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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】SOI基板及びSOI基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/02 20060101AFI20231212BHJP
   H01L 27/12 20060101ALI20231212BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20231212BHJP
   H01L 29/786 20060101ALI20231212BHJP
   H01L 21/316 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
H01L27/12 B
H01L29/78 626C
H01L21/316 X
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020099787
(22)【出願日】2020-06-09
(65)【公開番号】P2021193721
(43)【公開日】2021-12-23
【審査請求日】2022-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000190149
【氏名又は名称】信越半導体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(72)【発明者】
【氏名】大槻 剛
(72)【発明者】
【氏名】阿部 達夫
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 温
(72)【発明者】
【氏名】松原 寿樹
【審査官】船越 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-236086(JP,A)
【文献】特開平11-274500(JP,A)
【文献】特開2005-223021(JP,A)
【文献】特表2007-507093(JP,A)
【文献】特開2014-003148(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/02
H01L 21/336
H01L 21/316
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持基板、埋め込み絶縁層、前記支持基板と前記埋め込み絶縁層との間に形成された中間層としての電荷捕獲層、及び前記埋め込み絶縁層上に形成されたSOI層を有し、
前記埋め込み絶縁層は、誘電率がシリコン酸化膜より小さいLow-k材層からなるものであり、
前記Low-k材層はSiOC膜であり、
前記SiOC膜が厚さ方向において誘電率が変化しているものであることを特徴とするSOI基板。
【請求項2】
前記支持基板の抵抗率が500Ω・cm以上のものであることを特徴とする請求項1に記載のSOI基板。
【請求項3】
支持基板、埋め込み絶縁層、前記支持基板と前記埋め込み絶縁層との間に形成された中間層としての電荷捕獲層、及び前記埋め込み絶縁層上に形成されたSOI層を有するSOI基板の製造方法であって、
前記電荷捕獲層上に、誘電率がシリコン酸化膜より小さいLow-k材層からなる前記埋め込み絶縁層を成膜し、
前記Low-k材層としてSiOC膜を成膜し、
前記SiOC膜の成膜中にガス比率を変化させることで、前記SiOC膜の厚さ方向の誘電率を変化させることを特徴とするSOI基板の製造方法。
【請求項4】
前記支持基板として抵抗率が500Ω・cm以上のものを用いることを特徴とする請求項3に記載のSOI基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、SOI基板及びSOI基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
5Gを迎え、端末は幅広い周波数帯域に対応することが必要となりフィルター等、数多くの高周波部品が必要となってきている。特に高周波数領域で使用する半導体装置、すなわち高周波(RF)用途の半導体装置は、その高性能化が求められている。
【0003】
従来からSOI構造のシリコン基板を使用した高周波フィルター等は、CMOSプロセスとの相性の良さや、大量生産が可能な観点から注目されている。そして、クロストークの防止の観点から、高調波特性が重要視され、これの改善のために基板の高抵抗率化や電荷蓄積層の導入など、種々の対策が取られてきた。
【0004】
具体的な解決策として、まずは支持基板の高抵抗率化がある。具体的な抵抗率の値としては、例えば特許文献1には、典型的には500Ω・cmよりも高く、好ましくは1000 Ω・cmよりも高く、さらに好ましくは3000Ω・cmよりも高い電気抵抗率を有していなければならない、とされている。
【0005】
さらに、特許文献2には、SOI構造の支持基板と、支持基板と埋め込み酸化物層(BOX膜)との間に新たにPoly-Siのような中間半導体層(電荷トラップ(捕獲)層ないしは、トラップリッチ:TR層)を備えた高周波用SOI基板(TR-SOI基板)の製造方法が記載されている。
【0006】
このような高周波用基板の高周波特性として、TR-SOI基板のSOI層を除去してBOX層にAl電極で図3及び図4に示すようなCo-Planar Waveguide(CPW)6を形成して測定する2次高調波(2HD)特性がある。
【0007】
CPW6は、図3及び図4に示す一例のように、金属電極60aを隙間を開けて並列に並べて、その隙間の中央にこれら金属電極60aと並列に線状の中央金属電極60bを形成した構造を持ち、中央金属電極60bから図4における左右両側の金属電極60a及び測定対象基板30内部に向かう方向の電界60cと、測定対象基板30内部において中央金属電極60bを囲む方向の磁界60dによって電磁波を伝送する構造の素子6をいう。
【0008】
また高調波とは、元となる周波数の整数倍の高次の周波数成分のことで、元の周波数を基本波、2倍の周波数(2分の1の波長)を持つものが2HDと定義されている。高周波回路では高調波による混信を避けるために高調波の小さい基板が必要とされ、この目的のために前述のようにTR-SOIでは支持基板上にTR層を形成しさらに支持基板を高抵抗率化して2HD特性を改善している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特表2015-503853号公報
【文献】特開2019-129195号公報
【文献】特開2008-166744号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前記の電荷捕獲層を備えた高周波用SOI基板のさらなる高性能化が求められていた。
【0011】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、高周波特性に優れたSOI基板、及び高周波特性に優れたSOI基板を製造できるSOI基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明では、支持基板、埋め込み絶縁層、前記支持基板と前記埋め込み絶縁層との間に形成された中間層としての電荷捕獲層、及び前記埋め込み絶縁層上に形成されたSOI層を有し、
前記埋め込み絶縁層は、誘電率がシリコン酸化膜より小さいLow-k材層からなるものであることを特徴とするSOI基板を提供する。
【0013】
支持基板と埋め込み絶縁層との間に、中間層として電荷捕獲層を持つトラップリッチ型のSOI構造の基板において、埋め込み絶縁層を従来のシリコン酸化膜(比誘電率:3.9)より誘電率の低いLow-k材層とすることで、SOI基板固有のキャパシタンス容量を下げることが可能になり、これにより高周波特性、特には高調波特性の改善が可能になる。
【0014】
前記Low-k材層はSiOC膜とすることができる。
Low-k材層として、先端デバイスの配線部などに使用される実績のあるSiOC膜を用いることができる。
【0015】
前記SiOC膜が厚さ方向において誘電率が変化しているものとすることができる。
このようなSiOC膜をLow-k材層として含むものであれば、膜全体としての誘電率を調整し、特性の合わせ込みが可能となる。
【0016】
前記支持基板の抵抗率が500Ω・cm以上のものであることが好ましい。
このように高い抵抗率を有する支持基板を含むことにより、より優れた高周波特性を示すことができる。
【0017】
また、本発明では、支持基板、埋め込み絶縁層、前記支持基板と前記埋め込み絶縁層との間に形成された中間層としての電荷捕獲層、及び前記埋め込み絶縁層上に形成されたSOI層を有するSOI基板の製造方法であって、
前記電荷捕獲層上に、誘電率がシリコン酸化膜より小さいLow-k材層からなる前記埋め込み絶縁層を成膜することを特徴とするSOI基板の製造方法を提供する。
【0018】
電荷捕獲層を含むSOI基板の製造方法において、電荷捕獲層上の絶縁層としてシリコン酸化膜より誘電率の小さいLow-k材層を成膜することで、改善された高周波特性を示すことができるSOI基板を製造することができる。
【0019】
前記Low-k材層としてSiOC膜を成膜することができる。
Low-k材層として、先端デバイスの配線部などに使用される実績のあるSiOC膜を用いることができる。
【0020】
前記SiOC膜の成膜中にガス比率を変化させることで、前記SiOC膜の厚さ方向の誘電率を変化させることができる。
このようにしてSiOC膜を成膜することにより、膜全体としての誘電率を調整し、特性の合わせ込みが可能となる。
【0021】
前記支持基板として抵抗率が500Ω・cm以上のものを用いることが好ましい。
このように高い抵抗率を有する支持基板を用いることにより、より優れた高周波特性を示すSOI基板を製造することができる。
【発明の効果】
【0022】
以上のように、本発明のSOI基板であれば、中間層として電荷捕獲層を含むSOI基板における埋め込み絶縁層が、誘電率がシリコン酸化膜より小さいLow-k材層からなるものであるので、優れた高周波特性を示すことができる。そのため、本発明のSOI基板を用いれば、高周波特性の良好な半導体装置を作製することが可能になる。
【0023】
また、本発明のSOI基板の製造方法であれば、誘電率がシリコン酸化膜より小さいLow-k材層からなる埋め込み絶縁層を成膜して、中間層として電荷捕獲層を含むSOI基板を製造するので、高周波特性に優れたSOI基板を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明のSOI基板の一例を示す概略断面図である。
図2】本発明のSOI基板の製造方法の一例を示す概略フロー図である。
図3】2次高調波特性を評価するために用いるCo-Planar Waveguide(CPW)の一例の概略平面図である。
図4図3のCPWの線分X-Xに沿った断面図である。
図5】比較例のSOI基板の製造方法を示す概略フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
上述のように、高周波特性に優れたSOI基板及びこのようなSOI基板を製造できる製造方法の開発が求められていた。
【0026】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討を重ねた結果、高周波素子用のSOI基板としての、支持基板と埋め込み絶縁層との間に、中間層として電荷捕獲層を持つトラップリッチ型のSOI構造の基板において、埋め込み絶縁層を従来のシリコン酸化膜(比誘電率:3.9)より誘電率の低いLow-k材層とすることで、SOI基板固有のキャパシタンス容量を下げることが可能になり、これにより高周波特性の改善が可能になることを見出し、本発明を完成させた。
【0027】
即ち、本発明は、支持基板、埋め込み絶縁層、前記支持基板と前記埋め込み絶縁層との間に形成された中間層としての電荷捕獲層、及び前記埋め込み絶縁層上に形成されたSOI層を有し、
前記埋め込み絶縁層は、誘電率がシリコン酸化膜より小さいLow-k材層からなるものであることを特徴とするSOI基板である。
【0028】
また、本発明は、支持基板、埋め込み絶縁層、前記支持基板と前記埋め込み絶縁層との間に形成された中間層としての電荷捕獲層、及び前記埋め込み絶縁層上に形成されたSOI層を有するSOI基板の製造方法であって、
前記電荷捕獲層上に、誘電率がシリコン酸化膜より小さいLow-k材層からなる前記埋め込み絶縁層を成膜することを特徴とするSOI基板の製造方法である。
【0029】
なお、特許文献3には、支持基板上に形成された絶縁層上に、島状のシリコン層と、このシリコン層の周囲を囲うようにシリコン層の側面に形成された更なる絶縁層とを形成したSOI基板が開示されている。特許文献3の更なる絶縁層は、支持基板上に形成された絶縁層と比較して誘電率が小さいLow-k材料を用いて形成されている。しかしながら、特許文献3のSOI基板は支持基板上に電荷捕獲層を含むものではないため、特許文献3は、Low-k材料を用いて形成された絶縁層の下に電荷捕獲層を含むRFデバイス用SOI基板を開示していない。
【0030】
以下、本発明について図面を参照しながら詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0031】
[SOI基板]
本発明のSOI基板は、支持基板、埋め込み絶縁層、前記支持基板と前記埋め込み絶縁層との間に形成された中間層としての電荷捕獲層、及び前記埋め込み絶縁層上に形成されたSOI層を有し、
前記埋め込み絶縁層は、誘電率がシリコン酸化膜より小さいLow-k材層からなるものであることを特徴とする。
【0032】
本発明のSOI基板は、言い換えると、高周波素子用のSOI基板として、支持基板と埋め込み絶縁層の間に、中間層として電荷捕獲層を持つトラップリッチ型のSOI構造とし、埋め込み層は従来のシリコン酸化膜(比誘電率:3.9)より誘電率の低いLow-k材層からなるものとすることを特徴とする半導体基板である。
【0033】
埋め込み層をこのような誘電率の低いLow-k材層からなるものとすることで、SOI基板固有のキャパシタンス容量を下げることが可能になり、これにより高周波特性の改善が可能になる。すなわち、本発明のSOI基板は、優れた高周波特性を示すことができる。
【0034】
また、Low-k材層としては、先端デバイスの配線部等に使用される実績のあるSiOC膜を用いることができるが、特に限定されない。Low-k材として、多孔質シリカやフルオロカーボン材料等を用いることもできる。
【0035】
Low-k材層の誘電率は、シリコン酸化膜の誘電率よりも低ければ、特に限定されない。Low-k材層の比誘電率は、2.5以上3.9未満であることが好ましく、2.5以上3.5以下であることがより好ましい。
【0036】
Low-k材層がSiOC膜である場合、このSiOC膜を厚さ方向において誘電率が変化しているものとすることができる。
このようなSiOC膜をLow-k材層として含むものであれば、膜全体としての誘電率を調整し、特性の合わせ込みが可能となる。
【0037】
支持基板の抵抗率が500Ω・cm以上のものであることが好ましい。
このように高い抵抗率を有する支持基板を含むことにより、より優れた高周波特性を示すことができる。
【0038】
次に、図1を参照しながら、本発明のSOI基板の一例を具体的に説明する。
【0039】
図1に断面図を示すSOI基板10は、支持基板1と、埋め込み絶縁層3と、電荷捕獲層2と、SOI層4とを含んでいる。
【0040】
電荷捕獲層2は、支持基板1と埋め込み絶縁層3との間に形成された中間層である。電荷捕獲層2は、例えばポリシリコン層であるが、特に限定されない。SOI層4は、埋め込み絶縁層3上に形成されている。
【0041】
埋め込み絶縁層3は、誘電率がシリコン酸化膜より小さいLow-k材層からなるものである。
【0042】
SOI基板10は、支持基板1と、電荷捕獲層2と、埋め込み絶縁層3と、SOI層4とがこの順で積層された構造を有するものであるということもできる。
【0043】
[SOI基板の製造方法]
本発明のSOI基板の製造方法は、支持基板、埋め込み絶縁層、前記支持基板と前記埋め込み絶縁層との間に形成された中間層としての電荷捕獲層、及び前記埋め込み絶縁層上に形成されたSOI層を有するSOI基板の製造方法であって、
前記電荷捕獲層上に、誘電率がシリコン酸化膜より小さいLow-k材層からなる前記埋め込み絶縁層を成膜することを特徴とする。
【0044】
電荷捕獲層を含むSOI基板の製造方法において、電荷捕獲層上の絶縁層としてシリコン酸化膜より誘電率の小さいLow-k材層を成膜することで、改善された高周波特性を示すことができるSOI基板を製造することができる。すなわち、本発明のSOI基板の製造方法によれば、高周波特性に優れたSOI基板を製造することができる。
【0045】
また、本発明のSOI基板の製造方法によると、先に説明した本発明のSOI基板を製造することができる。
【0046】
前記Low-k材層としてSiOC膜を成膜することができる。
Low-k材層として、先端デバイスの配線部などに使用される実績のあるSiOC膜を用いることができる。
【0047】
このSiOC膜は、例えば、シリコン酸化膜に炭素を添加、又はSiCに酸素を添加することで形成可能である。実際には、例えばプラズマCVDで成膜することができる。
【0048】
SiOC膜の成膜中にガス比率を変化させることで、SiOC膜の厚さ方向の誘電率を変化させることができる。
【0049】
例えば、シラン系ガスを主成分にして酸素及び炭素源を供給する際に成膜時のガス組成比率(特に酸素)を変化させ、膜組成を変化させることで、SiOC膜の厚さ方向の誘電率を変えることが可能である。
このようにしてSiOC膜を成膜することにより、膜全体としての誘電率を調整し、特性の合わせ込みが可能となる。
【0050】
支持基板として抵抗率が500Ω・cm以上のものを用いることが好ましい。
このように高い抵抗率を有する支持基板を用いることにより、より優れた高周波特性を示すSOI基板を製造することができる。
【0051】
次に、図2を参照しながら、本発明のSOI基板の製造方法の具体例を説明する。
【0052】
まず、支持基板1を準備する。次いで、この支持基板1上に、電荷捕獲層2を成膜する。
【0053】
次に、電荷捕獲層2上に、誘電率がシリコン酸化膜より小さいLow-k材層からなる埋め込み絶縁層3を成膜する。
【0054】
次に、埋め込み絶縁層3上に、SOI層4を形成する。SOI層4は、例えば、イオン注入剥離法(スマートカット法(登録商標))によって形成することができる。より詳細には例えば以下のようにして形成することができる。まず、ボンドウェーハとして、支持基板1とは別のシリコンウェーハを準備する。このボンドウェーハの上面から水素を注入して、ボンドウェーハ内部に微小気泡層を形成する。微小気泡層を有したボンドウェーハを、埋め込み絶縁層3に貼り付ける。次いで、熱処理を行い、微小気泡層を劈開面としてボンドウェーハを劈開して、埋め込み絶縁層3上に残ったSOI層4となる部分と、剥離した部分とに分ける(スプリットする)。埋め込み絶縁層3上に残った部分をタッチポリッシュして、埋め込み絶縁層3上に形成されたSOI層4を得ることができる。
【0055】
以上のようにして、図1及び図2に示す、支持基板1と、電荷捕獲層2と、埋め込み絶縁層3と、SOI層4とがこの順で積層された構造を有するSOI基板10を得ることができる。
【実施例
【0056】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0057】
(実施例1)
実施例1では、以下の手順で、評価用基板を作製した。
支持基板として、直径300mmのボロンドープの高抵抗率シリコン単結晶基板(8000Ω・cm)を準備した。次いで、このシリコン単結晶基板上に、電荷捕獲層として、1050℃でポリシリコンを形成させた後、その表面を研磨して、厚さを1.8μmとした。次に、埋め込み絶縁層として、厚さ400nmのSiOC膜を、TEOS(10sccm)を主原料としてプラズマCVDにて成長させた。なお、このSiOC膜の成長時にはAr(10sscm)のみをキャリアガスとして使用した。TEOSにはシランとエトシキ基(炭素源)が含まれているので、このガスだけでSiOC膜が形成できる。これにより、支持基板と、電荷捕獲層と、埋め込み絶縁層とをこの順で含む、実施例1の評価用基板を作製した。
【0058】
このようにして作製した評価用基板上に、アルミ電極でCPW(路線長:2200μm)を形成した素子を作製した。その後、2次高調波特性(2HD特性)(周波数:1GHz、入力電力:15dBm)を測定した。その結果、2HD特性は-103dBmと後述の比較例よりも改善がみられた。また、実施例1の評価用基板の埋め込み絶縁層の比誘電率を静電容量法で求めたところ3.0であった。
【0059】
(実施例2)
実施例2では、以下の手順で、実施例2のSOI基板を作製した。
支持基板として、直径300mmのボロンドープの高抵抗率シリコン単結晶基板(8000Ω・cm)を準備した。次いで、このシリコン単結晶基板上に、電荷捕獲層として、1050℃でポリシリコンを形成させた後、その表面を研磨して、厚さを1.8μmとした。次に、埋め込み絶縁層として、厚さ400nmのSiOC膜を、TEOS(10sccm)を主原料としてプラズマCVDにて成長させた。なお、このSiOC膜の成長時にキャリアガスとしてAr(10sccm)に加えて酸素を2sccm使用し、実施例1とはガス組成を変化させた。
【0060】
一方で、ボンドウェーハとして、上記支持基板とは別のシリコン単結晶基板を準備した。このボンドウェーハの上面から水素を注入して、ボンドウェーハ内部に微小気泡層を形成した。微小気泡層を有したボンドウェーハを、先に成膜した埋め込み絶縁層に貼り付けた。次いで、熱処理を行い、微小気泡層を劈開面としてボンドウェーハを劈開して、埋め込み絶縁層上に残ったSOI層となる部分と、剥離した部分とにスプリットした。次いで、埋め込み絶縁層上に残った部分をタッチポリッシュして、膜厚500nmのSOI層を得た。これにより、支持基板と、電荷捕獲層と、埋め込み絶縁層と、SOI層とをこの順で含む、実施例2のSOI基板を作製した。
【0061】
このようにして作製したSOI基板上に、アルミ電極でCPW(路線長:2200μm)を形成した素子を作製した。その後、2次高調波特性(2HD特性)(周波数:1GHz、入力電力:15dBm)を測定した。その結果、2HD特性は-96dBmと後述の比較例よりも改善がみられた。また、実施例2のSOI基板が含む埋め込み絶縁層の比誘電率を静電容量法で求めたところ3.8であった。
【0062】
(比較例)
比較例では、図5に記載したフロー図に従って、比較例のSOI基板を得た。
支持基板1として、直径300mmのボロンドープの高抵抗率シリコン単結晶基板(8000Ω・cm)を準備した。次いで、このシリコン単結晶基板1に、電荷捕獲層2として、1050℃でポリシリコンを形成させた後、その表面を研磨して、厚さを1.8μmとした。これにより、支持基板1と、この支持基板1上に形成された電荷捕獲層2とを含む第1複合体11を得た。
【0063】
次に、支持基板1とは別のシリコン単結晶基板4’を準備した。このシリコン単結晶基板4’上に、シリコン酸化膜5として400nmの熱酸化膜を形成した。次いで、このシリコン単結晶基板4’の上面から水素を注入して、シリコン単結晶基板4’内部に微小気泡層を形成した。これにより、シリコン単結晶基板4’と、このシリコン単結晶基板4’上に形成されたシリコン酸化膜5を持つ第2複合体12を準備した。
【0064】
以上のようにして作製した第1複合体11と第2複合体12とを、電荷捕獲層2とシリコン酸化膜5とが接するように貼り合わせた。次いで、熱処理を行い、微小気泡層を劈開面としてシリコン単結晶基板4’を劈開して、シリコン酸化膜5上に残ったSOI層となる部分4と、剥離した部分とにスプリットした。次いで、シリコン酸化膜5上に残った部分4をタッチポリッシュして、膜厚500nmのSOI層4を得た。このようにして、400nmの熱酸化膜を支持基板に転写し、高抵抗率支持基板1に、中間層の電荷捕獲層2(トラップリッチ層)としてのポリシリコンと、絶縁膜5として熱酸化膜(シリコン酸化膜)と、SOI層4とを持った比較例のSOI基板20を作製した。
【0065】
比較例のSOI基板20上に、アルミ電極でCPW(路線長:2200μm)を形成した素子を作製した。その後、2次高調波特性(2HD特性)(周波数:1GHz、入力電力:15dBm)を測定した。その結果、この基板の2HDは-93dBmであった。また、比較例のSOI基板20が含むシリコン酸化膜5の比誘電率を静電容量法で求めたところ3.9であった。
【0066】
以上に示した結果から、中間層として電荷捕獲層を含み且つ埋め込み絶縁層として誘電率がシリコン酸化膜よりも小さいLow-k材層を含む、実施例1の評価用基板及び実施例2のSOI基板は、中間層として電荷捕獲層を含み且つ埋め込み絶縁層としてシリコン酸化膜を含む比較例のSOI基板よりも優れた2次高調波特性、すなわち優れた高周波特性を示すことができたことが分かる。
【0067】
また、実施例1の評価用基板に実施例2と同様の手順でSOI層を形成して得られたSOI基板も、実施例2のSOI基板と同様に、優れた2次高調波特性を示すことができた。
【0068】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0069】
1…支持基板(シリコン単結晶基板)、 2…電荷捕獲層(トラップリッチ層、ポリシリコン)、 3…埋め込み絶縁層(SiOC膜)、 4…SOI層、 4’…シリコン単結晶基板(SOI層となる層)、 5…シリコン酸化膜、 6…CPW、 10…SOI基板、 11…第1複合体、 12…第2複合体、 20…SOI基板、 30…測定対象基板、 60a…金属電極、 60b…中央金属電極、 60c…電界、 60d…磁界。
図1
図2
図3
図4
図5