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特許7400714アンダーフィル材、半導体パッケージ及び半導体パッケージの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】アンダーフィル材、半導体パッケージ及び半導体パッケージの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/29 20060101AFI20231212BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20231212BHJP
   C08G 59/20 20060101ALI20231212BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20231212BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
H01L23/30 R
C08G59/20
C08K3/013
C08L63/00 C
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020521170
(86)(22)【出願日】2019-05-14
(86)【国際出願番号】 JP2019019141
(87)【国際公開番号】W WO2019225408
(87)【国際公開日】2019-11-28
【審査請求日】2022-03-03
(31)【優先権主張番号】P 2018100786
(32)【優先日】2018-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】白神 真志
【審査官】庄司 一隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-189847(JP,A)
【文献】国際公開第2017/195304(WO,A1)
【文献】特開2009-091510(JP,A)
【文献】特開2013-064152(JP,A)
【文献】国際公開第2012/070387(WO,A1)
【文献】特開2016-037507(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/29
C08G 59/20
C08K 3/013
C08L 63/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂と、硬化剤と、無機充填材とを含有し、硬化物として175℃の条件下に1000時間配置したときに、硬化物の全質量から無機充填材の質量を差し引いて得られる成分の質量減少率が1.00質量%以下であり、
前記エポキシ樹脂が、エポキシ基及びイソシアヌレート環を有しかつ前記エポキシ基と前記イソシアヌレート環とが炭素数1以上の鎖式炭化水素基により連結されているエポキシ樹脂を含み、
前記硬化剤がアミン硬化剤を含み、
前記エポキシ樹脂のエポキシ基の数に対する前記アミン硬化剤の活性水素の数の比(アミン硬化剤の活性水素数/エポキシ樹脂のエポキシ基数)が0.5以上である、アンダーフィル材。
【請求項2】
前記エポキシ基と前記イソシアヌレート環とが炭素数1以上の鎖式炭化水素基により連結されている前記エポキシ樹脂が、分子内にエポキシ基以外の炭素-酸素単結合(C-O)を有しない、請求項1に記載のアンダーフィル材。
【請求項3】
前記エポキシ基と前記イソシアヌレート環とが炭素数1以上の鎖式炭化水素基により連結されている前記エポキシ樹脂が、前記エポキシ基と前記イソシアヌレート環とが炭素数2以上の鎖式炭化水素基により連結されているエポキシ樹脂を含む、請求項1又は請求項2に記載のアンダーフィル材。
【請求項4】
前記エポキシ基と前記イソシアヌレート環とが炭素数1以上の鎖式炭化水素基により連結されている前記エポキシ樹脂が、前記エポキシ基と前記イソシアヌレート環とが炭素数2~4の鎖式炭化水素基により連結されているエポキシ樹脂を含む、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のアンダーフィル材。
【請求項5】
前記エポキシ基と前記イソシアヌレート環とが炭素数1以上の鎖式炭化水素基により連結されている前記エポキシ樹脂が、1,3,5-トリス(4,5-エポキシペンチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオンを含む、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載のアンダーフィル材。
【請求項6】
前記エポキシ基と前記イソシアヌレート環とが炭素数1以上の鎖式炭化水素基により連結されている前記エポキシ樹脂の含有量が、アンダーフィル材に含まれるエポキシ樹脂の全質量に対して、10質量%~60質量%である、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載のアンダーフィル材。
【請求項7】
前記エポキシ樹脂がビスフェノールF型エポキシ樹脂をさらに含む、請求項1~請求項6のいずれか1項に記載のアンダーフィル材。
【請求項8】
さらにカーボンブラックを含む、請求項1~請求項のいずれか1項に記載のアンダーフィル材。
【請求項9】
パワー半導体用である請求項1~請求項のいずれか1項に記載のアンダーフィル材。
【請求項10】
基板と、前記基板上に配置された半導体素子と、前記半導体素子を封止している請求項1~請求項のいずれか1項に記載のアンダーフィル材の硬化物と、を備える、半導体パッケージ。
【請求項11】
基板と、前記基板上に配置された半導体素子との間の空隙を請求項1~請求項のいずれか1項に記載のアンダーフィル材で充填する工程と、前記アンダーフィル材を硬化する工程と、を有する、半導体パッケージの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アンダーフィル材、半導体パッケージ及び半導体パッケージの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トランジスタ、IC(Integrated Circuit)等の電子部品装置に用いられる各種半導体素子(以下、チップともいう)の封止の分野では、生産性、製造コスト等の面から樹脂による封止が主流となっている。封止用の樹脂としては、エポキシ樹脂が広く用いられている。これは、エポキシ樹脂が作業性、成形性、電気特性、耐湿性、耐熱性、機械特性、インサート品との接着性等の諸特性においてバランスに優れているためである。
【0003】
半導体素子の表面実装方法としては、電子部品装置の小型化及び薄型化に伴い、ベアチップを直接配線基板上に実装する、いわゆるベアチップ実装が主流となっている。ベアチップ実装による半導体装置としては、例えば、COB(Chip on Board)、COG(Chip on Glass)、TCP(Tape Carrier Package)等が挙げられ、これらの半導体装置においては、液状の封止樹脂組成物が広く使用されている。
【0004】
また、半導体素子を配線基板(以下、単に「基板」ともいう)上に直接バンプ接続してなるフリップチップ型の半導体装置では、バンプ接続した半導体素子と配線基板との間隙(ギャップ)に充填するアンダーフィル材として、液状樹脂組成物が使用されている。例えば、特許文献1には、多官能エポキシ樹脂、並びにフェノール系化合物及び酸無水物を含む硬化剤を用いたアンダーフィル材が記載されている。これらの液状樹脂組成物は、電子部品を温湿度及び機械的な外力から保護する重要な役割を果たしている。
【0005】
一方、電子機器の小型化、軽量化及び高性能化に伴い、実装の高密度化が進み、電子部品の発熱が顕著となってきている。さらに、高温下で作動する電子部品も増加しており、特に、車載用等のパワー半導体は、長時間高温に曝されることが予想される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2004-256646号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、パワー半導体の分野においても、小型化及び薄型化されたフリップチップ型の半導体装置の適用が進んできた。このため、高温下で長時間の動作に耐えうる性能を有するアンダーフィル材に対する要求がでてきた。しかしながら、液状樹脂組成物を用いるアンダーフィル材において、パワー半導体用の封止材としての条件を充分に満足することは困難であった。例えば、従来のアンダーフィル材では、硬化物を高温下で長時間放置したときにフィレットクラックが発生してしまうなど、パワー半導体の封止材として求められる性能を充分に満足することはできなかった。
【0008】
かかる状況に鑑み、本開示は、硬化物を高温下に長時間配置したときにフィレットクラックの発生を抑制することができるアンダーフィル材、これを用いた半導体パッケージ、及び当該半導体パッケージの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための手段は、以下の態様を含む。
<1> エポキシ樹脂と、硬化剤と、無機充填材とを含有し、硬化物として175℃の条件下に1000時間配置したときに、硬化物の全質量から無機充填材の質量を差し引いて得られる成分の質量減少率が1.00質量%以下である、アンダーフィル材。
<2> 前記エポキシ樹脂がエポキシ基及びイソシアヌレート環を有するエポキシ樹脂を含む、<1>に記載のアンダーフィル材。
<3> 前記エポキシ基及びイソシアヌレート環を有するエポキシ樹脂における前記エポキシ基と前記イソシアヌレート環とが、炭素数1以上の鎖式炭化水素基により連結されている、<2>に記載のアンダーフィル材。
<4> 前記エポキシ樹脂が、分子内にエポキシ基以外の炭素-酸素単結合(C-O)を有しないエポキシ樹脂を含む、<1>に記載のアンダーフィル材。
<5> エポキシ基及びイソシアヌレート環を有し、前記エポキシ基と前記イソシアヌレート環とが炭素数1以上の鎖式炭化水素基により連結されているエポキシ樹脂を含む、エポキシ樹脂と、硬化剤と、無機充填材とを含有するアンダーフィル材。
<6> 前記エポキシ基及びイソシアヌレート環を有し、前記エポキシ基と前記イソシアヌレート環とが炭素数1以上の鎖式炭化水素基により連結されているエポキシ樹脂が、分子内にエポキシ基以外の炭素-酸素単結合(C-O)を有しない、<5>に記載のアンダーフィル材。
<7> 前記硬化剤がアミン硬化剤を含む、<1>~<6>のいずれか1項に記載のアンダーフィル材。
<8> パワー半導体用である<1>~<7>のいずれか1項に記載のアンダーフィル材。
<9> 基板と、前記基板上に配置された半導体素子と、前記半導体素子を封止している<1>~<8>のいずれか1項に記載のアンダーフィル材の硬化物と、を備える、半導体パッケージ。
<10> 基板と、前記基板上に配置された半導体素子との間の空隙を<1>~<8>のいずれか1項に記載のアンダーフィル材で充填する工程と、前記アンダーフィル材を硬化する工程と、を有する、半導体パッケージの製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、硬化物を高温下に長時間配置したときにフィレットクラックの発生を抑制することができるアンダーフィル材、これを用いた半導体パッケージ、及び当該半導体パッケージの製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の実施形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合を除き、必須ではない。数値及びその範囲についても同様であり、本発明を制限するものではない。
【0012】
本開示において「工程」との語には、他の工程から独立した工程に加え、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の目的が達成されれば、当該工程も含まれる。
本開示において「~」を用いて示された数値範囲には、「~」の前後に記載される数値がそれぞれ最小値及び最大値として含まれる。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において各成分は該当する物質を複数種含んでいてもよい。組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、各成分の含有率又は含有量は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計の含有率又は含有量を意味する。
本開示において各成分に該当する粒子は複数種含まれていてもよい。組成物中に各成分に該当する粒子が複数種存在する場合、各成分の粒子径は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の粒子の混合物についての値を意味する。
【0013】
≪アンダーフィル材≫
本開示のアンダーフィル材は、第1の実施形態において、エポキシ樹脂と、硬化剤と、無機充填材とを含有し、硬化物として175℃の条件下に1000時間配置したときに、硬化物の全質量から無機充填材の質量を差し引いて得られる成分の質量減少率が1.00質量%以下である。
また、本開示のアンダーフィル材は、第2の実施形態において、エポキシ基及びイソシアヌレート環を有し、前記エポキシ基と前記イソシアヌレート環とが炭素数1以上の鎖式炭化水素基により連結されているエポキシ樹脂を含む、エポキシ樹脂と、硬化剤と、無機充填材と、を含有する。以下、「エポキシ基及びイソシアヌレート環を有するエポキシ樹脂」を「イソシアヌレート環含有エポキシ樹脂」ともいい、「エポキシ基及びイソシアヌレート環を有し、前記エポキシ基と前記イソシアヌレート環とが炭素数1以上の鎖式炭化水素基により連結されているエポキシ樹脂」を「特定イソシアヌレート環含有エポキシ樹脂」ともいう。
【0014】
従来、アンダーフィル材を用いて封止したときのフィレットクラックを抑制する方法としては、アンダーフィル材とチップとの応力緩和の観点から、硬化物の線膨張係数、ガラス転移温度(Tg)、及び弾性率を調整する方法が主に検討されてきた。しかしながら、これらのアプローチによっても、パワー半導体等における厳しい条件下でフィレットクラックを充分に抑制することは困難であった。
一方、発明者は、硬化物を高温下に長時間配置したときの樹脂の分解に着目した新たなアプローチによってフィレットクラックの発生を効果的に抑制しうることを見出した。明確な機序は明らかではないが、フィレットクラックは、樹脂が高温下で劣化して分解したときに、当該分解点が起点となって近隣部の樹脂の分解が連鎖的に進行することが一因となって発生すると考えられる。そこで、樹脂自体の分解の進行を抑制することに着想し、高温下に硬化物を長時間配置したときの質量減少率を一定以下に調整することで、フィレットクラックを効果的に抑制できることを見出した。
【0015】
また、同様に、アンダーフィル材に含有されるエポキシ樹脂が、特定イソシアヌレート環含有エポキシ樹脂を含むと、樹脂の分解が抑制され、フィレットクラックを効果的に抑制することができると考えられる。この理由は明らかではないが、イソシアヌレート環が高温下での優れた耐分解性を有し、硬化物の靭性が向上することが一因であると推測される。
【0016】
以下、アンダーフィル材に必須又は任意で用いられる成分について詳述する。
【0017】
<エポキシ樹脂>
アンダーフィル材はエポキシ樹脂を含む。第1の実施形態において、エポキシ樹脂の種類は特に制限されない。第2の実施形態において、エポキシ樹脂は特定イソシアヌレート環含有エポキシ樹脂を含む限り特に制限されない。エポキシ樹脂は1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂(2官能エポキシ樹脂ともいう)を含んでもよく、1分子中に3個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂(3官能エポキシ樹脂等ともいう)を含んでもよく、これらを組み合わせて用いてもよい。本開示において、エポキシ基を有する単量体化合物(すなわち、エポキシ化合物)もエポキシ樹脂と称するものとする。
【0018】
アンダーフィル材が全体として常温(25℃、以下同様)で液状である限り、エポキシ樹脂は常温で固形であっても液状であってもよく、両者を併用してもよい。アンダーフィル材の低粘度化の観点からは、常温で液状のエポキシ樹脂を用いることが好ましい。
本開示において、常温で液状であるとは、25℃における粘度が1000Pa・s以下であることを意味する。本開示において、粘度はレオメーター(例えば、ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製の「AR2000」)により、40mmのパラレルプレートにて、せん断速度:32.5/secの条件で測定することができる。
【0019】
本開示のアンダーフィル材には、所望の効果が達成される範囲内であれば、固形エポキシ樹脂を使用してもよい。この場合、成形時の流動性の観点から、固形エポキシ樹脂の含有率はエポキシ樹脂全量に対して20質量%以下とすることが好ましい。
【0020】
エポキシ樹脂としては、例えばビスフェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、水添ビスフェノール型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、アルコールエーテル型エポキシ樹脂、環状脂肪族型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、及びシロキサン系エポキシ樹脂が挙げられる。エポキシ樹脂は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。なかでも、流動性の観点からはエポキシ樹脂はビスフェノール型エポキシ樹脂を含むことが好ましい。
【0021】
ビスフェノール型エポキシ樹脂の種類は特に制限されず、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂等が挙げられる。アンダーフィル材として使用するためには、ビスフェノール型エポキシ樹脂は常温で液状のものであることが好ましく、常温で液状のビスフェノールF型エポキシ樹脂であることがより好ましい。常温で液状のビスフェノール型エポキシ樹脂は、市販品としても入手可能である。例えば、常温で液状のビスフェノールF型エポキシ樹脂の市販品としては、日鉄ケミカル&マテリアル株式会社の商品名「エポトート YDF-8170C」が挙げられる。
【0022】
エポキシ樹脂がビスフェノール型エポキシ樹脂を含む場合、ビスフェノール型エポキシ樹脂のエポキシ樹脂全体に占める割合は特に制限されず、アンダーフィル材の所望の特性に応じて選択できる。例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂のエポキシ樹脂全体に占める割合は5質量%~90質量%であってもよく、5質量%~75質量%であってもよく、5質量%~60質量%であってもよい。
【0023】
ビスフェノール型エポキシ樹脂の粘度は特に制限されず、取扱い性の観点から、25℃での粘度が50Pa・s以下であることが好ましく、30Pa・s以下であることがより好ましく、10Pa・s以下であることがさらに好ましい。
【0024】
エポキシ樹脂は、分子内にエポキシ基以外の炭素-酸素単結合(C-O)を有しないエポキシ樹脂を含むことが好ましい。エポキシ樹脂が分子内にエポキシ基以外の炭素-酸素単結合(C-O)を有しないエポキシ樹脂を含むことにより、より効果的にフィレットクラックの発生が抑制される傾向にある。この理由は、エポキシ樹脂の耐熱分解性が向上し、靭性が向上するためであると推測される。
【0025】
エポキシ樹脂のエポキシ当量(分子量/エポキシ基数)は、特に制限されない。成形性、耐リフロー性、電気的信頼性等の各種特性バランスの観点からは、エポキシ樹脂のエポキシ当量は、80g/eq~1000g/eqであることが好ましく、80g/eq~600g/eqであることがより好ましく、80g/eq~300g/eqであることがさらに好ましい。本開示において、エポキシ樹脂のエポキシ当量は、JIS K 7236:2009に準じた方法で測定される値とする。
【0026】
エポキシ樹脂が固体である場合、エポキシ樹脂の軟化点又は融点は特に制限されない。成形性と耐リフロー性の観点から、エポキシ樹脂の軟化点又は融点は40℃~180℃であることが好ましく、アンダーフィル材の調製の際の取扱い性の観点からは50℃~130℃であることがより好ましい。
エポキシ樹脂の融点は示差走査熱量測定(DSC)で測定される値とし、エポキシ樹脂の軟化点はJIS K 7234:1986に準じた方法(環球法)で測定される値とする。
【0027】
エポキシ樹脂の純度の指標の1つとなる加水分解性塩素量は、IC等の半導体素子上の配線の腐食を抑制し、耐湿性の優れたアンダーフィル材を得る観点から、500ppm以下であることが好ましく、300ppm以下であることがより好ましい。加水分解性塩素量とは、エポキシ樹脂1gをジオキサン30mlに溶解し、1NのKOHメタノール溶液5mlを添加して30分間リフラックス後、電位差滴定により求める値を尺度としたものである。
【0028】
アンダーフィル材中のエポキシ樹脂の含有率は特に制限されない。粘度、ガラス転移温度、耐熱性等の観点からは、アンダーフィル材の総量に対するエポキシ樹脂の含有率は0.5質量%~75質量%であることが好ましく、20質量%~70質量%であることがより好ましく、25質量%~70質量%であることがさらに好ましい。
【0029】
-イソシアヌレート環含有エポキシ樹脂-
エポキシ樹脂は、フィレットクラックをより良好に抑制する観点から、イソシアヌレート環含有エポキシ樹脂を含むことが好ましい。イソシアヌレート環は高温下での優れた耐熱分解性を有すると考えられ、イソシアヌレート環含有エポキシ樹脂を用いると硬化物の靭性が向上し、フィレットクラックが効果的に抑制されると考えられる。
【0030】
イソシアヌレート環含有エポキシ樹脂のなかでも、特定イソシアヌレート環含有エポキシ樹脂が好ましい。また、第2の実施形態に係るアンダーフィル材において、エポキシ樹脂は特定イソシアヌレート環含有エポキシ樹脂を含む。なかでも、液状となりやすく、取扱い性に優れる観点からは、エポキシ基とイソシアヌレート環とが炭素数2以上の鎖式炭化水素基により連結されているイソシアヌレート環含有エポキシ樹脂が好ましい。
【0031】
炭素数1以上の鎖式炭化水素基は直鎖炭化水素基であっても分岐炭化水素基であってもよい。炭素数1以上の鎖式炭化水素基は置換基を有していてもいなくてもよい。置換基としてはフェニル基、ヒドロキシ基等が挙げられる。炭素数1以上の鎖式炭化水素基は飽和鎖式炭化水素基であってもよく、不飽和鎖式炭化水素基であってもよく、前者が好ましい。炭素数1以上の鎖式炭化水素基の炭素数は例えば5以下であってもよい。
なお、イソシアヌレート環含有エポキシ樹脂における、エポキシ基とイソシアヌレート環とを連結する鎖式炭化水素基に含まれる炭素数は、主鎖上、すなわちエポキシ基とイソシアヌレート基を連結する鎖上の炭素数をいい、分岐鎖及び置換基の炭素数を含まないものとする。
【0032】
炭素数1以上の鎖式炭化水素基としては、例えば、炭素数1以上の直鎖アルキレン基が挙げられ、炭素数1~5の直鎖アルキレン基であることが好ましく、炭素数2~4の直鎖アルキレン基であることがより好ましく、炭素数2又は3の直鎖アルキレン基であることがさらに好ましい。また、これらの直鎖アルキレン基に対して炭素数1~5の分岐鎖を1つ又は複数有する分岐アルキレン基であってもよい。
【0033】
特定イソシアヌレート環含有エポキシ樹脂が2官能以上であるとき、「エポキシ基とイソシアヌレート環とが炭素数1以上の鎖式炭化水素基により連結されている」とは、分子内の少なくとも1つのエポキシ基が炭素数1以上の鎖式炭化水素基によって連結されていることを意味する。特定イソシアヌレート環含有エポキシ樹脂が2官能エポキシ樹脂であるとき、分子内の2つのエポキシ基が炭素数1以上の鎖式炭化水素基によって連結されていることが好ましい。特定イソシアヌレート環含有エポキシ樹脂が3官能エポキシ樹脂であるとき、分子内の2つ以上、より好ましくは3つのエポキシ基が炭素数1以上の鎖式炭化水素基によって連結されていることが好ましい。エポキシ基とイソシアヌレート環とを連結する炭素数1以上の鎖式炭化水素基が1分子中に2つ以上存在する場合、各鎖式炭化水素基は互いに同じであっても異なってもよい。
【0034】
なお、以下のイソシアヌレート環含有エポキシ樹脂についての説明は、特定イソシアヌレート環含有エポキシ樹脂についても同様に適用可能である。
【0035】
イソシアヌレート環含有エポキシ樹脂は、フィレットクラックの発生の抑制の観点から、分子内にエポキシ基以外の炭素-酸素単結合(C-O)を有しないことが好ましい。
【0036】
イソシアヌレート環含有エポキシ樹脂は常温で固形であっても液状であってもよく、両者を併用してもよい。アンダーフィル材の低粘度化の観点からは、イソシアヌレート環含有エポキシ樹脂は常温で液状であることが好ましい。
【0037】
イソシアヌレート環含有エポキシ樹脂の分子中のエポキシ基数(すなわち、官能数)は特に制限されず、耐熱性の観点からは2官能以上であることが好ましく、3官能であることがより好ましい。
【0038】
イソシアヌレート環含有エポキシ樹脂のエポキシ当量(分子量/エポキシ基数)は、特に制限されない。耐熱性及び取扱い性の観点からは、イソシアヌレート環含有エポキシ樹脂のエポキシ当量は90g/eq~500g/eqであることが好ましく、100g/eq~300g/eqであることがより好ましく、120g/eq~160g/eqであることがさらに好ましい。
【0039】
イソシアヌレート環含有エポキシ樹脂の粘度は特に制限されず、取扱い性の観点から25℃における粘度が50Pa・s以下であることが好ましく、30Pa・s以下であることがより好ましく、10Pa・s以下であることがさらに好ましい。
【0040】
エポキシ樹脂全体に占めるイソシアヌレート環含有エポキシ樹脂の割合は特に制限されず、アンダーフィル材の所望の特性に応じて選択できる。例えば、エポキシ樹脂全体に占めるイソシアヌレート環含有エポキシ樹脂の割合は、10質量%~100質量%であってもよく、10質量%~75質量%であってもよく、10質量%~60質量%であってもよい。
エポキシ樹脂が特定イソシアヌレート環含有エポキシ樹脂を含むとき、イソシアヌレート環含有エポキシ樹脂全体に占める特定イソシアヌレート環含有エポキシ樹脂の割合は、50質量%以上であってもよく、70質量%以上であってもよく、90質量%以上であってもよい。
【0041】
特に、取扱い性及びフィレットクラックの効果的な抑制の観点から、ビスフェノール型エポキシ樹脂とイソシアヌレート環含有エポキシ樹脂を併用することが好ましく、ビスフェノール型エポキシ樹脂と特定イソシアヌレート環含有エポキシ樹脂を併用することがより好ましい。ビスフェノール型エポキシ樹脂とイソシアヌレート環含有エポキシ樹脂の質量基準の配合比(ビスフェノール型エポキシ樹脂:イソシアヌレート環含有エポキシ樹脂)は特に制限されず、90:10~25:75であることが好ましく、90:10~40:60であることがより好ましい。
【0042】
<硬化剤>
アンダーフィル材は硬化剤を含有する。硬化剤の種類は特に制限されず、アンダーフィル材の所望の特性等に応じて選択してよい。例えば、アミン硬化剤、フェノール硬化剤、酸無水物硬化剤、ポリメルカプタン硬化剤、ポリアミノアミド硬化剤、イソシアネート硬化剤、ブロックイソシアネート硬化剤等が挙げられる。硬化剤は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
アンダーフィル材に使用する硬化剤は、常温で液状のものが好ましく、低吸水性及び被着体への接着性の観点からは、アミン硬化剤であることが好ましい。アミン硬化剤としては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、n-プロピルアミン、2-ヒドロキシエチルアミノプロピルアミン、シクロヘキシルアミン、4,4’-ジアミノ-ジシクロヘキシルメタン等の脂肪族アミン化合物、ジエチルトルエンジアミン、3,3’-ジエチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、2-メチルアニリン等の芳香族アミン化合物、イミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-イソプロピルイミダゾール等のイミダゾール化合物、イミダゾリン、2-メチルイミダゾリン、2-エチルイミダゾリン等のイミダゾリン化合物などが挙げられる。これらの中でも、芳香族アミン化合物が好ましい。
【0044】
硬化剤の官能基当量は、特に制限されない。反応性、及び組成物特性の観点からは、硬化剤の官能基当量(アミン硬化剤の場合は活性水素当量)は、30g/eq~300g/eqであることが好ましく、35g/eq~200g/eqであることがより好ましい。硬化剤の官能基当量は、計算値とする。
【0045】
エポキシ樹脂と硬化剤の配合比は、それぞれの未反応分を少なく抑える観点からは、エポキシ樹脂のエポキシ基の数に対する硬化剤の官能基(アミン硬化剤の場合は活性水素)の数の比(硬化剤の官能基数/エポキシ樹脂のエポキシ基数)が0.5~2.0の範囲内となるように設定されることが好ましく、0.6~1.3の範囲内となるように設定されることがより好ましく、0.8~1.2の範囲内となるように設定されることがさらに好ましい。
【0046】
<無機充填材>
アンダーフィル材は無機充填材を含有する。無機充填材の種類は、特に制限されない。具体的には、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、ケイ酸ジルコニウム、ケイ酸カルシウム、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、ベリリア、ジルコニア、ジルコン、フォステライト、ステアタイト、スピネル、ムライト、チタニア、タルク、クレー、マイカ等の無機材料が挙げられる。また、難燃効果を有する無機充填材を用いてもよい。難燃効果を有する無機充填材としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、マグネシウムと亜鉛の複合水酸化物等の複合金属水酸化物、ホウ酸亜鉛などが挙げられる。
【0047】
上記無機充填材の中でも、熱膨張率低減の観点からはシリカが好ましく、熱伝導性向上の観点からはアルミナが好ましい。無機充填材は1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0048】
アンダーフィル材に含まれる無機充填材の含有率は、特に制限されない。硬化後の熱膨張率を低減する観点からは、無機充填材の量は多いほど好ましい。例えば、無機充填材の含有率がアンダーフィル材全体の40質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、60質量%以上であることがさらに好ましい。一方、粘度上昇を抑制する観点からは、無機充填材の量は少ないほど好ましい。例えば、無機充填材の含有率がアンダーフィル材全体の80質量%以下であることが好ましい。
【0049】
無機充填材が粒子状である場合、その平均粒子径は、特に制限されない。例えば、体積平均粒子径が0.05μm~20μmであることが好ましく、0.1μm~15μmであることがより好ましい。無機充填材の体積平均粒子径が0.05μm以上であると、アンダーフィル材の粘度の上昇がより抑制される傾向にある。体積平均粒子径が20μm以下であると、狭い隙間への充填性がより向上する傾向にある。無機充填材の体積平均粒子径は、レーザー散乱回折法粒度分布測定装置により得られる体積基準の粒度分布において小径側からの体積の累積が50%となるときの粒子径(D50)として測定することができる。
【0050】
<添加剤>
アンダーフィル材は、上述の成分に加えて、硬化促進剤、応力緩和剤、カップリング剤、着色剤等の各種添加剤を含んでもよい。アンダーフィル材は、以下に例示する添加剤以外にも必要に応じて当技術分野で周知の各種添加剤を含んでもよい。
【0051】
(硬化促進剤)
アンダーフィル材は、硬化促進剤を含んでもよい。硬化促進剤の種類は特に制限されず、エポキシ樹脂及び硬化剤の種類、アンダーフィル材の所望の特性等に応じて選択できる。
【0052】
アンダーフィル材が硬化促進剤を含む場合、その量はエポキシ樹脂と硬化剤の合計100質量部に対して0.1質量部~30質量部であることが好ましく、1質量部~15質量部であることがより好ましい。
【0053】
(応力緩和剤)
アンダーフィル材は、応力緩和剤を含んでもよい。応力緩和剤としては、熱可塑性エラストマー、NR(天然ゴム)、NBR(アクリロニトリル-ブタジエンゴム)、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム等の粒子などが挙げられる。応力緩和剤は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0054】
アンダーフィル材が応力緩和剤を含む場合、その量はエポキシ樹脂と硬化剤の合計100質量部に対して0.1質量部~30質量部であることが好ましく、1質量部~15質量部であることがより好ましい。
【0055】
(カップリング剤)
アンダーフィル材は、カップリング剤を含んでもよい。カップリング剤としては、エポキシシラン、フェニルシラン、メルカプトシラン、アミノシラン、フェニルアミノシラン、アルキルシラン、ウレイドシラン、ビニルシラン等のシラン化合物、チタン化合物、アルミニウムキレート化合物、アルミニウム/ジルコニウム化合物などが挙げられる。これらの中でもシラン化合物(シランカップリング剤)が好ましい。カップリング剤は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0056】
アンダーフィル材がカップリング剤を含む場合、カップリング剤の量は、無機充填材100質量部に対して0.05質量部~5質量部であることが好ましく、0.1質量部~2.5質量部であることがより好ましい。
【0057】
(着色剤)
アンダーフィル材は、着色剤を含んでもよい。着色剤としては、カーボンブラック、有機染料、有機顔料、鉛丹、ベンガラ等が挙げられる。着色剤は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0058】
アンダーフィル材が着色剤を含む場合、その量はエポキシ樹脂と硬化剤の合計100質量部に対して0.01質量部~10質量部であることが好ましく、0.1質量部~5質量部であることがより好ましい。
【0059】
[アンダーフィル材の特性]
(質量減少率)
アンダーフィル材は、硬化物として175℃条件下に1000時間配置したときに、硬化物の全質量から無機充填材の質量を差し引いて得られる成分(「硬化物の無機充填材以外の成分」ともいう)の質量減少率が1.00質量%以下であることが好ましい。本開示の第1の実施形態に係るアンダーフィル材は、上記質量減少率が1.00質量%以下である。
【0060】
上記質量減少率は、例えばアンダーフィル材に含有される各成分の種類、配合割合等を調節することによって調整することができる。
【0061】
無機充填材の質量は、硬化物をマッフル炉等で800℃以上の高温で4時間処理し、処理後に残渣として得られる灰分の質量を測定することによって求めることができる。硬化物中の無機充填材の含有率が既知である場合は、硬化物の質量に当該含有率を乗じて算出した値を無機充填材の質量としてもよい。
【0062】
硬化物の無機充填材以外の成分の質量減少率(質量%)は、硬化物の175℃、1000時間の処理前後における硬化物の質量を測定し、無機充填材の質量を求め、下記式によって算出する。なお、無機充填材の質量を灰分の質量から求める場合には、175℃、1000時間の処理に供した後の硬化物の灰分の質量を測定してもよく、175℃、1000時間の処理に供する硬化物と同じ条件で作製された同じ質量の硬化物を用いて灰分を測定してもよい。
【0063】
=[{(m-m)-(m-m)}/(m-m)]×100
【0064】
:硬化物の無機充填材以外の成分の質量減少率(質量%)
:175℃、1000時間処理前の硬化物の質量(mg)
:175℃、1000時間処理後の硬化物の質量(mg)
:無機充填材の質量(mg)
【0065】
本開示において、硬化物として質量減少率を測定するときのアンダーフィル材の硬化条件は、165℃、120分とする。
【0066】
硬化物の無機充填材以外の成分の質量減少率は1.00質量%以下であることが好ましく、0.90質量%以下であることがより好ましく、0.80質量%以下であることがさらに好ましい。質量減少率は少ないほど好ましい。
【0067】
(粘度)
アンダーフィル材は、基板と半導体素子との間の空隙を充填する際の粘度が充分に低いことが好ましい。具体的には、110℃における粘度が1.0Pa・s以下であることが好ましく、0.75Pa・s以下であることがより好ましく、0.50Pa・s以下であることがさらに好ましい。本開示においてアンダーフィル材の110℃における粘度は、レオメーター(例えば、ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製の「AR2000」)により、40mmのパラレルプレートにて、せん断速度:32.5/secの条件で測定される値である。
【0068】
[アンダーフィル材の用途]
アンダーフィル材は、種々の実装技術に用いることができる。特に、フリップチップ型実装技術に用いるアンダーフィル材として好適である。例えば、バンプ等で接合された半導体素子と基板の間の隙間を充填する用途に好適に用いることができる。
【0069】
特に、本開示のアンダーフィル材は、高温下に長時間配置したときにもフィレットクラックの発生を抑制することができるため、車載用等のパワー半導体の封止に好適である。
【0070】
アンダーフィル材を用いて半導体素子と基板の間の隙間を充填する方法は、特に制限されない。例えば、ディスペンサー等を用いて公知の方法により行うことができる。
【0071】
<半導体パッケージ>
本開示の半導体パッケージは、基板と、前記基板上に配置された半導体素子と、前記半導体素子を封止している上述したアンダーフィル材の硬化物と、を備える。
【0072】
上記半導体パッケージにおいて、半導体素子と基板の種類は特に制限されず、半導体パッケージの分野で一般的に使用されるものから選択できる。上記半導体パッケージは、高温で長時間作動してもフィレットクラックの発生が抑制されているため、信頼性に優れる。
【0073】
<半導体パッケージの製造方法>
本開示の半導体パッケージの製造方法は、基板と、前記基板上に配置された半導体素子との間の空隙を上述したアンダーフィル材で充填する工程と、前記アンダーフィル材を硬化する工程と、を有する。
【0074】
上記方法において、半導体素子と基板の種類は特に制限されず、半導体パッケージの分野で一般的に使用されるものから選択できる。アンダーフィル材を用いて半導体素子と基板の間の隙間を充填する方法、及び充填後にアンダーフィル材を硬化する方法は特に制限されず、公知の手法で行うことができる。
【実施例
【0075】
以下、本開示のアンダーフィル材を実施例により具体的に説明するが、本開示の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」及び「%」は質量基準である。
【0076】
実施例1~3及び比較例1~3において行った特性試験の試験方法を以下にまとめて示す。なお、使用したアンダーフィル材の諸特性、信頼性の評価は以下の方法及び条件で行った。
【0077】
評価に用いた半導体装置の仕様を以下に示す。
素子:縦20mm、横20mm、厚み725μmの素子
バンプ:高さ45μmの銅ポスト上に高さ15μm鉛フリーはんだを設けたもの、バンプピッチは200μm
基板:縦45mm、横45mm、厚み0.82mmのE-705G(日立化成株式会社、商品名)
ソルダーレジスト:SR7300G(日立化成株式会社、商品名)
【0078】
(アンダーフィル材の調製)
表1に示す成分を表1に示す量(質量部)にて混合し、アンダーフィル材を調製した。各成分の詳細は下記のとおりである。
【0079】
エポキシ樹脂1…液状ビスフェノールF型エポキシ樹脂、エポキシ当量:160g/eq、商品名「エポトート YDF-8170C」、日鉄ケミカル&マテリアル株式会社
エポキシ樹脂2…トリグリシジル-p-アミノフェノール、エポキシ当量:95g/eq、商品名「jER 630」、三菱ケミカル株式会社
エポキシ樹脂3…トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、エポキシ当量:120g/eq、商品名「エポトート ZX-1542」、日鉄ケミカル&マテリアル株式会社
エポキシ樹脂4…1,3,5-トリス(4,5-エポキシペンチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、エポキシ当量:135g/eq、商品名「TEPIC-VL」、日産化学工業株式会社
【0080】
硬化剤1…ジエチルトルエンジアミン、商品名「jERキュア W」、活性水素当量:45g/eq、三菱ケミカル株式会社
硬化剤2…3,3’-ジエチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、商品名「カヤハード A-A」、活性水素当量:63g/eq、日本化薬株式会社
【0081】
無機充填材…体積平均粒子径が0.5μmの球状シリカ、商品名「SE2200」、株式会社アドマテックス
【0082】
着色剤…カーボンブラック、商品名「MA-100」、三菱ケミカル株式会社
【0083】
(質量減少率)
硬化物の無機充填材以外の成分の質量減少率(質量%)は、硬化物の175℃、1000時間の処理前後における硬化物の質量を測定し、無機充填材の質量を求め、下記式によって算出した。
【0084】
=[{(m-m)-(m-m)}/(m-m)]×100
【0085】
:硬化物の無機充填材以外の成分の質量減少率(質量%)
:175℃、1000時間処理前の硬化物の質量(mg)
:175℃、1000時間処理後の硬化物の質量(mg)
:無機充填材の質量(mg)
【0086】
(信頼性)
175℃で1000時間の熱履歴を経た半導体装置を、顕微鏡で観察し、フィレットクラックの有無を観察した。
【0087】
【表1】
【0088】
表1に示すように、比較例1~3のアンダーフィル材を用いた場合、信頼性試験でフィレットクラックが発生した。一方で、無機充填材の含有率が同じである実施例1~3のアンダーフィル材を用いた場合、信頼性試験でフィレットクラックは見られず良好な結果となった。
【0089】
日本国特許出願第2018-100786号の開示は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に援用されて取り込まれる。