだ層と、を備える。また、本実施形態に係るコアシェル型はんだ粒子は、平均粒子径が1μm~30μmであり、C.V.値が20%以下である。このようなコアシェル型はんだ粒子は小さい平均粒子径と狭い粒度分布とが両立されており、導電信頼性及び絶縁信頼性の高い異方性導電材料に適用する導電性粒子として好適に用いることができる。本実施形態に係るコアシェル型はんだ粒子は、上述の製造方法によって製造される。
【0082】
コアシェル型はんだ粒子の平均粒子径は、例えば30μm以下であり、好ましくは25μm以下、より好ましくは20μm以下、さらに好ましくは15μm以下である。また、コアシェル型はんだ粒子1の平均粒子径は、例えば1μm以上であり、好ましくは2μm以上、より好ましくは3μm以上、さらに好ましくは5μm以上である。
【0083】
コアシェル型はんだ粒子の平均粒子径は、サイズに合わせた各種方法を用いて測定することができる。例えば、動的光散乱法、レーザ回折法、遠心沈降法、電気的検知帯法、共振式質量測定法等の方法を利用できる。さらに、光学顕微鏡、電子顕微鏡等によって得られる画像から、粒子サイズを測定する方法を利用できる。具体的な装置としては、フロー式粒子像分析装置、マイクロトラック、コールターカウンター等が挙げられる。
【0084】
コアシェル型はんだ粒子のC.V.値は、より優れた導電信頼性及び絶縁信頼性を実現できる観点から、好ましくは20%以下、より好ましくは10%以下、更に好ましくは7%以下である。また、コアシェル型はんだ粒子のC.V.値の下限は特に限定されない。例えば、コアシェル型はんだ粒子のC.V.値は1%以上であってよく、2%以上であってもよい。
【0085】
コアシェル型はんだ粒子のC.V.値は、前述の方法によって測定された粒子径の標準偏差を平均粒子径で割った値に100を掛けることで算出される。
【0086】
コアシェル型はんだ粒子は、表面の一部に平面部が形成されていてよく、このとき当該平面部以外の表面は、球冠状であることが好ましい。すなわち、コアシェル型はんだ粒子は、平面部と、球冠状の曲面部と、を有するものであってよい。このようなコアシェル型はんだ粒子としては、
図5(a)に示すコアシェル型はんだ粒子1が挙げられる。コアシェル型はんだ粒子1の直径Bに対する平面部11の直径Aの比(A/B)は、例えば0.01超1.0未満(0.01<A/B<1.0)であってよく、0.1~0.9であってもよい。コアシェル型はんだ粒子が平面部を有することで、コアシェル型はんだ粒子が平面部を有することで、コアシェル型はんだ粒子の座りが良くなり、取扱い性が向上する。具体的には、電極等のコアシェル型はんだ粒子によって接続するべき対象物上にコアシェル型はんだ粒子を配置する時に、平坦部があることで、所定の位置に配置しやすく、振動、風、外力、静電気などでコアシェル型はんだ粒子が所定の位置から動いてしまうことを抑制する効果がある。また、コアシェル型はんだ粒子を配置した部材を傾け場合に、平坦部を有さない(例えば球状)ものと比較して、重力によってコアシェル型はんだ粒子が動きずらい効果がある。
【0087】
コアシェル型はんだ粒子の投影像に外接する四角形を二対の平行線により作成した場合において、対向する辺間の距離をX及びY(但しY<X)としたときに、Xに対するYの比(Y/X)は、0.8超1.0未満(0.8<Y/X<1.0)であってよく、0.9以上1.0未満であってもよい。このようなコアシェル型はんだ粒子はより真球に近い粒子ということができる。上述の製造方法によれば、このようなコアシェル型はんだ粒子を容易に得ることができる。コアシェル型はんだ粒子が真球に近いことで、例えば、対向する複数の電極間をコアシェル型はんだ粒子を介して電気的に接続させるときに、コアシェル型はんだ粒子と電極間接触にムラが生じ難く、安定した接続が得られる傾向がある。また、コアシェル型はんだ粒子を樹脂材料中に分散した導電性フィルムや樹脂を作製したとき、高い分散性が得られ、製造時の分散安定性が得られる傾向がある。さらに、コアシェル型はんだ粒子を樹脂材料に分散したフィルムやペーストを、電極間の接続に用いる場合、樹脂中でコアシェル型はんだ粒子が回転しても、コアシェル型はんだ粒子が球体形状であれば、投影像で見たとき、コアシェル型はんだ粒子同士の投影面積が近い。そのため、電極同士を接続する際にばらつきの少ない、安定した電気接続を得易い傾向がある。
【0088】
図5(b)は、コアシェル型はんだ粒子の投影像に外接する四角形を二対の平行線により作成した場合における、対向する辺間の距離X及びY(但しY<X)を示す図である。例えば、任意の粒子を走査型電子顕微鏡により観察して投影像を得る。得られた投影像に対し二対の平行線を描画し、一対の平行線は平行線の距離が最小となる位置に、もう一対の平行線は平行線の距離が最大となる位置に配し、その粒子のY/Xを求める。この作業を300個のコアシェル型はんだ粒子に対して行って平均値を算出し、コアシェル型はんだ粒子のY/Xとする。
【0089】
コアシェル型はんだ粒子のはんだ層は、スズ、スズ合金、インジウム及びインジウム合金からなる群より選択される少なくとも一種を含んでもよい。
【0090】
コアシェル型はんだ粒子のはんだ層は、スズ又はスズ合金を含むものであってよい。はんだ層は、スズ合金としては、例えば、In-Sn合金、In-Sn-Ag合金、Sn-Au合金、Sn-Bi合金、Sn-Bi-Ag合金、Sn-Ag-Cu合金、及びSn-Cu合金からなる群より選択される少なくとも1種を含んでもよい。これらのスズ合金の具体例としては、下記の例が挙げられる。
・In-Sn(In52質量%、Bi48質量% 融点118℃)
・In-Sn-Ag(In20質量%、Sn77.2質量%、Ag2.8質量% 融点175℃)
・Sn-Bi(Sn43質量%、Bi57質量% 融点138℃)
・Sn-Bi-Ag(Sn42質量%、Bi57質量%、Ag1質量% 融点139℃)・Sn-Ag-Cu(Sn96.5質量%、Ag3質量%、Cu0.5質量% 融点217℃)
・Sn-Cu(Sn99.3質量%、Cu0.7質量% 融点227℃)
・Sn-Au(Sn21.0質量%、Au79.0質量% 融点278℃)
【0091】
コアシェル型はんだ粒子のはんだ層は、インジウム又はインジウム合金を含むものであってもよい。インジウム合金としては、例えば、In-Bi合金、In-Ag合金等を用いることができる。これらのインジウム合金の具体例としては、下記の例が挙げられる。
・In-Bi(In66.3質量%、Bi33.7質量% 融点72℃)
・In-Bi(In33.0質量%、Bi67.0質量% 融点109℃)
・In-Ag(In97.0質量%、Ag3.0質量% 融点145℃)
【0092】
コアシェル型はんだ粒子のはんだ層は、用途(接続時の温度)等に応じて、上記スズ合金又はインジウム合金を選択することができる。例えば、低温での融着にコアシェル型はんだ粒子1を用いる場合、In-Sn合金、Sn-Bi合金を採用すればよく、この場合、150℃以下で融着させることができる。Sn-Ag-Cu合金、Sn-Cu合金等の融点の高い材料を採用した場合、高温放置後においても高い信頼性を維持することができる。
【0093】
コアシェル型はんだ粒子のはんだ層は、Ag、Cu、Ni、Bi、Zn、Pd、Pb、Au、P及びBから選ばれる一種以上を含んでもよい。これらの元素のうち、以下の観点からAg又はCuを含んでもよい。すなわち、コアシェル型はんだ粒子のはんだ層がAg又はCuを含むことで、コアシェル型はんだ粒子のはんだ層融点を220℃程度まで低下させることができ、且つ、電極との接合強度がより向上するため、より良好な導通信頼性が得られやすくなる。
【0094】
コアシェル型はんだ粒子のはんだ層のCu含有率は例えば0.05~10質量%であり、0.1~5質量%又は0.2~3質量%であってもよい。Cu含有率が0.05質量%以上であると、より良好なはんだ接続信頼性を達成しやすくなる。また、Cu含有率が10質量%以下であると、融点が低く、濡れ性に優れたコアシェル型はんだ粒子となりやすく、結果としてコアシェル型はんだ粒子による接合部の接続信頼性が良好となりやすい。
【0095】
コアシェル型はんだ粒子のはんだ層のAg含有率は例えば0.05~10質量%であり、0.1~5質量%又は0.2~3質量%であってもよい。Ag含有率が0.05質量%以上であると、より良好なはんだ接続信頼性を達成しやすくなる。また、Ag含有率が10質量%以下であると、融点が低く、濡れ性に優れたコアシェル型はんだ粒子となりやすく、結果としてコアシェル型はんだ粒子による接合部の接続信頼性が良好となりやすい。
【0096】
コアシェル型はんだ粒子の用途は特に限定されず、例えば、異方性導電材料用の導電性粒子として好適に用いることができる。また、半導体集積回路の実装に広く用いられているボールグリッドアレイ接続方法(BGA接続)等の電気的に電極同士を接続する用途や、MEMS等の部品の封止や封管、ロウ付け、高さや隙間制御のスペーサ等の用途にも好適に用いることができる。すなわち、従来はんだが用いられる一般的な用途に、上記コアシェル型はんだ粒子を用いることができる。
【0097】
<異方性導電フィルム>
図6に示す第一実施形態に係る異方性導電フィルム10は、絶縁性樹脂組成物からなる絶縁性フィルム2と、絶縁性フィルム2中に配置されている複数のコアシェル型はんだ粒子1とによって構成されている。異方性導電フィルム10の所定の縦断面において、一個のコアシェル型はんだ粒子1は隣接する一個のコアシェル型はんだ粒子1と離隔した状態で横方向(
図6における左右方向)に並ぶように配置されている。換言すると、異方性導電フィルム10は、その縦断面において、複数のコアシェル型はんだ粒子1が横方向に列をなしている中央領域10aと、コアシェル型はんだ粒子1が実質的に存在しない表面側領域10b,10cとによって構成されている。
【0098】
図7(a)は
図6に示すIIa-IIa線における模式的な横断面図である。
図7に示されるとおり、異方性導電フィルム10の横断面において、コアシェル型はんだ粒子1が規則的に配置されている。
図7(a)に示されたとおり、コアシェル型はんだ粒子1は異方性導電フィルム10の全体の領域に対して規則的且つほぼ均等の間隔で配置されていてもよく、
図7(b)に示された変形例のように、異方性導電フィルム10の横断面において、複数のコアシェル型はんだ粒子1が規則的に配置されている領域10dと、コアシェル型はんだ粒子1が実質的に存在しない領域10eとが規則的に形成されるように、コアシェル型はんだ粒子1を配置してもよい。例えば、接続すべき電極の形状、サイズ及びパターン等に応じ、コアシェル型はんだ粒子1の位置及び個数等を設定すればよい。
【0099】
(絶縁性フィルム)
絶縁性フィルム2を構成する絶縁性樹脂組成物は、熱硬化性樹脂を含んでもよい。熱硬化性樹脂としては、オキセタン化合物、エポキシ化合物、エピスルフィド化合物、(メタ)アクリル化合物、フェノール化合物、アミノ化合物、不飽和ポリエステル化合物、ポリウレタン化合物、シリコーン化合物及びポリイミド化合物等が挙げられる。なかでも、絶縁樹脂の硬化性及び粘度をより一層良好にし、接続信頼性をより一層高める観点から、エポキシ化合物が好ましい。
【0100】
絶縁性樹脂組成物は熱硬化剤をさらに含んでもよい。熱硬化剤としては、イミダゾール硬化剤、アミン硬化剤、フェノール硬化剤、ポリチオール硬化剤、酸無水物、熱カチオン開始剤及び熱ラジカル発生剤等が挙げられる。これらは一種を単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。これらのうち、低温で速やかに硬化可能である点で、イミダゾール硬化剤、ポリチオール硬化剤又はアミン硬化剤が好ましい。また、熱硬化性化合物と熱硬化剤とを混合したときに保存安定性が高くなるので、潜在性の硬化剤が好ましい。潜在性の硬化剤は、潜在性イミダゾール硬化剤、潜在性ポリチオール硬化剤又は潜在性アミン硬化剤であることが好ましい。なお、上記熱硬化剤は、ポリウレタン樹脂又はポリエステル樹脂等の高分子物質で被覆されていてもよい。
【0101】
上記イミダゾール硬化剤としては、特に限定されず、2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテート、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン及び2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物等が挙げられる。
【0102】
上記ポリチオール硬化剤としては、特に限定されず、トリメチロールプロパントリス-3-メルカプトプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス-3-メルカプトプロピオネート及びジペンタエリスリトールヘキサ-3-メルカプトプロピオネート等が挙げられる。ポリチオール硬化剤の溶解度パラメーターは、好ましくは9.5以上、好ましくは12以下である。上記溶解度パラメーターは、Fedors法にて計算される。例えば、トリメチロールプロパントリス-3-メルカプトプロピオネートの溶解度パラメーターは9.6、ジペンタエリスリトールヘキサ-3-メルカプトプロピオネートの溶解度パラメーターは11.4である。
【0103】
上記アミン硬化剤としては、特に限定されず、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、3,9-ビス(3-アミノプロピル)-2,4,8,10-テトラスピロ[5.5]ウンデカン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、メタフェニレンジアミン及びジアミノジフェニルスルホン等が挙げられる。
【0104】
上記熱カチオン硬化剤としては、ヨードニウム系カチオン硬化剤、オキソニウム系カチオン硬化剤及びスルホニウム系カチオン硬化剤等が挙げられる。上記ヨードニウム系カチオン硬化剤としては、ビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスファート等が挙げられる。上記オキソニウム系カチオン硬化剤としては、トリメチルオキソニウムテトラフルオロボラート等が挙げられる。上記スルホニウム系カチオン硬化剤としては、トリ-p-トリルスルホニウムヘキサフルオロホスファート等が挙げられる。
【0105】
上記熱ラジカル発生剤としては、特に限定されず、アゾ化合物及び有機過酸化物等が挙げられる。上記アゾ化合物としては、アゾビスイゾブチロニトリル(AIBN)等が挙げられる。上記有機過酸化物としては、ジ-tert-ブチルペルオキシド及びメチルエチルケトンペルオキシド等が挙げられる。
【0106】
(フラックス)
異方性導電フィルム10は、フラックスを含むことが好ましい。具体的には、異方性導電フィルム10を構成する絶縁性樹脂組成物がフラックスを含有するとともに、コアシェル型はんだ粒子1の表面をフラックスが覆っていることが好ましい。フラックスは、はんだ表面の酸化物を溶融して、コアシェル型はんだ粒子同士の融着性及び電極へのはんだの濡れ性を向上させる。
【0107】
フラックスとしては、はんだ接合等に一般的に用いられているものを使用できる。具体例としては、塩化亜鉛、塩化亜鉛と無機ハロゲン化物との混合物、塩化亜鉛と無機酸との混合物、溶融塩、リン酸、リン酸の誘導体、有機ハロゲン化物、ヒドラジン、有機酸及び松脂等が挙げられる。これらは一種を単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0108】
溶融塩としては、塩化アンモニウム等が挙げられる。有機酸としては、乳酸、クエン酸、ステアリン酸、グルタミン酸及びグルタル酸等が挙げられる。松脂としては、活性化松脂及び非活性化松脂等が挙げられる。松脂はアビエチン酸を主成分とするロジン類である。フラックスとして、カルボキシル基を二個以上有する有機酸又は松脂を使用することにより、電極間の導通信頼性がより一層高くなるという効果が奏される。
【0109】
フラックスの融点は、好ましくは50℃以上であり、より好ましくは70℃以上であり、さらに好ましくは80℃以上である。フラックスの融点は、好ましくは200℃以下であり、より好ましくは160℃以下であり、さらに好ましくは150℃以下であり、特に好ましくは140℃以下である。上記フラックスの融点が上記下限以上及び上記上限以下であると、フラックス効果がより一層効果的に発揮され、コアシェル型はんだ粒子が電極上により一層効率的に配置される。フラックスの融点の範囲は、80~190℃であることが好ましく、80~140℃以下であることがより好ましい。
【0110】
融点が80~190℃の範囲にあるフラックスとしては、コハク酸(融点186℃)、グルタル酸(融点96℃)、アジピン酸(融点152℃)、ピメリン酸(融点104℃)、スベリン酸(融点142℃)等のジカルボン酸、安息香酸(融点122℃)、リンゴ酸(融点130℃)等が挙げられる。
【0111】
<異方性導電フィルムの製造方法>
異方性導電フィルムの製造方法は、複数の凹部を有する基体とコア粒子とはんだ微粒子とを準備する準備工程と、コア粒子の少なくとも一部とはんだ微粒子の少なくとも一部とを凹部に収容する収容工程と、凹部に収容されたはんだ微粒子を融合させて、凹部に収容されたコア粒子の表面上にはんだ層を形成し、コア粒子とはんだ層とを備えるコアシェル型はんだ粒子を凹部内に形成する融合工程と、コアシェル型はんだ粒子が凹部に収容されている基体の、凹部の開口側に絶縁性樹脂組成物を接触させて、コアシェル型はんだ粒子が転写された第一の樹脂層を得る転写工程と、コアシェル型はんだ粒子が転写された側の第一の樹脂層の表面上に、絶縁性樹脂組成物から構成される第二の樹脂層を形成することにより、異方性導電フィルムを得る積層工程と、を含む。
【0112】
図8を参照しながら、第一実施形態に係る異方性導電フィルム10の製造方法について説明する。
【0113】
準備工程~融合工程によれば、上述のとおり、均一なサイズのコアシェル型はんだ粒子1を形成することができる。
【0114】
融合工程で形成されたコアシェル型はんだ粒子1は、そのまま転写工程に使用してよく、基体60の凹部62に収容された状態で表面をフラックス成分で被覆してから転写工程に使用してもよく、凹部62から取り出し、表面をフラックス成分で被覆し、凹部62に再度収容してから転写工程に使用してもよい。なお、ここでは、コアシェル型はんだ粒子1の形成に用いた基体60をそのまま転写工程に利用しているが、凹部62からコアシェル型はんだ粒子1と取り出すステップを含む場合は、取り出したコアシェル型はんだ粒子1を、基体60とは異なる基体に収容して、転写工程に用いてもよい。
【0115】
転写工程は、コアシェル型はんだ粒子1が凹部62に収容されている状態の基体60に対して、凹部62の開口側から絶縁性樹脂組成物2aを接触させることにより、コアシェル型はんだ粒子1が転写された第一の樹脂層2bを得る工程である。
【0116】
図8(a)に示す基体60は、凹部62のそれぞれに一個のコアシェル型はんだ粒子1が収容された状態である。この基体60の凹部62の開口側の面に、層状の絶縁性樹脂組成物2aを対向させて、基体60と層状の絶縁性樹脂組成物とを近づける(
図8(a)における矢印A,B)。なお、層状の絶縁性樹脂組成物2aは、支持体65の表面上に形成されている。支持体65は、プラスチックフィルムであってもよいし、金属箔であってもよい。
【0117】
図8(b)は、転写工程後の状態であって、基体60の凹部62の開口側の面を層状の絶縁性樹脂組成物2aに接触させたことにより、基体60の凹部62に収容されていたコアシェル型はんだ粒子1が層状の絶縁性樹脂組成物2aに転写された状態を示している。転写工程を経ることで、層状の絶縁性樹脂組成物2aの所定の位置に複数のコアシェル型はんだ粒子1が転写された第一の樹脂層2bが得られる。第一の樹脂層2bは、その表面に複数のコアシェル型はんだ粒子1が露出している。なお、上記製造方法において、複数のコアシェル型はんだ粒子1は、いずれも平面部11が第二の樹脂層2d側を向いた状態で、異方性導電フィルム10中に配置されている。
【0118】
積層工程は、第一の樹脂層2bの、コアシェル型はんだ粒子1が転写された側の表面2c上に、絶縁性樹脂組成物で構成される第二の樹脂層2dを形成することにより、異方性導電フィルム10を得る工程である。
【0119】
図8(c)は、積層工程後の状態であって、第一の樹脂層2bの表面2c上に、コアシェル型はんだ粒子1を覆うように第二の樹脂層2dを形成した後、支持体65を取り除いた状態を示している。第二の樹脂層2dは、絶縁性樹脂組成物からなる絶縁性フィルムを第一の樹脂層2bにラミネートすることによって形成してもよく、絶縁性樹脂組成物をワニスの状態で第一の樹脂層2bを被覆した後、硬化処理を施すことによって形成してもよい。
【0120】
次に、
図9を参照しながら、第二実施形態に係る異方性導電フィルム10の製造方法について説明する。
【0121】
第二実施形態では、準備工程、収容工程及び融合工程を第一実施形態と同様にして実施した後、転写工程において、凹部62の内部にまで絶縁性樹脂組成物を侵入させることにより、コアシェル型はんだ粒子1を第一の樹脂層2bに埋設する。
【0122】
図9(a)に示す基体60は、凹部62のそれぞれに一個のコアシェル型はんだ粒子1が収容された状態である。この基体60の凹部62の開口側の面に、層状の絶縁性樹脂組成物2aを対向させて、基体60と絶縁性樹脂組成物2aとを近づける(
図9(a)における矢印A,B)。
【0123】
図9(b)は、転写工程後の状態であって、基体60の凹部62の開口側の面を絶縁性樹脂組成物2aに接触させたことにより、基体60の凹部62に収容されていたコアシェル型はんだ粒子1が絶縁性樹脂組成物2aに転写された状態を示している。転写工程を経ることで、所定の位置に複数のコアシェル型はんだ粒子1が転写された第一の樹脂層2bが得られる。第一の樹脂層2bの表面2c側には、凹部62に応じた複数の凸部2eが形成されており、これら凸部2eにコアシェル型はんだ粒子1が埋設されている。このような第一の樹脂層2bを得るため、転写工程では、凹部62の内部にまで絶縁性樹脂組成物2aを侵入させる。具体的には、基体60と絶縁性樹脂組成物2aとを、積層方向(
図9(a)における矢印A,Bの方向)に加圧することで、絶縁性樹脂組成物2aを凹部62の内部に侵入させてよい。また、転写工程を減圧雰囲気下で行うと、絶縁性樹脂組成物2aが凹部62の内部に入りやすくなる。また、
図9では層状の絶縁性樹脂組成物2aによって転写工程を実施しているが、絶縁性樹脂組成物を含むワニスを凹部62の内部及び基体60の表面に塗布し、硬化処理を施すことによって、第一の樹脂層2bを得ることもできる。
【0124】
図9(c)は、積層工程後の状態であって、第一の樹脂層2bの表面2c上に、第二の樹脂層2dを形成した後、支持体65を取り除いた状態を示している。第二の樹脂層2dは、絶縁性樹脂組成物からなる絶縁性フィルムを第一の樹脂層2bにラミネートすることによって形成してもよく、絶縁性樹脂組成物を含むワニスで第一の樹脂層2bを被覆した後、硬化処理を施すことによって形成してもよい。
【0125】
なお、上記製造方法において、複数のコアシェル型はんだ粒子1は、いずれも平面部11が第二の樹脂層2d側を向いた状態で、異方性導電フィルム10中に配置されている。融合工程で形成されたコアシェル型はんだ粒子1を一度取り出し、フラックス成分での被覆等の処理を施した後、再度、凹部62に再配置する方法を採用した場合、複数のはんだ粒子1は、平面部11の向きが互いに異なっていてもよい。
図10(a)は、一度取り出したコアシェル型はんだ粒子1を凹部62に再配置した状態を示している。このような状態で転写工程及び積層工程を行うことで、複数のコアシェル型はんだ粒子1は、平面部11の向きが一致しない状態で異方性導電フィルム10中に配置される。
図10(b)は、複数のはんだ粒子1が、平面部11の向きが一致しない状態で異方性導電フィルム10に配置された状態を示す図である。
【0126】
<接続構造体>
図11は、本実施形態に係る接続構造体50Aの一部を拡大して模式的に示す断面図である。すなわち、
図11は、第一の回路部材30の電極32と第二の回路部材40の電極42が、融着して形成されたはんだ接続層70を介して電気的に接続された状態を模式的に示したものである。本明細書において「融着」とは上記のとおり、電極の少なくとも一部が熱によって融解されたコアシェル型はんだ粒子1によって接合され、その後、これが固化する工程を経ることによって電極の表面にはんだが接合された状態を意味する。第一の回路部材30は、第一の回路基板31と、その表面31a上に配置された第一の電極32とを備える。第二の回路部材40は、第二の回路基板41と、その表面41a上に配置された第二の電極42とを備える。回路部材30,40の間に充填された絶縁樹脂層55は、第一の回路部材30と第二の回路部材40が接着された状態を維持するとともに、第一の電極32と第二の電極42が電気的に接続された状態を維持する。
【0127】
回路部材30,40のうちの一方の具体例として、ICチップ(半導体チップ)、抵抗体チップ、コンデンサチップ、ドライバーIC等のチップ部品;リジット型のパッケージ基板が挙げられる。これらの回路部材は、回路電極を備えており、多数の回路電極を備えているものが一般的である。回路部材30,40のうちの他方の具体例としては、金属配線を有するフレキシブルテープ基板、フレキシブルプリント配線板、インジウム錫酸化物(ITO)が蒸着されたガラス基板等の配線基板が挙げられる。
【0128】
第一の電極32または第二の電極42の具体例としては、銅、銅/ニッケル、銅/ニッケル/金、銅/ニッケル/パラジウム、銅/ニッケル/パラジウム/金、銅/ニッケル/金、銅/パラジウム、銅/パラジウム/金、銅/スズ、銅/銀、インジウム錫酸化物等の電極が挙げられる。第一の電極32または第二の電極42は、無電解めっき又は電解めっき又はスパッタで形成することができる。
【0129】
図12は、
図11に示す接続構造体50Aの変形例である接続構造体50Bを模式的に示す断面図である。接続構造体50Bにおいては、はんだ接続層70は第一の回路部材30の電極32と第二の回路部材40の電極42に部分的に融着している。
【0130】
図13は、
図11に示す接続構造体50Aの変形例である接続構造体50Cを模式的に示す断面図である。同図は、第一の電極32及び第二の電極42が銅からなる場合であって、特に高温放置を行った後の電極部の断面を表している。高温放置により金属間化合物からなる層71が形成されている。
【0131】
図14は、
図11に示す接続構造体50Aの変形例である接続構造体50Dを模式的に示す断面図である。同図は、第一の電極32及び第二の電極42が銅からなる場合であって、特に高温放置を行った後の電極部の断面を表している。高温放置により金属間化合物からなる層71が形成されている。
図14は、
図13と比較して、高温放置により金属間化合物からなる層71が厚く形成されたことを表しており、落下衝撃などの衝撃を加えると、信頼性が低下する。
【0132】
図15は、
図11に示す接続構造体50Aの変形例である接続構造体50Eを模式的に示す断面図である。同図は、第一の電極32及び第二の電極42が銅からなる場合であって、特に高温放置を行った後の電極部の断面を表している。高温放置により金属間化合物からなる層71が形成されている。
図15は、第一の電極32と第二の電極42の間のはんだが全て金属間化合物となり、金属間化合物からなる層71により第一の電極32と第二の電極42とが接続されたことを表している。
【0133】
図16は、
図11に示す接続構造体50Aの変形例である接続構造体50Fを模式的に示す断面図である。同図は、第一の電極32及び第二の電極42が銅からなる場合であり、特に高温放置を行った後の電極部の断面を表している。高温放置により金属間化合物からなる層71が形成されている。
図16は、コアシェル型はんだ粒子1のはんだ層及び金属層を構成する金属材料が、電極を構成する銅とともに金属間化合物を形成し、当該金属間化合物からなる層71により第一の電極32と第二の電極42とが接続されたことを表している。
【0134】
<接続構造体の製造方法>
図17(a)及び
図17(b)を参照しながら、接続構造体の製造方法について説明する。これらの図は、
図11に示す接続構造体50Aを形成する過程の一例を模式的に示す断面図である。まず、
図6に示す異方性導電フィルム10を予め準備し、これを第一の回路部材30と第二の回路部材40とが対面するように配置する(
図17(a))。このとき、第一の回路部材30の第一の電極32と第二の回路部材40の第二の電極42とが対向するように設置する。その後、これらの部材の積層体の厚さ方向(
図17(a)に示す矢印A及び矢印Bの方向)に加圧する。矢印A及び矢印Bの方向に加圧する際に全体をコアシェル型はんだ粒子1の融点よりも高い温度(例えば130~260℃)に少なくとも加熱することによって、コアシェル型はんだ粒子1のはんだ層が溶融し、第一の電極32と第二の電極42の間に寄り集まって、はんだ接続層70が形成され、その後、冷却することで第一の電極32と第二の電極42の間にはんだ接続層70が固着され、第一の電極32と第二の電極42が電気的に接続される。
【0135】
絶縁性フィルム2の絶縁性樹脂組成物が、例えば熱硬化性樹脂を含む場合、矢印A及び矢印Bの方向に加圧する際に全体を加熱することによって絶縁性樹脂組成物を硬化させることができる。これにより、絶縁性樹脂組成物の硬化物からなる絶縁樹脂層55が回路部材30,40の間に形成される。
【0136】
図18は、
図17に示す接続構造体50Aの製造方法の変形例を模式的に示す断面図である。この変形例に係る製造方法においては、コアシェル型はんだ粒子1の一部が電極32,42の融着に寄与せずに絶縁樹脂層55内に残存している。残存したコアシェル型はんだ粒子1は、第一の電極32及び第二の電極42のいずれにも接触せず、絶縁信頼性は高く維持される。
【0137】
図19は、
図17に示す接続構造体50Aの製造方法の変形例を模式的に示す断面図である。この変形例に係る製造方法においては、実質的に全てのコアシェル型はんだ粒子1がはんだ接続層70を形成し、第一の回路部材30の第一の電極32と第二の回路部材40の第二の電極42を融着している。異方性導電フィルム10におけるコアシェル型はんだ粒子1の配置をあらかじめ設計することで、融着に寄与せずに残存するコアシェル型はんだ粒子1を極力低減することが可能である。これにより、接続構造体の絶縁信頼性をより一層向上することができる。
【0138】
図20、
図21、
図22及び
図23は、押圧及び加熱がなされる前の異方性導電フィルム10のコアシェル型はんだ粒子1の位置と第一の電極32の位置との関係を模式的に示す図である。
【0139】
上述の実施形態及びそれらの変形例に係る接続構造体の適用対象としては、液晶ディスプレイ、パーソナルコンピュータ、携帯電話、スマートフォン、タブレット等のデバイスが挙げられる。
【0140】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【実施例】
【0141】
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0142】
<実施例1>
(工程a1)コア粒子の準備
ジビニルベンゼン-スチレン共重合体で形成された直径1.0μmの樹脂粒子3gを用意した。この樹脂粒子を、パラジウム触媒であるアトテックネオガント834(アトテックジャパン株式会社製、商品名)を8質量%含有するパラジウム触媒化液100mLに添加し、30℃で30分間攪拌した後、メンブレンフィルタ(ミリポア株式会社製)で濾過し、水洗を行うことで樹脂粒子を得た。その後、樹脂粒子をpH6.0に調整された0.5質量%ジメチルアミンボラン液に添加し、表面が活性化された樹脂粒子を得た。その後、50mLの蒸留水に、表面が活性化された樹脂粒子を浸漬し、超音波分散することで、樹脂粒子分散液を得た。
その後、80℃で加温した水200mLで希釈し、めっき安定剤として1g/Lの硝酸ビスマス水溶液を0.2mL添加し、下記組成の第1の層形成用無電解ニッケルめっき液30mLを、1mL/分の滴下速度で滴下した。滴下終了後、10分間経過した後に、めっき液を加えた分散液を濾過した。濾過物を水で洗浄した後、80℃の真空乾燥機で乾燥した。このようにして、0.1μmの膜厚のニッケル-リン合金被膜(リン濃度7質量%、残部ニッケル)からなる第1金属層を形成した。
(第1金属層形成用無電解ニッケルめっき液)
硫酸ニッケル・6水和物・・・・・・・・・・400g/L
次亜リン酸ナトリウム・・・・・・・・・・・150g/L
酢酸・・・・・・・・・・・・・・・・・・・120g/L
硝酸ビスマス水溶液(1g/L)・・・・・・・1mL/L
上記で得た第1金属層(ニッケル)を形成した粒子を、50℃で加温した水200mLで希釈し、めっき安定剤として1g/Lの硝酸ビスマス水溶液を0.2mL添加し、下記組成の第2金属層形成用無電解パラジウムめっき液30mLを、1mL/分の滴下速度で滴下した。滴下終了後、10分間経過した後に、めっき液を加えた分散液を濾過した。濾過物を水で洗浄した後、80℃の真空乾燥機で乾燥した。このようにして、0.05μmの膜厚のパラジウムめっき被膜(パラジウムの純度100%)からなる第2金属層を形成した。
(無電解パラジウムめっき液)
塩化パラジウム・・・・・・・・・・・・・・・・・・7g/L
EDTA・2ナトリウム・・・・・・・・・・・・・・100g/L
クエン酸・2ナトリウム・・・・・・・・・・・・・・100g/L
ギ酸ナトリウム・・・・・・・・・・・・・・・・・・20g/L
pH・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6
(工程b1)はんだ微粒子の準備
Sn-Biはんだ微粒子(5N Plus社製、融点139℃、Type8)100gを、蒸留水に浸漬し、超音波分散させた後、静置し、上澄みに浮遊するはんだ微粒子を回収した。この操作を繰り返して、10gのはんだ微粒子を回収した。得られたはんだ微粒子の平均粒子径は1.0μm、C.V.値は42%であった。
(工程c1)基体への配置
開口径1.8μmφ、底部径1.5μmφ、深さ1.3μm(底部径1.5μmφは、開口部を上面からみると、開口径1.8μmφの中央に位置する)の凹部を複数有する基体(ポリイミドフィルム、厚さ100μm)を準備した。複数の凹部は、1.0μmの間隔で規則的に配列させた。工程aで得られたコア粒子(平均直径1.0μm)を基体の凹部に配置した。この時、一つの凹部に一つのコア粒子が配置されていることを確認した。次に、コア粒子が配置された凹部にはんだ微粒子(平均粒子径1.0μm、C.V.値42%)を配置した。なお、基体の凹部が形成された面側を微粘着ローラーでこすることで余分なコア粒子とはんだ微粒子を取り除いた。一つの凹溝内にコア粒子とはんだ微粒子がともに配置された基体を得た。
(工程d1)コアシェル型はんだ粒子の形成
工程c1で凹部にコア粒子とはんだ微粒子が配置された基体を、水素ラジカル還元炉(新港精機株式会社製プラズマリフロー装置)に投入し、真空引き後、水素ガスを炉内に導入して、炉内を水素ガスで満たした。その後、炉内を120℃に調整し、5分間水素ラジカルを照射した。その後、真空引きにて炉内の水素ガスを除去し、170℃まで加熱した後、窒素を炉内に導入して大気圧に戻してから炉内の温度を室温まで下げることにより、コアシェル型はんだ粒子を形成した。
(工程e1)コアシェル型はんだ粒子の回収
工程d1を経た基体を凹部裏側よりタップすることで、凹部よりコアシェル型はんだ粒子を回収した。得られたコアシェル型はんだ粒子を、下記の方法で評価した。
(コアシェル型はんだ粒子の評価)
SEM観察用台座表面に固定した導電テープ上に、得られたコアシェル型はんだ粒子を載せ、厚さ5mmのステンレス板にSEM観察用台座をタップしてコアシェル型はんだ粒子を導電テープ上に万遍なく広げた。その後、導電テープ表面に圧縮窒素ガスを吹きかけ、はんだ粒子を導電テープ上に単層に固定した。SEMにてコアシェル型はんだ粒子の直径を300個測定し、平均粒子径及びC.V.値を算出した。結果を表2に示す。
【0143】
<実施例2~5>
凹部のサイズ、コア粒子の芯材を表1に記載のとおりに変更し、第1金属層の厚さ、第2金属層の厚さを表1に記載のとおりに調整したこと以外は、実施例1と同様にしてコアシェル型はんだ粒子を作製し、回収及び評価した。結果を表2に示す。
【0144】
<実施例6~10>
工程d1に代えて、以下の工程d2を行い、凹部のサイズ、コア粒子の芯材を表1に記載のとおりに変更し、第1金属層の厚さ、第2金属層の厚さを表1に記載のとおりに調整したこと以外は、実施例1~5と同様にして、コアシェル型はんだ粒子を作製し、回収及び評価した。結果を表2に示す。
(工程d2)コアシェル型はんだ粒子の形成
工程c1で凹部にコア粒子とはんだ微粒子が配置された基体を、水素還元炉(新港精機株式会社製真空半田付装置)に入れ、真空引き後、水素ガスを炉内に導入して炉内を水素で満たした。その後、炉内を250℃で20分保った後、再び真空に引き、窒素を導入して大気圧に戻してから炉内の温度を室温まで下げることにより、コアシェル型はんだ粒子を形成した。
【0145】
<実施例11~15>
工程d1に代えて、以下の工程d3を行い、凹部のサイズ、コア粒子の芯材を表1に記載のとおりに変更し、第1金属層の厚さ、第2金属層の厚さを表1に記載のとおりに調整したこと以外は実施例1~5と同様にして、コアシェル型はんだ粒子を作製し、回収及び評価した。結果を表2に示す。
(工程d3)コアシェル型はんだ粒子の形成
工程c1で凹部にコア粒子とはんだ微粒子が配置された基体を、ギ酸還元炉に投入し、真空引き後、ギ酸ガスを炉内に導入して、炉内をギ酸ガスで満たした。その後、炉内を130℃に調整し、20分間温度を保持した。その後、真空引きにて炉内のギ酸ガスを除去し、180℃まで加熱した後、窒素を炉内に導入して大気圧に戻してから炉内の温度を室温まで下げることにより、コアシェル型はんだ粒子を形成した。
【0146】
<実施例16~20>
工程d1に代えて、以下の工程d4を行い、凹部のサイズ、コア粒子の芯材を表1に記載のとおりに変更し、第1金属層の厚さ、第2金属層の厚さを表1に記載のとおりに調整したこと以外は、実施例1~5と同様にして、コアシェル型はんだ粒子を作製し、回収及び評価した。結果を表2に示す。
(工程d4)コアシェル型はんだ粒子の形成
工程c1で凹部にコア粒子とはんだ微粒子が配置された基体を、ギ酸コンベアリフロー炉(Heller Industries, Inc.製 1913MK)に投入し、コンベアーにて搬送しながら、窒素ゾーン、窒素およびギ酸ガス混合ゾーン、窒素ゾーンを連続して通過させた。窒素およびギ酸ガス混合ゾーンを190℃で20分間通過させ、コアシェル型はんだ粒子を形成した。
【0147】
<実施例21~25>
工程a1に代えて、以下の工程a2を行い、凹部のサイズ、コア粒子の芯材を表1に記載のとおりに変更し、第1金属層の厚さ、第2金属層の厚さを表1に記載のとおりに調整したこと以外は、実施例1~5と同様にして、コアシェル型はんだ粒子を作製し、回収及び評価した。結果を表2に示す。
(工程a2)コア粒子の準備
ジビニルベンゼンースチレン共重合体で形成された直径1.0μmの樹脂粒子3g用意した。この樹脂粒子を、パラジウム触媒であるアトテックネオガント834(アトテックジャパン株式会社製、商品名)を8質量%含有するパラジウム触媒化液100mLに添加し、30℃で30分間攪拌した後、メンブレンフィルタ(ミリポア株式会社製)で濾過し、水洗を行うことで樹脂粒子を得た。その後、樹脂粒子をpH6.0に調整された0.5質量%ジメチルアミンボラン液に添加し、表面が活性化された樹脂粒子を得た。その後、50mLの蒸留水に、表面が活性化された樹脂粒子を浸漬し、超音波分散することで、樹脂粒子分散液を得た。
その後、80℃で加温した水200mLで希釈し、めっき安定剤として1g/Lの硝酸ビスマス水溶液を0.2mL添加し、下記組成の第1の層形成用無電解ニッケルめっき液30mLを、1mL/分の滴下速度で滴下した。滴下終了後、10分間経過した後に、めっき液を加えた分散液を濾過した。濾過物を水で洗浄した後、80℃の真空乾燥機で乾燥した。このようにして、0.1μmの膜厚のニッケル-リン合金被膜(リン濃度7質量%、残部ニッケル)からなる第1金属層を形成した。
(第1金属層形成用無電解ニッケルめっき液)
硫酸ニッケル・6水和物・・・・・・・・・・400g/L
次亜リン酸ナトリウム・・・・・・・・・・・150g/L
酢酸・・・・・・・・・・・・・・・・・・・120g/L
硝酸ビスマス水溶液(1g/L)・・・・・・・1mL/L
【0148】
<実施例26>
工程a1に代えて、以下の工程a3を行い、実施例1と同様にして、コアシェル型はんだ粒子を作製し、回収及び評価した。結果を表4に示す。
(工程a3)コア粒子の準備
直径1.0μmのCu粒子を、50℃で加温した水200mLで希釈し、めっき安定剤として1g/Lの硝酸ビスマス水溶液を0.2mL添加し、下記組成の第2金属層形成用無電解パラジウムめっき液30mLを、1mL/分の滴下速度で滴下した。滴下終了後、10分間経過した後に、めっき液を加えた分散液を濾過した。濾過物を水で洗浄した後、80℃の真空乾燥機で乾燥した。このようにして、0.05μmの膜厚のパラジウムめっき被膜(パラジウムの純度100%)からなる第1金属層を形成した。
(無電解パラジウムめっき液)
塩化パラジウム・・・・・・・・・・・・・・・・・・7g/L
EDTA・2ナトリウム・・・・・・・・・・・・・・100g/L
クエン酸・2ナトリウム・・・・・・・・・・・・・・100g/L
ギ酸ナトリウム・・・・・・・・・・・・・・・・・・20g/L
pH・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6
【0149】
<実施例27~30>
凹部のサイズ、コア粒子の芯材を表3に記載のとおりに変更し、第1金属層の厚さを表3に記載のとおりに調整したこと以外は、実施例26と同様にして、コアシェル型はんだ粒子を作製し、回収及び評価した。結果を表4に示す。
【0150】
<実施例31>
工程a1に代えて、以下の工程a4を行ったこと以外は、実施例1と同様にして、コアシェル型はんだ粒子を作製し、回収及び評価した。結果を表4に示す。
(工程a4)コア粒子の準備
直径1.0μmのCu粒子を、パラジウム触媒であるアトテックネオガント834(アトテックジャパン株式会社製、商品名)を8質量%含有するパラジウム触媒化液100mLに添加し、30℃で30分間攪拌した後、メンブレンフィルタ(ミリポア株式会社製)で濾過し、水洗を行うことで樹脂粒子を得た。その後、樹脂粒子をpH6.0に調整された0.5質量%ジメチルアミンボラン液に添加し、表面が活性化された樹脂粒子を得た。その後、50mLの蒸留水に、表面が活性化された樹脂粒子を浸漬し、超音波分散することで、樹脂粒子分散液を得た。
その後、80℃で加温した水200mLで希釈し、めっき安定剤として1g/Lの硝酸ビスマス水溶液を0.2mL添加し、下記組成の第1の層形成用無電解ニッケルめっき液30mLを、1mL/分の滴下速度で滴下した。滴下終了後、10分間経過した後に、めっき液を加えた分散液を濾過した。濾過物を水で洗浄した後、80℃の真空乾燥機で乾燥した。このようにして、0.1μmの膜厚のニッケル-リン合金被膜(リン濃度7質量%、残部ニッケル)からなる第1金属層を形成した。
(第1金属層形成用無電解ニッケルめっき液)、
硫酸ニッケル・6水和物・・・・・・・・・・400g/L
次亜リン酸ナトリウム・・・・・・・・・・・150g/L
酢酸・・・・・・・・・・・・・・・・・・・120g/L
硝酸ビスマス水溶液(1g/L)・・・・・・・1mL/L
第1金属層を形成したコア粒子を、50℃で加温した水200mLで希釈し、めっき安定剤として1g/Lの硝酸ビスマス水溶液を0.2mL添加し、下記組成の第2金属層形成用無電解パラジウムめっき液30mLを、1mL/分の滴下速度で滴下した。滴下終了後、10分間経過した後に、めっき液を加えた分散液を濾過した。濾過物を水で洗浄した後、80℃の真空乾燥機で乾燥した。このようにして、0.05μmの膜厚のパラジウムめっき被膜(パラジウムの純度100%)からなる第2金属層を形成した。
(無電解パラジウムめっき液)
塩化パラジウム・・・・・・・・・・・・・・・・・・7g/L
EDTA・2ナトリウム・・・・・・・・・・・・・・100g/L
クエン酸・2ナトリウム・・・・・・・・・・・・・・100g/L
ギ酸ナトリウム・・・・・・・・・・・・・・・・・・20g/L
pH・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6
【0151】
<実施例32~35>
凹部のサイズ、コア粒子の芯材を表3に記載のとおりに変更し、第1金属層の厚さ、第2金属層の厚さを表3に記載のとおりに調整したこと以外は、実施例31と同様にして、コアシェル型はんだ粒子を作製し、回収及び評価した。結果を表4に示す。
【0152】
<実施例36>
工程a1に代えて、以下の工程a5を行ったこと以外は、実施例1と同様にして、コアシェル型はんだ粒子を作製し、回収及び評価した。結果を表6に示す。
(工程a5)コア粒子の準備
直径1.0μmのNi粒子(C.V.値が24%)を準備した。
【0153】
<実施例37~40>
凹部のサイズ、コア粒子の芯材を表5に記載のとおりに変更した以外は、実施例36と同様にして、コアシェル型はんだ粒子を作製し、回収及び評価した。結果を表6に示す。
【0154】
<実施例41>
工程a1に代えて、以下の工程a6を行ったこと以外は、実施例1と同様にして、コアシェル型はんだ粒子を作製し、回収及び評価した。結果を表6に示す。
(工程a6)コア粒子の準備
直径1.0μmのNi粒子を、50℃で加温した水200mLで希釈し、めっき安定剤として1g/Lの硝酸ビスマス水溶液を0.2mL添加し、下記組成の第2金属層形成用無電解パラジウムめっき液30mLを、1mL/分の滴下速度で滴下した。滴下終了後、10分間経過した後に、めっき液を加えた分散液を濾過した。濾過物を水で洗浄した後、80℃の真空乾燥機で乾燥した。このようにして、0.05μmの膜厚のパラジウムめっき被膜(パラジウムの純度100%)からなる第1金属層を形成した。
(無電解パラジウムめっき液)
塩化パラジウム・・・・・・・・・・・・・・・・・・7g/L
EDTA・2ナトリウム・・・・・・・・・・・・・・100g/L
クエン酸・2ナトリウム・・・・・・・・・・・・・・100g/L
ギ酸ナトリウム・・・・・・・・・・・・・・・・・・20g/L
pH・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6
【0155】
<実施例42~45>
凹部のサイズ、コア粒子の芯材を表5に記載のとおりに変更し、第1金属層の厚さを表5に記載のとおりに調整したこと以外は、実施例41と同様にして、コアシェル型はんだ粒子を作製し、回収及び評価した。結果を表6に示す。
【0156】
<実施例46>
工程a1に代えて、以下の工程a7を行ったこと以外は、実施例1と同様にして、コアシェル型はんだ粒子を作製し、回収及び評価した。結果を表6に示す。
(工程a7)コア粒子の準備
直径1.0μmのNi粒子を、50℃で加温した水200mLで希釈し、めっき安定剤として1g/Lの硝酸ビスマス水溶液を0.2mL添加し、下記組成の第2金属層形成用無電解パラジウムめっき液30mLを、1mL/分の滴下速度で滴下した。滴下終了後、10分間経過した後に、めっき液を加えた分散液を濾過した。濾過物を水で洗浄した後、80℃の真空乾燥機で乾燥した。このようにして、0.05μmの膜厚のパラジウムめっき被膜(パラジウムの純度100%)からなる第1金属層金属層を形成した。
(無電解パラジウムめっき液)
塩化パラジウム・・・・・・・・・・・・・・・・・・7g/L
EDTA・2ナトリウム・・・・・・・・・・・・・・100g/L
クエン酸・2ナトリウム・・・・・・・・・・・・・・100g/L
ギ酸ナトリウム・・・・・・・・・・・・・・・・・・20g/L
pH・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6
上記で得た第1金属層を有する粒子を、85℃で加温した水200mLで希釈し、置換金めっき液であるHGS-100(日立化成株式会社、商品名)100mL/Lの溶液100mLを10mL/分の滴下速度で滴下した。滴下終了後、10分間経過した後に、めっき液を加えた分散液を濾過した。濾過物を水で洗浄した後、80℃の真空乾燥機で乾燥した。このようにして、0.02μmの膜厚の金めっき被膜(金の純度100%)からなる第2金属層を形成した。その後、ジェットミルにて、凝集体をほぐし、メッシュの開口径が2μm角である直径7cmの篩を通すことで、凝集体を取り除いた。
【0157】
<実施例47~50>
表1記載の凹溝、コア粒子、第1金属層、第2金属層としたこと以外は、実施例46と同様にして、コアシェル型はんだ粒子を作製し、回収及び評価した。結果を表6に示す。
【0158】
<実施例51~55>
工程b1に代えて、以下の工程b2を行ったこと以外は、表7に示す構成で、実施例1~5と同様にして、コアシェル型はんだ粒子を作製し、回収及び評価した。結果を表8に示す。
(工程b2)はんだ微粒子の準備
In-Snはんだ微粒子(5N Plus社製、融点119℃、Type8)100gを、蒸留水に浸漬し、超音波分散させた後、静置し、上澄みに浮遊するはんだ微粒子を回収した。この操作を繰り返して、10gのはんだ微粒子を回収した。得られたはんだ微粒子の平均粒子径は1.0μm、C.V.値は41%であった。
【0159】
<実施例56~60>
工程b1に代えて、以下の工程b3を行ったこと以外は、表7に示す構成で、実施例31~35と同様にして、コアシェル型はんだ粒子を作製し、回収及び評価した。結果を表8に示す。
(工程b3)はんだ微粒子の準備
In-Snはんだ微粒子(5N Plus社製、融点119℃、Type8)100gを、蒸留水に浸漬し、超音波分散させた後、静置し、上澄みに浮遊するはんだ微粒子を回収した。この操作を繰り返して、10gのはんだ微粒子を回収した。得られたはんだ微粒子の平均粒子径は1.0μm、C.V.値は41%であった。
【0160】
<実施例61~65>
工程b1に代えて、以下の工程b4を行ったこと以外は、表7に示す構成で、実施例41~45と同様にして、コアシェル型はんだ粒子を作製し、回収及び評価した。結果を表8に示す。
(工程b4)はんだ微粒子の準備
In-Snはんだ微粒子(5N Plus社製、融点119℃、Type8)100gを、蒸留水に浸漬し、超音波分散させた後、静置し、上澄みに浮遊するはんだ微粒子を回収した。この操作を繰り返して、10gのはんだ微粒子を回収した。得られたはんだ微粒子の平均粒子径は1.0μm、C.V.値は41%であった。
【0161】
【0162】
【0163】
【0164】
【0165】
【0166】
【0167】
【0168】
【0169】
<作製例1>
(A)異方性導電フィルムの作製
(工程f1)フラックスコートはんだ粒子の製造
実施例1と同じ方法でコアシェル型はんだ粒子を作製した。得られたはんだ粒子200gと、アジピン酸40gと、アセトン70gとを3つ口フラスコに秤量し、次にはんだ粒子表面の水酸基とアジピン酸のカルボキシル基との脱水縮合反応を触媒するジブチル錫オキシド0.3gを添加し、60℃で4時間反応させた。その後、はんだ粒子を濾過して回収した。回収したはんだ粒子と、アジピン酸50gと、トルエン200gと、パラトルエンスルホン酸0.3gとを3つ口フラスコに秤量し、真空引き、及び還流を行いながら、120℃で、3時間反応させた。この際、ディーンスターク抽出装置を用いて、脱水縮合により生成した水を除去しながら反応させた。その後、濾過によりはんだ粒子を回収し、ヘキサンにて洗浄し、乾燥した。乾燥後のはんだ粒子を気流式解砕機で解砕し、音波篩によりメッシュを通すことで、フラックスコートはんだ粒子を得た。
(工程g1)フラックスコートはんだ粒子の配置
開口径1.8μmφ、底部径1.5μmφ、深さ1.3μm(底部径1.5μmφは、開口部を上面からみると、開口径1.8μmφの中央に位置する)の凹部を複数有する転写型(ポリイミドフィルム、厚さ100μm)を準備した。なお、複数の凹部は、1.0μmの間隔で規則的に配列させた。この転写型の凹部に、それぞれ工程f1で得たフラックスコートはんだ粒子を配置した。
(工程h1)接着フィルムの作製
フェノキシ樹脂(ユニオンカーバイド社製、商品名「PKHC」)100gと、アクリルゴム(ブチルアクリレート40質量部、エチルアクリレート30質量部、アクリロニトリル30質量部、グリシジルメタクリレート3質量部の共重合体、分子量:85万)75gとを、酢酸エチル400gに溶解し、溶液を得た。この溶液に、マイクロカプセル型潜在性硬化剤を含有する液状エポキシ樹脂(エポキシ当量185、旭化成エポキシ株式会社製、商品名「ノバキュアHX-3941」)300gを加え、撹拌して接着剤溶液を得た。得られた接着剤溶液を、セパレータ(シリコーン処理したポリエチレンテレフタレートフィルム、厚さ40μm)にロールコータを用いて塗布し、90℃で10分間の加熱することにより乾燥して、厚さ2、3、8、12及び20μmの接着フィルム(絶縁性フィルム)をセパレータ上に作製した。
(工程i1)フラックスコートはんだ粒子の転写
セパレータ上に形成された接着フィルムと、工程g1でフラックスコートはんだ粒子が配置された転写型とを向かい合わせて配置し、接着フィルムにフラックスコートはんだ粒子を転写させた。
(工程j1)異方性導電フィルムの作製
工程i1で得た接着フィルムの転写面に、工程h1と同様の方法で作製された接着フィルムを接触させ、50℃、0.1MPa(1kgf/cm2)で加熱・加圧させることで、フィルムの断面視において、フラックスコートはんだ粒子が層状に配列された異方性導電フィルムを得た。なお、厚さ2μmのフィルムに対しては2μmを重ね合わせ、同様に、3μmには3μm、8μmには8μm、15μmには15μm、20μmには20μmを重ね合わることで、4μm、6μm、16μm、30μm及び40μmの厚みの異方性導電フィルムを作製した。
(B)接続構造体の作製
(工程k1)銅バンプ付きチップの準備
下記に示す、5種類の銅バンプ付きチップ(1.7×1.7mm、厚さ:0.5mm)を準備した。
・チップC1…面積30μm×30μm、スペース30μm、高さ:10μm、バンプ数362
・チップC2…面積25μm×25μm、スペース20μm、高さ:10μm、バンプ数362
・チップC3…面積10μm×10μm、スペース10μm、高さ:7μm、バンプ数362
・チップC4…面積5μm×5μm、スペース6μm、高さ:5μm、バンプ数362
・チップC5…面積2μm×2μm、スペース2μm、高さ:5μm、バンプ数362
(工程l1)銅バンプ付き基板の準備
下記に示す、5種類の銅バンプ付き基板(厚さ:0.7mm)を準備した。
・基板D1…面積30μm×30μm、スペース30μm、高さ:10μm、バンプ数362
・基板D2…面積25μm×25μm、スペース10μm、高さ:10μm、バンプ数362
・基板D3…面積10μm×10μm、スペース10μm、高さ:7μm、バンプ数362
・基板D4…面積5μm×5μm、スペース6μm、高さ5μm、バンプ数362
・基板D5…面積2μm×2μm、スペース2μm、高さ:5μm、バンプ数362
(工程m1)
次に、工程j1作製した異方性導電フィルムを用いて、銅バンプ付きチップ(1.7×1.7mm、厚さ:0.5mm)と、銅バンプ付き基板(厚さ:0.7mm)との接続を、以下に示すi)~iii)の手順に従って行うことによって接続構造体を得た。
i)異方性導電フィルム(2×19mm)の片面のセパレータ(シリコーン処理したポリエチレンテレフタレートフィルム、厚さ40μm)を剥がし、異方性導電フィルムと銅バンプ付き基板を接触させ、80℃、0.98MPa(10kgf/cm2)で貼り付けた。
ii)セパレータを剥離し、銅バンプ付きチップのバンプと銅バンプ付き基板のバンプの位置合わせを行った。
iii)180℃、40gf/バンプ、30秒の条件でチップ上方から加熱及び加圧を行い、本接続を行った。以下の(1)~(5)の「チップ/異方性導電フィルム/基板」の組み合わせで、(1)~(5)に係る計5種類の接続構造体をそれぞれ作製した。
(1)チップC1/40μmの厚みの導電フィルム/基板D1
(2)チップC2/30μmの厚みの導電フィルム/基板D2
(3)チップC3/16μmの厚みの導電フィルム/基板D3
(4)チップC4/6μmの厚みの導電フィルム/基板D4
(5)チップC5/4μmの厚みの導電フィルム/基板D5
【0170】
<作製例2~5>
実施例2~5と同じ方法で作製したコアシェル型はんだ粒子を用いたこと、及び、転写型として実施例2~5のコアシェル型はんだ粒子作製に用いた基体と同じ形状の転写型を用いたこと以外は、作製例1と同じ方法で異方導電性フィルム及び接続構造体の作製を行った。
【0171】
<作製例6~10>
実施例31~35と同じ方法で作製したコアシェル型はんだ粒子を用いたこと、及び、転写型として実施例31~35のコアシェル型はんだ粒子作製に用いた基体と同じ形状の転写型を用いたこと以外は、作製例1と同じ方法で異方導電性フィルム及び接続構造体の作製を行った。
【0172】
<作製例11~15>
実施例41~45と同じ方法で作製したコアシェル型はんだ粒子を用いたこと、及び、転写型として実施例41~45のコアシェル型はんだ粒子作製に用いた基体と同じ形状の転写型を用いたこと以外は、作製例1と同じ方法で異方導電性フィルム及び接続構造体の作製を行った。
【0173】
<作製例16~30>
実施例51~65と同じ方法で作製したコアシェル型はんだ粒子を用いたこと、及び、転写型として実施例51~65のコアシェル型はんだ粒子作製に用いた基体と同じ形状で底部直径がコアシェル型はんだ粒子径と近い転写型を用いたこと以外は、作製例1と同じ方法で異方導電性フィルム及び接続構造体の作製を行った。
【0174】
[接続構造体の評価]
得られた接続構造体の一部について、導通抵抗試験及び絶縁抵抗試験を以下のように行った。
【0175】
(導通抵抗試験-吸湿耐熱試験)
銅バンプ付きチップ(バンプ)/銅バンプ付き基板(バンプ)間の導通抵抗に関して、導通抵抗の初期値と吸湿耐熱試験(温度85℃、湿度85%の条件で100、500、1000時間放置)後の値を、20サンプルについて測定し、それらの平均値を算出した。
得られた平均値から下記基準に従って導通抵抗を評価した。結果を表9に示す。なお、吸湿耐熱試験1000時間後に、下記A又はBの基準を満たす場合は導通抵抗が良好といえる。
A:導通抵抗の平均値が2Ω未満
B:導通抵抗の平均値が2Ω以上5Ω未満
C:導通抵抗の平均値が5Ω以上10Ω未満
D:導通抵抗の平均値が10Ω以上20Ω未満
E:導通抵抗の平均値が20Ω以上
【0176】
(導通抵抗試験-高温放置試験)
銅バンプ付きチップ(バンプ)/銅バンプ付き基板(バンプ)間の導通抵抗に関して、高温放置前と、高温放置試験後(温度100℃の条件で100、500、1000時間放置)のサンプルについて測定した。なお、高温放置後は、落下衝撃を加え、落下衝撃後のサンプルの導通抵抗を測定した。落下衝撃は、前記の接続構造体を、金属板にネジ止め固定し、高さ50cmから落下させた。落下後、最も衝撃の大きいチップコーナーのはんだ接合部(4箇所)において直流抵抗値を測定し、測定値が初期抵抗から5倍以上増加したときに破断が生じたとみなして、評価を行った。なお、20サンプル、4箇所で合計80箇所の測定を行った。結果を表10に示す。落下回数20回後に下記A又はBの基準を満たす場合をはんだ接続信頼性が良好であると評価した。
A:落下回数20回後において、初期抵抗から5倍以上増加したはんだ接続部が、80箇所全てにおいて認められなかった。
B:落下回数20回後において、初期抵抗から5倍以上増加したはんだ接続部が、1箇所以上5箇所以内で認められた。
C:落下回数20回後において、初期抵抗から5倍以上増加したはんだ接続部が、6箇所以上20箇所以内で認められた。
D:落下回数20回後において、初期抵抗から5倍以上増加したはんだ接続部が、21箇所以上で認められた。
【0177】
(絶縁抵抗試験)
チップ電極間の絶縁抵抗に関しては、絶縁抵抗の初期値とマイグレーション試験(温度60℃、湿度90%、20V印加の条件で100、500、1000時間放置)後の値を、20サンプルについて測定し、全20サンプル中、絶縁抵抗値が109Ω以上となるサンプルの割合を算出した。得られた割合から下記基準に従って絶縁抵抗を評価した。結果を表5に示す。なお、吸湿耐熱試験1000時間後に、下記A又はBの基準を満たした場合は絶縁抵抗が良好といえる。
A:絶縁抵抗値109Ω以上の割合が100%
B:絶縁抵抗値109Ω以上の割合が90%以上100%未満
C:絶縁抵抗値109Ω以上の割合が80%以上90%未満
D:絶縁抵抗値109Ω以上の割合が50%以上80%未満
E:絶縁抵抗値109Ω以上の割合が50%未満
【0178】
【0179】
【0180】
本開示の方法で得られたコアシェル型はんだ粒子は、安定した接続抵抗を高温・高湿度試験後でも達成した。また、隣接電極間の絶縁性も高く、ショート不良が起きにくいことが分かった。また、本開示のコアシェル型はんだ粒子製造方法では、最外層のはんだ層の組成を自在に変化させ、様々な厚みに用意に調整することが可能であった。
【0181】
はんだ微粒子の中心粒子径が小さいほど、凹部のサイズが小さい(たとえば、底部2μmや3μm)において、還元・溶解後に得られるコアシェル型はんだ粒子のC.V.値は低くなる傾向がある。これは、はんだ微粒子の中心粒子径が小さいほど、凹部への充填率が向上し、複数の凹部間での充填ばらつきが低減するためと考えられる。
【0182】
本開示の方法であれば、はんだ微粒子の組成を変更するだけで、粒子径がそろった融点の異なるはんだ層を最外層に有するコアシェル型はんだ粒子を容易に得られる。
【0183】
凹部の断面形状は各種用いることができる。すなわち、コアシェル型はんだ粒子の最終利用方法や形態に合わせて凹部の断面形状は適宜選択出来る。例えば、樹脂中にコアシェル型はんだ粒子を分散し、インクのように流動性を確保する場合は、コアシェル型はんだ粒子の表面は連続曲面を有している方が好ましいと考えられる。一方、フィルム中にコアシェル型はんだ粒子を分散し、圧着工程により電極にはんだ粒子を接触させる場合、電極の形状や材質によって、コアシェル型はんだ粒子に平面部があると、接触時の電極への衝撃を緩和し、電極の破損を防ぐことが出来る。また、圧着工程で加熱により粘度が低下した樹脂が流動し、電極上から動いてしまうことがあるが、平面部を有する場合、電極との接触面積が高くなりやすく、フラックスによる酸化被膜除去時に素早く電極への濡れが広がるため、樹脂流動による移動が抑制出来る利点もある。樹脂ペーストにおいても同様の現象がみられる。
【0184】
また、一部に平坦部を有するはんだ粒子を、接着樹脂フィルムに転写もしくは、基体に接着樹脂を流し込んでフィルム化したのち、基体を除去すると、フィルム内において、コアシェル型はんだ粒子の平坦部の向きが略同一方向にそろえることが出来る。このようなコアシェル型はんだ粒子入り接着樹脂フィルムを用いて、電極同士を圧着実装した場合、非常に薄く、または弱い材質で出来た電極に対して、平坦部の面により接触するため、電極破損を抑制することが出来る。また、濡れ広がりが難しい電極に対しても、圧着時に平坦部が面で接触することで、球面の点接触よりもコアシェル型はんだ粒子の酸化被膜の除去による濡れ広がりが起こりやすい利点がある。実利用上、接続したい電極同士は、その構成も材質も異なる場合が一般的で、本願のように、コアシェル型はんだ粒子の平坦部などの向きを概ねそろえられる特徴は、電極材質に合わせて、接着樹脂フィルムの配置位置を選択してより確実な接続を実現できる特徴がある。
【0185】
更に、凹部断面形状が、
図2(e)のような底部に向かって円錐状になっている場合、得られるコアシェル型はんだ粒子は、はんだの表面張力により鋭角部は無いものの、連続的に断面直径が変化した疑似円錐状のようになる。本開示の方法では、このような粒子を基体凹部に再配置し、接着樹脂フィルムに転写もしくは、基体に接着樹脂を流し込んでフィルム化したのち、基体を除去すると、疑似円錐状のコアシェル型はんだ粒子が厚み方向に向きを揃えて配置出来る。このような接着樹脂フィルムを圧着実装に用いると、はんだ粒子の断面が細い部分により樹脂排除性が高まり、電極にコアシェル型はんだ粒子が容易に接触し、安定した接続が得られる利点がある。
【符号の説明】
【0186】
1…コアシェル型はんだ粒子、1a…はんだ層、2…絶縁性フィルム、2a…絶縁性樹脂組成物、2b…第一の樹脂層、2c…第一の樹脂層の表面、2d…第二の樹脂層、10…異方性導電フィルム、12…コア粒子、12a…芯材、12b…金属層、30…第一の回路部材、31…第一の回路基板、32…第一の電極、40…第二の回路部材、41…第二の回路基板、42…第二の電極、50A~50F…接続構造体、55…絶縁樹脂層、60…基体、62…凹部、70…はんだ接続層、71…金属間化合物からなる層、111…はんだ微粒子。