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特許7400531情報処理システム、情報処理装置、プログラム、情報処理方法及び部屋
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】情報処理システム、情報処理装置、プログラム、情報処理方法及び部屋
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/01 20060101AFI20231212BHJP
   G06F 3/16 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
G06F3/01 510
G06F3/16 650
G06F3/16 640
G06F3/16 620
G06F3/16 610
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020030869
(22)【出願日】2020-02-26
(65)【公開番号】P2021135701
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2022-12-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】村田 晴紀
【審査官】円子 英紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-336445(JP,A)
【文献】特開2010-198870(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/01
G06F 3/048-3/04895
G06F 3/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空間に設置された映像を表示する映像表示装置と、前記空間の中にいるユーザが所持し、所持するユーザの位置情報を検知するための信号を出力するセンサ装置と、前記映像表示装置及び前記センサ装置とにデータ通信可能に接続される情報処理装置と、を有する情報処理システムであって、
前記情報処理装置は、
前記空間内にいる複数人のユーザが所持する前記センサ装置からそれぞれ出力された信号に基づいて検知した前記空間の中にいる複数人のユーザのそれぞれの位置情報をユーザに関連付けて記憶するユーザ情報記憶手段と、
前記複数人のユーザのそれぞれの位置情報に基づいて、前記映像表示装置が表示する映像による前記複数人のユーザ間のコミュニケーションを支援する環境演出を制御する環境演出手段と、
を有し、
前記環境演出手段は、前記複数人のユーザのそれぞれの位置情報から算出される前記複数人のユーザの間の距離に基づき、前記映像表示装置が表示する映像の大きさ又は光量を制御すること
を特徴とする情報処理システム。
【請求項2】
前記情報処理装置は、
前記複数人のユーザの発話量を、マイクからの出力信号に基づき、それぞれ計測する発話量計測手段、を更に有し、
前記環境演出手段は、前記発話量計測手段による計測の結果に基づいて前記複数人のユーザの中から発話中のユーザを特定し、発話中のユーザと発話中以外のユーザとを視覚的に区別できるように、前記環境演出を制御すること
を特徴とする請求項1記載の情報処理システム。
【請求項3】
前記環境演出手段は、発話中以外のユーザから見た発話中のユーザの背後の領域が、他の領域よりも明るくなるように、前記環境演出を制御すること
を特徴とする請求項2記載の情報処理システム。
【請求項4】
前記情報処理装置は、
前記複数人のユーザに対する音をスピーカから出力する音出力制御手段、を更に有し、
前記環境演出手段は、前記複数人のユーザの間の距離に基づき、前記スピーカからの音出力の音量が変化するように前記音の音響演出を制御すること
を特徴とする請求項記載の情報処理システム。
【請求項5】
前記ユーザ情報記憶手段は、前記複数人のユーザがそれぞれ所持する操作デバイスからの電波に基づき、前記空間の中にいる複数人のユーザのそれぞれの位置情報をユーザに関連付けて記憶すること
を特徴とする請求項1乃至の何れか一項記載の情報処理システム。
【請求項6】
前記環境演出手段は、前記空間を仕切る1つ以上の面に前記映像表示装置が表示する映像によって前記環境演出を変化させること
を特徴とする請求項1乃至の何れか一項記載の情報処理システム。
【請求項7】
前記情報処理装置は、
前記複数人のユーザの発話内容を、マイクからの出力信号に基づき、音声認識する発話内容認識手段、を更に有し、
前記環境演出手段は、前記発話内容認識手段による音声認識の結果に基づいて、前記複数人のユーザの発話内容に応じた映像を前記映像表示装置が追加表示するように前記環境演出を制御すること
を特徴とする請求項1乃至の何れか一項記載の情報処理システム。
【請求項8】
前記ユーザ情報記憶手段は、前記空間の中にいる複数人のユーザのそれぞれの位置情報の変化をログ情報として記憶しており、
前記環境演出手段は、前記ログ情報に基づいて、前記空間の中にいる複数人のユーザのそれぞれの位置情報の軌跡に応じたレポート出力を行うこと
を特徴とする請求項1乃至の何れか一項記載の情報処理システム。
【請求項9】
空間に設置された映像を表示する映像表示装置、及び前記空間の中にいるユーザが所持し、所持するユーザの位置情報を検知するための信号を出力するセンサ装置とデータ通信可能に接続された情報処理装置であって、
前記空間内にいる複数人のユーザが所持する前記センサ装置からそれぞれ出力された信号に基づいて検知した前記空間の中にいる複数人のユーザのそれぞれの位置情報をユーザに関連付けて記憶するユーザ情報記憶手段と、
前記複数人のユーザのそれぞれの位置情報に基づいて、前記映像表示装置が表示する映像による前記複数人のユーザ間のコミュニケーションを支援する環境演出を制御する環境演出手段と、
を有し
前記環境演出手段は、前記複数人のユーザのそれぞれの位置情報から算出される前記複数人のユーザの間の距離に基づき、前記映像表示装置が表示する映像の大きさ又は光量を制御すること
を特徴とする情報処理装置。
【請求項10】
空間に設置された映像を表示する映像表示装置、及び前記空間の中にいるユーザが所持し、所持するユーザの位置情報を検知するための信号を出力するセンサ装置とデータ通信可能に接続された情報処理装置を、
前記空間内にいる複数人のユーザが所持する前記センサ装置からそれぞれ出力された信号に基づいて検知した前記空間の中にいる複数人のユーザのそれぞれの位置情報をユーザに関連付けて記憶するユーザ情報記憶手段、
前記複数人のユーザのそれぞれの位置情報に基づいて、前記映像表示装置が表示する映像による前記複数人のユーザ間のコミュニケーションを支援する環境演出を制御する環境演出手段、
として機能させ
前記環境演出手段は、前記複数人のユーザのそれぞれの位置情報から算出される前記複数人のユーザの間の距離に基づき、前記映像表示装置が表示する映像の大きさ又は光量を制御すること
を特徴とするプログラム。
【請求項11】
空間に設置された映像を表示する映像表示装置と、前記空間の中にいるユーザが所持し、所持するユーザの位置情報を検知するための信号を出力するセンサ装置と、前記映像表示装置及び前記センサ装置とにデータ通信可能に接続される情報処理装置と、を有する情報処理システムの情報処理方法であって、
前記空間内にいる複数人のユーザが所持する前記センサ装置からそれぞれ出力された信号に基づいて検知した前記空間の中にいる複数人のユーザのそれぞれの位置情報をユーザに関連付けて記憶するステップと、
前記複数人のユーザのそれぞれの位置情報に基づいて、前記映像表示装置が表示する映像による前記複数人のユーザ間のコミュニケーションを支援する環境演出を制御するステップと、
を有し、
前記環境演出を制御するステップは、前記複数人のユーザのそれぞれの位置情報から算出される前記複数人のユーザの間の距離に基づき、前記映像表示装置が表示する映像の大きさ又は光量を制御すること
を特徴とする情報処理方法。
【請求項12】
請求項1乃至の何れか一項記載の情報処理システムを有する部屋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理システム、情報処理装置、プログラム、情報処理方法及び部屋に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、オフィスでの会議やプレゼンテーションにおいて、人感センサの検知結果に基づいて、照明装置、プロジェクタ、格納式スクリーン、ブラインドなどの各装置が映像を投影可能な環境へ、ユーザに煩雑な動作を行わせることなく準備できる技術が知られている(例えば特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
近年のクラウドコンピューティングの普及により、ユーザは例えば遠隔会議サービスを利用できるようになった。遠隔会議サービスを利用することで、ユーザは交通費や移動時間を節約しながら、異なる場所にいるユーザと遠隔会議を行うことができる。このような遠隔会議は、今後ますます利用されることが予想される。
【0004】
したがって、同一の場所にユーザが集まって(直接会って)行う会議は、遠隔会議とは異なる価値を提供することが求められる。なお、特許文献1は、このような問題について記載されているものではない。
【0005】
本発明の実施の形態は、同一の空間にいる複数人のユーザのコミュニケーションを支援するための効果的な演出を行う情報処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題を達成するために本願請求項1は、空間に設置された映像を表示する映像表示装置と、前記空間の中にいるユーザが所持し、所持するユーザの位置情報を検知するための信号を出力するセンサ装置と、前記映像表示装置及び前記センサ装置とにデータ通信可能に接続される情報処理装置と、を有する情報処理システムであって、前記情報処理装置は、前記空間内にいる複数人のユーザが所持する前記センサ装置からそれぞれ出力された信号に基づいて検知した前記空間の中にいる複数人のユーザのそれぞれの位置情報をユーザに関連付けて記憶するユーザ情報記憶手段と、前記複数人のユーザのそれぞれの位置情報に基づいて、前記映像表示装置が表示する映像による前記複数人のユーザ間のコミュニケーションを支援する環境演出を制御する環境演出手段と、を有し、前記環境演出手段は、前記複数人のユーザのそれぞれの位置情報から算出される前記複数人のユーザの間の距離に基づき、前記映像表示装置が表示する映像の大きさ又は光量を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の実施の形態によれば、同一の空間にいる複数人のユーザのコミュニケーションを支援するための効果的な演出を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態に係る情報処理システムの一例の構成図である。
図2】本実施形態に係る会議室の一例について説明するための図である。
図3】本実施形態に係るコンピュータの一例のハードウェア構成図である。
図4】本実施形態に係るスマートフォンの一例のハードウェア構成図である。
図5】本実施形態に係るプロジェクタの一例のハードウェア構成図である。
図6】本実施形態に係る情報処理装置の一例の機能構成図である。
図7】本実施形態に係る情報処理システムで利用するテーブルの一例の構成図である。
図8】本実施形態に係る情報処理システムの処理手順を示した一例のフローチャートである。
図9】発話状態にあるユーザへのスポットライト処理の一例を示すイメージ図である。
図10】発話状態にあるユーザへのスポットライト処理手順の一例のフローチャートである。
図11】ユーザ間の距離に応じたスポットライト処理の一例を示すイメージ図である。
図12】ユーザ間の距離に応じたスポットライト処理の具体例を示す一例のイメージ図である。
図13】ユーザ間の距離に応じたスポットライト処理手順の一例のフローチャートである。
図14】ユーザ間の距離に応じたスポットライト処理手順の他の例のフローチャートである。
図15】ユーザ間の距離に応じた音出力処理手順の一例のフローチャートである。
図16】本実施形態に係る情報処理システムのレポート出力の処理手順を示した一例のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。本実施形態では複数人のユーザが集まる空間の例として、会議室の例を説明するが、会議室に限定するものではなく、セミナーや講義を行う部屋やミーティングスペースなど、様々な空間に適用できる。
【0010】
[第1の実施形態]
<システム構成>
図1は、本実施形態に係る情報処理システムの一例の構成図である。図2は本実施形態に係る会議室の一例について説明するための図である。図1の情報処理システム1は、情報処理装置10、映像表示装置12、センサ装置14、スピーカ16、カメラ18、操作デバイス20、ライト30、スピーカ32、におい出力装置34、及びセンサ装置36がインターネットやLANなどのネットワーク40を介して通信可能に有線又は無線接続されている。また、操作デバイス20は、マイク22、タグ24、及び操作ボタン26を有する構成である。なお、会議室には形状や機能の異なる複数種類の操作デバイス20を準備するようにしてもよい。例えば操作デバイス20はタッチパネル、ジャイロセンサ、触覚センサなどを有する構成であってもよい。また、操作デバイス20は大きさや質感が異なるものであってもよい。
【0011】
会議室には、映像表示装置12、センサ装置14、スピーカ16、カメラ18、及び操作デバイス20が設けられている。また、会議室に入る前にユーザが通過するアプローチは、ライト30、スピーカ32、におい出力装置34、及びセンサ装置36を有する構成である。図1では情報処理装置10が会議室の外に設けられている例を示したが、会議室の中に設けられていてもよい。
【0012】
アプローチのセンサ装置36はアプローチを通過するユーザのタグから発信される発信ビーコン(電波)を、ユーザの位置情報を検知するための信号として受信し、情報処理装置10に通知する。アプローチのライト30は情報処理装置10の制御により光を出力する。アプローチのスピーカ32は情報処理装置10の制御により音を出力する。アプローチのにおい出力装置34は、情報処理装置10の制御により、においを出力する。
【0013】
情報処理装置10は、センサ装置36から通知された信号によりユーザの位置情報を検知し、検知したユーザの位置情報に従い、ユーザの気持ちを光、音、香りでリセットさせるアプローチ演出処理を行う。アプローチは、一人ずつしか通れない幅とすることで、会議室に入る又は会議室から出てきたユーザが個に戻る時間とすることが望ましい。会議室に入るユーザへのアプローチ演出処理及び会議室から出てきたユーザへのアプローチ演出処理は、異なっていてもよい。
【0014】
会議室のセンサ装置14は会議室にいるユーザのタグから発信される電波を、ユーザの位置情報を検知するための信号として受信し、情報処理装置10に通知する。センサ装置14はユーザの位置情報を検知するための信号を出力できる測位システムのセンサであればよく、計測対象側として専用タグ、スマートフォンや各種BLEセンサに対応するものであってもよい。情報処理装置10は一つ以上のセンサ装置14から通知されたユーザの位置情報を検知するための信号に基づき、会議室にいるユーザの位置情報をそれぞれ検知する。
【0015】
会議室の操作デバイス20は測位システムによる計測対象の一例である。例えば会議室のセンサ装置14は、操作デバイス20のタグ24から発信される電波を受信し、情報処理装置10に通知することにより、例えば図2に示すように、その操作デバイス20を持つユーザの会議室の中における位置情報を検知するための信号を、情報処理装置10に通知できる。なお、操作デバイス20が内蔵する形態のタグ24は一例であって、それ以外の形態のタグを利用してもよい。
【0016】
会議室のカメラ18は会議室を撮影し、撮影した映像データを情報処理装置10に通知する。カメラ18は例えばKinect(登録商標)のビデオカメラを利用できる。カメラ18にKinect(登録商標)を利用する場合は、距離画像センサ、赤外線センサ、アレイマイクによる検出結果と、姿勢認識技術との組み合わせにより、ユーザの動き・姿勢を認識することができる。姿勢認識技術とは、ユーザがどのような姿勢をしているかを推定する技術である。
【0017】
会議室にある複数台の映像表示装置12はプロジェクタであって、図2に示すような会議室を仕切る面の一例の壁(前壁、後壁、右壁、及び左壁など)及び床に映像を情報処理装置10の制御により表示する。複数台の映像表示装置12を利用することで会議室は壁及び床の全面に投影が可能である。なお、会議室にある複数台の映像表示装置12は会議室の壁及び床に埋め込まれたディスプレイ装置であってもよい。壁及び床に埋め込まれたディスプレイ装置を利用することで、会議室は壁及び床への映像の表示が可能となる。以下では、映像表示装置12がプロジェクタである例を説明する。会議室のスピーカ16は情報処理装置10の制御により音を出力する。なお、図2で示した会議室の形状はあくまで一例であって、他の形状であってもよい。また、会議室は全て壁、床、天井等の面で仕切られている必要はなく、一部面で仕切られていないオープンな空間があってもよい。
【0018】
操作デバイス20は例えばユーザが手に持って利用することができるが、時計や眼鏡などユーザが身に着けて利用するウェアラブルデバイスの形態であってもよい。操作デバイス20のマイク22は、ユーザの声を電気信号に変換する。タグ24は測位システムによる計測対象の一例である。操作ボタン26はユーザからの操作を受け付ける。操作デバイス20はユーザの声から変換した電気信号を、出力信号として情報処理装置10に送信する。操作デバイス20は操作ボタン26から受け付けたユーザの操作を、操作信号として情報処理装置10に送信する。
【0019】
情報処理装置10は、センサ装置14から通知された信号により検知したユーザの位置情報、操作デバイス20のマイク22からの出力信号、及び操作デバイス20の操作ボタン26からの操作信号に基づき、会議室にいるユーザのチームワークを向上させることを目的として、同一の空間にいる複数人のユーザのコミュニケーションを支援するための後述のような環境演出処理を行う。
【0020】
また、情報処理装置10は後述のような環境演出処理により、例えばチームでのアイデアの発想を支援する。本実施形態に係る情報処理システム1では、後述のような映像や音響による環境演出の制御により、会議室の中にいる複数人のユーザのチームワークを向上させる。さらに、情報処理装置10は後述のような環境演出処理により、個人の創造性の最大化と、チーム作業による多様性の実現と、を両立させる。例えば情報処理装置10は後述のような環境演出処理により個人の脳を刺激することでアイデアの発散を支援し、アイデア発想の質を引き上げることができる。
【0021】
後述のような環境演出処理の制御が可能な会議室は、例えばユーザがお酒を飲んで酔い、気分が上がり、発想を助けられたりコミュニケーションが促進されたりする効果を、デジタルによる環境演出(環境効果)によって実現する空間である。このような空間を以下ではデジタルアルコール空間と呼ぶことがある。デジタルアルコール空間は、個(ユーザ)が集まって生み出されるチームワークを最大化し、クリエイティブなモチベーションに変える空間である。なお、デジタルアルコール空間は、例えば仕事そのものを効率化するだけではなく、環境効果によって仕事をする人自身の感情・モチベーションを向上し、創造を支援する。
【0022】
なお、図1に示す情報処理システム1の構成は一例である。例えば情報処理装置10は単一のコンピュータ又は複数台のコンピュータにより実現してもよく、又、クラウドサービスを利用して実現してもよい。また、情報処理装置10は、例えば、PJ(Projector:プロジェクタ)、IWB(Interactive White Board:相互通信が可能な電子式の黒板機能を有する白板)、デジタルサイネージ等の出力装置、HUD(Head Up Display)装置、産業機械、撮像装置、集音装置、医療機器、ネットワーク家電、自動車(Connected Car)、ノートPC(Personal Computer)、携帯電話、スマートフォン、タブレット端末、ゲーム機、PDA(Personal Digital Assistant)、デジタルカメラ、ウェアラブルPCまたはデスクトップPC等であってもよい。
【0023】
<ハードウェア構成>
《コンピュータ》
情報処理装置10は、例えば図3に示すハードウェア構成のコンピュータ500により実現される。
【0024】
図3は、本実施形態に係るコンピュータ500の一例のハードウェア構成図である。図3に示されているように、コンピュータ500はCPU(Central Processing Unit)501、ROM(Read Only Memory)502、RAM(Random Access Memory)503、HD504、HDD(Hard Disk Drive)コントローラ505、ディスプレイ506、外部機器接続I/F(Interface)508、ネットワークI/F509、データバス510、キーボード511、ポインティングデバイス512、DVD-RW(Digital Versatile Disk Rewritable)ドライブ514、メディアI/F516を備えている。
【0025】
これらのうち、CPU501は、コンピュータ500全体の動作を制御する。ROM502は、IPL等のCPU501の駆動に用いられるプログラムを記憶する。RAM503は、CPU501のワークエリアとして使用される。HD504は、プログラム等の各種データを記憶する。HDDコントローラ505は、CPU501の制御にしたがってHD504に対する各種データの読み出し又は書き込みを制御する。
【0026】
ディスプレイ506は、カーソル、メニュー、ウインドウ、文字、又は画像などの各種情報を表示する。外部機器接続I/F508は、各種の外部機器を接続するためのインターフェースである。この場合の外部機器は、例えば、USB(Universal Serial Bus)メモリやプリンタ等である。ネットワークI/F509は、ネットワーク40を利用してデータ通信をするためのインターフェースである。データバス510は、CPU501等の各構成要素を電気的に接続するためのアドレスバスやデータバス等である。
【0027】
キーボード511は、文字、数値、各種指示などの入力のための複数のキーを備えた入力手段の一種である。ポインティングデバイス512は、各種指示の選択や実行、処理対象の選択、カーソルの移動などを行う入力手段の一種である。DVD-RWドライブ514は、着脱可能な記録媒体の一例としてのDVD-RW513に対する各種データの読み出し又は書き込みを制御する。なお、DVD-RWに限らず、DVD-R等であってもよい。メディアI/F516は、フラッシュメモリ等の記録メディア515に対するデータの読み出し又は書き込み(記憶)を制御する。
【0028】
《スマートフォン》
操作デバイス20は例えば図4に示すハードウェア構成のスマートフォン600により実現してもよい。
【0029】
図4は本実施形態に係るスマートフォン600の一例のハードウェア構成図である。図4に示されているように、スマートフォン600は、CPU601、ROM602、RAM603、EEPROM604、CMOSセンサ605、撮像素子I/F606、加速度・方位センサ607、メディアI/F609、GPS受信部611を備えている。
【0030】
これらのうち、CPU601は、スマートフォン600全体の動作を制御する。ROM602は、CPU601やIPL等のCPU601の駆動に用いられるプログラムを記憶する。RAM603は、CPU601のワークエリアとして使用される。EEPROM604は、CPU601の制御にしたがって、スマートフォン用プログラム等の各種データの読み出し又は書き込みを行う。
【0031】
CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサ605は、CPU601の制御に従って被写体(主に自画像)を撮像して画像データを得る内蔵型の撮像手段の一種である。なお、CMOSセンサ605ではなく、CCD(Charge Coupled Device)センサ等の撮像手段であってもよい。撮像素子I/F606は、CMOSセンサ605の駆動を制御する回路である。加速度・方位センサ607は、地磁気を検知する電子磁気コンパスやジャイロコンパス、加速度センサ等の各種センサである。
【0032】
メディアI/F609は、フラッシュメモリ等の記録メディア608に対するデータの読み出し又は書き込み(記憶)を制御する。GPS受信部611は、GPS衛星からGPS信号を受信する。
【0033】
また、スマートフォン600は、遠距離通信回路612、CMOSセンサ613、撮像素子I/F614、マイク615、スピーカ616、音入出力I/F617、ディスプレイ618、外部機器接続I/F619、近距離通信回路620、近距離通信回路620のアンテナ620a、及びタッチパネル621を備えている。
【0034】
これらのうち、遠距離通信回路612は、ネットワーク40を介して、他の機器と通信する回路である。CMOSセンサ613は、CPU601の制御に従って被写体を撮像して画像データを得る内蔵型の撮像手段の一種である。撮像素子I/F614は、CMOSセンサ613の駆動を制御する回路である。マイク615は、音を電気信号に変える内蔵型の回路である。スピーカ616は、電気信号を物理振動に変えて音楽や音声などの音を生み出す内蔵型の回路である。
【0035】
音入出力I/F617は、CPU601の制御に従ってマイク615及びスピーカ616との間で音信号の入出力を処理する回路である。ディスプレイ618は、被写体の画像や各種アイコン等を表示する液晶や有機EL(Electro Luminescence)などの表示手段の一種である。
【0036】
外部機器接続I/F619は、各種の外部機器を接続するためのインターフェースである。近距離通信回路620は、NFC(Near Field Communication)やBluetooth(登録商標)等の通信回路である。タッチパネル621は、利用者がディスプレイ618を押下することで、スマートフォン600を操作する入力手段の一種である。
【0037】
また、スマートフォン600は、バスライン610を備えている。バスライン610は図4に示されているCPU601等の各構成要素を電気的に接続するためのアドレスバスやデータバス等である。
【0038】
《プロジェクタ》
映像表示装置12の一例であるプロジェクタ700は例えば図5に示すハードウェア構成により実現してもよい。
【0039】
図5は本実施形態に係るプロジェクタ700の一例のハードウェア構成図である。図5に示すように、プロジェクタ700は、CPU701、ROM702、RAM703、メディアI/F707、操作部708、電源スイッチ709、バスライン710、ネットワークI/F711、LED(Light Emitting Diode)駆動回路714、LED光源715、投写デバイス716、投写レンズ717、外部機器接続I/F718、ファン駆動回路719、冷却ファン720を備えている。
【0040】
これらのうち、CPU701は、プロジェクタ700全体の動作を制御する。ROM702は、CPU701の駆動に用いられるプログラムを記憶する。RAM703は、CPU701のワークエリアとして使用される。メディアI/F707は、フラッシュメモリ等の記録メディア706に対するデータの読み出し又は書き込み(記憶)を制御する。
【0041】
操作部708は種々のキー、ボタン及びLED等が配設されており、ユーザによるプロジェクタ700の電源のON/OFF以外の各種操作を行うのに使用される。例えば操作部708は投写画像の大きさの調整操作、色調の調整操作、ピント調整操作、キーストン調整操作等の指示操作を受け付けて、受け付けた操作内容をCPU701に出力する。
【0042】
電源スイッチ709は、プロジェクタ700の電源のON/OFFを切り換えるためのスイッチである。バスライン710は、図5に示されているCPU701等の各構成要素を電気的に接続するためのアドレスバスやデータバス等である。ネットワークI/F711は、インターネット等の通信ネットワーク9を利用してデータ通信をするためのインターフェースである。
【0043】
LED駆動回路714は、CPU701の制御下で、LED光源715の点灯及び消灯を制御する。LED光源715は、LED駆動回路714の制御によって点灯されると、投写光を投写デバイス716に照射する。投写デバイス716は、外部機器接続I/F718等を介して与えられた画像データに基づいて、空間光変調方式によりLED光源715からの投写光を変調して得た変調光を、投写レンズ717を通して、スクリーンの投写面へ画像として投写する。投写デバイス716としては、例えば、液晶パネルまたはDMD(Digital Micromirror Device)等が用いられている。
【0044】
上記LED駆動回路714、LED光源715、投写デバイス716及び投写レンズ717は、全体として、画像データに基づいて投写面に投写画像を投写する投写部(投写手段)として機能している。
【0045】
外部機器接続I/F718は、直接、PC(Personal Computer)が接続され、PCとの間で、制御信号や画像データを取得する。また、外部機器接続I/F718は各種の外部機器(スティックPC730など)を接続するためのインターフェースである。ファン駆動回路719は、CPU701及び冷却ファン720に接続されており、CPU701からの制御信号に基づいて、冷却ファン720の駆動/駆動停止を行う。冷却ファン720は、回転することで、プロジェクタ700の内部の空気を排気して、プロジェクタ700の内部を冷却する。
【0046】
また、CPU701は、電源電力が供給されると、ROM702に予め記憶されている制御プログラムに従って起動し、LED駆動回路714に制御信号を与えてLED光源715を点灯させるとともに、ファン駆動回路719に制御信号を与えて冷却ファン720を所定の定格回転数で回転させる。また、プロジェクタ700は、電源回路からの電源電力の供給が開始されると、投写デバイス716が画像表示可能状態になり、更に、他の種々の構成要素へ電源回路から電力が供給される。また、プロジェクタ700は電源スイッチ709がOFF操作されると、電源スイッチ709から電源OFF信号がCPU701に送られる。
【0047】
CPU701は、電源OFF信号を検知すると、LED駆動回路714へ制御信号を与えてLED光源715を消灯させる。CPU701は、その後、所定時間が経過すると、ファン駆動回路719へ制御信号を与えて冷却ファン720を停止させるとともに、自身で自身の制御処理を終了させ、最後に電源回路へ指示を与えて電源電力の供給を停止させる。
【0048】
<機能構成>
本実施形態に係る情報処理装置10は、例えば図6に示すような機能構成により実現される。図6は本実施形態に係る情報処理装置の一例の機能構成図である。なお、図6の機能構成は、本実施形態の説明に不要な構成について適宜省略している。
【0049】
図6の情報処理装置10は、受信部50、ユーザ検知部52、発話量計測部54、発話内容認識部56、環境演出部58、映像出力制御部60、音出力制御部62、ライト制御部64、におい出力制御部66、及び記憶部68を有する構成である。
【0050】
受信部50は、センサ装置14及び36から、ユーザの位置情報を検知するための信号を受信する。受信部50はカメラ18の撮影結果を受信する。また、受信部50は操作デバイス20のマイク22が変換したユーザの声の出力信号、及び操作ボタン26が受け付けたユーザの操作信号を受信する。
【0051】
ユーザ検知部52は、センサ装置14又は36から受信したユーザの位置情報を検知するための信号から、会議室の中にいるユーザの位置情報又はアプローチを通過するユーザの位置情報、を検知する。発話量計測部54は、操作デバイス20から受信したユーザの声の出力信号から、会議室の中にいるユーザの発話量をそれぞれ計測する。
【0052】
発話内容認識部56は、操作デバイス20から受信したユーザの声の出力信号から、会議室の中にいるユーザの発話内容をそれぞれ音声認識する。環境演出部58は、ユーザ検知部52が検知したユーザの位置情報、発話量計測部54が計測したユーザの発話量、及び発話内容認識部56が音声認識したユーザの発話内容、に基づき、会議室(デジタルアルコール空間)の環境演出及びアプローチのアプローチ演出を決定する。
【0053】
環境演出部58は、決定した環境演出及びアプローチ演出が実行されるように、映像出力制御部60、音出力制御部62、ライト制御部64、及びにおい出力制御部66を制御する。映像出力制御部60は、環境演出部58による制御に基づき、映像表示装置12が表示する映像による環境演出を制御する。音出力制御部62は、環境演出部58による制御に基づき、スピーカ16及び32が出力する音による環境演出及びアプローチ演出を制御する。ライト制御部64は、環境演出部58による制御に基づき、ライト30が出力する光によるアプローチ演出を制御する。におい出力制御部66は、環境演出部58による制御に基づき、におい出力装置34が出力するにおいによるアプローチ演出を制御する。
【0054】
記憶部68は例えば図7に示すようなテーブルを記憶している。図7は本実施形態に係る情報処理システムで利用するテーブルの一例の構成図である。なお、図7で示されているように必ずしもテーブル形式である必要はなく、同様の情報を記憶して管理できていればよい。
【0055】
図7(a)は映像表示装置情報記憶部の一例の構成図である。映像表示装置情報管理記憶部は項目として、映像表示装置IDに壁及び床の投影範囲情報を関連付けて管理されている。映像表示装置IDは映像表示装置12を識別する識別情報の一例である。壁の投影範囲情報は、それぞれの映像表示装置12が、会議室内のどの壁のどの範囲を投影可能かを表す情報である。床の投影範囲情報は、それぞれの映像表示装置12が、会議室内の床のどの範囲を投影可能かを表す情報である。また、映像表示装置12がプロジェクタの場合には、映像表示装置IDには壁又は床の投影範囲情報の少なくとも何れかが関連付けられていればよい。
【0056】
なお、映像表示装置12がディスプレイの場合には、映像表示装置IDに壁及び床の表示範囲情報が映像表示装置情報記憶部において関連付けて管理される。壁の表示範囲情報は会議室に設置されているそれぞれのディスプレイがどの壁のどの範囲で表示可能かを表す情報である。床の表示範囲情報は会議室に設置されているそれぞれのディスプレイがどの床のどの範囲で表示可能かを表す情報である。また、映像表示装置12がディスプレイの場合には、映像表示装置IDには壁又は床の表示範囲情報の少なくとも何れかが関連付けられていればよい。
【0057】
また、図7(b)はユーザ情報記憶部の一例の構成図である。ユーザ情報記憶部は項目として、ユーザID、タグID、位置情報、及び発話状態情報を有する。ユーザIDはユーザを識別する識別情報の一例である。タグIDは操作デバイス20のタグ24を識別する識別情報の一例である。位置情報は、検知したユーザの位置情報である。
【0058】
発話状態情報は後述の発話中のユーザと発話中以外のユーザとを識別するための情報である。発話状態情報「True」は後述の発話中のユーザであることを表す。また、発話状態情報「False」は後述の発話中以外のユーザであることを表す。なお、位置情報はユーザの位置情報を検知するたびに更新されるため、空間内の最新の位置情報がユーザIDに関連付けられて管理されている。
【0059】
また、図7(c)はログ記憶部の一例の構成図である。ログ記憶部は図7(b)に示したユーザ情報を、会議が開始されてから終了するまでのログ情報として記憶する。ログ記憶部は項目として、日時、ユーザID、タグID、位置情報、発話状態情報、及び発話量情報を有する。なお、発話量情報は発話量計測部54において計測された発話量を示しているが、図7(c)のように発話量の大きさをレベルで示してもよいし、計測値などの数値で示してもよい。
【0060】
また、例えば図7(c)のログ記憶部の場合は「17:00」に「userA」「userB」が参加済みであり、「17:01」に「userC」が遅れて参加したことが分かる。
【0061】
<処理>
本実施形態に係る情報処理システム1は、例えば図8に示すような手順でデジタルアルコール空間を実現する。図8は、本実施形態に係る情報処理システムの処理手順を示した一例のフローチャートである。
【0062】
本実施形態に係る情報処理システム1では、ステップS10においてアプローチを通過するユーザを検知すると、ステップS12に進み、環境演出部58がライト制御部64、音出力制御部62、及びにおい出力制御部66をそれぞれ制御することによって、アプローチのライト30、スピーカ32、及びにおい出力装置34によるユーザの気持ちを光、音、香りでリセットさせるアプローチ演出処理を行う。アプローチ演出処理としては例えばアプローチのライト30の光量を下げる演出処理、スピーカ32によりリラックス効果のある環境音楽を出力する演出処理、におい出力装置34によりリラックス効果のある香りを出力させる演出処理等を実行する。また、例えばアプローチ演出処理では、デジタルアルコール空間に入る又はデジタルアルコール空間から出るユーザが通過する通路において、ユーザを特定し、ユーザごとにアプローチ演出処理を異ならせるようにしてもよい。このような場合には予めユーザIDとアプローチ演出処理の内容を関連付けたユーザ情報を管理しておき、特定したユーザIDと管理しているユーザ情報に基づいてアプローチ演出処理を決定することでユーザごとにアプローチ演出処理を異ならせることができる。なお、アプローチ演出処理は、光、音、香りによる演出処理の少なくとも1つを含めばよく、アプローチのライト30、スピーカ32、及びにおい出力装置34の少なくとも1つを制御すればよい。
【0063】
また、本実施形態に係る情報処理システム1では、ステップS14において会議室の中にいるユーザを検知すると、ステップS16に進み、会議室の映像表示装置12、及びスピーカ16を制御して、後述のような映像や音響による環境演出処理を行う。環境演出処理は、例えば後述するような発話状態にあるユーザへのスポットライト処理、ユーザ間の距離に応じたスポットライト処理、ユーザ間の距離に応じた音出力処理など、である。
【0064】
以下では、映像や音響による環境演出処理の一例として、発話状態にあるユーザへのスポットライト処理、ユーザ間の距離に応じたスポットライト処理、ユーザ間の距離に応じた音出力処理、及びレポート処理について説明する。なお、本実施形態に係る環境演出処理は上記の処理例に限定されるものではない。
【0065】
例えばセンサ装置14から通知された信号などの会議室の中の複数人のユーザの状態を表す情報に基づいて、会議室の中にいるユーザのチームの状態を判断し、その判断結果に応じてチームの状態を適切な方向に移行させるような処理であればよい。
【0066】
《発話状態にあるユーザへのスポットライト処理》
ここでは図9及び図10を用いて、発話状態にあるユーザへのスポットライト処理の一例について説明する。図9は発話状態にあるユーザへのスポットライト処理の一例を示すイメージ図である。図10は発話状態にあるユーザへのスポットライト処理手順の一例のフローチャートである。
【0067】
発話状態にあるユーザへのスポットライト処理は、例えば図9に示すように、会議室の中にいる複数人のユーザを、発話中のユーザと発話中以外のユーザとに分け、発話中以外のユーザから見た発話中のユーザの背後の壁上の領域1000にスポットライトを当てる処理である。なお、スポットライト処理は領域1000を領域1000以外の領域よりも明るくする処理の他、領域1000の色が領域1000以外の領域の色よりも目立つようにする処理であってもよい。また、発話状態にあるユーザへのスポットライト処理は発話中のユーザの足元の領域にスポットライトを当てる処理であってもよい。
【0068】
図9に示すように環境演出された会議室では、発話中以外のユーザが、発話中のユーザを視覚的に区別できるため、発話中以外のユーザが発話中のユーザに注目することが期待できる。なお、図9では会議室の壁や床に映像の投影が可能な複数台の映像表示装置12のうち、一台の映像表示装置12を示し、他の映像表示装置12を省略している。
【0069】
発話中以外のユーザが複数人いる場合は、発話中以外のユーザそれぞれから見た発話中のユーザの背後の壁上の領域1000それぞれにスポットライトを当ててもよいし、何れかの領域1000を選択してスポットライトを当ててもよい。
【0070】
また、領域1000にスポットライトを当てられる映像表示装置12が複数台存在している場合は、複数台の映像表示装置12で領域1000にスポットライトを当てるようにしてもよいし、優先度に応じてスポットライトを当てる映像表示装置12を選択するようにしてもよい。
【0071】
図9に示したスポットライト処理は、例えば図10の処理手順で実現できる。ステップS20において、環境演出部58は発話量計測部54が会議室の中にいるユーザの発話量を計測すると、ステップS22に進む。ステップS22において、環境演出部58は発話量計測部54が計測したユーザの発話量に基づき、発話中のユーザを特定する。ここで発話中のユーザとは、発話量を計測したユーザが一人であれば、そのユーザである。発話量を計測したユーザが複数人であれば、発話量を計測したユーザから、所定のロジックに基づいてさらに発話中のユーザを特定してもよい。所定のロジックとは、例えば計測した発話量が一番大きいユーザを発話中のユーザとするロジックやユーザIDに関連付けておいた優先度が高いユーザを発話中のユーザとするロジックを含むが他のロジックであってもよい。
【0072】
ステップS24に進み、環境演出部58は例えば図7(b)のユーザ情報記憶部から発話中のユーザ及び発話中以外のユーザの位置情報を取得する。ステップS26に進み、環境演出部58は、発話中のユーザの位置情報、及び発話中以外のユーザの位置情報に基づいて、発話中以外のユーザから見た発話中のユーザの背後の領域1000が映像表示装置12により明るく照らされるように、映像出力制御部60を制御する。なお、映像表示装置12がディスプレイの場合には、ディスプレイによって表示される表示内容が明るくなるように映像出力制御部60を制御する。なお、表示内容全体が明るくなる必要はなく、表示内容のうち少なくとも一部が明るくなるように制御すればよい。
【0073】
会議室の中にいるユーザの発話が終了するか発話中のユーザが変化するまで、環境演出部58はステップS24~S30の処理を繰り返す。発話中のユーザが変化すると、環境演出部58はステップS22に戻り、発話中のユーザを特定した後でステップS24~S30の処理を繰り返す。また、会議室の中にいるユーザの発話が終了すると、環境演出部58は図10のフローチャートの処理を終了する。
【0074】
《ユーザ間の距離に応じたスポットライト処理》
ここでは図11図13を用いて、ユーザ間の距離に応じたスポットライト処理の一例について説明する。図11はユーザ間の距離に応じたスポットライト処理の一例を示すイメージ図である。図12はユーザ間の距離に応じたスポットライト処理の具体例を示す一例のイメージ図である。図13はユーザ間の距離に応じたスポットライト処理手順の一例のフローチャートである。
【0075】
ユーザ間の距離に応じたスポットライト処理は、例えば図11に示すように、会議室の中にいる複数人のユーザの間の距離に基づき、ユーザの足元に当てるスポットライトの領域1000の大きさを変化させる処理である。なお、スポットライト処理は領域1000を領域1000以外の領域よりも明るくする処理の他、領域1000の色が領域1000以外の領域の色よりも目立つようにする処理であってもよい。
【0076】
会議室の中にいる複数人のユーザの間の距離に基づき、ユーザの足元に当てるスポットライトの領域1000の大きさを変化させる処理は、ユーザ間の距離が遠いほど、例えば図12(A)に示すように領域1000を大きくするように、映像出力制御部60を制御する。また、会議室の中にいる複数人のユーザの間の距離に基づき、ユーザの足元に当てるスポットライトの領域1000の大きさを変化させる処理は、ユーザ間の距離が近いほど、例えば図12(B)に示すように領域1000を小さくするように、映像出力制御部60を制御する。
【0077】
なお、図12の例は一例であって、ユーザ間の距離が遠いほど領域1000を小さくするように映像出力制御部60を制御し、ユーザ間の距離が近いほど領域1000を大きくするように映像出力制御部60を制御するようにしてもよい。
【0078】
図11及び図12に示したスポットライト処理は、例えば図13に示した手順で実現できる。ステップS40において、環境演出部58はユーザ検知部52により会議室の中にいる複数人のユーザが検知されると、ステップS42に進む。
【0079】
ステップS42において、環境演出部58は検知した複数人のユーザの位置情報を例えば図7(b)のユーザ情報記憶部から取得する。ステップS44において、環境演出部58は検知した複数人のユーザの位置情報から、会議室の中にいる複数人のユーザ間の距離を算出する。
【0080】
ステップS46に進み、環境演出部58は算出したユーザ間の距離に基づき、ユーザの足元を照らす領域1000の大きさを、例えば図12のように変化させるように、映像出力制御部60を制御する。会議が終了するまで、環境演出部58はステップS42~S48の処理を繰り返す。ユーザが検知されなくなり、会議が終了すると、環境演出部58は図13のフローチャートの処理を終了する。
【0081】
図14はユーザ間の距離に応じたスポットライト処理手順の他の例のフローチャートである。図14に示したユーザ間の距離に応じたスポットライト処理は、会議室の中にいる複数人のユーザの間の距離に基づき、ユーザの足元を照らす領域1000の光量を変化させる処理である。
【0082】
会議室の中にいる複数人のユーザの間の距離に基づき、ユーザの足元を照らす領域1000の光量を変化させる処理は、例えばユーザ間の距離が遠いほど、領域1000の光量を下げ、ユーザ間の距離が近いほど、領域1000の光量を上げるように、映像出力制御部60を制御する。
【0083】
なお、会議室の中にいる複数人のユーザの間の距離に基づき、ユーザの足元を照らす領域1000の光量を変化させる処理は、例えばユーザ間の距離が遠いほど、領域1000の光量を上げ、ユーザ間の距離が近いほど、領域1000の光量を下げるように、映像出力制御部60を制御してもよい。
【0084】
ステップS60において、環境演出部58はユーザ検知部52により会議室の中にいる複数人のユーザが検知されると、ステップS62に進む。ステップS62において、環境演出部58は検知した複数人のユーザの位置情報を例えば図7(b)のユーザ情報記憶部から取得する。ステップS64において、環境演出部58は検知した複数人のユーザの位置情報から、会議室の中にいる複数人のユーザ間の距離を算出する。
【0085】
ステップS66に進み、環境演出部58は算出したユーザ間の距離に基づき、ユーザの足元を照らす領域1000の光量が変化するように、映像出力制御部60を制御する。会議が終了するまで、環境演出部58はステップS62~S68の処理を繰り返す。ユーザが検知されなくなり、会議が終了すると、環境演出部58は図14のフローチャートの処理を終了する。
【0086】
《ユーザ間の距離に応じた音出力処理》
次に、ユーザ間の距離に応じた音出力処理の一例について説明する。図15はユーザ間の距離に応じた音出力処理手順の一例のフローチャートである。図15に示したユーザ間の距離に応じた音出力処理は、会議室の中にいる複数人のユーザの間の距離に基づき、会議室への音出力の音量を変化させる処理である。
【0087】
会議室の中にいる複数人のユーザの間の距離に基づき、会議室への音出力の音量を変化させる処理は、例えばユーザ間の距離が遠いほど、音出力の音量を上げ、ユーザ間の距離が近いほど、音出力の音量を下げるように、音出力制御部62を制御する。
【0088】
なお、会議室の中にいる複数人のユーザの間の距離に基づき、会議室への音出力の音量を変化させる処理は、例えばユーザ間の距離が遠いほど、音出力の音量を下げ、ユーザ間の距離が近いほど、音出力の音量を上げるように、音出力制御部62を制御してもよい。
【0089】
ステップS80において、環境演出部58はユーザ検知部52により会議室の中にいる複数人のユーザが検知されると、ステップS82に進む。ステップS82において、環境演出部58は検知した複数人のユーザの位置情報を例えば図7(b)のユーザ情報記憶部から取得する。ステップS84において、環境演出部58は検知した複数人のユーザの位置情報から、会議室の中にいる複数人のユーザ間の距離を算出する。
【0090】
ステップS86に進み、環境演出部58は算出したユーザ間の距離に基づき、会議室のスピーカ16からの音出力の音量が変化するように、音出力制御部62を制御する。会議室の中にいるユーザの発話があるか、会議が終了するか、するまで、環境演出部58はステップS82~S94の処理を繰り返す。
【0091】
会議室の中にいるユーザの発話があると、環境演出部58はステップS90に進み、音出力の音量を下げるように、音出力制御部62を制御し、会議室の中にいるユーザの発話が無くなるまで、音出力の音量を下げた状態を維持する。なお、会議室の中にいるユーザの発話が無くなると、ステップS86による音出力の音量に戻る。そして、ユーザが検知されなくなり、会議が終了すると、環境演出部58は図15のフローチャートの処理を終了する。
【0092】
《レポート処理》
次に、ユーザから受け付けた操作とユーザの位置情報とに応じて環境演出を行い、会議の終了後にレポートを出力するレポート処理の一例について説明する。図16は、本実施形態に係る情報処理システムのレポート出力の処理手順を示した一例のフローチャートである。
【0093】
ステップS100において、環境演出部58はユーザから会議時間(活動時間)の指定を受け付け、会議を開始する。環境演出部58はユーザからの操作を受け付けるか、会議室の中にいるユーザの発話があるか、会議時間が終了するか、するまで、ステップS102~S112の処理を繰り返す。
【0094】
ユーザからの操作を受け付けると、環境演出部58はステップS104に進み、ユーザの位置情報を例えば図7(b)のユーザ情報記憶部から取得する。ステップS106において環境演出部58は、ユーザから受け付けた操作とユーザの位置情報とに応じて、映像表示装置12及びスピーカ16による環境演出を行う。
【0095】
例えばステップS106では、ユーザから受け付けた操作とユーザの位置情報とに基づいて、デジタルアルコール空間の壁や床への情報・映像コンテンツの投影、壁や床に投影されている情報・映像コンテンツの選択、選択した情報・映像コンテンツの移動や拡大縮小などが行えるようにしてもよい。
【0096】
また、会議室の中にいるユーザの発話があると、環境演出部58はステップS110に進み、操作デバイス20から受信したユーザの声の出力信号から音声認識されたユーザの発話内容に応じて、デジタルアルコール空間の壁や床への情報・映像コンテンツの追加投影を行う。
【0097】
ステップS110におけるデジタルアルコール空間の壁や床への追加投影は、必ずしもユーザの発話内容に応じた情報・映像コンテンツでなくてもよく、ランダムな情報・映像コンテンツであってもよい。ランダムな情報・映像コンテンツをデジタルアルコール空間の壁や床へ追加投影することで、環境演出部58は会議に参加するユーザの思考の集中と発散とをコントロールすることができる。
【0098】
また、本実施形態に係る情報処理システム1は同一の情報・映像コンテンツであっても追加投影されるデジタルアルコール空間の壁や床により、表示される内容が異なる(例えば右脳的な表示や左脳的な表示など)フィードバックにより、会議に参加しているユーザの思考の集中と発散とをコントロールしてもよい。
【0099】
なお、ユーザが検知されなくなり、会議が終了すると、環境演出部58はステップS114に進み、会議室内でのユーザの移動軌跡などの会議中の状態を、レポートとして出力する。例えば、会議室内でのユーザの移動軌跡をレポートとして出力する場合には、図7(c)のログ記憶部の情報を参照し、会議開始から終了までの各ユーザの位置情報をユーザがコミュニケーションを行った空間の画像データや映像データに軌跡としてマッピングする描画処理を実行することで、ユーザの移動軌跡を可視化する画像データ又は映像データを作成する。空間の画像データや映像データは空間内に設置されたカメラ18で撮影したデータであってもよいし、予め記憶しておいた画像データや映像データであってもよい。このようにして環境演出部58は作成した画像データ又は映像データをレポートとして出力することができる。
【0100】
また、ログ記憶部において管理されている発話状態も参照することで、発話状態にある日時の位置情報を軌跡として描画処理をする場合には発話状態にない場合と異なる色や形状で軌跡を描画処理して区別できるようにしてもよい。また、同様にして計測した発話量の大きさに応じて描画処理する軌跡の色や形状を異ならせてもよい。
【0101】
このようなレポートを参照することで、環境演出によって複数人のユーザ間のコミュニケーションがどの程度活性化されたのか振り返ることができる。
【0102】
本発明は、具体的に開示された上記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。なお、本実施形態で説明した情報処理システム1は一例であって、用途や目的に応じて様々なシステム構成例があることは言うまでもない。
【0103】
上記で説明した実施形態の各機能は、一又は複数の処理回路によって実現することが可能である。ここで、本明細書における「処理回路」とは、電子回路により実装されるプロセッサのようにソフトウェアによって各機能を実行するようプログラミングされたプロセッサや、上記で説明した各機能を実行するよう設計されたASIC(Application Specific Integrated Circuit)、DSP(digital signal processor)、FPGA(field programmable gate array)や従来の回路モジュール等のデバイスを含むものとする。
【0104】
実施例に記載された装置群は、本明細書に開示された実施形態を実施するための複数のコンピューティング環境のうちの1つを示すものにすぎない。ある実施形態では、情報処理装置10はサーバクラスタといった複数のコンピューティングデバイスを含む。複数のコンピューティングデバイスは、ネットワーク40や共有メモリなどを含む任意のタイプの通信リンクを介して互いに通信するように構成されており、本明細書に開示された処理を実施する。
【0105】
さらに、情報処理装置10は、開示された処理ステップを様々に組み合わせることもできる。情報処理装置10の各要素は、1つの装置にまとめられていてもよいし、複数の装置に分けられていてもよい。
【符号の説明】
【0106】
1 情報処理システム
10 情報処理装置
12 映像表示装置
14 センサ装置
16 スピーカ
18 カメラ
20 操作デバイス
22 マイク
24 タグ
26 操作ボタン
30 ライト
32 スピーカ
34 におい出力装置
36 センサ装置
50 受信部
52 ユーザ検知部
54 発話量計測部
56 発話内容認識部
58 環境演出部
60 映像出力制御部
62 音出力制御部
64 ライト制御部
66 におい出力制御部
68 記憶部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0107】
【文献】特開2016-32205号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16