(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】医療用器具
(51)【国際特許分類】
A61F 2/966 20130101AFI20231212BHJP
【FI】
A61F2/966
(21)【出願番号】P 2020033449
(22)【出願日】2020-02-28
【審査請求日】2022-11-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】野 静香
(72)【発明者】
【氏名】松田 茉悠子
【審査官】星名 真幸
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/043719(WO,A1)
【文献】特開2019-170520(JP,A)
【文献】国際公開第2011/122444(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0247211(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/966
A61M 25/09
A61M 25/092
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠位端および近位端を有するチューブ状の第1部材と、
遠位端および近位端を有し、前記第1部材にスライド可能に挿通してある第2部材と、
前記第1部材の近位端側の部分がその内部に引き込まれるとともに、前記第2部材が固定してあるハウジングと、
前記ハウジングに、前記第1部材の該ハウジング内に存在する部分の延在方向に対して遠位端側から近位端側に向かって斜めに交差する方向にスライド可能に設けられる押圧部材と、
前記第1部材の前記ハウジング内に存在する部分の少なくとも一部に設けられ、略三角形状の断面形状を有する線材を外側に凸部が形成されるようにコイル状に巻回した形状のコイル部材と、
前記押圧部材にその基端部が固定され、その先端が前記コイル部材の遠位端側の面の一部に圧接して、該第1部材を近位端側にスライドさせる弾性部材と、を有し、
前記コイル部材の凸部の遠位端側の面が径方向の外側より内側が近位端側に位置するように傾斜している医療用器具。
【請求項2】
前記コイル部材を構成する線材の断面形状は略直角二等辺三角形状であり、一方の等辺に係る面が遠位端側の面であり、他方の等辺に係る面の遠位端側が前記第1部材に当接する請求項1に記載の医療用器具。
【請求項3】
前記コイル部材を構成する線材の断面における頂角に係る部分はR面取りされた形状である請求項1または2に記載の医療用器具。
【請求項4】
前記コイル部材は、その遠位端が前記ハウジングの外側に位置するように設けられた請求項1~3のいずれかに記載の医療用器具。
【請求項5】
前記第1部材としてアウターシースを、前記第2部材としてインナーシースを備え、該インナーシースの遠位端部にステントが配置されるステント配置部を有し、該インナーシースに対してアウターシースをスライドさせることにより、該ステント配置部に配置されたステントをリリースするようにしたステントデリバリー装置である請求項1~4のいずれかに記載の医療用器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば内視鏡を利用して、ステントを体内に留置するために用いられるステントデリバリー装置等の体外における操作により体内組織に対して処置を行うための医療用器具に関する。
【背景技術】
【0002】
狭窄化した消化器管や血管等の体内管腔の開存を確保するために、狭窄部位にステントを留置する医療方法が知られている。ステントは、狭窄部位を拡張させることによって管腔の開存が確保されるように留置されるデバイスである。ステントとしては、バルーン拡張型、自己拡張型などがあるが、自己拡張型のステントを管腔に留置するための装置としては、たとえば、下記特許文献1に記載のものが知られている。
【0003】
特許文献1に記載のステントデリバリー装置は、インナーシース(内管)と、該インナーシースがスライド可能に挿通されたアウターシース(外管)とを有し、インナーシースの遠位端近傍に設けられたステント配置部にステントを配置して、アウターシースの遠位端近傍の内側で該ステントを弾性変形により縮径させた状態で保持する。そして、その近位端側に設けられた操作部(ハンドル)を操作して、インナーシースに対してアウターシースを引き戻すように近位端側にスライドさせることにより、アウターシースからステントを開放して、ステントの自己拡張力によってステントを拡径させてリリースする。
【0004】
特許文献1に記載のステントデリバリー装置では、操作部の小型・軽量化を図る観点から、アウターシースの操作部(ハウジング)内に引き込まれた部分を含む近位端部に断面が略多角形状の弾性線材をコイル状に巻回してなるコイル部材を外嵌固定し、アウターシースに対して遠位端から近位端に向かって斜め方向にスライド可能なプッシュボタンに固定された板バネを設けている。プッシュボタンを押圧することにより、板バネの先端がコイル部材の凸部の遠位端側の面に係合して、アウターシースを一定量スライドさせ、プッシュボタンの押圧および押圧解除を繰り返すことにより、アウターシースをインナーシースに対してステントの開放に必要な量だけ近位端側にスライドさせる。
【0005】
しかしながら、この従来技術では、プッシュボタンを押圧して板バネの先端をコイル部材の凸部の遠位端側の面に係合させてアウターシースを押し込んだ際に、板バネの先端が外側に滑って外れてしまう(係合が解除されてしまう)場合がある。このため、アウターシースのスライド量が不足して、ステントを十分に展開させることができない場合があり、操作の確実性が低いという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、操作の確実性が高い医療用器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係る医療用器具は、
遠位端および近位端を有するチューブ状の第1部材と、
遠位端および近位端を有し、前記第1部材にスライド可能に挿通してある第2部材と、
前記第1部材の近位端側の部分がその内部に引き込まれるとともに、前記第2部材が固定してあるハウジングと、
前記ハウジングに、前記第1部材の該ハウジング内に存在する部分の延在方向に対して遠位端側から近位端側に向かって斜めに交差する方向にスライド可能に設けられる押圧部材と、
前記第1部材の前記ハウジング内に存在する部分の少なくとも一部に設けられ、略三角形状の断面形状を有する線材を外側に凸部が形成されるようにコイル状に巻回した形状のコイル部材と、
前記押圧部材にその基端部が固定され、その先端が前記コイル部材の凸部の遠位端側の面の一部に圧接して、該第1部材を近位端側にスライドさせる弾性部材と、を有し、
前記コイル部材の凸部の遠位端側の面が径方向の外側より内側が近位端側に位置するように傾斜している医療用器具である。
【0009】
本発明に係る医療用器具では、押圧部材を押圧して押し込むと弾性部材の先端がコイル部材の凸部の遠位端側の面の一部に圧接して第1部材が第2部材に対して、該押圧部材のストロークに応じた一定量だけスライドされる。そして、コイル部材の凸部の遠位端側の面は、径方向の外側より内側が近位端側に位置するように傾斜しているため、押圧部材を押圧して弾性部材の先端をコイル部材の凸部の遠位端側の面に圧接させて第1部材をスライドさせた際に、弾性部材の先端が外側に滑って外れてしまうことを少なくでき、第1部材を第2部材に対して必要量だけ確実にスライドさせることができ、操作の確実性を高くすることができる。
【0010】
本発明に係る医療用器具において、前記コイル部材を構成する線材の断面形状は略直角二等辺三角形状であり、一方の等辺に係る面が遠位端側の面であり、他方の等辺に係る面の遠位端側が前記第1部材に当接するようにできる。たとえば断面形状が略直角二等辺三角形状の線材を柱状部材に巻き込んでコイル状のコイル部材を製造する場合に、他方の等辺に係る面の遠位端側が当該柱状部材に当接し、近位端側が離間するように傾けつつ巻き込みを実施することにより、凸部の遠位端側の面が径方向の外側より内側が近位端側に位置するように傾斜しているコイル部材を容易に得ることができる。
【0011】
本発明に係る医療用器具において、前記コイル部材を構成する線材の断面における頂角に係る部分をR面取りされた形状とすることができる。コイル部材を構成する線材を異形伸線加工により製造する場合に製造が容易である。
【0012】
本発明に係る医療用器具において、前記コイル部材は、その遠位端が前記ハウジングの外側に位置するように設けることができる。このように構成することによって、コイル部材により、第1部材のハウジング側の一部を湾曲可能に補強することができ、別途補強のための部材を設ける必要がなくなるため、その構成の簡略化と、操作部の小型・軽量化を図ることができる。
【0013】
本発明に係る医療用器具は、前記第1部材としてアウターシースを、前記第2部材としてインナーシースを備え、該インナーシースの遠位端部にステントが配置されるステント配置部を有し、該インナーシースに対してアウターシースをスライドさせることにより、該ステント配置部に配置されたステントをリリースするようにしたステントデリバリー装置として特に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係るステントデリバリー装置の全体構成を示す正面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示すステントデリバリー装置の遠位端部の構成を示す側面図である。
【
図3】
図3は、
図1に示すステントデリバリー装置の遠位端部の構成を示す一部断面図である。
【
図4】
図4は、
図1に示すステントデリバリー装置に適用されるステントの一例を示す側面図である。
【
図5】
図5は、
図1に示すステントデリバリー装置の操作部の構成を示す断面図であり、プッシュボタンを押圧しない状態を示す図である。
【
図6】
図6は、
図1に示すステントデリバリー装置の操作部の構成を示す断面図であり、プッシュボタンを押圧して押し込んだ状態を示す図である。
【
図7】
図7は、
図1に示すステントデリバリー装置の操作部の構成を示す断面図であり、アウターシースをストロークエンドまでスライドさせた状態を示す図である。
【
図8】
図8は、
図1に示すステントデリバリー装置の操作部の要部を拡大して示す一部断面図である。
【
図9】
図9は、
図1に示すステントデリバリー装置の操作部に用いられるコイル部材の断面図である。
【
図11】
図11は、
図1に示すステントデリバリー装置の操作部の変形例の構成を示す断面図である。
【
図12】
図12は、
図1に示すステントデリバリー装置の操作部の変形例の要部を拡大して示す一部断面図である。
【
図13】
図13は、
図1に示すステントデリバリー装置に適用されるステントの一例を示す展開図である。
【
図14】
図14は、
図1に示すステントデリバリー装置に適用されるステントの他の例を示す展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る医療用器具の一実施形態として、狭窄または閉塞した消化器官などの管腔(たとえば、大腸)の開存を確保するために、内視鏡を利用して、該狭窄または閉塞した部位に自己拡張型のステントを留置するために用いられるステントデリバリー装置について、図面を参照して説明する。
【0016】
ただし、本発明の医療用器具は、消化器官などの管腔の開存のみならず、胆管、尿管、血管、その他の管腔の開存を確保するためのステントを留置するためのステントデリバリー装置として用いることができる。また、胃と肝内胆管や十二指腸と総胆管等、管腔臓器と他の管腔臓器間をバイパスするためのステントを留置するためのステントデリバリー装置として用いることもできる。さらに、自己拡張型のステントを対象とするデリバリー装置のみならず、その径が固定されたチューブステントのデリバリー装置として用いることができる。
【0017】
なお、本発明の医療用器具は、ステントデリバリー装置にも限定されず、遠位端および近位端を有するチューブ状の第1部材内に、同じく遠位端および近位端を有するチューブ状またはワイヤ状の第2部材をスライド可能に挿通し、該第2部材に対して該第1部材を近位端側または遠位端側にスライドさせることにより処置を行うようにした医療用器具(内視鏡用処置具を含む)に広く適用することが可能である。
【0018】
まず、
図1を参照する。ステントデリバリー装置1は、不図示の内視鏡の処置具案内管を介して、患者の体内(管腔)に挿入される細長いカテーテル部2およびカテーテル部2の近位端側に接続され、体外側から体内のカテーテル部2を操作するための操作部(ハンドル)3、および留置対象としてのステント5を概略備えて構成されている。
【0019】
カテーテル部2は、遠位端および近位端を有するインナーシース(内管)21と、遠位端および近位端を有するアウターシース(外管)22とを備えている。
【0020】
インナーシース21および/またはアウターシース22の遠位端近傍には、造影マーカー(不図示)がそれぞれ取り付けられていてもよい。造影マーカーは、X線透視によりその位置が検出されて体内における標識となるものであり、たとえば金、白金、タングステン等の金属材料や、硫酸バリウムや酸化ビスマスがブレンドされたポリマー等により形成される。
【0021】
インナーシース21は可撓性を有する細長いチューブからなり、その内部にはカテーテル部2を患者の体内に挿入するためのガイドとして用いられるガイドワイヤ4が挿通される。ガイドワイヤ4を体内に挿入して体外と体内との経路を確保した後、ガイドワイヤ4に沿ってカテーテル部2を押し込む(進行させる)ことにより、カテーテル部2の遠位端側を体内の目的部位に挿入することができる。インナーシース21の外径は0.5~4.0mm程度である。
【0022】
インナーシース21の遠位端には、その先端(遠位端)に行くに従って細くなるように形成された先端チップ24が取り付けられている。先端チップ24はインナーシース21の内腔の遠位端に連通する開口24aをその中心軸に沿うように有しているとともに、その近位端部は、アウターシース22の内腔の遠位端部に挿入し得る程度の外径を有する細径部24bとなっている(
図2および
図3参照)。先端チップ24は、カテーテル部2の挿入抵抗を低減し、体内への挿入を容易にする役割を果たすものであり、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂、およびポリエチレン等のポリオレフィン樹脂等から形成することができる。
【0023】
インナーシース21の遠位端近傍には、固定リング25が一体的に固定されており、この固定リング25はステント5の近位端の位置を規定するためのものであり、この固定リング25から遠位端側の部分がステント配置部となっている。ステント配置部には、ステント5がインナーシース21を覆うように配置される。
【0024】
アウターシース22は可撓性を有する細長いチューブからなり、インナーシース21の外径よりも僅かに大きい内径を有しており、その内側にインナーシース21がスライド可能に挿通されている。アウターシース22の内径は0.5~4.5mm程度であり、外径は1.0~5.0mm程度である。アウターシース22は、操作部3を操作することにより、インナーシース21に対して軸方向にスライド(相対移動)可能となっている。
【0025】
インナーシース21、アウターシース22の材料としては、たとえば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリアミド、ポリエーテルポリアミド、ポリエステルポリアミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリテトラフルオロエチレンやテトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体等のフッ素系樹脂等の各種樹脂材料や、ポリスチレン系、ポリオレフィン系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系等の各種熱可塑性エラストマーを使用することがでる。これらのうち2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0026】
なお、アウターシース22がその内部にスライド可能に挿通される可撓性を有する細長いチューブからなる外套チューブが設けられる場合があるが、本実施形態では、外套チューブを設けていない。
【0027】
ステント5は、弾性変形により収縮されて縮径された状態から自己の弾性力によって拡径する自己拡張型のカバードステントであり、
図4に示すように、フレームにより形成される筒状のベアステント51と、ベアステント51の外周を覆う被覆フィルム部(不図示)とを有している。ベアステント51は、ニッケルチタン合金やコバルトクロム合金等の超弾性金属あるいは形状記憶金属等で形成されている。ベアステント51の表面は隣接するフレームの間を埋めるように広がったコーティング膜で覆われており、コーティング膜で覆われたベアステント51の外周が、ポリマーフィルム等の被覆フィルム部によって覆われている。
【0028】
ステント5の全長や径はその用途に応じて決定されるが、全長は、30~200mm程度であり、拡径時の外径は、φ2~φ30mm程度である。ステント5の縮径時の外径は、拡径時の外径に対して、数分の1程度である。大腸用ステントとしては、全長は、40~150mm程度であり、拡径時の外径は、φ16~φ22mm程度である。大腸用ステントの一例として、拡径時の外径が直径φ=18mm、全長L=60mmのステントの展開図を
図13に、拡径時の外径が直径φ=22mm、全長L=60mmのステントの展開図を
図14に示している。なお、本実施形態では、ステント5をステントデリバリー装置1の構成部材の一つとして説明しているが、ステント5はステントデリバリー装置1とは別部材として交換可能である。
【0029】
図1に戻り、ガイドワイヤ4は、ステントデリバリー装置1を体内管腔に挿入する際に、インナーシース21の内腔に挿通され、その遠位端はインナーシース21の先端チップ24の遠位端の開口24a(
図2および
図3参照)から突出するとともに、その近位端は操作部3を貫通して配置されたインナーシース21の近位端の突起部21aの開口を介して外側に露出するように配置される。
【0030】
次に、操作部3について、
図5~
図8を参照して説明する。操作部3は、術者が手でグリップして、ステント5のリリース操作を行うための手段であるハンドルを有している。ハンドルを構成するハウジング31は、術者の手によりグリップされた際に、人差し指、中指、薬指および小指(またはこれらの1つ以上)が配置できるように概略直線状の下辺部31aを有するとともに、親指の付け根の部分および手のひらの該親指の付け根の部分の近傍部分を配置できるように緩い逆円弧状の凹部を有する上辺部31bを有している。
【0031】
ハウジング31は、その内部に、インナーシース21およびアウターシース22の近位端側が引き込まれる略円柱状の空間を画成するシース収容部32を有している。シース収容部32の遠位端は、これらのシース21および22を引き込むために開口32aとなっており、シース収容部32の近位端は、アウターシース22の近位端が当接して該アウターシース22がスライドされた際のストロークエンドを規定する底面32bにより閉塞されている。底面32bの中央部には、通孔が形成されており、該通孔にインナーシース21の近位端が挿入され、その外周面において接着等により固定されている。ハウジング31の近位端部には、この通孔に連通する通孔を有する突起部21aが設けられている。
【0032】
ハウジング31の上辺部31bの遠位端寄りの部分には、プッシュボタン(押圧部材)33が、アウターシース22のハウジング31内に存在する部分の延在方向(シース収容部32の軸芯方向)に所定角度θ1で遠位端側から近位端側に向かって交差する方向A1にスライド可能に保持されている。すなわち、ハウジング31には、略円柱状の空間を画成するボタン収容部34が設けられており、このボタン収容部34は、その軸芯方向A1が、シース収容部32の軸芯方向(アウターシース22の延在方向)に所定角度θ1で交差する方向に略一致するように形成されている。
【0033】
ボタン収容部34の開口側には、略円柱状のプッシュボタン33の先端側が挿入されて、プッシュボタン33がボタン収容部34の軸芯方向に沿ってスライド可能に保持されている。図示は省略しているが、プッシュボタン33の一部には、ボタン収容部34の一部に係合して、プッシュボタン33がボタン収容部34から抜け出すことを防止するための機構が設けられている。ボタン収容部34の中間部分には、バネ支持部34aが設けられており、このバネ支持部34aの一方の面とプッシュボタン33の先端面との間にコイルバネ(付勢部材)35が介装されている。
【0034】
プッシュボタン33は、外力が作用しない場合(ボタン収容部34内に押し込まれるように押圧されない場合)には、
図5に示すように、アウターシース22から離間した所定の第1位置(上述した抜け出し防止用の機構によって規定された位置)に位置するようにコイルバネ35により付勢されている。また、プッシュボタン33は、ボタン収容部34内に押し込まれるように押圧された場合には、
図6に示すように、コイルバネ35の付勢力に抗して該第1位置よりもアウターシース22に近接する所定の第2位置まで移動し得るようになっている。
【0035】
プッシュボタン33に対する押圧を解除すれば、プッシュボタン33はコイルバネ35の付勢力によって、元の第1位置に戻る。なお、プッシュボタン33の第2位置は、バネ支持部34aの位置と、コイルバネ35の圧縮時の長手方向の寸法により規定される。
【0036】
プッシュボタン33は、術者の手により、人差し指、中指、薬指および小指(またはこれらの1つ以上)の腹を下辺部31aに配置し、親指の付け根の部分および手のひらの該親指の付け根の部分の近傍部分を上辺部31bに配置してグリップした状態で、親指の曲げ伸ばし動作により、親指の先端部(第1関節より先の部分)の腹で押下またはその解除ができるように構成されている。
【0037】
親指によるプッシュボタン33の押下およびその解除を人間工学的にストレスなく行えることを考慮して、プッシュボタン33の遠位端側の端面の位置(第1位置)および押し込み量(第1位置と第2位置との間の寸法)が設定される。
【0038】
プッシュボタン33の押し込み量(ストローク長)は、上述した人間工学的観点およびプッシュボタン33の1回の押下によるコイル部材22a(アウターシース22)の送り量等との関係で最適な値に設定される。
【0039】
また、同様に、親指によるプッシュボタン33の押下およびその解除を人間工学的にストレスなく行えることを考慮して、ボタン収容部34の軸芯方向(プッシュボタン33のスライド方向)A1は、シース収容部32の軸芯方向に対して、遠位端側に傾斜して斜交するように設定されている。ボタン収容部34の軸芯(プッシュボタン33の押し込み方向A1)とシース収容部32の軸芯(アウターシース22のハウジング31内での延在方向または下辺部31aの延在方向)とのなす所定角度θ1は、0°より大きく90°より小さい範囲で設定することができる。この角度θ1は、人間工学的観点および後述するコイル部材22aの構成等との関係で最適な値に設定される。
【0040】
ボタン収容部34の先端側(開口側と反対側である奥側)は、接続空間36を介してシース収容部32の一部(側面)に連通されている。プッシュボタン33の先端には、板バネ(板状の弾性部材)33aの基端部が固定されている。板バネ33aの先端側は、接続空間36を通過して、プッシュボタン33が第1位置に設定された状態(
図5に示す状態)で、その先端がシース収容部32内に僅かに突出するように配置されている。
【0041】
アウターシース22の近位端側の一部には、その表面に複数の凸部(または凹部)を形成するコイル部材22aが取り付けられている。コイル部材22aは、略多角形状の断面を有する弾性金属等からなる線材をコイル状に巻回して構成されており、アウターシース22の近位端部がその内側に嵌入されることにより該アウターシース22に固定されている。
【0042】
コイル部材22aとしては、略三角形状の断面形状を有する線材を外側に凸部が形成されるようにコイル状(螺旋状)に巻回したものを用いることができる。なお、コイル部材22aの凸部は、全体としてコイル状に連続する単一のものであるが、複数の凸部(1周回に相当する部分)を軸芯方向に配列して全体としてコイル状に連続する単一の凸部が構成されているとも考えることができるため、本願明細書中では、凸部の1周回に相当する部分をも単に凸部という場合がある。
【0043】
そして、コイル部材22aの凸部の遠位端側の面は、径方向の外側より内側が近位端側に位置するように傾斜している。すなわち、コイル部材22aは、コイル部材22aの軸芯と凸部の遠位端側の面との円周方向の任意の位置におけるなす角度(遠位端側の挟角)が、90°未満となるように構成されている。
【0044】
コイル部材22aを構成する線材の断面形状としては、鈍角三角形、鋭角三角形、直角三角形、鈍角二等辺三角形、鋭角二等辺三角形、直角二等辺三角形のいずれでもよい。また、コイル部材22aを構成する線材としては、その断面における頂角に係る部分がR面取りあるいはC面取りされた形状のものを用いてもよい。
【0045】
本実施形態では、
図8~
図10に示すように、コイル部材22aとしては、コイル部材22aを構成する線材の断面形状が略直角二等辺三角形状のものを用いている。そして、一方の等辺に係る面が遠位端側の面DPとなるとともに、底辺に係る面が近位端側の面PPとなるように巻回している。また、遠位端側の面DPを径方向の外側OSより内側ISが近位端側に位置するように傾斜させるため、他方の等辺に係る面の遠位端側がアウターシース22に当接し、近位端側がアウターシース22から離間するように僅かに傾けて巻回されたものを用いている。コイル部材22aを構成する線材の断面における頂角に係る部分はR面取りされている。
【0046】
コイル部材22aの凸部の遠位端側の面DPとコイル部材22a(またはアウターシース22)の軸芯方向とのなす角度θ2は、板バネ33aの先端部の構成(形状、大きさ)等との関係で、プッシュボタン33を押圧して板バネ33aの先端をコイル部材22aの凸部の遠位端側の面DPに係合(当接)させてアウターシース22を押し込んだ(圧接させた)際に、板バネ33aの先端が外側に滑って外れてしまう(係合が解除されてしまう)ことが最小限となるように設定される。角度θ2としては、好ましくは70°以上90°未満の範囲で、より好ましくは80°以上85°以下の範囲で、適宜に選定することができる。コイル部材22aを構成する線材の等辺の寸法は、0.5~1.0mmの範囲で設定することができる。コイル部材22aを構成する線材の断面における頂角に係る部分のR面取りは、R=0.05~0.15mmの範囲で設定することができる。R=0.15を越えると、板バネ33aの先端が外側に滑って外れ易くなるため、これ以下が好ましい。
【0047】
コイル部材22aを構成する線材としては、たとえば丸線を異形伸線加工により略直角二等辺三角形状に整形したものを用いることができる。コイル部材22aを構成する線材を丸線の異形伸線加工により製造することにより、その断面における頂角に係る部分が適切にR面取りされた線材を容易に製造することができる。
【0048】
コイル部材22aの製造は、断面における頂角に係る部分がR面取りされた断面形状が略直角二等辺三角形状の線材を、所定の直径を有する円柱状の柱状部材(型)に巻き込んで、適宜に加熱・冷却等することにより、コイル状とする方法を用いることができる。この場合、他方の等辺に係る面の遠位端側が当該柱状部材に当接し、近位端側が離間するように傾けつつ巻き込みを実施することにより、凸部の遠位端側の面が径方向の外側より内側が近位端側に位置するように傾斜しているコイル部材を容易に得ることができる。当該柱状部材の直径としては、装着されるアウターシース22の外直径よりも僅かに小さい寸法のものが用いられる。本実施形態では、コイル部材22aは密着巻きされているものであるが、密着巻きでなくてもよい。
【0049】
なお、コイル部材22aを構成する線材として、頂角を(180°-θ2)とした断面形状が鈍角二等辺三角形状のものを用いれば、柱状部材に巻き込んでコイル状とする際に、他方の等辺に係る面の遠位端側および近位端側の全体を当該柱状部材に圧接させつつ巻き込むことができ、より安定した巻き込みを行い得る。
【0050】
プッシュボタン33を押圧して第2位置まで押し込むと、板バネ33aの先端がアウターシース22に装着されたコイル部材22aの凸部の1つの遠位端側の面DPに圧接(係合)して、アウターシース22がインナーシース21に対して、プッシュボタン33のストローク長に応じた一定量だけ、近位端側にスライドされる(
図8の一点鎖線で示す板バネ33a参照)。
【0051】
プッシュボタン33に対する押圧を解除すると、コイルバネ35の付勢力によって、プッシュボタン33が元の第1位置に戻り、これに伴い板バネ33aの先端がアウターシース22に装着されたコイル部材22aに係合することなく、板バネ33aは元の位置に戻る(
図8の実線で示す板バネ33a参照)。プッシュボタン33に対する押圧およびその解除を繰り返すことにより、アウターシース22をインナーシース21に対して、近位端側に所定量だけスライドさせることができる。
【0052】
プッシュボタン33の1回の押下によるコイル部材22a(アウターシース22)の送り量は、特に限定されないが、たとえば、2.5mm~10mm(たとえば2.5mm、5mm、7.5mmまたは10mm)とすることができ、プッシュボタン33のストローク長はこれに対応した値となる。
【0053】
コイル部材22aの凸部の近位端側の面PPは、プッシュボタン33の押圧を解除した場合に、板バネ33aの先端部がコイル部材22aの該先端部近傍の凸部に係合することなくプッシュボタン33が元の位置(第1位置)に円滑に戻るように設定される。コイル部材22aの凸部の近位端側の面PPとコイル部材22a(またはアウターシース22)の軸芯方向とのなす角度(遠位端側の挟角)θ3は、好ましくは25°以上45°未満の範囲で、より好ましくは35°以上40°以下の範囲で選定することができる。本実施形態では、線材の断面が略直角二等辺三角形であるため、θ3は(θ2-45°)である。
【0054】
アウターシース22の近位端部に対するコイル部材22aの取付方法としては、コイル部材22aをその内径が僅かに広がるように拡径させた状態で、アウターシース22の近位端部を挿入し、コイル部材22aの復元力で縮径することにより、固定するようにできる。コイル部材22aは、自らの縮径力により、接着剤等を用いなくても、アウターシース22に対して固定することができるが、接着剤等により接着固定してもよい。
【0055】
コイル部材22aの長手方向の寸法は、ステント配置部に配置されたステント5をリリースするのに必要なストローク長(インナーシース21に対するアウターシース22のスライド長)よりも大きい寸法に設定される。
【0056】
コイル部材22aの近位端の位置としては、アウターシース22を最大量引き出した状態(すなわち、アウターシース22の遠位端部がステント配置部に配置されたステント5を覆うように配置された状態)で、プッシュボタン33に外力が作用しない状態における板バネ33aの先端が位置する部分よりも近位端側に設定される。
【0057】
コイル部材22aの遠位端の位置としては、アウターシース22が最大量引き込まれた状態(アウターシース22の近位端がシース収容部32の底面32bに当接した状態)で、プッシュボタン33に外力が作用しない状態における板バネ33aの先端が位置する部分よりも遠位端側に設定される。
【0058】
本実施形態では、コイル部材22aの遠位端の位置は、アウターシース22が最大量引き込まれた状態(アウターシース22の近位端がシース収容部32の底面32bに当接した状態)で、シース収容部32の開口32aから所定寸法だけ遠位端側に突出するように設定されている。この場合の所定寸法としては、30~220mm程度とすることができる。
【0059】
アウターシース22のスライドのみを考慮した場合には、コイル部材22aの遠位端の位置は、板バネ33aの先端が位置する部分よりも遠位端側であれば、ハウジング31(シース収容部32)の内部に位置していればよいが、本実施形態では、コイル部材22aの遠位端の位置をシース収容部32の開口から所定寸法だけ遠位端側に突出させることによって、アウターシース22の近位端側の一部を補強するようにしている。
【0060】
本実施形態におけるコイル部材22aは、弾性金属からなる線材をコイル状に巻回して構成されるため、可撓性を有しており、アウターシース22の周囲に配置されることにより、アウターシース22のハウジング31側の部分に折れ曲がるような局所的な力が作用した場合であっても、アウターシース22が一様に湾曲して、アウターシース22のキンクを防止するように補強することができる。
【0061】
本実施形態におけるコイル部材22aのハウジング31の内部に配置された部分は、アウターシース22をスライドさせる場合における板バネ33aの先端との係合をより効果的に行うための機能を提供するとともに、板バネ33aの先端との係合に伴うアウターシース22に対するダメージ(潰れ等)から保護する補強部材としての機能を提供する。
【0062】
これに加えて、コイル部材22aのハウジング31の外側(遠位端側)に配置される部分(およびその近傍部分)は、アウターシース22のハウジング31側の部分における局所的な折れ曲がり等から保護する補強部材としての機能を提供する。このように、本実施形態におけるコイル部材22aは、単一の部材で、3つの機能を提供するため、それぞれ別部材により、対応する機能を実現する場合と比較して、部品点数を少なくでき、構成が簡略である。
【0063】
本実施形態では、
図6に示すように、プッシュボタン33が押圧されて押し込まれた場合には、板バネ33aの先端がコイル部材22aの凸部の遠位端側の面に係合して、コイル部材22a(アウターシース22)を近位端側にスライドさせる。プッシュボタン33の押圧が解除されると、コイルバネ35の付勢力によってプッシュボタン33が
図5に示すように元に戻るが、このとき、板バネ33aの先端部がコイル部材22aの凸部の近位端側の面に干渉して、コイル部材22a(アウターシース22)を遠位端側にスライド(逆行)してしまうおそれある。そこで、本実施形態では、予期せぬアウターシース22の遠位端側へのスライドを確実に防止するため、スライド規制手段を設けている。
【0064】
すなわち、ハウジング31の下辺部31a側の遠位端寄りの部分には、解除スイッチ37が、アウターシース22の該ハウジング31内に存在する部分の延在方向(シース収容部32の軸芯方向)に略平行する方向にスライド可能に保持されている。ハウジング31には、略直方体状の空間を画成するスイッチ収容部38が画成されており、このスイッチ収容部38は、その長手方向が、シース収容部32の軸芯方向(アウターシース22の延在方向)に略平行する方向に形成されている。
【0065】
スイッチ収容部38には、略直方体状の解除スイッチ37がその長手方向に沿ってスライド可能に収容されており、解除スイッチ37に一体的に形成された操作突起37aがスイッチ収容部38の下辺部31a側の一部に形成された開口38aを通過して突出するように配置されている。
【0066】
術者の手により、人差し指、中指、薬指および小指(またはこれらの1つ以上)の腹を下辺部31aに配置し、親指の付け根の部分および手のひらの該親指の付け根の部分の近傍部分を上辺部31bに配置して、ハウジング31を上述したようにグリップした状態で、操作突起37aを、人差し指の先端部でその長手方向に沿って近位端側または遠位端側に押圧することにより、解除スイッチ37をスライドすることができるようになっている。
【0067】
スイッチ収容部38の近位端側は、接続空間39を介してシース収容部32の一部(側面)に連通されている。解除スイッチ37の近位端には、該解除スイッチ37のスライド方向に斜交するように延在された弾性金属等からなる板バネ37bの基端部が固定されている。板バネ37bは、解除スイッチ37が近位端側にスライドされた固定位置に設定された状態では、その先端が、接続空間39を通過して、コイル部材22aの凸部の1つの遠位端側の面に係合するように、シース収容部32内に僅かに突出するように配置されている。
【0068】
解除スイッチ37が固定位置に設定された状態では、板バネ37bの先端がコイル部材22aの凸部の遠位端側の面に係合しているため、コイル部材22a(アウターシース22)の遠位端側へのスライドを規制する。コイル部材22a(アウターシース22)が近位端側にスライドされる場合には、板バネ37bの先端部は、コイル部材22aの凸部の形状に沿って弾性変形して逃げるため、コイル部材22a(アウターシース22)の近位端側へのスライドを規制することはない。
【0069】
解除スイッチ37が遠位端側にスライドされて解除位置に設定されると、板バネ37bの基端部側がハウジング31の一部を支点として弾性変形され、その先端の板バネ37bのコイル部材22aの凸部に対する係合が解除される(
図8において、一点鎖線で示す板バネ37b参照)。したがって、解除スイッチ37が解除位置に設定された状態では、コイル部材22a(アウターシース22)の遠位端側へのスライドは規制されない状態となり、必要があれば、アウターシース22を遠位端側にスライドさせることが可能となる。
【0070】
なお、本実施形態では、解除スイッチ37をスライドさせることにより、板バネ37bのコイル部材22aの凸部に対する係合を解除して、アウターシース22を遠位端側にスライドし得るようにしたが、アウターシース22を遠位端側へスライドさせる必要がない場合には、解除スイッチ37等の解除機構は設けずに、板バネ37bを、解除スイッチ37を近位端側の固定位置に設定した場合の姿勢と同じ姿勢で、ハウジング31に固定してもよい。
【0071】
アウターシース22をハウジング31から最大量引き出した状態(
図5の状態)では、アウターシース22の遠位端は、
図2および
図3に示すように、先端チップ24に至って、アウターシース22の内腔の遠位端部に先端チップ24の細径部24bが内挿されており、この状態で、インナーシース21のステント配置部に配置されたステント5を縮径させた状態でその内部に保持した状態となっている。
【0072】
この状態からプッシュボタン33を所定回数だけ、押圧およびその解除を繰り返すと、これに伴いアウターシース22がインナーシース21に対して近位端側にスライドされて、ステント5がアウターシース22の遠位端から相対的に押し出され、自己拡張力によってリリース(拡径)される。
【0073】
上述した実施形態では、プッシュボタン33を押圧して押し込むと、板バネ33aの先端がコイル部材22aの凸部の遠位端側の面DPの一部に圧接してアウターシース22がインナーシース21に対して、プッシュボタン33のストロークに応じた一定量だけスライドされる。そして、コイル部材22aの凸部の遠位端側の面DPは、径方向の外側OSより内側ISが近位端側に位置するように傾斜しているため、プッシュボタン33を押圧して板バネ33aの先端をコイル部材22aの凸部の遠位端側の面DPに圧接させて、プッシュボタン33をスライドさせた際に、板バネ33aの先端が外側に滑って外れてしまうことを少なくできる。したがって、アウターシース22をインナーシース21に対して必要量だけ確実にスライドさせることができ、操作の確実性を高くすることができる。
【0074】
また、上述した実施形態では、プッシュボタン33,ボタン収容部34、コイルバネ35、板バネ33a、接続空間36等から構成されるプッシュ機構、およびアウターシース22に装着されたコイル部材22aを設けて、プッシュボタン33に対する押圧およびその解除を繰り返すことにより、アウターシース22をインナーシース21に対してスライドさせるようにしており、その構成が簡略であり、操作部の小型・軽量化を図ることができる。
【0075】
また、上述した実施形態では、ハウジング31の形状、プッシュボタン33の押圧位置、押圧方向、ストローク長等が人間工学的に最適化されているため、上述したように、術者がハウジング31を自然な形でグリップした状態で、基本的に片手で操作することが可能であり、操作性がよい。
【0076】
なお、上述した実施形態では、プッシュ機構(プッシュボタン33,ボタン収容部34、コイルバネ35、板バネ33a、接続空間36等)と協働してアウターシース22をスライドさせるため、その表面側に凸部(複数の凸部)を有するコイル部材22aを、アウターシース22の近位端側の一部に装着している。
【0077】
また、上述した実施形態では、スライド規制手段として、その先端がコイル部材22aの凸部の遠位端側の面に係合する板バネ37bを設けているので、アウターシース22の逆行(遠位端側へのスライド)を効果的に防止することができる。これに加えて、板バネ37bは、解除スイッチ37に取り付けられており、板バネ37bの先端のコイル部材22aの凸部の遠位端側の面に対する係合を、必要に応じて解除することができ、便宜である。
【0078】
また、上述した実施形態では、プッシュ機構(プッシュボタン33,ボタン収容部34、コイルバネ35、板バネ33a、接続空間36等)を設けて、ハウジング31に設けられたプッシュボタン33に対して、押圧および押圧解除を繰り返すことにより、コイル部材22aを介してアウターシース22をスライドさせるようにしてある。コイル部材22aの凸部の一部に係合(圧接)して、アウターシース22をスライドさせる機構(スライド手段)としては、該プッシュ機構に限られない。
【0079】
なお、
図11および
図12に示すように、解除スイッチ37(37a)を省略し、板バネ37bをハウジング31に直接固定するようにしてもよい。
図11および
図12では、ハウジング31やプッシュボタン33等の形状(構造)は、
図5~
図8に示したものと異なるものが例示されているが、機能的には同様であるので、
図5~
図8に示したものと同じ符号を付して、その説明は省略する。その他、
図5~
図8に示したものと実質的に同一の部材または部分には、
図5~
図8に示したものと同じ符号を付して、その説明は省略する。
【0080】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。従って、上述した実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【符号の説明】
【0081】
1…ステントデリバリー装置(医療用器具)
2…カテーテル部
21…インナーシース(第2部材)
22…アウターシース(第1部材)
22a…コイル部材
24…先端チップ
3…操作部
31…ハウジング
32…シース収容部
33…プッシュボタン(押圧部材)
33a…板バネ(弾性部材)
34…ボタン収容部
35…コイルバネ
36…接続空間
37…解除スイッチ
37b…板バネ
4…ガイドワイヤ
5…ステント
DP…コイル部材の凸部の遠位端側の面
PP…コイル部材の凸部の近位端側の面