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特許7400667シリコンウェーハの検査方法、シリコンウェーハの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】シリコンウェーハの検査方法、シリコンウェーハの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/66 20060101AFI20231212BHJP
   G01N 21/956 20060101ALI20231212BHJP
   G01B 11/02 20060101ALN20231212BHJP
【FI】
H01L21/66 J
G01N21/956 A
G01B11/02 H
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020146230
(22)【出願日】2020-08-31
(65)【公開番号】P2022041170
(43)【公開日】2022-03-11
【審査請求日】2022-08-31
(73)【特許権者】
【識別番号】302006854
【氏名又は名称】株式会社SUMCO
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165696
【弁理士】
【氏名又は名称】川原 敬祐
(74)【代理人】
【識別番号】100164448
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 雄輔
(72)【発明者】
【氏名】木瀬 芳美
(72)【発明者】
【氏名】長澤 崇裕
【審査官】正山 旭
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-082064(JP,A)
【文献】特開2002-257533(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0036863(US,A1)
【文献】特開平10-289319(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/66
G01N 21/956
G01B 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコンウェーハの表面に、レーザ光を照射する、レーザ光照射工程と、
照射された前記レーザ光の散乱光を検出して画像化し、画像化した画像のピクセル毎に前記散乱光の輝度値を検出する、輝度値検出工程と、
検出された輝度値に基づいて、前記シリコンウェーハの表面のスクラッチの太さを判定する、判定工程と、を含むことを特徴とする、シリコンウェーハの検査方法。
【請求項2】
前記判定工程において、判定された前記スクラッチの太さを有する、前記スクラッチの長さをさらに判定する、請求項1に記載のシリコンウェーハの検査方法。
【請求項3】
前記判定工程において、
検出された前記輝度値が第1の基準値以上となる連続した前記ピクセル中で、一又は連続した所定数以下の前記ピクセルの検出された前記輝度値が、前記第1の基準値より低い場合に、前記一又は連続した所定数以下の前記ピクセルの輝度値を前記第1の基準値以上であるとみなして、前記スクラッチの太さを判定し、及び/又は、
検出された前記輝度値が第2の基準値以下となる連続した前記ピクセル中で、一又は連続した所定数以下の前記ピクセルの検出された前記輝度値が、前記第2の基準値より高い場合に、前記一又は連続した所定数以下の前記ピクセルの輝度値を前記第2の基準値以下であるとみなして、前記スクラッチの太さを判定する、請求項1又は2に記載のシリコンウェーハの検査方法。
【請求項4】
前記判定工程は、輝度値とスクラッチの太さとを関連付けるマップに基づいて、前記ピクセル毎に前記シリコンウェーハの表面のスクラッチの太さを判定する、請求項1~3のいずれか一項に記載のシリコンウェーハの検査方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載のシリコンウェーハの検査方法により、シリコンウェーハを検査し、所定の品質基準を満たすか否か判定する、検査工程を含むことを特徴とする、シリコンウェーハの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコンウェーハの検査方法及びシリコンウェーハの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シリコンウェーハの表面には、スクラッチと呼ばれる欠陥が生じる場合があり、歩留まり低下の原因となることが知られている。
【0003】
ここで、特に、シリコンウェーハの裏面側は表面粗さが粗いため、レーザ光の散乱光からでは、微小な欠陥を評価することが困難である。そのため、シリコンウェーハの表面(特に裏面)に、リング照明による照射を行い、散乱光の画像をカメラ等で取得して、画像処理を行うことにより、スクラッチの有無等を判定すること等が行われている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
ここで、近年、デザインルールの変遷に伴い、シリコンウェーハの裏面の品質もデバイスの品質に影響を与えるようになってきている。そのため、シリコンウェーハの裏面の面状態と欠陥(粗さ、パーティクル、傷、スクラッチ)に関して、より小さい細い欠陥まで詳細に検出し、その影響を判断することが求められている。
【0005】
例えば特許文献2では、シリコンウェーハの表面に、垂直及び仰角からレーザ光を照射して、散乱光に基づく信号処理を行い、検出された欠陥候補のうち、座標間の距離が所定の閾値以下のものを1つの欠陥として判定し、その欠陥に対して、輝度値等に基づいてスクラッチの深さ等を判定することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2010-103275号公報
【文献】特開2014-211440号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2の手法では、検出された欠陥候補のうち、座標間の距離が所定の閾値以下のものを1つの欠陥としているため、1つのスクラッチ中に輝度値の大小の偏りがあった場合には、ごく輝度値の小さいスクラッチは、途切れ途切れになって、その長さを測定することができず、また、スクラッチ中に一部輝度値の大きい部分があったとしても、平均化されて太いスクラッチであると判定することができず、誤判定がなされる場合があった。その結果、一本のスクラッチの中で輝度値の大きい箇所及び輝度値の小さい箇所の長さを判定することができないこととなる。また、上記の手法では、スクラッチの太さについては言及されていない。
【0008】
本発明は、シリコンウェーハの表面のスクラッチの形状、特に太さを精度良く判定することができる、シリコンウェーハの検査方法、及び、高品質なシリコンウェーハの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、スクラッチの太さと輝度値との間に相関関係があるという知見を得て、本発明を完成させるに至った。本発明の要旨構成は、以下の通りである。
本発明のシリコンウェーハの検査方法は、シリコンウェーハの表面に、レーザ光を照射する、レーザ光照射工程と、
照射された前記レーザ光の散乱光を検出して画像化し、画像化した画像のピクセル毎に前記散乱光の輝度値を検出する、輝度値検出工程と、
検出された輝度値に基づいて、前記シリコンウェーハの表面のスクラッチの太さを判定する、判定工程と、を含むことを特徴とする。
【0010】
本発明のシリコンウェーハの検査方法では、前記判定工程において、判定された前記スクラッチの太さを有する、前記スクラッチの長さをさらに判定することが好ましい。
【0011】
本発明のシリコンウェーハの検査方法では、前記判定工程において、
検出された前記輝度値が第1の基準値以上となる連続した前記ピクセル中で、一又は連続した所定数以下の前記ピクセルの検出された前記輝度値が、前記第1の基準値より低い場合に、前記一又は連続した所定数以下の前記ピクセルの輝度値を前記第1の基準値以上であるとみなして、前記スクラッチの太さを判定し、及び/又は、
検出された前記輝度値が第2の基準値以下となる連続した前記ピクセル中で、一又は連続した所定数以下の前記ピクセルの検出された前記輝度値が、前記第2の基準値より高い場合に、前記一又は連続した所定数以下の前記ピクセルの輝度値を前記第2の基準値以下であるとみなして、前記スクラッチの太さを判定することが好ましい。
【0012】
本発明のシリコンウェーハの検査方法では、前記判定工程は、輝度値とスクラッチの太さとを関連付けるマップに基づいて、前記ピクセル毎に前記シリコンウェーハの表面のスクラッチの太さを判定することが好ましい。
【0013】
本発明のシリコンウェーハの製造方法は、上記のシリコンウェーハの検査方法により、シリコンウェーハを検査し、所定の品質基準を満たすか否か判定する、検査工程を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、シリコンウェーハの表面のスクラッチの形状、特に太さを精度良く判定することができる、シリコンウェーハの検査方法、及び、高品質なシリコンウェーハの製造方法を提供することができる。実施形態によっては、シリコンウェーハの表面のスクラッチの形状、特に太さ及び長さを精度良く判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態にかかるシリコンウェーハの検査方法のフロー図である。
図2】シリコンウェーハとレーザ光源及び散乱光検出器との配置関係の一例を示す図である。
図3】ピクセル毎の輝度値(指数表示)の一例を示す図である。
図4】第1及び第2の判定工程の詳細の一例を説明するためのフロー図である。
図5】第1及び第2の判定工程の別の詳細の一例を説明するためのフロー図である。
図6A】発明例の評価結果を示す図である。
図6B】比較例の評価結果を示す図である。
図7】発明例の評価結果を示す図である。
図8】発明例の評価結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に例示説明する。
【0017】
<シリコンウェーハの検査方法>
図1は、本発明の一実施形態にかかるシリコンウェーハの検査方法のフロー図である。図1に示すように、本実施形態のシリコンウェーハの検査方法では、まず、シリコンウェーハWの表面に、レーザ光を照射する(レーザ光照射工程:ステップS101)。
【0018】
レーザ光を照射するシリコンウェーハWの表面は、シリコンウェーハWのおもて面側の表面とすることも、裏面側の表面とすることもできるが、シリコンウェーハWの搬送時等にスクラッチが生じやすい裏面側の表面とすることが特に好ましい。なお、検査対象となるシリコンウェーハWは、特に限定されず、導電型、径、結晶方位等に関し、任意のものを用いることができる。
【0019】
ここで、レーザ光の光源は、例えば半導体レーザを用いることができ、青色半導体レーザや赤色半導体レーザ等を用いることができる。例えば、より細かいスクラッチを検査対象とする場合には、例えば青色半導体レーザ等の短波長(400nm~480nm、例えば445nm)のレーザを用いることができる。この場合の検出感度は、例えば100~130nmとなる。一方で、例えば赤色半導体レーザ等の長波長(630nm~660nm、例えば635nm)のレーザを用いることもできる。この場合の検出感度は、例えば180~220nmとなる。
【0020】
レーザ光の強度は、5mW~500mWであることが好ましい。レーザの強度を5mW以上とすることにより、スクラッチの形状、特に太さをより確実に判定することができ、一方で、レーザの強度を500mW以下とすることにより、シリコンウェーハや散乱光検出器にダメージを与えることなく測定ができるからである。
【0021】
図2は、シリコンウェーハWとレーザ光源1及び散乱光検出器2との配置関係の一例を示す図である。図2に示す例では、シリコンウェーハWの裏面側の表面を検査対象としている(各構成要素が、シリコンウェーハWの裏面側の表面にレーザ光を照射するように構成されている)。
【0022】
図2に示すように、この例では、シリコンウェーハWは、端面が保持具3によって保持されている。また、アーム部4は、連結部5を介して、シリコンウェーハWを保持する保持具3に連結されている。
【0023】
本実施形態では、レーザ光照射工程(ステップS101)において、シリコンウェーハWの裏面側の表面の径方向の中心から端に向かって、螺旋状にレーザ光を照射し、これによりシリコンウェーハWの裏面側の表面全面にレーザ光を照射する。図2に示すように、レーザ光源1及び散乱光検出器2は、検出部7内に配置されている。また、保持具3とアーム部4は、レーザ光源1が、シリコンウェーハWの(この例では裏面側の)表面全面を走査によって照射できるように、移動可能に構成されている。本実施形態では、保持具3とアーム部4は、レーザ光照射工程において、シリコンウェーハWの表面の径方向の中心から端に向かって、螺旋状にレーザ光を照射することができるように、回転移動及び平行移動可能に構成されている。なお、シリコンウェーハWの表面全面を照射するに当たっては、シリコンウェーハWとレーザ光源1とを相対移動させれば良く、例えばシリコンウェーハWを、径方向中心を軸として回転させつつ、レーザ光源1をシリコンウェーハWの径方向に(例えば中心から端に向かって)移動させることもできる。レーザ光照射工程(ステップS101)において、上記のように螺旋状にレーザ光を照射することにより、スクラッチの延びる方向と走査方向とのなす角度によって検出される散乱光の輝度が変わってしまう影響を低減することができる。
【0024】
図2に示す例では、検出部7内に、平面でレーザ光(散乱光)を反射可能な2つのミラー6a~6bが配置されている。図2に示すように、レーザ光源1は、レーザ光源1から照射された照射光が、シリコンウェーハWの裏面側の表面を照射するように配置されている。この例では、なるべくシリコンウェーハWの表面に対して垂直にレーザ光が入射するように(特に、入射角が70°~90°となるように)設定されている。また、図2に示すように、ミラー6a及び6bは、それぞれ、シリコンウェーハWの裏面側の表面で散乱された散乱光が、散乱光検出器2に入射するように配置され、その角度が設定されている。なお、図2においては、散乱光の一部の光の進路を矢印で模式的に示している。
【0025】
本実施形態のシリコンウェーハの検査方法では、次いで、照射されたレーザ光の散乱光を検出して画像化し、画像化した画像のピクセル毎に散乱光の輝度値を検出する(輝度値検出工程:ステップS102)。
【0026】
この例では、散乱光検出器2は、シリコンウェーハWの裏面側の表面で散乱され、ミラー6a~6bで上述したように反射されたレーザ光の散乱光を検出して画像化するように構成されている。そして、散乱光検出器2は、画像のピクセル毎に散乱光の輝度値を検出するように構成されている。
【0027】
図3は、ピクセル毎の輝度値(指数表示)の一例を示す図である。図示例では、シリコンウェーハの円周方向に18分割、径方向に7分割したピクセルの例を示しているが、これは説明の便宜のためであり、実際のピクセル数よりかなり少なく示している。図3において、一部のピクセルに数値を記入して示しているように、輝度値は、図示のピクセルのうち最小の輝度値を1として指数表示してある。このように散乱光検出器2は、画像のピクセル毎に散乱光の輝度値を検出する。図示例では、一例として指数表示してあるが、実測値等でも良い。
【0028】
本実施形態では、次いで、検出された輝度値に基づいて、ピクセル毎にシリコンウェーハWの表面のスクラッチの有無を判定する。スクラッチの有無を判定するための輝度値の閾値を予め決めておく。そして、当該閾値以上の箇所にはスクラッチが形成されているものと判定することができる。図3において太線で囲って示すように、輝度値が高い箇所は、スクラッチが形成されていると考えられる。例えば、上記輝度値の指数10(最小の輝度値を1とした場合)を閾値と決めることにより、図3において斜線を付したピクセルに対応するシリコンウェーハW上の位置において、スクラッチが形成されているものと判定することができる。この例では、斜線を付したピクセルの位置から判定して、スクラッチが略円弧状に延びているとさらに判定することもできる。
【0029】
本実施形態では、検出された輝度値に基づいて、シリコンウェーハWの表面のスクラッチの太さを判定する(第1の判定工程:ステップS103)。例えば、輝度値とスクラッチの太さとを関連付けるマップを有しておくことにより、該マップに基づいて、ピクセル毎にシリコンウェーハWの表面のスクラッチの太さを判定することができる。該マップは、一例としては、輝度値(例えば指数)が大きいほどスクラッチが太い関係を示すものとすることができ、例えば、輝度値とスクラッチの太さとの一次式又は二次式の関係とすることができる。このようなマップは、例えば、散乱光検出器2の記憶部に記憶させても良いし、通信機能により当該マップを情報として散乱光検出器2に送信するようにしても良い。一例としては、検出された輝度値に基づいて、ピクセル毎にシリコンウェーハWの表面のスクラッチの太さを判定することができる。
【0030】
輝度値検出器2は、例えば、輝度値とスクラッチの太さとを関連付けるマップを参照することにより、スクラッチが存在している位置の中でどの部分が太くなっているかを把握することができる。
【0031】
以上のように、本実施形態のシリコンウェーハの検査方法によれば、画像のピクセル毎に散乱光の輝度値を検出し、検出された輝度値に基づいて、シリコンウェーハWの表面のスクラッチの太さを判定することにより、シリコンウェーハWの表面のスクラッチの形状、特に太さを精度良く判定することができる。特に、本実施形態のシリコンウェーハの検査方法によれば、リング照明を用いた手法に比して、より詳細なスクラッチまで検出することができる。
【0032】
本発明のシリコンウェーハの検査方法では、図1に示すように、第1の判定工程(ステップS103)において、判定されたスクラッチの太さを有する、スクラッチの長さをさらに判定すること(第2の判定工程:ステップS104)が好ましい。これにより、スクラッチのデバイスに与える影響を正確に判断することができる。また、これにより、例えば、細いスクラッチであっても一定以上の長さを有する場合を不良と判定して、より品質の高いシリコンウェーハを提供することができるからである。
【0033】
図4は、前記第1の判定工程(ステップS103)及び前記第2の判定工程(ステップS104)の詳細の一例を説明するためのフロー図である。図4は、輝度値の第1の基準値を用いて、太いスクラッチ(輝度値が第1の基準値以上の場合)と細いスクラッチ(輝度値が第1の基準値未満の場合)との2種類に分類する場合の例である。なお、細いスクラッチは、輝度値の別の基準値により、スクラッチが形成されていない場合と区別される。
図4に示すように、まず、検出された輝度値が第1の基準値以上であるピクセル及び第1の基準値未満であるピクセルを、それぞれ抽出する(ステップS201)。次いで、検出された輝度値が第1の基準値以上であるピクセルをスクラッチが太い箇所であると判定し、検出された輝度値が第1の基準値未満であるピクセルをスクラッチが細い箇所であると判定する(ステップS202)。例えばこのようにして、まず、スクラッチの太さを判定することができる。次いで、抽出された第1の基準値以上の輝度値を有するピクセルのうち連続したピクセル、及び、抽出された第1の基準値未満の輝度値を有するピクセルのうち連続したピクセルをカウントする(ステップS203)。次いで、カウントされた第1の基準値以上の輝度値を有する連続したピクセル数に基づいて、太いスクラッチの長さを判定し、カウントされた第1の基準値未満の輝度値を有する連続したピクセル数に基づいて、細いスクラッチの長さを判定する(ステップS204)。例えばこのようにして、判定されたスクラッチの太さを有する、スクラッチの長さをさらに判定することができる。
本発明では、スクラッチの長さを判定するに当たっては、太いスクラッチと細いスクラッチのいずれかのスクラッチの長さのみを判定し、その判定の後に、離散して隣接する一群の連続した第1の基準値以上(未満)の輝度値を有するピクセル(ある長さを有する太い(細い)スクラッチが形成された部分)間のピクセル数に基づいて、細い(太い)スクラッチの長さを判定することもできる。
上記の例では、輝度値の1つの第1の基準値を用いて、太いスクラッチと細いスクラッチとの2種類に分類する場合の例を説明したが、2以上の基準値を用いて、3種類以上のスクラッチの太さに分類する場合でも、同様にしてそれぞれの太さを有するスクラッチの長さを判定することができる。
【0034】
本発明のシリコンウェーハの検査方法では、第1の判定工程(ステップS103)において、検出された輝度値が第1の基準値以上となる連続したピクセル中で、一又は連続した所定数以下(例えば3つ以下)のピクセルの検出された輝度値が、第1の基準値より低い場合に、上記一又は連続した所定数以下(例えば3つ以下)のピクセルの輝度値を第1の基準値以上であるとみなして、スクラッチの太さを判定することが好ましい。一又は連続した所定数以下(例えば3つ以下)のピクセルで輝度値が(実際より高く)誤検出された場合でも当該ピクセルにおける輝度値を、輝度値が第1の基準値未満となる連続したピクセルと同等とみなすことによって、例えば細いスクラッチ上にパーティクル等が存在することに起因して、特異的に高い輝度値のピクセルがあり、誤検出が生じた場合等であっても、スクラッチの長さを正確に判定することができるからである。
図5は、第1及び第2の判定工程の別の詳細の一例を説明するためのフロー図である。図5に示すように、まず、検出された輝度値が第1の基準値以上となる連続したピクセルを抽出する(ステップS301)。次いで、当該輝度値が第1の基準値以上となる連続したピクセル間の連続したピクセル数(すなわち、検出された輝度値が第1の基準値より低い一又は連続したピクセルの数)が所定数以下であるか否かを判定する(ステップS302)。所定数以下である場合には、当該一又は連続した所定数以下のピクセルの輝度値を第1の基準値以上であるとみなす(ステップS303)。一方で、所定数超である場合には、当該一又は連続した所定数以下のピクセルの輝度値を検出された輝度値のままとする(ステップS304)。ステップS303の後、検出された輝度値又は(第1の基準値以上であると)みなされた輝度値が第1の基準値以上であるピクセルをスクラッチが太い箇所であると判定する(ステップS305)。また、ステップS304の後、検出された輝度値又はそのまま(検出された輝度値のまま)とされた輝度値が第1の基準値未満であるピクセルをスクラッチが細い箇所であると判定する(ステップS306)。ステップS305の後、検出された輝度値又は(第1の基準値以上であると)みなされた輝度値が第1の基準値以上である、連続したピクセル数に基づいて、太いスクラッチの長さを判定する(ステップS307)。また、ステップS306の後、検出された輝度値又はそのまま(検出された輝度値のまま)とされた輝度値が第1の基準値未満である、連続したピクセル数に基づいて、細いスクラッチの長さを判定する(ステップS308)。
上記と同様の理由により、本発明のシリコンウェーハの検査方法では、第1の判定工程(ステップS103)において、検出された輝度値が第2の基準値以下となる連続したピクセル中で、一又は連続した所定数以下のピクセルの検出された輝度値が、第2の基準値より高い場合に、一又は連続した所定数以下のピクセルの輝度値を第2の基準値以下であるとみなして、スクラッチの太さを判定することが好ましい。なお、第2の基準値は、第1の基準値と同じとしても良いし、別の値としても良い。
なお、フロー図は省略するが、この場合も、図5に示した場合における「第1の基準値以上(より低い)」を「第2の基準値以下(より高い)」にして、一又は連続した所定数以下のピクセルの輝度値を第2の基準値以下であるとみなして、スクラッチの太さを判定することができる。
これらは、いずれか一方のみ行っても良いし、両方行っても良い。
さらに、第1の基準値及び/又は第2の基準値を複数設けることにより、スクラッチの太さを3種類以上に分類することができる。
【0035】
本発明のシリコンウェーハの検査方法では、上記の実施形態のように、レーザ光照射工程において、シリコンウェーハWの表面の径方向の中心から端に向かって、螺旋状に前記レーザ光を照射することが好ましい。効率良く、シリコンウェーハWの表面にレーザ光を照射することができるからである。レーザ光照射工程(ステップS101)において、上記のように螺旋状にレーザ光を照射することにより、スクラッチの延びる方向と走査方向とのなす角度によって検出される散乱光の輝度が変わってしまう影響を低減することもできる。
【0036】
本発明のシリコンウェーハWの検査方法では、判定工程は、輝度値とスクラッチの太さとを関連付けるマップに基づいて、ピクセル毎にシリコンウェーハの表面のスクラッチの太さを判定することが好ましい。このようなマップを有しておくことにより、簡易に、シリコンウェーハWの表面のスクラッチの形状、特に太さを精度良く判定することができるからである。
【0037】
<シリコンウェーハの製造方法>
本実施形態のエピタキシャルウェーハの製造方法は、上記のシリコンウェーハの検査方法により、シリコンウェーハWを検査し、所定の品質基準を満たすか否か判定する、検査工程を含む。所定の品質基準は、例えば、欠陥Dの有無、種類、形状、個数等に応じて決めることができる。本実施形態のシリコンウェーハの製造方法によれば、品質の高いシリコンウェーハの製造方法を提供することができる。
【0038】
<エピタキシャルウェーハの製造方法>
本実施形態のエピタキシャルウェーハの製造方法は、上記の検査工程の後、該検査工程において所定の品質基準を満たすと判定されたシリコンウェーハW上に、エピタキシャル層を成長させる、エピタキシャル成長工程を含む。
エピタキシャル層を成長させる手法は、特に限定されず、例えば通常の方法及び条件で行うことができる。本実施形態のエピタキシャルウェーハの製造方法によれば、品質の高いエピタキシャルウェーハの製造方法を提供することができる。
【0039】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に何ら限定されるものではない。例えば、上記の実施形態では、レーザ光照射工程(ステップS101)において、シリコンウェーハWの表面の径方向の中心から端に向かって、螺旋状にレーザ光を照射しているが、端から中心に向かって螺旋状にレーザ光を照射しても良く、あるいは、螺旋状ではなくいわゆるラスター走査とすることもできる。また、上記の実施形態では、シリコンウェーハWの裏面側の表面を検査対象としているが、おもて面側の表面を検査対象としても良い。また、上記の実施形態では、シリコンウェーハWの表面全面を検査対象としているが、一部を検査対象とすることもできる。
また、図2の照射系は、一例に過ぎず、シリコンウェーハWの表面に、レーザ光を照射して、照射されたレーザ光の散乱光を検出して画像化することができる系であれば良く、例えば、レーザ光源1の配置、散乱光検出器2の配置、ミラーの個数、形状、配置、角度等は、適宜設定することができる。
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は、以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【実施例
【0040】
本発明の効果を確かめるため、シリコンウェーハの裏面側の表面に、レーザ光を照射して、その散乱光の輝度値をピクセル毎に検出した場合(発明例)と、シリコンウェーハの裏面側の表面に、リング照射を行った場合(比較例)とで、スクラッチの形状(太さ)の判定精度の比較を行った。
【0041】
(発明例)
径300mm、結晶方位(100)、p型のシリコンウェーハを用意した。シリコンウェーハの裏面にレーザ光をシリコンウェーハの中心から端に向かって螺旋状に照射し、図2に示した光学系を用いて、その散乱光の輝度値をピクセル毎に検出した。レーザ光の波長を445nm、レーザの光の強度を250mWとした。ここでは、検出された輝度値に基づいて、ピクセル毎にシリコンウェーハの表面のスクラッチの太さを判定し、また、その長さをさらに判定した。その際、輝度値が基準値以上となる連続したピクセル中で、3つ以下のピクセルの検出された輝度値が、基準値より低い場合に、連続した3つ以下のピクセルの輝度値を基準値以上であるとみなした。上記のスクラッチの太さの判定は、輝度値とスクラッチの太さとを関連付けるマップを予め用意して該マップに基づいて行った。
評価結果を図6A図7図8に示している。図6Aは、検出された輝度値、及び、輝度値(及びそのシリコンウェーハ内での位置情報)とスクラッチの太さとのマッピングに基づいて、シリコンウェーハ上に太さ及び長さを有するスクラッチとして図示したものである。図7では、スクラッチが形成された箇所及びその付近のピクセルの輝度値を示しており、右側の2つの拡大図にて示されている。また、図8では、輝度値の大小(強弱)に基づいてスクラッチの太さを判定したものを示している。
【0042】
(比較例)
発明例で用いたのと同じシリコンウェーハを用いて、シリコンウェーハの裏面側の表面に、リング照射を行い、その散乱光をピクセル毎に検出した。検出感度は200nmとした。
評価結果を図6Bに示している。図6Bは、検出された輝度値に基づいて、シリコンウェーハ上に太さ及び長さを有するスクラッチとして図示したものである。
【0043】
図6A図6B図7図8に示すように、比較例では所定以下の太さのスクラッチ箇所が検出されていないのに対して、発明例では、スクラッチとして検出されており、より詳細なスクラッチまで検出することができていることがわかる。また、発明例では、太いスクラッチ部分と細いスクラッチ部分とを分類することができており、それぞれの長さも判定することができている。
【符号の説明】
【0044】
1 レーザ光源
2 散乱光検出器
3 保持具
4 アーム部
5 連結部
6a、6b、6c、6d、6e ミラー
7 検出部
W シリコンウェーハ
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8